説明

耐熱性を高めたアルコール吸着剤

【課題】
エタノール含有燃料を使用した内燃機関から排出されるガスのような、水蒸気を含む高温ガス雰囲気に晒されてもアルコール吸着性能の低下が小さい、高い耐熱性を有するアルコール吸着剤を提供する。
【解決手段】
SiO/Alモル比が10以上100未満のゼオライトからなり、かつ該ゼオライト中のアルミニウムに対し0.7倍モル以上のアルカリ金属イオンを含有するアルコール吸着剤、及び、当該アルコール吸着剤を、アルコールを含有する内燃機関の排ガスと接触させることによる排ガスの浄化方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアルカリ金属イオンを含有するゼオライトからなるアルコール吸着剤に係り、水蒸気を含む高温ガス雰囲気に晒されてもアルコール吸着性能の低下が小さい、高い耐熱性を有するアルコール吸着剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化対策から、内燃機関の燃料としてカーボンニュートラルなバイオエタノールを混合したものが普及し始めている。エタノール含有燃料を使用した内燃機関からは、始動直後にアルコールを含む低温の排ガスが排出されるが、排ガス温度が低いために排ガス中のアルコールを触媒で浄化することが困難であり、排ガス浄化のためには、触媒が作動する温度に加熱されるまでアルコール吸着剤で保持することが必要となる。
【0003】
従来、エンジン始動直後の低温の排ガスから炭化水素を除去する吸着剤としては、炭化水素の吸着性を高めるためにSiO/Alモル比が100以上の疎水性の高いゼオライト(例えば特許文献1〜3)や、オレフィン吸着能が高い銅や銀などの遷移金属や貴金属を含有したゼオライト(例えば特許文献4及び5)を使用した吸着剤が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平08−224449号公報
【特許文献2】特開平09−99217号公報
【特許文献3】特開平11−192427号公報
【特許文献4】特開平11−216358号公報
【特許文献5】特開2005−81250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これまでに報告されているゼオライト吸着剤は、炭化水素をはじめとする極性の弱い分子を吸着するものであり、極性分子であるエタノールなどのアルコールを十分に吸着することができなかった。
【0006】
本発明の目的は、例えば、エタノール含有燃料を使用した内燃機関から排出されるガスのような、水蒸気を含む高温ガスに晒される雰囲気であってもアルコール吸着性能の低下が小さいアルコール吸着剤、即ち、高い耐熱性を有するアルコール吸着剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題に鑑み、本発明者が鋭意検討した結果、特定量のアルカリ金属イオン、及び、特定のSiO/Alモル比を有するゼオライトが、高い耐熱性を有するアルコール吸着剤となることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明はSiO/Alモル比が10以上100未満のゼオライトからなり、かつ該ゼオライト中のアルミニウムに対し0.7倍モル以上のアルカリ金属イオンを含有するアルコール吸着剤である。
【0009】
以下、本発明のアルコール吸着剤について詳細に説明する。
【0010】
本発明のアルコール吸着剤は、SiO/Alモル比が10以上100未満のゼオライトからなる。
【0011】
本発明で用いられるゼオライトの構造としては、吸着しようとするアルコール分子より大きな細孔径を有する構造であれば特に限定されず、例えばチャバサイト(CHA)、フェリエライト(FER)、ZSM−5(MFI)、モルデナイト(MOR)、ベータ(BEA)、フォジャサイト(FAU)などのゼオライトを1種以上使用することが好ましい。さらに、高温に晒された後のアルコール吸着量が多いため、チャバサイト(CHA)、ZSM−5(MFI)及びベータ(BEA)の群から選ばれる1種以上使用することがより好ましく、チャバサイト(CHA)又はZSM−5(MFI)のいずれかを使用することがさらに好ましい。ゼオライトの構造がチャバサイト又はZSM−5のいずれかであれば、本発明のアルコール吸着剤が高温に晒された場合であっても、その前後におけるアルコール吸着量の減少が特に小さくなりやすいだけでなく、一度吸着されたアルコールの脱離開始温度の温度低下が生じにくくなる。
【0012】
本発明のアルコール吸着剤で使用するゼオライトのSiO/Alモル比は10以上100未満である。SiO/Alモル比がこの範囲であることで、本発明のアルコール吸着剤が高温に晒された場合であっても、その前後におけるアルコール吸着量の減少が特に小さくなる。これに加え、一度吸着されたアルコールの脱離開始温度の温度低下が小さくなる。
【0013】
また、本発明のアルコール吸着剤で使用するゼオライトのSiO/Alモル比が高いとアルコールの吸着容量が低下する。そのため、十分なアルコール吸着容量を得るにはSiO/Alモル比が100未満、好ましくは60以下、より好ましくは50以下、更に好ましくは40以下のゼオライトである。
【0014】
一方、SiO/Alモル比が低いゼオライトは耐熱性が低く、内燃機関の排ガスのような高温のガスと長時間接触すると、構造が破壊されてしまう。したがって、十分な耐熱性を得るにはSiO/Alモル比が10以上、より好ましくは15以上、さらに好ましくは20以上、さらにより好ましくは30以上のゼオライトを用いる必要がある。
【0015】
さらには、SiO/Alモル比が12以上60以下、好ましくは15以上60以下であることで、アルコール吸着量が高くなりやすい。
【0016】
本発明のアルコール吸着剤は、ゼオライト中のアルミニウムに対し0.7倍モル以上のアルカリ金属イオンを含有する。
【0017】
アルカリ金属イオンとしては特に限定されないが、工業的な観点より、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムの中から選ぶことが好ましい。また、アルカリ金属イオンは1種に限らず、2種以上を混合して使用しても良い。
【0018】
本発明のアルコール吸着剤の耐熱性はアルカリ金属イオンの種類により異なり、セシウム>ルビジウム>カリウム>ナトリウムの順で優れる。そのため、アルカリ金属イオンの種類はアルコール吸着剤に要求される耐熱性に応じて選択すればよい。例えば、内燃機関から排出されるガスのような、水蒸気を含む高温ガス雰囲気に晒される場合には、アルカリ金属イオンはカリウム、ルビジウム及びセシウムの群から選ばれる1種以上であることが好ましく、カリウム又はセシウム、若しくはその両者であることが特に好ましい。
【0019】
アルカリ金属イオンの含有量が少ないと、十分な吸着性能の耐熱性が得られない。そのため、アルカリ金属イオンはゼオライト中のアルミニウムに対し0.7倍モル以上(アルカリ金属イオン/アルミニウム≧0.7)含有し、0.8倍モル以上含有することが好ましく、0.9倍モル以上含有することがさらに好ましい。
【0020】
アルカリ金属イオンの含有量の上限は特に限定されないが、過剰なアルカリ金属イオンの導入は、吸着剤の耐熱性を低下させやすい。そのため、ゼオライト中のアルミニウムに対し1.0倍モルを超えないことが好ましい。
【0021】
本発明のアルコール吸着剤は高い耐熱性を有している。そのため、本発明のアルコール吸着剤は高温に晒された後であっても、そのアルコール吸着量の減少量が小さく、安定してアルコールを吸着することができる。例えば、本発明のアルコール吸着剤が高温に晒される前後においてアルコール吸着量の減少量は50%以下であり、さらには、10%以下である。
【0022】
さらに、本発明のアルコール吸着剤は吸着したアルコールの保持特性に優れている。したがって、本発明のアルコール吸着剤は高温に晒された後であっても、保持したアルコールの脱離開始温度の変化が小さい。例えば、本発明のアルコール吸着剤は、高温に晒された前後において、アルコールの脱離開始温度の温度低下が40℃以下、さらには10℃以下であり、安定してアルコールを吸着し、これを保持することができる。
本発明のアルコール吸着剤の製造方法は特に限定されないが、例えば、SiO/Alモル比が10以上100未満のゼオライトに、一般的なアルカリ金属イオンの導入方法でアルカリ金属イオンを含有させることで製造できる。ゼオライトへのアルカリ金属イオンの導入方法としては、イオン交換法、含浸法、固相交換法などが挙げられる。
【0023】
なお、アルカリ金属がイオン交換されずに付着していると水蒸気を含む高温ガス雰囲気において熱劣化しやすい。そのため、アルカリ金属の付着を抑制しやすいため、イオン交換法によりアルカリ金属イオンを含有させることが好ましい。
【0024】
使用するアルカリ金属は、適宜選択することができる。高温に晒される前後においてのアルコール吸着量の減少量を小さくし、高温に晒される前後においての脱離開始温度の低下を小さくできるため、アルカリ金属はカリウム(K)又はセシウム(Cs)、若しくはその両者であることが好ましい。
【0025】
使用するアルカリ金属塩は特に限定されない。例えば、イオン交換方法によりアルカリ金属イオンを含有させるのであれば、該アルカリ金属の塩化物、酢酸塩、硝酸塩、硫酸塩など溶解性の高いアルカリ金属化合物を使用することが好ましい。含浸法、固相交換法によりアルカリ金属イオンを含有させるのであれば、該アルカリ金属の硝酸塩、酢酸塩などの有機酸塩、硫酸塩など加熱処理により除去し易いアニオンとのアルカリ金属化合物を使用することが好ましい。
【0026】
本発明のアルコール吸着剤は、シリカ、アルミナおよび粘土鉱物などの一般的なバインダーと混合し、ペレット状、ビーズ状、あるいはシート状などの形に成形して使用することもできる。また、コージェライト製あるいは金属製のハニカム状基材にウォッシュコートして使用することもできる。この際、ハニカム状基材にゼオライトをコートした後に、アルカリ金属イオンを含有させてもよく、予めアルカリ金属イオンを含有したゼオライトをハニカム状基材にコートしてもよい。
【0027】
本発明のアルコール吸着剤は、これに処理ガスを接触させることで処理ガス中のアルコールを吸着除去することができる。
【0028】
処理ガスとしてはアルコールを含有する燃料を使用した自動車等の内燃機関の排ガスが具体的に例示される。さらに上記処理ガスには、アルコール以外に炭化水素、アルデヒド類、一酸化炭素、二酸化炭素、水素、窒素、酸素、硫黄化合物、窒素酸化物、水等が含まれていても良い。
【0029】
本発明で処理されるガスに含まれるアルコールの種類は特に限定されないが、メタノール、エタノールなどの炭素数で1から6の直鎖状及び分岐状の低級アルコールが例示でき、これらの中でもエタノールが好ましい。
【0030】
処理ガス中のアルコール濃度は特に限定されないが、炭素換算で0.001〜10体積%が好ましく、より好ましくは0.001〜5体積%である。
【0031】
処理ガス中のアルコールを吸着除去する際の空間速度及び温度は特に限定されないが、空間速度は100〜500,000hr−1、温度は−30〜200℃であることが好ましい。
【発明の効果】
【0032】
ゼオライト中のアルミニウムに対し0.7倍モル以上のアルカリ金属イオンを含有するアルコール吸着剤は、水蒸気を含む高温ガス雰囲気に晒されてもアルコール吸着性能の低下が小さい、高い耐熱性を有するアルコール吸着剤であり、特に、燃料にエタノールを含有した自動車排ガス用のアルコール吸着剤として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】吸着剤3の熱処理試験前後のエタノールの吸脱着スペクトルである。
【実施例】
【0034】
次に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何等限定されるものではない。
【0035】
実施例1
SiO/Alモル比が39のH型ゼオライトベータ(商品名:HSZ−941HOA、東ソー製)を、60℃に保持した酢酸カリウム水溶液中に分散することにより、カリウムを含有させた。カリウムを含有させた後、純水で洗浄後、固液分離し、110℃で20時間乾燥して、吸着剤1を得た。カリウム含有量を誘導結合プラズマ法(以下、「ICP法」)により分析したところ、吸着剤1のK/Alモル比は0.85であった。
【0036】
実施例2
SiO/Alモル比が39のH型ゼオライトベータ(商品名:HSZ−941HOA、東ソー製)を、60℃に保持した塩化セシウム水溶液中に分散することにより、セシウムを含有させた。セシウムを含有させた後、純水で洗浄後、固液分離し、110℃で20時間乾燥して、吸着剤2を得た。セシウム含有量を原子吸光法(以下、「AA法」)により分析したところ、吸着剤2のCs/Alモル比で0.89であった。
【0037】
比較例1
SiO/Alモル比が39のH型ゼオライトベータ(商品名:HSZ−941HOA、東ソー製)を、アルカリ金属を含有させることなく、H型のままで比較剤1とした。
【0038】
実施例3
SiO/Alモル比が38のH型ゼオライトZSM−5(商品名:HSZ−840HOA、東ソー製)を、60℃に保持した塩化カリウム水溶液中に分散することにより、カリウムを含有させた。カリウムを含有させた後、純水で洗浄後、固液分離し、110℃で20時間乾燥して、吸着剤3を得た。カリウム含有量をICP法により分析したところ、吸着剤3のK/Alモル比は0.92であった。
【0039】
実施例4
SiO/Alモル比が38のH型ゼオライトZSM−5(商品名:HSZ−840HOA、東ソー製)を、60℃に保持した塩化セシウム水溶液中に分散することにより、セシウムを含有させ、純水で洗浄後、固液分離し、110℃で20時間乾燥して、吸着剤4を得た。セシウム含有量をAA法により分析したところ、吸着剤4のCs/Alモル比は0.96であった。
【0040】
比較例2
SiO/Alモル比が38のH型ゼオライトZSM−5(商品名:HSZ−840HOA、東ソー製)を、アルカリ金属を含有させることなく、H型のままで比較剤2とした。
【0041】
実施例5
SiO/Alモル比が23のH型ゼオライトZSM−5(商品名:HSZ−820HOA、東ソー製)を、60℃に保持した塩化カリウム水溶液中に分散することにより、カリウムを含有させ、純水で洗浄後、固液分離し、110℃で20時間乾燥して、吸着剤5を得た。カリウム含有量をICP法により分析したところ、K/Alモル比で0.92であった。
【0042】
比較例3
SiO/Alモル比が23のH型ゼオライトZSM−5(商品名:HSZ−820HOA、東ソー製)を、アルカリ金属を含有させることなく、H型のままで比較剤3とした。
【0043】
実施例6
SiO/Alモル比が25のH型ゼオライトチャバサイトを、60℃に保持した塩化カリウム水溶液中に分散することにより、カリウムを含有させ、純水で洗浄後、固液分離し、110℃で20時間乾燥して、吸着剤6を得た。カリウム含有量をICP法により分析したところ、吸着剤6のK/Alモル比は0.81であった。
【0044】
比較例4
SiO/Alモル比が25のH型ゼオライトチャバサイトを、アルカリ金属を含有させることなく、H型のままで比較剤4とした。
【0045】
実施例7
SiO/Alモル比が17のH型ゼオライトチャバサイトを、60℃に保持した塩化カリウム水溶液中に分散することにより、カリウムを含有させ、純水で洗浄後、固液分離し、110℃で20時間乾燥して、吸着剤7を得た。カリウム含有量をICP法により分析したところ、吸着剤7のK/Alモル比は0.74であった。
【0046】
実施例8
SiO/Alモル比が13のH型ゼオライトチャバサイトを、60℃に保持した塩化カリウム水溶液中に分散することにより、カリウムを含有させ、純水で洗浄後、固液分離し、110℃で20時間乾燥して、吸着剤8を得た。カリウム含有量をICP法により分析したところ、吸着剤8のK/Alモル比は0.82であった。
【0047】
実施例9
SiO/Alモル比が38のH型ゼオライトZSM−5を、60℃に保持した塩化ナトリウム水溶液中に分散することにより、ナトリウムを含有させ、純水で洗浄後、固液分離し、110℃で20時間乾燥して、吸着剤9を得た。ナトリウム含有量をICP法により分析したところ、吸着剤9のNa/Alモル比は1.00であった。
【0048】
実施例10
SiO/Alモル比が33のH型ゼオライトフォージャサイトを、60℃に保持した塩化セシウム水溶液中に分散することにより、セシウムを含有させ、純水で洗浄後、固液分離し、110℃で20時間乾燥して、吸着剤10を得た。セシウム含有量をAA法により分析したところ、吸着剤10のCs/Alモル比は0.72であった。
【0049】
実施例11
SiO/Alモル比が30のH型ゼオライトモルデナイトを、60℃に保持した塩化カリウム水溶液中に分散することにより、カリウムを含有させ、純水で洗浄後、固液分離し、110℃で20時間乾燥して、吸着剤11を得た。カリウム含有量をICP法により分析したところ、吸着剤11のK/Alモル比は0.91であった。
【0050】
(熱処理試験)
吸着剤の耐熱性の評価として、吸着剤1〜11および比較剤1〜4を各々加圧成形後、粉砕して20〜30メッシュに整粒した。整粒した試料剤2mlを固定床常圧流通式反応管に充填し、水10体積%、空気バランスのモデルガスをガス流速200ml/minで接触させながら試料剤を850℃で20時間加熱処理した。
【0051】
(アルコール吸着試験)
吸着剤1〜11および比較剤1〜4の熱処理試験前後のアルコール吸着特性を以下の方法で評価した。
【0052】
整粒した試料剤0.2mlを固定床常圧流通式反応管に充填し、窒素流通下500℃で1時間前処理し50℃まで冷却した。次いで、エタノール3000ppm−C(以下「−C」は炭素換算量を表す)、水3体積%、窒素バランスのモデルガスをガス流速200ml/minで接触させながら試料剤を10℃/minの昇温速度で600℃まで昇温した。試料剤を流通したガス中のエタノール濃度を水素炎イオン化検出器(FID)を備えたガスクロマトグラフにより連続的に定量分析し、エタノールの吸脱着スペクトルよりアルコールの吸着性能を評価した。
【0053】
表1に、吸着剤1〜11及び比較剤1〜4のゼオライトの種類、SiO/Alモル比、及び、アルカリ金属/アルミニウムモル比を示し、表2に、吸着剤1〜11及び比較剤1〜4の熱処理試験前後の試料剤重量当たりのエタノール吸着量(μmol−C/g)、エタノール脱離開始温度(℃)、及び、熱処理前後の性能差異を示した。また、図1に吸着剤3の熱処理試験前後のエタノールの吸脱着スペクトルを示した。
【0054】
【表1】

【0055】
【表2】

【0056】
表2から明らかなように、本発明のアルコール吸着剤(吸着剤1〜11)は、同じゼオライトを使用し、アルカリ金属を含有しないで調製した比較剤1〜4に対し、水蒸気を含む850℃の高温ガス雰囲気に晒されてもアルコール吸着量の低下が小さく、脱離開始温度の低下も小さい、高い耐熱性を有するアルコール吸着剤である。
【0057】
その中でも、ゼオライトの構造が、ZSM−5やチャバサイトの方が、他の構造のゼオライトよりも、アルコール吸着量の低下や脱離開始温度の低下がより小さく、SiO/Alモル比が10〜100の範囲で高い耐熱性を有する。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明のアルコール吸着剤は、例えば、燃料にエタノールを含有した自動車排ガス用のアルコール吸着剤として使用することができる。
【符号の説明】
【0059】
1:熱処理試験前の吸着剤3のエタノールの吸脱着スペクトル
2:熱処理試験後の吸着剤3のエタノールの吸脱着スペクトル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
SiO/Alモル比が10以上100未満のゼオライトからなり、かつ該ゼオライト中のアルミニウムに対し0.7倍モル以上のアルカリ金属イオンを含有するアルコール吸着剤。
【請求項2】
SiO/Alモル比が12以上60以下のゼオライトからなる請求項1に記載のアルコール吸着剤。
【請求項3】
SiO/Alモル比が15以上60以下のゼオライトからなる請求項1又は請求項2に記載のアルコール吸着剤。
【請求項4】
アルカリ金属イオンが、カリウムまたはセシウム、若しくはその両者である請求項1〜3のいずれか一項に記載のアルコール吸着剤。
【請求項5】
アルコールがエタノールである請求項1〜4のいずれか一項に記載のアルコール吸着剤。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のアルコール吸着剤を、アルコールを含有する内燃機関の排ガスと接触させることによる排ガスの浄化方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−148273(P2012−148273A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−284242(P2011−284242)
【出願日】平成23年12月26日(2011.12.26)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】