説明

耐火時間が長い消音断熱材料

【課題】耐火時間が長い消音断熱材料を提供する。
【解決手段】本発明は、難燃性、消音断熱材料、それらを製造するための方法、さらにはそれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性、消音断熱材料またはフォーム組合せ物、それらを製造するための方法、さらにはそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
合成ポリマーをベースとするフォームは、断熱材料として、広く各種の用途を有している。それらの例としては、ポリウレタン、ポリイソシアヌレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、およびポリプロピレンから構成されるフォームが挙げられる。フォームベースの断熱材料は、硬質フォームと呼ばれている、硬質で寸法的に安定したフォームの形態で製造するのが好ましい。そのようにして得られた機械的な安定性は、エンジニアリング用途では有利なものである。それらのフォームのさらなる利点は、密度が低く、熱伝導率が低く、加工性が良好で、低価格であることである。鉱物質ベースの断熱材料と比較して不利な点は、それらが固有の燃焼性を有していることである。そのために、フォームの燃焼性を抑制するために使用することが可能な多くの公知の方法が存在している。フォームおよびそれらの製造方法についての概説の一例は、(非特許文献1)に見出される。
【0003】
フォームは音を吸収することが可能であるために、消音のために使用される。軟質フォームと呼ばれている、可撓性があり、高度に充填された、弾性フォームが特に良好な消音性を与えることは公知である。それとは対称的に、硬質フォームは、消音に極めて適しているとは言えない。
【0004】
断熱性と吸音性を同時に必要とする、多くの公知のフォーム用途が存在する。例を挙げれば、自動車のエンジンルームで発生する騒音の量を抑制すると同時に、エンジンから放散される熱による車内の調節不能な加熱を避けることが可能な材料に対する必要性が存在している。さらに、冷蔵庫の設計においても、その目的の第一は、コンプレッサーの運転からの騒音を消音することであり、第二には低温を保持することである。建設産業においても、熱の節約に関する最近の要請に応えることと、ビルにおいて良好な音響特性を与え騒音から保護することの両方に等しく有効であるような設計要素が必要とされている。上述の例のいずれにおいても、それらの材料は、関連する防火規制にも適合していなければならない。ここで使用される材料に求められる要求は、特定のレベルの防火性能または特定のレベルの難燃性だけではなく、さらに特定のレベルの耐火時間(fire−resistance time)である。耐火時間とは、火災の際に、材料が、機能を失うことなく、火災の影響、特に発生する熱に耐えることが可能な、時間の長さである。
【0005】
したがって、エンジニアリング材料として使用されるフォームが、消音性と断熱性とを同時に有していなければならないとすると、必然的に、軟質フォームの吸音性と、硬質フォームのエンジニアリング的な利点との間で妥協点を見出さねばならない。そのため、異質の材料の組合せ物が使用されることが多い。
【0006】
(特許文献1)には、難燃性ポリウレタンフォームをベースとした構成成分が記載されていて、それについては、良好な断熱性と良好な遮音性が主張されている。
【0007】
(特許文献2)には、難燃性粉体、難燃性溶液、または難燃性コーティングの表面被覆を有し、音響透過性のフォイルを用いて被覆された、吸音材料が開示されている。
【0008】
(特許文献3)には、その表面上に空洞を有し、難燃剤配合物を用いてコーティングされた、ポリスチレンフォームシートおよびポリウレタンフォームシートが記載されている。断熱性および遮音性についての記載はない。
【0009】
(特許文献4)には、フォーム、障壁層、膨張層、および可撓性の保護層から構成される積層物が開示されているが、それらの意図は、断熱および遮音に好適とすることである。
【0010】
(特許文献5)、(特許文献6)、および(特許文献7)には、断熱材料として、好適な膨張コーティングを有するポリスチレンフォームシートの記載がある。
【0011】
(特許文献8)には、第1の外側スキン、膨張層、フォーム層、および第2の外側スキンから構成される、断熱要素が開示されている。それらの外側スキンは、好ましくは、スチールシートから構成されている。
【0012】
(特許文献9)には、押出法ポリスチレンフォーム層、接着剤層、およびセッコウ−セッコウボードシートから構成される、熱的および音響的遮断複合材料が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0 056 267A1号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第10 2005 049 570B3号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第29 00 157A1号明細書
【特許文献4】米国特許第3,934,066号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第0 107 935A1号明細書
【特許文献6】米国特許第4,168,347号明細書
【特許文献7】米国特許第4,265,963号明細書
【特許文献8】米国特許第4,530,877号明細書
【特許文献9】欧州特許出願公開第0 707 948A1号明細書
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】ハインツ・ウェーバー(Heinz Weber)、イシドール・ド・グレーブ(Isidoor de Grave)、エッカルト・レール(Eckhart Roehrl)『フォームド・プラスチックス(Foamed Plastics)』、ウルマンズ・エンサイクロペディア・オブ・インダストリアル・ケミストリー(Ullman’s Encyclopedia of Industrial Chemistry)、エレクトロニック・リリース(Electronic Release)、第7版、2005年、ワイリー−VCH・フェルラーク・GmbH&Co.KGaA(Wiley−VCH Verlag GmbH & Co.KGaA)、ワインハイム(Weinheim)10.1002/14356007.all_435
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従来技術の断熱材料の欠点は、それらが多くの層から構成される複雑な構造をしていたり、製造法がこみ入っていたりする点である。それらの断熱材料はさらに、現行の防火、特に耐火時間または煙の毒性についての要求基準を満たしていないことが多く、たとえば煙の毒性はハロゲン含有難燃剤によって悪影響がでる可能性がある。最後に、音響特性、特に吸音性も満足できるものではない。
【課題を解決するための手段】
【0016】
したがって、本発明の目的とするところは、消音性、断熱性、特に難燃性を同時に有し、かつ簡単な構造を有しているために製造が容易な、断熱材料を提供することであった。驚くべきことには、公知のフォームに特定の膨張層を備えさせることによって、この目的が達成できることが見出された。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、少なくとも1層の断熱層と1層の膨張層とから構成される断熱材料を提供するが、ここで、
A)その断熱層が、合成フォームから構成され、
B)その膨張層が、リン含有ポリオールをベースとするポリウレタンフォームから構成され、そして
C)その膨張層の厚みが、その断熱材料全体の厚みの2〜98%である。
【0018】
ここで明らかにしておきたいが、以下において一般的な用語で列記されたり、好ましい範囲として記述されたりしている定義およびパラメータのすべてを各種所望により組み合わせたものも、本発明の範囲に包含されるということに留意されたい。
【0019】
合成フォームとしては、ポリウレタン、ポリイソシアヌレート、ポリアルキレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル(PVC)、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、シリコーン、エポキシ樹脂、ポリイミド、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、またはポリスルホンから構成されるフォームが挙げられる。
【0020】
本発明において好適なポリアルキレンは、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、またはポリプロピレンである。
【0021】
本発明において好適なポリスチレンは、発泡ポリスチレン(EPS)、または押出法ポリスチレン(XPS)である。
【0022】
本発明において好適なポリ塩化ビニルは、硬質PVCまたは軟質PVCである。
【0023】
本発明の1つの具体的に好ましい実施態様においては、その合成フォームに、ポリウレタン、ポリイソシアヌレート、発泡ポリスチレン(EPS)、または押出法ポリスチレン(XPS)から構成されるフォームが含まれる。
【0024】
その合成フォームが難燃性フォームであってもよい。その難燃性は、たとえば、その製造時に難燃剤を使用することに基づいてものであってもよい。合成フォームの中に存在させることが可能な難燃剤の例は、この目的に関して公知の、塩素−、臭素−、窒素−、リン−、アンチモン−、アルミニウム−、および/またはマグネシウム−含有物質である。
【0025】
その膨張層は、リン含有ポリオールをベースとするポリウレタンフォームから構成されている。それらを製造するために必要な、それらのポリウレタンフォーム、粗原料、および製造方法は、たとえば欧州特許出願公開第0 116 846A1号明細書、欧州特許出願公開第0 218 080A1号明細書、または欧州特許出願公開第0 400 402A1号明細書などから公知である。
【0026】
リン含有ポリオールは、リン酸、ホスホン酸、亜リン酸、またはホスフィン酸の低分子量またはオリゴマー性エステルであって、1分子あたり少なくとも2個のヒドロキシ基を担持している。
【0027】
本発明の1つの好ましい実施態様においては、そのリン含有ポリオールには一般式(I)の物質が含まれる:
(R−O)P(=O)−CH−N(CHR−CHR−OH) (I)
[式中、
は、適当であるならばヒドロキシ基によって置換された、C〜C−アルキルであり、そして
およびRは、互いに独立して、Hまたはメチルである。]
【0028】
断熱層および膨張層は、互いに独立して、軟質フォームの形態、そうでなければ硬質フォームの形態で形成させることができる。したがって、その断熱材料は各種の用途に適応させることができる。
【0029】
1つの好ましい実施態様においては、その断熱層に硬質フォームを含み、その膨張層に軟質フォームを含む。本発明のまた別な好ましい実施態様においては、その断熱層に硬質フォームを含み、その膨張層にも同様に硬質フォームまたは半硬質フォームを含む。
【0030】
それらの断熱材料には、本発明に本質的なそれら2つの層と共に、さらなる構成成分を含むこともできる。具体的には、上述の2つの層を多重接着させたものであってもよい。たとえば、その断熱材料を、膨張層−断熱層−膨張層複合材料または断熱層−膨張層−断熱層複合材料から構成させることもできる。たとえば、金属、プラスチックス、木材、その他植物ベースの材料から構成された、フォイル、織布、不織布、マットなどを存在させることもまた可能である。鉱物質ベースの材料から構成された層もまた存在させることが可能であり、そのようなものとしてはセメントまたはセッコウプラスターが好ましい。
【0031】
本発明の断熱材料の断熱層と膨張層との間には、その共有接触領域に、しっかりとした耐水性の接着剤を存在させる。本発明の目的においては、断熱材料の全厚みとは、本発明の断熱材料から構成される各種所望の成形物の、実質的に接触領域に対して垂直な方法で測定した、外部寸法と定義される。この断熱材料の全厚みは、用途に応じて、広い範囲で変化させることができる。したがって、その厚みは1mm未満とすることもできるし、あるいは1000mmを超えるようにすることもできる。断熱材料の全厚みが1mm〜1000mmであるのが好ましい。
【0032】
本発明の断熱材料の2つの構成成分がフォームから構成されているので、それらの形状に関しては何の制限もない。それらの断熱材料は、断熱材料要素の形態で、たとえばブロックまたはシートの形態で製造することができる。本発明においては、膨張層は、それがブロックまたはシートの一面かあるいは各種所望の数の側面を被覆するような方法で貼り付けることができる。しかしながら、その断熱材料要素は、円筒状ジャケットの形状、またはパイプを断熱するのに有用なシェルのタイプに成形することも可能である。断熱材料を、たとえばジョイントを密封するための断面材の形態で製造することもまた可能である。しかしながら、断熱材料の形状を特別に、たとえば自動車の車体の中の空洞部分に対して適用するよう指定された各所所望の形状に合わせることもできる。
【0033】
それらの断熱材料の2つの層は、ポリウレタンフォームにおいて公知の方法によって製造することが可能であり、また各種所望の方法で相互に接着させることができる。
【0034】
たとえば、クンストシュトッフ・ハントブーフ(Kunststoff Handbuch)[プラスチック・ハンドブック(Plastics Handbook)]、第7巻、第3版、1993年、ハンサー・フェルラ−ク(Hanser Verlag)、p.140に記載があるようにして、混合仕様書の構成成分を混合仕様書に従って混合してから反応させる、一段法によって層を形成させることができる。断熱層として機能する硬質フォームは、たとえば、クンストシュトッフ・ハントブーフ(Kunststoff Handbuch)[プラスチック・ハンドブック(Plastics Handbook)]、第7巻、第3版、1993年、ハンサー・フェルラ−ク(Hanser Verlag)、p.272〜277に記載されているようにして、ダブルコンベヤベルトシステムで連続的に製造することもできる。その公刊物のp.272〜273にはダブルコンベヤシステムで断熱フォームを製造するための連続法が、そしてp.274〜277にはその変法のバッチ製造法が記載されている。次いでそのようにして製造されたシートを、膨張層を用いてコーティングする。断熱層の場合と同様にして、膨張層も製造することができる。
【0035】
しかしながら、以下において記述する方法が、製造と接着を統合しているので、特に有利である。
【0036】
本発明はさらに、少なくとも1層の合成フォームから構成される断熱層および1層のリン含有ポリオールをベースとするポリウレタンフォームから構成される膨張層から構成される、断熱材料を製造するための方法も提供するが、それに含まれるのは、
A)公知の方法によって、合成フォームから構成される成形物、断面材、または同様の半完成品を製造する工程、
B)リン含有ポリオールをベースとするポリウレタンフォームを製造するのに必要な粗原料を混合することによって液状反応混合物を製造する工程、および
C)その半完成品の関連表面にその液状反応混合物を塗布し、それを発泡および硬化させる工程。
【0037】
その方法の3工程の全部をバッチ的に実施することもできるし、あるいは連続で実施することもできる。「公知の方法によって」という表現は、合成フォームのための、そのフォームの性質に依存した公知の製造方法を指している。本発明において使用されるフォームについては、先に列挙した。その合成フォームにポリウレタンフォームが含まれるのであれば、対応する方法は同様に先に記載してある。ポリウレタンフォームが含まれない場合には、各種のタイプのものに対する公知の方法の例が次の文献に見出される:H・ウェーバー(H.Weber)、J・ド・グレーブ(J.de Grave)、E・レール(E.Roehrl)『フォームド・プラスチックス(Foamed Plastics)』、ウルマンズ・エンサイクロペディア・オブ・インダストリアル・ケミストリー(Ullman’s Encyclopedia of Industrial Chemistry)、エレクトロニック・リリース(Electronic Release)、第7版、ワイリー−VCH(Wiley−VCH)、ワインハイム(Weinheim)2005年。
【0038】
その方法の第2工程B)は5〜50℃で実施するのが好ましい。15〜35℃で実施すれば、特に好ましい。その混合は、ポリウレタン製造では慣用されている、移動混合ヘッド(conveying and mixing head)で好適に実施することができる。
【0039】
その方法の第3工程C)は5〜150℃で実施するのが好ましい。15〜90℃で実施すれば、特に好ましい。フォーム成形法によってそれを実施するのが好ましい。この場合、合成フォームから構成される成形物を型の中に導入する。その型の中の成形物に液状反応混合物を適用するが、その成形物の温度は5〜150℃に調節しておいてから型を閉じる。その反応混合物を発泡、硬化させると、存在している型と成形物とによって画定される残存空間が、その膨張層によって完全に充満される。
【0040】
本発明の方法は、断熱材料要素を製造するのに特に好適である。
【0041】
本発明の目的においては、「断熱材料要素」という用語は、断熱材料を含み、標準的な形状とサイズに予備成形されていて、それによって特定の用途において正確に取り付けることが可能となり、取扱いが容易に、製品に対して使用されている。たとえば、建設分野においては、断熱材料要素はシートの形態で必要とされている。
【0042】
本発明の断熱材料から製造され、またそれぞれ本発明の方法で製造された断熱材料要素は、雑音防止、断熱、および防火が1つの構造要素の中に統合されていることを特徴としている。したがって、たとえば防火要素と雑音防止要素とを別々に組み付ける必要はない。それらの要素は自立性であるが、このことは、所望の効果に寄与することがない単に構造的な機能だけを有している構成成分(支持構成成分、周辺構成成分、耐力構成成分)を必要としないということを意味している。これは、適用するときに実質的な利点を与えるが、それは、これらの断熱材料要素が極めて軽量であり、かつ容易に切断することができるからである。それらの断熱材料要素の層がいずれも軟質フォームから構成することが可能であるので、使用する場所に凹凸があっても打ち消すことができる(たとえば、石積み、スクリードなど)。
【0043】
本発明の方法では確実に、断熱層と膨張層とがしっかりと耐水性があるように相互に接着されており、この目的のためのさらなる接着剤はまったく必要としない。
【0044】
最後に、本発明は、少なくとも、合成フォームから構成された1層の断熱層と、リン含有ポリオールをベースとするポリウレタンフォームから構成された1層の膨張層とから構成され、断熱または消音のために使用される、断熱材料の使用を提供する。本発明の1つの好ましい実施態様においては、それらの断熱材料を、断熱と消音とが同時に要求されるような目的のために使用する。1つの具体的な好ましい実施態様においては、それらの断熱材料は、30分を超える長い耐火時間を有していて、断熱および消音のために使用される。それらの用途の例は、次の分野に見出すことができる:車両構造物、機械工学、コンテナ構造物、およびプラント構造物、住居、商業的および工業的建築物の内部建具(internal fitting−out)、パイプラインの断熱、または冷蔵庫および冷凍庫の製造。
【0045】
以下において、実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、それらの実施例は本発明になんらかの制限を与えるものではない。
【実施例】
【0046】
特に断らない限り、すべての部およびパーセントは重量基準である。
【0047】
断熱材料を製造するための出発物質
使用した断熱層は、30kg/mの密度を有し、DIN4102B2に適合する難燃性を有する、市販されている硬質ポリウレタンフォームから構成された断熱フォームシートを含んでいた。膨張層を製造するための出発物質は、欧州特許出願公開第0 217 080A1号明細書に詳しく説明されているものである。
【0048】
断熱材料の製造
実施例1
1つの側面の上に軟質膨張層をコーティングされた硬質ポリウレタンフォームシートから構成された断熱材料
約500×500×60mmの寸法を有するフォーム要素を、厚み60mmの市販されている硬質ポリウレタンフォーム断熱シートから切り出した。このフォーム要素を、可動型カバーを有し、内部寸法が約500×500×66mmである型の中に挿入した。欧州特許出願公開第0 217 080A1号明細書の実施例15に相当する反応混合物を調製した。そうして得られた液状反応混合物を型の中に注入し、型カバーで密閉した。約10分の脱型時間の後、軟質膨張層を有する成形物が得られた。このものの特に特徴としている点は、その膨張層がバッキング材料の上に優れた接着性を有していることであった。
【0049】
実施例2
1つの側面の上に硬質膨張層をコーティングされた硬質ポリウレタンフォームシートから構成された断熱材料
実施例1に記載の断熱要素の製造法を修正して、欧州特許出願公開第0 217 080A1号明細書の実施例12に相当する反応混合物を使用した。得られた成形物は硬質膨張層を有していた。
【0050】
燃焼試験および試験結果
難燃性を評価するために、実施例1および2の断熱材料、さらには比較例としてコーティングなしの硬質ポリウレタンフォームシートの耐火時間を求めた。この目的では、耐火性は、DIN4102−8に従い、小試験リグ(small test rig)で求めた。この試験においては、同じ構造の2つの試験片を、オイルバーナーの側面に取り付ける。その寸法は500×500mmである。オイルバーナーは、約13kgオイル/時間で燃焼させる。バーナーの内部における温度は約1000℃に達する。それらの試験片が、燃焼チャンバーの周縁部として機能する。本発明の膨張コーティングが火に直面して、火炎に対して保護なしで暴露される。それぞれの試験片の外側に、正確に中心に1本、それぞれの四分の一区分(quadrant)のほぼ中心に1本ずつ取り付けられた5本の熱電対を存在させる。全部で10本の熱電対を使用して、試験時間の間、外側側面の上での温度上昇を記録する。周囲温度に対して示される温度上昇は、それぞれ個々の熱電対では180℃を超えてはならず、全部の熱電対の平均で140℃を超えてはならない。
【0051】
表1にこの試験の結果を列記する。
【0052】
【表1】

【0053】
評価
決定的な試験判定基準は、火炎がシート状の試験片を貫通することに加えて、火炎とは反対側の面の上の温度上昇である。耐火時間が長い材料の特徴は、火炎に暴露させるスタートからの、この温度が決められた限度を超えることがない時間が最大化されることである。材料は最大限の断熱効果を有していなくてはならず、火炎の作用が原因のこの断熱効果の低下を最小限にしなければならない。表1に示した時間から、これらの判定基準によれば、その膨張層の厚みがたったの約8〜10mmしかない本発明の断熱材料の耐火時間が、比較例であるコーティングなしの硬質ポリウレタンシートのそれに比較してかなり改良されていたということが判る。表1の実施例から判るように、その保護コーティングは硬質フォームまたは軟質フォームの形態をとることができる。それぞれのケースにおいて、耐火時間が改良されている。
【0054】
音響試験および試験結果
消音性を評価する目的で、吸音レベルを、実施例1の断熱材料、さらには比較例としてのコーティングなしの硬質ポリウレタンフォームシートについて、DIN EN ISO 10534−2により求めた。このためには、試験片を試験用パイプの1つの末端に位置させた。他端にはラウドスピーカーを設置し、それが試験片に対して垂直方向に照射するようにした。音圧を求めることが可能なマイクロフォンを、その試験用パイプの2つの位置に取り付けておいた。記録された試験結果は、周波数の関数としての相対的な音吸収であった。表2にこの試験の結果を列記する。
【0055】
【表2】

【0056】
評価
表2の試験結果から判るように、本発明の断熱材料の吸音性、したがった消音性は、すべての周波数において、コーティングなしの硬質ポリウレタンフォームシートのそれよりも良好である。したがって、断熱材料上のたった8〜10mmの厚みの膨張層が、顕著に改良された耐火時間を与えるだけではなく、特に1600Hzを超える周波数では、顕著な吸音性も与えている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1層の断熱層と1層の膨張層から構成される断熱材料であって、
A)前記断熱層が、合成フォームから構成され、
B)前記膨張層が、リン含有ポリオールをベースとするポリウレタンフォームから構成され、そして
C)前記膨張層の厚みが、その断熱材料全体の厚みの2〜98%である、
断熱材料。
【請求項2】
前記合成フォームが、ポリウレタン、ポリイソシアヌレート、ポリアルキレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、シリコーン、エポキシ樹脂、ポリイミド、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、またはポリスルホンから構成されるフォームである、請求項1に記載の断熱材料。
【請求項3】
ポリスチレンの場合においては、発泡ポリスチレン(XPS)または押出法ポリスチレン(XPS)を含むか、ポリ塩化ビニルの場合においては、硬質PVCまたは軟質PVCを含むか、ポリアルキレンの場合においては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、またはポリプロピレンを含む、請求項2に記載の断熱材料。
【請求項4】
前記リン含有ポリオールが一般式(I)の物質を含む、
(R−O)P(=O)−CH−N(CHR−CHR−OH) (I)
[式中、
は、適当であるならばヒドロキシ基によって置換された、C〜C−アルキルであり、そして
およびRは、互いに独立して、Hまたはメチルである]
請求項1〜3のいずれか一項に記載の断熱材料。
【請求項5】
前記断熱層が硬質フォームを含み、前記膨張層が軟質フォームを含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の断熱材料。
【請求項6】
前記断熱層が硬質フォームを含み、前記膨張層が硬質フォームまたは半硬質フォームを含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の断熱材料。
【請求項7】
さらなる構成成分を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の断熱材料。
【請求項8】
少なくとも1層の合成フォームから構成される断熱層および1層のリン含有ポリオールをベースとするポリウレタンフォームから構成される膨張層から構成される、断熱材料を製造するための方法であって、
A)公知の方法によって、前記合成フォームから構成される成形物、断面材、または同様の半完成品を製造する工程、
B)リン含有ポリオールをベースとする前記ポリウレタンフォームを製造するのに必要な粗原料を混合することによって液状反応混合物を製造する工程、および
C)前記半完成品の関連表面に前記液状反応混合物を塗布し、それを発泡および硬化させる工程、
を含む方法。
【請求項9】
工程C)をフォーム成形法により実施する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
断熱または消音のための、請求項1〜7のいずれか一項に記載の断熱材料の使用。
【請求項11】
前記断熱材料が、同時に断熱および消音のために使用される、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
前記断熱材料が、断熱材料要素の形態で使用される、請求項10または11に記載の使用。

【公開番号】特開2009−209678(P2009−209678A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−46555(P2009−46555)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(505422707)ランクセス・ドイチュランド・ゲーエムベーハー (220)
【Fターム(参考)】