説明

耐擦傷性樹脂板、並びにそれを用いたディスプレイ用保護板および携帯型情報端末の表示窓保護板

【課題】表面硬度を維持しつつ、優れた耐候性を有する耐擦傷性樹脂板、並びにそれを用いたディスプレイ用保護板および携帯型情報端末の表示窓保護板を提供することである。
【解決手段】樹脂基板と、その表面に形成された硬化被膜とからなり、前記樹脂基板は、ポリカーボネート樹脂層の少なくとも片面にアクリル樹脂層が積層されてなり、前記ポリカーボネート樹脂層およびアクリル樹脂層は、いずれも紫外線吸収剤を含有すると共に、前記アクリル樹脂層1m2あたりの紫外線吸収剤量が0.005〜1g/m2、かつ前記樹脂基板1m2あたりの紫外線吸収剤量が0.5〜2g/m2であり、前記硬化被膜は、少なくとも前記アクリル樹脂層表面に形成されている耐擦傷性樹脂板である。この耐擦傷性樹脂板からなるディスプレイ用保護板と、携帯型情報端末の表示窓保護板とを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイ用保護板および携帯型情報端末の表示窓保護板として好適な耐擦傷性樹脂板、並びにそれを用いたディスプレイ用保護板および携帯型情報端末の表示窓保護板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ディスプレイ等の保護板として、耐擦傷性樹脂板が用いられている。該耐擦傷性樹脂板は、透明な樹脂基板の表面に耐擦傷性(ハードコート性)を有する硬化被膜が形成されてなる。このような耐擦傷性樹脂板は、長期にわたり使用し続けると変色するという問題がある。すなわち、従来の耐擦傷性樹脂板には、耐候性が十分でないという問題がった。
【0003】
特許文献1,2には、液晶ディスプレイカバー用の耐擦傷性樹脂板が記載されている。該耐擦傷性樹脂板は、ポリカーボネート樹脂層の片面に所定厚さのアクリル樹脂層を積層してなる積層体を基板とし、前記アクリル樹脂層上に硬化被膜を形成することで、表面硬度および耐衝撃性を向上させている。また、特許文献1,2には、耐候性を長期間保持する上で、前記アクリル樹脂層に紫外線吸収剤を所定量含有させることが記載されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1,2に記載されている耐擦傷性樹脂板の耐候性は、必ずしも十分ではない。耐擦傷性樹脂板の耐候性を向上させるには、添加する紫外線吸収剤量を増やせばよいとも考えられる。しかし、紫外線吸収剤量を増やすと耐候性は向上するものの、表面硬度が低下してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−103169号公報
【特許文献2】特開2007−237700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、表面硬度を維持しつつ、優れた耐候性を有する耐擦傷性樹脂板、並びにそれを用いたディスプレイ用保護板および携帯型情報端末の表示窓保護板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、樹脂基板を構成するポリカーボネート樹脂層およびアクリル樹脂層がいずれも紫外線吸収剤を含有し、かつ表面に硬化被膜が形成されるアクリル樹脂層の紫外線吸収剤量と、前記樹脂基板全体の紫外線吸収剤量とが特定範囲内である場合には、表面硬度を維持しつつ、長期にわたり優れた耐候性を得ることができるという新たな事実を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明の耐擦傷性樹脂板は、以下の構成からなる。
(1)樹脂基板と、その表面に形成された硬化被膜とからなり、前記樹脂基板は、ポリカーボネート樹脂層の少なくとも片面にアクリル樹脂層が積層されてなり、前記ポリカーボネート樹脂層およびアクリル樹脂層は、いずれも紫外線吸収剤を含有すると共に、前記アクリル樹脂層1m2あたりの紫外線吸収剤量が0.005〜1g/m2、かつ前記樹脂基板1m2あたりの紫外線吸収剤量が0.5〜2g/m2であり、前記硬化被膜は、少なくとも前記アクリル樹脂層表面に形成されていることを特徴とする耐擦傷性樹脂板。
(2)前記樹脂基板は、ポリカーボネート樹脂層の両面にアクリル樹脂層が積層されてなる前記(1)記載の耐擦傷性樹脂板。
(3)前記硬化被膜が、分子中に少なくとも3個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物を含有する硬化性塗料組成物により形成されたものである前記(1)または(2)記載の耐擦傷性樹脂板。
【0009】
本発明のディスプレイ用保護板は、前記(1)〜(3)のいずれかに記載の耐擦傷性樹脂板からなる。
本発明の携帯型情報端末の表示窓保護板は、前記(1)〜(3)のいずれかに記載の耐擦傷性樹脂板からなる。
なお、本発明における前記「携帯型情報端末」とは、人が携行できる程度の大きさであって、文字情報や画像情報等を表示するための窓(ディスプレイ)を有するものの総称を意味しており、例えば携帯電話やPHS(Personal Handy-phone System)、PDA(Personal Digital Assistant)等が挙げられる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の耐擦傷性樹脂板は、表面硬度を維持しつつ、長期にわたり優れた耐候性を示すことができるという効果がある。したがって、この耐擦傷性樹脂板をディスプレイ保護板、特に携帯型情報端末の表示窓保護板として用いることにより、その表示窓を長期にわたり効果的に保護することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の耐擦傷性樹脂板は、樹脂基板と、その表面に形成された硬化被膜とからなる。前記樹脂基板は、ポリカーボネート樹脂層の少なくとも片面にアクリル樹脂層が積層された積層体からなる。これにより、前記樹脂基板は、表面硬度および耐衝撃性に優れ、かつ押圧されても割れ難くなる。
【0012】
前記ポリカーボネート樹脂層を構成するポリカーボネート樹脂としては、例えば二価フェノールとカルボニル化剤とを界面重縮合法や溶融エステル交換法等で反応させることにより得られるもの、カーボネートプレポリマーを固相エステル交換法等で重合させることにより得られるもの、環状カーボネート化合物を開環重合法で重合させることにより得られるもの等が挙げられる。
【0013】
前記二価フェノールとしては、例えばハイドロキノン、レゾルシノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチル)フェニル}メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(3−イソプロピル−4−ヒドロキシ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−フェニル)フェニル}プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルブタン、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}フルオレン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−o−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−5,7−ジメチルアダマンタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルケトン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエステル等が挙げられ、必要に応じてそれらの2種以上を用いることもできる。
【0014】
中でも、ビスフェノールA、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンおよびα,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼンからなる群より選ばれる二価フェノールを単独で、または2種以上用いるのが好ましく、特に、ビスフェノールAの単独使用や、ビスフェノールAと、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパンおよびα,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼンからなる群より選ばれる1種以上の二価フェノールとの併用が好ましい。
【0015】
前記カルボニル化剤としては、例えばホスゲン等のカルボニルハライド、ジフェニルカーボネート等のカーボネートエステル、二価フェノールのジハロホルメート等のハロホルメート等が挙げられ、必要に応じてそれらの2種以上を用いることもできる。
【0016】
前記アクリル樹脂層を構成するアクリル樹脂としては、一般的にメタクリル樹脂が用いられる。メタクリル樹脂は、メタクリル酸メチル単位を主成分とするもの、具体的にはメタクリル酸メチル単位を通常50重量%以上、好ましくは70重量%以上含むメタクリル酸メチル樹脂であるのが好ましく、メタクリル酸メチル単位100重量%のメタクリル酸メチル単独重合体であってもよいし、メタクリル酸メチルと、該メタクリル酸メチルと共重合し得る他の単量体との共重合体であってもよい。
【0017】
前記メタクリル酸メチルと共重合し得る他の単量体としては、例えばメタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル等のメタクリル酸メチル以外のメタクリル酸エステル類や、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル等のアクリル酸エステル類が挙げられる。また、スチレンや置換スチレン類、例えばクロロスチレン、ブロモスチレン等のハロゲン化スチレン類や、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等のアルキルスチレン類も挙げられる。さらに、メタクリル酸、アクリル酸等の不飽和酸類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、無水マレイン酸、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミドも挙げられる。これらメタクリル酸メチルと共重合し得る他の単量体は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
前記ポリカーボネート樹脂層およびアクリル樹脂層は、いずれも紫外線吸収剤を含有する。前記紫外線吸収剤としては、例えばベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリチル酸フェニルエステル系、トリアジン系の紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0019】
前記ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α、α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5 ’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチレンブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]等が挙げられる。前記ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、例えば2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4 −メトキシ−4’−クロルベンゾフェノン、2,2−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン等が挙げられる。前記サリチル酸フェニルエステル系紫外線吸収剤としては、例えばp−t −ブチルフェニルサリチル酸エステル等が挙げられる。前記トリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−1,3, 5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−エトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−(2−ヒドロキシ−4−プロポキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−(2−ヒドロキシ−4 −ブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル− 6−(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ブトキシエトキシ)−1,3,5−トリアジン等が挙げられる。
【0020】
前記で例示した紫外線吸収剤は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。ポリカーボネート樹脂層中に含まれる紫外線吸収剤と、アクリル樹脂層中に含まれる紫外線吸収剤とは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。本発明にかかる紫外線吸収剤は、前記で例示したものに限定されるものではなく、各種の公知のものが採用可能である。
【0021】
ここで、前記アクリル樹脂層1m2あたりの紫外線吸収剤量は0.005〜1g/m2であり、かつ前記樹脂基板1m2あたりの紫外線吸収剤量は0.5〜2g/m2である。これにより、本発明の耐擦傷性樹脂板は、表面硬度を維持しつつ、長期にわたり優れた耐候性を示すことができる。
【0022】
すなわち、前記アクリル樹脂層の表面には、後述するように硬化被膜が形成される。このアクリル樹脂層中に含まれる紫外線吸収剤量があまり多いと、アクリル樹脂層の剛性が低下し、これに伴い表面硬度も低下する。本発明の耐擦傷性樹脂板は、アクリル樹脂層の紫外線吸収剤量が前記特定範囲内にあるので、表面硬度を維持することができる。また、長期にわたり安定した耐候性を示すには、樹脂基板全体の紫外線吸収剤量が重要である。本発明の耐擦傷性樹脂板は、樹脂基板全体の紫外線吸収剤量が前記特定範囲内にあるので、長期にわたり安定した耐候性を示すことができる。
【0023】
一方、前記アクリル樹脂層および前記樹脂基板の紫外線吸収剤量があまり少ないと、十分な耐候性が得られないおそれがある。また、前記樹脂基板の紫外線吸収剤量があまり多いと、それに見合った効果は得られず、経済的に不利となる。前記ポリカーボネート樹脂層中に含まれる紫外線吸収剤量としては、500〜3000ppm、前記アクリル樹脂層中に含まれる紫外線吸収剤量としては、100〜10000ppmが好ましい。
【0024】
前記ポリカーボネート樹脂層およびアクリル樹脂層には、それぞれ必要に応じて、光拡散剤、艶消剤、染料、光安定剤、酸化防止剤、離型剤、難燃剤、帯電防止剤等の添加剤を1種または2種以上添加してもよい。
【0025】
前記樹脂基板は、通常、シート状ないしフィルム状であり、その厚みは、通常、0.3〜3mm、好ましくは0.3〜2mm、さらに好ましくは0.4〜1.5mmである。樹脂基板において、前記アクリル樹脂層の厚みは、通常、50〜120μm、好ましくは60〜110μm、より好ましくは70〜100μmである。アクリル樹脂層の厚みが小さい程、耐擦傷性樹脂板の耐衝撃性が向上し、また耐擦傷性樹脂板が押圧されても割れ難くなる傾向にあるが、アクリル樹脂層の厚みがあまり小さいと、耐擦傷性樹脂板の表面硬度が低下して好ましくない。また、アクリル樹脂層の厚みがあまり大きいと、耐擦傷性樹脂板の耐衝撃性が低下して好ましくない。
【0026】
樹脂基板は、ポリカーボネート樹脂層の片面のみにアクリル樹脂層が積層されてなる2層構造のものであってもよいし、ポリカーボネート樹脂層の両面にアクリル樹脂層が積層されてなる3層構造のものであってもよい。耐擦傷性樹脂板の耐環境性、例えば高温下や高湿下に曝したときの反り難さの点からは、ポリカーボネート樹脂層の両面にアクリル樹脂層が積層されてなる樹脂基板が好ましい。3層構造の場合には、両面のアクリル樹脂層は、各々、アクリル樹脂層1m2あたりの紫外線吸収剤量が0.005〜1g/m2である限り、その組成や厚みは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、例えば、一方がゴム粒子を含有すれば、他方はゴム粒子を含有しないよう構成することができる。
【0027】
このような本発明の樹脂基板は、ポリカーボネート樹脂層とアクリル樹脂層とを共押出成形で積層一体化することにより、好適に製造される。この共押出成形は、2基または3基の一軸または二軸の押出機を用いて、ポリカーボネート樹脂層の材料とアクリル樹脂層の材料とをそれぞれ溶融混練した後、フィードブロックダイやマルチマニホールドダイ等を介して積層することにより行うことができる。積層一体化された溶融積層樹脂体は、例えばロールユニットを用いて冷却固化すればよい。共押出成形により製造した樹脂基板は、粘着剤や接着剤を用いた貼合により製造した樹脂基板に比べて、二次成形し易い点で好ましい。
【0028】
一方、前記硬化被膜は、少なくとも前記アクリル樹脂層表面に形成される。ポリカーボネート樹脂層の両面にアクリル樹脂層が積層されている場合、前記硬化被膜は、少なくとも片面のアクリル樹脂層表面に形成される。したがって、本発明の耐擦傷性樹脂板の層構成としては、下記(i)〜(iv)が挙げられる。
(i)硬化被膜/アクリル樹脂層/ポリカーボネート樹脂層
(ii)硬化被膜/アクリル樹脂層/ポリカーボネート樹脂層/硬化被膜
(iii)硬化被膜/アクリル樹脂層/ポリカーボネート樹脂層/アクリル樹脂層
(iv)硬化被膜/アクリル樹脂層/ポリカーボネート樹脂層/アクリル樹脂層/硬化被膜
なお、樹脂基板の両面に硬化被膜を形成する場合には、両面の硬化被膜の組成や厚みは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0029】
硬化被膜を形成するのに用いられる硬化性塗料組成物は、耐擦傷性をもたらす硬化性化合物を必須成分とし、必要に応じて、硬化触媒、導電性粒子、溶媒、レベリング剤、安定化剤、酸化防止剤、着色剤等を含有するものである。
【0030】
前記硬化性化合物としては、例えばアクリレート化合物、ウレタンアクリレート化合物、エポキシアクリレート化合物、カルボキシル基変性エポキシアクリレート化合物、ポリエステルアクリレート化合物、共重合系アクリレート化合物、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルエーテルエポキシ樹脂、ビニルエーテル化合物、オキセタン化合物等が挙げられる。中でも、硬化被膜の耐擦傷性の点から、多官能アクリレート化合物、多官能ウレタンアクリレート化合物、多官能エポキシアクリレート化合物等のラジカル重合系の硬化性化合物や、アルコキシシラン、アルキルアルコキシシラン等の熱重合系の硬化性化合物が好ましく用いられる。これらの硬化性化合物は、電子線、放射線、紫外線等のエネルギー線を照射することにより硬化するものであるか、加熱により硬化するものであるのがよい。これらの硬化性化合物は、それぞれ単独で用いてもよいし、複数の化合物を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
特に好ましい硬化性化合物は、分子中に少なくとも3個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物である。ここで、(メタ)アクリロイルオキシ基とは、アクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基をいい、その他、本明細書において、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸などというときの「(メタ)」も同様の意味である。
【0032】
分子中に少なくとも3個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物としては、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタグリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ−またはテトラ−(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ−、テトラ−、ペンタ−またはヘキサ−(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールテトラ−、ペンタ−、ヘキサ−またはヘプタ−(メタ)アクリレートのような、3価以上の多価アルコールのポリ(メタ)アクリレート;分子中にイソシアナト基を少なくとも2個有する化合物に、水酸基を有する(メタ)アクリレートを、イソシアナト基に対して水酸基が等モル以上となる割合で反応させて得られ、分子中の(メタ)アクリロイルオキシ基の数が3個以上となったウレタン(メタ)アクリレート〔例えば、ジイソシアネートとペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートの反応により、6官能のウレタン(メタ)アクリレートが得られる〕;トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸のトリ(メタ)アクリレートが挙げられる。なお、ここには単量体を例示したが、これら単量体のままで用いてもよいし、例えば2量体、3量体等のオリゴマーの形になったものを用いてもよい。また、単量体とオリゴマーを併用してもよい。これらの(メタ)アクリレート化合物は、それぞれ単独または2種以上を混合して用いられる。
【0033】
分子中に少なくとも3個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物は、市販のものを用いることができ、具体例としては、例えば新中村化学工業(株)の“NKハ−ド M101”(ウレタンアクリレート系)、“NKエステル A−TMM−3L”(ペンタエリスリトールトリアクリレート)、“NKエステル A−TMMT”(ペンタエリスリトールテトラアクリレート)、“NKエステル A−9530”(ジペンタエリスリトールペンタアクリレート)および“NKエステル A−DPH”(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)、日本化薬(株)の“KAYARAD DPCA”(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)、サンノプコ(株)の“ノプコキュア 200”シリーズ、大日本インキ化学工業(株)の“ユニディック”シリーズ等が挙げられる。
【0034】
なお、硬化性化合物として分子中に少なくとも3個の(メタ)アクロイルオキシ基を有する化合物を用いる場合、必要に応じて、他の硬化性化合物、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートのような、分子中に2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物を併用してもよいが、その使用量は、分子中に少なくとも3個の(メタ)アクロイルオキシ基を有する化合物100重量部に対して、通常、20重量部以下が好ましい。
【0035】
硬化性塗料組成物を紫外線で硬化させる場合は、硬化触媒として光重合開始剤を使用するのがよい。前記光重合開始剤としては、例えばベンジル、ベンゾフェノンやその誘導体、チオキサントン類、ベンジルジメチルケタール類、α−ヒドロキシアルキルフェノン類、ヒドロキシケトン類、アミノアルキルフェノン類、アシルホスフィンオキサイド類等が挙げられ、必要に応じてそれらの2種以上を用いることもできる。光重合開始剤の使用量は、硬化性化合物100重量部に対して、通常、0.1〜5重量部である。
【0036】
光重合開始剤は、市販のものを用いることができ、具体例としては、例えばチバ・スペシャリティー・ケミカルズ(株)の“IRGACURE 651”、“IRGACURE 184”、“IRGACURE 500”、“IRGACURE 1000”、“IRGACURE 2959”、“DAROCUR 1173”、“IRGACURE 907”、“IRGACURE 369”、“IRGACURE 1700”、“IRGACURE 1800”、“IRGACURE 819”、“IRGACURE 784”等のIRGACURE(イルガキュア)シリーズおよびDAROCUR(ダロキュア)シリーズ、日本化薬(株)の“KAYACURE ITX”、“KAYACURE DETX−S”、“KAYACURE BP−100”、“KAYACUREBMS”、“KAYACURE 2−EAQ” 等のKAYACURE(カヤキュア)シリーズ等が挙げられる。
【0037】
硬化性塗料組成物に導電性粒子を含有させることにより、硬化被膜に帯電防止性を付与することができる。前記導電性粒子としては、例えばアンチモン−スズ複合酸化物、リンを含有する酸化錫、酸化アンチモン、アンチモン−亜鉛複合酸化物、酸化チタン、インジウム−錫複合酸化物(ITO)のような無機粒子が好ましく用いられる。
【0038】
導電性粒子の粒子径は、通常、0.5μm以下であり、硬化被膜の帯電防止性や透明性の点からは、平均粒子径で表して、好ましくは0.001μm以上であり、また好ましくは0.1μm以下、より好ましくは0.05μm以下である。導電性粒子の平均粒子径が小さい程、耐擦傷性樹脂板のヘイズを低くすることができ、透明性を高めることができる。
【0039】
導電性粒子の使用量は、硬化性化合物100重量部に対して、通常、2〜50重量部、好ましくは3〜20重量部である。導電性粒子の使用量が多い程、硬化被膜の帯電防止性が向上する傾向にあるが、導電性粒子の使用量があまり多いと、硬化被膜の透明性が低下して好ましくない。また、導電性粒子の使用量があまり少ないと、導電性粒子を添加することによる効果が得られ難くなる。
【0040】
導電性粒子は、例えば気相分解法、プラズマ蒸発法、アルコキシド分解法、共沈法、水熱法等により製造することができる。また、導電性粒子の表面は、例えばノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、シリコン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等で表面処理されていてもよい。
【0041】
硬化性塗料には、その粘度調整等を目的として、溶媒を含有させるのがよく、特に導電性粒子が含まれる場合には、その分散のために溶媒を含有させるのがよい。導電性粒子および溶媒を含有する硬化性塗料を調製する場合には、例えば導電性粒子および溶媒を混合して、溶媒に導電性粒子を分散させた後、この分散液を硬化性化合物と混合してもよいし、硬化性化合物と溶媒を混合した後、この混合液に導電性粒子を分散させてもよい。
【0042】
前記溶媒は、硬化性化合物を溶解することができ、かつ塗布後に容易に揮発し得るものであるのがよく、また塗料成分として導電性粒子を用いる場合は、それを分散させることができるものであるのがよい。このような溶媒の例としては、ジアセトンアルコール、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノールのようなアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジアセトンアルコールのようなケトン類、トルエン、キシレンのような芳香族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸ブチルのようなエステル類、水等が挙げられる。溶媒の使用量は、硬化性化合物の性状等に合わせて、適宜調整すればよい。
【0043】
硬化性塗料組成物にレベリング剤を含有させる場合には、シリコーンオイルが好ましく用いられ、その例としては、ジメチルシリコーンオイル、フェニルメチルシリコーンオイル、アルキル・アラルキル変性シリコーンオイル、フルオロシリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、脂肪酸エステル変性シリコーンオイル、メチル水素シリコーンオイル、シラノール基含有シリコーンオイル、アルコキシ基含有シリコーンオイル、フェノール基含有シリコーンオイル、メタクリル変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、カルボン酸変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル等が挙げられる。これらのレベリング剤は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種類以上混合して用いることもできる。レベリング剤の使用量は、硬化性化合物100重量部に対して、通常、0.01〜5重量部である。
【0044】
レベリング剤は、市販のものを用いることができ、具体例としては、例えば東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)の“SH200−100cs”、“SH28PA”、“SH29PA”、“SH30PA”、“ST83PA”、“ST80PA”、“ST97PA”および“ST86PA”、ビック・ケミー・ジャパン(株)の“BYK−302”、“BYK−307”、“BYK−320”および“BYK−330”等が挙げられる。
【0045】
こうして得られる硬化性塗料組成物を、少なくとも片面のアクリル樹脂層表面に塗布して、硬化性塗膜とし、次いで硬化させて、硬化被膜とすることにより、本発明の耐擦傷性樹脂板が得られる。
【0046】
硬化性塗料組成物の塗布は、例えばバーコート法、マイクログラビアコート法、ロールコート法、フローコート法、ディップコート法、スピンコート法、ダイコート法、スプレーコート法等のコート法により行えばよい。硬化性塗膜の硬化は、硬化性塗料組成物の種類に応じて、エネルギー線の照射や加熱により行えばよい。
【0047】
エネルギー線の照射により硬化させる場合、エネルギー線としては、例えば紫外線、電子線、放射線等が挙げられ、その強度や照射時間等の条件は、硬化性塗料組成物の種類に応じて適宜選択される。また、加熱により硬化させる場合、その温度や時間等の条件は、硬化性塗料組成物の種類に応じて適宜選択されるが、加熱温度は、樹脂基板が変形を起こさないよう、一般的には100℃以下であるのが好ましい。硬化性塗料組成物が溶媒を含有する場合は、塗布後、溶媒を揮発させた後に硬化性塗膜を硬化させてもよいし、溶媒の揮発と硬化性塗膜の硬化とを同時に行ってもよい。
【0048】
硬化被膜の厚みは、好ましくは0.5〜50μmであり、より好ましくは1〜20μmである。硬化被膜の厚みが小さい程、亀裂が生じ難くなる傾向にあるが、あまり小さいと、耐擦傷性が不十分になり好ましくない。また、あまり大きいと、高温高湿下に曝したときに、亀裂が発生し易くなる。
【0049】
得られた耐擦傷性樹脂板には、必要に応じて、その表面に、コート法やスパッタ法、真空蒸着法等により反射防止処理を施してもよい。また、別途作製した反射防止性のシートを耐擦傷性樹脂板の片面または両面に貼合して、反射防止効果を付与してもよい。
【0050】
かくして得られる本発明の耐擦傷性樹脂板は、表面硬度および耐衝撃性に優れ、かつ押圧しても割れ難く、長期にわたり優れた耐候性を示すため、各種用途に用いることができるが、中でもディスプレイ保護板として好適に用いられる。保護されるディスプレイの種類としては、例えばCRTディスプレイ、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、ELディスプレイ等が挙げられる。また、保護されるディスプレイの用途としては、例えばテレビやコンピューターのモニター、携帯電話やPHS、PDA等の携帯型情報端末の表示窓、デジタルカメラやハンディ型ビデオカメラのファインダー部、携帯型ゲーム機の表示窓等が挙げられる。
【0051】
本発明の耐擦傷性樹脂板は、特に液晶ディスプレイやELディスプレイ等による携帯型情報端末の表示窓保護板として好適に用いられ、とりわけ、携帯電話、特に表示窓を含む表示部が、不使用時には折りたたまれて操作ボタン部を覆う構造となった携帯電話の表示窓保護板として、有利な効果を発揮する。
【0052】
本発明の耐擦傷性樹脂板から、ディスプレイ保護板を作製するには、まず必要に応じ、印刷、穴あけ等の加工を行い、必要な大きさに切断処理すればよい。しかるのちに、ディスプレイにセットすれば、ディスプレイを効果的に保護することができる。その際、樹脂基板の片面のみに硬化被膜が形成されてなる耐擦傷性樹脂板であれば、硬化被膜が形成された側が表側(視認者側)、硬化被膜が形成されていない側が裏側(ディスプレイ側)になるようにセットするのがよい。また、ポリカーボネート樹脂層の片面のみにアクリル樹脂層が形成されてなる樹脂基板の両面に硬化被膜が形成されてなる耐擦傷性樹脂板であれば、アクリル樹脂層側が表側、ポリカーボネート樹脂層側が裏側になるようにセットするのがよい。
【0053】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、以下の実施例中、含有量ないし使用量を表す%および部は、特記ないかぎり重量基準である。
【0054】
[実施例1〜5および比較例1,2]
<耐擦傷性樹脂板の作製>
(樹脂基板の作製)
樹脂基板の作製に使用した材料は、次の通りである。
・ポリカーボネート樹脂:住友ダウ(株)製の「カリバー301」。
・メタクリル樹脂:メタクリル酸メチル97.8%とアクリル酸メチル2.2%とからなる単量体のバルク重合により得られた熱可塑性重合体(ガラス転移温度104℃)のペレットを用いた。なお、このガラス転移温度は、JIS K7121:1987に従い、示差走査熱量測定により加熱速度10℃/分で求めた補外ガラス転移開始温度である。
・紫外線吸収剤(A):ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤である住友化学(株)製の「スミソーブ340」。
・紫外線吸収剤(B):ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤である(株)ADEKA製の「LA31」。
【0055】
まず、ポリカーボネート樹脂に紫外線吸収剤(A)、およびメタクリル樹脂に紫外線吸収剤(B)を、それぞれ表1に示す割合で添加し、スーパーミキサーで混合した。次いで、それぞれを押出機で溶融混錬し、両者をフィードブロックを介して積層し、設定温度265℃のT型ダイスを介して押し出した。得られるフィルム状物を、一対の表面が平滑な金属製のロールの間に挟み込んで成形・冷却して、厚さ430μmのポリカーボネート樹脂層の片面に、厚さ70μmのメタクリル樹脂層が積層されてなる、総厚さ500μmの2層構成からなる樹脂基板を作製した。
【0056】
(硬化性塗料の調製)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート〔新中村化学工業(株)製の「NKエステル A−DPH」〕28部、光重合開始剤〔チバ・スペシャリティー・ケミカルズ(株)製の「IRGACURE 184」〕1部、5酸化アンチモン微粒子ゾル〔日揮触媒化成(株)製の「ELCOM−7514」;固形分濃度20%〕8部、1−メトキシ−2−プロパノール32部、イソブチルアルコール32部、およびシリコーンオイル〔東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製の「SH28PA」〕0.045部を混合して硬化性塗料を調製した。
【0057】
(耐擦傷性樹脂板の作製)
前記で得られた樹脂基板を100mm×60mmの大きさに切断し、ディッピング法にて両面に硬化性塗料の塗膜を形成した。次いで、室温で1分間乾燥し、さらに45℃の熱風オーブン内で3分間乾燥して溶媒を揮発させた後、この塗膜に、120Wの高圧水銀ランプを用いて、0.5J/cm2の紫外線を照射して硬化させ、厚さ3μmの硬化被膜がメタクリル樹脂層表面およびポリカーボネート樹脂層表面にそれぞれ形成された耐擦傷性樹脂板を得た。なお、得られた耐擦傷性樹脂板の硬化被膜の厚さは、膜厚測定装置〔Filmetrics社製の「F−20」〕を用いて測定した。この耐擦傷性樹脂板について、以下の評価を行い、その結果を表1に示した。
【0058】
<評価>
(耐候性)
得られた耐擦傷性樹脂板の耐候性は、サンシャインウエザーオーメータ(条件:雨、雰囲気温度:63℃)にて評価し、初期の黄色度(YI0)と400時間後の黄色度(YI400)との差:ΔYIを、式:(YI400)−(YI0)から算出した。このΔYIの値が小さいほど、耐候性に優れることを示している。前記黄変度は、島津製作所(株)の分光光度計「UV−3100PC」を用いて測定した。
【0059】
(鉛筆硬度)
得られた耐擦傷性樹脂板におけるメタクリル樹脂層側の硬化被膜表面の鉛筆硬度をJIS K 5600に準拠して測定した。
【0060】
【表1】

【0061】
表1から明らかなように、ポリカーボネート樹脂層およびメタクリル樹脂層がいずれも紫外線吸収剤を含有し、メタクリル樹脂層1m2あたりの紫外線吸収剤量が0.005〜1g/m2、かつ樹脂基板1m2あたりの紫外線吸収剤量が0.5〜2g/m2である実施例1〜5は、比較例2よりも耐候性に優れ、比較例1よりも鉛筆硬度が高いのがわかる。
【0062】
一方、メタクリル樹脂層1m2あたりの紫外線吸収剤量が1g/m2より多い比較例1では、鉛筆硬度に劣る結果を示した。また、ポリカーボネート樹脂層が紫外線吸収剤を含有しておらず、樹脂基板1m2あたりの紫外線吸収剤量が0.5g/m2より少ない比較例2では、耐候性に劣る結果を示した。
【0063】
なお、実施例1〜5および比較例1,2の各耐擦傷性樹脂板におけるメタクリル樹脂層側の硬化被膜表面を、スチールウール#0000〔日本スチールウール(株)製〕を用いて、500g/cm2の荷重を掛けて20往復し、傷付の有無を目視観察した。その結果、いずれの耐擦傷性樹脂板においても傷が付かず、耐擦傷性に優れる結果を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂基板と、その表面に形成された硬化被膜とからなり、
前記樹脂基板は、ポリカーボネート樹脂層の少なくとも片面にアクリル樹脂層が積層されてなり、
前記ポリカーボネート樹脂層およびアクリル樹脂層は、いずれも紫外線吸収剤を含有すると共に、
前記アクリル樹脂層1m2あたりの紫外線吸収剤量が0.005〜1g/m2、かつ前記樹脂基板1m2あたりの紫外線吸収剤量が0.5〜2g/m2であり、
前記硬化被膜は、少なくとも前記アクリル樹脂層表面に形成されていることを特徴とする耐擦傷性樹脂板。
【請求項2】
前記樹脂基板は、ポリカーボネート樹脂層の両面にアクリル樹脂層が積層されてなる請求項1記載の耐擦傷性樹脂板。
【請求項3】
前記硬化被膜が、分子中に少なくとも3個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物を含有する硬化性塗料組成物により形成されたものである請求項1または2記載の耐擦傷性樹脂板。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の耐擦傷性樹脂板からなるディスプレイ用保護板。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の耐擦傷性樹脂板からなる携帯型情報端末の表示窓保護板。

【公開番号】特開2010−221648(P2010−221648A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−74219(P2009−74219)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】