説明

耐性がん治療用高分子ミセル組成物及びその製造方法

両親媒性二重ブロック共重合体、及び有効成分として、タキサン及びP糖蛋白抑制剤であるシクロスポリンを含む耐性がん治療用高分子ミセル組成物、及びその製造方法が開示される。前記耐性がん治療用高分子ミセル組成物は、がん組織に高濃度で蓄積され、前記がん組織においてタキサン系抗がん剤によるP糖蛋白の過多発現により耐性が発現したがん細胞に対して優れた抗がん効果を示し、且つ可溶化剤の使用による過敏反応が生じないという長所がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐性がん治療用高分子ミセル組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タキサン系抗がん剤は、乳がん、卵巣がん、肺がん、または前立腺がん等の治療に有効であるとされ、多く使用されている。しかしながら、タキサン系抗がん剤であるパクリタキセルとドセタキセルは、水に対する溶解度が極めて低いため、非イオン性界面活性剤等に可溶化することが要求される。このため、非イオン界面活性剤であるクレモフォールとポリソルベートで可溶化した製剤がタキソール(登録商標)またはタキソテール(登録商標)という商品として市販されている。前記タキソール(登録商標)やタキソテール(登録商標)は、優れた抗がん効力を示したが、可溶化剤による過敏反応等の副作用があり、副作用のない新規な製剤に関する研究が進められている。
【0003】
一方、前記タキサン等の種々の抗がん剤が優れた抗がん効力を示すとされ、広く使用されているが、抗がん剤に対する耐性が発現されるという問題点がある。がん細胞の耐性を生じさせるメカニズムは様々であるが、その中でもよく知られている原因の一つがP糖蛋白の過多発現による抗がん剤の細胞外放出促進である。このようなP糖蛋白過多発現によるがんの耐性を克服するための方策として、P糖蛋白の機能を抑制する抑制剤を使用する試みがある。
【0004】
代表的なP糖蛋白機能抑制剤としては、ベラパミル、ケトコナゾール、またはシクロスポリン等が知られている。前記ら物質は、タキサン等の抗がん剤の経口投与時に腸管壁に過多発現されたP糖蛋白による抗がん剤の経口吸収率の低下を解消するためのP糖蛋白抑制剤として研究されている。シクロスポリンは難溶性薬物であって、クレモフォールを可溶化剤として使用してなる組成物がサンディミュン(登録商標:Sandimmun)という商品名で静脈注射剤と経口剤として開発され市販されており、マイクロエマルジョン技術にて可溶化した組成物がネオラール(登録商標)という商品の経口剤として開発されている。
【0005】
シクロスポリン静脈注射剤は、可溶化剤としてのクレモフォールが含まれており、該クレモフォールは、過敏反応による副作用を生じさせるという問題点がある。それにより、耐性がんを治療する方策としてタキサン系抗がん剤であるタキソール(登録商標)またはタキソテール(登録商標)とシクロスポリン静脈注射剤であるサンディミュン(登録商標)を一緒に人体に投与することが極めて難しいという限界がある。また、前記剤型のように非特異的剤型で静脈注射をする場合、シクロスポリンが全身循環系に投与され、免疫力が弱っているがん患者の免疫力をさらに弱めるおそれがある。
【0006】
このようにタキサン化合物とP糖蛋白抑制剤の2種の薬物を一緒に含む組成物については開示されたことがない。特に、P糖蛋白抑制による耐性がんの治療に適合した組成物を選定する組成及び技術については知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国公開公報第2004−0253195号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】MALINGRE,M.M., et al., ‘Coadministration of Cyclosporine Strongly Enhances the Oral Bioavailability of Docetaxel’, Journal of Clinical Oncology, 2001, p1160-1166, Abstract
【非特許文献2】ALIABADI, H.M., et al., ‘Micelles of methoxy poly(ethylene oxide)-b-poly(episilone-caprolactone)as vehicles for the solubilization and controlled delivery of cyclosporine A’ J Journal of Conrolled Release, 2005, Vol.104, p301-311, Abstract
【非特許文献3】SHUAI,X., et al., ‘Core-Cross-Linked Polymeric Micelles as Paclitaxel Carriers’ Bioconjugate Chemistry, 2004, Vol.15, p441-448, Abstract
【非特許文献4】LE3TCHFORD,K., et al., ‘A review of the formulation and classification of amphiphilic block copolymer nanoparticulate structures: micelles, nanospheres, nanocapsules and polymersomes’, European Journal of Pharmaceutics and Biopharmaceutics, 2007, p259-269, Abstract
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の一実施例の目的は、両親媒性二重ブロック共重合体、及び有効成分として、タキサン及びP糖蛋白抑制剤であるシクロスポリンが含有された耐性がん治療用高分子ミセル組成物を提供することである。
【0010】
本発明の他の一実施例の目的は、両親媒性二重ブロック共重合体、及び有効成分として、タキサン及びP糖蛋白抑制剤であるシクロスポリンが含有された耐性がん治療用高分子ミセル組成物を製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による耐性がん治療用高分子ミセル組成物は、両親媒性二重ブロック共重合体、及び有効成分として、タキサン及びP糖蛋白抑制剤であるシクロスポリンを含有することを特徴とする。また、本発明は、前記耐性がん治療用高分子ミセル組成物の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明による耐性がん治療用高分子ミセル組成物は、本発明の両親媒性ブロック共重合体及び任意の末端に少なくとも一つのカルボキシ基を含むポリ乳酸アルカリ金属塩を含み、EPR(Enhanced Permeability and Retention)効果によりがん組織に移行して高濃度で蓄積され得る。また、前記がん組織においてP糖蛋白抑制剤と混合されたタキサンを含有することにより、抗がん剤によるP糖蛋白の過多発現のため耐性が発現したがん細胞に対して優れた抗がん効果を示し、可溶化剤の使用による過敏反応が生じないという長所がある。また、シクロスポリンががん組織に高く分布することでシクロスポリンの全身投与による副作用を減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施例によるパクリタキセルとシクロスポリンとが共に封入された高分子ミセルの水溶液状での粒子径を動的光散乱法(Dynamic light scattering)にて分析し、その結果を重量換算分布図(Weight average distribution)で示したグラフである。
【図2】一実施例によるパクリタキセルとシクロスポリンとが共に封入された高分子ミセルに対し、HPLC(high-performance liquid chromatography)にてパクリタキセルとシクロスポリンの濃度を測定した結果を示すグラフである。
【図3】一実施例によるパクリタキセルとシクロスポリンとが共に封入された高分子ミセルに対し、パクリタキセルの血中濃度と脳組織内濃度をそれぞれ示すグラフである。
【図4】一実施例によるパクリタキセルとシクロスポリンとが共に封入された高分子ミセルに対し、パクリタキセルの血中濃度と脳組織内濃度をそれぞれ示すグラフである。
【図5】一実施例によるパクリタキセル含有高分子ミセルとシクロスポリン含有高分子ミセルとを混合した組成物に対し、パクリタキセルの血中濃度を示すグラフである。
【図6】一実施例による高分子ミセル組成物の抗がん効果を比較測定した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施例による耐性がん治療用高分子ミセル組成物は、タキサン及びP糖蛋白抑制剤であるシクロスポリンを有効成分として含むことを特徴とする。一実施例において、本発明による耐性がん治療用高分子ミセル組成物は、タキサンとシクロスポリンとを共に可溶化するために、タキサン、シクロスポリン、及び両親媒性二重ブロック共重合体を含むことを特徴とする。
【0015】
他の一実施例において、前記高分子ミセルはナノ粒子であってよく、ミセルまたはナノ粒子は、具体的には10ないし200nmの粒径を有するものであってよい。
【0016】
前記タキサンとシクロスポリンは、いずれも難水溶性であって、人体に投与するためには特別な可溶化技術ないし組成物が要求される。このため、既存の両薬物群の製剤では、エタノール有機溶媒と界面活性剤であるクレモフォールまたはポリソルベートを使用して可溶化していた。しかしながら、前記2種の界面活性剤は、静脈等から人体に投与すると、深刻な過敏反応を生じさせるという副作用があるため、慎重投与ないし前処理が要求されている。そこで、本発明では、タキサンとシクロスポリンとを同時に静脈等から投与しても過敏反応等の副作用が生じない組成物を提供する。
【0017】
本発明において用いられた「耐性がん」とは、抗がん剤の使用による耐性ができたがん(cancer)のことを総称する意味であり、より具体的には、P糖蛋白の過多発現により耐性が発現したがんのことを意味する。がんの種類は、例えば、乳がん、卵巣がん、肺がん、または前立腺がん等をいずれも含むが、特にこれらがんに制限されるものではない。
【0018】
本発明において用いられた「ナノ粒子」とは、ナノ水準の粒径を有する粒子のことをいい、ミセル構造の粒子を含む意味として用いられ得る。
【0019】
本発明において用いられた「混合ミセル」、「混合ナノ粒子」、「混合ミセルまたはナノ粒子」、またはミセルの種類を指し示す際の「混合」とは、一つのミセルまたはナノ粒子に一種類の薬物が封入されたことを意味し、タキサンが封入されたミセルとシクロスポリンが封入されたミセルとが混ざり合っている形態のことを意味する。前記混合ミセルまたはナノ粒子は、タキサンが封入されたミセルとシクロスポリンが封入されたミセルまたはナノ粒子をそれぞれ製造した後に混合することで得られる。
【0020】
本発明において用いられた「複合ミセル」、「複合ナノ粒子」、「複合ミセルまたはナノ粒子」、またはミセルの種類を指し示す際の「複合」とは、一つのミセルまたはナノ粒子内にタキサンとシクロスポリンとが共に封入されている形態のことを意味する。前記複合形態のミセルまたはナノ粒子は、本発明による組成物の製造の際に二つの薬物を同時にミセルまたはナノ粒子のコア中に封入させることで得られる。
【0021】
本発明による高分子ミセル組成物は、タキサン及びシクロスポリンが高分子ミセルに混合された形態または複合された形態で封入されたことを含む。
【0022】
一実施例において、前記耐性がん治療用抗がん剤組成物は、両親媒性二重ブロック共重合体により形成されたミセル構造内部に有効成分であるタキサンとシクロスポリンが封入された構造であってよい。具体的には、前記組成物は、両親媒性二重ブロック共重合体により形成されたミセル構造内部にタキサンとシクロスポリンとが一つのミセルに共に封入された複合(combinated)形態であるか、タキサン及びシクロスポリンがそれぞれのミセルに分離されて封入された混合(mixed)形態であってよい。また他の一実施例において、前記組成物は、一つのミセル内部にタキサンとシクロスポリンとが共に含まれた組成物と、タキサンが封入された高分子ミセルとシクロスポリンが封入された高分子ミセルとが混合された形態の組成物とが混合された形態であってよい。
【0023】
一実施例において、前記タキサンは、パクリタキセル(paclitaxel)、ドセタキセル(docetaxel)、7−エピパクリタキセル(7−epipaclitaxel)、t−アセチルパクリタキセル(t−acetyl paclitaxel)、10−デスアセチルパクリタキセル(10−desacetyl−paclitaxel)、10−デスアセチル−7−エピパクリタキセル(10−desacetyl−7−epipaclitaxel)、7−キシロシルパクリタキセル(7−xylosylpaclitaxel)、10−デスアセチル−7−グルタリルパクリタキセル(10−desacetyl−7−glutarylpaclitaxel)、7−N,N−ジメチルグリシルパクリタキセル(7−N,N−dimethylglycylpaclitaxel)、7−L−アラニルパクリタキセル(7−L−alanylpaclitaxel)、またはこれらの混合物であり、具体的には、パクリタキセルまたはドセタキセルである。前記タキサンの結晶形態は、非結晶性または結晶性のいずれも可能であり、無水物または水和物の形態であってよい。また他の一実施例において、前記タキサンはパクリタキセルまたはドセタキセルの無水物であってよい。
【0024】
前記シクロスポリンは、抗がん剤の耐性によるP糖蛋白の過多発現を抑制する役割をし、その誘導体であるシクロスポリンA、B、C、またはD等が使用されていてよい。一実施例において、前記シクロスポリンはシクロスポリンAであってよい。前記シクロスポリンA(cyclosporine A)は、11種の構成成分からなる環状ペプチドであって、抗バクテリア性、抗寄生虫性、及び免疫抑制性等の様々な生理活性を持っている。特に、シクロスポリンAは、免疫抑制性を持つことから組織または臓器移植に広く使用されており、自己免疫異常による疾病の治療にも使用されている。
【0025】
本発明の一実施例による抗がん剤組成物において、前記シクロスポリン(B)に対するタキサン(A)の重量比[タキサン重量(A)/シクロスポリン重量(B)]は、0.1ないし2.0の範囲であってよく、より具体的には、0.8ないし1.5の範囲であってよい。こうした重量比の範囲は、タキサン系抗がん剤としての効能とシクロスポリンによるP糖蛋白の抑制効能を最適化するためである。
【0026】
また他の一実施例において、前記タキサンとシクロスポリンとの和の含量は、組成物の全重量を基準に、0.1ないし20重量%であり、具体的には、0.2ないし10重量%であってよい。これは、本発明による抗がん剤組成物が、タキサンとシクロスポリンとが高分子ミセル構造の内部構造に封入された形態であって、タキサンとシクロスポリンとが高分子ミセルに封入され得る含量には限界があるためである。本発明の一実施例において、組成物の全重量を基準に、タキサンは、0.01ないし10重量%、具体的に0.01ないし5重量%、シクロスポリンは、0.01ないし10重量%、具体的に0.01ないし5重量%である。
【0027】
一実施例において、前記両親媒性二重ブロック共重合体は、親水性ブロック(A)と疎水性ブロック(B)とで構成されたA−B型二重ブロック共重合体であり、前記親水性ブロック(A)は、ポリエチレングリコールであり、前記疎水性ブロック(B)は、ポリ乳酸またはその誘導体であってよい。
【0028】
前記親水性ブロック(A)のポリエチレングリコールは、ポリエチレングリコール及びメトキシポリエチレングリコール等からなる群より選ばれる一種以上であり、具体的にはメトキシポリエチレングリコールである。なお、本発明がこれらに限定されるものではない。
【0029】
前記疎水性ブロック(B)のポリ乳酸またはその誘導体は、例えば、ポリ乳酸、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリマンデル酸、ポリカプロラクトン、ポリジオキサン−2−オン、ポリアミノ酸、ポリオルトエステル、ポリ酸無水物、及びこれらの共重合体からなる群より選ばれる一種以上であり、より具体的には、ポリ乳酸、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリマンデル酸、ポリカプロラクトン、またはポリジオキサン−2−オンである。より具体的には、前記ポリ乳酸またはその誘導体は、ポリ乳酸、ポリラクチド、ポリカプロラクトン、乳酸とマンデル酸の共重合体、乳酸とグリコール酸の共重合体、乳酸とカプロラクトンの共重合体、及び乳酸と1,4−ジオキサン−2オンの共重合体からなる群より選ばれる一種以上であってよい。
【0030】
一実施例において、前記親水性ブロック(A)の数平均分子量は、500ないし20、000ダルトンであり、より具体的には、1、000ないし10、000ダルトンである。前記疎水性ブロック(B)の数平均分子量は、500ないし10、000ダルトンである。他の一実施例において、前記親水性ブロック(A)の含量は、二重ブロック共重合体の全重量を基準に、40ないし70重量%であってよく、より具体的には、50ないし65重量%であってよい。こうした含量の範囲は、安定して両親媒性二重ブロック共重合体のミセルを保つためである。
【0031】
本発明の両親媒性ブロック共重合体は、組成物の全重量を基準に、80ないし99.9重量%、より具体的には、40ないし90重量%であってよい。一実施例において、前記組成物は、組成物の全重量を基準に、タキサン0.01ないし10重量%;シクロスポリン0.01ないし10重量%;及び両親媒性二重ブロック共重合体80ないし99.8重量%を含んでいてよい。他の一実施例において、前記組成物は、組成物の全重量を基準に、タキサン0.01ないし10重量%;シクロスポリン0.01ないし10重量%;両親媒性二重ブロック共重合体40ないし90重量%;及び末端にカルボキシ基を含むポリ乳酸アルカリ金属塩10ないし50重量%を含んでいてよい。
【0032】
前記タキサンとシクロスポリンとが共に封入された複合両親媒性二重ブロック共重合体ミセル組成物は、水溶液状における粒子径が10ないし200nmの範囲であり、凍結乾燥した時に固体であることを特徴とする。
【0033】
また他の一実施例において、本発明の耐性がん治療用高分子ミセル組成物は、前記タキサン、シクロスポリン、及び両親媒性ブロック共重合体の他に、末端に少なくとも一つのカルボキシ基を含むポリ乳酸アルカリ金属塩をさらに含むことができる。前記ポリ乳酸アルカリ金属塩は、薬物が含有されたミセルのコア内部を堅くして薬物の封入効率を向上させる役割をするようになる。これにより、本発明は、タキサン、シクロスポリン、両親媒性ブロック共重合体、及び末端に少なくとも一つのカルボキシ基を含むポリ乳酸アルカリ金属塩を含む耐性がん治療用高分子ミセル組成物を提供する。前記ポリ乳酸アルカリ金属塩は、末端カルボキシ酸陰イオンとアルカリ金属イオンとがイオン結合にて結合された形態を意味する。
【0034】
具体的に、本発明による末端に少なくとも一つのカルボキシ基を含むポリ乳酸アルカリ金属塩は、下記の一般式1で示すことができる。
【0035】
【化1】

【0036】
前記式中、
Rは、水素、アセチル基、ベンゾイル基、デカノイル基、パルミトイル基、メチル基、またはエチル基を表し、
Mは、ナトリウム、カリウム、またはリチウムを表し、
nは、5〜35、具体的に10〜30の整数である。
【0037】
具体的には、本発明によるポリ乳酸アルカリ金属塩は、末端に一つのカルボキシ基を含む。
【0038】
前記ポリ乳酸アルカリ金属塩の末端カルボキシ基と反対側の末端は、ヒドロキシ、アセトキシ、ベンゾイルオキシ、デカノイルオキシ、パルミトイルオキシ、及びアルコキシからなる群より選ばれた一種で置換されていてよい。前記ポリ乳酸アルカリ金属塩は、水溶液に溶解されてポリ乳酸アルカリ金属塩分子内に存在するカルボキシ酸陰イオンの親水性部分とポリ乳酸の疎水性部分とがバランスをとってミセルを形成するようになる。このため、疎水性部分の分子量が大きくなると、親水性を示す末端のカルボキシ酸陰イオンどうしの会合が難しくなることでミセルが形成されにくくなることがあり、分子量が小さすぎると、水に完全に溶解されてしまうことでミセルの形成自体が難しくなる。一実施例において、前記ポリ乳酸アルカリ金属塩の数平均分子量は、500ないし2、500ダルトン、具体的に1、000ないし2、000ダルトンである。分子量が500ダルトン未満であると、水に完全に溶解されてしまうことでミセルの形成自体が難しくなり、分子量が2、500ダルトンを超えると、疎水性が大きくなることで水溶液に溶解されにくく、ミセルを形成することができなくなる。
【0039】
本発明の一実施例において、前記ポリ乳酸アルカリ金属塩のアルカリ金属は、ナトリウム、カリウム、またはリチウムの1価金属である。
【0040】
前記高分子ミセル組成物は、組成物の全重量を基準に、
タキサン及びシクロスポリン0.1ないし20重量%、好ましくは、0.2ないし10重量%、
両親媒性ブロック共重合体40ないし90重量%、好ましくは、45ないし74重量%、及び
末端に少なくとも一つのカルボキシ基を含むポリ乳酸アルカリ金属塩10ないし50重量%、好ましくは、25ないし45重量%を含む。
【0041】
一実施例において、本発明は、前記両親媒性ブロック共重合体及びポリ乳酸誘導体を混合してなる高分子ミセルの安定性をさらに向上させるために、前記ミセル組成物に2価または3価の金属イオンが添加されていてよい。前記2価または3価の金属イオンは、ポリ乳酸誘導体の末端カルボキシ基と結合して2価または3価の金属イオンが結合された高分子ナノ粒子を形成する。これにより、本発明は、タキサン、シクロスポリン、両親媒性ブロック共重合体、及びカルボキシ末端が2価または3価の金属イオンに固定されたポリ乳酸を含む耐性がん治療用ナノ粒子組成物を提供する。前記2価または3価の金属イオンは、前記高分子ミセル内のポリ乳酸カルボキシ末端基の1価金属陽イオンと置換反応してイオン結合を形成する。前記形成された金属イオンによるイオン結合は、強い結合力により高分子ミセルの安定性をさらに向上させる役割をする。
【0042】
前記金属イオンは、2価または3価の金属イオンであり、具体的には、カルシウム、マグネシウム、バリウム、クロム、鉄、マンガン、ニッケル、銅、亜鉛、またはアルミニウム等から選ばれ、より具体的には、カルシウムまたはマグネシウムである。
【0043】
前記金属イオンは、硫酸塩、塩酸塩、炭酸塩、リン酸塩、及び水和物の形態で高分子ミセル組成物に添加されていてよく、具体的には、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、塩化鉄、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、硫酸マグネシウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、または水酸化亜鉛が添加されていてよい。
【0044】
前記2価または3価の金属イオンの当量は、高分子ナノ粒子内部に封入された薬物の放出速度に応じて調節されていてよい。具体的には、高分子ナノ粒子組成物に前記金属イオンがポリ乳酸アルカリ金属塩のカルボキシ基の当量に対して1当量以下の量で含まれると、ポリ乳酸塩のカルボキシ末端基と結合される数が少なくなることで薬物の放出速度が早くなり、1当量以上の量で含まれると、ポリ乳酸塩のカルボキシ末端基と結合される数が多くなることで薬物の放出速度が遅くなる。
【0045】
本発明によるポリ乳酸塩が、カルボキシ基末端が2価または3価の金属イオンに固定された場合における本発明の組成物は、組成物の全重量を基準に、
タキサン及びシクロスポリン0.1ないし20重量%、好ましくは、0.2ないし10重量%;
両親媒性ブロック共重合体40ないし90重量%、好ましくは、45ないし74重量%;及び
末端に少なくとも一つのカルボキシ基を含むポリ乳酸塩10ないし50重量%、好ましくは、25ないし45重量%であって、2価または3価の金属イオンを前記ポリ乳酸塩のカルボキシ末端の当量に対して0.01ないし10当量、好ましくは、1ないし2当量の量で含む。
【0046】
本発明による耐性がん治療剤組成物は、前記両親媒性ブロック共重合体単独、前記両親媒性ブロック共重合体と前記ポリ乳酸アルカリ金属塩を含む高分子混合物、両親媒性ブロック共重合体とカルボキシ末端が2価または3価の金属イオンにて固定されたポルリ乳酸塩を含む高分子混合物、またはこれらの高分子混合物を含んでいてよい。
【0047】
本発明によるミセルまたはナノ粒子組成物は、混合または複合のミセルまたはナノ粒子組成物の混合であってよい。また、本発明による組成物は、両親媒性ブロック共重合体からなるミセル、両親媒性ブロック共重合体及びポリ乳酸アルカリ金属塩からなるミセル、及び両親媒性ブロック共重合体及びカルボキシ末端が2価または3価の金属イオンにて固定されたポルリ乳酸塩からなるナノ粒子内部に薬物が含まれた組成物の単独または混合であってよい。
【0048】
また、本発明は、耐性がん治療用抗がん剤組成物の製造方法を提供する。本発明の一実施例による、有効成分として、タキサン及びシクロスポリンを含有する耐性がん治療用高分子ミセル組成物を製造する方法は、
(a)タキサン、シクロスポリン、及び両親媒性二重ブロック共重合体を有機溶媒に可溶化させる段階;
(b)有機溶媒を蒸発させ、タキサン、シクロスポリン、及び高分子が均一に混合された混合物を調製する段階;及び
(c)前記段階(b)において得られた混合物に水溶液を加え、内部にタキサンとシクロスポリンとが封入された高分子ミセルを製造する段階を含むことができる。
【0049】
本発明の一実施例による、有効成分として、タキサン及びシクロスポリンを含む耐性がん治療用高分子ミセル組成物を製造する方法は、
(a)タキサン、シクロスポリン、及び両親媒性二重ブロック共重合体、並びに少なくとも一つの末端にカルボキシ基を含むポリ乳酸アルカリ金属塩を有機溶媒に可溶化させる段階;
(b)有機溶媒を蒸発させ、タキサン、シクロスポリン、及び高分子が均一に混合された混合物を調製する段階;及び
(c)前記段階(b)において得られた混合物に水溶液を加え、内部にタキサンとシクロスポリンとが封入された高分子ミセルを製造する段階を含むことができる。
【0050】
前記両方法においては、タキサンとシクロスポリンを、別個に、高分子と共に有機溶媒に可溶化させて得た、タキサンが封入された高分子ミセル組成物とシクロスポリンが封入された高分子ミセル組成物のそれぞれを混合して混合ミセル組成物を製造することを含む。
【0051】
したがって、本発明による抗がん剤組成物は、高分子のミセルまたはナノ粒子構造内部にタキサンとシクロスポリンとが共に封入された複合形態であるか、タキサンが封入された高分子ミセルまたはナノ粒子とシクロスポリンとが封入された高分子ミセルまたはナノ粒子の混合された形態であってよい。前記二つの形態の組成物を製造する方法についてより具体的に説明すると、次のとおりである。
【0052】
<タキサンとシクロスポリンとが共に封入された複合ナノ粒子組成物の製造>
前記組成物は、一つのミセルまたはナノ粒子内にタキサンとシクロスポリンとが共に含まれた複合形態である。
【0053】
有効成分として、タキサンとシクロスポリンとが共に封入された複合抗がん剤治療用高分子ミセル組成物の製造方法は、次の段階を含む。
【0054】
(a)タキサン、シクロスポリン、及び両親媒性二重ブロック共重合体、並びに任意の成分として末端に少なくとも一つのカルボキシ基を含むポリ乳酸アルカリ金属塩を、エタノール、メタノール、プロパノール、アセトン、アセトニトリル、ジクロロメタン、クロロホルム、エチルメチルケトン、及び酢酸エチルからなる群より選ばれる有機溶媒に可溶化させる段階;
(b)有機溶媒を除去し、タキサン、シクロスポリン、及び両親媒性二重ブロック共重合体の混合物、並びに任意の末端に少なくとも一つのカルボキシ基を含むポリ乳酸アルカリ金属塩が均一に混合された混合物を調製する段階;
(c)前記段階(b)において得られた混合物に水溶液を加え、内部コアにタキサンとシクロスポリンとが封入されたミセル組成物を製造する段階。
【0055】
一実施例において、前記製造方法は、2価または3価の金属イオンにて固定されたナノ粒子を得るために末端に少なくとも一つのカルボキシ基を含むポリ乳酸アルカリ金属塩を使用した場合において、段階(c)の後に、
(c−1)前記高分子ミセルに2価または3価の金属イオンを添加し、末端に少なくとも一つのカルボキシ基を含むポリ乳酸アルカリ金属塩末端基を固定させる段階をさらに含んでいてよい。
【0056】
前記段階(c−1)においては、前記複合高分子ミセル水溶液に0.001ないし2Mの2価または3価の金属イオンを含む水溶液を加え、室温で0.1ないし1時間にかけてゆっくり掻き混ぜると、前記金属イオンをポリ乳酸塩末端基にイオン結合にて固定させることができる。
【0057】
他の一実施例において、前記段階(c)または(c−1)の後に、
(d)前記前段階において得られた水溶液を滅菌する段階;
(e)滅菌された水溶液を容器に充填する段階;及び
(f)前記段階(e)において充填された容器を凍結乾燥する段階をさらに含んでいてよい。
【0058】
前記段階(d)において、水溶液は滅菌フィルターにてろ過して滅菌することができる。
【0059】
一実施例において、前記段階(b)における有機溶媒は、通常の方法にて除去することができ、具体的には、真空蒸発機にて蒸発させて除去することができる。
【0060】
一実施例において、前記段階(c)において使用された水溶液は、蒸留水、生理食塩水または凍結乾燥補助剤水溶液等であればよい。
【0061】
前記段階(f)における凍結乾燥時の凍結乾燥補助剤としては、マンニトール、ソルビトール、乳酸、トレハロース、及びシュクロースからなる群より選ばれる一種以上を使用することができる。好ましくは、マンニトールを使用すればよい。
【0062】
本発明の一実施例による製造方法では、両親媒性ブロック共重合体からなるミセル、両親媒性ブロック共重合体及びポリ乳酸アルカリ金属塩からなるミセル、及び両親媒性ブロック共重合体及びカルボキシ末端が2価または3価の金属イオンにて固定されたポリ乳酸塩からなるナノ粒子の内部に薬物が複合されて含まれた組成物を得ることができ、またこれら3種類の高分子組成物を混合することも可能である。
【0063】
<内部にタキサンが封入された高分子ミセルまたはナノ粒子とシクロスポリンとが封入された高分子ミセルまたはナノ粒子が混合された抗がん剤組成物の製造>
前記組成物は、タキサンが封入された高分子ミセルまたはナノ粒子とシクロスポリンとが封入された高分子ミセルまたはナノ粒子が均一に混合された形態である。
【0064】
前記二種の混合ミセル組成物を製造する方法は、各薬物が含まれた高分子ミセル組成物を混合して製造することを特徴とする。
【0065】
タキサンが封入された高分子ミセル組成物とシクロスポリンが封入された高分子ミセル組成物とが混合されてなる抗がん剤組成物の製造方法は、次の段階を含む。
【0066】
(a)タキサンとシクロスポリンをそれぞれ両親媒性二重ブロック共重合体及び任意の成分として末端に少なくとも一つのカルボキシ基を含むポリ乳酸アルカリ金属塩と共にそれぞれエタノール、メタノール、プロパノール、アセトン、アセトニトリル、ジクロロメタン、クロロホルム、エチルメチルケトン、及び酢酸エチルからなる群より選ばれる一つ以上の有機溶媒に別個に可溶化させて溶液を得る段階;
(b)各溶液から有機溶媒を除去し、タキサンと高分子とが均一に混合された混合物、及びシクロスポリンと高分子とが均一に混合された混合物をそれぞれ調製する段階;及び
(c)前記段階(b)において得られたそれぞれの混合物に水溶液を加え、タキサンが封入された高分子ミセル組成物とシクロスポリンが封入された高分子ミセル組成物をそれぞれ製造し、前記各ミセル組成物を混合して混合ミセル組成物を製造する段階。
【0067】
一実施例において、前記製造方法は、2価または3価の金属イオンにて固定されたナノ粒子を得るために末端に少なくとも一つのカルボキシ基を含むポリ乳酸アルカリ金属塩を使用した場合において、段階(c)の後に、
(c−1)前記各混合高分子ミセルに2価または3価の金属イオンを添加し、ポリ乳酸塩末端基を固定させる段階をさらに含んでいてよい。
【0068】
前記段階(c−1)においては、前記混合高分子ミセル水溶液に0.001ないし2Mの2価または3価の金属イオンを含む水溶液を加え、室温で0.1ないし1時間にかけてゆっくり掻き混ぜると、金属イオンをポリ乳酸塩末端基にイオン結合にて固定させることができる。
【0069】
他の一実施例において、前記段階(c)の後に、
(d)前記前段階において製造された混合ミセル組成物を滅菌する段階;
(e)滅菌された混合水溶液を容器に充填する段階;及び
(f)前記段階(e)において充填された容器を凍結乾燥する段階をさらに含んでいてよい。
【0070】
前記二つの形態の段階毎の製造方法における段階(d)〜(f)は、製造された組成物に対する付加的な後処理工程に該当する。
【0071】
前記段階(b)における有機溶媒は、通常の方法にて除去することができ、具体的には、真空蒸発機にて蒸発させて除去することができる。
【0072】
一実施例において、前記段階(c)において使用された水溶液は、蒸留水、生理食塩水、または凍結乾燥補助剤水溶液であってよい。
【0073】
前記段階(f)における凍結乾燥時の凍結乾燥補助剤としては、マンニトール、ソルビトール、乳酸、トレハロース、及びシュクロースからなる群より選ばれる一種以上を使用することができる。好ましくは、マンニトールを使用すればよい。
【0074】
本発明の一実施例による製造方法では、両親媒性ブロック共重合体からなるミセル、両親媒性ブロック共重合体及びポリ乳酸アルカリ金属塩からなるミセル、及び両親媒性ブロック共重合体及びカルボキシ末端が2価または3価の金属イオンにて固定されたポリ乳酸塩からなるナノ粒子内部に薬物が封入された混合組成物を得ることができ、またこれら3種類の高分子組成物を混合することも可能である。
【0075】
前記耐性がん治療用抗がん剤組成物は、防腐剤、安定化剤、水和剤または乳化促進剤、浸透圧調節のための塩及び/または緩衝剤等の薬剤学的補助剤、及びその他治療的に有用な物質をさらに含んでいてよく、通常的な方法にて様々な経口または非経口投与形態に剤形化することができる。
【0076】
非経口投与用剤形では、直腸、局所、経皮、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下等に投与することができ、代表的なものは注射用剤形で、等張性水溶液または懸濁液の形態である。本発明の一実施例における前記耐性がん治療用抗がん剤組成物は、凍結乾燥形態で製造すればよく、注射用蒸留水、5%ブドウ糖及び生理食塩水等で再建して血管に注射する形態で投与すればよい。
【0077】
経口投与用剤形としては、例えば、錠剤、丸剤、硬質及び軟質カプセル剤、液剤、懸濁剤、乳化剤、シロップ剤、顆粒剤等があり、これら剤形は、有効成分の他、希釈剤(例:ラクトース、デキストロース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、セルロース及びグリシン)、滑剤(例:シリカ、タルク、ステアリン酸、及びそのマグネシウムまたはカルシウム塩及びポリエチレングリコール)を含んでいる。錠剤もまた、マグネシウムアルミニウムシリケート、澱粉ペースト、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシセルロース、及びポリビニルピロリジンのような結合剤を含むことができ、必要に応じては、澱粉、寒天、アルギン酸、またはそのナトリウム塩のような崩解剤、吸収剤、着色剤、香味制、及び甘味剤等の薬剤学的添加剤を含むことができる。錠剤は、通常的な混合、顆粒化、またはコーティング方法にて製造することができる。また、非経口投与用剤形の代表的なものは、注射用剤形であって、等張性水溶液または懸濁液が好ましい。
【0078】
一方、シクロスポリンのヒト投与許容量は190〜230mg/m/dayであり、ゆっくり点滴静脈注射することが可能である。前記タキサンのうち、例えば、前記パクリタキセルがタキソール(R)である場合、175mg/mの量をゆっくり3時間にかけて点滴静脈注射することが可能であり、アブラキサン(R)の場合は、300mg/mまで点滴静脈注射することが可能である。
【0079】
本発明による抗がん剤組成物は、薬物ががん組織に移行して高濃度で蓄積される、P糖蛋白過多発現による耐性がんに有効性を示すタキサンとP糖蛋白抑制剤のシクロスポリンとの複合または混合高分子組成物であって、耐性がんを移植させた動物実験において耐性がんに対する有効性が顕著に向上することを確認した。
【0080】
以下、本発明の好適な実施例を通じて本発明をより詳述するが、下記実施例は、本発明の効果を例示的に確認するためのものであって、本発明の範疇がこれらのみに限定されるものではない。
【0081】
本発明において使用した両親媒性二重ブロック共重合体及び末端に少なくとも一つのカルボキシ基を含むポリ乳酸アルカリ金属塩は、大韓民国特許出願第2005−7020313号に開示された方法にて製造されたものである。
【0082】
[実施例1]
パクリタキセルとシクロスポリンとが共に封入された両親媒性二重ブロック共重合体を含む抗がん剤複合ミセル組成物の製造
本実施例では、パクリタキセルとシクロスポリンとが共に封入された複合両親媒性二重ブロック共重合体、モノメトキシポリエチレングリコール−ポリラクチド(mPEG−PLA)ブロック共重合体を含む耐性がん治療用抗がん剤複合組成物を製造した。
【0083】
表1で表す含量のとおりに各物質を取り、ジクロロメタンとメタノールとを1:1の割合で混合した10mlの有機溶媒に可溶化させた後、真空蒸発器にて有機溶媒を蒸発させて、パクリタキセル、シクロスポリン、及び高分子が均一に混合された組成物を製造した。製造された組成物に、パクリタキセルの濃度を基準に最終濃度が3mg/mlになるように水溶液を加え、パクリタキセルとシクロスポリンとが共に封入された高分子ミセル組成物を製造した。製造された組成物を滅菌フィルターにてろ過し、ガラスバイアルに分注し、マンニトール100mgを添加して凍結乾燥した。
【0084】
【表1】

[実施例2]
パクリタキセルとシクロスポリンとが共に封入された両親媒性二重ブロック共重合体及びポリ乳酸アルカリ金属塩を含む抗がん剤複合ミセル組成物の製造
本実施例では、パクリタキセルとシクロスポリンとが共に封入された複合両親媒性二重ブロック共重合体、mPEG−PLA及びポリ乳酸ナトリウム塩(PLA−COONa)を含む耐性がん治療用抗がん剤複合ミセル組成物を製造した。
【0085】
表2で表す含量のとおりに各成分を取り、ジクロロメタンとメタノールとを1:1の割合で混合した有機溶媒に可溶化させた後、真空蒸発器にて有機溶媒を蒸発させてパクリタキセル、シクロスポリン、及び高分子が均一に混合された組成物を製造した。製造された組成物に、パクリタキセルの最終濃度が3mg/mlになるように水溶液を加え、パクリタキセルとシクロスポリンとが共に封入された高分子複合ミセル組成物を製造した。製造された組成物を滅菌フィルターにてろ過し、ガラスバイアルに分注し、マンニトール100mgを添加して凍結乾燥した。
【0086】
【表2】

[実施例3]
ドセタキセルとシクロスポリンとが共に封入された高分子複合ミセル組成物の製造
パクリタキセルに代えてドセタキセルを使用したことを除いては、実施例1及び2と同法にてドセタキセルとシクロスポリンとが所定の割合で共に両親媒性ブロック共重合体及びポリ乳酸アルカリ金属塩により封入されたミセル組成物を製造した。具体的な組成は、表3のとおりである。
【0087】
【表3】

[実施例4]
ドセタキセルとシクロスポリンとが共に封入された高分子複合ナノ粒子組成物の製造
表4で表す含量のとおりに各成分を取り、ジクロロメタンとメタノールとを1:1の割合で混合した有機溶媒に可溶化させた後、真空蒸発器にて有機溶媒を蒸発させて、ドセタキセル、シクロスポリン、及び高分子が均一に混合された組成物を製造した。製造された組成物に、ドセタキセルの最終濃度が3mg/mlになるように水溶液を加え、ドセタキセルとシクロスポリンとが共に封入された高分子複合ミセル組成物を製造した。これに0.2M無水塩化カルシウム水溶液を添加し、室温で20分間撹拌した。製造されたナノ粒子組成物を滅菌フィルターにてろ過し、ガラスバイアルに分注し、マンニトール100mgを添加して凍結乾燥した。
【0088】
【表4】

[実施例5]
パクリタキセルが封入された高分子ミセルとシクロスポリンが封入された高分子ミセルとが均一に混合された抗がん剤混合ミセル組成物の製造
本実施例では、パクリタキセルとシクロスポリンが別個に封入された高分子ミセル組成物を製造した後、その二つのミセル組成物を混合して耐性がん治療用抗がん剤組成物を製造した。
【0089】
イ)シクロスポリン、両親媒性二重ブロック共重合体、及びポリ乳酸アルカリ金属塩含有高分子ミセル組成物
下の組成を含む混合物を製造した。
【0090】
シクロスポリン 50mg
mPEG−PLA(2,000〜1,500ダルトン) 750mg
PLA−COONa(1,300ダルトン) 250mg
前記混合物を、エタノールに可溶化させた後、真空蒸発器にて有機溶媒を蒸発させた。前記乾燥物にシクロスポリン濃度が3mg/mlになるように水溶液を加え、シクロスポリンが封入された高分子ミセル組成物を製造した。
【0091】
ロ)パクリタキセル含有両親媒性二重ブロック共重合体
パクリタキセル 50mg
mPEG−PLA(2,000〜1,500ダルトン) 2,500mg
前記混合物を、エタノールに可溶化させた後、真空蒸発器にて有機溶媒を蒸発させた。前記乾燥物にパクリタキセル濃度が3mg/mlになるように水溶液を加え、パクリタキセルが封入された高分子ミセル組成物を製造した。
【0092】
ハ)混合高分子ミセル組成物の製造
パクリタキセル/シクロスポリンの重量比が1.0になるように、先に製造したパクリタキセル含有高分子ミセル組成物とシクロスポリン含有高分子ミセル組成物とを水溶液で混合して混合高分子ミセル組成物を製造した。
【0093】
混合高分子ミセル組成物を滅菌フィルターにてろ過して滅菌し、ガラスバイアルに充填した後、マンニトール100mgを加えて凍結乾燥した。
【0094】
前記過程により製造された組成物に対して粒子径を測定し、それを下表5に表した。
【0095】
【表5】

[実施例6]
ドセタキセルが封入された高分子ナノ粒子組成物とシクロスポリンが封入された高分子ナノ粒子組成物との混合ナノ粒子組成物の製造
本実施例では、ドセタキセルとシクロスポリンを別個に含む高分子ナノ粒子組成物を製造した後、その二つの高分子ナノ粒子を混合した組成物を製造した。
【0096】
イ)シクロスポリン含有高分子ナノ粒子組成物
下の組成を含む2価の金属イオンにて固定されたナノ粒子を製造した。
【0097】
シクロスポリン 20mg
mPEG−PLA(2,000〜1,500ダルトン) 300mg
D,L−PLACOONa(1,300ダルトン) 60mg
前記混合物を、実施例2と同法にてエタノールに可溶化させた後、真空蒸発器にて有機溶媒を蒸発させた。前記乾燥物にシクロスポリン濃度が3mg/mlになるように水溶液を加えた後、CaCl3.9mgを添加して、シクロスポリンが含有された高分子ナノ粒子組成物を製造した。
【0098】
ロ)ドセタキセル含有ナノ粒子組成物
ドセタキセル 20mg
mPEG−PLA(2,000〜1,500ダルトン) 500mg
D,L−PLACOONa(1,300ダルトン) 167mg
前記ドセタキセルにエタノールを加えて完全に溶解させた後、前記高分子を入れ、完全に溶解されるまで可溶化した。薬物が含有された混合液にCaCl10.89mgを添加し、電磁マグネチックミキサーで完全に混合させた。
【0099】
ハ)ドセタキセルが封入された高分子ミセル組成物とシクロスポリンが封入された高分子ミセル組成物との混合ミセル組成物の製造
ドセタキセル/シクロスポリンの重量比が1.0になるように先に製造したドセタキセル含有高分子ミセル組成物とシクロスポリン含有高分子ミセル組成物とを混合して高分子ナノ粒子組成物を製造した。
【0100】
製造された水溶液を滅菌フィルターにてろ過して滅菌し、ガラスバイアルに充填した後、マンニトール100mgを加えて凍結乾燥した。前記過程により製造された組成物に対して粒子径を測定し、それを下表6に表した。
【0101】
【表6】

[実験例1]
パクリタキセルとシクロスポリンとが共に封入された複合ミセルの粒度測定実験
実施例2の組成物5を、パクリタキセルを基準に、最終濃度値が3mg/mlになるように生理食塩水で再建し、同じ溶媒にて20倍に希釈して粒度測定のための試料を製造した。希釈された組成物5溶液の粒度を粒度分析機にて測定した結果を図1に示している。
【0102】
図1を参照すると、高分子ミセルの粒子径が40〜50nmで、且つ平均ナノ粒子径が多分散指数(polydispersity index)0.200未満の値を示し、極めて均一なナノ粒子の形態であることが分かる。
【0103】
[実験例2]
パクリタキセルとシクロスポリンとが共に封入されたミセルに対する安定性評価
実験例1において希釈された組成物5溶液の安定性を評価するために、室温で24時間放置した。放置時間の経過に伴って所定時間おきに溶液の一部を取り、HPLC(high−performance liquid chromatography)にてパクリタキセルとシクロスポリンの濃度をそれぞれ測定した。測定された結果を図2に示しており、HPLCの具体的な条件は下記のとおりである。
【0104】
【表7】

図2を参照すると、高分子ミセルに含有されているパクリタキセルとシクロスポリンの濃度を測定することで、その放出量を算出することができる。図2には、パクリタキセルとシクロスポリンの濃度が98%以上を保っており、このことから、前記二つの薬物の放出量は2%以内であって、ほとんど薬物が放出されないことを確認することができる。
【0105】
[実験例3]
パクリタキセルとシクロスポリンとが共に封入されたミセルの血中滞留時間及び薬物の移行程度評価
パクリタキセルとシクロスポリンとが共に封入された組成物5の血中滞留時間に対する影響及び脳への薬物の移行程度を評価した。
【0106】
動物実験のために、群当たり5匹ずつ20〜25g、8週齢のICRマウスを使用した。実施例2の組成物5、実施例5の組成物12、及び市販製品であるタキソール(R)注射剤を、パクリタキセルを基準に5mg/kgの濃度でしっぽ静脈に注射した。投与後10分、30分、及び1時間、5時間、10時間、24時間、48時間になったときにそれぞれのマウスの全血と脳組織を摘出した。
【0107】
採血した全血に対し、遠心分離を施して0.1mlの上澄血漿を得て、その上澄血漿を蓋付きのガラス管に入れ、また、摘出した脳組織に対し、その重さの4倍程度の超純水精製水を入れ、組織粉砕機にて組織を粉砕した後、血漿と同じ量を取って蓋付きのガラス管に入れた。それぞれの血漿と組織が入っている試料に内部標準物質を含有する0.1mlのアセトニトリル溶液を添加する。10mlのエチルアセテートを前記溶液に加え、混合物を30秒間激しく混合した後、2、500rpmで10分間遠心分離を施した。エチルアセテート層すべてを取って試験管に移した後、有機溶媒を40℃、窒素気流下で完全に蒸発させた。0.1mlの40%(v/v)アセトニトリル溶液を加え、混合物を30秒間激しく撹拌した後、HPLCを行った。HPLC条件は下のとおりであり、両親媒性二重ブロック共重合体の大きさと薬物血漿濃度分析結果を図3に示し、脳組織での薬物移行程度を図4に示した。
【0108】
注入体積:0.075ml
流速:1.0ml/分
波長:227nm
移動相:5分間24%アセトニトリル水溶液、16分間58%に増加、2分間70%に増加、4分間34%に減少し5分間維持
カラム:4.6×250mm(C18、Vydac、USA)。
【0109】
[実験例4]
P糖蛋白に対する抑制効果評価
細胞毒性に影響を与えることなく最大のP糖蛋白抑制効果を示す1.88ug/ml濃度のシクロスポリンが分注されたDLD−1直膓がん細胞株におけるパクリタキセルのIC50値は、パクリタキセル単独投与時のIC50値に比べ、15倍(160ng/ml → 11ng/ml)減少する結果を示した。
【0110】
[実験例5]
混合両親媒性二重ブロック共重合体の血中滞留時間による影響評価
本実験では、実施例5の組成物12と組成物13の血中滞留時間に対する影響を評価した。
【0111】
動物実験のために、体重210〜250gの雄性Sprague−Dawley系ラットを使用し、パクリタキセルを基準に5mg/kg用量を静脈注射後、5分、15分、30分、及び1時間、3時間、6時間、8時間、20時間ごとに0.3mlの全血をしっぽ動脈から採血した。採血した全血に対し、遠心分離を施して0.1mlの上澄血漿を得て、その上澄血漿を蓋付きのガラス管に入れ、内部標準物質を含有する0.1mlのアセトニトリル溶液を加えた。10mlのエチルアセテートを前記溶液に加え、混合物を30秒間激しく混合した後、2、500rpmで10分間遠心分離を施した。エチルアセテート層すべてを取って試験管に移した後、有機溶媒を40℃、窒素気流下で完全に蒸発させた。0.1mlの40%(v/v)アセトニトリル溶液を加え、混合物を30秒間激しく撹拌した後、HPLCを行った。HPLC条件は下のとおりであり、両親媒性二重ブロック共重合体の大きさと薬物血漿濃度分析結果を図5に示した。
【0112】
注入体積:0.075ml
流速:1.0ml/分
波長:227nm
移動相:5分間24%アセトニトリル水溶液、16分間58%に増加、2分間70%に増加、4分間34%に減少し5分間維持
カラム:4.6×250mm(C18、Vydac、USA)。
【0113】
図5を参照すると、組成物13は、組成物12に比べ、血中滞留時間が長いことと示された。このような結果から、シクロスポリンによりパクリタキセルの血中濃度が増加することが分かる。
【0114】
[実験例6]
混合高分子ミセル組成物の抗がん活性評価
実施例5の組成物11ないし13の抗がん活性を調べてみた。
【0115】
細胞を液体窒素で保存したものから採取し、試験管内細胞培養で確立した。細胞を収穫した後、滅菌リン酸緩衝食塩水(PBS)で洗浄し、生存細胞数を測定した。細胞を7×10細胞/mlの濃度で滅菌PBSに再懸濁した。
【0116】
健康なヌード(nu/nu)非胸腺マウス(20〜25g、8週齢)の右側わき腹に7×10ヒト大腸耐性がん細胞(DLD−1)を含有する0.1mlの細胞懸濁液を皮下注射した。がんが所定の大きさになった後、3回異種移植して3〜4mmの異種移植片を形成した。異種移植断片を健康なヌード(nu/nu)非胸腺マウス(20〜25g、8週齢)の右側わき腹に12ゲージ・トロカール・ニードルで皮下注射した。がん体積が100〜300mになってから薬物を投与し、この時点を0日と記録した。0日に、マウスを5グループに分け、0日、3日、及び6日に、シクロスポリン含有高分子ミセル組成物(組成物11)、パクリタキセル含有高分子ミセル組成物(組成物12)、及び混合高分子ミセル組成物(組成物13)を、しっぽ静脈からパクリタキセルを基準に35mg/kg、シクロスポリン35mg/kgの用量で投与した。
【0117】
時間経過にしたがってがん体積を測定し、がん体積は下式1で計算した。
【0118】
【数1】

【0119】
また、治療効果を評価するために、腫瘍体積を下式2で計算した。
【0120】
【数2】

【0121】
実験を有意なものと認定するために、処理当たり4匹以上のマウスとグループ当たり4個以上の腫瘍を使用した。処理開始時点における、最小腫瘍径は4mmまたは30mm体積であった。最終薬物投与後、2週内に死んだ動物を毒性死滅とみなして評価から除外した。3匹当たり1匹より多い毒性死滅や平均体重が15%を超えて減少した後完全に回復していない処理群は抗腫瘍効能がないとみなした。実験結果を図6に示した。
【0122】
図6を参照すると、シクロスポリン含有高分子ミセル組成物(組成物11)−処理群の場合には、単独投与では抗がん活性に全く影響を与えず、むしろ対照群よりもがん成長体積が大きいことが分かる。しかし、パクリタキセル含有高分子ミセル組成物(組成物12)と混合高分子ミセル組成物(組成物13)−処理群の場合には、対照群に比べてがん成長抑制を示し、特に混合高分子ミセル組成物(組成物13)−処理群は、パクリタキセル含有高分子ミセル組成物(組成物12)−処理群に比べて高いがん抑制率を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両親媒性二重ブロック共重合体、及び有効成分として、タキサン及びP糖蛋白抑制剤であるシクロスポリンを含む耐性がん治療用高分子ミセル組成物。
【請求項2】
前記組成物は、末端にカルボキシ基を含むポリ乳酸アルカリ金属塩をさらに含むことを特徴とする請求項1記載の耐性がん治療用高分子ミセル組成物。
【請求項3】
前記組成物は、カルボキシ末端が2価または3価の金属イオンにて固定されたポリ乳酸をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の耐性がん治療用高分子ミセル組成物。
【請求項4】
前記組成物は、一つのミセル内部にタキサンとシクロスポリンとが共に含まれたことを特徴とする請求項1に記載の耐性がん治療用高分子ミセル組成物。
【請求項5】
前記組成物は、タキサンが封入された高分子ミセルとシクロスポリンが封入された高分子ミセルとが混合された形態であることを特徴とする請求項1に記載の耐性がん治療用高分子ミセル組成物。
【請求項6】
前記組成物は、
一つのミセル内部にタキサンとシクロスポリンとが共に含まれた組成物と、
タキサンが封入された高分子ミセルとシクロスポリンが封入された高分子ミセルとが混合された形態の組成物と、が混合された形態であることを特徴とする請求項1に記載の耐性がん治療用高分子ミセル組成物。
【請求項7】
前記タキサンは、パクリタキセル(paclitaxel)、ドセタキセル(docetaxel)、7−エピパクリタキセル(7−epipaclitaxel)、t−アセチルパクリタキセル(t−acetyl paclitaxel)、10−デスアセチルパクリタキセル(10−desacetyl−paclitaxel)、10−デスアセチル−7−エピパクリタキセル(10−desacetyl−7−epipaclitaxel)、7−キシロシルパクリタキセル(7−xylosylpaclitaxel)、10−デスアセチル−7−グルタリルパクリタキセル(10−desacetyl−7−glutarylpaclitaxel)、7−N,N−ジメチルグリシルパクリタキセル(7−N,N−dimethylglycylpaclitaxel)、7−L−アラニルパクリタキセル(7−L−alanylpaclitaxel)、またはこれらの混合物であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の耐性がん治療用高分子ミセル組成物。
【請求項8】
前記両親媒性二重ブロック共重合体は、親水性ブロック(A)と疎水性ブロック(B)とで構成されたA−B型二重ブロック共重合体であって、
前記親水性ブロック(A)は、ポリエチレングリコール及びメトキシポリエチレングリコールからなる群より選ばれた一種以上であり、
前記疎水性ブロック(B)は、ポリ乳酸、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリマンデル酸、ポリカプロラクトン、ポリジオキサン−2−オン、ポリアミノ酸、ポリオルトエステル、ポリ酸無水物、及びこれらの共重合体からなる群より選ばれる一種以上であることを特徴とする請求項1に記載の耐性がん治療用高分子ミセル組成物。
【請求項9】
前記親水性ブロック(A)の数平均分子量は500ないし20、000ダルトンであり、
前記疎水性ブロック(B)の数平均分子量は500ないし10、000ダルトンであり、
親水性ブロック(A)の含量は、二重ブロック共重合体の全重量を基準に、40ないし70重量%であることを特徴とする請求項8に記載の耐性がん治療用高分子ミセル組成物。
【請求項10】
前記シクロスポリン(b)に対するタキサン(a)の重量比(a/b)は、0.1ないし2.0の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の耐性がん治療用高分子ミセル組成物。
【請求項11】
前記タキサンとシクロスポリンとの和の含量は、組成物の全重量を基準に、0.1ないし20重量%であることを特徴とする請求項1に記載の耐性がん治療用高分子ミセル組成物。
【請求項12】
前記組成物は、組成物の全重量を基準に、
タキサン0.01ないし10重量%;
シクロスポリン0.01ないし10重量%;及び
両親媒性二重ブロック共重合体80ないし99.8重量%を含むことを特徴とする請求項1に記載の耐性がん治療用高分子ミセル組成物の製造方法。
【請求項13】
前記組成物は、組成物の全重量を基準に、
タキサン0.01ないし10重量%;
シクロスポリン0.01ないし10重量%;
両親媒性二重ブロック共重合体40ないし90重量%;及び
末端にカルボキシ基を含むポリ乳酸アルカリ金属塩10ないし50重量%を含むことを特徴とする請求項1に記載の耐性がん治療用高分子ミセル組成物の製造方法。
【請求項14】
有効成分として、タキサン及びシクロスポリンを含む耐性がん治療用高分子ミセル組成物を製造する方法であって、
(a)タキサン、シクロスポリン、及び両親媒性二重ブロック共重合体を有機溶媒に可溶化させる段階;
(b)有機溶媒を蒸発させてタキサン、シクロスポリン、及び高分子が均一に混合された混合物を調製する段階;及び
(c)前記段階(b)において得られた混合物に水溶液を加え、内部にタキサンとシクロスポリンとが封入された高分子ミセルを製造する段階;を含む耐性がん治療用高分子ミセル組成物の製造方法。
【請求項15】
有効成分として、タキサン及びシクロスポリンを含む耐性がん治療用高分子ミセル組成物を製造する方法であって、
(a)タキサン、シクロスポリン、及び両親媒性二重ブロック共重合体、並びに少なくとも一つの末端にカルボキシ基を含むポリ乳酸アルカリ金属塩を有機溶媒に可溶化させる段階;
(b)有機溶媒を蒸発させてタキサン、シクロスポリン、及び高分子が均一に混合された混合物を調製する段階;及び
(c)前記段階(b)において得られた混合物に水溶液を加え、内部にタキサンとシクロスポリンとが封入された高分子ミセルを製造する段階;を含む耐性がん治療用高分子ミセル組成物の製造方法。
【請求項16】
段階(c)の後に、
(c−1)高分子ミセルに2価または3価の金属イオンを添加し、前記ポリ乳酸塩末端基を固定させる段階をさらに含むことを特徴とする請求項14または15に記載の高分子ミセル組成物の製造方法。
【請求項17】
シクロスポリン(b)に対するタキサン(a)の重量比(a/b)は、0.1ないし2.0の範囲であることを特徴とする請求項14または15に記載の耐性がん治療用高分子ミセル組成物の製造方法。
【請求項18】
段階(c)の後に、製造されたミセル組成物を凍結乾燥する段階をさらに施すことを特徴とする請求項14または15に記載の耐性がん治療用高分子ミセル組成物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−509318(P2012−509318A)
【公表日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−537369(P2011−537369)
【出願日】平成21年11月23日(2009.11.23)
【国際出願番号】PCT/KR2009/006882
【国際公開番号】WO2010/059001
【国際公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(511123739)サミャン コーポレイション (2)
【Fターム(参考)】