説明

耐震ケーブル支持方法及びその支持装置

【課題】地盤沈下に伴いケーブル類を引き出し延伸するとき、巻回状に保持した余長分の解き作用を確実にし管路内への引き込みを円滑にし、ケーブル類の切断を防止する。
【解決手段】管路W内に引き込む巻回状の余長分のケーブル類Cを抱持する断面でほぼ溝形を呈し、左右の側壁に撓み溝5を配列した長尺状のケーブルホルダー1と、ケーブルホルダー1自体のターン形態を保持する保形手段6と、ケーブルホルダー1の開口部をターン形態の内方に向けた状態で、余長分のケーブル類Cを収容保持する収容場所の壁面に固定する固定手段10とを備える。ケーブルホルダー1は、開口縁における開口幅員をケーブル類Cの外径に比し小さくし、開口部における弾発作用でケーブル類Cを係脱自在にする。保形手段6は、ケーブルホルダー1の奥底部の外部に、保形芯材8を装入する保形部7を突設形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は例えば地震時に生じた管路の沈下等によって発生し得る管路内に収納支持されている各種ケーブル類の切断を、ハンドホール等内に予め設定されている余長部分を自動的に解放、延伸することで防止・予防できる耐震ケーブル支持方法及びその支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地下に埋設されるハンドボール等を介して管路を敷設し、管路内に各種のケーブル類を収納挿通させるケーブル埋設工法において、軟弱地盤による支持形態の変化、地震等による液状化等によって地下に埋設されている管路が沈下、移動することがある。この沈下、移動等に伴い、管路内に収納支持されている光ファイバー、動力・通信線等の各種ケーブル類が牽引、引き込まれるから、これらの引き込み量を予め想定し、その想定した引き込み長さに対応した余長分を例えばハンドホール等の内部に設定し、例えば螺旋巻回状に保持している。
【0003】
その保持形態は、例えばハンドホールの内部壁面に突設配置した複数のピン状の支持金具を大きく巻回するように支持すると共に、脱落を防止すべくそれらの支持金具に縛結固定している。この保持形態によると、ハンドホールに連結した管路内に配線されているケーブル類が引き込まれたとき、支持金具との縛結部位で引き込みが中断し、設定された余長分が管路内に十分に引き込まれず、切断されることがある。
【0004】
こうした点を解消すべく、例えば特許文献1にあるような「ケーブル耐震ソリューション:耐震受金物」が提案されている。この耐震受金物は、例えばハンドホール内の側壁面に突設固着した対となるアーム状の受金物相互間にケーブル類を巻回状に支持すると共に、側壁面に固定した金物取付部に、断面でほぼC字状の複数の結束部を連結し、ケーブル類における巻回された余長部分をこの結束部夫々に挿入することで支持して成っている。そして地盤沈下その他によって管路内にケーブルが引き込まれる力が作用したときには、巻回された余長部分が結束部から外れ、余長の輪が解けて管路内に引き込まれるものとしてある。
【特許文献1】日本コムシス株式会社発行の「ケーブル耐震ソリューション:耐震受金物」カタログ
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところがこのような耐震受金物によると、結束部へのケーブル類の挿入部分にはケーブル自体の滑りを阻止して容易に外れるように瘤状の滑り防止部を形成してあり、また受金物に対するケーブルの支持部分を受金物にスライドするように固定している。そのためケーブルに対して引き込み力が作用したとき、受金物とのスライドと結束部からの結束外れとが円滑になされなければ、結束の輪が解けずに受金物に絡むことがある。受金物に絡んでしまうと、予め設定されている余長部による引き込みが不十分となり、ケーブル類が切断される余地があった。
【0006】
そこで本発明は叙上のような従来存した諸事情に鑑み創出されたもので、その目的は例えば地盤沈下に伴いケーブル類を引き出し延伸するとき、巻回状に保持される余長分の巻回の解き作用を確実にして管路内へのケーブル類の引き込みを円滑にし、ケーブル類の切断を防止することにある。また余長分の巻回状態の支持安定性、支持作業の容易性を図れる耐震ケーブル支持方法及びその支持装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するため、本発明に係る耐震ケーブル支持方法にあっては、管路W内に収納挿通されるケーブル類Cを管路W内に引き込ませるよう予め余長分を設定し、その余長分を鉛直方向で巻回保持しておくもので、巻回されたターン部分のほぼ上半分を、下方開口の断面で溝形の長尺状のケーブルホルダー1内に挿通支持し、管路W内のケーブル類Cの引き込み力でターン部分をケーブルホルダー1から強制的に直接に取り外し、伸張させることを特徴とする。
ターン部分のほぼ上半分は長さ調整自在な直線部分と、この直線部分の両端でほぼ四半円形となる湾曲部分とで全体が半長円形を呈し、ほぼ下半分はフリーな状態で垂れ下がり状にしてある。
また、耐震ケーブルの支持装置にあっては、管路W内に引き込まれる巻回状の余長分のケーブル類Cを抱持する断面でほぼ溝形を呈し、左右の側壁に撓み溝5を配列して成る長尺状のケーブルホルダー1と、ケーブルホルダー1自体のターン形態を保持する保形手段6と、ケーブルホルダー1を、このケーブルホルダー1の開口部をターン形態の内方に向けた状態で、余長分のケーブル類Cを収容保持する収容場所の壁面に固定する固定手段10とを備えることを特徴とする。
ケーブルホルダー1は、ホルダー本体2部分の内径はケーブル類Cの外径に比しやや大きく、開口縁における開口幅員はケーブル類Cの外径に比し小さくしてある。
保形手段6は、ケーブルホルダー1におけるホルダー本体2に、ホルダー本体2の外方に突設した保形部7を形成し、この保形部7内に保形芯材8を装入して成る。
固定手段10は、ケーブル類Cを収容する収容場所の壁面に突設配置した支持アーム材11と、この支持アーム材11にケーブルホルダー1を固定する固定部材12と、余長分を複数のターンとするときの複数のケーブルホルダー1を隣接状態で配置固定する隣接配置材15とから成る。
隣接配置材15は、隣接配置される複数のケーブルホルダー1の保形部7に開穿した連結孔16に貫挿する連結ボルト材17と、この連結ボルト材17にネジ止めされて夫々のケーブルホルダー1の保形部7を位置決めさせる位置決めナット材18とを備える。
ケーブルホルダー1は、ターン部分の前後で分離して配置し、保形部7に装入される保形芯材8によって連結できる。
【0008】
以上のように構成された本発明に係る耐震ケーブル支持方法及びその支持装置にあって、管路W内に引き込み可能にして収納場所に収納設定したケーブル類Cの巻回状態の余長分は、例えば地盤沈下等によって管路W内に引き込まれるとき、ケーブルホルダー1の開口部から直接に取り出され、ターン部分の輪が自動的に解けて引き込みに追随する。
下方開口の断面で溝形の長尺状のケーブルホルダー1は、巻回されたターン部分のほぼ上半分を挿通支持しており、管路W内からのケーブル類Cの引き込み力が作用すると、ターン部分をケーブルホルダー1からターン部分の内方側に向けて強制的に直接に取り外させ、引き込み力に追随して伸張させる。このときのケーブルホルダー1からのケーブル類Cの取り外しは、ケーブルホルダー1において撓み溝5が左右両側壁を所定間隔毎に分断していることで、その分断部分夫々が順次に拡開し、ケーブル類Cを円滑にケーブルホルダー1内から取り出させる。そして、ターン部分の輪の解きは、ターン部分の上半分が支持され、下半分がフリー状態であることで引き込み作用に円滑に追随する。
保形手段6は、左右の側壁に撓み溝5があることでターン形態に対応して湾曲されるケーブルホルダー1の直線形態部分、湾曲形態部分夫々を、その形態のままで保形する。保形手段6の保形芯材8は、ケーブルホルダー1の外方で突設される保形部7に装入されていることでケーブルホルダー1内で支持するケーブル類Cの邪魔にならない。
固定手段10はターン状に支持したケーブル類Cの余長分をケーブルホルダー1を介して収容場所の壁面にターン形態を維持したままで保持し、また複数のターン分を隣接状に固定支持させる。
隣接配置材15は、その連結ボルト材17を複数のケーブルホルダー1における保形部7で貫挿し、位置決めナット材18にてネジ止めされることで複数で隣接されるケーブルホルダー1を隣接方向で並列状にして位置決めし、支持固定させる。
ターン部分で前後に分離させて配したケーブルホルダー1相互を位置決めナット材18によって連結することで、ターン部分を所定長さに設定させ、余長分としての長さを調整設定させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明は以上説明したように構成されているため、例えば地盤沈下に伴いケーブル類Cを引き出し延伸するとき、巻回ターン状に保持される余長分の巻回解き作用を確実にして、互いに絡まることなく管路W内へのケーブル類Cの引き込みを円滑にする。ターン部分の捻りにかかわらず円滑に引き出されるから管路W内への引き込みの障害とならず、ケーブル類Cの切断を防止できる。また余長分の巻回状態の支持安定性、支持作業の容易性を図ることができ、作業を能率的に遂行できる。
【0010】
すなわちこれは本発明において、管路W内に引き込ませるケーブル類Cの余長分を鉛直方向で巻回保持しておくとき、巻回されたターン部分のほぼ上半分を、下方開口の断面で溝形の長尺状で、左右の側壁に撓み溝5を配列して成るケーブルホルダー1内に抱持させて挿通支持し、またこのケーブルホルダー1の開口部をターン形態の内方に向けた状態で、余長分のケーブル類Cを収容保持する収容場所の壁面に固定手段10によって固定したからである。これによって、必要とする余長分をそのターン回数の設定で確保でき、引き出されるときのケーブルホルダー1からの確実な取り出し・取り外し、管路W内への引き込みの円滑化等によって、例えば地盤沈下時にケーブル類Cが引き込まれるときの切断等を防止し、その通信等を確保する。
【0011】
また、ケーブルホルダー1は、管路W内に引き込まれる巻回状の余長分のケーブル類Cを抱持する断面でほぼ溝形を呈し、左右の側壁に撓み溝5を配列して成る長尺状であるから、余長分を例えばターン状の巻回状態で確実に保持できる。しかもケーブルホルダー1自体は配列された撓み溝5によって所定間隔毎に半ば分断されており、その分断部分夫々で独自の弾発性を発揮し、抱持したケーブル類Cが取り外されるとき、分断部分夫々が順次に拡開して巻回されたターン部分を円滑に解き、ケーブル類Cの管路W内への引き込みに互いに絡まることなく追随する。そればかりでなく、ターン部分のケーブルホルダー1内への抱持作業に際し、ケーブル類Cをケーブルホルダー1の開口部から直接に強制的にでも装入すればよく、作業を能率的に遂行できる。
【0012】
余長分として巻回したターン部分は、そのほぼ上半分は長さ調整自在な直線部分と、この直線部分の両端でほぼ四半円形となる湾曲部分とで全体が半長円形を呈し、ほぼ下半分はフリーな状態で垂れ下がっているから、ケーブルホルダー1の開口部がターン部分の内方に向けられていることと相俟ち、管路W内への引き込み時にはターン部分の輪を迅速に解くことができる。
【0013】
ケーブルホルダー1には、ケーブルホルダー1自体のターン形態を保持する保形手段6を設けてあるから、抱持したケーブル類Cを巻回状に保持するときの直線部分、曲線部分夫々のターン形状を保持できる。この保形手段6はホルダー本体2に突設した保形部7内に保形芯材8を装入してあるから、ホルダー本体2と一体化され、そのターン形態を確実に維持する。また、保形部7から外出させた保形芯材8自体は、ケーブルホルダー1を分離配置したときの相互間を連結でき、例えば巻回収容するときの直線状部分を任意の長さに設定でき、余長分の長さ調整に対応できる。
【0014】
ケーブルホルダー1自体は固定手段10を介して収納場所例えばハンドホールH内の壁面等に固定でき、隣接配置材15によって、複数の並列したターン形態とするときの相互間の隣接配置を確実に保持できる。このときの隣接配置材15は、連結ボルト材17を複数のケーブルホルダー1における保形部7で連結孔16を経て貫挿し、位置決めナット材18にてネジ止め位置決めさせるから、複数で隣接されるケーブルホルダー1を隣接方向で並列状にして支持固定できる。
【0015】
尚、上記の課題を解決するための手段、発明の効果の項夫々においての符号は、図面中に記載した構成各部を示す部分との参照を容易にするために付記した。本発明は図面中の符号によって示された構造・形状等に限定されない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下図面を参照して本発明を実施するための最良の一形態を説明する。図において示される符号1は長尺状のケーブルホルダーであり、例えば所定容積、形状、構造のハンドホールH内で、ハンドホールHの側壁に支持される。ケーブルホルダー1自体は、光ファイバーの如き通信用ケーブル、動力用ケーブルの如きケーブル類Cを抱持する断面でほぼΩ字形を呈する溝構造で、開口部を経て直接にケーブル類を出し入れ可能にすると共に、その側壁部に開口縁から連続した多数のスリット状の撓み溝5を形成して成る。すなわちケーブルホルダー1は、断面でほぼ円形を呈するケーブル類Cを収納するように、ホルダー本体2部分の内径はケーブル類Cの外径に比しやや大きく、開口縁における開口幅員はケーブル類Cの外径に比し小さくしてある。そしてケーブルホルダー1の開口部が下方に向けられている状態では、挿入支持されたケーブル類Cが自重等によってはケーブルホルダー1から外出せず、強制的に抜き出すような直接の取り外しによって開口部が拡開され、直接に取り出せるようにしてある。
【0017】
ケーブルホルダー1の開口縁には、このケーブルホルダー1内外で直接にケーブル類Cを出入りさせるよう、ケーブルホルダー1の内部方向にいくらか窄ませ、更に縁部自体を外方向に反り返り状にすることで案内部3を形成してもよい。案内部3形状は、ケーブルホルダー1における左右の開口部縁自体を断面でほぼ円形となる瘤状としてもよく、要はケーブル類Cの円滑な出し入れ、出し入れ時のケーブル類Cの損傷等を回避させれば足りる。
【0018】
ホルダー本体2の側壁に形成された撓み溝5は、図示にあってはほぼ等間隔、例えば間隔を20〜40mm程度で、溝幅を2〜5mm程度でケーブルホルダー1の左右の側壁全域に亘って配列されている。この撓み溝5は、ケーブルホルダー1自体の開口部縁からの深さがホルダー本体2における深さ乃至内径のほぼ3/5程度に設定されており、ケーブルホルダー1を図2に示すようにその長さ方向でケーブルホルダー1の開口部側に湾曲させる。またケーブルホルダー1自体を撓み溝5毎に半ば分割させ、後述するケーブルホルダー1からのケーブル類Cの直接の抜け出しの円滑性をも配慮する。尚、撓み溝5自体の深さ、幅員、更には撓み溝5相互の配列間隔等は図示例に限定されず、適宜に選定可能である。
【0019】
また、このケーブルホルダー1には、ケーブルホルダー1自体のターン形態例えば直線状、湾曲状等の姿勢・体勢を保持する保形手段6が設けられている。図示例の保形手段6は、ケーブルホルダー1におけるホルダー本体2の奥底部(開口部側との反対側)に、ホルダー本体2の外方に場合によっては括れ部分を介して膨出状に突設した筒状あるいは溝状等の保形部7を形成し、この保形部7内に保形芯材8を装入して成る。保形部7は断面でほぼ矩形状を呈し、保形芯材8は保形部7の内法幅員に相当する外径を有する棒状、線状等の長尺材とする。保形芯材8自体は例えば作業員の手作業でケーブルホルダー1と共に強制的に湾曲でき、その湾曲状態をそのままで維持できる程度の可撓性と剛性とを有する例えばステンレス鋼棒材である。尚、この保形芯材8は作業現場においての現場状況に対応して手作業等で湾曲可能となるようにせずに、工場サイトで予め機械的加工で湾曲させておくこともある。
【0020】
このケーブルホルダー1は、例えば所定のハンドホールH内にケーブル類Cの余長分を設定するときに、その余長分を巻回(ターン)した状態で支持して、ハンドホールHの側壁に固定手段10によって固定される。このための固定手段10は、ハンドホールHの側壁に突設配置する支持アーム材11と、この支持アーム材11にケーブルホルダー1を固定する固定部材12と、余長分を複数のターンとするときの複数のケーブルホルダー1を隣接状態で配置固定する隣接配置材15とを備える。
【0021】
支持アーム材11は、ハンドホールHの側壁面から所定長さで例えばピン状、ロッド状、バー状、プレート状等に突出して設けられている。図示にあってはハンドホールHの側壁に鉛直方向に沿って固定されている受け金具Pにおける多数の取付孔の任位置に係合することでハンドホールH内に突出されている。もとより、この支持アーム材11は側壁に直接に配置固定されることもある。
【0022】
固定部材12は図5に示すように、支持アーム材11にケーブルホルダー1を締結固定する紐・バンド・細帯・番線状に形成されている。締結するに際し、支持アーム材11下面に当接状態であてがわれたケーブルホルダー1を、例えば保形部7に開穿した支持孔13に固定部材12を挿通することで縛結固定する。この固定部材12は、保形部7を介してホルダー本体2を吊り下げ状にして支持アーム材11を1回乃至複数回で囲繞するように支持孔13を挿通させ、固定部材12自体に形成してある複数列のラチェット歯によるスライド固定、あるいは捻り、縛結等によって固定すれば足りる。尚、保形部7内に装入される保形芯材8は固定部材12による支持部位では省略される。
【0023】
また、図示を省略したがホルダー本体2の左右側壁部分の撓み溝5に挿通することでケーブルホルダー1内にケーブル類Cの開口部側で挿通空域を確保して支持アーム材11に固定することも可能である。すなわちケーブルホルダー1の開口部側には、ケーブル類Cの直接の出し入れを可能な状態にしてケーブルホルダー1を支持アーム材11に締結固定する。
【0024】
ケーブル類Cを複数回でターンして余長分を設定するとき、その複数のターン夫々毎に保持するケーブルホルダー1を隣接状態で保持する隣接配置材15が用意されている。図示例の隣接配置材15は、図6に示されるように隣接配置される複数のケーブルホルダー1の保形部7に開穿した連結孔16に貫挿する連結ボルト材17と、この連結ボルト材17にネジ止めされて夫々のケーブルホルダー1の保形部7を位置決めさせる位置決めナット材18とを備える。この隣接配置材15は、ケーブル類Cを巻回状にターンさせるときの1ターン毎のケーブルホルダー1においてのケーブルホルダー1の両端部、中央部等に位置決めさせて隣接するケーブルホルダー1相互を貫挿させることで配装する。ケーブルホルダー1相互の間隔を維持することで、ケーブルホルダー1からケーブル類Cの余長分が取り外されるときのケーブルホルダー1の振動、ぶれその他を阻止し、円滑な引き出しを可能にする。
【0025】
そして、連結孔16は前記支持孔13と兼用したり、代用したりできる。連結ボルト材17は隣接するケーブルホルダー1全体の幅員に比し長く設定される。位置決めナット材18は、図示例ではケーブルホルダー1における保形部7の両側位置でケーブルホルダー1毎に対状で連結ボルト材17にネジ込まれて、保形部7両側面に圧止している。尚、保形部7内に装入される保形芯材8は隣接配置材15による支持部位では省略される。
【0026】
また、図示を省略したがケーブルホルダー1相互間で嵌め込み式となる隣接配置材とすることもできる。例えば保形手段6の端部に隣接方向に沿って固定される筒状の連結筒部の一端開口に、隣接する連結筒部の他端開口内に好もしくはやや強制的に挿入される連結突部を固着して成る。ケーブル類Cの各ターン部分を保持するケーブルホルダー1を隣接して支持アーム材11に固定するとき、ケーブルホルダー1の保形湾曲部分端に位置する支持アーム材11端の嵌め込み式の隣接配置材相互を、連結筒部、連結突部の雌雄の嵌め合いで連結し、ケーブルホルダー1相互を隣接配置する。
【0027】
更に、図示を省略したが、例えば2乃至3ターンの所定の複数ターン数に対応したケーブルホルダー1数を予め複数連にして連結構成しておくも可能である。例えば所定の隣接数に対応したケーブルホルダー1において、その複数のケーブルホルダー1の端部相互を連結片等によって連結固定して複数連に形成する。
【0028】
図7においては、ケーブル類Cのターン形態における直線部分の長さを調整可能にする例が示されている。すなわちケーブルホルダー1の支持形態時の上位に位置する直線部分で引き延ばし延長配置する。図示のように、所定長さのケーブルホルダー1を適宜に湾曲させて収納場所の巻回収納部の前後に配置すると共に、この前後のケーブルホルダー1相互を保形芯材8によって連結し、必要によって剥き出し状の保形芯材8を収納場所で適当に支持固定する。
【0029】
尚、図示を省略したが、直線部分位置で前後に配したケーブルホルダー1相互の端部を、相互に重なり状に互いにスライド自在にして重ね合わせて接続し、固定支持することもできる。そのため例えばこのスライド重なり部分のケーブルホルダー1における保形手段6の保形芯材8部分を露出しておき、この露出部分をケーブルホルダー1の開口部とは反対側位置で互いに所定長さで重ね合わせて接合してもよい。また保形芯材8代用の剛性材によって前後に配したケーブルホルダー1相互を連結してもよい。
【0030】
次にこれの使用の一例を説明する。例えば橋梁の支持地盤、軟弱地盤その他の地盤沈下が予想される場所その他に関連して布設される管路Wにおいて、その管路W内に収容される光ファイバーの如き各種のケーブル類Cの余長分を収納する例えばハンドホールH内で、その余長分を鉛直方向に沿って設定支持する。
【0031】
すなわちハンドホールH内の側壁面に突設支持した支持アーム材11に、余長分のターン数に対応した数のケーブルホルダー1を固定部材12を介して固定すると共に、隣接するケーブルホルダー1相互を隣接配置材15を介して配置固定し、ケーブルホルダー1の開口部は鉛直方向の下方に、すなわちターン部分の内方に向ける。このとき余長分の巻回部分であるターン部分の約上半分に対応するようケーブルホルダー1を、直線部分と、この直線部分の両端でほぼ四半円形となる湾曲部分との全体が半長円形を呈するように形作る。一方、ハンドホールHに接続される管路Wとの挿通部分からの余長分となるターン部分を螺旋状に捻りながら、ターン部分の上半分はケーブルホルダー1内に、その開口部から開口部を強制的にでも拡開しながら直接に挿入し、下半分はフリーな状態で垂れ下がり状にしておく。また余長分の両端は、収納場所である例えばハンドホールH内の底部近傍位置の下部に開口形成された管路W口を経て管路W内のケーブル類Cに連続している(図1、図2参照)。
【0032】
この支持状態で例えば地盤沈下等でケーブル類Cが牽引されると、管路W内へのケーブル類Cの引き込み力でケーブル類Cはスライドすることなくケーブルホルダー1の開口部から直接に引き出され、順次に伸張されて管路W内に引き込まれる。すなわち、図2に示すように第1段階では引き込まれる管路W口のケーブル類C部分が引き込まれ、第2段階ではその管路W口の反対側に位置するケーブルホルダー1の湾曲した端部に保持されたケーブル類C部分が下方に離脱する。第3段階ではケーブルホルダー1の直線部分で保持されたケーブル類C部分が離脱し、第4段階では管路W口側におけるケーブルホルダー1の湾曲した端部に保持されたケーブル類C部分が下方に離脱し、1ターン分のケーブル類Cの輪が解けて伸張する。次いで同様にして隣接する次の1ターン分のケーブル類Cの輪が解けて伸張し、ターン部分が順次に解けて必要長さの余長分が引き込まれる。尚、このとき、ケーブル類Cに付与された捻りは十分に長い管路W内のケーブル類Cによって吸収される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明を実施するための最良の形態を示す一部切欠斜視図である。
【図2】同じく支持時の全体の正面図である。
【図3】同じくケーブルホルダーの一部切欠の要部正面図である。
【図4】同じく断面図である。
【図5】同じくケーブルホルダーの支持部材に対する支持形態を説明する要部正面図である。
【図6】同じく複数のケーブルホルダーを隣接支持するときの説明概略図で、その(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図7】ケーブルホルダーを延長状態で使用支持するときの正面図である。
【符号の説明】
【0034】
C…ケーブル類 H…ハンドホール
P…受け金具 W…管路
1…ケーブルホルダー 2…ホルダー本体
3…案内部 5…撓み溝
6…保形手段 7…保形部
8…保形芯材
10…固定手段 11…支持アーム部材
12…固定部材 13…支持孔
15…隣接配置材 16…連結孔
17…連結ボルト材 18…位置決めナット材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管路内に収納挿通されるケーブル類を管路内に引き込ませるよう予め余長分を設定し、その余長分を鉛直方向で巻回保持しておく耐震ケーブル支持方法であって、巻回されたターン部分のほぼ上半分を、下方開口の断面で溝形の長尺状のケーブルホルダー内に挿通支持し、管路内のケーブル類の引き込み力でターン部分をケーブルホルダーから強制的に直接に取り外し、伸張させることを特徴とする耐震ケーブル支持方法。
【請求項2】
ターン部分のほぼ上半分は長さ調整自在な直線部分と、この直線部分の両端でほぼ四半円形となる湾曲部分とで全体が半長円形を呈し、ほぼ下半分はフリーな状態で垂れ下がり状にしてある請求項1に記載の耐震ケーブル支持方法。
【請求項3】
管路内に引き込まれる巻回状の余長分のケーブル類を抱持する断面でほぼ溝形を呈し、左右の側壁に撓み溝を配列して成る長尺状のケーブルホルダーと、ケーブルホルダー自体のターン形態を保持する保形手段と、ケーブルホルダーを、このケーブルホルダーの開口部をターン形態の内方に向けた状態で、余長分のケーブル類を収容保持する収容場所の壁面に固定する固定手段とを備えることを特徴とする耐震ケーブルの支持装置。
【請求項4】
ケーブルホルダーは、ホルダー本体部分の内径はケーブル類の外径に比しやや大きく、開口縁における開口幅員はケーブル類の外径に比し小さくしてある請求項3に記載の耐震ケーブルの支持装置。
【請求項5】
保形手段は、ケーブルホルダーにおけるホルダー本体に、ホルダー本体の外方に突設した保形部を形成し、この保形部内に保形芯材を装入して成る請求項3または4に記載の耐震ケーブルの支持装置。
【請求項6】
固定手段は、ケーブル類を収容する収容場所の壁面に突設配置した支持アーム材と、この支持アーム材にケーブルホルダーを固定する固定部材と、余長分を複数のターンとするときの複数のケーブルホルダーを隣接状態で配置固定する隣接配置材とから成る請求項3乃至5のいずれかに記載の耐震ケーブルの支持装置。
【請求項7】
隣接配置材は、隣接配置される複数のケーブルホルダーの保形部に開穿した連結孔に貫挿する連結ボルト材と、この連結ボルト材にネジ止めされて夫々のケーブルホルダーの保形部を位置決めさせる位置決めナット材とを備える請求項3乃至7のいずれかに記載の耐震ケーブルの支持装置。
【請求項8】
ケーブルホルダーは、ターン部分の前後で分離して配置し、保形部に装入される保形芯材によって連結できる請求項3乃至7のいずれかに記載の耐震ケーブルの支持装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2007−209051(P2007−209051A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−21633(P2006−21633)
【出願日】平成18年1月31日(2006.1.31)
【出願人】(000151184)株式会社土井製作所 (21)
【Fターム(参考)】