説明

耐寒性断熱材およびその製造方法

【課題】 成形が簡単であるばかりでなく、耐寒性に優れ、また高い遮音性を有し、軽量化も図れる耐寒性断熱材を得る。
【解決手段】 全体がほぼシート状を呈するように成形される耐寒性断熱材1を製造するにあたって、こんにゃく粉と水とを混合することにより得られるこんにゃく糊2と、軽石、珪藻土、木炭、竹、紙粉を混合することにより得られる混合材3とを準備する。次で、これらのこんにゃく糊と混合材とを攪拌容器内で攪拌混合し、この攪拌混合した材料5を型枠6内に流し込むとともに、その内部に凹凸部を有するスチール網7を埋設することにより、耐寒性断熱材1aを形成する。さらに、型枠内に成形した耐寒性断熱材を、苛性ソーダ液11に所定時間浸漬する。また、型枠内に成形した耐寒性断熱材を、所定温度以上のグリセリン液13により所定時間にわたって熱処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば建築物の天井、床、あるいは壁等に用いられる建築用パネルなどにおいて、断熱効果、遮音効果を得るために内装され、特に耐寒性に優れてなる耐寒性断熱材およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、建築物の床、壁、天井などには、内部の温度環境を快適にするための断熱材が配設されている。この種の断熱材には、主にグラスウール、ロックウールなどの繊維材料が用いられている。また、発泡性合成樹脂材を用い、これを型成形することにより、所要の断熱材として用いるものも知られている。
【0003】
しかし、上述した従来の断熱材では、成形加工性の面で問題であったり、断熱特性や遮音特性の面で不充分であったりし、さらに近年問題となっている地球環境に関しての配慮も必要となるもので、これらの問題点を解決し得る断熱材の出現が望まれている。
たとえば建築用断熱材として、板紙からなる平坦状部材と、板紙を波状に成形した波状部材とを交互に複数積層することにより、資源再利用を可能としたものが提案されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
【特許文献1】 特開2002−013221
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の断熱材では、断熱特性の面で問題であり、また成形加工も面倒である等の問題があった。
特に、寒冷地等の建築物に用いられる断熱材では、耐寒性に優れていることが望まれており、上述したような板紙からなる断熱材では特性面で不充分である。そして、このような断熱材の断熱特性を向上させるには、断熱材を多層に構成して全体の厚さを厚くすること等が考えられるが、厚さが厚くなり過ぎて現実的ではない。
【0006】
さらに、この種の断熱材には、製造が比較的簡単で、取扱いも容易であること等が望まれているもので、これらの問題点を一掃し得る対策を講じることが求められている。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、成形が簡単であるばかりでなく、耐寒性に優れ、また高い遮音性を有し、さらに全体の軽量化も図れ、取扱いも容易である耐寒性断熱材およびその製造方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的に応えるために本発明(請求項1記載の発明)に係る耐寒性断熱材は、こんにゃく粉と水とからなるこんにゃく糊と、軽石、珪藻土、木炭、竹、紙粉からなる混合材とを攪拌混合して、型枠内に流し込むとともに、その内部に凹凸部を有するスチール網を埋設することにより、全体がほぼシート状を呈するように形成されていることを特徴とする。
【0009】
このような構成を採ることにより、本発明によれば、成形が簡単であるばかりでなく、断熱特性、特に耐寒性に優れ、また高い遮音性を有し、軽量化も図れる耐寒性断熱材を得ることができるのである。
なお、紙粉の代わりに、水で戻した古紙を用いてもよい。
【0010】
本発明(請求項2記載の発明)に係る耐寒性断熱材の製造方法は、全体がほぼシート状を呈するように成形される耐寒性断熱材の製造方法であって、こんにゃく粉と水とを混合することにより得られるこんにゃく糊と、軽石、珪藻土、木炭、竹、紙粉を混合することにより得られる混合材とを準備し、前記こんにゃく糊と混合材とを攪拌容器内で攪拌混合し、この攪拌混合した材料を型枠内に流し込むとともに、その内部に凹凸部を有するスチール網を埋設することにより形成することを特徴とする。
【0011】
このような本発明によれば、成形が簡単であるばかりでなく、断熱特性、特に耐寒性に優れ、また高い遮音性を有し、軽量化も図れる耐寒性断熱材を、きわめて簡単に成形することができるのである。
【0012】
本発明(請求項3記載の発明)に係る耐寒性断熱材の製造方法は、上述した請求項2記載の耐寒性断熱材の製造方法において、前記型枠内に成形した耐寒性断熱材を、苛性ソーダ液に所定時間浸漬することを特徴とする。
このように苛性ソーダ液に浸漬するのは、接着力を強化し、同時に気密性と強度を保つためである。
【0013】
本発明(請求項4記載の発明)に係る耐寒性断熱材の製造方法は、上述した請求項3記載の耐寒性断熱材の製造方法において、前記型枠内に成形した耐寒性断熱材を、所定温度以上のグリセリン液により熱処理することを特徴とする。
このようにグリセリン液で処理するのは、耐寒性断熱材が受ける極端な寒暖の差からの影響をなくし、その伸縮を防ぐためである。さらに、このグリセリン液での熱処理によれば、耐寒性断熱材の耐寒温度が劇的に向上することになる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように本発明に係る耐寒性断熱材およびその製造方法によれば、成形が簡単であるばかりでなく、断熱性、特に耐寒性に優れ、また高い遮音性を有し、さらに高い断熱特性を得られるから相対的に厚さを薄くすることが可能で、全体の軽量化が図れ、取扱いも容易である等の種々優れた効果がある。
【0015】
また、本発明によれば、耐寒性断熱材を形成する材料として、こんにゃく粉を用いたり、軽石、珪藻土、木炭、竹、紙粉などを用いているから、地球環境にやさしい材料で形成される耐寒性断熱材であるという利点もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1および図2は本発明に係る耐寒性断熱材およびその製造方法の一実施の形態を示す。
これらの図において、全体を符号1で示す耐寒性断熱材は、図1に概要を図示したように、こんにゃく粉と水とからなるこんにゃく糊2と、軽石、珪藻土、木炭、竹、紙粉からなる混合材3とを攪拌混合し、これを型枠6内で成形することで得られるものであり、この成形時に凹凸部を有するスチール網7を埋設した状態で形成されている。
なお、上述した紙粉の代わりに、水で戻した古紙を用いてもよい。
【0017】
これを詳述すると、こんにゃく糊2は、こんにゃく粉を5〜10%、水を95〜90%の体積比で混合することにより形成されている。また、混合材3は、軽石40%、珪藻土20%、木炭20%、竹10%、紙粉10%の体積比で混合することにより形成されている。
【0018】
このようにして得られたこんにゃく糊2と混合材3とを、ミキサー等の攪拌容器4に入れて攪拌混合する。この攪拌混合する際の体積比は、たとえばこんにゃく糊2が30〜35%、混合材3が70〜65%で混合させるとよい。尤も、この混合体積比は、成形する耐寒性断熱材1の厚さに応じて適宜変更させ得るものである。
【0019】
次に、この攪拌容器4内の材料5を、別に準備した型枠6内に1/3程度流し込み、凹凸部を有するスチール網7をその中に入れる。そして、残りの2/3の材料5を型枠6内に流し込むことにより、型枠6内に耐寒性断熱材1aを成形する。
【0020】
そして、このようにして型枠6内に得られる耐寒性断熱材1aを、図2に示すように、型枠6内に入れたままで、予め別に準備していた容器12に入れた苛性ソーダ液11中に所定時間、たとえば30〜35分間程度、浸漬する。このようにすると、耐寒性断熱材1aを構成する材料の接着力が強化され、同時に気密性と強度を保つことができる。
【0021】
その後、上記の型枠6内の耐寒性断熱材1aを、所定温度以上、たとえば65〜70℃に熱したグリセリン液13により所定時間、たとえば3〜5分程度、熱処理する。その後、乾燥することにより、耐寒性断熱材1を成形するのである。
ここで、このようにグリセリン液13で処理するのは、耐寒性断熱材1が受ける極端な寒暖の差からの影響をなくし、その伸縮を防ぐためである。なお、図中14はグリセリン液13を入れた容器である。
【0022】
さらに、このグリセリン液13での熱処理によれば、最終的に得られる耐寒性断熱材1の耐寒温度が劇的に向上することになる。たとえば耐寒性断熱材1の厚さ(45mm、30mm、15mm等)によっても異なるが、−35℃までの寒さに耐えることができることが実験により確認されている。また、上述した耐寒性断熱材1によれば、その厚みが増すことで、気温の一層の低下に対応することができるという利点もある。
【0023】
なお、本発明は上述した実施の形態で説明した構造には限定されず、各部の形状、構造等を適宜変形、変更し得ることはいうまでもない。たとえば上述した実施の形態では、こんにゃく糊2と攪拌混合する混合材3を、軽石、珪藻土、木炭、竹、紙粉(または水で戻した古紙)を混合することにより得ているが、本発明はこれに限定されず、これに類する材料による混合材であればよい。また、それぞれの混合体積比等も、前述した実施の形態での例示に限定されないことは言うまでもない。
【0024】
さらに、上述した実施の形態では、苛性ソーダ液11中に30〜35分程度浸漬した場合を説明したが、この浸漬時間は必要に応じて適宜変更可能である。
また、上述した実施の形態では、最終工程としての断熱シート素材1aの熱処理を、65〜70℃のグリセリン液13で行ったが、この熱処理温度、熱処理時間なども適宜変更可能である。
要は、上記の耐寒性断熱材1を形成する材料や厚み、大きさ等といった適宜の条件に応じて適宜設定すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】 本発明に係る耐寒性断熱材の一実施の形態を示し、耐寒性断熱材の製造工程を示す概略図である。
【図2】 図1以降の製造工程を示す概略図である。
【符号の説明】
【0026】
1,1a…耐寒性断熱材、2…こんにゃく糊、3…混合材、4…ミキサー(攪拌混合容器)、5…攪拌混合した材料、6…型枠、7…スチール網、11…苛性ソーダ液、13…グリセリン液。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
こんにゃく粉と水とからなるこんにゃく糊と、軽石、珪藻土、木炭、竹、紙粉からなる混合材とを攪拌混合して、型枠内に流し込むとともに、その内部に凹凸部を有するスチール網を埋設することにより、全体がほぼシート状を呈するように形成されていることを特徴とする耐寒性断熱材。
【請求項2】
全体がほぼシート状を呈するように成形される耐寒性断熱材の製造方法であって、
こんにゃく粉と水とを混合することにより得られるこんにゃく糊と、軽石、珪藻土、木炭、竹、紙粉を混合することにより得られる混合材とを準備し、
前記こんにゃく糊と混合材とを攪拌容器内で攪拌混合し、
この攪拌混合した材料を型枠内に流し込むとともに、その内部に凹凸部を有するスチール網を埋設することにより形成することを特徴とする耐寒性断熱材の製造方法。
【請求項3】
請求項2記載の耐寒性断熱材の製造方法において、
前記型枠内に成形した耐寒性断熱材を、苛性ソーダ液に所定時間浸漬することを特徴とする耐寒性断熱材の製造方法。
【請求項4】
請求項3記載の耐寒性断熱材の製造方法において、
前記型枠内に成形した耐寒性断熱材を、所定温度以上のグリセリン液により熱処理することを特徴とする耐寒性断熱材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−57425(P2006−57425A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−264687(P2004−264687)
【出願日】平成16年8月17日(2004.8.17)
【出願人】(500393790)
【Fターム(参考)】