説明

耐力壁並列式の壁構造および建築構造物

【課題】建物の水平構面内重心と剛心とを一致させたり、建物の上下方向の階層の剛性バランスを図るようにして耐震性能を向上させる壁構造およい建物を提供すること。
【解決手段】構造用面材を薄板軽量形鋼にドリルねじ接合して構成される薄板軽量形鋼造の耐力壁を用いる壁構造において、建物全体の水平構面内の重心Gおよび剛心Kのずれによる偏心および建物の高さ方向の剛性バランスを調整すると共に建物の耐震性能を向上させるために、第1耐力壁12bが少ない箇所に、前記第1耐力壁12bとは別個の調整用耐力壁45を並列して設置する。また、建物全体の強度と剛性を上げるために、建物の全体または一部の第1耐力壁12bに間隔をおいて、前記第1耐力壁12bとは別個の調整用耐力壁45を並列して設置する。上下階の耐力壁相互は、これらに軸力を直接伝達する接合金物により連結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スチールハウス等の建築構造物に適用可能な耐力壁並列式の壁構造および建築構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、地震時における建築構造物の耐震性能を検討する場合、各階ごと,計算する方向に定義される剛性率が考慮され、剛性率が0.6を下回らないように設計される。剛性率の特に小さい建築物の地震時の振動性状は、特に小さい剛性率の階に地震のエネルギーが集中し、過大な水平変形が生じるという問題がある。
また、地震力は、階の重心に作用するため、重心と剛心の位置が一致しないと、建築構造物は水平方向に変形するほか、剛心まわりに回転する。重心と剛心とのずれによる偏心が大きい建築物にあっては、図22(b)に示すように、参照建築物の隅部で部分的に過大な変形が強いられる部材が生じ、それらの部材に損傷が生じることになる。
そのため、各階の偏心率Reが100分の15を超えないように設計されている。
また、剛性率Rsに応じたFs値(1.0≦Fs<2.0)と、偏心率Reに応じたFe値(1.0≦Fe≦1.5)を乗じて算出される形状係数Fes(Fes=(Fs値)・(Fe値))を算出している。前記の形状係数Fesは、建築物の立面的および平面的な耐震要素の偏りによる必要保有水平力の割り増し係数であり、Fes(1.0≦Fes<3.0)を設計に取り入れられている。例えば、図22(a)に示すように、建築構造物49において、特に剛性率Rsの小さい階が存在すると、地震時において水平力が作用した場合に、剛性率の小さい階に変形が集中し、剛性率の小さい階に被害が大きくなることも知られている。
【0003】
例えば、スチールハウス(スチールハウスは普通、板厚0.8mm以上、2.3mm未満の薄板軽量形鋼による枠材と、この枠材に構造用面材を組み合わせて構成される鉄鋼系パネル構造の建物と定義される。)等の狭小間口の建築構造物では、図13(a)に示すように、南面に開口部46を大きくとることから、耐力壁12bが南面に十分配置できず、建物49における水平構面内の重心Gと、耐力壁の配置で決まる建物の剛心Kとがずれることから、(A)水平構面内での問題として、地震時等に建物に水平力が作用した場合、建物全体がねじれる傾向にある。
【0004】
前記のような建物全体のねじれによる耐震性能の低下を防ぐには、(1)図13(b)に斜線で示すように、平面視で耐力壁の設置箇所の少ない側における耐力壁12b自体の剛性と耐力を割り増すことにより、平面視で、建物の重心Gと、剛心Kとを近づけることが考えられる。
【0005】
前記の耐力壁12bの剛性と耐力を高める手段として、薄板軽量形鋼および構造用面材を使用した鉄鋼系パネル系の耐力壁パネルでは、構造用面材を薄板軽量形鋼に固定する場合に、構造用面材を薄板軽量形鋼に固定するための、ドリルねじのピッチを細かいピッチにすることにより、耐力壁パネルの剛性および耐力を高めることができる。
【0006】
前記のように、構造用面材を留め付けるドリルねじのピッチを小さくして、ドリルねじの本数を増やす方法により耐力壁パネルの剛性および耐力を高めることができるが、このようにした場合、図14(a)に示す変形状態およびその耐力―変形曲線を示す図14(c)の曲線Bに示すように、構造用面材を留め付けるドリルねじのピッチを小さくしない場合を示す図14(b)に示す変形状態および図14(c)の曲線Aに比べて、壁パネル12bの最大耐力も増加してしまうため、これに見合うように、アンカーボルト等の金物を高強度の金物としなければならないと共に、耐力壁パネルの縦枠材を高強度の縦枠材とし、コンクリート基礎あるいは梁をより高強度の基礎あるいは梁となるように増大するようになり、前記のように各階を補強するようにすると、薄板軽量形構造の3階〜5階建ての建物ではコストが上がるという問題がある。
【0007】
また、耐力壁を2列以上並列させることで重心と剛心の位置を一致させ耐震性能を向上させるという事例は、設計・施工が複雑となり、コストが上がるという問題があることから、薄板軽量形構造においては、従来は、その発想に至っていない。
【0008】
すなわち、図13(c)と図17および図18に示すように、耐力壁を2列並設する場合を、従来技術の範囲で仮に考えてみると、耐力壁直下に薄板軽量形鋼の側根太(または端根根太)が耐力壁縦枠の軸力で押し潰されないようにするため、強固な圧縮補強金物を配置する必要があり、側根太(または端根太)の形鋼構成が複雑化する。
例えば、図17および図18に示すように、下階側耐力壁としての下階側壁パネル12における縦枠材11と、上階側壁パネル18における縦枠材11とに、ホールダウン金物30,31を取付け、前記の各ホールダウン金物30,31相互をボルト28およびこれに装着されるナット29により連結し、上階側壁パネル18の縦枠材11を接合金具1を介して下階側壁パネル12における縦枠材11を接合し、ホールダウン金物30,31とボルト28とにより引張力に抵抗する構造の耐力壁12a,bに並列配置する調整用耐力壁45aを増設することが考えられるが、前記ホールダウン金物30,31は、圧縮力を支持できないため、床パネル40内に補強用圧縮材25を介在させて、圧縮力と引張力の伝達可能な構造とする必要がある。このような構造とした場合、実用上、調整用耐力壁45が近接した状態であり、ホールダウン金物30,31を縦枠材11に固定する必要があるが、狭隘な構造になるので、ホールダウン金物30,31の縦部分を縦枠材11のウェブに固定するための、ドリルねじ24の打設作業が困難になるという問題があるばかりでなく、施工コストが格段に高くなる。
【0009】
なお、図17および図18に示す形態では、側根太(または端根太)16内に、短尺の薄板軽量形鋼を縦向きにした圧縮補強金物50を配置してあり、側根太(または端根根太)16に間隔をおいて対称に配置される内側の側根太(または端根太)梁材16aである。
【0010】
また、図19および図20に示すように、床組内部に別個に配置される圧縮補強金物に代えて、鋼管からなる筒状体25の上下にフランジ26を設けてフランジ付筒状体27を構成し、そのフランジ付筒状体27内に連結ボルト28を配置すると共に上下のホールダウン金物30,31を前記連結ボルト28にねじ込むナット29により連結する形態の接合構造も知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0011】
この図17、図19および図20に示すような2つのホールダウン金物と連結ボルト・ナットの3つの金物からなる接合金物を使用した接合構造においては、地震あるいは風による水平力が作用した場合、主として引張力しか伝達できないため、圧縮力を床組み部分で伝達するようになり、上下階壁パネルの縦枠スタッドに挟まれる床組み内部に圧縮補強金物を挿入するなど複雑な工夫を必要とし、ピース数が増大し、設計・施工が複雑となる。
【0012】
このため、現実としてスチールハウスにおいては、耐力壁を2列以上並列させることで重心と剛心の位置を一致させ耐震性能を向上させるという事例は、設計・施工が複雑となり、コストが上がるという問題があることから、従来は事例が無く、またその発想も得られなかった。
【特許文献1】特開2005−320860号公報
【非特許文献1】特開平10−311110号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
前記のように、対向する壁相互間において開口部を有する建物では、(A)水平構面内での問題として、地震時あるいは風荷重が建物に作用した場合に、建物全体のねじれを防止するために、剛心と重心を近づける手段として、耐力壁の最大耐力を増加させないで、安価に施工できる壁構造が望まれている。
また、(B)垂直構面内の問題として、図12(a)に示すように、耐力壁12bを順次上層階に配置する場合、垂直方向についても、同様な耐力壁12bが1階から上層階までほぼ一直線に耐力壁12bが配置されるため、設計外力に対する耐力壁12bの剛性の比率が下層よりも上層で大きくなり、層間変形角(δ/h)が下層階側で大きく、上層階側で小さくなり、耐震性能が低下する。この耐震性能の低下を防止するために、下層階の剛性と強度を割り増して、図12(b)に示すように、高さ方向の層間変形角を近づける必要があった。しかし、下層階の耐力壁を増設することは、薄板軽量形構造の耐力壁では、圧縮補強金物27を配置する形態では、構造が複雑になり、施工が困難であるという問題がある。
【0014】
本発明者は、前記の問題点を種々検討すると共に、特開2005−320860号に開示の接合部金物を使用し、かつ薄板軽量溝形鋼の耐力壁を並列配置する場合において、側根太(端根太)の圧縮補強金物を設置することなく、あるいは圧縮補強金物を挿入した場合でも簡易な構造とすることで、設計・施工を簡易にして、安価に剛心と重心を近づける壁構造の実現が可能になることを見い出し、本発明を完成させた。
また、耐力壁を並設し、建物の平面方向、および、高さ方向の剛性バランスを調整し、建物の耐震性能を向上させることが可能な結論を得た。
また、建物全体の耐力が不足する場合、外壁や内壁に、さらにその内側に調整用耐力壁を追加・並列させることで、建物の耐震性能を向上させることが可能な結論に至った。
本発明は、前記の問題点を有利に解決することが可能で、建物の耐震性能を向上させることが可能な、壁構造および建築構造物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記の課題を有利に解決するために、第1発明の耐力壁並列式の壁構造においては、構造用面材を薄板軽量形鋼にドリルねじ接合して構成される薄板軽量形鋼造の耐力壁を用いる壁構造において、建物全体の水平構面内の重心と剛心のずれによる偏心および建物の高さ方向の剛性バランスを調整すると共に建物の耐震性能を向上させるために、第1耐力壁が少ない箇所に、前記第1耐力壁とは別個の調整用耐力壁を並列して設置したことを特徴とする。
また、第2発明では、構造用面材を薄板軽量形鋼にドリルねじ接合して構成される薄板軽量形鋼造の耐力壁を用いる壁構造において、建物全体の強度と剛性を上げるために、建物の全体または一部の第1耐力壁に間隔をおいて、前記第1耐力壁とは別個の調整用耐力壁を並列して設置したことを特徴とする。
また、第3発明では、第1発明または第2発明の耐力壁並列式の壁構造において、上階側および下階側の各第1耐力壁における縦枠材相互と、上階側および下階側の各調整用耐力壁における縦枠材相互とは、軸力を直接伝達する金物を介して連結され、上階側および下階側の各耐力壁の間に配置される側根太または端根太には、側根太または端根太内に圧縮補強金物が配置されていないことを特徴とする。
また、第4発明の建築構造物では、第1発明〜第3発明のいずれかの耐力壁並列式の壁構造を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
第1発明によると、構造用面材を薄板軽量形鋼にドリルねじ接合される薄板軽量形鋼造の耐力壁を用いる壁構造において、建物全体の水平構面内の重心と剛心のずれによる偏心および建物の高さ方向の剛性バランスを調整すると共に建物の耐震性能を向上させるために、第1耐力壁が少ない箇所に、前記第1耐力壁とは別個の調整用耐力壁を並列して設置したので、耐力壁が少ない箇所に、別個に調整用耐力壁を並列して設置することにより、容易に水平構面内の重心と剛心のずれによる偏心を調整して、水平構面内における重心および剛心を一致させるようにして、重心と剛心のずれによる偏心を解消し、建築構造物の耐震性能を向上させることができ、地震時あるいは風荷重時に建築構造物に水平力が作用するようになっても、建築構造物が捩れるのを防止することができ、建築構造物の耐震性能を容易に向上させることができ、また設計も容易である。
したがって、例えば、建築構造物における水平構面内において、開口部の存在により、平面的に建物の重心と剛心とがずれるような建築構造物であっても、開口部側の耐力壁に間隔をおいて独立した調整用耐力壁を増設して、建物の重心と剛心のずれによる偏心を解消し、これらを一致させるようにすることができ、地震時等に水平力が作用した場合、建築構造物の捩れを防止して、建築構造物の耐震性能を容易に向上させることができる。
第2発明によると、構造用面材を薄板軽量形鋼にドリルねじ接合して構成される薄板軽量形鋼造の耐力壁を用いる壁構造において、建物全体の強度と剛性を上げるために、建物の全体または一部の第1耐力壁に間隔をおいて、前記第1耐力壁とは別個の調整用耐力壁を並列して設置したので、単に、第1耐力壁に間隔をおいて、調整用耐力壁を、建物の全体の第1耐力壁に間隔をおいて設置したり、建物の一部の第1耐力壁に間隔をおいて調整用耐力壁を設置するだけで、建物全体の強度と剛性を容易に向上させることができる。
第3発明によると、上階側および下階側の各第1耐力壁における縦枠材相互と、上階側および下階側の各調整用耐力壁における縦枠材相互とは、軸力を直接伝達する接合金物を介して連結され、上階側および下階側の各耐力壁の間に配置される側根太または端根太には、側根太または端根太内に圧縮補強金物が配置されていないので、上下階の耐力壁相互間を直接軸力の伝達可能な構造とすることができ、また、側根太または端根太には、側根太または端根太内に圧縮補強金物が配置されていないので、簡単な構造で施工も容易な構造とすることができ、経済的に施工可能な壁構造とすることができる。
【0017】
第4発明によると、建物における第1耐力壁に間隔をおいて調整用耐力壁を設置するだけで、建築構造物における水平構面内における重心と剛心のずれによる偏心を解消し、捩れにくい耐震性能の高い建築構造物としたり、上下方向の建物の強度または剛性を高めた耐震性能の高い建築構造物とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に、本発明を図示の実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0019】
図1〜図8には、本発明の第1実施形態の壁構造およびこれを備えた第1および第2実施形態の建築構造物49並びにこれらに使用される接合金物1が示されている。
【0020】
図1(a)(b)に示す形態では、3階の建築構造物49を構築する場合を示したもので、1階から3階における南側には、それぞれ開口部46が形成されている形態の建築構造物49の耐震性能を向上させた形態である。
【0021】
図1(a)では、北側における外側に広幅外側耐力壁(第1耐力壁)12aを設置し、北側に調整用耐力壁45を設けないようにした形態であり、図1(b)では、北側の狭巾外側耐力壁(第1耐力壁)12aに間隔をおいて、狭巾の調整用耐力壁45を設置している形態である。図1(a)(b)における上下階の各耐力壁相互の接合構造に使用する接合金物は、同様の構造である。
【0022】
図1(a)では、各階の北側の耐力壁は、開口部46のない形態の広幅外側耐力壁12aとされ、1階の広幅外側耐力壁12aの下部は、コンクリート基礎41に埋め込み固定されたアンカーボルト42(図6参照)により、適宜ホールダウン金物43等の接合金具を介して固定されている。また、下階側の広幅外側耐力壁12aと、上階側の広幅外側耐力壁12aとは、図7から図10に示す接合金具1(詳細は後記する。)により、圧縮力および引張力を、上下階の耐力壁12aにおける各縦枠材11に直接伝達可能な接合構造とされている。
【0023】
また、各階の南側の開口部46に隣接する第1耐力壁としての下階側の外側耐力壁(1階外側耐力壁)12bの下部は、前記と同様にコンクリート基礎41に埋め込み固定されたアンカーボルト42により、適宜ホールダウン金物43等の接合金具を介して固定されている。
【0024】
また、床パネル40を挟んで、1階の第1耐力壁12aと、2階の第1耐力壁12aとは、図7から図10に示す圧縮力および引張力を伝達可能な接合金物1により連結され、同様に、2階以上の階層間において、下階の狭巾の第1耐力壁12bと、上階の狭巾の第1耐力壁12b相互は、図7から図10に示す接合金物1により接合されている。
【0025】
そして、本発明では、前記の南側の開口部46により、各階の水平構面内において、建物の重心Gと、剛心Kとがずれにより偏心している場合にこれらを一致または近づけるために、南側の開口部46に隣接する狭巾第1耐力壁12bに近接した間隔をおいて、前記の狭巾第1耐力壁12bと同様な仕様の耐力壁で、同様な剛性の耐力壁からなる狭巾の調整用耐力壁45が、3階を除く、各階に設置されている。
前記のように、狭巾第1耐力壁12aと同様な構成の狭巾調整用耐力壁45を配置するようにすると、設計および増設が容易である。
【0026】
前記のように、調整用耐力壁45を、建築構造物49における耐力壁が少ない箇所に、予めあるいは追加して設置することにより、建物全体の水平構面内における重心Gと、剛心Kとを一致または近接させ、地震時または風荷重が作用した場合、建築構造物49を捩れにくくすることができ、建築構造物49の耐震性能を向上させることができる。
【0027】
前記の調整用耐力壁45は、建築構造物49における上下方向の各階に設置するようにしてもよく、建築構造物49の一部の階に設置するようにしてもよい。
図12(a)に示すように、上下階において同じ狭巾第1耐力壁12bが配置されている場合に、下層階になるに従って層間変形角(δ/h)が、δ1/h1、δ2/h2、δ3/h3と大きくなるので、上下階における層間変形角を一定値に近づけるようにするため、図12(b)では、調整用耐力壁45を1階および2階に設けて、極力、全階にわたって層間変形角を一定値に近づけるようにしている形態である。
【0028】
すなわち、下層の各階に調整用耐力壁45を設けることで、建物全体の水平構面内の重心Gおよび剛心Kの偏心をなくすとともに建物の高さ方向の剛性バランスを調整し、建物の耐震性能を向上させることができる。
【0029】
図1(b)は、他の形態の建築構造物49を示し、この形態では、建築構造物49における北側は、狭巾外側耐力壁12bとされ、これに間隔をおいて、前記狭巾外側耐力壁12bと同じ寸法の調整用耐力壁45が間隔をおいて室内側に位置するように設置されている形態であり、その他の構成は前記の形態と同様である。このような形態でも、下層階の層間変形角(δ/h)を小さくして、上下階における層間変形角を一定値に近づけるようにすることができる。
【0030】
前記の各形態は、外側に配置された側壁パネルからなる外側耐力壁12bを第1耐力壁15とし、これに間隔をおいて近接した位置に、調整用耐力壁45を、建物の全部または一部に設置することにより、建築構造物49の耐震性能を向上させることを目的としている。
【0031】
したがって、図11(a)(b)に示すように、第1耐力壁15が外側耐力壁以外に、建物の幅方向あるいは前後方向の中間部に位置するように中間耐力壁48として第1耐力壁15が配置されている建物の場合、中間部に配置されている第1耐力壁15に近接した間隔をおいて調整用耐力壁45を設置して、建物全体の水平構面内の重心Gと剛心Kとを一致させたり、建物49の高さ方向の剛性バランスを調整し、建物の耐震性能を向上させるようにしてもよい。
【0032】
なお、図1に示すように、最上階側に調整用耐力壁45を設けない場合における、下階側の調整用耐力壁45の上部を固定する一形態を図23および図24に示す。
【0033】
次に、特に図2から5および図7を参照しながら、上階側の外側耐力壁等の第1耐力壁15と、下階側の第1耐力壁15との接合構造、および上階側の調整用耐力壁45と下階側の調整用耐力壁45との接合構造、並びに、これらの側根太または端根太16(調整用端根太あるいは調整用側根太16a)との関係について説明する。なお、上下階の第1耐力壁15相互と、調整用耐力壁45相互とは同様な構造であるので、第1耐力壁15を主に、調整用耐力壁45を括弧内に記載して同時に説明する。
【0034】
基礎あるいは下位の壁パネル等に下階側壁パネル12等の第1耐力壁15は連結されて建て込まれ、同様に第1耐力壁15に間隔をおいて平行に並列して調整用耐力壁45が建て込まれ、前記下階側壁パネル12等の第1耐力壁15の上枠材13の上にこれに沿って端根太あるいは側根太16が配設されて、ドリルねじ(図示を省略)により固定され、同様に調整用耐力壁45の上枠材13の上にこれに沿って前記端根太あるいは側根太16に間隔をおいて向かい合うように調整用端根太あるいは側根太16aが配置され、フレキねじあるいは六角ねじ等の固着具47により固定されている。
【0035】
端根太あるいは側根太16(または調整用端根太あるいは調整用側根太16a)および床根太の上フランジ21に床下張材17が載置されてドリルねじ等の固着具により固定され、その床下張材17上に、前記下階側壁パネル12等の第1耐力壁15(または調整用耐力壁45)と同様な構造の上階側壁パネル18からなる上階側第1耐力壁15(または上階側の調整用耐力壁45)が、下階側壁パネル12からなる第1耐力壁15(または下階側の調整用耐力壁45)と同一垂直面状に建て込まれ、上階側壁パネル18からなる第1耐力壁15(または調整用耐力壁45)における溝形断面の下枠材19のウエブ23は床下張材17上に載置され、ドリルねじ等の固着具により固定されている。
なお、両面に構造用面材11を備える形態の耐力壁では、少なくとも片面の構造用面材14は、接合金物1を接合した後、縦枠材11に取付けることで、第1耐力壁15(12a,12b,12,18)を構築したり、両面に構造用面材11を有する調整用耐力壁45が構築可能である。片面の構造用面材11を有する形態の耐力壁では、予め構造用面材11を備えていても、容易に接合金物1を配置することができる。
【0036】
床下張材17上に載置されている上階側壁パネル18からなる第1耐力壁15(または調整用耐力壁45)における溝形断面の下枠材19と、床下張材17と、下階側壁パネル12における上枠材13には、部材幅方向中央部に部材長手方向に長い長孔20が重合するように設けられ、また、端根太あるいは側根太16(または調整用端根太または調整用側根太16a)における上下のフランジ21が広幅となる場合には、上下のフランジ21の先端部には、必要に応じボルト4の軸部と干渉するのを防止するために、V字状等の切り欠き部あるいは長孔が設けられる。
図7から図10に示す部材相互の接合金具1を、上下階の第1耐力壁15あるいは上下階の調整用耐力壁45に接合する場合には、図2あるいは図4に示すように、上階および下階に渡って配置する場合の一形態として、部材相互の接合金具1における上部の接合金物7をその上下の圧着用雌ねじ部材8,9によりボルト4の所定の位置に装着して位置固定した状態で、また、下部の接合金物7およびその上下の圧着用雌ねじ部材8,9を取り外した状態で、上階側から部材相互の接合金具1のボルト4の下部を前記各部材(19,17,13)の長孔20に挿入して下階側にボルト4の下部を配置する。この際に、圧縮補強金物を挿入しなくてもよく、あるいは図15、図21に示すように圧縮補強金物を入れても良い。
【0037】
そして、端根太あるいは側根太16(または調整用端根太または側根太16a)における上下のフランジ21の切り欠き部にボルト4の中間軸部を位置させると共に、上階側の接合金物7における各接合フランジ6を上階側の縦枠材11におけるウエブ23に当接し、必要とされる耐力が得られる適宜の本数の横向きのドリルねじ24あるいはボルト等のファスナー材からなる接合具により固定する。
【0038】
また、下階側に配置されたボルト4の下部に、上下の圧着用雌ねじ部材8,9をねじ込み、また、接合金物7を横方向から装着して上下の圧着用雌ねじ部材8,9により位置固定して各接合フランジ6を前記下階側の壁パネル12(または調整用耐力壁45)における縦枠スタッドからなる縦枠材11のウエブ23に、必要とされる耐力が得られる適宜の本数の横向きのドリルねじ24あるいはボルト等のファスナー材からなる接合具により固定する。
【0039】
部材相互の接合金具1を上階および下階に渡って配置する場合の他の一形態として、部材相互の接合金具1における下部の接合金物7をその上下の圧着用雌ねじ部材8,9によりボルト4の所定の位置に装着して位置固定した状態で、また、上部の接合金物7およびその上下の圧着用雌ねじ部材8,9を取り外した状態で、下階側から部材相互の接合金具1のボルト4の上部を前記各部材(13,17,19)の長孔20に挿入して上階側にボルト4の上部を配置する。
【0040】
そして、端根太あるいは側根太16(または調整用端根太あるいは側根太16a)における上下のフランジ21の切り欠き部22にボルト4の中間軸部を位置させると共に、下階側の接合金物7における各接合フランジ6を下階側の縦枠材11におけるウエブ23に当接し、必要とされる耐力が得られる適宜の本数の横向きのドリルねじ24あるいはボルト等のファスナー材からなる接合具により固定する。
【0041】
また、上階側に配置されたボルト4の上部に、上下の圧着用雌ねじ部材8,9をねじ込み、また、接合金物7を横方向から装着して上下の圧着用雌ねじ部材8,9により位置固定して各接合フランジ6を前記上階側の壁パネル12(または調整用耐力壁45における縦枠スタッドからなる縦枠材11のウエブ23に、必要とされる耐力が得られる適宜の本数の横向きのドリルねじ24あるいはボルト等のファスナー材からなる接合具により固定する。
【0042】
なお、図中、符号41はコンクリート基礎などの基礎、42はアンカーボルト、43は1階の壁パネル(耐力壁)12とアンカーボルト42とを一体に連結するホールダウン金物である。
【0043】
次に、図示の形態で使用されている耐力壁としての下階側壁パネル12および上階側壁パネル18並びに調整用耐力壁45そのものの構造形態について、図2および図4を参照して説明すると、下階側または上階側に配置固定されている下階側壁パネル12(または下階側の調整用耐力壁45)または上階側壁パネル18(または上階側の調整用耐力壁45)は、薄鋼板を凹溝状に折り曲げ加工されて形成された断面溝形の上枠材(上横枠材)13と下枠材(下横枠材、図示省略)とこれらに端部が連結される横断面リップ付溝形の縦枠材11並びにこれらの側面の片面または両面に、ドリルねじ等の固着具により固定される薄鋼板等の構造用面材14とを備えている。
【0044】
次に、図7〜図10を参照して、床パネル40を介して、上階側の第1耐力壁15(または調整用耐力壁45)における縦枠材11と下階側の第1耐力壁15(または調整用耐力壁45)における縦枠材11とを連結することができ、第1耐力壁15間または調整用耐力壁45間に圧縮力または引張り力を伝達することができる接合金具1について説明する。
【0045】
まず、一形態の部材相互の接合金具1について、図7および図8を参照して説明すると、図示の部材相互の接合金具1は、建物、特にスチ−ルハウスを構築する場合における上階の壁パネル等の縦枠材と下階の壁パネル等の縦枠材とに渡って縦向きに配置できる長さを有し、上下両端部に雄ねじ部2,3を備えた1本のボルト4の上下方向の両端部に、それぞれ上下方向に連続する凹溝5aを有する角形U字状部5の両側部に上下方向に延長する接合用フランジ6を備えていると共に側方開口溝10を備えた接合金物7における前記凹溝5aがボルト4に嵌合され、前記接合金物7の上下に、それぞれ縦断面コ字状の座金36とその外側に平座金37を装着し、前記平座金37を後記する雌ねじ部材8,9が圧着されて、接合金物7は、前記平座金および断面コ字状の座金36を介して、位置固定および位置調整可能に構成されている。上下両端部の雄ねじ部2,3は、それぞれ上階の縦枠材または下階の縦枠材に対応した位置に設けられ、ねじ方向は適宜でよい。
【0046】
前記の凹溝5aとボルト4とは接触していると、すなわち、凹溝5a内面とボルト4の外周面との間のギャップがない状態とすると、ボルト4と接合金物7の横方向のずれを防止し、接合金物7あるいはボルト4を正確に配置できる点で好ましい。
【0047】
各接合金物7は、図示の形態では、例えば、板厚1mm前後から3.2mm程度の矩形状薄鋼板に折り曲げ加工が施されて、凹溝5aが形成されたU字状部5を備え、そのU字状部5の両側板5bに円弧状ガイド部6aを介して接合用フランジ6が一体に屈曲連設された横断面がハット型形状の部材とされ、各接合用フランジ6の幅方向中間部には、上下方向に間隔をおいて複数のドリルねじ用の小径孔6bが形成されている。前記U字状部5の内径は、ボルト4の外径よりも僅かに大きく設定されて、ボルト4とU字状内面とが近接または接触するようにされ、これらの相対的な横方向ずれを防止している。
【0048】
前記の凹溝5aは、ボルト4の軸部を嵌合収納するための溝で、U字状部5の両側に接合用フランジ6が一体に設けられ、各接合用フランジ6は同面状に形成されている。接合金物7がU字状部5の両側に接合用フランジ6を備えた形状である。
また、接合金物7の接合用フランジ6により建物側との接合部面とボルト4の中心軸線との間の寸法は、接合用フランジ6間に板材がないので、板材がない分、ボルト4をより縦枠材11に接近させて配置することができ、曲げモーメント負担の少ない構造とすることができる合理的な接合金物7とすることができる。そのため、接合金物7の変形が少ない部材相互の接合金具1とすることができる。
【0049】
上下の各接合金物7の上下両端面部には、ボルト4にねじ込まれた雌ねじ金具としてナットからなる上面圧着用雌ねじ部材8と、雌ねじ金具としてナットからなる下面圧着用雌ねじ部材9がそれぞれ圧着されて、各接合金物7は、それぞれボルト4の上部および下部において位置調整可能に、また位置固定可能に設けられている。各接合金物7の上下両端部のU字状部5の両側板に圧着用雌ねじ部材8,9が圧着されることで一体化されて補強されていると共に、前記各圧着用雌ねじ部材8,9を介して引張力および圧縮力が伝達可能な構造とされている。
【0050】
例えば、前記の上面圧着用雌ねじ部材8と下面圧着用雌ねじ部材9のいずれか一方の圧着用雌ねじ部材を緩めて接合金物7から離した状態で、他方の圧着用雌ねじ部材を回転させることにより、接合金物7をボルト4に対して上下方向位置調整することができ、また、前記他方の圧着用雌ねじ部材を接合金物7の端面に圧着するように締め込むことにより、接合金物7の上下に配置されている上面圧着用雌ねじ部材8と下面圧着用雌ねじ部材9を接合金物7の上下両端面を圧着固定して、接合金物7をボルト4の軸方向の所定の位置に固定することができる。
【0051】
前記の断面コ字状の座金36における各脚部38は、接合金物7における側板5bの外面に近接または当接して配置され、各脚部38相互を接続する接続板39にはボルト挿通孔が設けられている。前記の平座金37が設けられることで、雌ねじ部材8,9により押圧力を均等に分散して断面コ字状の座金36に伝達することができ、また、断面コ字状の座金36における接続板39により接合金物7の端面に応力を均等に分散させて固定することができる。なお、前記接続板39には、前記接続板39の配置を明確にするためのケガキ線44が刻設されてケガキ線44側が接合金物7のフランジ6側に位置して設置されるようにされている。
【0052】
また、接合金物7の各部に断面コ字状の座金36における脚部38が、接合金物7における側板5bの外面に近接または当接して配置されることで、雌ねじ部材8,9により押圧するように前記雌ねじ部材8,9を回動工具により回動した場合、接合金物7における側板5bがボルト4の軸部側(内側)と反対の外側に目開きするのを防止する開き止め作用をしている。なお、この形態では、雌ねじ部材8,9が接合金物7の側板5bの端面に直接当接しないため、雌ねじ部材8,9を回動工具で回動して接合金物7端面を圧着しないので、側板5bに外開きする方向のねじりモーメントが直接作用しない接合金物具1とされている。
【0053】
前記のように接合金物7にねじりモーメントが作用しないようにするため、および接合金物7端面に均等に押圧力が作用するように、図9に変形形態として示すように、前記平座金37を省略して、断面コ字状の座金36のみとしてもよく、断面コ字状の座金36の接続板39により、雌ねじ部材8,9の回動により押圧力が作用した場合に、接合金物7の端面に押圧力を均等に分散させるようにし、雌ねじ部材8,9の回動により、ねじりモーメントが作用した場合に、座金36の脚部38を側板5bの外側に係合させて、常に側板5bをボルト4側(内側)にねじりモーメントを作用させるようにして、側板5bの目開きを防止することができる。その他の構成は、前記形態と同様であるので、同様な部分には、同様な符号を付して説明を省略する。
【0054】
さらに、図9の変形形態として図10に示すように、断面コ字状の座金36に代えて、平座金37のみとし、雌ねじ部材8,9を回動工具で回動して平座金37を介して接合金物7端面を圧着した場合、平座金37により押圧力を接合金物7の端面に均等に分散して伝達脱させることができ、また、雌ねじ部材8,9を回動工具で回動した場合、多少は接合金物具1のねじりモーメントの軽減を図ることができる。その他の構成は、前記形態と同様であるので、同様な部分には、同様な符号を付して説明を省略する。なお、座金を介在させる形態において、図示を省略するが、断面コ字状の座金36または平座金37の外側に、さらにばね座金を介在させるようにしてもよい。
【0055】
前記各接合金具の形態において、部材相互の接合金具1におけるボルト4として、六角頭部付きのボルトを使用する場合には、上下の接合金物7のいずれか一方を位置調整可能にされていてもよい。
【0056】
前記実施形態では、第1耐力壁15の内側に間隔をおいて、一つの調整用耐力壁45を構成した形態を示したが、本発明を実施する場合、2つ以上の調整用耐力壁を間隔をおいて設けるようにしてもよい。2つ以上の調整用耐力壁を設ける場合、調整用耐力壁の幅寸法を同じ寸法で、耐力が同じものを配置するようにすると、設計および施工が容易であるが、調整用耐力壁の幅寸法の異なる調整用耐力壁を設置するようにしてもよい。
【0057】
また、本発明を実施する場合、図11(b)に平面視で示すように、第1耐力壁15間に間隔をおいて中間壁体48が存在する場合には、その中間壁体48に近接して増設するようにして、調整用耐力壁45を設置するようにしてもよい。
【0058】
なお、本発明を実施する場合、中間階のみに調整用耐力壁45を設ける場合に、調整用耐力壁45を床パネル40に固着具47により固定するようにすればよい。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の壁構造を示す概略視図である。
【図2】図1における上下階の耐力壁における縦枠材相互を部材相互の接合金具を使用して、接合している状態を示す縦断正面図である。
【図3】図2のa−a線断面図である。
【図4】図2における耐力壁の縦断側面図である。
【図5】(a)は図4におけるC−C線断面図、(b)は図4におけるD−D線断面図、(c)は図4におけるE−E線断面図である。
【図6】ホールダウン金物を使用して耐力壁をコンクリートに固定すると共に、接合金具を使用して上下階に隣り合う縦枠材を接合する場合の接合工程を説明するための一部切欠概略正面図である。
【図7】本発明で使用する部材相互の接合金具の一実施形態を示すものであって、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図8】(a)は図7に示す接合金具における平座金および断面コ字状座金および側方開口溝形の接合金物を正面視で分解して示す分解図、(b)は平面視で分解して示す分解図である。
【図9】図8に示す状態から平座金を取り除いた変形形態の接合金具を示すものであって、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図10】図8に示す状態から断面コ字状座金を取り除いた変形形態の接合金具を示すものであって、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図11】並列して耐力壁パネルを配置する他の形態の壁構造を説明するための説明図であって、(a)は、並列して耐力壁パネルを配置する前の状態を示す概略平面図、(b)は耐力壁パネルを並列して配置した状態を示す概略平面図である。
【図12】従来および本発明の壁構造を備えた建築構造物を示す概略斜視図である。
【図13】建物の重心と剛心を一致させて耐震性能を向上させる形態を説明する図であって、(a)は重心と剛心を一致する前の状態を示す概略平面図、(b)開孔部側に剛性の多きい耐力壁パネルを設置した形態を示す概略平面図、(c)は、並列して耐力壁を配置した本発明の壁構造を示す概略平面図である。
【図14】(a)は、(b)は、(c)は、耐力壁パネルの剛性を高めた場合における耐力―変形の耐震性能を説明するための説明図である。
【図15】部材相互の接合金具を使用すると共に、圧縮補強金物を介在させて、上下階の縦枠材を接合している状態を示す縦断正面図である。
【図16】図15の縦断側面図である。
【図17】ホールダウン金物による部材相互の接合金具を使用すると共に、圧縮補強金物を介在させて上下階の耐力壁パネルにおける縦枠材を接合している従来の接合構造により、耐力壁パネルを並列して設置した壁構造の仮想例を示す縦断正面図である。
【図18】図17のB−B線断面図である。
【図19】ホールダウン金物を使用する従来の接合金具を分解して示す斜視図である。
【図20】従来のホールダウン金物を使用した上下階縦枠材の接合構造を示す縦断側面図である。
【図21】部材相互の接合金具を使用すると共に、圧縮補強金物を介在させて上下階の耐力壁パネルにおける縦枠材を接合している構造により、耐力壁パネルを並列して設置した本願の壁構造を示す縦断正面図である。
【図22】(a)は剛性率が特に小さい階がある場合に変形が集中して、損傷が大きくなることの説明図、(b)は重心と剛心のずれによる偏心が大きい場合に、建物が回転し、隅部の変形が大きく損傷する恐れが高いことを説明するための説明図である。
【図23】図1の如く最上階側に調整用耐力壁45を設けない場合における、下階側の調整用耐力壁45の上部を固定する一形態の縦断正面図である。
【図24】図23の一部を拡大して示す縦断正面図である。
【符号の説明】
【0060】
G 重心
K 剛心
1 部材相互の接合金具
2 雄ねじ部
3 雄ねじ部
4 ボルト
5 U字状部
5a 凹溝
5b 側板
6 接合用フランジ
6a 円弧状ガイド部
6b 小径孔
7 接合金物
8 上面圧着用雌ねじ部材
9 下面圧着用雌ねじ部材
10 側方開口部
11 縦枠材
12 下階側壁パネル
12a 広幅外側耐力壁
12b 狭巾外側耐力壁
13 上枠材
14 構造用面材
15 第1耐力壁
16 端根太あるいは側根太
17 床下張材
18 上階側壁パネル
19 下枠材
20 長孔
21 上下のフランジ
22 切り欠き部または長孔
23 ウエブ
24 ドリルねじ
25 筒状体
26 フランジ
27 フランジ付筒状体または圧縮補強金物
28 連結ボルト
29 ナット
30 ホールダウン金物
31 ホールダウン金物
32 床組み
33 縦部分
34 ベース部
35 補剛リブ
36 断面コ字状の座金
37 平座金
38 脚部
39 接続板
40 床パネル
41 基礎
42 アンカーボルト
43 ホールダウン金物
44 ケガキ線
45 調整用耐力壁
46 開口部
47 固着具
48 中間壁体
49 建築構造物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造用面材を薄板軽量形鋼にドリルねじ接合して構成される薄板軽量形鋼造の耐力壁を用いる壁構造において、建物全体の水平構面内の重心と剛心のずれによる偏心および建物の高さ方向の剛性バランスを調整すると共に建物の耐震性能を向上させるために、第1耐力壁が少ない箇所に、前記第1耐力壁とは別個の調整用耐力壁を並列して設置したことを特徴とする耐力壁並列式の壁構造。
【請求項2】
構造用面材を薄板軽量形鋼にドリルねじ接合して構成される薄板軽量形鋼造の耐力壁を用いる壁構造において、建物全体の強度と剛性を上げるために、建物の全体または一部の第1耐力壁に間隔をおいて、前記第1耐力壁とは別個の調整用耐力壁を並列して設置したことを特徴とする耐力壁並列式の壁構造。
【請求項3】
上階側および下階側の各第1耐力壁における縦枠材相互と、上階側および下階側の各調整用耐力壁における縦枠材相互とは、軸力を直接伝達する接合金物を介して連結され、上階側および下階側の各耐力壁の間に配置される側根太または端根太には、側根太または端根太内に圧縮補強金物が配置されていないことを特徴とする耐力壁並列式の壁構造。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の耐力壁並列式の壁構造を備えた建築構造物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate


【公開番号】特開2008−291508(P2008−291508A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−137970(P2007−137970)
【出願日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】