説明

耐溶出性着色光沢ガラスフレーク顔料とそれを配合した化粧料

【課題】パール感を損なうことなく、化粧料や人体無害性を要求される塗装分野で有用な着色料となる耐溶出性着色光沢ガラスフレーク顔料とその顔料を配合した化粧料を提供する。
【解決手段】色素アニオンを結晶構造層間に含有するハイドロタルサイト型層状複水酸化物を光沢ガラスフレーク粒子表面に被覆する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メイクアップ化粧品などの分野で着色料となる耐溶出性着色光沢ガラスフレーク顔料とその顔料を配合した化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、マイカ系真珠光沢顔料において、酸化チタンや酸化ジルコニウムなど高屈折率の無色金属酸化物被覆層による干渉色に選択吸収による着色を重畳させるため、酸化鉄のような無機着色成分を被覆層に添加したり、無機または有機着色料を粒子表面に被覆することによって、ゴールド色や紺青色やカルミン色の着色真珠光沢顔料を得ることが行われている。
【0003】
しかしながら、無機着色成分による着色は色相が限られる上に彩度が低いという問題があり、また有機顔料による着色は人体への有害性と耐溶出性の点から色素が限られるという問題があった。これらの問題を解決するために、色素アニオンを結晶構造層間に含有するハイドロタルサイト型層状複水酸化物をマイカ系真珠光沢顔料粒子表面に被覆するようにした着色真珠光沢フレーク顔料が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
また、色素アニオンを結晶構造層間に含有するハイドロタルサイト型層状複水酸化物をタルク、セリサイト、カリオン等の無機フレーク粒子に被覆処理して、新規な着色フレーク顔料を得るようにした技術も開発されている(特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2003−213156号公報
【特許文献2】特開2001−234090号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、光沢ガラスフレーク顔料においても、酸化チタンなど高屈折率の無色金属酸化物被覆層を設けることによって干渉色に選択吸収によるパール感のある着色をなすことが行われている。しかしながら、この場合にも、前述のマイカ系真珠光沢顔料と同様、彩度が低く、有機色素や有機顔料による着色には色素が限られるという問題点がある。
【0007】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、パール感を損なうことなく、化粧料や人体無害性を要求される塗装分野で有用な着色料となる耐溶出性着色光沢ガラスフレーク顔料とその顔料を配合した化粧料を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明による耐溶出性着色光沢ガラスフレーク顔料は、
色素アニオンを結晶構造層間に含有するハイドロタルサイト型層状複水酸化物を光沢ガラスフレーク粒子表面に被覆したことを特徴とするものである。
【0009】
本発明において、前記光沢ガラスフレークは、金属または金属酸化物で被覆されたパール感のある光沢ガラスフレークであるのが好ましい。
【0010】
また、前記ハイドロタルサイト型層状複水酸化物は、マグネシウム、カルシウム、亜鉛の二価金属から選ばれる少なくとも1種とアルミニウムとの複水酸化物であるのが好ましい。
【0011】
さらに、前記色素アニオンは、食品衛生法または薬事法で規定された食品、医薬品、医薬部外品および化粧品用タール色素の中から選ばれるアニオン性色素であるのが好ましい。
【0012】
また、本発明による化粧料は、前記耐溶出性着色光沢ガラスフレーク顔料を配合したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、食品衛生法または薬事法で規定された食品、医薬品、医薬部外品および化粧品用タール色素による鮮明な着色を付加することにより新規な耐溶出性着色光沢ガラスフレーク顔料を提供することができる。この耐溶出性着色光沢ガラスフレーク顔料は、パール感を損なうことなく視覚効果に優れているとともに、高い人体無害性が要求されるメイクアップ化粧料などの分野で有用な着色料となる。また、無害性を要求される塗装分野においても有用な着色料となる可能性をもたらす。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、本発明による耐溶出性着色光沢ガラスフレーク顔料とそれを配合した化粧料の具体的な実施の形態について説明する。
【0015】
本実施形態において、色素アニオンを結晶構造層間に含有するハイドロタルサイト型着色組成物とは、マグネシウム、カルシウム、亜鉛等の二価金属イオン(M)とアルミニウム等の三価金属イオン(M')と色素アニオン(An−)から形成される[M1−xM'(OH)](An−x/n・mHO(0.10<x<0.75)構造をもった着色組成物である。
【0016】
本実施形態においては、二価および三価金属塩と、光沢ガラスフレーク粒子と、食品衛生法または薬事法で規定された食品、医薬品、医薬部外品および化粧品用タール色素の中から選ばれる色素混合水溶液もしくは懸濁液を塩基により中和することにより、光沢ガラスフレーク粒子上に色素アニオンを結晶構造層間に含有するハイドロタルサイト型層状複水酸化物処理された耐溶出性着色光沢ガラスフレーク顔料を得ることができる。
【0017】
二価の金属塩としては、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化亜鉛、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸亜鉛、硝酸マグネシウム、硝酸カルシウム、硝酸亜鉛等が用いられる。また、三価の金属塩としては、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム等が用いられる。中和に用いられる塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、尿素等が用いられる。色素としては、黄色4号(Tartrazine)、黄色5号(Sunset Yellow FCF)、青色1号(Brilliant Blue FCF)、赤色3号(Erythrosine)、赤色104号(Floxine B)、赤色201号(Lithol Rubin B)等が挙げられ、食品衛生法または薬事法で規定された食品、医薬品、医薬部外品および化粧品用タール色素の中から選ばれる。光沢ガラスフレークとしては、ガラスフレーク顔料、金属または金属酸化物で被覆されたパール感のある光沢ガラスフレーク顔料が用いられる。被覆される金属としては、金、銀およびニッケル等があり、金属酸化物としては、酸化チタン等があり、被覆の厚みにより光沢発色の色を調整している。一般には日本板硝子(株)よりメタシャインという商品名で市販されている。
【実施例】
【0018】
次に、本発明の具体的態様を示すために、代表的な実施例および配合実施例を挙げる。なお、これらの実施例は本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0019】
(実施例1)
撹拌装置を備えたステンレス反応容器内の水9000mlに青色1号6gとメタシャインMC1080RR(反応色:赤色)300gを入れて十分に分散させ、塩化アルミニウム六水和物36gと塩化亜鉛30gを投入して溶解させた。次いで、反応系を80℃まで加温しその温度に保ちながら徐々に2%水酸化ナトリウム水溶液を滴下して中和した。中和終了後さらに熟成のため反応系を90℃まで加温して1時間撹拌した。次に、水でデカンテーションを上澄み液がほとんど無色になるまで繰り返しろ過した。この後、残留粉体を再度水に分散させ、その分散液をスプレードライすることにより乾燥させ、青色1号を結晶構造層間に含有するハイドロタルサイト型層状複水酸化物を被覆したパール感のある耐溶出性着色光沢ガラスフレーク顔料を得た。
【0020】
(実施例2)
青色1号3gを用いた以外は実施例1と同様にして、青色1号を結晶構造層間に含有するハイドロタルサイト型層状複水酸化物を被覆した実施例1よりも薄いパール感のある耐溶出性着色光沢ガラスフレーク顔料を得た。
【0021】
(実施例3)
青色1号1gを用いた以外は実施例1と同様にして、青色1号を結晶構造層間に含有するハイドロタルサイト型層状複水酸化物を被覆した実施例2よりも薄いパール感のある耐溶出性着色光沢ガラスフレーク顔料を得た。
【0022】
(実施例4)
青色1号0.5gを用いた以外は実施例1と同様にして、青色1号を結晶構造層間に含有するハイドロタルサイト型層状複水酸化物を被覆した実施例3よりも薄いパール感のある耐溶出性着色光沢ガラスフレーク顔料を得た。
【0023】
(実施例5)
黄色5号6gとメタシャインMC1080RB(反応色:青色)300gを用いて実施例1と同様にして黄色5号を結晶構造層間に含有するハイドロタルサイト型層状複水酸化物を被覆したパール感のある耐溶出性着色光沢ガラスフレーク顔料を得た。
【0024】
(実施例6)
赤色201号6gとメタシャインMC1080RG(反応色:緑色)300gを用いて実施例1と同様にして赤色201号を結晶構造層間に含有するハイドロタルサイト型層状複水酸化物を被覆したパール感のある耐溶出性着色光沢ガラスフレーク顔料を得た。
【0025】
(実施例7)
青色1号6gとメタシャインMC1080RY(反応色:黄色)300gを用いて実施例1と同様にして青色1号を結晶構造層間に含有するハイドロタルサイト型層状複水酸化物を被覆したパール感のある耐溶出性着色光沢ガラスフレーク顔料を得た。
【0026】
(配合実施例1)
次の処方により彩度のある光沢ネイルエナメルを調製した。
<配合比>
ニトロセルロース 10部
アルキッド樹脂 10部
クエン酸アセチルトリブチル 5部
酢酸エチル 25部
酢酸ブチル 45部
エチルアルコール 5部
本発明顔料(実施例6) 適量
<製法>
アルキッド樹脂の一部とクエン酸アセチルトリブチルの一部をとり、本発明の顔料を加えて練り合わせる。残りの成分を別の密閉容器中で混合溶解させ、これに顔料混練物を加えて均一に撹拌分散させる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
色素アニオンを結晶構造層間に含有するハイドロタルサイト型層状複水酸化物を光沢ガラスフレーク粒子表面に被覆したことを特徴とする耐溶出性着色光沢ガラスフレーク顔料。
【請求項2】
前記光沢ガラスフレークは、金属または金属酸化物で被覆されたパール感のある光沢ガラスフレークである請求項1に記載の耐溶出性着色光沢ガラスフレーク顔料。
【請求項3】
前記ハイドロタルサイト型層状複水酸化物は、マグネシウム、カルシウム、亜鉛の二価金属から選ばれる少なくとも1種とアルミニウムとの複水酸化物である請求項1または2に記載の耐溶出性着色光沢ガラスフレーク顔料。
【請求項4】
前記色素アニオンは、食品衛生法または薬事法で規定された食品、医薬品、医薬部外品および化粧品用タール色素の中から選ばれるアニオン性色素である請求項1〜3のいずれかに記載の耐溶出性着色光沢ガラスフレーク顔料。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の耐溶出性着色光沢ガラスフレーク顔料を配合したことを特徴とする化粧料。

【公開番号】特開2006−257176(P2006−257176A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−74241(P2005−74241)
【出願日】平成17年3月16日(2005.3.16)
【出願人】(391015373)大東化成工業株式会社 (97)
【Fターム(参考)】