説明

置換アルジトール化合物、組成物および方法

特定した一般式(I)を有する置換アルジトールまたは炭水化物化合物を提供する。このような置換アルジトールまたは炭水化物化合物を合成するための方法も提供する。ここで、nは0、1または2であり、Rは5またはそれより多い炭素を有するアルケニル基である。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
発明の背景
多価アルコールのアセタール誘導体は、たとえばポリマー樹脂のための核剤として、並びに有機液体のためのゲル化剤および増粘剤としての用途を含むいくつかの用途において有用である。ジベンジリデンソルビトールタイプ(DBS)の化合物は、このような用途において使用されることが知られている。
【0002】
結晶性ポリオレフィン樹脂から製造される物品におけるヘーズを減らすための核剤の使用は当該技術分野において知られている。清澄剤として用いられている代表的なソルビトールおよびキシリトールのアセタールは、たとえば、Hamada, et al.,米国特許第 4,016,118号,ジベンジリデンソルビトール;Kawai, et al., 米国特許第 4,314,039号,ジ(アルキルベンジリデン)ソルビトール;Mahaffey, Jr.,米国特許第 4,371,645号,少なくとも1つの塩素または臭素置換基を有するソルビトールのジ−アセタール;Kobayashi, et al.,米国特許第 4,954,291号,ジメチルまたはトリメチル置換ベンズアルデヒドおよび無置換のベンズアルデヒドの混合物から生成されるソルビトールおよびキシリトールのジアセタールの分布を含む、いくつかの特許に記載されている。他の参考文献であるRekers et al.,への米国特許第5,049,605号は、炭素環を形成する置換基を含む、ビス(3,4−ジアルキルベンジリデン)ソルビトールを開示している。
【0003】
DBSベースの化合物のベンジル環部分での種々の基の置換は、このような化合物の核剤または清澄剤としての適合性にかなりの影響を有するであろう。過去のかなりの量の研究は、ベンジリデン環置換基の置換を変更することに向けられていた。しかし、ポリマー組成物におけるプラスチック添加物として使用される際に低いヘーズ(および対応するより高い透明度)を与えるような他の化合物を開発することが未だに進行中である。
【0004】
化学技術はしばしば予測できない。これら特殊なタイプの化合物における任意の部分または置換基を変えることは、化合物の性能および実用性にかなりの影響を有するであろう。本発明は、以前には知られておらず、プラスチック添加剤として、またはゲル化剤、増粘剤として、または他の目的に非常に有用であろう重要な新規の化合物を認識している。
【0005】
発明の詳細な説明
次に、本発明の実施形態を参照し、その1またはより多くの例を以下に記載する。各例は本発明の限定ではなく本発明の例示の目的で与えられる。当業者には、本発明の範囲または意図から逸脱することなく、本発明において種々の変更および変形をなすことができることは明らかであろう。
【0006】
ポリオレフィン添加剤組成物を本明細書に開示している。いくつかの用途において、ポリオレフィン添加剤組成物は、このような組成物を添加した際に、プラスチックポリマー組成物に対して改善された透明度を与える。いくつかの用途において、添加剤組成物は、ポリプロピレンに関連して用いたときに有利であるけれども、他のポリマーに関連する種々の用途は本発明の範囲内にある。
【0007】
このような組成物によって核形成することができる(かつ本発明の実施によりその透明度が改善されるであろう)オレフィンポリマーは、2〜6個の炭素原子を含有する脂肪族モノオレフィンのポリマーおよびコポリマーであり、約10,000〜約2,000,000、好ましくは約30,000〜約300,000の平均分子量を有する、たとえばポリエチレンであり、線状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレンおよび高密度ポリエチレンを含むもの、ポリプロピレン、結晶性エチレン/プロピレンコポリマー(ランダムまたはブロック)、ポリ(1−ブテン)およびポリメチルペンテンを含む。
【0008】
開示したアセタール化合物によって核形成し得る他の熱可塑性ポリマー樹脂の例は、ポリエステル、ポリ(エチレンテレフタラート)(PET)およびポリ(ブチレンテレフタラート)、並びにナイロン6およびナイロン6,6を含むポリアミド、ポリ(フェニレンスルフィド)、シンジオタクチックポリスチレン、並びにその主鎖にカルボニル基を有するポリケトンを含む。
【0009】
組成物は、脂肪族ポリオレフィン、ならびに少なくとも1つの脂肪族オレフィンおよび1またはより多くのエチレン性不飽和コモノマー、および少なくとも1つの置換アルジトールのモノ−、ジ−、またはトリ−アセタール(たとえばアリル−ソルビトール、プロピル−ソルビタール、アリル−キシリトール、プロピル−キシリトールなど)を含有するコポリマーから選択されるポリマーを含んでいてもよい。
【0010】
置換アルジトールのモノ−、ジ−、またはトリ−アセタールは、以下に記載するような組成物を含んでいてもよい。たとえば、限定されないが、式(I)のような置換アルジトールであり、これは少なくとも1モルの以下に示す式(II)をもつ化合物から選択されるベンズアルデヒドと結合する。
【化1】

【0011】
式(I)について:nは0、1または2であり;Rは独立して、アルケニル基(たとえばアリル)、たとえば2またはより多くの炭素を有するアルキル基を含むアルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシルアルキル基、アルキル−ハライド基を含む水素でない基から選択される。
【化2】

【0012】
式(II)について、R1、R2、R3、R4およびR5は独立して、水素、フルオロカーボン、5またはより多くの炭素を有するアルケニル基を含むアルケニル基、アルキル基、アルキニル基、アルコキシ基、カルボキシ基、ハライド、およびフェニルからなる群より選択され、あるいは本発明のいくつかの実施形態においては、任意の2つの隣接基が結合して環状基を形成していてもよく、前記環状基はメチレンジオキシ、シクロペンチル、シクロヘキシル、または他の同様な環状基からなっていてもよい。
【0013】
アセタール化合物は、本発明の1つの特定の実施形態においては、以下のプロセスによって形成することができる。(a)多価アルコールをアルケニル分子と反応させて第1の化合物を形成し、(b)上記第1の化合物を芳香族アルデヒドと縮合反応で反応させてアセタール化合物を形成する。しかし、本発明は他の方法でも同様に実施することができる。こうして形成されるアセタール化合物はモノ−、ジ−、またはトリ−アセタールであり得るが、多くの場合にジ−アセタールが特に有用であることがわかった。本明細書にさらに記載するように、本発明の1つの特定の実施形態においては、アセタール化合物はアリルを含んでいてもよい。
【0014】
いくつかの用途において、このような反応生成物または生じた組成物は、ジ−アセタールである(したがってアルジトールとベンズアルデヒドとの1:2モル比反応の結果である)。以下の式(III)の構造を有する組成物が得られるであろう。シングルアセタール、またはトリアセタールも本発明の実施において得られるが、1つの特定のジ−アセタール組成物を以下に示す。
【化3】

【0015】
この組成物において、nは0、1または2であってもよく;R1、R2、R3、R4およびR5は式(II)について上で定義したものと同じ基であり得る。さらに、Rは、アルケニル、2またはより多くの炭素を有するアルキル、3炭素アルキル(すなわち、n−プロピル)、4炭素のアルキル(ブチル)、アルコキシ、ヒドロキシアルキル、およびアルキル−ハライドからなる群より選択され得る。Rはアルケニルを含んでいてもよく、本発明のいくつかの特定の実施形態においては、アリルは、R基として極めて良好に機能することがわかった。
【0016】
R基の立体化学は定義されず、本発明はいかなる特定のR基の立体化学にも限定されず、本明細書において示される全ての化学構造はRが結合している炭素原子の立体異性体に起因して生じるあらゆる異性体をカバーするものとするように理解すべきである。R基が結合している炭素は、本明細書においてC−1炭素ということがある。
【0017】
上に記載した組成物に関しては、1,3;2:4異性体を示したのみであるが(すなわち、2つのアセタールを形成しているソルビトール鎖上の番号付けした炭素)、この構造は便宜上かつ例示としてのみ示され、本発明は1,3:2,4タイプの異性体のみに限定されず、あらゆる全ての他の異性体も同様に含むことができ、例として1:3;4:6および2,4:3,5タイプの異性体も含むことを理解すべきである。
【0018】
本発明のジアセタール、トリアセタール、およびモノアセタールは、置換アルジトールの縮合生成物であって、たとえば(限定されないが)、アリル−ソルビトール、プロピル−ソルビトール、1−メチル−2−プロフェニルソルビトール、アリル−キシリトール、プロピル−キシリトール、および(置換)ベンズアルデヒドであり得る。適切な(置換)ベンズアルデヒドの例は、ベンズアルデヒド、4−エチルベンズアルデヒド、4−イソブチルベンズアルデヒド、4−フルオロ−3−メチルベンズアルデヒド、5,6,7,8−テトラヒドロ−2−ナフトアルデヒドベンジリデン、3−メチルベンズアルデヒド、4−プロピルベンズアルデヒド、4−ブチルベンズアルデヒド、4−メトキシベンズアルデヒド、3−クロロベンズアルデヒド、3,4−ジメチルベンズアルデヒド、3,5−ジフルオロベンズアルデヒド、3−フルオロベンズアルデヒド、4−フルオロベンズアルデヒド、3−ブロモ−4−フルオロベンズアルデヒド、3−メチル−4−メトキシベンズアルデヒド、2,4,5−トリメチルベンズアルデヒド、4−クロロ−3−フルオロベンズアルデヒド、4−メチルベンズアルデヒド、3−ブロモベンズアルデヒド、4−メトキシベンズアルデヒド、3,4−ジクロロベンズアルデヒド、4−フルオロ−3,5−ジメチルベンズアルデヒド、2,4−ジメチルベンズアルデヒド、4−ブロモベンズアルデヒド、3−エトキシベンズアルデヒド、4−アルコキシベンズアルデヒド、3,5−ジメチルベンズアルデヒド、4−クロロベンズアルデヒド、3−メトキシベンズアルデヒド、4−(トリフルオロメチル)ベンズアルデヒド、2−ナフトアルデヒド、4−イソプロピルベンズアルデヒド、3,4−ジエトキシベンズアルデヒド、3−ブロモ−4−エトキシベンズアルデヒド、ピペロナール、3,4−ジメトキシベンズアルデヒド、4−カルボキシベンズアルデヒド、3−ヘキサ−1−イニルベンズアルデヒド、および2−クロロベンズアルデヒドを含む。本発明の好ましいジ−アセタールは、1,3:2,4−ビス(4−エチルベンジリデン)−1−アリル−ソルビトール、1,3,2,4−ビス(3’−メチル−4’−フルオロベンジリデン)−1−プロピル−ソルビトール、1,3,2,4−ビス(5’,6’,7’,8’−テトラヒドロ−2−ナフトアルデヒドベンジリデン)−1−アリル−キシリトール、ビス−1,3,2,4−(3’,4’−ジメチルベンジリデン)−1’’−メチル−2’’−プロピル−ソルビトール、1,3,2,4−ビス(3’,4’−ジメチルベンジリデン)−1−プロピル−キシリトールを含む。
【0019】
本発明のジ−アセタールおよびモノ−アセタールは種々の方法により調製することができ、そのいくつかはこの分野において知られている。一般的に、このような手法は、1モルの置換アルジトール(たとえばアリル−ソルビトール、プロピル−ソルビトール、アリル−キシリトール、プロピル−キシリトールなど)の、2モルのアルデヒド(ジアセタールの場合)、1モルのアルデヒド(モノアセタールの場合)、または3モルのアルデヒド(トリアセタールの場合)との、酸触媒(たとえば塩酸のような無機酸、またはp−トルエンスルホン酸(pTSA)のような有機酸)の存在下での反応を用いる。さらに、水と混和する有機溶媒(たとえば低アルキルアルコール、N,N−ジメチルホルムアミド、または酢酸)を室温で用いる。
【0020】
本発明のジ−アセタールを調製するために用いることができる1つの方法は、Gardlik et alへの米国特許第5,106,999号に記載されており、参照により本明細書に組み込まれている。様々な鎖長の炭化水素を調製および合成するための方法は、Kim, Gordon, Schmid, and Whitesides, Tin and Indium Mediated Allylation in Aqueous Media: Application to Unprotected Carbohydrates, J. Org. Chem, 5500-5507, 58 (1993) and in Whiteside, Journal of the American Chemical Society, 113, 6674-6675 (1991)に開示されている。Whitesideはグルコースとアリルブロミド/スズとの反応を提案している。
【0021】
本発明の実施に必要とされる配合物の合成のための出発材料の調製に使用することができる1つの反応法を以下に示すが、そのなかではアリル基を炭水化物に加えることができる。図示する反応スキームは単なる一例であり、鎖中により多いまたはより少ない炭素基を有する炭化水素について同様の反応を行うことができる。
【化4】

【化5】

【0022】
本発明の実施において、アセタール化合物は以下のプロセスによって形成された。(a)多価アルコールとアルケニルまたはアルキル基を反応させて第1の化合物を形成し、(b)前記第1の化合物を芳香族アルデヒドと縮合反応で反応させてアセタール化合物を形成する。本発明のいくつかの特定の用途において、アルケニル基はアリル基を含む。
【0023】
本明細書における本発明の1つの実施形態に導く研究の過程で、上に示したアリルブロミド/スズの化学は一連の反応における1つの工程として用いることができる炭水化物炭化水素鎖の合成の1つの様式であり、予想外に有意な利点と有用な組成物を与えることが発見された。この一般反応経路は、本発明の組成物の製造において炭化水素を合成するための種々の形態で用いることができる。本発明の1つの実施形態は、炭化水素合成反応を他のアセタール形成反応と組み合わせて使用し、本発明の組成物を調製することに関する。
【0024】
置換ソルビトールジアセタール、トリアセタール、およびモノアセタールを調製することができる。これらの構造は、任意の関連した種類のアセタール(たとえば目的のアセタールの、関連するジ−、トリ−および/またはモノアセタール)の混合物を含む。ジ−アセタール、トリアセタール、またはモノアセタールを目的とするポリオレフィンに組み込む前に、これらの不純物を除去することは必ずしも必要ないであろうが(特に、これらが非常に低い割合で存在する場合)、そうすることが望ましく、このような精製は製造される樹脂の透明度を高めるのに役立つであろう。この任意の精製工程は還元剤を用いることにより達成することができる。
【0025】
本発明の1つの実施形態において、ジ−アセタールの精製は、あらゆる既存のトリ−アセタールを比較的非極性の溶媒または還元剤を用いたこれらの抽出により除去することによって達成されるであろう。非限定的な例として、不純物の除去により生成物を精製して、用途に応じて添加剤組成物中のジ−アセタールの量が少なくとも約95パーセント、さらに98パーセントまでのジ−アセタールまたはそれ以上を含むようにする。
【0026】
より完全な合成経路を以下に示すが、これは単に例示的であり、示したこれらの化学種または反応のみに限定されない。
【化6】

【化7】

【0027】
本発明の実施において多くの様々な置換ベンジル基をArおよびArに用いてもよく、表1にいくつかの代表的な例により示した通りであり、これらを本明細書に挙げた例に示すように合成し試験した。Arおよび/またはArの置換基は表1に示したもののみに限定されない。たとえば、表1は種々の置換ArおよびAr基についてn=0およびn=1の場合の種々の組成物を示している。n=0の場合には、キシリトール部位を用いる。n=1の場合には、ソルビトール部位を用いる。n=2の化合物は表1に示していないが、このような化合物は本発明の範囲内にあり、本明細書に示した教示の範囲内である。このような組成物に何が置換するかについて、これらが化学的に可能である限り実施上の制限はない。しかし、この化合物へのある種の置換基は、向上した性質を与えることがわかった。
【0028】
本発明の実施において、Rは幅広い種類の化合物から選択することができ、限定されず、例として以下のものを含む。
【0029】
−CH3;−CH2CH3
−CH2CH2CH3;−CH2CH2CH2CH3
−CH2CH=CH2;−CH(CH3)CH=CH2
−CH2CH−X−CH2−X’;−CH2CH2−X’’−CH2−CH3
−CH2CH−X’’’−CH2OH;−CH−OH−CH−OH−CH2−OH
上記の化合物に関して、それらを用いる場合には、X、X’、X’’およびX’’’はこれらの選択された化合物において独立に選択されるハライド基を含む。
【0030】
アリル種(−CH2CH=CH2)が特に有利なことがあり、いくつかのこのような化学種を製造し、他のものとともに本明細書の表1に示した。
【表1−1】

【表1−2】

【0031】
例1:
1−アリルソルビトール
加熱マントル、撹拌機、窒素注入口およびコンデンサを備えた3リットルの3つ口丸底フラスコに、900mLのエタノール、150mLの水、180g(1.00モル)のD−グルコース、119g(1.00モル)のスズ粉末(−100メッシュ)、および121g(1.00モル)のアリルブロミドを入れた。混合物を撹拌し、徐々に加熱して還流させた。かなりの発熱とガス発生が60℃で観察された。灰色の懸濁液を還流下に2日間撹拌し、この間に反応混合物はオレンジ/茶色に変化した。熱を取り除いて、混合物を室温まで冷却させた。約200mlの5M NaOH水溶液を加えることにより、反応をpH=7に中和した。懸濁液をろ過して固体を除去し、黄色溶液を活性炭の複数回処理により脱色した。活性炭をろ過により除去し、溶媒をロータリーエバポレーションにより除去し、白色シロップを単離した。典型的な収量は、GC−MSに基づいて、7:1のトレオ−エリスロ比で200gであった。シロップをさらに精製することなく用いた。
【0032】
純粋なトレオ異性体を、例2〜8の任意の加水分解により得ることができた。1H NMR(500MHz,D2O,ppm):2.34−2.37(m,2H),3.63−3.95(m,7H),5.13−5.20(m,2H),5.88−5.89(m,1H)。13C NMR(125MHz,D2O,ppm):38.32,63.69,70.74,71.14,71.80,71.92,74.58,118.60,135.72。
【0033】
例2
ビス−1,3,2,4−(4’−エチルベンジリデン)−1−アリルソルビトール
撹拌機および窒素注入口を備えた2リットルの反応ケトルに、111g(0.50モル)の1−アリルソルビトールシロップ(例1の生成物)の入った100mLの6NのHCl溶液を入れた。134g(1.0モル)の4−エチルベンズアルデヒドの入った800mLのメタノールを反応容器に加えた。透明な溶液を48時間撹拌し、この間にかなりの量の白色沈殿が生じた。この粉末をろ過により単離し、250mlの1M NaOH水溶液で洗浄した。粉末を水に懸濁させ、さらに少量のNaOHでpH=7まで中和した。懸濁液を沸騰まで加熱した後ろ過した。白色粉末を7×500mlの沸騰水で洗浄した。洗浄した粉末を終夜乾燥させた。その後、粉末を500mLのシクロヘキサン中で撹拌し、沸騰まで加熱し、ろ過し、2×250mlの沸騰シクロヘキサンで洗浄した。単離した白色粉末を真空オーブン中で乾燥させ、107gの生成物、m.p.244〜246℃を得た。GC−MSに基づいて、純度は99%以上であった。1H NMR(300MHz,DMSO−d6,ppm):1.14−1.19(t,6H),2.39−2.44(t,2H),2.56−2.63(q,4H),3.41−4.10(m,7H),4.38−4.42(t,1H),4.81−4.83(d,1H),5.07−5.19(q,2H),5.60−5.64(d,2H),5.84−5.89(m,1H),7.19−7.23(t,4H),7.34−7.38(t,4H)。
【0034】
例3−8
種々のアリル置換ジベンジリデンベース(DBS)の分子を、上の例2に記載したのと同様の手法を用いて合成した。構造を、融点の測定値とともに表1に示す。全ての誘導体は示した構造と一致するNMR、およびGC−MSに基づく少なくとも95%の純度を有していた。
【0035】
例9
1−アリルキシリトール
加熱マントル、撹拌機、窒素注入口、およびコンデンサを備えた5リットルの3つ口丸底フラスコに、1.8リットルのエタノール、0.3リットルの水、300g(2.00モル)のD−キシロース、242g(2.04モル)のスズ粉末(−325メッシュ)、および242g(2.00モル)のアリルブロミドを入れた。混合物を撹拌し、徐々に加熱して還流させた。かなりの発熱とガス発生が60℃で観測された。灰色の懸濁液を還流下に3日間撹拌し、この間に反応混合物はオレンジ/茶色に変化した。熱を取り除いて、混合物を室温まで冷却させた。約400mlの5M NaOH水溶液を加えることにより反応をpH=7に中和した。懸濁液をろ過して固体を除去し、黄色溶液を活性炭の複数回処理により脱色した。活性炭をろ過により除去し、溶媒をロータリーエバポレーションにより除去し、白色シロップを単離した。典型的な収量は320gであった。1H NMR(300MHz,D2O,ppm):2.33−2.39(m,2H),3.55−3.89(m,6H),5.14−5.23(m,2H),5.89(m,1H)。シロップをさらに精製することなく用いた。
【0036】
例10
ビス−1,3,2,4−(5’,6’,7’,8’−テトラヒドロ−2−ナフトアルデヒドベンジリデン) 1−アリルキシリトール
撹拌機および窒素注入口を備えた2リットルの反応ケトルに、144g(0.75モル)の1−アリルキシリトールシロップ(例9の生成物)、300mLの水、および100mLの濃(12N)HClを入れた。1−アリルキシリトールが完全に溶解するまで混合物を撹拌した。240g(1.50モル)の5’,6’,7’,8’−テトラヒドロ−2−ナフトアルデヒドの入った400mLのメタノールを反応容器に加えた。溶液を2日間撹拌し、この間にかなりの量の白色沈殿が生じた。粉末をろ過により単離し、250mlの1M NaOH水溶液で洗浄した。粉末を水に懸濁させ、さらに少量のNaOHでpH=8に中和した。懸濁液を加熱して沸騰させた後、ろ過した。白色粉末を7×500mlの沸騰水で洗浄した。洗浄した粉末を終夜乾燥させた。その後、粉末を0.5リットルのシクロヘキサン中で撹拌し、沸騰まで加熱し、ろ過し、2×250mlの沸騰シクロヘキサンで洗浄した。単離した白色粉末を真空オーブン中で乾燥させ、47.8gの生成物、m.p.210〜212℃を得た。GC−MSに基づいて、純度は99%であった。1H NMR(300MHz,DMSO−d6,ppm):1.72(m,8H),2.36−2.51(t,2H),2.71(m,8H),3.54−4.03(m,6H),4.76−4.80(t,1H),5.07−5.17(q,2H),5.56−5.77(d,2H),5.80−5.90(m,1H),7.02−7.06(m,2H),7.11−7.17(m,4H)。
【0037】
例11,12
例2に記載したのと同様の手法を用いて、種々のアリルDBXを合成した。例10および11の構造を表1に示す。全ての誘導体は、示された構造と一致するNMR、およびGC−MSに基づいて少なくとも95%の純度を有していた。
【0038】
例13
ビス1,3:2,4−(3’,4’−ジメチルベンジリデン)−1−プロピルキシリトール
58g(0.3モル)の1−アリルキシリトールシロップ(例8)を60mlの水に溶解させた。約0.6gの白金(活性炭上5重量%)を加え、混合物を室温で、60psiの水素圧で水素化した。水素圧低下が観察されなくなったら反応を止めた。固体をろ過した。NMRに基づいて溶液のアリル基はプロピル基に完全に変化した。100g(0.6モル)の3,4−ジメチルベンズアルデヒド、500mlのエタノール、および50mLの濃HCl(12N)を糖溶液に加えた。透明な溶液を室温で終夜撹拌し、この間にかなりの量の白色沈殿が生じた。粉末をろ過により単離し、100mlの1M NaOH水溶液で洗浄した。粉末を水に懸濁させて、さらに少量のNaOHでpH=7に中和した。懸濁液を加熱して沸騰させた後、ろ過した。白色粉末を7×500mlの沸騰水で洗浄した。洗浄した粉末を終夜乾燥させた。その後、粉末を500mLのシクロヘキサン中で撹拌し、沸騰まで加熱し、ろ過し、2×250mlの沸騰シクロヘキサンで洗浄した。単離した白色粉末をメタノールで洗浄し、真空オーブン中で乾燥させ、21gの生成物、m.p.255〜257℃を得た。GC−MSに基づいて、純度は98%以上であった。1H NMR(300MHz,DMSO−d6,ppm):0.89−0.93(t,3H),1.30−1.50(m,2H),1.50−1.70(m,2H),2.22(12H),3.50−4.05(m,6H),4.78(1H),5.56−5.59(d,2H),7.14−7.21(m,6H)。
【0039】
例14
ビス−1,3,2,4−(3’−メチル−4’−フルオロ−ベンジリデン) 1−プロピルソルビトール
約85g(0.38モル)の1−アリルソルビトールシロップ(例1の生成物)を、85mlの水に溶解させた。0.8gの白金(活性炭上5重量%)を加え、この混合物を室温で、60psiの水素圧で水素化した。水素圧の低下が観察されなくなったら反応を止めた。固体をろ過した。NMRに基づいて、溶液のアリル基はプロピル基に完全に変化していた。
【0040】
純粋なトレオ異性体を2−プロパノール再結晶から分離することができた。119〜120℃の融点を有する白色の針状結晶。1H NMR(500MHz,D2O,ppm):0.92−0.95(t,3H),1.36−1.47(m,2H),1.53−1.57(m,2H),3.65−3.69(m,2H),3.72−3.74(dd,1H),3.77−3.82(m,2H),3.83−3.86(dd,1H),3.95−3.97(dd,1H)。13C NMR(125MHz,D2O,ppm):13.40,18.51,35.00,63.05,70.21,70.86,71.26,71.29,74.53.
75g(0.54モル)の3−メチル−4−フルオロベンズアルデヒド、500mlのエタノール、および56mLの濃HCl(12N)を糖溶液に加えた。透明な溶液を室温で終夜撹拌し、この間にかなりの量の白色沈殿が生じた。粉末をろ過により単離し、100mlの1M NaOH水溶液で洗浄した。粉末を水中に懸濁させて、さらに少量のNaOHでpH=7に中和した。懸濁液を加熱して沸騰させた後、ろ過した。白色粉末を7×500mlの沸騰水で洗浄した。洗浄した粉末を終夜乾燥させた。その後、粉末を500mLのシクロヘキサン中で撹拌し、沸騰まで加熱し、ろ過し、2×250mlの沸騰シクロヘキサンで洗浄した。単離した白色粉末をメタノールで洗浄し、真空オーブンで乾燥させて、21gの生成物、m.p.253℃を得た。GC−MSに基づいて、純度は98%以上であった。1H NMR(300MHz,DMSO−d6,ppm):0.91−0.95(t,3H),1.40−1.48(m,2H),1.54−1.67(m,2H),2.13−2.25(6H),3.42−4.05(m,7H),4.40(t,1H),4.82−4.84(d,1H),5.60−5.62(d,2H),7.11−7.16(m,2H),7.30−7.37(m,4H)。
【0041】
例15
ビス−1,3,2−4−(3’,4’−ジメチルベンジリデン) 1’−メチル−2’−プロペニルソルビトール
加熱マントル、撹拌機、窒素注入口、およびコンデンサを備えた2リットルの3つ口丸底フラスコに、600mLのエタノール、100mLの水、126g(0.70モル)のD−グルコース、84g(0.7モル)のスズ粉末(−100メッシュ)、および131g(0.97モル)のクロチルブロミドを入れた。混合物を撹拌し、徐々に加熱して還流させた。かなりの発熱とガス発生が60℃で観察された。灰色の懸濁液を還流下で終夜撹拌し、この間に反応混合物は薄い黄色に変化した。熱を取り除き、混合物を室温に冷却させた。反応物をろ過し、溶液を188g(1.4モル)の3,4−ジメチルベンズアルデヒドとともに終夜撹拌し、この間にかなりの量の沈殿物が形成された。黄色の固体をろ過により単離し、メタノールで洗浄して、白色粉末、m.p.233〜235℃を得た。GC−MSとNMRは、1−メチル−2−プロペニルの2つのジアステレオマー(2:1)の混合物として所望の化合物を示した。
【0042】
例16
ビス−1,3,2,4−ジベンジリデン2’3’−ジブロモプロピルソルビトール/ ビス−1,3,2,4−ジベンジリデン2’−ブロモ−3’−ヒドロキシプロピルソルビトール
90gのアリルソルビトールシロップ(例1)の水溶液の入った110gのメタノールを、薄い黄色溶液まで臭素で滴定した。少量のNaHSO3を加えて無色の溶液を得た。1.9gのp−トルエンスルホン酸一水和物を加えた。透明な溶液を終夜撹拌し、この間にかなりの量の白色沈殿が生じた。粉末をろ過により単離し、1M NaOH水溶液で洗浄した。粉末を水に懸濁させ、さらに少量のNaOHでpH=7に中和した。懸濁液を加熱して沸騰させた後、ろ過した。白色粉末を7×500mlの沸騰水で洗浄した。洗浄した粉末を終夜乾燥させた。その後、粉末を50mLのシクロヘキサン中で撹拌し、沸騰まで加熱し、ろ過し、2×25mlの沸騰シクロヘキサンで洗浄した。生成物を真空オーブンで乾燥させ、7.3gの白色粉末、m.p.188〜190℃を得た。GC−MSおよびNMRは、ビス−1,3,2,4−ジベンジリデン2’,3’ジブロモプロピルソルビトール(90%)、およびビス−1,3,2,4−ジベンジリデン2’−ブロモ−3’−ヒドロキシプロピルソルビトール(10%)の混合物を示した。
【0043】
例17
非対称ベンジリデン/2,4−ジメチルベンジリデン 1−アリルソルビトール
撹拌機および窒素注入口を備えた2リットルの反応ケトルに、111g(0.50モル)の1−アリルソルビトールシロップ(例1の生成物)の入った280mlのメタノール溶液を入れた。9.5gのpTSA、53g(0.5モル)のベンズアルデヒド、および67g(0.50モル)の2,4−ジメチルベンズアルデヒドを反応容器に加えた。透明な溶液を48時間撹拌し、この間にかなりの量の白色沈殿が生じた。粉末をろ過により単離し、250mlの1M NaOH水溶液で洗浄した。粉末を水に懸濁させて、さらに少量のNaOHでpH=7に中和した。白色粉末を7×500mlの沸騰水で洗浄した。洗浄した粉末を終夜乾燥させた。その後、粉末を500mLのシクロヘキサン中で撹拌し、沸騰まで加熱し、ろ過し、2×250mlの沸騰シクロヘキサンで洗浄した。単離した白色粉末を真空オーブン中で乾燥させ、38.4gの生成物、m.p.234〜236℃を得た。材料の標準的な分析は、1,3−O−(ベンジリデン):2,4−O−(2,4−ジメチルベンジリデン)1−アリルソルビトールおよび1,3−O−(2,4−ジメチルベンジリデン)1−アリルソルビトール(85%)、1,3:2,4−ビス(ベンジリデン)1−アリルソルビトール(5%)、および1,3:2,4−ビス(2,4−ジメチルベンジリデン)1−アリルソルビトール(10%)の混合物からなることを示した。
【0044】
例18
種々のレベルの例2〜16のアセタール、共添加剤(0.05重量%のイルガノックス(Irganox)1010、0.1重量%のイルガフォス(Irgafos)168、および0.08重量%のステアリン酸カルシウム)、並びに残部のポリプロピレンホモポリマーまたはポリプロピレンランダムコポリマー(3%エチレン含有率)を含有する組成物を、機械式ミキサーで乾式混合し、240℃で単軸押出機を通して押し出し、ペレット化した。ペレットを220℃で射出成形することにより、プラークを作った(1.27mm厚)。
【0045】
Tcおよびヘーズを測定し、結果を表2に示す。Millad 3988(登録商標)は、スパータンバーグ,サウスカロライナ州のMilliken and Companyの登録商標である。Millad 3988(登録商標)は、ビス(3,4−ジメチルベンジリデンソルビトール)("DMDBS")を用いる商業的に流通している清澄剤であり、米国特許第5,049,605号に示され、記載されている。
【表2】

【0046】
本発明のいくつかの用途において、核剤組成物をポリマー樹脂に約0.005〜約3重量パーセントの濃度で加えることができる。他の用途においては、約0.01〜約1重量パーセントの濃度が用いられるであろう。他の用途においては、約0.025〜約0.5重量パーセントの濃度の組成物が有用である。
【0047】
樹脂中の50重量パーセントまでの核剤の濃縮物を調製して、成形前に追加の樹脂と配合してもよい。典型的には、樹脂中に33重量パーセント以下の核剤を含む濃縮物が商業的に使用されている。
【0048】
樹脂を直ちに二度目の押し出しをしてから、たとえば射出成形、押出ブロー成形、射出ブロー成形、延伸ブロー成形、圧縮成形、回転成形、異形押出、シート押出、熱成形、フィルム押出、および配向を伴うフィルム押出により、最終的な製品に加工してもよい。
【0049】
ゲル形成および試験
認められている単純な方法により本発明の置換アルジトールから構成されるソリッドゲルを製造される。特に、特定の有機溶媒を添加剤とある濃度で組み合わせて、完全に混合した。その後、得られた混合物を、以下に示すように、撹拌下で5〜120分間、約170°F(77℃)〜300°F(149℃)の温度に加熱した。その後、得られた溶液を型に注いでゲルスティックを作った。リストした溶媒は、本発明の置換アルジトール誘導体とともにゲルを形成するために使用できる見込のあるタイプについて網羅的であることを意図してはおらず、従ってこのような目的に好ましい溶媒として単にリストしている。以下の例を実験的にまたは触ることにより分析をし、ゲルが実際に形成されているか、ならびに硬度特性および任意の形成ゲルを決定した。結果を表3に示す。
【表3】

【0050】
このように、本発明の置換アルジトール誘導体は、目的の溶媒なしにその濃度に依存して、溶媒について優れたゲル化能を与える。
【0051】
本発明の議論は典型的な実施形態の記載にすぎず、本発明のより広い態様を限定するようには意図しておらず、そのより広い態様は例示的な構成に具体化されていることは、当業者によって理解される。本発明は、添付の特許請求の範囲における例によって示されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式
【化1】

(式中、nは0、1または2であり、
Rは5またはそれより多い炭素を有するアルケニル基である)
を有する化合物。
【請求項2】
nが0である請求項1の化合物。
【請求項3】
nが1である請求項1の化合物。
【請求項4】
nが2である請求項1の化合物。
【請求項5】
置換炭水化物化合物を作る方法であって、
(a)多価アルコール化合物を準備し、前記化合物は長さで5〜7炭素の炭素鎖を有し、前記鎖はC−1と指定した鎖末端炭素を有する工程と、
(b)第1の反応性触媒を準備する工程と、
(c)5またはそれより多い炭素を有するアルケニルからなる群より選択されるR基を準備する工程と、
(d)前記多価アルコール化合物を前記R基と前記第1の反応性触媒の存在下で反応させ、それによって置換炭水化物化合物を生成し、前記置換炭水化物化合物はC−1炭素で結合した前記R基を有する工程と
を有する方法。
【請求項6】
第2の反応性触媒を準備し、芳香族アルデヒド化合物を準備し、前記置換炭水化物化合物を前記芳香族アルデヒド化合物と前記第2の反応性触媒の存在下で反応させてアセタール化合物を生成する追加の工程を有する請求項5の方法。
【請求項7】
前記方法は、還元剤を準備し、前記置換炭水化物化合物のR基における不飽和を還元する追加の工程を有する請求項5の方法。

【公表番号】特表2010−536850(P2010−536850A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−521850(P2010−521850)
【出願日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際出願番号】PCT/US2008/009493
【国際公開番号】WO2009/025728
【国際公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(599060788)ミリケン・アンド・カンパニー (65)
【氏名又は名称原語表記】Milliken & Company
【Fターム(参考)】