説明

耐熱性脱酸素剤

【課題】 高温高圧下で処理される物品の保存に使用できる小袋型の脱酸素剤であり、高温高圧処理において、脱酸素剤の包装体が破袋せず、かつ、錆びなどの染みだしのない脱酸素剤を提供する。
【解決手段】 脱酸素剤組成物を少なくとも表面保護層とヒートシール層とから構成される無孔フィルムにてヒートシールにより包装してなる小袋型の脱酸素剤であって、前記包装フィルムの酸素透過度が2,000cc/(m・24hr・atm)(25℃、90%RH)以上で、ヒートシール層の融点が130℃以上であって、レトルト処理に使用できる耐熱性を有する脱酸素剤を使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は加熱加圧条件で使用できる脱酸素剤に関する。
【背景技術】
【0002】
酸素による変質や微生物の繁殖による腐敗を防いで品質保持するために、食品、医薬品等、酸素の影響を受け易い物品の脱酸素包装に脱酸素剤を利用する、所謂、脱酸素包装が広く普及している。この脱酸素包装には、通常、粒状または粉末状の脱酸素剤を通気性を備えた小袋に充填した小袋型の脱酸素剤が使用されている。また、例えば、特許文献1には、鉄粉系脱酸素剤のような粉粒状の脱酸素剤を熱可塑性樹脂に配合して成形した脱酸素性樹脂シートを脱酸素体とするシート状脱酸素剤が開示されている。
【0003】
この小袋を構成する包装材料は、通常、表面に開孔処理した耐熱性フィルム、中間に通気性のある紙など多孔質層およびヒートシール性の内層からなる三層構成のものが用いられている。
この小袋型脱酸素剤は、通常、低融点のヒートシール層を使用していることからレトルト処理のような高温条件下での使用はできないものであった。また、表面に開孔処理した耐熱性フィルムを使用しているので、耐熱性の高いヒートシール層を用いた場合でも、水性液体と直接接触する可能性のある用途や、レトルト処理のような多量の水蒸気と接触する用途には、発生する鉄錆などの内容物が、開孔部を経て表面に染み出してくる可能性があり、実用的ではなかった。
【0004】
また、特許文献2には、錆びなどの染みだしの無いラベル型脱酸素剤の包装材料として不織布など連続多孔質層の表面層として無孔の酸素透過性の高い層を設けたフィルムを用いるものが開示されている。しかし、この具体例の場合、無孔の酸素透過層の耐熱性が低いために耐熱用途には使用できない。また、ヒートシールに関してはその層構成から内層の不織布層は使用できないことから、ヒートシールによる小袋型の脱酸素剤の製造にはこの解決策を見出さねば採用できないという課題がある。
【0005】
【特許文献1】特開平2−72851号公報
【特許文献2】特開2003−334049号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、高温高圧下で処理される物品の保存に使用できる小袋型の脱酸素剤であり、高温高圧処理において、脱酸素剤の包装体が破袋せず、かつ、錆びなどの染みだしのない脱酸素剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、包装用のフィルムを選択すること、その他によって、レトルト条件にも使用可能な小袋型の脱酸素剤として機能させることができることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、脱酸素剤組成物を少なくとも表面保護層とヒートシール層とから構成される無孔フィルムにてヒートシールにより包装してなる小袋型の脱酸素剤であって、前記包装フィルムの酸素透過度が2,000cc/(m・24hr・atm)(25℃、90%RH)以上で、ヒートシール層の融点が130℃以上であって、レトルト処理に使用できる耐熱性を有することを特徴とする脱酸素剤である。
本発明の好ましい態様においては、脱酸素剤組成物が、熱可塑性樹脂に脱酸素剤を配合してなるシート状脱酸素体であること、無孔フィルムが、延伸ポリプロピレン層と無延伸ポリプロピレン層とからなるものであり、無延伸ポリプロピレン層が、融点が135〜160℃のヒートシール層である小袋型の脱酸素剤である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の無孔フィルムを用いた脱酸素剤は、レトルト処理時に内容物の漏洩なく処理することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の小袋型の脱酸素剤は、表面保護層とヒートシール層とから構成される無孔フィルムにてヒートシールにより包装してなるものである。
ここで、無孔フィルムとは、物理的或いは化学的などの穴あけ操作をしていないとの意味であって、通常の押し出し成形や延伸処理などにて得られるものであって、例えば、針孔あけ操作、冷間延伸処理による微多孔化処理、易溶解性物質を配合し溶出させることによる穴あけなどの貫通孔の発生する操作をしていないものとの意味である。
また、一般に、レトルト処理を施されるものは高水分活性の食品が多い。従って、脱酸素剤としては、必要な水分を食品から得る水分依存型脱酸素剤を用いることができる。
脱酸素組成物としては、包装フィルムが破損しない限り特に制限はないが、仮に破袋した場合にも内容物が漏れる恐れがない点からは、樹脂に脱酸素剤を混合した樹脂組成物から得たシート状脱酸素剤を用いることが好ましい。
以下その構成について詳しく説明する。
【0010】
本発明の無孔フィルムは、融点130℃以上、酸素透過度2,000cc/(m・24hr・atm)(25℃、90%RH)以上で、フィルム厚さ5μm以上、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上である。また、少なくとも表面保護層とヒートシール層とを有し、いくつかのフィルムの積層であってよく、内容物を隠蔽するため、意匠性を付与するために、着色フィルムを用いても良く、あるいは印刷を施してもよい。
【0011】
フィルムに用いる樹脂としては、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ナイロンなどがある。これらの樹脂は、複数のものを積層して用いてもよく、また、延伸されたものを用いてもよく、これらを複合して使用しても良い。
これらの中で、ヒートシール性に関しては、ポリプロピレンが最も優れており、耐熱性・価格・効果などの点からポリポロピレンを用いることが好ましく、ヒートシール層として無延伸ポリプロピレンを用い、ヒートシール時の表面保護層として延伸ポリプロピレンを用いることが好ましい。
また、ポリプロピレンは、上記融点を有するものであれば、純粋なものである必要はなく、他の樹脂とのコポリマーやブレンドされたものであってもよい。さらに、添加剤・充填剤等を適宜含有することも可能である。
【0012】
脱酸素組成物は、反応に必要な水分を含有する自力反応型、水分を被保存物などの脱酸素組成物の外部から取り込む水分依存型のどちらでも使用可能である。成分は、例えば、鉄粉等に代表される金属成分を主剤(脱酸素反応物)とする金属系脱酸素剤、また、アスコルビン酸類、多価アルコール類、多価フェノール類等の有機成分を主剤とする有機系脱酸素剤を挙げることができる。
また、熱可塑性樹脂に脱酸素剤を分散した脱酸素性の樹脂組成物を用いることもでき、シート状としたものが好ましい。特に、延伸して多孔性としたシート状脱酸素剤が脱酸素速度の点から好ましい。
シート状脱酸素体は、熱可塑性樹脂15〜75重量%と脱酸素剤85〜25重量%とを混練、溶融してシート化し、延伸して製造する。延伸倍率は1.5〜15倍が好ましく、3〜12倍がさらに好ましい。シート状脱酸素体の厚さは、通常、0.05〜3mmの範囲から選択する。
【0013】
シート状脱酸素体に用いる熱可塑性樹脂は、通常、ポリオレフィンが好適であるが、用途との関係から、通常、融点130℃以上のものを選択する。
シート状脱酸素体に用いる脱酸素剤の主剤としては、鉄粉が好ましい。
鉄粉系脱酸素剤は、鉄粉及びハロゲン化金属塩を含む組成物からなり、特に、鉄粉の表面にハロゲン化金属塩を被覆又は分散付着させたものが好適に用いられ、これらは、適宜、活性炭、石灰、珪藻土、ゼオライト、無機塩等の助剤成分を含有させて使用する。
鉄粉は、直接還元鉄粉、電解鉄粉、噴霧鉄粉等が例示され、平均粒子径は、好ましくは、200μm以下、より好ましくは10〜150μmである。ハロゲン化金属としては、例えば、塩素、臭素、沃素などのハロゲンと、ナトリウム、カリウム、バリウム、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ或いはアルカリ土類金属との塩が例示され、鉄粉100重量部に対し、0.1〜15重量部、好ましくは0.1〜5重量部の範囲で用いられる。
なお、シート状脱酸素体に、吸湿層、保水層、ガス吸着層、ガス発生層、脱臭層等の層を別に併用することができる。
【実施例】
【0014】
実施例により本発明を説明する。尚、本発明は実施例に限定されない。
実施例1
小袋の包装用フィルムとして、延伸ポリプロピレン(OPP)/無延伸ポリプロピレン(CPP)からなる積層フィルム(厚さOPP/CPP=10/20μm)を用い、30mm×45mmに切断した。このフィルムの酸素透過度は2,400cc/(m・24hr・atm)(25℃、90%RH)であった。
鉄粉100重量部に対して塩化カルシウム2.5重量部の割合で塩化カルシウムを被覆した鉄粉(平均粒径70μm)100重量部と高密度ポリエチレン40重量部とを混練押出してシート状脱酸素樹脂組成物とした後、縦方向5倍に延伸して多孔質化された帯状のシート状脱酸素体(厚さ0.6mm)を作製した。
このシート状脱酸素体を、21mm×15mmの大きさに切断(鉄粉量0.29g)し、2枚のOPP/CPPの積層フィルムの間に挟み込んだ後、積層フィルムの周囲を5mm幅でヒートシールして、小袋型脱酸素剤を得た。
【0015】
塩化ビニリデンコート延伸ナイロン(KON)/低密度ポリエチレン(PE)/直鎖状低分子量ポリエチレン(LLDPE)(厚さKON/PE/LLDPE=15/20/60μm)から構成されるガスバリアー性フィルムからなる3辺をヒートシールした袋の内面に、上記の小袋型脱酸素剤と、蒸留水5mlを含浸させた脱脂綿とを封入した。その後、窒素置換を行い、体積50ml程度で、酸素濃度が3%となるように調整し、袋口をヒートシールして密閉して包装袋を作成した(内寸100mm×100mm)。
同様にして包装袋を3袋作成し、これらをレトルト装置にて120℃30分加熱した。
その後、袋内空間の酸素濃度をガスクロマトグラフにて測定したところ、3袋とも0.1容量%未満まで脱酸素していた。
【0016】
比較例1
小袋の包装用フィルムとして、厚さの異なるOPP/CPP積層フィルム(厚さOPP/CPP=20/30μm)(1,500cc/(m・24hr・atm)(25℃、90%RH)を用いる他は、実施例1と同様とした。
レトルト処理後の酸素濃度は、1.5%であり、脱酸素状態(0.1%未満)には達していなかった。この包装袋を室内(25℃)で7日放置後に酸素濃度を測定したところ、酸素濃度は1.0%であり、脱酸素状態には達していなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱酸素剤組成物を少なくとも表面保護層とヒートシール層とから構成される無孔フィルムにてヒートシールにより包装してなる小袋型の脱酸素剤であって、前記包装フィルムの酸素透過度が2,000cc/(m・24hr・atm)(25℃、90%RH)以上で、ヒートシール層の融点が130℃以上であって、レトルト処理に使用できる耐熱性を有することを特徴とする脱酸素剤。
【請求項2】
脱酸素剤組成物が、熱可塑性樹脂に脱酸素剤を配合してなるシート状脱酸素体である請求項1記載の脱酸素剤。
【請求項3】
該無孔フィルムを構成する表面保護層が延伸ポリプロピレン層、ヒートシール層が無延伸ポリプロピレン層である請求項1記載の脱酸素剤。
【請求項4】
該無延伸ポリプロピレン層の融点が135〜160℃である請求項3記載の脱酸素剤。

【公開番号】特開2009−96539(P2009−96539A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−272425(P2007−272425)
【出願日】平成19年10月19日(2007.10.19)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】