説明

耐候性に優れた鋼材

【課題】耐候性に優れた鋼材を提供する。
【解決手段】質量%で、C:0.06%超え0.14%未満、Si:0.05%以上2.00%以下、Mn:0.20%以上2.00%以下、P:0.005%以上0.030%以下、S:0.0001%以上0.0200%以下、Al:0.001%以上0.100%以下、Cu:0.10%以上1.00%以下、Ni:0.10%以上0.65%以下、Mo:0.001%以上1.000%以下、好ましくはMo:0.005%以上1.000%以下、Nb:0.005%以上0.200%以下を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなることを特徴とする耐候性に優れた鋼材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に橋梁などの屋外で用いられる構造用鋼材に関し、特に海岸近傍などの高塩分環境下で耐候性が要求される部材として好適な鋼材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、橋梁などの屋外で用いられる鋼構造物では、耐候性鋼が用いられている。耐候性鋼は、大気暴露環境において、Cu、P、Cr、Niなどの合金元素が濃化した保護性の高い錆層に表面が覆われることにより腐食速度が著しく低減する鋼材である。その優れた耐候性により、耐候性鋼を使用した橋梁は、しばしば無塗装のまま数十年間の供用に耐えることが知られている。
【0003】
しかしながら、海岸近傍などの飛来塩分量が多い環境では、上記保護性の高い錆層は生成しにくく、実用的な耐候性が得難いことが知られている。
【0004】
非特許文献1によれば、従来の耐候性鋼(JIS G3114:溶接構造用耐候性熱間圧延鋼材)は、飛来塩分量が0.05mg・NaCl/dm/day(以降、単位(mg・NaCl/dm/day)をmddにて表記する場合がある)以下の地域でのみ、無塗装使用可能となっている。従って、海岸近傍などの飛来塩分量が多い環境では、普通鋼材(JIS G3106:溶接構造用圧延鋼材)に塗装等の防食措置を施して使用されている。
【0005】
塗装した鋼材は、時間の経過とともに塗膜が劣化し、定期的な補修が必要となる。加えて、人件費の高騰や、再塗装の困難さが加わる。このような理由から、現在、無塗装で使用可能な鋼材の要望が高い。
【0006】
このような現状に対して、近年、海岸近傍などの高飛来塩分環境において無塗装で使用可能な鋼材として、種々の合金元素、特にNiを多量に含有させた鋼材が開発されている。
例えば、特許文献1では、耐候性向上元素として、Cuと1重量%以上のNiを添加した高耐候性鋼材が開示されている。特許文献2では、1mass%以上のNiとMoを添加した耐候性に優れた鋼材が開示されている。
【0007】
また、特許文献3では、Cu、Niに加え、Tiを添加した耐候性鋼材が開示されている。さらに、特許文献4では、Niを多量に含有し、加えてCu、Mo、Sn、Sb、P等を含有した溶接構造用鋼材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3785271号公報
【特許文献2】特許第3846218号公報
【特許文献3】特許第3466076号公報
【特許文献4】特開平10−251797号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】耐候性鋼材の橋梁への適用に関する共同研究報告書(XX)、1993.3、建設省土木研究所、(社)鋼材倶楽部、(社)日本橋梁建設協会
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1、2および3のように、Niの含有量を増加させた場合、合金コストの上昇により鋼材の価格が上昇してしまうという問題点がある。
【0011】
また、特許文献4のように、NiおよびPの含有量を増加させ、Cu、Mo、Sn、Sb等を含有した鋼材では、合金コストの上昇により鋼材の価格が上昇し、さらに、Pの含有量が高いために溶接性が低下する。
【0012】
本発明は、かかる事情に鑑み、低コストで、耐候性に優れた鋼材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、前記課題を解決するために、高塩分環境における耐候性の観点から鋼材の成分組成について鋭意検討した。その結果、Cu、Niを含有するベース鋼にMoとNbを複合含有することにより、高塩分環境における鋼材の耐候性が向上することを見出した。
【0014】
本発明は、以記の知見に基づいてなされたものであり、その要旨は以下の通りである。
【0015】
第一の発明は、質量%で、C:0.06%超え0.14%未満、Si:0.05%以上2.00%以下、Mn:0.20%以上2.00%以下、P:0.005%以上0.030%以下、S:0.0001%以上0.0200%以下、Al:0.001%以上0.100%以下、Cu:0.10%以上1.00%以下、Ni:0.10%以上0.65%以下、Mo:0.001%以上1.000%以下、Nb:0.005%以上0.200%以下を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなることを特徴とする耐候性に優れた鋼材である。
【0016】
第二の発明は、質量%で、Mo:0.005%以上1.000%以下を含有することを特徴とする第一の発明に記載の耐候性に優れた鋼材である。
【0017】
第三の発明は、さらに、質量%で、Cr:0.2%以上1.0%以下、Co:0.01%以上1.00%以下、REM:0.0001%以上0.1000%以下、Sn:0.005%以上0.200%以下の中から選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする第一または第二の発明に記載の耐候性に優れた鋼材である。
【0018】
第四の発明は、さらに、質量%で、Ti:0.005%以上0.200%以下、V:0.005%以上0.200%以下、Zr:0.005%以上0.200%以下、B:0.0001%以上0.0050%以下、Mg:0.0001%以上0.0100%以下の中から選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする第一乃至第三の発明に記載の耐候性に優れた鋼材である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、低コストで、耐候性に優れた構造用鋼材が得られる。
本発明の構造用鋼材は、耐候性向上に有効な元素を複合含有させることで、Niなどの高価な元素を多量に含有することなく低コストで、実用的な溶接性を有し、かつ海岸近傍などの高塩分環境おいて優れた耐候性を有することができる。特に、飛来塩分量が0.05mdd超えの高飛来塩分環境で顕著な効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明の各構成要件の限定理由について説明する。
【0021】
1.成分組成について
はじめに、本発明の鋼の成分組成を規定した理由を説明する。なお、成分%は、すべて質量%を意味する。
【0022】
C:0.06%超え0.14%未満
Cは構造用鋼材の強度を向上させる元素であり、所定の強度を確保するため0.06%を超えて含有する必要がある。一方、0.14%以上では溶接性および靭性が劣化する。したがって、C量は0.06%超え0.14%未満の範囲とする。好ましくは強度確保の点から0.08%以上、さらに好ましくは溶接性および靱性の点から0.10%未満である。
【0023】
Si:0.05%以上2.00%以下
Siは製鋼時の脱酸剤として、また、構造用鋼材の強度を向上させ所定の強度を確保する元素として、0.05%以上含有する必要がある。一方、2.00%を超えて過剰に含有すると靭性および溶接性が著しく劣化する。したがって、Si量は0.05%以上2.00%以下の範囲とする。好ましくは、0.10%以上0.80%以下である。
【0024】
Mn:0.20%以上2.00%以下
Mnは構造用鋼材の強度を向上させる元素であり、所定の強度を確保するために0.20%以上含有する必要がある。一方、2.00%を超えて過剰に含有すると靭性および溶接性が劣化する。したがって、Mn量は0.20%以上2.00%以下の範囲とする。
好ましくは、0.20%以上1.50%以下である。
【0025】
P:0.005%以上0.030%以下
Pは構造用鋼材の耐候性を向上させる元素である。このような効果を得るためには0.005%以上含有する必要がある。一方、0.030%を超えて含有すると溶接性が劣化する。したがって、P量は0.005%以上0.030%以下の範囲とする。好ましくは、0.005%以上0.025%以下である。
【0026】
S:0.0001%以上0.0200%以下
Sは0.0200%を超えて含有すると溶接性および靭性が劣化する。一方、含有量を0.0001%未満まで低下させると、生産コストが増大する。したがって、S量は0.0001%以上0.0200%以下の範囲とする。好ましくは、0.0003%以上0.0050%以下である。
【0027】
Al:0.001%以上0.100%以下
Alは、製鋼時の脱酸に必要な元素である。このような効果を得るため、Al含有量として0.001%以上含有する必要がある。一方、0.100%を超えると溶接性に悪影響を及ぼす。したがって、Al量は0.001%以上0.100%以下の範囲とする。好ましくは、0.010%以上0.050%以下である。なお、Al含有量は酸可溶Alを測定した。
【0028】
Cu:0.10%以上1.00%以下
Cuは錆粒を微細化することで緻密な錆層を形成し、構造用鋼材の耐候性を向上させる効果を有する。このような効果は含有量が0.10%以上で得られる。一方、1.00%を超えるとCu消費量増加に伴うコスト上昇を招く。したがって、Cu量は0.10%以上1.00%以下の範囲とする。好ましくは、0.20%以上0.50%以下である。
【0029】
Ni:0.10%以上0.65%以下
Niは錆粒を微細化することで緻密な錆層を形成し、構造用鋼材の耐候性を向上させる効果を有する。この効果を充分に得るためには0.10%以上含有する必要がある。一方、0.65%を超えるとNiの消費量増加によるコストの増大を招く。したがって、Ni量は0.10%以上0.65%以下の範囲とする。好ましくは、0.15%以上0.50以下である。
【0030】
Mo:0.001%以上1.000%以下
Moは、本発明において重要な要件であり、Nbと共存することにより、高塩分環境における鋼材の耐候性を著しく向上させる効果がある。また、錆層中でモリブデン酸イオンを形成することによって、腐食促進因子の塩化物イオンが錆層を透過して地鉄に到達するのを防止する。また、鋼材のアノード反応に伴ってMoO2−が溶出し、鋼材表面にMoを含む化合物が沈殿することで、鋼材のアノード反応を抑制する。これらの効果を充分に得るためには、0.001%以上含有する必要がある。一方、1.000%を超えるとMo消費量増加に伴うコスト上昇を招く。したがって、Mo量は0.001%以上1.000%以下の範囲とする。好ましくは0.005%以上1.000%以下であり、より好ましくは、0.10%以上0.70%以下である。
【0031】
Nb:0.005%以上0.200%以下
Nbは、本発明において重要な要件であり、Moと共存することにより、高塩分環境における鋼材の耐候性を著しく向上させる効果がある。Nbは、鋼材表面近傍の錆層中に濃化し、鋼材のアノード反応を抑制する効果を有する。これらの効果を充分に得るためには、0.005%以上含有する必要がある。一方、0.200%を超えると鋼の靱性の劣化を招く。したがって、Nb量は0.005%以上0.200%以下の範囲とする。好ましくは、0.010%以上0.030%以下である。
【0032】
本発明の基本成分組成は以上であるが、更に所望の特性を向上させる場合は、Cr、Co、REM、Snの1種または2種以上を選択元素として含むことができる。
【0033】
Cr:0.2%以上1.0%以下
Crは、錆粒を微細化することで緻密な錆層を形成し、耐侯性を向上させるのに有効であり、0.2%以上含有するとその効果を発揮し、1.0%を超えると、溶接性の低下を招く。したがって、Crを含有する場合は、その量は0.2%以上1.0%以下の範囲とすることが好ましい。より好ましくは、0.2%以上0.7%以下である。
【0034】
Co:0.01%以上1.00%以下
Coは錆層全体に分布し、錆粒を微細化することで緻密な錆層を形成し、構造用鋼材の耐候性を向上させるのに有効であり、0.01%以上含有するとその効果を発揮し、1.00%を超えて含有するとCo消費量増加に伴うコスト上昇を招く。したがって、Coを含有する場合は、その量は0.01%以上1.00%以下の範囲とすることが好ましい。より好ましくは、0.10%以上0.50%以下である。
【0035】
REM:0.0001%以上0.1000%以下
REMは錆層全体に分布し、錆粒を微細化することで緻密な錆層を形成し、構造用鋼材の耐候性を向上させるのに有効であり、0.0001%以上含有するとその効果を発揮し、0.1000%を超えるとその効果は飽和する。したがって、REMを含有する場合、その量は0.0001%以上0.1000%以下の範囲とすることが好ましい。より好ましくは、0.0010%以上0.0100%以下である。
【0036】
Sn:0.005%以上0.200%以下
Snは錆下層に濃化し、鋼材のアノード反応を抑制するのに有効であり、0.005%以上含有するとその効果を発揮し、0.200%を超えると、靱性の劣化を招く。したがって、Snを含有する場合、その量は0.005%以上0.200%以下の範囲とすることが好ましい。より好ましくは、0.010%以上0.100%以下である。
【0037】
更に、本発明では、Ti、V、Zr、B、Mgの1種または2種以上を選択元素として含むことができる。
【0038】
Ti:0.005%以上0.200%以下
Tiは、鋼材の強度を高めるために有効な元素であり、0.005%以上含有するとその効果を発揮し、0.200%を超えると靭性の劣化を招く。したがって、Tiを含有する場合、その量は0.005%以上0.200%以下の範囲とすることが好ましい。より好ましくは、0.010%以上0.100%以下である。
【0039】
V:0.005%以上0.200%以下
Vは、強度を高めるために有効な元素であり、0.005%以上含有するとその効果を発揮し、0.200%を超えると効果が飽和する。したがって、Vを含有する場合、その量は0.005%以上0.200%以下の範囲とすることが好ましい。より好ましくは、0.010%以上0.100%以下である。
【0040】
Zr:0.005%以上0.200%以下
Zrは、強度を高めるために有効な元素であり、0.005%以上含有するとその効果を発揮し、0.200%を超えると効果が飽和する。したがって、Zrを含有する場合は、その量は0.005%以上0.200%以下の範囲とすることが好ましい。より好ましくは、0.010%以上0.100%以下である。
【0041】
B:0.0001%以上0.0050%以下
Bは、強度を高めるために必要な元素であるが、その量が0.0001%未満であると、その効果は十分に得られない。一方、0.0050%を超えると靭性の劣化を招く。したがって、Bを含有する場合は、その量は0.0001以上0.0050%以下の範囲とすることが好ましい。より好ましくは、0.0005%以上0.0040%以下である。
【0042】
Mg:0.0001%以上0.0100%以下
Mgは、鋼中のSを固定して溶接熱影響部の靭性向上に有効な元素であり、0.0001以上含有するその効果を発揮し、0.0100%を超えると鋼中の介在物の量が増加しかえって靭性の劣化を招く。したがって、Mgを含有する場合は、その量は0.0001%以上0.0100%以下の範囲とすることが好ましい。より好ましくは、0.0005%以上0.0030%以下である。
【0043】
なお、上記した成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物からなる。ここで不可避的不純物として、N:0.010 %以下、O:0.010%以下が許容できる。また、不可避的不純物として含有するCaは、鋼中に多量に存在すると溶接熱影響部の靭性を劣化させるため0.0010%以下が好ましい。
【0044】
2.製造条件について
本発明の耐候性に優れた鋼材は、上記成分組成を有する鋼を通常の連続鋳造や分塊法により得られたスラブを熱間圧延することにより厚板や形鋼、薄鋼板、棒鋼等の鋼材に製造される。なお、加熱、圧延条件は、要求される材質に応じて適宜決定すればよく、制御圧延、加速冷却、あるいは再加熱熱処理等の組合せも可能である。
【実施例1】
【0045】
表1に示す化学組成の鋼を溶製し、1150℃に加熱した後、熱間圧延を行い、室温まで空冷して厚さ6mmの鋼板を試作した。次いで、得られた鋼板から35mm×35mm×4mmの試験片を採取した。試験片は、表面を表面粗さRaが1.6μm以下となるように研削加工し、端面、裏面をテープシールし、表面露出部の面積が25mm×25mmとなるように表面もテープシールした。
以上により得られた試験片について、耐候性試験を行い、耐候性を評価した。
【0046】
耐候性評価試験としては、実際の橋梁などの構造物において最も厳しい環境と考えられる、雨掛かりの無い桁内部の環境を模擬した腐食試験を行った。腐食試験はサンプル表面に塩分を付着させた状態で温湿度サイクルを繰り返して行なった。
【0047】
温湿度サイクルは、温度40℃、相対湿度40%RHの乾燥工程を11時間、その後、移行時間を1時間とった後、温度を25℃、相対湿度を95%RHの湿潤工程を11時間として、その後1時間移行時間をとり、合計24時間で1サイクルとし、実環境の温湿度サイクルを模擬した。
【0048】
温湿度サイクル開始前、および7サイクルごとに、試験片表面に付着する塩分が1.4mg/dmとなるように、乾燥工程前に試験片の表面に人工海水を滴下した。
【0049】
この条件にて、26週間で温湿度サイクル182サイクルの試験を行った。
【0050】
また、腐食試験終了後、37%塩酸500mL、ヘキサメチレンテトラミン3.5g、ヒビロン(アイコーケミカル社製インヒビター)3mLに蒸留水を加えて1L(リットル)とした除錆溶液に、試験片を浸漬して脱錆してから重量を測定した。なお、重量の測定は、第145回腐食防食シンポジウム資料「腐食減耗評価方法の高精度化」に記載の方法に準拠した。さらに、得られた重量と初期重量との差を求めて、それを試験片の試験対象面の面積で除することで、試験片片面の平均板厚減少量を算出した。
【0051】
なお、飛来塩分量約0.5mddは、海岸近傍などの飛来塩分量が多い環境に相当するが、これまでの知見から、本腐食試験における鋼板厚減少量(182日間)は、飛来塩分量が約0.5mddの実際の環境に182日間暴露した場合の腐食による鋼板厚減少量と同等になることがわかっている。
【0052】
また、試験により得られた平均板厚減少量から外挿により100年後の腐食量を求めた場合、本腐食試験の期間にて得られる平均板厚減少量が22μm以下であれば、100年後の平均板厚減少量は層状剥離錆の発生が無い0.5mm以下と予想される。
【0053】
一般に、無塗装耐候性鋼の橋梁への適用可否の目安は、100年後の板厚減少量が0.5mm以下であることが知られているので、各種鋼材に対して本腐食試験を行い、得られる平均板厚減少量が22μm以下であれば無塗装耐候性鋼の橋梁への適用が可となる。
以上より、表1において、平均板厚減少量が22μm以下の鋼材に対して耐侯性が優れていると判定した。
【0054】
以上により得られた腐食試験結果を成分組成と併せて表1に示す。
【0055】
【表1】

【0056】
表1より、発明例である鋼種No.1〜17および32〜37では、板厚減少量は19.7〜22.0μmといずれも22μm以下であり、優れた耐候性を有している。
一方、比較例である鋼種No.18〜31では、鋼種No.18〜24は必須成分であるCu、Ni、Mo、Nbのうち、いずれか1種以上を含有していないため、鋼種No.25はCuが下限未満で、鋼種No.26、29はMoが下限未満で、鋼種No.27はNbが下限未満で、鋼種No.28はNiが下限未満で、鋼種No.30はSnが下限未満で、鋼種No.31はNbが下限未満であるため、板厚減少量が24.3〜30.7μmと22μmを上回っており、発明例に比べ大きく耐候性が劣っていることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量%で、C:0.06%超え0.14%未満、Si:0.05%以上2.00%以下、Mn:0.20%以上2.00%以下、P:0.005%以上0.030%以下、S:0.0001%以上0.0200%以下、Al:0.001%以上0.100%以下、Cu:0.10%以上1.00%以下、Ni:0.10%以上0.65%以下、Mo:0.001%以上1.000%以下、Nb:0.005%以上0.200%以下を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなることを特徴とする耐候性に優れた鋼材。
【請求項2】
質量%でMo:0.005%以上1.000%以下を含有することを特徴とする請求項1に記載の耐候性に優れた鋼材。
【請求項3】
さらに、質量%で、Cr:0.2%以上1.0%以下、Co:0.01%以上1.00%以下、REM:0.0001%以上0.1000%以下、Sn:0.005%以上0.200%以下の中から選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の耐候性に優れた鋼材。
【請求項4】
さらに、質量%で、Ti:0.005%以上0.200%以下、V:0.005%以上0.200%以下、Zr:0.005%以上0.200%以下、B:0.0001%以上0.0050%以下、Mg:0.0001%以上0.0100%以下の中から選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1乃至3に記載の耐候性に優れた鋼材。

【公開番号】特開2012−188754(P2012−188754A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−35950(P2012−35950)
【出願日】平成24年2月22日(2012.2.22)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】