説明

繊維被覆用塗布液およびそれを用いたゴム補強用繊維

【課題】EPDMゴムと繊維コードとを強固に接着させ、熱劣化による接着強度の低下することのないように、繊維コードに被覆層を設ける繊維被覆用塗布液を提供することに加え、被覆層を設けたゴム補強用繊維を柔軟とし耐屈曲性を増すことを目的とする。
【解決手段】繊維コードに塗布し乾燥硬化させて繊維コードにエチレン−α−オレフィン−ジエン三元共重合体(EPDMゴム)と接着するための被覆層を設ける繊維被覆用塗布液であって、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の水溶液とエチレン−グリシジルメタクリレート共重合体の水分散物とスチレン−ブタジエン共重合体の水分散物とを混合したことを特徴とする繊維被覆用塗布液。クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の水溶液の調製にアルコール化合物またはアミン化合物を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレン−α−オレフィン−ジエン三元共重合体からなるゴム組成物(以下、EPDMゴムと略する)の補強に用いる繊維コードに塗布被覆するための繊維被覆用塗布液およびそれを用いたゴム補強用繊維に関する。
【0002】
特に、伝動ベルトを作製する際にベルトの芯線として、母材ゴムとしてのEPDMゴムに補強のためにガラス繊維コードを埋設する際に、ガラス繊維コードとEPDMゴムを接着するための被覆層形成のために繊維コードに塗布被覆する繊維被覆用塗布液、および該繊維被覆用塗布液をガラス繊維コードに塗布してなるゴム補強用繊維に関する。
【背景技術】
【0003】
EPDMゴムは、耐熱性、耐候性、耐オゾン性に優れ、耐熱ベルト、耐熱ホース等に広く使用されている。また、EPDMゴムは、単にゴムとしてだけでなく、強度向上のために繊維材料との複合体として使用されることが多い。このような複合体として、EPDMゴムを主構成部材、いわゆる母材ゴムとし、その中に繊維材料を埋め込んだ伝動ベルト、コンベヤベルト等のベルト、タイヤ、ゴムホース、ダイヤフラム等が挙げられる。
【0004】
EPDMゴムに繊維材料をそのまま埋め込むとEPDMゴムと繊維材料との接着強度が弱いので、EPDMゴムと繊維材料との界面が剥離しないように種々の界面処理が行われてきた。例えば、繊維材料とEPDMゴムとの界面処理方法としては、硫黄加硫系ゴムを繊維材料に被覆した後にEPDMゴムに埋め込む方法が用いられてきた。
【0005】
特許文献1には、レゾルシンとホルムアルデヒドの初期縮合物とクロロスルホン化ポリエチレン、クロロスルホン化ポリプロピレン、クロロスルホン化エチレン−酢酸ビニル共重合体、クロロスルホン化エチレン−プロピレンジエン共重合体、クロロスルホン化エチレン−プロピレン共重合体、および、クロロスルホン化イソブチレン−イソプレン共重合体から選ばれる1種以上のポリマーとを含有するディップ液で処理した繊維材料を使用する方法が開示されている。
【0006】
特許文献1に記載の方法に比較して、より高度な接着力を得るために、有機過酸化物により架橋されたEPDMゴムを用いた以下のような方法が提案されている。
【0007】
例えば、特許文献2には、ジアルキルパーオキサイドおよびジ(メタ)アクリレート類を配合したEPDMゴムと、レゾルシン−ホルムアルデヒド初期縮合物とポリクロロプレンラテックスとを含有するディップ液で処理した繊維材料とを加硫接着する方法が開示されている。
【0008】
特許文献3には、繊維材料が、レゾルシン−ホルムアルデヒド初期縮合物、クロロスルホン化エチレンラテックスおよび亜鉛華を一定の組成で含有するディップ液で処理され、ゴムが、EPDMゴムを含むエチレン−プロピレン系ゴムからなる複合体であるものが開示されている。
【0009】
特許文献4には、レゾルシン−ホルムアルデヒド初期縮合物とクロロスルホン化ポリエチレンラテックス又はポリクロロプレンラテックスとからなるディップ液で繊維材料を処理し、EPDMゴムにハロゲン含有ゴムを配合し、加硫接着する方法が開示されている。
【0010】
特許文献5には、繊維材料をレゾルシン−ホルムアルデヒド初期縮合物とラテックスとを含有するディップ液で処理した後、ハロゲン化フェノール化合物とレゾルシン−ホルムアルデヒド初期縮合物とスチレン−ブタジエンゴムラテックスおよび/又はスチレン−ブタジエン−ビニルピリジンラテックスとを、固形分比で3:7〜7:3の割合で含有するディップ液で処理し、その後、ハロゲン化ゴム含有EPDMゴムと加硫接着させる方法が開示されている。
【0011】
特許文献6には、EPDMゴムと繊維材料とを強固に接着させることができ、かつ、熱老化により接着力が低下することがない優れたゴム組成物と繊維材料との接着処理方法として、エチレン−プロピレン−非共役ジエン三元共重合体からなるゴム組成物と繊維材料とを接着処理するにあたり、前記繊維材料を、レゾルシン−ホルマリン−ラテックス系処理剤に浸漬した後、乾燥熱処理し、その後、前記ゴム組成物と加硫接着する接着処理方法であり、レゾルシン−ホルマリン−ラテックス系処理剤中のラテックス成分がエチレン−(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の水分散物であるゴム組成物と繊維材料との接着処理方法が開示されている。エチレン−(メタ)アクリル酸エステル系共重合体としてエチレン−グリシジルメタクリレートが挙げられる。
【0012】
しかしながら、例えば、EPDMゴムにゴム補強用ガラス繊維を埋設させて伝動ベルトを作製する場合において、ガラス繊維コードを特許文献6に記載の被覆処理をしたゴム補強用ガラス繊維は柔軟性がないという問題があった。
【特許文献1】特開昭57−105476号公報
【特許文献2】特公昭63−10732号公報
【特許文献3】特開昭62−131035号公報
【特許文献4】特公平5−86968号公報
【特許文献5】特開平2−167346号公報
【特許文献6】特開2001−40105公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、EPDMゴムと繊維コードとを強固に接着して経時劣化、特に高温下での使用における経時劣化により接着強度が低下するという問題を解決するために繊維コードに設ける被覆層を得るための繊維被覆用塗布液を提供することを目的とする。
【0014】
さらに、本発明は、前述したゴム補強用ガラス繊維の柔軟性の問題を解決し、繊維コードに前記繊維被覆用塗布液を塗布し硬化させた被覆層を設けてなるゴム補強用繊維に柔軟性を与え、耐屈曲性を増すことを目的とする。
【0015】
従来のレゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物の水溶液とエチレン−グリシジルメタクリレート共重合体の水分散物を混合して調製した繊維被覆用塗布液を塗布被覆してなるゴム補強用繊維があったが、本発明のクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の水溶液とエチレン−グリシジルメタクリレート共重合体の水分散物を混合して調製した繊維被覆用塗布液は新規なものである。
【0016】
また、レゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物の水溶液とエチレン−グリシジルメタクリレート共重合体の水分散物とを混合して調製した繊維被覆用塗布液に比較して、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物はレゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物と異なり、水に溶解し難く、溶解したとしてもエチレン−グリシジルメタクリレート共重合体の水分散物と混合すると析出するという問題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の繊維被覆用塗布液は、繊維コードに塗布し乾燥硬化させて、繊維コードにEPDMゴムを接着するための被覆層を設けるための繊維被覆用塗布液であって、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の水溶液とエチレン−グリシジルメタクリレート共重合体の水分散物を混合して調製したものであり、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物とエチレン−グリシジルメタクリレート共重合体とを含有してなる。
【0018】
また、本発明の繊維被覆用塗布液は、繊維コードに塗布し乾燥硬化させて、繊維コードにEPDMゴムを接着するための被覆層を設けるための繊維被覆用塗布液であって、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の水溶液とエチレン−グリシジルメタクリレート共重合体の水分散物に加えて、スチレン−ブタジエン共重合体の水分散物を混合して調製したものである。
【0019】
従来のレゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物の水溶液とエチレン−グリシジルメタクリレート共重合体の水分散物を混合して調製した繊維被覆用塗布液を塗布被覆してなるゴム補強用繊維に比較して、本発明の繊維被覆用塗布液は、ガラス繊維コードに塗布被覆しゴム補強用繊維としEPDMゴムに接着した際に、加熱により接着強度が低下することなく優れた耐熱性を与える。
【0020】
即ち、本発明は、繊維コードに塗布し乾燥硬化させて、繊維コードにEPDMゴムを接着するための被覆層を設けるための繊維被覆用塗布液であって、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物とエチレン−グリシジルメタクリレート共重合体とを含有してなることを特徴とする繊維被覆用塗布液である。
【0021】
本発明の繊維被覆用塗布液において、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物とエチレン−グリシジルメタクリレート共重合体に、スチレン−ブタジエン共重合体を加えることで、繊維コードに繊維被覆用塗布液を塗布し硬化させた被覆層を設けてなるゴム補強用繊維に柔軟性を与え、耐屈曲性を増す効果があり、特に、ガラス繊維コードに繊維被覆用塗布液を塗布し硬化させた被覆層を設けてなるゴム補強用ガラス繊維に対して、柔軟性を与えて耐屈曲性を増す効果に優れる。
【0022】
さらに、本発明は、繊維コードに塗布し乾燥硬化させて、繊維コードにEPDMゴムを接着するための被覆層を設けるための繊維被覆用塗布液であって、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物とエチレン−グリシジルメタクリレート共重合体とスチレン−ブタジエン共重合体を含有してなることを特徴とする繊維被覆用塗布液である。
【0023】
また、本発明は、繊維コードがガラス繊維コードであることを特徴とする上記の繊維被覆用塗布液である。
【0024】
また、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物を溶解し、加えてエチレン−グリシジルメタクリレート共重合体の水分散物と混合後も析出することなきよう水に安定に溶解させるためには、クロロフェノールとホルムアルデヒドを水中で縮合反応させて得られたクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿を、アルコール化合物を加えて溶解させ水溶液とした後、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体の水分散物を加え、混合すればよいことがわかった。その際に、アルコール化合物を加える量は、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の重量を100%基準とする重量百分率で表して、50重量%以上、500重量%以下である。
【0025】
さらに、本発明は、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物が、クロロフェノールとホルムアルデヒドを水中で縮合反応させて得られたクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿にアルコール化合物を加え溶解させ水溶液としたものであることを特徴とする上記の繊維被覆用塗布液である。
【0026】
さらに、本発明は、アルコール化合物を加える量が、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の重量を100%基準とする重量百分率で表して、50重量%以上、500重量%以下であることを特徴とする上記の繊維被覆用塗布液である。
【0027】
さらに、本発明は、アルコール化合物が、n−プロパノール、イソプロパノール、プロピレングリコール、2−メトキシエタノール、2−メトキシメチルエトキシプロパノール、1−メトキシ−2−プロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−ジエトキシエタンから選ばれることを特徴とする上記の繊維被覆用塗布液である。
【0028】
また、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物を溶解し、加えてエチレン−グリシジルメタクリレート共重合体の水分散物と混合後も析出することなきよう水に安定に溶解させるためには、クロロフェノールとホルムアルデヒドを水中で縮合反応させて得られたクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿を、水溶液中での塩基性度定数(Kb)が5×10−5以上、1×10−3以下であるアミン化合物を加えて溶解させた後、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体の水分散物に混合すればよいことがわかった。その際に、アミン化合物を加える量は、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の重量に対して、50重量%以上、500重量%以下である。
【0029】
さらに、本発明は、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物が、クロロフェノールとホルムアルデヒドを水中で縮合反応させて得られたクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿にアミン化合物を加え溶解させた水溶液としたものであること特徴とする上記の繊維被覆用塗布液である。
【0030】
さらに、本発明は、アミン化合物の塩基性度定数(Kb)が5×10−5以上、1×10−3以下であることを特徴とする上記の繊維被覆用塗布液である。
【0031】
さらに、本発明は、アミン化合物を加える量が、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の重量を100%基準とする重量百分率で表して、50重量%以上、500重量%以下であることを特徴とする上記の繊維被覆用塗布液である。
【0032】
さらに、本発明は、アミン化合物が、メチルアミン、エチルアミン、t−ブチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、メタノ−ルアミン、ジメタノ−ルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノ−ルアミンから選ばれることを特徴とする上記の繊維被覆用塗布液である。
【0033】
また、本発明は、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体とスチレン−ブタジエン共重合体の好ましい重量比、スチレン−ブタジエン水分散物の好ましいガラス転移点を選択することにより、ガラス繊維コード自体に柔軟性を与え、耐屈曲性に優れるガラス繊維コードを与えるものである。
【0034】
さらに、本発明は、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体とスチレン−ブタジエン共重合体の重量比が、95:5〜70:30であることを特徴とする上記の繊維被覆用塗布液である。
【0035】
さらに、本発明は、スチレン−ブタジエン共重合体のガラス転移点が、−60℃以上、30℃以下であることを特徴とする上記の繊維被覆用塗布液である。
【0036】
また、本発明はクロロフェノールとホルムアルデヒドを水中で縮合反応させて得られたクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿にアルコール化合物を加え溶解させてクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の水溶液とした後にエチレン−グリシジルメタクリレート共重合体の水分散物と混合することを特徴とする繊維被覆用塗布液の製造方法である。
【0037】
さらに、本発明は、クロロフェノールとホルムアルデヒドを水中で縮合反応させて得られたクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿にアルコール化合物を加え溶解させてクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の水溶液とした後にエチレン−グリシジルメタクリレート共重合体の水分散物とスチレン−ブタジエン共重合体の水分散物を混合することを特徴とする上記の繊維被覆用塗布液の製造方法である。
【0038】
また、本発明は、クロロフェノールとホルムアルデヒドを水中で縮合反応させて得られたクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿にアミン化合物を加え溶解させてクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の水溶液とした後にエチレン−グリシジルメタクリレート共重合体の水分散物と混合することを特徴とする上記の繊維被覆用塗布液の製造方法である。
【0039】
さらに、本発明は、クロロフェノールとホルムアルデヒドを水中で縮合反応させて得られたクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿にアミン化合物を加え溶解させてクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の水溶液とした後にエチレン−グリシジルメタクリレート共重合体の水分散物とスチレン−ブタジエン共重合体の水分散物を混合することを特徴とする上記の繊維被覆用塗布液の製造方法である。
【0040】
さらに、本発明は、上記の繊維被覆用塗布液を繊維コードに塗布被覆させてなるゴム補強用繊維である。
【0041】
さらに、本発明は、EPDMゴムに上記のゴム補強用繊維を埋設させてなる伝動ベルトである。
【発明の効果】
【0042】
本発明において、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の水溶液がクロロフェノールとホルムアルデヒドを水中で縮合反応させて得られたクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿にアルコール化合物を加え溶解させクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の水溶液を得た後、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の水溶液とエチレン−グリシジルメタクリレート共重合体の水分散物とを混合したことで、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物液が析出することなく安定となり、繊維コードに塗布し乾燥硬化させてEPDMゴムと接着するための被覆層を設けるための本発明の繊維被覆用塗布液が得られた。
【0043】
また、本発明において、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の水溶液がクロロフェノールとホルムアルデヒドを水中で縮合反応させて得られたクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿にアミン化合物を加え溶解させクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の水溶液を得た後、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の水溶液とエチレン−グリシジルメタクリレート共重合体の水分散物とを混合したことで、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物液が析出することなく安定となり、繊維コードに塗布し乾燥硬化させてEPDMゴムと接着するための被覆層を設けるための本発明の繊維被覆用塗布液が得られた。
【0044】
本発明の繊維被覆用塗布液をガラス繊維コードに塗布被覆しゴム補強用ガラス繊維とすれば、EPDMゴムとガラス繊維コードとを強固に接着し、かつ、熱劣化の少ない優れた接着強度が得られた。
【0045】
さらに、ガラス繊維コードに本発明の繊維被覆用塗布液を塗布し硬化させた被覆層を設けてなるゴム補強用繊維は柔軟であり耐屈曲性が増した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
本発明は、EPDMの補強に用いる繊維コードに塗布被覆するための繊維被覆用塗布液およびそれを用いたゴム補強用繊維に関する。
【0047】
特に、伝動ベルトを作製する際にベルトの芯線として、母材ゴムとしてのEPDMゴムに補強のためにガラス繊維コードを埋設する際に、ガラス繊維コードとEPDMゴムを接着するための被覆層形成のために繊維コードに塗布被覆する繊維被覆用塗布液および該繊維被覆用塗布液をガラス繊維コードに塗布してなるゴム補強用繊維に関する。
【0048】
本発明の繊維被覆用塗布液の組成物について説明する。
【0049】
本発明の繊維被覆用塗布液の組成物であるクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物は、クロロフェノールとホルムアルデヒドとをクロロフェノール/ホルムアルデヒドのモル比が1/3〜3/1となるようにアルカリ性化合物の存在下に水中で縮合させてクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿とした後、アルコール化合物を加えて溶解させて、水溶液として調製したものが使用される。
【0050】
本発明の繊維被覆用塗布液は、この様にして得られたクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の水溶液と、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体の水分散物とを混合することによって調製した。または、この様にして得られたクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の水溶液に、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体の水分散物とスチレン−ブタジエン共重合体の水分散物とを加え混合することによって調製した。
【0051】
本発明の繊維被覆用塗布液は、クロロフェノールとホルムアルデヒドと水中で縮合反応させたクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿を、アルコール化合物を加え溶解させ水溶液とした後、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体の水分散物、あるいはエチレン−グリシジルメタクリレート共重合体の水分散物およびスチレン−ブタジエン共重合体の水分散物と混合させて調製する。
【0052】
本発明において、アルコール化合物とは炭化水素の水素原子をOH基で置換した化合物を指し、OH基を1個有するモノアルコール化合物、OH基を2個有するグリコール(ジオール)化合物、OH基を3個有するトリオール化合物が含まれる。
【0053】
即ち、クロロフェノールとホルムアルデヒドを水中で縮合反応させてなるクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿に、水溶性のモノアルコール化合物、グリコール化合物、トリオール化合物のうちの少なくとも1つの水溶性のアルコール化合物を加えて、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿を溶解させると、繊維被覆用塗布液を調製する際に、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の水溶液にエチレン−グリシジルメタクリレート共重合体の水分散物、あるいはエチレン−グリシジルメタクリレート共重合体の水分散物およびスチレン−ブタジエン共重合体の水分散物を加え混合したとしても、混合後にクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物が析出しないことがわかった。
【0054】
このように、水中で縮合反応させてなるクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿を溶解させるためには、水溶性のモノアルコール化合物、グリコール化合物、トリオール化合物のうちの少なくとも1つの水溶性のアルコール化合物を加える必要がある。
【0055】
クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿が水溶性のアルコール化合物を加えることで溶解し、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の水溶液が安定となり、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物が析出しなくなるのは、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物のOH基とアルコール化合物のOH基とが3次元的に強い水素結合を形成することによると思える。且つ、アルコール化合物は、双極子モーメントと誘電率の値が高いので分散力など遠距離相互作用が強く働き、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物を水溶液中で安定化させる効果、さらに、配位結合的(電荷移動的)相互作用エネルギーが大きいので、溶媒−溶質間だけでなく溶媒−溶媒間で会合を起こして強い溶媒和が生じ、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物が析出することなきように水溶液中で安定化させる効果があると思える。この安定化させる効果はOH基の個数が多いグリコール化合物、トリオール化合物の方がモノアルコール化合物より大きく、特にグリコール化合物が安定化させる効果に優れている。
【0056】
また、繊維被覆用塗布液に、沸点が50℃より低いアルコール化合物を用いるとアルコール化合物が揮発しやすく扱い難い。アルコール化合物が揮発するとクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)が析出する。繊維被覆用塗布液に、沸点が250℃より高いアルコール化合物を用いると、繊維被覆用塗布液をガラス繊維コードに塗布し被覆する際、被覆層よりアルコール化合物が揮発しにくい。被覆層よりアルコール化合物を除去しないと、ガラス繊維コードを耐熱ゴムに埋め込んで伝動ベルトとした際の、伝動ベルトの耐熱性、耐水性が低下する。よって、本発明の繊維被覆用塗布液に用いるアルコール化合物には、沸点、50℃以上、250℃以下の水溶性のモノアルコール化合物、グリコール化合物またはトリオール化合物から少なくとも1つの水溶性のアルコール化合物を選んで用いることが好ましい。
【0057】
このように、本発明の繊維被覆用塗布液において、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体の水分散物、スチレン−ブタジエン共重合体の水分散物と混合しても析出なきよう安定させるために、クロロフェノールをホルムアルデヒドと水中で縮合反応させて生成したクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿を擁する反応液にアルコール化合物を加えて、沈殿を溶解させてクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の水溶液を得た。詳しくは、クロロフェノールとホルムアルデヒドの混合水溶液に水酸化ナトリウムを縮合反応に必要な量のみを加え、余分に加えないで、30℃以上、95℃以下に加熱して、4時間以上、攪拌しつつ縮合反応させて得られたクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿が生成した反応液に、アルコール化合物を加え、次いで攪拌することによって該沈殿を溶解させて、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の水溶液を得た。
【0058】
アルコール化合物を加えることにより、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿を溶解させる際の、アルコール化合物の量は、クロロフェノールおよびホルムアルデヒドを合わせた重量に対して、50重量%以上、500重量%以下である。言い換えれば、加えるアルコール化合物の重量は、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の重量に対して、重量比で1/2以上、5以下である。
【0059】
アルコール化合物の量が50重量%より少ないと、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物を溶解させる効果がなく、500重量%より多く含有させる必要はない。アルコール化合物の量が500重量%より多くなると、繊維被覆用塗布液におけるクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物およびエチレン−グリシジルメタクリレート共重合体の水分散物および/またはスチレン−ブタジエン共重合体の水分散物の含有割合が低下し、繊維被覆用塗布液を繊維コードに塗布してなる補強用繊維が柔軟でなくなる。
【0060】
尚、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の重量は、クロロフェノールとホルムアルデヒドと水中で縮合反応させて生成したクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿を擁する反応液を加熱し蒸発させた残渣の重量より求められる。この際、未反応のクロロフェノールおよびホルムアルデヒドは揮発除去される。
【0061】
本発明において、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿を溶解させるために使用するアルコール化合物には、メタノール(CHOH)沸点65℃、エタノール(COH)沸点78℃、n−プロピルアルコール(CO)沸点97℃、イソプロピルアルコール(CO)沸点82℃、2−メトキシエタノール(エチレングリコールモノメチルエーテル:C)沸点124℃、プロピレングリコール(C)沸点188℃、2−メトキシメチルエトキシプロパノール(C16)沸点190℃、1−メトキシ−2−プロパノール(C10)沸点120℃、エチレングリコール(1,2−エタンジオール:C)沸点196℃、ジエチレングリコール(C10)沸点244℃、1,2−ジエトキシエタン(C14)沸点123℃、グリセリン(C)沸点171℃が挙げられ、好ましくは、n−プロピルアルコール(CO)、イソプロピルアルコール(CO)、2−メトキシエタノール(エチレングリコールモノメチルエーテル:C)、プロピレングリコール(C)、2−メトキシメチルエトキシプロパノール(C16)、1−メトキシ−2−プロパノール(C10)、エチレングリコール(1,2−エタンジオール:C)、ジエチレングリコール(C10)、1,2−ジエトキシエタン(C14)である。特に、2−メトキシエタノール、プロピレングリコールは、繊維被覆用塗布液を塗布後乾燥してガラス繊維コードに被覆層を形成する際に、気散し被覆層中に残らないこと、およびクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の水溶液を安定化させる効果も高いことから、本発明の繊維被覆用塗布液に用いるに特に好ましいアルコール化合物である。
【0062】
OH基2個のグリコール(ジオール)化合物の中には、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の沈殿を溶解させる目的で繊維被覆用塗布液に使用する際、塗布液の濃度調整のために水を添加するとゲル化物が形成されるものもあるが、必要領域における濃度調整において、2−メトキシエタノール、プロピレングリコールは、ともにその懸念はなく、加えて、火気に対して安全性があり、毒性も低く、沸点が低いことより作業者が吸引する懸念もなく、環境安全性に優れ、市販価格も安く、実用性が高く、本発明の繊維被覆用塗布液に用いるに、特に好ましいアルコール化合物である。
【0063】
OH基1個のモノアルコール化合物に含まれるメタノールおよびエタノール、およびOH基3個のトリオール化合物に含まれるグリセリンは、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿を溶解させる目的で繊維被覆用塗布液に使用した際、繊維被覆用塗布液が高濃度の状態では、ガラス繊維コードに塗布被覆することが可能である。しかしながら、塗布時に塗布液の濃度調整のために水を添加するとゲル化物が形成析出しやすくなり、濃度調整がし難く扱い難い。
【0064】
また、本発明の繊維被覆用塗布液の組成物であるクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物には、クロロフェノールとホルムアルデヒドとをクロロフェノール/ホルムアルデヒドのモル比が1/3〜3/1となるようにアルカリ性化合物の存在下に水中で縮合させてクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿とした後、アミン化合物を加えて溶解させて、水溶液として調製したものも使用される。
【0065】
本発明の繊維被覆用塗布液は、この様にして得られたクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の水溶液と、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体の水分散物とを混合することによって調製した。または、この様にして得られたクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の水溶液に、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体の水分散物とスチレン−ブタジエン共重合体の水分散物とを加え混合することによって調製した。
【0066】
本発明の繊維被覆用塗布液は、クロロフェノールとホルムアルデヒドと水中で縮合反応させたクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物に塩基性度定数(Kb)が5×10−5以上、1×10−3以下であるアミン化合物を加えた後、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体の水分散物、あるいはエチレン−グリシジルメタクリレート共重合体の水分散物およびスチレン−ブタジエン共重合体の水分散物と混合させて調製する。
【0067】
塩基性度定数(Kb)とは、アルカリ性化合物が水素イオンを溶液から受け入れる度合いを測定し、塩基性度として表したものであり、アミン化合物においては、数1の式の平衡定数である。
【0068】
【数1】

【0069】
通常、水に溶解し難いクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物を水に溶解させるには、クロロフェノールとホルムアルデヒドを水中で縮合反応させ生成したクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿を擁する反応液に、アンモニアまたは水酸化ナトリウム等のアルカリ性化合物を加え、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿を溶解させて、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の水溶液とする。
【0070】
しかしながら、アンモニアのように塩基性度定数(Kb)が小さいアルカリ性化合物を加えることで、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿を溶解させたとしても、得られたクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の水溶液から繊維被覆用塗布液を調製するために、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体の水分散物、スチレン−ブタジエン共重合体の水分散物と混合するとクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物が析出する。
【0071】
また、水酸化ナトリウムのように塩基性度定数(Kb)が大きいアルカリ性化合物を加えることで、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿を溶解させて、繊維被覆用塗布液とするためにエチレン−グリシジルメタクリレート共重合体の水分散物、スチレン−ブタジエン共重合体の水分散物と混合させると、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の析出が抑制される。しかしながら、強アルカリであるため、ガラス繊維やポリエステル繊維等からなる繊維コードを劣化させて、繊維コードの引っ張り強度を弱めてしまい使用され難い。
【0072】
ところが、クロロフェノールをホルムアルデヒドと水中で縮合反応させて、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿が生成した反応液に塩基性度定数(Kb)が5×10−5以上、1×10−3以下であるアミン化合物を加え沈殿を溶解させた後、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体の水分散物、スチレン−ブタジエン共重合体の水分散物と混合させると、混合後もクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の析出が起こり難く、繊維コードを劣化させず、引っ張り強度を弱めないことがわかった。
【0073】
このように、本発明の繊維被覆用塗布液において、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体の水分散物、スチレン−ブタジエン共重合体の水分散物と混合しても析出なきよう安定させるために、クロロフェノールをホルムアルデヒドと水中で縮合反応させて生成したクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿を擁する反応液にアミン化合物を加えて、沈殿を溶解させてクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の水溶液を得た。詳しくは、クロロフェノールとホルムアルデヒドの混合水溶液に水酸化ナトリウムを縮合反応に必要な量のみを加え、余分に加えないで、30℃以上、95℃以下に加熱して、4時間以上、攪拌しつつ縮合反応させて得られたクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿が生成した反応液に、アミン化合物を加え、次いで攪拌することによって該沈殿を溶解させて、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の水溶液を得た。
【0074】
この場合のアミン化合物の塩基性度定数(Kb)が5×10−5以上、1×10−3以下ある。
【0075】
加えるアミン化合物の塩基性度定数(Kb)が5×10−5より小さいと、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿が溶解せず溶解したとしても、得られたクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の水溶液から繊維被覆用塗布液を調製するために、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体の水分散物、スチレン−ブタジエン共重合体の水分散物と混合するとクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物が析出する。1×10−3より大きいと繊維被覆用塗布液として繊維コードに塗布被覆しEPDMゴムと接着した際の接着力が低下する。
【0076】
アミン化合物を加えることにより、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿を溶解させる際の、アミン化合物の量は、クロロフェノールおよびホルムアルデヒドを合わせた重量に対して、50重量%以上、500重量%以下である。言い換えれば、加えるアミン化合物の重量は、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の重量に対して、重量比で1/2以上、5以下である。
【0077】
アミン化合物の量が50重量%より少ないと、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物を溶解させる効果がなく、500重量%より多く含有させる必要はない。アミン化合物の量が500重量%より多くなると、繊維被覆用塗布液におけるクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物およびエチレン−グリシジルメタクリレート共重合体および/またはスチレン−ブタジエン共重合体の濃度が低下し、繊維被覆用塗布液を繊維コードに塗布してなる被覆層が薄くなり、補強用繊維が柔軟でなくなる。尚、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の重量は、クロロフェノールとホルムアルデヒドと水中で縮合反応させて生成したクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿を擁する反応液を加熱し蒸発させた残渣の重量より求められる。この際、未反応のクロロフェノールおよびホルムアルデヒドは揮発除去される。
【0078】
本発明の繊維被覆用塗布液に使用されるアミン化合物には、メチルアミン、エチルアミン、t−ブチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、メタノ−ルアミン、ジメタノ−ルアミン、ジエタノ−ルアミンが挙げられる。好ましくは、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジメタノ−ルアミン、ジエタノ−ルアミンである。
【0079】
更に、好ましくは、ジメチルアミン、ジエタノ−ルアミンである。ジメチルアミンは価格が安く、ジエタノールアミンはアミン特有のにおいがなく取り扱いが容易である。特に、ジエタノールアミンは、繊維被覆用塗布液を塗布後乾燥して繊維コードに被覆層を形成する際に、気散し被覆層中に残らないこと、およびアルコール化合物でもあり、フェノール類−ホルムアルデヒド縮合物の水溶液を安定化させる効果も高いことから、本発明の繊維被覆用塗布液に用いるに特に好ましい。
【0080】
これらアミン化合物(H)の塩基性度定数(Kb)は、有機化学(中)第3版(東京化学同人)および有機化学用語辞典(第2刷)朝倉書店、167頁〜175頁等に示されており、ジメチルアミンの塩基性度定数(Kb)は5.4×10−4、ジエタノールアミンの塩基性度定数(Kb)は1.0×10−4.5である。
【0081】
また、本発明の繊維被覆用塗布液において、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体とスチレン−ブタジエン共重合体の重量比、言い換えれば固形分比率は、95:5〜70:30である、スチレン−ブタジエン共重合体の比率が5よりも少なくなると、例えば、ガラス繊維コードに被覆した際、EPDMゴムと十分な接着性が得られなくなり、30より多くなると、EPDMゴムとガラス繊維コードの接着性は低下する。
【0082】
本発明の繊維被覆用塗布液に使用するスチレン−ブタジエン共重合体のガラス転移点は−60℃以上、30℃以下であり、スチレン−ブタジエン共重合体のガラス転移点が−60℃よりも低くなると繊維コードに繊維被覆用塗布液を塗布被覆してなるゴム補強用繊維に十分な強度が得られなく、30℃よりも高くなると十分な強度が得られるが、ゴム補強用繊維が硬くなり柔軟性に乏しい。本発明の繊維被覆用塗布液に使用するスチレン−ブタジエン共重合体としてはカルボキシ変性スチレン−ブタジエン共重合体が好適に用いられ、本発明の繊維被覆用塗布液をガラス繊維コードに塗布後、乾燥硬化させたゴム補強用ガラス繊維に柔軟性を与える。
【0083】
本発明の繊維被覆用塗布液を、繊維コードに塗布し乾燥硬化させて繊維コードにEPDMゴムと接着するための被覆層を設けゴム補強用繊維とする。本発明のゴム補強用繊維を接着するEPDMゴムは、例えば、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体であり、モノマー成分は、エチレンが50重量%以上、80重量%以下、プロピレンが20重量%以上、重量50%以下、ジエンが5重量%以上、30重量%以下である。ジエンとしては、例えば、エチリデンノルボルネン、1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエンが挙げられる。
【0084】
上記EPDMゴムに、通常ゴムに配合される補強剤、充填剤、オイル、老化防止剤、粘着付与剤、加工助剤、共架橋剤、架橋助剤等を適宜配合し架橋させた後、本発明のゴム補強用ガラス繊維を埋め込んで伝動ベルトを作製する。
【0085】
本発明の繊維被覆用塗布液は、ガラス繊維コードに塗布被覆しゴム補強用繊維とした際に、EPDMゴムとガラス繊維コードの接着性を向上させる顕著な効果を示す。
【0086】
その際のガラス繊維コードはガラス繊維フィラメントを撚りあわせたもので、径、0.1mm以上、1.5mm以下の範囲内のものが使用される。ガラス繊維コードの径が0.1mm未満では細すぎて、伝動ベルトを補強する効果がなく、1.5mmより大きいと太すぎて、伝動ベルトの補強材に必要な柔軟性に欠ける。
【0087】
本発明の繊維被覆用塗布液をガラス繊維コードに塗布後、乾燥硬化させると、ガラス繊維コードの柔軟性を低下させることなく、ガラス繊維コードに被覆層を設けたゴム補強用繊維が得られた。該ゴム補強用ガラス繊維を母材ゴムである上記EPDMゴムに埋設して伝動ベルトを作製する。作製される伝動ベルトとしては、Vリブドベルト、ローエッジベルト等が挙げられる。
【0088】
例えば、Vリブドベルトは、Vベルトと平ベルトの良い所を融合したベルトで、高速回転におけるエネルギーロスが少なく、高い伝動能力を備え、自動車のエンジンリーム内等で使用される。Vリブドベルトを製造する場合は、表面が平滑な円筒状の成形ドラムの周面に、ゴムコート帆布と接着ゴム層のための未加硫シートを巻き付けた後、この上にポリエステル製の心線をらせん状にスピニングし、次いでにその上に接着ゴム層のための未加硫シートを巻き付けた後、圧縮ゴム層のための未加硫シートを巻き付けて積層体とし、これを加硫缶中にて加熱加圧し、加硫して環状物を得、この環状物を駆動ロールと従動ロールとの間に掛け渡して、所定の張力の下で走行させながら研削ロールとの間に掛け渡し走行させながら所定の幅に裁断することによりVリブドベルトを得る。
【実施例】
【0089】
以下に本発明の実施例を示す。
【0090】
尚、以下の実施例および比較例における組成物の配合量は重量比であるが、溶剤以外のものについては、固形分に換算しての重量部である。
実施例1
(本発明の繊維被覆用塗布液の調製)
最初に、クロロフェノールーホルムアルデヒド縮合物の合成について示す。還流冷却器、温度計、攪拌機をつけた三つ口セパラブルフラスコに、クロロフェノール、138重量部、37.0重量%の濃度のホルムアルデヒド水溶液、87重量部(モル比で表せば、1.0)、1.0重量%の濃度の水酸化ナトリウム水溶液、20重量部を仕込み、80℃に加熱した状態で3時間攪拌し縮合反応させた。このようにして、クロロフェノールーホルムアルデヒド縮合物を生成させ、反応液中に沈殿物として得た。この反応液100重量部に対して、プロピレングリコールを添加して、クロロフェノールーホルムアルデヒド縮合物の沈殿物を溶解させて、クロロフェノールーホルムアルデヒド縮合物の水溶液を作製した。尚、1.0重量%濃度の水酸化ナトリウム水溶液の前記添加は、クロロフェノールとホルムアルデヒドを縮合反応させてクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物とするための縮合反応に必要な量以上には加えてはいない。尚、クロロフェノールには、P−クロロフェノールを用いた。尚、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の重量に対してプロピレングリコールの重量が、200重量%となるように溶解した。
【0091】
次いで、前述の手順で合成したクロロフェノールーホルムアルデヒド縮合物の水溶液を用い、エチレン−グリシジルメタクリレートの水分散物(住友精化株式会社製、商品名、セポルジョンG218)をクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物と固形分換算しての重量比で29:1となるように添加して均一に混合して、本発明の繊維被覆用塗布液を調製した。
【0092】
径9μmのガラス繊維フィラメントを200本集束したガラス繊維コード3本を引き揃えた後、前記の繊維被覆用塗布液を塗布し、その後、温度、280℃で、22秒間乾燥硬化させて被覆層を設け、径、0.3mmのゴム補強用繊維を得た。
【0093】
この時のガラス繊維コードの固形分付着率、即ち、被覆層の重量割合は、前記ゴム補強用繊維の全重量に対して19.0重量%であった。
【0094】
このようにして得られゴム補強用繊維について、EPDM、100重量部に対して、カーボン−ブラック、50重量部と、酸化亜鉛、5重量部と、ステアリン酸、1.0重量部と、硫黄、1.5重量部と、加硫促進剤、2.5重量部とを配合してなる架橋したEPDMゴムとの接着力の測定を行った。
実施例2
実施例1の繊維被覆用塗布液に対して、ガラス転移点が−53℃であるスチレン−ブタジエン共重合体であるカルボキシ変性スチレン−ブタジエン共重合体の水分散物(日本エイアンドエル株式会社製、商品名SR−113)を、固形分換算してエチレン−グリシジルメタクリレート:カルボキシ変性スチレン−ブタジエン共重合体=80:20の重量比に成るように添加した以外は全て実施例1と同様にして得られた繊維被覆用塗布液をガラス繊維コードに塗布後、乾燥硬化させて本発明のゴム補強用繊維を得た。
実施例3
(本発明の繊維被覆用塗布液の調製)
最初に、クロロフェノールーホルムアルデヒド縮合物の合成について示す。還流冷却器、温度計、攪拌機をつけた三つ口セパラブルフラスコに、クロロフェノール、138重量部、37.0重量%の濃度のホルムアルデヒド水溶液、87重量部(モル比で表せば、1.0)、1.0重量%の濃度の水酸化ナトリウム水溶液、20重量部を仕込み、80℃に加熱した状態で3時間攪拌し縮合反応させた。このようにして、クロロフェノールーホルムアルデヒド縮合物を生成させ、反応液中に沈殿物として得た。この反応液100重量部に対して、ジメチルアミンを添加して、クロロフェノールーホルムアルデヒド樹脂の沈殿物を溶解させて、クロロフェノールーホルムアルデヒド縮合物の水溶液を作製した。尚、1.0重量%濃度の水酸化ナトリウム水溶液の前記添加は、クロロフェノールとホルムアルデヒドを縮合反応させてクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物とするための縮合反応に必要な量以上には加えてはいない。尚、クロロフェノールには、P−クロロフェノールを用いた。尚、ジメチルアミンの塩基性度定数(Kb)は5.4×10−4である。尚、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の重量に対してジメチルアミンの重量が、200重量%となるように溶解した。
【0095】
次いで、前述の手順で合成したクロロフェノールーホルムアルデヒド縮合物の水溶液を用い、エチレン−グリシジルメタクリレートの水分散物(住友精化株式会社製、商品名、セポルジョンG218)をクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物と固形分換算しての重量比で29:1となるように添加して均一に混合して、本発明の繊維被覆用塗布液を調製した。
【0096】
径9μmのガラス繊維フィラメントを200本集束したガラス繊維コード3本を引き揃えた後、前記の繊維被覆用塗布液を塗布し、その後、温度、280℃で、22秒間乾燥硬化させて被覆層を設け、径、0.3mmのゴム補強用繊維を得た。
【0097】
この時のガラス繊維コードの固形分付着率、即ち、被覆層の重量割合は、前記ゴム補強用繊維の全重量に対して19.0重量%であった。
【0098】
このようにして得られゴム補強用繊維について、エチレン−α−オレフィン−ジエン三元共重合体(EPDM)100重量部に対して、カーボン−ブラック、50重量部と、酸化亜鉛、5重量部と、ステアリン酸、1.0重量部と、硫黄、1.5重量部と、加硫促進剤、2.5重量部とを配合してなる架橋したEPDMゴムとの接着力の測定を行った。
実施例4
実施例1の繊維被覆用塗布液に対して、ガラス転移点が−53℃であるスチレン−ブタジエン共重合体であるカルボキシ変性スチレン−ブタジエン共重合体の水分散物(日本エイアンドエル株式会社製、商品名SR−113)を、固形分換算してエチレン−グリシジルメタクリレート:カルボキシ変性スチレン−ブタジエン共重合体=80:20の重量比に成るように添加した以外は全て実施例1と同様にして得られた繊維被覆用塗布液をガラス繊維コードに塗布後、乾燥硬化させて本発明のゴム補強用繊維を得た。
比較例1
実施例1の繊維被覆用塗布液に対して、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物に替えてレゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物(レゾルシンとホルムアルデヒドとのモル比、1.0:1.0で反応させたもの、固形分、8.7重量%)を使用した以外は全て実施例1と同様にして得られた繊維被覆用塗布液をガラス繊維コードに塗布後、乾燥硬化させてゴム補強用繊維を得た。
(接着強度の測定)
試験片はEDPMゴムからなる厚み、3mm、幅、25mm、長さ、120mmである長尺状のゴムシートの上に、前記ゴム補強用繊維(実施例1〜2、比較例1)を長さ方向に並べ、その上から布をかぶせ、160℃に加熱後、196ニュートン/cm2(以後、
ニュートンをNと略す)の圧力で端部を除き押圧し、30分間加硫させて、剥離強さ測定のための試験片を作製した。この試験片においてゴムシートとゴム補強用繊維の端部を個別にクランプにて挟み、剥離速度を50mm/minとし、ゴムシートからゴム補強用繊維を剥離させる際の最大の抵抗値を測定し、剥離強さとした。剥離強さが大きいほど接着強度に優れる。
【0099】
また、各試験片を150℃、100時間過熱後の剥離強さを測定し、初期の剥離強さとの比較から接着強度の耐熱性の指標とした。剥離強さの低下のないことが好ましい。
【0100】
表1が各ゴム補強用繊維の作製後のEPDMゴムに対する剥離強さの測定結果であり、表2が各試験片を150℃に100時間加熱後のゴム補強用繊維のEPDMゴムに対する接着性の測定結果である。
【0101】
【表1】

【0102】
【表2】

【0103】
表1に示すように、実施例1〜4で作製した本発明のゴム補強用繊維、または比較例1を用いた本発明に属さないゴム補強用繊維を用いた各試験片における剥離強さを測定したところ、実施例1で作製したゴム補強用繊維を用いた試験片が215N、実施例2で作製したゴム補強用繊維を用いた試験片が207Nであり、実施例3で作製したゴム補強用繊維を用いた試験片が206N、実施例4で作製したゴム補強用繊維を用いた試験片が216Nであり、比較例1で作製したゴム補強用繊維を用いた試験片が191Nであった。剥離強さの測定したところ、実施例1〜4で作製した本発明のゴム補強用ガラス繊維は、本発明に属さない比較例1で作製したゴム補強用繊維とEPDMゴムに対する接着強度は同等であった。
【0104】
表1および表2に示すように、各試験片の剥離状況は全てゴム破壊であり、界面破壊は観察されなかった。尚、ガラス繊維コードとEPDMゴムが界面にて剥離していない破壊状態をゴム破壊とした、界面から一部のみでも剥離している破壊状態が界面剥離であり、ゴム破壊の方が、界面剥離より接着強度に優れる。
【0105】
表2に示した各試験片を加熱した後の剥離強さを測定したところ、実施例1で作製したゴム補強用繊維を用いた試験片が203N、実施例2で作製したゴム補強用繊維を用いた試験片が201Nであり、実施例3で作製したゴム補強用繊維を用いた試験片が201N、実施例4で作製したゴム補強用繊維を用いた試験片が211N、比較例1で作製したゴム補強用繊維を用いた試験片が118Nで、表1に示した実施例1〜4に示した剥離強さとほとんど同じで、加熱による接着強度の低下が見られない。一方、接着強度の比較例1のゴム補強用繊維を用いた試験片は剥離強さが表1に示した191Nから、表2に示した118Nへと低下していた。レゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物の替わりにクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物を使用することにより初期の接着強度だけでなく、加熱に対する接着強度の低下がなく耐熱性が向上していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維コードに塗布し乾燥硬化させて、繊維コードにエチレン−α−オレフィン−ジエン三元共重合体からなるゴム組成物を接着するための被覆層を設けるための繊維被覆用塗布液であって、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物とエチレン−グリシジルメタクリレート共重合体とを含有してなることを特徴とする繊維被覆用塗布液。
【請求項2】
繊維コードに塗布し乾燥硬化させて、繊維コードにエチレン−α−オレフィン−ジエン三元共重合体からなるゴム組成物を接着するための被覆層を設けるための繊維被覆用塗布液であって、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物とエチレン−グリシジルメタクリレート共重合体とスチレン−ブタジエン共重合体を含有してなることを特徴とする繊維被覆用塗布液。
【請求項3】
繊維コードがガラス繊維コードであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の繊維被覆用塗布液。
【請求項4】
クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物が、クロロフェノールとホルムアルデヒドを水中で縮合反応させて得られたクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿にアルコール化合物を加え溶解させ水溶液としたものであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の繊維被覆用塗布液。
【請求項5】
アルコール化合物を加える量が、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の重量を100%基準とする重量百分率で表して、50重量%以上、500重量%以下であることを特徴とする請求項4に記載のガラス繊維被覆用塗布液。
【請求項6】
アルコール化合物が、n−プロパノール、イソプロパノール、プロピレングリコール、2−メトキシエタノール、2−メトキシメチルエトキシプロパノール、1−メトキシ−2−プロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−ジエトキシエタンから選ばれることを特徴とする請求項4または請求項5に記載のガラス繊維被覆用塗布液。
【請求項7】
クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物が、クロロフェノールとホルムアルデヒドを水中で縮合反応させて得られたクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿にアミン化合物を加え溶解させ水溶液としたものであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の繊維被覆用塗布液。
【請求項8】
アミン化合物の塩基性度定数(Kb)が5×10−5以上、1×10−3以下であることを特徴とする請求項7に記載の繊維被覆用塗布液。
【請求項9】
アミン化合物を加える量が、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物のの重量を100%基準とする重量百分率で表して、50重量%以上、500重量%以下であることを特徴とする請求項7または請求項8に記載の繊維被覆用塗布液。
【請求項10】
アミン化合物が、メチルアミン、エチルアミン、t−ブチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、メタノ−ルアミン、ジメタノ−ルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノ−ルアミンから選ばれることを特徴とする請求項7乃至請求項9のいずれか1項に記載の繊維被覆用塗布液。
【請求項11】
エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体とスチレン−ブタジエン共重合体の重量比が、95:5〜70:30であることを特徴とする請求項2乃至請求項10のいずれか1項に記載の繊維被覆用塗布液。
【請求項12】
スチレン−ブタジエン共重合体のガラス転移点が、−60℃以上、30℃以下であることを特徴とする請求項2乃至請求項11のいずれか1項に記載の繊維被覆用塗布液。
【請求項13】
クロロフェノールとホルムアルデヒドを水中で縮合反応させて得られたクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿にアルコール化合物を加え溶解させてクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の水溶液とした後にエチレン−グリシジルメタクリレート共重合体の水分散物と混合することを特徴とする繊維被覆用塗布液の製造方法。
【請求項14】
クロロフェノールとホルムアルデヒドを水中で縮合反応させて得られたクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿にアルコール化合物を加え溶解させてクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の水溶液とした後にエチレン−グリシジルメタクリレート共重合体の水分散物とスチレン−ブタジエン共重合体の水分散物を混合することを特徴とする請求項13に記載の繊維被覆用塗布液の製造方法。
【請求項15】
クロロフェノールとホルムアルデヒドを水中で縮合反応させて得られたクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿にアミン化合物を加え溶解させてクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の水溶液とした後にエチレン−グリシジルメタクリレート共重合体の水分散物と混合することを特徴とする繊維被覆用塗布液の製造方法。
【請求項16】
クロロフェノールとホルムアルデヒドを水中で縮合反応させて得られたクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿にアミン化合物を加え溶解させてクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の水溶液とした後にエチレン−グリシジルメタクリレート共重合体の水分散物とスチレン−ブタジエン共重合体の水分散物を混合することを特徴とする請求項15に記載の繊維被覆用塗布液の製造方法。
【請求項17】
請求項1乃至請求項12のいずれか1項に記載の繊維被覆用塗布液を繊維コードに塗布被覆させてなるゴム補強用繊維。
【請求項18】
エチレン−α−オレフィン−ジエン三元共重合体からなるゴム組成物に請求項17に記載のゴム補強用繊維を埋設させてなる伝動ベルト。

【公開番号】特開2008−2050(P2008−2050A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−129177(P2007−129177)
【出願日】平成19年5月15日(2007.5.15)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】