説明

置き去り又は持ち去り検知システム及び前記検知システムにおける置き去り又は持ち去り発生時刻を検知する方法

【課題】置き去り又は持ち去りが発生したときの映像又は画像を容易かつ確実に得る。
【解決手段】 異物を検知してから一定時間検知が継続されたとき、置き去り又は持ち去りと判断する置き去り又は持ち去り検知システムであって、タイマー制御部10cは、異物検知と同時にタイマーを始動し、前記検知時間内において異物検知が一時中断されたとき、前記中断時間の長さに応じて検知タイマーを停止又は逆進させ、発生時刻演算部10dは、検知タイマーのタイマー値及び停止又は逆進期間のタイマー値に基づき、置き去り又は持ち去り発生時刻を演算する。演算した発生時刻に基づき保存されている同時刻の撮影画像を取得する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、置き去り又は持ち去り検知システムに関し、とくに置き去り又は持ち去り発生時刻の検知に特徴を有する置き去り又は持ち去り検知システム及び前記システムにおける置き去り又は持ち去り発生時刻を検知する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば不特定多数の人物が出入りするエリアにおいて、物体が放置された時刻におけるエリア撮影情報から、物体を置いていった人物の監視エリア侵入時の挙動を録画するようにした監視カメラシステムが知られている(特許文献1参照)。
このシステムは、監視カメラは、侵入者を検知した場合には侵入時刻を記録し、さらに検知した侵入者を追跡して、侵入者が監視エリアを通過した後、置き去りにした物体があって、その物体の静止が一定時間継続した場合に、映像記録装置にアラーム情報と侵入時刻を送信し、映像記録装置は、監視カメラから送信された映像情報をメモリに一定の情報量毎に上書き記録し、アラーム情報及び人物の侵入時刻を受信したとき、侵入時刻からアラーム情報に対応する時刻までの映像情報をメモリからハードディスクへ転送してハードディスクに録画するものである。
【0003】
また、物体の置き去り又は持ち去りがあった場合に、それを自動的に検知すると共に、物体を置き去った又は持ち去った人物の顔を撮影して、その人物を自動的に特定する監視画像記憶システムも知られている(特許文献2参照)。
このシステムにおいては、物体検知画像が撮影された時刻を物体検知時刻として特定し、この物体検知時刻よりも過去のディレイタイム時間の間に撮影された顔撮影画像情報から置き去り・持ち去り等に係る人物を特定しようとするものである。
【0004】
これらのシステムは、いずれも置き去り又は持ち去りされた検知物以外に置き去り又は持ち去りが発生した瞬間の状況や人物を見たいというニーズに応えたものであって、置き去り又は持ち去り監視エリアに設置した監視カメラの映像(又は画像)を入力し、置き去り又は持ち去り検知後に、設定した置き去り又は持ち去りであると判断するに要する検知時間より以前のカメラ映像を切り出して、表示や保存を行っている。
このように置き去り又は持ち去り発生時における映像(画像)を得ようとすれば、先ず、その前提として置き去り又は持ち去りが発生した時刻を正確に知る必要がある。
【0005】
図9は、従来の置き去り又は持ち去り検知システムにおける、置き去り又は持ち去り発生から検知までのタイムチャートである。
このシステムでは、図示のように、時刻t0で置き去り又は持ち去りが発生したとして、その時点で置き去り又は持ち去り検知タイマーT1(以下、単にタイマーT1という)を始動する。タイマーT1のタイマー値が所定の時間tに達したとき(置き去り又は持ち去りの状態がt時間以上継続したとき)、置き去り又は持ち去りがあったと判断する。その判断に基づき置き去りが発生した時刻t0から所定のΔt時間前における映像を切り出して再生や保存などを行う。
【0006】
ただ、このシステムでは、タイマーT1が所定の時間tに達したとしても、時刻t0に必ず置き去り又は持ち去りが発生したという保証はない。とくに、置き去り又は持ち去りの検知時間を長時間に設定した場合には、例えば、置き去り物が画面上で一時的に見えなくなる可能性が高くなるため、誤差が生じる可能性が高くなる。つまり、実際に置き去り又は持ち去りが発生した時刻がt0の前後になる場合があり、置き去り又は持ち去り発生時刻t0の精度が悪くなる。
【0007】
置き去り又は持ち去り発生時刻t0の精度が悪いと、例えば置き去り又は持ち去りが発生する以前の時間間隔Δtにおける動画を切り出して置き去り又は持ち去り発生時の画像を取得する場合、時間間隔Δtをより長く設定して長時間の画像を切り出す必要がある。そのためにはレコーダーの保存容量を大きくしなければならずコストアップになるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−187124号公報
【特許文献2】特開2010− 88072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、従来の置き去り又は持ち去り検知システムにおける前記従来の問題を解決すべくなされたものであって、その目的は、置き去り又は持ち去りが発生したときの時刻を正確に取得してその時点における映像又は画像を容易かつ低コストで得られるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明は、監視エリアの画像を撮影する撮影手段と、撮影した画像を保存する保存手段と、前記撮影した画像及び前記保存手段に保存した画像に基づき監視エリアにおける異物を検知する異物検知部と、前記異物検知部で検知した異物が所定の検知時間の間検知されたとき、置き去り又は持ち去りと判断する置き去り又は持ち去り判断部と、前記異物の検知に基づき検知タイマーを作動制御するタイマー制御部と、置き去り又は持ち去り発生時刻を演算する発生時刻演算部と、を有する置き去り又は持ち去り検知システムであって、前記タイマー制御部は、前記検知時間内において前記異物検知部による異物検知が一時中断されたとき、前記中断時間に応じて検知タイマーを停止又は逆進させ、前記置き去り又は持ち去り判断部は、検知タイマーの増進タイマー値から逆進タイマー値を減算した累積検知時間が前記検知時間に達したとき、置き去り又は持ち去りと判断し、かつ、前記発生時刻演算部は、検知タイマーの増進期間と停止及び/又は逆進期間の各タイマー値を加算して、置き去り又は持ち去り発生時刻を得ることを特徴とする置き去り又は持ち去り検知システムである。
請求項2の発明は、請求項1に記載された置き去り又は持ち去り検知システムにおいて、前記異物検知部の異物検知が中断されたとき、前記タイマー制御部は検知タイマーを停止すると共にそれまでの累積タイマー値を保持し、タイマー停止が予め定めた所定時間継続したとき前記検知タイマーを逆進させることを特徴とする置き去り又は持ち去り検知システムである。
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載された置き去り又は持ち去り検知システムにおいて、前記タイマー制御部は、前記検知タイマーが停止したときその停止期間を計測する停止タイマーを作動制御し、又は、前記検知タイマーを逆進させたときその逆進期間を計測する逆進タイマーを作動制御し、前記発生時刻演算部は前記検知タイマーと、前記停止タイマーと、前記逆進タイマーの各タイマー値を加算して前記置き去り又は持ち去り発生時刻を演算することを特徴とする置き去り又は持ち去り検知システムである。
請求項4の発明は、請求項3に記載された置き去り又は持ち去り検知システムにおいて、前記検知タイマーを逆進させて、前記検知タイマーの前記累積検知時間がゼロになったとき、前記停止タイマー及び前記逆進タイマーをリセットすることを特徴とする置き去り又は持ち去り検知システムである。
請求項5の発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載された置き去り又は持ち去り検知システムにおいて、前記発生時刻演算部で演算された置き去り又は持ち去り発生時刻における監視エリアの画像を前記保存手段から読み出して表示する表示手段を有することを特徴とする置き去り又は持ち去り検知システムである。
請求項6の発明は、請求項1ないし5のいずれかに記載された置き去り又は持ち去り検知システムにおいて、前記置き去り又は持ち去り判断部が置き去り又は持ち去りがあったと判断したとき、その旨を報知する手段を有することを特徴とする置き去り又は持ち去り検知システムである。
請求項7の発明は、請求項1ないし6のいずれかに記載された置き去り又は持ち去り検知システムにおける置き去り又は持ち去り発生時刻を検知する方法であって、前記発生時刻演算部で演算された置き去り又は持ち去り発生時刻以前で、前記検知タイマーのスタート時における不安定期間よりも長い期間を設定する工程と、当該期間において撮影された複数の画像を、当該期間における時系列に従って前記発生時刻演算部で演算された置き去り又は持ち去り発生時刻における撮影画像と順に比較する工程と、前記比較の結果、両画像が一致したときの前記期間における撮影画像の撮影時刻を取得する工程と、を有することを特徴とする置き去り又は持ち去り発生時刻を検知する方法である。
請求項8の発明は、請求項7に記載された置き去り又は持ち去り発生時刻を検知する方法において、前記期間において撮影された複数の画像と、前記発生時刻演算部で演算された置き去り又は持ち去り発生時刻における撮影画像との比較は、撮影画像中の同一エリア内の色又は輝度情報を比較して行うことを特徴とする置き去り又は持ち去り発生時刻を検知する方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、置き去り又は持ち去りが発生したときの時刻を正確に取得でき、それによって置き去り又は持ち去りが発生したときの映像又は画像を容易かつ低コストで得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る置き去り又は持ち去り検知システムの構成を概略的に示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係る置き去り又は持ち去り検知システムにおける置き去り又は持ち去り発生から検知までのタイムチャートである。
【図3】タイマーT1の不安定な期間を示す図2と同様の図である。
【図4】タイマーT1が不安定となる要因を例示した図である。
【図5】タイマーT1が不安定な時期を説明するための図3の一部拡大図である。
【図6】撮影画像内の検知矩形Sを示す図である。
【図7】置き去り又は持ち去り検知システムにおいて、置き去り又は持ち去り発生時刻t0の算出の手順を示すフロー図である。
【図8】置き去り又は持ち去り発生時刻を検知する方法を実行する処理手順を示すフロー図である。
【図9】従来の置き去り又は持ち去り検知システムにおける、置き去り又は持ち去り発生から検知までのタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の置き去り又は持ち去り検知システム(以下、単に本検知システムという)の実施形態について図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、本検知システムの構成を概略的に示すブロック図である。
本検知システムは、制御部100と、制御部100の入力側インターフェース(I/F)である入力部16に接続された外部装置である監視エリアを撮影する監視カメラ20と、設定変更などを行うためのキーボード22、マウス24と、制御部100の出力側インターフェース(I/F)である出力部15に接続された外部装置である静止画や動画を表示する表示装置(モニター)30と、置き去り又は持ち去りと判断したときにその旨を音声などで報知するためのスピーカー32、制御部100の入力部16を介して取り込んだ監視カメラ20で撮影した静止画又は動画を、その撮影時間と共に保存する例えばハードディスク(HDD)などの保存手段を備えたレコーダー34とから成っている。
【0015】
制御部100は、CPU(Central Processing Unit)10とROM(Read Only Memory)12と、RAM(Random Access Memory)14からなるコンピュータと既に述べた入力部16と出力部15とから構成されている。この制御部100は、本検知システム全体を制御すると共に、プログラムによって実現する機能実現手段として、異物検知部10aと、置き去り又は持ち去り判断部10bと、タイマー制御部10cと、発生時刻演算部10dを備えている。
【0016】
異物検知部10aは、監視エリアにおけるレコーダー34に格納されている背景画像と監視カメラ20からの入力画像との例えば輝度画像の差分値を求めて異物を検知する。
置き去り又は持ち去り判断部10bは、異物検知部10aで検知した異物を監視して、検知状態がタイマーT1の累積タイマー値が検知時間tを表す値になると、置き去り又は持ち去りと判断する(なお、タイマー値は例えばカウンターのカウント値或いは時間そのものを表す値であってもよい)。
タイマー制御部10cは、異物検知部10aの異物検知結果に基づきタイマーT1と、後述する停止タイマーT2及び逆進タイマーT3の動作を制御する。
発生時刻演算部10dは、タイマー制御部10cによる各タイマーT1、T2、T3の計数値に基づき、検知時間t、誤差αの計算、及び実際に置き去り又は持ち去りが発生した時刻を演算する。
【0017】
図2は、本検知システムにおける置き去り又は持ち去り発生から検知までのタイムチャートであり、縦軸にタイマーT1の検知時間tを、また横軸に時間(実時間)をとって示したものである。
本検知システムは、従来のシステムと同様に、特定の監視エリア内において置き去り又は持ち去りが発生した場合に、タイマーT1を作動してその発生時刻t0から計時を開始する。その置き去り又は持ち去り状態が予め定めたt時間以上継続したときは、実際に置き去り又は持ち去りであったと判断する。
したがって、本検知システムで、ある時刻に置き去り又は持ち去りがあったと判断したときは、実際の置き去り又は持ち去りはそれよりも検知時間t前に発生したことになる。
【0018】
ここで、異物検知部10aは、背景画像と撮影画像の例えば輝度画像の差分を取って、その差分の大小、つまり差分が予め定めた閾値を越えるか否かで行うが、制御部100のタイマー制御部10cは、この判断に基づきタイマーT1を作動させる。
また、タイマー制御部10cは、一旦置き去り又は持ち去りが発生しタイマー制御部10cの制御でタイマーT1が始動すると、検知時間t内においては、例えば置き去りの場合、前記差分が閾値よりも大きく異物があると判断されている間はそのタイマー値を増進(増加)させ、他方、差分がないか又は差分が閾値よりも小さくなり、異物検知部10aで異物があると判断されなくなった時は、タイマー値をリセットするようタイマーT1を制御するようにしてもよい。
【0019】
ただ、置き去り又は持ち去りを検知しても、それが確かに置き去り又は持ち去りであると判断するまでその検知を長時間続けて行う場合には、監視区域を人が通過して一時的に置き去り又は持ち去りの検知ができないとき、或いは、人が置き去り物(又は持ち去りの場合は物のあったところ)を塞ぐことで置き去り物が監視カメラの映像から消えて検知できなくなることがある。
このような場合に、そのたび毎にタイマーT1(のタイマー値)をリセットすると、置き去り又は持ち去りの検知は事実上不可能になる場合が出てくる。
【0020】
そこで、本検知システムでは、例えば置き去りの場合、監視エリアにおいて置き去り物である異物が検知できなくなったときに、異物が検知できない時間の長さに応じて、タイマーT1を止めたり或いは逆進させるなどの制御を行って、そのような場合にも置き去り又は持ち去りの判断が行えるようにしている。
【0021】
具体的には、図2に示すように、例えば時刻t0で異物(置き去り物)を検知した後、タイマーT1はタイマー値を増進していき、置き去り物が検知できなくなると、一旦タイマーT1のタイマー値の増進を止め、ここで、タイマー制御部10cは、タイマーT1の停止時間t1が予め定めた所定の時間ta未満(t1<ta)である場合、つまり監視カメラ20で置き去り物が監視できなくなった(置き去り物が見えなくなった)後に前記所定taの時間内に置き去り物が再び認識できたときは、タイマーT1をリセットさせず、図示のように停止させたタイマーT1を起動して、再度タイマー値の増進を開始させる。
【0022】
また、監視カメラ20からみて、置き去り物が見えなくなった状態で所定の時間taが経過すると(即ち、図中でt2=ta)、その段階で今度は停止させたタイマーT1のタイマー値を逆進させる(t4)。つまりタイマーT1のそれまでの累積タイマー値を逆進させていく(タイマー値がゼロになるとその段階でタイマーT1をリセットする。この場合は、一旦置き去りがあったものの、予め設定した検知時間内に持ち去られたので、ここでは置き去り又は持ち去りがあったとは判断せず、元に戻って新たな監視を開始する)。
【0023】
他方、タイマーT1のタイマー値がゼロになる前に、再び置き去り物(異物)が確認できたときは、ここで、タイマーT1の計測を再開する。図示の例では、タイマー値の逆進がt4時間継続した後、一旦置き去り物が認識できためタイマー値の逆進は停止したが、例えばその回りで人が行き来したためにタイマー値の進行を停止し、タイマーT1のタイマー値の状態がt3(t3<ta)時間継続した後、置き去り物が認識できたため再びタイマー値を増進させ、タイマーT1が逆進した時間分増進させた後、その累積タイマー値が検知時間tに達し、ここで置き去りがあったと判断(認識)したことを示している。
【0024】
ところで、前記検知時間t中に、人が通り過ぎた場合等のようにタイマーT1のタイマー値を保持して一時タイマー値の増進を停止(中断)する停止期間(図1における時間t1,t2,t3で表す期間)、或いは人が置き去り物を前記ta時間以上立ち塞いでタイマーT1(のタイマー値)を逆進する(戻す)逆進期間(図1における時間t4で表す期間)、その後人が移動して置き去り物が認識できたときに、タイマー値を減少させた分だけ再び増進させる再増進期間(図1におけるt4′)があると、置き去りが発生してから置き去りの判断をするまでの間に実時間としてはt+α時間(αは、タイマーT1の停止期間と逆進期間及び逆進させた分元に戻すまでの期間の合計である)が経過する。そのため正確な置き去り発生時刻t0を知りたくとも誤差αがあるため知ることができないという問題が新たに発生する。
【0025】
そこで、本実施形態では、この誤差αを求めるために、タイマーT1が停止している期間(時間t1,t2,t3)を計測するタイマーT2(停止タイマーT2)とタイマーT1のタイマー値を逆進している期間(t4)を計測するタイマー(逆進タイマーT3)を用いて、この誤差αを求める。
なお、タイマーT1のタイマー値が減少した分再びタイマー値を増進させる期間(t4′)は、逆進タイマーT3の計測期間と同一期間になるため改めて計測する必要はない。
【0026】
このように前記停止タイマーT2と逆進タイマーT3を用いることにより、前記誤差αは、停止タイマーT2の計数値をt2とし、かつ、逆進タイマーT3の計数値をt3とするとき、
α=t2+t3×2
で求めることができる。
つまり、例えば置き去り発生時刻t0は、置き去りと判断した時刻から、検知時間t+α(即ち、t2+t3×2)だけ遡った時刻となる。なお、停止タイマーT2と逆進タイマーT3のそれぞれの計測時間(t2とt3)は、t1(タイマーT1の累積時間)=0となったとき、つまり、タイマーT1が(累積時間t1を)逆進してt1=0になったときリセットされる。これによって例えば置き去り物の前を人が通ったり或いは一時的に人が立ち止まって覆ったりした場合においても、置き去り(持ち去り)が発生した時刻を知ることができる。
【0027】
しかし、これだけではまだ精度が不十分である。つまり、実際には、例えば置き去り発生時のタイマーT1の値は不安定なことがある。そのため、前記検知時間+αを求めても精度が十分とは云えない場合がある。
即ち、図3に示すように、タイマーT1がスタート時に不安定な期間Δt0がある場合には、検知時間tと誤差αにより求めた置き去り又は持ち去り発生時刻t0からさらにΔt0の誤差が発生する。この不安定な期間の発生要因としては、例えば図4に示すように、置き去りが発生したときに、置いた人が置いた物の前(カメラから見て手前)を行き来して見え隠れすることが挙げられる。
【0028】
そこで、次に、この不安定な期間の誤差を解消する方法について説明する。
(1)まず、図5に示すように、ユーザは、例えばキーボード22又はマウス24を用いて、不安定な期間Δt0よりも長い任意の時間Δt1を設定する。制御部100は、この設定に基づき、時刻t0からΔt1時間遡った時点(時刻)の画像(比較過去画像)をその画像撮影時点の時間情報と共に予め保存しておいたレコーダー34から読み出す。
(2)制御部100は、置き去り又は持ち去りを検知したときの画像から置き去り又は持ち去りを検知した部分の座標情報、例えば、図6に示す撮影画像内の検知矩形Sの4隅の画像座標(x1、y1)、(x1、y2)、(x2、y1)、(x2、y2)、及び矩形内の画素の色及び/又は輝度情報を取得する。
(3)制御部100は、(1)で取得した置き去り検知後に発生時刻演算部10dで演算した置き去り発生時刻t0から更に前記Δt1時間遡った時刻の比較過去画像の、前記(2)で取得した検知部分(検知矩形Sの4隅の座標情報)の色や輝度情報と、同様に前記(2)で取得した情報(検知矩形Sの4隅の座標情報及び画素の色及び/又は輝度情報)を比較する。
【0029】
この比較には、例えばNCC法(正規化相関法)によるパターンマッチング処理手法(画像データ同士の相関演算により、画像データの中から特定の画像パターンが存在する画像位置を検知する手法)のような日照変化に強いマッチングの方式を用いることが望ましい。
【0030】
比較の結果、一致しなければ(即ち、一致度が予め定めた所定値よりも低ければ)、時系列でみてt0方向の次の画像フレームを用いて前記と同様の比較を行う。一致すれば(即ち、一致度が予め定めた所定値以上であれば)、そのときの画像の撮像時刻が置き去りが実際に発生した時刻であることが分かる。
なお、ここで、一致又は不一致(即ち、一致度が低い或いは高い)は、例えばそれぞれ同じ検知矩形S内の画素の色及び/又は輝度情報の一致割合が予め定めた閾値に達しているか否かで判断する。
【0031】
図7は、以上で説明した本検知システムにおいて置き去り又は持ち去り時刻t0を精度よく見つけるための方法の手順を示すフロー図である。
制御部100のCPU10は、監視カメラ20で撮影した画像を入力部16を介して取り込むと共に、レコーダー34に保存された画像(背景画像)を出力部15を介してレコーダー34から読み出し、制御部100の異物検知部10aに入力する(S101)。異物検知部10aは、入力された画像(入力画像)と、前記背景画像のそれぞれの例えば輝度画像から差分画像を作成し、その差分画像から異物(置き去り又は持ち去り物)を検知すると、(S102)、タイマー制御部10cはタイマーT1を動作制御して、タイマーT1は計時を開始する(S103)。
【0032】
次に、置き去り又は持ち去り判断部10bは、タイマーT1のタイマー値が増進したか否かを判断し(S104)、増進したと判断したときは(S104、YES)、さらに、タイマーT1のタイマー値が予め定めた検知時間tに達しているか否か判断し(S105)、検知時間tに達していれば(S105、YES)、置き去り又は持ち去りがあったと判断して、例えば、液晶表示手段を備えたモニター30に表示し、或いはスピーカー32から音声などで置き去り又は持ち去りが発生した旨の通報を行う(S106)。
ここで、発生時刻演算部10dは、各タイマーT1〜T3のタイマー値に基づき置き去り又は持ち去り発生時刻t0を前掲の計算式(t+t2+t3×2)に基づき演算する(S107)。置き去り又は持ち去り発生時刻t0を演算した後、タイマー制御部10cは、タイマーT1、停止タイマーT2、逆進タイマーT3を全てリセットして(S108)、ステップS101の画像入力に戻る。
【0033】
ステップS104において、タイマーT1のタイマー値が増進せず(S104、NO)、タイマーT1を保持した場合は(109、YES)、停止タイマーT2のタイマー値を増進させて(S110)、ステップS101の画像入力に戻る。
ステップ109において、タイマーT1を保持しない場合は(S109、NO)、タイマーT1(のタイマー値)が逆進することを意味するから、タイマー制御部10cはタイマーT1の累積タイマー値がゼロになったか否かを判断し(S111)、タイマーT1がゼロになっていれば(S112)、停止タイマーT2と逆進タイマーT3をリセットしてステップS101の画像入力に戻る。
ステップS111において、タイマーT1の累積タイマー値がゼロでなければ(S111、NO)、逆進タイマーT2を増進させて(S113)、ステップS101の画像入力に戻る。
【0034】
図8は、置き去り又は持ち去り発生時刻を検知する方法を実行する処理手順を示すフロー図である。
先ず、レコーダー34に保存された置き去り又は持ち去りを検知した時(t0)における撮影画像から異物情報(検知した部分の座標情報、輝度、色情報)を取得する(S201)。次に、レコーダー34に保存された比較過去画像の取得時刻(t0−Δt1)を算出する(S202)。前記取得時刻における比較過去画像を取得し(S203)、置き去り又は持ち去り異物情報と比較過去画像とをマッチング(比較)する(S204)。ここで、類似度が高くないときは(S205、NO)、比較過去画像の取得時刻をt0側に変更して(S206)、ステップS203へ戻りその時点における比較過去画像をレコーダー34から取得する(S203)。ステップS205において、類似度が高い場合は(S205、YES)、置き去り又は持ち去り発生時刻を確定して(S207)、処理を終了する。
【0035】
以上、本実施形態に係る置き去り又は持ち去り検知システムによれば、従来は時刻t0での置き去り又は持ち去り発生に保証はなかったが、この方式では置き去り又は持ち去り発生時刻を正確に把握することができる。
つまり、既に述べたように、前記期間Δt間の動画切り出しについて、置き去り又は持ち去り発生時刻t0の検知精度が悪いと、それだけ長い時間(つまりより多くのフレームの)切り出しを行う必要があり、そのためにレコーダー34の保存容量を大きくしなければならずコストがアップした。
【0036】
しかし、本実施形態によれば、置き去り又は持ち去り発生時刻t0の検知精度が高いので、長時間に渡って切り出しを行う必要がない。つまり短時間の切り出しでよいからレコーダー34の保存容量が少なくて済み、従来の置き去り又は持ち去り検知システムに比してコストを低減することができる。
また、保存された映像(画像)を監視する側でも、保存された映像を見る時間が従来システムよりも短縮され、作業負担が軽減されるなどの利点がある。
【符号の説明】
【0037】
100・・・制御部、10・・・CPU、10a・・・異物検知部、10b・・・置き去り又は持ち去り判断部、10c・・・タイマー制御部、10d・・・発生時刻演算部、12・・・ROM、14・・・RAM、20・・・監視カメラ、22・・・キーボード、24・・・マウス、30・・・モニター、32・・・スピーカー、34・・・レコーダー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視エリアの画像を撮影する撮影手段と、撮影した画像を保存する保存手段と、前記撮影した画像及び前記保存手段に保存した画像に基づき監視エリアにおける異物を検知する異物検知部と、前記異物検知部で検知した異物が所定の検知時間の間検知されたとき、置き去り又は持ち去りと判断する置き去り又は持ち去り判断部と、前記異物の検知に基づき検知タイマーを作動制御するタイマー制御部と、置き去り又は持ち去り発生時刻を演算する発生時刻演算部と、を有する置き去り又は持ち去り検知システムであって、
前記タイマー制御部は、前記検知時間内において前記異物検知部による異物検知が一時中断されたとき、前記中断時間に応じて検知タイマーを停止又は逆進させ、前記置き去り又は持ち去り判断部は、検知タイマーの増進タイマー値から逆進タイマー値を減算した累積検知時間が前記検知時間に達したとき、置き去り又は持ち去りと判断し、かつ、前記発生時刻演算部は、検知タイマーの増進期間と停止及び/又は逆進期間の各タイマー値を加算して、置き去り又は持ち去り発生時刻を得ることを特徴とする置き去り又は持ち去り検知システム。
【請求項2】
請求項1に記載された置き去り又は持ち去り検知システムにおいて、
前記異物検知部の異物検知が中断されたとき、前記タイマー制御部は検知タイマーを停止すると共にそれまでの累積タイマー値を保持し、タイマー停止が予め定めた所定時間継続したとき前記検知タイマーを逆進させることを特徴とする置き去り又は持ち去り検知システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された置き去り又は持ち去り検知システムにおいて、
前記タイマー制御部は、前記検知タイマーが停止したときその停止期間を計測する停止タイマーを作動制御し、又は、前記検知タイマーを逆進させたときその逆進期間を計測する逆進タイマーを作動制御し、前記発生時刻演算部は前記検知タイマーと、前記停止タイマーと、前記逆進タイマーの各タイマー値を加算して前記置き去り又は持ち去り発生時刻を演算することを特徴とする置き去り又は持ち去り検知システム。
【請求項4】
請求項3に記載された置き去り又は持ち去り検知システムにおいて、
前記検知タイマーを逆進させて、前記検知タイマーの前記累積検知時間がゼロになったとき、前記停止タイマー及び前記逆進タイマーをリセットすることを特徴とする置き去り又は持ち去り検知システム。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載された置き去り又は持ち去り検知システムにおいて、
前記発生時刻演算部で演算された置き去り又は持ち去り発生時刻における監視エリアの画像を前記保存手段から読み出して表示する表示手段を有することを特徴とする置き去り又は持ち去り検知システム。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載された置き去り又は持ち去り検知システムにおいて、
前記置き去り又は持ち去り判断部が置き去り又は持ち去りがあったと判断したとき、その旨を報知する手段を有することを特徴とする置き去り又は持ち去り検知システム。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載された置き去り又は持ち去り検知システムにおける置き去り又は持ち去り発生時刻を検知する方法であって、
前記発生時刻演算部で演算された置き去り又は持ち去り発生時刻以前で、前記検知タイマーのスタート時における不安定期間よりも長い期間を設定する工程と、
当該期間において撮影された複数の画像を、当該期間における時系列に従って前記発生時刻演算部で演算された置き去り又は持ち去り発生時刻における撮影画像と順に比較する工程と、
前記比較の結果、両画像が一致したときの前記期間における撮影画像の撮影時刻を取得する工程と、
を有することを特徴とする置き去り又は持ち去り発生時刻を検知する方法。
【請求項8】
請求項7に記載された置き去り又は持ち去り発生時刻を検知する方法において、
前記期間において撮影された複数の画像と、前記発生時刻演算部で演算された置き去り又は持ち去り発生時刻における撮影画像との比較は、撮影画像中の同一エリア内の色又は輝度情報を比較して行うことを特徴とする置き去り又は持ち去り発生時刻を検知する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−217056(P2012−217056A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−81258(P2011−81258)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(304020498)サクサ株式会社 (678)
【Fターム(参考)】