説明

署名保護されている感光性光学的可変性インク組成物及び方法

署名保護された感光性光学的可変性(POV)インクであって、他のセキュリティ機能に加えて独自の署名を提供することができるインクを提供する。インクは、少なくとも2種類の着色剤、第3の署名成分及び印刷を可能にする他の原料とを含有する。第1の着色剤は、蛍光-励起電磁線により励起されると固有の発光帯内で光を放出する蛍光染料及び/又は顔料を含む。第2の着色剤は、暗色をもたらすような方法で第1の着色剤の固有の発光帯に重なるか又はそれよりも長い波長の光吸収帯を有する染料及び/又は顔料を含む。第3の成分は、蛍光/燐光希土類組成物である。インクは、暗色の可視インク画像を生じ、これは、検出可能な一致する蛍光及び燐光画像を更に生成する。インクを、赤色燐光の検出器と共に用いて高速分類作業における新しいレベルのセキュリティを達成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新しい感光性の光学的可変性(POV)インクに関し、特に、安全インクとして用いるのによく適応する機能を強化した画像を印刷することができる水溶性POVインクに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明のPOVインクは、インクジェット印刷に用いるのに有用であり、様々なセキュリティ適用を有する。これらは、他のインクと異なる種類のセキュリティマーキングを生成することができる。POVインクは、信頼できる供給源又は認可された供給元から入手可能である場合には、偽造品製造に大きな障壁を呈するが、最も精巧なセキュリティ手段でも時には出し抜かれる可能性がある。本発明は、第一に容易に検出されず、検出されても容易に複製されないセキュリティ機能を有するインクジェットインクを提供する。
【0003】
本発明のインクは、感光性で光学的に可変性であり、これは、短波長光で励起されると特定の波長範囲で蛍光を発する印刷された視覚的に黒又は濃灰色の機械読み取り式情報を有するマーキングを提供することができることを意味する。印刷された画像は、可視スペクトルの赤色領域を含む全可視スペクトルにわたって可視光吸収を示し、この赤色インクは、典型的な自動スキャニングシステムに不可視である。この種類のインクは、例えば、米国特許公開第2003/0041774号、米国特許公開第2002/0195586号、及びJudith D、Auslander、Mike Chenの名前で2004年6月22日に出願されて同一出願人による同時継続出願の「インクジェット印刷に有用な感光性の光学的可変性インク組成物」という名称の米国特許出願第10/873,319号に説明されている。これらのインクは、「クラフト」又は「マニラ」のような濃色の紙を含む実質的に全ての従来の基体上で許容されるPCS(印刷コントラスト信号)を達成することになる。PCSという用語は、印刷反射率差(PRD)と基体反射率の比率を意味し、PRDは、紙の反射率とインクの反射率との差である。これら及び他の郵便用語には、「米国郵政公社(USPS)」によって定義された意味が与えられる。これらのインクは、情報を有するチケット、タグ、ラベル、郵便料証印、及び同様のセキュリティマーキングの様々な種類の自動検出装置に用いることができる。
【0004】
郵便物又は他の運送品目の発送者(センダー)又は発起人を簡単かつ有効に識別することには多くの理由があり、高レベルの信頼度を正当化するために非常に高度なセキュリティが必要とされている。郵便物の場合には、「発送者特定郵便(SIM)」マーキングを用いることが郵便の分類を助けるのに有効であり、これを用いて料金及び他の情報を確認することができる。セキュリティが重要である場合には、POVインクを用いると、有用な付加的なセキュリティ層を設けることができる。みかけは上述の種類のPOVインクに見えるが、付加的な容易に検出することができないセキュリティ機能を有するインクを有することが望ましいであろう。この種類のインクは、管理された供給元から入手可能である場合、及び特に調製を認定ユーザに相関させるセキュリティ方法と共に用いられる場合に特別な価値を有することができると考えられる。このようなインクにより、信頼される発送者からの大量の郵便物を迅速に選別する郵便分類機能が可能になり、それによってセキュリティ選別のために全ての郵便物を特別に処理する必要性が低減又は消失すると考えられる。
【0005】
「蛍光セキュリティマーキング」という用語は、本明細書で用いる場合、UV光のような短波長の励起光に曝されると、スペクトルの定められた領域で蛍光を発するセキュリティマーキングを意味する。入射励起光と蛍光発光の間の波長のシフトにより、蛍光が直接反射から明らかに区別される。上述のPOVインクは、可視画像と一致する蛍光セキュリティマーキングを提供することができ、それによって特にインクが制御を受けてその入手可能性が制限されている場合に検出して複写することを非常に困難にするが、このようなインクを偽造することを更に困難にし、法医学的追跡に好適な独特な「フィンガプリント」を提供することができるようにする困難に対処する必要がある。本発明は、セキュリティの付加的な層を加え、それらに燐光を発生させ、残存する検出可能な固有の発光を提供する。
【0006】
反射可視光と、紫外線(UV)励起のような短波長での励起からもたらされるセキュリティマーキングからの蛍光発光とに応答する自動検出装置は公知である。検出装置によってこれらのインクを用いると、蛍光及び証印画像が物理的に一致することを検証することができる。これらはまた、容易に可変性の情報を提供するためにインクジェット印刷も可能である。これらは、様々な基体上で高速で実行されて高速検証することができる容易に可変性のセキュリティマーキングを提供することができる蛍光セキュリティマーキングに適応する非常に小さな部類を形成する。高速フェイサー/キャンセラー機械(facer/canceller machine)に現在用いられる検出装置は、FIMを読み取り、郵便料金印の赤色蛍光及び切手の緑色燐光を検出することができる。現在、赤色燐光に割り当てられた機能はなく、このような特徴を有するセキュリティPOVインクは存在しない。
【0007】
カスタマイズ可能で追跡可能な特性を有するセキュリティシステムの提供を更に強化する独特の組成を有効なセキュリティに提供する付加的なPOVインクが必要とされている。
【発明の開示】
【0008】
本発明の目的は、新しい感光性の光学的可変性インクを提供することである。
【0009】
本発明の目的は、可視、蛍光、及び燐光特性の組合せを有する新しいインクを提供することである。
【0010】
本発明の別の目的は、セキュリティマーキング及びそれを用いるセキュリティ方法に有効な新しいPOVインクを提供することである。
【0011】
本発明の別の目的は、独特の光学的及び物理的特性を有し、法医学的に識別して追跡することができる独特のフィンガプリントを提供する際の使用を高めて、可視、蛍光、及び燐光特性の組合せを用いる安全インクを提供することである。
【0012】
本発明の別の目的は、赤色燐光を示すPOV安全インクを提供することである。
【0013】
本発明の別の目的は、その特徴を予め知っていなければ複写することができず、かつ専門の機器でのみ検出可能な画像を印刷することができる安全インクを提供することである。
【0014】
本発明の更に別の目的は、自動分類機器の信頼性を強化する独特の光学的及び化学的特性を有するPOV安全インクを提供することである。
【0015】
本発明の更に別の目的は、インクに固有のフィンガプリントを提供するために非常に低濃度、例えば6%未満、及び好ましくは1%未満で有効であるような特定の署名を有するPOV安全インクを提供することである。
【0016】
本発明の更に別の目的は、複雑で安全な署名を形成する幅広い1つ以上の蛍光ピークと共に、署名機能として鋭い蛍光スパイクを示すPOV安全インクを提供することである。
【0017】
本発明の別の目的は、安全なセンダーが特定されている郵便を作成するための手段としてインクジェット印刷で印刷することができる新しい種類のPOVインクを提供することである。
【0018】
本発明の更に別の目的は、郵便分類機器がトラステッドセンダー(trusted sender)からの大量の郵便物を迅速に選別し、それによってセキュリティ選別のために全ての郵便物を特別に処理する必要性を低減又は消滅させることを可能にするようになったPOVインクを提供することである。
【0019】
本発明の別の目的は、法医学的に識別して追跡することができ、かつインクジェット印刷により様々な紙のきめ及び色に印刷して易可変性情報をマーキングの中に提供することができる独特なフィンガプリントを提供する際のその使用性を強化するために、可視光及び別のUV励起発生蛍光及び燐光の特性の独特な組合せを有する新しい種類のPOVインクを提供することである。
【0020】
上記及び他の目的は、インク組成物、それを用いる方法、及び得られる製品を提供する本発明によって達成される。
【0021】
本発明のインクは、水性であり、蛍光-励起電磁線に曝されると蛍光を示す暗色の機械読み取り可能マーキングを生成することができ、また、好ましくは赤色範囲で検出可能に燐光性であり、インクジェット印刷に用いるのに適切な粘性及び表面張力を有するものである。これらは、(a)蛍光-励起電磁線により励起されると固有の発光帯内で光を放射する蛍光染料及び/又は顔料を含む第1の着色剤、(b)暗色を生じることになる方法で第1の着色剤の固有の発光帯と重なるか又はそれよりも長い波長に光吸収帯を有する染料及び/又はコロイド顔料を含む第2の着色剤、(c)セキュリティ識別に有効な検出可能な量の蛍光/燐光組成物、及び(d)インクジェット印刷によりインクを予め決定されたパターンで基体に適用するのに有効なインク粘性及び表面張力を達成するのに十分な量の水及び水溶性ビヒクルを含む水性液体ビヒクルを含む。選択される燐光組成物は、希土類成分の1つ又はそれよりも多くの化学種を含む希土類組成物であることになる。
【0022】
本発明の方法は、上述のインクをインクジェットプリンタに設けて、好適な基体上にインクで画像を印刷することにより、可視、蛍光、及び燐光成分を有する画像を印刷する工程を含む。
【0023】
別の方法的特徴においては、本発明は、(a)上述のインクで画像を印刷する工程、(b)画像に白色光を照射する工程、(c)白色光を照射された時に画像を読み取る工程、(d)画像に紫外線を照射する工程、(e)赤色蛍光検出器で画像を読み取る工程、(f)赤色蛍光検出器で読み取った画像を基準値と比較する工程、(g)工程(f)での比較に基づいて制御信号を発生させる工程、(h)紫外線照明を終了する工程、(i)赤色燐光検出器で画像を読み取る工程、(j)赤色燐光検出器で読み取った画像を基準値と比較する工程、及び(k)工程(j)との比較に基づいて制御信号を発生させる工程を含むセキュリティ方法を提供する。
【0024】
本発明のインク及びそれを用いる方法、並びに得られる製品は、インクが、固有の異なる発光スペクトルを有する2つの希土類種を含み、インクが、約100nm未満、例えば約70〜80nmの発光帯幅、及び第一ピーク及び第二ピークに対して約10nm未満の発光帯幅を示し、インクが、第一蛍光ピーク及び第二発光ピークの右側に燐光スパイクを示す希土類組成物を含み、インクが、インクの質量の5%未満の濃度で存在する時に検出可能な燐光を示す希土類組成物を含むといったいくつかの好ましい態様を有し、その更に他のものは、以下に説明し、実施例及び添付図面に示されている。
【0025】
本発明は、特に添付図面に照らして読む時に以下の説明からより良く理解され、その利点が更に明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明は、インクジェット印刷を含む様々な印刷手段により画像を印刷することができる新しい感光性の光学的可変性(POV)インクに関する。「感光性の光学的可変性」という用語は、インクが、短波長光で励起されると特定の波長範囲で蛍光を発する印刷した視覚的に黒又は濃灰色の機械読み取り可能な情報を有するマーキングを提供することができることを意味する。印刷された画像は、可視スペクトルの赤色領域を含む全可視スペクトルを通して可視光吸収を示し、赤色インクは、典型的な自動走査システムに不可視である。この種類のインクは、例えば、米国特許公開第2003/0041774号、米国特許公開第2002/0195586号、及びJudith D.Auslanderの名前で2004年6月22に出願され、同一出願人の同時係属の「インクジェット印刷に有用な感光性の光学的可変性インク組成物」という名称の米国特許出願第10/873,319号に説明されている。本明細書に説明するインクに関しては、本発明のインクは、可視及び紫外線の両方で可視的であり、物理的に一致するポジ及びネガ画像を有することができる画像を生成することができる。しかし、本発明のインクは、付加的な機能性を提供し、可視、蛍光、及び燐光特性の独特の組合せを有する。本発明のインクの利点は、インクの特性を予め知らなければ複写することができず、特別に設計された機器でのみ検出可能なセキュリティマークを印刷することができることである。
【0027】
本発明のインクは、いくつかのインクジェット印刷作業に用いることができ、可視の暗色及び蛍光の画像を生じる。本発明のインクは、本発明のインクを基体に印刷することによって可能になった可視及び蛍光両方の画像を提供し、すなわち、可視光により照らされると反射する印刷した基体の画像、紫外線で励起すると蛍光を発する同じ印刷した基体の画像である。本発明のインクは、これに、更に第3の同時画像である燐光性の画像を提供する機能が加わる。検出可能な画像のこのような組合せは、独特で、いくつかの有用性のために非常に有利であり、そのうちのいくつかは本明細書に説明する。好ましい一態様では、インクは、固有の異なる発光スペクトルを有する2つの希土類種を含むことができる。別の好ましい態様では、インクは、第一ピークに対しては約70〜80nm、第二ピークは約10nm未満の発光帯幅を示す。代替的に、インクは、第一蛍光ピーク及び第二発光ピークの右側の燐光スパイクを示す希土類種を含むことができる。代替的に、インクは、インクの質量の5%未満の濃度で存在する時に検出可能な燐光を示す希土類種を含むことができる。選択される燐光組成物は、希土類成分の1種以上の化学種を含む希土類組成物とされることになる。他の好ましい態様は、以下に説明されており、実施例及び添付の図面に示されている。
【0028】
郵便料金証明の分野でのPOVセキュリティマーキングの適用は、紫外線を照らすとスペクトルの赤色領域で蛍光を発し、照明を終了すると燐光を発する黒色郵便料金証印である。例えば、POVセキュリティマーキングは、反射光で走査し、マーキングを可視光で照らすことによって得られる画像が、セキュリティマーキングの印刷された領域に一致する暗色の領域を提供し、紫外線(UV)照射の下、蛍光で走査された画像が、印刷した領域に一致する走査した画像の光の領域になるデータマトリックスバーコードを提供することができる。蛍光画像は、反射画像のネガであり、すなわち、この2つの画像の間には強い負の関係がある。これらの容易に見ることができる画像に対して、本発明は、基本黒色蛍光インクの主要蛍光画像よりも帯幅が狭くて異なる波長にピークを有し、燐光も示す蛍光発光の区別可能な狭い帯を設けることによって別の一連の特徴を付加するが、この付加された特徴の両方は、低濃度の希土類金属組成物で生じるものである。
【0029】
発送者を識別する様々な文書を含む郵便払い込み及び他のセキュリティに依存する用途のような郵便料金メータを用いる用途を評価するためには、法医学的特性が重要である。郵便又は他の輸送品の発送者又は送信元を簡単かつ有効に識別する機能は、多くの状況で価値がある可能性がある。郵便の場合には、発送者特定郵便(SIM)マーキングを用いると、分類を助けるのに有効であり、これを用いて料金及び他の情報を検証することができる。本発明のインクは、有用な付加的なセキュリティレベルを設けることができ、この存在は、偽造者には容易に識別可能ではない。この種類のインクは、管理された供給元を通して利用可能にすることができる特別な利点がある。認定ユーザに調製を相関させるセキュリティ方法に用いると、更に高レベルのセキュリティを得ることができる。本発明のインクは、大量の郵便物を迅速に選別し、信頼される発送者からの郵便物を迅速に分離する郵便分類機能を可能にすることができ、それによってセキュリティ選別のために個々の郵便物を特別に処理する必要性が低減又は消失する。それにより、セキュリティを低減することなく費用を削減することができる。
【0030】
上述のPOVインクでのように、本発明は、通常用いられるものに加えて、反射可視光と、紫外線(UV)励起のような短波長で励起されることによるセキュリティマーキングから生じる蛍光発光とに応答する自動検出器を利用することができる。従って、本発明のインクを用いて、蛍光及び可視画像が物理的に一致することを検証することができる。更に、これらは、易可変性情報を提供するためにインクジェット印刷することができる。これらは、様々な基体に高速で実行して高速検証することができる易可変性セキュリティマーキングを設けることができる蛍光セキュリティマーキングのための非常に小さな部類を形成する。本発明は、赤色燐光検出器及び検出した蛍光及び燐光画像の組合せを機械読取りに適するフォーマットで印刷したユーザの識別情報に相関させる制御論理を含むシステムに用いる場合には、その利用を更に安全にする。
【0031】
高速フェーサー/キャンセラー機械に現在用いられる検出器は、FIMを読み取り、切手の赤色蛍光及び緑色燐光を検出することができる。現在、赤色燐光のための割り当て機能は存在せず、このような特徴を有するセキュリティPOVインクも存在しない。本発明のインクは、赤色燐光の検出器と共に用い、高速分類作業で新しいレベルのセキュリティを達成することができる。信頼される発送者からの郵便及び他のものは、確実に識別し、機械的に分類することができる。
【0032】
本発明のインク組成物は、蛍光顔料又は染料混合物(可溶性及び/又は組み込み染料)を含む第1の着色剤、及び重なるか又はより長い波長の吸収着色剤(染料及び/又は顔料)を有する第2の着色剤を蛍光/燐光成分、例えば有機金属組成物、特にユーロピウム及びテルビウムの錯体のような1種以上の希土類錯体と組み合わせて用いる。この組合せにより、暗色、好ましくは黒色又は灰色の可視インク画像が得られ、これは、検出可能な一致する蛍光及び燐光画像も提供する。
【0033】
本発明のインクに有用な蛍光/燐光組成物化学種には、特に希土類の燐光特性を有する金属、すなわち、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウムを含むランタニド系列の金属、並びにアクチニウム、トリウム、プロトアクチニウム、ウラン、ネプツニウム、プルトニウム、アメリシウム、キュリウム、バークリウム、カリホルニウム、アインスタイニウム、フェルミウム、メンデレビウム、ノーベリウム、及びローレンシウムを含むアクチニド系列の金属を含むものが含まれる。特に、燐光組成物は、有機金属燐光成分、特にユーロピウム及びテルビウムの錯体のような1種以上の希土類錯体を含むことになることが好ましい。これらの組成物は、一般的に、希土類三価イオンの役割を有する有機配位子を含み、従って、三価イオンから有機配位子にエネルギ移動錯体を与え、従って、基底状態から励起状態まで効率的に遷移して再び基底状態まで戻り、強い蛍光信号が生じる。これらの組成物は、特に活性化物質として、非燐光金属成分及び燐光金属成分を含むことができる。本発明の利点は、これらの材料を組成物により提供される法医学的署名を識別するのに有効な質量比、例えば、1:100〜約100:1の範囲で用いることができることである。典型的な濃度は、約0.1〜10%の範囲、好ましくは、2〜6%の範囲とされることになる。
【0034】
蛍光/燐光材料の場合には、減衰性の測定値を観察して基準値と比較し、識別の失敗又は承認のいずれかを示す制御信号を得ることができる。燐光体及び蛍光体の混合物を組み合わせて用いて照射に対するそのそれぞれの応答を観察し、基準値と比較して制御信号を発生させることができる。特に関心が持たれる材料は、天然の無機であり、希土類イオンが増感体及び活性体として存在する結晶格子を含む。これらの材料の励起及び発光特性は、用いた希土類イオンの固有の特性である。これらの対応する光学吸収及び発光過程は、それぞれの希土類イオンの不完全に充填された4f殻内の電子遷移に起因し得る。希土類イオンは、狭い帯の光学吸収及び発光スペクトルを有し、これが、結晶格子の性質と大部分無関係であるために有利である。帯が鋭く分離しており、結晶格子との相互作用が小さいために、通常は、発光色の彩度が高く、発光量子収率が大きくなることになる。
【0035】
従って、本発明のインクは、紫外線のような短波長光で励起されると蛍光を発し、このような照明が終了すると固有の狭い帯内で固有の減衰速度で燐光を発する可視の暗色印刷物を生成する感光性の光学的可変性(POV)インクである。好ましくは、インクは、固有の異なる発光スペクトルを有する2つの希土類種を含み、このインクの発光帯幅は、第一ピークに対して約70〜80nmを示し、第二ピークは約10nm未満である。望ましくは、インクは、第一蛍光ピーク及び第二発光ピークの右側の燐光スパイクを示す希土類種を含む。好ましい燐光組成物は、インクの質量の5%未満の濃度で存在する時に検出可能な燐光を示すことができる希土類種を含むことになる。好ましい燐光インクには、一例として、Lumilux CD 380及びLumilux CD E−9574として入手可能な市販の材料が挙げられるようなユーロピウム又はそれを含む錯体に基づくインクが含まれ、その最初のものは、一般的に約5%まで、例えば0.5〜3%で用いられ、第2のものは、それよりも高濃度で、一般的に約12%まで、例えば1〜5%で用いられる。好ましい組成物は、以下の実施例4に例示されるように両方の組成物を共に用いる。
【0036】
本発明のインクは、固有の特性を備えた一致する可視、蛍光、及び燐光画像という目標を達成するために少なくとも2つの区別可能な着色剤部分を含むことになる。第1の着色剤部分は、蛍光-励起電磁線により励起されると固有の発光帯で光を放つ蛍光顔料及び/又は染料を含むことになる。赤色の蛍光が好ましい。蛍光染料は、インクを可視色にするのに必要な寄与をすると共に機械検出可能な蛍光画像を生じるのに有効な濃度で製剤に存在することになる。第1の着色剤に適切な蛍光染料には、本明細書の目的を満たす染料が含まれ、これらは、上述の米国特許公開第2002/0195586号及び第2003/0041774号及び「インクジェット印刷に有用な感光性の光学的可変性インク組成物」という名称の上述の現在特許出願中の米国特許出願第10/873,319号に説明している。従って、本発明は、水溶性であると共にポリマー組み込みの蛍光染料を用いることができる。言及した文献は、代表的な組成物を列挙しており、使用濃度を例示して説明している。
【0037】
好ましい水溶性蛍光染料には、赤色蛍光及びインク組成物のインクに暗色を生じさせる適切な強度の可視色を特徴とする染料が含まれる。この部類の最も好ましい染料は、赤色〜緑色の可視色を有し、500〜680nmの範囲の光を放つことによって蛍光を発する。好ましい黄色又はオレンジの蛍光染料成分(FY)は、陰イオン性クマリン、陽イオン性クマリン、陰イオン性ナフタルイミド染料、ピラニン(陰イオン性ピレン染料)、中性、陰イオン性及び陽イオン性ペリレン染料、及び陰イオン性キサンテン染料のような発色系に基づくことができる。いくつかの好ましい黄色又はオレンジの蛍光染料は、例えば、米国特許公開第2002/0195586号の図13に示すような陰イオン性クマリン、陽イオン性クマリン、クマリンスルホン酸、陰イオン性ナフタルイミド、中性ペリレン、陽イオン性ペリレン、陰イオン性ピロニン、及び陰イオン性ナフタルイミド染料である。有用な赤色及び紫の蛍光染料には、例えば、米国特許公開第2002/0195586号の図14に示すような陰イオン性キサンテン染料、ビスピロメタンホウ素錯体、陽イオン性及び双性イオンピロニン、及びスルホローダミンB(SRB)が含まれる。アシッドレッド52は、適切な水溶性マゼンタ染料である。アシッドレッド52染料は、通常用いる時には、水中で満足できる溶解性はあるが、水堅牢度は非常に低い。従って、マゼンタアシッドレッド52染料の不利な点は、このような染料を含むインクは、水に露出されると滲み出すことである。有用な黄色及びオレンジ染料には、アシッドイエロー7、クマリンスルホン酸、陽イオン性クマリン、陰イオン性クマリン、中性、陰イオン性及び陽イオン性ペリレン染料、陰イオン性ナフタルイミド染料、及びピラニン染料が含まれる。これらの染料の重要な特性は、蛍光特性に優れた暗色インクを形成する機能である。効果のあるものとして、これら及び米国特許公開第2003/0041774号に特定される他の染料を用いることができる。
【0038】
黒色インクにするためには、本発明の着色剤混合物は、全可視スペクトルにわたって390nm〜約1200nmを吸収すべきである。紫外線の望ましい領域である580〜630nmに同時に赤色蛍光を得るために、組成物は、蛍光励起電磁線、例えばUV光を効率的に吸収し、好ましくは580と630nmの間で効率的に蛍光を発するべきである。第1の着色剤染料は、コロイド状の顔料を単独で、又は第1の着色剤の固有の発光帯よりも長い波長に光吸収帯を有するか、又は第1の着色剤の発光波長とも重なり、暗色、好ましくは黒色になるように染料と共に含む本発明の第2の着色剤と組み合わせて、これらの基準を満たすように選択される。
【0039】
第2の着色剤は、機械検出可能な蛍光画像を妨げることなくインクが可視色であるのに必要な寄与をするのに有効な濃度で製剤中に存在することになる。第2の着色剤は、上述の米国特許公開第2003/0041774号及び第2002/0195586号、及び同一出願人の同時係属の米国特許出願第10/873,319号に記載されている染料及び/又は顔料のいずれかとすることができる。本発明のインクは、一般的に、適用する時にインク組成物中の第2の着色剤の質量で約1〜約5%、更に綿密には、2〜4%の濃度で(乾燥固体質量に基づく)第2の着色剤を用いる。染料及び/又は顔料は、固有の紙への浸透率を有することになり、この群の好ましいメンバーは、インクジェット印刷による印刷後に水に濡れることによって有意に鮮鋭度を失うことにならない。
【0040】
本発明のインクの第2の着色剤に用いるのに適切な着色剤には、例えば、Yu他に付与された米国特許第6,494,943号に記載されるような水分散可能コロイド状顔料が含まれる。Yuらの特許に広い意味で説明する顔料は、1種以上の望ましいパラメータ及び/又は特徴を有する着色顔料であると定義されている。これらのパラメータ及び/又は特徴には、a)粒径が約10nm〜約300nmであること、b)アキュサイザー(accusizer)数が、0.5μm(ミクロン)よりも大きな15%固体で1010粒子/ml分散未満であること、c)10%固体の着色顔料を有する液体媒体100ml中にある時に、3μm(ミクロン)ナイロンアブソルートフィルターを通って濾過されるような濾過性、d)着色顔料純度が抽出可能材料に基づいて約80%よりも大きいこと、及び/又はe)上記特徴が、25℃で少なくとも1週間50%を超えて変化しないような安定性が含まれる。同様に、本発明の好ましい顔料は、これらの特徴の1つ以上を有することを特徴とすることができる。これらに加えて、顔料は、安定性を維持するために分散剤が必要である。好ましいコロイド状顔料の1つは、カボットブルー顔料分散剤、シアン COJ 250としてカボット(Cabot)コーポレーションから入手可能である。この種の顔料は、染料の範囲まで滲み出すことにならず、しかも本発明の製剤中では、セキュリティ及び他の値の証印を押したマーキングに非常に望ましい浸透度及び水堅牢度を生じることになる。これらの顔料に加えて、適切な特徴を有するカーボンブラックを少量又は他の暗色顔料と組み合わせて用いることができる。カーボンブラックが唯一の暗色顔料又は着色剤になる場合には、ある程度蛍光を消光する傾向があるが、これは、燐光も消光されない一部の状況では有利である可能性がある。カーボンブラックが用いられる場合、一般的にインクの約5%未満、例えば約1〜3%を構成することになる。
【0041】
また、第2の着色剤は、例えば、米国特許公開第2003/0041774号に説明するように、1つ又はそれよりも多くの適切に着色した水溶性染料を含むことも好ましいことになる。これらには、インクジェット用途に精製された酸性及び直接染料、例えば、CI Acid Blue 9、Duasyn Blue FRL−SF(Direct Blue 199)、Projetfast Cyan 2、Direct Blue 307、又は消散係数が10,000よりも大きく水溶性のあらゆる青色染料のような青色染料が含まれる。更に、染料は、可読性を維持するために印刷したインクを適切に暗色にすると共に、機械可読性をもたらすために適切な蛍光を与えながら可視範囲に望ましい色、暗度、又は色相を生じるように選択された上述の染料の1つとすることができる。
【0042】
上述の着色剤及び均等物に加えて、本発明のインク組成物は、インクジェット印刷により予め決定されたパターンでインクを基体に適用するのに有効なインク粘性及び表面張力を達成するのに十分な量で水及び水溶性ビヒクルを含む水性液体ビヒクルを含むことになる。これらの成分に典型的なものは、本明細書において引用により組み込まれている上述の特許公開に説明されている。これらのインク組成物に用いられる着色剤のためのインク担体は、少なくとも65%の水を含む。
【0043】
蛍光安定剤は、(時に蛍光を高めることによって)一定の蛍光レベルを維持するのに有効な濃度で用いることができる。低粘性インクの蛍光は、インクが紙に浸透する時に低減する可能性があるために、一定レベルの蛍光を維持するのを助けるのに有効な添加剤を含むことが好ましい。以下の溶媒、すなわち、N,N−ジメチルアセトアミド、スルホラン、ホルムアミド、メチルフェニルスルホキシド、N−メチルピロリジノン、4−メチルモルホリン−N−オキシド(MMNO)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等は、蛍光を高めることができる。これらの溶媒の全ては、誘電定数が高いか(>約20)又はヒルデブランド溶解パラメータ値が高い(δ>10MPa1/2)双極性非プロトン溶媒の特徴を有する。
【0044】
このリストからは、4メチルモルホリン−N−オキシド(MMNO)が、長期間蛍光を増大させる最高の機能を有しており、蛍光が消光する傾向がなく、純粋な時には吸湿性で高沸点の固体である。(一般的に、50〜60%水溶液として供給される。)MMNOは、セルロースに対する公知の溶媒であり、紙の繊維への浸透を助け、それによって選択的に長持ちするように蛍光を増大することができる。極性のある低分子量の樹脂(PLMWR)は、多くの場合にあまり大きな程度ではないが、上述のFS材料と異なる機構で蛍光を高めて安定させる利点がある。ポリビニルピロリドン(MW15000)及びポリエチレングリコールのような極性のある樹脂が有利である。極性染料に対して良好な溶媒特徴を備えた他の水溶性樹脂は、ポリビニルアルコール、ポリN,N−ジメチルヒダントイン、ポリアクリレート等である。
【0045】
BTG(トリエチレングリコールモノブチルエーテル)のようなグリコールエーテルは、水と他の有機溶媒との間を架橋し、内部水素結合により色及び蛍光を増強し、紙への浸透度を改善することなどの複数の有利な効果を有することができる。最も効率的なグリコールは、BTGであった。用いることができる適切なグリコールには、次のものが含まれる。すなわち、トリエチレングリコールn−ブチルエーテル(BTG)、トリプロピレングリコールメチルエーテル(TPM)、ジエチレングリコールn−ブチルエーテル(DB)、ジエチレングリコールメチルエーテル(DM)、ジプロピレングリコールメチルエーテル(DPM)等である。
【0046】
トリエタノールアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ブチルジエタノールアミン、N,Nジメチルエタノールアミン、N,Nジエチルエタノールアミン、N,Nジプロピルエタノールアミンなどのようなアミンは、染料の凝集を防ぎ、不堅牢(fugitive)対イオンとして乾燥中に蒸発することを防ぎ、従って、水堅牢度を改善し、並びに水/グリコール/エーテル混合物での溶解性を改善するのに有用とすることができる。更に、アミンは、長期放置の間に一定の粘性を維持し、並びに流動性及び容易な再分散性を維持するのにも役立つ。更に、アミンは、印刷中又は印刷中断後の再開時にノズルの目詰まりを引き起こさず、従って、高度な排出安定性を維持する。
【0047】
本発明のインク組成物は、好ましい形態で以下に示されており、これらの形態及び他の形態は、好ましくは両方とも機械読み取り可能な可視及び蛍光画像をインクジェット印刷するのに非常に有効である。更に、画像は、検出可能で好ましくは可読な燐光画像、好ましくは機械読み取り可能な赤色燐光画像も有することになる。可視画像は、正常なヒト視力で明瞭に見え、視覚範囲の光で様々な画像読取機械に用いるのに有効である。更に、画像は、着色染料又は顔料が存在するために消光しても十分に蛍光性であり、可視画像の実質的なネガである機械読み取り可能な蛍光画像を生じる。望ましくは、関連のスペクトル範囲(SROI)内、例えば、390〜680nm(可視範囲)では、インク反射率は、紙反射率の50%未満である。
【0048】
本発明のインクは、インクジェット印刷により像様に適用することができ、可視及び蛍光-励起電磁線に曝されると機械読み取り式画像を提供することができる。インクジェット印刷で有効に用いられるインクでは、適切な低粘性を有し、しかも十分な蛍光及び可視光反射率を達成して乾燥すると認識可能な画像をもたらすのに十分な固形分を有するべきである。好ましくは、乾燥インクは、各種基体上に機械読み取り可能な画像を生じることになる。
【0049】
インクは、インクジェット印刷によりインクを予め決定されたパターンで基体に適用するのに有効なインク粘性及び表面張力を達成するのに十分な量の水及び水溶性ビヒクルを含む水性液体ビヒクルを含有することになる。粘性は、一般的に約15cps未満とされることになる。熱インクジェット印刷では、粘性は、25℃でHaake ViscoTesterで測定すると1〜5cps、好ましくは2〜4cpsの範囲内であり、表面張力は、25℃でFisher Surface Tensiomatで測定すると20〜約80dyne/cm、好ましくは30〜50dyne/cmを示す必要がある。圧電手段によるインクジェット印刷では、粘性は、上述の方法で測定する時に、1.5〜15cps、好ましくは2〜12cpsの範囲とすべきである。
【0050】
本発明の好ましいインクは、短波長又は長波長のUV光で励起されると、視覚的暗色(中性黒色)、赤色蛍光信号及び赤色燐光信号を有することになる。印刷コントラスト信号PCS(PCRとも呼ばれる)は、USPSからのEnvelope Reflectance Meterで測定すると、白色及びクラフト紙では赤色又は緑色フィルタを用いると0.35よりも大きいことが好ましい。赤色フィルタを用いた白色紙では、0.45よりも大きな値、例えば0.48及びそれよりも大きく、例えば0.48〜0.6が望ましく、本質的には緑色フィルタを用いても同じ値である。クラフト紙では、緑色フィルタで0.35よりも大きく、例えば0.37〜0.5であり、赤色フィルタで0.45以上、例えば0.43〜0.6であることが好ましい。本明細書で挙げたこれに用いる試験法及び他のデータは、例えば米国特許公開第2003/0041774号に説明されている。
【0051】
PRDは、赤色及び緑色フィルタを用いると、白色及びクラフト紙に対しては0.25よりも大きいことが好ましい。白色紙に対しては、赤色フィルタを用いると、0.60以上とすることができ、緑色フィルタでは、0.55以上とすることができる。クラフト紙に対しては、赤色フィルタを用いると、0.30以上とすることができ、緑色フィルタでは、0.25以上とすることができる。従って、可視成分の光学密度は、OCRスキャナなどを用いて自動走査することができるほど十分に高い。蛍光成分は、フェーシング機器で郵便を一定方向にし、好ましくは緑色燐光切手を区別するのに用いるのに適切である。発光は、UV光で励起される時に580〜640nmの範囲の波長である。蛍光強度は、少なくとも7PMUとする必要があり、例えば、固体印刷領域に対して(39〜69)Phosphor Meter Unit(PMU)、及びドローダウンに対して50〜98PMUであり、蛍光成分は、溶媒(担体)で基体に運搬し、適切な蛍光信号強度を生じることができる。別の方法的特徴では、本発明は、本発明による好ましい処理シーケンスを示す処理流れ図を示す図18に示すようなセキュリティ方法を提供する。一般的に、処理は、(a)上述のインクで画像を印刷する工程、(b)画像に白色光を照射する工程、(c)白色光を照射された時に画像を読み取る工程、(d)画像に紫外線を照射する工程、(e)赤色蛍光検出器で画像を読み取る工程、(f)赤色蛍光検出器で読み取った画像を基準値に比較する工程、(g)工程(f)の比較に基づいて制御信号を発生させる工程、(h)紫外線照明を終了する工程、(i)画像を赤色燐光検出器で読み取る工程、(j)赤色燐光検出器で読み取った画像を基準値に比較する工程、及び(k)工程(j)の比較に基づいて制御信号を発生させる工程を含む。
【0052】
以下の実施例は、本発明を更に例示して説明するために含むものであり、いかなる意味においても制限するものと解釈されるものではない。特に示さなければ、全ての部及びパーセントは質量によるものである。
【実施例1】
【0053】
希土類金属組成物による2つの蛍光帯(1つは、黒色蛍光インクの蛍光着色剤に固有の広い発光帯であり、2番目は、希土類金属組成物の存在、即ちLumilux CD380中の、ユーロピウムによる明確な狭い蛍光発光帯である)及び燐光を示す顔料の形態で付加的なセキュリティ成分を含む本発明によるインクが、本発明により調製される。このインクを付加的なセキュリティ成分を含まない黒色蛍光インクと比較する。


【0054】

希土類金属組成物を黒色蛍光インクに加える影響は、(1)比較染料の発光スペクトルに部分的に重なる希土類金属組成物の狭い発光帯と、(2)特徴的に減衰する燐光とにより著しいセキュリティ効果を生じる。図1は、本発明の利点及び好ましい態様を示すために挙げられた蛍光発光強度を示しており、これは、発光帯幅が、第一ピークに対しては約100nm未満、例えば約70〜80nm、第二ピークは約10nm未満であることを示している。図1の場合は、低濃度(0.10及び0.26%)の希土類組成物が、カーボンブラックも含むインクに用いられ(下の実施例7参照)、独特で検出が困難な署名を与える。図2は、希土類組成物の濃度を変化させたインクの蛍光発光減衰を示すグラフである。これらの特徴を有する安全インクの正確な性質は、第一に特定の可視及び蛍光機能のみを含む従来の読取機器を用いての検出が困難である。
【実施例2】
【0055】
希土類種の濃度を0〜3%まで変化させて以下の表による一連のインクを調製し、本発明のインクと可視及び蛍光画像のみを与えることができるインクの間の性質の違いを示す手立てとする。
【0056】





【0057】

【0058】

【0059】

インクの蛍光及び燐光を判断し、結果を以下の表に示し、図3にプロットする。ここでもまた、安全インクの正確な性質は、判断するのが非常に困難である。従来の検出器でのみ蛍光を探しても、希土類種を含まないインクに比較して蛍光の有意な増大は見えることにならず、燐光が分かることにもならない。本発明によりこのように差異を生じさせたインクを提供することにより、セキュリティの層を設けることができるようになる。
【実施例3】
【0060】
本発明により実施例1のインクに類似する別のインクを調製し、希土類種を含まない同様のインクに比較する。












【0061】

【0062】

2つのインクを比較し、図4は、希土類種の様々な濃度での本発明のインクに対する蛍光の発光スペクトルを示している。
【実施例4】
【0063】
本発明によるが、異なる希土類金属組成物を用いた別の一連のインクを調製する。












【0064】

これらのインクを実施例1のインクと比較する。比較の1つでは、各々に対する蛍光の強度(254nmでの励起)を求めた。14%のCD E9574のインクは、1%のCD 380のインクと波長615nmでの蛍光が同じ強度であることが分かった。波長615nmでのインクに対する蛍光強度を図5に示している。254nmでの励起に対する蛍光の発光スペクトルを図6に示している。

希土類タガント組成物を備えた同質標識黒色蛍光インクの特性
【0065】

インクに対する蛍光強度(365nmでの励起)を測定した。発光スペクトル(図7)は、CD E−9574を備えたインクが、CD 380を備えたインクに比較して、波長615nmに加えて594nmにも付加的な強いピークを有することを示している。594nmでの蛍光強度は、3%のCD 380及び12%のCD E−9574を備えたインクに対してそれぞれ667040cps及び947415cpsである。異なる質量(%)のCD E9574を備えたインクに対する615nmでの蛍光強度を図8に示している。
【0066】
インクに対して燐光の励起スペクトルを測定した。図9は、CD E−9571を備えたインクに対する270nm及び340nmの2つの幅広いピークを示している。CD 380を備えたインクに対しては、2つのピークは、230nm及び270nmに現れる。
【0067】
燐光強度(254nmでの励起)を測定する。10%のCD E9574を備えたインクは、波長615nmで1%のCD 380を備えた他方のインクと同じ燐光強度を有する。図10及び図11を参照されたい。
【0068】

異なるパーセントのCD E9574を備えたインクに対する燐光強度を測定し、図12及び図13にグラフ的にまとめた。
【0069】
燐光の燐光強度減衰時間を測定し、図14にグラフ的にまとめた。
【0070】

【実施例5】
【0071】
この実施例は、この実施例の2つの希土類種組成物の独特な組合せを備えたインクにより、識別及び複写が著しく妨げられることを示している。以下の表には、対照のための調製及びCD 380及びCD E9574の両方を備えたインクが示されている。254nmで励起された蛍光スペクトルを対照に比較したものが図15であり、365nmで励起された蛍光スペクトルを対照に比較したものが図16であり、254nm又は365nmでそれぞれ励起されたCD 380及びCD E9574の両方を備えたインクの燐光スペクトルが図17である。

















【0072】

【0073】

【実施例6】
【0074】
希土類金属組成物による2つの蛍光帯(1つは、黒色蛍光インクの蛍光着色剤に固有の広い発光帯であり、2番目は、希土類金属組成物の存在、Lumilux CD380中のユーロピウムによる明確な狭い蛍光発光帯である)及び燐光を示す組成物の形で付加的なセキュリティ成分を含む本発明によるインクを調製する。このインクを付加的なセキュリティ成分を含まない黒色蛍光インクと比較する。








【0075】

【0076】

黒色蛍光インクに希土類金属組成物を加える結果、著しいセキュリティ効果が生じ、これは、実施例1と同様である。
【実施例7】
【0077】
この実施例では、本発明によるが、カーボンブラックを含む別のインクを調製し、これをカーボンブラックを有するが、希土類組成物を含まない同様のインクに比較する。インクは、次の材料で調製する。













【0078】

インクを試験し、次のことが示された。
【0079】

【0080】
インクは、希土類組成物(CD380)の濃度を変化させた同様の処方のインクに対しては次の表に示す蛍光及び燐光強度(254nmで励起)を示している。

染料及びカーボンブラックを用いるBFインクに対して「LUMILUX CD380」が蛍光及び燐光に及ぼす効果
【0081】

注:
*強度は、Fluorolog−3で測定した。
**強度は、Perkin LS 50Bで測定した。
【0082】
蛍光強度(365nmで励起)

*強度は、Fluorolog−3で測定した。
【0083】
蛍光及び燐光に対するPMU
【0084】

*強度は、Fluorolog−3で測定した。
【実施例8】
【0085】
本発明による一連のインクを調製して評価する。以下の表は、希土類組成物の質量パーセントに対する発光強度を示している。
【0086】

以上の説明は、当業者が本発明を実施することを可能にするものである。これは、当業者がこの説明を読むと明らかになると考えられる可能な修正及び変形の全てを詳述することを意図していない。しかし、これらの修正及び変形は、以上の説明に見られ、そうでなければ特許請求の範囲によって規定される本発明の範囲に含まれることが意図されている。特許請求の範囲は、内容に特に矛盾しなければ本発明に意図する目的を満たすのに有効なあらゆる配置又は順序の指示した要素及び工程を含むものとする。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】実施例1に説明したものと同様であるが低レベルの希土類組成物を含有する本発明のインクに対する蛍光発光強度を示すグラフであり、第一ピークに対して発光帯幅が約100nm未満、例えば約70〜80nm、第二ピークに対して約10nm未満を示す。
【図2】実施例1のインクに対する燐光減衰を示すグラフである。
【図3】実施例2のインクに対して希土類組成物濃度に伴う燐光及び蛍光の変化を示すグラフである。
【図4】実施例3による本発明のインクに対する蛍光発光スペクトルを示すグラフである。
【図5】実施例4に示すような異なる希土類種を備えた本発明の2つのインクの間の蛍光強度の比較を示すグラフである。
【図6】実施例4のインクと同質インクに対する蛍光の発光スペクトルを示す図である。
【図7】実施例4のインクに対する蛍光の発光スペクトルを示す図である。
【図8】実施例4のインクに対する波長615nmでの蛍光強度を示す図である。
【図9】実施例4のインクの間の燐光の励起スペクトルの比較を示す図である。
【図10】実施例4のインクに対する波長615nmでの燐光強度を示す図である。
【図11】実施例4のインクの間の燐光の発光スペクトルの比較を示す図である。
【図12】実施例4のインクに対してドローダウンの燐光の発光スペクトルを示す図である。
【図13】実施例4のインクに対してドローダウンの燐光の発光スペクトルを示す図である。
【図14】実施例4のインクの燐光強度対減衰時間を示す図である。
【図15】対照に比較した254nmで励起した蛍光のスペクトルを示す図である。
【図16】対照に比較した365nmで励起した蛍光のスペクトルを示す図である。
【図17】254nm又は365nmでそれぞれ励起されたCD 380及びCD E9574の両方を備えたインクの燐光のスペクトルを示す図である。
【図18】本発明による1つの好ましい処理シーケンスを示す処理流れ図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光-励起電磁線に曝されると、蛍光を示す暗色の機械読み取り可能な画像を含む安全なマーキングを提供することができ、インクジェット印刷に用いるのに適切な粘性及び表面張力を有する水性インクであって、
(a)蛍光-励起電磁線により励起されると固有の発光帯内の光を放出する蛍光染料及び/又は顔料を含む第1の着色剤、
(b)暗色をもたらすような方法で前記第1の着色剤の固有の発光帯に重なるか又はそれよりも長い波長の光吸収帯を有する染料及び/又はコロイド状顔料を含む第2の着色剤、
(c)セキュリティ識別に有効な検出可能な量の蛍光/燐光希土類組成物を含む第3の成分、及び
(d)インクジェット印刷によって予め決定されたパターンでインクを基体に適用するのに有効なインク粘性及び表面張力を達成するのに十分な量の水及び水溶性ビヒクルを含む水性液体ビヒクル、
を含むことを特徴とするインク。
【請求項2】
前記蛍光/燐光組成物が、ユーロピウムの組成物を含む請求項1に記載のインク。
【請求項3】
前記第2の着色剤が、コロイド状顔料を含む請求項1に記載のインク。
【請求項4】
前記着色剤が、白色封筒基体上にドローダウンした後の乾燥した画像が、50〜99+PMUの蛍光強度を示すように選択される請求項1に記載のインク。
【請求項5】
15cps未満の粘性を示す請求項1に記載のインク。
【請求項6】
前記インクが、固有の異なる発光スペクトルを有する2種の希土類種を含む請求項1に記載のインク。
【請求項7】
前記インクが、第一ピークに対して約70〜80nmの発光帯幅及び約10nm未満の第二ピークを示す請求項1に記載のインク。
【請求項8】
希土類種が、第一蛍光ピーク及び第二発光ピークの右側に蛍光スパイクを示す請求項1に記載のインク。
【請求項9】
希土類組成物が、インクの質量に対して5%未満の濃度で存在する時に、検出可能な燐光を示す請求項1に記載のインク。
【請求項10】
セキュリティマーキングを基体上に印刷する方法であって、
インクジェットプリンタに請求項1に記載のインクを提供することによって、可視、蛍光、及び燐光成分を有する画像を印刷する工程、及び該インクで基体上に画像を印刷する工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項11】
前記燐光成分が、ユーロピウムの組成物を含む請求項10に記載の方法。
【請求項12】
第2の着色剤が、コロイド状顔料を含む請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記インクが、第一蛍光ピーク及び第二発光ピークの右側に燐光スパイクを示す希土類種を含む請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記希土類種が、前記インクの質量の5%未満の濃度で存在する時に検出可能な燐光を示す請求項13に記載の方法。
【請求項15】
セキュリティ方法であって、
(a)請求項1に記載のインクで基体上に画像を印刷する工程、
(b)前記画像に白色光を照射する工程、
(c)白色光を照射された時に前記画像を読み取る工程、
(d)前記画像に紫外線を照射する工程、
(e)前記画像を赤色蛍光検出器で読み取る工程、
(f)前記赤色蛍光検出器で読み取った前記画像を基準値と比較する工程、
(g)前記工程(f)での比較に基づいて制御信号を発生させる工程、
(h)紫外線照射を終了する工程、
(i)前記画像を赤色燐光検出器で読み取る工程、
(j)前記赤色燐光検出器で読み取った前記画像を基準値とを比較する工程、及び
(k)前記工程(j)での比較に基づいて制御信号を発生させる工程、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項16】
読み取った前記画像によって発生した信号をトラステッドセンダーに対する基準値と相関させる更なる工程を含む請求項15に記載の方法。
【請求項17】
複数の郵便物を迅速に選別し、かつ前記読み取った画像によって発生した信号を使用してトラステッドセンダーからの郵便物をトラステッドセンダーからのものとして識別されない郵便物から分離する手段を始動する更なる工程を含む請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記基体が、郵便物であり、前記画像は、フェーサーキャンセラーによって読み取られる請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記画像が、選択的に励起され、かつ蛍光及び燐光に対して試験される請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記インクは、固有の異なる発光スペクトルを有する2種の希土類種を含む請求項15に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公表番号】特表2008−503643(P2008−503643A)
【公表日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−518121(P2007−518121)
【出願日】平成17年6月15日(2005.6.15)
【国際出願番号】PCT/US2005/021131
【国際公開番号】WO2006/009739
【国際公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(506118537)ピットニイ ボウズ インコーポレイテッド (8)
【Fターム(参考)】