説明

翻訳後修飾ニューロトロフィン

本発明は、ニューロトロフィンは翻訳後修飾を受けること、および、これらの翻訳後修飾は、ニューロトロフィンのプロ−アポトーシスおよび/またはプロ-神経突起活性を仲介することを記述する。これらの翻訳後修飾は特に、ニトロ化、および、高次構造的に異なる二量体、ならびに四量体および八量体といった異常なオリゴマーの形成を含む。本発明は、更に、そのような修飾ニューロトロフィンと競合する化合物、ならびに前記修飾ニューロトロフィンに結合する化合物に関する。本発明は、したがって、慢性痛および/または神経細胞減少に関与する症状または疾病の治療のための有用な薬剤を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニューロトロフィンの分野に関し、とりわけ翻訳後修飾ニューロトロフィン、ならびに、それらの生物学的、生物工学的、医学的、臨床的、治療的および診断的応用に関する。
【背景技術】
【0002】
ニューロトロフィン、特に神経成長因子(NGF)は、発生の際における特異的な神経細胞集団の分化および生存に重要な役割を有し、成熟した神経系において神経の可塑性を修飾する[1、2]。逆説的に、NGFは、発生の際に神経細胞のアポトーシスを誘導し、病的状態にある損傷を受けた神経細胞およびグリア細胞を除去するとも記述されている[3、4]。NGFは、組織炎症および慢性痛の介在物質として記述され[5]、および、神経炎症を受けている幾つかの病理学に蓄積すると記述される[6−8]。
【0003】
NGFは、2つの関連しない膜貫通レセプター、チロシンキナーゼレセプターTrkAおよびp75ニューロトロフィンレセプター(p75NTR)を介して、その作用を及ぼす。TrkAは、チロシンキナーゼレセプターであり、それは、十分に特徴づけられたシグナル伝達経路を活性化し、神経細胞の生存、分化および可塑性を促進する[2、9、10]。一方、p75NTRは、腫瘍壊死因子レセプタースーパーファミリーのメンバーであり、デスレセプターシグナル伝達アポトーシスとして作用できる[4、11]。さらに、p75NTRはまた、TrkA、BおよびCに対する補助受容体として作用でき、または、その他のレセプター(ソーティリン(sortilin)、Nogo−R)と相互に作用し、生存、細胞骨格再編成および軸索の伸長を含む様々な生物学的効果を調節する[4、12]。
【0004】
それゆえ、NGFといった天然のニューロトロフィンは、p75NTR依存性アポトーシスを誘導できると記述されている。
【0005】
p75NTRは、胚期において運動ニューロン中に高度に発現するが、その発現レベルは、出生後、段階的に終わる[13]。TrkAもp75NTRも、成体の運動ニューロンによって発現されないものの、p75NTRは、軸索切断に続いて再度発現することができ[14−16]、および病的状態では、筋萎縮性側索硬化症(ALS)といった運動ニューロン変性に関わる[17、18]。更に、p75NTRは、軸索切断によって誘導される運動ニューロン死に結びつけられた[14、19、20]。p75NTRおよびNGFの異常な発現は、変異型Cu−Znスーパーオキシドジスムターゼ(SOD−1)を過剰発現するALSトランスジェニックマウスにて観察される、成体の運動ニューロン死に寄与する可能性がある[18、21−25]。
【0006】
最近では、プロニューロトロフィン(pro−neurotrophins)が、p75NTRおよびソーティリンによって形成される複合体を通したシグナル伝達による、p75NTR依存性アポトーシスの強力な誘発剤であることが判明した[14、15]。
【0007】
例えば、WO2005/014039は、成熟ニューロトロフィンの何れかの翻訳後修飾の可能性を想定することなく、この「プロニューロトロフィン」仮説を開示し、追求している:公開されたPCT出願の46頁24−28行目(「内因性成熟NGFが、組織抽出物中で非常に低い濃度でしか見つからず、および培地中では検出限界にほとんど達しないため、NGF前駆体(19−21、28および32kDa)は、p75NTR発現運動ニューロンに対するアポトーシスの介在物質である可能性がある」)を参照されたい。
【0008】
それゆえ、本発明以前において、主要な仮説は、プロ−NGFといったプロニューロトロフィンは、神経細胞の細胞死を引き起こす内因性因子である、ということであった。
【発明の概要】
【0009】
本発明者らは、炎症、慢性痛および神経病理学を仲介する新種の成長因子を同定し、単離し、および精製した。本発明者らは、そのような症状または疾病の間、NGFといったニューロトロフィンは、パーオキシナイトライトといった内因性ニトロ化種(endogenous nitrating species)と反応し、前記ニューロトロフィンのニトロ化がもたらされ、および、とりわけ前記ニューロトロフィンのニトロ化チロシンおよび/またはトリプトファン残基の形成がもたらされる、ならびに、ニューロトロフィン分子のそのようなニトロ化修飾は、天然の二量体に有意な構造変化を誘導し、これは次に、変性組織にて見られるそれらに匹敵する、高分子量の異常なオリゴマー(例えば四量体および/または八量体)の形成を促進することを発見した。
【0010】
発明者は、このように、天然の非修飾ニューロトロフィンのそれらとは著しく異なる高次構造、構造および生物活性を有する修飾ニューロトロフィンを同定し、単離し、および精製した。
【0011】
それゆえ、発明者らは、そのような修飾ニューロトロフィンは、炎症介在物質としてのキー薬剤であり、慢性痛の誘導および神経病理学の神経細胞死において、重要な役割を有し得ることを発見した。
【0012】
本発明は、従って、そのような修飾ニューロトロフィン、より具体的にはニトロ化ニューロトロフィン(nitrated neurotrophins)に関する。
【0013】
本発明は、更に、そのような修飾ニューロトロフィンに結合できる化合物または組成物である結合剤に関し、および、とりわけ非修飾型天然ニューロトロフィンには交差反応せず、少なくとも1つのそのような修飾ニューロトロフィンに結合できる、特異的結合剤に関する。
【0014】
本発明は、そのような修飾ニューロトロフィンの、およびそのような結合剤の、生物学的、生物工学的、医学的、臨床的、治療的、診断的応用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】NGF構造のリボン図(PDBコード1BET)。2つのNGF単量体(緑および青)は、主として疎水性のインタフェースを介して互いに相互作用する[39]。図は、マウスNGFに存在する2つのチロシンのおよび3つのトリプトファン残基の位置を表す。1つの単量体(緑)からのTyrおよびTrp側鎖は、棒状の表現で描かれており、(ピンク)にラベルされている。対向するNGF単量体からのGlu11(赤)もまた示されている。
【図2A】パーオキシナイトライト処理は、NGFアポトーシス活性を増強する。GDNF(1ng/mL)で処理した純粋な運動ニューロン培養物を、パーオキシナイトライト(1mM;NGF−ONOO)または分解したパーオキシナイトライト(NGF−ROA)で予め処理した増大するNGFに、濃度を増大させて、さらした。点線は、NONE(栄養性因子欠乏)のSDを表す。
【図2B】パーオキシナイトライト処理は、NGFアポトーシス活性を増強する。運動ニューロン培養物を、示した濃度のパーオキシナイトライトで予め処理したNGF(10ng/mL)にさらした。点線は、NONE(栄養性因子欠乏)のSDを表す。
【図2C】パーオキシナイトライト処理は、NGFアポトーシス活性を増強する。運動ニューロン培養物を、一酸化窒素供与体DETA−NONOate(10μM、NO)の存在下、NGF−ROAまたはNGF−ONOO(1mM)で、濃度を増大させて、処理した。点線は、NONE(栄養性因子欠乏)のSDを表す。
【図2D】パーオキシナイトライト処理は、NGFアポトーシス活性を増強する。運動ニューロン培養物を、パーオキシナイトライト(1mM;黒いバー(ONOO))または分解したパーオキシナイトライト(1mM;白いバー(ROA))で予め処理したNGF(100ng/mL)、BSA(100ng/mL)、FGF−1(10ng/mL)またはFGF−2(10ng/mL)にさらした。点線は、GDNFのSDを表す。運動ニューロンの生存は、処理から48時間後に測定した。データは、GDNFのパーセンテージ(平均値±SD)で表される。GDNFからの有意差(p≦0.05)。
【図3A】パーオキシナイトライトで処理したNGFに介在されるアポトーシスにはp75NTRが必要である。p75NTRに対する阻止抗体(a−p75,1:100,Chemicon #AB1554)および一般的なカスパーゼ阻害剤DEVD−fmk(10μM)は、予めパーオキシナイトライト(1mM;NGF−ONOO−)で処理したNGF(100ng/mL)に誘導される運動ニューロン死を阻害した。p75NTRに対する抗体は、運動ニューロンのプレーティングの直後に、1度添加し、一方、DEVD−fmkは24時間ごとに添加した。データは、GDNFのパーセンテージ(平均値±SD)で表される。点線は、GDNFのSDを表す。GDNFからの有意差(p≦0.05)。
【図3B】パーオキシナイトライトで処理したNGFに介在されるアポトーシスにはp75NTRが必要である。アンチセンスおよびミスセンスのオリゴヌクレオチドを、プレーティングのときに、精製した運動ニューロン培養物に添加した。24時間後、培養物を、NGF−ONOO(100ng/mL)またはNGF(100ng/mL)+DETA−NONOate(10μM)(NGF+NO)にさらした。アンチセンスオリゴヌクレオチド(黒いバー)は、両方の処理によって誘導される運動ニューロンの減少を完全に防ぎ、一方、ミスセンスオリゴヌクレオチド(白いバー)は、神経細胞の生存になんら効果を示さなかった。データは、それぞれGDNFのパーセンテージ(平均値±SD)として表される。GDNFからの有意差(p≦0.05)。
【図3C】パーオキシナイトライトで処理したNGFに介在されるアポトーシスにはp75NTRが必要である。NGF−ONOOによって誘導される運動ニューロンアポトーシスは、パーオキシナイトライトの内因性の生産をもたらす。運動ニューロン培養物を、L−NAME(1mM)またはMnTBAP(100μM)の存在下、パーオキシナイトライト(100ng/mL)で処理した1mMのNGFで処理した。点線は、GDNFのSDを表す。データは、それぞれGDNFのパーセンテージ(平均値±SD)として表される。*GDNFからの有意差(p≦0.05)。運動ニューロンの生存は、全ての場合において、処理から48時間後に測定した。
【図4A】パーオキシナイトライト は、NGFオリゴマー化およびニトロ化を誘導する。増加する濃度のパーオキシナイトライト(ONOO;0.25mMから1mM)の処理後のNGFにおける高分子量種の形成を示すSDS−PAGE。対照として、NGFを、分解したパーオキシナイトライト(1mM;ROA)で処理した。NGFは、0.2mg/mLの濃度にて、パーオキシナイトライトで処理した。10μgのタンパク質を各々のレーンに適用し、電気泳動分離を変性および還元条件下15%ポリアクリルアミドゲルで行った。図は、クマシーブルーで染色した代表的なゲルを表す。
【図4B】パーオキシナイトライト は、NGFオリゴマー化およびニトロ化を誘導する。1mMパーオキシナイトライト(NGF−ONOO)またはその分解生成物(NGF−ROA)で処理したNGFを、リアルタイム多角度光散乱検出(MALS)と組み合わせたサイズ−排除クロマトグラフィーで分析した。絶対的なモル質量対溶出の時間(または体積)を、90°LS検出器からの信号に重ねた。NGF−ROA(青)は、二量体(33.0±1.2KDa)に相当する質量を有した単一のピークとして溶出した。対照的に、NGF−ONOOは、二量体(33.2±0.6KDa、タンパク質の85%)、四量体(68.5±3.5KDa、13%)および八量体(125.0±10.0KDa、2%)に相当する3つのピークとして溶出した。
【図4C】パーオキシナイトライト は、NGFオリゴマー化およびニトロ化を誘導する。ニトロチロシンについての免疫反応性の増大を示すウエスタンブロット。(A)の場合のように処理した100ngのNGFを、抗ニトロチロシン(抗ニトロTyr)ポリクローナル抗体を使用した免疫ブロッティングにより分析した。剥離した後に、メンブレンを抗NGFポリクローナル抗体で発色させた。
【図5A】天然の(A)およびパーオキシナイトライト処理した(B)NGFの逆相HPLCクロマトグラム。天然のNGFは、36.3分および38.1分に2つのピークとして溶出した。パーオキシナイトライト処理(1mM)は、いくつかの生成物の不完全な分離をもたらした。非イオン化ニトロチロシンは360nmで吸収する。パーオキシナイトライト処理NGFでは、360nmにおいて吸光度が増加したが(B)、天然のNGFクロマトグラムでは、360nmでの吸収は生じなかった。
【図5B】天然の(A)およびパーオキシナイトライト処理した(B)NGFの逆相HPLCクロマトグラム。天然のNGFは、36.3分および38.1分に2つのピークとして溶出した。パーオキシナイトライト処理(1mM)は、いくつかの生成物の不完全な分離をもたらした。非イオン化ニトロチロシンは360nmで吸収する。パーオキシナイトライト処理NGFでは、360nmにおいて吸光度が増加したが(B)、天然のNGFクロマトグラムでは、360nmでの吸収は生じなかった。
【図6A】HPLC回収画分の質量分析。36.3分の天然NGFからの溶出物のエレクトロスプレー飛行時間型質量分析により、質量が13,252Daであり、NGFの鎖Aに相当することが判明した。13,078Daにおける質量シグナルは、C末端アルギニン残基の欠失に一致する。
【図6B】HPLC回収画分の質量分析。パーオキシナイトライト処理NGFからの38.6分の溶出の質量分析により、鎖Aの質量が89Da増加したこと(13,252から13,341Daまで)が示された。39.9分の溶出物は鎖Bに相当し、90Daの増大(12,357から12,449Daまで)を示した。
【図7A】トリプシン消化したHPLC回収画分のQ−Tof質量分析。HPLC精製サンプルを、消化し、Q−Tof質量分析で分析し、続いてMS/MSイオン検索をMascotによって行った。(A)36.3分の天然未処理NGF溶出物、(B)38.6分のパーオキシナイトライト処理NGFからの溶出物は、Tyr52およびTrp99のニトロ化を示す修飾ペプチドを示す。同様の修飾が、パーオキシナイトライト処理NGF由来の39.9分の溶出物で観察された。ピログルタミン酸(ピロGlu)は、ペプチドのN末端におけるグルタミン(Q)の共通の修飾である。
【図7B】トリプシン消化したHPLC回収画分のQ−Tof質量分析。HPLC精製サンプルを、消化し、Q−Tof質量分析で分析し、続いてMS/MSイオン検索をMascotによって行った。(A)36.3分の天然未処理NGF溶出物、(B)38.6分のパーオキシナイトライト処理NGFからの溶出物(Tyr52およびTrp99のニトロ化を示す修飾ペプチドを示す)。同様の修飾が、パーオキシナイトライト処理NGF由来の39.9分の溶出物で観察された。ピログルタミン酸(ピロGlu)は、ペプチドのN末端におけるグルタミン(Q)の共通の修飾である。
【図8A】テトラニトロメタン処理がNGFのニトロ化およびオリゴマー化を誘導した。テトラニトロメタン(TNM)処理したNGFのHPLCクロマトグラム。40倍過剰のTNMで処理したNGFは、37.9および39.9分において2つのピークとして溶出した。360nmの吸光度は、溶出されたピークにおけるニトロチロシンの存在を示す。
【図8B】テトラニトロメタン処理がNGFのニトロ化およびオリゴマー化を誘導した。37.9分の溶出物のデコンボリューションしたスペクトル(deconvoluted spectra)は、天然のNGFの場合(13,252Da;図5A)と比較して、45Da(13,297Daへ)および90Da(13,342Daへ)のNGF鎖Aの質量増加を示した。13,168Daの質量のシグナルは、C末端アルギニン残基を欠失し、二重でニトロ化された鎖Aに相当する。39.9分の溶出物のデコンボリューションしたスペクトルは、鎖Bに対する同様な質量シフトを示した。
【図8C】テトラニトロメタン処理がNGFのニトロ化およびオリゴマー化を誘導した。37.9分のトリプシン消化された溶出物のQ−Tof質量スペクトルは、Tyr52およびTyr79のニトロ化を示した。39.9分の溶出物の分析は、鎖Bにおける同様の修飾を示した。
【図8D】テトラニトロメタン処理がNGFのニトロ化およびオリゴマー化を誘導した。TNMでの処理後のNGF(NGF−TNM)の高分子量種の形成を示すSDS−PAGE。100ngのタンパク質を各々のレーンで分析し、変性および還元条件の下、15%ポリアクリルアミドゲルにて電気泳動分離を行った。図は、代表的な銀染色したゲルを示す。
【図9A】テトラニトロメタン処理したNGFは、p75NTR依存性運動ニューロン死を誘導した。GDNF(1ng/mL)で処理した純粋な運動ニューロン培養物を、予めベヒクルまたは40倍過剰のTNM(NGF−TNM)で処理した増大する濃度のNGFにさらした。点線は、NONE(栄養性因子欠乏)のSDを表す。
【図9B】テトラニトロメタン処理したNGFは、p75NTR依存性運動ニューロン死を誘導した。p75NTRに対する阻止抗体(a−p75,1:100,Chemicon #AB1554)は、NGF−TNM(100ng/mL)に誘導される運動ニューロン死を防止した。p75NTRに対する抗体を、運動ニューロンのプレーティングから3時間後にNGF−TNMとともに添加した。点線は、GDNFのSDを表す。運動ニューロンの生存を処理後48時間において測定した。データは、GDNFのパーセンテージ(平均値±SD)で表される。GDNFからの有意差(p≦0.05)。
【図10A】尿酸塩は、NGFアポトーシス活性に対するパーオキシナイトライトの効果を無効にした。尿酸塩は、用量依存的な様式で、チロシンニトロ化およびNGFのオリゴマー化を阻害した。NGFを、ベヒクルまたは増大する濃度の尿酸塩(20から1000μM)の存在下で、分解したパーオキシナイトライト(1mM;ROA)またはパーオキシナイトライト(1mM)にさらした。サンプル(100ng)を、SDS−15%ポリアクリルアミドゲルおよびニトロチロシンに対するポリクローナル抗体を使用したウエスタンブロットで分析した。
【図10B】尿酸塩は、NGFアポトーシス活性に対するパーオキシナイトライトの効果を無効にした。尿酸塩の存在下においてパーオキシナイトライトで処理したNGFはニューロンの生存に影響を与えなかった。運動ニューロン培養物を、予めベヒクル(NGF−ONOO)または尿酸塩(200μM;NGF−ONOO−尿酸塩)の存在下でパーオキシナイトライト(1mM)で処理したNGF(100ng/mL)にさらした。運動ニューロンの生存に対する未反応の尿酸塩の直接的効果の可能性を除外するために、NGF−ONOO−尿酸塩の添加後の培養物培地中に存在すると予想される尿酸塩の濃度を、NGF−ONOOにさらされる培養物に添加した。尿酸塩(100nM)は、NGF−ONOO(100ng/mL)に誘導される運動ニューロンの喪失を阻害しなかった。運動ニューロンの生存を処理後48時間において測定した。点線は、GDNFのSDを表す。データは、GDNFのパーセンテージ(平均値±SD)で表される。GDNFからの有意差(p≦0.05)。
【図11A】NGFアミノ酸配列。マウスNGF(AAA39818;配列番号:3)。
【図11B】NGFアミノ酸配列。ヒトNGF(CAA37703;配列番号:4)。
【図12A】NGFアミノ酸配列。成熟マウスNGF(配列番号:1)。Tyr(Y)およびTrp(W)残基は、図12Aおよび12Bにおいて、太文字および下線を引いた文字で表される。図12A(成熟マウスNGF)では、成熟マウスNGFのTrp21、Tyr52、Trp76、Tyr79、Trp99(成熟ニューロトロフィンタンパク質の配列の参照によって算出される残基番号)が示される。
【図12B】NGFアミノ酸配列。成熟ヒトNGF(配列番号:2)。Tyr(Y)およびTrp(W)残基は、図12Aおよび12Bにおいて、太文字および下線を引いた文字で表される。図12B(成熟ヒトNGF)では、成熟ヒトNGFのTrp21、Tyr52、Trp76、Tyr79およびTrp99残基(成熟ニューロトロフィンタンパク質の配列の参照によって算出されている残基番号)が示される。
【図13】ニトロ化NGFに結合し、非ニトロ化NGFと交差反応しない特異的抗体を使用した、静止状態または刺激を受けた状態のアストロサイト(FGF1,10ng/mL;およびLPS,5マイクロg/mL)からの条件培地のウエスタンブロッティングによる分析(レーン1:非ニトロ化NGF;レーン2:ニトロ化NGF;レーン3:静止状態のアストロサイトからの条件培地;レーン4:刺激を受けた状態のアストロサイトからの条件培地)。
【図14】パーオキシナイトライトは、NGFの神経突起成長促進活性を増大させる。E15ラット胚由来の後根神経節外植片(TrkAおよびp75NTRを発現する)を、栄養性因子非存在下(NONE)、または、NGF(100ng/mL)、パーオキシナイトライトで処理したNGF(100ng/mL;ニトロNGF−P)もしくはテトラニトロメタンで処理したNGF(ニトロNGF−TNM)の存在下で、Neurobasal培地にて培養した。24時間後、培養物を4%のパラホルムアルデヒドで固定し、GAP−43に対する免疫蛍光に供した。ニトロNGFで処理した神経節では、NGFで処理したものと比較して、神経突起成長が増加したことが留意される。
【発明の詳細な説明】
【0016】
本発明は、ニューロトロフィンが翻訳後修飾を受けることを記述する。本発明者らの知識の及ぶ限りでは、本発明は、ニューロトロフィン、とりわけNGFの翻訳後修飾に関する最初の説明である。
【0017】
発明者らは、これらの翻訳後修飾が、高次構造的に異なる二量体をもたらすこと、並びに四量体および八量体といった異常なオリゴマーをもたらすことを実証する。
【0018】
そのような修飾ニューロトロフィンは、構造、高次構造および生物活性において、非修飾型天然(健康的な)ニューロトロフィンと異なる。
【0019】
そのような修飾ニューロトロフィンは、運動ニューロンに対するプロアポトーシス効果および/または感覚神経節に対するプロ−神経突起成長効果を有する。更に、これらの修飾ニューロトロフィンは、非常に低い濃度でこれらの効果を及ぼすことができる:そのような効果を誘導および/または刺激する修飾されたニューロトロフィンの力価は、その由来となった非修飾型ニューロトロフィンの(仮に有するとして)有する力価であって、外因的な酸化窒素が添加された状態で、そのような非修飾ニューロトロフィンが使用された場合の力価と比較しても、非常に高い。
【0020】
本発明者らは更に、インビボ条件の下で、これらの翻訳後修飾は、特に、内因性のニトロ化種(例えばパーオキシナイトライト)による、成熟ニューロトロフィンのニトロ化をもたらすことを実証した。
【0021】
酸化窒素およびスーパーオキシドラジカルからの反応生成物であるパーオキシナイトライト(ONOO)は、主として、酸化窒素の生産増大に関与する病的状態においてインビボで形成される。
【0022】
本発明者らの知識の及ぶ限りでは、そのような修飾ニューロトロフィンを、同定し、単離しおよび精製したことも初めてである。
【0023】
第1の側面において、本発明は、従って、これらの修飾ニューロトロフィン、とりわけこれらのニトロ化ニューロトロフィンに関する。
【0024】
例えばFrazierらの研究(1973年[52])といった以前の研究では、テトラニトロメタン(TNM)によるNGFのニトロ化は、少なくとも感覚神経節における神経突起成長の誘導による評価において、NGF生物活性を修飾しなかった。本発明は、これに反して、ニトロ化剤(例えばTNMおよび/またはパーオキシナイトライト)によるNGFまたは別のニューロトロフィンのニトロ化は、その生物活性を高度に修飾することを、正確に実証する。
【0025】
本発明以前において、運動ニューロンにおいてNGFによるプロ−アポトーシス活性を仲介するものは、ニューロトロフィンの翻訳後修飾、例えばNGFの翻訳後修飾(すなわち、NGFのニトロ化および/または異常なオリゴマー化)であることは全くわかっていなかった。先行技術が教示するものは、非修飾NGFおよび/またはその前駆体(例えばプロ−NGF)のみを含むものであった;例えば、Peharらの報告(2004年[25])が参照される。
【0026】
本発明者らによって同定された翻訳後修飾ニューロトロフィンは、非常に低い濃度で、運動ニューロンアポトーシス活性および/または神経突起成長活性を有する。運動ニューロンアポトーシスおよび/または神経突起成長(例えば、感覚神経節からの)を誘導および/または刺激するそのような修飾されたニューロトロフィンの力価は、その由来となった非修飾型ニューロトロフィンによる力価(仮にあるとして)であって、外因的な酸化窒素が添加された状態で、前記非修飾天然ニューロトロフィンが使用された場合の力価と比較しても、非常に高い。
【0027】
修飾ニューロトロフィン(例えば修飾されたNGF)の効果は、非常に低い濃度で検出可能である。例えば、ニトロ化NGFは、1ng/mLと同程度に低い濃度で運動ニューロンアポトーシスを有意に誘導する(図2Aおよび関連コメント参照)。
【0028】
酸化窒素または酸化窒素の供給源に関連して使用される場合、修飾されたニューロトロフィンのアポトーシス活性は更に増加しさえする。
【0029】
例えば、酸化窒素と共に使用されるニトロ化NGF(NGF−ONOO+NO)は、わずか1pg/mLで運動ニューロンの減少を有意に誘導する(図2Cおよび関連コメント参照)。インビトロでのパーオキシナイトライトによるNGFのニトロ化は、酸化窒素の存在下、運動ニューロンのアポトーシスを誘導するNGFの力価を10,000倍増大させる。
【0030】
更に、ニトロ化ニューロトロフィン以外のニトロ化された成長因子、例えばニトロ化FGFは運動ニューロンに対して何らアポトーシス効果を有さないため(例えば、ニトロFGF−1、ニトロFGF−2;図2Dおよび関連コメント参照)、運動ニューロンアポトーシスおよび/または感覚神経節からの神経突起成長に対する、ニトロ化ニューロトロフィンによる活性はかなり特異的であると思われる。
【0031】
本発明は、従って、運動ニューロンアポトーシスおよび/または神経突起成長の非常に強力な誘導物質および/または刺激物質である修飾ニューロトロフィンに関する。これらの修飾ニューロトロフィンは、発明者らによって、単離され、同定されおよび特徴づけられた。
【0032】
修飾ニューロトロフィンは、そのTyrおよびTrp残基から選択される少なくとも1つの残基が少なくとも1つのニトロ基を含むという事実によって特徴付けることができる。
【0033】
修飾ニューロトロフィンは、それらは、天然ニューロトロフィンにおいて、TyrおよびTrp残基から選択される少なくとも1つの残基における少なくとも1つのニトロ基の添加による、天然ニューロトロフィンの翻訳後のニトロ化修飾によって得ることができるという事実(ここにおいて、前記天然ニューロトロフィンは、天然プロニューロトロフィンまたは天然成熟ニューロトロフィン、好ましくは天然成熟ニューロトロフィンである)によって、代わりにまたは付加的に、特徴付けることができる。
【0034】
本願において、天然ニューロトロフィンまたは天然プロニューロトロフィンとは、健康的な哺乳類において観察される、または、少なくとも、いずれの異常な運動ニューロンアポトーシスも患っていない哺乳類において観察される、天然に生じるニューロトロフィンまたはプロニューロトロフィンに相当するニューロトロフィンまたはプロニューロトロフィンであると意図される。天然ニューロトロフィンまたはプロニューロトロフィンは、従って、本願において、正常な「健康的な」ニューロトロフィンまたはプロニューロトロフィンに相当する。それゆえ、そのような天然ニューロトロフィンまたはプロニューロトロフィンはニトロ化されていない。
【0035】
「ニューロトロフィン」という用語は、本願において、NGF(神経成長因子)、BDNF(脳由来神経栄養因子)、NT−3(ニューロトロフィン−3)、NT−4(ニューロトロフィン−4;NT−4/5、すなわちニューロトロフィン−4/5とも称される)およびNT−6(ニューロトロフィン−6)からなる群を意味する。更なる指示がない限り、この用語は、成熟ニューロトロフィン並びにプロニューロトロフィンを包含する。本発明において、好ましいニューロトロフィンは成熟ニューロトロフィンである。
【0036】
本発明はまた、保存的断片および保存的変種に関する。
【0037】
保存的断片は、少なくとも1つの残基、好ましくはTyrおよびTrp残基から選択される少なくとも1つの残基に、少なくとも1つのニトロ基を保持する断片である。それはまた、運動ニューロンアポトーシスおよび/または神経突起成長を誘導および/または刺激する能力を保持する。
【0038】
保存的変種は、少なくとも1つのアミノ酸の置換および/または欠失および/または付加によって、本発明の修飾されたニューロトロフィンまたは保存的断片から生じるものであるが、少なくとも1つの残基、好ましくはTyrおよびTrp残基から選択される少なくとも1つの残基に少なくとも1つのニトロ基を保持する。前記保存的変種はまた、運動ニューロンアポトーシスおよび/または神経突起成長を誘導および/または刺激する能力を保持する。
【0039】
本出願において、特に明記しない限り、「修飾ニューロトロフィン」または「ニトロ化ニューロトロフィン」という用語は、本発明の修飾ニューロトロフィン、ならびにその保存的断片、ならびにそのような修飾ニューロトロフィンまたはそのような保存的断片のいずれかの保存的変種を包含する。
【0040】
本発明のニトロ化ニューロトロフィンは、天然ニューロトロフィンまたは天然プロニューロトロフィンとニトロ化剤とを接触させて得てよい。
【0041】
本発明の保存的断片は、以下のようにして得ることができる:
−本発明の修飾ニューロトロフィンの切断によって、または、天然ニューロトロフィンまたは天然プロニューロトロフィンの断片とニトロ化剤との接触によって、
それによって候補断片の集団を得る、および
−前記候補断片の集団の中から、少なくとも1つの残基、好ましくはTyrおよびTrp残基から選択される少なくとも1つの残基に、少なくとも1つのニトロ基を保持し、且つ、運動ニューロンアポトーシスおよび/または神経突起成長を誘導および/または刺激する能力を有する断片を選択する。
【0042】
本発明の保存的変種は、以下のようにして得ることができる:
−本発明の修飾ニューロトロフィンまたは本発明の保存的断片の少なくとも1つのアミノ酸の置換および/または欠失および/または付加によって、または、天然ニューロトロフィンまたは天然プロニューロトロフィンの、または天然ニューロトロフィン断片の、または天然プロニューロトロフィン断片の変種とニトロ化剤との接触によって、
それによって、候補変種の集団を得る、および
−この候補変種の集団の中から、少なくとも1つの残基、好ましくはTyrおよびTrp残基から選択される少なくとも1つの残基に、少なくとも1つのニトロ基を保持し、運動ニューロンアポトーシスおよび/または神経突起成長を誘導および/または刺激する能力を有する変種を選択する。
【0043】
当業者が適切とわかるいずれのニトロ化剤でも使用することができる。1または複数のニトロ化剤を使用してもよい。使用されるニトロ化剤は、少なくとも1つのニトロ基を含み、および、ニューロトロフィンタンパク質またはその断片もしくは変種に、好ましくは前記ニューロトロフィンまたはその断片もしくは変種のTyrおよびTrp残基から選択される少なくとも1つの残基に、前記少なくとも1つのニトロ基の付加を誘導することができる薬剤である。好ましくは、前記ニトロ化剤は、テトラニトロメタンおよび/またはパーオキシナイトライトである。
【0044】
ニトロ化されるニューロトロフィン(またはその断片もしくは変種)は、当業者が適切とわかるいずれかの供給源を由来とするものであってよい。それは、天然のペプチド、ポリペプチドもしくはタンパク質、または天然のポリペプチドもしくはタンパク質の断片、または組換えペプチド、ポリペプチドもしくはタンパク質、または合成ペプチドもしくはポリペプチドであってよい。当業者に既知の、ペプチドまたはポリペプチド合成のいずれかの方法を使用することができる。合成方法の例(例えばメリフィールド固相合成)は、例えば、“Solid Phase Peptide Synthesis”(J.M. Steward & J.D. Young, 1969, Ed. W.H. Freeman Co., San Francisco)または“Peptide synthesis”(M. Bodanskyら. 1976, John Wiley & Sons, 2nd Edition)にみることができる。
【0045】
ニューロトロフィンの天然の供給源は、特に、アストロサイト細胞(例えばII型アストロサイトグリア細胞)を含む。
【0046】
ニューロトロフィンはまた、商業的に入手可能であり、例えばHarlan (Indianapolis; USA)から入手可能なマウスNGが使用できる。
【0047】
組換えニューロトロフィン、またはニューロトロフィン断片もしくは変種はまた、当業者によって、例えば、適切な宿主細胞(例えば線維芽細胞細胞)に、前記ニューロトロフィンまたは断片もしくは変種をコードするcDNAを、このcDNAによってコードされるタンパク質またはポリペプチドまたはペプチドの発現に適切な条件下で、感染および/または形質移入および/または形質転換させることによって製造してよい。例えば、組換えヒトNGFの製造は、Johnsonら. 1986(Cell 47(4):545−554;production from mouse fibroblasts)、Allenら. 2001(J.Biochem.Biophys.Methods. 47:239−255;production from baculovirus and insect cell systems)、Rattenhollら. 2001(Eur.J.Biochem. 268:3296−3303;production from a bacterial system)に記述されている。
【0048】
前記ニューロトロフィン(またはその保存的断片もしくは変種)は、前記ニトロ化剤が前記ニューロトロフィンまたは断片もしくは変種の少なくとも1つのTrpおよびTyr残基に少なくとも1つのニトロ基を付加するのに適切な条件の下(とりわけ、pHおよび持続時間の条件の下)、前記ニトロ化剤に接触される。
【0049】
運動ニューロンアポトーシスおよび/または神経突起成長を誘導および/または刺激する能力は、当業者にとって利用可能ないずれかの手段によって評価することができる。例えば、神経突起成長を誘導および/または刺激する能力は、感覚神経節を前記ニトロ化ニューロトロフィンまたはその断片もしくは変種にさらし、神経突起成長のレベルを測定し、それによって、前記ニトロ化ニューロトロフィン(またはその断片もしくは変種)への前記曝露が、前記感覚神経節からの神経突起の成長を誘導またはその数を増大させたかどうかを決定することで評価できる。前記ニトロ化ニューロトロフィン(またはその断片もしくは変種)への曝露において、コントロール条件と比較して、神経突起の数が増加するかどうかを測定するために、神経突起の数の統計学的に有意な増加を観察してもよい。
【0050】
例えば、運動ニューロンアポトーシスを誘導および/または刺激する能力は、運動ニューロンを前記ニトロ化ニューロトロフィンまたはその断片もしくは変種にさらし、非アポトーシス細胞、例えば細胞体直径の4倍より長い完全な神経突起を示す細胞、および/またはアポトーシス細胞を計測し、それによって、前記ニトロ化ニューロトロフィン(またはその断片もしくは変種)がアポトーシスを行った運動ニューロンの数を誘導または増大させたかどうかを決定することで評価することができる。前記ニトロ化ニューロトロフィン(またはその断片もしくは変種)への曝露において、コントロール条件と比較して、非アポトーシス細胞の数が減少したかどうか、および/またはアポトーシス細胞の数が増加したかどうかを決定するために、非アポトーシス細胞数の統計学的に有意な減少および/またはポトーシス細胞数の統計学的に有意な増加をそれぞれ観察してよい。
【0051】
そのような決定のために、前記ニトロ化ニューロトロフィン(またはその断片もしくは変種)への曝露を含まない適切な対照群が設定される。例えば、前記ニトロ化ニューロトロフィン(またはその断片もしくは変種)への曝露がない以外は、共通した実験条件において、共通した運動ニューロンまたは感覚神経節が設定され、または、分解されたニトロ化剤(例えば、分解したパーオキシナイトライト)に曝され及び逆の順序で添加された対照ニューロトロフィンに対する曝露が設定される。実例となる培養および実験的条件の詳細は、下記の例で記述されており、見ることができる(例えば、図2Aおよびそれに関するコメント、ならびに「運動ニューロン培養物の精製」と題された段落参照)。
【0052】
「統計学的に有意」または「有意に」という用語は、本願において、統計学の分野における通常の意味で使用され(例えばt検定、z試験、χ二乗値またはF比率、その他)、すなわち、値を別の値と比較することおよびこれらの値が互いに異なるかどうかの決定に使用される。それ故、「統計学的に有意」または、「有意に」という用語は、当業者が、度数分布においてデータの広がりの量を測定する標準偏差を(必要の場合に)考慮に入れてもよいという事実を包含する。所望のp値は、通常、5%のαレベル、またはより厳密には1%のαレベルで設定される。
【0053】
各々のニューロトロフィンの単量体は、同様の分子サイズ(13.2−15.9kDa、例外的にNT−6は21kDa)、50%に近いまたはそれを上回る一次配列の同一性、範囲9−10の等電点、および同様に保存された位置における6つの保存されたハーフ−システイン(これらは、3つの鎖内ジスルフィド結合を生じさせる)を含む、多くの化学的特性を共有している。これらの3つのジスルフィド結合は、特徴的なシステイン節を形成する(図1参照)。
【0054】
好ましくは、前記ニューロトロフィンはNGFまたはBDNFである。最も好ましくは、前記ニューロトロフィンはNGFである。
【0055】
マウスNGFおよびヒトNGFのアミノ酸配列は、図11A、12A(マウスNGF)および図11Bおよび12B(ヒトNGF)に示される。
【0056】
好ましくは、前記ニューロトロフィンは、ヒトニューロトロフィン、最も好ましくはヒトNGFである。
【0057】
ニトロ化反応の生成物は、未反応の化合物および/または副産物を含んでよい。望ましい場合または必要な場合、前記翻訳後ニトロ化修飾の後、未反応の化合物および/または副産物からのニトロ化ニューロトロフィンの分離および/または単離が行われる。
【0058】
ニトロ化反応の生成物は、ニトロ化ニューロトロフィンの幾つかの単量体/オリゴマー種を含んでよい。望ましい場合または必要な場合には、前記翻訳後ニトロ化修飾の後に、これらの異なる単量体/オリゴマー種のそれぞれの分離および/または単離が行われ、これによって、これらの種が互いに分離および/または単離される。
【0059】
前記分離および/または単離は、例えば、HLPCクロマトグラフィーおよび/またはHPLC溶出画分の質量分析(エレクトロスプレー飛行時間型質量分析)によって行うことができ、これによって、それぞれの単量体またはオリゴマー種が純粋な形態で得られる。
【0060】
純粋な形態で1つの単一な単量体/オリゴマー種を得るのに適した方法は、サイズ排除、イオン交換、免疫親和性または、逆相クロマトグラフィーを使用した液体分離を含んでよい。非変質条件における電気泳動および免疫沈降を適用してもよい。
【0061】
前記ニューロトロフィンのニトロ化は、好ましくは少なくとも1つのTyrまたはTrp残基への、少なくとも1つのニトロ基の付加を可能にする条件の下で、前記ニューロトロフィンとニトロ化剤(例えばパーオキシナイトライトおよび/またはテトラニトロメタン)とを接触させることで行うことができる。
【0062】
例えば、前記ニトロ化は、20mMの炭酸水素ナトリウムを含む、50mMのナトリウムリン酸緩衝液(pH7.4)にて行うことができる。
【0063】
前記ニューロトロフィンは、例えば、0.2から1mg/mLの濃度とすることができる。
【0064】
前記ニューロトロフィンは、例えば、パーオキシナイトライト溶液(0.01MのNaOH溶液中、0.25から2mg/mLの濃度)の少なくとも1回の大量添加(1マイクロL)に供してよい。前記パーオキシナイトライト溶液の複数回の大量添加、例えば、10回までの大量添加(それぞれ1マイクロL)を行ってもよい。
【0065】
パーオキシナイトライトの連続した大量添加は、用量依存的様相のオリゴマーのマー数(mer−numbers)の増加をもたらす。これは、例えば、SDS−PAGEにおける3つの高分子量種の用量依存的様相(ニトロ化NGFについての図4A参照)、または、リアルタイム多角度光散乱検出(MALS)と組み合わせたHPLCサイズ排除クロマトグラフィー(ニトロ化NGF二量体について33.2±0.6kDa;ニトロ化NGF四量体について68.5±3.5kDa;ニトロ化NGF八量体について68.5±3.5kDa;図4B参照)にて観察される。驚くべきことに、パーオキシナイトライト処理したNGF二量体は、天然NGF二量体よりも先に溶出し(MALS分析と組み合わせられたHPLCサイズ排除クロマトグラフィーによって評価)、構造変化の存在を反映している。この用量依存的様相のオリゴマーのマー数の増加は、天然NGFの染色強度における漸進性の減少を伴う。
【0066】
パーオキシナイトライトの連続した大量添加はまた、接触されるニューロトロフィンの用量依存的なニトロ化を誘導する(ニトロ化NGFについての図4C参照)。
【0067】
天然NGFは、逆相HPLCにおいて、36.3および38.1分の2つのピークとして溶出し(図5A参照)、これらはNGF鎖AおよびNGF鎖Bに相当する。
【0068】
ニトロ化NGFは、分子量が増加したNGF種の存在に起因して、例えば、38.6分またはそのわずか後に溶出する。
【0069】
それゆえ、本発明者らは、ニューロトロフィンが翻訳後修飾を受けることを示すことに加えて、これらの翻訳後修飾が、特に、ニトロ化、とりわけチロシンのニトロ化に起因することを示す。ニトロ化は、そのような翻訳後修飾を説明する化学修飾の唯一の可能性ではなかった。
【0070】
実際、チロシンのニトロ化は、タンパク質の生物活性を変化させることが知られている、チロシンの唯一の酸化的修飾ではない:3−クロロ、3−ブロモ−または3−ヒドロキシチロシンへの塩素化、ブロム化および水酸化(これらは、炎症性症状で促進される)といった、チロシンのその他の酸化的修飾が既知である。
【0071】
チオール酸化といった反応性の窒素種によって引き起こされるその他の酸化的な工程、鉄−硫黄クラスターの破壊および遷移金属中心の酸化は、多くの場合、細胞/機能障害/死の促進において、ニトロ化よりも関連し得る。
【0072】
更に、生物学的ニトロ化のパーオキシナイトライトの役割は近年疑われている(Pfeiffer ら. 2000 J. Biol. Chem. 275:6346−6352; Thomas ら. 2002 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99:12691−12696)。
【0073】
さらに、本発明は、チロシン残基のニトロ化だけでなく、トリプトファンといったその他の残基のニトロ化(ならびに、一部のニューロトロフィンについて、メチオニンの酸化)も記載する。本発明は、さらに、高次構造的に異なるニトロ化された二量体、並びに異常なオリゴマー化(例えば四量体および八量体種の形成)をもたらす、ニューロトロフィン分子における構造変化を記述する。
【0074】
最も好ましくは、修飾されたニューロトロフィンの単離された形態は、そのプロ−アポトーシス活性および/またはそのプロ−神経突起成長活性を妨げない分子構造である。
【0075】
ニューロトロフィン(またはニューロトロフィン断片または変種)のニトロ化の後に得られる生成物は、例えば、逆相HPLCクロマトグラフィーによって、反応混合物のその他の構成成分から単離することができる(例えばニトロ化NGFについての図5B参照)。このように得られる溶出物は、1つの単一のニトロ化ニューロトロフィンオリゴマー種またはニトロ化ニューロトロフィンオリゴマーの混合物を含んでよいが、ニトロ化ニューロトロフィン以外のその他の何れかの化合物を取り除いてもよい。
【0076】
必要に応じて、そのような溶出物は、例えばHPLCクロマトグラフィーによって更に精製し、互いに異なるオリゴマー種を単離し、または、少なくとも別の種または種混合物からの特定の種混合物を単離してもよい。
【0077】
溶出物は、液体以外の形態、例えば固体で処方できる。生成物の構造および高次構造を崩すことなく、最初は液体状態で利用できる生成物の固体状態の製剤を得るのに適した技術は当業者に既知である。そのような技術は、例えば、膜分離および/または蒸発および/または結晶化および/または凍結濃縮を含んでよい。
【0078】
好ましくは、修飾されたニューロトロフィンの単離された形状は、何れの非ニトロ化プロニューロトロフィンおよび/または何れの非ニトロ化成熟ニューロトロフィンも含まない。
【0079】
それは、好ましくは、何れかの未反応ニューロトロフィン、例えば非ニトロ化NGF二量体も、何れかの残留するニトロ化剤も含まない。好都合に、それは、少しもニトロ化および/または非ニトロ化プロニューロトロフィン(プロ−NGF、プロ−BDNF、プロ−NT−3、プロ−NT−4)も含まない。それは、とりわけ、何れかのニトロ化および/または非ニトロ化プロ−NGFも含まない(商業的に入手可能なNGF生成物の全てが、実際に、成熟NGFおよびプロ−NGFの混合物であるとは考えられない場合、多数)。
【0080】
最も好ましくは、それは、実質的に純粋な形状(下で定義されるように)であり、より好ましくは、ニトロ化ニューロトロフィン単量体および/またはオリゴマー以外の何れの化合物も含まない純粋な形状である。
【0081】
「単離された」タンパク質とは、本来それが伴っているその他の構成成分(例えば、由来となる種からのタンパク質および隣接するゲノム配列)から実質的に分離され、および、タンパク質合成および/またはニトロ化反応において存在しまたはそれらの際に形成される可能性のあるその他の化学薬品または化合物から実質的に分離された、タンパク質である。「単離された」という用語は、自然発生のタンパク質またはポリペプチド、ならびに、化学的に合成したタンパク質またはポリペプチド、および、異種の系によって合成したタンパク質またはポリペプチドを包含する。
【0082】
「実質的に純粋」とは、一般的に、本来の供給源と成る生物に由来する、または、タンパク質合成および/またはニトロ化反応において存在するもしくはそれらの際に形成される化学薬品または化合物に由来する、その他の化合物(例えば、混入したタンパク質、核酸、またはその他の生物学的化合物)から単離されたタンパク質を意味する。純度または「単離」は、標準的方法で、典型的に重量によって評価してよく、一般に、少なくとも約70%純粋、より一般に少なくとも約80%純粋、しばしば少なくとも約85%純粋、よりしばしば少なくとも約90%純粋、好ましくは少なくとも約95%純粋、より好ましくは少なくとも約98%純粋、および最も好ましい実施態様では少なくとも99%純粋であろう。担体または賦形剤がしばしば添加され、または、製剤は、無菌でありおよび/または緩衝液の構成成分を含んでもよい。
【0083】
実質的に純粋な分子は、分子の単離された形状を含む。単離されたタンパク質は、通常、分子の均一な組成であるが、一部の実施態様では、マイナーな不均一性を含むだろう。この不均一性は、典型的に、ポリマーの端または部分で見つかり、望ましい生物学的機能または活性に重要ではない。
【0084】
本発明の修飾ニューロトロフィンは、単量体またはオリゴマー、例えば二量体、三量体、四量体、五量体、六量体、七量体、八量体から成る。本発明の好ましい修飾ニューロトロフィンの1つは、単量体または二量体または四量体または六量体または八量体の形態である。
【0085】
あるいは、本発明の修飾ニューロトロフィンは、少なくとも2つの異なるオリゴマー種、例えば少なくとも3つの異なるオリゴマー種から成ってもよい。本発明の修飾されたニューロトロフィンは、このように、二量体、三量体、四量体、五量体、六量体、七量体、八量体からなる群から選択される、少なくとも2つの、例えば少なくとも3つの異なるオリゴマー種から成ってもよい。
【0086】
本発明の好ましい修飾ニューロトロフィンの1つは、二量体、四量体および八量体から選択される少なくとも2つの異なるオリゴマー種から成る。本発明の好ましい修飾ニューロトロフィンの1つは、従って、2つのオリゴマー種、例えば二量体および四量体、または二量体および八量体、または四量体および八量体から成ってよい。本発明のその他の好ましいニューロトロフィンは、従って、3つのオリゴマー種、例えば二量体、四量体および八量体から成ってよい。本発明のさらに好ましいその他のニューロトロフィンは、従って、4つの異なるオリゴマー種、例えば二量体、四量体、六量体および八量体から成ってよい。
【0087】
本発明の修飾ニューロトロフィンは、固体の状態または液体の状態とすることができる。
【0088】
ニューロトロフィン、例えばNGF、BDNF、NT3、NT−4は、2つの非共有結合的に繋がったモノマーから成る二量体構造を有している。そのような二量体構造がニトロ化に供された場合、少なくとも1つのモノマー、好ましくは2つのモノマーのニトロ化が、好ましくはTyrおよびTrp残基から選択される、少なくとも1つの残基における、少なくとも1つのニトロ基の付加によって生じる。
【0089】
それゆえ、翻訳後修飾生成物が溶液である場合、修飾ニューロトロフィンの二量体の凝集体が生じてもよく、前記凝集体は動的な混合物であり、ここにおいて、異なるオリゴマー種は、互いに平衡に達し、二量体、四量体、六量体、八量体から選択される少なくとも2つの異なるオリゴマー構造の混合物を形成してよい。
【0090】
前記修飾ニューロトロフィンは、従って、二量体、四量体、六量体および八量体構築物から、好ましくは二量体、四量体および八量体構造から選択される少なくとも2つの異なるオリゴマー構造から成るオリゴマー混合物の形態であってよい。
【0091】
にもかかわらず、使用される特定のニトロ化条件および/または特定のニトロ化剤に依存して、得られる生成物は、単一のオリゴマー種から構成されてよい。例えば、ニューロトロフィン出発物質の濃度が低い場合、得られる修飾ニューロトロフィン生成物は、ニトロ化ニューロトロフィンオリゴマーの単一の種、特にニトロ化ニューロトロフィン二量体の単一の種から構成されてよい。例えば、NGFが出発物質として0.2−0.4mg/mLの濃度で使用される場合、(例えば、パーオキシナイトライトおよび/またはテトラニトロメタンによる)ニトロ化から得られる生成物は、ニトロ化NGF二量体の単一の種から構成されてよい。そのような修飾ニューロトロフィン二量体は、少なくとも1つのニトロ基の存在によって天然(健康的)NGF二量体と異なるだけでなく、分子構造によっても異なる。これは、例えば、特に修飾NGF二量体についての、リアルタイム多角度光散乱検出(MALS)分析と組み合わせたHPLCサイズ排除クロマトグラフィーにより証明される(図4B参照)。修飾ニューロトロフィン二量体は、更に、由来となった非修飾型天然ニューロトロフィン二量体の1つとは劇的に異なる生物活性を示す。修飾ニューロトロフィン二量体は、運動ニューロンのアポトーシスおよび/または神経炎の成長を誘導および/または刺激することができ、一方、非修飾型天然ニューロトロフィン二量体は、そのような活性を示さず、または非常に低いレベルでしか示さず、ニトロ化ニューロトロフィン二量体で認められる場合より有意に劣っている。例えば、本発明のニトロ化NGF二量体は、その由来となった非修飾天然NGF二量体より、約10,000倍高いアポトーシス活性を有する。
【0092】
修飾ニューロトロフィンの由来となる前記ニューロトロフィンは、BDNF、NT−3、NT−4/5および/またはNT−6でありえる。好ましくは、それは、成熟BDNF、成熟NT−3、成熟NT−4/5または成熟NT−6である。
【0093】
あるいは、修飾ニューロトロフィンの由来である前記ニューロトロフィンはNGFでありえる。好ましくは、これは成熟NGFである。
【0094】
NGFは、約27kDaのホモ二量体である[38、39]。マウスNGFモノマーは118のアミノ酸を有するが、NおよびC末端の両方で切断されたより短い鎖も確認された[38、40]。マウスNGFは、位置52および79に、2つのチロシン残基を含む(図1参照)[41]。ニューロトロフィンファミリーの全てのメンバーで保存されるため、Tyr52は、二量体インタフェースにおいて疎水性の接触に関与し、また、p75NTR結合に関与する[39、42]。部位特異的変異誘発の研究は、安定性のタンパク質高次構造の決定における、このチロシン残基の構造上の重要性を明らかにした[43]。一方で、Tyr79は大部分のNGFで保存されているが、ニューロトロフィンファミリーのその他のメンバーでは保存されていない[41]。マウスNGFでは、このチロシンは、同じプロトマーの残基と接触し、また、第2のプロトマーのN末端と相互作用できた[39]。これらのチロシン残基は非常に保存されているため、これらの残基のパーオキシナイトライト修飾は、NGF生物活性においてで重要な影響力を有する。
【0095】
マウスNGFおよびヒトNGFのそれぞれの例証となる配列は11A図および11Bに示される。
【0096】
成熟マウスNGFおよび成熟ヒトNGFのそれぞれの配列は12A図および12Bに示される。
【0097】
以下のことにおいて、特異的なNGF残基、とりわけ特異的なTyrおよびTrp残基が参照される。これらの残基は、それらのアミノ酸位置(例えば、Tyr52またはTrp99)によって同定される。残基の位置は、このなかでは、成熟タンパク質の配列を参照することによって、例えば、マウスNGFでは、図12Aに示される配列番号1の配列を参照することによって、または、ヒトNGFでは、図12Bに示される配列番号2の配列を参照することによって、算出される。
【0098】
図12Aは、マウスNGFに含まれる3つのTrp残基および2つのTyr残基(Trp21、Tyr52、Trp76、Tyr79、Trp99)を示す。
【0099】
図12Bは、ヒトNGFに含まれる3つのTrp残基および2つのTyr残基(Trp21、Tyr52、Trp76; Tyr79、Trp99)を示す。
【0100】
好都合に、本発明の修飾ニューロトロフィンはニトロ化NGFであり、ここにおいて、TyrおよびTrp残基から選択される少なくとも1つの残基は、少なくとも1つのニトロ基を含む。
【0101】
前記ニトロ化NGFは、純粋な形態のニトロ化NGFプロトマー、例えば、ニトロ化NGF鎖Aまたはニトロ化NGF鎖B(鎖Bは、鎖Aに存在する8つのN末端残基を欠く)でありえる。
【0102】
前記ニトロ化NGFは、純粋な形態で、ニトロ化NGF鎖Aおよび/またはニトロ化NGF鎖Bのニトロ化NGFオリゴマーでありえる。
【0103】
そのようなニトロ化NGFオリゴマーは、(2つのニトロ化NGF鎖Aから成る、または1つのニトロ化鎖Aと1つのニトロ化NGF鎖Bとから成る、または2つのニトロ化鎖Bから成る)ニトロ化NGF二量体でありえる。パーオキシナイトライト処理NGF二量体は、(MALS分析との組み合わせによるHPLCサイズ排除クロマトグラフィーによって評価されるように)天然NGF二量体より前に溶出し、これは構造変化の存在を反映していることが留意される(図4B参照)。
【0104】
そのようなニトロ化NGFオリゴマーは、ニトロ化NGF三量体、ニトロ化NGF四量体、ニトロ化NGF五量体、ニトロ化NGF六量体、ニトロ化NGF七量体、ニトロ化NGF八量体でありえる。それは、好ましくは、ニトロ化NGF二量体、ニトロ化NGF四量体、ニトロ化NGF六量体、ニトロ化NGF八量体からなる群から選択される。より好ましくは、それは、ニトロ化NGF二量体、ニトロ化NGF四量体、ニトロ化NGF八量体からなる群から選択される。
【0105】
上述の通り、前記ニトロ化NGFオリゴマーは、オリゴマー混合物の形態、例えば、二量体、四量体、六量体および八量体種から選択される少なくとも2つの異なるオリゴマー種からなるオリゴマー混合物、最も好ましくは、二量体、四量体および八量体種から選択される少なくとも2つの異なるオリゴマー種からなるオリゴマー混合物、より好ましくは、二量体および四量体および八量体種からなるオリゴマー混合物でありえる。
【0106】
少なくとも1つのニトロ基を含むTyrおよびTrp残基から選択される前記少なくとも1つの残基は、マウスNGFのTyr52またはTyr79、またはヒトNGFのTyr52またはTyr79、またはその他の種からの何れか等価の残基といったTyr残基でありえる。
【0107】
前記ニューロトロフィンがマウスNGF(配列番号:1)である場合、前記少なくとも1つのTyr残基は、好ましくは、マウスNGFのTyr52およびTyr79残基から選択される(図12A参照)。より好ましくは、前記少なくとも1つのTyr残基はマウスNGFのTyr52残基である。
【0108】
前記ニューロトロフィンがヒトNGF(配列番号:2)である場合、前記少なくとも1つのTyr残基は、好ましくは、ヒトNGFのTyr52、Tyr79残基から選択される(図12B参照)。より好ましくは、前記少なくとも1つのTyr残基は、ヒトNGFのTyr52残基である。
【0109】
少なくとも1つのニトロ基を含むTyrおよびTrp残基から選択される前記少なくとも1つの残基は、例えば、マウスNGFのTrp99もしくはTrp21もしくはTrp76、またはヒトNGFのTrp99もしくはTrp21もしくはTrp76、またはその他の種からの何れか等価の残基であってよい。
【0110】
ニトロ基を有する前記ニューロトロフィンのTyrおよびTrp残基(前記残基の各々に少なくとも1つのニトロ基を有する)の数は、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つまたは少なくとも9つでありえる。
【0111】
前記ニューロトロフィンの全てのTyrおよびTrp残基は、少なくとも1つのニトロ基を有してもよい。
【0112】
前記ニューロトロフィンがマウスNGFである場合、前記少なくとも2つのTyr残基は、好ましくはマウスNGFのTyr52およびTyr79残基である(図12A参照)。
【0113】
前記ニューロトロフィンがヒトNGFである場合、前記少なくとも2つのTyr残基は、好ましくはヒトNGFのTyr52およびTyr79残基である(図12B参照)。
【0114】
前記ニューロトロフィンがマウスNGFである場合、前記少なくとも1つのTrp残基は、好ましくはマウスNGFのTrp99、Trp21およびTrp76残基から選択される(図12A参照)。より好ましくは、前記少なくとも1つのTrp残基は、マウスNGFのTrp99またはTrp21残基である。最も好ましくは、前記少なくとも1つのTrp残基は、マウスNGFのTrp99残基である。
【0115】
前記ニューロトロフィンがヒトNGFである場合、前記少なくとも1つのTrp残基は、好ましくはヒトNGFのTrp21、Trp76、Trp99残基から選択される(図12B参照)。より好ましくは、前記少なくとも1つのTrp残基は、ヒトNGFのTrp21またはTrp99残基である。最も好ましくは、前記少なくとも1つのTrp残基は、ヒトNGFのTrp99残基である。
【0116】
前記ニューロトロフィンがマウスNGFである場合、前記少なくとも2つのTrp残基は、好ましくはマウスNGFのTrp99、Trp21およびTrp76残基から選択される(図12A参照)。より好ましくは、前記少なくとも2つのTrp残基は、マウスNGFのTrp99およびTrp21残基である。
【0117】
前記ニューロトロフィンがヒトNGFである場合、前記少なくとも2つのTrp残基は、好ましくはヒトNGFのTrp21、Trp76、Trp99残基から選択される(図12B参照)。より好ましくは、前記少なくとも2つのTrp残基は、ヒトNGFのTrp21およびTrp99残基である。
【0118】
前記ニューロトロフィンがマウスNGFである場合、前記少なくとも3つのTrp残基は、好ましくはマウスNGFのTrp99、Trp21およびTrp76残基である(図12A参照)。
【0119】
前記ニューロトロフィンがヒトNGFである場合、前記少なくとも3つのTrp残基は、好ましくはTrp21、Trp76、ヒトNGFのTrp99残基である(図12B参照)。
【0120】
ニトロ基を有するTyrおよびTrp残基の数が少なくとも2以上の場合、これらの残基は、少なくとも1つのTyr残基および少なくとも1つのTrp残基(前記残基の各々は少なくとも1つのニトロ基を有す)でありえる。
【0121】
前記ニューロトロフィンがマウスNGFである場合、前記少なくとも1つのTrp残基は好ましくはマウスNGFのTrp99、Trp21およびTrp76残基から選択される(図12A参照)。より好ましくは、前記少なくとも1つのTrp残基は、マウスNGFのTrp99またはTrp21残基である。最も好ましくは、前記少なくとも1つのTrp残基は、マウスNGFのTrp99残基である。
【0122】
前記ニューロトロフィンがマウスNGFである場合、前記少なくとも1つのTyr残基は好ましくはマウスNGFのTyr52およびTyr79残基から選択される(図12A参照)。より好ましくは、前記少なくとも1つのTyr残基は、マウスNGFのTyr52残基である。
【0123】
これらのTyrおよびTrp残基の全ての組合せは、本願に包含される。より好ましくは、前記少なくとも1つのTrp残基は、マウスNGFのTrp99またはTrp21残基であり、前記少なくとも1つのTyr残基はマウスNGFのTyr52残基である。
【表1】

【0124】
前記ニューロトロフィンがヒトNGFである場合、前記少なくとも1つのTrp残基は好ましくはヒトNGFのTrp21、Trp76、Trp99残基から選択される(図12B参照)。より好ましくは、前記少なくとも1つのTrp残基は、ヒトNGFのTrp21またはTrp99残基である。最も好ましくは、前記少なくとも1つのTrp残基は、マウスNGFのTrp99残基である。
【0125】
前記ニューロトロフィンがヒトNGFである場合、前記少なくとも1つのTyr残基は好ましくはヒトNGFのTyr52、Tyr79残基から選択される(図12B参照)。より好ましくは、前記少なくとも1つのTyr残基は、ヒトNGFのTyr52残基である。
【0126】
これらのTyrおよびTrp残基の全ての組合せは、本願に包含される。より好ましくは、前記少なくとも1つのTrp残基はヒトNGFのTrp99またはTrp21残基であり、前記少なくとも1つのTyr残基はヒトNGFのTyr52残基である。
【表2】

【0127】
本発明の修飾ニューロトロフィンは、ニトロ基を有する少なくとも1つのTyrおよび少なくとも2つのTrp残基を含んでもよい(前記残基の各々は少なくとも1つのニトロ基を有する)。
【0128】
前記ニューロトロフィンがマウスNGFである場合、前記少なくとも2つのTrp残基は好ましくはマウスNGFのTrp99、Trp21およびTrp76残基から選択される(図12A参照)。より好ましくは、前記少なくとも2つのTrp残基は、マウスNGFのTrp99およびTrp21残基である。
【0129】
前記ニューロトロフィンがマウスNGFである場合、前記少なくとも1つのTyr残基は好ましくはマウスNGFのTyr52およびTyr79残基から選択される(図12A参照)。より好ましくは、前記少なくとも1つのTyr残基は、マウスNGFのTyr52残基である。
【0130】
これらのTyrおよびTrp残基の全ての組合せは、本願に包含される。より好ましくは、前記少なくとも2つのTrp残基はマウスNGFのTrp99およびTrp21残基であり、前記少なくとも1つのTyr残基はマウスNGFのTyr52残基である。
【0131】
前記ニューロトロフィンがヒトNGFである場合、前記少なくとも2つのTrp残基は好ましくはヒトNGFのTrp21、Trp76、Trp99残基から選択される(図12B参照)。より好ましくは、前記少なくとも2つのTrp残基はヒトNGFのTrp21およびTrp99残基である。
【0132】
前記ニューロトロフィンがヒトNGFである場合、前記少なくとも1つのTyr残基は好ましくはヒトNGFのTyr52、Tyr79残基から選択される(図12B参照)。より好ましくは、前記少なくとも1つのTyr残基は、ヒトNGFのTyr52残基である。
【0133】
これらのTyrおよびTrp残基の全ての組合せは、本願に包含される。より好ましくは、前記少なくとも2つのTrp残基はヒトNGFのTrp99およびTrp21残基であり、前記少なくとも1つのTyr残基はヒトNGFのTyr52残基である。
【0134】
本発明の修飾ニューロトロフィンは、ニトロ基を有する前記ニューロトロフィンの少なくとも1つのTyrおよび少なくとも2つのTrp残基を含んでもよい(前記残基の各々は少なくとも1つのニトロ基を有する)。
【0135】
本発明の修飾ニューロトロフィンは、ニトロ基を有する前記ニューロトロフィンの少なくとも1つのTyrおよび少なくとも3つのTrp残基を含んでもよい(前記残基の各々は少なくとも1つのニトロ基を有する)。
【0136】
当然、Tyr残基番号およびTrp残基番号のいずれかの組合せが、本発明に包含される。例えば、マウスNGFは、3つのTrp残基および2つのTyr残基を有し(図12A参照);ヒトNGFは2つのTyr残基および3つのTrp残基を有する(図12B参照)。
【0137】
前記ニトロ化ニューロトロフィンは、酸化された少なくとも1つのMet残基(例えばMet=O)を含んでもよい。前記ニューロトロフィンがマウスNGFである場合、前記少なくとも1つのMet残基は、好ましくは(成熟)マウスNGFのMet9残基である(図12A;配列番号1の位置9の残基M参照)。
【0138】
本発明の修飾ニューロトロフィンは、非グリコシル化の形態、またはグリコシル化の形態とすることができる。
【0139】
本発明はまた、本発明の少なくとも1つの修飾ニューロトロフィン、とりわけ本発明の少なくとも1つのニトロ化ニューロトロフィンに結合する化合物または組成物である結合剤に関する。ニトロ化ニューロトロフィンは、特に、ニトロ化NGF、ニトロ化BDNF、ニトロ化NT−3、ニトロ化NT−4/5およびニトロ化NT−6を含む。実例となる結合剤は、抗体である。
【0140】
本発明は、とりわけ、そのような修飾ニューロトロフィンに特異的に結合する特異的結合剤に関する。
【0141】
本発明の特異的な結合剤は、特に、少なくとも1つの修飾ニューロトロフィン、とりわけ少なくとも1つのニトロ化ニューロトロフィン(例えば、ニトロ化NGF、ニトロ化BDNF、ニトロ化NT−3、ニトロ化NT−4/5、ニトロ化NT−6)に結合するこれらの化合物または組成物であって、前記少なくとも1つの修飾ニューロトロフィンの由来となる非修飾天然ニューロトロフィン(例えば、それぞれ、非ニトロ化天然NGF、非ニトロ化天然BDNF、非ニトロ化天然NT−3、非ニトロ化天然NT−4/5、非ニトロ化天然NT−6)に結合しないものを含む。
【0142】
そのような特異的な結合剤は、例えば、本発明の少なくとも2つのニトロ化ニューロトロフィン(例えばニトロ化NGFおよびニトロ化BDNF)に結合し、前記少なくとも2つのニトロ化形態の由来となる2つの非ニトロ化ニューロトロフィン二量体(例えば非ニトロ化NGFおよびBDNF二量体)に結合しないものであってよい。
【0143】
最も好ましくは、本発明の特異的な結合剤は、いずれかの非ニトロ化ニューロトロフィンに結合しない(それは、いずれかの非ニトロ化NGFに、いずれかの非ニトロ化BDNGに、いずれかの非ニトロ化NT−3に、いずれかの非ニトロ化NT−4/5におよびいずれかの非ニトロ化NT−6に結合しない)。
【0144】
好ましくは、本発明の特異的な結合剤は、本発明のニトロ化NGFに結合し、前記ニトロ化NGFの由来である非ニトロ化NGF二量体に結合しない。最も好ましくは、そのような「ニトロNGF」特異的結合剤は、いずれかの非ニトロ化NGF二量体に結合しない。最も好ましくは、そのような「ニトロNGF」特異的結合剤は、いずれかの非ニトロ化ニューロトロフィンに結合しない(それは、いずれかの非ニトロ化NGFに、いずれかの非ニトロ化BDNFに、いずれかの非ニトロ化NT−3に、いずれかの非ニトロ化NT−4/5におよびいずれかの非ニトロ化NT−6に結合しない)。
【0145】
そのような「ニトロNGF」特異的結合剤は、にもかかわらず、更に、本発明のニトロ化BDNF、ニトロ化NT−3、ニトロ化NT−4/5およびニトロ化NT−6から選択される少なくとも1つのニトロ化ニューロトロフィンに結合してよい。
【0146】
好ましくは、本発明の結合剤または特異的結合剤はグルコースに結合しない。それは、したがって、好ましくはグルコースに対する何れかの機能的結合部位を含まない。
【0147】
好ましくは、本発明の結合剤または特異的結合剤は、前記結合剤または特異的結合剤が結合する修飾ニューロトロフィンの少なくとも1つの活性を、調整し、最も好ましくは、抑制または遮断する。前記結合剤または特異的結合剤は、例えば、運動ニューロンにおいて前記少なくとも1つの修飾ニューロトロフィンによって及ぼされるプロアポトーシス効果を阻害または遮断してよく、および/または、感覚神経節において前記少なくとも1つの修飾ニューロトロフィンによって及ぼされる神経突起成長刺激および/または誘導効果を阻害または遮断してよい。
【0148】
好ましくは、本発明の結合剤または特異的結合剤は、非修飾天然成熟ニューロトロフィンの由来となる非ニトロ化プロニューロトロフィン(すなわち天然プロニューロトロフィン)に結合しない。より好ましくは、本発明の結合剤または特異的結合剤は、何れかの非ニトロ化プロニューロトロフィン(すなわち、何れかの天然プロニューロトロフィン)に結合しない。
【0149】
本発明の結合剤または特異的結合剤は、にもかかわらず、ニトロ化プロニューロトロフィン並びにニトロ化ニューロトロフィンに結合してよい。
【0150】
本発明のその他の結合剤または特異的結合剤は、ニトロ化ニューロトロフィンに結合し、ニトロ化プロニューロトロフィンに結合しないでよい。
【0151】
より好ましくは、本発明の結合剤または特異的結合剤は、p75NTRおよび/またはTrkAに結合しない。
【0152】
前記結合剤は、例えば、QYFFETK(配列番号7)から選択されるニトロ化エピトープに結合してよく、ここにおいて、これらのエピトープの位置2のTyr残基(Y)は少なくとも1つのニトロ基を有する。このTyr残基は、マウスNGFのTyr52に、またはヒトNGFのTyr52に相当する。このTyr残基は非常に保存されている。
【0153】
本発明の前記結合剤または特異的結合剤は、好都合に、抗体、または、そのような抗体の機能を模倣する化学物質であってよい。
【0154】
[抗体および抗体模倣物(antibody mimics)]
抗体は、完全に組み立てられた抗体、一本鎖の抗体、Fab断片、およびキメラ抗体、ヒト化抗体を含むがこれらに限定されない、ポリクローナル(例えば多クローン性血清)またはモノクローナル抗体であってよい。
【0155】
本発明の抗体は、また、タンパク質、抗体といったその他の治療薬との組み合わせで、および/または、特定の細胞型を特異的に標的とするターゲティング分子との組み合わせで、および/または、前記抗体を容易に検出するための検出ラベル(例えば放射性同位元素)との組み合わせで使用してよい。
【0156】
抗体を製造するための実際的な手段は当業者に既知である。
【0157】
既知の方法によって、ニトロ化ニューロトロフィン(またはその断片もしくは変種)、または、その抗原的に機能的な誘導体によって、動物を免疫化することができる。
【0158】
適切な動物は、特に、哺乳類、とりわけ非ヒト哺乳類、例えばウサギを含む。
【0159】
例えば、前記ニトロ化ニューロトロフィン(またはその断片もしくは変種)またはその抗原的に機能的な誘導体が、哺乳類に腹腔内または皮下注射される。
【0160】
前記ニトロ化ニューロトロフィン(またはその断片もしくは変種)またはその抗原的に機能的な誘導体は、適切な量のPBS(リン酸緩衝食塩水)、生理食塩水等で希釈され、またはこれらに懸濁してよい。
【0161】
適切な量の標準的アジュバントは、必要または望ましい場合、生成物と混合される。例証となる標準的アジュバントは、特に、フロイント(完全または不完全)アジュバント、無機ゲル、例えば水酸化アルミニウム、表面活性物質、例えばリゾレシチン、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油乳剤、キーホールリンペットヘモシニアン、ジニトロフェノール、および、潜在的に有用なヒトアジュバント、例えばBCG(カルメット−ゲラン菌)およびコリネバクテリウム・パルブム(Corynebacterium parvum)を含む。
【0162】
二官能性または誘導体化薬剤(例えば、マレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基を通しての共役)、Nヒドロキシスクシンイミド(リジン残基を通して)、グルタルアルデヒド、コハク酸無水物またはSOCl)を用いて、前記ニトロ化ニューロトロフィン(またはその断片もしくは変種)を免疫化される種にとって免疫原性であるタンパク質(例えば、キーホールリンペットヘモシニアン(KLH)、血清アルブミン、ウシチログロブリン、または大豆トリプシンインヒビター)に共役させることが有用であってよい。
【0163】
溶液は、数回(例えば、一日に4〜21回)動物に投与される。加えて、適切な担体もまた、免疫原による免疫化に使用できる。
【0164】
ポリクローナル抗体は、抗体分子の不均一な集団であり、前記少なくとも1つのニトロ化ニューロトロフィン(または断片もしくはその変種)、またはその抗原的に機能的な誘導体で免疫化した動物の血清に由来する。
【0165】
特定の抗原に対する均質な抗体の集合であるモノクローナル抗体(mAb)は、培養物中の連続継代細胞系による抗体分子の生産のためのあらゆる技術によって得てよい。
【0166】
これらは、KohlerおよびMilsteinのハイブリドーマ技術((1975) Nature 256:495−497; and U.S. Pat. No. 4,376,110)、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kosborら(1983)Immunology Today 4:72; Coleら(1983)Proc. Natl. Acad. Sci. USA80:2026−2030)およびEBV−ハイブリドーマ技術(Coleら(1985)Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy, Alan R. Liss, Inc., pp. 77−96)を含むが、これらに限定されない。そのような抗体は、IgG、IgM、IgE、IgA、IgDおよびそのいずれかのサブクラスを含むいずれかの免疫グロブリンクラスであってよい。本発明のmAbを生産するハイブリドーマは、インビトロまたはインビボで培養してよい。
【0167】
本発明のmAbの生産は、特に、免疫化された動物由来の免疫細胞(例えば脾細胞)の回収、および、これらの免疫細胞と融合パートナーとの融合を含む。
【0168】
上記の免疫細胞と融合されるパートナー細胞として、哺乳類のミエローマ細胞を使用することができる。好んでここに使用されるミエローマ細胞の細胞系の例は、ネズミミエローマ細胞系SP2/0−Ag14といった様々な既知の細胞系、または、ATCC HB8464細胞系といった融合型マウスミエローマ/非悪性Bリンパ球株を含む。
【0169】
上述の免疫細胞とミエローマ細胞との細胞融合は、基本的に、既知の方法、例えばKohlerおよびMilsteinの方法によって行うことができる(Kohler. G. and Milstein, C., Methods Enzymol. (1981) 73, 3−46)。
【0170】
より具体的には、上記の細胞融合は、標準栄養培養液で、例えば、細胞融合促進物質の存在下で行なわれる。細胞融合促進物質として、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、センダイウイルス(HVJ)などが使用される。望ましい場合、ジメチルスルホキシドといったアジュバントも、さらなる融合効率の増強のために追加して使用できる。
【0171】
ミエローマ細胞に対する免疫細胞のいずれかの比率が、ここでの使用のために設定されてよい。例えば、免疫細胞の数がミエローマ細胞のそれより1〜10倍大きいことが望ましい。上述の細胞融合のために使用される培養液として、例えば、RPM11640培養液、または、上述のミエローマ細胞株の成長に適切なMEM培養液、または、この種の細胞培養のために使われるその他の標準的培養液を使用できる。さらに、ウシ胎児血清(FCS)といった血清液体を、これらと併用して使用することができる。
【0172】
細胞融合は、上記の培養液において、十分な量の上記免疫細胞およびミエローマ細胞を混合し、ほぼ37℃に予め加熱したPEG(例えば、約1000〜6000の平均分子量を有する)溶液(一般に30〜60%(w/v)の濃度)を添加し、次に溶液を混合し、目的とする融合細胞(ハイブリドーマ)を形成することで行われる。続いて、適切な培養液を連続的に添加し、次に、遠心分離による上澄みの除去の工程を繰り返し、ハイブリドーマの成長に不利な細胞融合のための試薬等が除去される。
【0173】
そのように得られたハイブリドーマは、HAT培養液(ヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジンを含む培養液)といった標準選択培養溶液におけるハイブリドーマの培養によって選択される。上記のHAT培養液における培養は、目的のハイブリドーマ以外の細胞(融合していない細胞)が死ぬのに十分な期間(通常、数日から数週間)継続される。続いて、標準限界希釈法が行われ、目的の抗体を生産するハイブリドーマのスクリーニング及びモノクローニグ(monocloning)が行なわれる。
【0174】
抗原で非ヒト動物を免疫化することによって上述のハイブリドーマを得る方法に加えて、前記ニトロ化ニューロトロフィン(またはその断片もしくは変種)に対する結合活性を有する望ましいヒト抗体は、また、前記ニトロ化ニューロトロフィン(またはその断片もしくは変種)またはその機能的な抗原性誘導体で、インビトロでヒトリンパ球を感作すること、および、感作したリンパ球を永続的な分裂能を有するヒト由来ミエローマ細胞と融合させることによって得ることができる(日本特許出願(公告)No.1−59878 B(1989)参照)。
【0175】
そのように作製したモノクローナル抗体を生産するハイブリドーマは、標準培養液で継代培養でき、または、液体窒素に長期間に保存できる。
【0176】
ハイブリドーマからモノクローナル抗体を得るために使用される方法の1例は、ハイブリドーマを培養し、標準的方法によって培養上清中のモノクローナル抗体を得ることを含む。その他の方法は、ハイブリドーマを増殖させることに適合性のある哺乳類にハイブリドーマを投与し、腹水中のモノクローナル抗体を得ることに関する。前者の方法は高純度の抗体を得るのに適切である。一方、後者の方法は抗体の大量生産に適す。
【0177】
本発明に使用できるモノクローナル抗体は、ハイブリドーマから抗体遺伝子をクローニングし、遺伝子を適切なベクターに組み込み、宿主にベクターを導入し、その後、遺伝子工学技術によって、組換えモノクローナル抗体を宿主に生産させることによって作られる組換えモノクローナル抗体であってよい(例えば、Vandamme, A. M. ら., Eur. J. Biochem. (1990) 192, 767−775, 1990参照)。
【0178】
上述の宿主細胞に加えて、トランスジェニック動物または植物もまた、組換え抗体の生産に使用できる。
【0179】
上述の抗体に加えて、キメラ抗体またはヒト化抗体といった人工的に改変した遺伝子組換え抗体を、例えば、ヒトに対する異種抗原性を低下させるために使用することができる。これらの改変抗体は、既知の方法を使用して生産できる。
【0180】
キメラ抗体は、例えば、抗体可変部をコードするDNAとヒト抗体C領域をコードするDNAとをつなぎ、発現ベクターに生成物を組み込み、その後、宿主にベクターを導入して抗体の生産を誘導することで得ることができる。この既知の方法を使用して、本発明に有用なキメラ抗体を得ることができる。
【0181】
ヒト化抗体はまた、ヒト以外の哺乳類(例えばマウス)の抗体CDR(相補性決定領域)をヒト抗体のCDRに融合させて得られる、再構築ヒト抗体(reshaped human antibodies)とも呼ばれる。その一般的遺伝子組み換え技術は既知である(欧州特許出願公開EP125023およびWO96/02576、またはその対応米国出願の1つ、例えばUS6068040を参照)。
【0182】
本発明に使用される抗体は、分子全体に限定されず、それが少なくとも1つのニトロ化ニューロトロフィン(または断片もしくはその変種)に結合し、且つ、前記少なくとも1つのニトロ化ニューロトロフィン(または断片もしくはその変種)による、運動ニューロンに対するアポトーシス効果を抑制および/または遮断する能力、および/または、前記少なくとも1つのニトロ化ニューロトロフィン(または断片もしくはその変種)による、感覚神経節に対する刺激および/または誘導の効果を抑制および/または遮断する能力を維持する限り、抗体の断片またはその修飾された生成物であってもよい。
【0183】
多価の、好ましくは二価の抗体および一価の抗体が含まれる。抗体の断片の例は、Fab、F(ab’)2、Fv、1つのFabおよび完全なFcを有するFab/cおよび一本鎖Fv(scFv)を含み、ここにおいて、H鎖またはL鎖のFvは連結される。具体的には、抗体断片は、パパインまたはペプシンといった酵素で抗体を処理することで合成され、または、これらの抗体断片をコードする遺伝子が構築され、この遺伝子が発現ベクターに導入され、および、その後、この遺伝子が適切な宿主細胞にて発現される(例えば、Rousseaux, J. ら、Methods in Enzymology (1989) 121, 663−669およびBird, R. E. ら、TIBTECH (1991) 9, 132−137参照)。
【0184】
scFvは、抗体のH鎖V領域とL鎖V領域とをつなぐことで得られる。scFvにおいて、H鎖V領域とL鎖V領域とは、リンカー、または好ましくはペプチドリンカーを介してつなげられる(Huston, J. S. ら、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. (1988) 85, 5879−5883)。scFvのH鎖V領域およびL鎖V領域は、本明細書にて記載される抗体の何れかを由来としてよい。V領域をつなぐペプチドリンカーとして、例えば、12から19のアミノ酸残基を含む何れかの一本鎖ペプチドが使用される。
【0185】
scFvをコードするDNAは以下の通りに得ることができる。増幅は、(上記抗体のH鎖またはH鎖V領域をコードするDNA、および、L鎖またはL鎖V領域をコードするDNAの)所望のアミノ酸配列をコードする全体またはDNA部分をテンプレートとして用いて、および、両端を特定するプライマーペアを用いて、PCR方法によって実行される。増幅は、その後さらに、ペプチドリンカー部をコードするDNAおよび両端がH鎖およびL鎖にそれぞれ連結するように特定するプライマーペアを組み合わせた使用により行われる。
【0186】
更に、一旦scFvをコードするDNAを調製すれば、当該DNAを含む発現ベクター、および当該発現ベクターで形質転換された宿主は、標準的な方法によって得ることができる。加えて、宿主の使用によって、scFvは標準的方法に従って得ることができる。
【0187】
これらの抗体断片は、宿主を用いて、上記方法と同様の様式でその遺伝子を得て、その後当該遺伝子の発現を行うことで得ることができる。本発明における「抗体」はまた、これらの抗体断片を含む。
【0188】
培養にて増殖する遺伝子組換え哺乳動物細胞(例えばチャイニーズハムスター卵巣細胞)は、全長mAbの製造において産業上の標準であるものの、哺乳動物細胞は、抗体断片(例えばFabまたはscFv)の生産に対する適正が低い可能性があり、原核生物の発現系(例えばE.コリ)またはその他の真核生物の発現系(例えば酵母または植物細胞)が、好んで使用されてもよい。
【0189】
更に、本発明に使用される抗体は、遺伝子工学技術によって製造することもできる、二重特異性抗体(bispecific antibody)であってもよい。
【0190】
上記のように発現され製造される抗体は、細胞または宿主動物から単離でき、および均一な濃度で精製できる。本発明に使用される抗体の単離および精製は、アフィニティーカラムを用いて実行できる。プロテインAカラムを使用するカラムの例は、Hyper D, POROS, Sepharose F. F. (Pharmacia)である。タンパク質に使用されるその他の標準的な単離および精製方法を使用してよく、これらの使用に関して制限はない。例えば、上記アフィニティーカラム以外のクロマトグラフィーカラム、フィルター、限外濾過、塩析法、透析等を、適切に選択し、および、組み合わせて使用してよく、それによって、抗体を単離しおよび精製できる(Antibodies A Laboratory Manual. Ed Harlow, David Lane, Cold Spring Harbor Laboratory, 1988)。
【0191】
抗体の機能を模倣する化学物質を製造することができる。
【0192】
本発明の抗体の機能を模倣する化学物質の構築および製造の幾つかの方法が存在する。
【0193】
1つのアプローチでは、代替となるタンパク質フレームワーク(例えば、チトクロムb562またはリボ核酸(RNA)を含む構造)を利用する(Hsieh−Wilson ら. 1996, Acc. Chem. Res. 29: 164−170)。
【0194】
ベンゾジアゼピン、ベータ−ターン模倣物(beta−turn mimics)、プロテアーゼ阻害剤およびプリン誘導体といった非天然オリゴマーもまた、抗体模倣物として機能する能力について試験された。
【0195】
非天然生体高分子(例えば、オリゴカルバメート(oligocarbamates)、オリゴウレア(oligoureas)およびオリゴスルホン(oligosulfones))が、抗体模倣物として提案されている。
【0196】
抗体の認識特性の一部を有する分子が、骨格(例えばキサンテーゼ(xanthese)またはクバン)またはカリックスアレーン単位に様々な置換基をつなぐことで構築された。これらの分子は、認識部位として複数のペプチドループを有すが、骨格によって形成される相対的に強固な有機フレームワーク周辺に造られる。
【0197】
本発明は、とりわけ、ニトロ化ニューロトロフィン(または断片もしくはその変種)による運動ニューロンに対するアポトーシスの効果を抑制および/または遮断する、および/または、ニトロ化ニューロトロフィン(または断片もしくはその変種)による感覚神経節に対する刺激および/または誘導の効果を抑制および/または遮断する能力を有するこれらの抗体模倣物に関する。
【0198】
[本発明の修飾ニューロトロフィンのコンペティター(competitor)をスクリーニングする生物学的システム]
本発明の修飾ニューロトロフィン(または保存的断片もしくはその変種)と競合する分子のスクリーニングに使用できる生物学的システムの構築および製造のいくつかのアプローチも存在する。
【0199】
好ましいシステムのうちの1つは、リボソームディスプレイシステム(ribosomal display system)である。リボソームディスプレイシステムは、少なくとも1つのリボソーム、少なくとも1つのタンパク質および少なくとも1つのこのタンパク質をコードするmRNAを含む。有利なリボソームディスプレイシステムは、HanesおよびPluckthunによって記述された(1997, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, vol. 94, pages 4937−4942)。そのようなリボソームディスプレイシステムは、本発明の抗体、とりわけ本発明の特異的な抗体、好都合に本発明のscFv、とりわけ本発明の特異的なscFvに適用できる。
【0200】
したがって、本発明は、また、本発明の少なくとも1つのscFv(とりわけ本発明の少なくとも1つの特異的なscFv)ならびにscFv等をコードする少なくとも1つのmRNAが付着された、少なくとも1つのリボソームから成る、リボソームディスプレイシステムに関する。
【0201】
そのような生物学的システム、および、とりわけそのようなリボソームディスプレイシステムは、そのような生物学的システムに結合する化合物、および好ましくは、本発明の少なくとも1つの修飾ニューロトロフィン(または保存的断片もしくは保存的変種)と、前記生物学的システムへの結合において競合する化合物のスクリーニングに好都合に使用できる。
【0202】
そのような化合物は、それによって、同定および単離される。
【0203】
好ましい化合物は、本発明のリボソームディスプレイシステム(好ましくは、少なくとも1つのリボソーム、本発明の少なくとも1つの特異的なscFvおよびこのscFvをコードする少なくとも1つのmRNAを含む)に結合し、別のリボソームディスプレイシステムと交差反応(すなわち結合)しないものであり、ここにおいて、前記その他のリボソームディスプレイシステムはまた、少なくとも1つのリボソーム、少なくとも1つの抗体(例えばscFv)およびこの抗体をコードする少なくとも1つのmRNAを含むが、前記抗体(前記scFv)は、少なくとも1つのニューロトロフィンに結合し、この少なくとも1つのニューロトロフィンから得られる何れの修飾ニューロトロフィンにも結合しない。
【0204】
本発明は、とりわけ、運動ニューロンに対するニトロ化ニューロトロフィン(または断片もしくはの変種)によるアポトーシスの効果を調節、好ましくは抑制および/または遮断する能力、および/または、感覚神経節に対するニトロ化ニューロトロフィン(または断片もしくはの変種)による刺激および/または誘導の効果を調節、好ましくは抑制および/または遮断する能力を有するこれらの化合物に関する。
【0205】
そのような化合物は、その調節活性、好ましくはその阻害または遮断活性を、TrkA、p75NTR、またはその他の受容体もしくは補助受容体(例えばソーティリン)といった内因性の標的への結合について、内因性ニトロ化ニューロトロフィンと競合することにより、発揮してよい。
【0206】
[治療的および診断的応用]
本発明の修飾ニューロトロフィン(または保存的断片もしくはその変種)は、運動ニューロンのアポトーシスおよびまたは感覚神経節からの神経突起成長の誘導および/または刺激の能力を有する。
【0207】
修飾ニューロトロフィンの非保存的断片は、当業者によって、例えばペプチドまたはポリペプチド合成によって製造できる。
【0208】
少なくとも1つのアミノ酸の置換および/または欠失および/または付加によって、修飾ニューロトロフィンの非保存的変種、または前記修飾ニューロトロフィンもしくは修飾ニューロトロフィン断片に由来する修飾ニューロトロフィン断片の非保存的変種もまた、例えばペプチドまたはポリペプチド合成によって当業者が製造することができる。
【0209】
そのような非保存的断片または変種は、運動ニューロンのアポトーシスおよび/または神経突起成長を誘導および/または刺激する能力を失っており、または、哺乳類に注入した場合、そのような誘導および/または刺激について検出可能な能力を非常に低い程度でしか示さない。
【0210】
そのような非保存的断片または変種は、それ自身においておよびそれ自身の抗原性であってよく、または、少なくとも1つのその他の化合物(例えば、共に添加された、または抱合によって添加されたアジュバント)と関連して、抗原性になり、または、抗原性を増大させることができる。
【0211】
そのような非保存的断片または変種は、したがって、能動免疫のための薬剤として使用してよい。それを必要とする哺乳類(例えばヒト)に投与される場合、それは、免疫応答、とりわけ抗体産生応答を誘導および/または促進でき、それによって、本発明の少なくとも1つの修飾ニューロトロフィン(または保存的断片もしくはその変種)に結合する抗体が、前記哺乳類によって製造される。
【0212】
好ましい非保存的断片または変種は、抗体産生応答を誘導および/または刺激し、それによって、本発明の少なくとも1つの修飾ニューロトロフィン(または保存的断片もしくはその変種)に結合するが、非修飾天然の(健康的な)ニューロトロフィンに結合しない抗体が前記哺乳類から製造されるものである。
【0213】
そのような非保存的断片または変種は、運動ニューロンのアポトーシスおよび/または神経突起成長の治療および/または寛解および/または予防のための免疫抗体産生応答を誘導する抗原として有用である。それゆえ、そのような本発明の修飾ニューロトロフィン(または保存的断片もしくはその変種)は、痛みの治療および/または寛解および/または予防のための薬剤として、および/または、神経変性の疾病または症状の治療および/または寛解および/または予防のための薬剤として、有用である。
【0214】
化合物、例えば、本発明のリボソームディスプレイシステムによるスクリーニングによって同定および単離できる化合物は、本発明の修飾ニューロトロフィン(または保存的断片もしくはその変種)の活性と競合し、それによって、運動ニューロンのアポトーシス、および/または感覚神経節からの神経突起成長を遮断および/または阻害できる。
【0215】
それ必要とする哺乳類(例えばヒト)に投与される場合、そのような化合物は、運動ニューロンのアポトーシスおよび/または感覚神経節からの神経突起成長の遮断および/または阻害に有用である。
【0216】
本発明の結合剤、そのような本発明の抗体、および、とりわけ本発明の特異的な抗体は、本発明の修飾ニューロトロフィン(または保存的断片もしくはその変種)に結合する。
【0217】
そのような結合剤は、受動免疫のための薬剤として有用である。それ必要とする哺乳類(例えばヒト)に投与される場合、そのような結合剤は、前記本発明の修飾ニューロトロフィン(または保存的断片もしくはその変種)に結合し、それによって、運動ニューロンのアポトーシスおよび/または感覚神経節からの神経突起成長を遮断および/または阻害するだろう。
【0218】
そのような結合剤は、運動ニューロンのアポトーシスおよび/または感覚神経節からの神経突起成長を遮断および/または阻害する薬剤として有用である。
【0219】
そのような結合剤は、運動ニューロンのアポトーシスおよび/または神経突起の成長の受動免疫治療および/または寛解および/または予防のための薬剤として有用である。それゆえ、そのような結合剤は、痛みの治療および/または寛解および/または予防のための薬剤として、および/または、神経変性の疾病または症状の治療および/または寛解および/または予防のための薬剤として有用である。
【0220】
本発明はまた、以下の組成物に関する:
−本発明の非保存的断片および非保存的変種から成る群から選択される少なくとも1つの要素を含む何れかの組成物、または、
−少なくとも1つの前記競合化合物を含む何れかの組成物、または
−本発明の結合剤(とりわけ本発明の特異的な結合剤、さらにとりわけ本発明の抗体、化学的模倣物、および生物学的模倣物)から成る群から選択される少なくとも1つの要素を含む何れかの組成物。
【0221】
そのような組成物は、さらに、賦形剤、希釈剤、緩衝剤、医薬的ベヒクル、生理的に許容可能なベヒクル、アジュバントから成る群から選択される少なくとも1つの要素を含んでよい。
【0222】
本発明は、そのような医薬組成物、免疫原性組成物、免疫学的組成物、薬剤またはワクチンに関する。
【0223】
能動免疫のための抗原として使用される場合、本発明の非保存的断片および非保存的変種、またはそれらの抗原的に機能的な等価物から成る群から選択される少なくとも1つの要素が、さまざまな経路を介して、哺乳類、好ましくはヒトに投与されてよい。
【0224】
受動免疫のために使用される場合、本発明の結合剤(およびとりわけ特異的な結合剤、例えば特異的なmAb)、またはその抗原的に機能的な等価物は、さまざまな経路を介して、哺乳類、好ましくはヒトに投与されてよい。
【0225】
これらの経路は、特に、経口的、非経口的、腹腔内、静脈内、動脈内、局所的、経皮的、舌下、筋肉内、直腸、経頬(transbuccally)、鼻腔内、リポソームによって(liposomally)、吸入によって、経膣的、眼球内(intraoccularly)、(例えばカテーテルまたはステントによる)局所送達によって、皮下、脂肪内(intraadiposally)、関節内またはくも膜下腔内を含む。抗体は、局所的に(例えば、ステントまたはカテーテルによって)および/または定期的に放出される様式で、宿主に送達されてもよい。
【0226】
本発明の結合剤(例えばAb)、とりわけ本発明の特異的な結合剤(例えば特異的mAb)もまた、動物における、例えば哺乳類(例えばヒト)における、とりわけそのような動物から採取したサンプル中における本発明の修飾ニューロトロフィン(または保存的断片もしくはその変種)の存在または過剰な存在の検出に有用である。
【0227】
そのような本発明の修飾ニューロトロフィン(または保存的断片もしくはその変種)の過剰な存在は、神経変性の疾病もしくは症状または痛みの症状の存在またはそれらを発症するリスクを指し示す。
【0228】
本発明の結合剤(例えばAb)、とりわけ本発明の特異的な結合剤(例えば特異的なmAb)は、従って、運動ニューロンアポトーシスおよび/または神経突起成長に関する症状または疾病の存在またはそれらを発症するリスクの診断にも有用である。
【0229】
運動ニューロンのアポトーシスを遮断および/または阻害することが有用である疾病または症状は、特に、神経変性の症状または疾病、ALS(筋萎縮性側索硬化症)、アルツハイマー病、ハンチントン舞踏病、多発性硬化症、記憶欠損に関する何れかの疾病または症状、および/または、集中障害、ならびに、神経炎症(neuroinflammatory)症状または疾病を含む。
【0230】
感覚神経節からの神経突起成長を遮断および/または阻害することが有用な疾病または症状は、特に、痛みの状態または症状または感覚を含み、とりわけ、以下のものを含む:
− 神経障害性の痛み(とりわけ、片頭痛、慢性的片頭痛、推定鎮痛薬乱用頭痛(probable analgesic−abuse headache PAAH)、原発性線維筋痛症候群(primary fibromyalgia syndrome PFMS)、神経損傷誘導性神経障害性疼痛(nerve−injury induced neuropathic pain)、坐骨神経傷害(sciatic nerve lesions)、慢性的絞搾損傷(chronic constriction injury))、
− 関節の痛み(とりわけ、骨関節炎症状、骨関節症(osteoarthritic conditions)、骨関節炎)、
− 炎症性疼痛、
− 癌疼痛。
【0231】
本発明は、また、本発明の修飾ニューロトロフィン、その保存的断片、およびそのような修飾ニューロトロフィンの保存的変種またはそのような保存的断片の保存的変種を含む群から選択される少なくとも1つの要素を含む何れかの組成物に関する。そのような組成物は更に、賦形剤、希釈剤、緩衝剤、医薬品的ベヒクル、生理的に許容可能なベヒクル、アジュバントから選択される少なくとも1つの要素を含んでよい。本発明は、そのような医薬組成物、免疫原性組成物、免疫学的組成物、薬剤またはワクチンに関する。
【0232】
そのような組成物は、運動ニューロンアポトーシスおよび/または神経突起成長の誘導および/または刺激に有用である。
【0233】
これらは、したがって、運動ニューロンアポトーシスおよび/または神経突起成長の刺激および/または誘導が望まれる疾病または症状の予防および/または治療および/または寛解に有用であり、好ましくは、神経突起成長の刺激および/または誘導が望まれる疾病または症状、例えば、神経障害および神経損傷をもたらす疾病、症状または外傷(脳卒中、脊椎損傷および神経変性の疾病を含む)の予防および/または治療および/または寛解に有用である。
【0234】
本願は、また、それを必要とする哺乳類に有効量の抗体、抗体断片またはscFvを投与することを含む、そのような疾病または症状の治療および/または寛解および/または予防のための方法に関し、ここにおいて、前記抗体、抗体断片またはscFvは、少なくとも1つのニトロニューロトロフィンに結合し、前記少なくとも1つのニトロニューロトロフィンは、そのTyrおよびTrp残基から選択される少なくとも1つの残基の少なくとも1つのニトロ基を含み、非ニトロ化ニューロトロフィンと交差反応しない。
【0235】
本願はまた、そのようなニューロトロフィン構造を含むと疑われるサンプル中において、ニューロトロフィン構造の異常な翻訳後修飾が存在するかどうかを決定する方法であって、本発明の結合剤、例えば本発明の抗体、とりわけ本発明の特異的な結合剤、例えば本発明の特異的な抗体が前記サンプルに含まれる標的に結合するかを決定し、これによって、そのような結合によって、異常な翻訳後修飾を受けたニューロトロフィン構造の前記サンプル中における存在が示されることを含む方法に関する。
【0236】
前記異常な翻訳後修飾は、特に、上記のように説明され、下記のように例証される、前記ニューロトロフィン構造のニトロ化を含む。
【0237】
本願はまた、上記の疾病または症状といった運動ニューロンアポトーシスおよび/または神経突起成長に関する疾病または症状の診断のための方法およびキットに関する。
【0238】
本発明のキットは、少なくとも1つの本発明の結合剤、例えば少なくとも1つの本発明の抗体、とりわけ少なくとも1つの本発明の特異的な結合剤、例えば少なくとも1つの本発明の特異的な抗体を含む。
【0239】
本発明による診断方法は、本発明の結合剤、例えば本発明の抗体、とりわけ本発明の特異的な結合剤、例えば本発明の特異的な抗体が、前記診断を受ける哺乳類に含まれる、好のましくは、そのような哺乳類から採取した代表的サンプル(すなわち、ニューロトロフィン構造を含むこと疑われるサンプル)中に含まれる標的(すなわちリガンド)に結合するかどうかを決定し、それによって、そのような結合が、前記哺乳類が、前記疾病または症状を有し、またはそのような疾病または症状の高いリスクがあることを表すことを含む。
【0240】
本願において、「診断」という用語は、従って、疾病または症状の存在の決定、ならびに、その発症の予測、または、少なくともそのような疾病または症状を発症する対象の傾向の評価を包含する。
【0241】
[スクリーニングの方法]
本発明は、また、本発明の修飾ニューロトロフィン(または保存的断片もしくはその変種)が運動ニューロンに対して示す可能性のあるアポトーシス活性、および/または、本発明の修飾ニューロトロフィン(または保存的断片もしくはその変種)が感覚神経節に対して示す可能性のある神経突起成長効果を阻害および/または遮断する能力を有する化合物のスクリーニングの方法に関する。
【0242】
候補化合物は、本発明の少なくとも1つの結合剤(例えば本発明の少なくとも1つの抗体)、とりわけ本発明の少なくとも1つの特異的な結合剤(例えば、本発明の少なくとも1つの特異的な抗体、例えば本発明の特異的なmAb)、または、本発明の少なくとも1つのリボソームディスプレイシステムに結合するそれらの能力についてスクリーニングされ、それによって、そのような結合能力によって、前記アポトーシス活性および/または前記神経突起成長効果を阻害および/または遮断する可能性が示される。
【0243】
好ましい化合物は、非修飾天然ニューロトロフィンに特異的なmAb(すなわち、非修飾天然ニューロトロフィンに結合し、それを由来とする修飾ニューロトロフィンに結合しないmAb)に結合しないそれらの化合物である。
【0244】
「含む(including)」または「含む(containing)」と同義である「含む(comprising)」という用語は、制限がなく、および付加的で、列挙されない(unrecited)要素、成分または方法工程を除外せず、一方、「から成る(consisting of)」という用語は、特記しない何れの付加的要素、工程、または成分を除外する、閉じた用語である。
【0245】
「から本質的に成る」という用語は、部分的に開いた用語であり、付加的な、列挙されない要素、工程または成分は、これらの付加的な要素、工程または成分が、本発明の基礎的なおよび新規の特性に具体的に影響しない限り、除外されない。
【0246】
それ故、「含む(comprising)」(または、「含む(comprise(s))」)という用語は、「から成る(consisting of)」(「から成る(consist(s) of)」)という用語、ならびに、「から本質的になる(essentially consisting of)」(「から本質的になる(essentially consist(s) of)」)という用語を含む。従って、「含む(comprising)」(または、「含む(comprise(s))」)という用語は、本願では、「から成る(consisting of)」(「から成る(consist(s) of)」)という用語、および「から本質的になる(essentially consisting of)」(「から本質的になる(essentially consist(s) of)」)という用語をとりわけ包含した意味である。
【0247】
本願に引用される全ての参考文献の関連ある開示のそれぞれは、特に援用される。以下の例は、例証として提供され、限定を意味しない。
【実施例】
【0248】
概要
神経成長因子(NGF)の過剰発現およびパーオキシナイトライトの生産の増大は、いくつかの神経変性の疾病において生じる。我々は、NGFが、その生物学的活性を調節する翻訳後の酸化的またはニトロ化的修飾を受け得るのかどうかを調べた。天然NGFと比較して、パーオキシナイトライト処理NGFは、生理的に適切な濃度において、p75NTR依存性運動ニューロンアポトーシスを誘導する特殊な能力を示した。天然NGFが運動ニューロンの死を誘導するために、酸化窒素(NO)の外的供給源を必要とするのに対し、パーオキシナイトライト処理NGFは、外因的なNOがない場合でも、運動ニューロンアポトーシスを誘導した。にもかかわらず、NOはパーオキシナイトライト修飾NGFのアポトーシス活性を増強した。p75NTRに対する阻止抗体またはアンチセンス処理によるp75NTR発現のダウンレギュレーションは、パーオキシナイトライト処理NGFによって誘導される運動ニューロンアポトーシスを阻害した。我々は、どんな酸化的修飾が、この中毒性機能獲得を誘導するかを調べ、パーオキシナイトライトが用量依存的な様式でチロシンニトロ化を誘導することを発見した。そのうえ、3,3’−ジチロシン架橋結合の証拠が認められないにもかかわらず、パーオキシナイトライトは、NGFの安定的な高分子量オリゴマーの形成を誘発した。尿酸塩によるチロシンニトロ化の阻止は、NGFアポトーシス活性に対するパーオキシナイトライトの効果を無効にした。これらの結果は、パーオキシナイトライトによるNGFの酸化は、p75NTRを通したNGFアポトーシス活性を10,000倍に増強することを意味する。我々の知る限りでは、これは、ニューロトロフィンをアポトーシス薬剤へと変換する始めて発見された翻訳後修飾である。
【0249】
導入
我々は、NGFが、翻訳後の酸化的またはニトロ化的修飾を受け、その機能的活性を変化させ得るかどうかを調べた。我々は、インビトロにおけるパーオキシナイトライトによるNGFの酸化がニトロ化を引き起こし、高分子量のオリゴマーの形成を誘導することを報告する。そのうえ、これらの酸化的修飾は、生理的に適切な濃度において、p75NTR依存的運動ニューロンアポトーシスを誘導する特殊な能力を付与する。我々のデータは、パーオキシナイトライトによる酸化ストレスは、ニューロトロフィン活性を決定的に調整できることを示す。
【0250】
材料および方法
パーオキシナイトライト処理:パーオキシナイトライトは、特にUpstateから入手可能である(例えばUpstate USA, Charlottesville, VA 22903, USA)。パーオキシナイトライト濃度は、302nm(ε=1,670M−1cm−1)にて分光光度的に測定した。希釈した原液を、0.01MのNaOHにて新鮮に調製した。NGF(Harlan; Indianapolis, USA)と、種々の濃度のパーオキシナイトライト(2mMから0.25mM)との反応が、0.2mg/mLから1.0mg/mLのタンパク質濃度で行われ、同様の結果が得られた。反応は、20mMの炭酸水素ナトリウムを含む50mMのナトリウムリン酸緩衝液(pH7.4)で行った。NGFは、パーオキシナイトライト(各々1μL)の10ボーラス添加(10 bolus addition)に供し、所望の終濃度のパーオキシナイトライトに達成させた。パーオキシナイトライト原液の1ボーラスを試験管の上部に迅速に添加し、3秒間ボルテックスにより混合した。当該方法を10回繰り返した。pH変化または混入に起因するパーオキシナイトライト処理の非特異的な効果の可能性を除外するため、コントロール実験を、希釈したNaOHまたは分解するパーオキシナイトライト(逆順の添加(ROA))を使用して行った。パーオキシナイトライトと、ウシ血清アルブミン(Sigma)、FGF−1(Sigma)およびFGF−2(R&D Systems)との処理を、上述の通り、0.2 mg/mLの濃度で行った。
【0251】
テトラニトロメタンによるNGFニトロ化:NGF(Harlan)と40モル倍過剰のテトラニトロメタン(Sigma)との反応を、1mg/mLのタンパク質濃度で、0.1Mのトリス−HCl緩衝剤(pH8.0)にて40分間行った。反応は、0.05Mの重炭酸アンモニウム(pH8.0)で平衡化および展開(develop)させたSephadex G−25カラムに反応混合物を通すことで終了させた。
【0252】
電気泳動法およびウエスタンブロット:SDS−PAGEは、還元条件の下、15%ポリアクリルアミドミニゲルにて実行した。サンプルは、泳動前にLaemLi緩衝液で5分間煮沸した。タンパク質は、クマシーブルーまたは銀染色によって可視化した。ウエスタンブロット分析のために、タンパク質は、ニトロセルロース膜に転写した(Hybond−ECL, Amersham)。膜を、ブロッキング溶液(5%BSA、0.1% Tween20を含むトリス緩衝食塩液(TBS)(pH7.4))にて2時間ブロッキングし、ブロッキング溶液中に希釈した一次抗体とともに一晩インキュベーションした。0.1% Tweenを含むTBSによる洗浄の後、膜をペルオキシダーゼ抱合ヤギ抗ウサギ抗体(1:4000;Bio−Rad)で1時間インキュベートし、その後、洗浄し、ECL化学発光検出システム(Amersham)を用いて現像した。使用した一次抗体は、抗NGF−βポリクローナル抗体(1:3000; Chemicon)およびニトロチロシンに対するポリクローナル抗体(1:3500; Upstate)であった。
【0253】
多角度光散乱検出と組み合わせたサイズ排除クロマトグラフィー:パーオキシナイトライト(1mM)で処理したNGFサンプルまたは0.5mg/mLの濃度の分解パーオキシナイトライトで処理したNGFサンプルを、DAWN−EOS多角度光散乱検出器およびOptilabRex屈折計(Wyatt Tech. Corp.)に一列に接続したBiosuite 125 HPLCサイズ排除カラム(Waters)上に載せた。HPLCカラムは、50mMリン酸ナトリウム、50mMナトリウム硫酸塩緩衝液(pH 7.2)で平衡化および展開した。光散乱ユニットは、製造者の説明書に従って調整した。0.185mL/gの値を、タンパク質のdn/dcと想定した。検出反応は、モノマーウシ血清アルブミンのためのシグナルを測定することで正常化した。光散乱ユニットおよび屈折計の温度は25℃に維持した。カラムおよび全ての外部の接続は、周囲温度(約25℃)とした。流速は、実験の全体を通じて、0.5mL/分に維持した。
【0254】
質量分析研究:天然NGFまたはテトラニトロメタンもしくはパーオキシナイトライト(1mM)で処理したNGFのサンプルを、1mg/mLの濃度で、逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて分離した。定常相は、C18逆相Supelcoカラム(15cm x 4.6 mm, 5 μM)であった。移動相は、HO/CHCNおよび0.1%のトリフルオロ酢酸であった。55分にわたって、有機を5%から60%に増加させる線形勾配を使用して、分離を達成した。サンプルは、フラクションコレクターで回収し、減圧濃縮し、および、再懸濁し、全分子量変化のための質量分析またはトリプシン消化の分析のために分割した。分子量の全変化を発見するために、回収した画分を、0.1%ギ酸を含む30%アセトニトリルに再懸濁し、その後、Waters/micromass LCT Classicエレクトロスプレー飛行時間質量分析計に直接注入した。移動相は、30%アセトニトリル、0.1%ギ酸とし、流速5μL/分とした。キャピラリー電圧は3.018kVであり、ソース温度は80℃であり、サンプルコーン電圧は45Vであった。トリプシン消化は、50mMの重炭酸アンモニウム緩衝剤に0.1%のRapiGest(商標)溶液を再懸濁し、RapiGestTM SF Powderプロトコールに従って行った。簡潔には、サンプルをDTTで還元し、IAAでブロッキングし、その後、トリプシン(1:50,μgトリプシン:μgタンパク質)とともに37℃で一晩インキュベートした。TFAを、終濃度が0.5%となるように消化したタンパク質サンプルに添加し、サンプルを13000rpmで10分間遠心分離した。NanoAcquity Waters HPLCシステムを使用して、Waters Q−tof Ultima Global Mass分光計にサンプルを注入した。サンプルを、Jupiter C18トラップに2μL/分で充填し、その後、水および0.1%のギ酸で1μL/分で6分間洗浄した。45分間にわたる勾配(0.26μL/分)(2%アセトニトリル、0.1%ギ酸から開始され、〜2%/分で有機物が増大する)を用いてサンプルを溶出した。サンプルは、New Objective pico−frit、10cmカラムにおいて、Waters BEH C18材料上に分離し、その後、エレクトロスプレーキャピラリー電圧3.5kVおよびソース電圧70kVのWaters Nano Lockspray sourceを使用して注入した。データ依存的タンデム型質量分析を、親イオンのm/zに依存的な衝突エネルギーにて実行した。MSスペクトルを、Mascot MS/MSイオン検索エンジンを使用して検索し、ペプチドは同一または上記のスコアと報告された。
【0255】
精製された運動ニューロン培養物:培地および血清はGibco−Invitrogenから購入した。運動ニューロン培養物を、以前に記述されるとおり[44]、メトリザマイド勾配遠心分離とラットp75NTRに対するモノクローナル抗体(マウスmAb Ig192)によるイムノパニング(immunopanning)との組み合わせによって、15日胚(E15)のラット脊髄から作製した。運動ニューロンを、ポリオルニチン−ラミニンで予めコートした4ウェルマルチディッシュ(Nunclon)に、350細胞/cmの密度で播いた。培養は、2%ウマ血清、25mML−グルタミン酸塩、25μM 2−メルカプトエタノール、0.5mML−グルタミン、および2%B−27サプリメントを添加したNeurobasal(商標)培地で行った(Gibco−Invitrogen)。運動ニューロンの生存は、培地にGDNF (1 ng/mL; Sigma)を添加することで維持した。栄養因子の欠乏(NONE、GDNFなし)により誘導した運動ニューロン死は、全ての実験においてコントロールとして検出し、決して50%を超えることはなかった。異なる試薬による処理は、運動ニューロンのプレーティングから3時間後に行った。運動ニューロンの生存は、ディッシュ中の固定した領域において、細胞体直径の4倍長い完全な神経突起を示す全ての細胞を直接数えることで、48時間後に評価した。
【0256】
アンチセンス処理:p75NTR発現をダウンレギュレーションするためのアンチセンスオリゴヌクレオチドによる処理は以前に記述されるとおりに行った[45]。簡潔には、HPLC精製したホスホロチオネートアンチセンスおよびミスセンスオリゴヌクレオチド(5μM; Integrated DNA Technologies)を、精製した運動ニューロンの細胞懸濁液に添加し、播種の前にピペッティングを繰り返した。オリゴヌクレオチドは、培養の全時間にわたって存在していた。取込みの効率を測定するために、細胞を、5’56−FAM蛍光ラベルを付したp75NTRアンチセンスオリゴヌクレオチドとともにインキュベートした。細胞を、定常的に5%COとしたZeiss LSM510共焦点顕微鏡の加熱したステージ(37℃)に移した。蛍光は、63X油浸レンズにて画像をとった。取込み効率は、全ての実験で>96%であった。使用される配列は、以下の通りであった:p75NTRアンチセンス、5’−ACCTGCCCTCCTCATTGCA−3’(配列番号:5)およびp75NTRミスセンス、5’−CTCCCACTCGTCATTCGAC−3’(配列番号:6)[45]。使用されるアンチセンス配列は、インビボにおけるp75NTR依存的運動ニューロン死の抑制に効果できてあることが示されている[20]。
【0257】
統計:各々の実験は、少なくとも3回繰り返し、データは平均SDとして報告される。平均値の比較は、一元配置分散分析法によって行った。Student−Newman−Keuls試験を利用した平均値と差との間の対での対比は、p<0.05ならば統計学的に有意であると明言した。全ての統計計算は、SigmaStat Software (Jandel Scientific)を使用して行った。
【0258】
刺激されたアストロサイトによるニトロNGFの分泌:安静時のまたは刺激されたアストロサイト(FGF1,10ng/mL;およびLPS,5マイクロg/mL)からの条件培地(限外濾過によって40倍に濃縮した)を、特異的な抗ニトロNGF抗体を用いたウエスタンブロッティングによって分析した。標準的なNGF(50ng,Harlan)またはニトロNGF(50ng)は、最初の2つのレーンに充填した。使われた特異的抗ニトロNGF抗体はポリクローナル抗体であり、パーオキシナイトライトによって商業的に入手可能なマウスNGFをニトロ化し、そのように生産されたにニトロNGF種を単離して得たニトロ−NGFによるウサギの免疫化によって得たものである。特異的な抗ニトロNGF抗体として、ニトロNGFに結合し、非ニトロ化標準NGFと交差反応しないものを選択した。
【0259】
パーオキシナイトライトは、NGFの神経突起成長促進活性を増加させる:E15ラット胚(TrkAおよびp75NTRの両方を発現する)からの後根神経節外植片を、栄養性因子がない状態(NONE)、または、NGF(100ng/mL)、パーオキシナイトライトで処理したNGF(100ng/mL; nitroNGF−P)もしくはテトラニトロメタンで処理したNGF(ニトロNGF−TNM)が存在する状態で、Neurobasal培地中で培養した。24時間後、培養物を4%パラホルムアルデヒドで固定し、GAP−43に対する免疫蛍光に供した。ニトロNGFで処理した神経節が、NGFで処理した場合と比較して、神経突起成長が増加したことに留意される。
【0260】
結果
パーオキシナイトライトによる酸化はNGFアポトーシス活性を増強する
GDNF (1ng/mL)で維持した培養物において、p75NTRを発現している運動ニューロンは、NGFに感受性でない。しかしながら、パーオキシナイトライト処理したNGFは、1ng/mLと同程度に低い濃度で、運動ニューロン死を誘導した(図2A)。分解したパーオキシナイトライト(ROA)で処理したNGFは、運動ニューロンの生存に影響を与えなかった(図2A)。パーオキシナイトライト処理は、用量依存的にNGFアポトーシス活性を増強し、パーオキシナイトライト濃度が0.5mMを超える場合にはプラトーに達した(図2B)。以前に報告されたように[25]、酸化窒素供与体DETA−NONOate(10μM)から作られる、定常状態濃度の酸化窒素(<50 nM)の存在下、NGF−ROAは、10ng/mLを超える濃度で、運動ニューロン減少を有意に誘導した(図2C)。さらに、酸化窒素の存在下、パーオキシナイトライトで修飾されたNGFは、アポトーシス活性の増大を示し、わずか1pg/mLで33%の運動ニューロン減少を誘導した(図2C)。運動ニューロン培養物へのパーオキシナイトライト処理−BSA、−FGF−1または−FGF−2の添加は、運動ニューロン死を誘導せず(図2D)、このことは、パーオキシナイトライト処理NGFの特異的な効果を示している。
【0261】
パーオキシナイトライト処理NGFによって誘導される運動ニューロン減少は、一般的なカスパーゼ阻害剤DEVD−fmkによって遮断され(図3A)、アポトーシスの機構の活性化を示している。我々は、以前に、NGFがp75NTRを通したシグナル伝達によって運動ニューロンアポトーシスを誘導することをすでに示した[25]。パーオキシナイトライト処理NGFによって誘導されるアポトーシスもまた、p75NTR活性化に依存的だった。というのは、それが、p75NTRに対する阻止抗体の添加によって(図3A)、または、アンチセンス処理によるp75NTR発現のダウンレギュレーションによって(図3B)完全に阻害されたためである。対照として、アンチセンス処理も、酸化窒素の存在下、天然NGFによって誘導される運動ニューロンアポトーシスを遮断した(図3B)。NGFを含む、異なるアポトーシス刺激によって誘導される運動ニューロンアポトーシスは、パーオキシナイトライトの内因性の生産を必要とする[25、46−48]。パーオキシナイトライト処理NGFによって誘導される運動ニューロン減少は、一般的な酸化窒素シンターゼ(NOS)阻害剤、L−NAME(1mM)またはSOD模倣物およびパーオキシナイトライト分解触媒、MnTBAP(100μM)によって阻害され(図3C)、更に同様のアポトーシス機構の実行が確認される。
【0262】
パーオキシナイトライトは、NGFオリゴマー化およびニトロ化を誘導する
我々は、その後、NGFに対するパーオキシナイトライト処理によって誘導される修飾を分析した。パーオキシナイトライトの連続した大量添加にNGFをさらすと、3つの高分子量種の用量依存的な出現が生じることがSDS−PAGEからわかる。天然NGFの染色強度は、次第に、パーオキシナイトライト濃度の増大とともに減少した(図4A)。分解したパーオキシナイトライト(ROA)によるNGFの処理は、この移動シフトを誘導した。NGFオリゴマーの形成は、溶液中で、リアルタイム多角度光散乱検出(MALS)分析と組み合わせたHPLCサイズ排除クロマトグラフィーによって確認した(図4B)。分解したパーオキシナイトライトで処理したNGF(NGF−ROA)は、サイズ排除カラムから、二量体(33.0±1.2KDa)に相当する質量を有した単一のピークとして溶出した。対照的に、パーオキシナイトライト処理NGFは、二量体(33.2±0.6KDa)、四量体(68.5±3.5KDa)および八量体(125.0±10.0KDa)に相当すると思われる3つのピークとして溶出した。驚くべきことに、パーオキシナイトライト処理したNGF二量体は、天然二量体(NGF−ROA)の前に溶出し、タンパク質のニトロ化に起因する構造変化の存在を反映している。
【0263】
パーオキシナイトライト処理はまた、抗ニトロチロシン抗体による反応から明らかと成るように、NGFの用量依存的なニトロ化を誘導した(図4C)。酸化的修飾の特異的な部位は、精製された酸化生成物の質量分析によって決定した。天然NGFは、逆相HPLCによって、36.3および38.1分に2つのピークとして溶出し(図5A)、両方とも、質量分析によってNGFポリペプチド鎖と同定された。鎖Bは、鎖Aに存在する8つのN末端残基を欠き、NGF精製の際に、限定的な加水分解に起因して形成されることが知られている[40]。パーオキシナイトライトによるNGFの酸化は、逆相HPLCによって溶出されるように、いくつかの生成物の不完全な分離という結果となった(図5B)。38.6分にて回収されたパーオキシナイトライト処理画分の質量分析は、非修飾NGFの質量スペクトルと比較して、分子量の増大したいくつかの種を明らかにした(図6)。以前に記述されたように[40]、非修飾NGF鎖の一部は、C末端のアルギニン残基がなかった(図6A)。パーオキシナイトライト処理NGFにおいて、最も小さい質量シフトは、鎖Aの〜90Daの増大(13,252Daから13,341Daまで)であり、これは、2つのニトロ基の付加(各々45Da)を意味する(図6B)。加えて、パーオキシナイトライト処理は、いくつかの付加的な修飾を誘導したようであり、これは、最高5つのニトロ基およびメチオニンの酸化を意味する。NGFは、3つのトリプトファンおよび2つのチロシンを含み、それは、5つの部位のニトロ化を説明する可能性がある(図6Bの挿入された表)。修飾の同様のパターンがNGFの鎖Bにおいて認められた。
【0264】
酸化的な修飾を受けている特異的な残基を同定するために、PLC精製サンプルを消化し、質量分析によって分析した。未処理のおよびパーオキシナイトライト処理のNGF消化の比較は、2つのチロシン残基、Tyr52およびTrp99のニトロ化を明らかにし(図7)、検出された90Daの全分子量変化を説明する可能性がある。パーオキシナイトライトによるNGFの酸化は、また、トリプトファン蛍光の減少をもたらし、トリプトファンのニトロ化を支持する。酸化的修飾のその他の残基は、消化されたサンプルから検出されず、おそらく、ニトロ化Tyr52およびTrp99を有するNGFに相当するm/z=13,341のイオンが、最も大量の種であることを示している。しかしながら、これは、また、その他のペプチドと比較して、イオン化の効率の増大に起因し得た。重要なことに、NGF酸化における3,3’−ジチロシンの形成は、質量分析によって認められず、この付加物の欠如はさらに、励起/放出320/410nmにおける蛍光の欠如によって確認された。
【0265】
チロシンニトロ化は、NGFの生物活性を変化させるか?
チロシンニトロ化がNGF生物活性の修飾に重大な意味を持つかどうかを確認するために、我々は、テトラニトロメタンでNGFを処理した(TNM; 40倍過剰)。TNMは、タンパク質における3−ニトロチロシンを形成するために、アルカリpHにて一般に使われる。使用される条件において、TNMは、質量分析によって証明されるように、チロシンニトロ化だけを誘導した(下記参照)。TNMで処理したNGFは、37.9および39.9分で溶出する2つの生成物を分離した(図8A)。質量分析によって明らかにされるように、TNM処理は、NGF鎖Aの分子量を90Da増加させ(13,252から13,342Daまで;図8B)、これは、主要な生成物は二重のニトロ化種であることを示す。しかしながら、単一ニトロ化種はまた、13,297Daで認められた(図8B)。同じパターンがNGFの鎖Bについて認められた。消化された生成物のタンデム型質量分析は、ニトロ化残基としてTyr52およびTyr79を同定し(図8C)、全分子量変化を説明しうる(図8B)。トリプトファンニトロ化または3,3’−ジチロシン形成は、TNM処理NGFにて認められなかった。40倍過剰のTNMで処理したNGFの電気泳動パターンは、パーオキシナイトライト処理NGFにて認められる場合に匹敵し、このことはNGFオリゴマーの形成を示唆する(図8D)。
【0266】
我々は、次に、運動ニューロンの生存に対するTNM処理NGFの効果を分析した。パーオキシナイトライト処理NGFと同様に、TNM処理NGFは、酸化窒素がない場合、32%の運動ニューロン減少を誘導した(図9A)。TNM処理NGFによって誘導される運動ニューロン死はまた、p75NTRに対する阻止抗体の添加によって阻止され(図9B)、このことは、同じアポトーシスの機構を誘発することを示唆する。ニトロ化およびNGFオリゴマー化は、TNM処理とパーオキシナイトライト処理NGFとの間の共通の修飾であることがわかった。
【0267】
ニトロ化がNGFに運動ニューロン死を誘導する能力を与えたかをさらに決定するために、我々は、尿酸塩の存在下、パーオキシナイトライトでNGFを処理した。パーオキシナイトライトによるニトロ化の抑制に特に有効な[49]この化合物は、用量依存的にNGFのチロシンニトロ化およびオリゴマー化を阻害した(図10A)。そのうえ、尿酸塩(200μM)は、パーオキシナイトライト処理NGFのアポトーシス効果を無効にした(図10B)。対照として、100nM尿酸塩(100ng/mLのNGF−ONOO−尿酸塩を添加した後に培地に存在すると予想される濃度)は、パーオキシナイトライト処理NGF(100ng/mL)によって誘導される運動ニューロン減少を阻止せず(図10B)、未反応の尿酸塩は、運動ニューロンの生存に影響しなかったことを意味する。
【0268】
刺激されたアストロサイトによるニトロNGFの分泌:ニトロ化NGFに結合し、非ニトロ化NGFで交差反応しない特異的な抗体の使用は、反応性のアストロサイトからの条件培地の免疫反応性のバンドを示す(図13参照、図13は、FGF/LPSを刺激したアストロサイトの条件培地のウエスタンブロット分析における、モノマーおよび二量体ニトロ化NGF種を示す)。この分析は、ニトロNGFは炎症性の条件の下で分泌されることを示す。
【0269】
神経突起成長促進活性:図14は、NGFのニトロ化がNGFの神経突起成長促進活性を増加させることを示す。
【0270】
考察
ALSにおける運動ニューロン死およびアストロサイト反性は、活性酸素および窒素種の生産の増大に関与するため[28、50、51]、我々は、分泌されたNGFの酸化またはニトロ化が、運動ニューロンに対するアポトーシス活性を増強するかどうかを調べようと考えた。インビトロにおけるパーオキシナイトライトによるNGFの酸化は、酸化窒素の存在下、運動ニューロンのアポトーシスを誘導する効力を10,000倍まで増大させた。我々の知識の及ぶ限りでは、これは、pg/mLの範囲の生理的に適切な濃度の培養におけるニューロトロフィン誘導細胞死の最初の報告である。NGFレベルの増加は、ALSで生じる運動ニューロンの進行性の死に関係していた[23−25]。我々は、以前に、SOD1G93A ALSマウスからの脊髄抽出物が、酸化窒素の外的供給源の存在下で、培養された運動ニューロンのp75NTR依存的アポトーシスを刺激するのに十分なNGFを含むことを報告した[25]。しかしながら、SOD1G93Aマウスからの変性している脊髄における、ELISAによって測定されるNGFレベルは、mLあたりピコグラムの範囲であり[25]、純粋なNGFが純粋な運動ニューロン培養にてアポトーシスを誘導するために必要な濃度の10,000倍低い濃度であり、パーオキシナイトライト処理NGFの効力と同程度である。
【0271】
TNMによるNGFのニトロ化は、以前の研究において、感覚神経節における神経突起成長の誘導によって評価したところ、NGF生物活性を修飾しなかった[52]。NGF受容体の発現の差は、明白に矛盾する結果を説明するかもしれない。感覚神経節はTrkAおよびp75NTRを発現し[53、54]、一方、純粋な運動ニューロン培養物は、p75NTRを発現し、検出可能なTrkAの発現はない[55]。p75NTRに対する阻止抗体またはアンチセンス処理によるp75NTR発現のダウンレギュレーションが完全に運動ニューロン死を阻害したため、ニトロ化NGFは、p75NTRシグナル伝達に依存的な機構によって、運動ニューロンアポトーシスを誘導した。
【0272】
NGFによるアポトーシス活性の獲得は、一貫してチロシンニトロ化および異常なオリゴマー化と関連していた。マウスNGFは、位置52および79で2つのチロシン残基だけを含み、これらは両方とも溶媒に接触可能である[41]。Tyr79のヒドロキシル基は、対向したNGFモノマーからのGlu11との水素結合相互作用に関与する(図1)。この相互作用は、チロシン水酸基のイオン化を還元し、このため残基がラジカルに仲介される酸化を受けにくくするが、このことはTyr79がTyr52よりもニトロ化に対して耐性があることの説明になる可能性がある。後者は、パーオキシナイトライトおよびTNMによって容易にニトロ化された。Tyr52が非常に保存され、NGFの安定に重要であるので[43]、そのニトロ化は、タンパク質における構造変化を誘導し、それが、オリゴマー化をもたらす異常なタンパク質相互作用を促進する可能性がある。
【0273】
リアルタイム−MALSとの組み合わせによるサイズ排除クロマトグラフィーから示されるように、NGFオリゴマーは、二量体から八量体までの大きさにおいて変動した。精製された高分子量のオリゴマーを2度クロマトグラフィーに供した場合、モノマーおよび二量体ピークが再現され、これは非共有結合性のオリゴマーの形成を示している。しかしながら、パーオキシナイトライトおよびTNMの両処理は、SDS−PAGEゲルにおいて安定なより高いオリゴマーの形成をもたらし、一部のサブユニットの非チオール依存的な共有結合性の架橋結合が示唆される。NGFのオリゴマー化は尿酸塩によって実際上阻止された。尿酸塩は、炭酸塩および二酸化窒素ラジカルと競合することによってパーオキシナイトライトに誘導されるチロシンニトロ化を妨げることが知られており、ラジカル形成はオリゴマーの形成に関与することが示唆される。3,3’−ジチロシン架橋結合は、パーオキシナイトライトがタンパク質二量体化を誘導する1つの機構であるものの[56、57]、より大きなオリゴマーは、架橋されるための少なくとも2つの異なるチロシン残基を必要とするだろう。架橋がチロシンラジカルの産生からのみ生じる場合、Tyr52のニトロ化はオリゴマー化を抑制するだろう。更に、3,3’−ジチロシンは、蛍光によってまたは質量分析によって検出できなかった。従って、NGFのオリゴマー化は、パーオキシナイトライトによって誘導される架橋結合のその他の形態に恐らく関与する。二酸化炭素の存在下、30%のパーオキシナイトライトは、炭酸塩ラジカルさらに二酸化窒素を形成し、これらは両方とも、容易にチロシンおよびトリプトファンを酸化しラジカルを形成させる適度に強い酸化剤である[58]。チロシルラジカルはまた、ほぼ拡散律速(diffusion−limited rates)で二酸化窒素と結合して3−ニトロチロシンを形成する。トリプトファン酸化は、タンパク質を架橋することができるN−ホルミルキヌレニンおよびキヌレニンを含む複数の生成物を産生する[59]。一方で、チロシルラジカルはまた、分子内の電子伝達反応によって、トリプトファンおよびシステインを含むその他のアミノ酸を酸化することができる[59、60]。NGF内において、Tyr52は空間的にTrp21の近くにある(図1)。従って、Tyr52の酸化は、Trp21にラジカルを移動させ、それによって、NGF分子間における共有結合の架橋を促進する可能性がある。
【0274】
パーオキシナイトライト処理したNGFは、運動ニューロンにおいて強力にp75依存的アポトーシスを刺激した。NGFのTyr52およびTrp21は、p75NTRのシステインに富むドメイン2(CRD2)にドッキングする疎水性ポケットの形成で関与する[42]。Trp21がp75NTRとの境界面の大部分であるため、そのインビボの酸化生成物は、p75NTRに対する共有結合性の付加を形成し、異常なアポトーシスの情報伝達を促進する可能性がある。しかしながら、その他の受容体もまた、パーオキシナイトライト処理されたNGFによるアポトーシスの誘導に関与した。NGFの前駆体(proNGF)はp75NTRに対してNGFより低い親和性で結合するが、それは、p75NTRおよびソーティリンに同時に結合することによって、高親和性−シグナル伝達複合体を形成する[61]。また、p75NTRは、TNF受容体スーパーファミリーに属し[62]、このスーパーファミリーのその他のメンバーは、活性化のためにそれらの細胞内のデスドメインの三量体化を必要とすることが知られている[63、64]。同様に、NGFオリゴマーは、付加的なp75受容体を集め、それによってそのデスドメインの三量体化を促進し、および、したがってアポトーシスのシグナル伝達をより強く活性化できた。
【0275】
NGFのパーオキシナイトライト処理が機能獲得をもたらすため、ニトロ化タンパク質の小さい画分のみが、アポトーシスのシグナル伝達を引き出すのに必要とされる。パーオキシナイトライト処理されたNGFは、NGFのアップレギュレーションがパーオキシナイトライトおよびその他のニトロ化種の生産増大と一致する、病理学的および炎症性の症状において形成される。酸化修飾されニトロ化されたNGFのインビボでの発生は、ニューロトロフィンシグナル伝達が酸化ストレスの増大に関連する病的状態の下で破壊される、刺激的な新たな機構を提案する。
【0276】
略語の一覧:ALS、筋萎縮性側索硬化症;FGF、線維芽細胞成長因子;GDNF、グリア由来神経栄養因子;HPLC、高速液体クロマトグラフィー;MALS,多角度光散乱検出;NGF,神経成長因子;NO,酸化窒素;NOS、酸化窒素合成酵素;ONOO,パーオキシナイトライト;p75NTR、p75ニューロトロフィン受容体;ROA、逆順の添加;SOD1、スーパーオキシドジスムターゼ1;TNM,テトラニトロメタン。
【0277】
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
−単離された形態における修飾ニューロトロフィン(ここにおいて、TyrおよびTrp残基から選択される少なくとも1つの残基は、少なくとも1つのニトロ基を含む);または
−修飾ニューロトロフィンの前記単離された形態の保存的断片(ここにおいて、前記保存的断片は、TyrおよびTrp残基から選択される少なくとも1つの残基を維持し、且つ、前記保存的断片は、前記TyrおよびTrp残基から選択される少なくとも1つの残基に少なくとも1つのニトロ基を維持し、運動ニューロンアポトーシスおよび/または神経突起成長を誘導および/または刺激する能力を維持する);または
−修飾ニューロトロフィンの前記単離された形態のまたは前記保存的断片の保存的変種(ここにおいて、前記保存的変種は、少なくとも1つのアミノ酸の置換および/または欠失および/または付加によって、前記修飾ニューロトロフィンまたは前記保存的断片に由来するが、TyrおよびTrp残基から選択される少なくとも1つの残基を維持し、且つ、前記保存的変種は、TyrおよびTrp残基から選択される前記少なくとも1つの残基に少なくとも1つのニトロ基を維持し、運動ニューロンアポトーシスおよび/または神経突起成長を誘導および/または刺激する能力を維持する)である、
運動ニューロンアポトーシスおよび/または神経突起成長の誘導物質および/または刺激物質。
【請求項2】
−修飾ニューロトロフィン(前記修飾ニューロトロフィンは、天然成熟ニューロトロフィンにおいて、TyrおよびTrp残基から選択される少なくとも1つの残基に少なくとも1つのニトロ基の付加することによる、前記天然成熟ニューロトロフィンの翻訳後ニトロ化修飾によって得ることができ、且つ、前記修飾ニューロトロフィンは、単離された形態である);または
−修飾ニューロトロフィンの前記単離された形態の保存的断片(ここにおいて、前記保存的断片は、TyrおよびTrp残基から選択される少なくとも1つの残基を維持し、且つ、前記保存的断片は、前記TyrおよびTrp残基から選択される少なくとも1つの残基に少なくとも1つのニトロ基を維持し、運動ニューロンアポトーシスおよび/または神経突起成長を誘導および/または刺激する能力を維持する);または
−修飾ニューロトロフィンの前記単離された形態のまたは前記保存的断片の保存的変種(ここにおいて、前記保存的変種は、少なくとも1つのアミノ酸の置換および/または欠失および/または付加によって、前記修飾ニューロトロフィンまたは前記保存的断片に由来するが、TyrおよびTrp残基から選択される少なくとも1つの残基を維持し、且つ、前記保存的変種は、TyrおよびTrp残基から選択される前記少なくとも1つの残基に少なくとも1つのニトロ基を維持し、運動ニューロンアポトーシスおよび/または神経突起成長を誘導および/または刺激する能力を維持する)である、
運動ニューロンアポトーシスおよび/または神経突起成長の誘導物質および/または刺激物質。
【請求項3】
前記修飾ニューロトロフィンが修飾ニューロトロフィンモノマーである、請求項1または2に記載の誘導物質および/または刺激物質。
【請求項4】
前記修飾ニューロトロフィンが修飾ニューロトロフィンオリゴマーである、請求項1または2に記載の誘導物質および/または刺激物質。
【請求項5】
前記修飾ニューロトロフィンが修飾ニューロトロフィン二量体である、請求項4に記載の誘導物質および/または刺激物質。
【請求項6】
前記修飾ニューロトロフィンが、修飾ニューロトロフィン四量体または修飾ニューロトロフィン六量体または修飾ニューロトロフィン八量体である、請求項4に記載の誘導物質および/または刺激物質。
【請求項7】
−請求項4から6の何れか1項に記載の少なくとも2つの修飾ニューロトロフィンオリゴマー(ここにおいて、前記少なくとも2つのオリゴマーは、異なるオリゴマー種である)および/または
−請求項3に記載の少なくとも1つの修飾ニューロトロフィンモノマー、および請求項4から6の何れか1項に記載の少なくとも1つの修飾ニューロトロフィンオリゴマー
の混合物である、運動ニューロンアポトーシスおよび/または神経突起成長の誘導物質および/または刺激物質。
【請求項8】
請求項4から6の何れか1項に記載の少なくとも1つの修飾ニューロトロフィン四量体、および/または請求項4から6の何れか1項に記載の少なくとも1つの修飾ニューロトロフィン六量体、および/または請求項4から6の何れか1項に記載の少なくとも1つの修飾ニューロトロフィン八量体を含む、請求項7に記載の誘導物質および/または刺激物質。
【請求項9】
修飾ニューロトロフィンの前記単離された形態は、何れかの非ニトロ化プロニューロトロフィンを含まない、請求項1から8の何れか1項に記載の誘導物質および/または刺激物質。
【請求項10】
修飾ニューロトロフィンの前記単離された形態は、何れかの非ニトロ化成熟ニューロトロフィンを含まない、請求項1から9の何れかの1項に記載の誘導物質および/または刺激物質。
【請求項11】
純粋な形態である、請求項1から10の何れかの1項に記載の誘導物質および/または刺激物質。
【請求項12】
そのプロ−アポトーシス活性および/またはそのプロ−神経突起成長活性を妨げない分子構造である、請求項1から11の何れかの1項に記載の誘導物質および/または刺激物質。
【請求項13】
前記ニューロトロフィンが、NGF、BDNF、NT−3またはNT−4である、請求項1から12の何れかの1項に記載の誘導物質および/または刺激物質。
【請求項14】
前記ニューロトロフィンが成熟NGFである、請求項13に記載の誘導物質および/または刺激物質。
【請求項15】
前記ニューロトロフィンが成熟BDNF、成熟NT−3または成熟NT−4である、請求項13に記載の誘導物質および/または刺激物質。
【請求項16】
少なくとも1つのニトロ基を含むTyrおよびTrp残基から選択される前記少なくとも1つの残基がTyr残基である、請求項1から15の何れか1項に記載の誘導物質および/または刺激物質。
【請求項17】
前記Tyr残基が、マウスNGFのTyr52もしくはTyr79またはヒトNGFのTyr52もしくはTyr79である、請求項16に記載の誘導物質および/または刺激物質。
【請求項18】
少なくとも1つのニトロ基を含むTyrおよびTrp残基から選択される前記少なくとも1つの残基がTrp残基である、請求項1から15の何れか1項に記載の誘導物質および/または刺激物質。
【請求項19】
前記Trp残基が、マウスNGFのTrp99もしくはTrp21もしくはTrp76またはヒトNGFのTrp99もしくはTrp21もしくはTrp76である、請求項18に記載の誘導物質および/または刺激物質。
【請求項20】
前記ニューロトロフィンの少なくとも2つのTyrおよびTrp残基がニトロ基を有する(前記残基の各々は少なくとも1つのニトロ基を有する)、請求項1から19の何れか1項に記載の誘導物質および/または刺激物質。
【請求項21】
前記少なくとも2つの残基が、2つのTyr残基またはTyr残基およびTrp残基である、請求項20に記載の誘導物質および/または刺激物質。
【請求項22】
ニトロ基を有する前記ニューロトロフィンのTyrおよびTrp残基(前記残基の各々は少なくとも1つのニトロ基を有する)の数が、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、または少なくとも9である、請求項20または21に記載の誘導物質および/または刺激物質。
【請求項23】
前記ニューロトロフィンの全てのTyrおよびTrp残基が少なくとも1つのニトロ基を有する、請求項1から22の何れか1項に記載の誘導物質および/または刺激物質。
【請求項24】
前記修飾ニューロトロフィンが非グリコシル化の形態でまたはグリコシル化された形態である、請求項1から23の何れか1項に記載の誘導物質および/または刺激物質。
【請求項25】
請求項1から24の何れか1項に記載の誘導物質および/または刺激物質の非保存的断片、または、
少なくとも1つのアミノ酸の置換および/または欠失および/または付加によって前記誘導物質および/または刺激物質に由来する、請求項1から24の何れか1項に記載の誘導物質および/または刺激物質の非保存的変種
(ここにおいて、前記非保存的断片または変種は、運動ニューロンアポトーシスおよび/または神経突起成長を誘導および/または刺激する能力を失っている)。
【請求項26】
運動ニューロンのアポトーシスおよび/または神経突起の成長の治療および/または寛解および/または予防のための、免疫抗体応答を誘導する抗原としての使用のための請求項25に記載の非保存的断片または変種。
【請求項27】
痛みおよび/または神経変性の疾病もしくは症状の治療および/または寛解および/または予防のための薬剤としての使用のための請求項25に記載の非保存的断片または変種。
【請求項28】
請求項1から24の何れか1項に記載の少なくとも1つの誘導物質および/または刺激物質に結合し、前記誘導物質および/または刺激物質の由来となる非修飾天然ニューロトロフィンと交差反応しない、抗体。
【請求項29】
モノクローナル抗体である請求項28に記載の抗体。
【請求項30】
ニトロ化NGFに結合する請求項28または29に記載の抗体。
【請求項31】
scFvである請求項28から30の何れか1項に記載の抗体。
【請求項32】
運動ニューロンのアポトーシスおよび/または神経突起の成長の受動的な免疫療法および/または寛解および/または予防のための薬剤としての使用のための請求項28から31の何れか1項に記載の抗体。
【請求項33】
痛みの治療および/または寛解および/または予防のための薬剤としての使用のための請求項28から32の何れか1項に記載の抗体。
【請求項34】
神経変性の疾病または症状の治療および/または寛解および/または予防のための薬剤としての使用のための請求項28から32の何れか1項に記載の抗体。
【請求項35】
請求項31の少なくとも1つのscFv並びにそのようなscFvをコードする少なくとも1つのmRNAが付着された少なくとも1つのリボソームから成る、リボソームディスプレイシステム。
【請求項36】
請求項1から24の何れか1項に記載の誘導物質および/または刺激物質が運動ニューロンに対して示すアポトーシス活性、および/または、請求項1から24の何れか1項に記載の誘導物質および/または刺激物質が感覚神経節に対して示す神経突起成長効果を阻害および/または遮断する能力を有する化合物のスクリーニングの方法であって、ここにおいて、候補化合物は、請求項28から31の何れか1項に記載の少なくとも1つの抗体に、または、請求項35に記載の少なくとも1つのリボソームディスプレイシステムに結合するそれらの能力についてスクリーニングされ、そのような結合能力によって、前記アポトーシス活性および/または前記神経突起成長効果を阻害および/または遮断する可能性が示される方法。
【請求項37】
請求項25から27の何れか1項に記載の少なくとも1つの非保存的断片または変種および/または請求項28から34の何れか1項に記載の少なくとも1つの抗体を含む組成物。
【請求項38】
ALS(筋萎縮性側索硬化症)、アルツハイマー病、ハンチントン舞踏病、記憶欠損に関する何れかの疾病または症状、および/または、集中障害、ならびに、神経炎症症状または疾病といった神経変性の症状または疾病の治療および/または予防および/または寛解における使用のための、請求項25から27の何れかの1項に記載の非保存的断片または変種。
【請求項39】
痛みの状態または症状または感覚、とりわけ以下のものの治療および/または予防および/または寛解における使用のための、請求項25から27の何れかの1項に記載の非保存的断片または変種:
− 神経障害性の痛み(とりわけ、片頭痛、慢性的片頭痛、推定鎮痛薬乱用頭痛 PAAH、原発性線維筋痛症候群 PFMS、神経損傷誘導性神経障害性疼痛、坐骨神経傷害、慢性的絞搾損傷)、
− 関節の痛み(とりわけ、骨関節炎症状、骨関節症、骨関節炎)、
− 炎症性疼痛、
− 癌疼痛。
【請求項40】
ALS(筋萎縮性側索硬化症)、アルツハイマー病、ハンチントン舞踏病、記憶欠損に関する何れかの疾病または症状、および/または、集中障害、ならびに、神経炎症症状または疾病といった神経変性の症状または疾病の治療および/または予防および/または寛解における使用のための、請求項28から34の何れか1項に記載の抗体。
【請求項41】
痛みの状態または症状または感覚、とりわけ以下のものの治療および/または予防および/または寛解における使用のための、請求項28から34の何れか1項に記載の抗体:
− 神経障害性の痛み(とりわけ、片頭痛、慢性的片頭痛、推定鎮痛薬乱用頭痛 PAAH、原発性線維筋痛症候群 PFMS、神経損傷誘導性神経障害性疼痛、坐骨神経傷害、慢性的絞搾損傷)、
− 関節の痛み(とりわけ、骨関節炎症状、骨関節症、骨関節炎)、
− 炎症性疼痛、
− 癌疼痛。
【請求項42】
ALS(筋萎縮性側索硬化症)、アルツハイマー病、ハンチントン舞踏病、多発性硬化症、記憶欠損に関する何れかの疾病または症状、および/または、集中障害、ならびに、神経炎症症状または疾病といった神経変性の症状または疾病の治療および/または予防および/または寛解における使用のための、請求項37に記載の組成物。
【請求項43】
痛みの状態または症状または感覚、とりわけ以下のものの治療および/または予防および/または寛解における使用のための、請求項37に記載の組成物:
− 神経障害性の痛み(とりわけ、片頭痛、慢性的片頭痛、推定鎮痛薬乱用頭痛 PAAH、原発性線維筋痛症候群 PFMS、神経損傷誘導性神経障害性疼痛、坐骨神経傷害、慢性的絞搾損傷)、
− 関節の痛み(とりわけ、骨関節炎症状、骨関節症、骨関節炎)、
− 炎症性疼痛、
− 癌疼痛。
【請求項44】
運動ニューロンアポトーシスの誘導および/または刺激のために、および/または神経突起成長の誘導および/または刺激のために有用な薬剤としての使用のための、請求項1から24の何れか1項に記載の誘導物質および/または刺激物質。
【請求項45】
神経障害、神経損傷、脳卒中、脊椎損傷および神経変性の疾病から成る群から選択される疾病、症状または外傷の治療および/または予防および/または寛解における使用のための、請求項1から24の何れか1項に記載の誘導物質および/または刺激物質。
【請求項46】
請求項1から24の何れか1項に記載の少なくとも1つの誘導物質および/または刺激物質を含む組成物。
【請求項47】
神経障害、神経損傷、脳卒中、脊椎損傷および神経変性の疾病から成る群から選択される疾病、症状または外傷の治療および/または予防および/または寛解における使用のための、請求項46に記載の組成物。
【請求項48】
以下を含む、神経変性の症状または疾病、および/または、痛みの状態または症状または感覚の診断のためのインビトロ方法:
−生体試料を、請求項28から34の何れか1項に記載の1つの抗体に接触させること、
−前記少なくとも1つの抗体が前記生体試料中に含まれるリガンドに結合したかどうかを決定し、
そのような結合によって、前記疾病、状態、症状または感覚を示すことまたは予想すること。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2010−501475(P2010−501475A)
【公表日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−521157(P2009−521157)
【出願日】平成19年7月23日(2007.7.23)
【国際出願番号】PCT/EP2007/006528
【国際公開番号】WO2008/012049
【国際公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(596009674)アンスティテュ・パストゥール (23)
【出願人】(509024307)インスティテュート・デ・インベスティガシオネス・バイオロジカス・クレメンテ・エスタブレ (1)
【氏名又は名称原語表記】INSTITUTO DE INVESTIGACIONES BIOLOGICAS CLEMENTE ESTABLE
【住所又は居所原語表記】Avenida Italia, 3318 CP 11600 MONTEVIDEO URUGUAY
【出願人】(509024330)ファクルタド・デ・メディシナ・ウニベルシダッド・デ・ラ・レプブリカ (1)
【氏名又は名称原語表記】FACULTAD DE MEDICINA, UNIVERSIDAD DE LA REPUBLICA
【住所又は居所原語表記】Av. Gral Flores 2125 CP 11800 MONTEVIDEO URUGUAY
【出願人】(500174661)サントル・ナショナル・ドゥ・ラ・レシェルシュ・サイエンティフィーク−セ・エン・エール・エス− (54)
【Fターム(参考)】