説明

羽根駆動装置及び光学機器

【課題】簡易な構造でシャッタスピードが向上した羽根駆動装置及びそれを備えた光学機器を提供することを課題とする。
【解決手段】ロータの回転角度範囲は、ステータが励磁されることによって回転し得る前記ロータの全回転角度範囲よりも小さい作動角度範囲に制限されており、前記ロータが作動角度範囲の第1端に位置している場合には、羽根は前記開口に重なり、前記ロータが前記作動角度範囲の第2端に位置している場合には、前記羽根は前記開口から退避しており、作動角度範囲は、ロータの回転角度範囲が制限されていない場合に前記ロータが前記第1方向に回転する場合での全回転角度範囲中での前記ロータのトルクの最大値となる位置を含んでおり、付勢部材は、少なくとも前記作動角度範囲の途中位置から第1端までの区間で前記ロータを前記第2方向に直接又は間接的に付勢する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、羽根駆動装置及び光学機器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、開口を有した基板と、開口を開閉する羽根と、羽根が開口を閉じるように羽根を付勢する付勢部材と、を備えた羽根駆動装置が記載されている。付勢部材は羽根が開口を閉じるように付勢をしているので、羽根が開口に進行するスピードが向上している。これによってシャッタスピードが向上している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−347241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしなら、このような羽根駆動装置において羽根を開口から退避した退避位置で維持させる場合には、付勢部材の付勢力に抗して羽根を退避位置に維持させる必要がある。例えば、アクチュエータへ通電がされていない場合のロータのディテントトルクにより羽根を退避位置に維持させる場合には、ロータのディテントトルクが大きいアクチュエータを用いる必要がある。このようなアクチュエータは大型である。また、ストッパや別の機構を用いて羽根を退避位置に維持させる場合には、羽根駆動装置の構造が複雑化し、場合によっては製造コストも増大する。
【0005】
そこで本発明は、簡易な構造でシャッタスピードが向上した羽根駆動装置及びそれを備えた光学機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、付勢部材と、開口を有した基板と、前記開口に対して進退自在な羽根と、ステータ、前記ステータが励磁されることにより回転すると共に前記羽根を駆動するロータ、を含むアクチュエータと、を備え、前記ロータが第1方向に回転する場合は、前記羽根が前記開口に進行し、前記ロータが第2方向に回転する場合は、前記羽根が前記開口から退避し、前記ロータの回転角度範囲は、前記ステータが励磁されることによって回転し得る前記ロータの全回転角度範囲よりも小さい作動角度範囲に制限されており、前記ロータが前記作動角度範囲の第1端に位置している場合には、前記羽根は前記開口に重なり、前記ロータが前記作動角度範囲の第2端に位置している場合には、前記羽根は前記開口から退避しており、前記作動角度範囲は、前記ロータの回転角度範囲が制限されていない場合に前記ロータが前記第1方向に回転する場合での前記全回転角度範囲中での前記ロータのトルクの最大値となる位置を含んでおり、前記付勢部材は、少なくとも前記作動角度範囲の途中位置から前記第1端までの区間で前記ロータを前記第2方向に直接又は間接的に付勢する、羽根駆動装置によって達成できる。
【0007】
ロータの作動角度範囲は、ロータが第1方向に回転する場合での全回転角度範囲中での前記ロータのトルクの最大値となる地点を含むことにより、ロータが第1方向に回転している際のトルクを確保できる。これにより、羽根が開口に進行する際の羽根のスピードを確保でき、シャッタスピードが向上している。
【0008】
また、付勢部材は、ロータの作動角度範囲の第1端から途中位置までの区間でロータを第2方向に直接又は間接的に付勢しているため、ロータの第2方向への回転を補助する。
【0009】
上記目的は、上記羽根駆動装置を備えた光学機器によっても達成できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、簡易な構造でシャッタスピードが向上した羽根駆動装置及びそれを備えた光学機器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、実施例1の羽根駆動装置の分解斜視図である。
【図2】図2は、羽根駆動装置の斜視図である。
【図3】図3は、羽根駆動装置の斜視図である。
【図4】図4は、全開状態の羽根駆動装置の説明図である。
【図5】図5は、全開状態と全閉状態との途中の状態の羽根駆動装置の説明図である。
【図6】図6は、全閉状態の羽根駆動装置の説明図である。
【図7】図7A〜7Dは、ロータの回転の説明図である。
【図8】図8は、実施例1の電磁アクチュエータでのロータの回転角度に応じたトルクの変動を示したグラフである。
【図9】図9は、従来の電磁アクチュエータでのロータの回転角度に応じたトルクの変動を示したグラフである。
【図10】図10は、作動角度範囲の変更例を示している。
【図11】図11は、実施例2の羽根駆動装置の説明図である。
【図12】図12は、実施例2の電磁アクチュエータでのロータの回転角度に応じたトルクの変動を示したグラフである。
【図13】図13は、実施例3の羽根駆動装置の説明図である。
【図14】図14は、実施例3の羽根駆動装置の説明図である。
【図15】図15は、実施例3の羽根駆動装置の説明図である。
【図16】図16は、実施例4の羽根駆動装置の説明図である。
【図17】図17A、17Bは、実施例4の羽根駆動装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に複数の実施例について説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は、実施例1の羽根駆動装置1の分解斜視図、図2、3は、羽根駆動装置1の斜視図である。羽根駆動装置1は、カメラなどの光学機器に採用される羽根駆動装置である。羽根駆動装置1は、いわゆるフォーカルプレーンシャッタである。羽根駆動装置1は、基板10、複数の羽根20、アーム30a、30b、付勢部材40a、40b、電磁アクチュエータA、駆動部材90a、90bを備えている。基板10には、開口OPが設けられている。被写体側の光は開口OPを通過し、カメラ側に設けられたCCDやCMOSセンサ等の撮像素子へ入射する。これにより撮像素子で結像される。基板10は、第1面11、第2面12を有している。電磁アクチュエータAは、第1面11側に配置され、羽根20は、第2面12側に配置される。羽根20は、いわゆる後幕を構成する。羽根駆動装置1は、先幕の機能を撮像素子の露光タイミングを制御する事により実現する電子先幕と称される機能を備えたカメラ用フォーカルプレーンシャッタである。尚、本実施例では、上述したように後幕のみを有するフォーカルプレーンシャッタについて説明するが、本発明は、この形態に限るわけではなく、先幕および後幕を有するフォーカルプレーンシャッタに適用しても良い。その場合、後幕と同様の機構で、先幕を作動させるようにすれば良い。
【0014】
アーム30a、30bは、第2面12側に形成された支軸13a、13bを支点として揺動可能である。尚、支軸13bには、図1に示す回転部材50bが回転可能が嵌合し、回転部材50bにはアーム30bの嵌合孔35bが嵌合する。尚、図示しないが、支軸13aにも同様の回転部材が嵌合し、この回転部材にアーム30aの嵌合孔35aが嵌合する。アーム30a、30bは、それぞれ複数の羽根20に連結されている。アーム30a、30bは、並行リンクとして機能する。付勢部材40a、40bは、トーションバネである。付勢部材40a、40bについては後述する。
【0015】
電磁アクチュエータAは、基板10に回転可能に支持されたロータ60、ロータ60との間で磁力が作用することによりロータ60を回転させるステータ70、ステータ70を励磁させるためのコイル85、コイル85が巻回されてステータ70に組み付けられたコイルボビン82、を含む。ロータ60と対向するステータ70の両端部には、それぞれ磁極部72a、72bが形成されている。コイル85が通電されることにより、磁極部72a、72bは、互いに異なる極性に励磁される。また、ロータ60は、周方向に異なる極性に着磁されている。磁極部72a、72bとロータ60との間に作用する磁気的吸引力、反発力により、ロータ60は所定の範囲を回転する。
【0016】
駆動部材90aは、ロータ60の端部に嵌合する嵌合孔94aを有しており、ロータ60と共に回転する。駆動部材90aには、ギア部95aが設けられている。駆動部材90bは、基板10の第1面11側で回転可能に支持されている。駆動部材90bには、基板10の第1面11に形成された軸部に摺動可能に嵌合した軸孔94bが形成されている。駆動部材90bは、駆動部材90aのギア部95aと噛合うギア部95bを有している。駆動部材90bには、駆動ピン96bが形成されている。駆動ピン96bは、基板10に形成された逃げ孔16を貫通して、アーム30aの嵌合孔36aに嵌合する。従って、ロータ60が回転することにより、駆動部材90a、90bが回転し、アーム30aが揺動する。アーム30aの揺動に伴って、アーム30bが揺動し、これにより羽根20が開口OPに対して進退移動する。羽根20は、開口OPから退避することにより開口OPを開状態にし、また、開口OPを遮蔽することにより開口OPを全閉状態にする。
【0017】
図4は、全開状態を示し、図5は、全開状態と全閉状態との途中の状態を示し、図6は、全閉状態を示している。図4〜6は、基板10の第2面12側から見た羽根駆動装置1の図である。
【0018】
図4に示すように、付勢部材40a、40bは、それぞれ支軸13a、13bに巻きつけられている。全開状態では、付勢部材40aの一端部41aは、他の部材に当接しておらず自由な状態である。付勢部材40aの他端部42aは、アーム30aの係合孔32aに係合している。即ち、付勢部材40aの他端部42aは、アーム30aに連結されている。付勢部材40bも同様に、一端部41bは他の部材に当接しておらず、他端部42bはアーム30bの係合孔32bに係合している。尚、基板10には、付勢部材40bの他端部42bを逃がすための逃げ孔17が円弧状に形成されている。
【0019】
ロータ60が所定方向に回転すると、図5に示すように、駆動ピン96bが移動してアーム30a、30b、羽根20が開口OPに向けて進行する。羽根20が開口OPから退避した位置から開口OPを閉じる位置まで移動する間に、付勢部材40aの一端部41a、付勢部材40bの一端部41bのそれぞれは、基板10の第1面11側に形成されたピン14a、14bに当接する。
【0020】
更に、ロータ60が回転すると、図6に示すように、駆動ピン96bが更に移動して羽根20は開口OPを完全に閉じる。図6に示すように、付勢部材40aの一端部41aと他端部42aとの間の角度は、図5よりも更に小さくなっている。付勢部材40bについても同様である。従って、付勢部材40a、40bの付勢力は、図5に示した状態から図6に示した状態にかけて増大している。従って、付勢部材40a、40bは、羽根20が開口OPから退避する方向、換言すれば羽根20が開口OPを開くように付勢している。ロータ60は、付勢部材40a、40bの付勢力に抗して羽根20を駆動して開口OPが閉じられる。
【0021】
次に、ロータ60の回転について説明する。図7A〜7Dは、ロータ60の回転の説明図である。図7A〜7Dは、全開状態から全閉状態への移行の際のロータ60を示している。図7Aは、全開状態でのロータ60の停止位置を示している。この状態において駆動ピン96bが逃げ孔16の一端部に当接した状態でロータ60は停止している。従って、ロータ60の反時計方向の回動が規制されている。また、この状態においてコイル85への通電は行われないため、磁極部72a、72bには、極性は生じない。従って、ロータ60はディテントトルクによって停止されている。
【0022】
この状態においてコイル85に所定の向きに通電が行われると、図7Bに示すように、磁極部72aにS極、磁極部72bにN極が発生する。S極に励磁された磁極部72aと、ロータ60のS極の磁極中心とが反発力を生じ、N極に励磁された磁極部72bと、ロータ60のN極の磁極中心とが反発力を生じる。この反発力によって、ロータ60は時計方向に回転し始める。
【0023】
図7Cは、図7Bの状態からロータ60が所定角度回転したときの状態を示している。この状態において、ロータ60のN極の磁極中心は、磁極部72aとの間では吸引力を生じ、磁極部72bとの間では反発力を生じる。また、ロータ60のS極の磁極中心は、磁極部72bとの間では吸引力を生じ、磁極部72aとの間では反発力を生じる。
【0024】
図7Dは、ロータ60が更に時計方向に回転した場合の状態を示している。この状態においては、駆動ピン96bは、逃げ孔16の他端に当接してロータ60の回動が停止される。この状態において、開口OPは全閉状態となる。尚、この状態での所定期間経過後、コイル85への通電が停止されて、ロータ60はディテントトルクによりこの位置で停止状態が維持される。
【0025】
尚、羽根20が開口OPから退避する際には、図7Dに示した状態から、磁極部72a、72bがそれぞれN極、S極に励磁されることにより、ロータ60が反時計方向に回転する。これにより、羽根20は開口OPから退避する。
【0026】
図8は、実施例1の電磁アクチュエータAのロータ60の回転角度に応じたトルクの変動を示したグラフである。図8は、横軸はロータの回転角度、縦軸はトルクを示している。また、横軸の中心を回転角度90°としており、90°におけるロータ60の位置は図7Aに示したロータ60の位置に対応する。
【0027】
トルクT1は、ステータ70が励磁された際にロータ60が第1方向に回転する場合でのトルクを示している。ここで、ロータ60が第1方向に回転する場合には、羽根20は開口OPに向かって進行する。ロータ60が第1方向に回転するとは、図7A〜7Dに示したロータ60が時計方向に回転することを意味する。トルクT2は、ステータ70が励磁された際にロータ60が第2方向に回転する場合でのトルクを示している。ここで、ロータ60が第2方向に回転する場合には、羽根20は開口OPから退避する。ロータ60が第2方向に回転するとは、図7A〜7Dに示したロータ60が反時計方向に回転することを意味する。尚、ロータ60が反時計方向に回転する際には、ロータ60は図7Dに示した位置から回転する。
【0028】
作動角度範囲DRは、実際のロータ60の回転範囲である。ロータ60の回転範囲は、上述したように逃げ孔16内に駆動ピン96bが当接することにより規制されている。従って、図8に示したトルクT1、T2は、このような規制が無かった場合でのロータ60の全回転角度範囲でのトルクを示している。即ち、トルクT1、T2は、ロータ60が回転範囲を制限されていなかった場合において、ステータ70が励磁されることによって回転し得るロータ60の全回転角度範囲でのトルクである。ディテントトルクDTは、コイル85への通電が遮断された状態でロータ60を回転させるのに必要なトルクを示している。図8では、ディテントトルクDTがゼロとなる地点を90°として設定している。作動角度範囲DRは、トルクT1の最大値Mの地点を含んでいる。また、作動角度範囲DRの中心位置PCは、第1端P1と90°との間に位置している。
【0029】
作動角度範囲DRの第1端P1は、135°付近に設定され、作動角度範囲DRの第2端P2は90°付近に設定されている。従って、作動角度範囲DRは45°程度に設定されている。ロータ60が第1方向に回転する場合には、ロータ60は第2端P2から第1端P1に向けて回転する。ロータ60が第2方向に回転する場合には、ロータ60が第1端P1から第2端P2に向けて回転する。第1端P1でのディテントトルクDTの絶対値は、第2端P2でのディテントトルクDTの絶対値よりも大きい。
【0030】
上述したように、羽根駆動装置1は付勢部材40a、40bを備えている。付勢部材40a、40bは、作動角度範囲DRの途中位置から第1端P1までの間、アーム30a、30bを付勢している。付勢部材40a、40bは、ロータ60が第2方向に回転するようにアーム30a、30bを付勢している。即ち、付勢部材40a、40bは、ロータ60が第2方向に回転するように間接的にロータ60を付勢している。バネトルクSTは、付勢部材40a、40bがロータ60に与えるトルクを示している。バネトルクSTは、ロータ60が第1端P1に近づくほど増大する。トルクFT1は、バネトルクSTが作用した場合でのロータ60が第1方向に回転する際のトルクである。即ち、トルクFT1は、ロータ60が第1方向に回転する際の実際のトルクである。トルクFT1は、作動角度範囲DRの途中位置から第1端P1までの区間で、トルクT1よりも低下している。これは、付勢部材40a、40bのバネトルクSTがトルクT1に対してマイナスとして作用するからである。
【0031】
トルクFT2は、バネトルクSTが作用した場合でのロータ60が第2方向に回転する際のトルクである。即ち、トルクFT2は、ロータ60が第2方向に回転する際の実際のトルクである。図8に示すように、トルクFT2は、第1端P1から作動角度範囲DRの途中位置までの区間で、トルクT2よりも第2方向でのトルクが増大している。これは、付勢部材40a、40bのバネトルクSTがトルクT2に対してプラスとして作用するからである。尚、ディテントトルクFDTは、バネトルクSTが作用する場合でのディテントトルクを示している。即ち、ディテントトルクFDTは、ロータ60の実際のディテントトルクである。
【0032】
図9は、従来の電磁アクチュエータでのロータの回転角度に応じたトルクの変動を示したグラフである。従来の電磁アクチュエータのロータの作動角度範囲DRxは、ディテントトルクDTがゼロとなる地点の90°が概ね中心となるように設定されている。その理由は、ロータ60が第2端P2xから第1方向に回転し始める際のトルクT12x、或いは、第1端P1xから第2方向に回転し始める際のトルクT21xが弱すぎて、羽根20が進退移動出来なくならないように、トルクT12xとトルクT21xをほぼ等しくするためである。このように作動角度範囲DRxを設定した場合、作動角度範囲DRxには、トルクT1の最大値Mの地点は含まれず、又、ロータ60が第1方向に回転を開始する際のトルク、即ち第2端P2xでのロータ60のトルクT12xは、小さいものとなる。このため、羽根20が開口OPに進行するスピードが低下し、シャッタスピードが低下するおそれがある。
【0033】
これに対し、本実施例の羽根駆動装置1では、作動角度範囲DRは、トルクT1の最大値Mの地点を含んでいる。また、作動角度範囲DRの中心位置PCは、第1端P1と90°との間に位置している。これにより、第2端P2でのトルクT12は、第2端P2xのトルクT12xよりも大きくなる。これにより、ロータ60が第1方向に回転を開始した当初から強いトルクでロータ60が回転する。このため羽根20が開口OPに進行するスピードも向上する。このように簡易な構造でシャッタスピードが向上している。
【0034】
しかしながら、作動角度範囲DRをこのような範囲に設定した場合には、ロータ60が第2方向に回転を開始する際のトルク、即ち第1端P1でのトルクT21の値は、第1端P1xのトルクT21xの値よりも低下する。このため、ロータ60が第2端P2から第2方向に回転し始める際のトルクが弱すぎて、羽根20を確実に開口OPから退避できないおそれがある。
【0035】
そこで、実施例1の羽根駆動装置1では、羽根20を開口OPに対して退避するようにアーム30a、30bをそれぞれ付勢する付勢部材40a、40bを設けることにより、羽根20の開口OPからの退避を確保している。
【0036】
ここで、従来の羽根駆動装置においては、シャッタスピードを向上させるために、羽根が開口に進行する方向に付勢する付勢部材を備えたものがある。このような付勢部材を設けると、付勢部材の付勢力に抗して羽根を退避位置に維持させる必要がある。例えば、アクチュエータへ通電がされていない場合のロータのディテントトルクにより羽根を退避位置に維持させる場合には、ロータのディテントトルクが大きいアクチュエータを用いる必要がある。このようなアクチュエータは大型である。また、ストッパや別の機構を用いて羽根を退避位置に維持させる場合には、羽根駆動装置の構造が複雑化し、場合によっては製造コストも増大する。
【0037】
しかしながら本実施例では、付勢部材40a、40bは、羽根20が開口OPから退避するようにアーム30a、30bを付勢している。また、羽根20が退避位置にある場合には、付勢部材40a、40bの付勢力は羽根20には作用しない。このため、羽根20が退避位置にある場合でのロータ60のディテントトルクが弱くても、羽根20を退避位置に維持させることができる。
【0038】
また、付勢部材40a、40bは、作動角度範囲DRの全範囲にわたって付勢しているわけではない。このためロータ60が第2端P2から第1方向に回転し始める際のトルクには影響を与えない。従って、シャッタスピードの低下は抑制されている。
【0039】
また、付勢部材40a、40bは、羽根20が開口OPを閉じる際に羽根20が開口OPを開くように付勢している。このため、付勢部材40a、40bの付勢力によって、羽根20が開口OPを完全に閉じる直前で羽根20の走行速度は減速されることになる。従って、付勢部材40a、40bは、減速部材を兼ねている。これにより、駆動ピン96bなどが逃げ孔16に当接してバウンドすることが防止される。これにより、再露光が防止される。
【0040】
付勢部材40a、40bは、少なくとも付勢部材40a、40bが設けられていなかった場合にロータ60が第1端P1から第2方向に回転しない区間で羽根20が第2方向に回転するようにアーム30a、30bを付勢している。図8によれは、付勢部材40a、40bのバネトルクSTが作用する区間でのトルクT2は、マイナスの値を示している。このため、ロータ60の回転に対して抵抗が一切働かないのであれば、ロータ60は第2方向に回転できる。しかしながら、上述したように、ロータ60には駆動部材90aが固定されており、駆動部材90aは複数の部材を介して羽根20に連結されているために、摩擦等による機械的負荷が少なからずある。このため、第2端P2においてトルクT2がマイナスの値を示していたとしても、上記機械的負荷に打ち勝つことが出来ず、ロータ60が第2方向に回転しないおそれがある。このような区間で付勢部材40a、40bは、羽根20が開口OPから退避することを補助している。
【0041】
図10は、作動角度範囲の変更例を示している。作動角度範囲DR´は、第1端P1´が122.5°程度であり、第2端P2´が80°程度に設定されている。作動角度範囲DR´は、トルクT1の最大値Mの地点を含んでいる。また、作動角度範囲DR´の中心位置PC´は、第1端P1´と90°との間に位置している。このような作動角度範囲DR´であっても、シャッタスピードが向上する。尚、図10においては、バネトルクSTは省略してある。
【0042】
付勢部材40a、40bは、一方のみ設けられていてもよい。また、このような付勢部材は、ロータ60に回転により連動する部材の何れかを付勢してもよい。例えば、ロータ60に連動する羽根20、駆動部材90a、90bの少なくとも一つを付勢するものであればよい。これにより、付勢部材はロータ60を第2方向に間接的に付勢することになるからである。また、付勢部材はロータ60を直接第2方向に付勢させてもよい。
【実施例2】
【0043】
図11は、実施例2の羽根駆動装置1aの説明図である。尚、実施例1と類似の構成については類似の符号を付することによりその説明を省略してある。付勢部材40a´、40b´のそれぞれの一端部41a、41bは、それぞれ常にピン14a、14bに当接している。即ち、羽根20が退避位置にある場合においても、付勢部材40a´、40b´は、羽根20が開口OPから退避するようにアーム30a、30bを付勢している。尚、実施例2の羽根駆動装置1aに採用されている電磁アクチュエータは、実施例1の羽根駆動装置1で採用されている電磁アクチュエータと同じである。
【0044】
図12は、実施例2の電磁アクチュエータでのロータ60の回転角度に応じたトルクの変動を示したグラフである。図12は、図8に対応している。付勢部材40a´、40b´は、作動角度範囲DRの全範囲でアーム30a、30bを付勢している。バネトルクSTaは、付勢部材40a´、40b´がロータ60に与えるトルクを示している。バネトルクSTaは、ロータ60が第1端P1に近づくほど増大する。トルクFT1aは、バネトルクSTaが作用した場合でのロータ60が第1方向に回転する際のトルクである。トルクFT2aは、バネトルクSTaが作用した場合でのロータ60が第2方向に回転する際のトルクである。
【0045】
第2端P2においてもロータ60にはバネトルクSTは作用しているが、第2端P2でのバネトルクSTの値は比較的小さい。このため羽根20が開口OPに進行するスピードも維持され、簡易な構造でシャッタスピードが向上している。
【0046】
また、ロータ60が第2端P2に位置する場合においても、付勢部材40a´、40b´は羽根20が開口OPから退避する方向に付勢している。このため、コイル85が無通電の状態でも羽根20を退避位置に安定して維持させることができる。
【実施例3】
【0047】
図13〜15は、全開状態から全閉状態に移行する際の実施例3の羽根駆動装置1Aの説明図である。尚、実施例1と類似の構成については類似の符号を付することによりその説明を省略してある。図13は、全開状態を示しており、図14は、全開状態と全閉状態との間の状態を示しており、図15は、全閉状態を示している。尚、図13〜15においては、基板10Aの形状については省略してある。電磁アクチュエータAAのロータ60の回転範囲は、図8に示した回転範囲と同じである。
【0048】
図13に示すように、基板10Aの第1面11A側には付勢部材40Aが固定されている。付勢部材40Aは、第1面11A側に形成されたピン14Aに巻回されている。即ち、ピン14Aは、基板10Aに固定されている。付勢部材40Aは、ロータ60に向けて延びた一端部41Aを有している。一端部41Aは、基板10Aとステータ70との間に延在している。駆動部材90Aには、突起98aが設けられている。図13に示した状態では、駆動部材90Aの突起98aは、付勢部材40Aの一端部41Aに当接していない。
【0049】
図14に示すように、ロータ60が回転すると駆動部材90Aが回転して突起98aが付勢部材40Aの一端部41Aに当接する。更にロータ60が回転すると、突起98aが付勢部材40Aの一端部41Aを押して付勢部材40Aを変形させる。これにより、ロータ60には、駆動部材90Aを介して第2方向への付勢力が作用する。このような付勢部材40Aを採用することによっても、簡易な構造でシャッタスピードを向上させることができる。また、羽根20の開口OPからの退避を確保している。
【0050】
このような付勢部材40Aの一端部41Aに当接し得る突起を、駆動部材90b側に設けてもよいし、ロータ60に直接設けてもよい。また、このような突起はロータ60と一体成形してもよい。また、付勢部材40Aをロータ60に固定してロータ60と共に回転するようにし、この付勢部材40Aに当接し得る突起を基板10Aに設けてもよい。
【実施例4】
【0051】
図16〜17Bは、実施例4の羽根駆動装置1Bの説明図である。尚、実施例1と類似の構成については類似の符号を付することによりその説明を省略してある。図16は、全開状態を示しており、図17Aは、全開状態と全閉状態との間の状態を示しており、図17Bは、全閉状態を示している。
【0052】
基板10Bは、略円形状である。基板10Bは、略円形の開口OPBを有している。ロータ60Bの下端部には駆動部材90Bが固定されている。ロータ60Bと共に駆動部材90Bが回転することにより、羽根20Bが揺動して開口OPBを開閉する。基板10Bには、電磁アクチュエータABのステータ70Bと当接してステータ70Bを位置決めするピン14Bが形成されている。電磁アクチュエータABのロータ60Bの上端部には、付勢部材40Bが巻回されてロータ60Bに固定されている。付勢部材40Bは、付勢部材40Bの径方向外側に延びた一端部41B、一端部41Bよりも短い他端部42Bを有している。
【0053】
また、実施例4は実施例1〜3と異なり、図16〜17Bに示したロータ60Bが時計方向に回転することが第2方向に回転することを意味し、ロータ60Bが反時計方向に回転することが第1方向に回転することを意味する。
【0054】
図16に示した状態からロータ60Bが反時計方向に回転し始めると、図17Aに示すように付勢部材40Bの一端部41Bがピン14Bに当接する。更に、ロータ60Bが反時計方向に回転すると、図17Bに示すように一端部41Bと他端部42Bとの間の角度が小さくなるようにして付勢部材40Bが変形して付勢力が増大する。これにより、付勢部材40Bは、羽根20Bが開口OPBを開くように羽根20Bを間接的に付勢する。このような構成によっても、簡易な構造でシャッタスピードを向上させることができる。また、羽根20Bの開口OPBからの退避を確保している。
【0055】
付勢部材40Bを駆動部材90Bに固定して、駆動部材90Bと共に回転するようにしてもよい。また、付勢部材40Bを基板10Bに固定して、駆動部材90Bが付勢部材40Bに当接するようにしてもよい。
【0056】
以上本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0057】
1 羽根駆動装置
10、10A、10B 基板
20、20B 羽根
30a、30b アーム
40a、40b、40a´、40b´、40A、40B 付勢部材
60 ロータ
70 ステータ
85 コイル
90a、90b、90B 駆動部材
A、AA、AB 電磁アクチュエータ
DR 作動角度範囲
P1 第1端
P2 第2端
OP、OPB 開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
付勢部材と、
開口を有した基板と、
前記開口に対して進退自在な羽根と、
ステータ、前記ステータが励磁されることにより回転すると共に前記羽根を駆動するロータ、を含むアクチュエータと、を備え、
前記ロータが第1方向に回転する場合は、前記羽根が前記開口に進行し、
前記ロータが第2方向に回転する場合は、前記羽根が前記開口から退避し、
前記ロータの回転角度範囲は、前記ステータが励磁されることによって回転し得る前記ロータの全回転角度範囲よりも小さい作動角度範囲に制限されており、
前記ロータが前記作動角度範囲の第1端に位置している場合には、前記羽根は前記開口に重なり、
前記ロータが前記作動角度範囲の第2端に位置している場合には、前記羽根は前記開口から退避しており、
前記作動角度範囲は、前記ロータの回転角度範囲が制限されていない場合に前記ロータが前記第1方向に回転する場合での前記全回転角度範囲中での前記ロータのトルクの最大値となる位置を含んでおり、
前記付勢部材は、少なくとも前記作動角度範囲の途中位置から前記第1端までの区間で前記ロータを前記第2方向に直接又は間接的に付勢する、羽根駆動装置。
【請求項2】
前記ロータが前記第2端に位置するときより、前記ロータが前記第1端に位置するときの方が、前記ロータのディテントトルクが大きい、請求項1の羽根駆動装置。
【請求項3】
前記付勢部材は、前記第1端から前記第2端までの区間で前記ロータを前記第2方向に直接又は間接的に付勢する、請求項1又は2の羽根駆動装置。
【請求項4】
前記付勢部材の付勢力は、前記ロータが前記第1端に接近するにつれて増大する、請求項1乃至3の何れかの羽根駆動装置。
【請求項5】
前記付勢部材は、前記付勢部材が設けられていない場合に前記ロータが前記第1端から前記第2方向に回転しない区間で前記ロータを前記第2方向に直接又は間接的に付勢する、請求項1乃至4の何れかの羽根駆動装置。
【請求項6】
前記付勢部材は、前記羽根が前記開口を完全に閉じる直前で、前記羽根の走行速度を減速する減速部材を兼ねる、請求項1乃至5の何れかの羽根駆動装置。
【請求項7】
前記付勢部材は、トーションバネである、請求項1乃至6の何れかの羽根駆動装置。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れかの羽根駆動装置を備えた光学機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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