説明

置換3−ベンゾフラニル−インドール−2−オン−3−アセトアミドピペラジン誘導体、この調製、およびこの治療的使用

本発明は、一般式(I)


の2置換3−ベンゾフラニル−インドール−2−オン−3−アセトアミドピペラジン誘導
体(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9およびnは、請求項
1で定義されたようなものである。)に、これを調製する方法に、および前記化合物の治療的使用に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、置換3−ベンゾフラニル−インドール−2−オン−3−アセトアミドピペラジン誘導体、この調製およびこの治療用途に関するものである。
【背景技術】
【0002】
グレリンは、プレプログレリンの切断後の翻訳後プロセスにより、主に胃で産生される28アミノ酸ペプチドホルモンである(Kojima M.,et al.,Nature 1999;402:656−60)。グレリンは、成長ホルモン分泌促進下垂体受容体(GHSR1a)の内因性リガンドである。
【0003】
GHS−Rは2つのエクソンによってコードされる:エクソン1は膜貫通ドメイン(TM)1−5をコードして、エクソン2はGタンパク質共役受容体(GPCR)のTM6および7をコードする。
【0004】
下垂体および脳において2つの転写産物が同定されている:一方は全長GPCR(GHS−R1a)をコードして、他方はTM6および7が欠失した切断型受容体(GHS−R1b)をコードする。サブタイプGHS−R1aのみがグレリンおよびグレリンミメティクスによって活性化される。GHS−R1bは肝臓および他の末梢組織に存在するが、この機能は不明である(Smith R.G.et al.,Trends in Endocrinology and Metabolism,2005,16,No.9)。
【0005】
これはロドプシン型の受容体であり、Gq/ホスホリパーゼCに結合したファミリAの7つの膜貫通ドメインを有する。グレリン受容体は、ある組織においてGs/プロテインキナーゼA経路にも結合され得る(Ueno,N.et al.,Endocrinology,2004,145,4176−4184;Kim,M.S.et al.,Int.J.Obes.Relat.Metab.Disord.,2004,28:1264−1271)。興味深いことにグレリン受容体は、著しくリガンド非依存性の構成的活性を有するという、比較的珍しい特徴を有する(Barazzoni,R.et al.,Am.J.Physiol.Endocrinol.Metab.,2004,288:E228−E235)。
【0006】
グレリンの低レベルの発現は各種の組織、例えば腸、膵臓、腎臓、免疫系、胎盤、精巣、下垂体組織および視床下部(Horm.Res.2003;59(3):109−17)で記録されている。
【0007】
グレリンは食事時間の空腹感、および食事の開始に関与することが証明されている。循環レベルは、食物の摂取によって低下して、食後に上昇し、空腹感および食物の摂取を刺激するのに十分である濃度に達する。グレリンの経口摂取は、欲求摂食行動および食事回数を増加させることによって、食物摂取を急速および一時的に刺激する。グレリンは、おおよそ等効力である神経ペプチドYを除く、その他の分子よりも効率的に食物の短期取り込みを刺激する(Wren A.M.et al.,J.Clin.Endocrinol.Metab.,2001;86:5992−5)。しかしグレリンは、末梢または中枢のいずれに注入されるにせよ、この効果を発揮するこの能力を有する点で特異である。
【0008】
グレリンは、ヒトに投与されたときに食欲および食物の取り込みを増加するこの能力を示した唯一の哺乳動物物質でもある(Druce M.R.,et al.,Int.J.Obes.,2005;29:1130−6;Wynne K.,et al.,J.Am.Soc.Nephrol.,2005;16:2111−8)。
【0009】
グレリンは、食事の開始におけるこの役割を超えて、長期にわたる体重の調節に関与する脂肪症関連ホルモンの確立された基準も満足する。グレリンのレベルは、エネルギー貯蔵量の関数として循環して、体重の変化に応答した代償性変化を示す。
【0010】
グレリンは血液脳関門を渡り、視床下部、菱脳および中脳辺縁代償系などの標準体重調節中枢に作用することによって、食物の取り込みを刺激する。
【0011】
グレリンの長期投与は、食物の取り込み、エネルギー消費および資源の利用に対する多様な協奏的作用を介して体重を増加させる。グレリンおよびグレリン受容体遺伝子の先天的欠損により、摂食誘導性肥満に対する抵抗性が引き起こされ、グレリンの薬理学的遮断によって、食物の摂取および体重が減少する。
【0012】
既存の証拠は、短期の食事の開始および長期のエネルギー恒常性の両方におけるグレリン役割に有利であるように思われ、それゆえグレリンを肥満および/または減量障害を処置するための薬剤として魅力的な標的とする。
【0013】
グレリンはまた、膵内分泌部に対して生理学的作用および薬理学的作用の両方を及ぼす。アシル化生物活性グレリンは、膵島における最近記載されたε細胞で産生され(Prado,C.L.,et al.,2004,Proc.Natl Acad.Sci.USA,101:2924−2929)、膵島のβ細胞に作用するグレリンの局所源を提供している可能性がある。グレリン受容体に対するアンタゴニストによる内因性グレリンのこの機能の遮断は、絶食時のグルコース濃度を実質的に低下させ、血糖の動きを弱め、グルコース耐性試験の間のインスリンに対する応答を増加させ、インスリン分泌の制御におけるグレリンの抑制的役割を示唆した(Dezaki,K.,et al.2004,Diabetes,53:3142−3151)。
【0014】
マウス(グレリン−/−マウス)におけるグレリンの消失は、Ucp2の発現を低下させることによって膵臓のβ細胞によるグルコース依存性のインスリンの分泌を増加させ、末梢インスリンに対する感受性を上昇させる(Sun Y.et al.,2006,Cell Metabolism,3:379−386)。
【0015】
それゆえグレリン受容体アンタゴニストは空腹感、食物の取り込みおよびこれらの頻度を、ならびに長期にわたって体重、とりわけ食事療法または治療レジメンの後の体重増加をも調節することができる。さらに抗糖尿病処置の文脈において、グレリンアンタゴニストは、糖尿病性過食症を制御するためのインスリンとグルコースとの間の平衡を維持するために有用であることができる。グレリンアンタゴニストはそれゆえ、食欲抑制剤および/もしくは抗肥満剤として、または糖尿病およびこの影響の処置に使用することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Kojima M.,et al.,Nature 1999;402:656−60
【非特許文献2】Smith R.G.et al.,Trends in Endocrinology and Metabolism,2005,16,No.9
【非特許文献3】Ueno,N.et al.,Endocrinology,2004,145,4176−4184
【非特許文献4】Kim,M.S.et al.,Int.J.Obes.Relat.Metab.Disord.,2004,28:1264−1271
【非特許文献5】Barazzoni,R.et al.,Am.J.Physiol.Endocrinol.Metab.,2004,288:E228−E235
【非特許文献6】Horm.Res.2003;59(3):109−17
【非特許文献7】Wren A.M.et al.,J.Clin.Endocrinol.Metab.,2001;86:5992−5
【非特許文献8】Druce M.R.,et al.,Int.J.Obes.,2005;29:1130−6
【非特許文献9】Wynne K.,et al.,J.Am.Soc.Nephrol.,2005;16:2111−8
【非特許文献10】Prado,C.L.,et al.,2004,Proc.Natl Acad.Sci.USA,101:2924−2929
【非特許文献11】Dezaki,K.,et al.2004,Diabetes,53:3142−3151
【非特許文献12】Sun Y.et al.,2006,Cell Metabolism,3:379−386
【発明の概要】
【0017】
本発明の1つの主題は、式(I)に対応する化合物であり:
【0018】
【化1】

式中:
R1は、水素原子または(C1−6)アルキル、−C(=O)(C1−6)アルキルもしくは−C(=O)アリール基を表し;
同じであり得てまたは異なり得て、フェニル核の利用可能な位置のいずれかに位置する、R2、R3およびR4は独立して、水素原子、ハロゲン原子、CN、OH、ハロゲン原子またはOHによって任意に置換された(C1−6)アルキル基;ペルハロ(C1−3)アルキル、(C1−6)アルコキシ、ペルハロ(C1−3)アルコキシ、アミノカルボニル、(C1−6)アルキルアミノカルボニル、ジ(C1−6)アルキルアミノカルボニル、アリール、アリールオキシ;ヘテロアリールを表し;アリール、アリールオキシまたはヘテロアリール基は、ハロゲン原子、CN、OHまたは(C1−6)アルキル、ペルハロ(C1−3)アルキルもしくは(C1−6)アルコキシ基によって任意に置換され得;R2、R3およびR4のうちの少なくとも1つがH以外であることおよびアリール、アリールオキシまたはヘテロアリール基がハロゲン原子、CN、OHまたは(C1−6)アルキル、ペルハロ(C1−3)アルキルもしくは(C1−6)アルコキシ基によって任意に置換され得ることが理解され;
同じであり得るまたは異なり得るR5およびR6は、水素原子もしくは(C1−6)アルキル基を表し、またはR5およびR6は一緒にC3−C6環を形成し;
R7は、(C1−C6)アルキル基または(C2−6)アルケニル基を表し;
ピペラジン核の利用可能な位置のいずれかに位置する、R8およびR9は、水素原子、(C1−C6)アルキル基または(C2−6)アルケニル基を表し、R8およびR9のうちの少なくとも1つがH以外であることが理解され;
またはR7、R8およびR9のうち2つが一緒にC3−C6環を形成し;
R8およびR9は同じ炭素原子のジェミナル位置にあり得ることが理解され;
nは1または2を表す。
【0019】
式(I)の化合物は、1個以上の不斉炭素原子を含む。それゆえ化合物はエナンチオマーまたはジアステレオマーの形で存在し得る。これらのエナンチオマーおよびジアステレオマー、ならびにラセミ混合物を含むこの混合物も本発明の一部を形成する。
【0020】
式(I)の化合物は、塩基の、または酸付加塩の形で存在し得る。このような付加塩は本発明の一部を形成する。
【0021】
これらの塩は、医薬的に許容される塩を用いて調製され得るが、例えば式(I)の化合物を精製または単離するために有用である他の酸の塩も本発明の一部を形成する。
【0022】
本発明の文脈において、以下の定義が適用される:
−ハロゲン原子:フッ素、塩素、臭素またはヨウ素;
−アルキル基:直鎖または分枝飽和脂肪族基。挙げられ得る例は、1から6個の炭素原子を含有する(C1−6)アルキル基、さらに詳細にはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチルまたはtert−ブチルを表し得る(C1−4)アルキルを含む;
−アルケニル基:例えば1または2個の不飽和を含み、2から6個の炭素原子を含有する直鎖または分枝、1不飽和または多不飽和脂肪族基;
−ハロアルキル基:1個以上の水素原子がハロゲン原子によって置き換えられたアルキル基;例えばフルオロアルキル:1個以上の水素原子がフッ素原子によって置き換えられたアルキル基;
−ペルハロアルキル基:すべての水素原子がハロゲン原子によって置き換えられたアルキル基;例えばペルフルオロアルキル:すべての水素原子がフッ素原子によって置き換えられたアルキル基;
−アルコキシ基:アルキル基が上で定義された通りであるラジカル−O−アルキル;
−ペルハロアルコキシ基:ペルハロアルキル基が上で定義された通りであるラジカル−O−ペルハロアルキル;例えばトリフルオロメトキシが挙げられ得る;
−アリール基:6から10個の炭素原子を含有する環式芳香族基。挙げられ得るアリール基の例は、フェニルおよびナフチルを含む;
−ヘテロアリール基:2から10個の炭素原子を含有し、1から3個のヘテロ原子、例えば窒素、酸素または硫黄を含む環式芳香族基。挙げられ得るヘテロアリール基の例は、フリル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、チエニル、オキサジアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、フラザニル、チアジアゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニルおよびピリダジニル基を、ならびにフェニル基との融合から生じる対応する基、例えばベンゾチオフェン、ベンゾフラン、ベンゾチアゾールなどをも含む。
【0023】
本発明の主題である式(I)の化合物のうちで、化合物の1群は:
R1が、水素原子または(C1−6)アルキル、−C(=O)(C1−6)アルキルもしくは−C(=O)アリール基を表し;
同じであり得てまたは異なり得て、フェニル核の利用可能な位置のいずれかに位置する、R2、R3およびR4が独立して、水素原子、ハロゲン原子、CN、OHまたは(C1−6)アルキル、ペルハロ(C1−3)アルキル、(C1−6)アルコキシ、ペルハロ(C1−3)アルコキシ、アミノカルボニル、(C1−6)アルキルアミノカルボニル、ジ(C1−6)アルキルアミノカルボニル、アリール、アリールオキシもしくはヘテロアリール基を表し、R2、R3およびR4のうちの少なくとも1つがH以外であることが理解され;
同じであり得るまたは異なり得るR5およびR6が、水素原子もしくは(C1−6)アルキル基を表し、またはR5およびR6は一緒にC3−C6環を形成し;
R7が(C1−C6)アルキル基を表し;
ピペラジン核の利用可能な位置のいずれかに位置する、R8およびR9が、水素原子、(C1−C6)アルキル基を表し、R8およびR9のうちの少なくとも1つがH以外であることが理解され;
またはR7、R8およびR9のうち2つが一緒にC3−C6環を形成し;
nが1または2を表し;
塩基のまたは酸付加塩の形である化合物によって構成される。
【0024】
本発明の主題である式(I)の化合物のうちで、化合物の1群は:
R1が、水素原子もしくは−C(=O)(C1−6)アルキル、−C(=O)アリールもしくは(C1−6)アルキル基を表し;ならびに/または
同じであり得てまたは異なり得て、フェニル核の利用可能な位置のいずれかに位置する、R2、R3およびR4が独立して、水素原子、ハロゲン原子、さらに詳細には塩素もしくは臭素、または(C1−6)アルキルもしくはトリフルオロメチル基を表し、R2、R3およびR4のうちの少なくとも1つがH以外であることが理解され;ならびに/または
同じであり得るまたは異なり得るR5およびR6が水素原子もしくは(C1−6)アルキル基を表し;ならびに/または
R7が(C1−C6)アルキル基を表し;ならびに/または
ピペラジン核の2位および6位に位置する、R8およびR9が、水素原子、(C1−C6)アルキル基を表し、R8およびR9のうちの少なくとも1つがH以外であることが理解され;ならびに/または
R7、R8およびR9のうち2つが一緒にC3−C6環を形成し;ならびに/または
nが1または2を表し;
塩基のまたは酸付加塩の形である化合物によって構成される。
【0025】
本発明の主題である式(I)の化合物のうちで、化合物の別の群は:
R1が、水素原子もしくは−C(=O)メチル、−C(=O)フェニルもしくはメチル基を表し;ならびに/または
同じであり得てまたは異なり得て、フェニル核の利用可能な位置のいずれかに位置する、R2、R3およびR4が独立して、水素原子、ハロゲン原子、さらに詳細には塩素もしくは臭素、またはメチルもしくはトリフルオロメチル基を表し、R2、R3およびR4のうちの少なくとも1つがH以外であることが理解され;ならびに/または
同じであり得るまたは異なり得るR5およびR6が水素原子もしくは(C1−6)アルキル基を表し;ならびに/または
R7がメチルもしくはエチル基を表し;ならびに/または
ピペラジン核の2位および6位に位置する、R8およびR9が、水素原子またはメチルもしくはエチル基を表し、R8およびR9のうちの少なくとも1つがH以外であることが理解され;ならびに/または
R7、R8およびR9のうち2つが一緒にC3−C6環を形成し;ならびに/または
nが1または2を表し;
塩基のまたは酸付加塩の形である化合物によって構成される。
【0026】
本発明の主題である式(I)の化合物のうちで、とりわけ以下の、塩基のまたは酸付加塩の形である化合物:
化合物番号1:(+)−N−[4,6−ジクロロ−3−(ベンゾフラン−5−イル)−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−インドール−3−イル]−2−(4−エチル−3,5−ジメチルピペラジン−1−イル)アセトアミド;
化合物番号2:(+)−N−[4,6−ジクロロ−3−(ベンゾフラン−5−イル)−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−インドール−3−イル]−2−(4−エチルピペラジン−1−イル)プロピオンアミド;
が挙げられ得る。
【0027】
以下のテキストでは、「保護基Pg」という用語は、第1に合成中にヒドロキシルまたはアミンなどの反応性官能基を保護すること、および第2に合成終了時に未処置の反応性官能基を再生することを可能にする基を意味する。保護基ならびに保護および脱保護方法の例は、Protective Groups in Organic Synthesis,Greene et al.,2nd edition(John Wiley & Sons,Inc.,New York)に記載されている。
【0028】
以下のテキストでは、「離脱基」という用語は、電子対の消失により異方性結合を破壊することによって分子からただちに切断され得る基を意味する。本基はそれゆえ、例えば置換反応の間に別の基によってただちに置き換えられ得る。このような離脱基は、例えばハロゲンまたは活性化ヒドロキシル基、例えばメタンスルホネート、ベンゼンスルホネート、p−トルエンスルホネート、トリフレート、アセテートなどの基である。離脱基の例およびこの調製のための参考文献は、Advances in Organic Chemistry,J.March,3rd edition,Wiley Interscience,pp.310−316に記載されている。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明により、一般式(I)の化合物は、続いての方法に従って調製され得る:
スキーム1:
【0030】
【化2】

式(I)の化合物(式中、R1がH以外であり、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9およびnが一般式(I)で定義された通りである。)は、式(I)の化合物(式中、R1=Hである。)を式(II)の化合物:
R1−Hal(II)
(式中、H以外であるR1は一般式(I)でのように定義され、Halはハロゲン原子、例えば塩素を表す。)と当業者に公知の方法に従って、例えば塩基、例えばKCO、NaHまたはt−BuOの存在下で、溶媒、例えばジメチルホルムアミド(DMF)、テトラヒドロフラン(THF)、ジメトキシエタンまたはジメチルスルホキシド(DMSO)中で反応させることによって調製され得る。
【0031】
一般式(I)の化合物は、以下の変形のどちらかに従って調製され得る:
一般式(I)の化合物(式中、R1=Hである。)は、以下の方法に従って、一般式(V)の化合物:
【0032】
【化3】

からおよび一般式(VII)の化合物:
【0033】
【化4】

(式中、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9およびnは、一般式(I)で定義された通りである。)から調製され得る。本反応は概して、ハロゲン化剤、例えば塩素化剤、例えば塩化リン、とりわけPCl、またはPClもしくはPOClを使用して行われる。反応は概して、ピリジンまたは4−ジメチルアミノピリジンの存在下で、ジクロロメタンまたはDMFなどの溶媒中で行われる。
【0034】
一般式(I)の化合物(式中、R1、R5およびR6=Hである。)は、以下の方法に従って、一般式(III)の化合物:
【0035】
【化5】

を一般式(IV)の化合物:
【0036】
【化6】

(式中、R2、R3、R4、R7、R8、R9およびnは、一般式(I)で定義された通りであり、Hal”はハロゲン原子、好ましくは塩素を表す。)と反応させることによって調製され得る。本反応は概して、有機または無機塩基、例えばKCO、NaCO、ピリジンまたは4−ジメチルアミノピリジンを使用して、NaIまたはKIの存在下で、不活性溶媒、例えばDMF、ジクロロメタン、THF、ジメトキシエタンまたはトルエン中で行われる。
【0037】
一般式(III)の化合物は、一般式(V)の化合物:
【0038】
【化7】

から、および一般式(VI)の化合物:
【0039】
【化8】

(R2、R3、およびR4は一般式(I)で定義された通りであり、同じであり得るまたは異なり得るHal’およびHal”は独立して、ハロゲン原子、好ましくは塩素を表す。)から調製され得る。
【0040】
本反応は概して、ピリジンまたは4−ジメチルアミノピリジンを使用して、溶媒、例えばトルエン、ベンゼンまたはジクロロメタン中で、優先的には室温と溶媒の還流温度との間の温度にて行われる。
【0041】
室温とは5から25℃の温度を意味する。
【0042】
一般式(V)の中間体は公知であり、続いてのスキームによって例証される方法に従って調製され得る:
スキーム2:
【0043】
【化9】

式中、R2、R3、およびR4は一般式(I)で定義された通りであり、Halはハロゲン原子、例えば塩素を表す。
【0044】
スキーム2のステップcにおいて、式(V)の化合物は、特許出願FR 2 714 378に記載された方法に従ってアンモニアガスを散布することによって、式(VIII)の化合物から調製される。
【0045】
当業者に公知の方法に従って、例えばメタノールなどの溶媒中で亜鉛を用いて、式(X)の化合物の還元によって同じ化合物を調製することも可能である。ステップの式(X)の化合物の調製は、特許出願FR 2 714 378に記載されている。
【0046】
光学的に純粋な式(V)の化合物は、特許出願WO 03/008407に記載されているように、スキーム2のdおよびeに従って合成され得る。
【0047】
一般式(VIII)の中間体は、特許出願WO 03/008407に記載され、スキーム3によって例証される方法に従って調製され得る:
スキーム3:
【0048】
【化10】

式中、R2、R3、およびR4は一般式(I)で定義された通りであり、Halはハロゲン原子、例えば塩素を表す。
【0049】
一般式(VII)の化合物は、スキーム4および5によって例証される、以下の方法に従って調製され得る:
スキーム4:
【0050】
【化11】

一般式(XIII)の化合物は、一般式(IV)の化合物:
【0051】
【化12】

(式中、R7、R8、R9およびnは一般式(I)で定義された通りである。)の、対応するハロ化合物、例えばHal’’’CHCOOAlk(Hal’’’はハロゲン原子、例えば塩素を表し、Alkはアルキル基、例えばエチルを表す。)との縮合によって調製され得る。本反応は、溶媒、例えばトルエン、ベンゼンまたはジオキサン中で好都合に行われる。
【0052】
スキーム5:
【0053】
【化13】

一般式(XIII)の化合物は、一般式(XIV)の化合物:
【0054】
【化14】

(式中、R5、R6、R8、R9およびnは一般式(I)で定義された通りであり、Alkはアルキル基を表す。)の、化合物R7−Hal”’(式中、Hal’’’はハロゲン原子、例えば塩素を表し、R7は一般式(I)で定義された通りである。)との縮合によって調製され得る。本反応は、溶媒、例えばトルエン、ベンゼンまたはDMF中で、塩基例えばトリエチルアミンまたは炭酸カリウムの存在下で好都合に行われる。
【0055】
別の実施形態により、一般式(I)の化合物(式中、R1はアルキル基を表し、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9およびnは、一般式(I)で定義された通りである。)は、下のスキーム6に従っても調製され得る:
スキーム6:
【0056】
【化15】

本スキームに従って、式(V)の化合物を保護基PGと反応させて、式(XV)の化合物を得る。使用され得るアミンに対する保護基の例は、ベンゾイミンおよびt−ブチルカルバメートを含む。これらの保護基は、当業者に公知の方法に従って、例えば塩基、例えばKCO、NaOHまたはトリエチルアミンの存在下で、溶媒、例えばジオキサン、THFまたはDMSO中で導入される。
【0057】
一般式(XVI)の化合物は、式(XV)化合物を式ALK−Hal(式中、ALKは、1から6個の炭素原子を含有する直鎖または分枝飽和脂肪族基を表し、およびHalはハロゲン原子、例えば塩素を表す。)の化合物と反応させることによって調製され得る。
【0058】
一般式(XVII)の化合物は周知の方法に従って、式(XVI)の化合物から、例えばHClまたはトリフルオロ酢酸による酸性媒体中で保護基を除去することによって得られる。
【0059】
得られた式(XVII)の化合物は次に、一般式(VII)の化合物:
【0060】
【化16】

(式中、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9およびnは、一般式(I)で定義された通りである。)と反応させる。本反応は概して、ハロゲン化剤、例えば塩素化剤、例えば塩化リン、とりわけPClまたはPClまたはPOClを使用して行われる。反応は概して、ピリジンまたは4−ジメチルアミノピリジンの存在下で、ジクロロメタンまたはDMFなどの溶媒中で行われる。
【0061】
必要に応じて、式(I)の化合物は、この酸付加塩に変換される。
【0062】
本発明による方法は必要に応じて、一般式(I)の所望の生成物を単離することに存するステップを含み得る。
【0063】
スキーム1、2、3、4、5および6において、開始物質および試薬は、この調製方式が記載されていないとき、市販品であるか、もしくは文献に記載されており、またはそうでなければ文献に記載されているもしくは当業者に公知である方法に従って調製され得る。
【0064】
以下の実施例は、本発明によるある化合物の調製について記載する。これらの実施例は制限的でなく、本発明を例証する役割のみを果たす。
【0065】
物理化学的測定は、以下の方式で行った:
融点は、Buechi B−540装置を使用して測定した。
【0066】
プロトン核磁気共鳴(H NMR)スペクトルを、Avanceコンソールを装備したBrueker装置で500MHzにて記録した。化学シフトをTMSの周波数に対してppmで示す。
【0067】
すべてのスペクトルを40℃の温度にて記録した。
【0068】
信号を特徴付けるために使用した省略形は以下の通りである:
s=1重線、bs=幅広1重線、m=多重線、bm=幅広多重線、d=2重線、bd=幅広2重線、t=3重線、q=4重線。
【0069】
*=水から生じる幅広ピークとの干渉のために積分不能。
**=NMR溶媒から生じるピークとの干渉のために積分不能。
***=1次にて読み取り。
****=最も豊富なジアステレオ異性体。
*****=最も少ないジアステレオ異性体。
【0070】
質量分析装置に連結した液体クロマトグラフィー(LC/UV/MS)による分析条件は以下の通りである:
液体クロマトグラフィー部では:
XTerra MS C18 3.5μmカラム
−クロマトグラフィーシステム:
−溶離液A=HO+0.01%TFA
−溶離液B=CHCN
−10分間にわたって98%Aから95%Bまでの勾配、続いて95%Bによる5分間の溶離
−流速0.5ml/分
−9/1 CHCN/HO混合物による0.1mg/mlの溶液2μLの注入
生成物をUVによって220nmにて検出する。
【0071】
質量分析部では:
−イオン化モード:正のエレクトロスプレー(API−ES極性+)
−100から1200amuまでスキャン
【0072】
薄層クロマトグラフィーをMerckによるシリカゲルTLCプレートで行った。フラッシュクロマトグラフィーのシリカゲルはBiotageによって販売されている。
【0073】
使用されるすべての溶媒は「試薬グレード」または「HPLCグレード」の純度である。
【0074】
α測定値は、1dm光路長のセルを使用してPerkin−ElmerモデルPE34偏光計で記録した。
【0075】
実施例および調製において:
AcOHおよびEtOAcはそれぞれ、酢酸および酢酸エチルを表す。
MeOH、EtOHおよびt−BuOHはそれぞれ、メタノール、エタノールおよびtert−ブタノールを表す。
THFはテトラヒドロフランを表す。
m.p.は融点を表す。
【0076】
調製1:
2−(4−エチルピペラジン−1−イル)プロピオン酸
(i)エチル2−(4−エチルピペラジン−1−イル)プロピオネート
エチル2−ピペラジン−1−イルプロピオネート9.7gを、丸底フラスコ内のDMF150mlおよび炭酸カルシウム21.6gに加える。ブロモエタン溶液3.9mlを滴加する。混合物を130℃にて3時間反応させて、炭酸塩を濾過して、濾液を濃縮乾固する。残渣を酢酸エチルに取り、濾過する。固体を除去して、液相を真空下で蒸発させる。酢酸エチルから結晶化する固体が得られる。これが濾過されて生成物8.46gが得られる。
TLC:100% MeOH,Rf=0.55
【0077】
(ii)2−(4−エチルピペラジン−1−イル)プロピオン酸
前のステップで得た生成物8.45gを6N HCl 180mlに添加して、混合物を還流下で4時間反応させる。生じた混合物を蒸発乾固して、残渣を1/1 EtOAc/EtOH混合物で洗浄し、得られた白色固体を乾燥する。予想された生成物5.4gを得る。
TLC:100% MeOH,Rf=0.2
【0078】
調製2:
(+)−3−アミノ−4,6−ジクロロ−1,3−ジヒドロ−3−(ベンゾフラン−5−イル)インドール−2−オン
(i)3−ヒドロキシ−4,6−ジクロロ−1,3−ジヒドロ−3−(ベンゾフラン−5−イル)インドール−2−オン
無水THF 15ml中のグリニャール反応用のマグネシウム2.25gを、機械式スターラーを装備した、窒素流下の丸底フラスコに加える。次に無水THF35ml中の5−ブロモベンゾフラン13.6gの混合物を添加する。混合物を1時間撹拌して、続いて無水THF 50mlによる4,6−ジクロロ−1H−インドール−2,3−ジオン5gの溶液を添加する。混合物を室温にて4時間30分撹拌する。水を添加して、生じた混合物を酢酸エチルで抽出する。有機相を分離して取り出し、NaSOで脱水し、濾過して、真空下で蒸発させる。残渣を酢酸エチルに取り、1N水酸化ナトリウム溶液で洗浄する。有機相をNaSOで脱水し、濾過して、真空下で蒸発させる。固体をエチルエーテルに取り、濾過する。予想された生成物4.2gを得る。
【0079】
(ii)3,4,6−トリクロロ−1,3−ジヒドロ−3−(ベンゾフラン−5−イル)インドール−2−オン
前のステップからの生成物4.1gを磁気スターラーを装備した、窒素流下の丸底フラスコ内のジクロロメタン40mlに加える。0℃にてピリジン1.7mlおよびジクロロメタン30ml中のSOCl 1.4mlを添加する。生じた混合物を室温にて反応させて、次にNHCl飽和水溶液中に注入する。有機相を分離して取り出し、NaSOで脱水し、濾過して、真空下で蒸発させる。
TLC:7/3 ヘキサン/EtOAc,Rf=0.65
【0080】
(iii)4,6−ジクロロ−[[(1S)−2−ヒドロキシ−1−フェニルエチル]アミノ]−1,3−ジヒドロ−3−(ベンゾフラン−5−イル)インドール−2−オン異性体Aおよび異性体B
ジクロロメタン50ml中の前のステップからの化合物4.1gおよびS−フェニルグリシノール3.1gを窒素流下で共に混合する。混合物を放置して室温にて一晩反応させる。形成した固体を濾過して、濾液を蒸発乾固し、8/2 ヘキサン/EtOAcによって溶離させてカラムで精製する。
【0081】
より少ない極性の生成物である異性体A 0.64g(m.p.=135℃)およびより多い極性の異性体B 1.23gが得られる。
【0082】
(v)(+)−3−アミノ−5,6−ジクロロ−1,3−ジヒドロ−3−(4−クロロフェニル)インドール−2−オン
前のステップで得た生成物1.21gをジクロロメタン20mlおよびメタノール15ml中で反応させる。Pb(OAc) 1.26gを添加して、混合物を室温にて1時間反応させる。生じた混合物を蒸発乾固して、残渣を酢酸エチルに取り、次にNaHCO飽和水溶液で洗浄する。有機相を乾燥させ、濾過して、濃縮する。残渣を3N塩酸36mlおよびメタノール3.7mlに取り、一晩撹拌する。生じた混合物を濃縮して、残渣を水およびジクロロメタンの混合物で希釈する。有機相を1N塩酸溶液で洗浄する。水相を合せ、NH水溶液によって塩基性pHとして、ジクロロメタンで抽出する。有機相を乾燥させ、濾過し、濃縮して、固体白色生成物870mgを得る。
【0083】
m.p.=215から216℃
LC/MS:(M+H)=m/z333 amu;rt=5.3分
【実施例1】
【0084】
(+)−N−[4,6−ジクロロ−3−(ベンゾフラン−5−イル)−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−インドール−3−イル]−2−(4−エチル−3,5−ジメチルピペラジン−1−イル)アセトアミド
(i)2−クロロ−N−[4,6−ジクロロ−3−(ベンゾフラン−5−イル)−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−インドール−3−イル]アセトアミド:
調製2で得た生成物0.43g、トルエン15ml、ピリジン0.11mlおよびクロロ酢酸クロリド0.11mlを、機械式スターラーを装備した、窒素流下の丸底フラスコに加える。混合物を110℃にて4時間反応させて、反応混合物を水に注入し、酢酸エチルで抽出する。有機相をNaSOで脱水し、濾過して、真空下で蒸発させる。ベージュ色固体500mgが得られ、これを8/2 クロロヘキサン/酢酸エチル混合物を用いてフラッシュクロマトグラフィーによってカラムで精製し、予想された生成物330mgを得る。
TLC:1/1 ヘキサン/EtOAc,Rf=0.5
【0085】
(ii)(+)−N−[4,6−ジクロロ−3−(ベンゾフラン−2−イル)−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−インドール−3−イル]−2−(3,5−ジメチル−4−エチルピペラジン−1−イル)アセトアミド:
前のステップからの生成物0.31g、2,6−ジメチル−N−エチルピペラジン(d0.899)0.08ml、炭酸カリウム0.1gおよびDMF 5ml中のヨウ化カリウム0.05gを、磁気スターラーを装備した丸底フラスコに加える。混合物を60℃にて4時間反応させて、反応混合物を水に注入し、酢酸エチルで抽出する。有機相をNaSOで脱水し、濾過して、真空下で蒸発させる。表題生成物を得る。
【0086】
m.p.=157から160℃;[α]=+191°,c=0,946重量%MeOH;
LC/MS:(M+H)=m/z515 amu;rt=4.9分
【実施例2】
【0087】
(+)−N−[4,6−ジクロロ−3−(ベンゾフラン−5−イル)−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−インドール−3−イル]−2−(4−エチルピペラジン−1−イル)プロピオンアミド
1)窒素流下でPCl 520mgを氷浴中の無水ジクロロメタン12mlに添加して、続いて調製1の酸430mgをゆっくり加える。反応混合物を放置して0℃にて10分間、次に室温にて3時間作用させる。
【0088】
2)別個に、調製2からの生成物300mgを窒素流下でジクロロメタン12mlに懸濁させて、続いてピリジン0.3mlを添加する。混合物を冷浴で冷却する。1)で調製した溶液を滴加して、混合物を室温にて1時間撹拌する。
【0089】
反応混合物を水に注入して、酢酸エチルで抽出する。有機相をNaHCO飽和溶液で洗浄して、NaSOで脱水し、濾過して、真空下で蒸発させる。オレンジ色固体500mgが得られ、これを溶離液として1/1 酢酸エチル/メタノール酢酸エチル混合物を用いてフラッシュクロマトグラフィーによってカラムで精製し、表題生成物を得る。
【0090】
m.p.=137−138℃;[α]=+217°,c=MeOH中0.1064重量%;
NMR:δ(ppm,DMSO−d):0.99(m,3H)、1.08(m,3H)、2.24−2.45(m,6H)2.47−2.68(m,**)、3.18−3.33(m,*)、6.92(m,1H)、7.01(s,1H)、7.19(m,1H)、7.21−7.28(m,1H)、7.50(bs,1H)、7.65(d,J=8.8Hz,1H)、8.02(s,1H)、8.61(s,0.4H*****)、8.73(s,0.6H****)、10.64(s,0.6H****)、10.71(s,0.4H*****)。
【0091】
LC/MS:(M+H)=m/z501 amu;rt=4.9分
【実施例3】
【0092】
(+)−N−[4,6−ジクロロ−3−(ベンゾフラン−5−イル)−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−インドール−3−イル]−2−(4−エチル−3−メチルピペラジン−1−イル)アセトアミド
方法を実施例1で記載したように、しかし2,6−ジメチル−N−エチルピペラジンの代わりに2−メチル−N−エチルピペラジンを使用して行い、表題化合物を得る。
【0093】
本発明による化合物にインビボ試験を行った。
【0094】
インビボ試験
体重150から175gのオスCrl CD BRラット(Charles River、イタリア(Italy))を温度(22±1℃)および湿度(55±10%)が調節されたチャンバ内に、12時間明暗サイクルで、この使用前に少なくとも7日間収容した。餌および水を自由に摂取させた。動物の殺処分の18時間前に餌を除去した。ラットを頸椎脱臼によって殺処分して、胃を外科的に除去し、小弯に沿って開き、クレブス液(組成(mM):118.4 NaCl;4.7 KCl;2.5 CaCl;3.7 NaHPO;1.2 MgSO;25 NaHCO;5.6 グルコース)に加えた。動物は、サノフィ−アベンティス国際倫理綱領(Sanofi−Aventis international code of ethics)および実験用動物の管理および取扱いを規定する国際的原則(EEC Directive 86/609,DJL358,1,12 December 1987)に従って管理および殺処分した。おおよそ1cm(幅5mm)の胃底細片を長手軸に沿って切り出し、37℃のクレブス液を満たし、95%O−5%COガス混合物を通気した浴20ml中に浮遊させた。細片を静止荷重1gにて維持して、洗浄後にコリン(アセチルコリン前駆体)10μMおよびインドメタシン(プロスタグランジン合成酵素阻害薬)10μMを媒体に添加して、自発的な一過性収縮を低減させた(Depoortere et al.,Eur.J.Pharmacol.515,1−3,160−168,2003;Dass et al.,Neurosciences 120,443−453,2003)。電場を用いた刺激によって、等張性収縮を開始させた。2本の白金線電極を臓器浴の表面および底部に配置して、多重パルス推進装置(Ugo Basile,Varese、イタリア(Italy))に連結されたPower Lab刺激装置(AD Instruments Pty Ltd,Castle Hill、オーストラリア(Australia))によって電場刺激を行った(Fukuda et al.,Scand.J.Gastroenterol.12,1209−1214,2004)。超最大刺激を印加して、最大収縮を生じさせた(20Hz、パルス幅:2ミリ秒;5ボルト;バッチ長さ2分ごと、150mA)。次に電流を低下させて、超最大刺激を得た(最大収縮応答の50%低下)。収縮は、プリアンプ(Octal Bridge Amp)を介して等張変換器(Ugo Basile,Varese、イタリア(Italy))に接続されたデータ記録および解析システム(Power Lab,Chart 5)によって記録した。安定化の後、アンタゴニスト分子のインキュベーション(接触時間:30分)を伴ってまたは伴わずに、グレリンの濃度−応答累積曲線(0.1nMから1μM)をプロットした。各細片で超最大電場刺激を基準(100%)として、試験物質による応答を分類した。最大効果の50%を生成するアゴニスト濃度(EC50)は、EverstatソフトウェアでのLevenberg−Marquardアルゴリズムを用いた非線形回帰によって調整した、Ratkovsky and Reedy(Biometrics,42,575−582,1986)による4パラメータ・ロジスティック・モデルを用いて計算した。アンタゴニストのpKb値をチェン−プルソフ式に従って計算した(Kenakin et al.,Competitive Antagonism,Pharmacologic Analysis of Drug−Receptor Interaction,3rd edition,331−373,Philadelphia,New York;Raven:Lippincott,1997)。
【0095】
式(I)の化合物は、5×10−8Mから1×10−9Mに及ぶIC50値を有するグレリン受容体に対してアンタゴニスト活性を示す。
【0096】
例えば実施例2の化合物は、1.2×10−8MのIC50値を有する。
【0097】
式(I)の化合物は、薬剤、特にグレリン受容体が関与するいずれかの病態を予防または処置する薬剤の開発のために好都合な薬理学的特性を示した。
【0098】
それゆえこの別の態様により、本発明の主題は、式(I)の化合物または医薬的に許容される酸とのこの付加塩を含む薬剤である。
【0099】
それゆえ本発明による化合物は、各種のグレリン依存性病訴の処置または予防でヒトおよび動物に使用され得る。それゆえ本発明による化合物は、食欲、食物の取り込みおよびこの頻度を、ならびに長期にわたって体重、とりわけ食事療法または治療レジメン後の体重増加をも調節するための食欲抑制剤として使用され得る。本発明による化合物はそれゆえ、肥満、食欲障害、糖尿病、過剰体重および/またはこの影響を予防または処置するために特に有用である。
【0100】
この別の態様により、本発明は、活性成分として本発明による化合物を含む医薬組成物に関する。これらの医薬組成物は、本発明による少なくとも1つの化合物の有効用量を、および少なくとも1つの医薬的に許容される賦形剤をも含有する。
【0101】
前記賦形剤は、当業者に公知の通常の賦形剤から、製薬形および所望の投与形式に従って選択される。
【0102】
経口、舌下、皮下、筋肉内、静脈内、局所、局部、気管内、鼻内、経皮または経直腸投与のための本発明の医薬組成物では、上の式(I)の活性成分、またはこの塩は、上の障害または疾患の予防または治療のために動物およびヒトに対して、標準医薬賦形剤との混合物として、単位投与形で投与され得る。
【0103】
適切な単位投薬形は、経口経路形、例えば錠剤、軟または硬カプセル剤、粉剤、顆粒剤および経口液剤または懸濁剤、舌下、頬側、気管内、眼内または鼻内投与形、吸入による投与形、局所、経皮、皮下、筋肉内または静脈内投与形、経直腸投与形およびインプラントを含む。局所利用のために、本発明による化合物は、クリーム、ゲル、軟膏またはローションで使用され得る。
【0104】
一例として、錠剤形の本発明による化合物の単位投与形は、以下の成分を含み得る:
本発明による化合物 50.0mg
マンニトール 223.75mg
クロスカルメロースナトリウム 6.0mg
コーンスターチ 15.0mg
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 2.25mg
ステアリン酸マグネシウム 3.0mg
【0105】
経口経路を介した1日に付き投与される活性成分の用量は、1回以上の投薬摂取において0.1から100mg/kgであり得る。非経口経路を介しての用量は、0.01から10mg/kg/日である。
【0106】
より多いまたは少ない投薬量が適切である特定の場合があり得る;このような投薬量は、本発明の範囲から逸脱しない。通常の常法により、各患者に適切な投薬量は、投薬様式、ならびに前記患者の体重および応答に従って医師によって決定される。
【0107】
考えられる併用
本発明は、一般式(I)の本発明による1つ以上の化合物と1つ以上の活性成分との併用にも関する。
【0108】
前記併用に好適である(複数の)活性成分として、とりわけ抗肥満剤および抗糖尿病剤が、ならびにリモナバント、メトホルミンまたはスルホニル尿素も挙げられ得る。
【0109】
この別の態様により、本発明は、本発明による化合物の、またはこの医薬的に許容される塩の有効量の患者への投与を含む、上で指摘した病態を処置する方法にも関する。
【0110】
この別の態様により、本発明は、上で指摘した病態を処置するための、式(I)の化合物、またはこの医薬的に許容される塩にも関する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩基のまたは酸付加塩の形である、式(I):
【化1】

に対応する化合物
(式中:
R1は、水素原子または(C1−6)アルキル、−C(=O)(C1−6)アルキルもしくは−C(=O)アリール基を表し;
同じであり得てまたは異なり得て、フェニル核の利用可能な位置のいずれかに位置する、R2、R3およびR4は独立して、水素原子、ハロゲン原子、CN、OH、ハロゲン原子またはOHによって任意に置換された(C1−6)アルキル基;ペルハロ(C1−3)アルキル、(C1−6)アルコキシ、ペルハロ(C1−3)アルコキシ、アミノカルボニル、(C1−6)アルキルアミノカルボニル、ジ(C1−6)アルキルアミノカルボニル、アリール、アリールオキシ;ヘテロアリールを表し;
アリール、アリールオキシまたはヘテロアリール基は、ハロゲン原子、CN、OHまたは(C1−6)アルキル、ペルハロ(C1−3)アルキルもしくは(C1−6)アルコキシ基によって任意に置換され得;R2、R3およびR4のうちの少なくとも1つがH以外であることおよびアリール、アリールオキシまたはヘテロアリール基がハロゲン原子、CN、OHまたは(C1−6)アルキル、ペルハロ(C1−3)アルキルもしくは(C1−6)アルコキシ基によって任意に置換され得ることが理解され;
同じであり得るまたは異なり得るR5およびR6は、水素原子もしくは(C1−6)アルキル基を表し、またはR5およびR6は一緒にC3−C6環を形成し;
R7は、(C1−C6)アルキル基または(C2−6)アルケニル基を表し;
ピペラジン核の利用可能な位置のいずれかに位置する、R8およびR9は、水素原子、(C1−C6)アルキル基または(C2−6)アルケニル基を表し、R8およびR9のうちの少なくとも1つがH以外であることが理解され;
またはR7、R8およびR9のうち2つが一緒にC3−C6環を形成し;
R8およびR9は同じ炭素原子のジェミナル位置にあり得ることが理解され;
nは1または2を表す。)。
【請求項2】
一般式(I)において:
R1が、水素原子または(C1−6)アルキル、−C(=O)(C1−6)アルキルまたは−C(=O)アリール基を表し;
同じであり得てまたは異なり得て、フェニル核の利用可能な位置のいずれかに位置する、R2、R3およびR4が独立して、水素原子、ハロゲン原子、CN、OHまたは(C1−6)アルキル、ペルハロ(C1−3)アルキル、(C1−6)アルコキシ、ペルハロ(C1−3)アルコキシ、アミノカルボニル、(C1−6)アルキルアミノカルボニル、ジ(C1−6)アルキルアミノカルボニル、アリール、アリールオキシもしくはヘテロアリール基を表し、R2、R3およびR4のうちの少なくとも1つがH以外であることが理解され;
同じであり得るまたは異なり得るR5およびR6が、水素原子もしくは(C1−6)アルキル基を表し、またはR5およびR6は一緒にC3−C6環を形成し;
R7が(C1−C6)アルキル基を表し;
ピペラジン核の利用可能な位置のいずれかに位置する、R8およびR9が、水素原子、(C1−C6)アルキル基を表し、R8およびR9のうちの少なくとも1つがH以外であることが理解され;
またはR7、R8およびR9のうち2つが一緒にC3−C6環を形成し;
nが1または2を表す
塩基のまたは酸付加塩の形である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
一般式(I)において:
R1が、水素原子または−C(=O)(C1−6)アルキル、−C(=O)アリールもしくは(C1−6)アルキル基を表し;
同じであり得てまたは異なり得て、フェニル核の利用可能な位置のいずれかに位置する、R2、R3およびR4が独立して、水素原子、ハロゲン原子、または(C1−6)アルキルもしくはトリフルオロメチル基を表し、R2、R3およびR4のうちの少なくとも1つがH以外であることが理解され;
同じであり得るまたは異なり得るR5およびR6が、水素原子または(C1−6)アルキル基を表し;
R7が(C1−C6)アルキル基を表し;
ピペラジン核の2位および6位に位置する、R8およびR9が、水素原子、(C1−C6)アルキル基を表し、R8およびR9のうちの少なくとも1つがH以外であることが理解され;
またはR7、R8およびR9のうち2つが一緒にC3−C6環を形成し;
nは1または2を表す
塩基のまたは酸付加塩の形である、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
一般式(I)において:
R1が、水素原子または−C(=O)メチル、−C(=O)フェニルまたはメチル基を表し;
同じであり得てまたは異なり得て、フェニル核の利用可能な位置のいずれかに位置する、R2、R3およびR4が独立して、水素原子、ハロゲン原子、またはメチルもしくはトリフルオロメチル基を表し、R2、R3およびR4のうちの少なくとも1つがH以外であることが理解され;
同じであり得るまたは異なり得るR5およびR6が、水素原子または(C1−6)アルキル基を表し;
R7がメチルまたはエチル基を表し;
ピペラジン核の2位および6位に位置する、R8およびR9が、水素原子またはメチルもしくはエチル基を表し、R8およびR9のうちの少なくとも1つがH以外であることが理解され;
またはR7、R8およびR9のうち2つが一緒にC3−C6環を形成し;
nは1または2を表す
塩基のまたは酸付加塩の形である、請求項1から3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
以下の化合物:
化合物番号1:(+)−N−[4,6−ジクロロ−3−(ベンゾフラン−5−イル)−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−インドール−3−イル]−2−(4−エチルピペラジン−1−イル)アセトアミド;
化合物番号2:(+)−N−[4,6−ジクロロ−3−(ベンゾフラン−5−イル)−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−インドール−3−イル]−2−(4−エチルピペラジン−1−イル)プロピオンアミド
から選択される、塩基のまたは酸付加塩の形である、請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
一般式(V):
【化2】

(式中、R2、R3およびR4は、請求項1から5のいずれか一項に従って定義された通りである。)
の化合物を反応させることに存するステップを含むことを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の式(I)の化合物を調製する方法。
【請求項7】
ステップが:
−一般式(V)の前記化合物を一般式(VI):
【化3】

(式中、同じであり得るまたは異なり得るHal’およびHal”は独立して、ハロゲン原子を表す。)
の化合物と反応させること;
−ならびに次に得られた一般式(III)の化合物
【化4】

を一般式(IV):
【化5】

(式中、R2、R3、R4、R7、R8、R9およびnは、一般式(I)で定義された通りであり、ならびにHal”はハロゲン原子を表す。)
の化合物と反応させること;に存するステップを含み、
−必要に応じて得られた式(I)の生成物(式中、R1はHに等しい)を式(II):
R1−Hal (II)
(式中、H以外であるR1は一般式(I)でのように定義され、ならびにHalはハロゲン原子を表す。)
の化合物と反応させることに存するステップが続く、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
一般式(V)の前記化合物を一般式(VII):
【化6】

(式中、R5、R6、R7、R8、R9およびnは、請求項1から5のいずれか一項によって定義された通りである。)
の化合物と反応させることに存するステップを含み;
必要に応じて得られた式(I)の生成物(式中、R1はHに等しい)を式(II):
R1−Hal (II)
(式中、H以外であるR1は一般式(I)でのように定義された通りであり、ならびにHalはハロゲン原子を表す。)
の化合物と反応させることに存するステップが続く、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
一般式(XVII):
【化7】

(式中、R2、R3およびR4は、請求項1から5のいずれか一項に従って定義された通りであり、ならびにALKはアルキル基を表す。)
の化合物を反応させることに存するステップを含むことを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の式(I)の化合物を調製する方法。
【請求項10】
−一般式(XVII)の前記化合物を一般式(VII):
【化8】

(式中、R5、R6、R7、R8、R9およびnは、一般式(I)で定義された通りである。)
の化合物と反応させることに存するステップを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
一般式(I)の所望の化合物を分離することに存する後続のステップを含む、請求項6から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
請求項1から5のいずれか一項に記載の式(I)の化合物、または医薬的に許容される酸とのこの化合物の付加塩を含むことを特徴とする薬剤。
【請求項13】
請求項1から5のいずれか一項に記載の式(I)の化合物、または医薬的に許容される塩を含むことを特徴とする医薬組成物。
【請求項14】
肥満、糖尿病、食欲障害および過剰体重を予防または処置する薬剤の調製のための、請求項1から5のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項15】
肥満、糖尿病、食欲障害および過剰体重を予防または処置するための、請求項1から5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項16】
請求項1から5のいずれか一項に記載の1つ以上の化合物を1つ以上の活性成分と共に含む併用。

【公表番号】特表2012−517460(P2012−517460A)
【公表日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−549642(P2011−549642)
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【国際出願番号】PCT/FR2010/050206
【国際公開番号】WO2010/092288
【国際公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(504456798)サノフイ (433)
【Fターム(参考)】