説明

耐磨耗特性の改善された添加剤および潤滑剤組成物

【課題】耐摩耗性特性の改善された潤滑剤組成物が要望される。
【解決手段】潤滑粘性の基油、少なくとも一種類のホスホロチオ酸の金属塩、および潤滑剤組成物の耐磨耗特性を向上させるのに十分な量の少なくとも一つの炭化水素に可溶なチタン系化合物を含んだ潤滑剤組成物が提供される。耐磨耗剤中の金属チタンとリンとの比率は、約0.3:1から約1.5:1の範囲内である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載の実施例は、油溶性のチタン系添加剤とホスホロチオ酸の金属塩を含んだ特定の耐磨耗剤および潤滑油組成物中でのそのような耐磨耗剤の用法、特にチタン系化合物またはホスホロチオ酸の金属塩のいずれか一つのみを含む潤滑剤組成物によって得られるフィルムに比べて厚みのある耐磨耗フィルムを形成する潤滑剤組成物用の耐磨耗剤に関連する。
【背景技術】
【0002】
乗用車や高荷重ディーゼルエンジンで使用される潤滑油は、長年の間に変化してきた。今日のエンジンは過去に比べてより熱くまた苛酷に運転されるようにデザインされている。可動部間の摩耗を低減するため、様々な添加剤が潤滑剤組成物に加えられてきた。特に一般的な耐摩耗剤の一つにジンクジアルキルジチオホスフェート(ZnDDP)がある。このような亜鉛化合物は、耐摩耗剤として特に有用ではあるが、完成した潤滑剤中の硫黄および/またはリン濃度を増加させるなど、一つ以上の不利点を有する。
【0003】
硫黄およびリンを含んだ添加剤は公害防止装置の効果を妨げる、あるいは低減させることが知られている。そこで公害防止装置の保護のため、次世代の乗用車用モーターオイルおよび高荷重ディーゼルエンジンオイルには、完成したオイル中のリンおよび硫黄濃度が低いことが要される。例えば、現在のGF−4モーターオイルの仕様書では、完成したオイルのリンおよび硫黄の含有量が、順に0.08重量%および0.7重量%未満であることを義務付けているし、また次世代高荷重ディーゼルエンジンオイルであるPC−10モーターオイルの仕様書では、オイルのリンおよび硫黄の含有量は順に0.12重量%および0.4重量%未満、また硫酸塩灰分は1.0重量%であることを義務付けている。業界で知られているある種の耐摩耗剤には、公害防止装置の効果を低下する量のリンおよび硫黄が含まれている。
【0004】
従って、耐摩耗特性を促進し、また自動車およびディーゼルエンジンに使用される公害防止装置との適合性がより高い、潤滑剤添加物および組成物が必要となる。また、完成した潤滑剤の油溶性や腐食、および/または色の黒ずみなどに悪影響を与えることがなく、このような公害防止装置との適合性がより高い潤滑剤添加物および組成物も必要とされる。このような添加剤は、リンおよび/または硫黄を含んでいる場合もあるし、また実質的にリンおよび/または硫黄を欠いている場合もある。
【0005】
本明細書の一つの実施例では、潤滑粘性の基油、少なくとも一種類のホスホロチオ酸の金属塩、および潤滑剤組成物の耐磨耗特性を向上させるのに十分な量の少なくとも一つの炭化水素に可溶なチタン系化合物を含んだ潤滑剤組成物を含む潤滑面が紹介されている。このとき耐磨耗剤中の金属チタンとリンとの比率は、約0.3:1から約1.5:1の範囲内である。
【0006】
別の実施例では、可動部を有しまたその可動部を潤滑する潤滑剤を含有する自動車が提供される。当該潤滑剤には、潤滑粘性のオイル、摩擦低減剤、少なくとも一つの炭化水素に可溶なチタン系化合物と少なくとも一種類のホスホロチオ酸の金属塩を含んだ耐磨耗剤が含まれる。耐磨耗剤中の金属チタンとリンとの比率は、約0.3:1から約1.5:1の範囲内である。この耐磨耗剤により、チタン系化合物あるいはリン化合物を単独で使用した際に得られるフィルムよりも厚みのある耐磨耗フィルムが得られる。
【0007】
さらに別の実施例では、潤滑粘性の基油成分、および炭化水素に可溶なチタン含有化合
物と少なくとも一種類のホスホロチオ酸の金属塩を含んだ耐磨耗剤を含む完全に調整された潤滑剤組成物が提供される。耐磨耗剤中の金属チタンとリンとの比率は、約0.3:1から約1.5:1の範囲内である。
【0008】
本開示のさらなる実施例では、潤滑面に隣接した耐磨耗フィルムの厚みを増加させる方法が示される。この方法には、潤滑粘性の基油、および炭化水素に可溶なチタン系化合物とホスホロチオ酸の金属塩を含んだ耐磨耗剤を含む潤滑剤組成物に表面を接触させることが含まれる。耐磨耗剤中の金属チタンとリンの比率は、耐磨耗フィルムの厚みを、チタン系化合物またはホスホロチオ酸の金属塩のいずれか一つのみを含む潤滑剤組成物によって得られる耐磨耗フィルムに比べて相乗的に増加させるような比率である。
【0009】
上記で簡単に説明したように、本開示の実施例は、潤滑剤組成物の耐磨耗特性を著しく向上させ、耐磨耗性を向上させるために必要とされるリンおよび硫黄添加剤の量を減少させることのできる炭化水素に可溶なチタン系化合物と炭化水素に可溶なリン酸金属塩の組み合わせを提供している。この添加剤は、可動部間の表面に塗布される油性の流体と混合されることもある。別の態様では、当添加剤は完全に調整された潤滑剤組成物として提供される。当添加剤は、将来型の乗用車やエンジンオイルの仕様および基準だけではなく、現在提案されている乗用車用モーターオイル用のGF−4基準、また高荷重ディーゼルエンジンオイル用のPC−10基準を満たすことを特に目標としている。
【0010】
本明細書に記載の組成物および方法は、チタン系化合物またはリン化合物のいずれかを欠いた潤滑剤組成物によって形成された境界面よりも相乗的に厚みのある潤滑面の境界面の潤滑の増加に特に適している。本明細書に記載の組成物および方法の別の特徴および長所は、本明細書に記載の実施例を限定することなく実施例の態様を例示することを意図した、以下の詳細な説明を参照することにより明らかになる。
【0011】
前述の概要および以下の詳しい説明は、共に例示および説明のみを目的としたものであり、開示および請求された実施例のさらなる説明を提供することを意図したものであると理解される。
【発明の詳細な説明】
【0012】
一つの実施例では、潤滑油組成物中の成分として有用な新規の組成物が紹介されている。この組成物には炭化水素に可溶なチタン系化合物とホスホロチオ酸の金属塩を含んだ耐磨耗剤が含まれる。
【0013】
潤滑剤組成物用耐磨耗剤の第一の主成分は炭化水素に可溶なチタン系化合物である。「炭化水素に可溶な」という用語は、化合物が反応性のあるチタン化合物の炭化水素物質との反応または錯体形成により、炭化水素物質に実質的に懸濁または溶解していることを意味する。本明細書で使用される「炭化水素」とは、炭素、水素、および/または酸素を様々な組み合わせで含有している多数の化合物のいずれかを意味する。
【0014】
本明細書で使用されている「ヒドロカルビル」という用語は、炭素原子が分子の残りの部分に結合しており、また主に炭化水素の特性を有する基を指す。ヒドロカルビル基の例には以下のものが含まれる:
a)炭化水素置換基、すなわち、脂肪族(例えばアルキルまたはアルケニル)置換基、脂環式(例えばシクロアルキル、シクロアルケニル)置換基、また芳香族、脂肪族、および脂環基によって置換された芳香族置換基、また環が分子の別の部分によって完成されている(例えば二つの置換基が一緒になって脂環式ラジカルを形成している)ような環状置換基;
b)置換された炭化水素置換基、すなわち、本発明の状況下で、主に炭化水素である置換
基(例えばハロ(特にクロロおよびフルオロ)、ヒドロキシ、アルコキシ、メルカプト、アルキルメルカプト、ニトロ、ニトロソ、およびスルホキシ)などを変化させないような、非炭化水素基を含んだ置換基;
c)ヘテロ置換基、すなわち、主に本発明の状況下で、主に炭化水素の特性を有しながら、そうでなければ炭素原子から成る環または鎖の中に炭素以外の原子を含んでいるような置換基。ヘテロ原子には硫黄、酸素、および窒素があり、またピリジル、フリル、チエニルおよびイミダゾリルのような置換基が含まれる。通常、ヒドロカルビル基中、炭素原子10個につき二つ以下、一般的には一つ以下の非炭化水素置換基が存在する。一般的にヒドロカルビル基中に非炭化水素置換基は存在しない。
【0015】
耐磨耗剤の成分としての使用に適した炭化水素に可溶なチタン化合物は、チタンアルコキシドと約Cから約C25のカルボン酸との反応生成物から得られる。当反応生成物は、以下の化学式によって表され:
【0016】
【化1】

【0017】
式中nは2、3および4の中から選択された整数、またRは炭素数が約5から約24のヒドロカルビル基であるか、あるいは以下の化学式によって表され:
【0018】
【化2】

【0019】
式中、R、R、R、およびRはそれぞれ同一あるいは異なったもので、炭素数が約5つから約25のヒドロカルビル基の中から選択される。前述の化学式の化合物は、実質的にリンおよび硫黄を含んでいない。
【0020】
一つの実施例では、炭化水素に可溶なチタン化合物から成る潤滑剤あるいは調合潤滑剤パッケージの硫黄含有量が0.7重量%以下、またリンの含有量を約0.12重量%以下となるように、この炭化水素に可溶なチタン化合物は、実質的にあるいは原則的に硫黄およびリン原子を欠いているか、またはこれらを含まない。
【0021】
別の実施例では、炭化水素に可溶なチタン化合物は実質的に活性硫黄を含んでいない。「活性」硫黄とは完全に酸化されていない硫黄のことである。活性硫黄は使用されるとオイル中でさらに酸化され、より酸性となる。
【0022】
また別の実施例では、炭化水素に可溶なチタン化合物は、実質的にあらゆる種類の硫黄を含まない。さらに別の実施例では、炭化水素に可溶なチタン化合物は実質的にすべての
種類のリンを含まない。また別の実施例では、炭化水素に可溶なチタン化合物は実質的にすべての種類の硫黄およびリンを含まない。例えば、チタン化合物が溶解している基油には、ある実施例においては約0.5重量%、また別の実施例においては約0.03重量%以下というように、比較的少量の硫黄(例えばグループIIの基油)が含まれる。またさらに別の実施例では、基油中の硫黄および/またはリンの含有量は、完成したオイルが、モーターオイルの硫黄および/またはリンの、所定の時間有効である適切な仕様を満たすことを可能にする量に限られている。
【0023】
チタン/カルボン酸生成物の例には、実質的にカプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、オレイン酸、エルカ酸、リノール酸、リノレン酸、シクロヘキサンカルボン酸、フェニル酢酸、安息香酸、ネオデカン酸、その他から成る群から選択された酸とのチタン反応生成物が含まれるが、これらに限定はされない。このようなチタン/カルボン酸製品を作る方法は、例えばその開示が本明細書に参照することにより組み込まれている、米国特許第5,260,466号に記載されている。
【0024】
本明細書に記載の実施例には、例えば完成した潤滑剤組成物中のチタンが約1ppmから約1500ppmというように、炭化水素に可溶なチタン系化合物の濃度が比較的低い潤滑剤組成物および潤滑油が提供される。一つの実施例では、チタン系化合物は潤滑油組成物中に約25ppmから約1000ppmのチタンをもたらすのに十分な量で存在する。
【0025】
耐磨耗剤の第二の主要成分はホスホロチオ酸の金属塩である。ホスフォリチオ酸の金属塩の中でも特に好適な金属塩はジンクジヒドロカルビルジチオホスフェート(ZnDDP)である。ZnDDPは優れた耐磨耗性および抗酸化性を有している。米国特許第4,904,401号、4,957,649号、および6,114,288号などを含む多くの特許に、ZnDDPの製造法および用法が示されている。一般的なタイプのZnDDPの非限定的な例には、第一級アルキル、第二級アルキル、および第一級と第二級の混合アルキル、およびアリルZnDDPがある。このような化合物の例には、ジンクO,O−ジ(C14−アルキル)ジチオホスフェート、ジンク(O,O−ビス(sec−ブチルおよびイソオクチル)混合)ジチオホスフェート、ジンク−O,O−ビス(分岐および線状C−アルキル)ジチオホスフェート、ジンクO,O−ビス(2−エチルヘキシル)ジチオホスフェート、ジンクO,O−ビス(イソブチルおよびペンチル混合)ジチオホスフェート、ジンクO,O−ビス(1,3−ジメチルブチルおよびイソプロピル)混合ジチオホスフェート、ジンクO,O−ジイソオクチルジチオホスフェート、ジンクO,O−ジブチルジチオホスフェート、ジンクO,O−ビス(2−エチルヘキシルおよびイソブチルおよびイソプロピル)混合ジチオホスフェート、ジンクO,O−ビス(ドデシルフェニル)ジチオホスフェート、ジンクO,O−ジイソデシルジチオホスフェート、ジンクO−(6−メチルヘプチル)−O−(1−メチルプロピル)ジチオホスフェート、ジンクO−(2−エチルヘキシル)−O−(イソブチル)ジチオホスフェート、ジンクO,O−ジイソプロピルジチオホスフェート、ジンク(ヘキシルおよびイソプロピル混合)ジチオホスフェート、ジンク(O−(2−エチルヘキシル)およびO−イソプロピル混合)ジチオホスフェート、ジンクO,O−ジオクチルジチオホスフェート、ジンクO,O−ジペンチルジチオホスフェート、ジンクO−(2−メチルブチル)−O−(2−メチルプロピル)ジチオホスフェート、およびジンクO−(3−メチルブチル)−O−(2−メチルプロピル)ジチオホスフェートなどが含まれるが、これらに限定されることはない。
【0026】
ホスホロチオ酸の金属塩から潤滑剤組成物にもたらされるリンの好適な量は、完全に調整された潤滑剤組成物中約100ppmから約900ppmである。他に、潤滑剤組成物中のリンの量は、完全に調整された潤滑剤組成物中約200ppmから約500ppmの
こともある。特に好適な耐磨耗剤は、耐磨耗剤中のチタンとリンの比率を約0.3:1から約1.5:1とするのに十分なだけの量のチタン系化合物およびホスホロチオ酸の金属塩を含んでいる。
【0027】
本明細書に記載の実施例の耐磨耗剤は、潤滑組成物中に効果的に取り入れられる。このように当該耐磨耗剤は、潤滑油組成物中に直接添加されることもある。しかしながら、一つの実施例では、当該耐磨耗剤は、鉱油、合成油(例えばジカルボン酸のエステル)、ナフサ、アルキル化された(例えばC10−C13アルキル)ベンゼン、トルエンまたはキシレンなどのような、実質的に不活性であり、通常は液体である有機希釈剤によって希釈され、耐磨耗性濃縮添加剤を形成する。耐磨耗剤濃縮物には通常約0重量%から約99重量%の希釈油が含まれる。
【0028】
潤滑油組成物の調整において、炭化水素油、例えば鉱物性潤滑油やその他の適切な溶媒中、約1重量%から約99重量%の活性成分の濃縮物の形態で耐磨耗剤濃縮物を添加することがよくある。通常これらの濃縮物は、分散剤/阻害剤(DI)添加剤パッケージおよびDIパッケージの重量パーツにつき約0.01重量パーツから約50重量パーツの潤滑油を含んだ粘度指数(VI)向上剤と共に潤滑油中に添加され、例えばクランクケースモーターオイルなどの完成した潤滑剤を形成する。好適なDIパッケージは、その開示が参照することにより本明細書に組み込まれている、例えば米国特許第5,204,012号および6,034,040号に記載されている。DI添加剤パッケージ中に含まれる添加剤に、洗浄剤、分散剤、摩擦低減剤、シール膨張剤、抗酸化剤、発泡防止剤、潤滑剤、防錆剤、腐食防止剤、乳化破壊剤、流動点降下剤、粘度指数向上剤、その他がある。これらの成分のいくつかは当技術分野に精通した技術者には周知のものであり、従来の量で本明細書に記載の添加剤および組成物と共に使用することができる。
【0029】
添加剤は通常、目的とする機能が達せられるだけの量で、可能とする基油中に混和される。クランクケース潤滑剤中で使用される場合の、耐磨耗剤および添加剤の典型的な有効量を以下の表1に示す。すべての数値は活性成分の重量パーセントを表す。
【0030】
【表1】

【0031】
別の実施例では、耐磨耗剤濃縮物は完全に調整されたモーターオイル、あるいは完成した潤滑剤中にトップトリートされる。耐磨耗剤濃縮物とDIパッケージを組み合わせる目的はもちろん、最終的な混和物中への溶解あるいは懸濁を促進することに加えて、様々な物質の取り扱いをより容易にスムースにすることにある。
【0032】
上述の耐磨耗剤を使って作られた潤滑剤組成物は、多様な目的で使用される。圧縮点火エンジンや火花添加エンジン用としては、この潤滑剤組成物がGF−4またはAPI−CI−4基準を満たすかまたはそれ以上であることが望ましい。完全に調整された潤滑剤を形成するための、前述のGF−4またはAPI-CI−4基準に基づく潤滑剤組成物には、基油、DI添加剤パッケージ、および/またはVI向上剤が含まれる。本開示に基づく潤滑剤用の基油は、実質的に、鉱油、合成潤滑油、植物油、およびそれらの混合物から成る群の中から選択された潤滑粘性のオイルである。このような基油には、自動車やトラックのエンジン、船舶および鉄道用ディーゼルエンジンなどのような、火花点火や圧縮点火の内燃エンジン用のクランクケース潤滑油として従来使用されていた基油も含まれる。このような基油は一般に、以下の表2に示されるように、グループI、グループII、グループIII、グループIV、およびグループVに分類される。
【0033】
【表2】

【0034】
分散剤成分
DIパッケージ中に含有される分散剤には、分散される粒子と結合することのできる官能基を有する、油溶性ポリマーの炭化水素骨格が含まれるが、これらに限定はされない。一般的に、当分散剤は、アミン、アルコール、アミド、または通常架橋基を介してポリマー骨格に接続しているエステルの極性部分を含んで成る。分散剤は、例えば、米国特許第3,697,574号および3,736,357号に記載のマンニッヒ分散剤;米国特許第4,234,435号および4,636,322号に記載の無灰コハク酸イミド分散剤;米国特許第3,219,666号、3,565,804号、および5,633,326号に記載のアミン分散剤;米国特許第5,936,041号、5,643,859号、および5,627,259号に記載のコッホ分散剤、また米国特許第5,851,965号、5,853,434号、および5,792,729号に記載のポリアルキレンコハク酸イミド分散剤などの中から選択される。
【0035】
酸化防止剤成分
酸化防止剤、または抗酸化剤は、ベースストックが使用中に劣化する傾向を低減させる。劣化は、スラッジや、金属表面に堆積するワニス様の堆積物のような酸化の産物、および完成した潤滑剤の粘度の増加などによって証明される。このような酸化防止剤には、ヒンダードフェノール;硫化ヒンダードフェノール;約Cから約C12のアルキル側鎖を有するアルキルフェノールチオエステルのアルカリ土類金属塩;硫化アルキルフェノール;例えば硫化カルシウムノニルフェノールなどの、硫化された、あるいは硫化されていないアルキルフェノールの金属塩;無灰油溶性フェネートおよび硫化フェネート;リン硫化、または硫化された炭化水素;リンエステル;金属チオカーバメート;および米国特許第4,867,890号に記載の油溶性銅化合物などが含まれるが、これらに限定はされない。
【0036】
使用されるその他の抗酸化剤には、立体障害フェノールおよびジアリルアミン、アルキル化フェノチアジン、硫化化合物、および無灰ジアルキルジチオカーバメートが含まれる。立体障害フェノールの非限定的な例には、2,6−ジ−t−ブチルフェノール;2,6−ジ−t−ブチルメチルフェノール;4−エチル−2,6−ジ−t−ブチルフェノール;4−プロピル−2,6−ジ−t−ブチルフェノール;4−ブチル−2,6−ジ−t−ブチルフェノール;4−ペンチル−2,6−ジ−t−ブチルフェノール;4−ヘキシル−2,6−ジ−t−ブチルフェノール;4−ヘプチル−2,6−ジ−t−ブチルフェノール;4−(2−エチルヘキシル)−2,6−ジ−t−ブチルフェノール;4−オクチル−2,6−ジ−t−ブチルフェノール;4−ノニル−2,6−ジ−t−ブチルフェノール;4−デシル−2,6−ジ−t−ブチルフェノール;4−ウンデシル−2,6−ジ−t−ブチルフェノール;4−ドデシル−2,6−ジ−t−ブチルフェノール;米国特許公報2004/0266630号に記載の、4,4−メチレンビス(6−t−ブチル−o−クレゾール)、4,4−メチレンビス(2−t−アミル−o−クレゾール)、2,2−メチレンビス(4−メチル−6 t−ブチルフェノール,4,4−メチレン−ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、およびそれらの混合物を含むがそれらに限定されないようなメチレン架橋の立体障害フェノール;などが含まれるが、これらに限定はされない。
【0037】
ジアリルアミン抗酸化剤には以下の化学式で表されるジアリルアミンが含まれるが、これに限定はされない:
【0038】
【化3】

【0039】
式中R’およびR”はそれぞれ独立して、炭素数が約6から約30である、置換あるいは非置換アリル基を表す。アリル基の典型的な置換基としては、炭素数が約1から約30であるアルキル基のような脂肪族炭化水素基、ヒドロキシ基、ハロゲンラジカル、カルボン酸またはエステル基、あるいはニトロ基などが含まれるが、これらに限定はされない。
【0040】
アリル基は、置換されたあるいは置換されていないフェニルまたはナフチルである。一つの実施例では、ひとつまたは両方のアリル基は、炭素数が約4から約30の少なくとも一つのアルキル基によって置換されている。別の実施例では、ひとつまたは両方のアリル基は、炭素数が約4から約18の少なくとも一つのアルキル基によって置換されている。さらに別の実施例では、ひとつまたは両方のアリル基は、炭素数が約4から約9の少なくとも一つのアルキル基によって置換されている。またさらに別の実施例では、ひとつまたは両方のアリル基は、例えばモノアルキル化ジフェニルアミン、ジアルキル化ジフェニルアミン、あるいはモノアルキル化ジフェニルアミンとジアルキル化ジフェニルアミンの混合物によって置換されている。
【0041】
当該のジアリルアミンは、分子内に一つ以上の窒素原子を含有する構造のものである。従って、ジアリルアミンには少なくとも二つの窒素原子が含有される。このとき、例えば一つの窒素原子に二つのアリルを有すると共に第二級窒素原子をも有しているような様々
なジアミンの場合と同様、少なくとも一つの窒素原子に二つのアリル基が結合している。
【0042】
使用されるジアリルアミンの例には、ジフェニルアミン、各種アルキル化ジフェニルアミン、3−ヒドロキシジフェニルアミン、N−フェニル−1,2−フェニレンジアミン、N−フェニル−1,4−フェニレンジアミン、モノブチルジフェニルアミン、ジブチルジフェニルアミン、モノオクチルジフェニルアミン、ジオクチルジフェニルアミン、モノノニルジフェニルアミン、ジノニルジフェニルアミン、モノテトラデシルジフェニルアミン、ジテトラデシルジフェニルアミン、フェニル−アルファ−ナフチルアミン、モノオクチルフェニル−アルファ−ナフチルアミン、フェニル−ベータ−ナフチルアミン、モノヘプチルジフェニルアミン、ジヘプチル−ジフェニルアミン、p−配向スチレン化ジフェニルアミン、混合ブチルオクチルジフェニルアミン、および混合オクチルスチリルジフェニルアミンなどが含まれるが、これらに限定はされない。
【0043】
別の種類のアミン系抗酸化剤には、以下の化学式で表されるフェノチアジンまたはアルキル化フェノチアジンが含まれる:
【0044】
【化4】

【0045】
式中Rは、直鎖または分岐鎖の、約Cから約C24のアルキル、アリル、ヘテロアルキル、またはアルキルアリル基であり、Rは水素、または直鎖または分岐鎖の約Cから約C24のアルキル、ヘテロアルキル、またはアルキルアリル基である。アルキル化フェノチアジンは、実質的にモノテトラデシルフェノチアジン、ジテトラデシルフェノチアジン、モノデシルフェノチアジン、ジデシルフェノチアジン、モノノニルフェノチアジン、ジノニルフェノチアジン、モノオクチルフェノチアジン、ジオクチルフェノチアジン、モノブチルフェノチアジン、ジブチルフェノチアジン、モノスチリルフェノチアジン、ジスチリルフェノチアジン、ブチルオクチルフェノチアジン、およびスチリルオクチルフェノチアジンから成る群の中から選択される。
【0046】
硫黄を含有した抗酸化剤には、それらの製造に使用されるオレフィンの種類と抗酸化剤の最終的な硫黄含有量を特徴とする硫化オレフィンが含まれるが、それらに限定はされない。一つの実施例では、高分子量のオレフィン、すなわち、平均分子量が約168g/モルから約351g/モルであるようなオレフィンが使用される。使用されるオレフィンの非限定的な例として、アルファオレフィン、異性化されたアルファオレフィン、分岐オレフィン、環状オレフィン、およびそれらの組み合わせが含まれる。
【0047】
アルファオレフィンには、約Cから約C25の任意のアルファオレフィンが含まれるがそれらに限定はされない。アルファオレフィンは、硫化反応の前、または硫化反応の最中に異性化される。内部に二重結合および/または分岐鎖を有するアルファオレフィンの構造および/または配座異性体もまた使用される。例えばイソブチレンは、アルファオレフィン−1−ブテンに対応する分岐オレフィンである。
【0048】
オレフィンの硫化反応で使用される硫黄源には、元素硫黄、一塩化硫黄、二塩化硫黄、硫化ナトリウム、多硫化ナトリウム、および硫化プロセスの同じ段階または別々の段階で加えられたそれらの混合物などが含まれる。
【0049】
不飽和オイルもまた、不飽和であるがために、硫化され抗酸化剤として使用される。使用されるオイルまたは脂質の例としては、コーン油、カノーラ油、綿実油、グレープシードオイル、オリーブ油、ヤシ油、ピーナツ油、ココナッツ油、菜種油、ベニバナ種油、ゴマ油、大豆油、ヒマワリ油、獣脂、およびそれらの組み合わせなどが挙げられる。
【0050】
完成した潤滑剤に供給される硫化オレフィンあるいは硫化脂肪油の量は、硫化オレフィンあるいは脂肪油の硫黄含有量、および完成した潤滑剤に供給される希望の硫黄量に基づいている。例えば、約20重量%の硫黄を含んだ硫化脂肪油あるいはオレフィンは、約1.0重量%の処理量で完成した潤滑剤に添加されると、2,000ppmの硫黄を完成した潤滑剤に供給する。約10重量%の硫黄を含んだ硫化脂肪油あるいはオレフィンは、約1.0重量%の処理量で完成した潤滑剤に添加されると、1,000ppmの硫黄を完成した潤滑剤に供給する。一つの実施例では、硫化オレフィンあるいは硫化脂肪油が添加されて、約200ppmから約2,000ppmの硫黄が完成した潤滑剤に供給される。上述のアミン系抗酸化剤、フェノチアジン抗酸化剤、および硫黄を含有した抗酸化剤については、例えば米国特許第6,599,865号に記載されている。
【0051】
抗酸化剤として使用される無灰ジアルキルジチオカーバメートには、添加剤パッケージ中で可溶または分散可能な化合物が含まれるが、それらに限定はされない。一つの実施例では、無灰ジアルキルジチオカーバメートは低揮発性であり、その分子量は約250ダルトンよりも大きい。さらに別の実施例では、無灰ジアルキルジチオカーバメートの分子量は、約400ダルトンを超える。使用される無灰ジチオカーバメートの例には、メチレンビス(ジアルキルジチオカーバメート)、エチレンビス(ジアルキルジチオカーバメート)、イソブチルジスルフィド−2,2’−ビス(ジアルキルジチオカーバメート)、ヒドロキシアルキル置換ジアルキルジチオカーバメート、不飽和化合物から調整されたジチオカーバメート、ノルボニレンから調整されたジチオカーバメート、およびエポキシドから調整されたジチオカーバメートが含まれるが、これらに限定はされない。ある実施例では、ジアルキルジチオカーバメートのアルキル基の炭素数は約1から約16である。使用されるジアルキルジチオカーバメートの非限定的な例は、米国特許第5,693,598号、4,876,375号、4,927,552号、4,957,643号、4,885,365号、5,789,357号、5,686,397号、5,902,776号、2,786,866号、2,710,872号、2,384,577号、2,897,152号、3,407,222号、3,867,359号、および4,758,362号に開示されている。
【0052】
無灰ジチオカーバメートのさらなる例には、メチレンビス−(ジブチルジチオカーバメート)、エチレンビス(ジブチルジチオカーバメート)、イソブチルジスルフィド−2,2’−ビス(ジブチルジチオカーバメート)、ジブチルN,N−ジブチル(ジチオカーバミル)コハク酸、2−ヒドロキシプロピルジブチルジチオカーバメート、ブチル(ジブチルジチオカーバミル)アセテート、およびS−カーボメトキシ−エチル−N,N−ジブチルジチオカーバメートなどが含まれるが、これらに限定はされない。
【0053】
同様に、摩擦低減剤として使用される有機モリブデン含有化合物もまた、抗酸化剤および耐摩耗剤の機能を示す。米国特許第6,797,677号には、完成した潤滑剤組成物中で使用される、有機モリブデン化合物、アルキルフェノチジンおよびアルキルジフェニルアミンについて記載されている。好適なモリブデンを含有した摩擦低減剤の非限定的な例は、下記の「摩擦低減剤成分」の項に記載する。
【0054】
本明細書に記載の耐磨耗剤は、任意のすべての組み合わせと比率で上述の任意のまたはすべての抗酸化剤と共に使用することができる。フェノール系添加剤、アミン系添加剤、硫黄含有添加剤およびモリブデン含有添加剤などの様々な組み合わせが、ベンチテストやエンジンテスト、または分散剤、VI向上剤、基油、あるいはその他の任意の添加剤の修正に基づいて、完成した潤滑剤調合物用に最適化されるものと考えられている。
【0055】
摩擦低減剤成分
摩擦調整剤として使用される、硫黄およびリンを含有しない有機モリブデン化合物は、硫黄およびリンを含有しないモリブデン源を、アミノ基および/またはアルコール基を含有した有機化合物と反応させることによって調製される。硫黄およびリンを含有しないモリブデン源の非限定的な例には、三酸化モリブデン、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウムおよびモリブデン酸カリウムが含まれる。アミノ基には、モノアミン、ジアミン、またはポリアミンが含まれるが、これらに限定はされない。アルコール基には、一置換のアルコール、ジオールあるいはビスアルコール、またはポリアルコールが含まれるが、これらに限定はされない。ある例では、ジアミンと脂肪油の反応により、硫黄およびリンを含有しないモリブデン源と反応し得る、アミノ基とアルコール基の両方を含有した生産物が生成される。
【0056】
硫黄およびリンを含まない有機モリブデン化合物の非限定的な例には、以下のものが含まれる:
1.特定の塩基性窒素化合物を、米国特許第4,259,195号および4,261,843号に記載のモリブデン源と反応させることによって調製される化合物。
2.ヒドロカルビル置換のヒドロキシアルキル化アミンを、米国特許第4,164,473号に記載のモリブデン源と反応させることによって調製される化合物。
3.フェノールアルデヒドの縮合生成物、モノアルキル化アルキレンジアミン、および米国特許第4,266,945号に記載のモリブデン源を反応させることによって調製される化合物。
4.脂肪油、ジエタノールアミン、および米国特許第4,889,647号に記載のモリブデン源を反応させることによって調製される化合物。
5.脂肪油または酸と、2−(2−アミノエチル)アミノエタノール、および米国特許第5,137,647号に記載のモリブデン源を反応させることによって調製される化合物。
6.第二級アミンを、米国特許第4,692,256号に記載のモリブデン源と反応させることによって調製される化合物。
7.ジオール、ジアミノ、またはアミノアルコール化合物と、米国特許第5,412,130号に記載のモリブデン源と反応させることによって調製される化合物。
8.脂肪油、モノアルキル化アルキレンジアミン、および米国特許第6,509,303号に記載のモリブデン源を反応させることによって調製される化合物。
9.脂肪酸、モノアルキル化アルキレンジアミン、グリセリド、および米国特許第6,528,463号に記載のモリブデン源を反応させることによって調製される化合物。
【0057】
脂肪油、ジエタノールアミン、および米国特許第4,889,647号に記載のモリブデン源を反応させることによって調整されるモリブデン化合物の正確な化学組成は完全には知られておらず、また事実上いくつかの有機モリブデン化合物の多成分混合物である可能性もあるが、これらの物質はしばしば以下の構造式で表される。式中Rは脂肪アルキル鎖である。
【0058】
【化5】

【0059】
硫黄を含有した有機モリブデン化合物は、多様な方法で使用され、また生成される。一つの方法には、硫黄およびリンを含まないモリブデン源を、アミノ基および一つ以上の硫黄源と反応させることが含まれる。硫黄源には、例えば二硫化炭素、硫化水素、硫化ナトリウムおよび硫黄元素などが含まれるが、これらに限定はされない。一方、硫黄を含有したモリブデン化合物は、硫黄を含有したモリブデン源を、アミノ基またはチウラム基、および任意的に第二の硫黄源と反応させることによって調製される。硫黄およびリンを含まないモリブデン源の例には、三酸化モリブデン、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウム、およびハロゲン化モリブデンが含まれる。アミノ基はモノアミン、ジアミン、あるいはポリアミンである。ある例では、三酸化モリブデンと、第二級アミンおよび二硫化炭素の反応により、モリブデンジチオカーバメートが生成される。一方、(NHMo13n(HO)と二硫化テトラアルキルチウラムとの反応により、三核硫黄含有モリブデンジチオカーバメートが生成される。このときnは0から2の間の数である。
【0060】
特許および特許出願に出てくる、硫黄を含有した有機モリブデン化合物の例には、以下のものが含まれる:
1.三酸化モリブデンを、第二級アミンと米国特許第3,509,051号および3,356,702号に記載の二硫化炭素と反応させることによって調製される化合物。
2.硫黄を含まないモリブデン源と、第二級アミン、二硫化炭素、および米国特許第4,098,705号に記載の追加的な硫黄源とを反応させることによって調製される化合物。
3.ハロゲン化モリブデンと、第二級アミンおよび米国特許第4,178,258号に記載の二硫化炭素とを反応させることによって調製される化合物。
4.モリブデン源と、塩基性窒素化合物および米国特許第4,263,152号、4,265,773号、4,272,387号、4,285,822号、4,369,119号、および4,395,343号に記載の硫黄源とを反応させることによって調製される化合物。
5.テトラチオモリブデン酸アンモニウムと、米国特許第4,283,295号に記載の塩基性窒素化合物とを反応させることによって調製される化合物。
6. オレフィン、硫黄、アミン、および米国特許第4,362,633号に記載のモリブデン源を反応させることによって調製される化合物。
7.テトラチオモリブデン酸アンモニウムと、塩基性窒素化合物および米国特許第4,402,840号に記載の有機硫黄源とを反応させることによって調製される化合物。
8.フェノール系化合物、アミン、およびモリブデン源を、米国特許第4,466,901号に記載の硫黄源と反応させることによって調製される化合物。
9.トリグリセリド、塩基性窒素化合物、モリブデン源、および米国特許第4,765,918号に記載の硫黄源を反応させることによって調製される化合物。
10.アルカリ金属アルキルチオキサントゲン酸塩と、米国特許第4,966,719号に記載のハロゲン化モリブデンとを反応させることによって調製される化合物。
11.二硫化テトラアルキルチウラムと、米国特許第4,978,464号に記載のモリブデンヘキサカルボニルとを反応させることによって調製される化合物。
12.アルキルジキサントゲンと、米国特許第4,990,271号に記載のモリブデンヘキサカルボニルとを反応させることによって調製される化合物。
13.アルカリ金属アルキルキサントゲン酸塩と、米国特許第4,995,996号に記載のテトラ酢酸ジモリブデンとを反応させることによって調製される化合物。
14.(NH Mo132HOと、アルカリ金属ジアルキルジチオカーバメートまたは米国特許第6,232,276号に記載の二硫化テトラアルキルチウラムとを反応させることによって調製される化合物。
15.エステルまたは酸と、ジアミン、モリブデン源、および米国特許第6,103,674号に記載の二硫化炭素とを反応させることによって調製される化合物。
16.米国特許第6,117,826号に記載されているように、アルカリ金属ジアルキルジチオカーバメートを、3−クロロプロピオン酸、続いて三酸化モリブデンと反応させることによって調製される化合物。
【0061】
モリブデンジチオカーバメートは以下の構造式によって表され:
【0062】
【化6】

【0063】
式中Rは炭素数が約4から約18のアルキル基あるいはHであり、XはOあるいはSである。
【0064】
グリセリドは、単独で使用されることも、他の摩擦調整剤と組み合わせて使用されることもある。好適なグリセリドには以下の化学式のグリセリドが含まれるが、これらに限定はされない:
【0065】
【化7】

【0066】
式中各RはHおよびC(O)R’から成る群の中から個別に選択され、式中のR’は炭素数が約3から約23の飽和あるいは不飽和アルキル基である。使用されるグリセリドの非限定的な例には、モノラウリン酸グリセロール;モノミリスチン酸グリセロール;モノパルミチン酸グリセロール;モノステアリン酸グリセロール;およびヤシ酸、獣脂酸、オレイン酸、リノール酸、およびリノレン酸などから得られるモノグリセリドが含まれる。一般的な市販のモノグリセリドには、相当量の対応するジグリセリドおよびトリグリセリドが含有されている。これらの物質はモリブデン化合物の生産に害を及ぼすことはなく、実際にはより活性である場合もある。モノグリセリドとジグリセリドは任意の比率で使用される。ある実施例では、利用可能な位置の約30%から約70%に遊離ヒドロキシル基が含まれている(即ち、状基の化学式で表されるグリセリドのR基全体の30%から70%は水素である)。別の実施例では、当該グリセリドは、通常オレイン酸およびグリセロールから得られたモノグリセリド、ジグリセリド、およびトリグリセリドの混合物である、モノオレイン酸グリセロールである。
【0067】
その他の成分
本質的に非イオン性ポリオキシアルキレンポリオールおよびそのエステル、ポリオキシアルキレンフェノール、および陰イオン性のスルホン酸アルキルから成る群から選択された防錆剤が使用される。
【0068】
少量の乳化破壊成分が使用されることもある。好適な乳化破壊成分は、その開示が引用することによって本明細書に組み込まれている、欧州特許第330,522号に記載されている。このような乳化破壊成分は、酸化アルキレンを、ビスエポキシドと多価アルコールの反応から得られる付加化合物と反応させることによって得られる。当該の乳化破壊剤は、活性成分が0.1質量%を上回らないようなレベルで使用されなくてはならない。ある実施例では、約0.001質量%から約0.05質量%の活性成分の処理率が使用される。
【0069】
別名潤滑油の流動性向上剤としても知られる流動点降下剤は、流体が流動するまたは流体を注ぐことができるようになる最低温度を低下させる。このような添加剤は周知のものである。流体の低温での流動性を向上させる流動点降下剤の非限定的な例に、約Cから約C18のフマル酸ジアルキル/酢酸ビニルコポリマー、メタクリル酸ポリアルキル、その他がある。
【0070】
泡の制御は、例えばシリコンオイルやポリジメチルシロキサンなど、ポリシロキサンタイプの消泡剤を含むがこれらに限定されることのない、多くの化合物によってなされる。
【0071】
また、例えば米国特許第3,794,081号および4,029,587号に記載の、しかしこれらに限定されることのない、シール膨張剤が使用されることもある。
【0072】
粘度調整剤(VM)は、潤滑油に高温および低温での操作性をもたらすために機能する。使用されるVMは単一機能性であることも多機能性であることもある。
【0073】
分散剤としても機能する、多機能性の粘度調整剤もまた知られている。好適な粘度調整剤の非限定的な例として、ポリイソブチレン、エチレンとプロピレンと高級アルファオレフィンのコポリマー、ポリメタクリレート、ポリアルキルメタクリレート、メタクリレートコポリマー、不飽和ジカルボン酸とビニル化合物のコポリマー、スチレンとアクリル酸エステルのインターポリマー、またスチレン/イソプレン、スチレン/ブタジエン、およびイソプレン/ブタジエンの部分的に水素化されたコポリマー、およびブタジエンとイソプレンおよびイソプレン/ジビニルベンゼンの部分的に水素化されたホモポリマーがある。
【0074】
使用可能な機能化されたオレフィンコポリマーにはまた、無水マレイン酸のような活性モノマーでグラフト化され、次にアルコールあるいはアミンで誘導体化された、エチレンとプロピレンのインターポリマーが含まれる。その他のこのようなコポリマーに、窒素化合物でグラフト化されたエチレンとプロピレンのコポリマーがある。
【0075】
上述の各添加剤は、使用の際、潤滑剤に希望の特性を与えるために機能的に有効な量で使用される。従って、例えば添加剤が腐食防止剤である場合、この腐食防止剤の機能的に有効な量は、潤滑剤に希望の腐食防止特性をもたらすのに十分なだけの量である。通常、これらの添加剤の使用時の各濃度は、潤滑油組成物の重量に基づいて約20重量%までの範囲であり、一つの実施例では潤滑油組成物の重量に基づいて約0.001重量%から約20重量%、また一つの実施例では潤滑油組成物の重量に基づいて約0.01重量%から約10重量%である。
【0076】
潤滑油組成物に耐磨耗剤が直接添加されることもある。しかしながら、一つの実施例では、当該耐磨耗剤は鉱油、合成油、ナフサ、アルキル化(例えばC10からC13のアルキル)ベンゼン、トルエン、またはキシレンなどのような、実質的に不活性で通常は液体である有機希釈剤で希釈され、添加剤濃縮物が形成される。これらの濃縮物には通常約1重量%から約100重量%、また一つの実施例では約10重量%から約90重量%の耐磨耗剤が含有される。
【0077】
基油
本明細書に記載の組成物、添加剤および濃縮物の調合において使用するのに適した基油は、合成油、天然油、鉱油のいずれか、またはそれらの混合物の中から選択される。合成基油の非限定的な例としては、ジカルボン酸、ポリグリコールおよびアルコールのアルキルエステル;末端ヒドロキシル基がエステル化やエーテル化などによって変性された、ポリブテン、アルキルベンゼン、リン酸の有機エステル、ポリシリコンオイル、および酸化アルキレンポリマー、インターポリマー、コポリマー、およびそれらの誘導体などを含むポリアルファオレフィンなどが挙げられる。
【0078】
天然基油には、動物性油および植物性油(例えばキャスターオイル、ラードオイル)、石油、および水素化精製、溶媒処理あるいは酸処理されたパラフィン系、ナフテン系およびパラフィン・ナフテン混合系の鉱物性潤滑油が含まれるが、これらに限定はされない。石炭あるいは頁岩から得られた、潤滑粘度のオイルもまた有用な基油である。ある実施例では、当基油の粘度は一般的に約2.5cStから約15cStである。別の実施例では、当基油の100℃での粘度は約2.5cStから約11cStである。このような基油には、乗用車やトラックのエンジン、船舶や鉄道のディーゼルエンジンなどのような、火花点火および圧縮点火の内燃エンジン用のクランクケース潤滑油として従来使用されていたものも含まれる。これらの基油は通常、グループI、グループII、グループIII、グループIV、およびグループVに分類される。上述の基油を表1に示す。
【0079】
以下の例は、実施例を例示することを目的とするものであり、実施例をいかようにも制限することを意図したものではない。
【0080】
例1
ネオデカン酸(約600グラム)を、凝縮装置、ディーンスタークトラップ、温度計、熱電対、およびガス入口を備えた反応容器に加えた。酸の中に窒素ガスを泡立てた。激しくかくはんしながら、チタンイソプロポキシド(約245グラム)を反応容器にゆっくりと加えた。反応物質を約140℃まで熱し、1時間かくはんした。反応により得られたオーバーヘッドと凝縮物をトラップに収集した。反応容器を減圧し、反応物質をさらに約2時間、反応が終了するまでかくはんした。生成物の分析により、この生成物の約100℃での動粘度が約14.3cStであること、またチタン含有量が約6.4重量パーセントであることが示された。
【0081】
例2
ネオデカン酸(約240.3グラム)とオレイン酸(約126.9グラム)を蒸留凝縮装置、温度計、熱電対、およびガス入り口を備えた反応容器に加えた。酸混合物の中に窒素ガスを泡立てた。激しくかくはんしながら、チタンイソプロポキシド(約152グラム)を反応容器にゆっくりと加えた。反応物質を約60℃まで熱し、約30分かくはんした。反応容器に約15インチの減圧をかけ、約4時間かけて温度をゆっくりとから約140Cまで上げた。次に生成物を真空下で剥離した。このようにして得られた生成物のチタン含有量は約7.2重量パーセントであった。
【0082】
例3
以下の例において、例2のチタン系化合物とZnDDPで潤滑剤組成物を調整し、スペーサーレイヤーイメージング(SLIM)の連結部(以後「MTMSLIM」と記する)を備えたPCS小型けん引機(MTM)を使用して、膜形成特性を測定した。MTM内には、スチール製のボールとスチールディスクの間に、平均回転速度0.1m/sec、滑り−回転比50%で作動する回転−滑り接触を生じさせた。ボールとディスク間に荷重約1.0GPaをかけ、100℃で試験を行った。各試験は60分間行った。多数の耐磨耗剤組成物について行ったMTMSLIM試験の結果を以下の表に示す。
【0083】
【表3】

【0084】
前述の結果に示されているように、チタン系化合物とZnDDPの組み合わせには潤滑フィルム層の厚みに相乗的な効果がある。例えば80ppmから800ppmのリンを含有しチタンを含んでいない、サンプル1−4のフィルムの厚みは45nmから117nmで平均約76nmであった。231ppmから722ppmのチタンを含有しリンを含んでいない、サンプル5−8のフィルムの厚みは約2nmから9nmで平均約4nmであった。従って、約200ppmから約700ppmのチタンと、約80ppmから約800ppmのリンを含有する耐磨耗剤の算術平均は約80nmになると予測される。しかしながら、サンプル9−15に示されるように、実際のフィルム層の厚みは124から152nmの間であった。従って、チタン系化合物とZnDDPの組み合わせが耐磨耗剤として使用された場合、フィルム層の厚みには相乗的な増加があったことになる。
【0085】
またさらに、優れた結果をもたらす耐磨耗剤中のチタンとリンの好適な比率が存在することもわかった。サンプル9−15において、その比率は0.39:1から約1.35:1であった。サンプル16および17に示されるように、1.25を大きく上回る比率では、フィルム層の厚みは、チタン系化合物またはリン化合物のいずれかを欠いた耐磨耗剤によって得られる厚みと同程度になる。
【0086】
約1ppmから約1000ppm以上の金属チタンを炭化水素に可溶なチタン系化合物
の形態で含有する潤滑剤組成物は、リンおよび硫黄を含んだ耐磨耗化合物により得られるフィルム層の厚みを相乗的に増加させることにより、従来のリンおよび硫黄を含んだ耐磨耗化合物の使用の縮小を可能にし、それにより耐磨耗特性あるいは効果の向上を達成しながらも、車の公害防止設備の性能効果を維持することが期待される。
【0087】
本明細書の全体を通した多くの箇所で、多数の米国特許が参照されている。このような引用文献はすべて、完全に説明されたものとして本開示に明白に組み込まれている。
【0088】
前述の実施例はその実行においてかなり変化する余地がある。従って当実施例は、上記に述べられた特定の例証に制限されることを意図したものではない。むしろ前述の実施例は、法律的に使用可能なそれらの対応範囲を含む、添付の請求項の精神および範囲内にある。
【0089】
当特許権者は、開示された実施例のいずれをも一般に提供することは意図しておらず、また開示された修正または変更は、それらがすべて完全に請求項の範囲内に収まらない状態になるまで、均等論により当実施例の一部であると見なされる。
【0090】
本発明の主な特徴および態様を挙げれば以下のとおりである。
1.潤滑粘性の基油、少なくとも一種類のホスホロチオ酸の金属塩、および潤滑剤組成物の耐磨耗特性を向上させるのに十分な量の少なくとも一つの炭化水素に可溶なチタン系化合物を含んだ潤滑剤組成物を含む潤滑面であり、このとき耐磨耗剤中の金属チタンとリンとの比率は、約0.3:1から約1.5:1の範囲内である。
2.潤滑面がエンジンドライブトレインから成る、上記1に記載の潤滑面。
3.潤滑面が内燃エンジンの内側面あるいは一部から成る、上記1に記載の潤滑面。
4.潤滑面が圧縮点火エンジンの内側面あるいは一部から成る、上記1に記載の潤滑面。5.炭化水素に可溶なチタン系化合物によって潤滑剤組成物中に約10ppmから約1000ppmのチタンがもたらされる、上記1に記載の潤滑面。
6.炭化水素に可溶なチタン系化合物によって潤滑剤組成物中に約50ppmから約800ppmのチタンがもたらされる、上記1に記載の潤滑面。
7.炭化水素に可溶なチタン系化合物にカルボン酸チタンが含まれており、このカルボン酸チタンには実質的にリンおよび硫黄原子が含まれていない、上記1に記載の潤滑面。
8.炭化水素に可溶なチタン系化合物に、炭素数が少なくとも約6であり、カルボキシル基に第一、第二、あるいは第三炭素が隣接しているモノカルボン酸から得られたカルボン酸チタンが含まれている、上記1に記載の潤滑面。
9.炭化水素に可溶なチタン系化合物が、以下の構造式で表される化合物である、上記1に記載の潤滑面:
【0091】
【化8】

【0092】
式中nは2、3および4の中から選択された整数、またRは炭素数が約5から約24のヒドロカルビル基である。
10.ホスホロチオ酸の金属塩に亜鉛が含まれている、上記1に記載の潤滑面。
11.ホスホロチオ酸の金属塩にジンクジヒドロカルビルジチオホスフェートが含まれている、上記1に記載の潤滑面。
12.潤滑剤組成物に約100ppmから約900ppmのリンが含まれている、上記1に記載の潤滑面。
13.潤滑剤組成物に約200ppmから約500ppmのリンが含まれている、上記1に記載の潤滑面。
14.上記1に記載の潤滑面を含んだ自動車。
15.可動部を有し、またその可動部を潤滑する潤滑剤を含んだ自動車であり、当該潤滑剤には潤滑粘性のオイル、摩擦低減剤、および少なくとも一種類の炭化水素に可溶なチタン系化合物と少なくとも一種類のホスホロチオ酸の金属塩とを含んだ耐磨耗剤が含まれており、このとき耐磨耗剤中の金属チタンとリンとの比率は、約0.3:1から約1.5:1の範囲内である。また当該の耐磨耗剤により得られる耐磨耗フィルムは、チタン系化合物またはリン化合物を単独で使用した際に得られるフィルムよりも、厚みがある。
16.耐磨耗剤中の金属チタンとリンの比率が約0.5:1から約1.45:1である、上記15に記載の自動車。
17.炭化水素に可溶なチタン系化合物にチタン−C−C25カルボキシレートが含まれる、上記15に記載の自動車。
18.炭化水素に可溶なチタン系化合物が以下の構造式で表される化合物である、上記16に記載の自動車。
【0093】
【化9】

【0094】
式中nは2、3および4の中から選択された整数、またRは炭素数が約5から約24のヒドロカルビル基である。
19.可動部に高荷重ディーゼルエンジンが含まれる、上記15に記載の自動車。
20.ホスホロチオ酸の金属塩にジンクジヒドロカルビルジチオホスフェートが含まれる、上記15に記載の自動車。
21.潤滑剤組成物に約100ppmから約900ppmのリンが含まれる、上記15に記載の自動車。
22.潤滑剤組成物に約200ppmから約500ppmのリンが含まれる、上記15に記載の自動車。
23.潤滑剤組成物に約10ppmから約1000ppmのチタンが含まれる、上記15に記載の自動車。
24.潤滑粘性の基油成分、炭化水素に可溶なチタン含有化合物、および少なくとも一種類のホスホロチオ酸の金属塩を含む耐磨耗剤を含んだ完全に調整された潤滑剤組成物であり、このとき耐磨耗剤中の金属チタンとリンとの比率は、約0.3:1から約1.5:1の範囲内である。
25.耐磨耗剤中の金属チタンとリンとの比率が約0.5:1から約1.45:1である、上記24に記載の完全に調整された潤滑剤組成物。
26.潤滑剤組成物に約10ppmから約1000ppmのチタンが含まれている、上記24に記載の完全に調整された潤滑剤組成物。
27.潤滑剤組成物に、硫黄の含有量が約0.7重量%以下、リンの含有量が約0.1重量%以下となるように、圧縮点火エンジン用に適した、灰、硫黄、およびリン含有量の低い潤滑剤組成物が含まれる、上記24に記載の潤滑剤組成物。
28.炭化水素に可溶なチタン含有化合物にC−C25のチタンカルボキシレートが含まれる、上記24に記載の潤滑剤組成物。
29.炭化水素に可溶なチタン含有化合物に以下の構造式で表される呼号物が含まれる、上記24に記載の潤滑剤組成物:
【0095】
【化10】

【0096】
式中nは2、3および4の中から選択された整数、またRは炭素数が約5から約24のヒドロカルビル基である。
30.炭化水素に可溶なリン酸金属塩により約200ppmから約900ppmのリンが潤滑剤組成物にもたらされる、上記24に記載の潤滑剤組成物。
31.炭化水素に可溶な金属含有化合物により約50ppmから約800ppmのチタンが潤滑剤組成物にもたらされる、上記24に記載の潤滑剤組成物。
32.ホスホロチオ酸の金属塩にジンクジアルキルジチオホスフェートが含まれる、上記24に記載の潤滑剤組成物。
33.潤滑面に隣接する耐磨耗フィルムの厚みを増加させる方法であり、潤滑粘性の基油、および炭化水素に可溶なチタン系化合物とホスホロチオ酸の金属塩を含む耐磨耗剤を含む潤滑剤組成物に表面を接触させることを含む方法。このときこの耐磨耗剤の金属チタンとリンの比率は、耐磨耗フィルムの厚みを、チタン系化合物またはホスホロチオ酸の金属塩のいずれか一つのみを含む潤滑剤組成物によって得られるフィルムに比べて相乗的に増加させるような比率である。
34.耐磨耗剤中の金属チタンとリンとの比率が約0.3:1から約1.5:1であるような、上記33に記載の方法。
35.炭化水素に可溶なチタン系化合物にC−C25のチタンカルボキシレートが含まれ、この炭化水素に可溶なチタン系化合物に実質的にリンおよび硫黄原子が含まれていない、上記33に記載の方法。
36.潤滑剤組成物に、主に有機モリブデン摩擦低減剤、グリセロールエステル摩擦低減剤、およびそれらの混合物から成る群の中から選択された摩擦低減剤がさらに含まれる、上記33に記載の方法。
37.ホスホロチオ酸の金属塩にジンクジアルキルジチオホスフェートが含まれる、上記33に記載の方法。
38.少なくとも一種類のホスホロチオ酸の金属塩、および潤滑剤組成物の耐磨耗特性を向上させるのに十分な量の少なくとも一つの炭化水素に可溶なチタン系化合物を含んだ耐磨耗剤を含む潤滑剤組成物用の濃縮添加剤であり、このとき耐磨耗剤中の金属チタンとリンとの比率は、約0.3:1から約1.5:1の範囲内である。
39.炭化水素に可溶なチタン系化合物により、潤滑剤組成物中に約10ppmから約1000ppmのチタンがもたらされている、上記38に記載の濃縮添加剤。
40.炭化水素に可溶なチタン系化合物により、潤滑剤組成物中に約50ppmから約800ppmのチタンがもたらされている、上記38に記載の濃縮添加剤。
41.炭化水素に可溶なチタン系化合物にカルボン酸チタンが含まれており、このカルボン酸チタンに実質的にリンおよび硫黄原子が含まれていない、上記38に記載の濃縮添加剤。
42.ホスホロチオ酸の金属塩に、ジンクジヒドロカルビルジチオホスフェートが含まれている、上記38に記載の濃縮添加剤。
43.濃縮添加剤中のホスホロチオ酸の金属塩の量が、潤滑剤組成物に約100ppmから約900ppmのリンをもたらすのに十分な量である、上記38に記載の濃縮添加剤。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑粘性の基油、少なくとも一種類のホスホロチオ酸の金属塩、および潤滑剤組成物の耐磨耗特性を向上させるのに十分な量の少なくとも一つの炭化水素に可溶なチタン系化合物を含んだ潤滑剤組成物を含む潤滑面であり、このとき耐磨耗剤中の金属チタンとリンとの比率は、約0.3:1から約1.5:1の範囲内である、ことを特徴とする潤滑面。
【請求項2】
炭化水素に可溶なチタン系化合物によって潤滑剤組成物中に約10ppmから約1000ppmのチタンがもたらされる、請求項1に記載の潤滑面。
【請求項3】
炭化水素に可溶なチタン系化合物にカルボン酸チタンが含まれており、このカルボン酸チタンには実質的にリンおよび硫黄原子が含まれていない、請求項1に記載の潤滑面。
【請求項4】
潤滑剤組成物に約100ppmから約900ppmのリンが含まれている、請求項1に記載の潤滑面。
【請求項5】
可動部を有し、またその可動部を潤滑する潤滑剤を含んだ自動車であり、当該潤滑剤には潤滑粘性のオイル、摩擦低減剤、および少なくとも一種類の炭化水素に可溶なチタン系化合物と少なくとも一種類のホスホロチオ酸の金属塩とを含んだ耐磨耗剤が含まれており、このとき耐磨耗剤中の金属チタンとリンとの比率は、約0.3:1から約1.5:1の範囲内であり、また当該の耐磨耗剤により得られる耐磨耗フィルムは、チタン系化合物またはリン化合物を単独で使用した際に得られるフィルムよりも厚みがある、ことを特徴とする自動車。
【請求項6】
耐磨耗剤中の金属チタンとリンの比率が約0.5:1から約1.45:1である、請求項5に記載の自動車。
【請求項7】
潤滑粘性の基油成分、炭化水素に可溶なチタン含有化合物、および少なくとも一種類のホスホロチオ酸の金属塩を含む耐磨耗剤を含んだ完全に調整された潤滑剤組成物であり、このとき耐磨耗剤中の金属チタンとリンとの比率は、約0.3:1から約1.5:1の範囲内である、ことを特徴とする潤滑剤組成物。
【請求項8】
炭化水素に可溶なチタン含有化合物に以下の構造式で表される化合物が含まれる、請求項7に記載の潤滑剤組成物:
【化1】

式中nは2、3および4の中から選択された整数、またRは炭素数が約5から約24のヒドロカルビル基である。
【請求項9】
潤滑面に隣接する耐磨耗フィルムの厚みを増加させる方法であり、潤滑粘性の基油、および炭化水素に可溶なチタン系化合物とホスホロチオ酸の金属塩を含む耐磨耗剤を含む潤滑剤組成物に表面を接触させることを含み、このときこの耐磨耗剤の金属チタンとリンの比率は、耐磨耗フィルムの厚みを、チタン系化合物またはホスホロチオ酸の金属塩のいずれか一つのみを含む潤滑剤組成物によって得られるフィルムに比べて相乗的に増加させるような比率である、ことを特徴とする方法。
【請求項10】
少なくとも一種類のホスホロチオ酸の金属塩、および潤滑剤組成物の耐磨耗特性を向上
させるのに十分な量の少なくとも一つの炭化水素に可溶なチタン系化合物を含んだ耐磨耗剤を含む潤滑剤組成物用の濃縮添加剤であり、このとき耐磨耗剤中の金属チタンとリンとの比率は、約0.3:1から約1.5:1の範囲内である、ことを特徴とする濃縮添加剤。

【公開番号】特開2009−67997(P2009−67997A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−207869(P2008−207869)
【出願日】平成20年8月12日(2008.8.12)
【出願人】(391007091)アフトン・ケミカル・コーポレーション (123)
【氏名又は名称原語表記】Afton Chemical Corporation
【Fターム(参考)】