説明

織物

【課題】アイロンやプレス工程でのシワが発生せず、高ストレッチ性を有し、かつ風合いをも向上しさせた織物を提供する。
【解決手段】経糸および緯糸の少なくとも一方に、ポリトリメチレンテレフタレート繊維を含んでなる糸と、およびポリエチレンテレフタレート仮撚加工糸とを配列し、そのかつその該ポリトリメチレンテレフタレートを含んでなる糸とポリエチレンテレフタレート仮撚加工糸とのクリンプ伸長率差(CRZ)が30≧CRZ(%)≧5の関係を満たすことを特徴とする織物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストレッチ素材として好適なポリトレメチレンテレフタレートを含んでなる糸とポリエチレンテレフタレート仮撚加工糸を配列した織物に関するものであり、さらに詳しくは、アイロンやプレス工程でシワが発生せず、高ストレッチ性を有し、かつ優れた風合いを有する織物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリトレメチレンテレフタレートを含んでなる織物はストレッチ素材として好適であると提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、従来のポリトレメチレンテレフタレート織物はストレッチ性が大きい分、熱応力負荷時の残留捲縮発現も大きく、アイロンやプレス工程でのシワ発生が大きな問題となっている。
【0003】
この問題を解決するため、高密度にすることで対策をとってきたが、シワ改善には不十分であり、またストレッチ性も減少するという問題があった。
【0004】
なお、例えば特許文献2及び3には、ポリトレメチレンテレフタレートを特定の特性を有する仮撚加工糸とすることでシワ発生を防止する技術が開示されてはいるが、アイロンやプレス工程でのシワ発生に十分対応できたものではない。
【特許文献1】特許第3575395号公報
【特許文献2】特開2003−155633号公報
【特許文献3】特開2003−342843号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、上述の従来のポリトレメチレンテレフタレート糸を用いた織物では達成できなかった、アイロンやプレス工程でのシワが発生せず、高ストレッチ性を有し、かつ風合いをも向上させた織物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】

上述した目的を達成するため、本発明は以下の構成を採用する。すなわち、
(1)経糸および緯糸の少なくとも一方に、ポリトリメチレンテレフタレート繊維を含んでなる糸と、ポリエチレンテレフタレート仮撚加工糸とを配列し、かつ該ポリトリメチレンテレフタレートを含んでなる糸とポリエチレンテレフタレート仮撚加工糸とのクリンプ伸長率差(CRZ)が30≧CRZ(%)≧3の関係を満たすものであることを特徴とする織物。
【0007】
(2)ポリトリメチレンテレフタレートを含んでなる糸が、少なくとも一方がポリトリメチレンテレフタレートからなる異種のポリエステル系重合体をサイドバイサイド型または偏心芯鞘型に貼り合わされた複合繊維糸からなることを特徴とする前記(1)に記載の織物。
【0008】
(3)ポリトリメチレンテレフタレートを含んでなる糸が、ポリトリメチレンテレフタレートからなる重合体とポリエチレンテレフタレートからなる重合体をサイドバイサイド型または偏心芯鞘型に貼り合わされた複合繊維からなることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の織物。
【0009】
(4)二重織に形成されていることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の織物。
【発明の効果】
【0010】
本発明によって、従来得られなかったアイロンやプレス工程でのシワが発生せず、高ストレッチ性を有し、かつ、従来にないソフトなふくらみのある織物を提供することができる。
【0011】
また、本発明の織物は、衣料として特に婦人衣料素材に好適であるが、それ以外にスポーツ衣料、ユニフォーム衣料や裏地などにも用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
近年、衣服にストレッチ性を与える機能は必須となりつつある中、織物に高ストレッチ性とソフト感を付与するポリトリメチレンテレフタレート繊維がよく用いられている。ポリトリメチレンテレフタレート繊維は屈折したポリマー分子鎖を有することにより、通常のポリエチレンテレフタレート繊維に比べて細かい捲縮を有し、熱処理時に高いストレッチ性を有する。しかし、それゆえに染色工程で糸が有する全ての捲縮が発現せず、残留し、縫製時のアイロンやプレス工程で熱を付与した際に受熱した部分の生地だけさらに捲縮が発現するという現象が発生し、受熱していない部分との収縮差によりシワが発生するというトラブルが発生している。このトラブルを回避するために、織物設計で高密度設計にする等により、ストレッチ性を減少させることで対応していることが多く、満足できるストレッチ性を得られていないのが現状である。
【0013】
これを改善すべく、鋭意検討した結果、本発明者らは、ポリトリメチレンテレフタレートを含んでなる糸とポリエチレンテレフタレート仮撚加工糸とのクリンプ伸長率差(CRZ)が30≧CRZ(%)≧3を満たす糸を配列して使用することでこの織物収縮を大幅に防ぐことができることを見出した。
すなわち、本発明は、経糸および緯糸のいずれかの片方ないしは両方にポリトリメチレンテレフタレート繊維を含んでなる糸と、ポリエチレンテレフタレート仮撚加工糸とを配列し、かつ該ポリトリメチレンテレフタレートを含んでなる糸とポリエチレンテレフタレート仮撚加工糸とのクリンプ伸長率差(CRZ)が30≧CRZ(%)≧3の関係を満たすことを特徴とする織物、である。ここで、CRZ>30であるとアイロンやプレス工程でのシワ発生を防ぐことができず、また、CRZ<3であると高ストレッチ性を得ることができない。クリンプ伸長率差(CRZ)としては、より好ましくは20≧CRZ(%)であり、また、CRZ(%)≧5である。
【0014】
また、ポリトリメチレンテレフタレートを含んでなる糸の好ましいクリンプ伸長率は5以上40未満である。また、ポリエチレンテレフタレート仮撚加工糸の好ましいクリンプ伸長率は2以上25未満である。
【0015】
本発明において配列して使用するとは、ポリトリメチレンテレフタレートを含んでなる糸と同じ経および/または緯方向にポリエチレンテレフタレート仮撚加工糸を使用するということである。もちろん、配列して使用するのは、経方向および緯方向のいずれか一方、または両方であっても構わない。
【0016】
本発明におけるポリトリメチレンテレフタレートとは、90モル%以上がトリメチレンテレフタレートの繰り返し単位からなるポリトリメチレンテレフタレートであり、テレフタル酸を主たる酸性分とし、1,3−プロパンジオールを主たるグリコール成分として得られるポリエステルである。また、糸がポリトリメチレンテレフタレートからなるとは、繊維を構成するポリマー成分がトリメチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位としていることをいう。
【0017】
ポリトリメチレンテレフタレートからなる糸は曲げ剛性が低く、布帛としたとき、ソフトな風合いを得ることができる。本発明の効果を失わない範囲で、好ましくは20モル%以下、より好ましくは10モル%以下の割合で、他のエステル結合の形成可能な共重合成分を含んでも良い。共重合可能な化合物として、例えば、イソフタル酸、コハク酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、ダイマ酸、セバシン酸などのジカルボン酸類、一方、グリコール成分として、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどを挙げることができるが、これらに限られるものではない。また、艶消剤として2酸化チタン、滑剤としてのシリカやアルミナの微粒子、抗酸化剤としてヒンダードフェノール誘導体、着色顔料などを必要に応じて添加することができる。
【0018】
このポリトリメチレンテレフタレートの極限粘度は0.5以上1.2以下とすることが好ましい。0.5以上とすることで、安定した紡糸が可能となり、糸切れが発生しない。また、繊度むらが抑えられ、引張強度や耐屈曲摩耗性などにも優れた糸が得られる。また極限粘度を1.2以下とすることで、安定して紡糸することを可能とし、繊維の風合いもソフトにすることができる。より好ましくはは0.8以上1.0以下である。
【0019】
なお、極限粘度はオルソクロロフェノール10ml中に試料ポリマを0.10g溶かし、25℃にてオストワルド粘度計を用いて測定したものである。
【0020】
また、ポリトリメチレンテレフタレートを含んでなる糸は、ポリトリメチレンテレフタレート単独の仮撚加工糸等でも構わないが、より高ストレッチ性を発揮するためには構成成分の少なくとも一方がポリトリメチレンテレフタレートからなる2異種類のポリエステル系重合体をサイドバイサイド型または偏心芯鞘型に貼り合わた複合繊維からなることが好ましい。サイドバイサイド型または偏心芯鞘型の複合繊維は、それらの弾性回復率や収縮特性の差によって、捲縮を発現するものであり、単繊維内で歪みが生じて3次元コイル捲縮の形態をとり、織編物に高ストレッチ性を付与することができる。この際の3次元コイル捲縮とは通常の仮撚捲縮とは形態が異なり、微細な捲縮を有する。コイル捲縮を有するポリトリメチレンテレフタレートを構成成分とする複合繊維糸と仮撚捲縮を有するポリエチレンテレフタレート糸と同方向に併せて使用すると、2種類の捲縮が混在し、従来にないソフトで芯のない弾力感が得られるので好ましい。
【0021】
上記の複合繊維を構成するポリトリメチレンテレフタレートは高収縮成分を構成し、構成成分のもう一方(低収縮成分)は高収縮成分として用いたポリトリメチレンテレフタレートよりも低収縮であれば特に限定されないがポリエステルで構成されることが好ましい。具体的には、ポリエチレンテレフタレート 、ポリブチレンテレフタレート、また高収縮成分として用いたポリトリメチレンテレフタレートと特性の異なる、特に極限粘度の異なるポリトリメチレンテレフタレートを用いることもできる。なかでも、高収縮成分であるポリトリメチレンテレフタレートに対して、低収縮成分(低粘度成分)には、界面接着性が良好で、力学的特性、化学的特性及び原料価格を考慮した結果、ポリエチレンテレフタレートが最も好ましい。また、ポリトリメチレンテレフタレートを含んでなる糸がすなわち、ポリトリメチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレートのサイドバイサイド型または偏心芯鞘型複合繊維であることが好ましい。偏心芯鞘型の場合、芯側にポリエチレンテレフタレートが配置されるようにすることが好ましい。
【0022】
ポリエチレンテレフタレートとポリトリメチレンテレフタレートをサイドバイサイド型または偏心芯鞘型にすると、両者の収縮特性の差が大きいことにより、生じる3次元コイル捲縮径が小さくなり、単位繊維長当たりのコイル数が多くなる。これによって、捲縮ピッチをさらに細かくすることができ、ソフトタッチの織編物を得ることができる。なおこの際の構成する複合繊維の両成分の複合比率は重量比で8:2〜2:8の範囲が好ましい。さらにし好ましくは6:4〜4:6である。この範囲以外の場合には、高収縮側か低収縮側の成分が少なくなり、コイル捲縮が粗くなるので好ましくない。
【0023】
また、本発明におけるポリエチレンテレフタレートとは、テレフタル酸を主たる酸成分とし、エチレングリコールを主たるグリコール成分として得られるポリエステルである。ただし、いずれの成分も、20モル%、より好ましくは10モル%以下の割合で他のエステル結合の形成が可能な共重合成分を含むものであってもよい。共重合可能な化合物としては、例えばイソフタル酸、コハク酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、ダイマ酸、セバシン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などのジカルボン酸類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのジオール類を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。本発明においてはポリエチレンテレフタレート糸に仮撚加工を施したポリエチレンテレフタレート仮撚加工糸が用いられるが、仮撚加工は通常の方法及び装置を採用することができる。
【0024】
また、ポリトリメチレンテレフタレートを含んでなる糸とポリエチレンテレフタレート仮撚加工糸の繊度は同程度である方が、なめらかな風合いを織物に付与できるので好ましい。また、単繊維繊度は共に0.1dtex以上3dtex以下がソフトな風合いが得られるので好ましい。ポリエチレンテレフタレート仮撚加工糸のさらに好ましい単繊維繊度は0.1dtex以上、または1.5dtex以下である。
【0025】
また、ストレッチ性とソフト性との両立から、本発明に用いる糸の各総繊度は30dtex以上500dtex以下であることが好ましい。
【0026】
また、ポリトリメチレンテレフタレートを含んでなる糸とポリエチレンテレフタレート仮撚加工糸は、いずれも長さ方向に均一なものや太細のあるものでもよく、断面は丸型、三角、扁平、六角、L型、T型、W型、八葉型、ドッグボーン型などの多角形型、多様型、中空型など任意に選択することができるが、ポリトリメチレンテレフタレートを含んでなる糸をサイドバイサイド型にする場合にはストレッチバック性を重視するならば丸型を選択し、サラサラした風合いを望むならば、ドッグボーン型や扁平型が好ましい。
【0027】
また、ここで該二糸条の組み合わせとしては1本交互や2本交互、1:2の配列等の組み合わせがいずれも可能であるが、表面品位の観点から考えると好ましくは1本交互であり、またソフトな風合いを優先するとポリトリメチレンテレフタレートを含んでなる糸が多い2:1以上の配列が好ましい。しかし、ポリトリメチレンテレフタレートを含んでなる糸が8:1以上の多い比率であるとシワ発生を改善することはできないにくくなるので好ましくない。
【0028】
撚糸数はいずれの撚糸数でも構わないが、ポリトリメチレンテレフタレートを含んでなる糸としてサイドバイサイド型または偏心芯鞘型の複合繊維糸を用いる場合には無撚りでもふくらみのある織物が得ることができる。一方、ポリエチレンテレフタレート仮撚加工糸の撚糸数も無撚りでも構わないが、撚糸する場合には、ふくらみ感を維持するために1800T/m以下が好ましい。
【0029】
また、織物組織は、平、ツイル、サテン、変化組織等でいずれの組織でも構わないが、該二糸条をそれぞれ表および/または裏のどちらかに配した二重織りにするとふくらみがあり、表裏表面の収縮率が均斉化するのでし、ふくらみ感やソフト感に優れた織物となるので好ましい。
【0030】
なお、本発明におけるクリンプ伸長率差(CRZ)は以下のように測定する。
【0031】
織物から対象の糸を抜き出し、約12時間放置する。放置後の糸の上端をクランプで固定し、1.0mg/dtexの初荷重をかけて垂下し、30秒後上部クランプから正しく20cm(a)を測定し印しをつけ、次に90mg/dtexの測定荷重をかけて30秒後の試料の長さ(b)を測定し、次式により、クリンプ伸縮率を求める。
クリンプ伸縮率(%)={(b−a)/a}×100
これにより2種類の糸のクリンプ伸縮率を5回ずつ測定してそれぞれの平均値をだし、その平均値の差をクリンプ伸長率差(CRZ)とする。
【実施例】
【0032】
以下、本発明を実施例で具体的に説明する。
【0033】
なお、実施例における評価は、以下の方法で行なった。
【0034】
(1)アイロンシワ評価
150℃で5秒間、アイロンの自重をかけずに織物に接触させた状態でアイロンをかけた後の布帛のシワ発生状況を外観判定する。ここでのシワの高さとはアイロンを当てていない布帛面から、シワの発生した部分の最大高さまでの距離である。
5:シワが発生しない
4:高さ1cm以下のシワが1個以上3個未満発生する
3:高さ1cm以下のシワが3個以上発生する
2:高さ1cm以上のシワが1個以上3個未満発生する
1:高さ1cm以上のシワが3個以上発生する
(2)ソフトさの評価
実施例、比較例に記載の方法で得た織物のソフトさを触感により官能評価した。この際、従来品である比較例1の織物を標準として、以下の基準で5段階評価を行ない、10人のパネラーの評価結果を平均して判定した。
5:極めてソフトな風合い
4:ややソフトな風合い
3:標準織物と同等の風合い
2:やや堅い風合い
1:極めて硬い風合い。
【0035】
(3)ふくらみの評価
実施例、比較例に記載の方法で得た織物のふくらみを触感により官能評価した。この際、従来品である比較例1の織物を標準として、以下の基準で5段階評価を行ない、10人のパネラーの評価結果を平均して判定した。
5:極めてふくらみがある
4:ややふくらみがある
3:標準織物と同等のふくらみ
2:ややふくらみがない
1:極めてふくらみがない。
【0036】
(4)織物ストレッチ率
JIS−L−1096(1999)A法に従って測定した。
【0037】
(5)クリンプ伸長率差(CRZ)
織物から糸を抜き出し、12時間放置した。放置後の糸の上端をクランプで固定し、1.0mg/dtexの初荷重をかけて垂下し、30秒後上部クランプから正しく20cm(a)を測定し印しをつけ、次に90mg/dtexの測定荷重をかけて30秒後の試料の長さ(b)を測定し、次式により、クリンプ伸縮率を求めた。
クリンプ伸縮率(%)={(b−a)/a}×100
これにより2種類の糸のクリンプ伸縮率を5回ずつ測定してそれぞれの平均値をだし、その平均値の差をクリンプ伸長率差(CRZ)とした。
【0038】
(実施例1)
経糸の1方には、伸度110%のポリトリメチレンテレフタレート部分配向糸を仮撚温度180℃、延伸倍率1.3倍、施撚体ベルトニップ、仮撚数3300T/mで仮撚加工を実施した106dtex、36フィラメント、クリンプ伸長率25%の仮撚加工糸を用意し、もう一方にはおよび伸度180%のポリエチレンテレフタレート部分配向糸を仮撚温度210℃、延伸倍率1.8倍、施撚体ベルトニップ、仮撚数3200T/mで仮撚加工を実施した106dtex、144フィラメント、クリンプ伸長率10%のポリエチレンテレフタレート仮撚加工糸を用意して、1:1の割合で配列し、緯糸には106dtex、114フィラメントのポリエチレンテレフタレート仮撚加工糸を用いて無撚の平織物を作成した。
【0039】
引き続き97℃の熱水でリラックス精練、180℃で中間セット、テラシルネイビーブルー色の分散染料で130℃で染色、160℃で仕上セットした。得られた布帛は高いストレッチ性とふくらみ、ソフトな肌触りを併せ持つものであった。また、アイロン後の布帛の表面品位も良好であった。結果を表1に示す。
【0040】
(実施例2)
経糸の一方には、106dtex、36フィラメント、クリンプ伸長率34%のポリトリメチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレートを5:5の複合比でサイドバイサイド型に貼り合わせた複合繊維糸、もう一方には伸度180%のポリエチレンテレフタレート部分配向糸を仮撚温度210℃、延伸倍率1.8倍、施撚体ベルトニップ、仮撚数3200T/mで仮撚加工を実施した106dtex、144フィラメント、クリンプ伸長率10%のポリエチレンテレフタレート仮撚加工糸を1:1の割合で配列し、緯糸には106dtex、114フィラメントのポリエチレンテレフタレート仮撚加工糸を用いて無撚の二重織物を作成した。
【0041】
引き続き実施例1と同じように染色加工を実施した。得られた布帛は高いストレッチ性とふくらみ、弾力あるソフトな肌触りを併せ持つものであった。また、アイロン後の布帛の表面品位も良好であった。結果を表1に示す。
【0042】
(実施例3)
経糸の1方には、伸度100%のポリトリメチレンテレフタレート部分配向糸を仮撚温度180℃、延伸倍率1.25倍、施撚体ベルトニップ、仮撚数3300T/mで仮撚加工を実施した84dtex、72フィラメント、クリンプ伸長率18%の仮撚加工糸を用意し、もう一方にはおよび伸度190%のポリエチレンテレフタレート部分配向糸を仮撚温度210℃、延伸倍率1.8倍、施撚体ベルトニップ、仮撚数3200T/mで仮撚加工を実施した140dtex、36フィラメント、クリンプ伸長率14%のポリエチレンテレフタレート仮撚加工糸を用意して、1:1の割合で配列し、緯糸には106dtex、114フィラメントのポリエチレンテレフタレート仮撚加工糸を用いて無撚の平織物を作成した。
【0043】
引き続き97℃の熱水でリラックス精練、180℃で中間セット、テラシルネイビーブルー色の分散染料で130℃で染色、160℃で仕上セットした。得られた布帛は高いストレッチ性とふくらみを併せ持つものであった。また、アイロン後の布帛の表面品位も良好であった。結果を表1に示す。
【0044】
(比較例1)
経糸には、伸度110%のポリトリメチレンテレフタレート部分配向糸を仮撚温度180℃、延伸倍率1.3倍、施撚体ベルトニップ、仮撚数3300T/mで仮撚加工を実施した106dtex、36フィラメント、クリンプ伸長率25%のポリトリメチレンテレフタレート仮撚加工糸、緯糸には106dtex、144フィラメントのポリエチレンテレフタレート仮撚加工糸を用いて無撚の平織物を作成した。
【0045】
引き続き実施例1と同じように染色加工を実施した。得られた布帛はストレッチ性はあるが、アイロンをかけると大きいシワが発生するなどの品質面で問題があった。結果を表1に示す。
【0046】
(比較例2)
経糸には、106dtex、36フィラメント、クリンプ伸長率34%のポリトリメチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレートを5:5の複合比でサイドバイサイド型に貼り合わせた複合繊維糸、緯糸には106dtex、144フィラメントのポリエチレンテレフタレート仮撚加工糸を用いて無撚の平織物を作成した。結果を表1に示す。
【0047】
引き続き実施例1と同じように染色加工を実施した。得られた布帛はストレッチはあるが、アイロンをかけると極めて大きいシワが発生するなどの品質面で問題があった。
【0048】
(比較例3)
経糸には、110dtex、36フィラメント、クリンプ伸長率16%のポリトリメチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレートを5:5の複合比で配合したサイドバイサイド型に貼り合わせた複合繊維糸、および106dtex、36フィラメント、クリンプ伸長率14%のポリエチレンテレフタレート仮撚加工糸を1:1の割合で配列し、緯糸には106dtex、144フィラメントのポリエチレンテレフタレート仮撚加工糸を用いて無撚の平織物を作成した。
【0049】
引き続き実施例1と同じように染色加工を実施した。得られた布帛はストレッチ性が乏しく、表面ががさついた風合いであった。結果を表1に示す。
【0050】
(比較例4)
経糸には、110dtex、36フィラメント、クリンプ伸長率37%のポリトリメチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレートを5:5の複合比で配合したサイドバイサイド型に貼り合わせた複合繊維糸、および106dtex、114フィラメント、クリンプ伸長率2%のポリエチレンテレフタレート仮撚加工糸を1:1の割合で配列し、緯糸には106dtex、144フィラメントのポリエチレンテレフタレート仮撚加工糸を用いて無撚の平織物を作成した。
【0051】
引き続き実施例1と同じように染色加工を実施した。得られた布帛はストレッチ性が乏しいものであった。
【0052】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
経糸および緯糸の少なくとも一方に、ポリトリメチレンテレフタレート繊維を含んでなる糸と、ポリエチレンテレフタレート仮撚加工糸とを配列し、かつ該ポリトリメチレンテレフタレートを含んでなる糸とポリエチレンテレフタレート仮撚加工糸とのクリンプ伸長率差(CRZ)が30≧CRZ(%)≧3の関係を満たすことを特徴とする織物。
【請求項2】
ポリトリメチレンテレフタレートを含んでなる糸が、少なくとも一方がポリトリメチレンテレフタレートからなる異種の ポリエステル系重合体をサイドバイサイド型または偏心芯鞘型に貼り合わされた複合繊維糸からなることを特徴とする請求項1に記載の織物。
【請求項3】
ポリトリメチレンテレフタレートを含んでなる糸が、ポリトリメチレンテレフタレートからなる重合体とポリエチレンテレフタレートからなる重合体をサイドバイサイド型または偏心芯鞘型に貼り合わされた複合繊維からなることを特徴とする請求項1または2に記載の織物。
【請求項4】
二重織に形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の織物。

【公開番号】特開2008−127716(P2008−127716A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−315160(P2006−315160)
【出願日】平成18年11月22日(2006.11.22)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】