説明

耐マイグレーション性に優れるラミネート用高濃度黄インキ

【課題】耐マイグレーション性に優れるラミネート用高濃度黄インキ、該インキを塗布したフィルムとシーラントとを接着してなるラミネート積層物、ラミネート積層物を加工して作られるラミネート包材を提供することを目的とする。
【解決手段】C.I.ピグメントイエロー155、180から選択される少なくとも一種の顔料と、C.I.ピグメントイエロー83とを含有する、ポリウレタン樹脂を主バインダーとするラミネート用黄インキ、および該インキを用いたラミネート積層物、およびラミネート包材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラミネート用黄インキと、該インキを塗布したフィルムとシーラントとを接着してなるラミネート積層物と、ラミネート積層物を加工して作られるラミネート包材に関する。
【背景技術】
【0002】
グラビアインキ、フレキソインキは、被印刷体に美粧性、機能性を付与させる目的で広く用いられている。グラビア、フレキソ印刷された被印刷体が包装材料とりわけ食品包材として用いられる場合、ラミネート加工が施されるのが一般的である。この場合、内容物の種類や使用目的に応じて様々な被印刷体やラミネート加工が利用される。
ラミネート包材に用いられる印刷インキは、フィルムに対する接着性、耐ブロッキング性、耐マイグレーション性、耐光性、耐熱性が求められるが、耐マイグレーション性、耐光性、耐熱性は含有する着色剤の特性に起因するため、その用途により使用できる着色剤が制限される。
【0003】
ラミネート用黄インキの着色剤には、C.I.ピグメントイエロー14が濃度及びコストの点で優れることから広く用いられている。グラビアインキ用途のC.I.ピグメントイエロー14は、分散性を向上させるために極性カップラー成分を含有しているタイプの顔料が一般的に使われるため耐水性がやや劣り、レトルト用途では十分な耐マイグレーション性が得られず、その使用はスナック・ボイル用途のみに制限される。そのため、レトルト用途には耐マイグレーション性が優れるC.I.ピグメントイエロー155、180、83が使用されているが、これらの顔料は、C.I.ピグメントイエロー14に比べ着色力が低いために、印刷物の色再現性と濃度が十分でないという問題がある。濃度向上のために、インキ中の顔料含有量を上げると高粘度、流動性不良となり、インキ中の樹脂含有量を下げることによって低粘度化させると、ラミネート強度などインキの塗膜物性が低下する問題がある。また、顔料含有量アップはコストアップの要因にもなるため、インキの濃度不足を解決する有効な手段ではない。
【特許文献1】特開平06-345988号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は耐マイグレーション性に優れるラミネート用高濃度黄インキを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
即ち、本発明は、C.I.ピグメントイエロー155、180から選択される少なくとも一種の顔料と、C.I.ピグメントイエロー83とを含有する、ポリウレタン樹脂を主バインダーとするラミネート用黄インキに関する。
また、本発明は、C.I.ピグメントイエロー155、180から選択される少なくとも一種の顔料と、C.I.ピグメントイエロー83との重量比が100:40〜100:3の範囲を充たす上記ラミネート用黄インキに関する。
【0006】
さらに、本発明は、フィルムに上記ラミネート用黄インキを塗布し、接着剤を介しシーラントと貼り合わせてなるラミネート積層物、およびラミネート積層物を加工して作られるラミネート包材に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、耐マイグレーション性、及び濃度を併せ持つ優れたラミネート用黄インキを提供することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明について詳細に説明する。なお以下の説明で用いる「インキ」とは全て「印刷インキ」を示す。また「部」とは全て「重量部」を示す。
【0009】
本発明は、優れた耐マイグレーション性を有する色調の異なる2種類以上の黄顔料の混合物を着色剤として含有する、ポリウレタン樹脂を主バインダーとするラミネート用黄インキである。本発明の思想は、単独では耐マイグレーション性が優れるが、濃度が不十分な黄顔料の中で、色調が緑味な黄顔料と赤味な黄顔料とを少なくとも2種類以上混合することにより、課題である濃度を大幅に向上させることにある。
【0010】
本発明のラミネート用黄インキに使用される具体的な黄顔料として、耐マイグレーション性が優れる緑味の黄顔料にはC.I.ピグメントイエロー155、180が挙げられる。ピグメントイエロー155はシズアゾ系の黄顔料であり、またピグメントイエロー180はベンズイミダゾロン系の黄顔料であるが、いずれも一般的に耐光性、耐溶剤性、耐水性、耐酸性、耐アルカリ性が優れる顔料である。耐マイグレーション性が優れる赤味の黄顔料には、C.I.ピグメントイエロー83が挙げられる。ピグメントイエロー83はジスアゾ系の顔料であるが、一般的に耐溶剤性、耐水性、耐酸性、耐アルカリ性が優れる顔料である。
【0011】
本発明のラミネート用黄インキの具体的な構成は、C.I.ピグメントイエロー155、180から選択される少なくとも一種の顔料と、C.I.ピグメントイエロー83とを含有する。
【0012】
更に、C.I.ピグメントイエロー155、180からなる群から選択される少なくとも一種の顔料と、C.I.ピグメントイエロー83とを100:40〜100:3の重量比で含有するのが好ましい。この範囲よりC.I.ピグメントイエロー83の比率が高いと赤味が強くなりすぎ、低いと濃度向上効果が小さい。
【0013】
本発明のラミネート用黄インキにおける顔料の総含有量は、4〜15重量%が好ましく、より好ましくは6〜13重量%程度である。顔料の総含有量が4重量%未満では濃度が低く、15重量%を超えるとインキの粘度が高くなる。
【0014】
本発明のラミネート用黄インキにおけるポリウレタン樹脂は、従来公知の方法、例えば、特開昭62−153366号公報、特開昭62−153367号公報、特開平1−236289号公報、特開平2−64173号公報、特開平2−64174号公報、特開平2−64175号公報などに開示されている方法により得ることができる。具体的には、ポリオールとジイソシアネート化合物とをイソシアネート基が過剰となる割合で反応させ、末端イソシアネート基のプレポリマーを得、得られるプレポリマーを、適当な溶剤中、すなわち、ノントルエン系グラビアインキ用の溶剤として通常用いられる、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルなどのエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノールなどのアルコール系溶剤;メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンなどの炭化水素系溶剤;あるいはこれらの混合溶剤の中で、鎖伸長剤および(または)末端封鎖剤と反応させる二段法、あるいはポリプロピレングリコールおよび併用ポリオール、ジイソシアネート化合物、鎖伸長剤および(または)末端封鎖剤を上記のうち適切な溶剤中で一度に反応させる一段法により製造される。これらの方法のなかでも、均一なポリウレタン樹脂を得るには、二段法によることが好ましい。また、ポリウレタン樹脂を二段法で製造する場合、鎖伸長剤および(または)末端封鎖剤のアミノ基の合計(当量比)が1/0.9〜1.3の割合になるように反応させることが好ましい。イソシアネート基とアミノ基との当量比が1/1.3より小さいときは、鎖伸長剤および(または)末端封鎖剤が未反応のまま残存し、ポリウレタン樹脂が黄変したり、印刷後臭気が発生したりする場合がある。
【0015】
このようにして得られるポリウレタン樹脂の重量平均分子量は、15,000〜100,000の範囲内とすることが好ましい。ポリウレタン樹脂の重量平均分子量が15,000未満の場合には、得られるインキの組成物の耐ブロッキング性、印刷被膜の強度や耐油性などが低くなる傾向があり、100,000を超える場合には、得られるインキ組成物の粘度が高くなり、印刷被膜の光沢が低くなる傾向がある。
【0016】
本発明のラミネート用黄インキにおけるポリウレタン樹脂の含有量は、インキの被印刷体への接着性を十分にする観点からインキの総重量に対して4重量%以上、適度なインキ粘度やインキ製造時・印刷時の作業効率の観点から25重量%以下が好ましく、更には6〜15重量%の範囲が好ましい。
【0017】
本発明は、C.I.ピグメントイエロー155、180からなる群から選択される少なくとも一種の顔料と、C.I.ピグメントイエロー83と、ポリウレタン樹脂を必須成分として含有すラミネート用黄インキであるが、更にインキとして必要とされる機能を有するため、併用樹脂、有機溶剤などを含むことが出来る。その他、必要に応じて体質顔料、顔料分散剤、レベリング剤、消泡剤、ワックス、可塑剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、芳香剤、難燃剤なども含むこともできる。
【0018】
また、顔料をインキ中で安定に分散させるには、ポリウレタン樹脂単独でも分散可能であるが、さらに顔料を安定に分散するため分散剤を併用することもできる。分散剤としては、アニオン性、ノニオン性、カチオン性、両イオン性などの界面活性剤を使用することができる。例えばポリエチレンイミンにポリエステル付加させた櫛型構造高分子化合物、あるいはα-オレフィンマレイン酸重合物のアルキルアミン誘導体などが挙げられる。具体的にはソルスパーズシリーズ(ZENECA)、アジスパーシリーズ(味の素)、ホモゲノールシリーズ(花王)などを挙げることができる。また、BYKシリーズ(ビックケミ)、EFKAシリーズ(EFKA)なども適宜使用できる。分散剤は、インキの保存安定性の観点からインキの総重量に対して0.05重量%以上、ラミネート適性の観点から5重量%以下でインキ中に含まれることが好ましく、さらに好ましくは、0.1〜2重量%の範囲である。
【0019】
本発明のインキに必要に応じて併用されるポリウレタン樹脂以外の例としては、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ロジン系樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ケトン樹脂、環化ゴム、塩化ゴム、ブチラール、石油樹脂などを挙げることができる。併用樹脂は、単独で、または2種以上を混合して用いることができる。併用樹脂の含有量は、インキの総重量に対して1〜25重量%が好ましく、更に好ましくは2〜15重量%である。
【0020】
本発明のインキは、樹脂、着色剤などを有機溶剤中に溶解および/または分散することにより製造することができる。具体的には、顔料をポリウレタン樹脂により有機溶剤に分散させた顔料分散体を製造し、得られた顔料分散体に、必要に応じて他の化合物などを配合することによりインキを製造することができる。
【0021】
顔料分散体における顔料の粒度分布は、分散機の粉砕メディアのサイズ、粉砕メディアの充填率、分散処理時間、顔料分散体の吐出速度、顔料分散体の粘度などを適宜調節することにより、調整することができる。分散機としては、一般に使用される、例えば、ローラーミル、ボールミル、ペブルミル、アトライター、サンドミルなどを用いることができる。
インキ中に気泡や予期せずに粗大粒子などが含まれる場合は、印刷物品質を低下させるため、濾過などにより取り除くことが好ましい。濾過器は従来公知のものを使用することができる。
【0022】
前記方法で製造されたインキ粘度は、顔料の沈降を防ぎ、適度に分散させる観点から10mPa・s以上、インキ製造時や印刷時の作業性効率の観点から1000mPa・s以下の範囲であることが好ましい。尚、上記粘度はトキメック社製B型粘度計で25℃において測定された粘度である。
インキの粘度は、使用される原材料の種類や量、例えばポリウレタン樹脂、着色剤、有機溶剤などを適宜選択することにより調整することができる。また、インキ中の顔料の粒度および粒度分布を調節することによりインキの粘度を調整することもできる。
【0023】
[実施例]
以下の実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
なお、比率”%”は全て重量%を意味するものとする。
【0024】
[インキの調整]以下のインキ組成物をサンドミルを用いて、本発明のラミネート用黄インキを製造した。
[実施例1]C.I.ピグメントイエロー155:10%、C.I.ピグメントイエロー83:1%、ウレタン樹脂溶液(固形分30%):45%、M.E.K:44%
[実施例2]C.I.ピグメントイエロー180:10%、C.I.ピグメントイエロー83:1%、ウレタン樹脂溶液(固形分30%):45%、M.E.K:44%
[実施例3]C.I.ピグメントイエロー155:5%、C.I.ピグメントイエロー180:5%、C.I.ピグメントイエロー83:1%、ウレタン樹脂溶液(固形分30%):45%、M.E.K:44%
[実施例4] C.I.ピグメントイエロー155:10.8%、C.I.ピグメントイエロー83:0.2%、ウレタン樹脂溶液(固形分30%):45%、M.E.K:44%
[実施例5] C.I.ピグメントイエロー155:7.5%、C.I.ピグメントイエロー83:3.5%、ウレタン樹脂溶液(固形分30%):45%、M.E.K:44%
[比較例1]C.I.ピグメントイエロー14:11%、ウレタン樹脂溶液(固形分30%):45%、M.E.K:44%
[比較例2]C.I.ピグメントイエロー155:11%、ウレタン樹脂溶液(固形分30%):45%、M.E.K:44%
[比較例3] C.I.ピグメントイエロー180:11%、ウレタン樹脂溶液(固形分30%):45%、M.E.K:44%
【0025】
[インキ評価] 得られた黄インキの粘度をメチルエチルケトン、酢酸エチルおよびイソプロピルアルコールの混合溶剤(重量比40:40:20)で希釈し、ザーンカップ#3(離合社製)で16秒(25℃)に調整し、版深35μmグラビア版を備えたグラビア校正機によるコロナ処理ナイロンフィルム(ユニチカ(株)製 商品名 エンブレムON、厚さ15μm)に印刷して40〜50℃で乾燥し、得られた黄インキの印刷物について、反射濃度測定、耐マイグレーション性試験を行った。それらの結果を表1に示す。なお、評価は下記の試験方法にて行った。
【0026】
[反射濃度測定]黄インキの印刷物の印刷面と標準白色板とを重ね合わせ、非印刷面側から408反射濃度計(X-RITE社製)にて反射濃度を測定した。反射濃度1.5以上を実用レベルとし、判定基準は次の通りとした。
〇:十分な濃度を有する
△:実用レベルの濃度を有する。
×:濃度が不足している。
【0027】
[耐マイグレショーン性試験] 黄インキの印刷物にウレタン系接着剤(TM595/CAT−RT56:東洋モートン社)使用し、ドライラミネート機によってCPP(無延伸ポリプロピレン)フィルムを積層したラミネート物を製袋し、内容物として水を入れ、密封後120℃、30分間加熱した後、PETフィルムおよびCPPフィルムへの顔料のマイグレーションを目視判定した。なお判定基準は次の通りとした。
○:フィルムへの着色が見られない
△:ややフィルムへの着色が見られる
×:フィルムへの着色が見られる
また、〇のみを実用可能と判断した。
【0028】
実施例、比較例を評価した結果を表1に示した。
【0029】
【表1】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
C.I.ピグメントイエロー155、180から選択される少なくとも一種の顔料と、C.I.ピグメントイエロー83とを含有する、ポリウレタン樹脂を主バインダーとするラミネート用黄インキ。
【請求項2】
C.I.ピグメントイエロー155、180から選択される少なくとも一種の顔料と、C.I.ピグメントイエロー83との重量比が100:40〜100:3の範囲を充たす、請求項1記載のラミネート用黄インキ。
【請求項3】
フィルムに請求項1または2記載のラミネート用黄インキを塗布し、接着剤を介しシーラントと貼り合わせてなるラミネート積層物。
【請求項4】
請求項3記載のラミネート積層物を加工して作られるラミネート包材。



【公開番号】特開2006−124527(P2006−124527A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−315285(P2004−315285)
【出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】