説明

肝ガン患者予後予測用組成物及び方法

【課題】肝ガンの予後予測に有用なポリヌクレオチドを提供する。
【解決手段】特定の塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、又はその相補的配列を含むポリヌクレオチド、その変異体、その誘導体、又は15以上の連続した塩基を含むその断片、及びそれらのいずれかのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド又はその断片、からなる群から選択される複数のポリヌクレオチドを含む肝ガン患者予後予測用組成物、キット又はDNAチップ、ならびに、該組成物、キット又はDNAチップを用いて肝ガン患者の予後を予測する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肝ガン患者の予後の予測、判定、検出又は診断に有用な予測、判定、検出又は診断用組成物、該組成物を利用した肝ガン患者の予後の予測、判定、検出又は診断方法、及び該組成物を利用した肝ガン患者の予後の予測、判定、検出又は診断キットに関する。
【背景技術】
【0002】
肝臓は、腹部の右上に位置する体内で最大の臓器であり、正常成人の肝重量は体重の約50分の1を占める。また、肝臓は肝動脈と門脈の2つの血管により栄養を受け、胆管を通じ十二指腸へ、胆管下部ですい臓に接続する。生体内では代謝、排出、解毒、体液の恒常性の維持などにおいて重要な役割を担う。
【0003】
日本人の2008年のガンによる死亡率は10万人中547.7人である。死亡原因の中で肝ガンが占める割合は年々増加しており、2008年度の肝ガン死亡率は男性が9.5%、女性が8.4%を占め、肝ガン罹患率は男性が女性の約3倍を示す。また、肝ガンは生存率が低く、罹患数と死亡数の差は小さい。肝ガンへの発症、進展には、主にB型肝炎ウイルス、もしくはC型肝炎ウイルスの持続感染と、ウイルス感染が引き起こす肝細胞の長期にわたる炎症と再生の繰り返しが重要と考えられている。
【0004】
肝ガンの治療は進行度や転移、全身状態を考慮して決定され(日本肝臓研究会編 原発性肝癌取扱い規約 臨床・病理 2009年)、肝ガンの標準的な治療法は日本肝臓学会編「科学的根拠に基づく肝癌診療ガイドライン 2009年版」に示されている。現在最も一般的な療法は、外科療法、穿刺療法(経皮的エタノール注入療法、ラジオ波焼灼療法)、肝動脈塞栓術の3療法であり、他に放射線療法や抗癌剤による化学療法がある。また、ミラノ基準(脈管浸潤がなく、リンパ節転移がない5cm以下の単発性ガン、もしくは脈管浸潤がなく、リンパ節転移がない3個以内の3cm以下の多発性ガン)を満たす場合は肝移植が適合する。しかし、脳死移植ドナーが少ない日本での肝移植は生体肝移植が中心的であり、生体肝移植は健常人ドナーに身体的・精神的負担が大きい治療法であるため、肝移植の実施には慎重な判断が必要となっている。
【0005】
また、最も一般的な療法を肝ガン患者に行ったとしても、その治療後に肝ガンが再発するケースも知られ、再発肝ガンであったとしても、その再発状態がミラノ基準を満たせば肝移植を適用できる。しかし、再発肝ガンが進行する速さには個人差があり、再発肝ガンの発見が遅れてしまうと肝ガンはミラノ基準外となってしまい、患者は有効な治療法である肝移植を適用できる機会を失ってしまう。従って、肝ガンの治療後に短期間で肝ガンが再発する患者をミラノ基準内で発見する予測法が、現在の臨床現場で強く求められている。
【0006】
現在までに、肝ガン患者の肝切除後の生存期間または無再発生存期間を予測するための、臨床検査項目を用いた方法が提案されている。たとえば生存期間について、性別、年齢、肝硬変の有無、もしくはアルコール乱用の有無(非特許文献1)、再発までの期間について多発性、腫瘍径、肝内転移の有無、vascular invation、tumor−free surgical margin、もしくはresectionのタイプ(非特許文献2)、同じく再発までの期間についてMicroscopic vascular invation、AFP、もしくはNon−anatomical resection(非特許文献3)、などの基準値・基準カテゴリーによってCox比例ハザード回帰分析を行うことにより、患者の生存または無再発生存期間の比較的長い群と比較的短い群を統計学的に有意に分けることができると報告されている。しかし、肝ガン患者の治療後の予後予測として肝ガン患者のミラノ基準内での再発の可能性を予測するという段階には至っていない。
【0007】
肝ガン患者に特異的に含まれるマーカーを用いた分子生物学的診断方法が提案されている。この方法は迅速で客観的な結果をもたらし、迅速な診断の助けとなる。これまでに肝ガンの臨床検査用マーカーとして血清中のタンパク質マーカーであるAFPやHBsAg量(非特許文献1〜3)、des−γ−carboxy prothrombin(非特許文献3)などが肝ガン患者の治療後の予後予測として報告されている。しかし、肝ガン患者のミラノ基準内での再発の可能性を予測するという段階には至っていない。
【0008】
さらに単独の遺伝子発現を指標としたマーカーとしては特許文献1に示されるmiR−100、特許文献1に示されるmiR−24、非特許文献1に示されるmiR−99b、特許文献1に示されるmiR−125a−5p、非特許文献4に示されるmiR−96、非特許文献1に示されるmiR−125b、特許文献1に示されるmiR−99a、非特許文献5に示されるmiR−21などが報告されている。しかし、これらによっても、肝ガン患者の治療後の予後予測として肝ガン患者のミラノ基準内での再発の可能性を予測するには十分でない。
【0009】
具体的には、非特許文献1に記載のhsa−miR−125b、性別、年齢、AFP、肝硬変の有無、HBsAg量、およびアルコール乱用の有無と肝ガン患者の肝ガン再発との関連性は、Cox比例ハザード回帰分析により、hsa−miR−125bの発現量を患者群内の測定値メジアンを基準として2群に分けた場合に、低発現群において生存までの期間が有意ではないが(P=0.061)短いことが示されている。また同様に肝硬変があることによって生存期間が短いこと(P=0.003)、hsa−miR−125bの発現量と肝硬変の有無を組み合わせることによってさらに危険率低く生存期間の長短を分けることが可能(P=0.00039)であるとされている。しかしながら、この検討においては患者の生存期間を予測しており、再発後肝ガンの治療抵抗性などの因子を含んだ検討であるため、本検討の結果を用いて、肝ガンの治療後に短期間で肝ガンが再発することを予測するものではない。
【0010】
また、非特許文献2に記載のdes−γ−carboxy prothrombin、AFP、多発性、腫瘍径、肝内転移の有無、vascular invation、tumor−free surgical margin、およびresectionのタイプと肝ガン患者の肝ガン再発との関連性は、肝ガン患者の1年後の治療後の予後予測が最も高くなる予測方法でも感度が63.4%、特異度が75.6%である。また、非特許文献3に記載の肝ガン患者は手術時に腫瘍径が5cm以下の、より軽度な肝ガン患者だけを対象としており、汎用的に肝ガンの治療後に短期間で肝ガンが再発する患者をミラノ基準内で発見するための方法とはいえない。
【0011】
また、非特許文献3に記載のMicroscopic vascular invation、AFP、およびNon−anatomical resectionと肝ガン患者の2年以内の肝ガン再発との関連性は、肝ガン患者の治療後の予後予測が最も高くなるMicroscopic vascular invation、AFPとNon−anatomical resectionの3種類を組み合わせた場合、Cox比例ハザード回帰分析による2年後の再発率は低リスク群で33.7%、高リスク群で55.5%で(p=0.01)である。
【0012】
しかしながら、これらの先行文献において報告されている方法は診断の確率を示しているものではなく、実用における評価は確定されていない。また、DNAチップ測定のように一度にマーカーを測定することは不可能であり、複数の臨床指標を独立に測定する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】US2009/0186353A1
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Li,X.ら、2008年、Int. J. Cancer、第123巻、p.1616−1622
【非特許文献2】Imamura,H.ら、1999年、Br.J.Surg.、第86巻、p.1032−1038
【非特許文献3】Imamura,H.ら、2003年、J.Hepatology、第38巻、p.200−207
【非特許文献4】Ladeiro,Y.ら、2008年、HEPATOLOGY、第47巻、p.1955−1963
【非特許文献5】Wang,B.ら、2009年、HEPATOLOGY、第50巻、p.1152−1161
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、上記の既存の指標は肝ガンの発見や治療効果の判定に利用されているが、肝ガン患者の治療後の予後予測として肝ガン患者のミラノ基準内での再発の可能性を予測するために最適な指標でないことから一般に臨床上の利用は行われておらず、特異性及び感受性が高い肝ガン患者予後予測マーカーが切望されている。
【0016】
本発明は、肝ガン患者予後予測に有用な疾患判定用組成物、該組成物を用いた肝ガン患者予後の予測、判定、検出又は診断方法、及び該組成物を利用した肝ガン患者予後の予測、判定、検出又は診断キットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
マーカー探索の方法としては、手術時に患者由来の肝ガン病変部と正常組織部における遺伝子の発現やタンパク質の発現、又は細胞の代謝産物などの量を何らかの手段によって比較する方法や治療後の予後が良い患者と治療後の予後が悪い患者の両方から得られる体液中に含まれる遺伝子、タンパク質、代謝産物などの量を測定する方法が挙げられる。
【0018】
DNAチップを用いた遺伝子発現量解析は、近年、このようなマーカー探索の手法として特に汎用されている。DNAチップには数百から数万種の遺伝子に対応した塩基配列を利用したプローブが固定されている。被検試料をDNAチップに添加することによって試料中の遺伝子がプローブと結合し、この結合量を何らかの手段によって測定することにより、被検試料中の遺伝子量を知ることができる。DNAチップ上に固定化するプローブに対応した遺伝子の選択は自由であり、また手術時又は内視鏡検査時に採取した試料である肝ガン患者の肝ガン病変部と肝ガン患者の正常組織部を用いて、試料中の遺伝子発現量を比較することによって肝ガンマーカーとなりうる遺伝子群を推定することが可能である。
【0019】
上記の課題を解決するために、本発明者らは、部分肝切除手術を行った肝ガン患者の肝ガン組織の肝ガン病変部から得られた遺伝子発現量、肝ガン患者の肝ガン組織の正常組織部から得られた遺伝子発現量をDNAチップによって解析し、肝ガン患者予後予測マーカーに使用可能な因子とそれを構成する遺伝子を見出し、さらにそれらの遺伝子発現量が、ミラノ基準内で肝ガンが再発する可能性が高い患者において、肝ガン患者の肝ガン組織の肝ガン病変部から得られた遺伝子発現量、肝ガン患者の肝ガン組織の正常組織部から得られた遺伝子発現量、および肝ガン患者の肝ガン組織の肝ガン病変部の遺伝子発現量と肝ガン患者の肝ガン組織の正常組織部の遺伝子発現量の比率が減少、低減もしくは増加、増大していることを見出し、本発明を完成させた。
【0020】
1.発明の概要
本発明は、以下の特徴を有する。
本発明は、第1の態様において、下記の(a)〜(e)に示すポリヌクレオチド、その変異体またはその断片からなる群から選択される1または複数のポリヌクレオチドを含む、肝ガン患者予後予測用組成物を提供する。
(a)配列番号1〜6、および8〜9で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてu(ウラシル)がt(チミジン)である塩基配列、からなるポリヌクレオチド、その変異体、その誘導体、または15以上の連続した塩基を含むその断片
(b)配列番号1〜6、および8〜9で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、を含むポリヌクレオチド
(c)配列番号1〜6、および8〜9で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチド、その変異体、その誘導体、または15以上の連続した塩基を含むその断片
(d)配列番号1〜6、および8〜9で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、に相補的な塩基配列を含むポリヌクレオチド
(e)前記(a)〜(d)のいずれかのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、または15以上の連続した塩基を含むその断片
その実施形態において、上記組成物は、下記の(f)〜(j)に示すポリヌクレオチド、その変異体、その誘導体、またはその断片からなる群から選択されるポリヌクレオチドをさらに含む。
(f)配列番号7で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、からなるポリヌクレオチド、その変異体、その誘導体、または15以上の連続した塩基を含むその断片
(g)配列番号7で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、を含むポリヌクレオチド
(h)配列番号7で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチド、その変異体、その誘導体、または15以上の連続した塩基を含むその断片
(i)配列番号7で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、に相補的な塩基配列を含むポリヌクレオチド
(j)前記(f)〜(i)のいずれかのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、または15以上の連続した塩基を含むその断片
本発明は、第2の態様において、上記のいずれかに記載の(a)〜(e)に示すポリヌクレオチド、その変異体、その誘導体、及び/又はその断片の1または複数を含む、肝ガン患者予後予測用キットを提供する。
【0021】
その実施形態において、上記キットは、上記の(f)〜(j)のいずれかに示すポリヌクレオチド、その変異体、その誘導体、及び/又はその断片をさらに含む。
【0022】
別の実施形態において、上記ポリヌクレオチドが、配列番号1〜9のいずれかで表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、からなるポリヌクレオチド、その相補的配列からなるポリヌクレオチド、それらのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、又はそれらの15以上の連続した塩基の1以上、好ましくは2以上を含む断片である、上記のキットを提供する。
【0023】
さらに別の実施形態において、上記ポリヌクレオチドが、別個に又は任意に組み合わせて異なる容器に包装されている、上記のキットを提供する。
【0024】
本発明は、第3の態様において、上記の(a)〜(e)のいずれかに示すポリヌクレオチド、その変異体、その誘導体、及び/又はその断片の1または複数を含む、肝ガン患者予後予測用診断用DNAチップを提供する。
【0025】
その実施形態において、上記DNAチップは、上記の(f)〜(j)のいずれかに示すポリヌクレオチド、その変異体、その誘導体、及び/又はその断片をさらに含む。
【0026】
本発明は、第4の態様において、上記の組成物のポリヌクレオチドのガン病変部の遺伝子発現量、正常組織部の遺伝子発現量、及びガン病変部の遺伝子発現量と正常組織部の遺伝子発現量の比率から構成される因子を算出し、この因子の3以上を測定することを含む、被験者の肝ガン治療後のミラノ基準内再発の可能性をin vitroで判定する肝ガン患者予後予測のための方法を提供する。
【0027】
その実施形態において、上記の方法は、本発明の第2の態様に記載のキットを使用する。
【0028】
別の実施形態において、上記の方法は、本発明の第3の態様に記載のDNAチップを使用する。
【0029】
本発明はさらに、第5の態様において、上記のいずれかの組成物、上記のいずれかのキット、上記のいずれかのDNAチップ、又はそれらの組み合わせを用いて、被験者の肝ガン治療後のミラノ基準内再発の可能性が既知の複数の試料中の標的核酸の発現量をin vitroで測定する第1の工程、前記第1の工程で得られた該標的核酸の肝ガン患者の肝ガン病変部における遺伝子発現量、肝ガン患者の正常組織部における遺伝子発現量、および肝ガン患者の肝ガン病変部の遺伝子発現量と肝ガン患者の正常組織部の遺伝子発現量の比率を測定し、そこから算出される因子を教師とした判別式(Cox比例ハザード回帰モデルを用いた判別式)を作成する第2の工程、被験者の肝臓由来の試料中の該標的核酸の発現量を第1の工程と同様にin vitroで測定する第3の工程、前記第2の工程で得られた判別式に第3の工程で得られた該標的核酸の発現量の測定値を代入し、該判別式から得られた結果に基づいて、被験者の肝ガン治療後のミラノ基準内再発の可能性を判定する第4の工程を含む、肝ガン患者予後予測のための方法を提供する。
【0030】
本発明はさらに、第6の態様において、上記のいずれかの組成物、上記のいずれかのキット、又は上記のいずれかのDNAチップの、被験者の肝ガン治療後のミラノ基準内再発の可能性をin vitroで判定するための肝ガン患者予後予測用組成物および方法への使用を提供する。
【0031】
2.定義
本明細書中で使用する用語は、以下の定義を有する。
ヌクレオチド、ポリヌクレオチド、DNA、RNAなどの略号による表示は、「塩基配列又はアミノ酸配列を含む明細書等の作成のためのガイドライン」(日本国特許庁編)及び当技術分野における慣用に従うものとする。
【0032】
本明細書において「ポリヌクレオチド」とは、RNA及びDNAのいずれも包含する核酸に対して用いられる。なお、上記DNAには、cDNA、ゲノムDNA、及び合成DNAのいずれもが含まれる。また上記RNAには、total RNA、mRNA、rRNA、miRNA、siRNA、snoRNA、snRNA、non−coding RNA及び合成RNAのいずれもが含まれる。また、本明細書では、ポリヌクレオチドは核酸と互換的に使用される。
【0033】
本明細書において「遺伝子」とは、RNA、および2本鎖DNAのみならず、それを構成する正鎖(又はセンス鎖)又は相補鎖(又はアンチセンス鎖)などの各1本鎖DNAを包含することを意図して用いられる。またその長さによって特に制限されるものではない。
【0034】
従って、本明細書において「遺伝子」は、特に言及しない限り、ヒトゲノムDNAを含む2本鎖DNA、cDNAを含む1本鎖DNA(正鎖)、該正鎖と相補的な配列を有する1本鎖DNA(相補鎖)、及びこれらの断片、およびヒトゲノムのいずれも含む。また該「遺伝子」は特定の塩基配列(又は配列番号)で示される「遺伝子」だけではなく、これらによってコードされるRNAと生物学的機能が同等であるRNA、例えば同族体(すなわち、ホモログ)、遺伝子多型などの変異体、及び誘導体をコードする「核酸」が包含される。かかる同族体、変異体又は誘導体をコードする「核酸」としては、具体的には、後に記載したストリンジェントな条件下で、上記の配列番号1〜9で示されるいずれかの塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、の相補配列とハイブリダイズする塩基配列を有する「核酸」を挙げることができる。なお、「遺伝子」は、機能領域の別を問うものではなく、例えば発現制御領域、コード領域、エキソン又はイントロンを含むことができる。
【0035】
本明細書において「転写産物」とは、遺伝子のDNA配列を鋳型にして合成されたRNAのことをいう。RNAポリメラーゼが遺伝子の上流にあるプロモーターと呼ばれる部位に結合し、DNAの塩基配列に相補的になるように3'末端にリボヌクレオチドを結合させていく形でRNAが合成される。このRNAには遺伝子そのもののみならず、発現制御領域、コード領域、エキソン又はイントロンをはじめとする転写開始点からポリA配列の末端にいたるまでの全配列が含まれる。
【0036】
また、本明細書において「マイクロRNA(miRNA)」は、特に言及しない限り、ヘアピン様構造のRNA前駆体として転写され、RNase III切断活性を有するdsRNA切断酵素により切断され、RISCと称するタンパク質複合体に取り込まれ、mRNAの翻訳抑制に関与する15〜25塩基、好ましくは21〜24塩基、の非コーディングRNAを意図して用いられる。また本明細書で使用する「miRNA」は特定の塩基配列(又は配列番号)で示される「miRNA」だけではなく、該「miRNA」の前駆体(pre−miRNA、pri−miRNA)を含有し、これらによってコードされるmiRNAと生物学的機能が同等であるmiRNA、例えば同族体(すなわち、ホモログ)、遺伝子多型などの変異体、及び誘導体をコードする「miRNA」も包含する。かかる前駆体、同族体、変異体又は誘導体をコードする「miRNA」としては、具体的には、miRBase release13(http://www.mirbase.org/)により同定することができ、後に記載したストリンジェントな条件下で、上記の配列番号1〜9で示されるいずれかの特定塩基配列の相補配列とハイブリダイズする塩基配列を有する「miRNA」を挙げることができる。
【0037】
本明細書において「プローブ」とは、遺伝子の発現によって生じたRNA又はそれに由来するポリヌクレオチドを特異的に検出するために使用されるポリヌクレオチド及び/又はそれに相補的なポリヌクレオチドを包含する。
【0038】
本明細書において「プライマー」とは、遺伝子の発現によって生じたRNA又はそれに由来するポリヌクレオチドを特異的に認識し、増幅する、連続するポリヌクレオチド及び/又はそれに相補的なポリヌクレオチドを包含する。
【0039】
ここで相補的なポリヌクレオチド(相補鎖、逆鎖)とは、配列番号によって定義される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、からなるポリヌクレオチドの全長配列、又はその部分配列、(ここでは便宜上、これを正鎖と呼ぶ)に対してA:T(U)、G:Cといった塩基対関係に基づいて、塩基的に相補的な関係にあるポリヌクレオチドを意味する。ただし、かかる相補鎖は、対象とする正鎖の塩基配列と完全に相補配列を形成する場合に限らず、対象とする正鎖とストリンジェントな条件でハイブリダイズできる程度の相補関係を有するものであってもよい。
【0040】
本明細書において「ストリンジェントな条件」とは、プローブが他の配列に対するよりも、検出可能により大きな程度(例えばバックグラウンドよりも少なくとも2倍)で、その標的配列に対してハイブリダイズする条件をいう。ストリンジェントな条件は配列依存性であり、ハイブリダイゼーションが行われる環境によって異なる。ハイブリダイゼーション及び/又は洗浄条件のストリンジェンシーを制御することにより、プローブに対して100%相補的である標的配列が同定され得る。
【0041】
本明細書において「変異体」とは、核酸の場合、多型性、突然変異などに起因した天然の変異体、あるいは配列番号1〜9で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、又はその部分配列において1、2もしくは3又はそれ以上、好ましくは1もしくは2個の塩基の欠失、置換、付加又は挿入を含む変異体、あるいは配列番号1〜9のmiRNAの前駆体RNAの塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、又はその部分配列において1又は2以上、好ましくは1又は数個の塩基の欠失、置換、付加又は挿入を含む変異体、あるいは該塩基配列の各々又はその部分配列と約80%以上、約85%以上、約90%以上、約95%以上、約97%以上、約98%以上、約99%以上の%同一性を示す変異体、あるいは該塩基配列又はその部分配列を含むポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドと上記定義のストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸を意味する。
【0042】
本明細書において「数個」とは、約6、5、4、3又は2個の整数を意味する。
本明細書において、変異体は、部位特異的突然変異誘発法、PCR法を利用した突然変異導入法などの周知の技術を用いて作製可能である。
【0043】
本明細書において「%同一性」は、上記のBLASTやFASTAによるタンパク質又は遺伝子の検索システムを用いて、ギャップを導入して、又はギャップを導入しないで、決定することができる(Karlin,S.ら、1993年、Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A.、第90巻、p.5873-5877;Altschul,S.F.ら、1990年、Journal of Molecular Biology、第215巻、p.403−410;Pearson,W.R.ら、1988年、Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A.、第85巻、p.2444-2448)。
【0044】
本明細書において「誘導体」とは、修飾核酸、非限定的に例えば、蛍光団などによるラベル化誘導体、修飾ヌクレオチド(例えばハロゲン、メチルなどのアルキル、メトキシなどのアルコキシ、チオ、カルボキシメチルなどの基を含むヌクレオチド及び塩基の再構成、二重結合の飽和、脱アミノ化、酸素分子の硫黄分子への置換などを受けたヌクレオチドなど)を含む誘導体、PNA(peptide nucleic acid; Nielsen, P.E. et al., 1991, Science 254:1497)、LNA(locked nucleic acid; Obika, S. et al., 1998, Tetrahedron Lett. 39:5401)などを含むことを意味する。
【0045】
本明細書において「予測、判定、検出又は診断用組成物」とは、肝ガンの罹患の有無、罹患の程度もしくは改善の有無や改善の程度を診断するために、また肝ガンの予防、改善又は治療に有用な候補物質をスクリーニングするために、直接又は間接的に利用されるものをいう。これには肝ガンの罹患に関連して生体内、特に肝組織において発現が変動する遺伝子を特異的に認識し、また結合することのできるヌクレオチド、オリゴヌクレオチド及びポリヌクレオチドを包含する。これらのヌクレオチド、オリゴヌクレオチド及びポリヌクレオチドは、上記性質に基づいて生体内、組織や細胞内などで発現した上記遺伝子を検出するためのプローブとして、また生体内で発現した上記遺伝子を増幅するためのプライマーとして有効に利用することができる。
【0046】
本明細書でおいて「予測」とは、予測、判定、検出又は診断を指す。
本明細書において予測、判定、検出又は診断の対象となる「試料」とは、肝ガンの発生にともない本発明の遺伝子が発現変化する組織を指す。具体的には肝組織及びその周辺の脈管、リンパ節及び臓器、また転移が疑われる臓器、および血液、尿、唾液、便、毛髪、皮膚、汗などを指す。
【0047】
本明細書で使用される「miR−100遺伝子」又は「miR−100」という用語は、配列番号1に記載のhsa−miR−100遺伝子(miRbase Accession No.MIMAT0000098)やその他生物種ホモログなどが包含される。hsa−miR−100遺伝子は、Mourelatos,Z.ら、2002年、Genes Dev.、第16巻、p.720−728に記載される方法によって得ることができる。
【0048】
本明細書で使用される「miR−27a遺伝子」又は「miR−27a」という用語は、配列番号2に記載のhsa−miR−27a遺伝子(miRbase Accession No.MIMAT0000084)やその他生物種ホモログなどが包含される。hsa−miR−27a遺伝子は、Lagos−Quintana,M.ら、2001年、Science、第294巻、p.853−858に記載される方法によって得ることができる。
【0049】
本明細書で使用される「miR−24遺伝子」又は「miR−24」という用語は、配列番号3に記載のhsa−miR−24遺伝子(miRbase Accession No.MIMAT0000080)やその他生物種ホモログなどが包含される。hsa−miR−24遺伝子は、Lagos−Quintana,M.ら、2001年、Science、第294巻、p.853−858に記載される方法によって得ることができる。
【0050】
本明細書で使用される「miR−99b遺伝子」又は「miR−99b」という用語は、配列番号4に記載のhsa−miR−99b遺伝子(miRbase Accession No.MIMAT0000689)やその他生物種ホモログなどが包含される。hsa−miR−99b遺伝子は、Lagos−Quintana,M.ら、2002年、Curr. Biol.、第12巻、p.735−739に記載される方法によって得ることができる。
【0051】
本明細書で使用される「miR−125a−5p遺伝子」又は「miR−125a−5p」という用語は、配列番号5に記載のhsa−miR−125a−5p遺伝子(miRbase Accession No.MIMAT0000443)やその他生物種ホモログなどが包含される。hsa−miR−125a−5p遺伝子は、Lagos−Quintana,M.ら、2002年、Curr. Biol.、第12巻、p.735−739に記載される方法によって得ることができる。
【0052】
本明細書で使用される「miR−96遺伝子」又は「miR−96」という用語は、配列番号6に記載のhsa−miR−96遺伝子(miRbase Accession No.MIMAT0000095)やその他生物種ホモログなどが包含される。hsa−miR−96遺伝子は、Mourelatos,Z.ら、2002年、Genes Dev.、第16巻、p.720−728に記載される方法によって得ることができる。
【0053】
本明細書で使用される「miR−125b遺伝子」又は「miR−125b」という用語は、配列番号7に記載のhsa−miR−125b遺伝子(miRbase Accession No.MIMAT0000423)やその他生物種ホモログなどが包含される。hsa−miR−125b遺伝子は、Cai,Xら、2005年、Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A.、 第102巻、5570−5575に記載される方法によって得ることができる。
【0054】
本明細書で使用される「miR−99a遺伝子」又は「miR−99a」という用語は、配列番号8に記載のhsa−miR−99a遺伝子(miRbase Accession No.MIMAT0000097)やその他生物種ホモログなどが包含される。hsa−miR−100遺伝子は、Mourelatos,Z.ら、2002年、Genes Dev.、第16巻、p.720−728に記載される方法によって得ることができる。
【0055】
本明細書で使用される「miR−21遺伝子」又は「miR−21」という用語は、配列番号9に記載のhsa−miR−21遺伝子(miRbase Accession No.MIMAT0000076)やその他生物種ホモログなどが包含される。hsa−miR−21遺伝子は、Lagos−Quintana,M.ら、2001年、Science、第294巻、p.853−858に記載される方法によって得ることができる。
【0056】
本明細書で使用される「予後」とは、肝ガン患者の治療後の再発の有無、および再発までの期間を指す。
【0057】
本明細書で使用される「ミラノ基準」とは、肝臓ガンの腫瘍条件が単発ガンならば5cm以下、多発ガンなら3cm以下で3個以内、を満たすことを指標とする肝移植の国際基準を示す(http://ganjoho.ncc.go.jp/public/cancer/data/liver.html)。
【0058】
本明細書で使用される「肝ガンの治療」とは、日本肝臓学会編「科学的根拠に基づく肝癌診療ガイドライン 2009年版」に示されている肝臓ガンの治療法を指す。
【0059】
本明細書で使用される「因子」とは、肝ガン患者の肝ガン病変部から得られた遺伝子発現量、肝ガン患者の正常組織部から得られた遺伝子発現量、および肝ガン患者の肝ガン病変部の遺伝子発現量と肝ガン患者の正常組織部の遺伝子発現量の比率を指す。
【0060】
本明細書で使用される「平均AUROC」とは、LOOCV法による予測した肝ガン患者治療予後の再発の可能性に対するAUROCを年次ごとに計算し、生存期間を通じてのAUROCの平均値を指す。
【0061】
本明細書で使用される「P」または「P値」とは、統計学的検定において、統計量が仮定した分布の中で、仮定に反する値となる確率を示す。したがって「P」または「P値」が小さいほど、仮定が真に近いことが想定される。
【発明の効果】
【0062】
本発明は、肝ガンの予後の予測、判定、検出又は診断に有用な予測、判定、検出又は診断用組成物、該組成物を利用した肝ガンの予後の予測、判定、検出又は診断方法、及び該組成物を利用した肝ガンの予後の予測、判定、検出又は診断キットを提供するものであり、これによって、肝ガンの治療後の予後に対して特異的かつ高予測率の、及び迅速でかつ簡便な、予測、判定、検出又は診断方法を提供するという格別の作用効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】表1に記載の因子及び遺伝子を決定するための解析の流れを示す。
【図2】図1に記載の流れに従ってLOOCV法を用いて表1に記載の因子をCox比例ハザードモデルに組み入れて解析した場合の肝ガン患者予後予測である平均AUROCが最大となった6種類の因子用いた場合の予測結果を示す。縦軸は、肝ガン患者の生存率、横軸は、肝ガン患者の無再発生存期間を示し、細線は、73症例の肝ガン患者に対して行ったLOOCV法による予測結果が再発する可能性が高いと予測したHigh Risk Groupの生存曲線、太線は、73症例の肝ガン患者に対して行ったLOOCV法による予測結果が再発しない可能性が高いと予測したLow Risk Groupの生存曲線を示す。p値は73症例の肝ガン患者に対して行ったLOOCV法による予測結果が再発する可能性が高いと予測したHigh Risk Groupと再発しない可能性が高いと予測したLow Risk Groupの間のCox比例ハザード分析による有意差を示し、平均AUROCは肝ガン治療後から0.5年から5年における予測精度の平均AUROCを示す。
【図3】表1に記載の遺伝子に対応する肝ガン患者の肝ガン病変部から得られた遺伝子発現量の底が2の対数値と肝ガン患者の正常組織部から得られた遺伝子発現量の底が2の対数値、および肝ガン患者の肝ガン病変部の遺伝子発現量と肝ガン患者の正常組織部の遺伝子発現量の比率の底が2の対数値からなる因子を1、2、3、4、5、及び6種類用いた場合の、73症例の肝ガン患者に対して行ったLOOCV法によるCox比例ハザード回帰モデルで予測した平均AUROCの推移を示す。
【図4】図1に記載の流れに従ってLOOCV法を用いて肝ガン患者の臨床情報をCox比例ハザードモデルに組み入れて解析した場合の肝ガン患者予後予測の精度として平均AUROCが最大となった33種類の臨床情報を用いた場合の予測結果を示す。縦軸は、肝ガン患者の生存率、横軸は、肝ガン患者の無再発生存期間を示し、細線は、73症例の肝ガン患者に対して行ったLOOCV法による予測結果が再発する可能性が高いと予測したHigh Risk Groupの生存曲線、太線は、73症例の肝ガン患者に対して行ったLOOCV法による予測結果が再発しない可能性が高いと予測したLow Risk Groupの生存曲線を示す。p値は73症例の肝ガン患者に対して行ったLOOCV法による予測結果が再発する可能性が高いと予測したHigh Risk Groupと再発しない可能性が高いと予測したLow Risk Groupの間のCox比例ハザード分析による有意差を示し、平均AUROCは肝ガン治療後から0.5年から5年における予測精度の平均AUROCを示す。
【発明を実施するための形態】
【0064】
以下に本発明をさらに具体的に説明する
1.肝ガンの標的核酸
本発明の上記定義の肝ガン患者予後予測用組成物及びキットを使用して肝ガン治療後のミラノ基準内再発の可能性を予測するための肝ガンマーカーとしての標的核酸には、例えば、配列番号1〜9で表される塩基配列を含むヒト遺伝子(すなわち、それぞれ、miR−100、miR−27a、miR−24、miR−99b、miR−125a−5p、miR−96、miR−125b、miR−99a、及びmiR−21)、それらの同族体、あるいはそれらの変異体又は誘導体が含まれる。ここで、遺伝子、同族体、転写産物、変異体及び誘導体は、上記定義のとおりである。好ましい標的核酸は、配列番号1〜9で表される塩基配列を含むヒト遺伝子、それらの転写産物、より好ましくは該転写産物、すなわちmiRNA、その前駆体RNAであるpri−miRNAおよびpre−miRNAである。
【0065】
本発明において肝ガン予後予測の標的となる上記遺伝子はいずれも、肝ガンの治療後の予後が良い被験者と比べて肝ガンの治療後の予後が悪い被験者において、肝ガン患者の肝ガン病変部から得られた遺伝子発現量、正常組織部から得られた遺伝子発現量、および肝ガン病変部の遺伝子発現量と正常組織部の遺伝子発現量の比率が減少、低減もしくは増加、増大しているものである(後述の実施例の表1参照)。
【0066】
第1の標的核酸は、miR−100遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。miR−100遺伝子は原発性肝ガンと転移性肝ガンの間で遺伝子発現量が異なることがしられているが(特許文献1)、これまでにmiR−100遺伝子又はその転写産物の発現が肝ガンのミラノ基準内再発の予測マーカーになりうるという報告は知られていない。
【0067】
第2の標的核酸は、miR−27a遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。これまでにmiR−27a遺伝子又はその転写産物の発現が肝ガンのミラノ基準内再発の予測マーカーになりうるという報告は知られていない。
【0068】
第3の標的核酸は、miR−24遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。miR−24遺伝子は原発性肝ガンと転移性肝ガンの間で遺伝子発現量が異なることがしられているが(特許文献1)、これまでにmiR−24遺伝子又はその転写産物の発現が肝ガンのミラノ基準内再発の予測マーカーになりうるという報告は知られていない。
【0069】
第4の標的核酸は、miR−99b遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。miR−99b遺伝子は原発性肝ガンと転移性肝ガンの間で遺伝子発現量が異なることがしられているが(非特許文献1)、これまでにmiR−99b遺伝子又はその転写産物の発現が肝ガンのミラノ基準内再発の予測マーカーになりうるという報告は知られていない。
【0070】
第5の標的核酸は、miR−125a−5p遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。miR−125a−5p遺伝子は原発性肝ガンと転移性肝ガンの間で遺伝子発現量が異なることがしられているが(特許文献1)、これまでにmiR−125a−5p遺伝子又はその転写産物の発現が肝ガンのミラノ基準内再発の予測マーカーになりうるという報告は知られていない。
【0071】
第6の標的核酸は、miR−96遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。miR−96遺伝子はB型肝炎ウィルスに感染した肝ガン患者において発現が高いことがしられているが(非特許文献4)、これまでにmiR−96遺伝子又はその転写産物の発現が肝ガンのミラノ基準内再発の予測マーカーになりうるという報告は知られていない。
【0072】
第7の標的核酸は、miR−125b遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。miR−125b遺伝子は原発性肝ガンの再発予測マーカーとしての可能性が示されている(非特許文献1)。
【0073】
第8の標的核酸は、miR−99a遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。miR−99a遺伝子は原発性肝ガンと転移性肝ガンの間で遺伝子発現量が異なることがしられているが(特許文献1)、これまでにmiR−99a遺伝子又はその転写産物の発現が肝ガンのミラノ基準内再発の予測マーカーになりうるという報告は知られていない。
【0074】
第9の標的核酸は、miR−21遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。miR−21遺伝子は早期肝ガン患者において発現が上昇することが知られているが(非特許文献5)、これまでにmiR−21遺伝子又はその転写産物の発現が肝ガンのミラノ基準内再発の予測マーカーになりうるという報告は知られていない
【0075】
2.肝ガン患者予後診断用組成物
本発明において、肝ガン患者予後を予測するための、あるいは肝ガン患者予後を診断するために使用可能な核酸組成物は、肝ガンの標的核酸としての、ヒト由来のmiR−100、miR−27a、miR−24、miR−99b、miR−125a−5p、miR−96、miR−125b、miR−99a、及びmiR−21、それらの同族体、それらの転写産物又、あるいはそれらの変異体又は誘導体の存在、遺伝子発現量又は存在量を定性的及び/又は定量的に測定することを可能にする。
【0076】
上記の標的核酸は、いずれも、肝ガンの治療後の予後が良い被験者と比べて肝ガンの治療後の予後が悪い被験者において、肝ガン患者の肝ガン病変部から得られた遺伝子発現量、正常組織部から得られた遺伝子発現量、および肝ガン病変部の遺伝子発現量と正常組織部の遺伝子発現量の比率が減少、低減もしくは増加、増大する。それゆえ、本発明の組成物は、肝ガンの治療後の予後が良い被験者の肝ガン病変部と正常組織部と肝ガンの治療後の予後が悪い被験者の肝ガン病変部と正常組織部について標的核酸の発現量を測定し、肝ガン患者予後が良いこと/又は肝ガン患者予後が悪いことを比較するために有効に使用することができる。
【0077】
本発明で使用可能な組成物は、肝ガンに罹患した患者の試料において配列番号1〜9で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、を含むポリヌクレオチド群及びその相補的ポリヌクレオチド群、該塩基配列に相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でそれぞれハイブリダイズするポリヌクレオチド群及びその相補的ポリヌクレオチド群、ならびにそれらのポリヌクレオチド群の塩基配列において15以上、好ましくは21〜24の連続した塩基を含むポリヌクレオチド群から選ばれた1以上、好ましくは2以上のポリヌクレオチドの組み合わせを含む。これらのポリヌクレオチドは、標的核酸である上記肝ガンマーカーを検出するためのプローブおよびプライマーとして使用できる。
【0078】
具体的には、本発明の組成物は、以下の1以上、好ましくは2以上のポリヌクレオチド、その変異体、その誘導体、又はその断片を含むことができる。
(1)配列番号1〜9で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、からなるポリヌクレオチド群、それらの変異体、それらの誘導体、又は15以上の連続した塩基を含むそれらの断片。
(2)配列番号1〜9で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、を含むポリヌクレオチド群。
(3)配列番号1〜6、および8〜9で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、からなるポリヌクレオチド群、それらの変異体、それらの誘導体、又は15以上の連続した塩基を含むそれらの断片。
【0079】
(4)配列番号1〜6、および8〜9で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、を含むポリヌクレオチド群、それらの変異体、それらの誘導体、又は15以上の連続した塩基を含むそれらの断片。
(5)配列番号1〜6、および8〜9で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチド群、それらの変異体、それらの誘導体、又は15以上の連続した塩基を含むそれらの断片。
(6)配列番号1〜6、および8〜9で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、に相補的な塩基配列を含むポリヌクレオチド群。
【0080】
(7)配列番号1〜6、および8〜9で表される塩基配列においてuがtである塩基配列の各々と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド群、又は15以上の連続した塩基を含むそれらの断片。
(8)配列番号1〜6、および8〜9で表される塩基配列においてuがtである塩基配列の各々からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド群、又は15以上の連続した塩基を含むそれらの断片。
(9)配列番号7で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、からなるポリヌクレオチド、それらの変異体、それらの誘導体、又は15以上の連続した塩基を含むそれらの断片。
【0081】
(10)配列番号7で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、を含むポリヌクレオチド、それらの変異体、それらの誘導体、又は15以上の連続した塩基を含むそれらの断片。
(11)配列番号7で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチド、それらの変異体、それらの誘導体、又は15以上の連続した塩基を含むそれらの断片。
(12)配列番号7で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、に相補的な塩基配列を含むポリヌクレオチド。
【0082】
(13)配列番号7で表される塩基配列においてuがtである塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、又は15以上の連続した塩基を含むそれらの断片。
(14)配列番号7で表される塩基配列においてuがtである塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、又は15以上の連続した塩基を含むそれらの断片。
【0083】
上記(1)〜(14)のポリヌクレオチドの断片は、各ポリヌクレオチドの塩基配列において、例えば、連続する15〜配列の全塩基数、21〜24塩基などの範囲の塩基数を含むことができるが、これらに限定されないものとする。
【0084】
本発明で使用される上記ポリヌクレオチド類又はその断片類はいずれもDNAでもよいしRNAでもよい。
【0085】
本発明の組成物としてのポリヌクレオチドは、DNA組換え技術、PCR法、DNA/RNA自動合成機による方法などの一般的な技術を用いて作製することができる。
【0086】
DNA組換え技術、部位特異的突然変異導入法、PCR法などの技術は、例えばAusubelら, Current Protocols in Molecular Biology, John Willey & Sons, US (1993); Sambrookら, Molecular Cloning A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, US (1989)などに記載される技術を使用することができる。
【0087】
ヒト由来の、miR−100、miR−27a、miR−24、miR−99b、miR−125a−5p、miR−96、miR−125b、miR−99a、及びmiR−21遺伝子は公知であり、前述のようにその取得方法も知られている。このため、これらの遺伝子をクローニングすることによって、本発明の組成物としてのポリヌクレオチドを作製することができる。
【0088】
本発明の組成物を構成するポリヌクレオチドは、DNA自動合成装置を用いて化学的に合成することができる。この合成には一般にホスホアミダイト法が使用され、この方法によって全長のmicroRNAに相当する一本鎖DNAを自動合成することができる。DNA自動合成装置は、例えばPolygen社、Life Technologies社などから市販されている。
【0089】
あるいは、本発明のポリヌクレオチドは、cDNAクローニング法によって作製することもできる。cDNAクローニング技術は、例えばmicroRNA Cloning Kit Wakoなどを利用できる。
【0090】
3.肝ガン患者予後診断用キット
本発明はまた、本発明の組成物に含まれるものと同じポリヌクレオチド、その変異体及び/又はその断片の1以上、好ましくは2以上、を含む肝ガン患者予後予測用キットを提供する。
【0091】
本発明のキットは、上記2に記載したポリヌクレオチド類から選択される、1以上、好ましくは2以上、のポリヌクレオチド、その変異体、その誘導体、及び/又はその断片を含む。ここで、変異体及び誘導体は上で定義されたものを含む。
【0092】
本発明のキットは、配列番号1〜6、および8〜9で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、を含むポリヌクレオチド、その相補的配列を含むポリヌクレオチド、それらのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、又はそれらのポリヌクレオチドの断片、その変異体、もしくはその誘導体、の1以上、好ましくは2以上を含むことができる。
【0093】
本発明のキットは、さらに配列番号7で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、を含むポリヌクレオチド、その相補的配列を含むポリヌクレオチド、それらのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、又はそれらのポリヌクレオチドの断片をさらに含むことができる。
【0094】
本発明のキットに含むことができるポリヌクレオチド断片は、例えば下記の(1)〜(4)からなる群より選択される、1以上、好ましくは2以上のDNAである:
(1)配列番号1〜6、および8〜9で表される塩基配列においてuがtである塩基配列又はその相補的配列において、15以上の連続した塩基を含むDNA。
(2)配列番号1〜6、および8〜9で表される塩基配列においてuがtである塩基配列又はその相補的配列において、21以上の連続した塩基を含むDNA。
(3)配列番号1〜6、および8〜9で表される塩基配列においてuがtである塩基配列又はその相補的配列において、および配列番号7で表される塩基配列においてuがtである塩基配列又はその相補的配列において、それぞれ15以上の連続した塩基を含むDNA。
(4)配列番号1〜6、および8〜9で表される塩基配列においてuがtである塩基配列又はその相補的配列において、および配列番号7で表される塩基配列においてuがtである塩基配列又はその相補的配列において、それぞれ21以上の連続した塩基を含むDNA。
【0095】
好ましい実施形態では、前記ポリヌクレオチドが、配列番号1〜6、および8〜9のいずれかで表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、からなるポリヌクレオチド、その相補的配列からなるポリヌクレオチド、それらのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、又はそれらの15以上、好ましくは21〜24、の連続した塩基を含む断片である。
【0096】
別の好ましい実施形態では、本発明のキットは、上記のポリヌクレオチドに加えて、配列番号7で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、からなるポリヌクレオチド、その相補的配列からなるポリヌクレオチド、それらのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、又はそれらの15以上、好ましくは21〜24、の連続した塩基を含む断片をさらに含むことができる。
【0097】
本発明はまた、本発明の組成物に含まれるものと同じポリヌクレオチド、その変異体及び/又はその断片の遺伝子発現量から算出される肝ガン患者の肝ガン病変部における遺伝子発現量、肝ガン患者の正常組織部における遺伝子発現量、および肝ガン患者の肝ガン病変部の遺伝子発現量と肝ガン患者の正常組織部の遺伝子発現量の比率の3以上、を測定することを含む肝ガン患者予後予測用キットを提供する。
【0098】
本発明において、ポリヌクレオチドの断片のサイズは、各ポリヌクレオチドの塩基配列において、例えば、連続する15〜配列の全塩基数、21〜24塩基などの範囲の塩基数である。
【0099】
本発明のキットには、上で説明した本発明におけるポリヌクレオチド、その変異体又はその断片に加えて、肝ガン患者予後予測を可能とする既知の又は将来見出されるポリヌクレオチドも包含させることができる。
【0100】
本発明のキットに含まれるポリヌクレオチド、その変異体又はその断片は、個別に又は任意に組み合わせて異なる容器に包装される。
【0101】
4.DNAチップ
本発明はさらに、本発明の組成物及び/又はキットに含まれるものと同じポリヌクレオチド(或いは、上記の2節の組成物及び/又は3節のキットに記載されたポリヌクレオチド)、変異体、断片及びそれらの組み合わせを含む肝ガン患者予後予測用DNAチップを提供する。
【0102】
DNAチップの基板としては、DNAを固相化できるものであれば特に制限はなく、スライドガラス、シリコン製チップ、ポリマー製チップ及びナイロンメンブレンなどを例示することができる。またこれらの基板にはポリLリジンコートやアミノ基、カルボキシル基などの官能基導入などの表面処理がされていてもよい。
【0103】
また固相化法については一般に用いられる方法であれば特に制限はなく、スポッター又はアレイヤーと呼ばれる高密度分注機を用いてDNAをスポットする方法や、ノズルより微少な液滴を圧電素子などにより噴射する装置(インクジェット)を用いてDNAを基板に吹き付ける方法、又は基板上で順次ヌクレオチド合成を行う方法を例示することができる。高密度分注機を用いる場合には、例えば多数のウェルを持つプレートのおのおののウェルに異なった遺伝子溶液を入れておき、この溶液をピン(針)で取り上げて基板上に順番にスポットすることによる。インクジェット法では、ノズルより遺伝子を噴射し、基板上に高速度で遺伝子を整列配置することによる。基板上でのDNA合成は、基板上に結合した塩基を光又は熱によって脱離する官能基で保護し、マスクを用いることにより特定部位の塩基だけに光又は熱を当て、官能基を脱離させる。その後、塩基を反応液に加えて、基板上の塩基とカップリングさせる工程を繰り返すことによって行われる。
【0104】
固相化されるポリヌクレオチドは、上記で説明した本発明の全てのポリヌクレオチドである。
【0105】
例えば、そのようなポリヌクレオチドは、以下の1以上、好ましくは2以上のポリヌクレオチド又はその断片を含むことができる。
(1)配列番号1〜9で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、からなるポリヌクレオチド群、それらの変異体、又は15以上の連続した塩基を含むそれらの断片。
(2)配列番号1〜9で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、を含むポリヌクレオチド群。
(3)配列番号1〜6、および8〜9で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、からなるポリヌクレオチド群、それらの変異体、それらの誘導体、又は15以上の連続した塩基を含むそれらの断片。
【0106】
(4)配列番号1〜6、および8〜9で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、を含むポリヌクレオチド群、それらの変異体、それらの誘導体、又は15以上の連続した塩基を含むそれらの断片。
(5)配列番号1〜6、および8〜9で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチド群、それらの変異体、それらの誘導体、又は15以上の連続した塩基を含むそれらの断片。
(6)配列番号1〜6、および8〜9で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、に相補的な塩基配列を含むポリヌクレオチド群。
【0107】
(7)配列番号1〜6、および8〜9で表される塩基配列においてuがtである塩基配列の各々と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド群、又は15以上の連続した塩基を含むそれらの断片。
(8)配列番号1〜6、および8〜9で表される塩基配列においてuがtである塩基配列の各々からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド群、又は15以上の連続した塩基を含むそれらの断片。
(9)配列番号7で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、からなるポリヌクレオチド、それらの変異体、それらの誘導体、又は15以上の連続した塩基を含むそれらの断片。
【0108】
(10)配列番号7で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、を含むポリヌクレオチド、それらの変異体、又は15以上の連続した塩基を含むそれらの断片。
(11)配列番号7で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチド、それらの変異体、それらの誘導体、又は15以上の連続した塩基を含むそれらの断片。
(12)配列番号7で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、に相補的な塩基配列を含むポリヌクレオチド。
【0109】
(13)配列番号7で表される塩基配列においてuがtである塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、又は15以上の連続した塩基を含むそれらの断片。
(14)配列番号7で表される塩基配列においてuがtである塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、又は15以上の連続した塩基を含むそれらの断片。
(15)配列番号1〜6、および8〜9で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、又はその相補的配列の各々において、15以上の連続した塩基を含むポリヌクレオチド。
【0110】
(16)配列番号1〜6、および8〜9で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、又はその相補的配列の各々において、21以上の連続した塩基を含むポリヌクレオチド。
(17)配列番号7で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、又はその相補的配列の各々において、15以上の連続した塩基を含むポリヌクレオチド。
(18)配列番号7で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、又はその相補的配列の各々において、21以上の連続した塩基を含むポリヌクレオチド。
【0111】
好ましい実施形態によれば、本発明のDNAチップは、配列番号1〜9で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、又はその相補的配列を含むポリヌクレオチドの1以上、好ましくは2以上、から全部を含むことができる。
【0112】
本発明において、固相化されるポリヌクレオチドは、ゲノムDNA、cDNA、RNA、合成DNA、合成RNAのいずれでもよいし、あるいは1本鎖でもよいし又は2本鎖でもよい。ここで、合成DNAおよび合成RNAは、上記「誘導体」の定義で説明したような修飾核酸を含む。
【0113】
標的遺伝子、RNA又はcDNAの遺伝子発現量を検出、測定することができるDNAチップの例としては、東レ株式会社の3D−Gene(登録商標) Human miRNA Oligo chip、Agilent社のHuman miRNA Microarray Kit(V2)、EXIQON社のmiRCURY LNA(登録商標) microRNA ARRAYなどを挙げることができる。
【0114】
DNAチップの作製について、例えば予め調製したプローブを固相表面に固定化する方法を使用することができる。予め調製したポリヌクレオチドプローブを固相表面に固定化する方法では、官能基を導入したポリヌクレオチドを合成し、表面処理した固相担体表面にオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドを点着し、共有結合させる(例えば、J.B.Lamtureら、Nucleic. Acids. Research、1994年、第22巻、p.2121−2125、Z.Guoら、Nucleic. Acids. Research、1994年、第22巻、p.5456−5465)。ポリヌクレオチドは、一般的には、表面処理した固相担体にスペーサ-やクロスリンカーを介して共有結合される。ガラス表面にポリアクリルアミドゲルの微小片を整列させ、そこに合成ポリヌクレオチドを共有結合させる方法も知られている(G.Yershovら、Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A.、1996年、第94巻、p.4913)。また、シリカマイクロアレイ上に微小電極のアレイを作製し、電極上にはストレプトアビジンを含むアガロースの浸透層を設けて反応部位とし、この部位をプラスに荷電させることでビオチン化ポリクレオチドを固定し、部位の荷電を制御することで、高速で厳密なハイブリダイゼーションを可能にする方法も知られている(R.G.Sosnowskiら、Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A.、1997年、第94巻、p.1119―1123)。
【0115】
DNAチップ解析を利用する場合は、本発明の上記診断用組成物をDNAプローブ(一本鎖又は二本鎖)として基板に貼り付けたDNAチップを用いる。遺伝子群を基板に固相化したものには、一般にDNAチップ及びDNAアレイという名称があり、DNAチップにはDNAマクロアレイとDNAマイクロアレイが包含されるが、本明細書ではDNAチップといった場合、該DNAアレイを含むものとする。
【0116】
5.肝ガン患者予後の検出法
本発明は、本発明の組成物、キット、DNAチップ、又はそれらの組み合わせを用いて、肝ガン患者の治療後の予後予測として肝ガン患者のミラノ基準内での再発の可能性を予測する可能性をin vitroで判定する方法であって、手術時又は内視鏡検査時に採取した試料である肝ガン患者の肝ガン病変部と正常組織部を用いて、試料中の遺伝子発現量を該診断用組成物で構成されるDNAチップによって解析し、予後が良い肝ガン患者の試料中の遺伝子発現量と予後が悪い肝ガン患者の試料中の遺伝子発現量を比較して、該試料中の標的核酸の発現量から算出される、肝ガン病変部から得られた遺伝子発現量、正常組織部から得られた遺伝子発現量、および肝ガン病変部の遺伝子発現量と正常組織部の遺伝子発現量の比率、が減少、低減もしくは増加、増大している場合、肝ガン患者の治療後の予後予測として肝ガン患者のミラノ基準内での再発の可能性を予測することを含み、ここで、該標的核酸が該組成物、キット又はDNAチップに含まれるポリヌクレオチド、その変異体又はその断片によって検出可能なものである、方法を提供する。
【0117】
本発明はまた、本発明の組成物、組成物の遺伝子発現量を測定することによって構成される因子、キット又はDNAチップの、肝ガン患者の治療後の予後予測として肝ガン患者のミラノ基準内での再発の可能性をin vitro判定するための使用を提供する。
【0118】
本発明の上記方法において、組成物、キット又はDNAチップは、上で説明したような、本発明のポリヌクレオチド、その変異体又はその断片を単一であるいはあらゆる可能な組み合わせで含むものが使用される。
【0119】
本発明の肝ガン患者予後の予測において、本発明の組成物、キット又はDNAチップに含まれるポリヌクレオチド、その変異体又はその断片は、プライマーとして又はプローブとして用いることができる。プライマーとして用いる場合には、Life Technologies社のTaqMan(登録商標) MicroRNA Assaysなどを利用できるが、この方法に限定されない。
【0120】
本発明の組成物又はキットに含まれるポリヌクレオチド、その変異体又はその断片は、ノーザンブロット法、サザンブロット法、RT−PCR法、in situ ハイブリダイゼーション法、サザンハイブリダイゼーション法などの、特定遺伝子を特異的に検出する公知の方法において、定法に従ってプライマー又はプローブとして利用することができる。測定対象試料としては、使用する検出方法の種類に応じて、被験者の肝ガン病変部、及び正常組織部の一部又は全部をバイオプシーなどで採取するか、もしくは手術によって摘出した試料から回収する。さらにそこから常法に従って調製したtotal RNAを用いてもよいし、さらに該RNAをもとにして調製される、cDNAを含む各種のポリヌクレオチドを用いてもよい。
【0121】
あるいは、採取した試料における本発明の遺伝子、RNA、cDNAなどの核酸の発現量は、DNAチップを用いて検出あるいは定量することができる。この場合、本発明の組成物又はキットはDNAチップのプローブとして使用することができる。かかるDNAチップを試料から採取したRNAをもとに調製される標識DNA又はRNAとハイブリダイズさせ、該ハイブリダイズによって形成された上記プローブと標識DNA又はRNAとの複合体を、該標識DNA又はRNAの標識を指標として検出することにより、試料中での本発明肝ガン関連遺伝子の発現の有無又は発現した遺伝子の量(遺伝子発現量)を評価することができる。本発明の方法では、DNAチップを好ましく使用できるが、これは、ひとつの試料について同時に複数遺伝子の発現の有無又は遺伝子発現量の評価が可能である。
【0122】
本発明の組成物、キット又はDNAチップは、肝ガン患者予後の予測のために有用である。具体的には、該組成物、キット又はDNAチップを使用した肝ガン患者予後予測は、手術時又は内視鏡検査時に採取した試料である肝ガン患者の肝ガン病変部と正常組織部を用いて、試料中の遺伝子発現量を該診断用組成物の遺伝子発現量を測定し、予後が良い肝ガン患者の試料中の遺伝子発現量と予後が悪い肝ガン患者の試料中の遺伝子発現量を比較して、該試料中の標的核酸の発現量から算出される、肝ガン病変部から得られた遺伝子発現量、正常組織部から得られた遺伝子発現量、および肝ガン病変部の遺伝子発現量と正常組織部の遺伝子発現量の比率が減少、低減もしくは増加、増大していることを比較することによって行うことができる。この場合、遺伝子発現量の違いには、該診断用組成物の遺伝子発現の有無も含む。
【0123】
本発明の組成物、キット又はDNAチップを利用した肝ガン患者予後が良いこと/又は予後が悪いことの検出方法は、被験者の試料の一部又は全部をバイオプシーなどで採取するか、もしくは手術によって摘出した試料である肝ガン患者の肝ガン病変部と正常組織部を用いて、試料中の遺伝子発現量を該診断用組成物のポリヌクレオチド群から選ばれた単数又は複数のポリヌクレオチド、その変異体又はその断片を用いて測定し、予後が良い肝ガン患者の試料中の遺伝子発現量と予後が悪い肝ガン患者の試料中の遺伝子発現量を比較して、該試料中の標的核酸の発現量から算出される、肝ガン病変部から得られた遺伝子発現量、正常組織部から得られた遺伝子発現量、および肝ガン病変部の遺伝子発現量と正常組織部の遺伝子発現量の比率が減少、低減もしくは増加、増大していることを比較することにより、肝ガン患者予後が良いこと/又は肝ガン患者予後が悪いことを予測することを含む。また本発明の肝ガン患者予後予測方法は、例えば肝ガン患者において、該疾患の改善のために治療薬を投与した場合における該疾患の再発の可能性を予測することもできる。
【0124】
本発明の方法は、例えば以下の(a)、(b)及び(c)の工程:
(a)被験者由来の試料を、本発明の組成物、キット又はDNAチップのポリヌクレオチドと接触させる工程、
(b)試料中の標的核酸の発現量を、上記ポリヌクレオチドをプローブとして用いて測定する工程、
(c)(b)の結果をもとに、該肝ガン患者予後が良い又は悪いことを予測する工程、
を含むことができる。
【0125】
本発明方法で用いられる試料としては、被験者の試料、例えば肝組織及びその周辺組織、肝ガンが疑われる組織など、から調製される試料を挙げることができる。具体的には該組織から調製されるRNA含有試料、或いはそれからさらに調製されるポリヌクレオチドを含む試料は、被験者の試料の一部又は全部をバイオプシーなどで採取するか、もしくは手術によって摘出した試料から回収して調製することができる。
【0126】
ここで被験者とは、哺乳動物、例えば非限定的にヒト、サル、マウス、ラットなどを指し、好ましくはヒトである。
【0127】
本発明の方法は、測定対象として用いる試料の種類に応じて工程を変更することができる。
【0128】
測定対象物としてRNAを利用する場合、肝ガン患者予後の予測は、例えば下記の工程(a)、(b)及び(c):
(a)被験者の試料から調製されたRNA又はそれから転写された相補的ポリヌクレオチド(cDNA)を、本発明の組成物、キット又はDNAチップのポリヌクレオチドと結合させる工程、
(b) 該ポリヌクレオチドに結合した試料由来のRNA又は該RNAから転写された相補的ポリヌクレオチドを、上記ポリヌクレオチドをプローブとして用いて測定する工程、
(c) 上記(b)の測定結果に基づいて、肝ガン患者予後が良いこと又は悪いことを予測する工程、
を含むことができる。
【0129】
本発明によって肝ガン患者予後を予測するために、例えば種々のハイブリダイゼーション法を使用することができる。かようなハイブリダイゼーション法には、例えばノーザンブロット法、サザンブロット法、RT−PCR法、DNAチップ解析法、in situハイブリダイゼーション法、サザンハイブリダイゼーション法などを使用することができる。
【0130】
ノーザンブロット法を利用する場合は、本発明の診断用組成物をプローブとして用いることによって、RNA中の各遺伝子発現の有無やその遺伝子発現量を検出、測定することができる。具体的には、本発明の予後予測のための診断用組成物(相補鎖)を放射性同位元素(32P、33P、35Sなど)や蛍光物質(シアン系、ローダミン系、フルオレサミン系など)などで標識し、それを常法にしたがってナイロンメンブレンなどにトランスファーした被検者の試料由来のRNAとハイブリダイズさせたのち、形成された診断用組成物(DNA)とRNAとの二重鎖を診断用組成物の標識物(放射性同位元素又は蛍光物質)に由来するシグナルを放射線検出器(BAS-1800II、富士写真フィルム株式会社、などを例示できる)又は蛍光検出器(STORM860、GEヘルスケア社、などを例示できる)で検出、測定する方法を例示することができる。
【0131】
定量RT―PCR法を利用する場合には、本発明の上記診断用組成物中のポリヌクレオチドをプライマーとして用いることによって、RNA中の遺伝子発現の有無やその遺伝子発現量を検出、測定することができる。具体的には、被検者の試料由来のRNAから常法にしたがってcDNAを調製して、これを鋳型として標的の各遺伝子の領域が増幅できるように、本発明の組成物から調製した1対のプライマー(上記cDNAに結合する正鎖と逆鎖からなる)をcDNAとハイブリダイズさせて常法によりPCR法を行い、得られた二本鎖DNAを検出する方法を例示することができる。なお、二本鎖DNAの検出法としては、上記PCRをあらかじめ放射性同位元素や蛍光物質で標識しておいたプライマーを用いて行う方法、PCR産物をアガロースゲルで電気泳動し、エチジウムブロマイドなどで二本鎖DNAを染色して検出する方法、産生された二本鎖DNAを常法にしたがってナイロンメンブレンなどにトランスファーさせて標識した診断用組成物中のポリヌクレオチドをプローブとしてこれとハイブリダイズさせて検出する方法をとることができる。
【0132】
ハイブリダイゼーション条件は、限定されないが、例えば30℃〜60℃で、SSCと界面活性剤を含む溶液中で1〜24時間の条件とする。ここで、1×SSCは、150mM塩化ナトリウム及び15mMクエン酸ナトリウムを含む水溶液(pH7.2)であり、界面活性剤はSDS、Triton、もしくはTweenなどを含む。ハイブリダイゼーション条件としては、より好ましくは3〜4×SSC、0.1〜0.5% SDSを含む。ハイブリダイゼーション後の洗浄条件としては、例えば、30℃の0.5×SSCと0.1%SDSを含む溶液、及び30℃の0.2×SSCと0.1%SDSを含む溶液、及び30℃の0.05×SSC溶液による連続した洗浄などの条件を挙げることができる。相補鎖はかかる条件で洗浄しても対象とする正鎖とハイブリダイズ状態を維持するものであることが望ましい。具体的にはこのような相補鎖として、対象の正鎖の塩基配列と完全に相補的な関係にある塩基配列からなる鎖、並びに該鎖と少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%の相同性を有する塩基配列からなる鎖を例示することができる。
【0133】
本発明の組成物又はキットのポリヌクレオチド断片をプライマーとしてPCRを実施する際のストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の例としては、例えば10mMTris−HCL(pH8.3)、50mMKCL、1〜2mM MgClなどの組成のPCRバッファーを用い、当該プライマーの配列から計算されたTm+5〜10℃において15秒から1分程度処理することなどが挙げられる。かかるTmの計算方法としてTm=2×(アデニン残基数+チミン残基数)+4×(グアニン残基数+シトシン残基数)などが挙げられる。
【0134】
これらのハイブリダイゼーションにおける「ストリンジェントな条件」の他の例については、例えばSambrook, J. & Russel, D. 著、Molecular Cloning, A LABORATORY MANUAL、Cold Spring Harbor Laboratory Press、2001年1月15日発行、の 第1巻7.42〜7.45、第2巻8.9〜8.17などに記載されており、本発明において利用できる。
【0135】
本発明はまた、本発明の組成物、キット、DNAチップ、又はそれらの組み合わせを用いて、被験者由来の試料中の標的核酸又は遺伝子の発現量を測定し、そこから算出される因子を教師サンプルとしたCox比例ハザード回帰モデルを判別式として、肝ガン患者予後が良いこと及び/又は悪いことを予測する方法を提供する。
【0136】
すなわち、本発明はさらに、本発明の組成物、キット、DNAチップ、又はそれらの組み合わせを用いて、肝ガン患者予後が良いこと/又は悪いことを予測することが既知の複数の試料中の標的核酸の発現量をin vitroで測定する第1の工程、前記第1の工程で得られた該標的核酸の発現量の測定値から因子を算出し、算出した因子を教師サンプルとしたCox比例ハザード回帰モデルによる判別式を作成する第2の工程、被験者の肝ガン病変部から得られる該標的核酸の発現量と正常組織部から得られる該標的核酸の発現量を第1の工程と同様にin vitroで測定する第3の工程、前記第2の工程で得られた判別式に第3の工程で得られた該標的核酸の発現量から因子を算出し、算出した因子を判別式に代入し、該判別式から得られた結果に基づいて、肝ガン患者予後が良いこと/又は悪いことを予測する第4の工程を含む、ここで、該標的核酸が該組成物、キット又はDNAチップに含まれるポリヌクレオチド、その変異体又はその断片によって検出可能なものである、前記方法を提供する。
【0137】
あるいは、本発明の方法は、例えば下記の工程(a)、(b)及び(c):
(a)肝ガン患者予後が良いこと及び/又は肝ガン患者予後が悪いことが既知の試料中の標的遺伝子の発現量を、本発明による診断(検出)用組成物、キット又はDNAチップを用いて測定する工程、
(b)(a)で測定された遺伝子発現量の測定値を、下記の手順に従って数2〜数9の式に代入し、Cox比例ハザード回帰モデルと呼ばれる判別式を作成する工程、
(c)被験者由来の試料中の該標的遺伝子の発現量を、本発明による予測用組成物、キット又はDNAチップを用いて測定し、(b)で作成した判別式にそれらを代入して、得られた結果に基づいて肝ガン患者予後が良いこと又は悪いことを予測する工程、
を含むことができる。
【0138】
Cox比例ハザード回帰モデルは重回帰分析型の手法で生存分析の行う解析(Cox,DR.Regression model and life tables.、J.R.1972年、Stat. Soc.、第34巻、187−220)であり、本質的にはログランク検定に等しく、一連の予後変数に基づく線形予測因子を用いて全追跡期間に亘る平均相対危険度の対数を推定する。回帰係数(β)を指数化して計算することでそれに対応する変数の相対危険度が得られる。変数が2つ以上の場合は、ある1つの回帰係数を指数化するとその方程式の他のすべての予測変数で補正した相対危険度が得られ、値のある組み合わせに対して、すべての線形予測因子を指数化することでその組み合わせの総相対危険度が求められる。
【0139】
本発明の判別式の因子は、上記2節に記載したポリヌクレオチド類から選択されるポリヌクレオチド又はその断片を測定することによって得られる値に対し、以下に記載の方法で算出される肝ガン患者診断用因子を含む。
【0140】
本発明の判別式の因子は、上記2節に記載したポリヌクレオチド類から選択されるポリヌクレオチド又はその断片を、上記3節に記載した肝ガン患者予後予測用組成物及びキットを使用して測定することによって得られる値に対し、以下に記載の方法で算出される肝ガン患者診断用因子を含む。
【0141】
具体的には、本発明の肝ガン患者診断用因子は、例えば下記の(1)〜(4)からなる群より選択される因子である:
(1)配列番号1〜6、および8〜9で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、又は配列番号1〜6、および8〜9で表される塩基配列もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列の相補的配列において、15以上の連続した塩基を含むDNAのいずれかによって測定される肝ガン患者の肝ガン病変部における遺伝子発現量、肝ガン患者の正常組織部における遺伝子発現量、および肝ガン患者の肝ガン病変部の遺伝子発現量と肝ガン患者の正常組織部の遺伝子発現量の比率。
(2)配列番号1〜6、および8〜9で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、又は配列番号1〜6、および8〜9で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列の相補的配列において、21以上の連続した塩基を含むDNAのいずれかによって測定される肝ガン患者の肝ガン病変部における遺伝子発現量、肝ガン患者の正常組織部における遺伝子発現量、および肝ガン患者の肝ガン病変部の遺伝子発現量と肝ガン患者の正常組織部の遺伝子発現量の比率。
【0142】
(3)配列番号7で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、又はその相補的配列を含み、かつ15以上の連続した塩基を含むDNAのいずれかによって測定される肝ガン患者の肝ガン病変部における遺伝子発現量、肝ガン患者の正常組織部における遺伝子発現量、および肝ガン患者の肝ガン病変部の遺伝子発現量と肝ガン患者の正常組織部の遺伝子発現量の比率。
(4)配列番号7で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、又はその相補的配列を含み、かつ21以上の連続した塩基を含むDNAのいずれかによって測定される肝ガン患者の肝ガン病変部における遺伝子発現量、肝ガン患者の正常組織部における遺伝子発現量、および肝ガン患者の肝ガン病変部の遺伝子発現量と肝ガン患者の正常組織部の遺伝子発現量の比率。
【0143】
さらに具体的には、本発明の肝ガン患者診断用因子は、因子番号1〜11で表される、下記の(1)〜(11)からなる群より選択される3以上の因子である:
(1)因子番号1によって示される、肝ガン患者の肝ガン病変部のhsa−miR−100の遺伝子発現量。
(2)因子番号2によって示される、肝ガン患者の正常組織部のhsa−miR−27aの遺伝子発現量。
(3)因子番号3によって示される、肝ガン患者の正常組織部のhsa−miR−24の遺伝子発現量。
(4)因子番号4によって示される、肝ガン患者の肝ガン病変部と肝ガン患者の正常組織部のhsa−miR−99bの遺伝子発現量の比率。
【0144】
(5)因子番号5によって示される、肝ガン患者の肝ガン病変部と肝ガン患者の正常組織部のhsa−miR−100の遺伝子発現量の比率。
(6)因子番号6によって示される、肝ガン患者の肝ガン病変部と肝ガン患者の正常組織部のhsa−miR−125a−5pの遺伝子発現量の比率。
(7)因子番号7によって示される、肝ガン患者の正常組織部のhsa−miR−96の遺伝子発現量。
(8)因子番号8によって示される、肝ガン患者の肝ガン病変部と肝ガン患者の正常組織部のhsa−miR−125bの遺伝子発現量の比率。
【0145】
(9)因子番号9によって示される、肝ガン患者の肝ガン病変部のhsa−miR−99aの遺伝子発現量。
(10)因子番号10によって示される、肝ガン患者の肝ガン病変部のhsa−miR−125bの遺伝子発現量。
(11)因子番号11によって示される、肝ガン患者の正常組織部のhsa−miR−21の遺伝子発現量。
【0146】
上記の組み合わせの例は、因子番号1〜11で表される因子を任意に組み合わせて用いることにより、肝ガン患者治療予後予測から算出される平均AUROCが0.71以上、より好ましくは0.80となって肝ガン患者予後予測が可能である(図2)。
【0147】
従って、本発明の実施形態において、より好ましい組み合わせは、配列番号1〜5に示した塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、又はその相補的配列を含むポリヌクレオド、それらのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、及び/又はその断片の遺伝子発現量を測定することによって構成される因子の組み合わせにおいて、miR−27a(配列番号2)の肝ガン患者の肝ガン組織の正常組織部の遺伝子発現量の底が2の対数値、miR−100(配列番号1)の肝ガン患者の肝ガン組織の肝ガン病変部位の遺伝子発現量の底が2の対数値、miR−99b(配列番号4)の肝ガン患者の肝ガン組織の肝ガン病変部の遺伝子発現量と肝ガン患者の肝ガン組織の正常組織部の遺伝子発現量の比率の底が2の対数値、miR−24(配列番号3)の肝ガン患者の肝ガン組織の正常組織部の遺伝子発現量の底が2の対数値、miR−100(配列番号1)の肝ガン患者の肝ガン組織の肝ガン病変部の遺伝子発現量と肝ガン患者の肝ガン組織の正常組織部の遺伝子発現量の比率の底が2の対数値、及びmiR−125a−5p(配列番号5)の肝ガン患者の肝ガン組織の肝ガン病変部の遺伝子発現量と肝ガン患者の肝ガン組織の正常組織部の遺伝子発現量の比率の底が2の対数値の因子の組み合わせであり、それを構成する各ポリヌクレオチド又は断片は、配列番号1〜5に示した塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、又はその相補的配列を含むポリヌクレオド、それらのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、及び/又はその断片から構成される。また、そのときに規定される後述の数9で定義できるCox比例ハザードモデルは数1である。
【0148】
【数1】

【0149】
本発明のキットを構成する上記の組み合わせは、あくまでも例示であり、他の種々の可能な組み合わせのすべてが本発明に包含されるものとする。
【0150】
本発明の方法で使用可能な判別式の算出例を以下に示す。
Cox比例ハザード回帰モデルを決めるためには、肝ガン患者の治療後の再発までの期間が既知の試料中の標的遺伝子の遺伝子発現量から算出される因子を教師サンプルとして用意し、以下の手順によって肝ガンの予後を示す生存曲線を示すCox比例ハザード回帰モデルの定数を決定する。
【0151】
肝ガン患者の治療後の再発までの期間が既知のサンプルが、肝ガン患者予後が良い患者群、又は肝ガン患者予後が悪い患者群のいずれかに属しているとする。これらのサンプルを教師サンプルとしたとき、教師サンプルがCox比例ハザード回帰モデルで重回帰できるとき、肝ガン患者予後の識別関数は例えば数2〜数9で決定できる。
【0152】
肝ガン患者予後が良いこと又は悪いことを予測する遺伝子発現量を遺伝子数がm個のときXで定義し(数2)、今、Xがk個の遺伝子発現量から構成されるとき、肝ガン患者の肝ガン病変部の遺伝子発現量、好ましくは遺伝子発現量の底が2の対数値をXT(数3)、肝ガン患者の正常組織部の遺伝子発現量、好ましくは遺伝子発現量の底が2の対数値をXNとする(数4)。このとき、XTとXNから肝ガン患者の肝ガン病変部と肝ガン患者の正常組織部の遺伝子発現量の比率、好ましくは肝ガン患者の肝ガン病変部の遺伝子発現量と肝ガン患者の正常組織部の遺伝子発現量の比率の底が2の対数値であるXRを算出する(数5)。このXT、XN、XRからなるXALL(数6)を因子としたとき、因子の平均値は数7、そしてその平均偏差は数8となり、Cox比例ハザード回帰モデルは数9で定義できる。
【0153】
このとき、λ(t)は,共変量Xが平均値をとったときの瞬間死亡率を示し、このCox比例ハザード回帰モデルを肝ガン患者予後に対して作製する場合、新たに与えられる肝ガン患者予後が良いか悪いか未知の患者の試料(肝ガン患者の肝ガン病変部と肝ガン患者の正常組織部)を測定して得られる遺伝子発現量から因子をこの関数に代入することによって、新たに与えられた肝ガン患者予後が良いか悪いか未知の患者の時間tにおける再発の確率(λ(t;Z))を算出することができ、肝ガン患者予後が良いか悪いか未知の患者が時間tにおいて肝ガン患者予後が良いこと及び/又は悪いことを識別できる。
数2〜数9は、以下の式からなる。
【0154】
【数2】

【0155】
【数3】

【0156】
【数4】

【0157】
【数5】

【0158】
【数6】

【0159】
【数7】

【0160】
【数8】

【0161】
【数9】

【0162】
上に示すように、未知試料のクラス分けを行うためのCox比例ハザード回帰モデルによる判別式の作成には2群の教師サンプルが必要となる。この教師サンプルは例えば今回の発明の場合、「予後が良い肝ガン患者の肝ガン病変部と肝ガン患者の正常組織部から得られた遺伝子発現量」の各患者に対応した遺伝子発現量、及び「予後が悪い肝ガン患者の肝ガン病変部と肝ガン患者の正常組織部から得られた遺伝子発現量」の各患者に対応した遺伝子発現量、の2群である。これらの遺伝子発現量から算出される因子の数(K)は実験のデザインによって様々ではあるが、個々の因子は、どのような実験においても2群間で大きく差がある場合と、比較的差が少ない、あるいは差がない場合が観察される。Cox比例ハザード回帰モデルによる判別式の精度を上げるためには、教師サンプルとなる2群に、明確な差があることが条件となるため、2群間で遺伝子発現量に差がある因子のみを抽出して利用することが必要である。
【0163】
また、Cox比例ハザード回帰モデルによる判別式に用いる因子の抽出は、図1に示すようなLeave−one−out crossvalidation(LOOCV)法を用いることが好ましい。すなわち、まず教師サンプルを学習セットとテストセットに分け、学習セットにおいて無再発生存期間を用いて因子に対する単因子のCox比例ハザード回帰分析を行い、各々の因子に対してp値を算出する。次に、ここで求めたp値の小さい順に因子の1個ずつを因子としてCox比例ハザード回帰モデルに組み込み、その都度、テストセットの算出されるハザード比と学習セットから算出される生存曲線を用いてテストセットの生存曲線を予測する。この生存曲線の予測を複数の組合せにおいて、望ましくは教師セットに含まれる試料の回数で繰り返し、年次ごとの生存率を算出する。そして、肝ガン患者治療予後と年次ごとに算出した生存率からAUROCを算出し、生存期間を通じてのAUROCの平均である平均AUROCを算出する。この因子を組み込んだ学習セットを用いたテストセットの生存曲線の予測は、算出される平均AUROCが最大となるまで繰り返し、平均AUROCを最大にする因子の組み合わせ、およびこの因子を構成する遺伝子セットを採用する。
【0164】
本発明の方法において、例えば、肝ガン患者の肝ガン病変部と肝ガン患者の正常組織部に対して、上に記載したような配列番号1〜6、8〜9に基づく1以上、好ましくは2以上の上記ポリヌクレオチド、並びに/或いは、上に記載したような配列番号7に基づくポリヌクレオチド、の遺伝子発現量を測定し、配列番号1〜9の遺伝子の遺伝子発現量から因子番号1〜11の因子(表1)を算出する。
【0165】
【表1】

【0166】
そして、これらの因子の任意の6種類の因子の組み合わせを用いて、かつ上記の因子がすべて肝ガン治療予後の良い患者と肝ガン治療予後の悪い患者間で異なり、因子が肝ガン治療予後の良い患者と肝ガン治療予後の悪い患者間で増加又は減少していることを指標にすることにより、肝ガン患者治療予後を平均AUROC値として0.80の精度で見分けることができる(図2)。
【実施例】
【0167】
本発明を以下の実施例によってさらに具体的に説明する。しかし、本発明の範囲は、この実施例によって制限されないものとする。
【0168】
[実施例1]
1.被験者の臨床病理学的所見
インフォームドコンセントを得た73名の肝ガン患者から、肝ガンの部分肝切除手術によって肝ガン組織を得た。摘出肝ガン組織について肉眼的及び/又は病理組織学的に肝ガン患者を判断し、肝ガン患者の肝ガン組織の肝ガン病変部と肝ガン患者の肝ガン組織の正常組織部を分けてただちに凍結し、液体窒素中で保存した。
【0169】
2.totalRNAの抽出
試料として上の「1」で得た、73症例の肝ガン患者の肝ガン組織の肝ガン病変部と肝ガン患者の肝ガン組織の正常組織部にたいし、Trizol reagent(life technologies社)を用いて、同社の定める手順に基づいてtotal RNAを得た。
【0170】
3.遺伝子発現量の測定
オリゴDNAマイクロアレイとしては東レ株式会社の3D−Gene(登録商標) Human miRNA Oligo chipを用いて遺伝子の絞込みを行った。東レ株式会社の3D−Gene(登録商標) Human miRNA Oligo chipは、同社の定める手順に基づいて操作した。ハイブリダイゼーションを行ったDNAチップをDNAアレイスキャナー(ScanArrayLite、パーキンエルマージャパン)を用いてスキャンし、画像を取得してGenePix Pro5.0(MolecularDevice)にて蛍光強度を数値化した。統計学的処理はSpeed T.著「Statistical analysis of gene expression microarray data」Chapman & Hall/CRC,及びCauston H.C.ら著「A beginner’s guide Microarray gene expression data analysis」Blackwell publishingを参考にし、ハイブリダイズ後の画像解析から得られたデータの対数値を用いて解析した。
【0171】
その結果、肝ガン患者の肝ガン組織の肝ガン病変部における遺伝子発現量が、肝ガン患者の肝ガン組織の正常組織部の遺伝子発現量よりも減少、低減もしくは増加、増大している遺伝子、予後が良い肝ガン患者の試料中の遺伝子発現量と予後が悪い肝ガン患者の試料中の遺伝子発現量を比較して、該試料中の標的核酸の発現量から算出される、肝ガン組織の肝ガン病変部から得られた遺伝子発現量、肝ガン組織の正常組織部から得られた遺伝子発現量、および肝ガン組織の肝ガン病変部の遺伝子発現量と肝ガン組織の正常組織部の遺伝子発現量の比率が減少、低減もしくは増加、増大している遺伝子を見出すことができた。これらの遺伝子を肝ガン予後予測用遺伝子として利用できると考えられる。
【0172】
4.予測スコアリングシステム
73症例の患者から得た試料を教師サンプルとして、Matlab(MathWorks社)を用いて判別式を作成した。また肝ガン患者の肝ガン組織の肝ガン病変部と肝ガン患者の肝ガン組織の正常組織部から得られた遺伝子発現量から因子を算出し、因子の組み合わせ、およびこの因子を構成する遺伝子をLeave−one−out crossvalidation(LOOCV)法を用い決定した(図1)。
【0173】
すなわち、まず73症例の教師サンプルを72症例の学習セットと1症例のテストセットに分け、学習セットを構成する因子に対して無再発生存期間に対する単因子のCox比例ハザード回帰分析を行い、各々の因子に対してp値を算出する。次に、ここで求めたp値の小さい順に因子の1個ずつを因子としてCox比例ハザード回帰モデルに組み込み、その都度、テストセットの算出されるハザード比と学習セットから算出される生存曲線を用いてテストセットの生存曲線を予測する。この生存曲線の予測を73症例の教師サンプルから分けることができる73通りの学習セットとテストセットの組合せに対して行い、73症例について年次ごとの生存率を算出する。そして、肝ガン患者治療予後と年次ごとに算出した生存率からAUROCを算出し、生存期間を通じてのAUROCの平均である平均AUROCを算出する。この因子を組み込んだ学習セットを用いたテストセットの生存曲線の予測のために、算出される平均AUROCが最大となるまで繰り返した。
【0174】
その結果、肝ガン患者予後が良い患者と肝ガン患者予後が悪い患者を予測する平均AUROCは、1因子のときに0.48、2因子のときに0.60、3因子のときに0.71、4因子のときに0.78、および5因子のときに0.77となり、6因子のときに平均AUROCが0.80と最大となった。6因子のときに73回のLOOCV法で選ばれてくる総因子数は、因子番号1〜11の11種の因子であり、これらの11因子を構成する遺伝子は配列番号1〜9の9種の遺伝子であった。また、73症例の肝ガン患者のうち、Cox比例ハザード回帰モデルが再発すると予測したHigh Risk Groupと再発しないと予測したLow Risk Groupの有意差はCox比例ハザード解析からp=3.43×10−7となった(図2)。
【0175】
[実施例2]
さらに、実施例1で求めた平均AUROCには図3のように推移し、3因子のときに73回のLOOCV法で選ばれてくる総因子数、およびこれらの総因子を構成する遺伝子の構成を決定した。その結果を表2に示した。
【0176】
【表2】

【0177】
このとき、判別式の平均AUROCは比較例に示す臨床情報のAUROCよりも高くなったため、現在の予測法よりも高い予測精度を示す最少の因子の組み合わせは表2から任意に選択される3因子となり、このときの最少の遺伝子の組み合わせは配列番号2〜5、及び8〜10から選ばれる1種の遺伝子と配列番号1の組み合わせであるため、配列番号1〜9から選択される1以上、好ましくは2以上の肝ガン患者予後予測用組成物が最少の組合せとなる。
【0178】
上記の実施例から、本発明の肝ガン患者予後予測用組成物と本発明の方法は非特許文献1〜3に比較して優位であることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0179】
本発明は、特異性、感受性に優れた肝ガン患者予後予測用組成物を提供することができるため、少なくとも肝ガン患者の治療後の予後予測として肝ガン患者のミラノ基準内での再発の可能性を可能性をin vitroで判定するために非常に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(a)〜(e)に示すポリヌクレオチド、その変異体、その誘導体、またはその断片からなる群から選択される1または複数のポリヌクレオチドを含む、肝ガン患者予後予測用組成物。
(a)配列番号1〜6、および8〜9で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、からなるポリヌクレオチド、その変異体、その誘導体、または15以上の連続した塩基を含むその断片
(b)配列番号1〜6、および8〜9で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、を含むポリヌクレオチド
(c)配列番号1〜6、および8〜9で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチド、その変異体、その誘導体、または15以上の連続した塩基を含むその断片
(d)配列番号1〜6、および8〜9で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、に相補的な塩基配列を含むポリヌクレオチド
(e)前記(a)〜(d)のいずれかのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、または15以上の連続した塩基を含むその断片。
【請求項2】
下記の(f)〜(j)に示すポリヌクレオチド、その変異体、その誘導体、またはその断片からなる群から選択されるポリヌクレオチドをさらに含む、請求項1のいずれか1項に記載の組成物:
(f)配列番号7で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、からなるポリヌクレオチド、その変異体、その誘導体、または15以上の連続した塩基を含むその断片
(g)配列番号7で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、を含むポリヌクレオチド
(h)配列番号7で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチド、その変異体、その誘導体、または15以上の連続した塩基を含むその断片
(i)配列番号7で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、に相補的な塩基配列を含むポリヌクレオチド
(j)前記(f)〜(i)のいずれかのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、または15以上の連続した塩基を含むその断片
【請求項3】
請求項1に記載の(a)〜(e)に示すポリヌクレオチド、その変異体、その誘導体、および/またはその断片の1または複数を含む、肝ガン患者予後予測用診断用キット。
【請求項4】
請求項2に記載の(f)〜(j)に示すポリヌクレオチド、その変異体、その誘導体、および/またはその断片をさらに含む、請求項3に記載のキット。
【請求項5】
前記ポリヌクレオチドが、配列番号1〜9のいずれかで表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、からなるポリヌクレオチド、その相補的配列からなるポリヌクレオチド、それらのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、またはそれらの15以上の連続した塩基を含む断片である、請求項3〜4に記載のキット。
【請求項6】
前記ポリヌクレオチドが、別個にまたは任意に組み合わせて異なる容器に包装されている、請求項3〜5のいずれか1項に記載のキット。
【請求項7】
請求項1に記載の(a)〜(e)に示すポリヌクレオチド、その変異体、その誘導体、および/またはその断片の1または複数を含む、肝ガン患者予後予測用DNAチップ。
【請求項8】
請求項2に記載の(f)〜(j)に示すポリヌクレオチド、その変異体、その誘導体、および/またはその断片をさらに含む、請求項7に記載のDNAチップ。
【請求項9】
請求項1に記載の組成物、請求項3〜6のいずれかに記載のキット、請求項7〜8のいずれかに記載のDNAチップ、またはそれらの組み合わせを用いて、請求項1〜2のいずれかに記載の組成物中のポリヌクレオチドの遺伝子発現量から因子番号1〜9、および11の、ガン病変部の遺伝子発現量、正常組織部の遺伝子発現量、及びガン病変部の遺伝子発現量と正常組織部の遺伝子発現量の比率から構成される因子を算出し、この因子の3以上を測定することを含む、肝ガン患者予後予測用の方法。
【請求項10】
請求項2に記載の組成物、請求項4〜6のいずれかに記載のキット、請求項8に記載のDNAチップ、またはそれらの組み合わせを用いて、因子番号10からなるガン病変部の遺伝子発現量から算出される因子をさらに含む、肝ガン患者予後予測のための方法。
【請求項11】
請求項1〜2のいずれかに記載の組成物、請求項3〜6のいずれかに記載のキット、またはそれらの組み合わせを用いて、被験者由来の試料における標的核酸の発現量を測定することによって、被験者の治療後のミラノ基準内再発の可能性をin vitroで判定する肝ガン患者予後予測のための方法。
【請求項12】
DNAチップを用いる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項1〜2のいずれかに記載の組成物、請求項3〜6のいずれかに記載のキット、請求項7〜8のいずれかに記載のDNAチップ、またはそれらの組み合わせを用いて、被験者のミラノ基準内再発の可能性が既知の複数の試料中の標的核酸の発現量をin vitroで測定する第1の工程、前記第1の工程で得られた該標的核酸の発現量を測定し、該標的核酸の発現量から算出される肝ガン病変部における遺伝子発現量、正常組織部における遺伝子発現量、および肝ガン組織の肝ガン病変部の遺伝子発現量と肝ガン組織の正常組織部の遺伝子発現量の比率を教師とした判別式(Cox比例ハザードモデルを用いた回帰式)を作成する第2の工程、被験者の手術時又は内視鏡検査時に採取した試料中の該標的核酸の発現量を第1の工程と同様にin vitroで測定する第3の工程、前記第2の工程で得られた判別式に第3の工程で得られた該標的核酸の発現量から算出した肝ガン病変部における遺伝子発現量、正常組織部における遺伝子発現量、および肝ガン組織の肝ガン病変部の遺伝子発現量と肝ガン組織の正常組織部の遺伝子発現量の比率を代入し、該判別式から得られた結果に基づいて、被験者のミラノ基準内再発の可能性を判定する第4の工程を含む、肝ガン患者予後予測のための方法。
【請求項14】
請求項1〜2のいずれかに記載の組成物、請求項3〜6のいずれかに記載のキット、請求項7〜8のいずれかに記載のDNAチップ、またはそれらの組合せの、被験者の治療後のミラノ基準内再発の可能性をin vitroで判定するための肝ガン患者予後予測用組成物及び方法への使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−211955(P2011−211955A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−83157(P2010−83157)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【出願人】(504132272)国立大学法人京都大学 (1,269)
【Fターム(参考)】