説明

織物

【課題】
ダウン保持性および引裂強力を満足しつつ、軽さ、薄さ、柔らかさ、着心地の良さという着用快適性を追求した、ダウンジャケット側地に好適な低通気性軽量織物を提供することである。
【解決手段】
総繊度が5〜15dtexのナイロンマルチフィラメント仮撚り加工糸を織物のタテ糸に2本以上引きそろえて用い、カレンダー加工を行うことを特徴とする、低通気性軽量織物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低通気性軽量織物に関するものであり、ダウンのような嵩高い詰め物の側地等として好適な織物である。
【背景技術】
【0002】
ダウンと呼ばれる鳥の羽毛は、嵩高く空気を保持しやすいため断熱性に優れ、冬物衣料に多く用いられている。羽毛はわずかな隙間から衣料の外に出易いため、低通気性織物の側地を用いてダウンを保持し、ダウン抜けを防止するのが一般的である。編物はループ構造をとるため糸と糸の隙間が大きく、低通気量を求められる本用途には適さない。
【0003】
例えば織物密度を高くしてカレンダーによる加圧を行うと繊維表面は平らになり、生地の通気度は低くなる。しかし織物密度を高くすると生地の重量は増加するため、軽量な織物とするのが難しい問題があった。また密度を上げることによる風合い硬化を防ぐために、かさ高加工糸を用いて生地を柔らかくする試みがなされているが、かさ高糸の糸と糸の隙間から通気し易くなる問題があった(特許文献1、2)。
【0004】
高密度織物を軽量化するために、繊度の低い糸を一部分または全面に用いる検討がなされているが、細くなるほど糸の強力は低下するため、実用に耐えうる織物とするには15dtex以上の糸を用いたり、ダウンジャケット側地に求められる撥水、帯電防止などの樹脂加工をあえて行わない制約があった。また異なる繊度の糸を配列して補強すると、生地に必ず柄がついてしまい、太い方の糸である補強糸のために生地の風合いが硬くなる問題があった(特許文献3、4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3835616号
【特許文献2】特開2003−138449
【特許文献3】特許第2653919号
【特許文献4】特許第3797486号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は従来技術の欠点を解消し、ダウンジャケットに要求されるダウン保持性、通気性および引裂強力を満足しつつ、軽さ、薄さ、着心地の良さという着用快適性を追求した低通気性軽量織物に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決するために発明者らは鋭意検討した結果、本発明をなすに至った。すなわち、総繊度が5〜15dtexのナイロンマルチフィラメント仮撚り加工糸を、織物のタテ糸に2本以上引きそろえて用い、カレンダー加工を行うことにより、快適な着心地となるダウンジャケット側地等として好適な織物を得るものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ダウンジャケット側地等として好適な低通気性軽量織物が得られ、実用的な強度を満足しつつ、軽く薄く柔らかく着心地の良いダウンジャケットが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】カレンダー加工前後における織物断面の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の織物は、低通気性かつ軽量であることが必要であるため、織り組織は平織、ななこ織、および平織とななこ織の組み合わせであるリップストップ織が好ましい。柔軟風合いの織物として綾織、朱子織などが知られているが、織物の目付けが重たくなる傾向がある。
【0011】
本発明の織物を構成する糸の繊度は、タテ糸の総繊度が5〜15dtexであることが必要である。タテ糸が15dtexを超えると軽量性に欠け、織物の風合いもやや硬いものとなり、好ましくない。タテ糸が細いほど軽量かつ柔軟な織物が得られ、縫製されたダウンジャケットは寒冷な中で身動きしやすいウェアとなるが、タテ糸が5dtex未満になると整経時の糸切れ頻度が高まり生産効率が極端に悪化するため、総繊度5dtex以上の糸をタテ糸に用いるのが好ましい。より好ましい総繊度は6dtex〜12dtex、更に好ましい総繊度は7dtex〜10dtexである。
【0012】
タテ糸の形状は特に限定されず、丸断面、三角断面、多葉断面、中空断面、扁平断面、分割型芯鞘断面などをとることができる。フィラメント数も特に限定されないが、あまり多いと糸強力が低下するため、好ましくは3〜20フィラメント、より好ましくは4〜10フィラメントである。
【0013】
タテ糸は短繊維よりも長繊維が低通気性の織物を得る観点から好ましい。合成繊維の長繊維が好ましいが、なかでも本発明においては、風合いの柔らかいナイロンが好ましい。ポリエステルを用いた場合は風合いが硬くなり、減量加工によって糸を細らせると風合いは柔軟となるが織物の緻密性が失われ、柔軟風合いと低通気性の両立は難しい。ナイロンにはナイロン6、ナイロン6,6等があるが、仮撚り加工のセット性がよいナイロン6、6がより好ましい。
【0014】
本発明のナイロンマルチフィラメントは、つや消し剤としても用いられる酸化チタンが0〜1.0重量%含有されていることが好ましい。含有量を増やしていくと糸の強度が徐々に低下して行き、おおむね1.0重量%を越えると、織物の引裂強力が不足する。酸化チタンを含有しなくとも織物としては問題ないが、ダウンジャケットにした時に羽毛が透けて見える可能性があるため、含有量は0.01〜0.5重量%がより好ましい。
【0015】
本発明のタテ糸は、仮撚り加工糸であることが必要である。仮撚り加工によって糸が捲縮すると織物の風合いが柔らかくなり、従来なかった柔軟な低通気性軽量織物が得られる。織物が柔軟になると、仕立てたダウンジャケットも柔軟になって身体へのフィット性が高まり、寒冷な外気が衣服内に進入しにくくなる。また総繊度の細い糸で起こりやすい整経や織布での過張力による糸切れが、仮撚り加工による糸の伸度アップにより起こりにくくなる副次的効果もある。仮撚りの方式は、ワンヒーターのウーリー加工、ツーヒーターのブレリア加工のいずれでもよいが、ウーリー加工糸の方が捲縮が大きく伸度も高くなるため好ましい。仮撚り加工糸に実撚を行うと糸の捲縮が押さえこまれ、その特徴である柔軟風合いが失われるため、無撚の状態で織物を作成することが好ましい。
【0016】
撚りのトルクが残るウーリー加工糸は糸のフィラメントが収束しやすいため、織物の状態でカレンダー加工を行うことが必要である。加圧によりフィラメントの集合体は開繊して生地の厚み方向でなく表面方向に分散するため、織物の通気性が低下し生地の厚みも減少する。カレンダーロールは加熱してもしなくてもよいが、加熱して加工を行うと、ロールと接する部分の糸が押しつぶされて変形し、さらに低通気性となり、かつ光沢が出る。カレンダーは片面、両面のいずれを処理してもよいが、両面処理の方が効果は高い。カレンダー加工は織り上げ後、精練後、染色後のいずれに行ってもよいが、低通気性の織物は染色液が織物を通過しにくく均一な染色が難しいため、染色後にカレンダー加工を行った方が、生産効率が良く好ましい。
【0017】
仮撚り加工糸では糸の捲縮に由来する単糸間空隙が、非仮撚り加工糸よりも大きいため、加工糸織物とした時も通気度が高くなりやすい。織物が通気する箇所は、織り構造の空隙すなわちタテ糸とヨコ糸の交錯点、および糸構造の空隙すなわちマルチフィラメント糸の空隙と考えられる。加工糸織物の通気量低減について鋭意検討を行った結果、実撚のない仮撚り加工糸を2本以上引きそろえてタテ糸に用い、カレンダー加工を行うと、織り構造の空隙および糸構造の空隙が飛躍的に小さくなり、ダウンジャケット側地等として用いるのに十分に低い通気量を得られることを見出した。
【0018】
織布・染色の工程では、引きそろえたマルチフィラメントの互いの長軸方向は生地の厚み方向や面方向にランダムに向いていると推定されるが、カレンダー加工の圧力によってマルチフィラメントの長軸は織物の面方向に並び、織物の表面をほぼ隙間なく覆うと考えられる(図1)。引きそろえた糸を1本のマルチフィラメント糸とみなすと、扁平化が起こっている。
【0019】
総繊度が2倍のマルチフィラメントを2本引きそろえの代わりに用いても、カレンダー加工による扁平効果は低く、低通気量を達成するには織密度を上げる必要があり目付けが重くなってしまう。引きそろえの本数は3本以上であってもよいが、本数が多くなるとカレンダー加工の扁平効果が低くなっていくので、2本引きそろえが最も好ましい。
【0020】
タテ糸の引き揃えは、整経前、整経後のいずれに行ってもよく、仮撚り加工後の巻き取り時、織機上の経通し時などに行うことができる。タテ糸である仮撚り加工糸のより方向はS方向、Z方向のいずれでもよく、2本引きそろえる糸は同方向の組み合わせ、異方向の組み合わせのいずれでもよい。織物を作成する織機は、ウォータージェット織機、エアージェット織機、フライシャトル織機などを用いることができる。
【0021】
本発明の織物に用いるヨコ糸に特に制限はないが、タテ糸と同種の糸を用いると織物の物性が安定しやすく好ましい。異種の糸を用いる場合でも総繊度は細い方が望ましく5〜15dtex程度、フィラメント数は3〜20フィラメントが好ましい。ヨコ糸中の酸化チタン量に特に制限はないが、0.01〜2.0重量%含有していることが好ましい。
【0022】
ヨコ糸に仮撚り加工は行っても行わなくてもよいが、仮撚り加工を行うとヨコ方向のストレッチ性が得られ、風合いが更に柔軟になるので好ましい。ヨコ糸は1本ずつ打ち込んでも、2本ずつ打ち込んでもよいが、2本ずつ打ち込むと、生地のタテヨコのバランスが良くなり物性が安定して好ましい。
【0023】
本発明の織物の織り密度は高いほど低通気性となるが、あまり高密度になると糸の自由度が低くなって引裂強力が低くなるため、次式で表されるカバーファクターは2000から2500の間であるのが好ましい。
【0024】
カバーファクター = タテ糸密度(本/インチ)×[ タテ糸総繊度(dtex)]1/2 + ヨコ糸密度(本/インチ)×[ ヨコ糸総繊度(dtex)]1/2
本発明の織物の染色加工は通常の織物と同様に取り扱えばよく、精練リラックス、中間セット、染色、カレンダー、樹脂加工などを行って所望の性量・風合いに仕上げることができる。
【0025】
樹脂加工は仕上げ加工時に行うのが好ましく、特に撥水加工と帯電防止加工は行うことが好ましい。撥水加工を行うことでダウンジャケットが水で濡れにくくなり、羽毛が湿って異臭を放ったり不衛生となることを防止できる。また帯電防止加工を行うことによって、静電気の発生が防止でき、生地同士や生地と羽毛がくっつかなくなり、縫製の作業性が向上する。撥水度は4級以上、摩擦帯電圧は3000V以下であると、水濡れおよび静電気の問題はほとんどなくなると考えられる。その他、柔軟、抗菌、消臭、芳香、遠赤外線加工などの機能剤を織物に加工することができる。
【0026】
このようにして得られた本発明の低通気性軽量織物は、目付けが30g/m以下となることが好ましい。目付けは軽い方が好ましいが、実用的な強度とのバランスからおおむね20g/m以上が好ましい。
【0027】
本発明の織物の通気量は、0.05〜3.0ml/cm/secであるのが好ましい。0.05未満であると、ダウンジャケットがいったんつぶれると、元のかさに回復し難い場合があり、3.0を超えるとダウンが抜けやすくなるためダウン側地には不適となる傾向がある。
【0028】
本発明の織物の引裂強力は、7.8N以上であるのが好ましい。7.8N未満であると、生地破れなどの品質劣化のリスクが高まる傾向がある。引裂強力が高いほど生地の強度は上がるが、織物の軽量性は失われていくため、適度な値として15N以下が好ましい。
【実施例】
【0029】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。はじめに、評価方法の説明を行う。
<糸の繊度>
JISL1096に基づいて測定を行った。
<糸の種類の鑑別>
JISL1030に基づいて同定を行った。
<糸の形態観察>
織物からタテ糸およびヨコ糸をほどいて外観観察を行い、捲縮のあるものを糸加工あり、
捲縮のないものを糸加工なしとした。
【0030】
捲縮のある糸については、糸のトルク有無により糸加工の種類を確認した。織物から解いて採取した糸1本を両手に持ちV字状の針金をぶら下げて糸を引っ張った後、両手を合わせて糸をV字状にして針金が回転するか否か観察し、針金が回転すれば糸にトルクの残ったウーリー糸、回転しなければブレリア糸とした。
【0031】
また、織物からほどいて採取した糸1本を伸縮してマルチフィラメントが2等分されれば2本引きそろえ、されなければ引きそろえなしとした。
【0032】
糸の断面形状については、織物のタテ方向およびヨコ方向を鋭利な刃物で切断した小片について、電子顕微鏡で観察を行い、タテ糸およびヨコ糸の断面形状を観察した。
<糸の酸化チタン量>
JISL1013に基づいて測定を行った。
<織物の組織>
JISL1096に基づいて観察を行った。
<織物の密度>
JISL1096に基づいて測定を行った。
<織物のカバーファクター>
次式により、計算を行った。
【0033】
カバーファクター = タテ糸密度(本/インチ)×[ タテ糸総繊度(dtex)]1/2
+ ヨコ糸密度(本/インチ)×[ ヨコ糸総繊度(dtex)]1/2
<織物のカレンダー有無>
織物の表面および裏面を軽く指でなぞり、平滑なものをカレンダーあり、凹凸のあるものをカレンダーなしとした。
<織物の目付け>
JISL1096(単位面積当たりの質量)に基づいて測定を行った。
<織物の厚み>
JISL1096に基づいて測定を行った。
<織物の通気量>
JISL1096(A:フラジール法)に基づいて測定を行った。
<織物の引裂強力>
JISL1096(D:ペンジュラム法)に基づいて測定を行った。
<織物の縫目滑脱>
JISL1096(B法、荷重:117.7N)に基づいて測定を行った。
<織物の伸長率>
JISL1096(B、印間長さ:20cm)に基づいて測定を行った。
<織物の撥水度>
JISL1092(スプレー試験)に基づいて測定を行った。
<織物の摩擦帯電圧>
JISL1094(摩擦布:綿)に基づいて測定を行った。
<織物の風合いおよび外観>
3名の者が、織物を手で触って風合いを評価し、また目視によって表側の外観を評価した。
実施例1
総繊度11dtex、10フィラメントのナイロン6,6マルチフィラメントについてフリクション仮撚りを行い、Z撚りのウーリー加工糸を得、2本同時に巻き取りを行った。この糸をタテ糸およびヨコ糸に用いてエアージェットルームにより平織物の生機を作成した。この生機に精練、中間セット、染色を行った。加熱したロールを用いて生地の表面および裏面にカレンダー加工を行った後、仕上げセットを行った。仕上げセット時に、下記組成の樹脂液に織物を浸漬し、マングルロールでの絞り率を65%とし、150℃で50秒のキュアを行った。
【0034】
撥水剤 :NKガード NDN−2000(日華化学社製) 1.0重量%
帯電防止剤:”ナイスポール” F−9160(日華化学社製) 0.1重量%
溶媒 :水 98.9重量%
得られた織物の特徴は表1の通りであり、ダウンジャケット側地として好適な低通気性軽量織物であった。
実施例2
総繊度8dtex、5フィラメントのナイロン6,6マルチフィラメントについてフリクション仮撚りを行い、Z撚りのウーリー加工糸を得、2本同時に巻き取りを行った。この糸をタテ糸に用いおよびヨコ糸に用いてエアージェットルームによりリップストップ織物の生機を作成した。この生機に精練、中間セット、染色を行った。加熱したロールを用いて生地の表面および裏面にカレンダー加工を行った後、仕上げセットを行った。仕上げセット時に実施例1と同様の樹脂加工を行った。得られた織物の特徴は表1の通りであり、ダウンジャケット側地として好適な低通気性軽量織物であった。
実施例3
実施例2と同様の工程で、生機密度を変更した織物を作成した。この生機に精練、中間セット、染色を行った。常温のロールを用いて生地の表面および裏面にカレンダー加工を行った後、仕上げセットを行った。仕上げセット時に実施例1と同様の樹脂加工を行った。得られた織物の特徴は表1の通りであり、実施例2よりも低通気性な織物が得られた。また、織物には光沢感やテカリが見られなかった。
実施例4
総繊度8dtex、5フィラメントのナイロン6,6マルチフィラメントについてフリクション仮撚りを行い、Z撚りのウーリー加工糸を得た。この糸をタテ糸に用い、織機の綜絖にタテ糸を2本ずつ通した。ヨコ糸には、総繊度8dtex、5フィラメントのナイロン6,6マルチフィラメントを2本そろえて巻き取った糸を用い、リップストップ織物の生機を作成した。この生機に精練、中間セット、染色を行った。加熱したロールを用いて生地の表面および裏面にカレンダー加工を行った後、仕上げセットを行った。得られた織物の特徴は表1の通りであり、実施例3よりも低通気性な織物が得られた。
実施例5
総繊度8dtex、5フィラメントのナイロン6,6マルチフィラメントについてフリクション仮撚りを行い、Z撚りのウーリー加工糸とS撚りのウーリー加工糸を得、2本いっしょに巻き取った。この糸をタテ糸に用いおよびヨコ糸に用いてエアージェットルームによりリップストップ織物の生機を作成した。この生機に精練、中間セット、染色を行った。加熱したロールを用いて生地の表面および裏面にカレンダー加工を行った後、仕上げセットを行った。仕上げセット時に実施例1と同様の樹脂加工を行った。得られた織物の特徴は表1の通りであり、ダウンジャケット側地として好適な低通気性軽量織物であった。
比較例1
総繊度8dtex、5フィラメントのナイロン6,6マルチフィラメントを2本いっしょに巻き取った。この糸をタテ糸に用いおよびヨコ糸に用いてエアージェットルームによりリップストップ織物の生機を作成した。タテ糸切れが多発し品位のよい生機を得られなかった。この生機に精練、中間セット、染色を行った。加熱したロールを用いて生地の表面および裏面にカレンダー加工を行った後、仕上げセットを行った。仕上げセット時に実施例1と同様の樹脂加工を行った。得られた織物の特徴は表1の通りであった。低通気性軽量織物として物性値は特に問題がないが風合いがやや硬く、織物にはタテスジが多く見られ品位は不良であり、ダウンジャケット側地としてふさわしくない外観であった。
比較例2
カレンダー加工を行わない他は実施例2と同様にして作成した織物の特徴を表1に示す。カレンダー加工を行わないと織物の通気量は十分低下せず、ダウンジャケット側地として不適であった。
比較例3
総繊度17dtex、7フィラメントのナイロン6,6マルチフィラメントについてフリクション仮撚りを行い、Z撚りのウーリー加工糸を得、2本同時に巻き取りを行った。この糸をタテ糸に用いおよびヨコ糸に用いてエアージェットルームによりリップストップ織物の生機を作成した。この生機に精練、中間セット、染色、両面カレンダー、仕上げセットを行った。仕上げセット時に実施例1と同様の樹脂加工を行った。得られた織物の特徴は表1の通りであり、ダウンジャケット側地として問題のない低通気性ではあるものの、目付けが重く、風合いもやや硬いため、ダウンの軽さや柔らかさをやや損ねる側地となった。
比較例4
実施例1の糸のZ撚りのウーリー加工糸をタテ糸およびヨコ糸に用い、エアージェットルームにより平織物の生機を作成した。この生機に精練、中間セット、染色を行った。加熱したロールを用いて生地の表面および裏面にカレンダー加工を行った後、仕上げセットを行った。仕上げセット時に、実施例1と同様の樹脂加工を行った。得られた織物の特徴は表1の通りであり、通気性が十分低くならず、ダウン抜けが懸念される側地となった。
【0035】
【表1】

【符号の説明】
【0036】
A:織物のタテ糸(マルチフィラメント)
B:織物のヨコ糸(マルチフィラメント)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
総繊度が5〜15dtexのナイロンマルチフィラメント仮撚り加工糸を織物のタテ糸に2本以上引きそろえて用い、カレンダー加工を行うことを特徴とする織物。
【請求項2】
該ナイロンマルチフィラメントに、酸化チタンが0.01〜1.0重量%含有されていることを特徴とする、請求項1記載の織物。
【請求項3】
該織物の目付けが30g/m以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の織物。

【図1】
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【公開番号】特開2010−236136(P2010−236136A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−85769(P2009−85769)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】