説明

繊維複合材料及びその製造方法

【課題】原材料の使用量を抑え製造工程を簡略化することができ、また、繊維材料の優れた機能を維持し高フレキシビリティで低熱膨張である高透明性の繊維複合材料を提供する。
【解決手段】平均繊維径が4〜200nmであり50μm厚可視光透過率が3%以上である繊維集合体と、この繊維集合体表面をコートし平滑化するコート層とを備え、50μm厚可視光透過率が60%以上である繊維複合材料である。このような繊維集合体では、表面をコート層でコートし平滑化することで、表面の凹凸形状に起因した光の散乱が抑えられ、高透明な繊維複合材料を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は繊維複合材料及びその製造方法に関し、詳しくは、可視光の波長よりも細い繊維径の繊維集合体にコート層をコートさせてなる高透明性の繊維複合材料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維複合材料として一般的なものに、ガラス繊維に樹脂を含浸させたガラス繊維強化樹脂が知られている。通常、このガラス繊維強化樹脂は不透明なものであるが、ガラス繊維の屈折率と含浸するマトリクス樹脂の屈折率とを一致させて、透明なガラス繊維強化樹脂を得る方法が、特許文献1及び2に開示されている。
【0003】
また、本願出願人らによる特許文献3では、いわゆるミクロフィブリル化された繊維材料に、マトリクス材料を含浸することで、高透明な繊維複合材料が得られることが開示されている。このミクロフィブリル化された繊維材料として、パルプ等の植物繊維を解繊し磨砕処理した繊維や、バクテリアによって産生されたセルロースとバクテリアの産生物からバクテリアを除去した3次元構造のバクテリアセルロースを用いることができると提案されている。
【特許文献1】特開平9−207234号公報
【特許文献2】特開平7−156279号公報
【特許文献3】特開2005−60680号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1及び2に開示される従来のガラス繊維強化樹脂は、使用条件によっては不透明となる場合がある。すなわち、物質の屈折率は温度依存性を有しているため、特許文献1及び2に開示されるガラス繊維強化樹脂は、ある温度条件では透明であっても、その温度条件と異なる条件においては、半透明ないし不透明となる。また、屈折率は、物質ごとに波長依存性を有しており、可視光の波長のうち特定波長において繊維とマトリクス樹脂との屈折率を合わせても、可視帯域全域においては屈折率がずれる領域が存在する可能性があり、この領域においては、やはり透明性を得ることができない。
【0005】
これに対し、特許文献3によれば、繊維径がナノレベルのセルロース繊維を用いて繊維径を可視光の波長よりも短くし、空隙をセルロースと屈折率が近いマトリクス材料で含浸することで、繊維と空隙部分のマトリクス材料の界面で可視光が散乱することを抑え、温度条件や波長等に影響を受けることなく、高透明な繊維複合材料を得ることができる。しかし、空隙率が高い繊維材料にマトリクス材料を含浸させる際には、使用するマトリクス材料の量が多くなり、また含浸工程は比較的時間を要し複雑になりやすい処理である。さらに、含浸条件によっては、減圧や加圧等の特殊な処理が必要となることがある。また、繊維材料は高フレキシビリティで低熱膨張性であり優れた機能を有するため様々な分野での応用が期待されるが、繊維複合材料中にマトリクス材料を含浸させた場合では、繊維材料に対しマトリクス材料の含有量が多くなるため、フレキシビリティが低下し、熱膨張性が増大する傾向になり、繊維材料の本来の特性が低下することがあるという問題がある。
【0006】
そこで、本発明では、原材料の使用量を抑え製造工程を簡略化することができ、また、繊維材料の優れた機能を維持し高フレキシビリティで低熱膨張である高透明性の繊維複合材料及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上述した課題を解決するためになされたものであり、以下の構成を特徴とする。
【0008】
本発明の繊維複合材料としては、平均繊維径が4〜200nmであり50μm厚可視光透過率が3%以上である繊維集合体と、この繊維集合体表面をコートし平滑化するコート層とを備え、50μm厚可視光透過率が60%以上であることを特徴とする。この繊維集合体の空隙率が35%以下であることが好ましい。
【0009】
上記の繊維複合材料において、繊維集合体がセルロース繊維で構成されることが好ましい。このセルロース繊維が植物繊維から分離した繊維であるとよく、さらに、このセルロース繊維が植物繊維から分離した繊維を解繊処理したものであるとよく、特に、この解繊処理が磨砕処理を含むとよい。また、このセルロース繊維が化学修飾及び/又は物理修飾されているとよい。
【0010】
上記の繊維複合材料において、コート層が、有機高分子材料、無機高分子材料、及び有機高分子と無機高分子とのハイブリッド高分子材料のうち少なくとも1種又は2種以上の組み合せであることが好ましい。このコート層が結晶化度10%以下で、ガラス転移温度が110℃以上の合成高分子材料であるとよく、また、このコート層が無機材料をさらに含んでもよい。
【0011】
上記の繊維複合材料において、コート層の屈折率が1.4〜1.7であることが好ましく、また、コート層の50μm厚可視光透過率が60%以上であることが好ましい。
【0012】
上記の繊維複合材料において、線熱膨張係数が0.05×10−5〜5×10−5−1であることが好ましい。
【0013】
上記の繊維複合材料において、繊維集合体表面の全面がコート層によってコートされることが好ましい。また、上記の繊維複合材料において、繊維集合体表面のうちコート層がコートされない部分に被覆材料が被覆されることが好ましい。
【0014】
本発明の繊維複合材料の製造方法としては、上記したコート層を形成し得るコート用液状物を、上記した繊維集合体の表面に塗布し、次いでこのコート用液状物を硬化させることを特徴とする。このコート用液状物は、流動状のコート材料、流動状のコート材料の原料、コート材料を流動化させた流動化物、コート材料の原料を流動化させた流動化物、コート材料の溶液、及びコート材料の原料の溶液から選ばれる1種又は2種以上の組み合せであるとよい。
【0015】
本発明の繊維複合材料の製造方法としては、上記したコート層を形成し得るコート用ラミネート材料を、上記した繊維集合体の表面に貼り付けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、原材料の使用量を抑え製造工程を簡略化することができ、また、繊維材料の優れた機能を維持し高フレキシビリティで低熱膨張である高透明性の繊維複合材料及びその製造方法を提供することができる。
【0017】
本発明では、ナノレベルの繊維径で光線透過率が所定値以上である繊維集合体の表面をコート層でコートして平滑化することで、表面における可視光の散乱を抑え、高透明な繊維複合材料を得ることができる。
【0018】
繊維集合体の表面を樹脂等のコート層でコートすることのみで、繊維集合体の内部に樹脂等を充填させなくてもよいため、樹脂等の使用量を減らすことができ、原材料のコストを抑えることができる。また、コート方法は、塗布法やラミネート法などを用いればよいため、処理工程を簡略化することができる。
【0019】
また、繊維集合体の表層にコート層を設けることのみで、繊維集合体内の空隙部分にその他の材料を充填させることなく、高透明な繊維複合材料を得ることができるため、繊維集合体の特性である高フレキシビリティ及び低熱膨張性を効果的に発揮させることができる。
【0020】
このように、本発明の繊維複合材料は、透明性、高フレキシビリティ、低熱膨張等に優れ、さらに繊維集合体とコート層との組み合せで様々な優れた機能性を有するため、エレクトロニクス分野、光学分野、構造材料分野、建材分野等の種々の用途に好適に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の繊維複合材料及びその製造方法の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施の形態における例示によって本発明が限定されることはない。
【0022】
本発明の繊維複合材料は、平均繊維径が4〜200nmであり50μm厚可視光透過率が3%以上である繊維集合体と、この繊維集合体表面をコートし平滑化するコート層とを備え、50μm厚可視光透過率が60%以上であることを特徴とする。
【0023】
本発明の繊維複合材料によれば、平均繊維径が4〜200nmであり50μm厚可視高透過率が3%以上である繊維集合体の表面にコート層をコートして平滑化することで、繊維集合体表面の凹凸形状に起因した光の散乱が抑えられ、50μm厚可視光透過率が60%以上の高い透明性を得ることができる。
【0024】
本発明では、繊維複合材料の表面にコート層を形成することで高透明性を得ることができるため、繊維材料にマトリックス材料が含浸されたものに比べてコート層の使用量を抑えることができ、また、含浸工程を必要としないため処理を簡略化することができる。さらに、コート層は繊維集合体の表面をコートするのみであるため、繊維集合体の特性がコート層によって阻害されにくく、繊維集合体の高フレキシビリティで低熱膨張という優れた特性を十分に得ることができる。
【0025】
なお、本発明において、「50μm厚可視光透過率」は、50μm厚換算における波長400〜700nmの光線透過率であり、本発明の繊維複合材料に対して、厚さ方向に波長400〜700nmの光を照射したときの全波長域における光線透過率(直線光線透過率=平行光線透過率)の平均値を50μm厚に換算した値である。なお、光線透過率は、空気をレファレンスとして、光源とディテクターを被測定基板(試料基板)を介して、かつ基板に対して垂直となるように配置し、直線透過光(平行光線)を測定することにより求めることができ、具体的には、後述の実施例に記載される測定方法で測定することができる。
【0026】
本発明の繊維集合体としては、平均繊維径が4〜200nmであり50μm厚可視光透過率が3%以上であるものであればよい。このような繊維集合体によれば、表面をコート層によって平滑化することで、可視光域(波長約400〜700nm)での高透明性を得ることができる。
【0027】
また、本発明の繊維集合体は、単繊維が引き揃えられていなくてもよく、不規則な網目状となっていてもよい。この場合、平均繊維径は単繊維の平均径となる。また、本発明の繊維集合体は、複数(多数であってもよい)本の単繊維が束状に集合して1本の糸条を構成しているものであってもよく、この場合、平均繊維径は1本の糸条の径の平均値として定義される。後述するバクテリアセルロースは、後者の糸条よりなるものである。
【0028】
この繊維集合体の形状としては特に制限されることはなく、シート状、板状、ブロック状、所定の形状(例えばレンズ状)等の各種の形状としてもよく、様々な用途に対応することができる。
【0029】
本発明の繊維集合体の平均繊維径としては、好ましくは4〜200nmであり、より好ましくは4〜60nmである。この平均繊維径は、繊維集合体を構成する短繊維又は糸状の繊維の径の平均であり、走査電子顕微鏡(SEM)等による画像観察から求めることができる。本発明において、繊維集合体の平均繊維径が200nmを超えると、可視光の波長に近づき、空隙部分との界面で可視光の屈折が生じやすくなり、透明性が低下することがあるため、平均繊維径の上限は200nmとする。平均繊維径4nm未満の繊維集合体は製造が困難であり、例えば繊維集合体の一例として挙げられる後述のバクテリアセルロースの単繊維径は4nm程度であることから、本発明の繊維集合体の平均繊維径の下限は4nmとする。
【0030】
本発明の繊維集合体は、平均繊維径が4〜200nmの範囲内であれば、繊維中に4〜200nmの範囲外の繊維径のものが含まれていても良いが、その割合は30重量%以下であることが好ましく、望ましくは、すべての繊維の繊維径が200nm以下、特に100nm以下、とりわけ60nm以下であることが望ましい。
【0031】
また、繊維集合体の繊維の長さについては特に限定されないが、平均長さで100nm以上が好ましい。繊維の平均長さが100nmより短いと、補強効果が低く、繊維複合材料の強度が不十分となるおそれがある。なお、繊維中には繊維長さ100nm未満のものが含まれていても良いが、その割合は30重量%以下であることが好ましい。
【0032】
本発明の繊維集合体の50μm厚可視光透過率としては3%以上であり、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上である。この繊維集合体の50μm厚可視高透過率の範囲内であれば、繊維集合体表面をコート層で平滑化することで、50μm厚可視光透過率が60%以上である高透明な繊維複合材料を得ることができる。これは、繊維集合体がナノレベルの繊維径の繊維で構成される場合では、内部の透明性に対して表面の凹凸形状が大きく、光線透過率は表面での光の散乱に起因して低下しているが、繊維集合体の内部では比較的高い光線透過率が得られているからである。
【0033】
このように、繊維集合体の内部が透明なものでは、光線透過率の低下は、繊維集合体表面での光の散乱に起因しており、コート層によって表面を平滑化して散乱を抑えることで、高透明な繊維複合材料を得ることができる。しかし、繊維集合体の内部が不透明なものでは、内部空隙や繊維構造等に起因して、光が散乱又は反射しており、表面を平滑化したとしても透明とすることができない。
【0034】
本発明は、実験及び観察を重ねた結果として、繊維集合体の内部ではある程度透明性が得られているが表面での散乱によって光線透過率が低下している場合、繊維集合体は50μm厚可視光透過率で3%程度の光を透過するが、繊維集合体の内部の透明性が低い場合では、繊維集合体は50μm厚可視光透過率で3%以下の光しか透過することができないという知見に基づいている。
【0035】
この繊維集合体の50μm厚可視光透過率が下限値に満たないと、コート層によって表面を平滑化しても、繊維集合体内部の空隙や繊維構造等に起因して、入射光が繊維集合体内で散乱又は繊維集合体とコート層の界面で反射してしまい、高透明性を得ることができないことがある。なお、この繊維集合体の50μm厚可視光透過率の上限値としては特に限定されないが100%以下、好ましくは99%以下であり、これより光線透過率が高い繊維集合体は製造方法が複雑でコストを要することがある。
【0036】
本発明の繊維集合体の空隙率としては35%以下であることが好ましく、より好適には20%以下であり、さらに好適には15%以下である。なお、本発明において、空隙率は、20℃において繊維集合体の単位体積当たりの質量を測定して密度を求め、空隙率(%)=(1−(繊維集合体の密度/繊維の密度))×100から求めることができる。
【0037】
この繊維集合体の空隙率の範囲であれば、繊維集合体内部の空隙を小さくしその数を少なくすることができるため、繊維と空隙の界面での光の屈折を抑え、繊維集合体内で空隙に起因する光の散乱ロスを低減することができる。また、繊維集合体の繊維径はナノレベルであり可視光の波長よりも短いことからも、空隙が小さくその数が少なければ、可視光の散乱を効率的に抑えることができる。このような繊維集合体では、コート層によって表面を平滑化すれば、高透明な繊維複合材料を得ることができる。
【0038】
この繊維集合体の空隙率が上限値を超えると、繊維集合体内部の空隙が大きくその数も多くなり、繊維集合体内部の空隙に起因した光の散乱の影響が大きくなり、繊維集合体自体の透明性が低下してしまうことになり、コート層によって繊維集合体表面を平滑化しても高透明な繊維複合材料を得ることができないことがある。
【0039】
この繊維集合体の空隙率の下限値は特に限定されないが、空隙が極めて少なく繊維が緻密に形成されると、繊維径をナノレベルに調整し維持することが難しくなるため、0%以上、好ましくは1%以上がよい。
【0040】
本発明の繊維複合材料のコート層としては、繊維集合体表面をコートし平滑化するものであれば特に制限はない。このコート層によって、繊維集合体表面の凹凸形状が平滑化されて、表面における光の散乱や反射を抑え、高透明な繊維複合材料を得ることができる。
【0041】
本発明の繊維集合体は平均繊維径がナノレベルで光線透過率が所定値以上のものであり、このような繊維集合体では内部の透明性は比較的高い一方で表面の凹凸形状が大きくなる傾向がある。そこで、コート層によって繊維集合体表面を平滑化することでこの凹凸形状を平坦にし、表面粗さを低下させ表面での光の散乱や反射を抑えることができる。このように、繊維集合体とコート層とを組み合せ繊維集合体表面での光の散乱や反射を抑えることで、高透明な繊維複合材料を得ることができる。
【0042】
本発明のコート層は、繊維集合体表面の全面に形成されてもよいし、繊維集合体表面の一部に形成されてもよい。例えば、シート状の繊維集合体を用いる場合では、シートの両面にコート層を形成することで高透明なシートを得ることができ、ブロック状など立体形状の繊維集合体を用いる場合では、ブロックの全面にコート層を形成してもよく、ブロックの対向する面又は一方面のみにコート層を形成してもよい。
【0043】
好ましくは、繊維集合体表面の全面がコート層によってコートされていることがよく、これによって繊維複合材料をウェットプロセスに供する場合や、湿度の高い状況で使用する場合などで、コート層によって繊維集合体を保護することができ、水分によって繊維集合体が膨潤することを防止することができる。例えば、大判のシート状の繊維集合体にコート層をコートし小片を切り出して使用する場合には、小片のシートの端面に繊維集合体が露出してしまうため、端面にもコート層をコートするとよい。
【0044】
また、繊維集合体表面が部分的にコート層によってコートされる場合では、繊維集合体表面のうちコート層がコートされない部分に被覆材料が被覆されることで、繊維集合体表面の全面を保護することができる。例えば、シート状の繊維集合体の両面にコート層をコートし、シートの端面には被覆材料を被覆することで、シートの平面上で透明性を得ることができ、シートの全体では耐水性を備えることができる。被覆材料としては、繊維集合体を平滑化しない材料を用いてもよく、製造工程を簡略化することができる。
【0045】
本発明の繊維複合材料の50μm厚可視光透過率は60%以上、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上である。この繊維複合材料の50μm厚可視光透過率の範囲内であれば可視光に対して高透明性を得ることができ、自動車、電車、船舶等の移動体の窓材料、ディスプレイ、住宅、建築物、各種光学部品等、透明性が要求される用途で適当な材料として用いることが可能となる。なお、この繊維複合材料が50μm厚可視光透過率の下限値に満たないと、繊維複合材料が半透明から不透明となり、透明材料としての用途が狭まってしまうことがある。
【0046】
次に、本発明の繊維集合体について詳述するが、本発明の繊維集合体は何ら以下のものに限定されるものではない。
【0047】
本発明の繊維集合体としては、セルロース繊維で構成されていることが好ましい。セルロース繊維とは、植物細胞壁の基本骨格等を構成するセルロースのミクロフィブリル又はこれの構成繊維をいい、通常繊維径4nm程度の単位繊維の集合体である。セルロース繊維を用いることで、繊維複合材料の熱膨張を抑えることができ、また、後述する各種のセルロース繊維を用いることで、平均繊維径がナノレベルで所定値以上の光線透過率である繊維集合体を形成することができる。
【0048】
本発明で用いるセルロース繊維としては、ナノフィブリル化セルロース(またはナノファイバーセルロース、以下同じ)であることが好ましい。このナノフィブリル化セルロースとしては、平均繊維径がナノレベルであるセルロース繊維であれば特に限定されないが、例えば、天然植物である木材やコットン、海草、ホヤの被嚢等から分離されるセルロース繊維を解繊することによってナノフィブリル化したものや、バクテリアによって産生されるバクテリアセルロース等が挙げられる。このようなナノフィブリル化セルロースによれば平均繊維径が短く所定の光線透過率の繊維集合体を得ることができる。
【0049】
本発明の繊維集合体を形成するセルロース繊維としては、木材やコットン、海草等の植物繊維から分離した繊維、ホヤの被嚢等の動物繊維から分離した繊維、及びバクテリアセルロース等が挙げられ、好ましくは植物繊維から分離した繊維である。好適な植物繊維の一例としては、パルプ、コットン、及び木材を粉状にしリグニン等を除去した木粉等が挙げられる。なお、これらのセルロース繊維は1種を単独で用いても、2種以上を混合させて用いてもよい。
【0050】
本発明で用いるセルロース繊維としては、植物繊維から分離した繊維を解繊処理したものであることが好ましい。解繊処理の好適な一例としては磨砕処理が挙げられる。植物繊維から分離したままの状態では繊維径が比較的大きいが、磨砕処理によってミクロフィブリル化を経て繊維径をナノレベルとすることができる。また、磨砕処理の前に事前にその他の処理によって繊維をミクロフィブリル化しておき、比較的繊維径の小さい繊維を磨砕処理に供することで、繊維径をさらに微細に調整することができる。このような微細な繊維によって繊維集合体を成形することで、平均繊維径をナノレベルとし光線透過率を所定値以上とすることができる。なお、繊維の成形方法としては特に制限されないが、例えば繊維を水に懸濁させろ過する方法等がある。
【0051】
次に、セルロース繊維の解繊方法について具体的に例示する。なお、以下に例示する処理方法は、セルロース繊維の原材料によらず、パルプ、コットン、木粉、海草、ホヤの被嚢等を由来とする各種繊維に適用することができる。また、以下の複数の処理を単独で適用することの他、各処理を組み合せて適用してもよい。
【0052】
本発明のセルロース繊維の解繊方法の一例としては磨砕処理が挙げられ、例えばグラインダーを用いて繊維を磨砕する方法がある。
【0053】
このグラインダーとしては、例えば、栗田機械製作所製グラインダー「ピュアファインミル」が挙げられ、このグラインダーは、上下2枚のグラインダーの間隙を原料が通過するときに発生する衝撃、遠心力、剪断力により、原料を超微粒子に粉砕する石臼式粉砕機であり、剪断、磨砕、微粒化、分散、乳化、フィブリル化を同時に行うことができるものである。
【0054】
また、他の例のグラインダーとしては、増幸産業(株)製超微粒磨砕機「スーパーマスコロイダー」が挙げられる。スーパーマスコロイダーは、単なる粉砕の域を越えた融けるように感じるほどの超微粒化を可能にした磨砕機である。スーパーマスコロイダーは、間隔を自由に調整できる上下2枚の無気孔砥石によって構成された石臼形式の超微粒磨砕機であり、上部砥石は固定で、下部砥石が高速回転する。ホッパーに投入された原料は遠心力によって上下砥石の間隙に送り込まれ、そこで生じる強大な圧縮、剪断、転がり摩擦力などにより、原料は次第にすり潰され、超微粒化される。
【0055】
このようにして磨砕処理で微細化された繊維を0.01〜1重量%程度の水懸濁液とし、これをろ過することにより、繊維集合体を成形することができる。
【0056】
なお、この磨砕処理は、上述したように植物繊維由来の繊維に対し処理することで好適な微細な繊維を得ることができる。具体的には、コットンでは脂肪分を除去した脱脂綿をそのまま磨砕処理することで微細化を図ることができる。木粉では、粉状の木材から亜塩素酸ナトリウム等でリグニンを漂白して除去し、水酸化カリウム等のアルカリでヘミセミロースを除去した後に、この木粉を磨砕処理することで微細な繊維を得ることができる。
【0057】
本発明のセルロース繊維の解繊方法の他の例としては上述の磨砕処理と叩解・粉砕等の処理の組み合せが挙げられ、セルロース繊維を磨砕処理に供する前に、繊維に直接、力を加えて叩解や粉砕を行って繊維をバラバラにしミクロフィブリル化しておく方法である。
【0058】
具体的には、この方法はパルプについて好適に適用することができ、例えば、パルプを高圧ホモジナイザーで処理して平均繊維径0.1〜10μm程度にミクロフィブリル化したミクロフィブリル化セルロース繊維を0.1〜3重量%程度の水懸濁液とし、さらにより微細化するために上述したグラインダー等で磨砕処理して平均繊維径10〜100nm程度のナノフィブリル化セルロース繊維を得ることができる。このようにして得られた繊維を0.01〜1重量%程度の水懸濁液とし、これをろ過することにより、繊維集合体を成形することができる。
【0059】
また、本発明のセルロース繊維の解繊方法の他の例としては、高温高圧水蒸気処理を挙げることができ、セルロース繊維を高温高圧水蒸気に曝すことによって繊維をバラバラにし、微細なセルロース繊維を得る処理法である。
【0060】
この方法では、植物繊維から分離されたセルロース繊維等の表面をリン酸エステル化することにより、セルロース繊維間の結合力を弱め、次いで、リファイナー処理を行うことにより、繊維をバラバラにし、セルロース繊維を得る処理法である。例えば、リグニン等を除去した植物繊維から分離した繊維や、海草やホヤの被嚢を50重量%の尿素と32重量%のリン酸を含む溶液に浸漬し、60℃で溶液をセルロース繊維間に十分に染み込ませた後、180℃で加熱してリン酸化を進める。これを水洗した後、3重量%の塩酸水溶液中、60℃で2時間、加水分解処理をして、再度水洗を行う。その後、3重量%の炭酸ナトリウム水溶液中において、室温で20分間程処理することで、リン酸化を完了させる。そして、この処理物をリファイナーで解繊することにより、微細なセルロース繊維が得られる。得られたセルロース繊維の水懸濁液をろ過することによって繊維集合体を成形することができる。
【0061】
本発明の繊維集合体を構成するセルロース繊維としては、上述した植物繊維から分離されるものの他、バクテリアセルロースであってもよい。バクテリアセルロースは、平均繊維径がナノフィブリル化セルロースであるため、短い平均繊維径で所定の光線透過率の繊維集合体を構成することができる。
【0062】
地球上においてセルロースを生産し得る生物は、植物界は言うに及ばず、動物界ではホヤ類、原生生物界では、各種藻類、卵菌類、粘菌類など、またモネラ界では藍藻及び酢酸菌、土壌細菌の一部に分布している。現在のところ、菌界(真菌類)にはセルロース生産能は確認されていない。このうち酢酸菌としては、アセトバクター(Acetobacter)属等が挙げられ、より具体的には、アセトバクターアセチ(Acetobacter aceti)、アセトバクターサブスピーシーズ(Acetobacter subsp.)、アセトバクターキシリナム(Acetobacter xylinum)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0063】
このようなバクテリアを培養することにより、バクテリアからセルロースが産生される。得られた産生物は、バクテリアとこのバクテリアから産生されてこのバクテリアに連なっているセルロース繊維(バクテリアセルロース)とを含むものであるため、この産生物を培地から取り出し、それを水洗、又はアルカリ処理などしてバクテリアを除去することにより、バクテリアを含まない含水バクテリアセルロースを得ることができる。この含水バクテリアセルロースから水分を除去することによりバクテリアセルロースを得ることができる。
【0064】
培地としては、寒天状の固体培地や液体培地(培養液)が挙げられ、培養液としては、例えば、ココナッツミルク(全窒素分0.7重量%,脂質28重量%)7重量%、ショ糖8重量%を含有し、酢酸でpHを3.0に調整した培養液や、グルコース2重量%、バクトイーストエクストラ0.5重量%、バクトペプトン0.5重量%、リン酸水素二ナトリウム0.27重量%、クエン酸0.115重量%、硫酸マグネシウム七水和物0.1重量%とし、塩酸によりpH5.0に調整した水溶液(SH培地)等が挙げられる。
【0065】
培養方法としては、例えば、次の方法が挙げられる。ココナッツミルク培養液に、アセトバクター キシリナム(Acetobacter xylinum)FF−88等の酢酸菌を植菌し、例えばFF−88であれば、30℃で5日間、静置培養を行って一次培養液を得る。得られた一次培養液のゲル分を取り除いた後、液体部分を、上記と同様の培養液に5重量%の割合で加え、30℃、10日間静置培養して、二次培養液を得る。この二次培養液には、約1重量%のセルロース繊維が含有されている。
【0066】
また、他の培養方法として、培養液として、グルコース2重量%、バクトイーストエクストラ0.5重量%、バクトペプトン0.5重量%、リン酸水素二ナトリウム0.27重量%、クエン酸0.115重量%、硫酸マグネシウム七水和物0.1重量%とし、塩酸によりpH5.0に調整した水溶液(SH培養液)を用いる方法が挙げられる。この場合、凍結乾燥保存状態の酢酸菌の菌株にSH培養液を加え、1週間静置培養する(25〜30℃)。培養液表面にバクテリアセルロースが生成するが、これらのうち、厚さが比較的厚いものを選択し、その株の培養液を少量分取して新しい培養液に加える。そして、この培養液を大型培養器に入れ、25〜30℃で7〜30日間の静地培養を行う。バクテリアセルロースは、このように、「既存の培養液の一部を新しい培養液に加え、約7〜30日間静置培養を行う」ことの繰りかえしにより得られる。
【0067】
菌がセルロースを作りにくいなどの不具合が生じた場合は、以下の手順を行う。すなわち、培養液に寒天を加えて作成した寒天培地上に、菌培養中の培養液を少量撒き、1週間ほど放置してコロニーを作成させる。それぞれのコロニーを観察して、比較的セルロースをよく作るようなコロニーを寒天培地から取り出し、新しい培養液に投入し、培養を行う。
【0068】
このようにして産出させたバクテリアセルロースを培養液中から取り出し、バクテリアセルロース中に残存するバクテリアを除去する。その方法として、水洗またはアルカリ処理などが挙げられる。バクテリアを溶解除去するためのアルカリ処理としては、培養液から取り出したバクテリアセルロースを0.01〜10重量%程度のアルカリ水溶液に1時間以上注加する方法が挙げられる。そして、アルカリ処理した場合は、アルカリ処理液からバクテリアセルロースを取り出し、十分水洗し、アルカリ処理液を除去する。
【0069】
このようにして得られた含水バクテリアセルロース(通常、含水率95〜99重量%のバクテリアセルロース)は、次いで、水分除去処理を行う。この水分除去法としては、特に限定されないが、放置やコールドプレス等でまず水をある程度抜き、次いで、そのまま放置するか、又はホットプレス等で残存の水を完全に除去する方法、コールドプレス法の後、乾燥機にかけたり、自然乾燥させたりして水を除去する方法等が挙げられる。
【0070】
このようにして得られるバクテリアセルロースは、その培養条件やその後の水分除去時の加圧、加熱条件等によって、平均繊維径、光線透過率、空隙率等を調整することで、本発明の繊維集合体として用いることができる。また、バクテリアの産生によって得られたバクテリアセルロース構造体をさらに解繊処理して再度成形することによって、バクテリアセルロースを緻密化し、所定の光線透過率の繊維集合体を得ることができる。このようなバクテリアセルロースよりなる繊維集合体では、表面をコート層によって平滑化することで、高透明な繊維複合材料を得ることができる。
【0071】
本発明の繊維集合体を構成するセルロース繊維としては、上述したセルロース繊維を化学修飾及び/又は物理修飾したものであってもよい。このようなセルロース繊維によれば繊維集合体の機能性を高めることができる。ここで、化学修飾としては、アセチル化、シアノエチル化、アセタール化、エーテル化、イソシアネート化等によって官能基を付加させること、シリケートやチタネート等の無機物を化学反応やゾルゲル法等によって複合化や被覆化させること等が挙げられる。化学修飾の方法としては、例えば、繊維集合体を無水酢酸中に浸漬して加熱する方法が挙げられ、好ましくはアセチル化により、光線透過率を低下させることなく、吸水性の低下、耐熱性の向上を図ることができる。また、物理修飾としては、金属やセラミック原料を、真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング等の物理蒸着法(PVD法)、化学蒸着法(CVD法)、無電解メッキや電解メッキ等のメッキ法等によって表面被覆させることが挙げられる。
【0072】
次に、本発明のコート層について詳述するが、本発明のコート層は何ら以下のものに限定されるものではない。
【0073】
本発明のコート層としては、有機高分子材料、無機高分子材料、及び有機高分子と無機高分子とのハイブリッド高分子材料のうち少なくとも1種又は2種以上の組み合せであることが好ましい。2種以上の組み合せとしては、各材料を混合して1つの層としてもよいし、異なる材料からなる層を複数積層したものとしてもよい。このような材料を用いることで、繊維集合体の表面に塗布やラミネート等の比較的簡単な処理によってコート層を均質に形成することができる。また、得られるコート層の表面粗さが小さく表面での反射を抑えることができるため高透明性を得ることができ、さらに、基材となる繊維集合体との屈折率を合わせれば繊維集合体とコート層との界面での屈折を抑えることができるため、高透明な繊維複合材料を得ることができる。
【0074】
本発明のコート層に用いられる有機高分子材料としては、天然高分子材料や合成高分子材料が挙げられ、天然高分子材料としては、再生セルロース系高分子材料、例えばセロハン、トリアセチルセルロース等が挙げられ、合成高分子材料としては、ビニル系樹脂、重縮合系樹脂、重付加系樹脂、付加縮合系樹脂、開環重合系樹脂等が挙げられる。
【0075】
本発明のコート層に用いられる無機高分子材料としては、ガラス、シリケート材料、チタネート材料などのセラミックス等が挙げられ、これらは例えばアルコラートの脱水縮合反応により形成することができる。
【0076】
本発明のコート層に用いられる有機高分子と無機高分子とのハイブリッド高分子材料としては、上述の有機高分子材料と無機高分子材料を混合したものや、上述の有機高分子材料からなる層と無機高分子材料からなる層とを積層したもの等が挙げられる。
【0077】
次に上述したコート層を形成する有機高分子材料の合成高分子材料について具体的に例示する。
【0078】
上記ビニル系樹脂としては、ポリオレフィン、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、フッ素樹脂、(メタ)アクリル系樹脂等の汎用樹脂や、ビニル重合によって得られるエンジニアリングプラスチック、スーパーエンジニアリングプラスチック等が挙げられる。これらは、各樹脂内において、構成される各単量体の単独重合体や共重合体であっても良い。
【0079】
上記ポリオレフィンとしては、エチレン、プロピレン、スチレン、ブタジエン、ブテン、イソプレン、クロロプレン、イソブチレン、イソプレン等の単独重合体又は共重合体、あるいはノルボルネン骨格を有する環状ポリオレフィン等が挙げられる。
【0080】
上記塩化ビニル系樹脂としては、塩化ビニル、塩化ビニリデン等の単独重合体又は共重合体が挙げられる。
【0081】
上記酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニル、ポリ酢酸ビニルの加水分解体であるポリビニルアルコール、酢酸ビニルに、ホルムアルデヒドやn−ブチルアルデヒドを反応させたポリビニルアセタール、ポリビニルアルコールやブチルアルデヒド等を反応させたポリビニルブチラール等が挙げられる。
【0082】
上記フッ素樹脂としては、テトラクロロエチレン、ヘキフロロプロピレン、クロロトリフロロエチレン、フッ化ビリニデン、フッ化ビニル、ペルフルオロアルキルビニルエーテル等の単独重合体又は共重合体が挙げられる。
【0083】
上記(メタ)アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド類等の単独重合体又は共重合体が挙げられる。なお、この明細書において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル及び/又はメタクリル」を意味する。ここで、(メタ)アクリル酸としては、アクリル酸又はメタクリル酸が挙げられる。また、(メタ)アクリロニトリルとしては、アクリロニトリル又はメタクリロニトリルが挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、シクロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸系単量体、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル等が挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル等が挙げられる。シクロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸系単量体としては、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、イソボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ブトキシエチル等が挙げられる。(メタ)アクリルアミド類としては、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−t−オクチル(メタ)アクリルアミド等のN置換(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0084】
上記重縮合系樹脂としては、アミド系樹脂やポリカーボネート等が挙げられる。
【0085】
上記アミド系樹脂としては、6,6−ナイロン、6−ナイロン、11−ナイロン、12−ナイロン、4,6−ナイロン、6,10−ナイロン、6,12−ナイロン等の脂肪族アミド系樹脂や、フェニレンジアミン等の芳香族ジアミンと塩化テレフタロイルや塩化イソフタロイル等の芳香族ジカルボン酸又はその誘導体からなる芳香族ポリアミド等が挙げられる。
【0086】
上記ポリカーボネートとは、ビスフェノールAやその誘導体であるビスフェノール類と、ホスゲン又はフェニルジカーボネートとの反応物をいう。
【0087】
上記重付加系樹脂としては、エステル系樹脂、Uポリマー、液晶ポリマー、ポリエーテルケトン類、ポリエーテルエーテルケトン、不飽和ポリエステル、アルキド樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルスルホン等が挙げられる。
【0088】
上記エステル系樹脂としては、芳香族ポリエステル、脂肪族ポリエステル、不飽和ポリエステル等が挙げられる。上記芳香族ポリエステルとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール等の後述するジオール類とテレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸との共重合体が挙げられる。上記脂肪族ポリエステルとしては、後述するジオール類とコハク酸、吉草酸等の脂肪族ジカルボン酸との共重合体や、グリコール酸や乳酸等のヒドロキシカルボン酸の単独重合体又は共重合体、上記ジオール類、上記脂肪族ジカルボン酸及び上記ヒドロキシカルボン酸の共重合体等が挙げられる。上記不飽和ポリエステルとしては、後述するジオール類、無水マレイン酸等の不飽和ジカルボン酸、及び必要に応じてスチレン等のビニル単量体との共重合体が挙げられる。
【0089】
上記Uポリマーとしては、ビスフェノールAやその誘導体であるビスフェノール類、テレフタル酸及びイソフタル酸等からなる共重合体が挙げられる。
【0090】
上記液晶ポリマーとしては、p−ヒドロキシ安息香酸と、テレフタル酸、p,p’−ジオキシジフェノール、p−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸、ポリテレフタル酸エチレン等との共重合体をいう。
【0091】
上記ポリエーテルケトンとしては、4,4’−ジフルオロベンゾフェノンや4,4’−ジヒドロベンゾフェノン等の単独重合体や共重合体が挙げられる。
【0092】
上記ポリエーテルエーテルケトンとしては、4,4’−ジフルオロベンゾフェノンとハイドロキノン等の共重合体が挙げられる。
【0093】
上記アルキド樹脂としては、ステアリン酸、パルチミン酸等の高級脂肪酸と無水フタル酸等の二塩基酸、及びグリセリン等のポリオール等からなる共重合体が挙げられる。
【0094】
上記ポリスルホンとしては、4,4’−ジクロロジフェニルスルホンやビスフェノールA等の共重合体が挙げられる。
【0095】
上記ポリフェニルレンスルフィドとしては、p−ジクロロベンゼンや硫化ナトリウム等の共重合体が挙げられる。
【0096】
上記ポリエーテルスルホンとしては、4−クロロ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホンの重合体が挙げられる。
【0097】
上記ポリイミド系樹脂としては、無水ポリメリト酸や4,4’-ジアミノジフェニルエーテル等の共重合体であるピロメリト酸型ポリイミド、無水塩化トリメリト酸やp−フェニレンジアミン等の芳香族ジアミンや、後述するジイソシアネート化合物等からなる共重合体であるトリメリト酸型ポリイミド、ビフェニルテトラカルボン酸、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、p−フェニレンジアミン等からなるビフェニル型ポリイミド、ベンゾフェノンテトラカルボン酸や4,4’−ジアミノジフェニルエーテル等からなるベンゾフェノン型ポリイミド、ビスマレイイミドや4,4’−ジアミノジフェニルメタン等からなるビスマレイイミド型ポリイミド等が挙げられる。
【0098】
上記重付加系樹脂としては、ウレタン樹脂等が挙げられる。
【0099】
上記ウレタン樹脂は、ジイソシアネート類とジオール類との共重合体である。上記ジイソシアネート類としては、ジシクロへキシルメタンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3−シクロヘキシレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート等が挙げられる。また、上記ジオール類としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、シクロヘキサンジメタノール等の比較的低分子量のジオールや、ポリエステルジオール、ポリエーテルジオール、ポリカーボネートジオール等が挙げられる。
【0100】
上記付加縮合系樹脂としては、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。
【0101】
上記フェノール樹脂としては、フェノール、クレゾール、レゾルシノール、フェニルフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF等の単独重合体又は共重合体が挙げられる。
【0102】
上記尿素樹脂やメラミン樹脂は、ホルムアルデヒドや尿素、メラミン等の共重合体である。
【0103】
上記開環重合系樹脂としては、ポリアルキレンオキシド、ポリアセタール、エポキシ樹脂等が挙げられる。上記ポリアルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等の単独重合体又は共重合体が挙げられる。上記ポリアセタールとしては、トリオキサン、ホルムアルデヒド、エチレンオキシド等の共重合体が挙げられる。上記エポキシ樹脂とは、エチレングリコール等の多価アルコールとエピクロロヒドリンとからなる脂肪族系エポキシ樹脂、ビスフェノールAとエピクロロヒドリンとからなる脂肪族系エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0104】
本発明のコート層としては、結晶化度10%以下、特に5%以下で、ガラス転移温度(Tg)が110℃以上、特に120℃以上、とりわけ130℃以上の合成高分子材料が好ましい。このような非晶質でTgの高い合成高分子材料が透明性に優れた高耐久性の繊維複合材料を得る上で好ましい。Tgが110℃未満のものでは、例えば沸騰水に接触した場合に変形するなど、透明部品、光学部品等としての用途において、耐久性に問題が発生する。なお、TgはDSC法による測定で求められ、結晶化度は、非晶質部と結晶質部の密度から結晶化度を算定する密度法により求められる。
【0105】
本発明のコート層としては、上述の各種材料で構成されるコート層が無機材料をさらに含んでいてもよい。このようなコート層としては、上述した各種材料のコート層と無機材料からなる無機材料層とを積層したものでもよいし、上述した各種材料に無機材料を添加したものでもよい。このようにコート層に無機材料が含まれることでコート層の機能性を高めることができる。また、繊維集合体とコート層との間に無機材料層を形成することで、コート層の材料が繊維集合体の内部に侵入してしまうことを防止することができる。この無機材料としては、酸化シリコン、窒化シリコン、炭化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化炭化シリコン、アルミナ、酸化チタン、窒化チタン、酸化窒化チタン等の金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物あるいはこれらの混合物等が挙げられる。また、無機材料層を形成するには、化学蒸着法や物理蒸着法を用いることができる。なお、無機材料層を形成する場合は、繊維複合材料のフレキシビリティを低下させないように、その厚さを5μm以下、好ましくは1μm以下とするとよい。
【0106】
本発明のコート層の屈折率としては1.4〜1.7が好ましく、好適には1.5〜1.6である。一般的な繊維であるセルロースの屈折率が1.5程度であることから、コート層の屈折率を1.5に近づけ、繊維集合体とコート層と屈折率の差を小さくすることで、繊維集合体とコート層との界面での光の散乱ロスを低減することができる。これによって、高透明の繊維複合材料を得ることができる。このコート層の屈折率が上限値を超え、又は下限値未満であると、繊維集合体とコート層との界面で光の散乱が発生して、繊維複合材料の透明性が低下してしまうことがある。
【0107】
本発明のコート層の50μm厚可視光透過率は60%以上であることが好ましく、より好適には80%以上、さらに好適には85%以上である。これによって、コート層を含めた繊維複合材料全体をより高透明とすることができる。好ましい高透明なコート層としては、上述したコート層の各種材料の中でも、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ノボラック樹脂、ユリア樹脂、グアナミン樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、フラン樹脂、ケトン樹脂、キシレン樹脂、熱硬化型ポリイミド、スチリルピリジン系樹脂、トリアジン系樹脂等の熱硬化樹脂が挙げられ、これらの中でも特に透明性の高いアクリル樹脂、メタクリル樹脂が好ましい。
【0108】
本発明のコート層の表面粗さRa(中心線表面粗さ)としては、コート層形成前の繊維集合体の表面粗さRaよりも小さいものであればよいが、繊維集合体の表面粗さRaが少なくとも2nm程度以上であることからコート層の表面粗さRaは1nm程度以下とするとよい。このような表面粗さRaの範囲内であればコート層の表面が平坦であり光の散乱を抑えて、高透明な繊維複合材料を得ることができる。
【0109】
本発明のコート層の厚さとしては0.5μm以上が好ましく、より好適には1μm以上であり、この厚さ以上であれば、繊維集合体上の凹凸形状を除去し、繊維複合材料の表面を平滑化して表面での光の反射を抑えて、高透明な繊維複合材料とすることができる。
【0110】
次に、本発明の繊維複合材料の製造方法について詳述するが、本発明の製造方法は何ら以下のものに限定されるものではない。
【0111】
本発明の繊維複合材料の製造方法としては、上述のコート層を形成し得るコート用液状物を、上述の繊維集合体の表面に塗布し、次いでこのコート用液状物を硬化させることを特徴とする。
【0112】
ここで、塗布としては、基材上にコート用液状物を滴下して遠心力等で引き伸ばし塗布する方法、基材上でコート用液状物をはけやブレード等で引き伸ばして塗布する方法、基材上からコート用液状物を噴霧などで散布して塗布する方法、及びコート用液状物中に基材を浸し基材内部に液状物が含浸されない程度で取り出して塗布する方法等が挙げられる。このような塗布工程を実現しうる方法としては、一例として、スピンコート法、ブレードコート法、ワイヤーバーコート法、スプレーコート法、スリットコート法等が挙げられる。特にスピンコート法では、繊維集合体を回転させ、その上から流動状のコート材料を滴下して、遠心力によってコート材料を繊維集合体表面上に均質で薄く塗布することができるため好ましい。
【0113】
本発明のコート用液状物としては、流動状のコート材料、流動状のコート材料の原料、コート材料を流動化させた流動化物、コート材料の原料を流動化させた流動化物、コート材料の溶液、及びコート材料の原料の溶液から選ばれる1種又は2種以上の組み合せを用いることができる。
【0114】
上記流動状のコート材料としては、コート材料そのものが流動状であるもの等をいう。また、上記流動状のコート材料の原料としては、例えば、プレポリマーやオリゴマー等の重合中間体が流動状であるもの等が挙げられる。
【0115】
さらに、上記コート材料を流動化させた流動化物としては、例えば、熱可塑性のコート材料を加熱溶融させた状態のもの等が挙げられる。
【0116】
さらに、上記コート材料の原料を流動化させた流動化物としては、例えば、プレポリマーやオリゴマー等の重合中間体が固形状の場合、これらを加熱溶融させた状態のもの等が挙げられる。
【0117】
また、上記コート材料の溶液やコート材料の原料の溶液とは、コート材料やコート材料の原料を溶媒等に溶解させた溶液が挙げられる。この溶媒は、溶解対象のコート材料やコート材料の原料に合わせて適宜決定されるが、後工程でこれを除去するに当たり、蒸発除去する場合、上記コート材料やコート材料の原料の分解を生じさせない程度の温度以下の沸点を有する溶媒が好ましい。
【0118】
塗布工程の処理温度の下限としては、コート用液状物の種類に応じてその流動性を保てる程度の温度がよい。また、処理温度の上限は、コート用液状物の沸点以下であり加熱によって変性しない程度が好ましく、特にコート用液状物に溶媒を用いた場合では、溶媒の揮散を抑えるためにその溶媒の沸点以下が好ましい。
【0119】
繊維集合体に塗布させたコート用液状物を硬化させるためには、コート用液状物の種類に応じた硬化方法に従って行えば良く、例えば、コート用液状物が流動状のコート材料の場合は、架橋反応、鎖延長反応等が挙げられる。また、コート用液状物が流動状のコート材料の原料の場合は、重合反応、架橋反応、鎖延長反応等が挙げられる。
【0120】
また、コート用液状物がコート材料を流動化させた流動化物の場合は、冷却等が挙げられる。また、コート用液状物がコート材料の原料を流動化させた流動化物の場合は、冷却等と、重合反応、架橋反応、鎖延長反応等の組み合せが挙げられる。
【0121】
また、コート用液状物がコート材料の溶液の場合は、溶液中の溶媒の蒸発や風乾等による除去等が挙げられる。さらに、コート用液状物がコート材料の原料の溶液の場合は、溶液中の溶媒の除去等と、重合反応、架橋反応、鎖延長反応等との組み合せが挙げられる。なお、上記蒸発除去には、常圧下における蒸発除去だけでなく、減圧下における蒸発除去も含まれる。
【0122】
本発明の繊維複合材料の製造方法の他の方法としては、上述のコート層を形成し得るコート用ラミネート材料を、上述の繊維集合体の表面に貼り付けることを特徴とする。例えば、再生セルロース系高分子材料であるセロハンの片面に接着剤又は粘着剤を塗布したものを、接着面又は粘着面を繊維集合体の表面に押し当てて加圧、光硬化、熱硬化、又はホットメルトすることで、繊維集合体の表面にセロハンを貼り付けることができる。コート用ラミネート材料としては、前述のセロハンの他に、PET(ポリエチレンテレフタラート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PES(ポリエーテルサルフォン)、PC(ポリカーボネート)、ポリオレフィン、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)、ナイロン、PI(ポリイミド)等が挙げられる。
【0123】
本発明の繊維複合材料の線熱膨張係数としては、好ましくは0.05×10−5〜5×10−5−1であり、より好ましくは0.2×10−5〜2×10−5−1であり、特に好ましくは0.3×10−5〜2×10−5−1である。この繊維複合材料の線熱膨張係数は0.05×10−5−1より小さくてもよいが、セルロース繊維等の線熱膨張係数を考えると、実現が難しい場合がある。一方、この線熱膨張係数が5×10−5−1より大きいと、繊維補強効果が発現しておらず、ガラスや金属材料との線熱膨張係数との違いから、雰囲気温度により、窓材でたわみや歪みが発生したり、光学部品で結像性能や屈折率が狂う等の問題が発生したりする場合がある。なお、本発明において、線熱膨張係数は、繊維強化複合材料を20℃から150℃に昇温させた際の線熱膨張係数であり、ASTM D 696に規定された条件下で測定された値である。
【0124】
また、本発明の繊維複合材料は、繊維集合体の表面にコート層を形成したものであり、繊維集合体の内部に樹脂等が含浸されないため、繊維集合体の曲げ強度や曲げ弾性等の特性も損なわれることがなく、高強度かつフレキシビリティの高い材料とすることができる。
【0125】
本発明によれば、平均繊維径が4〜200nmであり50μm厚可視光透過率が3%以上である繊維集合体の表面をコート層でコートして平滑化することによって、50μm厚可視光透過率が60%以上の高透明な繊維複合材料を得ることができる。すなわち、このような繊維集合体では、内部の透明性が比較的高い一方で、表面の凹凸形状によって表面で光が反射し、全体の光線透過率が低下している傾向があり、コート層によって表面を平滑化することで、高透明な繊維複合材料を得ることができる。
【0126】
本発明では、繊維集合体の表面をコート層でコートするのみで、繊維集合体の空隙部分に樹脂等その他の材料を含浸させる必要がないため、原材料の使用量を少なくすることができ、処理工程を簡略化することができる。
【0127】
本発明の繊維複合材料は、繊維集合体の表面にコート層を形成することのみで、繊維集合体内の空隙部分にその他の材料を充填させることなく、透明性を得ることができるため、繊維集合体の特性である高フレキシビリティ及び低熱膨張の機能を効果的に発揮させることができ、雰囲気温度によって歪みや変形、形状精度低下が問題となりにくく、光学機能が向上し、光学材料として有用である。また、たわみ、歪みや変形等が少ないため、構造材料としても有用である。
【0128】
本発明の繊維複合材料は、ガラス繊維よりも軽量なセルロース繊維を用いることで、ガラス繊維強化樹脂より低い比重とすることができるため、ガラス繊維強化樹脂の応用分野において、その代替材料として用いることにより、軽量化を図ることができる。また、本発明の繊維複合材料は、繊維集合体内の空隙部分にその他の材料を充填したものに比べても比重を低くすることができるため、より軽量化を図ることができる。
【0129】
本発明において、繊維集合体として生分解性のセルロース繊維を用いることにより、廃棄する際に、コート層の処理法のみに従って処理することができ、廃棄処分ないしはリサイクルにも有利である。コート層は、繊維集合体の表面から除去するのみであるため、その処理も簡単になる。
【0130】
本発明の繊維複合材料は、高透明性、低熱膨張性、高フレキシビリティであり、配線回路を形成するための透明基板としても好適に用いることができる。
【実施例】
【0131】
以下に、製造例、実施例、及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例により限定されるものではない。なお、繊維複合材料の各種物性の測定方法は次の通りである。
【0132】
[50μm厚可視光透過率]
<測定装置>
日立ハイテクノロジーズ社製「UV−4100形分光度計」(固体試料測定システム)を使用。
<測定条件>
・6mm×6mmの光源マスク使用
・測定サンプルを積分球開口より22cm離れた位置において測光した。サンプルをこの位置に置くことで、拡散透過光は除去され、積分球内部の受光部に直線透過光のみが届く。
・リファレンスサンプルなし。リファレンス(試料と空気との屈折率差によって生じる反射。フレネル反射が生じる場合は、直線透過率100%ということはあり得ない。)がないため、フレネル反射による透過率のロスが生じている。
・スキャンスピード:300nm/min
・光源:タングステンランプ、重水素ランプ
・光源切り替え:340nm
<計算方法>
50μm厚可視光透過率は、50μm厚換算における波長400〜700nmでの光線透過率の平均値より求めた。
【0133】
[走査型電子顕微鏡写真(SEM写真)画像の撮影]
<試料の調製及び測定条件>
各試料に、金蒸着(蒸着膜厚:数nm)を行い、下記条件で電子顕微鏡観察を行った。
測定装置:JEOL6700F(日本電子株式会社製)
加速電圧:1.5kV
倍率:10000倍
ワーキングディスタンス:8mm
コントラストの調整:AUTO
【0134】
[平均繊維径]
各セルロース繊維の平均繊維径は各試料のSEM画像から求めた。
【0135】
[空隙率]
20℃において、サンプルの単位体積当りの質量を測定して密度を求め、次式により空隙率を求めた。なお、本実施例で用いた繊維はセルロースであり、繊維の密度は1.5g/cmである。
【0136】
空隙率(%)=(1−(サンプルの密度/繊維の密度))×100
【0137】
[線熱膨張係数の測定]
セイコーインスツルメンツ製「TMA/SS6100」を用い、ASTM D 696に規定された方法に従って下記の測定条件で測定した。
<測定条件>
昇温速度:5℃/min
雰囲気:N
加熱温度:20〜150℃
荷重:3g
測定回数:3回
試料長:4×15mm
試料厚さ:試料により異なる
モード:引っ張りモード
【0138】
[表面粗さRa(中心線表面粗さ)]
<測定装置・条件>
各試料について、下記条件で原子間力顕微鏡(AFM)を用いて評価した。
測定装置:SII製SPA−400
測定領域:5μm×5μm
【0139】
(製造例1)パルプシートの製造
原料としてパルプ由来のミクロフィブリル化セルロース:MFC(高圧ホモジナイザー処理で、針葉樹クラフトパルプ(NBKP)をミクロフィブリル化したもの、平均繊維径1μm)を水に十分に撹拌し、1重量%濃度の水懸濁液を7kg調製し、グラインダー(栗田機械作成所製「ピュアファインミルKMG1−10」)にて、この水懸濁液を、ほぼ接触させた状態の1200rpmで回転するディスク間を、中央から外に向かって通過させる操作を10回行った。
【0140】
グラインダー処理により得られたパルプナノファイバー(平均繊維径60nm)を、0.2重量%水懸濁液に調製後、ガラスフィルターで濾過して成膜した。これを55℃で乾燥し、厚さ40μm、密度1.3g/cm、空隙率13%のパルプシートを得た。
【0141】
(製造例2)コットンシートの製造
上述した製造例1において、原料としてコットン(脱脂綿)を用いたこと以外は同様にして、厚さ40〜45μm、密度1.4g/cm、空隙率7%のコットンシートを得た。
【0142】
(製造例3)高空隙率パルプシートの製造
上述した製造例1と同様の方法で製造したパルプシートを、含水状態のままt-ブチルアルコールコールへ浸し、水をすべて置換した。これを凍結乾燥機(EYELA製、FDU−2100、DRC−1000)を用いて凍結乾燥を行い、完全に脱水した。得られた乾燥パルプシートをプレスし、厚さ50μm、密度0.9g/cm、空隙率40%の高空隙率パルプシートを得た。
【0143】
(実施例1)
製造例1で得られたパルプシートの両面にセロハンテープ(屈折率1.5)を貼り付けラミネートした。
【0144】
(実施例2)
製造例2で得られたコットンシートの両面へアクリル樹脂A(エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、屈折率1.54)をスピンコートし樹脂を硬化した。スピンコート条件は、1000rpm10秒、2000rpm3秒、5000rpm45秒である。スピンコーターは、ミカサ株式会社製の1H−D7を使用した。樹脂の硬化は、ベルトコンベアー型UV照射装置(フュージョンシステムズ製、Fusion F300、LCBベンチトップコンベア)を用い、20J/cmの紫外線を照射して樹脂を硬化させた。
【0145】
(実施例3)
実施例2において、アクリル樹脂としてアクリル樹脂B(トリシクロデカンジメタクリレート(TCDDMA)、屈折率1.53)を用いたこと以外は同様にして、コットンシートの両面へアクリル樹脂Bをスピンコートして樹脂を硬化させた。
【0146】
(実施例4)
製造例2で得られたコットンシートの両面へプラズマCVD装置によってそれぞれ300nmのSiN層(屈折率1.92)を成膜した。このSiN層上からコットンシートの両面へ実施例2と同様の方法でアクリル樹脂Aをスピンコートして樹脂を硬化させた。
【0147】
(比較例1)
製造例2で得られたコットンシートをアクリル樹脂Aに減圧下(0.08MPa)で12時間浸漬処理し含浸させた後、取り出したシートを実施例2と同様のベルトコンベアー型UV照射装置を用い、20J/cmの紫外線を照射して樹脂を硬化させた。
【0148】
(比較例2)
比較例1において、アクリル樹脂としてアクリル樹脂Bを用いたこと以外は同様にして、コットンシートへアクリル樹脂Bを含浸させ硬化させた。
【0149】
(比較例3)
製造例3で得られたパルプシートの両面へアクリル樹脂Aを実施例2と同様の方法によってスピンコートし樹脂を硬化させた。
【0150】
(比較例4)
製造例3で得られたパルプシートの両面にセロハンテープを貼り付けラミネートした。
【0151】
次に、上述した製造例、実施例及び比較例の試料について各種評価を行った。
【0152】
図1に示す光線透過率のグラフは、製造例1のパルプシート(実線)、製造例2のコットンシート(破線)、及び製造例3の高空隙率パルプシート(点線)の50μm厚換算における光線透過率を波長に対し測定した結果である。この図では、製造例1のパルプシート及び製造例2のコットンシートの光線透過率がほぼ同程度で可視光域において約10〜30%となっており、製造例3の高空隙率パルプシートでは光線透過率が約0%であり光がほとんど透過していないことがわかる。
【0153】
また、製造例1〜3で得られたシートについて、厚さ、密度、空隙率、50μm厚可視光透過率を表1にまとめた。なお、50μm厚可視光透過率は50μm厚換算における波長400〜700nmの光線透過率を平均して求めた(以下同じ)。
【0154】
【表1】

【0155】
表1に示すように、製造例1のパルプシート及び製造例2のコットンシートでは空隙率がそれぞれ13%及び7%と低いが、製造例3の高空隙率パルプシートの空隙率は40%と高くなっており、光線透過率の結果とあわせると、空隙率が低い方が光線透過率が高くなる傾向があることがわかる。空隙率が低いと、シート内部に入射された光が空隙部分で散乱することが少なく透過するため、光線透過率が比較的高くなるからである。
【0156】
また、製造例1のパルプシート及び製造例2のコットンシートのSEM画像をそれぞれ図2及び図3に示す。各図の広域領域の画像(a)から各シートの表面は繊維が緻密に形成され空隙が小さくその数も少ないことがわかり、拡大領域の画像(b)から各シートの平均繊維径が細かく約4〜200nmの範囲内であることがわかる。
【0157】
次に、実施例及び比較例の試料について、50μm厚換算で光線透過率を波長に対し測定し、得られたグラフを図4〜図7に示す。また、表2に平滑化前後のシート厚さ、コート層の厚さ(片面)、50μm厚可視光透過率をまとめた。なお、コート層厚さ(片面)は平滑化前後のシート厚さの差を2で割って求めた(以下同じ)。
【0158】
【表2】

【0159】
図4は、実施例1のセロハンテープをラミネートしたパルプシート(実線)、製造例1で得られたラミネート前のパルプシート(破線)、及びセロハンテープのみを2枚貼り合せたもの(厚さ100μm、点線)の50μm厚換算における光線透過率を波長に対して測定した結果のグラフである。この図より、パルプシートのみのものに比べ、セロハンテープでラミネートしたパルプシートでは光線透過率が高く可視光域で60%以上であることがわかる。これは、パルプシートをセロハンテープでラミネートすることにより、パルプシートの表面が平滑化されて表面での光の散乱や反射が抑えられ、光線透過率が高くなるからである。
【0160】
また、セロハンテープのみの光線透過率は波長600nmで約85%であり、これはセロハンテープ自体の透明性や表面の平滑性に起因した値である。一方で、セロハンテープをラミネートしたシートの光線透過率は波長600nmで約80%であり、セロハンテープのみのものと比べて約5%ほど低い。このことから、ラミネートしたシートの光線透過率はセロハンテープの光線透過率に依存すると考えられる。これより、より透明性が高く表面が平滑な樹脂等をコート層として用いることで、ラミネートしたシートの透明性をさらに高めることができる。
【0161】
図5は、実施例2のアクリル樹脂Aをスピンコートしたコットンシート(実線)、比較例1のアクリル樹脂Aを含浸したコットンシート(波線)、及び厚さ100μmのアクリル樹脂Aのみのもの(点線)の50μm厚換算における光線透過率を波長に対して測定した結果のグラフである。コットンシートのみでは可視光域で光線透過率が約10〜30%であったものが(図1)、アクリル樹脂Aをスピンコートしたコットンシートでは、可視光域で60%以上の光線透過率を得ることがわかる(図5)。これは、アクリル樹脂Aによってコットンシートの表面が平滑化されたからである。また、スピンコートしたシートは、含浸したシートと比べ光線透過率がわずかに高く、スピンコートによる表面平滑化では含浸法と同程度の透明性が得られることがわかる。上述した実施例1と同様に、コートする樹脂等の透明性や表面平滑性を改善することで、スピンコートしたコットンシートでは透明性をより高めることができる。
【0162】
図6は、実施例3のアクリル樹脂Bをスピンコートしたコットンシート(実線)、比較例2のアクリル樹脂Bを含浸したコットンシート(破線)、及び厚さ100μmのアクリル樹脂Bのみのもの(点線)の50μm厚換算における光線透過率を波長に対して測定した結果のグラフである。コットンシートのみでは可視光域で光線透過率が約10〜30nmであったものが(図1)、アクリル樹脂Bをスピンコートしたものでは、可視光域で60%以上の光線透過率を得ることがわかる(図6)。これは、アクリル樹脂Bによってコットンシートの表面が平滑化されたからである。また、スピンコートしたシートと含浸したシートでは、光線透過率がほぼ同様の値を示しており、スピンコートによる表面平滑化では含浸法と同程度の透明性が得られることがわかる。上述した実施例1と同様に、コートする樹脂等の透明性や表面平滑性を改善することで、スピンコートしたシートでは透明性をより高めることができる。
【0163】
図7に、実施例4のSiN層を成膜した後にアクリル樹脂Aをスピンコートしたコットンシートの50μm厚換算における光線透過率を波長に対して測定した結果のグラフを示す。この図より、実施例4のシートの光線透過率は可視光域で60%以上となることがわかる。これより、SiN層のような無機材料からなる層を設けてもシートの高透明性が得られることがわかった。また、この実施例では、コットンシートとコート層との間にSiN層が介在するため、シート側にコート層の樹脂成分が全く侵入していない場合でも、高透明なシートが得られることが確認される。
【0164】
比較例3の高空隙率パルプシートにアクリル樹脂Aをスピンコートしたもの、及び比較例4の高空隙率パルプシートにセロハンテープをラミネートしたものでは、50μm厚換算の光線透過率を測定した結果、波長400〜1000nmの範囲でいずれも約0%であり、50μm厚可視光透過率は表2に示すように0%であった。比較例3及び4で用いた高空隙率パルプシートの光線透過率が図1に示すように約0%であり光をほとんど透過していないことから、基材となるシートの光線透過率が低い場合では、シートの表面を平滑化しても透明性が得られないことがわかる。これは、高空隙率パルプシートでは、シート内部の空隙に起因してシート内部で透明性が低下しているため、シート表面を平滑化したとしても内部が不透明のままであり、透明性が得られないからである。
【0165】
次に、実施例2、3、及び比較例1、2で得られたシートについて、線熱膨張係数を測定した結果を表3に示す。
【0166】
【表3】

【0167】
表3より、実施例2及び3のアクリル樹脂をスピンコートしたシートは、線熱膨張係数が20×10−6/Kであり、アクリル樹脂自体の線熱膨張係数(1.2×10−4/K程度)に対して十分に低く、低熱膨張なシートであった。これは、コットンシートに対してアクリル樹脂の使用量が少なく、コットンシートの特性をそのまま維持することができたからである。また、比較例1及び2のアクリル樹脂を含浸したコットンシートの線熱膨張係数も実施例1及び2と同様に20×10−6/Kである。含浸法ではアクリル樹脂の使用量を減らすことが難しいが、スピンコート法では表面が平滑化する程度までコート層の厚さを薄くしてアクリル樹脂の使用量を減らすことができるため、線熱膨張係数をより小さく調整することができる。これにより、本実施例のシートは、寸法安定性が要求される用途、例えば、ディスプレイ用フィルター、プロジェクションテレビ用スクリーン、配線基板、自動車や電車等の移動体用枠材料等の大型透明板用途、又は大型光学部品等、雰囲気温度による歪みや変形が問題となる用途に有効に利用することができる。
【0168】
次に、実施例2で得られたコットンシートについて、平滑化前後の表面粗さRa(中心線表面粗さ)を表4示す。
【0169】
【表4】

【0170】
表4より、平滑化前のコットンシートの表面粗さRaは6.9nmであるが、アクリル樹脂Aをスピンコートしたコットンシートの表面粗さRaは0.92nmであり、コート層によって表面が平滑化されていることがわかる。このように、コットンシートの表面にアクリル樹脂Aがコートされ表面が平滑化されることで、表面での光の散乱が抑えられ、高透明なシートが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0171】
【図1】図1は、製造例1のパルプシート、製造例2のコットンシート、及び製造例3の高空隙率パルプシートの50μm厚換算における光線透過率のグラフである。
【図2】図2は、製造例1のパルプシートのSEM画像であり、(a)は広域領域、(b)は拡大領域である。
【図3】図3は、製造例2のコットンシートのSEM画像であり、(a)は広域領域、(b)は拡大領域である。
【図4】図4は、実施例1のセロハンテープでラミネートしたパルプシート、製造例1のパルプシート、及びセロハンテープのみの50μm厚換算における光線透過率のグラフである。
【図5】図5は、実施例2のアクリル樹脂Aをスピンコートしたコットンシート、比較例1のアクリル樹脂Aを含浸したコットンシート、及びアクリル樹脂Aのみの50μm厚換算における光線透過率のグラフである。
【図6】図6は、実施例3のアクリル樹脂Bをスピンコートしたコットンシート、比較例2のアクリル樹脂Bを含浸したコットンシート、及びアクリル樹脂Bのみの50μm厚換算における光線透過率のグラフである。
【図7】図7は、実施例4のSiNを成膜しアクリル樹脂Aをスピンコートしたコットンシートの50μm厚換算における光線透過率のグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均繊維径が4〜200nmであり50μm厚可視光透過率が3%以上である繊維集合体と、前記繊維集合体表面をコートし平滑化するコート層とを備え、50μm厚可視光透過率が60%以上であることを特徴とする繊維複合材料。
【請求項2】
請求項1において、前記繊維集合体の空隙率が35%以下であることを特徴とする繊維複合材料。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記繊維集合体がセルロース繊維で構成されることを特徴とする繊維複合材料。
【請求項4】
請求項3において、前記セルロース繊維が植物繊維から分離した繊維であることを特徴とする繊維複合材料。
【請求項5】
請求項4において、前記セルロース繊維が前記植物繊維から分離した繊維を解繊処理したものであることを特徴とする繊維複合材料。
【請求項6】
請求項5において、前記解繊処理は磨砕処理を含むことを特徴とする繊維複合材料。
【請求項7】
請求項3から6のいずれか1項において、前記セルロース繊維が化学修飾及び/又は物理修飾されていることを特徴とする繊維複合材料。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項において、前記コート層が、有機高分子材料、無機高分子材料、及び有機高分子と無機高分子とのハイブリッド高分子材料のうち少なくとも1種又は2種以上の組み合せであることを特徴とする繊維複合材料。
【請求項9】
請求項8において、前記コート層が結晶化度10%以下で、ガラス転移温度が110℃以上の合成高分子材料であることを特徴とする繊維複合材料。
【請求項10】
請求項8又は9において、前記コート層が無機材料をさらに含むことを特徴とする繊維複合材料。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項において、前記コート層の屈折率が1.4〜1.7であることを特徴とする繊維複合材料。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項において、前記コート層の50μm厚可視光透過率が60%以上であることを特徴とする繊維複合材料。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1項において、前記繊維集合体表面の全面が前記コート層によってコートされることを特徴とする繊維複合材料。
【請求項14】
請求項1から12のいずれか1項において、前記繊維集合体表面のうち前記コート層がコートされない部分に被覆材料が被覆されることを特徴とする繊維複合材料。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか1項において、線熱膨張係数が0.05×10−5〜5×10−5−1であることを特徴とする繊維複合材料。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか1項に記載の繊維複合材料を製造する方法であって、前記コート層を形成し得るコート用液状物を、前記繊維集合体の表面に塗布し、次いで前記コート用液状物を硬化させることを特徴とする繊維複合材料の製造方法。
【請求項17】
請求項16において、前記コート用液状物は、流動状のコート材料、流動状のコート材料の原料、コート材料を流動化させた流動化物、コート材料の原料を流動化させた流動化物、コート材料の溶液、及びコート材料の原料の溶液から選ばれる1種又は2種以上の組み合せであることを特徴とする繊維複合材料の製造方法。
【請求項18】
請求項1から15のいずれか1項に記載の繊維複合材料を製造する方法であって、前記コート層を形成し得るコート用ラミネート材料を、前記繊維集合体の表面に貼り付けることを特徴とする繊維複合材料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−24778(P2008−24778A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−196935(P2006−196935)
【出願日】平成18年7月19日(2006.7.19)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成17年度文部科学省 フレキシブル・ユビキタス端末の実現 産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【出願人】(504132272)国立大学法人京都大学 (1,269)
【Fターム(参考)】