説明

缶及びその製造方法

【課題】
蓋の周縁部を胴体の上部の周縁部に被せ、双方の周縁部の形状により蓋を嵌め込むことで密封した缶により、残留液を残さず内容物を全て摂取すること。
【解決手段】
蓋と胴体とが重合されてなる缶において、前記蓋に係る重合部は第1の屈折パターンが形成される蓋屈曲部を具備し、前記胴体は前記第1の屈折パターンに対応する第2の屈折パターンが形成される胴体屈曲部を具備し、前記第1及び第2の屈折パターンが嵌合することで前記胴体屈曲部と前記蓋屈曲部とが重合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば缶及びその製造方法に係り、特に蓋と胴体とを結合して密閉する2ピース缶や3ピース缶等の缶及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の2ピース缶(ビール、炭酸飲料等)や3ピース缶(コーヒー、紅茶等)は蓋と胴体をカシメで結合していた。
【0003】
たとえば、特許文献1では、缶の胴体に蓋を嵌合し、蓋の周縁部を胴体にかしめて密閉する技術的思想を開示している。
【0004】
また、非特許文献1では、胴体に「スーパーエンド(登録商標)」と称する蓋を被せ、従来の製缶技術同様、重ね合わさった蓋と胴体との双方の端部を二重に巻き締める技術的思想を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−254797
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】http://techon.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20060412/116028/
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の製缶技術では、上記のように、蓋と缶の胴体との周縁部を「二重巻き締め」というかしめ加工で容器を密封していたが、種々の課題や問題点があった。
【0008】
図6は、従来の製缶技術に係る「二重巻き締め」によるかしめ加工を示す状態図である。同図に示す(a)は缶の蓋を胴体に収めた状態の拡大断面図、(b)は(a)の状態から二重巻き締めによるかしめ加工を施した後の状態の拡大断面図である。(a)に示すように、当該かしめ加工を施すためには蓋及び胴体の周縁部を湾曲状(以下、この湾曲状の周縁部を「カール部分」ともいう。)にして重なり合わせられるだけの量の材料を使用する必要があった。また、(b)に示す状態にするためには、蓋の周縁部510が胴体の周縁部520を二重に巻き締めるためのかしめ加工を施す工程が必要であった。したがって、従来の製缶技術により製造された缶は、かしめ加工に伴う空間530及び窪み540を有する形状にせざるを得なかった。缶を逆さにしたとしても、この空間530に内容物(たとえば液体)が入りこんでしまうために、内容物が残留してしまう。また、いったん外に出されても、窪み540部分に入り込んだ内容物は残留してしまう。
【0009】
図7は、かしめ加工で製造された缶の内容物を摂取した後の残留液の残留状態を示す概念図である。同図に示すとおり、缶を傾けることで図示しない開口部(以下、「飲み口」或いは「切り口」ともいう。)から内容物を摂取した後に、空間530及び窪み540に残留液(図の網掛部分。ただし、液体に限られず、たとえば粉体であってもよい。以下同じ。)が発生してしまう事態を避けることができない。当該残留液は、表面張力の影響により、缶の傾き角を変えても流れず、さらに缶を振動させても完全に除去することはほとんど不可能であった。したがって、缶の内容量を全て摂取することはできなかった。また、残留液の発生により、廃棄時には当該残留液に群がる害虫等の生物を引き寄せる可能性の高い悪臭が漂うこととなり、人体にも悪影響を及ぼす可能性もあった。
【0010】
図8は、従来の製缶技術に「スーパーエンド(登録商標)」と称する蓋(以下、単に「スーパーエンド」ともいう。)を用いた場合と比較した状態の拡大断面図である。同図に示すとおり、スーパーエンドの周縁部610は、従来の上蓋の周縁部510よりも傾斜が緩やかであるため、その分のアルミニウム等の材料使用量が削減され、従来の蓋に費やしていたアルミニウム使用量を削減するものとされる。しかしながら、この場合においても上述したかしめ加工を必要とするため、同様に空間530及び窪み540が生じ、残留液発生等の問題が解消したわけではない。
【0011】
このように、かしめ加工により製造された缶は、蓋と胴体との周縁部を重ねて二重に巻きつけるため高い密閉性を有するが、内容物の摂取に適した形状、廃棄に伴う環境問題、製造しやすい工程等の観点において多くの課題を有している。また、かしめ加工を適用することで、その分のアルミニウム使用量が無駄となる。
【0012】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決することを企図したものであり、かしめ加工を施さずに缶の蓋と胴体とを結合して密閉性を保持し、残留液を発生させる空間や窪みを形成しないことで、アルミニウム使用量をさらに削減し、内容物の完全な摂取を可能とする缶及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
かかる課題を解決するため、本発明は、周縁部を胴体の上部の周縁部に被せ、双方の周縁部の形状により蓋を嵌め込むことをその主な特徴とするものである。
【0014】
具体的に、本願に係る缶は、蓋と胴体とが重合されてなる缶において、前記蓋に係る重合部は第1の屈折パターンが形成される蓋屈曲部を具備し、前記胴体は前記第1の屈折パターンに対応する第2の屈折パターンが形成される胴体屈曲部を具備し、前記第1及び第2の屈折パターンが嵌合することで前記胴体屈曲部と前記蓋屈曲部とが重合される。或いは、蓋を胴体に外嵌するもので、蓋周縁部に係る蓋先端部が胴体周縁部に係る胴体屈曲部に嵌合し、当該胴体周縁部に係る胴体先端部が当該蓋周縁部に係る蓋屈曲部に嵌合し、それに伴い当該蓋周縁部と当該胴体周縁部とが密着し、さらに反作用力により蓋を抑止するものである。
【0015】
ここで、本願に係る缶は、たとえば、缶の胴体と底部が一体となった2ピース缶及び胴体、上蓋及び底蓋の3つの部分からなる3ピース缶のいずれでもよく、限定はない。また、缶の材質としては、たとえばアルミニウムやスチールを含むが、その他の材質であってもよい。さらに、缶の形状については、円柱状や直方体状でもよく、限定はない。また、缶の蓋に開口部を有する場合、たとえば缶切り等を用いて開口するもの及び缶切り等を用いずに蓋の上面に付けられたタブを引っ張るプルトップを含むが、これらに限定されるわけではない。
【0016】
缶の蓋は、3ピース缶の場合には上蓋及び/または底蓋を示す。当該蓋は、タブ、リベット、スコア等を有する面状の部分(以下、「蓋面状部」ともいう。)及び胴体の外周部分を外嵌できる部分(以下、「蓋周縁部」ともいう。)を有する。蓋周縁部は、所定の傾斜を有し、その先端部(以下、「蓋先端部」ともいう。)は、先端に行くほど厚みが薄くなるもので、胴体屈曲部と密着したときに段差を生じない程の薄さが好ましい。また、蓋周縁部は、蓋面状部と繋がる直前で屈曲する部分(以下、「蓋屈曲部」ともいう。)を有し、たとえば、湾曲した形状、角ばった形状その他の形状を含み、角度や寸法に限定はない。
【0017】
第1の屈折パターン、第2の屈折パターンは、折曲面の断面が一定のパターンを形成し、これら第1の屈折パターン及び第2の屈折パターンが嵌め合うことができるものをいい、たとえば、波面、ギザギザ面、凹凸面等であってもよい。
【0018】
缶の胴体は、2ピース缶及び3ピース缶のいずれにおいても、少なくとも缶の胴体全体を形成する部分(以下、「胴体側面部」ともいう。)及び外周部分で蓋周縁部が嵌合される部分(以下、「胴体周縁部」ともいう。)を有する。胴体周縁部は、所定の傾斜を有し、その先端部(以下、「胴体先端部」ともいう。)は、先端に行くほど厚みが薄くなるもので、蓋屈曲部と密着したときに段差を生じない程の薄さが好ましい。また、胴体周縁部は、胴体側面部と繋がる直前で屈曲する部分(以下、「胴体屈曲部」ともいう。)を有し、たとえば、湾曲した形状、角ばった形状その他の形状を含み、角度や寸法に限定はない。
【0019】
蓋先端部は胴体屈曲部に嵌合する形状を有し、胴体先端部は蓋屈曲部に嵌合する形状を有する。蓋先端部が胴体屈曲部に嵌合後は、容易に取り外しができない程度に嵌合し、密着することが好ましい。また、それにより胴体先端部が蓋屈曲部に嵌合し、その後は容易に取り外しができない程度に嵌合し、密着することが好ましい。
【0020】
このように構成することで、蓋周縁部が胴体周縁部を覆うように外嵌・嵌合することで、蓋先端部が胴体屈曲部に嵌合して密着し、同時に胴体先端部が蓋屈曲部に嵌合して密着し、それに伴い蓋周縁部と胴体周縁部との間に隙間が生じない程度に密着する。したがって、缶の内圧が増加したときは、蓋面状部の内側に圧力が加わるため、蓋先端部と胴体屈曲部とが嵌合する部分及び胴体先端部と蓋屈曲部とが嵌合する部分とで結合力を生み、さらに反作用力が生じるため、蓋を封止することができる。
【0021】
上記の構成においては、前記胴体屈曲部に延設される突端である胴体先端部は前記蓋屈曲部に内接して嵌合されるようにしてもよい。この場合さらに、前記蓋屈曲部に延設される突端である蓋先端部は前記胴体屈曲部に外接して嵌合されるようにしてもよい。
【0022】
この構成によれば、蓋周縁部と胴体周縁部との間の密着度がさらに高まるため、缶の内圧が増加した際に蓋面状部の内側に圧力が加わることで、蓋先端部と胴体屈曲部とが嵌合する部分及び胴体先端部と蓋屈曲部とが嵌合する部分とで結合力を生み、さらに反作用力により蓋を封止することができるという効果をさらに増大させることができる。
【0023】
また、上記のいずれかの構成において、前記第1の屈折パターン及び/もしくは前記第2の屈折パターンは略階段状である構成としてもよい。
【0024】
蓋周縁側部は、蓋周縁部であって蓋先端部及び蓋屈曲部の間に存在する部分である。また、胴体周縁側部は、胴体周縁部であって胴体先端部及び胴体屈曲部の間に存在する部分である。蓋周縁側部及び胴体周縁側部は、所定の段差を有する略階段状であり、階段の数や個々の階段の角度及び寸法に限定はない。また、階段の段部は厳密に角である必要はなく、むしろ微視的には段の折曲が形成される箇所が緩やかな曲面で形成されていてよい。
【0025】
このように構成することで、蓋周縁部と胴体周縁部とが密着する際に、蓋周縁側部及び胴体周縁側部の個々の略階段部分が突合して密着する。したがって、缶の内圧が増加したときは、蓋面状部の内側に圧力が加わるため、蓋先端部と胴体屈曲部とが嵌合する部分及び胴体先端部と蓋屈曲部とが嵌合する部分とで反作用力が生じるだけでなく、さらに各階段部分で反作用力が生じるため、より蓋の抑止強度が増す構造とすることができる。
【0026】
また、この構成において、本願に係る缶は、前記胴体先端部を前記蓋屈曲部に嵌合させ、前記蓋先端部を前記胴体屈曲部に嵌合させる際に、シーリングコンパウンドにて封止する構成としてもよい。
【0027】
シーリングコンパウンドとは、蓋先端部と胴体屈曲部との嵌合部分と、胴体先端部と蓋屈曲部との嵌合部分にそれぞれ接着素材を塗布し、密封をより完全なものとする際に用いる材料である。シーリングコンパウンドは、ゴム成分、粘着付与剤、充填剤、有機過酸化物等のいずれか一つまたは複数の成分を配合した組成物からなるものでもよい。具体的には、ゴム成分としては、スチレン・ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、天然ゴム、ニトリルゴム等を用いることが可能である。また、粘着付与剤(樹脂成分)としては、ロジン、水素添加ロジン、ロジンエステル、水素添加ロジンエステル及び硬化ロジンの様なロジン系樹脂、α−ピネン、β−ピネン、ジペンテンのようなテルペン系樹脂、フェノールホルムアルデヒド樹脂、ロジンやテルペンの様な天然樹脂で変性したフェノール樹脂、キシレンホルムア ルデヒド樹脂及びその変性樹脂、石油炭化水素系樹脂等が用いられる。充填剤としては、コロイダルシリカ、含水ケイ酸、合成ケイ酸塩、無水ケイ酸の様なシリカ系充填剤、軽質及び重質炭酸カルシウム、活性化炭酸カルシウム、カオリン、焼成クレー、タルク、アルミナホワイト、硫酸カルシウム、水酸化アルミニウム、軽石粉、ガラス粉、酸化亜鉛、二酸化チタン、カーボンブラック等が用いられる。有機過酸化物としては、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)2−メチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロへキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート等のパーオキシケタール類、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート等のパーオキシエステル類、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジ(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン等のアルキルパーオキサイド類等が用いられる。
【0028】
このように構成することで、蓋先端部と胴体屈曲部との接する面及び胴体先端部と蓋屈曲部との接する面にそれぞれシーリングコンパウンドを塗布するため、皮膜強度の向上により外的応力からの耐性が向上し、高温殺菌の際、缶の内圧が外圧より高くなり耐性が向上し、またさらに缶の内外の圧力差が平衡になろうとする際の空気や内容物による応力への耐性が向上し、密封性能も併せて向上するという顕著な効果が得られる。
【0029】
また、上記のいずれかの構成において、前記缶は2ピース缶とし、底部を凹みドーム型にする構成とすることもできる。
【0030】
底部を凹みドーム型にする構成とは、底部を外側から見ると中央部分がドーム状に突出する形状であることを示す。当該ドーム状の内径や高さ等の寸法に限定はないが、缶を直立させるために、外周部分よりも突出しないことが好ましい。
【0031】
このように構成することで、底部が凹みドーム型となるので、内圧増加時にドーム部分で柔軟に吸収するため、急激な缶の内圧変化にも対応することができる。また、これにより缶の容積を更に増加させることができる。
【0032】
また、上記のいずれかの構成において、本願に係る缶は、前記蓋面状部に係る開口部において、当該蓋面状部の中心から最も離れたところを頂点として傾斜を持たせた構成としてもよい。
【0033】
すなわち、蓋を水平にした場合、開口部のうち缶を傾けて内容物を摂取する部分が蓋面状部の中心から最も離れたところであり、当該部分を最も高い位置になるようにし、全体として当該開口部が傾斜になるように構成する。当該開口部の傾斜角に限定はないが、容易に内容物を摂取する角度が好ましい。
【0034】
このように構成することで、開口部において、蓋面状部の中心から最も離れたところを頂点として傾斜が形成されるので、飲み口に人が口をつけて内容物を摂取する際は、この傾斜を伴う形状が口の形状と一致して、内容物をより摂取しやすく、残留物をこれまでよりも画期的に減少させることが可能となる。さらに、タブの取付スペースを確保すると共に、耐久性の向上を図ることができる。
【0035】
また、上記課題を解決するために、本願に係る缶の製造方法は、天蓋の面状部に蓋先端部及び蓋屈曲部を有する蓋周縁部を連続形成させ、該蓋屈曲部に第1の屈折パターンを形成するステップと、底蓋に胴体周縁側部を立ち上げ形成し、該胴体周縁側部の遊端に胴体屈曲部及び胴体先端部を有する胴体周縁部を連続形成させ、該胴体屈曲部に第2の屈折パターンを形成するステップと、前記第1及び第2の屈折パターンが嵌合するように前記胴体屈曲部を前記蓋屈曲部に外嵌させるステップと、前記蓋先端部を前記胴体屈曲部に嵌合させ、前記胴体先端部を前記蓋屈曲部に嵌合させるステップとを具備する。或いは、蓋先端部、蓋屈曲部及び蓋周縁側部からなる蓋周縁部を有する蓋を製造するステップと、胴体先端部、胴体屈曲部及び胴体周縁側部からなる胴体周縁部を有する胴体を製造するステップと、当該蓋と当該胴体とを外嵌し、蓋先端部を胴体屈曲部に嵌合し、胴体先端部を蓋屈曲部に嵌合するステップとを有する。
【0036】
このように構成することで、カール部分がない蓋及び胴体を製造することができ、当該蓋の蓋先端部と当該胴体の胴体屈曲部とを嵌合し、当該胴体の胴体先端部と当該蓋の蓋屈曲部とを嵌合することで、嵌合による結合力及び当該嵌合に伴う反作用力により密封性を有する缶を製造することができる。
【発明の効果】
【0037】
本願によれば、蓋を胴体に外嵌もしくは嵌合し、蓋先端部が胴体屈曲部に嵌合し、胴体先端部が蓋屈曲部に嵌合する、いわゆる「嵌め殺し」加工により、二重巻き締めを行うかしめ加工を施す蓋及び胴体に係るカール部分は不要であるため、従来の二重巻き締めのものよりも製缶に必要な材料使用量をより削減することができる。したがって、単位数あたりの製造コストを低減することができ、環境対策にも有益となる。すなわち、ライフサイクルアセスメント(Life Cycle Assessment、以下、「LCA」ともいう。)の一環として、缶のライフサイクル(原料の選定から廃棄物の処理まで)における環境への影響についての評価も向上するものとなる。缶やその製造方法等が環境に与える影響を、原料採取から設計、生産、流通、消費、廃棄に至るまでの各段階における資源・エネルギーの消費と環境負荷を定量的に分析し、総合評価することにより、環境負荷の低減及び環境改善を図る手法となり得る。したがって、本願の技術思想に係る缶やその製造方法によって、世界規模の問題であるエネルギー消費量、材料使用量、二酸化炭素の排出量、廃棄物の量等を著しく改善することは明確である。
【0038】
また、ライフサイクルコスト(Life Cycle Cost、以下、「LCC」ともいう。)の観点からすれば、結果として、購入者において缶は生産財であって商品を購入してから廃棄するまでの費用を軽減し、製造者においては企画・研究開発から材料残余分の廃棄に至るまでの経費(研究開発費、流通費、生産費、運用費、廃棄費等)を削減することができるため、本技術分野に係るLCCの最適化を図ることができる。
【0039】
また、かしめ加工に伴う空間や窪みもなく、底部がドーム形状のため、缶全体として容積が増加することになる。すなわち、蓋の面がより高くなり、凹みドーム型の底面がより低くなるため、容量が増える。逆にいえば、同じ容積を収容するのに、胴体の全長を縮小させることができる。したがって、缶製造に要する材料を大きく削減することができる。
【0040】
さらに、空間や窪みに残留液が滞留することなく略全ての内容物を摂取することができる。またさらに、缶のスコアを人が飲み口とする場合においても、このような形状により拭きやすくなり清潔性を保つことができるため、エチケット面においても有益である。
【0041】
なお、蓋において蓋面状部に係る開口部において、蓋面状部の中心から最も離れたところを頂点として傾斜を持たせることで、内容物を摂取しやくすなり、残留液をより滞留させることがなくなる。したがって、従来の缶において内容量の表示値よりも多めに注入するような配慮も不要となる。また、2ピース缶において、底部を凹みドーム型にすることで、内圧変化に伴う膨張にも圧力を吸収して柔軟に対応することができ、破裂等を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1A】本発明の一実施形態に係る飲料用の2ピース缶の上面の外観図である。
【図1B】本発明の一実施形態に係る飲料用の2ピース缶の全体像の断面図である。
【図1C】本発明の一実施形態に係る飲料用の2ピース缶の底面の外観図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る蓋と胴体との結合状態を拡大した図(図1(b)のX部分)である。
【図3】本発明の一実施形態に係る2ピース缶の内圧変化に伴う蓋と底部とで行われる圧力調整及び蓋と胴体との結合状況を示す状態図である。
【図4A】本発明の一実施形態に係る2ピース缶の内容物を摂取する際の内容物の流動状態を示す図である。
【図4B】本発明の一実施形態に係る2ピース缶の内容物のうち微量に残り得る残留液を摂取する際の流路を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る2ピース缶の製造工程を示すフローチャートである。
【図6】従来の製缶技術に係る「二重巻き締め」によるかしめ加工を示す状態図である。
【図7】かしめ加工で製造された缶の内容物を摂取した後の残留液の残留状態を示す概念図である。
【図8】従来の製缶技術に「スーパーエンド」と称する上蓋を用いた場合と比較した状態を断面視した拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。なお、以下では、本発明の目的を達成するための説明に必要な範囲を模式的に示し、本発明の該当部分の説明に必要な範囲を主に説明することとし、説明を省略する箇所については公知技術によるものとする。
【0044】
図1A乃至図1Cは、本発明の一実施形態に係る飲料用の2ピース缶1の全体像を示す図である。当該2ピース缶1は、蓋10、胴体20、底部30で構成されている。図1Aは2ピース缶1の蓋10の上面外観図、図1Bは2ピース缶1の断面図、図1Cは2ピース缶1の底部30の底面外観図である。
【0045】
図1A及び図1Bに示すように、蓋10は、蓋面状部110と蓋周縁部120とを具備して構成される。
【0046】
蓋面状部110は、飲料水等の内容物を摂取するための開口部分であるスコア1110、スコア1110を開口するための力点となるタブ1120、タブ1120の動作の支点となるリベット1130を有する。蓋面状部110は、スコア1110から内容物を摂取する際に2ピース缶1を傾けることで内容物が流れ出る部分を頂点として所定の角度で傾斜を持たせる形状とする。こうすることで、この傾斜を伴う形状が口の形状と一致して、内容物をより摂取しやすくなる。また、タブ1120の取付スペースを確保すると共に、耐久性の向上を図ることができる。
【0047】
図2は、本発明の一実施形態に係る蓋10と胴体20との結合状態を拡大した図(図1BのX部分)である。蓋周縁部120及び後述する胴体周縁部220については、同図も参照しながら説明を行う。
【0048】
蓋周縁部120は、所定の傾斜を有し、蓋先端部1210、蓋屈曲部1220、蓋周縁側部1230を具備して構成される。蓋先端部1210は、好適には先端に行くほど厚みが薄くなるものであり、後述する胴体屈曲部2220と密着したときには段差を生じない程の薄さがさらに好ましい。こうすることで、突出部分がなくなり、あたかも蓋10と胴体20とが一体型となっているかのように見える。また、外力が加わることもなく、蓋10が外れる要因にもならない。さらに、人が2ピース缶1を手に持つ場合には、より安全性が増す。蓋屈曲部1220は、蓋面状部110と繋がる直前で屈曲する部分で、所定の内径を有する湾曲形状である。蓋周縁側部1230は、蓋先端部1210と蓋屈曲部1220の間の部分で、所定の段差を有する略階段状に形成されるが、階段の数や個々の階段の角度及び寸法に限定はない。なお、この階段状については、微視的には曲面が部分形成され、折り曲げ部が角を形成しないのが好ましい。
【0049】
また、胴体20は、胴体側面部210及び胴体周縁部220とを具備して構成されている。胴体周縁部220は、所定の傾斜を有し、胴体先端部2210、胴体屈曲部2220、胴体周縁側部2230を有して構成される。胴体先端部2210は、好適には先端に行くほど厚みが薄くなるものとし、蓋屈曲部1220と密着したときには段差を生じない程の薄さがさらに好ましい。こうすることで、内容物が滞留することもなくなる。また、人がスコア1110に口をつけて内容物を摂取する場合には、より安全性が増す。胴体屈曲部2220は、胴体側面部210と繋がる(或いは一体形成される)直前で屈曲する部分で、所定の内径を有する湾曲形状である。胴体周縁側部2230は、胴体先端部2210と胴体屈曲部2220の間の部分で、所定の段差を有する階段状であり、階段の数や個々の階段の角度及び寸法に限定はない。
【0050】
図1B及び図1Cに示すように、底部30は、凹みドーム部310、脚部320、底内凸部330を有して構成される。
【0051】
凹みドーム部310は、底部30を外側から見ると中央部分がドーム状に突出している部分である。ドーム部分の内径や高さ等の寸法に限定はないが、2ピース缶1を直立させるために、脚部320よりも突出しないことが好ましい。脚部320は、2ピース缶1を直立させるための部分であって、その形状は湾曲状でも角ばった形状でもいずれでもよい。底内凸部330は、2ピース缶1内部に突出しており、凹みドーム部310及び脚部320を設けることで形成される部分である。その形状は、湾曲状でも角ばった形状でもいずれでもよいが、2ピース缶1の内圧変化に柔軟に対応するため湾曲状とすることが好ましい。
【0052】
図2を用いて、蓋10と胴体20との結合させるための動作状況について、詳細な説明を行う。
【0053】
蓋10は、胴体20の上方向から被せるように外嵌して、蓋10と胴体20とを結合させる。このとき、蓋先端部1210は先端に行くほど厚みが薄く、滑らかな湾曲形状であり、かつ胴体周縁側部2230は図示する向きに段差を有するため、スムーズに外嵌することができる。そして、蓋先端部1210が胴体屈曲部2220に達したとき、蓋先端部1210は胴体屈曲部2220に嵌合する。したがって、蓋先端部1210及び胴体屈曲部2220の形状は、嵌合後、容易に取り外しができない程度の結合力により突合/合致することがよい。同時に、胴体先端部2210は蓋屈曲部1220に嵌合し、同様に、胴体先端部2210及び蓋屈曲部1220の形状は、嵌合後、容易に取り外しができない程度の結合力により突合/合致するのがよい。また、略階段状の蓋周縁側部1230と胴体周縁側部2230とが密着する。これにより、蓋10と胴体20とを結合させることができる。
【0054】
ここで、2ピース缶1の材料をアルミニウムにした場合の使用量削減の効果について言及する。
【0055】
一般的に、350ccの2ピース缶の全体重量は略16g〜17g、高さは略122.2mm〜122.7mm、蓋の重量は略3g、厚さは略0.26mm〜0.27mm、胴体の厚さは略0.08mm〜0.1mm、直径は略66mm、円周は略207mmとなる。アルミニウムの比重は2.7である。したがって、たとえば、2ピース缶の胴体の1mmあたりの重量は、円周(略207mm)、幅(略1mm)、厚さ(略0.1mm)、比重(略2.7)を乗算して、略0.056gと算出することができる。また、胴体の略1mmあたりの容積は、胴体に係る内円の面積(略3419mm)、高さ(略1mm)を乗算して、略3.4ccと算出することができる。したがって、容積を略3.4cc分増加させることにより、胴体を略1mm短くすることができる。つまり、単位数量当たり略0.056gの軽量化が実現する。すなわち、本発明に係る2ピース缶1により、たとえば容積を略15cc増加することができた場合、増加分の容積(略15cc)と1mmあたりの容積(略3.4cc)を除算して、胴体20の削減分の高さとして略4.4mmを算出することができる。ここから、胴体20の削減分の高さ(略4.4mm)と胴体20の1mmあたりの重量(略0.056g)を乗算して、胴体20のアルミニウム使用量削減分として略0.246gを算出することができる。したがって、2ピース缶1の全体重量を略16gとした場合、劇的な削減効果を得ることができる。すなわち、蓋の面がより高くなり、凹みドーム型の底面がより低くなるため、容量が増える。逆にいえば、同じ容積を収容するのに、胴体の全長を縮小させることができる。したがって、缶製造に要する材料を大きく削減することができる。
【0056】
次に、このような構造により製造した2ピース缶1における内圧変化に対する耐久性及び内容物摂取の状況について説明する。
【0057】
図3は、本発明の一実施形態に係る2ピース缶1の内圧変化に伴う蓋10と底部30とで行われる圧力調整及び蓋10と胴体20との結合状況を示す状態図である。なお、2ピース缶1の縦方向・横方向の図示は省略している。2ピース缶1には所定の内容物を注入し、スコア1110が閉じている状態である。2ピース缶1の内容物には、炭酸飲料等の内圧変化を生じさせるものも含み、また2ピース缶1を航空機等に積載させた場合には気圧の変化に伴い内圧変化を生じることもある。したがって、内圧変化による膨張等に耐える構造が必要となる。このようなときに、蓋先端部1210は胴体屈曲部2220に嵌合し、胴体先端部2210は蓋屈曲部1220に嵌合し、それらの部分で蓋10を上方向に動かす力に対する反作用力が生じる。また、蓋周縁側部1230と胴体周縁側部2230とが密着している各階段状の部分でも、蓋10を上方向に動かす力に対する反作用力が生じる。すなわち、各嵌合部分及び各階段部分がストッパーの役割を果たし、各嵌合部分のずれ・動きを抑止し、したがって蓋10を封止することができる。
【0058】
また、底部30の凹みドーム部310には、圧力が加わるのに十分な面積があり、このドーム部分で圧力を吸収することができる。すなわち、内圧変化に伴う膨張により凹みドーム部310が外側に膨らもうとする際、底内凸部330が凹みドーム部310の膨らみに応じて連動して柔軟に変形するため、急激に加圧されても圧力を吸収することができる。
【0059】
図4A及び図4Bは、本発明の一実施形態に係る2ピース缶1の内容物を摂取する際の内容物の流動状態を示す図である。なお、スコア1110は外した考察としている。図4Aは内容物を摂取する際の流路を示す図、図4Bは内容物のうち微量に残り得る残留液を摂取する際の流路を示す図である。図4Aに示すとおり、内容物を摂取する際は、2ピース缶1を所定の角度に傾けることで流し出す。このとき、これにより内容物のほぼ全てを取り出すことができる。一方、微量に残り得る残留液を摂取する際は、スコア1110がある胴体側面部210の方に当該残留液を寄せる等の行為を行った上で、図4Bに示すとおり所定の角度に2ピース缶1を傾けると、胴体側面部210を経由して胴体周縁部220に沿って取り出すことができる。
【0060】
次に、本願に係る2ピース缶1の製造方法について説明する。
【0061】
図5は、本発明の一実施形態に係る2ピース缶1の製造工程を示すフローチャートである。同図に示すとおり、蓋10は、たとえば材料を高温化して型に流し込む方法、本願に係る蓋10の形状を成形することができる金型を用いたプレス加工、その他旋盤やフライス盤を使った加工、精密板金加工、しごき加工、しぼり加工等を含む全ての加工法により製造することでき、限定はない。なお、蓋先端部1210や蓋屈曲部1220等の微細部分は別工程を設けてNC旋盤等で加工してもよい(ステップSP10)。また、胴体20及び底部30は、2ピース缶1として一連のものであるため、その形状を成形することができる金型を用いたプレス加工、その他旋盤やフライス盤を使った加工、精密板金加工、しごき加工、しぼり加工等を含む全ての加工法により製造することでき、限定はない(ステップSP20)。なお、蓋10の製造と胴体20及び底部30の製造工程は同時に行ってもよい。
【0062】
上記工程を経て製造された蓋10と、底部30と一体となる胴体20とを外嵌するため、たとえば蓋周縁部120の蓋先端部1210を、胴体周縁部220の胴体先端部2210の方向から、胴体周縁側部2230を滑らすようにして経由し、胴体屈曲部2220に嵌合させて、それに伴い胴体先端部2210を蓋屈曲部1220に嵌合させてもよい。また、蓋周縁部120を所定の方法により傾斜を更に緩やかにするように幅を広げ、胴体周縁側部2230を滑らすことなく、先に胴体先端部2210を蓋屈曲部1220に嵌合させておき、その後に蓋先端部1210と胴体先端部2210を嵌合させてもよい(ステップSP30)。
【0063】
この際、蓋先端部1210と胴体屈曲部2220との嵌合部分、胴体先端部2210と蓋屈曲部1220との嵌合部分、蓋周縁側部1230と胴体周縁側部2230との接触面に、それぞれシーリングコンパウンド等の接着素材を塗布し、さらに硬化して密封させてもよい。シーリングコンパウンドの際は、ゴム成分、粘着付与剤、充填剤、有機過酸化物等のいずれか一つまたは複数の成分を配合した組成物からなるもので、食品安全性の面においても良好なものがよい。具体的には、ゴム成分としては、スチレン・ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、天然ゴム、ニトリルゴム等を用いられる。また、粘着付与剤(樹脂成分)としては、ロジン、水素添加ロジン、ロジンエステル、水素添加ロジンエステル及び硬化ロジンの様なロジン系樹脂、α−ピネン、β−ピネン、ジペンテンの様なテルペン系樹脂、フェノールホルムアルデヒド樹脂、ロジンやテルペンの様な天然樹脂で変性したフェノール樹脂、キシレンホルムア ルデヒド樹脂及びその変性樹脂、石油炭化水素系樹脂等が用いられる。充填剤としては、コロイダルシリカ、含水ケイ酸、合成ケイ酸塩、無水ケイ酸の様なシリカ系充填剤、軽質及び重質炭酸カルシウム、活性化炭酸カルシウム、カオリン、焼成クレー、タルク、アルミナホワイト、硫酸カルシウム、水酸化アルミニウム、軽石粉、ガラス粉、酸化亜鉛、二酸化チタン、カーボンブラック等が用いられる。有機過酸化物としては、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)2−メチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロへキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート等のパーオキシケタール類、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート等のパーオキシエステル類、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジ(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン等のアルキルパーオキサイド類等が用いられる。
【0064】
以上詳細に説明したように、本実施形態によれば、蓋10を胴体20に外嵌し、蓋先端部1210が胴体屈曲部2220に嵌合し、胴体先端部2210が蓋屈曲部1220に嵌合する、いわゆる「嵌め殺し」加工により、二重巻き締めを行うかしめ加工を施す蓋及び胴体に係るカール部分は不要であるため、従来の二重巻き締めのものよりも製缶に必要な材料使用量を劇的に削減することができる。したがって、単位数あたりの製造コストを低減することができ、環境対策にも有益なものとすることができる。
【0065】
すなわち、ライフサイクルアセスメント(Life Cycle Assessment、以下、「LCA」ともいう。)の一環として、缶のライフサイクル(原料の選定から廃棄物の処理まで)における環境への影響についての評価も向上するものとなる。缶やその製造方法等が環境に与える影響を、原料採取から設計、生産、流通、消費、廃棄に至るまでの各段階における資源・エネルギーの消費と環境負荷を定量的に分析し、総合評価することにより、環境負荷の低減及び環境改善を図る手法となり得る。したがって、本願の技術思想に係る缶やその製造方法によって、世界規模の問題であるエネルギー消費量、材料使用量、二酸化炭素の排出量、廃棄物の量等を著しく改善することは明確である。
【0066】
また、ライフサイクルコスト(LCC)の観点からすれば、結果として、購入者において缶は生産財であって商品を購入してから廃棄するまでの費用を軽減し、製造者においては企画・研究開発から材料残余分の廃棄に至るまでの経費(研究開発費、流通費、生産費、運用費、廃棄費等)を削減することができるため、本技術分野に係るLCCの最適化を図ることができる。
【0067】
また、かしめ加工に伴う空間530や窪み540もなく、底部30がドーム形状のため、缶全体として容積が増加することになる。すなわち、蓋の面がより高くなり、凹みドーム型の底面がより低くなるため、容量が増える。逆にいえば、同じ容積を収容するのに、胴体20の全長を縮小させることができる。したがって、缶製造に要する材料を大きく削減することができる。
【0068】
さらに、空間や窪みに残留液が滞留することなく全ての内容物を摂取することができる。またさらに、2ピース缶1のスコア1110を人が飲み口とする場合においても、このような形状により拭きやすくなり清潔性を保つことができるため、エチケット面においても有益である。
【0069】
また、本実施形態によれば、蓋10において蓋面状部110に係るスコア1110において、蓋面状部110の中心から最も離れたところを頂点として傾斜を持たせることで、内容物を摂取しやくすなり、残留液をより滞留させることがなくなる。したがって、従来の缶において内容量の表示値よりも多めに注入するような配慮も不要となる。また、2ピース缶1において、底部30に凹みドーム部310を設けることで、内圧変化に伴う膨張にも圧力を吸収して柔軟に対応することができ、破裂等を防止することができる。
【0070】
したがって、製缶に関する問題点及び課題の解決に繋がり、製造原料の削減により資源の節約を実現し、残留液の消滅により悪臭等の公害を防止することができるため、環境にやさしい缶を市場に流通させることができる。
【0071】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能である。たとえば、本願の技術思想は、飲料用の缶に限らず、食品保存用の缶、液体状の玩具を内容物とする缶等においても応用することができる。
【0072】
さらにまた、本発明を用いて生産される装置、方法、システムが、その2次的生産品に搭載されて商品化された場合であっても、本発明の価値は何ら減ずるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本願に係る技術思想は、製缶業界や食品業界に限らず、巻き締めによるかしめ加工のような方法により製造される製品、たとえばオイル止め等の部品を製造する自動車、船舶、航空機及びそれらの部品を製造する業界、精密機械における端子を用いる精密部品製造業界、溶接せずに水漏れ等を防ぐパイプを製造する製管業界等、省エネルギー化及び環境負荷の低減化において、広く社会全般に対して大きな有益性をもたらすものである。
【符号の説明】
【0074】
1…2ピース缶、10…蓋、120…蓋周縁部、1210…蓋先端部、1220…蓋屈曲部、1230…蓋周縁側部、20…胴体、220…胴体周縁部、2210…胴体先端部、2220…胴体屈曲部、2230…胴体周縁側部、30…底部、310…凹みドーム部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓋と胴体とが重合されてなる缶において、
前記蓋に係る重合部は第1の屈折パターンが形成される蓋屈曲部を具備し、
前記胴体は前記第1の屈折パターンに対応する第2の屈折パターンが形成される胴体屈曲部を具備し、
前記第1及び第2の屈折パターンが嵌合することで前記胴体屈曲部と前記蓋屈曲部とが重合されることを特徴とする缶。
【請求項2】
前記胴体屈曲部に延設される突端である胴体先端部は前記蓋屈曲部に内接して嵌合されることを特徴とする請求項1記載の缶。
【請求項3】
前記蓋屈曲部に延設される突端である蓋先端部は前記胴体屈曲部に外接して嵌合されることを特徴とする請求項1もしくは2記載の缶。
【請求項4】
前記第1の屈折パターン及び/もしくは前記第2の屈折パターンは略階段状であることを特徴とする請求項1乃至3のうち1項記載の缶。
【請求項5】
前記胴体先端部を前記蓋屈曲部に嵌合させ、前記蓋先端部を前記胴体屈曲部に嵌合させる際に、シーリングコンパウンドにて封止することを特徴とする請求項3記載の缶。
【請求項6】
前記缶は2ピース缶とし、底部を凹みドーム型にすることを特徴とする請求項1乃至5のうち1項記載の缶。
【請求項7】
前記蓋面状部に係る開口部において、当該蓋面状部の中心から最も離れたところを頂点として傾斜を持たせたことを特徴とする請求項1乃至6のうち1項記載の缶。
【請求項8】
天蓋の面状部に蓋先端部及び蓋屈曲部を有する蓋周縁部を連続形成させ、該蓋屈曲部に第1の屈折パターンを形成するステップと、
底蓋に胴体周縁側部を立ち上げ形成し、該胴体周縁側部の遊端に胴体屈曲部及び胴体先端部を有する胴体周縁部を連続形成させ、該胴体屈曲部に第2の屈折パターンを形成するステップと、
前記第1及び第2の屈折パターンが嵌合するように前記胴体屈曲部を前記蓋屈曲部に外嵌させるステップと、
前記蓋先端部を前記胴体屈曲部に嵌合させ、前記胴体先端部を前記蓋屈曲部に嵌合させるステップと
を具備することを特徴とする缶の製造方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−162267(P2012−162267A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−107095(P2009−107095)
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【出願人】(307027603)
【Fターム(参考)】