説明

翻訳装置及びプログラム

【課題】場所に応じた適切な翻訳辞書を確実に選べるようにして、翻訳の精度を高めることができるようにすること。
【解決手段】翻訳装置は、複数種類の翻訳辞書を記憶する翻訳辞書記憶手段を有し、位置検出手段が現在位置を検出すると、位置検出手段の検出した位置に応じた翻訳辞書が前期翻訳辞書記憶手段に記憶された複数種類の翻訳辞書から選択される。翻訳手段は、前記辞書選択手段で選択された翻訳辞書を用いて翻訳するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動先の場所に応じて適切な翻訳が行えるようにした翻訳装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電子機器の小型軽量化が進んだことに伴い、人が持ち歩くようになった携帯端末装置を利用して、その移動先で翻訳を可能にする携帯型の翻訳装置が考えられている。
その場合、翻訳の精度を向上させるために分野別辞書や各種専門辞書を準備し、移動先の環境に応じて使用する辞書を切り替えることが望ましい。
【0003】
翻訳に使用する専門辞書等をユーザが装置を操作することで指定できるようにすることはもちろんであるが、装置自身が状況を判断して自動的に辞書を切り替えられるようにすることがより便利である。そこで、周囲の音や画像を収集して、その情報から環境を判断し、その環境に適した専門辞書を選択して翻訳することが考えられている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−108551号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した特許文献1のシステムでは、情報収集が適切に行えない状況にある場合等、対応ができなくなる問題がある。
【0005】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたもので、場所に応じて適切な翻訳辞書を確実に選べるようにして、翻訳の精度を向上させるようにした翻訳装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る翻訳装置は、複数種類の翻訳辞書を記憶する翻訳辞書記憶手段と、現在位置を検出する位置検出手段と、位置検出手段の検出した位置に応じた翻訳辞書を前期翻訳辞書記憶手段に記憶された複数種類の翻訳辞書から選択する辞書選択手段と、この辞書選択手段で選択された翻訳辞書を用いて翻訳する翻訳手段とを具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、場所に応じた適切な翻訳辞書を確実に選べるようになり、翻訳の精度を高めることができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の実施形態にかかる翻訳装置について、以下図面を参照して説明する。
【0009】
図1は、この発明の実施形態に適用される翻訳装置1の構成の一例を示すブロック図である。図示するように、翻訳装置1は、制御部10、音声入力部11、音声出力部12、表示部13、記憶装置14、RAM15を備えて構成される。
【0010】
音声入力部11は、マイクを含み、ユーザが発生した音声を翻訳の対象とする第1言語の情報として装置内に取り込む。音声出力部12は、スピーカを含み、第2言語に翻訳された音声を出力するものである。
【0011】
表示部13は、LCD(Liquid Crystal Display)等からなり、翻訳装置1の動作状況を示す画像や地図等を表示する。また翻訳時に翻訳された文等を表示するものである。
【0012】
記憶装置14は、翻訳装置1の動作を制御するためのシステムプログラム、翻訳プログラム、及び各種データを記憶する。RAM15は、制御部10のCPUがプログラムを実行する際に、ワークメモリとして用いられる。
【0013】
翻訳装置1は、さらにGPS部16、位置特定部17、音声認識部18、翻訳部19を備えて構成される。
【0014】
GPS部16は、受信用のアンテナを有しており、複数のGPS衛星から送信されるGPS信号を受信する。位置特定部17は、GPS部16で受信されたGPS信号を使用して所定の測位演算を行ない、翻訳装置1の現在位置を検出する。
【0015】
また、位置特定部17は、地図データベース20、場所データベース21を有しており、GPS部16で受信した信号に基づいて翻訳装置1の現在位置を検出すると、その位置に対応する地図データを地図データベース20から読み出して表示部13にて表示させる。
【0016】
場所データベース21は、図3に示すように、位置とその位置に存在する建物、地名等の場所名称とその場所の分類データをデータ項目とするデータを記憶している。位置特定部17は、この場所データベース21を参照して当該翻訳装置1の現在位置に建物、場所等が存在するか判断し、建物、場所等を特定する。
【0017】
音声認識部18は、音声入力部11から入力された音声を認識してテキストデータに変換する。この音声認識部18は、音声認識のための辞書データベース22を有している。この音声認識辞書データベース22は、複数の国の第1言語にも対応できるように複数の言語の音声認識用辞書からなる辞書データを持っている。
【0018】
翻訳部19は、音声認識部18で変換されたテキストデータを第2言語の文に翻訳する。この翻訳部19は、第1言語から第2言語への翻訳を行うための通常の翻訳辞書を内蔵しており、この辞書を利用して翻訳処理を実行する。また翻訳部19は、翻訳辞書データベース23を有している。この翻訳辞書データベース23は、より適切な翻訳を迅速に行うために、「空港」、「ホテル」、「警察」、…「病院」といった様々な場所に応じた専門の翻訳用辞書を各言語毎に記憶している。したがって、翻訳部19は、位置特定部17により翻訳装置1が存在する位置が特定の場所であることが検出されると、その場所に応じた専門の翻訳辞書を用いて翻訳し、それ以外の場所では通所の翻訳辞書を用いて翻訳処理を行うことになる。
【0019】
制御部10はCPUを含んでおり、記憶装置14に記憶されたプログラムを実行することにより、上記各部を制御して、音声入力部11から入力された音声を取り込み、GPS部16により検出された位置に応じて翻訳辞書を選択し、取り込んだ音声を選択した翻訳辞書を用いて翻訳し、翻訳された音声を音声出力部13から出力する制御を行う。
【0020】
次に上記の構成を有する翻訳装置1における動作を説明する。翻訳装置1では、翻訳するにあたり、事前にユーザの操作で第1言語(例えば、日本語)と第2言語(例えば、英語)を設定しておくものとする。
【0021】
図2は、翻訳装置1の翻訳処理の動作を示すフローチャートである。
【0022】
翻訳処理においては、まず、GPS部16が受信したGPS信号のデータが読み取られる(ステップA1)。
【0023】
GPS衛星からの電波が受信できており、GPS信号を読み取ることができた場合(ステップA2;Yes)、位置特定部17により、そのGPSデータを用いた現在位置が演算される(ステップA3)。
【0024】
現在位置が算出され、位置が検出されると、その位置データが記憶装置14の位置履歴データエリア(図示せず)に記憶される(ステップA4)。位置データは、例えば10分間程度の間に検出されたデータを順次位置履歴データとして記憶されるようにするのが好ましく、後述するように、GPS信号が取得できない状況においては、この履歴データにより、翻訳装置1の位置が推定されるようになる。
【0025】
次に、ステップA3で算出された位置が場所データベース21に登録されているか調べられ、該当する建物、場所が特定できるか判断される(ステップA5)。場所データベース21の中に検出された位置データが登録されている場合には、場所が特定できたものとして、対応して記憶されている分類データが読み出され、この分類データに応じた専門の翻訳辞書が選択される(ステップA6)。
【0026】
例えば、翻訳装置1の検出された現在位置にホテルがあると判断されると、ホテルで使用する単語等が記憶された翻訳辞書が選択され、翻訳にあたりこの辞書が優先して適用されることになる。
【0027】
一方、場所データベース21の中に検出された位置データが見いだせない場合には、場所が特定できないものとして、専門辞書の選択は行われない。この場合は、翻訳は通常の辞書を使用して行われることになる。
【0028】
次に、音声入力部11のマイクから音声入力があるか判断される(ステップA7)。マイクからの音声入力があれば、音声認識部18により第1言語の音声認識辞書を使用した音声認識の処理が実行される(ステップA8)。
【0029】
そして、音声認識部18で音声認識された文は翻訳部19により第2言語の文に翻訳される(ステップS9)。その際、ステップA6で専門辞書が選択されていた場合は、選択された専門辞書を優先して適用して翻訳が実行される。このようにすることで正確かつ迅速な翻訳を行うことができるようになる。
【0030】
翻訳部19で第2言語に翻訳されたテキストデータは、音声出力部12にて音声信号に変換され、翻訳された文がスピーカから音声出力される(ステップA10)。
【0031】
このような翻訳装置1によれば、例えば、図4に示すように、ユーザが外国のホテルにいることが検出されると、そこで音声を翻訳機に入力すると、その場に応じた翻訳が正確にかつ迅速に変換されて出力されるようになる。
【0032】
この際、翻訳文を音声で出力するだけでなく、翻訳された文を表示部13に表示するようにしても良い。
【0033】
一方、ユーザが、GPS衛星からの電波が届かない建物の中に入った場合は、ステップA2でGPS信号が取得できないと判断される。この場合、記憶装置14の位置履歴データエリアに記憶されたそれまでの位置データが読み出され、確認される(ステップA11)。そして、ユーザが向かった方向を履歴データから予測して(ステップA12)、入ったであろう建物等を特定する。建物等が特定できたならば(ステップA13;Yes)、ステップA6に進み、前述したように、専門の翻訳辞書が選択されるようになる。
【0034】
一方、ユーザが移動したと予測した方向に特定できる建物等がなかった場合は、専門辞書の選択は行わず、その後の翻訳は通常の翻訳辞書が用いられることになる。
【0035】
なお、上記の例では、翻訳にあたり、事前に第1,第2言語をユーザ操作により設定するようにしていたが、第2言語については、GPSで取得した位置情報にしたがって国あるいは地域を判断し、当該国、地域に応じて第2言語を自動的に設定するようにしても良い。
【0036】
また、翻訳処理の説明には含めなかったが、表示部13には位置に応じた地図を表示し、建物、場所が特定された場合には、その建物名等を、例えば「XXホテル」、「YY病院」等、表示部に表示するようにすることが好ましい。
【0037】
以上述べたように、本発明によれば、翻訳装置1の現在位置が検出されると、検出した位置に応じた翻訳辞書が複数種類の翻訳辞書から選択され、この選択された翻訳辞書を用いて翻訳されるので、場所に応じた適切な翻訳辞書を確実に選べるようになり、翻訳の精度を高めることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】翻訳装置1の構成を示すブロック図である。
【図2】翻訳装置1の動作を示すフローチャートである。
【図3】翻訳装置1に備えられる場所データベース21の内容を示す図である。
【図4】翻訳装置1の使用状況を説明する図である。
【符号の説明】
【0039】
1 翻訳装置
10 制御部
11 音声入力部
12 音声出力部
13 表示部
14 記憶装置
15 RAM
16 GPS部
17 位置特定部
18 音声認識部
19 翻訳部
20 地図データベース
21 場所データベース
22 音声認識辞書データベース
23 翻訳辞書データベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種類の翻訳辞書を記憶する翻訳辞書記憶手段と、
現在位置を検出する位置検出手段と、
位置検出手段の検出した位置に応じた翻訳辞書を前期翻訳辞書記憶手段に記憶された複数種類の翻訳辞書から選択する辞書選択手段と、
この辞書選択手段で選択された翻訳辞書を用いて翻訳する翻訳手段と
を具備したことを特徴とする翻訳装置。
【請求項2】
音声入力手段と、入力された音声を認識する音声認識手段とを具備し、
前記翻訳手段は、前記音声認識手段で認識された文を翻訳することを特徴とする請求項1に記載の翻訳装置。
【請求項3】
前記位置検出手段は、GPS衛星から受信した信号に基づいて位置を検出することを特徴とする請求項2に記載の翻訳装置。
【請求項4】
検出された位置データを順次記憶する位置データ記憶手段と、
前記位置検出手段が、GPS衛星からの信号を受信できない場合に、前記位置データ記憶手段に記憶された位置から現在位置を推測する位置推測手段を具備したことを特徴とする請求項3に記載の翻訳装置。
【請求項5】
翻訳装置のコンピュータを
複数種類の翻訳辞書を記憶する翻訳辞書記憶手段、
現在位置を検出する位置検出手段、
位置検出手段の検出した位置に応じた翻訳辞書を前記翻訳辞書記憶手段に記憶された複数種類の翻訳辞書から選択する辞書選択手段、
この辞書選択手段で選択された翻訳辞書を用いて翻訳する翻訳手段
として機能させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−258871(P2009−258871A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−105281(P2008−105281)
【出願日】平成20年4月15日(2008.4.15)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】