説明

耐燃性ボード

【課題】木質系基板に金属箔が貼り合わされたボードの耐燃性を低下させずに、建築用材料として好適な外観を付与することを課題とする。
【解決手段】木質系基板上に金属箔が積層され、更に該金属箔上に塗料が塗布されたボードであって、該塗料は固形分換算で0.2g/m以上塗布されており、更にISO5660−1に準拠し、コーンカロリーメーターを用いて、塗料面がヒーター側になるようにボードを保持フレーム上に乗せて、10分間燃焼試験を行った場合、金属箔の木質系基板側表面温度が250℃以下となるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は内装用建材、外装用建材、構造用部材、造作部材、建具等、各種建築用部材等に用いられるボードに関する。詳しくは合板やパーティクルボード、配向ストランドボード、中密度繊維板(MDF)といった木質板を基板とし、従来の木質板よりも耐燃性に優れたボードに関する。
【背景技術】
【0002】
合板やパーティクルボード、配向ストランドボード、MDFといった木質板は加工性に優れ、比較的軽量で、防音性、遮音性、断熱性等にも優れるため、建築用材としては非常に優れた材料である。しかしながら木質板は、例えば火災時のように、直接炎にさらされると燃焼してしまう。そこで木質板の耐燃性を改善するためにさまざまな方法が検討されてきた。
【0003】
耐燃性を付与する方法の1つに、木質系基板の表面に金属薄膜シートを貼り付ける方法(特許文献1)がある。金属薄膜によって炎から発生する輻射熱を反射し、更に木質系基板が発生する可燃性ガスの表面への放出を防止し、燃焼を抑制するのである。該方法によると短時間で、しかも低コストで木質板に耐燃性を付与できるのであるが、得られるボードの表面は金属薄膜であるために、建築材料としては問題があった。すなわち、表面が金属薄膜のままでは、内装用建築材や外装用建築材、造作部材、建具としては非常に限られた部分にしか使用できないのである。また、該ボードを構造用部材として用いる場合であっても、通常、構造用のボードの表面には「釘打ち位置」や「使用方法」等の印刷が行われるが、表面が金属薄膜のままではこれらの印刷が鮮明には見えないという問題があった。そこで、本願発明者らは金属薄膜に塗料を塗布してみたが、塗料は燃焼しやすいため、単に塗料を塗っただけではボードの耐燃性を著しく低下させることとなった。
【0004】
また、特許文献2には太陽光などに含まれる赤外線を効果的に反射する赤外線反射塗料組成物が記載されている。そこで本願発明者らは、木質系基板に金属箔を貼り、更にこのような赤外線反射塗料を塗布してみた。しかしながら得られたボードの耐燃性は、塗料を塗布しない場合よりも大きく低下した。これは、太陽光から発生する熱線は、赤外線の中でも近赤外(780nm〜3000nm)部分が主であり、一方炎が発する熱線は、赤外線の中でも遠赤外線(3000nm〜10mm)部分が主であるため、太陽光から発生する熱線(近赤外線)を反射する塗料であっても、炎の熱線(遠赤外線)は反射しなかったためと思われる。
【0005】
【特許文献1】特開2007−30416号公報
【特許文献2】特開2006−273985号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願発明は、木質系基板に金属箔が貼り合わされたボードの耐燃性を低下させずに、建築用材料として好適な外観を付与することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によると、上記課題を解決するための手段として、
木質系基板上に金属箔が積層され、更に該金属箔上に塗料が塗布されたボードであって、該塗料は固形分換算で0.2g/m以上塗布されており、更にISO5660−1に準拠し、コーンカロリーメーターを用いて、塗料面がヒーター側になるようにボードを保持フレーム上に乗せて、10分間燃焼試験を行った場合、金属箔の木質系基板側表面温度が250℃以下であることを特徴とする耐燃性ボードが提供され、
更に、前記塗料が、金属箔上に固形分換算で0.2乃至5.0g/m塗布されており、塗料面の明度(L)が20以上であること特徴とする前記耐燃性ボードが提供され、
更に、前記塗料が、フタロシアニン系顔料を含有することを特徴とする前記耐燃性ボードが提供され、
更に、前記塗料が、フタロシアニンブルーを含有することを特徴とする前記耐燃性ボードが提供され、
更に、前記塗料が、アクリル樹脂をビヒクルとすることを特徴とする前記耐燃性ボードが提供さ
更に、前記金属箔が、アルミニウム箔であることを特徴とする前記耐燃性ボードが提供される。
【0008】
即ち、本願発明者らは、木質系基板に金属箔を積層したボードが非常に耐燃性に優れることに着目し、該ボードに建築用材料として好適な外観を付与すべく鋭意検討した結果、塗料が固形分換算で0.2g/m以上塗布されていると、金属箔の輝く感じを覆い隠すことができ、好適な外観となることを見出した。更に、ボードの耐燃性を低下させないためには、ISO5660−1に準拠し、コーンカロリーメーターを用いて、塗料面がヒーター側になるようにボードを保持フレーム上に乗せて10分間燃焼試験を行った場合に、金属箔の木質系基板側の表面温度が250℃以下であればよいことを見出し、本願発明に至ったのである。該温度が250℃以下であると木質系基板はほとんど燃焼しないが、250℃を超えると木質系基板は急に燃焼を始める。
【0009】
尚、燃焼試験を行う方法であるが、ISO5660−1によって定められたコーンカロリーメーターを用い、耐燃性ボードを塗料面がヒーター側になるように保持フレーム上に乗せ、金属箔と木質系基板の積層部分を一部剥離し、温度測定用のセンサーを金属箔と接するように差込み、コーンヒーター底面と耐燃性ボードの上端との距離が25mmとなるように調節して燃焼試験を行い、10分後に金属箔の木質系基板側の表面温度を測定する。(以下、該試験を「伝熱試験」と称す)。尚、正確な伝熱試験の結果を得るためには、実際に耐燃性ボードを製造し伝熱試験を行わなければならないが、塗料の影響を調べる等の目的で、厳密な結果を必要としない場合は、金属箔に塗料を塗布した試験片を作って試験を行うとよい。金属箔と塗料からなる試験片を保持フレーム上に乗せ、コーンヒーター底面と試験片の距離が25mmとなるように調節し、保持フレームと金属箔の間にセンサーを差し込んで温度を測定するのである。
【0010】
図1は、本発明の耐燃性ボード1の一例を表す模式的断面図である。本発明の耐燃性ボードは木質系基板2上に、金属箔3が積層され、更に塗料4が塗布されている。木質系基板2は、主として木質系の材料からなる板状のものであれば特に限定されず、合板やパーティクルボード、配向ストランドボード、MDF、ハードボード、単板、集成材等を例示することができる。また、木質系基板2の厚さは限定されるものではなく、耐燃性ボードの用途によって適宜決定するとよいが、6〜50mm程度が好ましい。6mmよりも薄くなると、木質系基板の熱容量が低下し、耐燃性ボードの断熱性が低下する。また、50mmを超えると高コストになり、また高重量になるために扱いにくくなる。
【0011】
本発明に用いられる金属箔3は、アルミニウム箔、ステンレス箔、シート状基材にアルミニウムやステンレスを貼り付けた積層箔、シート状基材にアルミニウムやステンレスを蒸着した積層箔等を例示することができるが、火災時に発生する遠赤外線の反射性能、製品コスト等を考慮するとアルミニウム箔を用いることが好ましい。また、金属箔の厚さは特に限定されないが5〜100μmが好ましい。5μmよりも薄くなると、木質系基板との貼り合わせが困難になり、また100μm以上では、遠赤外線反射機能の更なる改善は期待できず、製品コストが高くなるだけである。
【0012】
また塗料4は、金属箔の輝きを覆い隠すために、固形分換算で0.2g/m以上塗布される。しかしながら、塗料を塗布しすぎるとボードの耐燃性が低下する。そこで、伝熱試験によって得られる金属箔の木質系基板側表面温度が250℃以下となるように塗料4を塗布する。図2に厚さ9mmのパーティクルボード表面に20μmのアルミニウム箔を貼り付け、更に該アルミニウム箔上にフタロシアニンブルーを顔料としアクリル塩ビ酢ビ共重合体をビヒクルとする塗料を固形分換算で3g/m塗布した耐燃性ボードについて伝熱試験を行った際の、金属箔の木質系基板側表面温度の変化を示す。該温度は加熱後3〜4分程度までは急激に上昇するが、10分もすると温度変化がほとんど見られなくなる。このときの温度が250℃を超えないようにするのである。
【0013】
塗料4は上記の条件に適合するものであれば特に限定されず、例えば、酸化鉄、酸化鉛、ストロンチウムクロメート、二酸化チタン、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエロー、クロムグリーン、コバルトグリーン、群青、紺青、コバルトブルー等の無機顔料系塗料、フタロシアニングリーン、塩素化フタロシアニングリーン、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、銅フタロシアニンブルー、ジオキサジンバイオレット、シンカシヤレッド等の有機顔料系塗料等を用いることができるが、フタロシアニン系顔料を含む塗料、特にフタロシアニンブルーを含む塗料を好適な例としてあげる。
【0014】
また、顔料の分散に用いるビヒクルであるが、従来公知のアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、及びこれらの樹脂の変性体などを用いることができるが、分散性、コスト、耐熱性等を考慮するとアクリル系樹脂を好適な例としてあげる。特にアクリルポリオール、中でもアクリル塩ビ酢ビ共重合体を好適な例としてあげる。
【0015】
次に、伝熱試験によって得られる温度を250℃以下とするための具体的な手段を例示する。
1)塗布後の明度(L*)が20以上となる塗料を、固形分換算で5.0g/m以下塗布する。尚、明度(L)はJIS Z 8729に定めるところに従って、耐燃性ボードの塗料面を測定した値である。明度が20未満の塗料は全光線に渡って吸収率が高く、もちろん遠赤外線の吸収も高くなる。よって、耐燃性ボードが炎にさらされた際は塗料の部分が高温となり、木質系基板に250℃を超える熱を伝えてしまう。また明度(L*)が20以上であっても、塗料が固形分換算で5.0g/m以上塗布されていると、炎にさらされた際に塗料の部分が高温となり、木質系基板に250℃を超える熱を伝えてしまうことがある。
2)フタロシアニン系顔料からなる塗料を固形分換算で10.0g/m以下設ける。フタロシアニン系顔料、特にフタロシアニンブルーからなる塗料を用いると、他の塗料を用いた場合よりも、伝熱試験によって得られる金属箔の木質系基板側表面温度が低くなる。これはフタロシアニン系の顔料が遠赤外線をほとんど吸収せず、塗料の部分が高温になりにくい為と推測する。
【0016】
本発明の耐燃性ボードの製造方法は特に限定されないが、例えば木質系基板上に接着剤を介して金属箔を積層し、更に該金属箔上に塗料を塗布するとよい。塗料を塗布する方法も限定されないが、例えば、吹き付け、カーテンコート、グラビアオフセット印刷、シルクスクリーン印刷などの方法によって行うことができる。また、金属箔の全面を覆うように塗料を塗布してもよいが、金属箔の輝く感じが残っていても気にならない場合は、必要な部分だけに塗料を塗布してもよい。
【0017】
本発明による耐燃性ボードは、図1に示すように、木質系基板2の少なくとも片面に金属箔3が積層され、更に塗料4が塗布されていることを特徴とする。よって、用途によっては、図3に示すように、木質系基板12の両面に金属箔13が積層され、更に塗料14が塗布されていてもよい。また、木質系基板の一方の面には金属箔が積層され、更に塗料が塗布され、反対側の面には金属箔、又は塗料の少なくとも一方が設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、木質系基板に金属箔が貼り合わされたボードの耐燃性を低下させずに、建築用材料として好適な外観を付与することができる。特に、塗料がフタロシアニン系顔料からなると、比較的多量の塗料を塗布してもボードの耐燃性があまり低下しない。
【実施例】
【0019】
次に本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明する。
厚さ9mm、比重0.8のパーティクルボード表面に、20μmのアルミニウム箔を貼り付け、更に該アルミニウム箔上に表1に示す顔料からなる塗料を塗布し、実施例1〜8、比較例1〜8の耐燃性ボードを得た。尚、塗料は、アクリル塩ビ酢ビ共重合体をビヒクルとし、ビヒクル100重量部に対して表1に示す顔料を100重量部添加した塗料を用いた。また、塗布量は固形分換算の値である。各耐燃性ボードの明度、伝熱試験の結果も合わせて表1に記す。
【0020】
尚、それぞれの値は、以下の要領で測定した。
[明度]JIS Z 8729に定めるところに従って、耐燃性ボードの塗料面の明度を測定した。
[伝熱試験]ISO5660−1によって定められたコーンカロリーメーターを用い、耐燃性ボードを塗料面がヒーター側になるように保持フレーム上に乗せ、金属箔と木質系基板の積層部分を一部剥離し、センサーを金属箔と接するように差込み、コーンヒーター底面と耐燃性ボードの上端との距離が25mmとなるように調節して燃焼試験を行い、10分後のセンサーの温度を測定した。
【0021】
【表1】

【0022】
塗料の塗布量が5g/m以下で明度が20以上(実施例1〜7、及び比較例1〜4)であると、伝熱試験の温度は250℃以下であることが分かる。また、顔料がフタロシアニンブルー(実施例8)であると、塗布量が10g/mであっても伝熱試験によって得られる温度は250℃以下であった。
【0023】
次に、実施例1〜8、比較例1〜8の耐燃性ボードの外観、及び耐燃性を測定する。外観は目視にて判定し、金属箔の輝く感じがなくなっていれば○、残っていた場合は×を表2に記す。耐燃性は、ISO5660−1に準拠して火に対する反応試験を試験時間20分で行い、(1)総発熱量、(2)最大発熱速度、及び(3)亀裂及び穴の有無により調べる。総発熱量、最大発熱速度の測定結果、及び目視による亀裂及び穴の有無の判定結果も表2に記す。尚、建築基準法によると試験時間20分以内で総発熱量8MJ/m以下、最高発熱速度が10秒以上継続して200kW/mを超えない、亀裂及び穴がない、という条件を全て満たすものが発熱性試験に合格するので、この条件を満たすものに○、満たさないものに×を併せて記す。
【0024】
【表2】

【0025】
実施例1〜8、及び比較例1〜4より、伝熱試験の温度が250℃以下であるボードは、発熱性試験に合格し得る耐燃性ボードであった。しかしながら、比較例1〜4より、塗料の塗布量が0.2g/m未満であると、金属箔の輝く感じを覆い隠すことができなかった。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の耐燃性ボードの一実施例を表す模式的断面図である。
【図2】伝熱試験を行った際の、金属箔の木質系基板側表面温度の変化を示す。
【図3】本発明の耐燃性ボードの別の実施例を表す模式的断面図である。
【符号の説明】
【0027】
1、11 耐燃性ボード
2、12 木質系基板
3、13 金属箔
4、14 塗料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質系基板上に金属箔が積層され、更に該金属箔上に塗料が塗布されたボードであって、該塗料は固形分換算で0.2g/m以上塗布されており、更にISO5660−1に準拠し、コーンカロリーメーターを用いて、塗料面がヒーター側になるようにボードを保持フレーム上に乗せて、10分間燃焼試験を行った場合、金属箔の木質系基板側表面温度が250℃以下であることを特徴とする耐燃性ボード。
【請求項2】
前記塗料が、金属箔上に固形分換算で0.2乃至5.0g/m塗布されており、塗料面の明度(L)が20以上であることを特徴とする請求項1記載の耐燃性ボード。
【請求項3】
前記塗料が、フタロシアニン系顔料を含有することを特徴とする請求項1乃至2のいずれかに記載の耐燃性ボード。
【請求項4】
前記塗料が、フタロシアニンブルーを含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の耐燃性ボード
【請求項5】
前記塗料が、アクリル系樹脂をビヒクルとすることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の耐燃性ボード。
【請求項6】
前記金属箔が、アルミニウム箔であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の耐燃性ボード。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2009−126156(P2009−126156A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−306717(P2007−306717)
【出願日】平成19年11月28日(2007.11.28)
【出願人】(000206473)大倉工業株式会社 (124)
【Fターム(参考)】