説明

耐衝撃性改良ポリカーボネート組成物

本発明は、A)芳香族ポリカーボネートおよび/または芳香族ポリエステルカーボネート、B)B.1少なくとも一種類のビニルモノマー、0.1〜30wt.%が、B.2ガラス転移温度10℃未満であり、シリコーンゴム少なくとも50wt.%を含有する一種類以上のグラフトベース、99.9〜70wt.%、上にある、第一グラフトポリマー、C)C.1少なくとも一種類のビニルモノマー、5〜95wt.%が、C.2ガラス転移温度が10℃未満であり、EPDMゴム少なくとも50wt.%を含有する一種類以上のグラフトベース、95〜5wt.%、上にある、成分Bと異なる第二グラフトポリマー、D)ゴムフリーのビニル(コ)ポリマーおよび/またはポリアルキレンテレフタレート、並びにE)ポリマー添加剤、を含む充填耐衝撃性改良ポリカーボネート組成物であって、成分BとCとが20:80〜80:20の範囲の比(B:C)で存在し、かつ、成分A、10〜92重量部、成分BとCとの合計、8〜90重量部、成分D、0〜35重量部、および成分E、0〜30重量部を含む充填耐衝撃性改良ポリカーボネート組成物に関する。この組成物は、老化に対する良好な安定性を有し、かつ、高い低温強さおよび低光沢が認められる。本発明は、更に、この組成物の製造方法、および成形物体の製造におけるそれらの使用にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低光沢および良好な低温強度が認められる、良好な耐老化安定性を有する耐衝撃性改良ポリカーボネート組成物および成形組成物、それらの製造方法並びに成形物体の製造におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネートおよび耐衝撃性改良剤であってEPDMゴム(例えばAES)またはアクリレートゴム(ASA)ベースの耐衝撃性改良剤を含む組成物は、対応するPC/ABS組成物と比較して、老化に対して安定であるが、それらは、一般的に、低温強度が不充分である。ポリカーボネートおよびシリコーンゴムまたはシリコーンリッチなシリコーン−アクリレートコンポジットゴムベースの耐衝撃性改良剤を含む組成物は、対応するPC/ABS組成物と比較して、老化に対して安定であり、かつ、一般的に、良好な低温強度も有するが、それらから製造される成形品は、高光沢外観が認められる。射出成形後のコンポーネントにラッカーを塗ることを避けるために、そのような組成物から製造されるコンポーネントは、しばしば低光沢表面を有することが必要とされる。
【0003】
DE−OS 2037419は、ポリカーボネートおよびゴム状アクリレートポリマー(例えば、アクリロニトリルおよびスチレンがアクリレートゴム上にあるグラフトポリマー(以下ASAという。))を含む成形組成物であって、対応するポリカーボネート/ABS組成物と比較してヘアラインクラックの形成に対して改良された耐性および改良された耐候性を有する成形組成物を開示している。
【0004】
US 4,550,138は、ポリカーボネート60〜97wt.%と、ゴム含量30〜80wt.%のAESグラフトコポリマー3〜40wt.%と、を含む成形組成物であって、純粋なポリカーボネートと比較して改良された強度を有することが認められ、熱のもとでの寸法安定性が実質的に損なわれていない成形組成物を開示している。
【0005】
EP−A 0369201は、ポリカーボネート、ポリシロキサンベースのグラフトコポリマー、およびジエンゴムベースのグラフトコポリマー(例えばABS)を含む組成物を開示している。
【0006】
WO−A 98/008900は、芳香族ポリカーボネートと、アルキルアクリレート、スチレンおよび不飽和ニトリルベースのグラフトポリマーと、スチレンおよび不飽和ニトリルベースのコポリマーと、シロキサンネットワークゴム(シリコーン/アクリレートベース)と、アクリル酸またはメタクリル酸の少なくとも二種類の異種エステルのコポリマーと、要すれば別の成分と、を含む成形組成物を開示している。この成形組成物は、低温において強く、かつ、容易に流れる。生じる成形組成物の光沢には言及がない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、高い低温強度および低光沢が認められ、熱老化に対する高い安定性を有する成形組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
意外なことに、
A) 芳香族ポリカーボネートおよび/または芳香族ポリエステルカーボネート、
B) B.1 少なくとも一種類のビニルモノマー、0.1〜30wt.%、好ましくは5〜20wt.%が
B.2 ガラス転移温度が10℃未満、好ましくは0℃未満、特に好ましくは−20℃未満であり、シリコーンゴム少なくとも50wt.%を含有する一種類以上のグラフトベース、99.9〜70wt.%、好ましくは95〜80wt.%
上にある、第一グラフトポリマー、
C) C.1 少なくとも一種類のビニルモノマー、5〜95wt.%、好ましくは20〜90wt.%が
C.2 ガラス転移温度が10℃未満、好ましくは0℃未満、特に好ましくは−20℃未満であり、EPDMゴム少なくとも50wt.%を含有する一種類以上のグラフトベース、95〜5wt.%、好ましくは80〜10wt.%
上にある、成分Bと異なる第二グラフトポリマー、
D) 要すれば、ゴムフリーのビニル(コ)ポリマー(D.1)および/またはポリアルキレンテレフタレート(D.2)、並びに
E) 要すれば、ポリマー添加剤
を含む組成物であって、
成分A、10〜92重量部、好ましくは30〜80重量部、特に好ましくは40〜75重量部、
成分BとCとの合計、8〜90重量部、好ましくは10〜70重量部、特に好ましくは12〜30重量部、
成分D、0〜35重量部、好ましくは1〜30重量部、特に好ましくは4〜28重量部、および
成分E、0〜30重量部、好ましくは0.1〜10重量部、特に好ましくは0.1〜5重量部
を含み、
成分BとCとが20:80〜80:20、好ましくは25:75〜75:25、特に好ましくは35:65〜45:55の範囲の比(B:C)で存在し、かつ、
この組成物中の成分A+B+C+D+Eの重量部の合計が100になるように本願における全重量部が規格化されている
組成物が所望の特性プロファイルを有することがわかった。
【0009】
成分A
本発明による成分Aとして好適な芳香族ポリカーボネートおよび/または芳香族ポリエステルカーボネートは、文献で知られているかまたは文献で知られている方法によって製造される(芳香族ポリカーボネートの製造に関しては、例えば、Schnell,“Chemistry and Physics of Polycarbonates”,Interscience Publishers,1964年およびDE−AS 1495626、DE−A 2232877、DE−A 2703376、DE−A 2714544、DE−A 3000610、DE−A 3832396参照。芳香族ポリエステルカーボネートの製造に関しては、例えばDE−A 3077934参照。)。
【0010】
芳香族ポリカーボネートの製造は、例えば、ジフェノールと、炭酸ハロゲン化物、好ましくはホスゲン、および/または芳香族ジカルボン酸二ハロゲン化物、好ましくはベンゼンジカルボン酸二ハロゲン化物、とを、相界面法(phase boundary process)によって、要すれば連鎖停止剤、例えばモノフェノール、を使用し、かつ、要すれば三以上の官能性を有する分枝剤、例えばトリフェノールまたはテトラフェノール、を使用して反応させることによって行われる。ジフェノールを、例えばジフェニルカーボネートと反応させることによる溶融重合法による製造も更に可能である。
【0011】
芳香族ポリカーボネートおよび/または芳香族ポリエステルカーボネートの製造に関するジフェノールは、好ましくは、式(I)
【化1】

(式中、
A は、単結合、C−〜C−アルキレン、C−〜C−アルキリデン、C−〜C−シクロアルキリデン、−O−、−SO−、−CO−、−S−、−SO−、任意にヘテロ原子を含んでいてもよい別の芳香環が縮合していてもよいC−〜C12−アリーレン、または式(II)もしくは(III)
【化2】

の基であり、
それぞれの置換基B は、C−〜C12−アルキル、好ましくはメチル、ハロゲン、好ましくは塩素および/または臭素であり、
置換分x は、それぞれ互いに独立して、0、1または2であり、
p は、1または0であり、かつ
およびR は、それぞれのXに関して個々に選択され、それぞれ互いに独立して、水素またはC−〜C−アルキル、好ましくは水素、メチルまたはエチルであり、
は、炭素であり、かつ
m は、4〜7の整数、好ましくは4または5であり、
但し、少なくとも一つの原子Xにおいて、RおよびRは、同時にアルキルである。)
のジフェノールである。
【0012】
好ましいジフェノールは、ヒドロキノン、レソルシノール、ジヒドロキシジフェノール、ビス−(ヒドロキシフェニル)−C〜C−アルカン、ビス−(ヒドロキシフェニル)−C〜C−シクロアルカン、ビス−(ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス−(ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス−(ヒドロキシフェニル)−スルホンおよびα,α−ビス−(ヒドロキシフェニル)−ジイソプロピル−ベンゼン並びにそれらの環臭素化および/または塩素化誘導体である。
【0013】
特に好ましいジフェノールは、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、ビスフェノールA、2,4−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキサン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニル−スルホンおよびそれらの二−および四−臭素化または−塩素化誘導体、例えば、2,2−ビス−(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、2,2−ビス−(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)−プロパンまたは2,2−ビス−(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)−プロパンである。2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン(ビスフェノールA)が特に好ましい。ジフェノールは、単独で使用されても任意の望ましい混合物の形態で使用されてもよい。これらのジフェノールは、文献で知られているかまたは文献で知られている方法によって得られる。
【0014】
熱可塑性芳香族ポリカーボネートの製造に好適な連鎖停止剤は、例えば、フェノール、p−クロロフェノール、p−tert.−ブチルフェノールまたは2,4,6−トリブロモフェノール、並びに長鎖アルキルフェノール、例えば4−[2−(2,4,4−トリメチルペンチル)]−フェノール、DE−A 2842005による4−(1,3−テトラメチルブチル)−フェノール、またはアルキル置換基中に炭素原子を全部で8〜20個有するモノアルキルフェノールもしくはジアルキルフェノール、例えば3,5−ジ−tert.−ブチルフェノール、p−イソオクチルフェノール、p−tert.−オクチルフェノール、p−ドデシルフェノールおよび2−(3,5−ジメチルヘプチル)−フェノールおよび4−(3,5−ジメチルヘプチル)−フェノールである。使用される連鎖停止剤の量は、特定の場合に使用されるジフェノールのモルの合計に対して、一般的に、0.5mol%〜10mol%である。
【0015】
熱可塑性芳香族ポリカーボネートの平均重量平均分子量(M、例えば、GPC、超遠心分離法または散乱光測定によって測定。)は、10,000〜200,000g/mol、好ましくは15,000〜80,000g/mol、特に好ましくは24,000〜32,000g/molである。
【0016】
熱可塑性芳香族ポリカーボネートは既知の方法で、好ましくは三以上の官能性を有する化合物、例えば三以上のフェノール基を有する化合物、使用されるジフェノールの合計に対して0.05〜2.0mol%の組み込みによって分枝されうる。
【0017】
ホモポリカーボネートとコポリカーボネートの両方が好適である。本発明による成分Aとしてのコポリカーボネートの製造に関して、ヒドロキシアリールオキシ末端基を有するポリジオルガノシロキサン、使用されるジフェノールの総量に対して1〜25wt.%、好ましくは2.5〜25wt.%を更に使用してもよい。これらの化合物は既知(US 3419634)であり、文献で知られている方法によって製造されうる。ポリジオルガノシロキサンを含むコポリカーボネートの製造は、DE−A 3334782に記述されている。
【0018】
ビスフェノールAのホモポリカーボネートに加えて、好ましいポリカーボネートは、好ましいかまたは特に好ましいと言及されたジフェノール以外のジフェノール、特に2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、ジフェノールのモルの合計に対して15mol%以下を含むビスフェノールAのコポリカーボネートである。
【0019】
芳香族ポリエステルカーボネートの製造に関する芳香族ジカルボン酸二ハロゲン化物は、好ましくはイソフタル酸、テレフタル酸、ジフェニルエーテル4,4’−ジカルボン酸およびナフタレン−2,6−ジカルボン酸の二酸二塩化物である。
【0020】
イソフタル酸の二酸二塩化物とテレフタル酸の二酸二塩化物との1:20〜20:1の比の混合物が特に好ましい。
【0021】
ポリエステルカーボネートの製造において、炭酸ハロゲン化物、好ましくはホスゲンを更に二官能性酸誘導体として付随して使用する。
【0022】
既に言及されたモノフェノールに加えて、芳香族ポリエステルカーボネートの製造に関する連鎖停止剤として、更に言及されたモノフェノールのクロロ炭酸エステルおよび芳香族モノカルボン酸の酸塩化物であって任意にC−〜C22−アルキル基によってまたはハロゲン原子によって置換されていてもよいもの、並びに脂肪族C−〜C22−モノカルボン酸塩化物も考慮に入る。
【0023】
連鎖停止剤の量は、フェノール性連鎖停止剤の場合ジフェノールのモルに対して、モノカルボン酸塩化物連鎖停止剤の場合ジカルボン酸二塩化物のモルに対して、いずれの場合も0.1〜10mol%である。
【0024】
芳香族ポリエステルカーボネートは、更にそれに組み込まれた芳香族ヒドロキシカルボン酸を含みうる。
【0025】
芳香族ポリエステルカーボネートは、直鎖であっても既知の方法で分枝されていてもよい(この関連でDE−A 2940024およびDE−A 3007934参照。)。
【0026】
分枝剤として、例えば三以上の官能性を有するカルボン酸塩化物、例えばトリメシン酸三塩化物、シアヌル酸三塩化物、3,3’−,4,4’−ベンゾフェノン−テトラカルボン酸四塩化物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸四塩化物またはピロメリット酸四塩化物、が0.01〜1.0mol%(使用されるジカルボン酸二塩化物に対する。)の量で、または三以上の官能性を有するフェノール、例えばフロログルシノール、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプト−2−エン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプタン、1,3,5−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ベンゼン、1,1,1−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−エタン、トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−フェニルメタン、2,2−ビス[4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキシル]−プロパン、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル−イソプロピル)−フェノール、テトラ−(4−ヒドロキシフェニル)−メタン、2,6−ビス(2−ヒドロキシ−5−メチル−ベンジル)−4−メチルフェノール、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−プロパン、テトラ−(4−[4−ヒドロキシフェニル−イソ−プロピル]−フェノキシ)−メタン、1,4−ビス[4,4’−ジヒドロキシトリフェニル)−メチル]−ベンゼン、が使用されるジフェノールに対して0.01〜1.0mol%の量で使用されうる。フェノール性分枝剤はジフェノールと反応容器に入れられ、酸塩化物分枝剤は酸二塩化物と共に導入されうる。
【0027】
熱可塑性芳香族ポリエステルカーボネート中のカーボネート構造ユニットの含量は、所望のとおり変えられる。カーボネート基含量は、エステル基とカーボネート基との合計に対して、好ましくは100mol%以下、特に80mol%以下、特に好ましくは50mol%以下である。芳香族ポリエステルカーボネート中に含まれるエステルとカーボネートの両方が重縮合生成物中にブロックの形態で存在してもランダムに分散されて存在してもよい。
【0028】
芳香族ポリカーボネートおよびポリエステルカーボネートの相対溶液粘度(ηrel)は、1.18〜1.4、好ましくは1.20〜1.32である(塩化メチレン溶液100ml中のポリカーボネートまたはポリエステルカーボネート0.5gの溶液に対して25℃において測定される。)。
【0029】
熱可塑性芳香族ポリカーボネートおよびポリエステルカーボネートは、単独で使用されても任意の所望の混合物で使用されてもよい。
【0030】
成分B
成分Bは、
B.1 少なくとも一種類のビニルモノマー、0.1〜30wt.%、好ましくは5〜20wt.%が
B.2 ガラス転移温度が10℃未満、好ましくは0℃未満、特に好ましくは−20℃未満であり、少なくとも50wt.%のシリコーンゴムを含有する一種類以上のグラフトベース、99.9〜70wt.%、好ましくは95〜80wt.%
上にある、第一グラフトポリマーを含有する。
【0031】
グラフトベースB.2は、一般的に、0.05〜10μm、好ましくは0.05〜5μm、特に好ましくは0.1〜1μmの平均粒度(d50値)を有する。
【0032】
モノマーB.1は、好ましくは、
B.1.1 (メタ)アクリル酸(C〜C)−アルキルエステル(例えばメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、tert.−ブチルアクリレート)からなる第一群および/または
B.1.2 ビニル芳香族化合物および/または環置換ビニル芳香族化合物(例えばスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン)および/またはビニルシアニド(不飽和ニトリル、例えばアクリロニトリルおよびメタクリロニトリル)および/または不飽和カルボン酸の誘導体(例えば無水物およびイミド)、例えばマレイン酸無水物およびN−フェニル−マレイミドからなる第二群
から選択されるビニルモノマーを含有する。
【0033】
本発明の好ましい態様において、モノマーB.1の少なくとも50wt.%は、第一群B.1.1から選択される。特に好ましい態様において、モノマーB.1は、メチルメタクリレートを、成分B.1に対して、少なくとも50wt.%、好ましくは少なくとも80wt.%、特に少なくとも95wt.%含有する。
【0034】
グラフトポリマーBに好適なグラフトベースB.2は、好ましくは、シリコーンゴム、少なくとも50wt.%、特に好ましくは70〜100wt.%、より特に好ましくは70〜98wt.%、並びにジエンゴム、EP(D)Mゴム(すなわち、エチレン/プロピレンおよび任意にジエンベースのゴム)、アクリレート、ポリウレタン、シリコーン、クロロプレンおよびエチレン/ビニルアセテートゴムからなる群から選択される一種類以上のゴム50wt.%以下、特に好ましくは30wt.%以下、より特に好ましくは2〜30wt.%を含有する。
【0035】
特に好ましいグラフトベースB.2は、シリコーンゴム、少なくとも50wt.%、最も好ましくは70〜98wt.%と、アクリレートゴム、50wt.%以下、最も好ましくは2〜30wt.%との混合物であり、これらの二種類のゴムタイプは、それらの製造のために、相互浸透ネットワークを形成するかまたはコア−シェル構造の形態で存在する。
【0036】
グラフトベースB.2のゲル含量は、特に好ましくは少なくとも30wt.%、より特に好ましくは少なくとも40wt.%である(トルエン中で測定される。)。
【0037】
グラフトベースBは、フリーラジカル重合によって、例えば、エマルジョン、サスペンション、溶液または塊状重合によって、好ましくはエマルジョンまたは塊状重合によって、特に好ましくはエマルジョン重合によって製造される。
【0038】
グラフトモノマーがグラフト反応中にグラフトベース上に完全にグラフトする必要がないことが知られているので、本発明によるグラフトポリマーBは、更にグラフトベースの存在下におけるグラフトモノマーの(共)重合によって得られ、かつ、更にワークアップ(working up)中にも得られる生成物であると理解される。
【0039】
B.2によるポリマーBに好適なアクリレートゴムは、好ましくは、アクリル酸アルキルエステルと、要すれば別の重合性エチレン性不飽和モノマー、B.2に対して40wt.%以下と、のポリマーである。好ましい重合性アクリル酸エステルとしては、C−〜C−アルキルエステル、例えばメチル、エチル、ブチル、n−オクチルおよび2−エチルヘキシルエステル、ハロアルキルエステル、好ましくはハロ−C〜C−アルキルエステル、例えばクロロエチルアクリレート、並びにこれらのモノマーの混合物が挙げられる。
【0040】
架橋に関して、一よりも多い重合性二重結合を有するモノマーが共重合されうる。架橋モノマーの好ましい例は、炭素原子を3〜8個有する不飽和モノカルボン酸と炭素原子を3〜12個有する不飽和一価アルコールまたはOH基2〜4個と炭素原子2〜20個を有する飽和ポリオールとのエステル(例えばエチレングリコールジメタクリレート、アリルメタクリレート);多価不飽和ヘテロ環化合物(例えばトリビニルおよびトリアリルシアヌレート);多官能性ビニル化合物(例えばジ−およびトリ−ビニルベンゼン);および更にトリアリルホスフェートおよびジアリルフタレートである。好ましい架橋モノマーは、アリルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジアリルフタレートおよび少なくとも三つのエチレン性不飽和基を有するヘテロ環化合物である。特に好ましい架橋モノマーは、環状モノマートリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアクリロイルヘキサヒドロ−s−トリアジン、トリアリルベンゼンである。架橋モノマーの量は、グラフトベースB.2に対して、好ましくは0.02〜5wt.%、特に0.05〜2wt.%である。少なくとも三つのエチレン性不飽和基を有する環状架橋モノマーの場合、グラフトベースB.2の1wt.%以下の量に制限することが有利である。
【0041】
アクリル酸エステルに加えてグラフトベースB.2の製造に任意に使用されうる好ましい「別の」重合性エチレン性不飽和モノマーは、例えば、アクリロニトリル、スチレン、α−メチルスチレン、アクリルアミド、ビニルC〜C−アルキルエーテル、メチルメタクリレート、ブタジエンである。グラフトベースB.2として好ましいアクリレートゴムは、ゲル含量少なくとも60wt.%のエマルジョンポリマーである。
【0042】
B.2による別の好適なグラフトベースは、DE−OS 3704657、DE−OS 3704655、DE−OS 3631540およびDE−OS 3631539に記述されているような、グラフト活性部位を有するシリコーンゴムである。
【0043】
グラフトベースB.2のゲル含量は、25℃において好適な溶媒中で決定される(M.Hoffmann,H.Kroemer,R.Kuhn,Polymeranalytik I und II,Georg Thieme−Verlag,シュトゥットガルト 1977年)。
【0044】
平均粒度d50は、それぞれその上下に50wt.%の粒子が存在する直径である。これは超遠心測定によって決定される(W.Scholtan,H.Lange,Kolloid.Z.und Z.Polymere 250(1972年),782〜796頁)。
【0045】
成分C
成分Cは、成分Bと異なる第二グラフトポリマーであって、
C.1 少なくとも一種類のビニルモノマー、5〜95wt.%、好ましくは30〜90wt.%が
C.2 ガラス転移温度が10℃未満、好ましくは0℃未満、特に好ましくは−20℃未満であり、EPDMゴム少なくとも50wt.%を含有する一種類以上のグラフトベース、95〜5wt.%、好ましくは70〜10wt.%
上にあるグラフトポリマーを含有する。
【0046】
グラフトベースC.2は、一般的に、0.05〜10μm、好ましくは0.1〜5μm、特に好ましくは0.2〜1μmの平均粒度(d50値)を有する。
【0047】
モノマーC.1は、好ましくは、
C.1.1 ビニル芳香族化合物および/または環置換ビニル芳香族化合物(例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン)および/または(メタ)アクリル酸(C〜C)−アルキルエステル(例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート)、50〜99重量部、並びに
C.1.2 ビニルシアニド(不飽和ニトリル、例えばアクリロニトリルおよびメタクリロニトリル)および/または(メタ)アクリル酸(C〜C)−アルキルエステル、例えばメチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、tert.−ブチルアクリレート、および/または不飽和カルボン酸の誘導体(例えば無水物およびイミド)、例えばマレイン酸無水物およびN−フェニルマレイミド、1〜50重量部
の混合物である。
【0048】
好ましいモノマーC.1.1は、少なくとも一種類のモノマースチレン、α−メチルスチレンおよびメチルメタクリレートから選択され、好ましいモノマーC.1.2は、少なくとも一種類のモノマーアクリロニトリル、マレイン酸無水物およびメチルメタクリレートから選択される。特に好ましいモノマーは、C.1.1スチレンおよびC.1.2アクリロニトリルである。
【0049】
グラフトポリマーCに好適なグラフトベースC.2は、EPDMゴム(すなわち、エチレン/プロピレンおよびジエンベースのゴム)、好ましくは少なくとも50wt.%、特に好ましくは少なくとも80wt.%並びにジエンゴム、シリコーンゴム、アクリレート、ポリウレタン、シリコーン、クロロプレンおよびエチレン/ビニルアセテートゴムからなる群から選択される一種類以上のゴム、50wt.%以下、特に好ましくは20wt.%以下を含有する。
【0050】
特に好ましいグラフトベースC.2は、純粋なEPDMゴム、すなわち、エチレン/プロピレンおよびジエンベースのゴムであって、ジエンが好ましくは5−エチリデン−2−ノルボルネンであるゴムを含有する。
【0051】
グラフトベースC.2のゲル含量は、好ましくは少なくとも30wt.%、特に好ましくは少なくとも40wt.%である(トルエン中で測定。)。
【0052】
グラフトコポリマーCは、フリーラジカル重合によって、例えばエマルジョン、サスペンション、溶液または塊状重合によって、好ましくは、エマルジョンまたは塊状重合によって製造される。
【0053】
グラフトモノマーは、グラフト反応中に必ずしも完全にグラフトベース上にグラフトされなければならないわけではないことが知られているので、本発明によるグラフトポリマーCもまたグラフトベースの存在下におけるグラフトモノマーの(共)重合によって得られ、更にワークアップ中にも得られる生成物であることが理解されている。
【0054】
グラフトベースC.2のゲル含量は、25℃において好適な溶媒中で決定される(M.Hoffmann,H.Kroemer,R.Kuhn,Polymeranalytik I und II,Georg Thieme−Verlag,シュトゥットガルト 1977年)。
【0055】
平均粒度d50は、それぞれその上下に50wt.%の粒子が存在する直径である。これは超遠心測定によって決定されうる(W.Scholtan,H.Lange,Kolloid,Z.und Z.Polymere 250(1972年),782〜1796頁)。
【0056】
成分D
成分Dは、一種類以上の熱可塑性ビニル(コ)ポリマーD.1および/またはポリアルキレンテレフタレートD.2を含有する。
【0057】
好適なビニル(コ)ポリマーD.1は、ビニル芳香族化合物、ビニルシアニド(不飽和ニトリル)、(メタ)アクリル酸(C〜C)−アルキルエステル、不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸の誘導体(例えば無水物およびイミド)の群からの少なくとも一種類のモノマーのポリマーである。
D.1.1 ビニル芳香族化合物および/または環置換ビニル芳香族化合物(例えばスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン)および/または(メタ)アクリル酸(C〜C)−アルキルエステル(例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート)、50〜99重量部、好ましくは60〜80重量部と
D.1.2 ビニルシアニド(不飽和ニトリル)、例えばアクリロニトリルおよびメタクリロニトリル、および/または(メタ)アクリル酸(C〜C)−アルキルエステル、例えばメチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、tert.−ブチルアクリレート、および/または不飽和カルボン酸、例えばマレイン酸、および/または不飽和カルボン酸の誘導体、例えば無水物およびイミド(例えばマレイン酸無水物およびN−フェニルマレイミド)、1〜50重量部、好ましくは20〜40重量部と
の(コ)ポリマーが特に好適である。
【0058】
ビニル(コ)ポリマーD.1は、樹脂状、熱可塑性かつゴムフリーである。D.1.1スチレンとD.1.2アクリロニトリルとのコポリマーが特に好ましい。
【0059】
D.1による(コ)ポリマーは既知であり、フリーラジカル重合によって、特にエマルジョン、サスペンション、溶液または塊状重合によって製造されうる。これらの(コ)ポリマーは、好ましくは、平均分子量M(重量平均、光散乱または沈降によって決定される。)15,000〜200,000を有する。
【0060】
成分D.2のポリアルキレンテレフタレートは、芳香族ジカルボン酸またはそれらの反応性誘導体、例えばジメチルエステルもしくは無水物、と、脂肪族、脂環式または芳香脂肪族ジオールとの反応生成物並びにそのような反応生成物の混合物である。
【0061】
好ましいポリアルキレンテレフタレートは、テレフタル酸基、ジカルボン酸成分に対して少なくとも80wt.%、好ましくは少なくとも90wt.%と、エチレングリコールおよび/または1,4−ブタンジオール基、ジオール成分に対して少なくとも80wt.%、好ましくは少なくとも90mol%とを含む。
【0062】
テレフタル酸を含むだけでなく、好ましいポリアルキレンテレフタレートは、炭素原子を8〜14個有する別の芳香族もしくは脂環式ジカルボン酸または炭素原子を4〜12個有する脂肪族ジカルボン酸の基、例えば、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、シクロヘキサン二酢酸の基、を20mol%以下、好ましくは10mol%以下含みうる。
【0063】
エチレングリコールまたは1,4−ブタンジオール基を含むだけでなく、好ましいポリアルキレンテレフタレートは、炭素原子を3〜12個有する別の脂肪族ジオールまたは炭素原子を6〜21個有する脂環式ジオール、例えば1,3−プロパンジオール、2−エチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、3−エチル−2,4−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,4−ジ−(β−ヒドロキシエトキシ)−ベンゼン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシシクロヘキシル)−プロパン、2,4−ジヒドロキシ−1,1,3,3−テトラメチル−シクロブタン、2,2−ビス−(4−β−ヒドロキシエトキシ−フェニル)−プロパンおよび2,2−ビス−(4−ヒドロキシプロポキシフェニル)−プロパンの基、を20mol%以下、好ましくは10mol%以下含みうる(DE−A 2407674、2407776、2715932)。
【0064】
ポリアルキレンテレフタレートは、比較的少量の三価もしくは四価アルコールまたは三−もしくは四−塩基性カルボン酸の組み込みによって分枝されてもよい(例えば、DE−A 1900270およびUS−PS 3692744による。)。好ましい分枝剤の例は、トリメシン酸、トリメリット酸、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンおよびペンタエリトリトールである。
【0065】
専らテレフタル酸およびその反応性誘導体(例えばそのジアルキルエステル)とエチレングリコールおよび/または1,4−ブタンジオールとのみからつくられたポリアルキレンテレフタレート並びにそのようなポリアルキレンテレフタレートの混合物が特に好ましい。
【0066】
ポリアルキレンテレフタレートの混合物は、ポリエチレンテレフタレート1〜50wt.%、好ましくは1〜30wt.%と、ポリブチレンテレフタレート50〜99wt.%、好ましくは70〜99wt.%とを含む。
【0067】
好ましく使用されるポリアルキレンテレフタレートの固有粘度は、一般的に、0.4〜1.5dl/g、好ましくは0.5〜1.2dl/gである(25℃においてフェノール/o−ジクロロベンゼン(1:1重量部)中でUbbelohde粘度計において測定される。)。
【0068】
ポリアルキレンテレフタレートは既知の方法で製造されうる(例えば、Kunststoff−Handbuch,第VIII巻,695頁以降,Carl−Hanser−Verlag,ミュンヘン 1973年参照。)。
【0069】
成分E
この組成物は、更に市販のポリマー添加剤、例えば防炎加工剤、防炎相乗剤、ドリップ防止剤(例えばフッ素化ポリオフィン、シリコーンおよびアラミド繊維の物質クラスの化合物)、滑剤および離型剤(例えばペンタエリトリトールテトラステアレート)、成核剤、安定剤、帯電防止剤(例えば導電性カーボンブラック、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ並びに有機帯電防止剤、例えばポリアルキレンエーテル、アルキルスルホネートまたはポリアミド含有ポリマー)、充填剤および強化剤(例えばガラス繊維またはカーボンファイバー、マイカ、カオリン、タルク、CaCOおよびガラスフレーク)並びに着色剤および顔料を含みうる。
【0070】
防炎加工剤として、好ましく使用されるリン含有防炎加工剤、特にモノマーおよびオリゴマーリン酸エステルおよびホスホン酸エステル、ホスホネートアミンおよびホスファゼンの群から選択される、がある。更に、これらの群の一つのまたは多数から選択される数種類の成分の混合物を防炎加工剤として使用することも可能である。本明細書中で特に言及していない別のハロゲンフリーのリン化合物を、更に、単独で使用しても他のハロゲンフリーのリン化合物との任意の所望の組み合わせで使用してもよい。好適なリン化合物の例は、トリブチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレシルホスフェート、ジフェニルクレシルホスフェート、ジフェニルオクチルホスフェート、ジフェニル−2−エチルクレシルホスフェート、トリ−(イソプロピルフェニル)ホスフェート、レソルシノール架橋ジ−またはオリゴ−ホスフェートおよびビスフェノールA架橋ジ−またはオリゴ−ホスフェートである。ビスフェノールAから誘導されるオリゴマーリン酸エステルの使用が特に好ましい。防炎加工剤として好適なリン化合物は既知(例えば、EP−A 0363608、EP−A 0640655参照。)であるかまたは既知の方法によって同様に製造されうる(例えば、Ullmanns Enzyklopaedie der technischen Chemie,第18巻,301頁以降1979年;Houben−Weyl,Methoden der organischen Chemie,第12/1巻,43頁;Beilstein第6巻,177頁。)。
【0071】
成形組成物および成形物体の製造
本発明による熱可塑性成形組成物は、それぞれの成分を既知の方法で混合し、この混合物を温度200℃〜300℃において常套のデバイス、例えば内部ニーダー、押出機および二軸スクリュー、中で溶融配合し、溶融押出することによって製造される。
【0072】
個々の成分の混合は、既知の方法で連続してまたは同時に、約20℃(室温)においてまたは高温において行われうる。
【0073】
本発明は、更に、成形組成物の製造方法および成形物体の製造における成形組成物の使用にも関する。
【0074】
本発明による成形組成物は、あらゆる種類の成形物体の製造において使用されうる。成形物体は、例えば、射出成形、押出およびブロー成形法によって製造されうる。別の加工形態は、予め製造されたシートまたはフィルムから深絞り成形することによる成形物体の製造である。
【0075】
そのような成形物体の例は、フィルム、プロファイル、あらゆる種類のケーシング部品、例えば屋内電気器具、例えばジュース絞り器、コーヒーマシーン、ミキサー用のケーシング部品;オフィス用品、例えばモニタ、フラットスクリーン、ノートパソコン、プリンタ、コピー機用のケーシング部品;シート、チューブ、電気設備用コンジット、ウィンドウ、ドアおよび建設部門用の別のプロファイル(内装仕上げ材および外装)並びに電気および電子部品、例えばスイッチ、プラグおよびソケット、および更に市販の乗物用の、特に自動車分野用の車体部品および屋内部品である。
【0076】
特に、本発明による成形組成物は、例えば更に以下の成形物体または成形品の製造にも使用されうる。鉄道車両、船舶、航空機、バスおよび別の自動車用の屋内付属品、小型変圧器を含む電気装置のケーシング、情報の処理および伝達用デバイスのケーシング、医療機器のケーシングおよびカバー、マッサージ器具およびそのケーシング、子供用乗物玩具、平面組立壁パネル(flat prefabricated wall panels)、セキュリティー機器のケーシング、断熱輸送コンテナ、衛生器具および浴室器具用の成形品、換気口を覆う格子、および園芸用具用ケーシング。
【0077】
以下の実施例は、本発明を更に説明するのに役立つ。
【実施例】
【0078】
成分A
重量平均分子量M27,500g/mol(GPCによって決定される。)のビスフェノールAベースの直鎖ポリカーボネート。
【0079】
成分B1
シリコーンゴム92wt.%およびブチルアクリレートゴム8wt.%からなるグラフトベース89wt.%とその上のポリメチルメタクリレート11wt.%とからなるグラフトポリマー。
【0080】
成分B2(比較)
シリコーンゴム46wt.%およびブチルアクリレートゴム54wt.%のグラフトベース72wt.%とその上のスチレン−アクリロニトリルコポリマー28wt.%とからなるグラフトポリマー。
【0081】
成分B3(比較)
シリコーンゴム11wt.%およびブチルアクリレートゴム89wt.%からなるグラフトベース83wt.%とその上のポリメチルメタクリレート17wt.%とからなるグラフトポリマー。
【0082】
成分C1
EPDMゴムからなるグラフトベース70wt.%とその上のアクリロニトリルおよびスチレン30wt.%とからなり、ジエンが5−エチリデン−2−ノルボルネンであるグラフトポリマー。このグラフトベースの平均粒度(d50)は約250nmである。
【0083】
成分C2(比較)
ブチルアクリレートゴムのグラフトベース75%とその上のポリメチルメタクリレート25%とからなるグラフトポリマー。
【0084】
成分C3(比較)
ブチルアクリレートゴムのグラフトベース61wt.%とその上のアクリロニトリルおよびスチレン39wt.%とからなるグラフトポリマー。
【0085】
成分C4(比較)
アクリロニトリル27wt.%とスチレン73wt.%との混合物、ABSポリマーに対して43wt.%の、粒状架橋ポリブタジエンゴム(平均粒径d50=0.35μm)、ABSポリマーに対して57wt.%の存在下におけるエマルジョン重合によって製造されるABSポリマー。
【0086】
成分D
スチレン/アクリロニトリル重量比72:28かつ固有粘度0.55dl/g(ジメチルホルムアミド中20℃において測定。)のスチレン/アクリロニトリルコポリマー。
【0087】
成分E
E1:滑剤/離型剤としてのペンタエリトリトールテトラステアレート
E2:Ciba Speciality Chemicals製のホスファイト安定剤、Irganox(登録商標)B 900
E3:フランスのシュレーヌのCabot Europa G.I.E.製のBlack Pearls 800
【0088】
成形組成物の製造および試験
表1に列挙される材料を、溶融温度260℃において二軸押出機(ZSK−25)(Werner und Pfleiderer)中で速度225rpmかつ処理量25kg/時間において配合し、次にグラニュール化する。完成グラニュールを射出成形マシーンにおいて対応する試験片に加工する(溶融温度260℃、金型温度80℃、流頭速度240mm/秒)。
【0089】
以下の方法を使用して試験片の特性を決定する。
【0090】
プラスチック表面の光沢を、サイズ60mm×40mm×2mmの試験片においてDIN 67530に従って測定角(以下、照射角ともいう。)20°において評価する。
【0091】
パンクチャー試験をISO 6603−2に従って温度−30℃において行う。この試験において、合計10個の試験片の破壊パターンを、非分裂破壊(non−splintering failure)が多くの場合(少なくとも80%)、すなわち試験片10個のうち少なくとも8個、に起こるかについて評価する。
【0092】
熱老化に関して、DIN IEC 60216−1に従って、試験片を100℃において500時間貯蔵した。次に、ISO 6603−2に従って、温度−30℃においてこの試験片にパンクチャー試験を行った。
【0093】

【0094】
これらの実施例は、表面光沢の望ましい減少がB1とC1の組み合わせでのみ−かつ更に限定された濃度範囲内でのみ−達成されうることを示している。
【0095】
実施例1〜5および比較例6〜9から、B1対C1の比で20:80〜80:20の範囲内で光沢の減少が起こることが明らかである。
【0096】
実施例2および比較例11および12から明らかであるように、光沢の減少は、B2やB3ではなく、特定のシリコーン/アクリレート変性剤B1を使用して初めて達成される。B1とポリブタジエン(C4、比較例13)またはアクリレート(C2およびC3、比較例14および15)ベースの耐衝撃性改良剤との組み合わせは、本発明の目的を達成しない。C1とポリブタジエン(C4、比較例16)ベースの耐衝撃性改良剤との組み合わせもまた所望の特性の組み合わせを達成しない。
【0097】
B1とC1とを使用する場合、特定の量のSAN(成分D)も更に超えてはならない。同じ比のA:B:Cで、Dの濃度を5.02(実施例5)から23.62(実施例2)を経て40(比較例10)まで増加させた。表から明らかなように、実施例2および5の場合のみ、この順番で表面光沢の減少が達成された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A) 芳香族ポリカーボネートおよび/または芳香族ポリエステルカーボネート、
B) B.1 少なくとも一種類のビニルモノマー、0.1〜30wt.%が
B.2 ガラス転移温度が10℃未満であり、シリコーンゴム少なくとも50wt.%を含有する一種類以上のグラフトベース、99.9〜70wt.%
上にある、第一グラフトポリマー、
C) C.1 少なくとも一種類のビニルモノマー、5〜95wt.%が
C.2 ガラス転移温度が10℃未満であり、EPDMゴム少なくとも50wt.%を含有する一種類以上のグラフトベース、95〜5wt.%
上にある、成分Bと異なる第二グラフトポリマー、
D) ゴムフリーのビニル(コ)ポリマーおよび/またはポリアルキレンテレフタレート、並びに
E) ポリマー添加剤
を含む組成物であって、
成分BとCとが20:80〜80:20の範囲の比(B:C)で存在し、かつ、
成分A、10〜92重量部、
成分BとCとの合計、8〜90重量部、
成分D、0〜35重量部、および
成分E、0〜30重量部
を含む、組成物。
【請求項2】
成分BとCとが35:65〜45:55の範囲の比(B:C)で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
該グラフトベースB.2が、
シリコーンゴム、少なくとも50wt.%、並びに、
ジエンゴム、EP(D)Mゴム、アクリレート、ポリウレタン、シリコーン、クロロプレンおよびエチレン/ビニルアセテートゴムからなる群から選択される一種類以上のゴム、50wt.%以下
を含有する、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
該グラフトベースB.2が、
シリコーンゴム、70〜98wt.%と、
アクリレートゴム、2〜30wt.%と、
の混合物である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
該グラフトベースC.2が、
EPDMゴム、少なくとも50wt.%、並びに、
ジエンゴム、シリコーンゴム、アクリレート、ポリウレタン、シリコーン、クロロプレンおよびエチレン/ビニルアセテートゴムからなる群から選択される一種類以上のゴム、50wt.%以下
を含有する、請求項1〜4に記載の組成物。
【請求項6】
該グラフトベースC.2がEPDMゴムである、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
ポリマー添加剤として、防炎加工剤、防炎相乗剤、ドリップ防止剤、滑剤および離型剤、成核剤、安定剤、帯電防止剤、充填剤および強化剤、並びに着色剤および顔料からなる群から選択される少なくとも一種類の成分が存在する、請求項1〜6に記載の組成物。
【請求項8】
成形物体の製造における請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物を含む成形物体。
【請求項10】
該成形物体が、自動車、鉄道車両、航空機もしくは船舶の部品であるか、または小型変圧器を含む電気装置のケーシング、情報の処理および伝達用のデバイスのケーシング、医療機器のケーシングもしくはカバー、マッサージ器具およびそのケーシング、子供用乗物玩具、平面組立壁パネル、セキュリティー機器のケーシング、断熱輸送コンテナ、衛生器具および浴室器具用の成形品、換気口を覆う格子、もしくは園芸用具用ケーシングであることを特徴とする、請求項9に記載の成形物体。

【公表番号】特表2010−516825(P2010−516825A)
【公表日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−545852(P2009−545852)
【出願日】平成20年1月9日(2008.1.9)
【国際出願番号】PCT/EP2008/000090
【国際公開番号】WO2008/086961
【国際公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】