説明

耕耘装置

【課題】 藁等の残渣物を確実に圃場内にすき込む耕耘装置を提供する。
【解決手段】 耕耘装置1は、機体2の進行方向と直交して水平方向に延びる耕耘爪軸11に耕耘爪20を有した耕耘ロータ10を備える。耕耘爪20は、取付基部から連続して延びる縦刃部23及び横刃部25を有し、縦刃部23から横刃部25にかけて回転方向と逆向きに湾曲するとともに、横刃部25が一方側に湾曲し、取付基部の他方側の面から一方側に湾曲した横刃部25の先端までの先曲げ高さが100mm以上あり、横刃部25の一方側に湾曲した屈曲部の曲率半径が先曲げ高さと略同等の寸法を有する。耕耘爪軸11の長さ方向に隣接して装着された耕耘爪20は、その横刃部25が対向する他の横刃部25と90°の位相差角度を有して配置され、かつ耕耘爪軸11の長さ方向に対して螺旋状に配列され、対向する横刃部同士の重なり代が先曲げ高さの1/2以上有る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耕耘爪を有した耕耘ロータを回転させながら進行して耕耘作業を行う耕耘装置に関し、特に、圃場に存在する稲株、藁、麦桿、草等を圃場内にすき込むのに適した耕耘装置に関する。
【背景技術】
【0002】
圃場に存在する稲株、藁、麦桿、草等を圃場内にすき込むと、これらの腐植が促進されてよりよい土壌が作られることが知られている。このすき込み作業を手作業で行うと重労働であり、圃場が広大になるとなおさらである。このため、このすき込み作業を機械化した耕耘装置が開発されている。
【0003】
この耕耘装置60は、図10(a)(側面図)に示すように、機体の進行方向と直交して水平方向に延びる耕耘爪軸11を軸支し、この耕耘爪軸11の長さ方向に所定間隔をおいた複数箇所に、同じ軸周面から放射方向にフランジタイプの爪取付フランジ61を突設し、爪取付フランジ61に、縦刃部63及び横刃部64を有する耕耘爪62を、横刃部64の突出方向が外側と内側に向くものをそれぞれ180°の取付け角度(位相差)で1組ずつ、計4本装着すると共に、隣接する爪取付フランジ61に装着された二点鎖線で示す耕耘爪62'と耕耘爪軸11の軸周方向に位相差θ(図面では34°)を設けて配設している。耕耘爪62の横刃部64の突出方向が異なる耕耘爪間の取付け角度α、βは73.6°と106.4°であり、このように構成された耕耘ロータ65が1回転するときの各耕耘爪62の打ち込み展開図は、図10(b)に示す通りである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この打ち込み展開図の斜線で示した部分を代表して見てみると、横刃部の突出方向が対向する耕耘爪62の耕耘ピッチは、108°、72°、108°と不規則であるため、耕耘された土は不均一となり、またすき込まれた藁等の残渣物の上に移動する土も不均一となって、残渣物が露出する場合が生じる。そこで、耕耘された土が均一になるように、横刃部が向い合う耕耘爪の位相差(リード角)を全て90°にしようとすると、爪取付フランジに4本の耕耘爪62を取り付けることができなくなり、また耕耘爪62を耕耘爪軸の長さ方向に螺旋状に配列すると、耕耘された土が耕耘ロータの一方側に偏ってしまう。そこで、耕耘爪62を耕耘爪軸の長さ方向に対し若干内盛傾向となる山形配列にすると、ロータ全体の所要動力や機体振動が大きくなる。
【0005】
また前述した耕耘ロ−タを、機体の前進速度0.42m/s(1.5km/hr)、耕耘爪軸11の回転数157rpm、耕耘ピッチ159mmの条件下で、稲刈跡圃場で耕耘作業を行うと、図11に示すように、耕耘爪62と耕耘爪62の間隔が、稲株40の大きさ(例えば、φ7cm)より大きくなるところが生じて、耕耘爪による埋込みができず、稲株40が反転されずに圃場表面に残るとう問題が生じる。
【0006】
そこで、耕耘ピッチがより狭くなるようにPTO変速装置を変速して、耕耘ロータの回転速度を上げることが考えられる。しかしながら、耕耘ロータの回転速度を大きくすると、負荷が増大するため、速度の増速には限界がある。つまり、前述した条件の耕耘ピッチ(159mm)を大幅に小さくすることは難しいのが現状である。
【0007】
また機体進行方向に対して横方向に打ち込まれる耕耘爪62の先端部間は、すきまが生じたり、重なりあってすきまが生じなったりするが、重なりあうときの重なり代の大きさは小さい。このため、耕耘爪軸に藁や草等が絡み易いという問題が生じる。
【0008】
一方、耕耘ロータに取り付けられた耕耘爪は、取付基部の他方側の面から一方側に湾曲する横刃部の先端までの先曲げ高さが低いため、圃場に存在する藁等の一部が残り、また横刃部によって放擲された土はすき込まれた藁等の上に移動するが、横刃部の曲率半径は小さいために横刃部による土の放擲量が少なくなって藁等が露出する場合がある。さらには、長めの縦刃部分に藁等がまとわりつき、土と一緒にダンゴ状になると耕耘作業自体が不可能になる場合もありうる。
【0009】
その結果、圃場の表面に藁等の残渣物が残り、この残渣物を処理しなければ後作業に支障が生じる場合が多い。そこで、耕耘作業の後に残渣物の焼却処理(野焼き)が行われると、煙や粉塵等が発生して拡散して周囲の環境に悪影響が及ぶという問題が生じる。
【0010】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、耕耘爪軸に絡む藁等の量が少なく、ロータ全体の所要動力や機体振動が小さく、藁等の残渣物を確実に圃場内にすき込んで、周囲の環境に悪影響を及ぼさない環境保全型の耕耘装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明の耕耘装置は、機体の進行方向と直交して水平方向に延びる耕耘爪軸を軸支し、該耕耘爪軸の長さ方向に所定間隔をおいた複数箇所に、同じ軸周面から放射方向に縦刃部及び横刃部を有する耕耘爪を装着した耕耘装置において、耕耘爪は、耕耘爪軸に取り付けられる取付基部から連続して延びる縦刃部及び横刃部を有し、縦刃部から横刃部にかけて回転方向と逆向きに湾曲するとともに、横刃部が一方側に湾曲し、取付基部の他方側の面から一方側に湾曲した横刃部の先端までの先曲げ高さが100mm以上あり、横刃部の一方側に湾曲した屈曲部の曲率半径が先曲げ高さと略同等の寸法を有し、耕耘爪軸の長さ方向に装着された耕耘爪をその横刃部が隣接して対向する他の横刃部と90°の位相差角度を有して配置し、かつ耕耘爪軸の長さ方向に対して螺旋状に配列したことを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、横刃部の先曲げ高さを100mm以上にすることにより、横刃部の基部から一方側に少なくとも100mm以内に存在する藁等の残渣物を圃場内にすき込むことができる。また圃場に存在する稲株等が約300mmのピッチで植えられている場合、耕耘爪軸に取り付けられる耕耘爪のピッチを稲株のそれと略2/3のピッチで配置して耕耘爪軸の軸方向に隣接する横刃部の湾曲方向が互いの方向に延びるようにすると、耕耘爪が稲株や圃場に存在する藁等の残渣物に当接して残渣物を確実に圃場内にすき込むことができる。また横刃部の一方側に湾曲した屈曲部の曲率半径を先曲げ高さと略同等の寸法にすることで、土の放擲量が増大し、この土がすき込まれた残渣物上に移動して残渣部の露出が防止される。このため、残渣物を高精度ですき込むことができる。また耕耘爪軸の長さ方向に装着された耕耘爪をその横刃部が隣接して対向する他の横刃部と90°の位相差角度を有して配置し、且つ耕耘爪軸の長さ方向に対して螺旋状に配列することで、耕耘爪軸が回転すると耕耘爪が均等に圃場に打ち込まれる。このため、耕土が均一となり、耕耘爪軸に耕耘爪を装着した耕耘ロータを回転させる動力や耕耘ロータに生じる振動を軽減することができるとともに、残渣物を均一に圃場にすき込むことができる。
【0013】
また本発明は、機体の進行方向と直交して水平方向に延びる耕耘爪軸を軸支し、該耕耘爪軸の長さ方向に所定間隔をおいた複数箇所に、同じ軸周面から放射方向に縦刃部及び横刃部を有する耕耘爪を装着した耕耘装置において、耕耘爪は、耕耘爪軸に取り付けられる取付基部から連続して延びる縦刃部及び横刃部を有し、縦刃部から横刃部にかけて回転方向と逆向きに湾曲するとともに、横刃部が一方側に湾曲し、取付基部の他方側の面から一方側に湾曲した横刃部の先端までの先曲げ高さが100mm以上あり、横刃部の一方側に湾曲した屈曲部の曲率半径が先曲げ高さと略同等の寸法を有し、耕耘爪軸の長さ方向に隣接して装着された耕耘爪をその横刃部が対向する他の横刃部と90°の位相差角度を有して配置し、かつ耕耘爪軸の長さ方向に対して螺旋状に配列するとともに、対向する横刃部同士の重なり代が先曲げ高さの1/2以上あることを特徴とする。
【0014】
この発明によれば、横刃部の先曲げ高さを100mm以上にすることにより、横刃部の基部から一方側に少なくとも100mm以内に存在する藁等の残渣物を圃場内にすき込むことができる。また圃場に存在する稲株等が約300mmのピッチで植えられている場合、耕耘爪軸に取り付けられる耕耘爪のピッチを稲株のそれと略2/3のピッチで配置して耕耘爪軸の軸方向に隣接する横刃部の湾曲方向が互いの方向に延びるようにすると、耕耘爪が稲株や圃場に存在する藁等の残渣物に当接して残渣物を確実に圃場内にすき込むことができるともに、耕耘爪軸の軸方向に隣接する耕耘爪間に圃場の土が詰まる土抱きを防止することができる。また横刃部の一方側に湾曲した屈曲部の曲率半径を先曲げ高さと略同等の寸法にすることで、土の放擲量が増大し、この土がすき込まれた残渣物上に移動して残渣部の露出が防止される。このため、残渣物を高精度ですき込むことができる。また耕耘爪軸の長さ方向に装着された耕耘爪をその横刃部が隣接して対向する他の横刃部と90°の位相差角度を有して配置し、且つ耕耘爪軸の長さ方向に対して螺旋状に配列することで、耕耘爪軸が回転すると耕耘爪が均等に圃場に打ち込まれる。このため、耕土が均一となり、耕耘爪軸に耕耘爪を装着した耕耘ロータを回転させる動力や耕耘ロータに生じる振動を軽減することができるとともに、残渣物を均一に圃場にすき込むことができる。また対向する横刃部同士の重なり代を先曲げ高さの1/2以上にすることで、重なり代が少なくとも50mmにすることができる。このため、耕耘爪軸に巻き付こうとする藁等は、回転する横刃部によって取り除かれ、藁等が耕耘爪軸に巻き付く量を少なくすることができる。
【0015】
また本発明の横刃部の折り曲げ開始位置は、側面視における取付基部の中心から横刃部の先端までの長さを爪全長としたときに、該爪全長の取付基部側寄りの1/4付近に位置することを特徴とする。
【0016】
この発明によれば、横刃部の折り曲げ開始位置が側面視における取付基部の中心から横刃部の先端までの長さを爪全長としたときに、該爪全長の取付基部側寄りの1/4付近に位置することで、耕耘爪の大部分をすき込み性の高い形状をした横刃部にすることができ、すき込み作業に適した耕耘爪を提供することができる。
【0017】
さらに本発明は、耕耘爪軸の同じ軸周面に、放射方向に突出する爪ホルダを4個取り付け、これらのうちの1組の爪ホルダに対して他の1組の爪ホルダをオフセットして取り付けることを特徴とする。
【0018】
この発明によれば、耕耘爪軸の同じ軸周面から放射方向に突設する爪ホルダを4個とし、そのうちの1組の爪ホルダに対して他の1組の爪ホルダを耕耘爪軸の長さ方向にオフセットして取り付けることで、耕耘爪軸の長さ方向に隣接して互いに向き合う耕耘爪の横刃部がより接近し、圃場に存在する稲株、藁等に耕耘爪の縦刃部または横刃部を接触させることができる。このため、残渣物のすき込み性をより向上することができる。
【0019】
また本発明は、耕耘爪軸に、耕耘爪を取り付ける爪取付フランジを設け、該爪取付フランジの爪取付面を耕耘爪軸の長さ方向に対して傾斜させたことを特徴とする。
【0020】
この発明によれば、耕耘爪軸に取り付けられた爪取付フランジの爪取付面は耕耘爪軸の長さ方向に対して傾斜することにより、耕耘爪軸が回転すると、耕耘爪の横刃部の先端は耕耘爪軸の長さ方向に往復運動しながら回転する。このため、耕耘爪軸の長さ方向に隣接して互いに向き合う耕耘爪の横刃部はさらに接近することができ、圃場に存在する稲株、藁等に耕耘爪の縦刃部または横刃部が確実に接触して、残渣物のすき込み性をさらに向上することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係わる耕耘装置によれば、一方側に湾曲した横刃部の先曲げ高さが100mm以上あり、該横刃部の一方側に湾曲した屈曲部の曲率半径が先曲げ高さと略同等の寸法を有し、耕耘爪軸の長さ方向に隣接して装着された耕耘爪をその横刃部が対向する他の横刃部と90°の位相差角度を有して配置し、かつ耕耘爪軸の長さ方向に対して螺旋状に配列し、対向する横刃部同士の重なり代を先曲げ高さの1/2以上にすることで、耕耘爪軸に絡む藁等の量が少なく、ロータ全体の所要動力や機体振動が小さく、藁等の残渣物を確実に圃場内にすき込んで、周囲の環境に悪影響を及ぼさない環境保全型の耕耘装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明に係る耕耘爪について、図1〜図9を参照して説明する。尚、本実施の耕耘装置は、トラクタ装着型のサイドドライブ式の耕耘装置を例にして説明する。なお、説明の都合上、図1(a)(側面図)及び図1(b)(平面図)に示す方向を前後方向及び左右方向として、以下説明する。
【0023】
耕耘装置1は、図1(a)及び図1(b)に示すように、走行機体90の後部に装着されて走行機体90の走行とともに進行して耕耘作業を行うものであり、機体2の左右方向に延びる本体フレーム3と、この両側に配設された伝動ケース5とサポートフレーム6との下側間に軸支された耕耘ロータ10を備える。なお、耕耘ロータ10の詳細については後述する。
【0024】
本体フレーム3の左右方向の中央部にはギアボックス4が設けられ、このギアボックス4には入力軸4aが備えられている。入力軸4aは、走行機体90のPTO軸(図示せず)から伝動軸(図示せず)を介して動力が伝達されるようになっている。
【0025】
耕耘ロータ10の上方には前後方向に延びて耕耘ロータ10の上部を覆う上部カバー7が設けられ、この上部カバー7の後端部に整地体30が上下方向に回動自在に取り付けられている。整地体30は、板状であり、先端側が斜め後方側に延びて先端部が圃場表面に接し、本体フレーム3と整地体30との間に取り付けられた上下調整機構8を介して上下位置調整が可能である。整地体30の左右両端部には延長整地体33が上下方向に回動自在に取り付けられて、整地幅の拡大を可能にしている。
【0026】
耕耘ロータ10は、伝動ケース5とサポートフレーム6との下側間に軸支された耕耘爪軸11と、耕耘爪軸11の長さ方向に所定間隔をおいた複数箇所に同じ軸周面から放射方向に延びて取り付けられた耕耘爪20とを有してなる。耕耘ロータ10は前述した入力軸4aに伝達された動力を受けて伝動ケース5内の図示省略の動力伝達機構等を介して回転するように構成されている。
【0027】
耕耘爪20は、図2(断面図)、図3(a)(側面図)、図3(b)(底面図)に示すように、取付孔21aを有して断面矩形状の取付基部21を備え、取付基部21に連接部位22を介して縦刃部23及び横刃部25が連続して形成されている。耕耘爪20は、取付基部21をボルト締結手段等によって耕耘爪軸11に設けられた爪ホルダ12に取り付けられて矢印A方向に回転して耕耘作業を行う。
【0028】
耕耘爪20は、縦刃部23から横刃部25にかけて回転方向と逆向きに湾曲するとともに、横刃部25が略一定の曲率半径Rで一方側(紙面手前側)に湾曲して湾曲側にすくい面26を形成している。取付基部21の他方側の面から一方側に湾曲した横刃部25の先端までの先曲げ高さHは100mm以上(図面では115mm)あり、横刃部25の一方側に湾曲した屈曲部25aの曲率半径Rは先曲げ高さHと略同等の寸法(図面では120mm)を有している。
【0029】
このように、横刃部25の先曲げ高さHを100mm以上とし、横刃部25の屈曲部25aの曲率半径Rを先曲げ高さHと同等の寸法にすると、図4(側面図)に示すように、すくい面26によって放擲される土の一辺の長さBは、二点鎖線で示す曲率半径Rの小さいナタ爪の場合のそれAと比較して、大きくなり(図面では約1.7倍)、また横刃部25の先曲げ高さも大きいので(図面では約1.8倍)、土の放擲量(体積)を増大させることができる(図面では約3倍)。また横刃部25によって、横刃部25の基部から一方側に少なくとも100mm以内に存在する藁等の残渣物を圃場内に確実にすき込むことができる。
【0030】
図3(a)及び図3(b)に示すように、縦刃部23及び横刃部25のそれぞれの回転方向前側には略一定幅の刃縁部23b,25bが形成されている。耕耘爪20が矢印A方向に回転することによる耕土への切り込みは、縦刃部23の刃縁部23bから行われ、側方力を支持すると同時に雑草等の絡みつき防止を爪自体で行うようにするため、刃縁部23b,25bは適正な排絡角をなすように形成されている。
【0031】
横刃部25の折り曲げ開始線Sの折り曲げ開始位置Pは、側面視における取付基部21の中心から横刃部25の先端までの長さを爪全長Lとしたときに、この爪全長Lの取付基部側寄りの1/4付近に位置している。図面ではLが195mmに対してPは48mmである。これによって、耕耘爪20の大部分をすき込み性のよい横刃部25にすることができ、耕耘爪20はすき込み作業に適したものである。
【0032】
横刃部25の先端部25cは円弧状に形成されて、横刃部25の重量が軽くなり、耕耘爪20に作用するトルクを低減している。
【0033】
このように構成された耕耘爪20を取り付ける爪ホルダ12は、図2に示すように、耕耘爪軸11の長さ方向に所定間隔(図面では180mm)をおいた複数箇所のそれぞれに、略同じ軸周面から放射方向に4個突設されている。これらの4個の爪ホルダ12は、耕耘爪20を、横刃部25の突出方向が外側と内側に向くものを1組ずつ、それぞれ180°の取付け角度(位相差)で装着している。このため、耕耘爪軸11の軸方向に隣接する横刃部25の湾曲方向が互いの方向に向くように配置されているので、稲株や圃場に存在する藁等の残渣物を確実に圃場内にすき込むことができるともに、耕耘爪軸11の長さ方向に隣接する耕耘爪間に圃場の土が詰まる土抱きを防止することができる。なお、土抱きを防止するため、耕耘爪軸11の長さ方向に隣接する耕耘爪20の取付基部間の距離を180mm〜200mm程度の間の任意の大きさに設定して、耕耘爪20を耕耘爪軸11に取り付けてもよい。
【0034】
また、2組の爪ホルダ12は、そのうちの1組の爪ホルダ12に対して他の1組の爪ホルダ12を、図5に示すように、耕耘爪軸11の長さ方向にA(図面では20mm)の間隔でオフセットして取り付けている。従って、4本の耕耘爪20は同軸上に配置されるのではなく、横刃部25が互いに向き合っている耕耘爪20をA(図面では20mm)の間隔で近づけることにより、耕耘爪軸11の長さ方向に隣接する耕耘爪20間の空間を狭くすることができ、圃場の全ての場所で稲株や藁等の残渣物に耕耘爪20の縦刃部23または横刃部25を当接させることができる。また隣接する耕耘爪20は、対向する横刃部同士の重なり代Bは先曲げ高さの1/2以上(図面では61mm)になるように配置されている。
【0035】
また図2に示すように、2組の爪ホルダ12に装着された耕耘爪20に対して、隣接する爪ホルダ12に装着された二点鎖線で示す耕耘爪20'は、耕耘爪軸11の軸周方向に位相差(リード角)35°を設けて配設している。このときの、耕耘爪20の横刃部25の突出方向が異なる爪間の取付け角度は55°と125°であり、この耕耘ロータ10が1回転するときの各耕耘爪20の打ち込み展開図を図6に示す。図6で明らかなように、耕耘爪軸11の長さ方向に隣接する爪ホルダ12に装着される耕耘爪20の横刃部25が対向する位相差角度は全て90°になっている。また、耕耘爪軸11の長さ方向に対して各耕耘爪20は螺旋状に配列されている。
【0036】
このように構成された耕耘ロータ10を、機体2の前進速度0.42m/s(1.5km/hr)、耕耘爪軸11の回転数181rpm、耕耘ピッチ138mmの条件下で、稲刈跡圃場で耕耘作業を行った場合の耕耘ピッチ及び稲株40への作用を図7に示す。この図で明らかにように、耕耘爪20と耕耘爪20の打ち込み間隔は、稲株40の大きさ(図面ではφ7cm)より小さくなっている。このため、耕耘爪20の縦刃部23か横刃部25のいずれかが稲株40に必ず接触し、稲株40を裁断して反転させて土中に埋め込むことができる。
【0037】
このように本発明の耕耘装置1は、耕耘爪20の横刃部25の先曲げ高さが100mm以上であり、且つ横刃部25の一方側に湾曲した屈曲部25aの曲率半径Rが先曲げ高さHと略同等の寸法にすることによって、圃場に存在する藁等の残渣物のすき込み量や土の放擲量が増大して、藁等の残渣物を確実に圃場内にすき込むことができる。このため、すき込みができず、耕耘後に圃場内の残渣物を焼却処理して煙や粉塵等が発生して拡散して周囲の環境に悪影響を及ぼす事態を未然に防止することができ、環境保全型農業に貢献することができる。
【0038】
また耕耘爪軸11の長さ方向に装着された耕耘爪20をその横刃部25が隣接して対向する他の横刃部と90°の位相差角度を有して配置し、且つ耕耘爪軸11の長さ方向に対して螺旋状に配列することで、耕耘爪軸11が回転すると耕耘爪20が均等に圃場に打ち込まれる。このため、耕土が均一となり、耕耘ロータ10を回転させる動力や耕耘ロータ10に生じる振動を軽減することができるとともに、残渣物を均一にすき込むことができる。
【0039】
また対向する横刃部同士の重なり代を先曲げ高さの1/2以上にすることで、重なり代が少なくとも50mmにすることができる。このため、耕耘爪軸11に巻き付こうとする藁等は、回転する横刃部25によって取り除かれ、藁等が耕耘爪軸11に巻き付く量を少なくすることができる。
【0040】
なお、耕耘爪20を取り付ける部分は、図8(背面図)に示すように、耕耘爪軸11に取り付けられた板状の爪取付フランジ50にしてもよい。また、この爪取付フランジ50は、図9(背面図)に示すように、爪取付フランジ50の側面となる爪取付面50aが耕耘爪軸11の長さ方向に対して傾斜するように取り付けられてもよい。このようにすると、耕耘爪軸11が回転すると、耕耘爪20の横刃部25の先端は耕耘爪軸11の長さ方向に往復運動しながら回転する。このため、耕耘爪軸11の長さ方向に隣接して互いに向き合う耕耘爪20の横刃部25はさらに接近することができ、圃場に存在する稲株、藁等に耕耘爪20の横刃部25が確実に接触して、残渣物のすき込み性をさらに向上することができる。
【0041】
[実施例]
取付基部21の中心から横刃部25の先端までの長さ(爪全長)L:195mm、折り曲げ開始位置P:48mm、横刃部25の一方側に湾曲した屈曲部25aの曲率半径R:120mm、横刃部25の屈曲角ε:60°、耕耘爪20を備えた耕耘装置の前進速度V:0.4m/s、耕耘爪軸11の回転速度n:180rpm、耕耘ピッチ:133mmの条件の下で藁等が存在する圃場で耕耘作業を行うと、藁等が良好に圃場内にすき込まれるとともに、耕耘爪軸11に絡む藁等が少ないことを確認した。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施の形態に係わる耕耘装置を示し、同図(a)は耕耘装置の側面図であり、同図(b)は耕耘装置の平面図である。
【図2】耕耘装置に設けられた耕耘ロータの断面図を示す。
【図3】耕耘ロータに取り付けられる耕耘爪を示し、同図(a)は耕耘爪の側面図であり、同図(b)は耕耘爪の底面図である。
【図4】耕耘爪の横刃部による土の放擲量を説明するために耕耘爪の移動軌跡を示した側面図である。
【図5】耕耘ロータの背面図を示す。
【図6】耕耘ロータに取り付けられた耕耘爪による打込み展開図を示す。
【図7】耕耘ロータによる耕耘ピッチ及び稲株への作用を示す展開図である。
【図8】耕耘ロータの他の実施の形態の背面図を示す。
【図9】耕耘ロータの他の実施の形態の背面図を示す。
【図10】従来の耕耘ロータを示し、同図(a)は従来の耕耘ロータの側面図であり、同図(b)従来の耕耘ロータの耕耘爪による打込み展開図を示す。
【図11】従来の耕耘ロータによる耕耘ピッチ及び稲株への作用を示す展開図である。
【符号の説明】
【0043】
1 耕耘装置
2 機体
11 耕耘爪軸
12 爪ホルダ
20 耕耘爪
21 取付基部
23 縦刃部
25 横刃部
25a 屈曲部
50 爪取付フランジ
P 折り曲げ開始位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体の進行方向と直交して水平方向に延びる耕耘爪軸を軸支し、該耕耘爪軸の長さ方向に所定間隔をおいた複数箇所に、同じ軸周面から放射方向に縦刃部及び横刃部を有する耕耘爪を装着した耕耘装置において、
前記耕耘爪は、前記耕耘爪軸に取り付けられる取付基部から連続して延びる縦刃部及び横刃部を有し、前記縦刃部から前記横刃部にかけて回転方向と逆向きに湾曲するとともに、前記横刃部が一方側に湾曲し、前記取付基部の他方側の面から一方側に湾曲した前記横刃部の先端までの先曲げ高さが100mm以上あり、前記横刃部の一方側に湾曲した屈曲部の曲率半径が前記先曲げ高さと略同等の寸法を有し、前記耕耘爪軸の長さ方向に装着された耕耘爪をその横刃部が隣接して対向する他の横刃部と90°の位相差角度を有して配置し、かつ前記耕耘爪軸の長さ方向に対して螺旋状に配列したことを特徴とする耕耘装置。
【請求項2】
機体の進行方向と直交して水平方向に延びる耕耘爪軸を軸支し、該耕耘爪軸の長さ方向に所定間隔をおいた複数箇所に、同じ軸周面から放射方向に縦刃部及び横刃部を有する耕耘爪を装着した耕耘装置において、
前記耕耘爪は、前記耕耘爪軸に取り付けられる取付基部から連続して延びる縦刃部及び横刃部を有し、前記縦刃部から前記横刃部にかけて回転方向と逆向きに湾曲するとともに、前記横刃部が一方側に湾曲し、前記取付基部の他方側の面から一方側に湾曲した前記横刃部の先端までの先曲げ高さが100mm以上あり、前記横刃部の一方側に湾曲した屈曲部の曲率半径が前記先曲げ高さと略同等の寸法を有し、前記耕耘爪軸の長さ方向に隣接して装着された耕耘爪をその横刃部が対向する他の横刃部と90°の位相差角度を有して配置し、かつ前記耕耘爪軸の長さ方向に対して螺旋状に配列するとともに、対向する横刃部同士の重なり代が前記先曲げ高さの1/2以上あることを特徴とする耕耘装置。
【請求項3】
前記横刃部の折り曲げ開始位置は、側面視における前記取付基部の中心から前記横刃部の先端までの長さを爪全長としたときに、該爪全長の取付基部側寄りの1/4付近に位置することを特徴とする請求項1又は2に記載の耕耘装置。
【請求項4】
前記耕耘爪軸の同じ軸周面に、放射方向に突出する爪ホルダを4個取り付け、これらのうちの1組の爪ホルダに対して他の1組の爪ホルダを前記耕耘爪軸の長さ方向にオフセットして取り付けることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の耕耘装置。
【請求項5】
前記耕耘爪軸に、前記耕耘爪を取り付ける爪取付フランジを設け、該爪取付フランジの爪取付面を前記耕耘爪軸の長さ方向に対して傾斜させたことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の耕耘装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−215467(P2007−215467A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−39091(P2006−39091)
【出願日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(390010836)小橋工業株式会社 (198)
【Fターム(参考)】