説明

置換キノリンおよび置換ジフェニルスルホンを含有する組成物および方法

置換キノリンおよび置換ジフェニルスルホンの併用療法を開示する。より詳細には、置換キノリンおよび置換ジフェニルスルホンを含有する組成物を開示する。さらにとりわけアルツハイマー型痴呆、HIV−関連痴呆およびクロイツフェルト−ヤコブ病を含む神経変性障害の処置に組成物を使用する方法も開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との関係
本出願は、2003年1月27日に出願された特許文献1の利益を主張し、その開示は引用より全部、本明細書に編入する。
政府の認可との関係
本明細書の開示の一部は、国立衛生研究所、認可番号NS25637、AG12548およびNS34000の認可により支援されてきた。米国政府は、本出願に特定の権利を有することができる。
発明の分野
本発明は、一般に置換キノリンおよび置換ジフェニルスルホンの併用療法に関する。より詳細には本発明は置換キノリンおよび置換ジフェニルスルホンを含有する組成物、およびとりわけアルツハイマー型痴呆、HIV−1関連痴呆またはクロイツフェルト−ヤコブ病を含む神経変性障害の処置に組成物を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
アルツハイマー病は、β−アミロイド(Aβ)代謝における異常、β−アミロイド斑の形成、慢性の神経炎症および新皮質および海馬のシナプスおよびニューロンの損失が関与するゆっくり進行する神経変性性の障害である。一般にシナプスおよびニューロンの損失が、アルツハイマー病に伴う重篤な認知欠失の原因であると考えられている。
【0003】
神経炎症およびニューロンの損失は、アルツハイマー型痴呆、HIV−1関連痴呆、海綿状脳障害、クロイツフェルト−ヤコブ病、脳卒中、外傷、多発性硬化症、パーキンソン病、中枢神経系のHIV感染、アミロイドーシス−オランダ型の遺伝的出血、脳のアミロイドアンギオパチーまたはダウン症候群等を含むいくつかの神経変性障害に関与すると考えられている。
【0004】
アルツハイマー病、および神経炎症およびニューロン損失と関連する他の神経変性疾患の治療を開発するために、多大な努力がなされてきたが、神経保護を提供する作用物質の同定には進歩がほとんどない。
【0005】
したがって、神経変性障害、特に神経炎症、ニューロン損失ならびに認知喪失に関連する神経変性障害の防止および処置に有用な神経保護剤を同定することが望ましい。本発明の組成物および方法は、これらのおよび他の重要な目的を対象とする。
【特許文献1】米国特許出願第60/443,219号明細書
【発明の開示】
【0006】
発明の要約
したがって、本発明は一部は神経変性障害、特に神経炎症、ニューロン損失および認知喪失に関連する神経変性障害の防止および処置に有用な組成物および方法を対象とする。
【0007】
1つの観点では、本発明は少なくとも1つの置換キノリンまたはその製薬学的に許容され得る塩またはエナンチオマーまたはプロドラッグ;および
少なくとも1つの式I:
【0008】
【化1】

【0009】
[式中、
A、B、CおよびDは独立して、H、低級アルキル、シアノ、OR、−C(=O)OR、SR、ハロ、SO、NR、−SONRであり;
およびRは独立して、NH、NHC(=O)Rまたは−N=NRであり;
は、H、低級アルキル、−アルキル−OR、−アルキル−C(=)ORまたは−アルキル−C(=O)NHRであり、
は、
【0010】
【化2】

【0011】
であり;
は、水素、低級アルキル、置換低級アルキル、低級アルケニル、置換低級アルケニル、低級アルキニル、置換低級アルキニル、アリール、ハロアリール、置換アリール、アシルまたはヘテロシクリルであり;
は独立して、水素、アルキル、置換低級アルキル、低級アルケニル、置換低級アルケニル、低級アルキニル、置換低級アルキニル、アルキル置換アリール、またはアシルであり;そして
は独立して、水素、アルキル、置換低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、置換低級アルケニル、置換低級アルキニル、アルキル置換アリール、アシル、−SOまたはSONRである]
の化合物、またはその製薬学的に許容され得る塩またはプロドラッグ、
を含んでなる製薬学的組成物を対象する。
【0012】
別の観点では、本発明はニューロンの損失に関連する障害を処置する方法を対象とし、この方法は:
少なくとも1つの置換キノリンまたはその製薬学的に許容され得る塩またはエナンチオマーまたはプロドラッグ;および
上記定義の少なくとも1つの式Iの化合物、またはその製薬学的に許容され得る塩またはプロドラッグ、
を含んでなる有効な量の組成物を必要な患者に投与する工程を含んでなる。
【0013】
ニューロンの損失に関連する障害には、とりわけアルツハイマー型痴呆、HIV−1関連痴呆、海綿状脳障害、クロイツフェルト−ヤコブ病、脳卒中、外傷、多発性硬化症、パーキンソン病、中枢神経系のHIV感染、アミロイドーシス−オランダ型の遺伝的出血、脳のアミロイドアンギオパチーまたはダウン症候群を含む。
【0014】
さらに別の観点では、本発明は神経変性障害を処置する方法を対象とし、この方法は: 少なくとも1つの置換キノリンまたはその製薬学的に許容され得る塩またはエナンチオマーまたはプロドラッグ;および
上記定義の少なくとも1つの式Iの化合物、またはその製薬学的に許容され得る塩またはプロドラッグ、
を含んでなる有効な量の組成物を必要な患者に投与する工程を含んでなる。
【0015】
神経変性障害には、とりわけアルツハイマー型痴呆、HIV−1関連痴呆、海綿状脳障害、クロイツフェルト−ヤコブ病、脳卒中、外傷、多発性硬化症、パーキンソン病、中枢神経系のHIV感染、アミロイドーシス−オランダ型の遺伝的出血、脳のアミロイドアンギオパチーまたはダウン症候群を含む。
【0016】
さらなる観点では、本発明は認知喪失の危険性がある患者を処置する方法を対象とし、この方法は:
少なくとも1つの置換キノリンまたはその製薬学的に許容され得る塩またはエナンチオマーまたはプロドラッグ;および
上記定義の少なくとも1つの式Iの化合物、またはその製薬学的に許容され得る塩またはプロドラッグ、
を含んでなる有効な量の組成物を必要な患者に投与する工程を含んでなる。
【0017】
そのような患者は、軽度認知障害、軽度認知運動機能不全、HIV関連痴呆、神経−AIDS、プリオン疾患、急性脳卒中または急性外傷に罹患している可能性がある。
発明の詳細な説明
本発明は一般に神経変性障害、特に神経炎症およびニューロンの損失に関連する神経変性障害の防止および/または処置のための併用療法に関する。1つの観点では、本発明は置換キノリンおよび置換ジフェニルスルホンを含んでなる組成物を対象とする。別の観点では、本発明はとりわけアルツハイマー型痴呆、HIV−1関連痴呆およびクロイツフェルト−ヤコブ病を含む神経変性障害の防止および/処置におけるそのような組成物の使用を対象とする。
【0018】
上でそして本開示を通して使用するように、以下の用語は他に示さない限り、以下の意味を有すると理解される。
【0019】
本明細書および特許請求の範囲で使用するように、単数形“a”、“an”および“the“は、内容が明らかに他を示さないかぎり、複数の表示も含む。
【0020】
「ハロ」は−F、−Clまたは−Brを指す。
【0021】
本明細書で使用する「アルキル」とは、1〜約20個の炭素原子を有する飽和の直鎖、分枝鎖、環式または多環式炭化水素(およびその中の炭素原子範囲および具体的数のすべての組み合わせおよび副次的組み合わせ)を指す。本明細書の用語「低級アルキル」は、約1〜約10個の炭素原子を有するアルキル基を指し、これらが好適である。アルキル基には限定するわけではないが、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、シクロブチル、n−ペンチル、シクロペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、イソヘキシル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、デカヒドロナフタレニル、アダマンチル、3−メチルペンチル、2,2−ジメチルブチルおよび2,3−ジメチルブチルを含む。アルキル基は置換されることができ、または非置換であることができる。
【0022】
本明細書で使用する「ハロアルキル」は、−Fまたは−Clから選択される1または複数のハロ基で置換されたアルキル基を意味する。
【0023】
本明細書で使用する「アルコキシ」は、アルキル−O−部分を指し、ここで「アルキル」は上記定義の通りである。
【0024】
本明細書で使用する「ハロアルコキシ」は、−Fおよび−Clから選択される1また複数のハロ基で置換されたアルコキシ基を意味する。
【0025】
本明細書で使用する「アルケニル」は、1または複数の二重結合を有するアルキル基を指す。本明細書で用語「低級アルケニル」は、約2〜約10個の炭素原子を有するアルケニル基を指す。
【0026】
本明細書で使用する「アルキニル」は、1または複数の三重結合を有するアルキル基を指す。本明細書で用語「低級アルキニル」は、約2〜約10個の炭素原子を有するアルキニル基を指す。
【0027】
本明細書で使用する「アリール」は、約5〜約30個の炭素原子を有する単−、二−、三−または他の多環式芳香族環系(およびその中の炭素原子範囲および具体的数のすべての組み合わせおよび副次的組み合わせ)を指し、約6〜約14個の炭素が好適である。非限定的例には、フェニル、ナフチル、アントラセニルおよびフェナントレニルを含む。アリール基は置換されることができ、または非置換であることができる。
【0028】
本明細書で使用する「ハロアリール」は、−F、−ClおよびBrから選択される1または複数のハロ基で置換されたアリール基を指すことを意味する。
【0029】
本明細書で使用する「アラルキル」または「アリールアルキル」は、約6〜約50個の炭素原子を有するアリール置換アルキル基(およびその中の炭素原子範囲および具体的数のすべての組み合わせおよび副次的組み合わせ)を指し、約6〜20個の炭素原子が好適である。非限定例には、例えばベンジル、フェニルエチル、3−フェニルプロピ−1−イル、テトラヒドロナフタレニル、3−フェニルプロピ−2−イルおよび4−ナフチルヘキシ−1−イルを含む。
【0030】
アラルキル基は置換されることができ、または非置換であることができる。置換はアリール環の炭素またはアラルキルのアルキル炭素上で起こることができる。
【0031】
本明細書で使用するように、「ヘテロアリール」は少なくとも1つ、そして好ましくは1〜約4個の硫黄、酸素または窒素ヘテロ原子の環の員を含む単−、二−、三−または他の多環式芳香族環系を指す。ヘテロアリール基は例えば、約3〜約50個の炭素原子(およびその中の炭素原子範囲および具体的数のすべての組み合わせおよび副次的組み合わせ)を有することができ、約4〜10個の炭素が好適である。ヘテロアリール基の非限定的例は、例えばピロリル、フリル、ピリジル、1,2,4−チアジアゾリル、ピリミジニル、イソチアゾリル、チアゾリル、トリアゾリル、イミダゾリル、テトラゾリル、ピラジニル、キノリル、イソキノリル、チオフェニル、ベンゾチエニル、イソベンゾフリル、ピラゾリル、インドリル、プリニル、カルバゾリル、ベンズイミダゾリル、オキサゾリルおよびイソキサゾリルを含む。ヘテロアリール基は置換されることができ、または非置換であることができる。
【0032】
本明細書で使用する「アシル」は、アルキル−C(=O)−またはアリール−C(=O)−基を指す。
【0033】
典型的には置換された化学部分は、水素を置き換える1または複数の置換基を含む。置換基の例には、例えばハロ(例えば−F、−Cl、−Br)、(ただしハロが−Brである時、−Brはアルケニルの炭素、またはアリールもしくはヘテロアリール基の環の炭素上のようなsp炭素上に結合する)、アルコキシ、ハロアルコキシ、−OCF、アルキルチオ、モノハロアルキルチオ、ポリハロアルキルチオ、−SCF、アルキル、−CF、ハロアルキル、低級アルキル、スピロアルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ヒドロキシル(−OH)、ニトロ(−NO)、シアノ(−CN)、スルホニル(−SO)、スルファモイル(−SONR)、−SR、アミノ(−NH、NHR、NHR、N(R)等を含む。
【0034】
本明細書で使用する「副作用」とは、副作用が作用物質の投与により利益を得ようとする以外の、特に組織または臓器系に薬剤により生じる時、作用物質または測定が使用される以外の結果(1または複数)を指す。例えばニューロン損失または神経学的障害の防止または処置に関する作用物質の場合、用語「副作用」は、好ましくは例えば赤血球(erythocytic)および胃腸管効果のような状態を指すことができる。
【0035】
本明細書で使用する「有効な量」とは、特定の疾患、障害または副作用の症状を抑制または処置するために、あるいは特定の疾患、障害または副作用の症状を防止し、抑制し、または減少させるために効果的となり得る本明細書に記載する化合物の量を指す。そのような疾患、障害および副作用には限定するわけではないが、アルツハイマー型痴呆、HIV−1関連痴呆、海綿状脳障害、クロイツフェルト−ヤコブ病、脳卒中、外傷、多発性硬化症、パーキンソン病、中枢神経系のHIV感染、アミロイドーシス−オランダ型の遺伝的出血、脳のアミロイドアンギオパチーまたはダウン症候群を含む。
【0036】
本明細書で使用する「処置する」とは、状態の防止的、治癒的および緩和的処置を指し、そして特に状態そのものの防止および/または処置だけでなく、例えばアルツハイマー型痴呆の進行のような状態の進行も防止することを含む。
【0037】
本明細書で使用する「製薬学的に許容され得る」とは、医学的判断という意味での範囲内で過剰な毒性、炎症、アレルギー応答、または合理的な利益/リスク比に釣り合った他の問題の合併を起こさずに、ヒトおよび動物の組織と接触するのに適する化合物、材料、組成物および/または剤形を指す。
【0038】
本明細書で使用する「製薬学的に許容され得る塩」とは、開示する化合物の誘導体を指し、ここで元の化合物はその酸性または塩基性塩を作成することにより修飾される。製薬学的に許容され得る塩の例には、限定するわけではないがアミンのような塩基性残基の無機または有機酸塩;カルボン酸のような酸性残基のアルカリまたは有機塩等を含む。このように用語「酸付加塩」は、酸の付加により調製された元の化合物の対応する塩誘導体を指す。製薬学的に許容され得る塩には通例の塩、または例えば無機もしくは有機酸から形成される元の化合物の四級アンモニウム塩を含む。例えばそのような通例の塩には、限定するわけではないが塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸等のような無機酸に由来するもの;および酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パモ酸、マレイン酸、オキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2−アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、蓚酸、イセチオン酸等のような有機酸から調製された塩を含む。本発明の特定の酸性または塩基性化合物は、両性イオンとして存在することができる。遊離酸、遊離塩基および両性イオンを含むすべての化合物の形態は、本発明の範囲内にあるものとする。
【0039】
本明細書で使用する「プロドラッグ」とは、そのようなプロドラッグが患者に投与された時、インビボで活性な元の薬剤を放出する任意の共有結合している担体、あるいはその形態が例えば式I、式IIもしくは式IIIもしくは他の式に従い転換されるもの、あるいはダプソンのような本発明の方法に採用される化合物を含むことを意図する。プロドラッグは薬剤の多数の望ましい品質を強化することが知られているので(例えば、溶解性、生物学的利用性、製造性等)、本発明の方法で使用する化合物は、望ましくはプロドラッグの状態で送達することができる。このように本発明は、プロドラッグを送達する方法を意図する。
【0040】
「患者」は、哺乳動物、好ましくはヒトを含む動物を指す。
【0041】
したがって本発明は、一部は
少なくとも1つの置換キノリンまたはその製薬学的に許容され得る塩またはエナンチオマーまたはプロドラッグ;および
少なくとも1つの式I:
【0042】
【化3】

【0043】
[式中、
A、B、CおよびDは独立して、H、低級アルキル、シアノ、OR、−C(=O)OR、SR、ハロ、SO、NR、−SONRであり;
およびRは独立して、NH、NHC(=O)Rまたは−N=NRであり;
は、H、低級アルキル、−アルキル−OR、−アルキル−C(=)ORまたは−アルキル−C(=O)NHRであり、
は、
【0044】
【化4】

【0045】
であり;
は、水素、低級アルキニル、置換低級アルキニル、低級アルケニル、置換低級アルケニル、低級アルキニル、置換低級アルキニル、アリール、ハロアリール、置換アリール、アシルまたはヘテロシクリルであり;
は独立して、水素、アルキル、置換低級アルキル、低級アルケニル、置換低級アルケニル、低級アルキニル、置換低級アルキニル、アルキル置換アリール、またはアシルであり;そして
は独立して、水素、アルキル、置換低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、置換低級アルケニル、置換低級アルキニル、アルキル置換アリール、アシル、−SOまたはSONRである]
の化合物、またはその製薬学的に許容され得る塩またはプロドラッグ、
を含んでなる製薬学的組成物を対象する。
【0046】
ヒドロキシクロロキン、置換キノリンおよびダプソン、置換ジフェニルスルホンは、アルツハイマー型痴呆を含む神経学的障害を防止し、かつ/または処置するために個別に高いレベルで使用されてきた。しかし置換キノリンおよび置換ジフェニルを組み合わせた時、それらは相乗的に働いてニューロンの損失を防止し、そして処置し、故にとりわけアルツハイマー型痴呆、HIV−1関連痴呆およびクロイツフェルト−ヤコブ病を含む神経学的障害の防止および処置に低レベルで有用であることが予期せずに見いだされた。
【0047】
本発明の置換キノリンおよび置換ジフェニルスルホンは、当業者に周知な多数の方法で調製することができる。化合物は、例えば以下に列挙する参考文献に記載する方法、または当業者により認識されるそれらの変更方法により合成することができる。本発明に関連して開示したすべての方法は、ミリグラム、グラム、マルチグラム、キログラム、マルチキログラムを含む任意のスケール、または市販用の工業的なスケールで行うことが意図されている。
【0048】
本発明に有用な置換キノリンは、当該技術分野で周知な合成技術により調製することができる。例えばSurrey,Hammer,J.Am.Chem.Soc.72,1814(1950)および米国特許第2,546,658号明細書を参照にされたい(その開示は引用により本明細書に編入する)。ほとんどの置換キノリンは市販されている。
【0049】
本発明に有用な式Iの置換ジフェニルスルホン化合物は、当該技術分野で周知な合成技術により調製することができる。例えば米国特許A第3,689,671号;同A第3,702,362号;同A第3,715,375号;同A第3,775,403号;同A第3,775,444号;同A第3,786,050号;同A第4,338,334号明細書;H.Heyman and L.F.Fieser,Journal of the American Chemical Society,87,1979(1945)を参照にされたい(その開示は引用により本明細書に編入する)。ほとんどの置換ジフェニルスルホンは市販されている。例えばダプソン(4,4’−ジアミノジフェニルスルホン)は、ジャコブス製薬会社(Jacobus Pharmaceutical Company,Inc)から入手可能である。
【0050】
具体的に好適な態様では、適当な置換キノリンには4−アミノキノリン、8−アミノキノリンおよびヒドロキシメチルキノリン、またはそれらの製薬学的に許容され得る塩もしくはエナンチオマーもしくはプロドラッグを含む。より好適な置換キノリンには、ヒドロキシクロロキン、クロロキン、アモジアキン、アモピロキン(amopyroquine)、シクロキン(cycloquine)、オキシクロロキン(oxychloroqine)、ソントキン(sontoquine)、アモジアキン、プリマキン、メフロキン、キナクリン、キニン、サリドマイド、スルファサラジンまたはスルファピリジン、またはそれらの製薬学的に許容され得る塩またはエナンチオマーまたはプロドラッグを含む。さらに一層好適な置換キノリンには、ヒドロキシクロロキンまたはクロロキン、またはそれらの製薬学的に許容され得る塩またはエナンチオマーまたはプロドラッグを含む。特に好適な置換キノリンは、ヒドロキシクロロキンまたはそれらの製薬学的に許容され得る塩またはエナンチオマーまたはプロドラッグである。
【0051】
特定の好適な態様では、製薬学的組成物は、A、B、CおよびDがそれぞれHである、式Iの化合物を含んでなる。
【0052】
特定の好適な態様では、製薬学的組成物は、RおよびRが独立してNHまたはNHC(=O)Rであり、好ましくはRがメチルである式Iの化合物を含んでなる。
【0053】
さらに一層好適な態様では、RおよびRはそれぞれNHである。
【0054】
特定の好適な態様では、R
【0055】
【化5】

【0056】
である。
【0057】
特定の好適な態様では、製薬学的組成物は式II:
【0058】
【化6】

【0059】
の化合物またはその製薬学的に許容され得る塩を含んでなる。
【0060】
特定の好適な態様では、製薬学的組成物は式III:
【0061】
【化7】

【0062】
の化合物またはその製薬学的に許容され得る塩を含んでなる。
【0063】
特定の好適な態様では、製薬学的組成物は式:
【0064】
【化8】

【0065】
の化合物またはその製薬学的に許容され得る塩を含んでなる。
【0066】
この化合物はダプソンとしても知られている。
【0067】
特定の好適な態様では、製薬学的組成物は以下の式:
【0068】
【化9】

【0069】
の1つの化合物(その各々は上記のダプソンのプロドラッグとして知られている)、またはそれらの製薬学的塩を含んでなる。
【0070】
本明細書で使用する化学式および名前は、基本となる化学化合物を正しくかつ正確に反映していると考える。しかし本発明の性質および価値は、全体または部分でこれらの式の理論的正確さに依存しない。すなわち本明細書で使用する式、ならびに対応して示す化合物に帰する化学名は、具体的な互変異性体もしくは具体的な光学的もしくは幾何異性体に化合物を限定することを含め、本発明をどのようにも限定しないものとすると理解される。
【0071】
任意の組成または任意の式において、1回より多くの変化が起こる時、各存在におけるその定義は他のいずれの存在の定義から独立している。置換基および/または変化の組み合わせは、そのような組み合わせが安定な化合物を生じるならば許容され得る。さらに特定の置換基が最低限必要とされると同時に、その部分はさらに同じ置換基(1つまたは複数)、必要な置換基の群からの別の置換基(1つまたは複数)、または必要な置換基の群からではない他の置換基(1つまたは複数)でさらに置換され得ると理解される。
【0072】
本発明の製薬学的組成物に有用な化合物のすべての形(遊離酸、遊離塩基および両性イオン、等晶形、すべてのキラルおよびラセミ形、水和物、および酸塩水和物を含む)は、本発明の範囲内にあるものとする。
【0073】
本発明の製薬学的組成物の化合物は1もしくは複数の非対称的に置換された炭素原子を含むことができ、そして光学的に活性な、またはラセミ形で単離することができる。すなわち特別な立体化学または異性体を具体的に示さなくても、構造のすべてのキラル、ジアステレオマー、ラセミ体およびすべての幾何異性体を意図している。当該技術分野ではそのような光学的に活性な形をどのように調製するかは周知である。例えば、立体異性体の混合物は限定するわけではないがラセミ体の分割、順相、逆相およびキラルクロマトグラフィー、優先的な造塩、再結晶等を含む標準的技術により、あるいはキラルな出発材料からのキラル合成により、あるいは標的とするキラル中心の計画的合成により分離することができる。
【0074】
本発明の化合物は、モノハロゲン化水素酸付加塩および/または溶媒和化合物の形態、例えば塩酸塩水和物または臭化水素酸塩に作成することができる。しかし他の塩は塩基と酸の単純な反応により、そして望ましくは毒性、味、物理的形態または体内への放出速度のような生成物の特性を修飾するために作成することができる。例えば化合物は硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、フタル酸塩、コハク酸塩、リン酸塩、ニトロ安息香酸塩、ステアリン酸塩、マンデル酸塩、N−アセチル−グリシン酸塩、パモ酸塩、スルホン酸塩、ジスルホン酸塩、シクロヘキシルスルファミン酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、プロピオン酸塩、グリコール酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、アスコルビン酸塩、ヒドロキシマレイン酸塩、フェニル酢酸塩、グルタミン酸塩、安息香酸塩、サリチル酸塩、スルファニル酸塩、2−アセトキシ安息香酸塩、フマル酸塩、トルエンスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンジスルホン酸塩、イセチオン酸塩、メシル酸塩またはグルコン酸塩等の状態に作成することができる。
【0075】
本発明の製薬学的組成物の化合物(置換キノリンまたは置換ジフェニルスルホンのいずれか)は、プロドラッグ形で存在することができる。プロドラッグには、例えばプロドラッグが哺乳動物個体に投与された時、分解して遊離のヒドロキシ、遊離のアミノまたはカルボン酸をそれぞれ形成する、ヒドロキシ、アミノまたはカルボキシ基が任意の基に結合した本明細書に記載する化合物を含む。例には限定するわけではないが、アルコールおよびアミン官能基のアセテート、ホルメートおよびベンゾエート誘導体;およびメチル、エチル、プロピル、イソ−プロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、シクロプロピル、フェニル、ベンジルおよびフェネチルエステル等のようなアルキル、炭素環式、アリールおよびアルキルアリールエステルを含む。
【0076】
幾つかの態様では、本発明の製薬学的組成物はさらに製薬学的に許容され得る担体または希釈剤を含んでなる。そのような組成物は、レミングトンの製薬科学(Remington’s Pharmaceutical Science)、第17版、Alfonoso R.Gennaro編集、マック出版社(Mack Publishing Company)、イーストン、ペンシルバニア州(1985)に記載されているような、許容され得る製薬学的手順に従い調製される。製薬学的に許容され得る担体および/または希釈剤は、製剤中の他の成分と適合性があり、しかも生物学的に許容され得るものである。
【0077】
本発明の化合物は、経口的または非経口的に、そのままで、または通例の製薬学的担体と組み合わせて投与することができる。適用可能な固体の担体には、風味剤、潤滑剤、可溶化剤、沈殿防止剤、充填剤、流動促進剤、圧縮助剤、結合剤または錠剤崩壊剤またはカプセル化材料として作用することもできる1または複数の物質を含むことができる。粉末では、担体は微細に分割された有効成分との混合物である微細に分割された固体である。錠剤では、有効成分は適切な比率で必要な圧縮特性を有する担体と混合され、そして所望する形状およびサイズに圧縮される。粉末および錠剤は、最高99%の有効成分を含有することが好ましい。適当な固体の担体には、例えばリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、ラクトース、デキストリン、澱粉、ゼラチン、セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリジン、低融点ワックスおよびイオン交換樹脂を含む。
【0078】
経口製剤が好適である。経口または注入に使用するための製剤は、胃中の溶液また注入可能媒体に治療薬が入ることができるような、十分な溶解性に基づく。適当な製剤には限定するわけではないが、錠剤、ピル、カプセル、小袋、顆粒、粉末、チューインガム、懸濁液、乳液、座薬および溶液を含む。経口使用に特に好適であるのは、すべての種類の錠剤およびカプセル、および注射もしくは注入のための微生物を含まない溶液である。適切かつ必要な場合には、製剤は希釈剤、結合剤、分散剤、表面活性剤、潤滑剤、コーティング材料、風味剤、着色剤、放出制御製剤、甘味剤または任意の他の製薬学的に許容され得る添加剤、例えばゼラチン、グリコール酸ナトリウム澱粉、ラクトース、澱粉、タルク、ステアリン酸マグネシウム、微晶質セルロース、Povidone、水素化もしくは不飽和油、ポリグリコール、シロップまたは他の水溶液を含む。製剤が錠剤またはカプセル等である場合、製剤は予め計測された単位用量で与えられることができ、または多用量容器中に与えられ、そこから適切な単位用量を取り出すことができる。
【0079】
液体担体は、溶液、懸濁液、乳液、シロップおよびエリキシルを調製するのに使用することができる。本発明の有効成分は、水、有機溶媒、両方の混合物、または製薬学的に許容され得る油または脂質のような製薬学的に許容されうる液体担体に溶解または懸濁することができる。液体担体は、可溶化剤、乳化剤、バッファー、保存剤、甘味剤、風味剤、沈殿防止剤、増粘剤、着色剤、粘性調整剤、安定化剤または浸透調整剤(osmo−regulator)のような他の適切な製薬学的添加剤を含むことができる。経口および非経口投与の液体担体の適当な例には、水(特に上記のような添加剤、例えばセルロース誘導体、好ましくはカルボキシメチルセルロースナトリウム溶液を含む)、アルコール(一価アルコールおよび多価アルコール、例えばグリコールを含む)およびそれらの誘導体、および油(例えば分画したココヤシ油および落花生油を含む)を含む。非経口投与には、担体はオレイン酸エチルおよびミリスチル酸イソプロピルのような油性エステルも含むことができる。滅菌された液体担体は、非経口投与のための滅菌液体形態の組成物に使用される。
【0080】
滅菌溶液または懸濁液である液体の製薬学的組成物は、例えば筋肉内、腹腔内または皮下注射により投与することができる。滅菌溶液は、静脈内に投与することもできる。経口投与は、液体または固体組成物のいずれかの形態であることができる。
【0081】
注入可能な形態は、製薬学的に許容され得る液体、例えば滅菌された、発熱物質を含まない水、または非経口的に許容されうる油、または静菌剤、酸化防止剤もしくは他の保存剤および安定化剤、バッファー(好ましくは限定するわけではないが6.5〜7.7の生理学的pH範囲)、血液を含む溶液を等張性にするための溶質、増粘剤、沈殿防止剤または他の製薬学的に許容され得る添加剤を含むことができる液体の混合物中の水性または非水性溶液、懸濁液または乳液であることができる。そのような形態はアンプルまたは使い捨ての注入デバイスのような単位投薬剤形、あるいは適当な用量を取り出すことができるボトルのような多−剤形、あるいは注入製剤を迅速に調製するために使用できる固体形または濃縮物として与えられる。注入用のすべての製剤は、好ましくは滅菌され、そして発熱物質を含まない。化合物を含有する座薬は、適当な担体、例えばカカオバター、ポリグリコールまたは他の当該技術水準の担体も含む。
【0082】
好ましくは製薬学的組成物は、例えば錠剤、カプセル、粉末、溶液、懸濁液、乳液、顆粒または座薬のような単一の単位投薬剤形である。そのような形態では、組成物は有効成分の適切な量を含有する単位用量に副分割され:単位投薬剤形は組成物、例えば小包に入れた粉末、バイアル、アンプル、予め充填したシリンジまたは液体を含有する小袋であることができる。単位投薬剤形は、例えばカプセルまたは錠剤自体であることができ、あるいは適当数のそのような組成物が包装された形態であることができる。
【0083】
組み合わせ生成物が単一の剤形に一緒には配合されない時、置換キノリンおよび置換ジフェニルスルホンは、同時点(same time)または同時(simultaneously)(すなわち一緒に)に、または任意の順序で投与することができる。同時点または同時に投与されない時、すなわち順次に投与される時、好ましくは置換キノリンおよび置換ジフェニルスルホンの投与は、少なくとも約1時間空けて、より好ましくは約30分間空けて、さらに一層好ましくは約15分間空けて、そしてさらにより一層好ましくは約5分間空けて行う。
【0084】
標準的な製薬学的添加剤に加えて、化合物の製剤には他の治療薬を含むことができる。
【0085】
予防または処置に最も適するであろう本発明の組成物の投薬用量は、投与形態、選択した特定の化合物および処置下の特定の患者の生理学的特徴で変動する。一般に、最初に少ない投与用量を使用し、そして必要ならばその状況下で所望する効果が達成されるまで小さい増分で増やす。概して経口投与には、より高い投薬用量が必要となるかもしれない。
【0086】
好ましくは本発明の組み合わせ生成物の投与は経口であるが、上記のような他の投与経路も本発明の範囲内にあることを意図している。置換キノリンおよび置換ジフェニルスルホンはすべて同じ様式で(すなわち例えば両方とも経口で)投与されることが好ましいが、所望によりそれらは各々が異なる様式で投与されてもよい(すなわち、例えば組み合わせ生成物の1成分を経口投与することができ、そしてもう1つの成分を静脈内に投与することができる)。本発明の組み合わせ生成物の投薬用量は、特定の薬剤の薬物動力学的特性およびその様式および投与経路、受容者の年齢、健康および体重、症状の性質および程度、現行の処置の種類、処置の頻度および所望する効果のような種々の因子に依存して変動し得る。
【0087】
本発明の製薬学的組成物の適切な投薬用量は、いったん本開示から着手すれば、一般的な指針により当業者により容易に確認されることができるが、典型的には毎日の投薬用量は、患者の体重1キログラムあたり約0.01〜約100ミリグラムの置換キノリン(およびその範囲内のすべての組み合わせおよび副次的組み合わせ)、および約0.001〜約100ミリグラムの置換ジフェニルスルホン(およびその範囲内のすべての組み合わせおよび副次的組み合わせ)の範囲となり得る。好ましくは毎日の投薬用量は、患者の体重1キログラムあたり約0.1〜約10ミリグラムの置換キノリンおよび約0.1〜約10ミリグラムの置換ジフェニルスルホンとなり得る。さらにより好ましくは毎日の投薬用量は、患者の体重1キログラムあたり約1.0〜約10.0ミリグラムの置換キノリンおよび約1〜約4.0ミリグラムの置換ジフェニルスルホンとなり得る。錠剤のようなこの種の組み合わせ生成物の典型的な剤形に関して、置換キノリンは一般に約100〜約300ミリグラムの量で、そして置換ジフェニルスルホンは約25〜約100ミリグラムの量で存在することができる。組み合わせ生成物の好適な剤形は、好ましくは錠剤形中に50mgのダプソンおよび200mgのヒドロキシクロロキンを含み、ここで組み合わせ生成物は患者に1日2回(bid)投与される。あるいは組み合わせ生成物は1日1回(os)もしくは1日3回(tid)投与され得る。
【0088】
特に単一剤形として提供される時、組み合わせた有効成分、すなわち置換キノリンと置換ジフェニルスルホンとの間に化学的相互作用の可能性が存在する。このために本発明の組み合わせ生成物の好適な剤形は、有効成分が単一の剤形に合わせられているが、有効成分間の物理的接触が最少になるように(すなわち減少するように)配合されている。
【0089】
接触を最少にするために、生成物が経口的に投与される本発明の1つの態様は、1つの有効成分に腸溶性コーティングが施されている組み合わせ生成物を提供する。1または複数の有効成分を腸溶性コーティングすることにより、組み合わせた有効成分間の接触を最少にすることを可能とするだけでなく、これら成分の1つが胃で放出されずに、むしろ腸で放出されるように、これら成分の1つの胃腸管への放出を制御することも可能となる。経口投与が望ましい本発明の別の態様は、有効成分の1つが、胃腸管全体の徐放性に効果があり、そして合わせた有効成分間の物理的接触を最少にするように働く徐放性材料でコーティングされた組み合わせ生成物を提供する。さらに徐放性成分には、この成分の放出が腸でのみ起こるように、さらに腸溶性のコーティングを施すことができる。さらに別の取り組みには、1つの成分が徐放性および/または腸溶性放出ポリマーでコーティングされ、そしてもう1つの成分も有効成分をさらに分けるために、低粘性級のヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)または当該技術分野で知られている他の適切な材料のようなポリマーでコーティングされた組み合わせ生成物の製剤を含む。ポリマーコーティングは、他の成分との相互作用に対してさらなるバリアを形成するために役立つ。
【0090】
1つの有効成分が腸溶性コーティングされた本発明の組み合わせ生成物の剤形は、腸溶性コーティングが施された成分およびもう1つの有効成分が一緒にブレンドされ、次いで錠剤に圧縮されるような、あるいは腸溶性コーティングが施された成分が1つの錠剤層に圧縮され、そしてもう1つの有効成分がさらなる層に圧縮されるような錠剤の形態であることができる。場合により、2層をさらに分けるために、プラセボ層が有効成分の層間に存在するように1または複数のプラセボ層が存在してもよい。加えて本発明の剤形は、1つの有効成分が錠剤に圧縮されているカプセル形態、または複数のマイクロ錠剤、粒子、顆粒もしくは非−パレイル(non−pareil)の形態(次いでこれらに腸溶性のコーティングが施される)であることができる。これらの腸溶性コーティングを施したマイクロ錠剤、粒子、顆粒もしくは非−パレイルは、次いでカプセルに入れられるか、またはもう1つの有効成分の造粒物と一緒にカプセルに圧縮される。
【0091】
本発明の組み合わせ生成物の成分間の接触を最少とするこれらの、ならびに他の方法は、単一の剤形で投与されても、または別の形態でしかし同時点で同じ様式により投与されても、いったん本開示から着手すれば当業者には容易に明白となるであろう。
【0092】
特定の態様では、本発明はニューロンの損失に関連する障害を処置する方法を対象とし、この方法は:
少なくとも1つの置換キノリンまたはその製薬学的に許容され得る塩またはエナンチオマーまたはプロドラッグ;および
上記に定義する少なくとも1つの式Iの化合物またはその製薬学的に許容され得る塩またはプロドラッグ、
を含んでなる組成物の有効な量を、必要な患者に投与する工程を含んでなる。
【0093】
ニューロンの損失に関連する障害には、とりわけアルツハイマー型痴呆、HIV−1関連痴呆、海綿状脳障害、クロイツフェルト−ヤコブ病、脳卒中、外傷、多発性硬化症、パーキンソン病、中枢神経系のHIV感染、アミロイドーシス−オランダ型の遺伝的出血、脳のアミロイドアンギオパチーまたはダウン症候群を含む。本発明の方法は、アルツハイマー型痴呆、HIV−1関連痴呆およびクロイツフェルト−ヤコブ病に関連するニューロンの損失の防止および処置に特に有用である。
【0094】
特定の好適な態様では、組成物は神経変性障害の初期の進行中に投与される。
【0095】
特定の他の態様では、本発明は神経変性障害を処置する方法を対象とし、この方法は: 少なくとも1つの置換キノリンまたはその製薬学的に許容され得る塩またはエナンチオマーまたはプロドラッグ;および
上記に定義する少なくとも1つの式Iの化合物またはその製薬学的に許容され得る塩またはプロドラッグ、
を含んでなる組成物の有効な量を、必要な患者に投与する工程を含んでなる。
【0096】
ニューロンの損失に関連する障害には、とりわけアルツハイマー型痴呆、HIV−1関連痴呆、海綿状脳障害、クロイツフェルト−ヤコブ病、脳卒中、外傷、多発性硬化症、パーキンソン病、中枢神経系のHIV感染、アミロイドーシス−オランダ型の遺伝的出血、脳のアミロイドアンギオパチーまたはダウン症候群を含む。本発明の方法は、アルツハイマー型痴呆、HIV−1関連痴呆およびクロイツフェルト−ヤコブ病の防止および処置に特に有用である。特定の好適な態様では、組成物は該神経変性障害の初期の進行中に投与される。
【0097】
さらなる観点において、本発明は認知喪失の危険性がある患者の処置法を対象とし、この方法は:
少なくとも1つの置換キノリンまたはその製薬学的に許容され得る塩またはエナンチオマーまたはプロドラッグ;および
上記に定義する少なくとも1つの式Iの化合物またはその製薬学的に許容され得る塩またはプロドラッグ、
を含んでなる組成物の有効な量を、該患者に投与する工程を含んでなる。そのような患者は軽度認知障害、軽度認知運動機能不全、HIV関連痴呆、神経−AIDS、プリオン疾患、急性脳卒中または急性外傷に罹患している可能性がある。特定の好適な態様では、組成物は上記認知喪失の初期の進行中に投与される。
【0098】
本発明はさらに以下の実施例により定められ、ここですべての部およびパーセントは特に言及しない限り重量による。これらの実施例は、本発明の好適な態様を示しているが、具体的説明のみのために与える。上記の考察およびこれらの実施例から、当業者は本発明の本質的特徴を確認することができ、その精神および範囲から逸脱することなく、本発明の種々の変更および修飾を行って様々な用途および条件に適合させることができる。
【実施例】
【0099】
本発明の組成物、および比較化合物および組成物は、米国特許A第6,043,283号;同A第6,071,493号;同B第6,451,544号;同B第6,451,742号;および同B第6,475,745号明細書に記載されている試験法に従い評価し、この開示は引用により本明細書に編入する。一般に薬剤のアッセイには、ある濃度範囲にわたり既知の濃度の試験薬剤を加えることが含まれた。72時間後、実験を止め、そしてニューロンを免疫染色により同定した。データはI−(ニューロン数は試験サンプル/未処理対象サンプル中のニューロン数))x100%で、ニューロン生存%として表した。次いで用量応答曲線を使用して、神経保護剤の用量(50%)に関する効果を見積もった(ED50として定める)。
略号:
DAP ダプソン
HCQ ヒドロキシクロロキン
AD アルツハイマー病
図1は、数種の試験剤(6.5mg/kgのレベルの均一対照、メチルセルロース、ヒドロキシクロロキン、2mg/kgのレベルのサリドマイド、および10%の各個別用量でのヒドロキシクロロキンおよびダプソンの組み合わせ、すなわち0.65mg/kgのヒドロキシクロロキン+0.2mg/kgのダプソン)に関するニューロン損失%のプロットである。図1では、インビトロで高レベル(6.5mg/kg)のヒドロキシクロロキン(置換キノリン)単独、高レベル(2mg/kg)のダプソン(置換ジフェニルスルホン)単独、およびヒドロキシクロロキン(置換キノリン)およびダプソン(置換ジフェニルスルホン)の10%のそれら各個別用量の組み合わせ、すなわち0.65mg/kgのヒドロキシクロロキン+0.2mg/kgのダプソンが、インビトロの殺効果の抑制を生じたことが観察された。
【0100】
図2は、数種の試験剤について薬剤濃度(10nMのヒドロキシクロロキン、0.1nMのヒドロキシクロロキン+ダプソンの組み合わせ)、0.3nMのヒドロキシクロロキン+ダプソンの組み合わせ)、1.0nMのヒドロキシクロロキン+ダプソンの組み合わせ)の関数としてのニューロンの損失%のプロットである。
【0101】
イソボログラム(isobologram)は、2つの薬剤が付加的である場合、増強するか(正に相乗的)または拮抗するか(負に相乗的)を決定するために有用である。曲線上に落ちる点は、2つの薬剤の単純な付加効果を表し、曲線上の左の領域に落ちる点は2つの薬剤の増強(正に相乗的)効果を表し、そして曲線上の右の領域に落ちる点は2つの薬剤の拮抗(負に相乗的)効果を表す。
【0102】
図3のイソボログラムでは、ヒドロキシクロロキン(置換キノリン)およびダプソン(置換ジフェニルスルホン)を合わせた時、この組み合わせが低レベルで試験したすべての濃度で効果的であり、そして増強((正に相乗的)効果を表すことが観察される。
【0103】
またインビボで、ヒドロキシクロロキン(置換キノリン)およびダプソン(置換ジフェニルスルホン)の組み合わせが増強を示し、そして6カ月間の臨床試験でアルツハイマー病に罹患している患者(図4に示すように)、および6カ月間の臨床試験でHIVに罹患している患者(図5に示すように)の脊髄液中の神経毒レベルに減少を達成した。加えて、これらの患者は認知機能に関する標準試験で改善を示すことができた。
【0104】
本明細書において分子量のような物理的特性、または化学式のような化学的特性について範囲を使用する時、それらの中の態様に特異的なすべての組み合わせおよび副次的組み合わせを含むことを意図している。
【0105】
本明細書中に引用または記載した各特許、特許出願および刊行物の開示は、参照により全部、本明細書に編入する。
【0106】
当業者は、本発明の好適な態様に対して多数の変更および修飾を行うことができ、そしてそのような変更および修飾は、本発明の精神から逸脱することなく行うことができると考えるだろう。したがって特許請求の範囲は、そのようなすべての均等な変更態様も本発明の真の精神および範囲内にあることを意図している。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】アルツハイマー病(AD)のラットモデルにおいて、数種の試験剤に関するニューロン損失%のプロットである。
【図2】数種の試験剤に関する薬剤濃度の関数として、ニューロン損失%のプロットである。
【図3】ヒドロキシクロロキンおよびダプソンのイソボログラムである。
【図4】認知試験バッテリーに関する累積的Tスコアによるアルツハイマー認知における改善を示す(6カ月の臨床試験)。
【図5】本発明の組み合わせた薬剤生成物を用いたHIV認知における改善を示す(6カ月の臨床試験)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの置換キノリンまたはその製薬学的に許容され得る塩もしくはエナンチオマーもしくはプロドラッグ;および
少なくとも1つの式I:
【化1】

[式中、
A、B、CおよびDは独立して、H、低級アルキル、シアノ、OR、−C(=O)OR、SR、ハロ、SO、NR、−SONRであり;
およびRは独立して、NH、NHC(=O)Rまたは−N=NRであり;
は、H、低級アルキル、−アルキル−OR、−アルキル−C(=)ORまたは−アルキル−C(=O)NHRであり、
は、
【化2】

であり、
は、水素、低級アルキル、置換低級アルキル、低級アルケニル、置換低級アルケニル、低級アルキニル、置換低級アルキニル、アリール、ハロアリール、置換アリール、アシルまたはヘテロシクリルであり;
は独立して、水素、アルキル、置換低級アルキル、低級アルケニル、置換低級アルケニル、低級アルキニル、置換低級アルキニル、アルキル置換アリール、またはアシルであり;そして
は独立して、水素、アルキル、置換低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、置換低級アルケニル、置換低級アルキニル、アルキル置換アリール、アシル、−SOまたはSONRである]
の化合物、またはその製薬学的に許容され得る塩もしくはプロドラッグ、
を含んでなる製薬学的組成物。
【請求項2】
さらに製薬学的に許容され得る担体または希釈剤を含んでなる、請求項1に記載の製薬学的組成物。
【請求項3】
上記の置換キノリンが、4−アミノキノリン、8−アミノキノリンまたはヒドロキシメチルキノリン、またはそれらの製薬学的に許容され得る塩もしくはエナンチオマーもしくはプロドラッグである、請求項1に記載の製薬学的組成物。
【請求項4】
上記の置換キノリンが、ヒドロキシクロロキン、クロロキン、アモジアキン、アモピロキン、シクロキン、オキシクロロキン、ソントキン、アモジアキン、プリマキン、メフロキン、キナクリン、キニン、サリドマイド、スルファサラジンまたはスルファピリジン、またはそれらの製薬学的に許容され得る塩もしくはエナンチオマーもしくはプロドラッグである、請求項1に記載の製薬学的組成物。
【請求項5】
上記の置換キノリンが、ヒドロキシクロロキンまたはクロロキン、またはそれらの製薬学的に許容され得る塩もしくはエナンチオマーもしくはプロドラッグである、請求項3に記載の製薬学的組成物。
【請求項6】
上記の置換キノリンが、ヒドロキシクロロキンまたはそれらの製薬学的に許容され得る塩もしくはエナンチオマーもしくはプロドラッグである、請求項3に記載の製薬学的組成物。
【請求項7】
A、B、CおよびDがそれぞれHである、請求項1に記載の製薬学的組成物。
【請求項8】
およびRが独立してNHまたはNHC(=O)Rである、請求項1に記載の製薬学的組成物。
【請求項9】
およびRがそれぞれNHである、請求項8に記載の製薬学的組成物。
【請求項10】
がメチルである、請求項8に記載の製薬学的組成物。
【請求項11】
上記化合物が式II:
【化3】

の化合物またはその製薬学的に許容され得る塩である、請求項1に記載の製薬学的組成物。
【請求項12】
上記化合物が式III:
【化4】

の化合物またはその製薬学的に許容され得る塩である、請求項11に記載の製薬学的組成物。
【請求項13】
上記化合物が:
【化5】

またはその製薬学的に許容され得る塩である、請求項12に記載の製薬学的組成物。
【請求項14】
上記プロドラッグが、スルホキサンナトリウム(ジアゾン)、スルフェトロンまたはプロミンまたはその製薬学的に許容され得る塩である、請求項1に記載の製薬学的組成物。
【請求項15】
上記の置換キノリンおよび上記の式Iの化合物が単一の単位投薬剤形である、請求項1に記載の製薬学的組成物。
【請求項16】
有効な量の請求項1に記載の組成物をそれが必要な患者に投与する工程を含んでなる、ニューロンの損失を伴う障害を処置する方法。
【請求項17】
上記障害が、アルツハイマー型痴呆、HIV−1関連痴呆、海綿状脳障害、クロイツフェルト−ヤコブ病、脳卒中、外傷、多発性硬化症、パーキンソン病、中枢神経系のHIV感染、アミロイドーシス−オランダ型の遺伝的出血、脳のアミロイドアンギオパチーまたはダウン症候群である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
上記障害が、アルツハイマー型痴呆、HIV−1関連痴呆またはクロイツフェルト−ヤコブ病である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
上記障害が、アルツハイマー型痴呆である請求項18に記載の方法。
【請求項20】
上記障害が、HIV−1関連痴呆である請求項18に記載の方法。
【請求項21】
上記障害が、クロイツフェルト−ヤコブ病である請求項18に記載の方法。
【請求項22】
上記組成物が上記疾患の初期の進行中に投与される請求項16に記載の方法。
【請求項23】
有効な量の請求項1に記載の組成物をそれが必要な患者に投与する工程を含んでなる、神経変性障害を処置する方法。
【請求項24】
上記神経変性障害が、アルツハイマー型痴呆、HIV−1関連痴呆、海綿状脳障害、クロイツフェルト−ヤコブ病、脳卒中、外傷、多発性硬化症、パーキンソン病、中枢神経系のHIV感染、アミロイドーシス−オランダ型の遺伝的出血、脳のアミロイドアンギオパチーまたはダウン症候群である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
上記神経変性障害が、アルツハイマー型痴呆、HIV−1関連痴呆またはクロイツフェルト−ヤコブ病である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
上記神経変性障害が、アルツハイマー型痴呆である請求項25に記載の方法。
【請求項27】
上記神経変性障害が、HIV−1関連痴呆である請求項25に記載の方法。
【請求項28】
上記神経変性障害が、クロイツフェルト−ヤコブ病である、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
上記組成物が上記神経変性障害の初期の進行中に投与される、請求項23に記載の方法。
【請求項30】
認知喪失の危険性がある患者の処置法であって、有効な量の請求項1に記載の組成物を該患者に投与する工程を含んでなる上記方法。
【請求項31】
上記患者が、軽度認知障害、軽度認知運動機能不全、HIV関連痴呆、神経−AIDS、プリオン疾患、急性脳卒中または急性外傷に罹患している、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
上記組成物が上記認知喪失の初期の進行中に投与される、請求項30に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2006−516629(P2006−516629A)
【公表日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−503038(P2006−503038)
【出願日】平成16年1月27日(2004.1.27)
【国際出願番号】PCT/US2004/002147
【国際公開番号】WO2004/066940
【国際公開日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【出願人】(505283197)ベイラー・カレツジ・オブ・メデイシン (2)
【Fターム(参考)】