説明

耐水性接着剤組成物

【課題】熱圧条件で十分な耐水接着性を発現する耐水性接着剤組成物を提供する。温度変化による安定した粘度を示すことにより、安定した塗工性又は接着強度を有し、更には接着工程の圧締時における鉄製プレスへの付着のない作業性に優れた耐水性接着剤組成物を提供する。
【解決手段】イソブチレン−無水マレイン酸共重合体のアルカリ中和塩と、ポリアミドエポキシ樹脂と、カルボキシ変性エマルジョン或いはカルボキシ変性ラテックスとを必須成分として含有してなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐水性接着剤組成物に関し、特に、合板等の加熱を主体とした接着に好適な耐水性接着剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、木材用接着剤としては、耐水性や耐熱性等の点から、ホルムアルデヒド系樹脂、即ち尿素−ホルムアルデヒド樹脂、レゾルシノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂等が広く使用されている。しかし、これらのホルムアルデヒド系樹脂を配合した接着剤は、合板の製造過程において、或いは製品化した後、合板の積層板内部の接着剤層から毒性のあるホルマリンを大気中へ放散するため、環境上の問題点があった。また、これらのホルムアルデヒド系樹脂接着剤は、例えば30℃で3時間以上経過すると接着剤のゲル化とともに粘度が上昇し、塗工性又は接着強度の低下を引き起こすことがあるため、実用上の面でも課題を残している。
【0003】
近年、建築基準法の改正により、住宅建築などに使用されている建築材料から大気中へ放散するホルムアルデヒド濃度が厳しく制限されたこともあり、ホルムアルデヒドを含まない接着剤の研究が盛んに行われている。例えば、ホルムアルデヒドを使用せずに耐水性、耐熱性を向上させることができる接着剤として、ポリビニルアルコールを含む水溶液又は水性エマルジョンに、イソシアネート系化合物と、イソシアネート系化合物と反応し得る増粘剤及び/又は充填剤を配合してなる耐水性接着剤が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
また最近では、ポリアミドエポキシ樹脂を含有する木材用接着剤組成物(例えば、特許文献2参照。)といった、各種エポキシ化合物を含有する接着剤組成物が提案されている。
【特許文献1】特公昭51−30576号公報(特許請求の範囲1)
【特許文献2】特開2001−003022号公報(特許請求の範囲の請求項1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載された発明は、高温による粘度変化も少なく、見かけの塗工性も良好であるが、接着工程の圧締時に接着物が鉄製プレスと付着し、接着物の取り出しに支障を来すという問題点がある。また、上記特許文献2に記載された発明は、合板などの熱圧を主体とする木材の接着には好適に用いることができるが、特に、耐水接着性が十分でない。
【0006】
本発明の目的は、特に熱圧において十分な耐水接着性を発現する耐水性接着剤組成物を提供することにある。
【0007】
本発明の別の目的は、温度変化による安定した粘度を示すことにより、安定した塗工性又は接着強度を有し、また接着工程の圧締時における鉄製プレスへの付着のない作業性に優れた耐水性接着剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体のアルカリ中和塩と、ポリアミドエポキシ樹脂と、カルボキシ変性エマルジョン或いはカルボキシ変性ラテックスとを必須成分として含有してなることを特徴とする耐水性接着剤組成物である。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明であって、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体のアルカリ中和塩が、イソブチレンと無水マレイン酸との二元共重合体、イソブチレン/長鎖α−オレフィン/無水マレイン酸共重合体、イソブチレン/長鎖アルキルアクリレート/無水マレイン酸共重合体及びイソブチレン/n−ブチル(メタ)アクリレート/無水マレイン酸共重合体の三元共重合体からなる群より選ばれた少なくとも一種の共重合体であり、かつその共重合体がアルカリ中和剤により中和されてなる耐水性接着剤組成物である。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項1に係る発明であって、ポリアミドエポキシ樹脂が、ジカルボン酸類とポリアルキレンポリアミン類との重縮合物である耐水性接着剤組成物である。
【0011】
請求項4に係る発明は、請求項1に係る発明であって、カルボキシ変性エマルジョンがカルボキシ変性酢酸ビニル−(メタ)アクリル酸エステル系共重合体エマルジョン又はカルボキシ変性エチレン−酢酸ビニル系共重合体エマルジョンである耐水性接着剤組成物である。
【0012】
請求項5に係る発明は、請求項1に係る発明であって、カルボキシ変性ラテックスが20〜99質量%のゲル含有率を有するカルボキシ変性ジエン系共重合体ラテックスである耐水性接着剤組成物である。
【0013】
請求項6に係る発明は、請求項5に係る発明であって、カルボキシ変性ジエン系共重合体ラテックスがカルボキシル変性スチレン−ブタジエン系共重合体ラテックスである耐水性接着剤組成物である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の耐水性接着剤組成物によれば、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体のアルカリ中和塩と、ポリアミドエポキシ樹脂と、カルボキシ変性エマルジョン或いはカルボキシ変性ラテックスとを必須成分として含有することにより、合板などの熱圧を主体とする木材の接着に好適に用いることができ、十分な耐水接着性を発現する。また温度変化による粘度の安定性に優れるため、安定した塗工性及び接着強度が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0016】
本発明の耐水性接着剤組成物は、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体のアルカリ中和塩と、ポリアミドエポキシ樹脂と、カルボキシ変性エマルジョン或いはカルボキシ変性ラテックスを含有してなることを特徴とする。上記種類の成分を含有することにより、熱圧条件で十分な耐水接着性を発現させることができる。
【0017】
具体的には、本発明の耐水性接着剤組成物を用いて合板を作製した場合、温度100〜150℃、圧力0.5〜1.5MPaの圧締条件において、10〜60分程度の圧締で実用に耐え得る合板を作製することができる。また粘度安定性においては、40℃付近の高温環境下でも安定した粘度を保持できるため、安定した塗工性又は接着強度を有する。また接着工程の圧締時における鉄製プレスへの付着も生じないため、作業性に優れる。本発明の耐水性接着剤組成物が、100〜150℃の熱圧において十分な耐水接着性を発現する技術的な理由は、必ずしも明らかではないが、恐らく硬化反応に対してイソブチレン−無水マレイン酸共重合体のアルカリ中和塩とポリアミドエポキシ樹脂との間で何らかの特異な相乗作用が生起していると推察される。
【0018】
本発明の耐水性接着剤組成物を構成するイソブチレン−無水マレイン酸共重合体のアルカリ中和塩とは、主鎖にα−オレフィン基を有する単量体に基づく単位と無水マレイン酸を有する単量体に基づく単位との共重合体の中和塩である。例えば、イソブチレンと無水マレイン酸との二元共重合体、イソブチレン/長鎖α−オレフィン/無水マレイン酸共重合体,イソブチレン/長鎖アルキルアクリレート/無水マレイン酸共重合体,イソブチレン/n−ブチル(メタ)アクリレート/無水マレイン酸共重合体などの三元共重合体が挙げられ、これらはいずれも水酸化ナトリウムやアンモニアなどのアルカリ中和剤により水溶液化して用いられる。これらのイソブチレンと無水マレイン酸との共重合体のアルカリ中和塩は、一種類で使用してもよいし、二種類以上を混合して使用してもよい。
【0019】
なお、接着剤組成物を構成する成分として、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体の誘導体の塩である、酸イミド構造を有する誘導体の塩が知られているが、例えば、イソブチレン−無水マレイン酸−マレイン酸イミド共重合体の塩を本発明の耐水性接着剤組成物を構成するイソブチレン−無水マレイン酸共重合体のアルカリ中和塩の代わりに使用した場合、本発明の耐水性接着剤組成物における他の構成成分との混合の際に、配合物が顕著にゲル化してしまうため、塗工性に劣り実用的ではない。その理由としては、分子内に結合している酸イミド基と、他の構成成分であるポリアミドエポキシ樹脂のアミド基とが反応又は相互作用することにより、配合物が顕著にゲル化してしまうものと考えられる。従って、本発明では、耐水性接着剤組成物を構成する他の構成成分との相性が悪い、酸イミド構造を有するイソブチレン−無水マレイン酸共重合体の誘導体の塩の使用は適さない。
【0020】
本発明の耐水性接着剤組成物の構成要素の一つであるポリアミドエポキシ樹脂としては、例えば、ポリアミンポリアミド類にエピハロヒドリンを反応して得られる樹脂などが挙げられる。ここで、ポリアミンポリアミド類としては、例えば、ジカルボン酸類とポリアルキレンポリアミン類との重縮合物などが挙げられる。ポリアミンポリアミド類に使用されるジカルボン酸類としては、例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸などのジカルボン酸及びジカルボン酸類のナトリウム、カリウム等の塩などが挙げられる。ジカルボン酸類として、異なる2種類以上のジカルボン酸類を混合して使用しても良い。ジカルボン酸類としては、中でも、炭素数3〜10程度の脂肪族ジカルボン酸が好ましく、とりわけアジピン酸が好適である。
【0021】
ポリアミンポリアミド類に使用されるポリアルキレンポリアミン類としては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、イミノビスプロピルアミン等が挙げられる。ポリアルキレンポリアミン類として、異なる2種類以上のポリアルキレンポリアミン類を混合して使用しても良い。ポリアルキレンポリアミン類としては、中でもジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンが好ましい。
【0022】
ポリアミンポリアミド類を与える重縮合反応において、ポリアルキレンポリアミン類の1級アミノ基(末端アミノ基)1当量に対してジカルボン酸類を通常、0.9〜1.4当量程度、好ましくは0.9〜1.2当量程度、使用する。また、該重縮合反応においてアミノカルボン酸類やジアミン類を併用しても良い。アミノカルボン酸類としては、例えば、グリシン、アラニン、アミノカプロン酸等のアミノカルボン酸及びそのエステル、カプロラクタム等のラクタム類が挙げられる。ジアミン類としては、例えば、エチレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン等が挙げられる。
【0023】
重縮合反応としては、例えば、常圧下又は減圧下にて、約50〜250℃程度の反応温度により、生成する水又はアルコールを系外に除去する方法などが挙げられる。かくして得られるポリアミンポリアミド類の水溶液は次に、エピハロヒドリンの反応に供される。ここで用いるエピハロヒドリンとしては、エピクロルヒドリンやエピブロムヒドリンなどが挙げられるが、中でもエピクロルヒドリンが好適である。ポリアミンポリアミド類とエピハロヒドリンとの反応は、樹脂分濃度約10〜70質量%程度、好ましくは25〜60質量%の水溶液中で行われる。ポリアミンポリアミド類とエピハロヒドリンとの反応において、ポリアミンポリアミド類の2級アミノ基(分子内アミノ基)1当量に対し、通常、約0.85〜2モル程度、好ましくは1〜1.8モル程度のエピハロヒドリンを使用する。また、該反応は、通常、10〜80℃程度で実施される。
【0024】
なお、接着剤組成物を構成するエポキシ成分として、第3級アミノ窒素原子をもつ4官能性エポキシ化合物が知られている。しかし第3級アミノ窒素原子をもつ4官能性エポキシ化合物は、危険物(第2石油類)に属するため取扱いに難があり、更に、本発明の耐水性接着剤組成物を構成するポリアミドエポキシ樹脂に比べて高価であるため、汎用性に欠ける。
【0025】
イソブチレン−無水マレイン酸共重合体のアルカリ中和塩の水溶液とポリアミドエポキシ樹脂との質量比は、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体のアルカリ中和塩(固形分)100質量部に対して、ポリアミドエポキシ樹脂(固形分)が、通常、0.5〜50質量部であり、好ましくは1〜30質量部である。ポリアミドエポキシ樹脂の割合が0.5質量部未満であると、耐水接着性の発現が見られない。また、50質量部を越えた添加は、耐水性接着剤組成物の固形分濃度が大幅に低下するため、粘度が低くなり塗工不可となるので好ましくない。
【0026】
本発明の耐水性接着剤組成物を構成するカルボキシ変性エマルジョン或いはカルボキシ変性ラテックスとは、公知の重合体とカルボキシル基を有する不飽和単量体との共重合体の分散液である。
【0027】
公知の重合体としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、エチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、臭化ビニリデン、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、スチレン、スチレン誘導体、ブタジエン、アクリロニトリル、クロロプレン、1,3−ヘキサジエン、イソプレン、イソブテン、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルからなる群より選ばれた1種又は2種以上の不飽和単量体からなる重合体が挙げられる。
【0028】
またカルボキシル基を有する不飽和単量体としては、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、マレイン酸ジエステル、イタコン酸、イタコン酸モノエステル、フマル酸、フマル酸モノエステル、シトラコン酸、シトラコン酸モノエステル、メサコン酸、メサコン酸モノエステル等のエチレン性不飽和ジカルボン酸又はそのエステル、及びクロトン酸、アクリル酸、メタクリル酸等のモノカルボン酸等から選ばれた1種又は2種以上の不飽和単量体が挙げられる。
【0029】
本発明の耐水性接着剤組成物が、これらのカルボキシ変性エマルジョン或いはカルボキシ変性ラテックスを含むことで、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体のアルカリ中和塩とポリアミドエポキシ樹脂との間で生起する硬化反応が促進され、その結果、耐水接着性が一層向上するものと推察される。
【0030】
上記カルボキシ変性エマルジョン或いはカルボキシ変性ラテックスのうち、カルボキシ変性エマルジョンを使用する場合は、最も汎用性の点でコスト的にも有利な、カルボキシ変性酢酸ビニル−(メタ)アクリル酸エステル系共重合体エマルジョン又はカルボキシ変性エチレン−酢酸ビニル系共重合体エマルジョンが好ましい。
【0031】
また上記カルボキシ変性エマルジョン或いはカルボキシ変性ラテックスの内、カルボキシ変性ラテックスを使用する場合は、20〜99質量%のゲル含有率を有するカルボキシ変性ジエン系共重合体ラテックスが好ましい。カルボキシ変性ラテックスとして、カルボキシ変性ジエン系共重合体ラテックスが好ましいのは、高い接着強度が得られる理由からである。またカルボキシ変性ジエン系共重合体ラテックスのゲル含有率が上記範囲のものが好ましい理由は、ゲル含有率が下限値未満であると、耐水性接着剤組成物の耐水接着性が低下する不具合が生じ易く、上限値を越えるとカルボキシ変性ジエン系共重合体ラテックスの常温成膜能の極端な低下による接着強度不足が生じ易いからである。このうち、ゲル含有率は30〜85質量%が特に好ましい。上記カルボキシ変性ジエン系共重合体ラテックスとしては、最も汎用性があるためコスト的に有利なカルボキシル変性スチレン−ブタジエン系共重合体ラテックスが特に好ましい。
【0032】
カルボキシ変性エマルジョン或いはカルボキシ変性ラテックスのカルボキシル基変性量は、好ましくは0.5〜10質量%である。カルボキシル基変性量が上限値を越えると、耐水性接着剤組成物が増粘するため好ましくなく、下限値未満であると、充分な耐水接着性を得ることが難しいため好ましくない。このうち、カルボキシル基変性量は、1.0〜8質量%が特に好ましい。
【0033】
イソブチレン−無水マレイン酸共重合体のアルカリ中和塩の水溶液とカルボキシ変性エマルジョン或いはカルボキシ変性ラテックスとの質量比は、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体のアルカリ中和塩(固形分)100質量部に対して、カルボキシ変性エマルジョン或いはカルボキシ変性ラテックス(固形分)が、通常、40〜200質量部であり、好ましくは50〜150質量部である。カルボキシ変性エマルジョン或いはカルボキシ変性ラテックスの割合が40質量部未満であると、耐水性の低下を生じる。また、200質量部を越えた添加は、耐水性接着剤組成物粘度が著しく低く塗工性に問題を生じる。
【0034】
本発明の耐水性接着剤組成物は、上記構成成分の他、必要に応じて充填剤、分散剤、小麦粉、コーンスターチ等の有機増量剤、増粘剤、乳化剤、湿潤消泡剤等を単独で、或いは2種以上組み合わせて適宜添加することができる。充填剤としては、例えば、重質炭酸カルシウム、タルク等が挙げられる。
【実施例】
【0035】
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。
【0036】
<実施例1>
イソブチレン−無水マレイン酸二元共重合体のアンモニア中和塩を25質量%を含有する水溶液100質量部に対して、ポリアミドエポキシ樹脂(住友化学工業社製 商品名スミレーズレジン675A、25質量%)10質量部(イソブチレン−無水マレイン酸二元共重合体のアンモニア中和塩固形分100質量部当たりポリアミドエポキシ樹脂固形分10質量部)及びカルボキシ変性酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体エマルジョン(高圧ガス工業社製、固形分濃度55質量%)40質量部を添加して接着剤組成物を調製した。
【0037】
続いて、厚さ4.0mmの広葉樹合板と厚さ1.3mmの南洋材単板を用意し、この合板の片面に、上記調製した接着剤組成物を250g/m2の塗布量で塗布した。これらの合板、単板を重ね合わせ、温度20℃、圧力1.2MPaの冷圧条件で20分間圧締し、続いて、温度120℃、圧力0.79MPa(8kg/cm2)の条件で加熱接着した後、一辺が75mmの正方形状の試験片を4片ずつ作製した。
【0038】
<実施例2>
実施例1で使用したカルボキシ変性酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体エマルジョン40質量部に代えて、カルボキシ変性スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(旭化成ケミカルズ社製:DL−620、固形分濃度50質量%、ゲル含有率87質量%)40質量部を用いた以外は実施例1と同様にして接着剤組成物を調製した。更に、この調製した組成物を用いて実施例1と同様にして試験片を作製した。
【0039】
<比較例1>
カルボキシル基変性ポリビニルアルコール(重合度1,700、ケン化度98モル%、マレイン酸2モル%ランダム共重合変性PVA)の15質量%水溶液100質量部にポリアミドエポキシ樹脂(住友化学工業社製:商品名スミレーズレジン675A、25質量%)10質量部(カルボキシル基変性ポリビニルアルコール固形分100質量部当たりポリアミドエポキシ樹脂固形分17質量部)を添加して接着剤組成物を調製した。更に、この調製した組成物を用いて実施例1と同様にして試験片を作製した。
【0040】
<比較例2>
実施例1で使用したイソブチレン−無水マレイン酸二元共重合体のアンモニウム中和塩100質量部に代えて、イソブチレン−無水マレイン酸−マレインイミド三元共重合体(モル比1:0.5:0.5)100質量部を用いた以外は実施例1と同様にして接着剤組成物の調製を試みたところ、配合物が顕著にゲル化したため、塗工が出来ずこれ以降の実用評価を断念した。
【0041】
<比較試験及び評価>
実施例1〜2及び比較例1で作製した各試験片について、JAS普通合板規格に規定するII類浸漬剥離試験により、それぞれ接着性能を調べた。この試験では、試験片を70℃の温水中に2時間浸漬した後、60±3℃の温度で20時間乾燥した試験片の剥離状態を判定する。その結果を以下の表1に示す。
【0042】
なお、表1中において、『C変性酢ビ−アクリルエマルジョン』とは、カルボキシ変性酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合エマルジョンを示し、『PAE』とは、ポリアミドエポキシ樹脂を示し、『C変性SBラテックス』とは、カルボキシ変性スチレン−ブタジエン共重合体ラテックスを示し、『C変性PVA』とは、カルボキシ変性ポリビニルアルコールを示す。
【0043】
【表1】

表1から明らかなように、実施例1〜2と比較例1とを比較すると、実施例1及び2で作製した各試験片は、いずれも試験片の同一接着層の剥離する部分が全くなく優れた接着性を示しJAS基準合格の判定結果が得られた。これに対し、比較例1で作製した試験片では、試験片の同一接着層が全て剥離していてJAS基準不合格の判定結果となった。このことから、本発明の耐水性接着剤組成物は、実用に耐え得る効果的な組成物であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の耐水性接着剤組成物は、熱圧条件で十分な耐水接着性を発現し、また温度変化による安定した粘度を示すことにより、安定した塗工性又は接着強度を有するため、合板等の熱圧を主体とする木材の接着剤として利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソブチレン−無水マレイン酸共重合体のアルカリ中和塩と、ポリアミドエポキシ樹脂と、カルボキシ変性エマルジョン或いはカルボキシ変性ラテックスとを必須成分として含有してなる
ことを特徴とする耐水性接着剤組成物。
【請求項2】
イソブチレン−無水マレイン酸共重合体のアルカリ中和塩が、イソブチレンと無水マレイン酸との二元共重合体、イソブチレン/長鎖α−オレフィン/無水マレイン酸共重合体、イソブチレン/長鎖アルキルアクリレート/無水マレイン酸共重合体及びイソブチレン/n−ブチル(メタ)アクリレート/無水マレイン酸共重合体の三元共重合体からなる群より選ばれた少なくとも一種の共重合体であり、かつ前記共重合体がアルカリ中和剤により中和されてなる請求項1記載の耐水性接着剤組成物。
【請求項3】
ポリアミドエポキシ樹脂が、ジカルボン酸類とポリアルキレンポリアミン類との重縮合物である請求項1記載の耐水性接着剤組成物。
【請求項4】
カルボキシ変性エマルジョンがカルボキシ変性酢酸ビニル−(メタ)アクリル酸エステル系共重合体エマルジョン又はカルボキシ変性エチレン−酢酸ビニル系共重合体エマルジョンである請求項1記載の耐水性接着剤組成物。
【請求項5】
カルボキシ変性ラテックスが20〜99質量%のゲル含有率を有するカルボキシ変性ジエン系共重合体ラテックスである請求項1記載の耐水性接着剤組成物。
【請求項6】
カルボキシ変性ジエン系共重合体ラテックスがカルボキシル変性スチレン−ブタジエン系共重合体ラテックスである請求項5記載の耐水性接着剤組成物。

【公開番号】特開2009−215473(P2009−215473A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−61934(P2008−61934)
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【出願人】(390001339)光洋産業株式会社 (46)
【Fターム(参考)】