説明

缶本体

【課題】缶基体の胴部に、その外周面に対して径方向外方へ突出した凸状のエンボス加工が施された缶本体を提供する。
【解決手段】有底筒状とされた缶本体52であって、胴部には、金属板に絞り加工およびしごき加工を施して形成される缶基体50にエンボス加工を施すことによって、前記缶基体の外周面よりも径方向外方に突出した凸加工部が形成されており、前記凸加工部は、互いに平行な回転軸線を中心に回転可能に支持された第1回転体20および第2回転体21を備え、前記第1回転体20を有底筒状の缶基体50の内側に配置するとともに、前記第2回転体21を該缶基体の外側に配置した後に、前記第1、第2回転体20,21を互いに接近させ、これらの回転体の各外周面により前記缶基体の胴部を挟み込み、この状態で前記第1、第2回転体20,21をこれらの回転軸線回りに回転させることによって形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有底筒状とされた缶基体の胴部にエンボス加工が施された缶本体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のように、清涼飲料水等が充填されるいわゆる缶やボトル缶においては、需要者の購買意欲を喚起する等のために、胴部に様々な模様等が付され、これらの缶等に商品識別力を付与することがなされている。このような模様等を付す手段として、従来から例えば塗装やエンボス加工を施すことが知られている。
後者のエンボス加工については、例えば下記特許文献1に示されるような、互いに平行な回転軸線を中心に回転可能に支持された第1回転体および第2回転体を備え、前記第1回転体を有底筒状の缶基体の内側に配置するとともに、前記第2回転体を該缶基体の外側に配置した後に、前記第1、第2回転体を互いに接近させ、各回転体の外周面により前記缶基体の胴部を挟み込んだ状態で、前記第1、第2回転体をこれらの回転軸線回りに回転させることにより、前記缶基体の胴部にエンボス加工を施し缶本体を形成する方法が知られている。なお、前記缶基体としては、例えば金属板に絞り加工およびしごき加工を施して形成されるDI缶がある。また、第1回転体は、缶基体の内側に挿入される際に、その外周面を缶基体の内周面に沿わせることにより、缶基体を径方向に案内するという機能(以下、「案内機能」という)も有しているため、缶基体の内径と第1回転体の外径との差は小さく、一般に約0.8mmとされている。
ところで近年では、缶等にさらなる商品識別力を付与するために、缶基体の胴部にその外周面に対して径方向外方へ突出した凸状のエンボス加工を施すことが要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2000−515072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来では、第1回転体の外周面と缶基体の内周面との隙間が小さいことに加え、胴部に前記凸状のエンボス加工(以下、単に「凸加工部」という)を施すには、前記第1回転体の外周面に径方向外方へ凸とされた第1凸部を形成する必要があるため、この凸部の突出高さ分だけ前記隙間がさらに小さくなる。従って、この第1回転体を缶基体の内側に挿入する際に、この回転体の前記第1凸部が缶基体の開口端部と衝突する虞があり、また、前記凸加工部を形成した後に、第1回転体を缶基体の内側から抜き出す際、この回転体の前記凸部が前記凸加工部の内周面に引っ掛かる虞があり、このような凸加工部を形成することが困難であるという問題があった。さらに、第1回転体の最外径部としての前記第1凸部が缶基体の内周面を案内する案内部として機能することになるので、第1回転体の外周面全体に占める前記第1凸部の割合が小さい場合には、前記案内機能を十分に発揮させることができない。
【0005】
ここで、第1回転体に前記案内機能を具備させつつ、前記凸加工部を形成するための手段として、前記第1回転体の外周面に、径方向内方へ凹んだ第1凹部を形成するとともに、この凹部の底面に前記第1凸部を形成し、前記第2回転体の外周面に、前記第1凹部と対応する部分に径方向外方へ凸とされた第2凸部を形成するとともに、この凸部のうち前記第1凸部と対応する部分に径方向内方へ凹んだ第2凹部を形成し、これらの回転体により胴部を挟み込むことにより、前記第1凹部および前記第2凸部と対応する胴部を径方向内方へ凹ませて凹加工部を形成するとともに、前記第1凸部および前記第2凹部と対応する部分に前記凸加工部を形成することが考えられる。
【0006】
しかしながら、この場合、胴部に凸加工部および凹加工部の双方が形成されたことにより、胴部全体に占める塑性変形部分の割合が多くなり、得られる缶本体の座屈強度が低下したり、胴部の内外周面に形成された塗膜が破れたり、あるいは缶本体を複数本集合的に搬送コンベア上で搬送する際に、いわゆるブロッキングが生ずる等の問題があった。さらに、前述と同様に、第1回転体を缶基体から抜き出す際に前記引っ掛かりが生じ易いという問題があった。
【0007】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、缶基体の胴部に、その外周面に対して径方向外方へ突出した凸状のエンボス加工が施された缶本体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決して、前記目的を達成するために、本発明の缶本体は、有底筒状とされた缶本体であって、胴部には、金属板に絞り加工およびしごき加工を施して形成される缶基体にエンボス加工を施すことによって、前記缶基体の外周面よりも径方向外方に突出した凸加工部が形成されており、前記凸加工部は、互いに平行な回転軸線を中心に回転可能に支持された第1回転体および第2回転体を備え、前記第1回転体を有底筒状の缶基体の内側に配置するとともに、前記第2回転体を該缶基体の外側に配置した後に、前記第1、第2回転体を互いに接近させ、これらの回転体の各外周面により前記缶基体の胴部を挟み込み、この状態で前記第1、第2回転体をこれらの回転軸線回りに回転させることによって形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る缶本体によれば、前記凸加工部が胴部外周面に対して径方向外方へ突出することになるので、この缶本体に商品識別力を具備させることができる。また、前記凸加工部は前記復元移動させることにより形成されるので、塑性変形部分を前記凸加工部に限定することが可能になり、缶本体の座屈強度の低下や、缶本体の内外表面に形成された塗膜が破れたりすることを抑制することができるとともに、缶本体をコンベア上に複数本載置して、これらを集合的に搬送する際に、いわゆるブロッキングが発生することを抑制することができる。
【0010】
ここで、前記第1回転体の外周面には、径方向内方ヘ凹とされた第1凹部が形成され、該第1凹部に径方向外方ヘ凸とされた第1凸部が形成され、前記第2回転体の外周面には、前記第1凹部と対応する部分に径方向外方へ凸とされた第2凸部が形成され、該第2凸部のうち前記第1凸部と対応する部分に径方向内方へ凹とされた第2凹部が形成され、前記第1、第2回転体の外周面により前記胴部を挟み込む際、前記第2凸部により前記胴部をその外周面側から径方向内方へ向けて、この方向における全ての変形量のうち少なくとも一部が弾性変形となるように押圧し、これと対応する内周面側を前記第1凹部に進入させた状態で、前記第1凸部を前記胴部を介して前記第2凹部に嵌入し、その後、前記第1、第2回転体の外周面による前記挟み込みを解除した際、前記胴部の弾性復元力により、前記第1凹部および前記第2凸部と対応する胴部を径方向外方へ復元移動させ、前記第1凸部および前記第2凹部と対応する部分の胴部外周面を、前記第1凹部および前記第2凸部に対応する部分以外の胴部外周面より、径方向外方に位置させることが好ましい。
【0011】
この場合、前記第1、第2回転体による前記胴部の前記挟み込みを解除し、前記胴部の弾性復元力により、前記第1凹部および前記第2凸部と対応する胴部を径方向外方へ復元移動させるので、缶基体の胴部外周面に径方向外方へ突出した凸加工部をエンボス加工により容易かつ確実に形成することが可能になる。すなわち、前記復元移動により、前記凸加工部の内周面と前記第1凸部との間に隙間が形成されるので、第1回転体を缶基体から抜き出す際に、前記第1凸部が前記凸加工部の内周面に引っ掛かることを抑制することが可能になる。
【0012】
ここで、前記第1凸部の最外径面が、前記第1凹部の非形成部の表面より径方向内側に位置することが望ましい。この場合、胴部に前記凸加工部を形成するための前記第1凸部を形成したことによって第1回転体の外径が大きくなることはない。従って、前記エンボス加工時に、第1回転体を缶基体の内側に挿入する際、缶基体の開口端部に第1回転体が衝突することを回避することが可能になる。さらに、前記挿入時において、前記第1凸部ではなく前記第1凹部の非形成部が、缶基体の内周面を案内する案内部として機能することになる。従って、第1回転体の外周面全体に占める前記第1凸部の割合が小さい場合でも、第1回転体の前記案内機能を十分に発揮させることができる。
【0013】
また、前記第1、第2回転体による前記胴部の挟み込みを解除したときに、前記弾性復元力により、前記第1凹部および前記第2凸部と対応する胴部内周面のうち、前記第1凸部および前記第2凹部と対応する部分を除く部分を、前記第1凸部の径方向における最外面より径方向外方へ復元移動させることが望ましい。この場合、エンボス加工後に第1回転体を缶基体から抜き出す際に、前記第1凸部が前記凸加工部の内周面に引っ掛かることを確実に抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態として示した缶本体を製造する缶本体の製造装置の全体構成を示す概略図である。
【図2】本発明の一実施形態として示した缶本体を製造するときの第1工程図であって、図1に示す第1、第2回転体の一部拡大断面図である。
【図3】本発明の一実施形態として示した缶本体を製造するときの第2工程図であって、図2に示す第1、第2回転体の一部拡大断面図である。
【図4】本発明の一実施形態として示した缶本体を製造するときの第3工程図であって、図2に示す第1、第2回転体の一部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照し、この発明の実施の形態について説明する。図1から図4は、この発明の一実施形態として示した缶本体を製造するための缶本体の製造装置の概略構成を示すものである。
この缶本体の製造装置10は、図1に示すように、缶基体50の胴部を径方向に押圧して胴部外周面に対して径方向外方へ突出する凸加工部を形成する金型部11と、この金型部11の下方に配設され、缶基体50を金型部11に対して接近離間可能かつ回転可能に支持する支持部12と、金型部11及び支持部12の駆動を制御する制御部13とを備えている。
【0016】
金型部11は、互いに平行な回転軸線を中心に回転可能に支持された第1回転体20および第2回転体21と、これらの回転体20、21を各々、回転方向を逆に、かつ、同期回転させる第1駆動部14とを備えている。なお、第1、第2回転体20、21はともに例えば金属、好ましくはウレタンにより形成されている。
支持部12は、缶基体50または缶本体52の底面を保持する構成とされたチャック31と、このチャック31を金型部11に対して接近離間可能に支持するスライド部32と、チャック31を缶軸回りに回転可能に支持するモータ部33とを備えている。
【0017】
ここで、本実施形態では、第1回転体20の外周面には、図2に示すように、径方向内方ヘ向けて凹とされた第1凹部20aが形成され、該第1凹部20aの底面に径方向外方ヘ向けて凸とされた第1凸部20bが形成されている。図示の例では、第1凹部20aの深さは第1凸部20bの突出高さより大きくされ、第1回転体20の外周面において第1凹部20aの非形成部20cの外径が最も大きくなっている。また、第1凸部20bは第1凹部20aの軸方向中央部に形成されている。
第2回転体21の外周面には、図2に示すように、前記第1凹部20aと対応する部分に径方向外方へ凸とされた第2凸部21aが形成され、該第2凸部21aのうち前記第1凸部20bと対応する部分に径方向内方へ凹とされた第2凹部21bが形成されている。
【0018】
以上の構成において、第1回転体20の径方向外方から第1凹部20aを平面視した大きさは、第2回転体21の径方向外方から第2凸部21aを平面視した大きさより大きくされ、第1回転体20の径方向外方から第1凸部20bを平面視した大きさは、第2回転体21の径方向外方から第2凹部21bを平面視した大きさより小さくされている。すなわち、第1、第2回転体20、21が互いに接近離間することにより、第1回転体20の第1凹部20aに第2回転体21の第2凸部21aが挿脱され、第2回転体21の第2凹部21bに第1回転体20の第1凸部20bが挿脱されるようになっている。
【0019】
ここで、第1回転体20の外周面において、第1凹部20aの非形成部20cと第1凹部20aとは、図2に示すように、径方向外方へ凸となる第1凸曲面部20dを介して滑らかに連結されている。また、第1凹部20aと第1凸部20bとは、径方向内方へ凹む第1凹曲面部20eを介して滑らかに連結されている。そして、第1凹部20aは、第1凸曲面部20dから第1凹曲面部20eに至るまで、漸次、径方向内方へ向けて傾斜したテーパ形状とされている。つまり、第1凹部20aはすり鉢状とされ、このすり鉢の最も深い部分に第1凸部20bが形成された構成となっている。
【0020】
なお、第1凸曲面部20dの曲率半径R1は14mm以上160mm以下とされ、第1凹曲面部20eの曲率半径R2は14mm以上160mm以下とされている。また、第1凸曲面部20dと第1凹曲面部20eとの軸方向における距離Lは7mm以上25mm以下とされ、第1凹部20aにおける最も深い位置(最も径方向内方側に位置する部分)と前記非形成部20cとの径方向の大きさ、すなわち第1凹部20aの深さAは0.4mm以上1.4mm以下とされている。
【0021】
次に、以上のように構成された缶本体の製造装置により、缶基体50の胴部に凸加工部を形成する方法について説明する。
缶基体50は缶本体の製造装置10に搬送されると、まず、缶基体50の底面がチャック31に保持され、その後、モータ部33を回転駆動し、これに伴わせて、缶基体50を缶軸回りに回転することにより、缶基体50を缶軸回りに位置決めする。
【0022】
そして、缶基体50を支持部12のスライド部32を介して金型部11に向けて缶軸方向に前進移動し、第1回転体20を缶基体50の内側に挿入することにより、図2に示すように、第1回転体20を缶基体50の内側に配置し、第2回転体21を缶基体50の外側に配置する。次に、第1、第2回転体20、21を互いに接近させ、これらの回転体20、21の各外周面により缶基体50の胴部を挟み込み、この状態で第1、第2回転体20、21をこれらの回転軸線回りに回転させることにより、缶基体50の胴部にエンボス加工を施し前記凸加工部を形成する。そして、第1、第2回転体20、21を互いに離間させた後に、支持部12を金型部11から離間させ、第1回転体20を缶本体52の内部から抜き出す。
【0023】
ここで、第1、第2回転体20、21の外周面により前記胴部を挟み込む際、第2凸部21aにより前記胴部をその外周面側から径方向内方へ向けて、この方向における全ての変形量のうち少なくとも一部が弾性変形となるように押圧し、図3に示すように、これと対応する内周面側を第1凹部20aに進入させた状態で、第1凸部20bを前記胴部を介して第2凹部21bに嵌入する。つまり、缶基体50の胴部のうち、第1凸部20bを除く第1凹部20a、および第2凹部21bを除く第2凸部21aそれぞれに対応する部分(以下、「凸加工部の周辺部」という)は、前記第1凸曲面部20dおよび第1凹部20aの前記テーパ形状に依存して、発生するひずみが弾性限度内の変形にとどまり、この凸加工部の周辺部が塑性変形することが回避される。その一方で、前記胴部のうち、第1凸部20bおよび第2凹部21bそれぞれに対応する部分は、第1凸部20bが第2凹部21bに胴部を介して嵌入されるので、塑性変形領域まで変形させられ塑性変形する。
【0024】
これにより、第1、第2回転体20、21による前記胴部の前記挟み込みを解除すると、図4に示すように、前記胴部の弾性復元力により、第1凹部20aおよび第2凸部21aと対応する胴部が、径方向外方へ復元移動し、第1凸部20bおよび第2凹部21bと対応する部分の胴部外周面が、第1凹部20aと第2凸部21aとに対応する部分以外の胴部外周面(非形成部20c、21c)より、径方向外方に位置することになり、前記凸加工部が形成される。さらに本実施形態では、第1凹部20aおよび第2凸部21aそれぞれに対応する胴部内周面のうち、第1凸部20bおよび第2凹部21bそれぞれに対応する部分を除く部分を、第1凸部20bの径方向における最外面より径方向外方へ復元移動させる。
【0025】
以上説明したように、本実施形態による缶本体の製造方法によれば、第1、第2回転体20、21による前記胴部の前記挟み込みを解除したときに、前記胴部の弾性復元力により、第1凹部20aおよび第2凸部21aと対応する胴部を径方向外方へ復元移動させるので、缶基体50の胴部外周面に径方向外方へ突出した凸加工部をエンボス加工により容易かつ確実に形成することが可能になる。すなわち、前記復元移動により、胴部における前記凸加工部の内周面と第1凸部20bとの間に隙間が形成されるので、第1回転体20を缶基体50から抜き出す際に、第1凸部20bが前記凸加工部の内周面に引っ掛かることを抑制することが可能になる。
【0026】
また、第1凹部20aの深さは第1凸部20bの突出高さより大きくされているので、第1凸部20bの最外径面は第1凹部20aの非形成部20cの表面より径方向内側に位置することになり、胴部に前記凸加工部を形成するための第1凸部20bを形成したことによって、第1回転体20の外径が大きくなることはない。従って、第1回転体20を缶基体50の内側に挿入する際、缶基体50の開口端部に第1回転体20が衝突することを回避することが可能になる。さらに、前記挿入時において、第1凸部20bではなく第1凹部20aの非形成部20cが、缶基体50の内周面を案内する案内部として機能することになる。従って、第1回転体20の外周面全体に占める第1凸部20bの割合が小さい場合でも、第1回転体20の前記案内機能を十分に発揮させることができる。
【0027】
さらに、第1、第2回転体20、21による前記胴部の挟み込みを解除したときに、前記弾性復元力により、第1凹部20aおよび第2凸部21aそれぞれに対応する胴部内周面のうち、第1凸部20bおよび第2凹部21bと対応する部分を除く部分を、第1凸部20bの径方向における最外面より径方向外方へ復元移動させるので、エンボス加工後に第1回転体20を缶基体50から抜き出す際、第1凸部20bが胴部の前記凸加工部の内周面に引っ掛かることを確実に抑制することが可能になる。
【0028】
また、このように形成された缶本体は、前記凸加工部が胴部外周面に対して径方向外方へ突出することになるので、この缶本体に商品識別力を具備させることができる。また、前記凸加工部は前記復元移動させることにより形成されるので、塑性変形部分を前記凸加工部に限定することが可能になり、缶本体の座屈強度の低下や、缶本体の内外表面に形成された塗膜が破れたりすることを抑制することができるとともに、缶本体をコンベア上に複数本載置して、これらを集合的に搬送する際に、いわゆるブロッキングが発生することを抑制することができる。
【0029】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば、第1、第2回転体20、21による前記胴部の挟み込みを解除したときに、第1凹部20aおよび第2凸部21aと対応する胴部を、復元力により完全に復元させる場合のみならず、これらの回転体20、21による変形量の一部が塑性変形である場合にも適用可能である。また、第1凸部20bは、すり鉢状とされた第1凹部20aの最も深い部分に形成した場合に限らず、前記傾斜したテーパ面上に形成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0030】
缶基体の胴部に、その外周面に対して径方向外方へ突出した凸状のエンボス加工を良好に施すことができる缶本体を提供する。
【符号の説明】
【0031】
20 第1回転体
20a 第1凹部
20b 第1凸部
21 第2回転体
21a 第2凸部
21b 第2凹部
50 缶基体
52 缶本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底筒状とされた缶本体であって、
胴部には、金属板に絞り加工およびしごき加工を施して形成される缶基体にエンボス加工を施すことによって、前記缶基体の外周面よりも径方向外方に突出した凸加工部が形成されており、
前記凸加工部は、互いに平行な回転軸線を中心に回転可能に支持された第1回転体および第2回転体を備え、前記第1回転体を有底筒状の缶基体の内側に配置するとともに、前記第2回転体を該缶基体の外側に配置した後に、前記第1、第2回転体を互いに接近させ、これらの回転体の各外周面により前記缶基体の胴部を挟み込み、この状態で前記第1、第2回転体をこれらの回転軸線回りに回転させることによって形成されていることを特徴とする缶本体。
【請求項2】
前記第1回転体の外周面には、径方向内方ヘ凹とされた第1凹部が形成され、該第1凹部に径方向外方ヘ凸とされた第1凸部が形成され、
前記第2回転体の外周面には、前記第1凹部と対応する部分に径方向外方へ凸とされた第2凸部が形成され、該第2凸部のうち前記第1凸部と対応する部分に径方向内方へ凹とされた第2凹部が形成され、
前記第1、第2回転体の外周面により前記胴部を挟み込む際、前記第2凸部により前記胴部をその外周面側から径方向内方へ向けて、この方向における全ての変形量のうち少なくとも一部が弾性変形となるように押圧し、これと対応する内周面側を前記第1凹部に進入させた状態で、前記第1凸部を前記胴部を介して前記第2凹部に嵌入し、
その後、前記第1、第2回転体の外周面による前記挟み込みを解除した際、前記胴部の弾性復元力により、前記第1凹部および前記第2凸部と対応する胴部を径方向外方へ復元移動させ、前記第1凸部および前記第2凹部と対応する部分の胴部外周面を、前記第1凹部および前記第2凸部に対応する部分以外の胴部外周面より、径方向外方に位置させることを特徴とする請求項1に記載の缶本体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−51018(P2011−51018A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−227879(P2010−227879)
【出願日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【分割の表示】特願2004−310774(P2004−310774)の分割
【原出願日】平成16年10月26日(2004.10.26)
【出願人】(305060154)ユニバーサル製缶株式会社 (219)
【Fターム(参考)】