説明

耐摩耗性に優れた内装材

【課題】易リサイクル性、低環境負荷に加えて、良好な耐摩耗性と深みのある発色性を有する内装材を提供する。
【解決手段】ポリ乳酸樹脂を他の熱可塑性樹脂が被覆してなる繊維を含んでなることを特徴とする内装材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーペット及び内装材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、石油資源の大量消費によって生じる地球温暖化や、大量消費に伴う石油資源の枯渇が懸念されており、地球規模にて環境に対する意識が高まりつつある。このような背景において、植物由来原料(バイオマス)からなり、使用後は自然環境中で最終的に水と二酸化炭素にまで分解する、自然循環型の環境対応素材が切望されている。
【0003】
しかしながら、このようなバイオマス利用の生分解性ポリマーは、製造コストが高く、また力学特性や耐熱性が低いという問題があり、汎用プラスチックとして利用されることはなかった。これらを解決できるバイオマス利用の生分解性ポリマーとして、現在、最も注目されているのは脂肪族ポリエステルの一種であるポリ乳酸である。ポリ乳酸は、植物から抽出したでんぷんを発酵することにより得られる乳酸を原料としたポリマーであり、バイオマス利用の生分解性ポリマーの中では、力学特性、耐熱性およびコストのバランスが最も優れている。そして、これを利用した樹脂製品、繊維、フィルムおよびシート等の開発が急ピッチで行われている。
【0004】
かかる状況下において、ポリ乳酸繊維の開発としては、生分解性を活かした農業資材や土木資材等が先行しているが、それに続く大型の用途としてポリ乳酸の優れた発色性、ドライな風合いを活用した衣料用途や衛生材料用途、寝装用途、さらには非石油系素材を訴求点とした自動車用途への応用も期待されている。
【0005】
しかしながら、ポリ乳酸繊維は、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリオレフィン繊維等の他の汎用繊維に比べ表面が削れやすく、耐摩耗性に劣るという課題がある。例えば、自動車用カーペットやカーシートにおいては、摩耗によりポリ乳酸繊維の表面が大きく削られ、パイルが脱落することによる製品の著しい摩耗が発生することがある。
【0006】
また、ポリ乳酸ポリマーは他の汎用繊維よりも加水分解が進みやすく、耐摩耗性が経時的に悪化することから製品寿命が短いという課題もある。
【0007】
ポリ乳酸の耐摩耗性を改善する方法としては、例えば加水分解を抑制する方法が開示されている(特許文献1,2参照。)。特許文献1は、ポリ乳酸の水分率をできるだけ抑制することで、繊維の製造工程での加水分解を抑制するものであり、特許文献2は、モノカルボジイミド化合物を添加して耐加水分解性を向上させた繊維が開示されている。しかしながら、いずれの繊維も経時的なポリ乳酸の脆化を抑制するという点では耐摩耗性の低下は抑えられているものの、いずれもポリ乳酸の「フィブリル化しやすい」という特性を変えるものではなく、初期の耐摩耗性は従来品と大きな差は無い。
【0008】
また、耐摩耗性を大幅に改善する方法として、脂肪酸ビスアミド等の滑剤を添加して繊維表面の摩擦係数を低下せしめることで、摩耗を抑制したポリ乳酸繊維が開示されている(特許文献3〜6参照)。しかしながら、これらの繊維は与えられる力が小さい場合には有効であるが、例えば、カーペットの様に強い踏込力がかかる場合には、繊維間凝着を十分に抑制することができないため、ポリ乳酸の破壊が生じてしまい、用途が限定されるものであった。
【0009】
また、ポリアミドと脂肪族ポリエステルとのブレンドにより、樹脂組成物の力学特性を向上させる技術が開示されている(特許文献7)。特許文献7の方法によれば、ポリアミドの補強効果により強度等の力学特性や耐熱性、耐摩耗性が向上するとあるが、実際には、フィブリル化して白ぼけし、摩耗速度も速いという問題が依然としてあった。
【特許文献1】特開2000−136435号公報
【特許文献2】特開2001−261797号公報
【特許文献3】特開2004−91968号公報
【特許文献4】特開2004−204406号公報
【特許文献5】特開2004−204407号公報
【特許文献6】特開2004−277931号公報
【特許文献7】特開2003−238775号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、かかる従来の問題点を解消し、易リサイクル性、低環境負荷に加えて、良好な耐摩耗性と深みのある発色性を有する内装材を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために鋭意検討の結果、本願発明者等は、例えば特許文献7に記載の技術において樹脂組成物の力学特性の向上効果が得られなかったのは、当該技術においてポリアミドのブレンド比が5〜40%と少量成分であるために海構造を形成するのは脂肪族ポリエステルであり、さらに脂肪族ポリエステルとポリアミドとの界面が非相溶であるため、外力により2成分間の接着面が容易に剥離してしまうためであることをつきとめ、本願発明に到達した。
【0012】
すなわち本発明は、ポリ乳酸樹脂を他の熱可塑性樹脂が被覆してなる複合繊維を含んでなることを特徴とする内装材である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、低環境負荷に加え、耐摩耗性に優れ、また深みのある発色性と独特のソフトな風合いを有する内装材を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明に用いられるポリ乳酸とは、−(O−CHCH−CO)−を繰り返し単位として有するポリマーであり、乳酸やラクチド等の乳酸のオリゴマーを重合したものをいう。乳酸にはD体とL体の2つの光学異性体が存在するが、L体またはD体のいずれにしても、光学純度は高い方が融点が高く、すなわち耐熱性が向上するため好ましい。具体的には光学純度が90%以上であることが好ましい。また融点としては繊維の耐熱性を維持するために150℃以上であることが好ましい。
【0015】
また、上記のように2種類の光学異性体が単純に混合している系とは別に、前記2種類の光学異性体をブレンドして繊維に成形した後、140℃以上の高温熱処理を施してラセミ結晶を形成させたステレオコンプレックスにすると、融点を220〜230℃まで高めることができ、好ましい。この場合、「ポリ乳酸」は、ポリ(L乳酸)とポリ(D乳酸)の混合物を指し、そのブレンド比は40/60〜60/40であると、ステレオコンプレックス結晶の比率を高めることができ、好ましい。
【0016】
また、通常、ポリ乳酸中には低分子量残留物として残存ラクチドが存在しうるが、ポリ乳酸中の残存ラクチド量としては3000質量ppm以下が好ましく、より好ましくは1000質量ppm以下、さらに好ましくは300質量ppm以下である。ポリ乳酸中の残存ラクチド量を抑えることにより、延伸や仮撚加工工程での加熱ヒーター汚れや染色加工工程での染め斑等の染色異常を誘発する原因を防ぐことができる。また、繊維や繊維成型品の加水分解を防ぎ、耐久性を維持することができる。
【0017】
また、ポリ乳酸の性質を損なわない範囲で、乳酸以外の成分を共重合していてもよい。共重合する成分としては、ポリエチレングリコールなどのポリアルキレンエーテルグリコール、ポリブチレンサクシネートやポリグリコール酸などの脂肪族ポリエステル、ポリエチレンイソフタレートなどの芳香族ポリエステル、及びヒドロキシカルボン酸、ラクトン、ジカルボン酸、ジオールなどのエステル結合形成性の単量体が挙げられる。
【0018】
さらに改質剤として、粒子、結晶核剤、難燃剤、可塑剤、帯電防止剤、抗酸化剤や紫外線吸収剤等の添加物やエチレンビスステアリンサンアミド等の滑剤等を含有していてもよい。
【0019】
ポリ乳酸の重量平均分子量(Mw)としては、耐摩耗性を保持する上で8万以上とすることが好ましく、より好ましくは10万以上、さらに好ましくは12万以上である。一方、延伸性、ひいては分子配向による繊維強度を維持する上で、ポリ乳酸の重量平均分子量は35万以下が好ましく、より好ましくは30万以下、さらに好ましくは25万以下である。
【0020】
本発明のポリ乳酸の製造方法としては、乳酸を有機溶媒及び触媒の存在下、そのまま脱水縮合する直接脱水縮合法や、少なくとも2種類のホモポリマーを重合触媒の存在下にて共重合およびエステル交換反応させる方法や、乳酸を一旦脱水し、環状二量体とした後に、開環重合する間接重合法等を挙げることができる。
【0021】
本発明の内装材は、ポリ乳酸樹脂を他の熱可塑性樹脂が被覆してなる繊維を含んでなることが重要である。前述のとおり、ポリ乳酸繊維は、他の汎用繊維に比べ表面が削れやすく耐摩耗性にも劣るため、ポリ乳酸よりも耐摩耗性に優れた「他の熱可塑性樹脂」を繊維表面に配することで、繊維の耐摩耗性を向上させることができる。またさらに、ポリ乳酸樹脂自体の発色性に加え、屈折率が比較的高い他の熱可塑性樹脂により被覆することで、より深みのある発色を発現することができる。またさらに、その理由は明らかではないが、ポリ乳酸樹脂や「他の熱可塑性樹脂」をそれぞれ単独で用いた場合よりもソフトな風合いを得ることができる。
【0022】
次に、ポリ乳酸樹脂とともに繊維を形成する「他の熱可塑性樹脂」について述べる。
【0023】
「他の熱可塑性樹脂」は、ポリ乳酸の耐摩耗性を向上させる目的で使用する。
【0024】
「他の熱可塑性樹脂」としては、耐摩耗性向上の点から、熱可塑性ポリアミド、ポリアセタール、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート等を好ましく用いることができる。
【0025】
特に、熱可塑性ポリアミドは、ポリ乳酸との相溶性が高い点、加熱流体処理などにより捲縮を付与しやすい点、また後述するようなポリ乳酸樹脂との組み合わせによる独特の深みのあるシルキー調光沢に特に優れている点、カーペットなどの内装材に用いたときのしなやかな踏み応え感等の点で、特に好ましい。
【0026】
熱可塑性ポリアミドは、アミド結合を有するポリマーであり、例えば、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン510等を挙げることができる。ポリ乳酸との相溶性を高くするという点からは、ポリアミドのメチレン鎖長は長い方が好ましく、その点ではナイロン11、ナイロン12、ナイロン610が好ましい。
【0027】
また、ポリトリメチレンテレフタレートは、その組成成分であるトリメチレングリコールを植物由来成分より製造することができ、低環境負荷の点で好ましい。ポリトリメチレンテレフタレートは、トリメチレンテレフタレート単位を主たる繰り返し単位とする。トリメチレンテレフタレート単位の含有量としては、50モル%以上が好ましく、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上である。ポリトリメチレンテレフタレートは、テレフタル酸またはその機能的誘導体、例えばテレフタル酸ジメチルなどと、トリメチレングリコールとを、結合せしめることにより合成することができる。
【0028】
「他の熱可塑性樹脂」は、ホモポリマーであっても共重合ポリマーであってもよいが、耐摩耗性を維持する上で、結晶性を有するものであることが好ましい。なお、結晶性の有無は、示差走査熱量計(DSC)測定において観測される融解ピークの有無により判定することができ、融解ピークを観測できれば結晶性有りと判定できる。
【0029】
「他の熱可塑性樹脂」の融点としては、150〜250℃が好ましい。一般にポリ乳酸の融点は200℃以下で、溶融貯留時の耐熱性も250℃を越えると急激に悪化する傾向にあるため、これと併せて用いる「他の熱可塑性樹脂」の融点も250℃以下であることが好ましく、より好ましくは225℃以下である。一方、繊維の耐熱性を考慮すると、「他の熱可塑性樹脂」の融点は150℃以上であることが好ましい。
【0030】
また、添加成分として、さらに酸化チタンなどのつや消し剤、リン酸等の安定剤、ヒドロキシベンゾフェノン誘導体等の紫外線吸収剤、難燃剤、静電剤、顔料、蛍光増白剤、赤外線吸収剤、消泡剤、末端封鎖剤、帯電防止剤、難燃剤、エチレンビスステアリンサンアミド等の滑剤、ポリマー同士の接着力を向上させる相溶化剤が含有されていても良い。
【0031】
本発明の内装材において、ポリ乳酸樹脂を他の熱可塑性樹脂が被覆してなる繊維の形態としては、ポリマーアロイが好ましい。ポリ乳酸樹脂が島構造として他の熱可塑性樹脂の海構造中に細かく分散したポリマーアロイ構造とすることにより、両成分同士の界面における応力を分散させることができ、繊維の耐摩耗性を飛躍的に向上させることができる。なお、繊維表面に一部の島成分が露出していてもよい。
【0032】
ポリマーアロイ構造における島成分のドメインサイズとしては、平均値が0.001〜2μmであることが好ましい。界面における応力の分散の観点から、ポリ乳酸樹脂の形成する島構造のドメインサイズとしては2μm以下が好ましく、より好ましくは1μm以下、さらに好ましくは0.5μm以下、さらに好ましくは0.2μm以下である。一方、ポリ乳酸樹脂の形成する島構造のドメインサイズが極端に小さくなりすぎると、フィブリル化により初期摩耗性が低下する傾向にあるので、かかる観点からは0.001μm以上が好ましく、より好ましくは0.005μm以上、さらに好ましくは0.01μm以上、さらに好ましくは0.02μm以上である。
【0033】
上記のようなポリマーアロイ構造は、ポリマーブレンドにより形成させることができる。当該ポリマーブレンドにおけるポリ乳酸樹脂の質量分率としては、低環境負荷の観点からは大きければ大きいほど好ましいが、深みのある発色の発現の観点からは、5質量%以上が好ましく、より好ましくは7質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上である。一方、ポリ乳酸樹脂が島構造、他の熱可塑性樹脂が海構造という関係の構造を安定して形成させる上では、55質量%以下が好ましく、より好ましくは45質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下である。
【0034】
また、ポリ乳酸樹脂の溶融粘度をη、「他の熱可塑性樹脂」の溶融粘度をηとしたときの両者の比(η/η)は、0.5〜10の範囲内にすることが好ましい。η/ηを0.5以上とすることでポリ乳酸樹脂を多めに入れても島構造を形成しやすくなり、より好ましくは0.65以上、さらに好ましくは1.0以上である。一方、η/ηを10以下とすることでブレンドによる均一な分散がしやすくなり、より好ましくは6.5以下、さらに好ましくは5.0以下である。
【0035】
ポリ乳酸樹脂を他の熱可塑性樹脂が被覆してなる繊維を含め、本発明の内装材に用いる繊維の断面形状としては、丸断面、中空断面、多孔中空断面、三葉断面等の多葉断面、扁平断面、W断面、X断面、その他の異形断面を自由に選択して採用することが可能である。
【0036】
また、ポリ乳酸樹脂を他の熱可塑性樹脂が被覆してなる繊維の形態としては、長繊維でも短繊維でもよいし、またマルチフィラメントでもモノフィラメントでもよい。
【0037】
ポリ乳酸樹脂を他の熱可塑性樹脂が被覆してなる繊維の強度としては、後工程での工程通過性や、内装材としての強力を得る上で、1.5cN/dtex以上であることが好ましい。
【0038】
ポリ乳酸樹脂を他の熱可塑性樹脂が被覆してなる繊維の糸斑としては、染色時の染め斑等の欠点の発生を抑える上で、ウスター斑(U% Normal)で3.0%以下が好ましく、より好ましくは2.0%以下である。
【0039】
ポリ乳酸樹脂を他の熱可塑性樹脂が被覆してなる繊維の、本発明の内装材に対する含有量としては、50質量%以上であることが好ましい。
【0040】
他の繊維と合わせて使用する場合、当該他の繊維としては例えば、綿、麻などの天然繊維や、レーヨン、キュプラなどの再生繊維、アセテートなどの半合成繊維、ナイロン、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等)、ポリ乳酸、ポリアクリルニトル及びポリ塩化ビニルなどの合成繊維を採用することができる。
【0041】
内装材に用いる繊維構造体としては、織物、編物、不職布等を採用することができる。
【0042】
本発明の内装材の具体的用途としては、カーペット、カーテンなどを挙げることができ、特に自動車用のカーシート、カーペット、天井表皮、サンバイザー表皮、パケトレ表皮として好適である。
【0043】
また、本発明の内装材をカーペットとする場合、ポリ乳酸樹脂を他の熱可塑性樹脂が被覆してなる繊維を含め、用いる繊維に仮撚加工や嵩高捲縮加工を行い、嵩高性やソフト性を付与することがカーペットとしての質感を出す上で好ましい。
【0044】
また、本発明の内装材をカーペットとする場合、ポリ乳酸樹脂を他の熱可塑性樹脂が被覆してなる繊維を含め、用いる捲縮糸の捲縮特性としては、実施例にて後述する沸騰水処理後の捲縮伸長率が3〜35%であることが好ましく、より好ましくは3〜25%である。この捲縮伸長率は、カーペットの製造工程において、沸騰水中で処理したときの捲縮発現・保持能力の指標となるものであり、この値を3%以上とすることで、染色等の熱処理を施してもマルチフィラメント糸の嵩高性が低下することがなく、バルキー性に富むカーペット製品を得ることが可能となる。また、捲縮伸長率を35%以下とすることで、繊維の強度低下を抑制し、工程通過性、使用耐久性に優れたカーペット製品を得ることが可能となる。
【0045】
また、本発明の内装材をカーペットとする場合、タフト後の意匠性、風合い、手触りを勘案し、ポリ乳酸樹脂を他の熱可塑性樹脂が被覆してなる繊維を含め、用いる繊維を2本または3本合糸して撚りをかけた撚糸としても良い。撚りの回数としては、50〜250回/mが、タフト後の意匠性、風合い、手触りの点から好ましく、より好ましくは80〜200回/mである。また、撚りをかけた後に、形態を保持させる為に熱セットを施すことが好ましい。その熱セット温度としては、80〜150℃が撚糸後の糸の形態安定性が良好となるため好ましく、より好ましくは100〜130℃である。
【0046】
カーペットの加工形態としては例えば、段通、ウイルトン、ダブルフェイス、アキスミンター等の織りカーペットや、タフティング、フックドラグ等の刺繍カーペットや、ボンデッド、電着、コード等の接着カーペット、あるいはその組み合わせを用いることができる。
【0047】
カーペットにおける、タフトしたパイル糸の単位面積あたりの質量(目付)は、用途に応じ適宜採用すればよい。例えば、自動車用カーマットの中でも運転者の踵部が直接当たるオプションマットについては、ペダル操作によって踵が当たる部分が著しく摩耗を受ける傾向にあるので、その目付としては100〜5000g/mがカーペットの耐摩耗性と経済性を両立する上で好ましく、より好ましくは500〜3000g/mである。
【0048】
その場合のパイルの耐摩耗性としては、実施例にて後述するカーペットの磨耗減量試験(回転数5500回)において摩耗減量率が40%以下である事が好ましく、より好ましくは30%以下である。
【0049】
また、カーペットとして実用に供した場合にはポリ乳酸の加水分解による耐磨耗性の低下が考えられ、湿熱老化処理後(温度50℃、湿度95%、処理時間1200時間)の摩耗減量率が15%以下である事が好ましく、より好ましくは10%以下である。
【0050】
また、自動車製造時に直接取り付けられオプションマットの下に敷かれる、ラインマットあるいはフロアカーペットについては、要求される耐摩耗性はオプションマットほど厳しくなく、その目付としては50〜2000g/mが耐摩耗性と経済性を両立する上で好ましく、より好ましくは、200〜1000g/mである。
【0051】
ラインマットの耐熱性としては、過熱成型加工時にパイルが溶けないこと、融着を起こさないことなどが好ましい。
【0052】
本発明の内装材をカーシート用布帛とする場合、ポリ乳酸樹脂を他の熱可塑性樹脂が被覆してなる繊維を含め、用いる繊維は単繊維繊度が1.1〜10dtexであることが好ましい。
【0053】
また、カーシート用布帛の組織としては、ジャージ、トリコット、モケットなどを採用することが好ましい。
【0054】
本発明の内装材をカーシート用布帛とした場合、当該布帛の、室温時に対する90℃雰囲気下での強力保持率が50%以上であることが好ましく、より好ましくは60%以上である。カーシートとして使用する場合は、特に夏場の車内温度が上昇した時などの高温雰囲気下では、カーシート布帛の強力が低下して、へたりが発生易く、これを抑えるためである。
【実施例】
【0055】
[測定方法]
(1)相対粘度
A.ポリ乳酸
o−クロロフェノール10mLに試料0.1gを溶解して溶液を調整し、25℃で測定した。
B.ナイロン6
0.01g/mLの98%硫酸溶液を調製し25℃で測定した。
【0056】
(2)溶融粘度
東洋精機(株)社製キャピログラフ1Bを用い、窒素雰囲気下において温度240℃、歪み速度1216sec−1での測定を3回行い、平均値を溶融粘度とした。
【0057】
(3)ポリ乳酸の重量平均分子量(Mw)
ポリ乳酸をクロロホルムに溶解させて測定溶液とし、これをゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、ポリスチレン換算で重量平均分子量(Mw)を求めた。
【0058】
(4)ポリマーの融点
パーキンエルマー社製示差走査型熱量計DSC−7型を用い、試料20mgを昇温速度16℃/分にて測定して得た融解吸熱曲線の極値を与える温度を融点(℃)とした。
【0059】
(5)繊維の異形度
糸の断面を切り出し、単繊維横断面の外接円の直径Dと、単糸横断面の内接円の直径dとから次式により求めた。
異形度=D/d 。
【0060】
(6)繊度
JIS L 1013:1999 8.3.1 A法に基づき、112.5m分の小かせをサンプル数5採取し、その質量を測定し、その値(g)に10000/112.5をかけ、見掛け繊度(dtex)を求めた。見かけ繊度から、次の式によって正量繊度を求め、平均値を算出した。
正量繊度(dtex)=D'×(100+Rc)/(100+Re)
ここに、D':見かけ繊度(dtex)
Rc:公定水分率(%)
Re:平衡水分率(%)。
【0061】
(7)引張強さ及び伸び率(標準時試験)
JIS L 1013:1999 8.5.1に拠って測定した。
試料を緩く張った状態で、引張試験機(株式会社オリエンテック製テンシロン(登録商標)UCT−100)のつかみにつかみ間隔20cmで取り付け、引張速度20cm/分の定速伸長にて試験を行った。初荷重をかけたときの伸びを緩み(mm)として読み、更に試料を引っ張り、試料が切断したときの荷重及び伸び(mm)を測定し、次の式によって引張強さ及び伸び率を算出した。試験回数は10回とし、その平均値を算出した。
=SD/F
ここに、T:引張強さ
SD:切断時の強さ
:試料の正量繊度
伸び率(%)=[(E−E)/(L+E)]×100
ここに、E:緩み(mm)
:切断時の伸び(mm)
L:つかみ間隔(mm)。
【0062】
(8)糸斑U%
Zellweger Uster社製UT4−CX/Mを用い、糸速度200m/分、測定時間1分間でU%(Normal)を測定した。
【0063】
(9)沸騰水処理後の捲縮伸張率
捲縮糸のパッケージを、室温30±5℃、相対湿度50〜75%の雰囲気中に20時間以上放置した後、当該パッケージから捲縮糸を解舒し、これを無荷重状態で30分間沸騰水に浸漬処理した後、平衡水分率まで乾燥した。これを長さ50cm強に切り取り、試料とした。この試料糸に2mg/dtex(0.0196mN/dtex)の初荷重をかけて30秒経過後に、垂下支点からの長さ50cm(L)の位置にマーキングをした。次いで、同試料に100mg/dtex(0.98mN/dtex)の定荷重をかけて30秒経過後に、垂下支点から先のマーキング位置までの長さ(L)を測定した。下記式により、捲縮伸張率を求めた。
捲縮伸張率(%)=[(L−L)/L]×100 。
【0064】
(10)繊維におけるポリ乳酸樹脂と「他の熱可塑性樹脂」との被覆関係の判定(被覆成分の判定)
合成繊維を横断面が出るようにスライスし、スライスした試料を水酸化ナトリウム1%水溶液にて処理し、ポリ乳酸を溶出させた。当該処理後の試料の横断面を電子顕微鏡(SEM)にて観察し、島構造、海構造のうち、溶出した構造と残存した構造との関係から、被覆関係を判断した。
【0065】
(11)海島構造におけるドメインサイズ
合成繊維を横断面が出るようにスライスし、当該横断面を透過型電子顕微鏡(TEM)により観察して、面内の島数が50を超える場合にはn数50を無作為に抽出し、島一つ一つの横断を画像解析ソフトウェアにて測定し、当該面積から、真円換算にて直径にあたるドメインサイズを平均値で算出した。
【0066】
(12)パイル糸の目付
タフト後のカーペットを50cm角に切り取り、当該試料におけるパイル糸の総質量を測定し、単位面積(1m)あたりに換算したものをパイル糸の目付とした。
【0067】
(13)カーペットの摩耗減量率
JIS L 1096:1999 8.17.3 テーバー形法に準じて、H−18摩耗輪を使用し、左右一対のそれぞれの摩耗輪に1kgf(9.8N)の荷重をかけて所定回転数回転してカーペットを摩耗させた後、その未摩耗部分と摩耗部分(JIS L 1096:1999 図20参照。)との目付から摩耗減量率(%)を下記式にて算出した。
摩耗減量率(%)=[(未摩耗部分のパイル目付−摩耗部分のパイル目付)/摩耗部分のパイル目付]×100
回転数は、300回と5500回の2条件とした。
【0068】
(14)湿熱老化後の摩耗減量率
温度50℃、湿度95%雰囲気下にて1200時間処理した後のカーペットに対して、上記(13)と同様にして摩耗減量率を求めた。
但し回転数は1000回とした。
【0069】
(15)カーペット(ラインマット)の耐熱性
三浦プレス製作所製300tプレス機にて成型温度150℃にてプレスして外観変化を評価した。
◎:変化なし。
○:若干のアタリ有り。
×:パイルの融着が発生。
【0070】
(16)発色性
染色糸を用いたカーペットを目視し、次の基準により評価した。
◎:特に優れている。
○:優れている。
△:他の合成繊維と比べ差が見られない。
【0071】
(17)カーシート布帛の強力
JIS L 1096:1999 8.12.1 A法(ストリップ法)のラベルドストリップ法に則り、雰囲気温度20℃にてタテ方向及びヨコ方向のそれぞれについて、試験片を3枚ずつ採取し、幅の両側から糸を取り除いて幅30mmとし、定速緊張型(島津製作所製オートグラフ(AG−G))の試験機にて、つかみ間隔150mm、引張速度200mm/minで試験したときの破断強力を測定し、6枚の平均値を算出した。
【0072】
(18)90℃雰囲気中のカーシート布帛の強力保持率
雰囲気温度を90℃に変更した以外は上記(17)と同様にして布帛の強力を測定し、次式により強力保持率を算出した。
布帛強力保持率(%)=(90℃雰囲気での強力/20℃雰囲気での強力)×100 。
【0073】
(19)カーシート布帛の摩耗減量
JIS L 1096:1999 8.17.3 テーバー形法に準じて、H−18摩耗輪を使用し、左右一対のそれぞれの摩耗輪に0.5kgf(4.9N)の荷重をかけて3000回回転して摩耗させた後、布帛の質量の減少量を測定した。
【0074】
[実施例1]
(紡糸・延伸・けん縮加工)
ポリ乳酸チップ(相対粘度3.70、溶融粘度1210poise、融点168℃)とナイロン6チップ(相対粘度2.15、溶融粘度580poise、融点225℃)とをエクストルダーにて混練質量比(ポリ乳酸:ナイロン)30:70、混練温度230℃で混練し、紡糸機に供給した。
【0075】
紡糸機における紡糸温度は230℃とし、紡糸パック中でメッシュサイズ20μmの金属不織布フィルターで濾過した後、Y型孔を有する孔数54の口金を通じて糸条を吐出した。
【0076】
口金から吐出された紡糸糸条は、チムニー風により冷却固化した後、低粘度鉱物油で希釈した25質量%の油剤液を付与した後、引取ロール(ネルソンタイプロール、回転速度700m/分、ロール温度65℃)に捲回した。
【0077】
糸条を巻き取ることなく引き続いて、第1延伸ロール(ネルソンタイプロール、回転速度600m/分、ロール温度110℃)に捲回することにより1段目の延伸を行った。更に糸条を巻き取ることなく引き続いて、第2延伸ロール(ネルソンタイプロール、回転速度1800m/分、ロール温度150℃)に捲回することにより2段目の延伸を行った。
【0078】
糸条を巻き取ることなく引き続いて、延伸糸条をけん縮加工装置に導き、170℃、0.8MPaの加熱圧空によってけん縮加工し、回転移送装置上に噴出させ、冷却した。次に、プラグ状のけん縮糸の塊を2個1対のセパレートロールにてストレッチをかけ、塊を解した。該けん縮糸に交絡処理を施し、チーズ状に巻き取り、2000dtex−94filのけん縮糸を得た。
【0079】
得られたけん縮糸から繊維におけるポリ乳酸樹脂とナイロン6との被覆関係を観察したところ、水酸化ナトリウム水溶液処理により島構造が溶出して海構造が残存していたことから、ポリ乳酸樹脂が島構造、ナイロン6が海構造を形成していることを確認した。
【0080】
また、島構造のドメインサイズは、25〜400nm(平均180nm)あった。
【0081】
また、Y型繊維断面の異形度は1.34であった。
【0082】
(撚糸)
上記けん縮糸に下撚りとしてS撚りを160回/mかけ、さらに2本合糸し、上撚りとしてZ撚りを160回/mかけ、105℃にて熱セットを施した。
【0083】
(染色)
ナイロン6が被覆成分を形成していたことから、含金染料にてナイロン6を染色すべく、次の様にして染色処理を行った。
【0084】
染色釜に浴比1:15の染色浴を準備し、含金染料としてIRGALAN(R) Black RBLNを2.0%owf、染色助剤として、酢酸を0.5g/l、硫安を0.5g/l添加し、当該染色浴に前記撚糸を入れ、90℃で20分間、染色処理を施した。
【0085】
(基布)
ポリ乳酸チップ(相対粘度3.70、溶融粘度1210poise、融点168℃)から単繊維繊度5.5dtex目付100g/mのスパンボンド不織布を得て、カーペットの基布とした。
【0086】
(タフティング)
前記撚糸を前記基布に、1/8ゲージ、ステッチ6.8個/mmでタフトし、パイル目付700g/mの自動車オプションマット用のループカーペットを得た。
【0087】
得られたカーペットの摩耗減量率は300回転摩耗において3.5%、5500回転摩耗において33.3%、湿熱老化後の摩耗減量率は5.2%であり、良好な耐摩耗性を示した。また、得られたオプションマット用カーペットは、深みのある優れた発色を呈していた。
【0088】
[実施例2]
(紡糸・延伸・けん縮加工)
実施例1と同様にして紡糸・延伸・けん縮加工を行った。
【0089】
(撚糸)
実施例1と同様にして撚糸を行った。
【0090】
(染色)
実施例1と同様にして染色を行った。
【0091】
(基布)
実施例1と同様のものをカーペットの基布とした。
【0092】
(タフティング)
前記撚糸を前記基布に、1/8ゲージ、ステッチ7.5個/mmでタフトし、パイルの先端をカットして、パイル長10mm、パイル目付1100g/mの自動車オプションマット用のサキソニーカーペットを得た。
【0093】
得られたオプションマット用カーペットの磨耗減量率は300回転摩耗において2.2%、5500回転摩耗において20.8%、湿熱老化後の磨耗減量率性は3.1%であり、良好な耐摩耗性を示した。また、得られたオプションマット用カーペットは、深みのある優れた発色を呈していた。
【0094】
[実施例3]
(紡糸・延伸・けん縮加工)
ポリマーの総吐出量および口金の孔数を変更した以外は実施例1と同様にして紡糸・延伸・けん縮加工を行い、1450dtex−54filのけん縮糸を得た。
【0095】
得られたけん縮糸から繊維におけるポリ乳酸樹脂とナイロン6との被覆関係を観察したところ、水酸化ナトリウム水溶液処理により島構造が溶出して海構造が残存していたことから、ポリ乳酸樹脂が島構造、ナイロン6が海構造を形成していることを確認した。
【0096】
また、島構造のドメインサイズは、25〜400nm(平均200nm)であった。
【0097】
また、Y型繊維断面の異形度は1.34であった。
【0098】
(撚糸)
撚糸は施さなかった。
【0099】
(染色)
ナイロン6が被覆成分を形成していたことから、ナイロン6を染色すべく、実施例1と同様にして染色を行った。
【0100】
(基布)
実施例1と同様のものをカーペットの基布とした。
【0101】
(タフティング)
前記けん縮糸を前記基布に、1/10ゲージ、ステッチ12個/mm、でタフトし、パイルの先端をカットして、パイル長6mm、パイル目付450g/mの自動車ラインマット用のベロアカーペットを得た。
【0102】
得られたカーペットの磨耗減量率は300回転摩耗において2.6%、湿熱老化後の磨耗減量率は4.2%であり、良好な耐摩耗性を示した。また、得られたカーペットは、深みのある優れた発色を呈していた。また、得られたカーペットの耐熱性は、熱による融着もなく良好であった。
【0103】
[比較例1]
(紡糸・延伸・けん縮加工)
ポリ乳酸とナイロンとの混練質量比を100:0とした以外は実施例1と同様にして、けん縮糸を得た。
【0104】
(撚糸)
実施例1と同様にして撚糸を行った。
【0105】
(染色)
ポリ乳酸樹脂が100質量%であることから、分散染料にてポリ乳酸樹脂を染色すべく、次の様にして染色処理を行った。
【0106】
染色釜に浴比1:15の染色浴を準備し、分散染料としてDisperse Yellow KT−1、Disperse Red KT−1、Disperse Blue KT−1を総染料濃度で5%owf、染色助剤として、酢酸を0.5g/l、ニッカサンソルト RM−340(日華化学(株)製)を0.5g/l添加し、当該染色浴に前記撚糸を入れ、110℃で30分間、染色処理を施した。
【0107】
(基布)
実施例1と同様のものをカーペットの基布とした。
【0108】
(タフティング)
実施例1と同様にしてタフトし、パイル目付700g/mのループカーペットを得た。
【0109】
得られたカーペットの磨耗減量率は300回転摩耗において6.3%、5500回転摩耗において95.2%、湿熱老化後の磨耗減量率は25.2%であり、いずれも実施例1と比べ劣るものであった。
【0110】
[比較例2]
(紡糸・延伸・けん縮加工)
ポリ乳酸とナイロンとの混練質量比を70:30とした以外は実施例1と同様にして、けん縮糸を得た。
【0111】
得られたけん縮糸から繊維におけるポリ乳酸樹脂とナイロン6との被覆関係を観察したところ、水酸化ナトリウム水溶液処理により海構造が溶出して島構造が残存していたことから、ポリ乳酸樹脂が海構造、ナイロン6が島構造を形成していることを確認した。
【0112】
(撚糸)
実施例1と同様にして撚糸を行った。
【0113】
(染色)
ポリ乳酸樹脂が被覆成分を形成していたことから、分散染料にてポリ乳酸樹脂を染色すべく、比較例1と同様にして染色を行った。
【0114】
(基布)
実施例1と同様のものをカーペットの基布とした。
【0115】
(タフティング)
前記撚糸を前記基布に、1/8ゲージ、ステッチ7.5個/mmでタフトし、パイルの先端をカットして、パイル長10mm、パイル目付1100g/mのサキソニーカーペットを得た。
【0116】
得られたカーペットの磨耗減量率は300回転摩耗において3.2%、5500回転摩耗において75.1%、湿熱老化後の磨耗減量率は18.8%であり、実施例2と比べ劣るものであった。
【0117】
[比較例3]
(紡糸・延伸・けん縮加工)
ポリ乳酸とナイロンとの混練質量比を100:0とした以外は実施例1と同様にして、けん縮糸を得た。
【0118】
(撚糸)
実施例1と同様にして撚糸を行った。
【0119】
(染色)
ポリ乳酸樹脂が100質量%であることから、分散染料にてポリ乳酸樹脂を染色すべく、比較例1と同様にして染色を行った。
【0120】
(基布)
実施例1と同様のものをカーペットの基布とした。
【0121】
(タフティング)
前記撚糸を前記基布に、1/8ゲージ、ステッチ7.5個/mmでタフトし、パイルの先端をカットして、パイル長10mm、パイル目付1100g/mのサキソニーカーペットを得た。
【0122】
得られたカーペットの磨耗減量率は300回転摩耗において2.4%、5500回転摩耗において85.6%、湿熱老化後の磨耗減量率は19.9%であり、実施例2と比べ劣るものであった。
【0123】
[比較例4]
(紡糸・延伸・けん縮加工)
ポリマーの総吐出量および口金の孔数を変更し、ポリ乳酸とナイロンとの混練質量比率を70:30とした以外は実施例1と同様にして紡糸・延伸・けん縮加工を行い、1450dtex−54filのけん縮糸を得た。
【0124】
得られたけん縮糸から繊維におけるポリ乳酸樹脂とナイロン6との被覆関係を観察したところ、水酸化ナトリウム水溶液処理により海構造が溶出して島構造が残存していたことから、ポリ乳酸樹脂が海構造、ナイロン6が島構造を形成していることを確認した。
【0125】
(撚糸)
撚糸は施さなかった。
【0126】
(染色)
ポリ乳酸樹脂が被覆成分を形成していたことから、分散染料にてポリ乳酸樹脂を染色すべく、比較例1と同様にして染色を行った。
【0127】
(基布)
実施例1と同様のものをカーペットの基布とした。
【0128】
(タフティング)
前記けん縮糸を前記基布に、1/10ゲージ、ステッチ12個/mmでタフトし、パイルの先端をカットして、パイル長6mm、パイル目付450g/mのベロアカーペットを得た。
【0129】
得られたカーペットの磨耗減量率は300回転摩耗において40.2%、湿熱老化後の摩耗減量率は50.3%であり、実施例3と比べ劣るものであった。また、得られたカーペットの耐熱性はその試験においてパイルの融着が発生し、実施例3と比べ劣るものであった。
【0130】
[比較例5]
(紡糸・延伸・けん縮加工)
ポリマーの総吐出量および口金を変更し、ポリ乳酸とナイロンとの混練質量比を100:0とした以外は実施例1と同様にして紡糸・延伸・けん縮加工を行い、1450dtex−54filのけん縮糸を得た。
【0131】
(撚糸)
撚糸は施さなかった。
【0132】
(染色)
ポリ乳酸樹脂が100質量%であることから、分散染料にてポリ乳酸樹脂を染色すべく、比較例1と同様にして染色を行った。
【0133】
(基布)
実施例1と同様のものをカーペットの基布とした。
【0134】
(タフティング)
前記けん縮糸を前記基布に、1/10ゲージ、ステッチ12個/mmでタフトし、パイルの先端をカットして、パイル長6mm、パイル目付450g/mのベロアカーペットを得た。
【0135】
得られたカーペットの摩耗減量率は300回転摩耗において43.4%、湿熱老化後の摩耗減量率は70.2%であり、実施例3と比べ劣るものであった。
【0136】
また、得られたカーペットの耐熱性はその試験においてパイルの融着が発生し、実施例3と比べ劣るものであった。
【0137】
[比較例6]
(紡糸・延伸・けん縮加工)
ポリマーの総吐出量および口金を変更し、ポリ乳酸とナイロンとの混練質量比を0:100とした以外は実施例1と同様にして紡糸・延伸・けん縮加工を行い、1560dtex−96filのけん縮糸を得た。
【0138】
(撚糸)
上記けん縮糸に下撚りとしてS撚りを140回/mかけ、さらに2本合糸し、上撚りとしてZ撚りを140回/mかけ、125℃にて熱セットを施した。
【0139】
(染色)
ナイロン6を染色すべく、実施例1と同様にして染色を行った。
【0140】
(基布)
実施例1と同様のものをカーペットの基布とした。
【0141】
(タフティング)
前記撚糸を前記基布に、1/10ゲージ、ステッチ8.5個/mmでタフトし、パイルの先端をカットして、パイル長10mm、パイル目付1100g/mのサキソニーカーペットを得た。
【0142】
得られたカーペットの磨耗減量率は300回転摩耗において1.0%、5500回転摩耗において9.2%、湿熱老化後の摩耗減量率は2.1%であり、良好な耐摩耗性を示した。また、得られたカーペットは、発色性が実施例と比べ劣るものであった。
【0143】
【表1】

【0144】
[実施例4]
(紡糸・延伸)
ポリ乳酸チップ(相対粘度3.70、溶融粘度1210poise、融点168℃)とナイロン6チップ(溶融粘度580poise、融点225℃)とをエクストルダーにて混練質量比(ポリ乳酸:ナイロン)30:70、混練温度230℃で混練し、紡糸機に供給した。
【0145】
紡糸機における紡糸温度は230℃とし、紡糸パック中でメッシュサイズ20μmの金属不織布フィルターで濾過した後、丸型孔を有する孔数26の口金を通じて糸条を吐出した。
【0146】
紡糸速度2000m/分にて、252dtex−26filの未延伸糸を巻き取り、その後、縦型延伸機を用いて、延伸倍率3.0倍、延伸温度90℃、セット温度130℃の条件で一段延伸を施し、84dtex−26filの延伸糸を得た。
【0147】
得られた延伸糸から繊維におけるポリ乳酸樹脂とナイロン6との被覆関係を観察したところ、水酸化ナトリウム水溶液処理により島構造が溶出して海構造が残存していたことから、ポリ乳酸樹脂が島構造、ナイロン6が海構造を形成していることを確認した。
【0148】
また、島構造のドメインサイズは、15〜200nm(平均100nm)であった。
【0149】
(合糸・編み)
得られた延伸糸を4本合糸して、カーシート用にダブルジャージを作成した。
【0150】
(染色)
ナイロン6が被覆成分を形成していたことから、含金染料にてナイロン6を染色すべく、次の様にして染色処理を行った。
【0151】
染色釜に浴比1:15の染色浴を準備し、含金染料としてIRGALAN(R) Black RBLNを2.0%owf、染色助剤として、酢酸を0.5g/l、硫安を0.5g/l添加し、当該染色浴に前記撚糸を入れ、90℃で20分間、染色処理を施した。
【0152】
得られたカーシートは実用上問題のない強力を有しており、又、90℃雰囲気中での強力保持率も67.9%と実用上問題なく、耐磨耗性も良好であった。
【0153】
[実施例5]
(紡糸・延伸)
ポリ乳酸とナイロンとの混練質量比(ポリ乳酸:ナイロン)を20:80とした以外は実施例4と同様にして84dtex−26filの延伸糸を得た。
【0154】
得られた延伸糸から繊維におけるポリ乳酸樹脂とナイロン6との海島関係を観察したところ、水酸化ナトリウム水溶液処理により島構造が溶出して海構造が残存していたことから、ポリ乳酸樹脂が島構造、ナイロン6が海構造を形成していることを確認した。
【0155】
(合糸・編み)
得られた延伸糸を4本合糸して、カーシート用にダブルジャージを作成した。
【0156】
(染色)
ナイロン6が被覆成分を形成していたことから、含金染料にてナイロン6を染色すべく、実施例4と同様にして染色を行った。
【0157】
得られた布帛は実用上問題のない強力を有しており、又、90℃雰囲気中での強力保持率も75.8%と実用上問題なく、耐磨耗性も良好であった。
【0158】
[比較例7]
(紡糸・延伸)
ポリ乳酸とナイロンとの混練質量比(ポリ乳酸:ナイロン)を70:30とした以外は実施例4と同様にして84dtex−26filの延伸糸を得た。
【0159】
得られた延伸糸から繊維におけるポリ乳酸樹脂とナイロン6との海島関係を観察したところ、水酸化ナトリウム水溶液処理により海構造が溶出して海構造が残存していたことから、ポリ乳酸樹脂が海構造、ナイロン6が島構造を形成していることを確認した。
【0160】
(合糸・編み)
得られた延伸糸を4本合糸して、実施例4と同様にダブルジャージを作成した。
【0161】
(染色)
ポリ乳酸樹脂が被覆成分を形成していたことから、分散染料にてポリ乳酸樹脂を染色すべく、比較例1と同様にして染色を行った。
【0162】
得られた布帛は、90℃雰囲気中での強力保持率が29.3%と低く、耐磨耗性も実施例4と比較すると劣り、実用上の使用が困難な結果となった。
【0163】
[比較例8]
(紡糸・延伸)
ポリ乳酸とナイロンとの混練質量比を100:0とした以外は実施例4と同様にして、延伸糸を得た。
【0164】
(合糸・編み)
得られた延伸糸を4本合糸して、実施例4と同様にダブルジャージを作成した。
【0165】
(染色)
ポリ乳酸樹脂が100質量%であることから、分散染料にてポリ乳酸樹脂を染色すべく、比較例1と同様にして染色を行った。
【0166】
得られた布帛は、90℃雰囲気中での強力保持率が25.6%と低く、耐磨耗性も実施例4と比較すると劣り、実用上の使用が困難な結果となった。
【0167】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0168】
本発明の耐摩耗性に優れた内装材は、優れた手触り、立毛感そして発色性を発現し、低環境負荷性をもつため、自動車用途だけでなく、インテリア用途、コントラクト用途、家庭用途に好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ乳酸樹脂を他の熱可塑性樹脂が被覆してなる繊維を含んでなることを特徴とする内装材。
【請求項2】
ポリ乳酸樹脂の他の熱可塑性樹脂が、熱可塑性ポリアミド、ポリアセタール、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートのいずれかである、請求項1記載の内装材。
【請求項3】
ポリ乳酸樹脂の他の熱可塑性樹脂が熱可塑性ポリアミド樹脂である、請求項1または2記載の内装材。
【請求項4】
ポリ乳酸樹脂の他の熱可塑性樹脂が融点150〜250℃である、請求項1〜3のいずれか記載の内装材。
【請求項5】
ポリ乳酸樹脂と他の熱可塑性樹脂とのブレンド比率が質量比で5/95〜55/45である、請求項1〜4のいずれか記載の内装材。
【請求項6】
ポリ乳酸樹脂を他の熱可塑性樹脂が被覆してなる繊維が、ドメインサイズの平均値が0.001〜2μmである海島構造を有するポリマーアロイ繊維である、請求項1〜5のいずれか記載の内装材。
【請求項7】
内装材が自動車用である、請求項1〜6のいずれか記載の内装材。

【公開番号】特開2008−57095(P2008−57095A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−284734(P2006−284734)
【出願日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】