耐火補強構造およびその施工方法
【課題】耐熱性能の劣る壁に対して簡便に耐火性能を付与することのできる耐火補強構造およびその施工方法を提供すること。
【解決手段】
[1]内部に空間を有する中空壁と、前記空間に配置された熱膨張性耐火材と、を少なくとも有することを特徴とする、耐火補強構造。
[2]内部に空間を有する中空壁の内部の空間に、熱膨張性耐火材を配置することを特徴とする、耐火補強構造の施工方法。
[3]前記熱膨張性耐火材は、二以上の熱膨張性耐火シート片が連結された熱膨張性耐火シートを少なくとも含むものであり、ロール状に巻き取られた前記熱膨張性耐火シートおよび/または前記熱膨張性耐火シート片の連結部が交互に折り返された前記熱膨張性耐火シート、を平面状に伸ばしながら前記中空壁の内部の空間に送り込む工程を有することを特徴とする、上記[2]に記載の耐火補強構造の施工方法。
【解決手段】
[1]内部に空間を有する中空壁と、前記空間に配置された熱膨張性耐火材と、を少なくとも有することを特徴とする、耐火補強構造。
[2]内部に空間を有する中空壁の内部の空間に、熱膨張性耐火材を配置することを特徴とする、耐火補強構造の施工方法。
[3]前記熱膨張性耐火材は、二以上の熱膨張性耐火シート片が連結された熱膨張性耐火シートを少なくとも含むものであり、ロール状に巻き取られた前記熱膨張性耐火シートおよび/または前記熱膨張性耐火シート片の連結部が交互に折り返された前記熱膨張性耐火シート、を平面状に伸ばしながら前記中空壁の内部の空間に送り込む工程を有することを特徴とする、上記[2]に記載の耐火補強構造の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐火補強構造およびその施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建物の外壁や内壁、床面を形成する床壁、天井面を形成する天井壁等に代表される壁は火災発生時には炎や熱を遮断する役割を担うものであり、火災による被害を最小限に抑える耐火性能を有することが求められる。
この耐火性能は時代の推移と共により良いものが求められてきている。このため、ある建築物の壁が、壁一般に対する過去の基準に合致していたとしても、今日要請される基準に合致しているとは限らないのが実情である。
また実際の問題として建築物の前記壁の耐火性能が今日要請される基準に達していないことが判明した場合にはそのまま放置することはできないため、何らかの耐火補強を必要とするのが通常である。
しかし耐火性能が劣る壁に対して耐火補強を行うためには、前記壁に別途耐火材料や耐火パネル等を前記壁に新たに重ねて設置する工事、前記壁を撤去してから新たに耐火性能のある壁を設置する工事、前記壁の全表面を取り除き、内部全体に耐火材料を新たに充填する工事等、大がかりな工事が必要となる場合があった。
またその工事の最中にはその建物に住み続けることやその建物で仕事を継続することが困難となるため、その建物に住んでいる人に対して別途居住環境を提供したり、新たな職場環境を提供しなければならない等、工事以外にも手間暇が掛かるため、工期が長くなり単位時間当たりの施工性に劣るとの問題があった。
【0003】
一方、耐火性能の向上に関連して、石膏ボードに熱膨張性耐火材を設けてなる耐火パネル壁が提案されている(特許文献1)。
この構造であれば火災が発生した際に熱膨張性耐火材の膨張が阻害されることがないので有効に火災の際に発生する炎や熱を遮断できるとともに、簡便に施工できることから施工性に優れるとされる。
しかしながらこの提案された耐火パネル壁の場合は建物を新たに建造する場合には施工性に問題はないものの、耐火性が劣る既存の壁に前記耐火パネル壁を適用する場合には既存の壁全体を撤去してから前記耐火パネル壁を新たに設置するか、既存の壁に重ねて前記耐火パネル壁を設置する等の耐火工事が必要となることから、やはり既存の壁に対する大がかりな耐火補強の問題が依然として残る。
【特許文献1】特開平7−133640号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、耐熱性能の劣る壁に対して簡便に耐火性能を付与することのできる耐火補強構造およびその施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するため本発明者らが鋭意検討した結果、内部に空間を有する中空壁の前記空間に熱膨張性耐火材が配置された耐火補強構造が前記目的に適うことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち本発明は、
[1]内部に空間を有する中空壁と、
前記空間に配置された熱膨張性耐火材と、
を少なくとも有することを特徴とする、耐火補強構造を提供するものである。
【0007】
また本発明は、
[2]前記熱膨張性耐火材は、二以上の熱膨張性耐火シート片が連結された熱膨張性耐火シートを少なくとも含むことを特徴とする、上記[1]に記載の耐火補強構造を提供するものである。
【0008】
また本発明は、
[3]前記熱膨張性耐火材は、熱膨張性耐火シート片同士の連結部に分離手段が設けられていることを特徴とする、上記[1]または[2]に記載の耐火補強構造を提供するものである。
【0009】
また本発明は、
[4]内部に空間を有する中空壁の内部の空間に、熱膨張性耐火材を配置することを特徴とする、耐火補強構造の施工方法を提供するものである。
【0010】
また本発明は、
[5]中空壁に開口部を設ける工程と、
前記開口部を通して中空壁の内部の空間に前記熱膨張性耐火材を配置する工程と、
を少なくとも有することを特徴とする、上記[4]に記載の耐火補強構造の施工方法を提供するものである。
【0011】
また本発明は、
[6]前記熱膨張性耐火材は、二以上の熱膨張性耐火シート片が連結された熱膨張性耐火シートを少なくとも含むものであり、
ロール状に巻き取られた前記熱膨張性耐火シート
および/または
前記熱膨張性耐火シート片の連結部が交互に折り返された前記熱膨張性耐火シート、
を平面状に伸ばしながら前記中空壁の内部の空間に送り込む工程を有することを特徴とする、上記[4]または[5]に記載の耐火補強構造の施工方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の耐火補強構造は内部に空間を有する中空壁の前記空間に熱膨張性耐火材が配置された構造を有するため、中空壁に対して簡便に耐火補強を施すことができる。
【0013】
また本発明の耐火補強構造に使用する熱膨張性耐火材として二以上の熱膨張性耐火シート片が連結された熱膨張性耐火シートを少なくとも含むものを使用することにより、前記熱膨張性耐火シートをロール状に巻き取った形状や前記熱膨張性耐火シートを連結部により交互に折り返された形状とすることができることから、前記熱膨張性耐火シートの運搬性に優れ、狭い空間に持ち運ぶことができる。さらにこれらのロール状に巻き取った前記熱膨張性耐火シートや交互に折り返された前記熱膨張性耐火シートを平面状に伸ばしながら中空壁内部の空間に前記熱膨張性耐火シートを送り込むことにより中空壁に対して耐火補強を行うことができることから耐火補強構造の施工性に優れる。
【0014】
また前記熱膨張性耐火シートに含まれる前記熱膨張性耐火シート片同士の連結部に分離手段を設けることにより、施工現場で容易に前記熱膨張性耐火シートの大きさを調整することができることから耐火補強構造の施工性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
最初に本発明に使用する熱膨張性耐火材について説明する。
本発明に使用する熱膨張性耐火材としては、例えば、熱膨張性耐火材料を平面状に成形した熱膨張性耐火シート等が挙げられる。
【0016】
前記熱膨張性耐火シートとしては、例えば、熱膨張性耐火材料からなるシート状成形体、熱膨張性耐火材料と基材とを積層したシート状積層体、熱膨張性耐火材料等を基材により包装した熱膨張性包装体等の一種もしくは二種以上を挙げることができる。
【0017】
前記熱膨張性包装体としては、例えば、前記熱膨張性耐火材料からなるシート状成形体、前記熱膨張性耐火材と基材とを積層したシート状積層体等の一種もしくは二種以上をさらに基材により包装したもの、
前記熱膨張性耐火材料からなるシート状成形体、前記熱膨張性耐火材と基材とを積層したシート状積層体等の一種もしくは二種以上を裁断、粉砕等して得られる熱膨張性耐火材小片等を基材により包装したもの等を挙げることができる。
【0018】
また前記基材としては、例えば、金属箔類、合成樹脂類等を含むものを挙げることができる。
【0019】
前記金属箔としては、例えば、アルミニウム箔、銅箔、ステンレス箔、錫箔、鉛箔、錫鉛合金箔、クラッド箔、鉛アンチ箔等の金属箔類等が挙げられる。
【0020】
また前記合成樹脂類としては、例えば、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリブテン系樹脂、ポリペンテン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、フェノール系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリイソブチレン等が挙げられる。
【0021】
前記基材は前記金属箔類からなるものや前記合成樹脂類からなるものに限定されず、例えば、前記金属箔類と前記合成樹脂類との積層体、前記金属箔類と無機繊維類との積層体、前記樹脂類と前記無機繊維類との積層体等を使用することができる。
【0022】
前記無機繊維類としては、例えば、ガラスクロス、シリカクロス、アルミナクロス等を挙げることができる。
【0023】
前記基材は一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0024】
次に本発明に使用する前記熱膨張性耐火材の実施態様について、図面を参照しつつ説明する。
図1は前記熱膨張性耐火シートの一実施態様として熱膨張性耐火材料からなるシート状成形体を例示した模式要部正面図である。
【0025】
図1に例示する様に、前記熱膨張性耐火材料からなるシート状成形体1は押出成形等の方法により熱膨張性耐火材料をシート状に成形したものであり、好ましくは厚み0.5〜10mm、より好ましくは厚み1〜5mmの範囲、好ましくは幅5cm〜3m、より好ましくは幅10cm〜1mの範囲のものである。
【0026】
また本発明に使用する前記熱膨張性耐火シートには分離手段を設けることが好ましい。
【0027】
前記熱膨張性耐火材料からなるシート状成形体1には分離手段として長手方向に対して垂直方向に破線状の切り込み2が設けられている。この破線状の切り込み2により、前記熱膨張性耐火材料からなるシート状成形体1から熱膨張性耐火シート片3を分離することができ、また、前記熱膨張性耐火材料からなるシート状成形体1を二以上の熱膨張性耐火材料からなるシート状成形体に分離することができる。
【0028】
前記熱膨張性耐火シート片3の幅は本発明に使用される中空壁の設置場所や大きさに応じて適宜選択することができるが、好ましくは10〜500mmの範囲であり、より好ましくは30〜200mmの範囲である。
【0029】
なお前記熱膨張性耐火材料からなるシート状成形体1では、前記破線状の切り込み2が熱膨張性耐火シート片3、3の連結部となっている。
【0030】
図2は前記熱膨張性耐火シートの一実施態様として熱膨張性耐火材と基材とを積層したシート状積層体4を例示した模式要部斜視図である。
【0031】
前記熱膨張性耐火材と基材とを積層したシート状積層体4の形状や破線状の切り込み2の位置関係は先の図1により説明した前記熱膨張性耐火材料からなるシート状成形体1の場合と同様である。
【0032】
図2に例示する様に、前記熱膨張性耐火材料と基材とを積層したシート状積層体4は、熱膨張性耐火材料からなるシート状成形体1とアルミラミネートガラスクロス5との積層体となっている。
【0033】
前記熱膨張性耐火材料からなるシート状成形体1に積層する基材はアルミラミネートガラスクロス5に代えて、またはアルミラミネートガラスクロス5と共に異なる一種もしくは二種以上を使用することもできる。
【0034】
図3は前記熱膨張性耐火シートの一実施態様として熱膨張性耐火材料3等を基材7により包装した熱膨張性包装体6を例示した模式要部断面図である。
【0035】
図3に例示する様に、熱膨張性耐火シート片3が基材7により包装されている。前記熱膨張性耐火シート片3は熱膨張性耐火材料からなるものであり、前記基材7としてアルミラミネートポリエチレンテレフタレートが使用されている。
【0036】
前記熱膨張性耐火材料等を基材により包装した熱膨張性包装体6は、前記熱膨張性耐火シート片3を前記基材7により前記熱膨張性耐火シート片3の両面から貼着することにより得ることができる。
【0037】
貼着の方法としては、例えば熱プレス等の手段により前記基材7を熱融着させる方法、接着剤により接着する方法等を挙げることができる。
【0038】
前記基材7はアルミラミネートポリエチレンテレフタレートに代えて、またはアルミラミネートポリエチレンテレフタレートと共に異なる一種もしくは二種以上を使用することもできる。
【0039】
前記熱膨張性耐火材料等を基材により包装した熱膨張性包装体6の異なる実施態様として、熱膨張性耐火材料からなる前記熱膨張性耐火シート片3のものに代えて、熱膨張性耐火材料と基材とを積層したシート状積層体等を使用することもできる。
【0040】
前記熱膨張性耐火材料等を基材により包装した熱膨張性包装体6等の場合、前記基材7に包装されるのは前記熱膨張性耐火材料のみに限定されず、前記熱膨張性耐火材料に加えて例えばロックウール、セラミックウール、シリカアルミナ繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、ジルコニア繊維、セラミックブランケット等の無機耐熱材、水酸基含有化合物類、水酸化金属塩類、吸水ポリマー類等の吸熱材料の一種もしくは二種以上を併用することができる。
【0041】
図4は前記熱膨張性耐火シートの一実施態様として熱膨張性耐火材料等を基材により包装した熱膨張性包装体6を例示した模式要部断面図である。
【0042】
図4に例示される様に、前記基材7により、裁断された熱膨張性耐火材料からなるシート状成形体8および無機耐熱材料9が包装されている。ここでは無機耐熱材料9としてセラミックウールが使用されている。
【0043】
図5は前記熱膨張性耐火シートの全体形状を説明するための模式要部正面図である。
【0044】
図1〜図4により説明した実施態様の場合は図5(a)に例示する熱膨張性耐火シート100の全体形状の様に長方形の前記熱膨張性耐火シート片3の長辺同士が互いに連結されているものであった。
図5(a)に例示する熱膨張性耐火シート100の変形例として、図5(b)に例示する様に、長方形の前記熱膨張性耐火シート片3の短辺同士が互いに連結されている前記熱膨張性耐火シート101や、図5(c)に例示する様に、各熱膨張性耐火シート片3同士が互いに格子状に連結されている前記熱膨張性耐火シート102等が挙げられる。
【0045】
図6は熱膨張性耐火シートの連結部を説明するための模式要部正面図である。
先の図1および2に例示した前記熱膨張性耐火シートの連結部は破線上の切り込みからなるものであったが、図6に例示する熱膨張性耐火シート103は、前記熱膨張性耐火シート片3を包装する基材7が連結部10を形成している。
【0046】
前記連結部10には分離手段として破線状の切り込み2が設けられていて、前記熱膨張性耐火シート103から熱膨張性耐火シート片3を分離したり、前記熱膨張性耐火シート103を二つの前記熱膨張性耐火シートに分離したりすることが容易にできる構造となっている。
【0047】
このため施工現場で前記熱膨張性耐火シート103のサイズが前記中空壁のサイズと合致しないことが判明した場合でも前記熱膨張性耐火シート103のサイズを柔軟に変更することができるため、施工性に優れる。
【0048】
図7は熱膨張性耐火シート104の連結部10の異なる一実施態様を例示した模式要部正面図である。
【0049】
図7に例示される様に、前記熱膨張性耐火シート104の連結部10は前記熱膨張性耐火シート片3同士の一部がつながっているものであってもよい。
【0050】
図8は熱膨張性耐火シート105の連結部10の異なる一実施態様を例示した模式要部正面図である。
【0051】
前記熱膨張性耐火シート105の連結部10には切り欠き11が設けられていて、前記熱膨張性耐火シート105から前記熱膨張性耐火シート片3を分離したり、前記熱膨張性耐火シート105を二つ以上の前記熱膨張性耐火シートに分離したりすることが容易にできる構造となっていることから同様に施工性に優れる。
【0052】
図9は熱膨張性耐火シート106の連結部10の異なる一実施態様を例示した模式要部正面図である。
【0053】
前記熱膨張性耐火シート106の連結部10は前記熱膨張性耐火シート片3の端部同士を無機繊維や金属繊維等からなる糸12により縫合することにより形成することができる。この場合には前記糸12を引き抜くことにより、前記熱膨張性耐火シート106から前記熱膨張性耐火シート片3を分離したり、前記熱膨張性耐火シート106を二つ以上の前記熱膨張性耐火シートに分離したりすることが容易にできることから同様に施工性に優れる。
【0054】
図10は前記熱膨張性耐火シート107の連結部10の異なる一実施態様を例示した模式要部正面図である。
【0055】
図10に例示される様に、金属製の針金等のリング13により前記熱膨張性耐火シート片3同士を連結して前記熱膨張性耐火シート107を形成することができる。前記リング13を切断することにより前記熱膨張性耐火シート107から前記熱膨張性耐火シート片3を分離したり、前記熱膨張性耐火シート107を二つ以上の前記熱膨張性耐火シートに分離したりすることが容易にできることから同様に施工性に優れる。
【0056】
図11は前記熱膨張性耐火シート108の連結部10の異なる一実施態様を例示した模式要部正面図である。
【0057】
図11に例示される様に、金属製のクリップ14等により前記熱膨張性耐火シート片3同士を連結して前記熱膨張性耐火シート108を形成することができる。
【0058】
前記クリップ14を取り外すことにより前記熱膨張性耐火シート108から前記熱膨張性耐火シート片3を分離したり、前記熱膨張性耐火シート108を二つ以上の前記熱膨張性耐火シートに分離したりすることが容易にできることから、同様に施工性に優れる。
【0059】
図6〜図11に例示される前記連結部の構造は一または二以上を採用することができる。
【0060】
なお図1〜図5により説明した前記熱膨張性耐火シートの連結部の構造についても上記に説明した前記熱膨張性耐火シートの連結部の構造と同様である。
【0061】
次に本発明の耐火補強構造に使用する中空壁について説明する。
本発明に使用する中空壁はその内部に空間を有するものであればよく、特に限定はないが、具体的には例えば木桟、金属フレーム、鉄筋コンクリート製の柱、鋼材からなる鉄骨等の少なくとも一つの枠組みに対して耐熱パネル等を両側から固定した構造のもの等を挙げることができる。
前記耐熱パネルには、例えば、セメント系パネル、無機セラミック系パネル等が使用される。
前記セメント系パネルとしては、例えば、硬質木片セメント板、無機繊維含有スレート板、軽量気泡コンクリート板、モルタル板、プレキャストコンクリート板等が挙げられる。
【0062】
前記無機セラミック系パネルとしては、例えば、石膏ボード、けい酸カルシウム板、炭酸カルシウム板、ロックウール板、窯業系板等が挙げられる。
【0063】
ここで前記石膏ボードとしては、具体的には焼石膏に鋸屑やパーライトなどの軽量材を混入し、両面に厚紙を貼って成板したもので、例えば、普通石膏ボード(JIS A6901準拠:GB−R)、化粧石膏ボード(JIS A6911準拠:GB−D)、防水石膏ボード(JIS A6912準拠:GB−S)、強化石膏ボード(JIS A6913準拠:GB−F)、吸音石膏ボード(JIS A6301準拠:GB−P)等が挙げられる。
【0064】
前記耐熱パネルは一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0065】
次に本発明に使用する熱膨張性耐火材料について説明する。
前記熱膨張性耐火材料としては、例えば、具体的には熱可塑性樹脂やエポキシ樹脂等の樹脂成分、熱膨張性層状無機物、リン化合物、無機充填材等を含む樹脂組成物からなるもの等を挙げることができる。
【0066】
前記樹脂組成物の各成分のうち、まず前記樹脂成分について説明する。
前記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリ(1−)ブテン系樹脂、ポリペンテン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、フェノール系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリイソブチレン等の合成樹脂類、
天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、1,2−ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、塩素化ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム等のゴム物質等が挙げられる。
【0067】
これらの合成樹脂類及び/又はゴム物質は、一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0068】
前記合成樹脂類及び/又はゴム物質の中でも、ハロゲン化されたものは、それ自体難燃性が高く、熱による脱ハロゲン化反応により架橋が起こり、加熱後の残渣の強度が向上する点において好ましい。
【0069】
前記ポリエチレン系樹脂としては、例えば、エチレン単独重合体、エチレンを主成分とするエチレンと他のα−オレフィンとの共重合体、エチレンとα−オレフィン以外のモノマーとの共重合体及びこれらの共重合体や重合体の混合物等が挙げられる。
【0070】
前記エチレンを主成分とするエチレンと他のα−オレフィンとの共重合体におけるα−オレフィンとしては、例えば、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−ブテン、1−ペンテン等が挙げられる。
【0071】
また、前記エチレンとα−オレフィン以外のモノマーとの共重合体としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−メタクリレート共重合体等が挙げられる。
【0072】
前記エチレン単独重合体又はエチレンと他のα−オレフィンとの共重合体としては、例えば、チーグラー・ナッタ触媒、バナジウム触媒、4価の遷移金属を含むメタロセン化合物等を重合触媒として重合されたものが挙げられるが、中でも、4価の遷移金属を含むメタロセン化合物等を触媒として得られるポリエチレン系樹脂が好ましい。
【0073】
前記合成樹脂類及び/又はゴム物質には、更に、本発明における発泡断熱材の耐火性能を阻害しない範囲で、架橋や変性が施されてもよい。
【0074】
前記合成樹脂類及び/又はゴム物質の架橋や変性を行う時期については、特に限定されず、予め架橋、変性した前記合成樹脂類及び/又はゴム物質を用いてもよく、後述するリン化合物や無機充填材等の他の成分を配合する際に同時に架橋や変性を行ってもよい。
【0075】
また、前記合成樹脂類及び/又はゴム物質に他の成分を配合した後に架橋や変性してもよく、上記架橋や変性は、いずれの段階で行ってもよい。
【0076】
前記の架橋方法については特に限定されず、前記合成樹脂類及び/又はゴム物質について通常行われる架橋方法により実施することができる。例えば、各種架橋剤、過酸化物等を使用する架橋方法、電子線照射による架橋方法が挙げられる。
【0077】
また、本発明に使用する樹脂成分のうち、先に示したエポキシ樹脂としては、特に限定はないが、例えば、エポキシ基を持つモノマーと硬化剤とを反応させて得られる樹脂等を挙げることができる。
【0078】
前記エポキシ基を持つモノマーとしては、例えば、2官能のグリシジルエーテル型として、ポリエチレングリコール型、ポリプロピレングリコール型、ネオペンチルグリコール型、1,6−ヘキサンジオール型、トリメチロールプロパン型、プロピレンオキサイド−ビスフェノールA、水添ビスフェノールA型、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型等のモノマーが挙げられる。
【0079】
また、グリシジルエステル型として、ヘキサヒドロ無水フタル酸型、テトラヒドロ無水フタル酸型、ダイマー酸型、p−オキシ安息香酸型等のモノマーが挙げられる。
【0080】
更に多官能のグリシジルエーテル型として、フェノールノボラック型、オルトクレゾール型、DPPノボラック型、ジシクロペンタジエン、フェノール型等のモノマーが挙げられる。
【0081】
これらは、一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0082】
また、前記硬化剤としては、例えば、重付加型硬化剤、触媒型硬化剤等が挙げられる。
【0083】
前記重付加型硬化剤としては、例えば、ポリアミン、酸無水物、ポリフェノール、ポリメルカプタン等が挙げられる。
【0084】
前記触媒型硬化剤としては、例えば三級アミン類、イミダゾール類、ルイス酸錯体等が挙げられる。
【0085】
これらエポキシ樹脂の硬化方法は特に限定されず、公知の方法により行うことができる。
【0086】
なお、前記樹脂成分の溶融粘度、柔軟性、粘着性等の調整のため、二種以上の樹脂成分をブレンドしたものを使用することができる。
【0087】
次に前記樹脂組成物の各成分のうち、前記熱膨張性層状無機物について説明する。
前記熱膨張性層状無機物は加熱時に膨張するものであるが、かかる熱膨張性層状無機物に特に限定はなく、例えば、バーミキュライト、カオリン、マイカ、熱膨張性黒鉛等を挙げることができる。
【0088】
前記熱膨張性黒鉛とは、従来公知の物質であり、天然鱗状グラファイト、熱分解グラファイト、キッシュグラファイト等の粉末を、濃硫酸、硝酸、セレン酸等の無機酸と、濃硝酸、過塩素酸、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、重クロム酸塩、過酸化水素等の強酸化剤とで処理してグラファイト層間化合物を生成させたものであり、炭素の層状構造を維持したままの結晶化合物の一種である。
【0089】
上記のように酸処理して得られた熱膨張性黒鉛は、更にアンモニア、脂肪族低級アミン、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物等で中和したものを使用するのが好ましい。
【0090】
前記脂肪族低級アミンとしては、例えば、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン等が挙げられる。
【0091】
前記アルカリ金属化合物および前記アルカリ土類金属化合物としては、例えば、カリウム、ナトリウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム等の水酸化物、酸化物、炭酸塩、硫酸塩、有機酸塩等が挙げられる。
【0092】
前記熱膨張性黒鉛の粒度は、20〜200メッシュの範囲のものが好ましい。
【0093】
粒度が20メッシュより小さくなると、黒鉛の膨張度が小さく、充分な耐火断熱層が得られにくく、また、粒度が200メッシュより大きくなると、黒鉛の膨張度が大きいという利点はあるが、前記熱可塑性樹脂又はエポキシ樹脂と混練する際に分散性が悪くなり、物性が低下し易い。
【0094】
上記中和された熱膨張性黒鉛の市販品としては、例えば、UCAR CARBON社製の「GRAFGUARD#160」、「GRAFGUARD#220」、東ソー社製の「GREP−EG」等が挙げられる。
【0095】
次に先の樹脂組成物の各成分のうち、前記無機充填材について説明する。
前記無機充填材としては、特に限定されないが、例えば、シリカ、珪藻土、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト類、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、ドーソナイト、ハイドロタルサイト、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、石膏繊維、ケイ酸カルシウム等のカリウム塩、タルク、クレー、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セビオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカ系バルン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素バルン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、チタン酸ジルコン酸鉛、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化ケイ素、ステンレス繊維、ホウ酸亜鉛、各種磁性粉、スラグ繊維、フライアッシュ、無機系リン化合物、シリカアルミナ繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、ジルコニア繊維等が挙げられる。
【0096】
これらは、一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0097】
前記無機充填材は骨材的役割を果たして、加熱後に生成する膨張断熱層強度の向上や熱容量の増大に寄与する。
【0098】
このため、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛で代表される金属炭酸塩、骨材的役割の他に加熱時に吸熱効果も付与する水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムで代表される含水無機物が好ましく、アルカリ金属、アルカリ土類金属、及び周期律表IIbの金属炭酸塩又はこれらと前記含水無機物との混合物が好ましい。
【0099】
また、リン化合物は、難燃性を向上させるため、または窒素化合物、アルコール類等と組み合わせて熱膨張性機能を発現するために用いられる。
【0100】
前記リン化合物としては、特に限定されず、例えば、赤リン;トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート等の各種リン酸エステル;リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸マグネシウム等のリン酸金属塩;ポリリン酸アンモニウム類;化学式1で表される化合物等が挙げられる。
【0101】
これらのリン化合物は、一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0102】
これらのうち、耐火性の観点から、赤リン、下記の化学式で表される化合物、及び、ポリリン酸アンモニウム類が好ましく、性能、安全性、費用等の点においてポリリン酸アンモニウム類がより好ましい。
【0103】
【化1】
上記化学式中、R1及びR3は、水素、炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は、炭素数6〜16のアリール基を表す。
【0104】
R2は、水酸基、炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、炭素数1〜1
6の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシル基、炭素数6〜16のアリール基、又は、炭素数6〜16のアリールオキシ基を表す。
【0105】
前記化学式で表される化合物としては、例えば、メチルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸ジエチル、エチルホスホン酸、プロピルホスホン酸、ブチルホスホン酸、2−メチルプロピルホスホン酸、t−ブチルホスホン酸、2,3−ジメチル−ブチルホスホン酸、オクチルホスホン酸、フェニルホスホン酸、ジオクチルフェニルホスホネート、ジメチルホスフィン酸、メチルエチルホスフィン酸、メチルプロピルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、ジオクチルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸、ジエチルフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、ビス(4−メトキシフェニル)ホスフィン酸等が挙げられる。
【0106】
中でも、t−ブチルホスホン酸は、高価ではあるが、高難燃性の点において好ましい。
【0107】
ポリリン酸アンモニウム類としては、特に限定されず、例えば、ポリリン酸アンモニウム、メラミン変性ポリリン酸アンモニウム等が挙げられるが、難燃性、安全性、コスト、取扱性等の点からポリリン酸アンモニウムが好適に用いられる。
【0108】
市販品としては、例えば、クラリアント社製の「商品名:EXOLIT AP422」及び「商品名:EXOLIT AP462」等が挙げられる。
【0109】
前記リン化合物は、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛等の金属炭酸塩と反応して、金属炭酸塩の膨張を促すと考えられ、特に、リン化合物として、ポリリン酸アンモニウムを使用した場合に、高い膨張効果が得られる。
【0110】
また、有効な骨材として働き、燃焼後に形状保持性の高い残渣を形成する。
【0111】
前記窒素化合物としては、特に限定はないが、メラミン系化合物等であれば好ましい。
【0112】
また前記アルコール類としては、特に限定はないが、ペンタエリスリトール等の多価アルコール等であれば好ましい。
【0113】
本発明に使用する無機充填材が粒状の場合には、その粒径としては、0.5〜200μmの範囲のものが好ましく、より好ましくは、1〜50μmの範囲のものである。
【0114】
無機充填材の添加量が少ないときは、分散性が性能を大きく左右するため、粒径の小さいものが好ましいが、粒径0.5μm未満では二次凝集が起こり、分散性が悪くなることがある。
【0115】
また、無機充填材の添加量が多いときは、高充填が進むにつれて、樹脂組成物の粘度が高くなり成形性が低下するが、粒径を大きくすることによって樹脂組成物の粘度を低下させることができる点から、上記範囲の中でも粒径の大きいものが好ましい。
【0116】
なお、粒径が200μmを超えると、成形体の表面性、樹脂組成物の力学的物性が低下することがある。
【0117】
前記無機充填材の中でも、特に骨材的役割を果たす炭酸カルシウム、炭酸亜鉛等の金属炭酸塩;骨材的役割の他に加熱時に吸熱効果を付与する水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の含水無機物が好ましい。
【0118】
前記含水無機物及び金属炭酸塩を併用することは、燃焼残渣の強度向上や熱容量増大に大きく寄与すると考えられる。
【0119】
前記無機充填材の中で、特に水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の含水無機物は、加熱時の脱水反応によって生成した水のために吸熱が起こり、温度上昇が低減されて高い耐熱性が得られる点、及び、燃焼残渣として酸化物が残存し、これが骨材となって働くことで燃焼残渣の強度が向上する点で好ましい。
【0120】
また、水酸化マグネシウムと水酸化アルミニウムは、脱水効果を発揮する温度領域が異なるため、併用すると脱水効果を発揮する温度領域が広くなり、より効果的な温度上昇抑制効果が得られることから、併用することが好ましい。
【0121】
前記含水無機物の粒径は、小さくなると嵩が大きくなって高充填化が困難となるので、脱水効果を高めるために高充填するには粒径の大きなものが好ましい。
【0122】
具体的には、粒径が18μmでは、1.5μmの粒径に比べて充填限界量が約1.5倍程度向上することが知られている。
【0123】
さらに、粒径の大きいものと小さいものとを組み合わせることによって、より高充填化が可能となる。
【0124】
前記含水無機物の市販品としては、例えば、水酸化アルミニウムとして、粒径1μmの「商品名:ハイジライトH−42M」(昭和電工社製)、粒径18μmの「商品名:ハイジライトH−31」(昭和電工社製)等が挙げられる。
【0125】
前記炭酸カルシウムの市販品としては、例えば、粒径1.8μmの「商品名:ホワイトンSB赤」(白石カルシウム社製)、粒径8μmの「商品名:BF300」(備北粉化社製)等が挙げられる。
【0126】
冒頭に説明したとおり、本発明に使用する熱膨張性耐火材としては、上記に説明した熱可塑性樹脂やエポキシ樹脂等の樹脂成分、前記熱膨張性層状無機物、前記無機充填材等を含む樹脂組成物からなるもの等を挙げることができるが、次にこれらの配合について説明する。
【0127】
前記樹脂組成物は、前記熱可塑性樹脂やエポキシ樹脂等の樹脂成分100重量部に対し、前記熱膨張性層状無機物を20〜350重量部及び前記無機充填材を50〜400重量部の範囲で含むものが好ましい。
【0128】
また、前記熱膨張性層状無機物および前記無機充填材の合計は、200〜600重量部の範囲が好ましい。
【0129】
かかる樹脂組成物は加熱によって膨張し耐火断熱層を形成する。この配合によれば、前記熱膨張性耐火材は火災等の加熱によって膨張し、必要な体積膨張率を得ることができ、膨張後は所定の断熱性能を有すると共に所定の強度を有する残渣を形成することもでき、安定した防火性能を達成することができる。
【0130】
前記熱膨張性層状無機物の量が20重量部未満であると、膨張倍率が不足し、充分な耐火、防火性能が得られないことがある。
【0131】
一方、熱膨張性層状無機物の量が350重量部を超えると、擬集力が不足するため、成形品としての強度が得られないことがある。
【0132】
また前記無機充填材の量が50重量部未満であると、燃焼後の残体積量が減少するため、充分な耐火断熱層が得られないことがある。
【0133】
さらに可燃物の比率が増加するため、難燃性が低下することがある。
【0134】
一方、無機充填材の量が400重量部を超えると樹脂成分の配合比率が減少するため、凝集力が不足して成形品としての強度が得られにくい。
【0135】
前記樹脂組成物における熱膨張性層状無機物及び無機充填材の合計量は、200重量部未満では燃焼後の残渣量が不足して十分な耐火性能が得られにくく、600重量部を超えると機械的物性の低下が大きくなり、使用に耐えられなくなることがある。
【0136】
さらに本発明に使用する前記樹脂組成物は、それぞれ本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて、フェノール系、アミン系、イオウ系等の酸化防止剤の他、金属害防止剤、帯電防止剤、安定剤、架橋剤、滑剤、軟化剤、顔料、粘着付与樹脂等の添加剤、ポリブテン、石油樹脂等の粘着付与剤を含むことができる。
【0137】
また本発明に使用するT型ジョイナーの力学的強度向上のためにガラス繊維、シリカアルミナ繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、ジルコニア繊維、ステンレス繊維、スラグ繊維等を使用することもできる。
【0138】
次に前記樹脂組成物の製造方法について説明する。
前記樹脂組成物の製造方法に特に限定はないが、例えば、前記樹脂組成物に含まれる前記樹脂分が熱可塑性樹脂である場合は、前記樹脂組成物の各成分を押出機、バンバリーミキサー、ニーダーミキサー等公知の混練装置に供給して溶融混練する方法や、前記樹脂組成物の各成分を有機溶剤に懸濁さたり、加温して溶融させたりして塗料状にしたり、溶剤に分散してスラリーを調製する等の方法により、前記樹脂組成物を得ることができる。
【0139】
また、前記樹脂組成物に含まれる前記樹脂分が前記エポキシ樹脂である場合は、例えば、前記樹脂組成物を有機溶剤に懸濁させたり、加温して溶融させたりして塗料状とする方法や、溶剤に分散してスラリーを調製する等の方法、また前記樹脂組成物を加熱下に溶融させる等の方法により前記樹脂組成物を得ることができる。
【0140】
前記樹脂組成物は、上記各成分を単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダーミキサー、混練ロール、ライカイ機、遊星式撹拌機等公知の装置を用いて混練することにより得ることができる。
【0141】
また、エポキシ基をもつモノマーと硬化剤とに別々に充填材を混練しておき、成形直前にスタティックミキサー、ダイナミックミキサー等で混練して得ることもできる。
【0142】
以上の様に混練した前記樹脂組成物は押出成形、射出成形、鋳型成形、プレス成形等の公知の成形技術により適宜必要な形状に成形することができる。
【0143】
以上説明した方法により、本発明に使用する前記熱膨張性耐火材料を得ることができる。
【0144】
前記熱膨張性耐火材料は市販品として入手可能であり、例えば、住友スリ―エム社製のファイアバリア(クロロプレンゴムとバーミキュライトを含有する樹脂組成物からなる熱膨張性耐火材、膨張率:3倍、熱伝導率:0.20kcal/m・h・℃)、三井金属塗料社のメジヒカット(ポリウレタン樹脂と熱膨張性黒鉛を含有する樹脂組成物からなる熱膨張性耐火材、膨張率:4倍、熱伝導率:0.21kcal/m・h・℃)、積水化学工業社製フィブロック(ブチルゴムを含む熱膨張性耐火材)等の熱膨張性耐火材料等も挙げられる。
【0145】
前記熱膨張性耐火材料は、火災時などの高温にさらされた際にその膨張層により断熱し、かつその膨張層の強度があるものであれば特に限定されないが、50kW/m2の加熱条件下で30分間加熱した後の体積膨張率が3〜50倍のものであれば好ましい。前記体積膨張率が3倍を下回ると、膨張体積が前記樹脂成分の焼失部分を十分に埋めきれず防火性能が低下することがある。また50倍を超えると、膨張層の強度が下がり、火炎の貫通を防止する効果が低下することがある。より好ましくは、体積膨張率が5〜40倍の範囲であり、さらに好ましくは8〜35倍の範囲である。
【0146】
前記膨張層が自立するためには、前記膨張層は強度の大きいことが必要であり、その強度としては、圧縮試験器にて0.25cm2の圧子を用いて、前記膨張層のサンプルを0.1m/sの圧縮速度で測定した場合の破断点応力が0.05kgf/cm2以上であれば好ましい。破断点応力が0.05kgf/cm2を下回ると、断熱膨張層が自立できなくなり防火性能が低下することがある。より好ましくは、0.1kgf/cm2以上である。
【0147】
本発明の耐火補強構造は、内部に空間を有する中空壁と前記空間に配置された熱膨張性耐火材とを少なくとも有することを特徴とするものであるが、以下に本発明の耐火補強構造およびその施工方法の実施態様について実施例に基づいて図面を参照しつつさらに詳細に説明する。
なお本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0148】
図12は第一の実施態様である耐火補強構造の施工方法を説明するための模式要部断面図であり、水平方向に設置された中空壁20を垂直に切断し、その断面を横方向から観察した状態を示したものである。
図12に例示した中空壁20は、天井壁や床壁等、水平方向に設置されたものである。
【0149】
前記中空壁20は、鋼製フレーム21の両面に耐熱パネル22がボルトやナット等の固定手段(図示せず)を用いて配置されている。また前記鋼製フレーム21と前記耐熱パネル22とに接してロックウール等の無機耐熱材23がタッカー等の固定手段(図示せず)を用いて配置されている。
【0150】
図12に例示した様に、前記中空壁20はその内部に空間24を有するものである。
【0151】
また前記鋼製フレーム21として、例えば日本工業規格(JIS G 3101)に規定される一般構造用の圧延鋼材等や日本工業規格(JIS G 3350)に規定される一般構造用軽量形鋼等が使用される。また、前記耐熱パネル22として軽量気泡コンクリート板が使用されている。
【0152】
図13は第一の実施態様である耐火補強構造の施工方法を説明するための模式要部断面図である。
第一の実施態様に使用した熱膨張性耐火シート30の形状は図5(a)に例示したものと同様であり、アルミラミネートポリエチレンテレフタレートフィルムにより、熱膨張性耐火シート片を包装したものである。
図13に例示する様に、前記中空壁20の空間24に前記中空壁20の側面開口部25から熱膨張性耐火シート30を配置することにより、耐火補強構造を施工することができる。
【0153】
前記熱膨張性耐火シート30はロール状に巻き取られているものである。このロール状の熱膨張性耐火シート30を平面状に伸ばしながら前記中空壁20の内部の空間24に送り込むことにより、耐火補強構造を施工することができる。
前記熱膨張性耐火シート30はロール状に巻き取られているため持ち運びが容易である。このため施工スペースが狭い場合であっても比較的容易に施工することができる。
【0154】
図14は第一の実施態様である耐火補強構造を例示した模式要部断面図である。
前記熱膨張性耐火シート30には分離手段として破線状の切り込みが設けられているため(図示せず)、この切り込みを用いて前記熱膨張性耐火シート30を二以上の熱膨張性耐火シートに分離することにより前記中空壁20の大きさに適したサイズに簡便に調整することができ、容易に耐火補強を施すことができる。
【0155】
なお前記熱膨張性耐火シートに加えて、例えばロックウール、セラミックウール、シリカアルミナ繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、ジルコニア繊維、セラミックブランケット等の無機耐熱材、水酸基含有化合物類、水酸化金属塩類、吸水ポリマー類等の吸熱材料の一種もしくは二種以上を前記空間24に配置してもよい。
また図14では一枚の前記熱膨張性耐火シート30を使用した場合について説明しているが、前記熱膨張性耐火シート30を二枚以上使用することもできる。
二枚以上の前記熱膨張性耐火シート30を使用する場合には、前記熱膨張性耐火シート30を水平方向に隙間無く配置してもよいし、隙間を開けて配置してもよい。また前記熱膨張性耐火シート30は垂直方向に積層して配置することもできる。
また前記熱膨張性耐火シート30に代えて、または前記熱膨張性耐火シートと共に、図5(b)や(c)により説明した形状の熱膨張性耐火シートを使用することもできる。
【0156】
上記の施工方法により、中空壁20の空間24に熱膨張性耐火材が配置された耐火補強構造が得られる。
【実施例2】
【0157】
図15は第二の実施態様である耐火補強構造の施工方法を説明するための模式要部断面図である。
【0158】
図15に例示した中空壁40は、例えば建物内部の一方の部屋と他方の部屋とを区画するための内壁、建物の外壁等、垂直方向に設置されたものである。
【0159】
前記中空壁40は鋼製フレーム41の両面に対して耐熱パネル42が設置された構造となっている。前記鋼製フレーム41は先の場合と同様、一般般構造用の圧延鋼材等や一般構造用軽量形鋼等が使用される。また、前記耐熱パネル42として石膏ボードが使用されている。
【0160】
また前記中空壁40内部には無機耐熱材43が設置されている。この第二の実施態様ではガラスウールが前記無機耐熱材43として使用されていて、前記無機耐熱材43がタッカー等の固定手段(図示せず)によって前記耐熱パネル42に対して固定されている。
【0161】
図16は第二の実施態様である耐火補強構造の施工方法を説明するための模式要部断面図である。
【0162】
図16に例示した前記中空壁40の前記耐熱パネル42の上部を回転刃を備えた電動カッター等の切断手段により切断する。前記鋼製フレーム41に対して複数の前記耐熱パネル42がボルト等の固定手段により前記鋼製フレーム41に設置される場合には、前記ボルト等の固定手段を解除することにより前記耐熱パネル41のうち上部に位置する部分の耐熱パネル42を取り外すことができる。
【0163】
次に前記中空壁40内部の無機耐熱材43の上部を取り外す。
この様にして図16に例示した開口部45を有する前記中空壁40を得ることができる。
【0164】
図17は第二の実施態様である耐火補強構造の施工方法を説明するための模式要部断面図であり、図18は第二の実施態様である耐火補強構造の施工方法を説明するための模式要部斜視図である。
【0165】
図17および図18に例示する様に前記開口部45から前記中空壁40の内部の空間44に熱膨張性耐火材を配置する。
【0166】
この第二の実施態様に使用する前記熱膨張性耐火材は、先の図5(a)により説明した形状の熱膨張性耐火シート300であり、(1)アルミラミネートガラスクロス、(2)熱膨張性耐火材からなるシートおよび(3)アルミラミネートガラスクロスの三層からなるシート状積層体の上面と下面とをセラミックブランケットによりはさみ、全体をさらにアルミラミネートポリエチレンテレフタレートフィルムにより包装した熱膨張性耐火シート片3が複数集合して形成されたものである。
【0167】
前記熱膨張性耐火シート300は熱膨張性耐火シート片3同士を連結するアルミラミネートポリエチレンテレフタレートフィルムの連結部により交互に折り返されてたたまれている。このたたまれた熱膨張性耐火シート300を平面状に伸ばしながら前記中空壁40の開口部45から挿入して前記中空壁40の内部の空間44に送り込むことにより、前記熱膨張性耐火シート300を前記中空壁40の内部の空間44に配置する。
【0168】
前記熱膨張性耐火シート300には分離手段として破線状の切り込みが設けられているため(図示せず)、この切り込みを用いて前記熱膨張性耐火シート300を二以上の熱膨張性耐火シートに分離することにより前記中空壁40の大きさに適したサイズに簡便に調整することができ、容易に耐火補強を施すことができる。
【0169】
前記熱膨張性耐火シート300を前記中空壁40の内部の空間44に配置する方法としては、例えば、金属製リング等を用いて前記鋼製フレーム41に前記熱膨張性耐火シート300を吊り下げる方法、伸縮自在竿を前記中空壁40内部の対向する前記耐熱パネル42間に設置して、前記伸縮自在竿に前記熱膨張性耐火シート300を吊り下げる方法、タッカー、ピン、ビス、ボルト、接着剤等を用いて前記中空壁40内部の前記耐熱パネル42や前記鋼製フレーム41に前記熱膨張性耐火シート300を固定する方法等が挙げられる(図示せず)。
【0170】
前記熱膨張性耐火シート300を前記中空壁40の内部に配置する方法は一種もしくは二種以上を採用することができる。
【0171】
本発明の場合は前記熱膨張性耐火シート300がボルト(図示せず)により前記鋼製フレーム41に配置されている。
【0172】
図19は中空壁40の空間44に前記熱膨張性耐火シート300が配置された耐火補強構造を例示した模式要部断面図である。
【0173】
図19に例示する様に、前記耐熱パネル42の内面に対して前記無機耐熱材43をタッカー等の固定手段(図示せず)により再度固定し、前記開口部45に耐熱パネルを再度設置することにより、中空壁40の空間44に前記熱膨張性耐火シート300が配置された耐火補強構造が得られる。
【0174】
以上説明した通り、本発明の耐火補強構造によれば、中空壁の内部の空間に熱膨張性耐火材を配置しているため、火災が発生した場合でも火災の熱により前記熱膨張性耐火材が膨張して火災の熱の伝導を妨げるため中空壁内部の温度上昇を有効に遅延させることができ、耐火性に優れる。
【0175】
また既存の壁の耐火性能が十分ではないことが事後的に判明した場合であっても、本発明の耐火補強構造によれば、前記壁に別途耐火材料や耐火パネル等を前記壁に新たに設置する工事、前記壁を撤去してから新たに耐火性能のある壁を設置する工事、前記壁の全表面を取り除き、内部全体に耐火材料を新たに充填する工事等を必要とせず、前記中空壁に開口部を設けて前記中空壁の内部の空間に前記熱膨張性耐火材を配置することにより耐火補強構造が得られることから施工性にも優れ、単位時間当たりの耐火補強構造の生産性にも優れる。
【図面の簡単な説明】
【0176】
【図1】熱膨張性耐火材料からなるシート状成形体を例示した模式要部正面図である。
【図2】熱膨張性耐火材と基材とを積層したシート状積層体を例示した模式要部斜視図である。
【図3】熱膨張性耐火材料等を基材により包装した熱膨張性包装体を例示した模式要部断面図である。
【図4】熱膨張性耐火材料等を基材により包装した熱膨張性包装体を例示した模式要部断面図である。
【図5】熱膨張性耐火シートの全体形状を説明するための模式要部正面図である。
【図6】熱膨張性耐火シートの連結部を説明するための模式要部正面図である。
【図7】熱膨張性耐火シートの連結部の異なる一実施態様を例示した模式要部正面図である。
【図8】熱膨張性耐火シートの連結部の異なる一実施態様を例示した模式要部正面図である。
【図9】熱膨張性耐火シートの連結部の異なる一実施態様を例示した模式要部正面図である。
【図10】熱膨張性耐火シートの連結部の異なる一実施態様を例示した模式要部正面図である。
【図11】熱膨張性耐火シートの連結部の異なる一実施態様を例示した模式要部正面図である。
【図12】第一の実施態様である耐火補強構造の施工方法を説明するための模式要部断面図である。
【図13】第一の実施態様である耐火補強構造の施工方法を説明するための模式要部断面図である。
【図14】第一の実施態様である耐火補強構造の施工方法を説明するための模式要部断面図である。
【図15】第二の実施態様である耐火補強構造の施工方法を説明するための模式要部断面図である。
【図16】第二の実施態様である耐火補強構造の施工方法を説明するための模式要部断面図である。
【図17】第二の実施態様である耐火補強構造の施工方法を説明するための模式要部断面図である。
【図18】第二の実施態様である耐火補強構造の施工方法を説明するための模式要部斜視図である。
【図19】第二の実施態様である耐火補強構造の模式要部断面図である。
【符号の説明】
【0177】
1 シート状成形体
2 切り込み
3 熱膨張性耐火シート片
4 シート状積層体
5 アルミラミネートガラスクロス
6 熱膨張性包装体
7 基材
8 シート状成形体
9 無機耐熱材料
10 連結部
11 切り欠き
12 糸
13 リング
14 クリップ
20、40 中空壁
21、41 鋼製フレーム
22、42 耐熱パネル
23、43 無機耐熱材
24、44 空間
25、45 開口部
30、100〜108、300 熱膨張性耐火シート
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐火補強構造およびその施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建物の外壁や内壁、床面を形成する床壁、天井面を形成する天井壁等に代表される壁は火災発生時には炎や熱を遮断する役割を担うものであり、火災による被害を最小限に抑える耐火性能を有することが求められる。
この耐火性能は時代の推移と共により良いものが求められてきている。このため、ある建築物の壁が、壁一般に対する過去の基準に合致していたとしても、今日要請される基準に合致しているとは限らないのが実情である。
また実際の問題として建築物の前記壁の耐火性能が今日要請される基準に達していないことが判明した場合にはそのまま放置することはできないため、何らかの耐火補強を必要とするのが通常である。
しかし耐火性能が劣る壁に対して耐火補強を行うためには、前記壁に別途耐火材料や耐火パネル等を前記壁に新たに重ねて設置する工事、前記壁を撤去してから新たに耐火性能のある壁を設置する工事、前記壁の全表面を取り除き、内部全体に耐火材料を新たに充填する工事等、大がかりな工事が必要となる場合があった。
またその工事の最中にはその建物に住み続けることやその建物で仕事を継続することが困難となるため、その建物に住んでいる人に対して別途居住環境を提供したり、新たな職場環境を提供しなければならない等、工事以外にも手間暇が掛かるため、工期が長くなり単位時間当たりの施工性に劣るとの問題があった。
【0003】
一方、耐火性能の向上に関連して、石膏ボードに熱膨張性耐火材を設けてなる耐火パネル壁が提案されている(特許文献1)。
この構造であれば火災が発生した際に熱膨張性耐火材の膨張が阻害されることがないので有効に火災の際に発生する炎や熱を遮断できるとともに、簡便に施工できることから施工性に優れるとされる。
しかしながらこの提案された耐火パネル壁の場合は建物を新たに建造する場合には施工性に問題はないものの、耐火性が劣る既存の壁に前記耐火パネル壁を適用する場合には既存の壁全体を撤去してから前記耐火パネル壁を新たに設置するか、既存の壁に重ねて前記耐火パネル壁を設置する等の耐火工事が必要となることから、やはり既存の壁に対する大がかりな耐火補強の問題が依然として残る。
【特許文献1】特開平7−133640号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、耐熱性能の劣る壁に対して簡便に耐火性能を付与することのできる耐火補強構造およびその施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するため本発明者らが鋭意検討した結果、内部に空間を有する中空壁の前記空間に熱膨張性耐火材が配置された耐火補強構造が前記目的に適うことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち本発明は、
[1]内部に空間を有する中空壁と、
前記空間に配置された熱膨張性耐火材と、
を少なくとも有することを特徴とする、耐火補強構造を提供するものである。
【0007】
また本発明は、
[2]前記熱膨張性耐火材は、二以上の熱膨張性耐火シート片が連結された熱膨張性耐火シートを少なくとも含むことを特徴とする、上記[1]に記載の耐火補強構造を提供するものである。
【0008】
また本発明は、
[3]前記熱膨張性耐火材は、熱膨張性耐火シート片同士の連結部に分離手段が設けられていることを特徴とする、上記[1]または[2]に記載の耐火補強構造を提供するものである。
【0009】
また本発明は、
[4]内部に空間を有する中空壁の内部の空間に、熱膨張性耐火材を配置することを特徴とする、耐火補強構造の施工方法を提供するものである。
【0010】
また本発明は、
[5]中空壁に開口部を設ける工程と、
前記開口部を通して中空壁の内部の空間に前記熱膨張性耐火材を配置する工程と、
を少なくとも有することを特徴とする、上記[4]に記載の耐火補強構造の施工方法を提供するものである。
【0011】
また本発明は、
[6]前記熱膨張性耐火材は、二以上の熱膨張性耐火シート片が連結された熱膨張性耐火シートを少なくとも含むものであり、
ロール状に巻き取られた前記熱膨張性耐火シート
および/または
前記熱膨張性耐火シート片の連結部が交互に折り返された前記熱膨張性耐火シート、
を平面状に伸ばしながら前記中空壁の内部の空間に送り込む工程を有することを特徴とする、上記[4]または[5]に記載の耐火補強構造の施工方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の耐火補強構造は内部に空間を有する中空壁の前記空間に熱膨張性耐火材が配置された構造を有するため、中空壁に対して簡便に耐火補強を施すことができる。
【0013】
また本発明の耐火補強構造に使用する熱膨張性耐火材として二以上の熱膨張性耐火シート片が連結された熱膨張性耐火シートを少なくとも含むものを使用することにより、前記熱膨張性耐火シートをロール状に巻き取った形状や前記熱膨張性耐火シートを連結部により交互に折り返された形状とすることができることから、前記熱膨張性耐火シートの運搬性に優れ、狭い空間に持ち運ぶことができる。さらにこれらのロール状に巻き取った前記熱膨張性耐火シートや交互に折り返された前記熱膨張性耐火シートを平面状に伸ばしながら中空壁内部の空間に前記熱膨張性耐火シートを送り込むことにより中空壁に対して耐火補強を行うことができることから耐火補強構造の施工性に優れる。
【0014】
また前記熱膨張性耐火シートに含まれる前記熱膨張性耐火シート片同士の連結部に分離手段を設けることにより、施工現場で容易に前記熱膨張性耐火シートの大きさを調整することができることから耐火補強構造の施工性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
最初に本発明に使用する熱膨張性耐火材について説明する。
本発明に使用する熱膨張性耐火材としては、例えば、熱膨張性耐火材料を平面状に成形した熱膨張性耐火シート等が挙げられる。
【0016】
前記熱膨張性耐火シートとしては、例えば、熱膨張性耐火材料からなるシート状成形体、熱膨張性耐火材料と基材とを積層したシート状積層体、熱膨張性耐火材料等を基材により包装した熱膨張性包装体等の一種もしくは二種以上を挙げることができる。
【0017】
前記熱膨張性包装体としては、例えば、前記熱膨張性耐火材料からなるシート状成形体、前記熱膨張性耐火材と基材とを積層したシート状積層体等の一種もしくは二種以上をさらに基材により包装したもの、
前記熱膨張性耐火材料からなるシート状成形体、前記熱膨張性耐火材と基材とを積層したシート状積層体等の一種もしくは二種以上を裁断、粉砕等して得られる熱膨張性耐火材小片等を基材により包装したもの等を挙げることができる。
【0018】
また前記基材としては、例えば、金属箔類、合成樹脂類等を含むものを挙げることができる。
【0019】
前記金属箔としては、例えば、アルミニウム箔、銅箔、ステンレス箔、錫箔、鉛箔、錫鉛合金箔、クラッド箔、鉛アンチ箔等の金属箔類等が挙げられる。
【0020】
また前記合成樹脂類としては、例えば、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリブテン系樹脂、ポリペンテン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、フェノール系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリイソブチレン等が挙げられる。
【0021】
前記基材は前記金属箔類からなるものや前記合成樹脂類からなるものに限定されず、例えば、前記金属箔類と前記合成樹脂類との積層体、前記金属箔類と無機繊維類との積層体、前記樹脂類と前記無機繊維類との積層体等を使用することができる。
【0022】
前記無機繊維類としては、例えば、ガラスクロス、シリカクロス、アルミナクロス等を挙げることができる。
【0023】
前記基材は一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0024】
次に本発明に使用する前記熱膨張性耐火材の実施態様について、図面を参照しつつ説明する。
図1は前記熱膨張性耐火シートの一実施態様として熱膨張性耐火材料からなるシート状成形体を例示した模式要部正面図である。
【0025】
図1に例示する様に、前記熱膨張性耐火材料からなるシート状成形体1は押出成形等の方法により熱膨張性耐火材料をシート状に成形したものであり、好ましくは厚み0.5〜10mm、より好ましくは厚み1〜5mmの範囲、好ましくは幅5cm〜3m、より好ましくは幅10cm〜1mの範囲のものである。
【0026】
また本発明に使用する前記熱膨張性耐火シートには分離手段を設けることが好ましい。
【0027】
前記熱膨張性耐火材料からなるシート状成形体1には分離手段として長手方向に対して垂直方向に破線状の切り込み2が設けられている。この破線状の切り込み2により、前記熱膨張性耐火材料からなるシート状成形体1から熱膨張性耐火シート片3を分離することができ、また、前記熱膨張性耐火材料からなるシート状成形体1を二以上の熱膨張性耐火材料からなるシート状成形体に分離することができる。
【0028】
前記熱膨張性耐火シート片3の幅は本発明に使用される中空壁の設置場所や大きさに応じて適宜選択することができるが、好ましくは10〜500mmの範囲であり、より好ましくは30〜200mmの範囲である。
【0029】
なお前記熱膨張性耐火材料からなるシート状成形体1では、前記破線状の切り込み2が熱膨張性耐火シート片3、3の連結部となっている。
【0030】
図2は前記熱膨張性耐火シートの一実施態様として熱膨張性耐火材と基材とを積層したシート状積層体4を例示した模式要部斜視図である。
【0031】
前記熱膨張性耐火材と基材とを積層したシート状積層体4の形状や破線状の切り込み2の位置関係は先の図1により説明した前記熱膨張性耐火材料からなるシート状成形体1の場合と同様である。
【0032】
図2に例示する様に、前記熱膨張性耐火材料と基材とを積層したシート状積層体4は、熱膨張性耐火材料からなるシート状成形体1とアルミラミネートガラスクロス5との積層体となっている。
【0033】
前記熱膨張性耐火材料からなるシート状成形体1に積層する基材はアルミラミネートガラスクロス5に代えて、またはアルミラミネートガラスクロス5と共に異なる一種もしくは二種以上を使用することもできる。
【0034】
図3は前記熱膨張性耐火シートの一実施態様として熱膨張性耐火材料3等を基材7により包装した熱膨張性包装体6を例示した模式要部断面図である。
【0035】
図3に例示する様に、熱膨張性耐火シート片3が基材7により包装されている。前記熱膨張性耐火シート片3は熱膨張性耐火材料からなるものであり、前記基材7としてアルミラミネートポリエチレンテレフタレートが使用されている。
【0036】
前記熱膨張性耐火材料等を基材により包装した熱膨張性包装体6は、前記熱膨張性耐火シート片3を前記基材7により前記熱膨張性耐火シート片3の両面から貼着することにより得ることができる。
【0037】
貼着の方法としては、例えば熱プレス等の手段により前記基材7を熱融着させる方法、接着剤により接着する方法等を挙げることができる。
【0038】
前記基材7はアルミラミネートポリエチレンテレフタレートに代えて、またはアルミラミネートポリエチレンテレフタレートと共に異なる一種もしくは二種以上を使用することもできる。
【0039】
前記熱膨張性耐火材料等を基材により包装した熱膨張性包装体6の異なる実施態様として、熱膨張性耐火材料からなる前記熱膨張性耐火シート片3のものに代えて、熱膨張性耐火材料と基材とを積層したシート状積層体等を使用することもできる。
【0040】
前記熱膨張性耐火材料等を基材により包装した熱膨張性包装体6等の場合、前記基材7に包装されるのは前記熱膨張性耐火材料のみに限定されず、前記熱膨張性耐火材料に加えて例えばロックウール、セラミックウール、シリカアルミナ繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、ジルコニア繊維、セラミックブランケット等の無機耐熱材、水酸基含有化合物類、水酸化金属塩類、吸水ポリマー類等の吸熱材料の一種もしくは二種以上を併用することができる。
【0041】
図4は前記熱膨張性耐火シートの一実施態様として熱膨張性耐火材料等を基材により包装した熱膨張性包装体6を例示した模式要部断面図である。
【0042】
図4に例示される様に、前記基材7により、裁断された熱膨張性耐火材料からなるシート状成形体8および無機耐熱材料9が包装されている。ここでは無機耐熱材料9としてセラミックウールが使用されている。
【0043】
図5は前記熱膨張性耐火シートの全体形状を説明するための模式要部正面図である。
【0044】
図1〜図4により説明した実施態様の場合は図5(a)に例示する熱膨張性耐火シート100の全体形状の様に長方形の前記熱膨張性耐火シート片3の長辺同士が互いに連結されているものであった。
図5(a)に例示する熱膨張性耐火シート100の変形例として、図5(b)に例示する様に、長方形の前記熱膨張性耐火シート片3の短辺同士が互いに連結されている前記熱膨張性耐火シート101や、図5(c)に例示する様に、各熱膨張性耐火シート片3同士が互いに格子状に連結されている前記熱膨張性耐火シート102等が挙げられる。
【0045】
図6は熱膨張性耐火シートの連結部を説明するための模式要部正面図である。
先の図1および2に例示した前記熱膨張性耐火シートの連結部は破線上の切り込みからなるものであったが、図6に例示する熱膨張性耐火シート103は、前記熱膨張性耐火シート片3を包装する基材7が連結部10を形成している。
【0046】
前記連結部10には分離手段として破線状の切り込み2が設けられていて、前記熱膨張性耐火シート103から熱膨張性耐火シート片3を分離したり、前記熱膨張性耐火シート103を二つの前記熱膨張性耐火シートに分離したりすることが容易にできる構造となっている。
【0047】
このため施工現場で前記熱膨張性耐火シート103のサイズが前記中空壁のサイズと合致しないことが判明した場合でも前記熱膨張性耐火シート103のサイズを柔軟に変更することができるため、施工性に優れる。
【0048】
図7は熱膨張性耐火シート104の連結部10の異なる一実施態様を例示した模式要部正面図である。
【0049】
図7に例示される様に、前記熱膨張性耐火シート104の連結部10は前記熱膨張性耐火シート片3同士の一部がつながっているものであってもよい。
【0050】
図8は熱膨張性耐火シート105の連結部10の異なる一実施態様を例示した模式要部正面図である。
【0051】
前記熱膨張性耐火シート105の連結部10には切り欠き11が設けられていて、前記熱膨張性耐火シート105から前記熱膨張性耐火シート片3を分離したり、前記熱膨張性耐火シート105を二つ以上の前記熱膨張性耐火シートに分離したりすることが容易にできる構造となっていることから同様に施工性に優れる。
【0052】
図9は熱膨張性耐火シート106の連結部10の異なる一実施態様を例示した模式要部正面図である。
【0053】
前記熱膨張性耐火シート106の連結部10は前記熱膨張性耐火シート片3の端部同士を無機繊維や金属繊維等からなる糸12により縫合することにより形成することができる。この場合には前記糸12を引き抜くことにより、前記熱膨張性耐火シート106から前記熱膨張性耐火シート片3を分離したり、前記熱膨張性耐火シート106を二つ以上の前記熱膨張性耐火シートに分離したりすることが容易にできることから同様に施工性に優れる。
【0054】
図10は前記熱膨張性耐火シート107の連結部10の異なる一実施態様を例示した模式要部正面図である。
【0055】
図10に例示される様に、金属製の針金等のリング13により前記熱膨張性耐火シート片3同士を連結して前記熱膨張性耐火シート107を形成することができる。前記リング13を切断することにより前記熱膨張性耐火シート107から前記熱膨張性耐火シート片3を分離したり、前記熱膨張性耐火シート107を二つ以上の前記熱膨張性耐火シートに分離したりすることが容易にできることから同様に施工性に優れる。
【0056】
図11は前記熱膨張性耐火シート108の連結部10の異なる一実施態様を例示した模式要部正面図である。
【0057】
図11に例示される様に、金属製のクリップ14等により前記熱膨張性耐火シート片3同士を連結して前記熱膨張性耐火シート108を形成することができる。
【0058】
前記クリップ14を取り外すことにより前記熱膨張性耐火シート108から前記熱膨張性耐火シート片3を分離したり、前記熱膨張性耐火シート108を二つ以上の前記熱膨張性耐火シートに分離したりすることが容易にできることから、同様に施工性に優れる。
【0059】
図6〜図11に例示される前記連結部の構造は一または二以上を採用することができる。
【0060】
なお図1〜図5により説明した前記熱膨張性耐火シートの連結部の構造についても上記に説明した前記熱膨張性耐火シートの連結部の構造と同様である。
【0061】
次に本発明の耐火補強構造に使用する中空壁について説明する。
本発明に使用する中空壁はその内部に空間を有するものであればよく、特に限定はないが、具体的には例えば木桟、金属フレーム、鉄筋コンクリート製の柱、鋼材からなる鉄骨等の少なくとも一つの枠組みに対して耐熱パネル等を両側から固定した構造のもの等を挙げることができる。
前記耐熱パネルには、例えば、セメント系パネル、無機セラミック系パネル等が使用される。
前記セメント系パネルとしては、例えば、硬質木片セメント板、無機繊維含有スレート板、軽量気泡コンクリート板、モルタル板、プレキャストコンクリート板等が挙げられる。
【0062】
前記無機セラミック系パネルとしては、例えば、石膏ボード、けい酸カルシウム板、炭酸カルシウム板、ロックウール板、窯業系板等が挙げられる。
【0063】
ここで前記石膏ボードとしては、具体的には焼石膏に鋸屑やパーライトなどの軽量材を混入し、両面に厚紙を貼って成板したもので、例えば、普通石膏ボード(JIS A6901準拠:GB−R)、化粧石膏ボード(JIS A6911準拠:GB−D)、防水石膏ボード(JIS A6912準拠:GB−S)、強化石膏ボード(JIS A6913準拠:GB−F)、吸音石膏ボード(JIS A6301準拠:GB−P)等が挙げられる。
【0064】
前記耐熱パネルは一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0065】
次に本発明に使用する熱膨張性耐火材料について説明する。
前記熱膨張性耐火材料としては、例えば、具体的には熱可塑性樹脂やエポキシ樹脂等の樹脂成分、熱膨張性層状無機物、リン化合物、無機充填材等を含む樹脂組成物からなるもの等を挙げることができる。
【0066】
前記樹脂組成物の各成分のうち、まず前記樹脂成分について説明する。
前記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリ(1−)ブテン系樹脂、ポリペンテン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、フェノール系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリイソブチレン等の合成樹脂類、
天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、1,2−ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、塩素化ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム等のゴム物質等が挙げられる。
【0067】
これらの合成樹脂類及び/又はゴム物質は、一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0068】
前記合成樹脂類及び/又はゴム物質の中でも、ハロゲン化されたものは、それ自体難燃性が高く、熱による脱ハロゲン化反応により架橋が起こり、加熱後の残渣の強度が向上する点において好ましい。
【0069】
前記ポリエチレン系樹脂としては、例えば、エチレン単独重合体、エチレンを主成分とするエチレンと他のα−オレフィンとの共重合体、エチレンとα−オレフィン以外のモノマーとの共重合体及びこれらの共重合体や重合体の混合物等が挙げられる。
【0070】
前記エチレンを主成分とするエチレンと他のα−オレフィンとの共重合体におけるα−オレフィンとしては、例えば、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−ブテン、1−ペンテン等が挙げられる。
【0071】
また、前記エチレンとα−オレフィン以外のモノマーとの共重合体としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−メタクリレート共重合体等が挙げられる。
【0072】
前記エチレン単独重合体又はエチレンと他のα−オレフィンとの共重合体としては、例えば、チーグラー・ナッタ触媒、バナジウム触媒、4価の遷移金属を含むメタロセン化合物等を重合触媒として重合されたものが挙げられるが、中でも、4価の遷移金属を含むメタロセン化合物等を触媒として得られるポリエチレン系樹脂が好ましい。
【0073】
前記合成樹脂類及び/又はゴム物質には、更に、本発明における発泡断熱材の耐火性能を阻害しない範囲で、架橋や変性が施されてもよい。
【0074】
前記合成樹脂類及び/又はゴム物質の架橋や変性を行う時期については、特に限定されず、予め架橋、変性した前記合成樹脂類及び/又はゴム物質を用いてもよく、後述するリン化合物や無機充填材等の他の成分を配合する際に同時に架橋や変性を行ってもよい。
【0075】
また、前記合成樹脂類及び/又はゴム物質に他の成分を配合した後に架橋や変性してもよく、上記架橋や変性は、いずれの段階で行ってもよい。
【0076】
前記の架橋方法については特に限定されず、前記合成樹脂類及び/又はゴム物質について通常行われる架橋方法により実施することができる。例えば、各種架橋剤、過酸化物等を使用する架橋方法、電子線照射による架橋方法が挙げられる。
【0077】
また、本発明に使用する樹脂成分のうち、先に示したエポキシ樹脂としては、特に限定はないが、例えば、エポキシ基を持つモノマーと硬化剤とを反応させて得られる樹脂等を挙げることができる。
【0078】
前記エポキシ基を持つモノマーとしては、例えば、2官能のグリシジルエーテル型として、ポリエチレングリコール型、ポリプロピレングリコール型、ネオペンチルグリコール型、1,6−ヘキサンジオール型、トリメチロールプロパン型、プロピレンオキサイド−ビスフェノールA、水添ビスフェノールA型、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型等のモノマーが挙げられる。
【0079】
また、グリシジルエステル型として、ヘキサヒドロ無水フタル酸型、テトラヒドロ無水フタル酸型、ダイマー酸型、p−オキシ安息香酸型等のモノマーが挙げられる。
【0080】
更に多官能のグリシジルエーテル型として、フェノールノボラック型、オルトクレゾール型、DPPノボラック型、ジシクロペンタジエン、フェノール型等のモノマーが挙げられる。
【0081】
これらは、一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0082】
また、前記硬化剤としては、例えば、重付加型硬化剤、触媒型硬化剤等が挙げられる。
【0083】
前記重付加型硬化剤としては、例えば、ポリアミン、酸無水物、ポリフェノール、ポリメルカプタン等が挙げられる。
【0084】
前記触媒型硬化剤としては、例えば三級アミン類、イミダゾール類、ルイス酸錯体等が挙げられる。
【0085】
これらエポキシ樹脂の硬化方法は特に限定されず、公知の方法により行うことができる。
【0086】
なお、前記樹脂成分の溶融粘度、柔軟性、粘着性等の調整のため、二種以上の樹脂成分をブレンドしたものを使用することができる。
【0087】
次に前記樹脂組成物の各成分のうち、前記熱膨張性層状無機物について説明する。
前記熱膨張性層状無機物は加熱時に膨張するものであるが、かかる熱膨張性層状無機物に特に限定はなく、例えば、バーミキュライト、カオリン、マイカ、熱膨張性黒鉛等を挙げることができる。
【0088】
前記熱膨張性黒鉛とは、従来公知の物質であり、天然鱗状グラファイト、熱分解グラファイト、キッシュグラファイト等の粉末を、濃硫酸、硝酸、セレン酸等の無機酸と、濃硝酸、過塩素酸、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、重クロム酸塩、過酸化水素等の強酸化剤とで処理してグラファイト層間化合物を生成させたものであり、炭素の層状構造を維持したままの結晶化合物の一種である。
【0089】
上記のように酸処理して得られた熱膨張性黒鉛は、更にアンモニア、脂肪族低級アミン、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物等で中和したものを使用するのが好ましい。
【0090】
前記脂肪族低級アミンとしては、例えば、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン等が挙げられる。
【0091】
前記アルカリ金属化合物および前記アルカリ土類金属化合物としては、例えば、カリウム、ナトリウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム等の水酸化物、酸化物、炭酸塩、硫酸塩、有機酸塩等が挙げられる。
【0092】
前記熱膨張性黒鉛の粒度は、20〜200メッシュの範囲のものが好ましい。
【0093】
粒度が20メッシュより小さくなると、黒鉛の膨張度が小さく、充分な耐火断熱層が得られにくく、また、粒度が200メッシュより大きくなると、黒鉛の膨張度が大きいという利点はあるが、前記熱可塑性樹脂又はエポキシ樹脂と混練する際に分散性が悪くなり、物性が低下し易い。
【0094】
上記中和された熱膨張性黒鉛の市販品としては、例えば、UCAR CARBON社製の「GRAFGUARD#160」、「GRAFGUARD#220」、東ソー社製の「GREP−EG」等が挙げられる。
【0095】
次に先の樹脂組成物の各成分のうち、前記無機充填材について説明する。
前記無機充填材としては、特に限定されないが、例えば、シリカ、珪藻土、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト類、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、ドーソナイト、ハイドロタルサイト、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、石膏繊維、ケイ酸カルシウム等のカリウム塩、タルク、クレー、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セビオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカ系バルン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素バルン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、チタン酸ジルコン酸鉛、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化ケイ素、ステンレス繊維、ホウ酸亜鉛、各種磁性粉、スラグ繊維、フライアッシュ、無機系リン化合物、シリカアルミナ繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、ジルコニア繊維等が挙げられる。
【0096】
これらは、一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0097】
前記無機充填材は骨材的役割を果たして、加熱後に生成する膨張断熱層強度の向上や熱容量の増大に寄与する。
【0098】
このため、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛で代表される金属炭酸塩、骨材的役割の他に加熱時に吸熱効果も付与する水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムで代表される含水無機物が好ましく、アルカリ金属、アルカリ土類金属、及び周期律表IIbの金属炭酸塩又はこれらと前記含水無機物との混合物が好ましい。
【0099】
また、リン化合物は、難燃性を向上させるため、または窒素化合物、アルコール類等と組み合わせて熱膨張性機能を発現するために用いられる。
【0100】
前記リン化合物としては、特に限定されず、例えば、赤リン;トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート等の各種リン酸エステル;リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸マグネシウム等のリン酸金属塩;ポリリン酸アンモニウム類;化学式1で表される化合物等が挙げられる。
【0101】
これらのリン化合物は、一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0102】
これらのうち、耐火性の観点から、赤リン、下記の化学式で表される化合物、及び、ポリリン酸アンモニウム類が好ましく、性能、安全性、費用等の点においてポリリン酸アンモニウム類がより好ましい。
【0103】
【化1】
上記化学式中、R1及びR3は、水素、炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は、炭素数6〜16のアリール基を表す。
【0104】
R2は、水酸基、炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、炭素数1〜1
6の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシル基、炭素数6〜16のアリール基、又は、炭素数6〜16のアリールオキシ基を表す。
【0105】
前記化学式で表される化合物としては、例えば、メチルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸ジエチル、エチルホスホン酸、プロピルホスホン酸、ブチルホスホン酸、2−メチルプロピルホスホン酸、t−ブチルホスホン酸、2,3−ジメチル−ブチルホスホン酸、オクチルホスホン酸、フェニルホスホン酸、ジオクチルフェニルホスホネート、ジメチルホスフィン酸、メチルエチルホスフィン酸、メチルプロピルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、ジオクチルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸、ジエチルフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、ビス(4−メトキシフェニル)ホスフィン酸等が挙げられる。
【0106】
中でも、t−ブチルホスホン酸は、高価ではあるが、高難燃性の点において好ましい。
【0107】
ポリリン酸アンモニウム類としては、特に限定されず、例えば、ポリリン酸アンモニウム、メラミン変性ポリリン酸アンモニウム等が挙げられるが、難燃性、安全性、コスト、取扱性等の点からポリリン酸アンモニウムが好適に用いられる。
【0108】
市販品としては、例えば、クラリアント社製の「商品名:EXOLIT AP422」及び「商品名:EXOLIT AP462」等が挙げられる。
【0109】
前記リン化合物は、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛等の金属炭酸塩と反応して、金属炭酸塩の膨張を促すと考えられ、特に、リン化合物として、ポリリン酸アンモニウムを使用した場合に、高い膨張効果が得られる。
【0110】
また、有効な骨材として働き、燃焼後に形状保持性の高い残渣を形成する。
【0111】
前記窒素化合物としては、特に限定はないが、メラミン系化合物等であれば好ましい。
【0112】
また前記アルコール類としては、特に限定はないが、ペンタエリスリトール等の多価アルコール等であれば好ましい。
【0113】
本発明に使用する無機充填材が粒状の場合には、その粒径としては、0.5〜200μmの範囲のものが好ましく、より好ましくは、1〜50μmの範囲のものである。
【0114】
無機充填材の添加量が少ないときは、分散性が性能を大きく左右するため、粒径の小さいものが好ましいが、粒径0.5μm未満では二次凝集が起こり、分散性が悪くなることがある。
【0115】
また、無機充填材の添加量が多いときは、高充填が進むにつれて、樹脂組成物の粘度が高くなり成形性が低下するが、粒径を大きくすることによって樹脂組成物の粘度を低下させることができる点から、上記範囲の中でも粒径の大きいものが好ましい。
【0116】
なお、粒径が200μmを超えると、成形体の表面性、樹脂組成物の力学的物性が低下することがある。
【0117】
前記無機充填材の中でも、特に骨材的役割を果たす炭酸カルシウム、炭酸亜鉛等の金属炭酸塩;骨材的役割の他に加熱時に吸熱効果を付与する水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の含水無機物が好ましい。
【0118】
前記含水無機物及び金属炭酸塩を併用することは、燃焼残渣の強度向上や熱容量増大に大きく寄与すると考えられる。
【0119】
前記無機充填材の中で、特に水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の含水無機物は、加熱時の脱水反応によって生成した水のために吸熱が起こり、温度上昇が低減されて高い耐熱性が得られる点、及び、燃焼残渣として酸化物が残存し、これが骨材となって働くことで燃焼残渣の強度が向上する点で好ましい。
【0120】
また、水酸化マグネシウムと水酸化アルミニウムは、脱水効果を発揮する温度領域が異なるため、併用すると脱水効果を発揮する温度領域が広くなり、より効果的な温度上昇抑制効果が得られることから、併用することが好ましい。
【0121】
前記含水無機物の粒径は、小さくなると嵩が大きくなって高充填化が困難となるので、脱水効果を高めるために高充填するには粒径の大きなものが好ましい。
【0122】
具体的には、粒径が18μmでは、1.5μmの粒径に比べて充填限界量が約1.5倍程度向上することが知られている。
【0123】
さらに、粒径の大きいものと小さいものとを組み合わせることによって、より高充填化が可能となる。
【0124】
前記含水無機物の市販品としては、例えば、水酸化アルミニウムとして、粒径1μmの「商品名:ハイジライトH−42M」(昭和電工社製)、粒径18μmの「商品名:ハイジライトH−31」(昭和電工社製)等が挙げられる。
【0125】
前記炭酸カルシウムの市販品としては、例えば、粒径1.8μmの「商品名:ホワイトンSB赤」(白石カルシウム社製)、粒径8μmの「商品名:BF300」(備北粉化社製)等が挙げられる。
【0126】
冒頭に説明したとおり、本発明に使用する熱膨張性耐火材としては、上記に説明した熱可塑性樹脂やエポキシ樹脂等の樹脂成分、前記熱膨張性層状無機物、前記無機充填材等を含む樹脂組成物からなるもの等を挙げることができるが、次にこれらの配合について説明する。
【0127】
前記樹脂組成物は、前記熱可塑性樹脂やエポキシ樹脂等の樹脂成分100重量部に対し、前記熱膨張性層状無機物を20〜350重量部及び前記無機充填材を50〜400重量部の範囲で含むものが好ましい。
【0128】
また、前記熱膨張性層状無機物および前記無機充填材の合計は、200〜600重量部の範囲が好ましい。
【0129】
かかる樹脂組成物は加熱によって膨張し耐火断熱層を形成する。この配合によれば、前記熱膨張性耐火材は火災等の加熱によって膨張し、必要な体積膨張率を得ることができ、膨張後は所定の断熱性能を有すると共に所定の強度を有する残渣を形成することもでき、安定した防火性能を達成することができる。
【0130】
前記熱膨張性層状無機物の量が20重量部未満であると、膨張倍率が不足し、充分な耐火、防火性能が得られないことがある。
【0131】
一方、熱膨張性層状無機物の量が350重量部を超えると、擬集力が不足するため、成形品としての強度が得られないことがある。
【0132】
また前記無機充填材の量が50重量部未満であると、燃焼後の残体積量が減少するため、充分な耐火断熱層が得られないことがある。
【0133】
さらに可燃物の比率が増加するため、難燃性が低下することがある。
【0134】
一方、無機充填材の量が400重量部を超えると樹脂成分の配合比率が減少するため、凝集力が不足して成形品としての強度が得られにくい。
【0135】
前記樹脂組成物における熱膨張性層状無機物及び無機充填材の合計量は、200重量部未満では燃焼後の残渣量が不足して十分な耐火性能が得られにくく、600重量部を超えると機械的物性の低下が大きくなり、使用に耐えられなくなることがある。
【0136】
さらに本発明に使用する前記樹脂組成物は、それぞれ本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて、フェノール系、アミン系、イオウ系等の酸化防止剤の他、金属害防止剤、帯電防止剤、安定剤、架橋剤、滑剤、軟化剤、顔料、粘着付与樹脂等の添加剤、ポリブテン、石油樹脂等の粘着付与剤を含むことができる。
【0137】
また本発明に使用するT型ジョイナーの力学的強度向上のためにガラス繊維、シリカアルミナ繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、ジルコニア繊維、ステンレス繊維、スラグ繊維等を使用することもできる。
【0138】
次に前記樹脂組成物の製造方法について説明する。
前記樹脂組成物の製造方法に特に限定はないが、例えば、前記樹脂組成物に含まれる前記樹脂分が熱可塑性樹脂である場合は、前記樹脂組成物の各成分を押出機、バンバリーミキサー、ニーダーミキサー等公知の混練装置に供給して溶融混練する方法や、前記樹脂組成物の各成分を有機溶剤に懸濁さたり、加温して溶融させたりして塗料状にしたり、溶剤に分散してスラリーを調製する等の方法により、前記樹脂組成物を得ることができる。
【0139】
また、前記樹脂組成物に含まれる前記樹脂分が前記エポキシ樹脂である場合は、例えば、前記樹脂組成物を有機溶剤に懸濁させたり、加温して溶融させたりして塗料状とする方法や、溶剤に分散してスラリーを調製する等の方法、また前記樹脂組成物を加熱下に溶融させる等の方法により前記樹脂組成物を得ることができる。
【0140】
前記樹脂組成物は、上記各成分を単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダーミキサー、混練ロール、ライカイ機、遊星式撹拌機等公知の装置を用いて混練することにより得ることができる。
【0141】
また、エポキシ基をもつモノマーと硬化剤とに別々に充填材を混練しておき、成形直前にスタティックミキサー、ダイナミックミキサー等で混練して得ることもできる。
【0142】
以上の様に混練した前記樹脂組成物は押出成形、射出成形、鋳型成形、プレス成形等の公知の成形技術により適宜必要な形状に成形することができる。
【0143】
以上説明した方法により、本発明に使用する前記熱膨張性耐火材料を得ることができる。
【0144】
前記熱膨張性耐火材料は市販品として入手可能であり、例えば、住友スリ―エム社製のファイアバリア(クロロプレンゴムとバーミキュライトを含有する樹脂組成物からなる熱膨張性耐火材、膨張率:3倍、熱伝導率:0.20kcal/m・h・℃)、三井金属塗料社のメジヒカット(ポリウレタン樹脂と熱膨張性黒鉛を含有する樹脂組成物からなる熱膨張性耐火材、膨張率:4倍、熱伝導率:0.21kcal/m・h・℃)、積水化学工業社製フィブロック(ブチルゴムを含む熱膨張性耐火材)等の熱膨張性耐火材料等も挙げられる。
【0145】
前記熱膨張性耐火材料は、火災時などの高温にさらされた際にその膨張層により断熱し、かつその膨張層の強度があるものであれば特に限定されないが、50kW/m2の加熱条件下で30分間加熱した後の体積膨張率が3〜50倍のものであれば好ましい。前記体積膨張率が3倍を下回ると、膨張体積が前記樹脂成分の焼失部分を十分に埋めきれず防火性能が低下することがある。また50倍を超えると、膨張層の強度が下がり、火炎の貫通を防止する効果が低下することがある。より好ましくは、体積膨張率が5〜40倍の範囲であり、さらに好ましくは8〜35倍の範囲である。
【0146】
前記膨張層が自立するためには、前記膨張層は強度の大きいことが必要であり、その強度としては、圧縮試験器にて0.25cm2の圧子を用いて、前記膨張層のサンプルを0.1m/sの圧縮速度で測定した場合の破断点応力が0.05kgf/cm2以上であれば好ましい。破断点応力が0.05kgf/cm2を下回ると、断熱膨張層が自立できなくなり防火性能が低下することがある。より好ましくは、0.1kgf/cm2以上である。
【0147】
本発明の耐火補強構造は、内部に空間を有する中空壁と前記空間に配置された熱膨張性耐火材とを少なくとも有することを特徴とするものであるが、以下に本発明の耐火補強構造およびその施工方法の実施態様について実施例に基づいて図面を参照しつつさらに詳細に説明する。
なお本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0148】
図12は第一の実施態様である耐火補強構造の施工方法を説明するための模式要部断面図であり、水平方向に設置された中空壁20を垂直に切断し、その断面を横方向から観察した状態を示したものである。
図12に例示した中空壁20は、天井壁や床壁等、水平方向に設置されたものである。
【0149】
前記中空壁20は、鋼製フレーム21の両面に耐熱パネル22がボルトやナット等の固定手段(図示せず)を用いて配置されている。また前記鋼製フレーム21と前記耐熱パネル22とに接してロックウール等の無機耐熱材23がタッカー等の固定手段(図示せず)を用いて配置されている。
【0150】
図12に例示した様に、前記中空壁20はその内部に空間24を有するものである。
【0151】
また前記鋼製フレーム21として、例えば日本工業規格(JIS G 3101)に規定される一般構造用の圧延鋼材等や日本工業規格(JIS G 3350)に規定される一般構造用軽量形鋼等が使用される。また、前記耐熱パネル22として軽量気泡コンクリート板が使用されている。
【0152】
図13は第一の実施態様である耐火補強構造の施工方法を説明するための模式要部断面図である。
第一の実施態様に使用した熱膨張性耐火シート30の形状は図5(a)に例示したものと同様であり、アルミラミネートポリエチレンテレフタレートフィルムにより、熱膨張性耐火シート片を包装したものである。
図13に例示する様に、前記中空壁20の空間24に前記中空壁20の側面開口部25から熱膨張性耐火シート30を配置することにより、耐火補強構造を施工することができる。
【0153】
前記熱膨張性耐火シート30はロール状に巻き取られているものである。このロール状の熱膨張性耐火シート30を平面状に伸ばしながら前記中空壁20の内部の空間24に送り込むことにより、耐火補強構造を施工することができる。
前記熱膨張性耐火シート30はロール状に巻き取られているため持ち運びが容易である。このため施工スペースが狭い場合であっても比較的容易に施工することができる。
【0154】
図14は第一の実施態様である耐火補強構造を例示した模式要部断面図である。
前記熱膨張性耐火シート30には分離手段として破線状の切り込みが設けられているため(図示せず)、この切り込みを用いて前記熱膨張性耐火シート30を二以上の熱膨張性耐火シートに分離することにより前記中空壁20の大きさに適したサイズに簡便に調整することができ、容易に耐火補強を施すことができる。
【0155】
なお前記熱膨張性耐火シートに加えて、例えばロックウール、セラミックウール、シリカアルミナ繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、ジルコニア繊維、セラミックブランケット等の無機耐熱材、水酸基含有化合物類、水酸化金属塩類、吸水ポリマー類等の吸熱材料の一種もしくは二種以上を前記空間24に配置してもよい。
また図14では一枚の前記熱膨張性耐火シート30を使用した場合について説明しているが、前記熱膨張性耐火シート30を二枚以上使用することもできる。
二枚以上の前記熱膨張性耐火シート30を使用する場合には、前記熱膨張性耐火シート30を水平方向に隙間無く配置してもよいし、隙間を開けて配置してもよい。また前記熱膨張性耐火シート30は垂直方向に積層して配置することもできる。
また前記熱膨張性耐火シート30に代えて、または前記熱膨張性耐火シートと共に、図5(b)や(c)により説明した形状の熱膨張性耐火シートを使用することもできる。
【0156】
上記の施工方法により、中空壁20の空間24に熱膨張性耐火材が配置された耐火補強構造が得られる。
【実施例2】
【0157】
図15は第二の実施態様である耐火補強構造の施工方法を説明するための模式要部断面図である。
【0158】
図15に例示した中空壁40は、例えば建物内部の一方の部屋と他方の部屋とを区画するための内壁、建物の外壁等、垂直方向に設置されたものである。
【0159】
前記中空壁40は鋼製フレーム41の両面に対して耐熱パネル42が設置された構造となっている。前記鋼製フレーム41は先の場合と同様、一般般構造用の圧延鋼材等や一般構造用軽量形鋼等が使用される。また、前記耐熱パネル42として石膏ボードが使用されている。
【0160】
また前記中空壁40内部には無機耐熱材43が設置されている。この第二の実施態様ではガラスウールが前記無機耐熱材43として使用されていて、前記無機耐熱材43がタッカー等の固定手段(図示せず)によって前記耐熱パネル42に対して固定されている。
【0161】
図16は第二の実施態様である耐火補強構造の施工方法を説明するための模式要部断面図である。
【0162】
図16に例示した前記中空壁40の前記耐熱パネル42の上部を回転刃を備えた電動カッター等の切断手段により切断する。前記鋼製フレーム41に対して複数の前記耐熱パネル42がボルト等の固定手段により前記鋼製フレーム41に設置される場合には、前記ボルト等の固定手段を解除することにより前記耐熱パネル41のうち上部に位置する部分の耐熱パネル42を取り外すことができる。
【0163】
次に前記中空壁40内部の無機耐熱材43の上部を取り外す。
この様にして図16に例示した開口部45を有する前記中空壁40を得ることができる。
【0164】
図17は第二の実施態様である耐火補強構造の施工方法を説明するための模式要部断面図であり、図18は第二の実施態様である耐火補強構造の施工方法を説明するための模式要部斜視図である。
【0165】
図17および図18に例示する様に前記開口部45から前記中空壁40の内部の空間44に熱膨張性耐火材を配置する。
【0166】
この第二の実施態様に使用する前記熱膨張性耐火材は、先の図5(a)により説明した形状の熱膨張性耐火シート300であり、(1)アルミラミネートガラスクロス、(2)熱膨張性耐火材からなるシートおよび(3)アルミラミネートガラスクロスの三層からなるシート状積層体の上面と下面とをセラミックブランケットによりはさみ、全体をさらにアルミラミネートポリエチレンテレフタレートフィルムにより包装した熱膨張性耐火シート片3が複数集合して形成されたものである。
【0167】
前記熱膨張性耐火シート300は熱膨張性耐火シート片3同士を連結するアルミラミネートポリエチレンテレフタレートフィルムの連結部により交互に折り返されてたたまれている。このたたまれた熱膨張性耐火シート300を平面状に伸ばしながら前記中空壁40の開口部45から挿入して前記中空壁40の内部の空間44に送り込むことにより、前記熱膨張性耐火シート300を前記中空壁40の内部の空間44に配置する。
【0168】
前記熱膨張性耐火シート300には分離手段として破線状の切り込みが設けられているため(図示せず)、この切り込みを用いて前記熱膨張性耐火シート300を二以上の熱膨張性耐火シートに分離することにより前記中空壁40の大きさに適したサイズに簡便に調整することができ、容易に耐火補強を施すことができる。
【0169】
前記熱膨張性耐火シート300を前記中空壁40の内部の空間44に配置する方法としては、例えば、金属製リング等を用いて前記鋼製フレーム41に前記熱膨張性耐火シート300を吊り下げる方法、伸縮自在竿を前記中空壁40内部の対向する前記耐熱パネル42間に設置して、前記伸縮自在竿に前記熱膨張性耐火シート300を吊り下げる方法、タッカー、ピン、ビス、ボルト、接着剤等を用いて前記中空壁40内部の前記耐熱パネル42や前記鋼製フレーム41に前記熱膨張性耐火シート300を固定する方法等が挙げられる(図示せず)。
【0170】
前記熱膨張性耐火シート300を前記中空壁40の内部に配置する方法は一種もしくは二種以上を採用することができる。
【0171】
本発明の場合は前記熱膨張性耐火シート300がボルト(図示せず)により前記鋼製フレーム41に配置されている。
【0172】
図19は中空壁40の空間44に前記熱膨張性耐火シート300が配置された耐火補強構造を例示した模式要部断面図である。
【0173】
図19に例示する様に、前記耐熱パネル42の内面に対して前記無機耐熱材43をタッカー等の固定手段(図示せず)により再度固定し、前記開口部45に耐熱パネルを再度設置することにより、中空壁40の空間44に前記熱膨張性耐火シート300が配置された耐火補強構造が得られる。
【0174】
以上説明した通り、本発明の耐火補強構造によれば、中空壁の内部の空間に熱膨張性耐火材を配置しているため、火災が発生した場合でも火災の熱により前記熱膨張性耐火材が膨張して火災の熱の伝導を妨げるため中空壁内部の温度上昇を有効に遅延させることができ、耐火性に優れる。
【0175】
また既存の壁の耐火性能が十分ではないことが事後的に判明した場合であっても、本発明の耐火補強構造によれば、前記壁に別途耐火材料や耐火パネル等を前記壁に新たに設置する工事、前記壁を撤去してから新たに耐火性能のある壁を設置する工事、前記壁の全表面を取り除き、内部全体に耐火材料を新たに充填する工事等を必要とせず、前記中空壁に開口部を設けて前記中空壁の内部の空間に前記熱膨張性耐火材を配置することにより耐火補強構造が得られることから施工性にも優れ、単位時間当たりの耐火補強構造の生産性にも優れる。
【図面の簡単な説明】
【0176】
【図1】熱膨張性耐火材料からなるシート状成形体を例示した模式要部正面図である。
【図2】熱膨張性耐火材と基材とを積層したシート状積層体を例示した模式要部斜視図である。
【図3】熱膨張性耐火材料等を基材により包装した熱膨張性包装体を例示した模式要部断面図である。
【図4】熱膨張性耐火材料等を基材により包装した熱膨張性包装体を例示した模式要部断面図である。
【図5】熱膨張性耐火シートの全体形状を説明するための模式要部正面図である。
【図6】熱膨張性耐火シートの連結部を説明するための模式要部正面図である。
【図7】熱膨張性耐火シートの連結部の異なる一実施態様を例示した模式要部正面図である。
【図8】熱膨張性耐火シートの連結部の異なる一実施態様を例示した模式要部正面図である。
【図9】熱膨張性耐火シートの連結部の異なる一実施態様を例示した模式要部正面図である。
【図10】熱膨張性耐火シートの連結部の異なる一実施態様を例示した模式要部正面図である。
【図11】熱膨張性耐火シートの連結部の異なる一実施態様を例示した模式要部正面図である。
【図12】第一の実施態様である耐火補強構造の施工方法を説明するための模式要部断面図である。
【図13】第一の実施態様である耐火補強構造の施工方法を説明するための模式要部断面図である。
【図14】第一の実施態様である耐火補強構造の施工方法を説明するための模式要部断面図である。
【図15】第二の実施態様である耐火補強構造の施工方法を説明するための模式要部断面図である。
【図16】第二の実施態様である耐火補強構造の施工方法を説明するための模式要部断面図である。
【図17】第二の実施態様である耐火補強構造の施工方法を説明するための模式要部断面図である。
【図18】第二の実施態様である耐火補強構造の施工方法を説明するための模式要部斜視図である。
【図19】第二の実施態様である耐火補強構造の模式要部断面図である。
【符号の説明】
【0177】
1 シート状成形体
2 切り込み
3 熱膨張性耐火シート片
4 シート状積層体
5 アルミラミネートガラスクロス
6 熱膨張性包装体
7 基材
8 シート状成形体
9 無機耐熱材料
10 連結部
11 切り欠き
12 糸
13 リング
14 クリップ
20、40 中空壁
21、41 鋼製フレーム
22、42 耐熱パネル
23、43 無機耐熱材
24、44 空間
25、45 開口部
30、100〜108、300 熱膨張性耐火シート
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に空間を有する中空壁と、
前記空間に配置された熱膨張性耐火材と、
を少なくとも有することを特徴とする、耐火補強構造。
【請求項2】
前記熱膨張性耐火材は、二以上の熱膨張性耐火シート片が連結された熱膨張性耐火シートを少なくとも含むことを特徴とする、請求項1に記載の耐火補強構造。
【請求項3】
前記熱膨張性耐火材は、熱膨張性耐火シート片同士の連結部に分離手段が設けられていることを特徴とする、請求項1または2に記載の耐火補強構造。
【請求項4】
内部に空間を有する中空壁の内部の空間に、熱膨張性耐火材を配置することを特徴とする、耐火補強構造の施工方法。
【請求項5】
中空壁に開口部を設ける工程と、
前記開口部を通して中空壁の内部の空間に前記熱膨張性耐火材を配置する工程と、
を少なくとも有することを特徴とする、請求項4に記載の耐火補強構造の施工方法。
【請求項6】
前記熱膨張性耐火材は、二以上の熱膨張性耐火シート片が連結された熱膨張性耐火シートを少なくとも含むものであり、
ロール状に巻き取られた前記熱膨張性耐火シート
および/または
前記熱膨張性耐火シート片の連結部が交互に折り返された前記熱膨張性耐火シート、
を平面状に伸ばしながら前記中空壁の内部の空間に送り込む工程を有することを特徴とする、請求項4または5に記載の耐火補強構造の施工方法。
【請求項1】
内部に空間を有する中空壁と、
前記空間に配置された熱膨張性耐火材と、
を少なくとも有することを特徴とする、耐火補強構造。
【請求項2】
前記熱膨張性耐火材は、二以上の熱膨張性耐火シート片が連結された熱膨張性耐火シートを少なくとも含むことを特徴とする、請求項1に記載の耐火補強構造。
【請求項3】
前記熱膨張性耐火材は、熱膨張性耐火シート片同士の連結部に分離手段が設けられていることを特徴とする、請求項1または2に記載の耐火補強構造。
【請求項4】
内部に空間を有する中空壁の内部の空間に、熱膨張性耐火材を配置することを特徴とする、耐火補強構造の施工方法。
【請求項5】
中空壁に開口部を設ける工程と、
前記開口部を通して中空壁の内部の空間に前記熱膨張性耐火材を配置する工程と、
を少なくとも有することを特徴とする、請求項4に記載の耐火補強構造の施工方法。
【請求項6】
前記熱膨張性耐火材は、二以上の熱膨張性耐火シート片が連結された熱膨張性耐火シートを少なくとも含むものであり、
ロール状に巻き取られた前記熱膨張性耐火シート
および/または
前記熱膨張性耐火シート片の連結部が交互に折り返された前記熱膨張性耐火シート、
を平面状に伸ばしながら前記中空壁の内部の空間に送り込む工程を有することを特徴とする、請求項4または5に記載の耐火補強構造の施工方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2009−243071(P2009−243071A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−88589(P2008−88589)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]