説明

繊維機械ならびに継ぎ目を最適化する方法

本発明は、繊維機械、特にオープンエンド紡績機械であって、単数または複数の走行可能なメンテナンス装置が設けられており、該メンテナンス装置が、糸を新たに紡績開始するか、または糸切れ後に紡績開始するための手段を有しており、さらに、繊維機械を制御するための制御装置を装備している形式のものに関する。本発明により繊維機械は、繊維機械により搬送され連続的に通走する糸の糸張力および/または糸切れ張力を測定するための測定装置が設けられており、該測定装置が全体的にまたは部分的に繊維機械、メンテナンス装置またはその両者に配置されていることにより特徴付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維機械、特にオープンエンド紡績機械であって、単数または複数の走行可能なメンテナンス装置が設けられており、該メンテナンス装置が、糸を新たに紡績開始するか、または糸切れ後に紡績開始するための手段を有しており、さらに、繊維機械を制御するための制御装置を装備している形式のものに関する。さらに本発明は、繊維機械の作業箇所、特にオープンエンド紡績機械で紡績開始する方法に関する。
【0002】
糸を生産する繊維機械では、パッケージ交換時または糸切れの発生時に繰り返し、糸生産の続行のために糸端部をつむぎ合わせもしくは紡績開始しなければならない事態が生じる。その際、切断された糸端部が紡績開始のために使用されるか、またはパッケージ交換の場合には補助糸の端部が紡績開始のために使用される。既存の糸から、新たに紡績開始された糸区分への移行箇所には、紡績開始時に規則的に、継ぎ目(Ansetzer)と呼ばれる移行部が生じる。この「継ぎ目」もしくは「接合箇所」はできるだけ品質損失なしに、すなわち糸品質の変化なしに製作されることが望ましい。特に、生産される糸の後続の加工時に、例えば織機において、この箇所での糸切れ、ひいては生産進行の障害を回避するために、接合箇所における機械的な耐荷量が十分に高いことが保証されていなければならない。
【0003】
それにより、生産された継ぎ目もしくは接合箇所をオープンエンド紡績機械の作業箇所から取り出し、継ぎ目もしくは接合箇所をその強度に関して検査することが知られている。その際にただし欠点であるのは、糸をパッケージごと機械から取り出さねばならないことである。引き続いて検査室内で接合箇所が探され、その後検査されねばならない。求めたい測定結果はそれゆえ時間的なずれを伴ってのみ提示される。必要な測定値の測定のために、さらに測定装置が検査室内に準備されていなければならない。接合箇所を検査する別の公知の種類は質量増加の検出に限られる。ここからはただし、接合箇所の伸び−破断特性に関するメッセージを導き出すことはできない。
【0004】
本発明の課題はそれゆえ、冒頭で述べた形式の繊維機械もしくはメンテナンス装置ならびに方法を改良して、形成される継ぎ目の品質を特に僅かな手間でもって極めて短時間で特定し得るようにすることである。
【0005】
この課題を解決するために、冒頭で述べた形式の繊維機械は、繊維機械により搬送され連続的に通走する糸の糸張力および/または糸切れ張力を測定するための測定装置が設けられており、該測定装置が全体的にまたは部分的に繊維機械、メンテナンス装置またはその両者に接続されていることにより特徴付けられている。測定装置が本発明による形式で繊維機械、メンテナンス装置またはその両者に統合されて配置されていると、事実上あらゆる時点で、測定装置を別個に準備する必要なしに、糸張力もしくは糸切れ張力の測定が執り行われることができる。加えて、本発明による繊維機械により、連続的に通走する糸を測定することが可能であり、それにより、パッケージ共々すべての糸の取り外しが省略される。メンテナンス装置もしくは繊維機械の作業効率は、測定の実施にもかかわらず影響されないか、または仮に影響されるにしても認識し得ない程度である。
【0006】
測定装置の可能な実施形態は有利には、測定装置が案内/変向装置と、糸の変向のために加えなければならない力を測定するための測定手段とを有しており、さらに、測定される力から生じる糸張力を算出するための計算手段が設けられていることにある。糸を変向する点もしくは接触面のジオメトリが既知であり、この箇所に作用する力が既知であるとき、場合によっては摩擦係数の考慮の下で、糸にかかる糸張力が算出される。変向箇所に作用する力の検出は例えば、糸により及ぼされる力の方向で撓曲可能な体により行われ、その変形はストレンゲージを介して求められる。撓み体の材料特性値、測定構造のジオメトリならびに撓み体の生じた伸び値から、発生する力、ひいては糸にかかっている糸張力が求められ得る。背景技術では糸張力を測定するための多数の測定構造が知られており、それらの測定構造は本発明との関連で本発明による形式で使用可能である。基本原理はすべて同じであり、糸張力を直接的な経路で、糸の変位のために必要な力の測定により測定することに基づく。
【0007】
本発明の別の有利な実施形態は、測定装置が、繊維機械に設けられた糸引出装置のパワー消費量(Leistungsaufnahme)を測定するための測定手段を有していることにある。この測定は、例えばハイドロリック式駆動装置またはニューマチック式駆動装置の入力または出力を介して実施される、糸張力の間接的な測定である。測定のために使用される駆動装置はその際繊維機械の糸の引出のために役立つ。それにより、例えばオープンエンド紡績機械では、ある特定の糸引出速度時に糸引出駆動装置がある特定の一定のパワー消費量を有することが生じる。そこで、例えば高められた引出速度、拡大された摩擦またはより大きな拘束力に基づいてロータの領域内で発生し得る、糸張力の上昇時に、糸引出駆動装置のパワー消費量も上昇する。間接的にそれにより入力もしくは出力を介して糸張力の推測が実施され得る。その種のパワー測定は例えば、受容される駆動装置媒体、例えば液圧媒体または圧縮空気の圧力測定および体積測定を介して特に簡単に測定され得る。それにより、糸張力を測定するための手段を備えた本発明による繊維機械は特に簡単な形式で実現可能である。それというのも、必要なパワー測定装置を設置するだけでよく、このことは例えばメンテナンス装置において比較的大きな手間なく可能であるからである。
【0008】
本発明の別の特に有利な実施形態は、繊維機械に設けられた糸引出装置が電気的に運転されていることにある。例えばステップモータまたはサーボモータとして形成されていることができる電動モータを用いた電気的な駆動装置において、パワー消費量の測定は特に簡単である。それというのも、このために、受容される電流および対応する電圧だけが求められればよいからである。糸引出駆動装置は一般に既に電気的に構成されているので、そのような本発明による実施形態は特に簡単に紡績機械またはメンテナンス装置において実現され得る。
【0009】
得られた測定データの評価のために、測定装置が繊維機械および/またはメンテナンス装置の制御装置に接続されていると特に有利である。この種の制御装置は一般に電子式のプロセッサを装備している。プロセッサは設定されたプログラムを実行する。そのようなプログラムにより、測定装置から制御装置に伝送される測定データは、さらに処理され得る。制御装置は繊維機械もしくはメンテナンス装置に一般に既に存在している。その結果、本発明への転換は実行すべきプログラムの相応の適合にのみ限られている。このことは特に時間およびコストを節減する。
【0010】
つまり有利には、制御装置内に、予め決められた状態の特定および評価のために、規則が機械可読の形で呼出可能に格納されている。そのような規則により、制御装置は所定の状態を認識し得る。同時にこの規則は、ある状態に達したときに、どのような形式でその都度の状態において挙動しなければならないかを設定する。そのようなプログラムの助けを借りて、制御装置は、測定装置により求められる測定値をまず把握し、望まれるのであれば記録し、かつ分析することもできる。測定値の処理の結果はその後例えばオペレータに出力され得る。このことは表示装置により表出または音響学的な報知を実施し得る。可能な結果は例えば、糸解放の実施後に糸張力が形成されなければ、解放長さが短すぎ、糸端部がロータ内室に接していないことを予見し得る。この結果はその後相応にオペレータに通知されることができ、オペレータは糸解放長さを手動的に修正する。
【0011】
本発明の別の構成ではさらに、制御装置内に、規則が、パラメータ最適化法の自動的な実施のために機械可読の形で呼出可能に格納されていることができる。制御装置内での測定値の評価の実施後、そのような本発明によるプログラムにより、欠陥の自動的な除去もしくは接合パラメータ(Ansetzparameter)の最適化が制御装置により繊維機械内で実施され得る。上述の短すぎる糸解放長さの例では、そのようなプログラムにより、制御装置が、設定された糸解放長さを自動的に延長し得る。その結果、糸端部はロータ内に捕捉される。そのような延長は例えば予め決められた反復形式(iterativ)で実施され得る。
【0012】
繊維機械のための、さらに本発明により提案されるメンテナンス装置は、メンテナンス装置が、請求項1から7までのいずれか1項記載の、糸張力および/または糸切れ張力を測定するための測定装置を装備していることにより特徴付けられている。メンテナンス装置内でのすべての必要なコンポーネントの統合もしくは共通配置は、実際の使用では特に有利である。それというのも、メンテナンス装置はそれにより自動的に接合箇所の最適化を執り行うことができるからである。必要な測定装置ならびに制御装置は、その中に格納されたプログラムの形の規則を含めて、1つのユニット内で協働する。それにより例えば、メンテナンス装置は、繊維機械の多数の作業箇所のうちの1つの作業箇所で継ぎ目の最適化を実施し、その際に求められた接合パラメータを記録し、かつ残りの作業箇所で繊維機械を使用することができる。もちろんその際、種々異なる形式で構成された作業箇所を同一の繊維機械において使用することも可能である。この場合、メンテナンス装置は、求められたパラメータを、同じまたは十分に類似の構成を有する作業箇所でのみ使用することに制限される。
【0013】
続いて本発明により提案される方法は有利には、糸張力を直接、搬送される糸において測定し、その結果に応じて、紡績開始パラメータ(Anspinnparameter)の最適化を執り行うことにより特徴付けられている。本発明による方法は、通走する糸における糸張力の同時もしくは特に時間的に近い測定に基づいて、最適化された紡績開始パラメータの特に迅速な特定を許可し、生産運転に最高でも極めて僅かに影響を及ぼすにすぎない。接合パラメータの最適化により、ただし、特に均等かつ引裂きに強い接合箇所の製作が達成される。
【0014】
本発明による方法により、有利には、紡績開始パラメータとして、糸解放長さ、ロータ内での糸の滞留時間または糸引出速度を最適化する。ただし、さらに複数のパラメータを同時に最適化することも可能である。このことは例えば、最適化したい種々異なるパラメータと、測定から得られる値、状態もしくは結果とを考慮する数学的なアルゴリズムまたはその他のプログラム規則により行われることができる。
【0015】
接合箇所の最適化の可能な形態はその際本発明により、糸張力が存在するとき、糸引出速度を反復式に減じ、糸張力を後続の反復ステップ時に高めることにある。この種の最適化は、糸引出速度の低下と共に、接合箇所の強度がある特定の最大値まで上昇するという認識に基づいている。
【0016】
糸引出速度が最小値を下回ると、糸切れが発生する。糸引出速度の最小値は多数の要因、例えば気候要因、機械性質および製作したい糸のタイプもしくは使用される繊維材料のタイプに依存している。さて最小値をできるだけ正確に特定するために、糸引出速度は、糸切れが発生するまで反復式に減じられる。その後、複数の反復ステップのうちのある反復ステップ後に糸切れが確認されると、糸引出速度もしくはロータ内での糸端部の滞留時間を、予め決められた形式で変更することは有利である。予め決められた形式は例えば、糸切れの確認後、最後に使用された糸引出速度が、固定的なパーセンテージ、例えば10%または20%のパーセンテージの分だけ高められることができる。それにより、後続の生産経過で、発生するばらつきを考慮しても、最適な強度を有する接合箇所が形成され、同時に糸切れのリスクはほぼ解消されることが達成され得る。
【0017】
本発明の別の構成は、糸張力が存在しないとき、設定された糸解放長さを反復式に拡大することができる。糸端部が解放の実施後ロータ内面にまで達していないと、紡績開始試行は必然的に頓挫しなければならない。このエラーは、糸解放の実施後の糸張力の上昇が発生しないことを介して突き止められる。糸解放長さの段階的な拡大はその際所望の対策を提供する。
【0018】
付加的に、本発明の別の構成では、糸張力が最初存在し、糸引出速度への加速前に降下するとき、ロータ内での解放された糸端部の滞留時間を短縮することができる。糸端部がつまり過度に長くロータ内に、引き出されずに留まっていると、糸は総じて過度に強いねじりを受ける。このことはねじ切れに至る。糸端部のより早い引出はその際対策を提供する。
【0019】
本発明の別の有利な構成は、糸引出の開始後に糸張力が降下するとき、急激な降下と連続的な降下との間で区別することにある。つまり、糸張力の両種の降下がそれぞれ異なるエラー原因に基づいていることが突き止められる。
【0020】
つまり、糸張力が急激に降下するとき、糸のねじ切れに抗する手段を導入すると有利である。糸引出速度を高めることまたは糸引出の開始の時点を前にずらすことは、2つの可能な手段である。
【0021】
これに対して糸張力がゆっくりと降下するとき、糸の細化(Auslaufen)に抗する手段を導入すると有利である。糸のゆっくりとした細化は例えば、開繊ローラへのスライバもしくは繊維の過度に少ない搬送または過度に高い糸引出速度に起因し得る。それに応じて、エラー除去のための所属の手段は糸引出速度の低下またはロータ内への繊維供給の増加にある。
【0022】
糸張力の測定は有利には、糸張力を糸引出装置の変向力および/またはパワー消費量、特にここでは電流消費量を介して測定することにより実施される。この種の測定は簡単に実現されることができ、特に正確である。特に、電流消費量、例えば糸引出装置の駆動モータの電流消費量の測定は、特に簡単な形式で行われることができ、この機械において簡単に実現可能である。
【0023】
特に合理的な作業は、パラメータ最適化を繊維機械のある作業箇所で実施し、その結果を別の作業箇所、特に同種の作業箇所に反映すると達成される。それにより、例えば部分交換時、パラメータ最適化は唯一の作業箇所でのみ執り行われることができる。その際に特定された紡績開始パラメータは、引き続き、メンテナンス装置または繊維機械により残りすべての作業箇所に反映され得る。それにより、メンテナンス装置の効率は実質的に不変である。第1の紡績箇所でのみ、若干長い中断がパラメータ最適化の実施の目的で必要である。
【0024】
本発明を明らかにするために以下に有利な実施例について添付の図面を参照しながら詳説する。
図1:メンテナンス装置を備えた本発明による繊維機械の概略側面図である。
図2:第1のエラー状態の電流消費量および糸引出速度の時間的経過を示す図である。
図3:第2のエラー状態の電流消費量および糸引出速度の時間的経過を示す図である。
図4:第3のエラー状態の電流消費量および糸引出速度の時間的経過を示す図である。
図5:第4のエラー状態の電流消費量および糸引出速度の時間的経過を示す図である。
【0025】
図1は本発明による繊維機械1の概略側面図である。繊維機械1は本例ではオープンエンド紡績機械である。繊維機械1でスライバ2が糸3に加工される。スライバ2はそのためにポット4内に準備される。ポット4は選択的にポット供給装置5を介して自動的に繊維機械1に準備されるか、または択一的には手動的に繊維機械1に準備される。スライバ2は供給ローラ6により後続の開繊ローラ7に供給される。そこから、個別化された繊維は、負圧流により駆動されロータ8の内室内に到達する。そこで繊維はロータ8の高速回転により糸3の糸端部につむぎ合わされるもしくは紡績開始される。紡績運転のために必要な負圧は負圧装置9により形成される。こうして紡績された糸3は糸引出駆動装置10によりロータ内室から引き出され、続いてパッケージ11へと案内され、そこで巻き取られる。パッケージ11の駆動は通常運転時巻取ローラ12を介して実施される。ここで説明する、メンテナンス作業を図示の作業箇所で実施する状態で、パッケージ11はただしメンテナンス装置14の補助駆動ローラ13により駆動される。メンテナンス装置14は制御装置15を有している。制御装置15はとりわけ線路16を介して補助駆動ローラ13、糸引出駆動装置10および糸張力測定装置17に接続されている。
【0026】
糸張力測定装置17はここでは機械的な測定構造と協働する。通走する糸3はその際2つの外側の変向装置19を介して案内され、1つの内側の変向装置18によりその通常の糸経路から変位される。その際、糸3は、糸張力の上昇と共に、戻し力を内側の変向装置18に矢印20の方向で及ぼす。矢印20の方向で及ぼされる力は公知の力測定装置により求められる。このために、内側の変向装置18が、ここでは円筒形に形成された軸の形状を有する機械的な撓み腕(Biegearm)であるとき、例えばストレンゲージが使用され得る。ただし別の測定装置、例えばロードセルまたはこれに類するものが、ここで、戻し力の測定のために使用されてもよい。
【0027】
択一的には、制御装置15が、糸引出のために必要な力もしくはパワーを、糸引出駆動装置10のパワー消費量を介して測定する場合、糸張力測定装置17は省略されてもよい。このことは例えば、電気的に駆動される糸引出駆動装置10の電流消費量の求めを介して行われ得る。
【0028】
本発明による方法のさらなる構成のために、メンテナンス装置14は、制御装置内に配置されている記憶装置を装備している。この記憶装置内には、本発明による方法が機械可読のプログラムの形で格納されており、相応の条件の存在時に呼び出され、実行される。添付図面を参照しながら、繊維機械での実施に特定されている本発明による方法について詳説する。
【0029】
図2は、糸引出のために使用される電気的な駆動装置の糸引出速度および電流消費量の時間的経過を示すグラフである。グラフの横軸には時間tが取られており、縦軸には糸引出速度Vと、駆動装置により受容もしくは消費される電流Iとが取られている。本発明の理解にとって、紡績開始工程の、時間的に限られた区分が重要であるにすぎない。この理由から、その他の時点での電流経過もしくは糸引出速度の表示は省略した。このことはグラフ中とりわけ、平行線で相応に示した切断箇所における時間軸の切断により明らかである。本発明の図示の実施形態では、本発明による方法が時点tで開始する。時点tで、紡績開始装置内に既に保持された糸が解放される。それに応じて時点tは糸解放の時点を表している。紡績開始装置として、例えばオープンエンド紡績機械のメンテナンス装置が役立つことができる。そこに予め保持された糸は時点tで解放され、機械内に支配する負圧により紡績ロータの方向で吸引される。時点tH0で、解放された糸端部がロータに到達する。糸端部はロータと接触し、回転し、その滑動壁に沿って繊維集合溝の方向で滑動する。そこで糸端部は、同時に供給される繊維と共に紡糸される。ロータへの到達と共に、引張力が糸端部に及ぼされる。ロータ内への糸の引込を回避するために、使用される糸引出駆動装置はしたがって相応の抗力を及ぼさねばならない。このことは例えばサーボモータを介して実施され得る。この拘束力を及ぼすために、糸引出駆動装置は保持電流Iを必要とする。糸端部がところである所定の時間ロータ内に留まると、糸端部はいつか過度に多くの撚りを受けることになる。このことは、紡績開始された糸が時点tでねじ切れにより切断されることに至る。糸駆動装置はその後、ねじ切られた糸端部の保持のために、もはや力を使用する必要はない。このことは電流消費量のゼロへの低下に読み取られる。本発明による方法により、電流消費量の現在値経過が、予測され得る目標値経過から、時点t後にずれることが確認される。すなわち、もし糸切れが発生しなければ、電流消費量は、ロータからの糸引出の開始を告げる時点tまで保持電流の値Iに留まる。電流消費量の早期的な低下はそれにより糸のねじ切れを示している。それに基づき修正プロセスが導入される。本実施形態では、破線の矢印により示した修正プロセスが時点tと時点tとの間で開始する。択一的には、修正プロセスがただしより遅い時点、例えばtまたはtの後に開始してもよい。このことはその際ただし不要な時間損失につながる。
【0030】
グラフの以後の経過には、上記タイプのエラーを伴った接合工程時に生じるであろう電流消費量および糸引出速度の経過が示されている。時点tで紡績開始装置が糸引出を開始する。糸引出速度Vはグラフ中実線で示されている。糸引出速度はゼロで始まり、第1の期間中第1の加速度で上昇し、時点tから第2のより大きな加速度で上昇する。第2の加速は糸引出速度が最終的な搬送速度に上昇するまで行われる。最終的な搬送速度への到達は時点tである。
【0031】
この状態では糸が切断されているので、時点tでの電流消費量は無負荷電流Iの高さまでしか上昇しない。続いて電流消費量はほぼ直線的に糸引出速度と共に上昇する。従来公知の紡績開始装置では、糸切れが、より下流の糸経路に配置された糸検出器により初めて認識可能であるのに対し、本発明による方法により、エラーの存在は既に時点tで認識され得る。時点tの前で電流消費量がゼロに低下することは、すなわち糸切れを既に遙かに早期に示している。さらに、糸切れが遙かに早期に特定されるだけでなく、その原因もより正確に特定され得る。上記のエラー形態時、つまり、発生したエラーの理由が、時点tでの糸引出の遅すぎる開始にあることは明らかに認識可能である。そこで時点tを糸切れの時点tの前にずらすか、または少なくとも時点tと同時になるようにずらせば、ねじ切れによる糸切れは確実に回避される。時点tの前方移動は例えば、固定的に設定されたステップで反復式に実施されるか、または時点tでの電流降下と時点tとの間の時間を測定し、この差値の分だけ相応に前にずらすことにより実施され得る。時点tが前方移動される時間を例えばなお10%または20%の分だけ延長する追加措置が予め設定されてもよい。その結果、確実に糸引出が時点tの前に十分な間隔を置いて実施される。反復法の使用時には例えば、接合工程の成功後、例えば1つまたは2つの付加的なステップの分だけの時点tをなお付加的に前方移動することが行われるように設定され得る。
【0032】
図3は、本発明による方法の別の可能な実施形態を示している。やはりここでも時点tで糸解放が紡績開始装置により実施される。ここではただし、後続の時間中、電流消費量も電流消費量の上昇も記録されない。特に、解放された糸の保持期間の予測され得る開始を示す時点tH0の後に、全く糸引出駆動装置によるパワー消費量が確認できない。このことから今度は、糸端部がロータもしくはその内面に到達していないことが推測され得る。それというのも、さもなければ相応の引張力が発生するはずだからである。そのような引張力自体は再び糸引出駆動装置のパワー消費量を惹起するはずである。さて相応の時間が時点tH0後に経過し、それでもなおパワー消費量が提示されなければ、確実に、解放された糸の選択された糸解放長さが短すぎるという点に回帰し得る。所望のプロセス確実性に応じて、時点tH0後の待ち時間はより大きくまたはより小さく選択され得る。本発明による方法において有利には、過度に短く解放された糸がなお時点tの到達前に認識される。修正プロセスを示す下側の逆向きの矢印に応じて、接合装置は、糸解放の時点tの前に位置する時点から改めて紡績開始工程を開始し得る。このことはその際修正された糸解放長さでもって行われる。このことは本事例では延長された糸解放長さに相当する。既に上述した通り、ここでも、設定された反復的なステップでの修正が実施されてもよい。択一的にはただし、例えば、固定的に設定されたパーセント値や、修正された糸解放長さを特定するための別の計算アルゴリズムが使用されてもよい。図3に示した方法はそれによりエラーの存在、さらにはエラーのタイプの迅速な特定を許可する。それにより、糸引出駆動装置が、紡績開始されていない糸を伴って、時点t以後に示す曲線を無意味に辿らねばならないことは回避される。
【0033】
図4は、本発明の別の有利な実施形態を示している。この実施形態では、時点tでの糸解放後、糸端部が時点tH0でロータ内室内で、紡績開始したい繊維と接触している。この時点で、糸引出駆動装置の電流消費量は保持電流Iに上昇する。ロータ内での糸端部の短い滞留時間後、糸引出駆動装置は糸引出を開始する。このために必要なより高いパワーは時点tからの電流消費量の上昇に反映する。同時に、糸引出速度Vは値ゼロからの上昇を開始する。本実施形態では、糸引出駆動装置の電流が糸引出速度Vに対して比例的に上昇する点から出発される。実際の使用では、ここではただし、使用される駆動装置のタイプに応じて偏差が生じ得る。本発明にとって重要なことはただし、生産される糸の状態に対する、発生する力もしくはパワー消費量の原則的な依存性にある。時点tでその後糸切れが発生する。この糸切れは電流消費量の急激な降下により認識可能である。受容される電流はその際値Iに降下する。値Iは糸引出駆動装置の無負荷電流に相当する。糸引出駆動装置は、自らの運動のために必要な電流を受容するだけでよい。それというのも、引き出したい糸が抵抗をもはや提供しないからである。電流消費量の急激な降下後、やはり、発生したエラーを除去するために、矢印で示した修正プロセスが誘発される。この修正プロセスは程度の差こそあれ迅速に、電流消費量の急激な降下後に開始し得る。既に先行の図面に示した通り、ここでも、紡績開始法の再スタートが、糸解放の時点tの前に位置する点で改めて開始する。糸切れが急激な電流降下を伴ったという事実から、ここでは、糸が過度に多くのねじれにより切断されていることが推測され得る。そのようなねじ切れは、後続の紡績開始試行時、より高い糸引出速度により回避され得る。それに応じて修正プロセスで、次回の接合工程時に相応により高い糸引出速度が調節される。
【0034】
図5には最終的に、糸解放の実施後時点tで糸が解放される別の実施形態が示されている。時点tH0から、糸は、上で図4に示した通りロータに接触し、そこで短期間保持される。時点tから、ここでも、糸引出の開始が実施される。糸引出速度Vはその際値ゼロから出発して連続的に上昇する。このことはところで、糸引出駆動装置により受容される電流Iにも当てはまる。時点tから、発生したエラーは、徐々に始まる糸切れを開始する。この徐々に始まる糸切れは、糸引出駆動装置の電流消費量が徐々に低下することにより表出する。時点tでの電流消費量が、エラーなしの運転の電流消費量となおほぼ同じであるのに対し、時点t、すなわち糸引出速度が著しく高められた時点での電流消費量は、エラーなしの経過に対して既に明らかに減少している。電流消費量は続いてその後徐々に無負荷電流Iまで降下する。そのようなエラーは、例えばロータ内に供給される繊維が少なすぎる場合に発生する。別の可能なエラー原因は、糸引出速度が高すぎることである。それに応じて、繊維供給の増加もしくは糸引出速度の減少による修正が行われ得る。相応の修正プロセスは時点tでの糸切れの発生後開始し、上述の通り再び糸解放tの前の時点で改めて接合工程を開始し得る。ここでも希望次第で、糸切れが認識されずに、電流消費量が、設定された電流消費量から偏差してもよい公差が設定され得る。その際に言えることは、公差が大きければ大きいほど、糸切れはより確実に、ただしより遅れて特定されることである。
【0035】
本発明の枠内で、多数の変更可能性が提供されている。つまり、上記エラータイプの他に、別のエラータイプがパワー消費量をもとに認識され、場合によっては修正プロセスにより引き続き除去されてもよい。パワー消費量の可能性の他に、ただし、糸の変向のために必要な力をもとに糸張力を測定する可能性も存在する。さらに、エラー修正のための前記方法は排他的なものではない。むしろ、多数の別のパラメータおよび設定、例えばロータ回転数が、やはりパラメータ最適化の枠内で変更され得る。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】メンテナンス装置を備えた本発明による繊維機械の概略側面図である。
【図2】第1のエラー状態の電流消費量および糸引出速度の時間的経過を示す図である。
【図3】第2のエラー状態の電流消費量および糸引出速度の時間的経過を示す図である。
【図4】第3のエラー状態の電流消費量および糸引出速度の時間的経過を示す図である。
【図5】第4のエラー状態の電流消費量および糸引出速度の時間的経過を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維機械、特にオープンエンド紡績機械であって、単数または複数の走行可能なメンテナンス装置(14)が設けられており、該メンテナンス装置(14)が、糸(3)を新たに紡績開始するか、または糸切れ後に紡績開始するための手段を有しており、さらに、繊維機械を制御するための制御装置(15)を装備している形式のものにおいて、繊維機械により搬送され連続的に通走する糸(3)の糸張力および/または糸切れ張力を測定するための測定装置(17)が設けられており、該測定装置(17)が全体的にまたは部分的に繊維機械、メンテナンス装置(14)またはその両者に配置されていることを特徴とする繊維機械。
【請求項2】
測定装置(17)が案内/変向装置(18,19)と、糸(3)の変向のために加えなければならない力を測定するための測定手段とを有しており、さらに、測定される力から生じる糸張力を算出するための計算手段が設けられている、請求項1記載の繊維機械。
【請求項3】
測定装置が、繊維機械に設けられた糸引出装置(10)のパワー消費量を測定するための測定手段を有している、請求項1または2記載の繊維機械。
【請求項4】
繊維機械に設けられた糸引出装置(10)が電気的に運転されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の繊維機械。
【請求項5】
測定装置(17)が繊維機械および/またはメンテナンス装置(14)の制御装置(15)に接続されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の繊維機械。
【請求項6】
制御装置(14)内に、予め決められた状態の特定および評価のために、規則が機械可読の形で呼出可能に格納されている、請求項1から5までのいずれか1項記載の繊維機械。
【請求項7】
制御装置(14)内に、規則が、パラメータ最適化法の自動的な実施のために機械可読の形で呼出可能に格納されている、請求項1から6までのいずれか1項記載の繊維機械。
【請求項8】
繊維機械、特にオープンエンド紡績機械のためのメンテナンス装置(14)であって、該メンテナンス装置(14)が繊維機械に沿って走行可能であり、糸(3)を新たに紡績開始するか、または糸切れ後に紡績開始するための手段を有している形式のものにおいて、メンテナンス装置(14)が、請求項1から7までのいずれか1項記載の、糸張力および/または糸切れ張力を測定するための測定装置(17)を装備していることを特徴とするメンテナンス装置。
【請求項9】
繊維機械の作業箇所、特にオープンエンド紡績機械で紡績開始する方法において、糸張力を直接、搬送される糸において測定し、その結果に応じて、紡績開始パラメータの最適化を執り行うことを特徴とする、紡績開始する方法。
【請求項10】
紡績開始パラメータとして、糸解放長さ、ロータ内での糸の滞留時間または糸引出速度を最適化する、請求項9記載の方法。
【請求項11】
糸張力が存在するとき、糸引出速度を反復式に減じ、糸張力を後続の反復ステップ時に高める、請求項9または10記載の方法。
【請求項12】
複数の反復ステップのうちのある反復ステップ後に糸切れが確認されると、糸引出速度もしくはロータ内での糸端部の滞留時間を、予め決められた形式で変更する、請求項9から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
糸張力が存在しないとき、設定された糸解放長さを反復式に拡大する、請求項9から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
糸張力が最初存在し、糸引出速度への加速前に降下するとき、ロータ内での解放された糸端部の滞留時間を短縮する、請求項9から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
糸引出の開始後に糸張力が降下するとき、急激な降下と連続的な降下との間で区別する、請求項9から14までのいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
糸張力が急激に降下するとき、糸のねじ切れに抗する手段を導入する、請求項9から15までのいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
糸張力がゆっくりと降下するとき、糸の細化に抗する手段を導入する、請求項9から16までのいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
糸張力を糸引出装置の変向力および/またはパワー消費量、特にここでは電流消費量を介して測定する、請求項9から17までのいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
パラメータ最適化を繊維機械のある作業箇所で実施し、その結果を別の作業箇所、特に同種の作業箇所に反映する、請求項9から18までのいずれか1項記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−510080(P2008−510080A)
【公表日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−526159(P2007−526159)
【出願日】平成17年7月22日(2005.7.22)
【国際出願番号】PCT/CH2005/000434
【国際公開番号】WO2006/017950
【国際公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(590005597)マシーネンファブリク リーター アクチェンゲゼルシャフト (93)
【氏名又は名称原語表記】Maschinenfabrik Rieter AG
【住所又は居所原語表記】Klosterstrasse 20,CH−8406 Winterthur,Switzerland
【Fターム(参考)】