説明

耐衝撃性複合品

耐衝撃性複合品は、防弾布の2枚以上の層とその布層間に配置されたアイオノマー層とを有する。アイオノマーは、それが本質的にメルトフローを有しないように高度に中和される。このような複合品の製造方法はまた、この布上へのアイオノマーの水性コロイドの堆積、続いて乾燥を伴う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸コポリマーと耐衝撃性繊維を含む布とを含む軽量装甲複合構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
防弾チョッキ、ヘルメット、ヘリコプターの構造部材、および他の軍用機器などの防弾(ballistic)物品、車両パネル、ブリーフケース、レインコート、ならびに高強度繊維を含有する傘が知られている。従来から使用されている繊維には、ポリ(フェニレンジアミンテレフタルアミド)などのアラミド繊維、黒鉛繊維、ナイロン繊維、セラミック繊維、ガラス繊維などが挙げられる。チョッキまたはチョッキの部品などの多くの用途ではその繊維は、織布または編布の状態で使用される。繊維は、マトリクス材中に封入または埋め込まれることもある。
【0003】
複合材を形成するためにこれらの高ひずみ防弾布地にフェノール樹脂または変性ポリエステルを加えることもできるが、この樹脂は水を遮るにすぎない。衝撃下でその高ひずみ繊維が複合材マトリクスから抜け出してその長さに沿って即座に伸張し始めるように、多くの場合、非結合性のゴムラテックスを加えてその高ひずみ高強力繊維(Kevlar(登録商標)など)との非結合性を高め、こうしてできるだけ大きな面積にわたって衝撃荷重を負担させる。それによってその防弾布スタックの阻止能力を増大させる。
【0004】
防弾繊維で複合材を形成するためにアイオノマーが使用されてきた。米国特許第4,879,165号明細書には、その少なくとも一部のゾーンが押出成形されたアイオノマー樹脂を含む複数のゾーンを含む装甲構造体または耐衝撃性構造体が開示されている。例えば、この‘165号発明の一つのアイオノマーまたはアイオノマー樹脂は、エチレン−メタクリル酸またはエチレン−アクリル酸のコポリマーを、少なくとも1種類のR--CH2--NH2基(このRは、(--CH2NH2x、(--NH2x、または(R’R’’NH)yを含有することができ、式中、x=1またはそれ以上であり、y=0またはそれ以上であり、R’およびR’’は任意の有機基であることができる)を含有するポリアミンと組み合わせることによって得られる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、この分野における既存の技術を凌ぐ防弾性能の顕著な改善を示す複合材を見出した。
【0006】
本発明は、1枚または層状に重ね合わせた複数枚のスタックを含む耐衝撃性複合品に関する。各スタックは、2枚以上の繊維層を含み、少なくとも2枚の繊維層の間に非溶融加工性アイオノマーが配置されている。この非溶融加工性アイオノマーは、少なくとも85%中和されており、ASTM D1238の190℃メルトフロー試験で<0.05g/10分のメルトフローインデックスを有する。
【0007】
さらなる実施形態において本発明は、
(i)防弾繊維層の片面または両面に水性アイオノマー分散液の塗料を塗布することによって第一の被覆繊維層を作製するステップ、
(ii)それによって形成された第一の被覆繊維層を20〜200℃の間の温度で実質的に乾燥させるステップ、
(iii)ステップ(i)および(ii)の工程によって作製される第二の被覆繊維層を、アイオノマー塗膜が第一および第二の被覆繊維層の間に少なくとも配置されるように置くことによって複合布を形成するステップ、
(iv)必要な枚数の被覆繊維層の層を有する多層複合品が形成されるまで、ステップ(iii)のやり方で複合繊維層上に後続の被覆繊維層を置くステップ(この場合、多層複合品中の固体アイオノマーの重量分率は5〜16%の間である)、および
(v)任意選択により、しかし好ましくは上記ステップ(iv)で形成された複合品を約120〜200℃の間の温度で約200〜8000ポンド/平方インチの圧力で約5〜30分の間プレス加工するステップ、
を含む防弾複合品の作製方法に関する。
【0008】
この方法は、ステップ(i)で形成される被覆繊維層に圧力を加えるステップをさらに含むことができる。
【0009】
この方法は、その複合品が15枚〜200枚の間の、または好ましくは40枚〜80枚の間の被覆繊維層を含むまで、上記ステップ(iv)を繰り返すステップをさらに含むことができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、繊維布層の2枚以上のスタックを含む耐衝撃性複合品に関する。これらの層は、繊維上の撥水処理と、それら繊維層の少なくとも幾枚かの間に配置されたアイオノマー層とを含むことができる。好ましくはこのアイオノマーは、オレフィン酸エチレンコポリマーを含む。アイオノマーは、少なくとも85%中和され、好ましくは少なくとも95%中和され、より好ましくは少なくとも100%中和される。中和は、アイオノマーまたはオレフィン酸コポリマー中に存在する無機陽イオンのレベルを意味し、高レベルの中和は、190℃で、さらには200℃で測定されるきわめて低いメルトフローインデックス(MFI)を有する融解ポリマーを生じさせる。0.1g/10分未満のMFIを有するポリマーが溶融押出、押出成形、射出成型などの普通の方法に対して溶融加工性であるにはあまりにも粘稠であることは一般に知られている。本質的に100%中和された非溶融加工性アイオノマーの極端に高い溶融粘度または無限溶融粘度に対応する低いメルトフローは新規な積層品をもたらす。複合品の熱圧密化の間の低いメルトフローによりこの樹脂が布に含浸する度合いはきわめて低くさえあるが、それでも驚くべきすぐれた防弾性能を与えることができる。
【0011】
「複合品」とは、平坦であるかないかにかかわらず、本発明で述べるパネルなどの任意の型の構造物を意味する。複合品はまた、本発明に基づいて形成または成形される製品、例えばヘルメットを含むことができる。本発明の複合品はアイオノマーを含むことができ、そのアイオノマーはさらに5モル%〜15モル%の間の酸、好ましくは8モル%〜12モル%の間の酸を含む。
【0012】
「スタック」とは、繊維の多層構造物を意味する。それにまた複合品はただ1枚のスタックを含むこともでき、または層状に重ね合せた2枚以上のスタックを含むこともできる。スタックは複数枚の繊維層を含む。
【0013】
このアイオノマーは、好ましくは少なくとも95%、または100%にも中和することができる。
【0014】
アイオノマーは、少なくとも幾枚かの繊維層中の繊維を部分的に被覆する塗料の形態であることもでき、また少なくとも2枚の繊維層の間の別個の層を形成することもできる。繊維層は繊維束を含むことができ、続いてその繊維束を組み立てて繊維層にする。本発明の一実施形態では繊維層は繊維束を含み、またアイオノマーはいずれの繊維層または束にもその厚さの10%を超えて浸透しない。アイオノマー層はまた、所望の最終複合品特性を得るのに望ましい任意の程度まで繊維層に浸透させることもできる。例えばアイオノマー層は、それが接触する繊維層に浸透しない。さらなる実施形態ではアイオノマー層は、繊維層の断面厚さまたは繊維層内の繊維束の断面厚さの50%未満程度まで浸透させることができる。
【0015】
本発明の繊維層は、不織布を含んでもよく、または少なくとも部分的に製織されてもよい。幾枚かの繊維層に撥水材料を少なくとも部分的に塗布することができる。
【0016】
繊維層は、アラミド、UHMWPE、UHMWPP、ポリビニルアルコール、ポリアゾール、およびこれらの組合せまたはブレンドからなる群から選択されるポリマーをさらに含むことができる繊維を含む。一実施形態では繊維層はポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)を含む。さらなる実施形態では複合品は、様々な材料の繊維層から実質的に作られたスタックを含む。例えばアラミド繊維の一スタックを、UHMWPE繊維の繊維層を含む第二のスタックと組み合わせることができる。さらなる実施形態ではいずれか1枚のスタックが、様々な組成の繊維層を含むことができる。
【0017】
アイオノマーは、酸コモノマーとエチレンのコポリマーを含むことができる。このようなエチレンコポリマーは、ナトリウム、カリウム、リチウム、銀、水銀、銅(I)、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、銅(II)、カドミウム、水銀、スズ、鉛、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、アルミニウム、スカンジウム、鉄、イットリウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、タンタル、タングステン、クロム、セリウム、鉄、およびこれらの組合せからなる群から選択されるイオンで中和することができる。
【0018】
繊維材料に撥水材料をさらに塗布することもできる。例えば撥水材料は、少なくとも部分的にフッ素化された材料を含むことができる。一実施形態ではその少なくとも部分的にフッ素化された材料は、部分フッ素化アクリレートコポリマーおよび部分フッ素化メタクリレートコポリマーからなる群から選択される。
【0019】
アイオノマーは分散液の形態で布層に塗布することができる。アイオノマーの懸濁液およびエマルションも関係がある。分散液は、アイオノマーが分散液の固形分の少なくとも70重量%を構成する、他の非アイオノマー系ポリマーとのブレンド分散液であることもできる。さらにアイオノマーは、水性分散液の形態で布層に塗布することもできる。
【0020】
さらにアイオノマーは可塑化することも、または界面活性剤とブレンドすることもできる。一実施形態ではアイオノマーは、アイオノマーに可塑剤または他の添加剤、例えば界面活性剤を加えた和の少なくとも70重量%を構成することになる。例えばこの可塑剤または界面活性剤は、長鎖脂肪酸、例えば1−デカノールであることができる。
【0021】
さらなる実施形態では本発明は、
(i)防弾繊維層の片面または両面に水性アイオノマー分散液の塗料を塗布することによって第一の被覆繊維層を作製するステップ、
(ii)それによって形成された第一の被覆繊維層を20〜200℃の間の温度で実質的に乾燥させるステップ、
(iii)ステップ(i)および(ii)の工程によって作製される第二の被覆繊維層を、アイオノマー塗膜が第一および第二の被覆繊維層の間に少なくとも配置されるように置くことによって複合布を形成するステップ、
(iv)必要な枚数の被覆繊維層の層を有する多層複合品が形成されるまで、ステップ(iii)のやり方で複合繊維層上に後続の被覆繊維層を置くステップ(この場合、多層複合品中の固体アイオノマーの重量分率は5〜16%の間である)、および
(v)任意選択により、しかし好ましくは上記で形成された複合品を約120〜200℃の間の温度で約200〜8000ポンド/平方インチの圧力で約5〜30分の間プレス加工するステップ、
を含む防弾複合品の作製方法に関する。
【0022】
この方法は、その複合品が15枚〜200枚の間の、または好ましくは40枚〜80枚の間の被覆繊維層を含むまで上記ステップ(iv)を繰り返すステップをさらに含むことができる。
【0023】
本発明で使用される繊維層は、製織されていてもよい繊維を含み、またさらにアラミドを、ポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)さえも、または超高分子量高密度ポリエチレンを含むこともできる。例えば、繊維層について述べる場合にKevlar(登録商標)または他の特定の構造物を指すとき、本明細書中ではその繊維層を「布」と呼ぶこともできる。同様に、繊維層を不織「布」と呼ぶこともできる。織られていないとは、幾つかの実施形態ではその布は、それらのいずれもバインダーを含んでも含まなくても一方向性の布、多軸布、または三次元布であることを意味する。多軸布は、隣接した層に対して或る角度で配向させた糸の層を有することができ、それらの層は一方向に並んだ糸を含むことができる。三次元布もまた一方向に並んだ糸を含むことができる。
【0024】
したがって、本明細書中で使用される用語「繊維層」と「布」は、同義である。
【0025】
本発明の目的では繊維は、その長さ寸法が幅および厚さの横方向寸法よりもはるかに大きい細長い物体である。したがって繊維という用語には、規則的または不規則的断面を有するモノフィラメント繊維、マルチフィラメント繊維、リボン、ストリップ、それらのいずれか1種類または組合せの多数などが含まれる。
【0026】
本発明の複合品は、織られていなくても部分的に織られていてもよい繊維網状組織を含むことができる。繊維の種類は、その複合品の必要とされる防弾特性によって決まる。例えばこの繊維は、高配向超高分子量ポリエチレン繊維(UHMWPE)、高配向超高分子量ポリプロピレン繊維(UHMWPP)、アラミド繊維、ポリビニルアルコール繊維、あるいは様々な材料から作られる繊維の混合物、または一本の繊維中の様々なポリマーのブレンドを含めた組合せまたはブレンドを含むことができる。米国特許第4,457,985号明細書は、配向超高分子量ポリエチレンおよびポリプロピレン繊維について全般的に考察しており、この開示内容はこれにより本明細書と矛盾しない範囲で参照により援用される。ポリエチレンの場合、好適な繊維は、少なくとも約500,000の、好ましくは少なくとも約100万の、より好ましくは約200万〜約500万の間の重量平均分子量の高配向繊維である。伸びきり鎖ポリエチレン(ECPE)繊維として知られるこのような繊維は、例えばMeihuzen他の米国特許第4,137,394号明細書またはKavesh他の米国特許第4,356,138号明細書に記載されているポリエチレン溶液紡糸法に基づいて生産するか、あるいは独国特許第3,004,699号明細書(German Off.No.3,004,699)、英国特許出願公開第2051667号明細書、特に1981年4月30日出願のKavesh他の米国特許出願第259,266号明細書、および米国特許出願第359,019号(第259,266号の一部継続出願)明細書に記載されているように溶液から紡糸してゲル構造体を形成することができる(1982年11月10日公開の欧州特許出願公開第A64,167号明細書参照)。
【0027】
本明細書中で使用される用語ポリエチレンは、少量の鎖分岐か、または主鎖炭素原子100個当たりの変性単位が5個以下のコモノマーを含有することができ、また約25重量%以下の1種類または複数種類の高分子添加剤、例えばアルケン−1−ポリマー、具体的には低密度のポリエチレン、ポリプロピレン、またはポリブチレン、主モノマーとしてモノオレフィンを含有するコポリマー、酸化ポリオレフィン、グラフトポリオレフィンコポリマー、およびポリオキシメチレン、あるいは低分子量添加剤、例えば一般にそれと混合される酸化防止剤、滑剤、紫外線遮蔽剤、着色剤などをそれと混ぜた状態で含有することもできる、大部分が線状のポリエチレンを意味するものとする。
【0028】
その繊維形成技術、延伸比および温度、ならびに他の条件によっては、ポリエチレン繊維に様々な特性を付与することができる。これら繊維のテナシティは、通常は少なくとも約15g/デニール、好ましくは少なくとも約20g/デニール、より好ましくは少なくとも約25g/デニール、また最も好ましくは少なくとも約30g/デニールである。
【0029】
同様に、インストロン引張試験機により測定されるこれら繊維の引張弾性率は、通常は少なくとも約300g/デニール、好ましくは少なくとも約500g/デニール、より好ましくは少なくとも約1,000g/デニール、また最も好ましくは少なくとも約1,500g/デニールである。一般にこれらの引張弾性率およびテナシティの最高値は、溶液紡糸法またはゲル紡糸法を使用することによってのみ得ることができる。これに加えて、多くのECPE繊維は、それらを形成したポリマーの融点よりも高い融点を有する。したがって、例えば500,000、100万、および200万の超高分子量ポリエチレンが、一般にバルクで134℃の融点を有するのに対し、これらの材料から作られるECPE繊維は、最高145℃以上の融点を有する。融点の上昇は、バルクポリマーと比べて繊維のより高い結晶配向を反映する。
【0030】
これら改良された防弾品は、少なくとも約500,000の重量平均分子量、少なくとも約500の弾性率、および少なくとも約15g/デニールのテナシティを有するポリエチレン繊維を使用する場合に形成される。「可撓性の本体装甲材料(Flexible Body Armor Materials)」、Fiber Frontiers ACS Conference(1974年6月10〜12日)中のJohn V.E.HansenおよびRoy C.Laibleの発表(防弾高強度繊維は、高融点と耐切断またはせん断性とを示さなければならない)、ならびにRoy C.Laible著、防弾材料および貫通機構(Ballistic Materials and Penetration Mechanics)(1980年)(ナイロンおよびポリエステルがその低融点のせいでそれらの防弾効果が限定され得ることに注意する)、ならびにRoy C.Laibleらの論文「弾丸防御への高弾性率繊維の応用(The Application of High Modulus Fibers to Ballistic Protection)」、J.Macromol.Sci.Chem.,A7(1),pp.295〜322,1973(高度な耐熱性の重要性を再度考察する)とを参照されたい。
【0031】
ポリプロピレンの場合、少なくとも約750,000、好ましくは少なくとも約100万、より好ましくは少なくとも約2百万の重量平均分子量の高配向ポリプロピレン繊維を使用することができる。超高分子量ポリプロピレンは、上記で参照した様々な参考文献で規定された技術によって、特に1981年4月30日出願の米国特許出願第259,266号およびその一部継続出願(両方ともKaveshら)明細書の技術によって妥当な高配向繊維にすることができる。ポリプロピレンは、ポリエチレンよりも結晶性がはるかに低い材料であり、またペンダントメチル基を含有するので、ポリプロピレンで達成できるテナシティ値は、ポリエチレンのその対応する値よりも一般にかなり低い。したがって、適切なテナシティは少なくとも約8g/デニールであり、好ましいテナシティは少なくとも約11g/デニールである。ポリプロピレンの引張弾性率は、少なくとも約160g/デニール、好ましくは少なくとも約200g/デニールである。このポリプロピレンの融点は、そのポリプロピレン繊維が好ましくは少なくとも約168℃、より好ましくは少なくとも約170℃の主融点を有するように、その配向工程によって一般に数度上昇する。上記パラメータ(弾性率およびテナシティ)の好ましい範囲に加えて、少なくとも約750,000の重量平均分子量を有する繊維を使用することは、最終物品において、特に防弾物品において改良された性能を得ることができるので有利である。上記C.f.Laible著、防弾材料および貫通機構(Ballistic Materials and Penetration Mechanics)、p81(糸の応力−ひずみ特性から断言されるレベルまでポリプロピレンの防弾性を持って行くような好結果の処理は開発されていない)、ならびにNTIS刊行物ADA018 958、A.L.Alesiらの論文「改良されたヘルメット構造における新材料(New Materials in Construction for Improved Helmets)」の相対的有効性(この論文中では「XP」と呼ばれる多層高配向ポリプロピレンフィルム材料(マトリクスなし)がアラミド繊維(フェノール/ポリビニルブチラール樹脂マトリクスを伴う)と対照して評価され、アラミド系は、すぐれた性能と、戦闘用ヘルメット開発にとっての問題が最小限であるという最も期待できる組合せを有すると判定された)を参照されたい。
【0032】
アラミド繊維は、主に芳香族ポリアミドから形成される。少なくとも約400g/デニールの弾性率および少なくとも約18g/デニールのテナシティを有する芳香族ポリアミド繊維は、本発明の複合材に組み込むのに有用である。例えば、E.I.du Pont de Nemours & CompanyによってKevlar(登録商標)29およびKevlar(登録商標)49の商標名で商業的に生産されており、適度に高い弾性率およびテナシティの値を有するポリ(フェニレンジアミンテレフタルアミド)繊維は、防弾複合材を形成するのに特に有用である(弾性率およびテナシティの値としてKevlar(登録商標)29は、それぞれ500g/デニールおよび22g/デニールを有し、Kevlar(登録商標)49は、それぞれ1000g/デニールおよび22g/デニールを有する)。
【0033】
ポリビニルアルコール(PV−OH)の場合、少なくとも約500,000、好ましくは少なくとも約750,000、より好ましくは約1,000,000〜約4,000,000の間の、また最も好ましくは約1,500,000〜約2,500,000の間の重量平均分子量を有するPV−OH繊維を、本発明において使用することができる。使用可能な繊維は、少なくとも約160g/デニール、好ましくは少なくとも約200g/デニール、より好ましくは少なくとも約300g/デニールの弾性率と、少なくとも約7g/デニール、好ましくは少なくとも約10g/デニール、より好ましくは少なくとも約14g/デニール、最も好ましくは少なくとも約17g/デニールのテナシティとを有する。少なくとも約500,000の重量平均分子量、少なくとも約200g/デニールのテナシティ、および少なくとも約10g/デニールの弾性率を有するPV−OH繊維は、防弾複合材を生産するのに特に有用である。このような特性を有するPV−OH繊維は、例えば1984年1月11日に出願され、本願の譲受人に譲渡されたKwonらの米国特許第569,818号明細書に開示されている方法によって生産することができる。
【0034】
ポリアゾールの場合、ポリアゾールの幾つかの好ましい実施形態は、ポリアレナゾール、例えばポリベンザゾールおよびポリピリダゾールである。好適なポリアゾールにはホモポリマーが挙げられるが、コポリマーもまた挙げられる。添加剤をポリアゾールと一緒に使用することができ、10重量%ほどまでの他のポリマー材料をポリアゾールにブレンドすることができる。ポリアゾールのモノマーを10%以上もの他のモノマーと置き換えたコポリマーもまた使用することができる。好適なポリアゾールホモポリマーおよびコポリマーは、既知の手順によって製造することができる。
【0035】
好ましいポリベンザゾールは、ポリベンゾイミダゾール、ポリベンゾチアゾール、およびポリベンゾオキサゾール、より好ましくは30gpd以上のヤーンテナシティを有する繊維を形成することができるようなこれらのポリマーである。そのポリベンザゾールがポリベンゾチアゾールである場合、好ましくはそれはポリ(p−フェニレンベンゾビスチアゾール)である。そのポリベンザゾールがポリベンゾオキサゾールである場合、好ましくはそれはポリ(p−フェニレンベンゾビスオキサゾール)、より好ましくはポリ(p−フェニレン−2,6−ベンゾビスオキサゾール(PBOと呼ばれる)である。
【0036】
好ましいポリピリダゾールは、ポリピリドイミダゾール、ポリピリドチアゾール、およびポリピリドオキサゾール、より好ましくは30gpd以上のヤーンテナシティを有する繊維を形成することができるこれらのポリマーである。幾つかの実施形態では、その好ましいポリピリダゾールは、ポリピリドビスアゾール(polypyridobisazole)である。好ましいポリ(ピリドビスオキサゾール)は、ポリ(1,4−(2,5−ジヒドロキシ)フェニレン−2,6−ピリド[2,3−d:5,6−d′]ビスイミダゾール)(PIPDと呼ばれる)である。ポリピリドビスアゾールを含めて、好適なポリピリダゾールは、既知の手順によって製造することができる。
【0037】
本発明で使用される繊維層は、撥水材料によりコーティングされてもよい。「撥水材料」とは、水性媒体による濡れに抵抗する疎水性材料を意味し、フッ素および炭素の原子を含む物質が好ましい。例えば繊維層にフッ素系材料を少なくとも部分的に塗布することができる。別法ではこのフッ素系材料は、フッ素化メタクリレートコポリマーからなる布フッ素化処理剤Zonyl(登録商標)D、またはフッ素化アクリレートコポリマーからなる布防護剤Zonyl(登録商標)8300からなる群から選択される。このようなフッ素系ポリマーおよびオリゴマーによる布の処理は当業界では普通であり、これらの化学物質には限定されない。当業熟練者は、適切な処理剤を選択することができるはずである。
【0038】
本発明で使用される撥水塗料は、原理上は水をはじき、アラミド繊維に塗布することができる任意の物質であることができ、フッ素原子および炭素原子を含む物質が好ましい。本発明の好ましい撥水塗料は、フルオロポリマーを含むもの、特にフルオロアクリレートポリマーの混合物である。ここで使用するKevlar(登録商標)布は、JPS Composites(Greenville,SC)から得られ、600デニール糸を用いて作られ、Style(S)751として供給された。S751布は、フッ素表面処理(S751−F)または非処理生機(S751−G)の布として入手できる。
【0039】
本発明で有用なオレフィン酸コポリマーには、これらに限定されないがエチレン−アクリル酸コポリマーおよびエチレン−メタクリル酸コポリマーが挙げられる。このエチレンコポリマーは、モルパーセント5%〜25%の酸コモノマー、または好ましくはモルパーセント12%の酸コモノマーを含む。
【0040】
本発明で利用されるエチレンコポリマーは無機陽イオンで中和することができる。「中和度」とは、無機対イオンを有するエチレンコポリマー上の酸基のモル比率を意味する。
【0041】
本明細書中で開示したアイオノマーコポリマーを生産するためには親の酸ポリマーを、カルボン酸部分の総当量数を基準にして少なくとも約85%、または好ましくは少なくとも約95%、またはより好ましくは少なくとも約100%中和する。中和時にアイオノマーは、1個または複数個の陽イオンを有するはずである。好適な陽イオンである金属イオンは、一価、二価、三価、多価、またはこれらから得られる混合物であることができる。有用な一価金属イオンには、これらに限定されないが、ナトリウム、カリウム、リチウム、銀、水銀、銅などのイオン、およびそれらの混合物が挙げられる。有用な二価金属イオンには、これらに限定されないがベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、銅、カドミウム、水銀、スズ、鉛、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛などのイオン、およびこれらから得られる混合物が挙げられる。有用な三価金属イオンには、これらに限定されないがアルミニウム、スカンジウム、鉄、イットリウムなどのイオン、およびそれらから得られる混合物が挙げられる。有用な多価金属イオンには、これらに限定されないがチタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、タンタル、タングステン、クロム、セリウム、鉄、およびそれらから得られる混合物などのイオンが挙げられる。金属イオンが多価である場合、米国特許第3,404,134号明細書中に開示されているように、ステアリン酸、オレイン酸、サリチル酸、およびフェノール酸のラジカルなどの錯化剤を含ませることができることに留意すべきである。本明細書中で使用される金属イオンは、好ましくは一価または二価金属イオンである。より好ましくは本明細書中で使用される金属イオンは、ナトリウム、リチウム、マグネシウム、亜鉛、およびこれらから得られる混合物からなる群から選択されるイオンである。より一層好ましくは、本明細書中で使用される金属イオンは、ナトリウムイオン、亜鉛イオン、およびこれらから得られる混合物からなる群から選択される。本発明の親の酸コポリマーは、米国特許第3,404,134号明細書中に開示されているように中和することができる。
【0042】
本明細書中で使用されるアイオノマーコポリマーは、他の不飽和コモノマーを含有していてもよい。好ましい不飽和コモノマーの特定の例には、これらに限定されないが、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソプロピル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、およびこれらの混合物が挙げられる。一般に本明細書中で使用されるアイオノマー性コポリマーは、そのコポリマーの総重量を基準にして0〜約50重量%、または好ましくは0〜約30重量%、またはより好ましくは0〜約20重量%の他の不飽和コモノマーを取り込むことができる。
【0043】
アイオノマー中の酸コモノマーの割合と共に、高レベルの無機陽イオンの中和が、そのメルトフローインデックス(MFI)または溶融粘度を規定する。ここで本発明者等は、溶融加工性の尺度としてメルトフローインデックス(MFI)を使用する。その場合、本発明者等は0.05未満のMFIを有する組成物のみを要求する。MFIは、熱可塑性ポリマーの溶融物の流れやすさの尺度である。それは、択一的な規定温度に対して規定の択一的重量の重りを介して加えられる圧力によって特定の直径および長さのキャピラリーを通って10分間に流れるグラム単位で表したポリマーの質量として定義される。この方法は、参照により本明細書中に援用されるASTM D1238中で与えられる。
【0044】
溶融流れ速度は、その試験条件での溶融粘度に反比例する。
【0045】
本発明の複合品はまた、DSM Co.(Netherlands)から入手できるDyneema HB26クロスプライ一方向性ポリエチレン繊維複合材などの1層または複数層の高強度ポリオレフィン繊維複合材を含有することもできる。
【0046】
この複合材に利用される繊維は、ハイブリッド、例えばアラミドと炭素繊維、アラミドとガラス繊維、アラミドと炭素繊維とガラス繊維、炭素繊維とガラス繊維と伸び切り鎖ポリエチレンなどを含むことができる。繊維のハイブリッド化は、コストの節減だけでなく、多くの場合、装甲構造体の性能を向上させる。アラミド繊維および炭素繊維は、ガラス繊維よりもかなり軽いことが知られている。アラミドの比弾性率はガラスのほぼ2倍であり、一方、炭素繊維の典型的な高引張強さ銘柄は、複合材の堅さがガラス繊維の3倍を超える。しかしながらアラミド繊維は、炭素繊維またはガラス繊維のどちらよりも圧縮強さが低く、一方、炭素繊維はアラミドほど耐衝撃性でない。したがってこれら2種類の材料のハイブリッドは、(1)類似のガラス繊維強化プラスチックよりも軽く、(2)全体がアラミド繊維の複合材よりも弾性率、圧縮強さ、および曲げ強さが高く、かつ(3)全体が炭素繊維の複合材よりも耐衝撃性および破壊靱性が高い複合材をもたらす。
【0047】
一実施形態では界面活性剤または湿潤助剤を、水性分散液およびエマルションに加えて撥水性アラミド布上のディウェッティングを防止する。可塑剤もまた界面活性剤として作用することができる。ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、Alkanol 6112(DuPont,Wilmington,DE)、Zonyl(登録商標)FSA(DuPont,Wilmington,DE)、1−デカノール、Surfynol(登録商標)440(Air Products,Co.,Allentown,PA)、Environgen 360(登録商標)(Air Products,Co.)、Dynol(登録商標)607(Air Products,Co.)、Aerosol OT−DG(Cytec,Co.)、Ethal EH−5(Ethox Co.)、Foryl 5999(Pulcra,Co.)、Genapol X080(Clariant Co.)、および多くの他の界面活性剤を使用することができる。本発明の撥水性塗料はまた界面活性剤であってもよく、水性分散液またはエマルションの形態で加えることができる。
【0048】
高分子量(MW=6×106g/モル)ポリエチレンオキシド、セルロース、ゼラチン、および多くの他のポリマー、シリカ、およびクレーなどの増粘剤もまた、乾燥の間の撥水アラミド布上の塗膜の均一性を容易にするために分散液およびエマルション中で使用することもできる。他の市販の増粘剤には、Rohm and Haas,Co.から入手できるAcrysol ASE−75およびAcrysol RM−6000が挙げられる。これらの増粘剤は、当業界でよく知られているように界面活性剤と混合することができる。
【実施例】
【0049】
溶融注型フィルムは、低いメルトフローインデックスの高度に中和したアイオノマーの場合には利用できないので、繊維層表面にはそれらを水性分散液の形態で塗布することができる。アイオノマーはまた可塑化することもできる。当業熟練者は任意の適切な可塑剤を選択することができ、例えば長鎖オレフィン酸またはオレフィンアルコールからなる群から選択される。
【0050】
幅12インチの繊維布のストリップにアイオノマーまたは他のポリマーの水性分散液をロッドコーティングした。これらの方法で液体層を堆積させ、次いでそれを様々な条件下で乾燥させる。これら実施例については、ここではベンチトップ上での20℃一晩を使用したが、他の事例では100℃〜150℃で数分間の乾燥オーブンを使用した。液体層の厚さは、様々なロッドサイズおよび塗料溶液の希釈レベルを選択することによって調整した。それにまた、これがKevlar(登録商標)布の重量の関数としての正確な固体塗膜重量分率を与えることになる。スロットダイ塗工、スプレイ塗工、ロール塗工、トランスファー塗工、グラビア塗工、浸漬塗工、および関連する方法を含めた多くの他の標準的な液体塗布法が適している。
【0051】
Kevlar(登録商標)織布の個々の層にその布の片面へ水性ポリマーを塗布した後に、すべてを500〜2000psiで125℃を超える温度で20分間プレス加工して多層複合品を作製した。複合品の面密度は、その試験に応じて1.6psf〜2.2psfの範囲であった。
【0052】
衝撃試験には17グレーン直円柱発射体を使用した。
【0053】
剥離試験は、20℃において剥離角90または180oで行った。報告される値は、ASTM D 1876−08を含めた各方法で得た。
【0054】
下記に示す検討で使用したKevlar(登録商標)布は、撥水フルオロカーボン処理を有した。ここで検討された繊維布は、フッ素化アクリレートコポリマーまたはフッ素化メタクリレートコポリマーで処理された。DuPontから入手したZonyl(登録商標)Dが例であり、これらの撥水フルオロカーボン処理Kevlar(登録商標)布はS751−Fとして販売されている。非処理非撥水性のKevlar(登録商標)布(S751−G)もまた、ここで使用される。すべての布は、JPS Composites,Co(Greenville SC)から得た。
【0055】
アイオノマー形態のエチレン−アクリル酸(E−AA)コポリマー(10モル%のAAコモノマー)のMichem 2960(Michelman Co.,Ohio)分散液をアイオノマー層として使用した。対イオンは、100%中和としてのカリウムであった。融点は、その低い割合の酸コモノマーのために高い(Tm=91℃)。このアイオノマーは、それがいったん乾燥状態になると190℃でのメルトフローを有しない(すなわち、表1中でメルトフローインデックス=0)。メルトフローインデックス測定前の乾燥が重要であり、真空中で120℃で12時間行った。
【0056】
他の比較例は、金属対イオンなしのエチレン−アクリル酸(E−AA)コポリマー(20モル%のAAコモノマー)であるMichem 4983(Michelman Co.,Ohio)を使用した。これは、いったん乾燥状態になると190℃で高いメルトフロー(すなわち高いメルトフローインデックス、表1)を有する低融点、低結晶性の樹脂(Tm=72℃)である。表1は、中和レベルならびに当業界で知られているようにメルトフローインデックスの値とそれらの逆相関を示す。
【0057】
表1

【0058】
表2中の実施例および比較例に対しては別の発射体を使用し、より厚い複合品について検討した。17グレーンの破片をシミュレートする発射体を、500psiでプレス加工した55〜64枚の布層を含有する複数個の2.1〜2.2ポンド/平方フィート(psf)の各複合品に衝突させた。次いで比較を容易にするためにV50の結果を厳密に2.2psfに正規化し、表2にまとめた。実施例1についてはMichem 2960(Michelman Co.,Ohioから入手した)分散液をS751F Kevlar(登録商標)布(フルオロ撥水剤処理済み)上に塗布し、125℃および500psiで20分間プレス加工して防弾複合品にした。これは水性分散液であり、そのポリマーは、上記で考察したカリウムで高度に中和されたエチレン−アクリル酸(E−AA)コポリマーアイオノマーである。この塗料溶液は、水に溶かした約50重量%の1−デカノールと10重量%のポリオキシエチレンソルビタンモノオレアートの有効成分を有するAlkanol 6112界面活性剤を含有した。2960の樹脂固形物の重量に関しては1−デカノール界面活性剤(湿潤助剤)は、フィルム乾燥後の固体フィルム重量を基準にして約10重量%存在する。この実施例から得られたV50を表2に示す。V50は、発射したうち50%の弾丸または破片が装甲設備を貫通する平均速度を、非貫通のその他の50%に対して特定する統計的尺度である。測定されるパラメータは、その角度が標的に対する発射体の傾斜角を意味するゼロ度でのV50である。
【0059】
比較例1ではPermax 200ポリウレタンエマルション塗料をS751Fに塗布し、125℃および500psi(352272kg/m2)で30分間プレス加工して防弾複合品にした。Permax 200ポリウレタンエマルション(Lubrizol Co.)は、乾燥した場合、丈夫なエラストマー性の低Tgフィルムを構成する。
【0060】
比較例2ではMichelman Co.,Ohioから入手したMichem 4983 E−AAコポリマー分散液を、S751Fに塗布し、125℃および500psiで20分間プレス加工して防弾複合品にした。これはその低レベルの中和(表1)により乾燥後に高メルトフロー樹脂になる。
【0061】
比較例3ではMichelman Co.,Ohioから入手したMichem 4983 E−AAコポリマー分散液を使用した。これは、布重量を基準にした樹脂の重量パーセントが13重量%であったことを除いて比較例3と本質的に同一である。
【0062】
実施例4ではMichem 2960が塗布された。それが非フッ素処理生機Kevlar(登録商標)布(S751−G)に塗布されたことを除いて、実施例1の場合と同じ方法でプレス加工して複合品にした。
【0063】
表2は、Kevlar(登録商標)と高度に中和された塗料との組合せが、V50値によって測定されるすぐれた防弾特性につながることを示している。
【0064】
表2


【特許請求の範囲】
【請求項1】
1枚または層状に重ね合わせた複数枚のスタックを含む耐衝撃性複合品であって、各スタックが2枚以上の繊維層を含み、少なくとも2枚の前記繊維層の間に非溶融加工性アイオノマーが配置され、前記非溶融加工性アイオノマーが少なくとも85%中和され、ASTM D1238の190℃メルトフロー試験で<0.05g/10分のメルトフローインデックスを有する、複合品。
【請求項2】
前記アイオノマーが、5モル%〜15モル%の間の酸コモノマーを含む、請求項1に記載の複合品。
【請求項3】
前記アイオノマーが、8モル%〜12モル%の間の酸コモノマーを含む、請求項2に記載の複合品。
【請求項4】
前記アイオノマーが少なくとも95%中和される、請求項1に記載の複合品。
【請求項5】
前記アイオノマーが少なくとも100%中和される、請求項1に記載の複合品。
【請求項6】
前記アイオノマーが、前記繊維層の少なくとも幾枚かにおいて前記繊維を部分的に被覆する塗料の形態である、請求項1に記載の複合品。
【請求項7】
前記アイオノマーが、前記繊維層の少なくとも2枚の間の別個の層を形成する、請求項1に記載の複合品。
【請求項8】
前記繊維層が繊維束を含み、前記束のいずれの束も厚さの少なくとも半分はアイオノマーが含浸しないままである、請求項7に記載の複合品。
【請求項9】
前記繊維層の少なくとも幾枚かが不織布を含む、請求項1に記載の複合品。
【請求項10】
前記繊維層が少なくとも部分的に製織されている、請求項1に記載の複合品。
【請求項11】
少なくとも1枚のスタックが、少なくとも1対の異なる組成の隣接した繊維層を含む、請求項1に記載の複合品。
【請求項12】
前記繊維層がポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)を含む、請求項11に記載の複合品。
【請求項13】
前記アイオノマーが、ナトリウム、カリウム、リチウム、銀、水銀、銅(I)、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、銅(II)、カドミウム、水銀、スズ、鉛、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、アルミニウム、スカンジウム、鉄、イットリウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、タンタル、タングステン、クロム、セリウム、鉄、およびこれらの組合せからなる群から選択されるイオンで中和される、請求項1に記載の複合品。
【請求項14】
前記繊維層が少なくとも部分的に撥水材料を塗布される、請求項1に記載の複合品。
【請求項15】
前記撥水材料が、少なくとも部分的にフッ素化されている材料を含む、請求項14に記載の複合品。
【請求項16】
前記フッ素化された材料が、部分フッ素化アクリレートコポリマーまたは部分フッ素化メタクリレートコポリマーである、請求項15に記載の複合品。
【請求項17】
前記アイオノマーが、乾燥重量で30%までの可塑剤、界面活性剤、およびこれらの混合物または組合せからなる群から選択される材料をさらに含む、請求項1に記載の複合品。
【請求項18】
前記可塑剤が長鎖脂肪酸である、請求項17に記載の複合品。
【請求項19】
前記可塑剤が1−デカノールである、請求項17に記載の複合品。
【請求項20】
防弾複合品の作製方法であって、
(i)防弾繊維層の片面または両面に水性アイオノマー分散液の塗料を塗布することによって第一の被覆繊維層を作製するステップ、
(ii)それによって形成された前記第一の被覆繊維層を20℃〜200℃の間の温度で実質的に乾燥させるステップ、
(iii)ステップ(i)および(ii)の工程によって作製される第二の被覆繊維層を、前記アイオノマー塗膜が前記第一および第二の繊維層の間に少なくとも配置されるように置くことによって複合布を形成するステップ、
(iv)必要な枚数の被覆繊維層の層を有する多層複合品が形成されるまで、ステップ(iii)のやり方で前記複合繊維層上に後続の被覆繊維層を置くステップ、および
(v)任意選択により、上記ステップ(iv)で形成された前記複合品を約120〜200℃の間の温度で約200〜8000ポンド/平方インチの圧力で約5〜30分の間プレス加工するステップ、
を含み、
この場合、多層複合布中の固体アイオノマーの重量分率は5〜16%の間である、
方法。
【請求項21】
前記複合品が15枚〜200枚の間の被覆繊維層を含むまで、前記ステップ(iv)が繰り返される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記複合品が40層〜80層の間の被覆された布を含む、請求項21に記載の方法。

【公表番号】特表2013−510746(P2013−510746A)
【公表日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−539946(P2012−539946)
【出願日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【国際出願番号】PCT/US2010/056148
【国際公開番号】WO2011/062820
【国際公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】