説明

耐熱性不織布

【課題】加熱時においても充分な強度を有する不織布を提供する。
【解決手段】破断伸度が5〜50%であり断面形状が異形形状である第1のポリエチレンナフタレート繊維と、破断伸度が40〜150%であり断面形状が扁平形状である第2のポリエチレンナフタレート繊維とからなる不織布であって、該第2のポリエチレンナフタレート繊維の重量比率が該不織布重量を基準として25〜60重量%である耐熱性不織布該第2のポリエチレンナフタレート繊維の断面の扁平形状は長軸長さ/短軸長さ比が8〜30であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエチレンナフタレート繊維からなる耐熱性不織布に関するものである。
【背景技術】
【0002】
保温材料、電気絶縁材料、フィルター、医療材料、建築材料等の分野において広く利用されている不織布において、耐熱性を有する不織布の開発の要求が高まっている。係る要請に対応する不織布として、耐熱性が高いポリエチレンナフタレートを使用した不織布が公知である(特許文献1〜3)。
【0003】
具体的には、ポリエチレンナフタレート(PEN)繊維と潜在的接着性を有する重合体からの繊維とを混合したウェブを加熱接着した不織布が開示されている(例えば特許文献1参照。)。この不織布は、接着成分として使用されている繊維が、代表的にはポリエチレンテレフタレート共重合体繊維であって、その融点はPEN繊維より低く、従って得られる不織布は接着成分の融点の影響により不織布の耐熱性が高いものではない。また、メルトブロー法で製造された不織布が開示されているが、メルトブロー法で製造されたものであるために強度が充分ではない(例えば特許文献2参照。)。上記の不織布の有する問題を解決する不織布として、実質的にポリエチレンナフタレート繊維からなる耐熱性、強度に優れた長繊維不織布も公知である(例えば特許文献3参照。)。しかし、特許文献3に開示された不織布は、加熱状態での強度が充分ではないという問題を有するものであり、さらに改善が求められている。
【0004】
【特許文献1】特開昭50−18773号公報
【特許文献2】特開平4−146251号公報
【特許文献3】特開平10−25651号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記公知技術の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は長時間の加熱時においても充分な強度と通気度を有し、フィルターとして使用した場合に圧損の小さな不織布を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、破断伸度が5〜45%であり断面形状が扁平形状を除く異形形状である第1のポリエチレンナフタレート繊維と、破断伸度が50〜200%であり断面形状が扁平形状である第2のポリエチレンナフタレート繊維とからなる不織布であって、該第2のポリエチレンナフタレート繊維の重量比率が該不織布重量を基準として25〜60重量%である耐熱性不織布により上記課題を解決できる事を見出した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の耐熱性不織布を構成する繊維は、ポリエチレンナフタレート(PEN)繊維、具体的にはポリエチレン−2,6−ナフタレート繊維であることが好ましい。PENは5モル%以下の第3成分を含む共重合ポリエチレン−2,6−ナフタレートであってもよい。ポリエチレン−2,6−ナフタレートは、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸又はその誘導体とエチレングリコールとを、触媒の存在下重合させることによって合成される。ナフタレン−2,6−ジカルボン酸誘導体としてはナフタレン−2,6−ジカルボン酸のジメチルエステル、ジエチルエステル、ジ酸ハライド、ビス(ヒドロキシエチル)エステル、ビス(ヒドロキシプロピル)エステル、ビス(ヒドロキシブチル)エステル、ビス(ヒドロキシアルキル)エステル、ジフェニルエステル等が例示される。
【0008】
ポリエチレン−2,6−ナフタレートに5モル%以下で共重合可能な成分としては、ジカルボン酸、グリコール、ビスフェノール類、オキシカルボン酸又はそれらの誘導体が例示される。
【0009】
具体的なジカルボン酸としては、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、若しくはダイマー酸(オレイン酸二分子をその二重結合部分で結合させた分枝を持つ長鎖の二塩基酸)等の脂肪族ジカルボン酸、シクロプロパンジカルボン酸、シクロブタンジカルボン酸、若しくはヘキサヒドロテレフタル酸等の脂環族ジカルボン酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸ナトリウム等のそれ以外のジカルボン酸が例示される。誘導体とは具体的には上述したような化合物を挙げる事ができる。
【0010】
具体的な共重合可能なグリコール又はビスフェノール類としては、1,2−プロピレングリコール、トリメチレングリコール、ジエチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチレングリコール、p−キシレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA、p−ビス(ヒドロキシフェニル)スルホン、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、2,2−ビス(p−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、p−ビス(ヒドロキシエトキシフェニル)スルホン、ポリアルキレングリコール、p−フェニレンビス(ジメチルシロキサン)等が例示される。またオキシカルボン酸又はその誘導体としては、グリコール酸、ヒドロキシ安息香酸やそのアルキルエステル等が例示される。
【0011】
前記ポリエチレンナフタレートは、極限粘度[η]が0.45〜1.0dL/gのものを使用するのが好ましい。極限粘度[η]は、PEN又はその共重合体をフェノールとオルトジクロロベンゼンとの混合溶媒(重量比6:4)に溶解し、35℃で測定した溶液粘度から求めた値である。極限粘度[η]が1.0dL/gを超えるとPEN等の溶融粘度が異常に高くなって溶融紡糸が困難となり、[η]が0.45dL/g未満では目的とする程度の高融点を有し、物性が良好な繊維が得られない。ポリエチレンナフタレートを製造する際の溶融重合の条件、固相重合の条件を適宜選択することにより、この極限粘度の範囲にあるポリエチレンナフタレートを得ることができる。
【0012】
本発明の耐熱性不織布及びその製造方法においては、第1のポリエチレンナフタレート(PEN)繊維と第2のPEN繊維とを使用することが必要である。第1のPEN繊維は、その破断伸度が5〜45%である必要があり、そのためには2000m/分以下、好ましくは500〜1500m/分の紡速で未延伸糸を紡糸した後に延伸する方法によって製造することができる。第1のPEN繊維の繊度は、1dtex〜15dtex、好ましくは2dtex〜10dtex、さらには3dtex〜8dtexの範囲が好ましい。
【0013】
本発明の不織布を構成する第1のPEN繊維の断面形状は異形形状であり、本発明における異形形状は楕円形、長円形及び扁平形状を除く形状であり、具体的にはダンベル形、十字形、星形、C字形、中空形状から選択されるものであることが好ましい。図2には第1のPEN繊維の断面形状を例示した。(a)はダンベル型、(b)は十字型、(c)は星型、(d)は半円ないしC字型、(e)は中空円型、(f)は中空三角型である。これらの断面形状を有する第1のPEN繊維を使用した不織布は、優れた耐熱強度を有し、しかもこれらの断面形状により不織布の厚さ方向に第2のPEN繊維との接着部を除く部分において空隙が形成される結果、充分な通気度を有しフィルターとして使用した場合の圧損が低くなる。
【0014】
一方、第2のPEN繊維は、その破断伸度が50〜200%である必要があり、1500m/分以下、好ましくは500〜1300m/分の紡速で紡糸することにより得られる未延伸糸もしくは2倍以下の低倍率延伸によって得ることができる、その繊維中のPEN分子の配向度が低い繊維である。この第2のPEN繊維の繊度も特に限定されるものではないが、1dtex〜15dtex、好ましくは2dtex〜12dtexの範囲であることが好ましい。
【0015】
本発明の不織布を構成する第2のPEN繊維の断面形状は扁平形状であり、凸凹を有する扁平形状であってもよい。扁平形状としては、楕円形、長円形、菱形又は長方形などの凸型多角形が好ましい。菱形や長方形は、角が面取りされた形状となる。図1には本発明に用いる第2のPEN繊維の横断面形状の中で代表的な楕円形の例(図1(a))及び長円形(図1(b))を例示した。xが長軸長さであり、yが短軸長さである。
【0016】
本発明の耐熱性不織布は、破断伸度が5〜45%であり断面形状が異形形状である第1のポリエチレンナフタレート繊維と、破断伸度が50〜200%であり断面形状が扁平形状である第2のポリエチレンナフタレート繊維とからなることを特徴とする。
【0017】
本発明の耐熱性不織布は、加熱状態での使用において応力を受けた場合においても、その応力に耐える充分な強度と通気度を有し、フィルターとして使用した場合に圧損の小さなものが得られる。第1のPEN繊維の破断伸度が45%を超える場合、又は第2のPEN繊維の破断伸度が50%未満の場合には、いずれも不織布の強度が低下するので好ましくない。第1のPEN繊維において、破断伸度が5%未満のPEN繊維は製造が困難であり、第2のPEN繊維において、破断伸度が200%を超えるPEN繊維は取り扱いが困難である。上記の不織布は、第1のPEN繊維及び第2のPEN繊維が長繊維であってスパンボンド法により製造された不織布や、30mm以上100mm以下の繊維長をもつ短繊維をカードによりウェブを形成するカード不織布、又は1〜30mmの繊維長をもつ短繊維を空気流で開繊してウェブを形成するエアレイド不織布であってもよいが、長繊維を1〜30mmにカットした繊維を使用し、抄紙法により製造した紙タイプの湿式不織布であることが好ましい。第1のPEN繊維の断面形状は異形形状であり、扁平形状を除く形状で、具体的にはダンベル形、十字形、星形、C字形、中空形状から選択されるものであることが好ましい。中空形状については、丸、三角形、楕円形、長円形から選択されるものであることが好ましく、中空率が10〜50%であることが好ましい。中空率が10%以下では得られる不織布の通気度が低く、中空率が50%以上の繊維は破れなどにより、製造上中空形状を維持することが困難であるために適さない。
【0018】
係る構成の第2のポリエチレンナフタレート繊維を使用する耐熱性不織布は、より確実に加熱時における充分な強度を有する。第2のポリエチレンナフタレート繊維の断面形状は扁平形状である事が必要であるが、その扁平形状の長軸長さ/短軸長さ比、即ちx/yが8〜30であることがより好ましく、長軸長さ/短軸長さ比が10〜25であることがさらに好ましい。長軸長さ/短軸長さ比が8未満の場合は、扁平成分の接着性が低下するので好ましくなく、長軸長さ/短軸長さ比が30を超えるとその異型形状を保つような製造条件の選択が難しく、現実的に製造が困難であるので好ましくない。
【0019】
さらに上述の本発明の耐熱性不織布においては、前記第2のポリエチレンナフタレート繊維の割合が25〜60重量%であることが必要である。第2のポリエチレンナフタレート繊維の割合が25重量%未満の場合には常温及び加熱時の不織布の強度が充分ではなく、60重量%を超えると不織布を構成するPEN繊維自体の耐熱性が低下する。不織布中の第2のポリエチレンナフタレート繊維の割合は30〜55重量%であることがより好ましい。
【0020】
本発明の耐熱性不織布の製造方法の1つは、第1のポリエチレンナフタレート繊維及び第2のポリエチレンナフタレート繊維とを切断してカット繊維とする切断工程、該第1のポリエチレンナフタレート繊維及び該第2のポリエチレンナフタレート繊維のカット繊維の混合繊維ウェブを作製するウェブ形成工程、該混合繊維ウェブを加圧加熱して不織布とする加熱工程を有する。このとき、該第1のポリエチレンナフタレート繊維は破断伸度が5〜45%であり、該第2のポリエチレンナフタレート繊維は破断伸度が50〜200%かつ断面形状が扁平形状であることを特徴とする。係る製造方法によれば、加熱状態での使用において応力を受けた場合においても、これに耐える充分な強度と通気度を有し、フィルターとして使用した場合に圧損の小さな耐熱性不織布を製造することができる。
【0021】
係る製造方法によれば、加熱状態での使用において応力を受けた場合においても、その応力に耐える充分な強度を有する耐熱性不織布を製造することができる。上記の耐熱性不織布の製造方法においては、前記第2のポリエチレンナフタレート繊維が有する扁平形状は長軸長さ/短軸長さ比が8〜30であることが好ましい。係る構成を採用する本発明の製造方法によれば、より確実に熱時における充分な強度を有することができる。第2のポリエチレンナフタレート繊維の断面形状における扁平形状の長軸長さ/短軸長さ比は8〜30であることがより好ましく、10〜25であることがさらに好ましい。長軸長さ/短軸長さ比が8未満の場合は、扁平繊維成分の接着性が低下するので好ましくなく、長軸長さ/短軸長さ比が30を超えると繊維の製造が難しくなるので好ましくない。
【0022】
上記の耐熱性不織布の製造方法においては、前記混合繊維ウェブにおける前記第2のポリエチレンナフタレート繊維の割合を25〜60重量%とすることが必要である。第2のポリエチレンナフタレート繊維の割合が25重量%未満の場合には常温及び加熱時の強度が充分ではなく、60重量%を超えると不織布を構成する繊維自体の耐熱性が低下したり、繊維の収縮に伴う不織布の地合い悪化が発生するため好ましくない。
【0023】
本発明の耐熱性不織布は、第1のポリエチレンナフタレート繊維及び第2のポリエチレンナフタレート繊維とを切断してカット繊維とする切断工程、前記第1のポリエチレンナフタレート繊維及び前記第2のポリエチレンナフタレート繊維のカット繊維の混合繊維シートを作製するシート化工程、前記混合繊維シートを加圧加熱して不織布とする加熱工程を有する製造方法により製造することも好ましく挙げる事ができる。第1のポリエチレンナフタレート繊維及び第2のポリエチレンナフタレート繊維は、例えば次のように製造することができる。
【0024】
ポリエチレンナフタレート系樹脂ペレットを溶融押出機等で溶融するか、もしくは連続重合装置から溶融状態にて、目的に応じた形状の孔を有する口金を装着したスピンパックに供給し、ストランド状で吐出して、口金下5〜200mmの位置で、紡出糸条に10〜40℃の空気を送風して冷却固化させた後、紡糸速度100〜2000m/minで引き取って未延伸糸を得る。第1のポリエチレンナフタレート繊維を得る場合は、得られた未延伸糸を紡糸装置に直結していない公知の短繊維製造用延伸機を用いて、延伸及び熱処理、油剤付与、カットを行う。具体的には、収缶した未延伸糸を束ねてトウとし、95℃以上の温水中で1〜数ステップに分けて延伸する。その後、120〜260℃の温度で定長熱処理(例えば、スーパーヒート蒸気加熱ローラーに接触)を行い、油剤を付着させ、ロータリーカッター等で所定の繊維長にカットし、目的の繊維を得る。捲縮を付与する場合は、未延伸又は延伸トウを65℃以上に加熱して押込みクリンパーに供給すればよい。加熱温度が65℃未満であるとPENの剛性が高いため、捲縮付与の背圧を極度に大きくする必要があり、クリンパーが不安定(ガタツキ)になりやすい。また、カッター前の油剤乾燥及び弛緩熱処理は必要に応じて実施することができる。乾燥のみを実施し、弛緩熱処理を実施しない場合は、常温空気を循環させることによってトウの風乾してやればよい。一方、第2のポリエチレンナフタレート繊維を得る場合は、前述の第1のポリエチレンナフタレートを得る方法において、延伸工程を施さないか、もしくは2倍以下の低倍率延伸を施す以外は、同様にすればよい。
【0025】
ウェブ形成工程は特に限定されないが、湿式法、即ち、第1のPEN繊維と第2のPEN繊維を所定の割合で水に分散させ、抄紙機を使用して混合繊維シートとする方法によることが好ましい。混合繊維シートを作製するシート化工程においては、接着剤は使用しないことが好ましい。混合繊維シートは乾燥し(乾燥工程)、加熱工程に供し、ヒートロール、熱プレス等の公知の手段で加圧、加熱して不織布とする。シート化工程、乾燥工程、加熱工程は連続して行うことが好ましい態様である。
【0026】
カット繊維の長さは、第1のPEN繊維と第2のPEN繊維共に1〜30mmであることが好ましく、2〜10mmであることがより好ましい。第1のPEN繊維と第2のPEN繊維のカット繊維は同じ長さであってもよく、異なる長さであってもよい。加熱工程における加熱温度は、180〜250℃、より好ましくは190〜240℃であり、加圧における線圧は、50〜400kg/cmである。本発明の不織布の目付量は10〜70g/mであることが好ましく、20〜60g/mであることがより好ましい。
【実施例】
【0027】
<評価方法>
実施例における繊維の特性の測定方法は次のとおりである。
(1)破断伸度
JIS L 1015:2005 8.7.1法に準じ、定速伸度型引張り試験機にて常温(20℃)にて測定した。
(2)断面異型度
第1のポリエチレンナフタレート繊維においては、繊維の500倍断面画像から20本の単繊維を選び、単繊維の断面に内接する円の半径(R)と外接する円の半径(R)とを測定しR/Rとして平均値を算出した。
第2のポリエチレンナフタレート繊維においては、繊維の500倍断面画像から20本の単繊維を選び、上記のように扁平形状の長軸長さ/短軸長さ比として平均値を算出した。
(3)不織布強度・不織布伸度
JIS L 1096:2005.8.12法に準じ、定速伸度型引張り試験機にて常温(20℃)にて測定する。
(4)長期耐熱性
不織布を、温度180℃、200℃、230℃のオーブンで熱処理し、伸度が熱処理前の伸度の50%になる時間を測定する。この3点温度の半減時間から、アレニウスプロットにより4万時間で伸度が、熱処理前の50%になると予想される温度を求める。故にこの温度が高いほうが耐熱性が良好と判断する。
(5)通気度
JIS L 1096:2005 8.27.1 A法(フラジール法)に準じて測定した。
(6)地合い
得られた不織布を触感にて判断し、良好、普通、不良の三段階で評価を行った。
(7)繊度
JIS L 1015:2005 8.5.1 A法に記載の方法により測定した。
【0028】
<PEN繊維の製造例>
(第1のPEN繊維の製造例)
(十字断面)
PEN樹脂を紡糸装置により断面が十字のダイスを使用して紡糸速度600m/分の速度で紡糸し、次いで常法により2.4倍延伸して繊度が5.6dtexの第1のPEN繊維を製造した。
(星型断面)
PEN樹脂を紡糸装置により断面が星型のダイスを使用して紡糸速度600m/分の速度で紡糸し、次いで常法により2.5倍延伸して繊度が5.4dtexの第1のPEN繊維を製造した。
(中空円形)
PEN樹脂を紡糸装置により断面が中空円形のダイスを使用して紡糸速度1150m/分の速度で紡糸し、次いで常法により1.6倍延伸して繊度が6.1dtexの第1のPEN繊維を製造した。
(中空三角)
PEN樹脂を紡糸装置により断面が中空三角のダイスを使用して紡糸速度600m/分の速度で紡糸し、次いで常法により3.8倍延伸して繊度が4.5dtexの第1のPEN繊維を製造した。
(中実円形断面)
PEN樹脂を紡糸装置により丸断面のダイスを使用して紡糸速度600m/分の速度で紡糸し、次いで常法により4.8倍延伸して繊度が2.0dtexの第1のPEN繊維を製造した。
【0029】
(第2のPEN繊維の製造例)
PEN樹脂を紡糸装置により断面が長円形のダイスを使用して紡糸速度1300m/分の速度で紡糸し、繊度が7.6dtexの第2のPEN繊維を製造した。ダイスは、繊維断面の長軸長さ/短軸長さ比が15となるものを使用し、第2のPEN繊維(1)(破断伸度66%)を製造した。また繊維の長軸長さ/短軸長さ比が9となる長円形のダイスを使用し、紡糸速度900m/分にて繊度が11.1dtexの第2のPEN繊維(2)(破断伸度141%)を製造した。更には、繊維の長軸長さ/短軸長さ比が15となる長円形のダイスを使用し、紡糸速度500m/分にて繊度が19.6dtexの第2のPEN繊維(3)(破断伸度190%)を製造した。
【0030】
<不織布の製造例>
[実施例1]
第1のPEN繊維(十字断面)と繊維断面の長軸長さ/短軸長さ比が15の第2のPEN繊維をそれぞれカッターにより長さ5mmに裁断してカット繊維とし、第1のPEN繊維(十字断面)のカット繊維と第2のPEN繊維のカット繊維を第2のPEN繊維の割合が50%重量%となるように混合して水に分散し、抄紙機を使用して混合繊維シートとした。乾燥後の混合繊維シートを温度230℃のエンボスカレンダーを使用し、線圧120kg/cmにて加圧・加熱して目付量が55.4g/mの不織布(A)を得た。この不織布(A)を使用して不織布強度、不織布伸度の測定と長期耐熱性を評価した。結果を表1に示した。
【0031】
[実施例2]
第2のPEN繊維(2)を使用した以外は実施例1と同様にして目付量が55.8g/mの不織布(B)を得た。この不織布(B)を使用して不織布強度、不織布伸度の測定と長期耐熱性を評価した。結果を表1に示した。
【0032】
[実施例3]
第2のPEN繊維(3)を使用した以外は実施例1と同様にして目付量が55.5g/mの不織布(C)を得た。この不織布(C)を使用して不織布強度、不織布伸度の測定と長期耐熱性を評価した。結果を表1に示した。
【0033】
[実施例4]
第1のPEN繊維(星型)を使用した以外は実施例1と同様にして目付量が57.3g/mの不織布(D)を得た。この不織布(D)を使用して不織布強度、不織布伸度の測定と長期耐熱性を評価した。結果を表1に示した。
【0034】
[実施例5]
第1のPEN繊維(中空円形)を使用した以外は実施例1と同様にして目付量が56.5g/mの不織布(E)を得た。この不織布(E)を使用して不織布強度、不織布伸度の測定と長期耐熱性を評価した。結果を表1に示した。
【0035】
[実施例6]
第1のPEN繊維(中空三角)を使用した以外は実施例1と同様にして目付量が58.1g/mの不織布(F)を得た。この不織布(F)を使用して不織布強度、不織布伸度の測定と長期耐熱性を評価した。結果を表1に示した。
【0036】
[比較例1]
第1のPEN繊維(十字)を使用し、十字断面の繊維の混率を35%とした以外は実施例1と同様にして目付量が54.8g/mの不織布(G)を得た。この不織布(G)を使用して不織布強度、不織布伸度の測定と長期耐熱性を評価した。結果を表1に示した。
【0037】
[比較例2]
第1のPEN繊維(十字)を使用し、十字断面の繊維の混率を80%とした以外は実施例1と同様にして目付量が57.6g/mの不織布(H)を得た。この不織布(H)を使用して不織布強度、不織布伸度の測定と長期耐熱性を評価した。結果を表1に示した。
【0038】
[比較例3]
第1のPEN繊維(円形)を使用した以外は実施例1と同様にして目付量が56.9g/mの不織布(J)を得た。この不織布(J)を使用して不織布強度、不織布伸度の測定と長期耐熱性を評価した。結果を表1に示した。
【0039】
【表1】

【0040】
上記表1の結果より、本願発明の耐熱性不織布(A)〜(F)は常温での不織布強度、長期耐熱性共に優れたものであり、圧損も小さなものであったが、不織布(G)は地合いが悪く、不織布(H)は不織布強度が低く、また不織布(J)は、通気性が低いものであった。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の耐熱性不織布を構成する第2のPEN繊維の断面形状の例を示した図である。
【図2】本発明の耐熱性不織布を構成する第1のPEN繊維の断面形状の例を示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
破断伸度が5〜45%であり断面形状が扁平形状を除く異形形状である第1のポリエチレンナフタレート繊維と、破断伸度が50〜200%であり断面形状が扁平形状である第2のポリエチレンナフタレート繊維とからなる不織布であって、該第2のポリエチレンナフタレート繊維の重量比率が該不織布重量を基準として25〜60重量%である耐熱性不織布。
【請求項2】
該第2のポリエチレンナフタレート繊維の断面の扁平形状は長軸長さ/短軸長さ比が8〜30であることを特徴とする請求項1に記載の耐熱性不織布。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−297639(P2008−297639A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−141583(P2007−141583)
【出願日】平成19年5月29日(2007.5.29)
【出願人】(302011711)帝人ファイバー株式会社 (1,101)
【Fターム(参考)】