説明

肉厚測定装置および肉厚測定方法

【課題】肉厚測定値について高精度に校正を行い、かつ操作性に優れた肉厚測定装置を提供する。
【解決手段】X線Rを発生させ、配管5を照射するX線発生装置2と、X線発生装置2から発生したX線Rを検出し、X線Rを光に変換することにより測定結果を画像化し撮像画像データを得るカラーI.I.3からなる肉厚測定装置であって、前記撮像画像データに対し所定の演算を行うことにより、校正された被測定物の肉厚量を求めることができる肉厚量校正手段を備えた肉厚測定装置、および前記肉厚測定装置を用いた肉厚測定方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管、容器、板等の被測定物の肉厚測定技術にかかり、特に肉厚量について高精度に校正を行い、また操作性よく肉厚量を測定することができる肉厚測定装置および肉厚測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の配管減肉管理は、配管の肉厚測定を、例えば超音波厚み計を用いて実施していた。しかし超音波厚み計を用いる場合、配管を取り巻いている保温材の着脱が必要であり、検査に長時間要し、検査費用増大の原因となっていた。
【0003】
そこで、保温材を着脱することなく測定する方法として、RT検査(放射線検査)によるフィルム撮像の方法がとられていた。しかし、RT検査ではフィルムの現像作業が必要であり、画像を見ながら現場で判断することができなかった。
【0004】
そこで、配管減肉管理において、配管の保温材の着脱が不要であるとともに、短時間での撮像が可能な高エネルギー・高感度のカラーイメージインテンシファイア(以下、カラーI.I.という。)を用いて配管の肉厚測定を行う方法が提案されてきた(例えば特許文献1、2)。
【0005】
図17は、カラーI.I.を用いた肉厚測定装置61の簡略図である。放射線源60、カラーI.I.3からなる肉厚測定装置61により、被測定物である配管5を測定する。またカラーI.I.3には、撮像に用いられるカメラを制御するカメラ制御ユニット62、撮像により得られた被測定物の撮像画像データを処理する画像処理ユニット63、および被測定物の撮像画像データを表示するモニタ64が順次接続されている。
【0006】
図18は肉厚測定装置61を用いて配管5の肉厚測定に適用されたものであり、放射線源60が被測定物である配管5に照射し、フィルム66を用いた撮像を行う場合の簡略的な模式図である。放射線源60から照射された放射線Eは直線放射状に広がるため、実際の配管5の肉厚であるa、b間の距離tは、フィルム66に映し出された場合には実際の距離より大きいA、B間の距離Tとなる。よって、実際の配管5の肉厚量である距離tは次式から求なければならない。
[数1]
t=T×(f−R)/f ……(1)
fは、放射線源60からフィルム66までの距離であり、Rは配管5の測定位置からフィルム66までの距離である。
【0007】
ここで、配管5の肉厚量測定の精度を向上させることを目的とする肉厚測定技術について、例えば特許文献3に示された肉厚測定装置および肉厚測定方法がある。
【0008】
特許文献3に示された肉厚測定技術は、レーザを用いた位置検出装置、または基準位置を示すためのマーカを用いることにより被測定物である配管の測定位置の特定を可能にし、肉厚量の測定精度を向上させることを目的とするものである。
【特許文献1】特開2003−202304号公報
【特許文献2】特開2004−239731号公報
【特許文献3】特開2007−47077号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ここで、図19(a)はカラーI.I.3を用いて配管5の肉厚測定を行う場合において、カラーI.I.3の入射面9に放射線Eが入射する際の模式図である。
【0010】
図19(b)は、放射線EがカラーI.I.3の入射面9に入射する際の拡大図である。カラーI.I.3における放射線Eの入射面9は平面ではなく非球面であるため、入射面9における入射位置が入射面9中心より離れるに従い、被測定物は拡大されて検出される。図19(b)において、マーカ6が配管5外表面からの第1距離a1に設置された場合と、第1距離a1より配管5外表面から離れた第2距離a2に設置された場合とを比較すると、第2距離a2に設置された場合のマーカ6のほうが拡大されて検出されることになる。
【0011】
以上より、配管5に装着されている保温材13の厚さの影響は、配管5の肉厚測定量の誤差の原因となり、被測定物とカラーI.I.3との位置関係のみならず、配管断面中心からの径方向の距離によっても校正を行わなければならないといえる。
【0012】
よって、単純に放射線源60、配管5およびカラーI.I.3との距離から求める式(1)では配管5の正確な肉厚は求めることができない。また、上述した特許文献3では、I.I.と被測定物との位置をその都度測定する必要があり、作業の効率化が図れない。
【0013】
本発明はかかる従来の事情に対処するためになされたものであり、肉厚測定時にあらかじめ求められた校正関数を用いて適正な校正を行うことにより、被測定物の肉厚量を高精度に操作性よく求めることができる肉厚測定装置および肉厚測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の肉厚測定装置は、上述した課題を解決するために、請求項1に記載したように、放射線を発生させ、被測定物に照射する放射線発生装置と、前記放射線発生装置から発生した放射線を検出し、前記放射線を光に変換することにより前記被測定物を画像化し撮像画像データを得る放射線検出装置とを有する肉厚測定装置において、前記放射線検出装置で得られた前記撮像画像データを記憶する画像情報記憶部と、前記画像情報記憶部に記憶された前記撮像画像データに対し、所定の演算を行うことにより、校正された被測定物の肉厚量を自動的に求める肉厚量校正手段と、前記撮像画像データに対し処理を入力する入力手段と、前記撮像画像データを出力する出力手段とを備えたことを特徴とする。
【0015】
また、本発明の肉厚測定方法は、上述した課題を解決するために、請求項10に記載したように、放射線を発生させ、被測定物に照射する放射線発生装置と、前記放射線発生装置から発生した放射線を検出し、前記放射線を光に変換することにより前記被測定物を画像化し撮像画像データを得る放射線検出装置とを用いる肉厚測定方法において、前記放射線検出装置で得られた前記撮像画像データに対し所定の演算を行うことにより、校正された肉厚量を自動的に求める肉厚量校正ステップと、前記肉厚量校正ステップにより校正された撮像画像データにおける前記被測定物について、肉厚量を求めたい1または複数の範囲を選択する測定範囲選択ステップと、前記測定範囲選択ステップにより選択された領域内における被測定物の肉厚量を測定する肉厚測定ステップと、前記測定範囲選択ステップにより選択された領域内における被測定物の境界線を表示する境界線表示ステップと、
前記測定範囲選択ステップにより選択された領域内における被測定物の輝度プロファイルおよび肉厚量を表示する肉厚量・輝度プロファイル表示ステップとを備えたことを特徴とする肉厚測定方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明にかかる肉厚測定装置および肉厚測定方法によれば、被測定物の測定位置により生じる撮像画像データの歪みを、予め求めておいた校正関数を用いて校正を行うことにより、迅速また高精度に肉厚測定を実施することができる。
【0017】
また、被測定物の肉厚測定量の校正を画面上で視覚的に行うことができるため、操作性に優れた肉厚測定を実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明にかかる肉厚測定装置の実施の形態について、図1を参照して説明する。
【0019】
肉厚測定装置1は、放射線発生装置であるX線発生装置2、放射線検出装置であるカラーI.I.3、および移動型コンソール4からなる。
【0020】
本実施形態における被測定物は配管5とし、配管5には保温材13が装着される。また、保温材13を着脱させることなく、被測定物としての配管5の肉厚測定を行う。
【0021】
配管5の表面には寸法校正基準としてのマーカ6(図示せず)が取り付けられる。
【0022】
マーカ6は、図2に示すように、例えば外径9mm、軸方向長さ34mmであり、形状は円筒形あるいはロッド状、砲弾形状とし、タングステンを材料として構成されている。タングステンマーカ6としたのは、肉厚測定の校正基準として明確に撮像すべく、放射線を透過し難く比重の重い金属であり、温度変化に対して熱膨張・収縮し難い材質であることが求められるからである。また、形状を円筒形としたのは設置の仕方に依存せず、正確な寸法を得るためである。
【0023】
X線発生装置2、カラーI.I.3および配管5は保持装置7により固定されており、カラーI.I.3と移動型コンソール4はケーブル8により接続される。
【0024】
X線発生装置2は、放射線であるX線Rを発生させ、発生したX線Rを配管5に向けて照射する。X線発生装置2は、移動型コンソール4内のCPU20にて、エネルギーに相当する管電圧、および強度に対応する管電流について遠隔的に制御される。
【0025】
カラーI.I.3は、X線発生装置2において発生したX線Rを入射面9で検出し、センサとしてのシンチレータ(図示せず)を用いることにより電気信号に変換され、ケーブル8を介して移動型コンソール4のモニタ11に被測定物の撮像画像データの出力を行う。カラーI.I.3は、移動型コンソール4内のCPU20にて遠隔的に制御される。
【0026】
撮像は、入射されるX線Rの強度に応じて感度の異なる赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の信号に変換され、ひとつの撮像画像データ上に記録される。また、肉厚測定、肉厚量校正、配管境界検出等のCPU20が行う処理には、適宜、最も処理に適したカラー成分の撮像画像データが用いられる。
【0027】
図3は移動型コンソール4のハードウエア構成図、図4は機能ブロック図を示す。
【0028】
図3に示すように、移動型コンソール4にはCPU(central Processing Unit)20、ROM(Read Only Memory)21、およびRAM(Random access memory)22、ならびに出入力インターフェイスを介して出力部23、入力部24、記憶部25が設けられる。
【0029】
CPU20は、ROM21に記憶されているプログラム、または記憶部25からRAM22にロードされたプログラムに従って、肉厚測定装置1の各種の処理を実行する。RAM22には、CPU20が各種の処理を実行する上において必要なデータなども適宜記憶される。
【0030】
具体的には、図4に示すように、カラーI.I.3より得られた撮像画像データを記憶する画像情報記憶部30や、被測定物の寸法校正を行う校正処理部36、被測定物の肉厚を求める肉厚演算部37が設けられる。さらに配管5の境界や肉厚の検出等、撮像画像データについての処理を行う画像処理部33が設けられる。
【0031】
肉厚量校正手段は、校正処理部36である、例えばマーカ校正演算部31、配管校正演算部32および校正値記憶部35により構成される。測定範囲選択手段、画像調整手段は、例えば画像処理部33により構成される。
【0032】
また、肉厚測定装置1には、入力部24からの指示等を制御する制御部34や、X線発生装置2やカラーI.I.3の制御を行う制御部34a(図示せず)が設けられる。
【0033】
図3における記憶部25は、肉厚校正に必要な校正関数等のデータやプログラムを記憶し、例えば図4における校正値記憶部35等で構成される。
【0034】
入力部24はキーボード・マウス10等からなる入力手段として設けられる。操作者は入力部24より、出力部23に表示された撮像画像データに対する画像処理の指示等の入力を行う。
【0035】
出力部23は出力手段としてのCRT(Cathode Ray Tube)、LCD(Liquid Crystal Display)等からなるモニタ11であり、カラーI.I.3より得られた撮像画像データを表示する。
【0036】
出力部23には、例えば図5で示されるような、配管5の肉厚を操作性よく求めるためのGUI(Graphical User Interface)12が表示される。
【0037】
GUI12には、例えば撮像画像表示画面40、ツールバー41、コントラスト設定画面42、結果表/プロファイル画面43等が設けられる。
【0038】
撮像画像表示画面40には、カラーI.I.3から得られた撮像画像データである配管5、マーカ6、保温材13等の撮像画像データが表示される。また、配管5の境界を線表示したり、配管5の最薄肉厚箇所を線表示したりする。撮像画像表示画面40上で行われる具体的な処理については、後述する。
【0039】
図6は、図5におけるツールバー41を拡大して表示したものである。ツールバー41には操作性を向上させるため、例えば拡大縮小アイコン45、画像回転アイコン46、計測範囲選択アイコン47等が設けられており、キーボード・マウス10等でクリックすることにより、種々の機能を使用することができる。
【0040】
図5におけるコントラスト設定画面42では、撮像画像表示画面40に表示される撮像画像データのRGBのカラー成分を調節することができる。操作者はキーボード・マウス10等の入力手段で指示を入力することにより、撮像画像データが明瞭に表示されるように調整することができる。
【0041】
結果表/プロファイル画面43における結果表48には、選択された測定範囲内の肉厚測定値が所定の間隔ごとに表示される。間隔は、設定メニューにより適宜変更することができる。また、配管5の最薄肉厚箇所は、例えばカラー表示するなど視覚的に目立つように表示される。
【0042】
結果表48に表示された各データを、キーボード・マウス10等の入力手段で選択することにより、撮像画像表示画面40における各データに対応する被測定物の肉厚箇所を任意の色で表示することができる。また選択された配管5の肉厚断面の輝度プロファイル49も連動して表示される。
【0043】
輝度プロファイル49は、被測定物中の肉厚断面の放射線透過量についての分布図である。縦軸は輝度、横軸は被測定物である配管5の径方向の長さを表す。また放射線透過量は、RGBのカラー成分ごとに表示することができ、Rは赤色、Gは緑色、Bは青色の線で表示することができる。
【0044】
また、結果表/輝度プロファイル画面等は、別ウインドとしても表示することができる。
【0045】
以下、被測定物の撮像画像データの校正方法について説明する。
【0046】
カラーI.I.3より得られた被測定物の撮像画像データには、カラーI.I.3の入射面9が非球面であるという特性上、例えば樽型歪み、糸巻型歪みといわれる歪みが生じる。被測定物の肉厚を高精度に測定するという目的のもと、被測定物の歪みは校正する必要がある。よって、予め求めておいた被測定物の肉厚測定に用いるカラーI.I.3固有の校正関数を校正値記憶部35に記憶させておき、校正処理部36にて演算を行うことにより校正処理を行うことができる。
【0047】
校正関数は、画面上に基準点を設け、マーカ6の理想画像と、測定画像での基準点からの座標値を予め実験により求めておき、それらの実験結果から校正関数を特徴付ける係数の数を決めるのに必要な数の基準点を求めることにより行う。校正関数は肉厚測定に用いるカラーI.I.固有のものであるので、カラーI.I.3ごとに予め係数を求めておく必要がある。
【0048】
また実際には被測定物から得られる測定画像には誤差が存在するため、校正関数を求めるための方程式を解くために必要な数より多くの基準点を設け、最小二乗法で係数を決定する必要がある。
【0049】
本実施形態における具体的な校正方法について説明する。
【0050】
本実施形態においては、肉厚測定装置1を用いて、カラーI.I.3とマーカ6との距離に対応したマーカ6の画面上の位置を求め、これをもとに校正関数を求めた。マーカ6の画面上の位置とは、画面上にx、y座標を設け、原点からマーカ6のx、y方向に対する移動量をさす。
【0051】
カラーI.I.3との距離を変化させることにより得られたマーカ6についての撮像画像データが、画面上何ピクセルで表示されるかを求めることにより、測定条件の変化によりどれだけ実際の寸法との歪みが生じているかを求めることができる。
【0052】
図7は、マーカ6の測定条件に応じたピクセル数を表した測定結果である。a(mm)は画面上の原点からのマーカの移動距離、b(mm)はカラーI.I.3とマーカ6との距離である。
【0053】
図8は図7をプロットしたものである。
【0054】
これらの測定結果から、以下の式により校正関数f(x)を求めることにより、予め行われた測定により得られなかった位置での測定であっても、校正値を求めることができる。
[数2]
f(x)=a×x+b×x×y+c×y+d×x+e×y+g
……(2)
測定により求められたデータ中のx、yの値を代入することにより以下の係数を求めることができた。
1=0.000581601
=0.000192057
=6.02053E−05
=−0.0347281
=0.00381015
=20.6638
【0055】
式(2)より求まる校正関数から得られた二次曲線グラフを図9に示す。
【0056】
校正値記憶部35には、予め求めておいたカラーI.I.3固有の校正関数を記憶させておき、校正寸法基準として測定に使用したマーカ6の既知寸法と、マーカ6の画面上の位置からマーカ校正演算部31が自動的に校正値を求め、適切な値に校正することができる。
【0057】
マーカの校正基準寸法は、図10のようにマーカ6断面の輝度プロファイルを用いてマーカ校正演算部31が検出した寸法と、実際のマーカ6の既知寸法とが一致しているか、操作者により確認される。
【0058】
上記の校正関数から得られる校正値を用いて配管5の肉厚量の校正を行うことにより、誤差はほぼ±0.1mmに抑えることができた。
【0059】
これらの係数は肉厚測定に用いるカラーI.I.固有のものである。よって、肉厚測定に用いるカラーI.I.3ごとに固有の校正式を予め求めておく必要がある。
【0060】
また配管5が比較的小型で、撮像画像データ上に配管5全体が撮像された場合には、ノギス等で測定することにより既知である配管5の外径寸法を校正寸法基準として用いることにより、校正を行うこともできる。
【0061】
校正基準寸法にマーカ6または配管5のどちらを用いるかの選択は、操作者により行われる。
【0062】
以上が校正方法の説明である。
【0063】
GUI12を用いて行われる撮像画像データの具体的な処理等について説明する。
【0064】
図5における撮像画像表示画面40に表示された撮像画像データの配管5およびマーカ6が、配管長さ方向に画面と平行または垂直に表示されておらず傾きが生じている場合、CPU20は、操作者によるキーボード・マウス10等の入力手段からの回転量の入力を受け付け、傾きの修正を行う。これは、撮像画像データに傾きが生じることにより画像処理部33における肉厚測定等の演算処理が正確に行われないために実施される。
【0065】
図11は、画像回転操作を行い、マーカ6の傾きの修正を行う操作を示す。
【0066】
画像処理部33は、任意の基準点Aから任意の範囲Bまでの指示の入力を受け付け、図11(a)のような格子状の四角形を表示させる。回転範囲を格子状に表示したのは、回転対象物が画面に対し平行または垂直に表示されているかの判断を容易にするためである。
【0067】
その後画像処理部33は、図11(b)のように、格子線と回転対象物が平行または垂直になるようなAを基準とした回転量の入力を受け付ける。修正後には、図12のように、マーカ6は画面と軸方向に平行(垂直)に表示され、図10のような正しい輝度プロファイルを求めることができる。
【0068】
図13は配管5全体の回転を行う操作を表した図である。回転処理はマーカ6に対する処理と同様であるため省略する。
【0069】
マーカ6または配管5の回転処理は、撮像画像表示画面40と別ウインドを表示することにより行うこともできる。
【0070】
図5に示す肉厚測定範囲50の選択は、操作者からの肉厚測定範囲の入力を受け付け、画像処理部33が処理を行う。肉厚測定範囲50の選択は、例えば図14のように、任意の基準点よりキーボード・マウス10等でドラッグすることにより行うことができる。選択された肉厚測定範囲50の領域の外延は任意の色で表示することができる。
【0071】
肉厚測定範囲50は、同一画面上で1または複数の肉厚測定範囲を選択することができる。また、配管5における選択された肉厚測定範囲50は、別ウインドとして表示することもできる。
【0072】
画像処理部33は、肉厚測定範囲50で囲まれた測定範囲における配管の境界を検出し、図5のように任意の色で色彩表示する。配管5の境界検出は、RBGの各カラー成分のうち、X線の透過量に応じて最も明瞭に境界が認識できるカラー成分で撮像された画像データを用いることとする。例えば、放射線が透過しにくい配管5内側の境界については感度の高いRのカラー成分で撮像された撮像画像データを用い境界検出を行い、放射線が透過しやすい配管5外側の境界については、感度の低いGのカラー成分で撮像された撮像画像データを用い境界検出することにより、精度よく境界を検出することができる。
【0073】
また、肉厚測定範囲50内における配管5の肉厚量のうち、最薄肉厚箇所を任意の色で表示することができる。結果表/プロファイル画面43における結果表48に表示された測定データ中の任意の肉厚箇所について、操作者からの選択を受け付けることにより、画像処理部33は対応する撮像画像表示画面40の肉厚箇所を任意の色で表示する。
【0074】
以上の操作により得られた測定値、輝度プロファイル等は、被測定物の測定対象部位、測定日時等を測定条件として記憶部25等に保存することができ、次回測定を行う際の比較検討を効率的に行うことができる。
【0075】
次に、肉厚測定装置1を用いた肉厚測定方法について説明する。
【0076】
図16は肉厚測定の手順を示すフローチャートである。
【0077】
ステップS1において、X線発生装置2からX線Rを発生させ、配管5に照射する。その後、カラーI.I.3でX線Rを検出することにより、配管5の撮像を行う。
【0078】
ステップS2において画像情報記憶部30は、撮像により得られた撮像画像データをカラーI.I.3より取得後記憶し、モニタ11に表示する。
【0079】
ステップS3で画像処理部33は、画像情報取得ステップS2においてモニタ11に表示された撮像画像データについて、画像サイズ調整・回転調整を行う。配管5またはマーカ6が傾いて表示されている場合には、キーボード・マウス10等の入力手段から入力された回転量に対し傾きの修正を行い、画面に対し配管5を水平または垂直に表示させる。また、撮像画像データのサイズを変更したい場合には、画像処理部33はキーボード・マウス10等の入力手段から入力された指示により撮像画像データを拡大縮小することができる。
【0080】
ステップS4で操作者は、撮像画像データの寸法校正基準に配管5またはマーカ6のいずれを用いるかの選択を行う。
【0081】
マーカ6を用いる場合、操作者は表示されるマーカ6の基準寸法が正しいか確認を行う。図10に示すような撮像画像データより得られたマーカ6の輝度プロファイルより検出されたマーカ6の基準線の長さが、実際のマーカ6寸法と誤差が生じている場合、校正処理部36は操作者からの実際のマーカ6寸法の入力を受け付け、修正を行う。
【0082】
配管5が比較的小型で、撮像画像データ上に配管5の全体が撮像された場合には、配管5を寸法校正基準に用いることができる。その場合操作者は、ノギス等で測定することにより既知である配管5の外径寸法を入力する。
【0083】
ステップS5では、校正処理部36は、マーカ6、配管5の撮像位置に基づき撮像画像データに生じる歪みの校正を行う。校正は、校正値記憶部35内に予め記憶されたイメージI.I.3固有の校正関数と、撮像により得られた撮像画像データとを比較処理することにより行う。
【0084】
ステップS6において、画像処理部33は配管5における肉厚測定範囲50の入力を受け付け、撮像画像表示画面40に表示する。
【0085】
その後ステップS7においては、測定範囲選択ステップS6により選択された肉厚測定範囲について、肉厚演算部37が所定の間隔ごとの肉厚を検出する。
【0086】
ステップS8においては、画像処理部33は、肉厚量が検出された範囲における配管5の境界を任意の色で表示し、また最薄肉厚箇所を任意の色で表示する。
【0087】
またステップS9においては、画像処理部33は、撮像画像データの表示が明瞭に行われるよう、撮像画像データのカラー成分について自動的にコントラスト調整を行う。また操作者は、コントラスト設定画面42においても手動でコントラスト調整を行うことができる。
【0088】
最後に、ステップS10においてCPU20は、肉厚測定範囲における所定の間隔ごとの肉厚等を結果表/プロファイル画面43に表示する。
【0089】
なお、本実施形態においては、被測定物として配管5の肉厚測定を行ったが、ドラム缶のような容器状のものや板状のような肉厚、あるいは板厚測定であってもよい。
【0090】
本実施形態においては、撮像画像データの表示および処理等に移動型コンソール4を用いて行ったが、一体型ではなく、処理装置および表示装置等を別個に設けてもよい。
【0091】
マーカ6は円筒形であるとしたが、撮像方向により測定寸法の誤差の少ない、球形等であってもよい。
【0092】
また、カラーI.I.3のセンサとしてシンチレータを用いたが、フィルムを用いてもよい。
【0093】
さらに、放射線としてX線を用いたが、電磁線またはγ線、あるいは中性子を含む放射線を用いてもよい。γ線を用いる場合には、γ線源格納容器から遠隔で60Co、192Ir等のγ線源を出し入れする。
【0094】
肉厚測定範囲の選択において、図5に示すように肉厚測定範囲50は四角形としたが、図15のように曲線からなる範囲を肉厚測定範囲として表示することにより、直線の配管のみならず、L字管等の曲部を有する配管に対しても測定を行うことができる。
【0095】
以上のような肉厚測定装置および肉厚測定方法によれば、配管の測定位置により生じる撮像画像データの歪みを、予め求めておいた校正関数を用いて自動的に校正を行うことにより、迅速かつ高精度に肉厚測定を実施することができる。
【0096】
また、被測定物の肉厚測定量の校正を画面上で視覚的に行うことができるため、操作性に優れた肉厚測定を実施することができる。
【0097】
さらに、肉厚測定に優れたカラー成分を用いることで、より高精度に肉厚を求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明にかかる肉厚測定装置の実施形態を示す構成図。
【図2】校正寸法基準であるマーカを示す図。
【図3】移動型コンソールのハードウエア構成図。
【図4】移動型コンソールの機能ブロック図。
【図5】移動型コンソールの出力部に表示されるGUIを示す図。
【図6】GUIにおけるツールバーの拡大図。
【図7】マーカの測定条件に対応するピクセル数を表す測定結果。
【図8】マーカの測定条件に対応するピクセル数を表す測定結果をプロットした図。
【図9】校正関数から求められた二次曲線グラフ。
【図10】マーカ断面のプロファイル画面を示す図。
【図11】(a)および(b)は画像回転操作によりマーカの傾き修正の過程を示す図。
【図12】マーカの傾きの修正後を示す図。
【図13】配管全体の傾き修正の過程を示す図。
【図14】測定範囲選択を行う際のマウスの操作を示す図。
【図15】測定範囲選択範囲の変形例を示す図。
【図16】肉厚測定の手順を示すフローチャート。
【図17】カラーI.I.を用いた肉厚測定装置の簡略図。
【図18】肉厚測定装置を用いた撮像の模式図。
【図19】(a)は放射線がカラーI.I.入射面に入射する際の模式図、(b)は(a)の要部拡大図。
【符号の説明】
【0099】
1 肉厚測定装置
2 X線発生装置
3 カラーイメージインテンシファイア
4 移動型コンソール
5 配管
6 マーカ
7 保持装置
8 ケーブル
9 入射面
10 キーボード・マウス
11 モニタ
12 GUI
13 保温材
20 CPU
21 ROM
22 RAM
23 出力部
24 入力部
25 記憶部
30 画像情報記憶部
31 マーカ校正演算部
32 配管校正演算部
33 画像処理部
34 制御部
35 校正値記憶部
36 校正処理部
37 肉厚演算部
40 撮像画像表示画面
41 ツールバー
42 コントラスト設定画面
43 結果表/プロファイル画面
45 拡大縮小アイコン
46 画像回転アイコン
47 計測範囲選択アイコン
48 結果表
49 プロファイル画面
50 肉厚測定範囲
60 放射線源
61 肉厚測定装置
62 カメラ制御ユニット
63 画像処理ユニット
64 モニタ
E 放射線
R X線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を発生させ、被測定物に照射する放射線発生装置と、
前記放射線発生装置から発生した放射線を検出し、前記放射線を光に変換することにより前記被測定物を画像化し撮像画像データを得る放射線検出装置とを有する肉厚測定装置において、
前記放射線検出装置で得られた前記撮像画像データを記憶する画像情報記憶部と、
前記画像情報記憶部に記憶された前記撮像画像データに対し、所定の演算を行うことにより、校正された被測定物の肉厚量を自動的に求める肉厚量校正手段と、
前記撮像画像データに対し処理を入力する入力手段と、
前記撮像画像データを出力する出力手段とを備えたことを特徴とする肉厚測定装置。
【請求項2】
前記肉厚量校正手段は、寸法が既知である前記被測定物、または前記肉厚測定装置により被測定物と同時または別個に撮像されたマーカを校正基準として用いることを選択することができることを特徴とする請求項1に記載の肉厚測定装置。
【請求項3】
前記マーカは、円筒形もしくは球形の形状からなるタングステンまたは鉛で構成されたことを特徴とする請求項2に記載の肉厚測定装置。
【請求項4】
検出された放射線の透過量に応じて前記被測定物の撮像をカラーで行うことのできる放射線検出装置を用いることにより得られた撮像画像データについて、前記被測定物およびマーカの放射線透過量に応じて、適切なカラー成分により撮像された撮像画像データを肉厚測定に用いることを特徴とする請求項1に記載の肉厚測定装置。
【請求項5】
前記肉厚量校正手段は、前記撮像画像データにおける前記被測定物について、肉厚量を求めたい1または複数の範囲を前記入力手段により選択する測定範囲選択手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の肉厚測定装置。
【請求項6】
前記測定範囲選択手段により選択された測定範囲における前記被測定物の境界および肉厚に対し、境界線を表示することを特徴とする請求項5に記載の肉厚測定装置。
【請求項7】
前記測定範囲選択手段により選択された測定範囲における前記被測定物の任意の肉厚箇所に対する放射線透過量を示した輝度プロファイル、および前記測定範囲における所定の間隔ごとの肉厚測定値を前記出力手段に出力することを特徴とする請求項5に記載の肉厚測定装置。
【請求項8】
前記出力手段に出力された前記撮像画像データに対し、前記入力手段により回転範囲および回転量を入力することにより、前記撮像画像データを回転し、傾きを調整することができる画像調整手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の肉厚測定装置。
【請求項9】
前記画像調整手段における前記回転範囲の入力は、前記出力手段に格子状の図形を表示させることにより、前記回転範囲の選択および前記回転量の入力を行うことができることを特徴とする請求項8に記載の肉厚測定装置。
【請求項10】
放射線を発生させ、被測定物に照射する放射線発生装置と、
前記放射線発生装置から発生した放射線を検出し、前記放射線を光に変換することにより前記被測定物を画像化し撮像画像データを得る放射線検出装置とを用いる肉厚測定方法において、
前記放射線検出装置で得られた前記撮像画像データに対し所定の演算を行うことにより、校正された肉厚量を自動的に求める肉厚量校正ステップと、
前記肉厚量校正ステップにより校正された撮像画像データにおける前記被測定物について、肉厚量を求めたい1または複数の範囲を選択する測定範囲選択ステップと、
前記測定範囲選択ステップにより選択された領域内における被測定物の肉厚量を測定する肉厚測定ステップと、
前記測定範囲選択ステップにより選択された領域内における被測定物の境界線を表示する境界線表示ステップと、
前記測定範囲選択ステップにより選択された領域内における被測定物の輝度プロファイルおよび肉厚量を表示する肉厚量・輝度プロファイル表示ステップとを備えたことを特徴とする肉厚測定方法。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−268103(P2008−268103A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−113909(P2007−113909)
【出願日】平成19年4月24日(2007.4.24)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】