説明

肝外胆樹からの多能性幹細胞およびそれらを単離する方法

本発明は、胎児、新生児、小児及び成体胆樹組織及び死後72時間(又は10時間)までの死亡者に認められ、肝臓、胆管及び膵臓組織を含む多数の内胚葉組織に成熟可能な、多能性幹細胞、多能性細胞集団及び富化された多能性細胞集団に関する。多能性幹細胞/前駆細胞及び細胞集団は胆管周囲腺に認められ、それらに由来する前駆細胞は胆嚢中を含む胆樹全体に存在する。多数の胆管周囲腺は、門、総肝管、胆嚢管、総胆管、総肝膵管及び胆嚢等の胆樹の分岐位置で認められる。関連する多能性細胞、多能性細胞集団及びそれらに由来する前駆細胞は、胆管周囲腺を有さない胆嚢中を含む胆樹全体で認められる。これらを含有する組成物、これらの同定単離方法、培養中の維持、培養中での増殖並びにインビトロ/インビボでの肝臓、胆管又は膵臓運命(例えば肝細胞、胆管細胞/膵島細胞)への分化又は系統制限も提供する。多能性細胞/多能性細胞集団の使用方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連特許出願の相互参照
本出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、2009年10月30日出願の米国特許仮出願第61/256,846号の優先権を主張するものである。
【0002】
技術分野
本発明は、概略的には、胆樹、肝臓および膵臓における、多能性幹細胞を含む多能性前駆細胞、およびそのような前駆細胞または幹細胞を含む細胞集団に関する。より詳細には、本発明は、肝外胆樹の部分に由来する多能性前駆細胞または幹細胞およびそのような前駆細胞または幹細胞を含む細胞集団に関する。本発明は、これらを含有する組成物ならびにそのような細胞および細胞集団をインビトロおよびインビボで同定し、単離し、維持し、増殖させ、分化させる方法を含む。
【背景技術】
【0003】
死細胞、死に瀕している細胞または機能不全細胞は、糖尿病およびアルツハイマー病を含む多くの公知の疾患の原因である。これらの疾病を治療する1つの方法は、「疾患」細胞の機能の一部または全部を置き換えるためにドナーからの全器官またはその一部を移植することを中心としてきた。一部の疾患の経過を阻止するまたは遅らせるうえでしばしば成功を収めているが、臓器移植は、すべての重大な外科的介入処置と同様に、かなりの罹病率/死亡率を伴い、移植片の生存は、しばしば望ましくない副作用をもたらす強力な全身免疫抑制剤の慢性投与に依存する。しかしながら、これらのアプローチがどれほど成功しているとしても、それらはドナーが得られるかどうかによって本質的に制限される。
【0004】
「再生医療」における1つの代替アプローチは、全器官、その一部または少なくともその機能を再構築する幹細胞および前駆細胞の使用である。実際に、幹細胞は比較的小さな外科的処置で注入または移植することができ、しばしば有害事象の発生もごくわずかである。幹細胞は免疫原性ではない(またはごくわずかな免疫原性である)ため、細胞の初期接種のために免疫抑制剤を、必要な場合でも、相対的にごくわずかしか必要としない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
幹細胞は、単離するための正確な技術ならびにインビボおよびインビトロで増殖させるための明確に定義された条件を必要とする希少な細胞である。そのため、臨床使用のための移植可能な機能性幹細胞および前駆細胞および組織の選択的で補足的な供給源を確立する差し迫った必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの態様によれば、多数の内胚葉系統(例えば肝臓系統、胆管系統、膵臓系統またはそれらの組合せ)に分化することができる哺乳動物多能性幹細胞/前駆細胞を含有する組成物が提供され、細胞は、ヒト哺乳動物の胎児、新生児、小児、成体または死後72時間以内の死亡者を含む哺乳動物の胆樹組織(例えば門、総肝管、胆嚢管、総胆管、総肝膵管、胆嚢および胆管周囲腺を含む胆樹の任意の部分または胆管周囲腺に由来する前駆細胞もしくは幹細胞)から得られる。そのような哺乳動物多能性幹細胞/前駆細胞を含む細胞の集団および/またはそのような多能性幹細胞/前駆細胞が富化された哺乳動物細胞の集団を含有する組成物も提供される。
【0007】
多能性幹細胞/前駆細胞は、(i)早期段階肝細胞系統を示す少なくとも1つのマーカー(例えばHNF6、HES1、CK19、アルブミンまたはAFP);(ii)早期段階膵細胞系統を示す少なくとも1つのマーカー(例えばPDX1、PROX1、NGN3またはインスリン);ならびにカテゴリー(a)〜(c)のものから選択される少なくとも1つのマーカー:(a)幹細胞/前駆細胞上で認められる少なくとも1つの表面マーカー(例えばCD133(プロミニン)、CD44H(ヒアルロナン受容体)、N−CAM、CXCR4またはEpCAM);(b)内胚葉幹細胞/前駆細胞を示す少なくとも1つの転写因子(例えばSOX9、SOX17またはFOXA2)、および(c)多能性遺伝子(例えばSOX2、NANOG、KLF4、OCT4AまたはOCT4)の弱から中等度の発現を発現し得る。一部の場合には、多能性幹細胞/前駆細胞は、カテゴリー(i)、(ii)および(a)〜(c)の各々から1つのマーカーを発現することができる。発現は、エンドポイントおよび定量的RT−PCRアッセイによってならびに/またはインビボでの組織、新鮮単離された細胞もしくは培養細胞の免疫組織化学によって測定され得る。
【0008】
多能性細胞はまた、以下の少なくとも1つ:(i)テロメラーゼタンパク質の核発現;(ii)多能性遺伝子の低から中等度レベルの発現;(iii)古典的内胚葉転写因子(例えばSOX17、SOX9、FOXA2、HES1、HNF6、PROX1、HNF3B(肝細胞核内因子3B)、FOXA2、SALL4(Sal様タンパク質4)、PDX1、NGN3またはそれらの組合せ)の核または核周囲発現;(iv)内胚葉幹細胞/前駆細胞表面マーカーの発現;(v)成熟肝の系統マーカー(P450−3A4、トランスフェリン、チロシンアミノトランスフェラーゼ(TAT)および高レベルのアルブミン)、成熟胆管についての系統マーカー(AE2、CFTR、セクレチン受容体、アクアポリンもしくはそれらの組合せ)、または成熟膵臓内分泌部の系統マーカー(例えばインスリン、グルカゴン、ソマトスタチン、アミラーゼまたはそれらの組合せ)の発現の欠如または低および可変レベルの発現;(vi)間葉細胞、内皮細胞または造血細胞についてのマーカーの発現の欠如を発現し得る。
【0009】
本発明の別の態様では、多数の内胚葉系統に分化することができる哺乳動物多能性幹細胞/前駆細胞を得る、単離するおよび/または同定する方法が提供され、細胞は哺乳動物の胆樹組織(例えば、胆樹組織は門、総肝管、胆嚢管、総胆管、総肝膵管および胆嚢、またはそれらの組合せを含む)から得られ、該方法は、胆樹組織を得ることおよび連続的に任意の順序でまたは実質的に同時に、(i)早期肝細胞系統段階を示す少なくとも1つのマーカー(例えばHNF6、HES1、CK19、アルブミンまたはAFP);(ii)早期膵細胞系統段階を示す少なくとも1つのマーカー(例えばPDX1、PROX1、NGN3またはインスリン);ならびに場合により、(a)〜(c)から選択される少なくとも1つのマーカー:(a)幹細胞/前駆細胞上で認められる少なくとも1つの表面マーカー(例えばCD133(プロミニン)、CD44H(ヒアルロナン受容体)、N−CAM、CXCR4またはEpCAM);(b)内胚葉幹細胞/前駆細胞を示す少なくとも1つの転写因子(例えばSOX9、SOX17またはFOXA2)、および(c)多能性遺伝子(例えばSOX2、NANOG、KLF4、OCT4AまたはOCT4)の弱から中等度の発現に関して陽性である細胞を得ることを含む。哺乳動物多能性幹細胞/前駆細胞が富化された哺乳動物多能性細胞の集団を同定し、単離する方法も提供される。
【0010】
本発明の方法によれば、基礎培地は、栄養素に富み、銅を含まず、低いカルシウム(0.5mM未満)を含み、好ましくはインスリン、トランスフェリン/Fe、セレン、亜鉛、血清アルブミンに結合した遊離脂肪酸および、場合により、高密度リポタンパク質が添加された、任意の基礎培地であり得る。基礎培地の一例はRPMI1640である。細胞は、場合によりプラスチック単独上でまたはIV型コラーゲン、III型コラーゲン、ラミニン、ヒアルロナン、胚、胎児、新生児組織からの他の基質成分もしくはそれらの組合せで被覆されたプラスチック上で培養し得る。細胞を少なくとも24時間、好ましくは7〜21日間培養する。本発明の方法によれば、単離された細胞は、本発明の幹細胞が80%、90%、95%、95%、好ましくは100%富化されている。単離は、免疫選択技術(例えばパニング、磁気ビーズ選択、フローサイトメトリーまたはそれらの組合せ)および/または選択培養条件によって実施し得る。
【0011】
本発明のさらに別の態様では、新規哺乳動物多能性幹細胞/前駆細胞、またはそのような細胞を含むもしくはそのような細胞が富化された集団、またはそのパートナー細胞(例えば間葉細胞、血管芽細胞および星細胞前駆体)を繁殖および/または増殖させる方法であって、プラスチックもしくはヒアルロナン上で、または場合によりIII型もしくはIV型コラーゲンもしくはヒアルロナンもしくは胎児、新生児もしくは胚組織に由来する他の基質成分で被覆されたプラスチック上で、ならびに銅を含まず、低カルシウム(<0.5mM)、インスリン、トランスフェリン/Fe、血清アルブミンに結合した遊離脂肪酸の混合物および、場合により、高密度リポタンパク質を含有する基礎培地中で細胞を培養することを含む方法。
【0012】
本発明のなおさらなる別の態様では、新規多能性幹細胞/前駆細胞を成体肝細胞運命に系統制限する方法が提供される。その方法は、(a)哺乳動物の胆樹組織から得られる、多数の内胚葉系統に分化することができる哺乳動物多能性幹細胞/前駆細胞を含む細胞懸濁液を得ること;(b)細胞懸濁液を、ヒアルロナンまたは他の基質成分(例えばIV型コラーゲン、ラミニンまたはその両方)と組み合わせたヒアルロナンを含むヒドロゲルに包埋すること;ならびに(c)細胞懸濁液を、銅、カルシウム(≧0.5mM)、インスリン、トランスフェリン/Fe、bFGF、ヒドロコルチゾン、グルカゴン、ガラクトース、トリヨードサイロキシン(T3)、上皮増殖因子(EGF)、肝細胞増殖因子(HGF)、高密度リポタンパク質およびアルブミンに結合した遊離脂肪酸の混合物を添加した基礎培地中で、それらを肝細胞に分化させるのに十分な時間培養することを含む。
【0013】
本発明のなおさらなる別の態様では、新規多能性幹細胞/前駆細胞を成体膵細胞運命に系統制限する方法が提供される。その方法は、(a)哺乳動物の胆樹組織から得られる、多数の内胚葉系統に分化することができる哺乳動物多能性幹細胞/前駆細胞を含む細胞懸濁液を得ること;(b)細胞懸濁液を、ヒアルロナンまたは他の基質成分と組み合わせたヒアルロナンを含むヒドロゲルに包埋すること;ならびに(c)細胞を、銅、カルシウム(≧0.5mM)、B27、アスコルビン酸、インスリン、トランスフェリン/Fe、bFGF、シクロパミン、レチノイン酸、エキセンディン4、高密度リポタンパク質およびアルブミンに結合した遊離脂肪酸の混合物を添加した、およびヒドロコルチゾンを欠く基礎培地中で、それらを膵細胞に分化させるのに十分な時間培養することを含む。
【0014】
本発明のなおさらなる別の態様では、新規多能性幹細胞/前駆細胞を成体胆管細胞運命に系統制限する方法が提供される。その方法は、(a)哺乳動物の胆樹組織から得られる、多数の内胚葉系統に分化することができる哺乳動物多能性幹細胞/前駆細胞を含む細胞懸濁液を得ること;(b)細胞懸濁液を、ヒアルロナンまたは他の基質成分(例えばI型コラーゲン)と組み合わせたヒアルロナンを含むヒドロゲルに包埋すること;ならびに(c)細胞を、銅、カルシウム(≧0.5mM)、インスリン、トランスフェリン/Fe、ヒドロコルチゾン、bFGF、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、肝細胞増殖因子(HGF)、高密度リポタンパク質およびアルブミンに結合した遊離脂肪酸の混合物を添加した基礎培地中で、それらを胆管細胞に分化させるのに十分な時間培養することを含む。
【0015】
本発明のなおさらなる別の態様では、哺乳動物多能性幹細胞/前駆細胞、またはそのような細胞を含むもしくはそのような細胞が富化された集団を、インビボで細胞懸濁液としてまたはインプラントもしくはグラフトとして、適切な培養条件下での事前の系統制限を伴ってまたは伴わずに、それらが肝組織へと分化する肝臓に移植することを含む、インビボで細胞を分化させる方法が提供される。
【0016】
本発明のなおさらなる別の態様では、請求項1に記載の哺乳動物多能性幹細胞/前駆細胞、またはそのような細胞を含むもしくはそのような細胞が富化された集団を、インビボで細胞懸濁液としてまたはインプラントもしくはグラフトとして、適切な培養条件下での事前の系統制限を伴ってまたは伴わずに、それらが胆樹組織へと分化する胆管に移植することを含む、インビボで細胞を分化させる方法が提供される。
【0017】
本発明のなおさらなる別の態様では、請求項1に記載の哺乳動物多能性幹細胞/前駆細胞、そのような細胞を含むまたはそのような細胞が富化された集団を、インビボで細胞懸濁液としてまたはインプラントもしくはグラフトとして、適切な培養条件下での膵臓への事前の系統制限を伴ってまたは伴わずに、腎被膜下にまたは副睾丸脂肪パッド中に移植し、そこでそれらが機能性膵組織へと分化することを含む、インビボで細胞を分化させる方法が提供される。
【0018】
これに関して、本発明の少なくとも1つの態様を詳細に説明する前に、本発明が、その適用において、以下の説明の中で述べるまたは図面で例示される成分の構造の詳細または配置に限定されないことが理解されるべきである。本発明は、説明されるもの以外の態様も可能であり、様々な方法で実行および実施され得る。また、本明細書ならびに要約書において使用される表現および用語は説明を目的とするものであり、限定とみなされるべきでないことも理解されるべきである。
【0019】
そこで、当業者は、本開示が基づく概念が本発明のいくつかの目的を実施するための他の構造、方法およびシステムを設計するための基礎として容易に利用され得ることを認識する。そのため、特許請求の範囲は、本発明の精神および範囲を逸脱しない限り、そのような等価構造を包含するとみなされることが重要である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、いくつかの種類の内胚葉組織に分化する能力を有する本発明の多能性胆管幹細胞を示す概略図である。細胞のすべてが「内胚葉」(E)転写因子(例えばSOX9、SOX17、FOXA2)および幹細胞/前駆細胞集団の他のマーカー(CD133、CD44H、EpCAM、CXCR4、NCAMなどの表面抗原)を発現する。系統制限は、肝臓、膵臓および胆樹を含む様々な成体運命を生じさせる。
【図2】図2は、肝臓、膵臓および十二指腸とのその連結を示す胆樹の概略図である。多数の胆管周囲腺、胆樹の幹細胞ニッチが認められ得る部位を星印で示す。
【図3】図3は、マーカーを同定するためおよびまた胆樹全体にわたる胆管周囲腺の数と大きさを同定するために使用された胆樹の種々の領域の組織学と免疫組織化学の合成画像である。(a)肝外胆樹における胆管周囲腺(PBG)の分布と特性づけ。PBGは胆樹の管壁に存在し、胆樹幹細胞/前駆細胞のための部位である。胆樹内の様々な部位における胆管周囲腺の数と大きさ、PBGのマーカープロフィールの調査を行った(n=検査した5例のヒト胆樹)。画像解析によって評価した、PBG腺房によって占められる表面/総面積として表した、PBGの密度;数および周囲をヒト肝外胆樹の種々の部位で組織学的に分析した。胆膵管膨大部はPBGの最も高い密度と数を示した;おおよそ等しい数が胆嚢管と門において認められた;胆管ではより少ない数が認められた;そして胆嚢では全く認められなかった。*p<0.01。原倍率X10.b:インサイチュでのPBGの免疫組織化学。PBGは、CK7、CK19、NCAM、CD133、インスリン、EpCAM、SOX9、SOX17およびPDX1に関しては陽性であるが、アルブミンについては陰性(または非常に低いレベル)である。これらの早期系統マーカー(例えばアルブミン)の変動は様々な胆管周囲腺において認められる(アルブミンに関する証拠は図7参照)。原倍率X40。
【図4】図4は、幹細胞が主として胆管周囲腺(PBG)内に位置することを示す。注目すべき点として、この場合はPDX1である、幹細胞マーカーの発現には単一胆管周囲腺内でも変動がある。赤い矢印は転写因子を発現する細胞の核を示す;黒い矢印は転写因子を発現しないものを示す。
【図5】図5は、胆嚢管の胆管周囲腺におけるEpCAM(緑色)および4’−6ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI)により青く染色された核と共にSOX17(A)およびPDX1(B)を示す。
【図6】図6は、胆嚢管および門の胆管周囲腺におけるEpCAM、SOX9およびSOX17の発現を示す、ヒト胆管組織に関する免疫組織化学データを提供する。
【図7】図7は、多能性胆樹幹細胞の鍵となる特性の要約を提供する。これらは、幹細胞/前駆細胞の表面マーカー;内胚葉前駆細胞の典型的な転写因子;肝臓、胆樹および膵臓の早期系統段階マーカーの可変発現;ならびに図8における多能性遺伝子の弱から中等度発現を含む。肝門についての代表的なRT−PCRアッセイは、内胚葉転写因子の広範なレパートリー(SOX9、SOX17、FOXA2、PDX1、NGN3等)および古典的幹細胞/前駆細胞表面マーカー(例えばEpCAM、NCAM、CXCR4、CD133)を示す。
【図8】図8は、胆嚢管および門組織による多能性遺伝子の発現を表示するRT−PCRデータを示す。それらの弱から中等度発現は、胆樹幹細胞の自己複製する能力についての付加的な証拠を提供する。多能性遺伝子は、胚性幹(ES)細胞において発現されるものおよびこれらの遺伝子の様々な組合せを体細胞にトランスフェクトした場合に誘導多能性幹(iPS)細胞を生成することができるものである。少なくとも5つの遺伝子が同定されている:OCT4、SOX2、NANOG、KLF4およびc−MYC。胆樹組織および単離された胆樹幹細胞において、OCT4、SOX2、NANOG、KLF4に関して弱から中等度レベルの発現が起こるが、c−MYCについては起こらない。
【図9】胆嚢は胆管周囲腺を含まない(図3でも示されるように)。しかし、幹細胞/前駆細胞転写因子および表面マーカーの一部を発現する細胞が胆嚢細胞中に存在する。注目すべき点として、検定したマーカー(EpCAMまたはPDX1)の発現を示す褐色がかった染色が胆嚢の表面の細胞中に存在する。
【図10】図10は、胆管周囲腺を有さない胆嚢組織に関する免疫組織化学データを示す(a、c、d)。細胞はEpCAM(緑色)に関して陽性であり、内胚葉転写因子についての核周囲染色を有する(示されているのはSOX17−赤色である)。(b)細胞はPDX1(桃色)も発現し、Ki67染色(緑色)によって示されるように著しく増殖性である。
【図11(a−b)】胆樹組織からの幹細胞/前駆細胞コロニー。細胞を単離し、無血清クボタ培地中および培養プラスチック上で培養した。3つの異なるコロニー型、1〜3型が、成熟細胞を許容せず、内胚葉幹細胞/前駆細胞を選択するこれらの条件下で認められた。免疫組織化学染色は、マーカーについて指示されている色で、本文により指示される特定の遺伝子の発現を示す。すべての切片を、核を示す青色を与える4’−6ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI)で染色する。1型コロニー(a)は、EpCAM、NCAMおよびASBTを強力に発現する細胞の集合体である。細胞は緩やかに増殖した(3〜4日ごとまたはそれより長い期間で分裂)。2型コロニー(b)の細胞は、hHpSCに極めて類似する表現型を有し、100%の細胞がEpCAM、NCAMを発現し、AFPを発現する細胞は存在しない(36〜40時間ごとに分裂)。
【図11(c−e)】3型コロニー(c)は、辺縁部でEpCAMを発現するがコロニーの内部では発現せず、内部細胞でSOX17、PDX1またはSOX9の高レベルの発現を有する、波状で渦巻き状の細胞から成る(36〜40時間ごとに分裂)。すべての画像について倍率は20Xである。写真は、コロニーを4〜8週間観測した10を超える実験からの所見を代表する。2型コロニーと3型コロニーの細胞の関係の証拠を低倍率(4X)画像(d)に示す。いずれがいずれの前駆体であるかは不明である。RT−PCRアッセイ(e)は、胆嚢管からのコロニーと胆嚢からのコロニーにおける様々な遺伝子の発現を示す。2つの組織からのRT−PCRアッセイはかなり類似するが、胆嚢管からのものはアルブミンおよびインスリンの弱い発現を有し、これら2つの遺伝子は、胆嚢から得られた、無血清クボタ培地およびプラスチック上で増殖する前駆細胞によっては発現されない。
【図12】胆樹幹細胞、特に2型および3型コロニーのものは、数か月間着実に増殖し、幹細胞/前駆細胞マーカーの安定な発現を有する細胞のコロニーを生じさせる。これは、細胞の自己複製についての部分的な証拠である;さらなる証拠は多能性遺伝子の発現によって提供される(図8)。ここでは1か月間の培養後の3型コロニーを示し、コロニーの中心部の細胞においてPDX1(橙色/赤色)の発現が維持され、わずかな分化が存在する部位であるコロニーの辺縁部でのみEpCAM(緑色)が発現される。DAPI染色(青色)は細胞の核を示す。
【図13】培養プラスチック上および無血清クボタ培地中で8週間以上培養した胆樹幹細胞コロニーの位相差顕微鏡写真。コロニーはヒト成体胆樹組織に由来する1〜2細胞から開始した。コロニー内の細胞の数を評価するため、コロニーの多数の領域から拡大画像を作製し(代表的なものを着色輪郭線で区切った長方形領域内に示す)、これらの領域をMetamorphソフトウエアで画像化して、細胞数を得るために使用した。領域のサンプリングにより、コロニー内で500,000細胞超という推定値が得られた。胎児胆樹組織からは、常に>50のそのようなコロニーを認め、成体の胆嚢管および門組織からは、常に>100のそのようなコロニーが得られる。
【図14】組織中(インサイチュ)または胆樹幹細胞の培養物中の転写因子(またはテロメラーゼタンパク質)の位置。免疫組織化学は、転写因子およびテロメラーゼタンパク質が一部の細胞では核内に存在し、また別の細胞では核周囲または細胞質に存在することを明らかにした。このことの重要性は不明であるが、本発明者らは、核局在は活性な因子に関係し、核周囲または細胞質局在は貯蔵形態であり得ると仮定する。これらの画像において、SOX17はインビボで胆管周囲腺の細胞の一部の、すべてというわけではなく、核内で発現され(インサイチュデータ)、プラスチック上およびクボタ培地中で培養される胆樹幹細胞のすべての核内で発現される。培養物の画像では、核はDAPIでの染色により青色である;細胞の一部はEpCAM(緑色)を発現する;しかしすべてがSOX17(赤色)の核内局在を有する。画像を重ね合わせた場合、核は桃色に見える(青色と赤色の混合)。
【図15】転写因子、SOX17(赤色/桃色)の核および核周囲の両方の局在を明らかにする胆樹幹細胞の3型コロニー。コロニーの周辺の細胞はEpCAM(緑色)に関して陽性である。核はDAPIで青色に染色される。
【図16】SOX17(赤色/橙色)の核周囲および細胞質染色だけを明らかにする胆嚢細胞のインサイチュ染色。細胞膜はEpCAM(緑色)に関して陽性であり、核はDAPIで青色に染色される。
【図17】胆樹幹細胞の多能性。肝細胞または胆管細胞運命への分化に対するホルモン規定培地(HDM)単独の作用。幹細胞は、プラスチック上およびクボタ培地中で培養された場合、幹細胞/前駆細胞として無限のままである。それらは、培地を成体運命のために調整されたホルモン規定培地(HDM)に変更した場合、成体運命に向けて分化する。HDMを、細胞を細胞外基質上で平板培養することまたはそれらを細胞外基質の形態に包埋することと組み合わせて使用した場合、より速く、より効率的に成体運命に分化する(図20〜22)。これらの試験では、肝細胞(HDM−L)対胆管細胞(HDM−C)運命に向かう胆樹幹細胞/前駆細胞の分化への特定のHDMの作用を指し示す代表的データが示される。自己複製条件(培養プラスチックおよび無血清クボタ培地またはその等価物)下に維持したコロニーからの胆樹幹細胞/前駆細胞を、肝細胞(HDM−L)(上の列の画像)または胆管細胞(HDM−C)(下のパネルの画像)のいずれかのために調整したHDM中に移した。HDM−Lの作用:7日後の免疫蛍光(a)。細胞はCK18(赤色)および/またはアルブミン(青緑色)に関して広範に陽性であった。倍率:20X。自己複製条件下(スコア:0)対HDM−L中(スコア:2.2±0.8)での肝細胞(CD18+/アルブミン+細胞)の数を比較した半定量的データ(c)、>20%の細胞が肝細胞運命への系統制限を有すると解釈される所見。HDM−Cの作用:7日後の免疫蛍光(b)。細胞はCK7、セクレチン受容体(SR)およびCFTRに関して広範に陽性であった。それらはCK7/SRおよびCK7/CFTRを同時発現した。原倍率は、c4およびc5を除いて20X、c4およびc5については40Xである。自己複製条件下(0.2±0.4;<5%の細胞)対HDM−C中(3±0.7;30%超の細胞が胆管細胞に系統制限されるのに等しい)でのSR+/CFTR+細胞の%の半定量的評価(c)。
【図18】胆樹幹細胞の多能性。膵臓運命への分化に対する、膵臓に合わせて調整したホルモン規定培地(HDM−P)単独の作用。HDM−Pの作用:HDM−P中での7日間の培養後の膵臓マーカーについての免疫蛍光。コロニーの周辺部で、細胞の集合と濃縮が起こり、c−ペプチド(a、b)、PDX−1(c)およびインスリン(d)を含む膵島様構造(a〜d)を形成した。未分化細胞(EpCAM+細胞)はコロニーの中心部内で認められた(e)。原倍率:20X。自己複製条件下で認められた膵島様構造の数(f)(1±0.7;<10%の細胞)は、HDM−P中のもの(3.8±1.3;〜40%の細胞)よりもはるかに低かった。自己複製条件下での2時間のインキュベーションに関してすべてのRPMI1640製剤中で認められたグルコース濃度(11.1mM)下のng/μgタンパク質でのC−ペプチドのレベル(g)は、HDM−P中の12.3±1.9ng/μgに対して、4.5±2.25ng/μgであった。データは平均±標準誤差として表している。N=4;*p<0.05。(h)グルコース刺激したc−ペプチド分泌がHDM−P対照において認められ、μg/lでの培地中のc−ペプチドのレベルは、低レベルのグルコース(5.5mM)中では1.10±0.32μg/l、高グルコース(22mM)中では1.92±0.43μg/lであった。n=7;*p<0.01。
【図19】胆樹幹細胞の多能性。培地単独の作用に関する定量的(q)RT−PCR分析。自己複製条件下(培養プラスチックおよびクボタ培地)対、肝細胞、胆管細胞および膵細胞に合わせて調整した無血清ホルモン規定培地(HDM−LまたはHDM−CまたはHDM−P)単独中に維持した胆樹幹細胞培養物に関してアッセイを実施した。mRNAの相対発現レベルを、3つの最も安定なハウスキーピング遺伝子の幾何平均に対して正規化ΔCt値を順位づけることによって計算した。データはプラスマイナス(±)標準偏差で示している。これらの各々についての有意性レベルは*p<0.05であった。n=実施した実験の数。
【図20(a−h)】胆樹幹細胞の多能性。胆樹幹細胞の分化へのHDMおよび細胞外基質成分の両方の作用。胆樹幹細胞をプラスチック上およびクボタ培地またはその等価物中(自己複製条件)で1か月以上培養し、(a)に示すもののようなコロニーを生じさせた。そのような代表的コロニーを分散させ、細胞を、3次元(3D)形式で表した、所望の成体運命に合わせて調整したHDM+基質成分から成る3つの分化条件の1つに移した:胆管細胞(b)、肝細胞(c)または膵β細胞(d)に合わせたもの。それらを9日間まで培養下に維持し、その後組織特異的運命に関して検定した。検定は、これらの胆樹幹細胞が培養条件に依存して複数の成体運命(ここでは胆管細胞、肝細胞または膵β細胞の例が提供された)に系統制限され得ることを示した。3番目の列=ジチゾン(DTZ)染色(膵αおよびβ細胞の指標)。D=培養日数;Glu=グルカゴン;C−P=C−ペプチド、インスリン分泌を示す。
【図20(i)】胆樹幹細胞の多能性。胆樹幹細胞の分化へのHDMおよび細胞外基質成分の両方の作用。胆樹幹細胞をプラスチック上およびクボタ培地またはその等価物中(自己複製条件)で1か月以上培養し、(a)に示すもののようなコロニーを生じさせた。そのような代表的コロニーを分散させ、細胞を、3次元(3D)形式で表した、所望の成体運命に合わせて調整したHDM+基質成分から成る3つの分化条件の1つに移した:胆管細胞(b)、肝細胞(c)または膵β細胞(d)に合わせたもの。それらを9日間まで培養下に維持し、その後組織特異的運命に関して検定した。検定は、これらの胆樹幹細胞が培養条件に依存して複数の成体運命(ここでは胆管細胞、肝細胞または膵β細胞の例が提供された)に系統制限され得ることを示した。3番目の列=ジチゾン(DTZ)染色(膵αおよびβ細胞の指標)。D=培養日数;Glu=グルカゴン;C−P=C−ペプチド、インスリン分泌を示す。
【図21】自己複製条件(a〜b)対成熟肝細胞を生成する3D分化条件(c〜d)下での胆樹幹細胞の透過型電子顕微鏡検査。大型の多角形細胞が存在し、細胞核は1または複数の核小体を提示する。(c)隣接細胞は明確に定義された胆細管を形成する(矢印)。胆細管は結合複合体によって閉じられている(矢じり)。管腔内には微小絨毛はほとんど存在しない。(d)。従って、細胞は成体肝細胞および肝臓内胆管細胞へと成熟することができた。バー=2μm。
【図22】自己複製条件対3D分化条件下の培養物に関する定量的(q)RT−PCR分析によって与えられる胆樹幹細胞/前駆細胞の多能性の証明。a.胆樹幹細胞/前駆細胞をクボタ培地中およびプラスチック上で2か月間培養した(自己複製条件)。コロニーをこれらの条件に維持し、それによって胆樹幹細胞/前駆細胞(BP)を生成するか、または肝細胞(B−L)、胆管細胞(B−C)もしくは膵島(B−P)のための3D分化条件に移して、すべてをさらに2週間培養した。次に培養物を成体運命の各々に関連する遺伝子のqRT−PCR分析のために調製した。データを、自己複製条件(BP)下での遺伝子の発現のレベルに1.0の値を与え、成体運命への分化後の細胞における各遺伝子の値をBPの値に対する倍数変化として表すヒストグラムとして作成した。ヒストグラムの一部の上の星印は統計有意性(p<0.01またはp<0.001)があるものを示す。N=2、各々の実験は三組の試料に関する。BP=胆樹幹細胞/前駆細胞;B−C=胆管(胆管細胞)に系統制限された細胞;B−L=肝臓(肝細胞)に系統制限された細胞;B−P=膵臓(膵島)に系統制限された細胞。検定した遺伝子は、GGT1=γグルタミルトランスペプチダーゼ1;AE2=陰イオン交換体2型;CFTR=嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子;HNF4a=肝細胞核因子4A;AFP=α−フェトプロテイン;ALB=アルブミン;TF=トランスフェリン;TAT=チロシンアミノトランスフェラーゼ;CYP3A4=シトクロムP450 3A4;pdx1=膵臓および十二指腸ホメオボックス1;ISL−1=ISL LIMホメオボックス1;NGN3=ニューロゲニン3;INS=インスリン;GCG=グルカゴンであった。
【図23】インビボ試験によって示される胆樹幹細胞の多能性:肝臓運命。胆樹幹細胞を自己複製条件下(クボタ培地またはその等価物および培養プラスチック)での培養中に維持し、次に休止肝臓を有する(すなわち肝損傷が誘導されていない)免疫無防備状態の成体マウスの肝臓に注射した。マウスから調製した肝切片を、次に、肝細胞を示すヒト特異的マーカーについての免疫組織化学によって分析した。この画像では、切片をDakoの抗ヒトHepar−1に関して染色した。切片は、古典的肝細胞マーカーであるヒトHepar−1に関して陽性のヒト肝細胞によって占められる総面積の6.52±2.5%を同定できることを明らかにした。
【図24】インビボでの移植によって示される胆樹幹細胞の多能性:胆樹運命。胆樹幹細胞を自己複製条件下(クボタ培地またはその等価物および培養プラスチック)での培養中に維持し、次に休止肝臓を有する(すなわち肝損傷が誘導されていない)免疫無防備状態の成体マウスの肝臓に注射した。マウスから調製した肝切片を、次に、胆管細胞を示すヒト特異的マーカーについての免疫組織化学によって分析した。胆管細胞のマーカーであるDakoの抗ヒトCK7は、平均してすべての胆管細胞の12.7±5.5%で認められた。小胆管対大胆管中のヒト胆管細胞に関する証拠を比較すると、大胆管中の〜14.92±5.9%の細胞および小胆管中の〜5.02±1.95%の細胞がヒトCK7に関して陽性であることが認められた。
【図25】インビボでの移植によって示される胆樹幹細胞の多能性:膵臓運命。胆樹幹細胞を自己複製条件下(クボタ培地またはその等価物および培養プラスチック)での培養中に維持し、次に雄性Balb/C Rag2−/−/Il2rg−/−マウスの副睾丸脂肪パッド(EFP)に注射した。各々のマウスに、HDM−Pに加えてヒアルロナン、IV型コラーゲンおよびラミニンを含むヒドロゲルの3D分化条件下で膵島運命に向けて7〜14日間系統制限した胆樹幹細胞の細胞集合体である、200〜400のネオアイレットを注射した。各々のネオアイレットは1000超の細胞から成った。対照マウスには細胞を含まないMatrigelを移植した。マウスをグルコースレベルに関して毎日観測し、約3か月間高血糖性(600〜750mg/dl)であった。3か月までに、移植したマウスにおけるグルコースレベルは対照の半分未満のレベルに低下していた。処置後68日目および91日目にブドウ糖負荷試験を実施し、実験マウスにおいてヒトC−ペプチドの有意の血中レベルが示され、これらのレベルはグルコースによって調節可能であった。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、胆樹内で認められ、肝臓、膵臓および胆樹を含む多数の内胚葉系統に分化する能力を有する、多能性幹細胞または前駆細胞、およびそのような多能性幹細胞または前駆細胞を含む細胞集団についての前述の予想外の発見に基づく(図1)。本出願の明瞭さのために、「胆樹幹細胞」という用語は、本明細書では本発明の哺乳動物多能性幹細胞または前駆細胞、そのような本発明の細胞を含む細胞集団、および本発明の細胞が富化された細胞集団を指すために使用される。
【0022】
新規多能性胆樹幹細胞は、胆樹組織の任意の部分から単離することができるが、図2の概略図で星印によって示す、胆管周囲腺および胆樹の分岐点において特に多数認められる。肝臓内の最小分岐端で認められる星印は、肝臓内肝幹細胞についての幹細胞ニッチである、ヘリング管を指す。胆樹幹細胞は、肝臓内肝幹細胞の前駆体である。
【0023】
細胞調達−胆樹
胆樹または肝外胆樹系は、十二指腸を肝臓および膵臓に連結する、胆嚢を含む一連の管から成る(図2の概略図参照)。胆樹全体にわたって、管壁内には胆管周囲腺(図3〜11)が存在し、胆管周囲腺は門、総肝管、胆嚢管、総胆管、総肝膵管および胆嚢などの分岐部位において特に多数認められ得る。肝臓からまたは腹側膵からの流体はファーター乳頭によって十二指腸に注ぎ込まれる。胆嚢を含む構造体のこの全体の群を本明細書では胆樹と称する。
【0024】
胆樹のすべて(例えば門、総肝管、胆嚢管、総胆管、総肝膵管および胆嚢)が、高密度の線維性結合組織から成る壁、および従来の基底膜によって支持される高度に円柱状の胆管上皮の層で内側が覆われた管腔を有する。平滑筋細胞が、特にファーター乳頭の近傍で管に沿って分布する。血管、神経線維およびいくつかのリンパ系細胞が時として管壁内で認められる。胆管周囲腺は胆樹の長さ全体に沿って認められ、総肝膵管および門、総肝管、胆嚢管、総胆管および胆嚢において特に多数認められる。図3〜7参照。
【0025】
胆嚢は種々の特徴を有する(図9、10)。管腔は、円柱状上皮、固有筋層および漿膜下結合組織によって内側が覆われている。胆嚢には胆管周囲腺は存在しない(図3、9)。しかし、胆嚢は胆管周囲腺内で認められる胆樹幹細胞集団のものと重なる表現型を備えた、トランジット増幅細胞および/または運命づけられた前駆細胞である細胞を有する。
【0026】
本発明の細胞は、発生の任意の段階の胆樹組織から単離し得る。従って、本発明は、最近死亡した個体(好ましくは死後10時間以内であるが、本発明の細胞は死後72時間までの単離について生存可能なままである)からの組織を含む胎児、新生児、小児または成体組織に関して実施し得る。実際に、胆樹組織は胎児、小児および成体ドナーから容易に入手可能であるという点で独特である。さらに、本発明は、移植のために入手されたが、その後拒否された肝臓および膵臓からの組織、または生検組織、切除組織に関して実施し得る。
【0027】
同様に、本明細書の教示はいずれか1つの哺乳動物種に限定されるまたは適用されるわけではない。実際に、本明細書で提供される実施例は単なる例示であり、限定と解釈されるべきでないことが理解されるべきである。本発明は、このように、胆樹組織についてのその哺乳動物供給源によって限定されない。胆樹幹細胞が由来し得る哺乳動物は、ヒト、げっ歯動物(例えばラット、マウス、ハムスター)、ウサギ、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、イヌおよびネコを含むが、これらに限定されない。好ましくは、胆樹幹細胞はヒトにおける使用に関してはヒトに由来する。
【0028】
上述したように、本発明の新規クラスの胆樹幹細胞は多数の内胚葉運命へと分化することができる。実際に、本発明の胆樹幹細胞は、肝臓、胆樹および膵臓を含むいくつかの内胚葉系統の成熟細胞型に分化するように誘導され得る。図17〜25。
【0029】
胆樹組織の試料は、移植のために得られ、その後脂肪症、解剖学的異常または重大な血管疾患などの理由のために拒否された肝臓または膵臓から外科的に切除し得るか、または切除材料から入手できる。それらは様々な理由で除去された胆嚢からであり得る。胆樹組織は腹部の結合組織から取り出すことができる。次に組織をセグメントに分け、さらに処理する。特に胆樹幹細胞に富むセグメントは、門、総肝管、胆嚢管、総胆管、総肝膵管および胆嚢を含む。各々の部分を縦径に沿って裁断してさらに断片へと切断することができる。
【0030】
胆樹幹細胞は、肝臓、胆樹および膵臓細胞を含む多数の内胚葉運命を生じさせることが示されている(図17〜25)。胆樹幹細胞はテロメラーゼタンパク質を発現する;低から中等度レベル多能性遺伝子(Nanog、SOX2、KLF4およびOCT4−図8);古典的内胚葉転写因子(例えばSOX17、SOX9、FOXA2、HNF6、PROX1、HNF3B(肝細胞核因子3B(別名FOXA2)、SALL4(Sal様タンパク質4)、PDX1およびNGN3);内胚葉表面マーカー(例えばCD326/上皮細胞接着分子またはEpCAM;CD56/神経細胞接着分子またはNCAM);CXCR4;およびいくつかの幹細胞/前駆細胞遺伝子(例えばCD44H−ヒアルロナン受容体、およびプロミニンとも呼ばれるCD133)。図7、8、9、13。
【0031】
さらに、表面上はそれらの多能性のために、胆樹幹細胞は低および可変レベルの肝臓(例えばHNF6、HES1、FOXA2および可変的にアルブミン)、胆管(例えばサイトケラチン19)ならびに膵臓内分泌部(例えばPDX1、NGN3、SALL4、インスリン)の早期系統マーカーを発現する。図7、22。
【0032】
特に、胆樹幹細胞は、それぞれ膵臓および膵臓内分泌部の発生のために必須であることが公知の転写因子PDX1およびNGN3を発現する(図3、4、7、11)。しかし、胆樹幹細胞は、胆管細胞(例えばセクレチン受容体、アクアポリン)、肝細胞(例えばアルブミン、チロシンアミノトランスフェラーゼもしくはTAT、トランスフェリン、P450−3A4などの「後期」P450)または膵島細胞(例えばグルカゴン、ソマトスタチン、アミラーゼもしくは高レベルのインスリン)の成熟マーカーを発現しないか、またはわずかだけ発現する(図3、7、13)。それらは、間葉細胞(例えばCD146、デスミン)、内皮細胞(例えばVEGF受容体、CD31、フォン・ヴィレブラント因子)または造血細胞(例えばCD45)についてのマーカーを全く発現しない。抗原の発現のパターンは、それらがクボタ培地またはその等価物および培養プラスチックまたはヒアルロナンの下層から成る自己複製条件下に維持される限り、培養物の寿命全体を通じて安定である。
【0033】
これらの発現パターンは、エンドポイントおよび定量的(q)RT−PCRアッセイを使用して、ならびにインビボでの組織、新鮮単離された細胞または培養細胞の免疫組織化学によって測定できる。同じ胆管周囲腺内の細胞における内胚葉幹細胞/前駆細胞の多数のマーカー(例えばSOX9、SOX17、PDX1、NGN3、FOXA2)の共発現は、膵臓への系統制限を受ける、これらの転写因子が連続的に認められるが、すべてが同時というわけではない、胚性幹(ES)細胞に関する所見とは異なる独特の驚くべき特徴である。さらに、これらの転写因子の発現は、胆管の管腔表面の成熟胆管細胞では存在しない。
【0034】
本発明の胆樹幹細胞は、上記で説明したように、成熟内胚葉組織の前駆細胞であり、肝臓、胆樹および膵臓を含む、それらが生じさせ得る多数の組織の細胞とマーカーを共有する。
【0035】
それらの相対的発現レベルに加えて、胆樹幹細胞内で発現されるテロメラーゼおよび転写因子(例えばSOX17、PDX1)の細胞局在は、成熟の間に核局在から核周囲/細胞質局在へと変化する(図7およびまたは図14〜16も参照のこと)。1つの胆管周囲腺内で、一部の細胞は所与のマーカーの核局在を有し、または別の細胞は核周囲局在を有するかもしくは発現しないことが認められる(図4、6、7、14)。理論に支配されるまたは拘束されるものではないが、核内局在は、転写因子の核周囲局在を有するものよりも原始的な細胞に関連する。後者の細胞は後期系統段階に移行しつつあると推測される。あるいは、核周囲局在は、その因子が、適切な再生要求下で核に移行することができる不活性貯蔵形態であることを示し得る。
【0036】
本発明は、胆樹幹細胞の単離および増殖のための技術を提供する。ヒト胆樹組織からの幹細胞集団を培養選択技術によって同定したが、免疫選択技術(例えばフローサイトメトリー、パニング、磁気ビーズ単離)によっても単離することできる。あるいは、または免疫選択に加えて、本発明の胆樹幹細胞は組織培養条件によって単離し得る。例えば、胆樹組織から調製した細胞懸濁液をプラスチックまたはヒアルロナンにプレートし得る。他の実施形態では、プラスチックを、場合によりIV型コラーゲン、III型コラーゲン、ラミニン、ヒアルロナン、胚/胎児組織で認められる他の基質成分、またはそれらの組合せで被覆する。
【0037】
培養選択のために使用される培地である無血清クボタ培地またはその等価物は、胆樹幹細胞およびそれらのパートナー間葉細胞、血管芽細胞および星細胞前駆体の生存および増殖に対して強く選択的であるが、胆樹の成熟細胞に対しては選択的でない。この培地の特質は、銅を含まず、低カルシウム(<0.5mM)、インスリン、トランスフェリン/Fe、精製アルブミンに結合した遊離脂肪酸およびまた、場合により、高密度リポタンパク質を含有する任意の基礎培地であることである。
【0038】
クボタ培地またはその等価物は、無血清であり、ホルモン、増殖因子および栄養素の、精製され、定義された混合物だけを含有する。より詳細には、培地は、銅を含まず、低カルシウム(<0.5mM)を含み、インスリン(5μg/ml)、トランスフェリン/Fe(5μg/ml)、高密度リポタンパク質(10μg/ml)、セレン(10−10M)、亜鉛(10−12M)、ニコチンアミド(5μg/ml)およびある形態の精製アルブミンに結合した遊離脂肪酸の混合物を添加した無血清基礎培地(例えばRPMI1640)から成る。この培地の調製のために詳細な方法は、別のところで、例えば、その開示の全体が参照により本明細書に組み込まれる、Kubota H,Reid LM,Proceedings of the National Academy of Sciences(USA)2000;97:12132−12137に公開されている。
【0039】
これらの条件は、数週間にわたって(8週間超)急速に増殖し、増殖速度は36〜40時間ごとの分裂と推定される、胆樹幹細胞のコロニーを生成する。図11〜13。培養物は、8週間を超えて幹細胞/前駆細胞として安定なままであることができ(図13)、これは、それらが自己複製を受けていることの証拠である。自己複製についてのこの証拠は、多能性遺伝子の弱から中等度レベルの発現という所見によってさらに裏付けられる。図8。得られるコロニーの数は、多数の胆管周囲腺を有する胆樹の部分からの培養物において最も高く、胆樹の分岐点以外の部位からまたは胆管周囲腺を有さない胆嚢からのものでは中間的である。
【0040】
成体運命への系統制限および分化
胆樹幹細胞の多能性と一致して、コロニーを数週間(例えば培養中で1か月超)自己複製条件下に維持し、その後培地を特定の成体細胞型に合わせて調整した無血清ホルモン規定培地(HDM)に変えた場合、細胞は指定された成体細胞型へと部分的に分化する(図17〜19)。肝臓のためのHDM(HDM−L)では、20〜30%の細胞がサイトケラチン8および18ならびにアルブミンの発現を獲得し、胆管細胞のためのHDM(HDM−C)では、それらの半数以上がセクレチン受容体およびCFTRを発現する細胞に成熟した。図17。HDM−L中の培養物におけるヒトアルブミンの発現のレベルおよびHDM−C中の培養物におけるセクレチン受容体の発現は、定量的RT−PCRを使用したアッセイではクボタ培地またはその等価物(自己複製条件)におけるものよりも有意に高かった(図19)。
【0041】
胆樹幹細胞を膵臓のためのHDM(HDM−P)中で培養した場合、膵島運命への細胞の部分的系統制限が生じた。図18。分化は、主として、細胞の集合体が形成される部位であるコロニーの辺縁およびヒトC−ペプチド、PDX1およびインスリンが認められる内部で起こった。細胞のコロニーの半数以上が、ヒトインスリン合成を示す、ヒトC−ペプチドを産生する能力を獲得し(図18hおよび18g)、このC−ペプチド合成はグルコースレベルによって調節可能であった(図18h)。産生されたヒトインスリンのレベルは、自己複製条件下で幹細胞のままであったものと比較してHDM−P中の培養物において有意に高かった(図19)。
【0042】
多能性の程度は、対象とする成体細胞型に合わせて調整した特定の細胞外基質成分を含むヒドロゲルに細胞を包埋することと組み合わせて、細胞を特異的HDM(HDM−L、HDM−C、HDM−P)から成る異なる3D分化条件に置いた場合、より劇的に実証された(図20)。細胞は速やかに特定成体細胞型に分化し(例えば7〜10日間)、IV型コラーゲンとラミニンを含むヒアルロナンのヒドロゲルと組み合わせたHDM−L中では肝細胞索を、I型コラーゲンを含むヒアルロナンのヒドロゲルと組み合わせたHDM−C中では分岐した胆管、すなわち胆樹を、またはHDM−P中およびIV型コラーゲンとラミニンを含むヒドロゲル中の場合は膵ネオアイレット(膵臓内分泌部)を生成した。
【0043】
3D培養条件下での分化についてのさらなる証拠は、自己複製条件(図21、aおよびb)対肝細胞のために調整した条件(図21、cおよびd)下で胆樹幹細胞に関して認められ、その後透過型電子顕微鏡検査によって特性づけた。自己複製条件(a〜b)対肝細胞(c〜d)下での胆樹幹細胞の透過型電子顕微鏡検査。分化条件下では、大型の多角形細胞が存在し、細胞核は1または複数の核小体を提示する。隣接細胞は明確に定義された胆細管を形成する(矢印)。胆細管は結合複合体によって閉じられている(矢じり)。管腔内には微小絨毛はほとんど存在しない。図面上のバーは2μmに等しい。
【0044】
分化条件が機能性成体細胞を生じさせたことの証明は、胆樹幹細胞/前駆細胞(BP)を生成する自己複製条件下対肝臓(B−L)、胆樹/胆管細胞(B−C)または膵臓(B−P)のための3D条件下の培養物からの定量的RT−PCRデータを含む図22において提供される。上の列は、肝臓のための条件下での培養物における古典的肝遺伝子−HNF4、AFP、アルブミン、チロシンアミノトランスフェラーゼ(TAT)、トランスフェリン(TF)およびP450−3A4−の発現の劇的な上昇を示すが、幹細胞/前駆細胞のためまたは胆樹もしくは膵臓のための条件下では上昇を示さない。これに対し、膵臓のための条件下でプレートしたもの(2番目の列)は、膵臓のための条件下(B−P)でPDX−1、ISL−1、NGN3、インスリン、グルカゴン(GCG)についての遺伝子発現の非常に劇的な上昇を示したが、幹細胞/前駆細胞のためまたは肝臓もしくは胆樹のための条件下では上昇を示さなかった。胆樹のための条件下でプレートしたものは、GGT1、AE2、CFTRの発現の上昇を明らかにした。再び自己複製条件下に移した胆樹幹細胞の培養物は、EpCAMの高レベルおよびすべての成体特異的遺伝子の低レベルを維持した。
【0045】
この多能性はまた、細胞をインビボで移植した場合にも実証される(図23〜25)。ヒト胆樹幹細胞を免疫無防備状態マウスに移植し、後程、移植した成熟ヒト細胞の存在に関して組織を評価した。休止肝臓を有する、すなわち肝損傷を受けていないマウスにおいてさえも、細胞は移植が可能であり、有意の数の肝細胞(図23)および胆管細胞(図24)に成熟することができた。さらに、膵臓運命へと駆動した細胞を移植したマウスを、それらを糖尿病にする薬剤に供し、移植した細胞はマウスを糖尿病条件から救済することができ、これらの細胞がヒトC−ペプチドの産生に関してグルコースレベルに応答性であることを証明した(図25)。
【0046】
多数の前駆細胞が同定され、成熟肝細胞に分化することが示されているが、本出願において同定される、胎児、新生児、小児および成体組織に存在する胆樹幹細胞は、成体組織から単離することができ、成熟膵細胞型に分化し得ることが証明できる、これまでに同定された最初の幹細胞および細胞集団である。これらの細胞はまた、膵島細胞に分化することができる実証された能力、腫瘍形成能(ES細胞または膵臓への分化のために必須の遺伝子でトランスフェクトされた細胞に関して存在するような)の欠如、および免疫原性の欠如により、糖尿病のための臨床プログラムにおいて直ちに使用できることが同定された最初の細胞でもある。
【0047】
胆樹幹細胞は膵臓の天然前駆体であり、単に特定の微小環境条件を使用することによって容易かつ迅速に(培養下で数日以内に)膵臓運命へと分化することができる。さらに、臨床への移行はまた、必要とされる微小環境条件がGMP形態で使用可能であり、現行の臨床療法の一部であるという事実によっても促進される。従って、少なくとも1つの臨床適用は、糖尿病(図25)、種々の形態の肝不全、機能不全もしくは変性(図23および24)の治療のための、膵β様細胞の完全なまたは部分的再生、救済、支持、修復、置換または導入のための本明細書で述べる胆樹幹細胞の使用である。
【0048】
胆樹幹細胞が臨床療法および治療において数多くの適用を有することは、本明細書の開示を考慮して当業者には明らかなはずである。胆樹幹細胞の獲得は比較的非侵襲的な処置であり得、患者に対して相対的に無害であり得る。これらの胆樹幹細胞をインビトロで増殖させる能力は、臨床プログラムのために十分な細胞(例えば10〜10細胞)を得る能力を促進する。細胞治療プログラムのために必要とされる幹細胞の量は、図13に示すように細胞を調達し、処理し、培養した後数週間以内に容易に生成される。
【0049】
治療のために提供される胆樹幹細胞は、所与のドナーから調製して、その後同じ人物に戻すことができ、細胞と受容者が好ましくは遺伝的に同一であるので、細胞拒絶反応に関する免疫学的問題を伴わない自家療法を構成する。あるいは、治療のために提供される胆樹幹細胞または細胞集団は、所与のドナーから調製して、その後別の人物に投与することができ、胆樹幹細胞は非免疫原性または最小限に免疫原性であるので、同種異系療法を構成する。最後に、本発明による胆樹幹細胞は、動物実験においておよび培養中で発癌能に関して相対的に危険性がないはずである。これまでのすべてのインビボ試験において、腫瘍形成能の証拠は全く存在しなかった。
【0050】
本発明の別の実施形態では、胆樹幹細胞または細胞集団は、標的内胚葉細胞および標的内胚葉組織(例えば膵臓、肝臓、胆管)のインビトロ生産のために使用される。従って、本発明は、胆樹幹細胞または細胞集団から「標的」細胞および組織を生産する方法であって、胆樹幹細胞の単離、標的組織またはその組織の細胞へのそれらの分化を推進する条件下でのインキュベーション、およびその必要がある患者への細胞の導入を含む方法を提供し、包含する。そのため、本発明による胆樹幹細胞の分化によって得られる、分化した組織細胞も本発明の対象である。
【0051】
上記で説明し、図14〜16に示すように、本発明による、特定の成体運命への胆樹幹細胞の部分的分化のために、栄養素、ホルモンおよび増殖因子の特定混合物を含有し、理想的には無血清であり、細胞を対象とする成体運命へと推進するように調整された規定培地(ホルモン規定培地またはHDMとも呼ばれる)を使用することができる。肝細胞、胆管細胞対膵島のための代表的なHDMを以下に示す。HDMは単独で所望の成体運命へのある程度の系統制限を誘発するが、完全な分化は誘発しない。完全な分化は、インビボでの移植後に起こるかまたは、細胞がエクスビボである場合は、細胞外基質成分の混合物と組み合わせた特定のHDMの使用をさらに必要とし、混合物の正確な組成は所望する成体細胞型に固有であり、細胞は、本明細書で述べるように3次元形式で樹立されねばならない。図17〜19。
【0052】
本発明による胆樹幹細胞または細胞集団のインビボ分化のための特に好ましい形態の適用は、胆樹幹細胞がその場所で分化することを可能にするために、身体の1つの領域に胆樹幹細胞もしくは細胞集団を移植する方法による、胆樹幹細胞もしくは細胞集団が標的組織に達することを可能にするための胆樹幹細胞もしくは細胞集団の標的系統の細胞との直接接触もしくは注入による、注射、注入、または移植である。注射または注入のために、胆樹幹細胞を、クボタ培地(もしは等価物)もしくはHDMの1つのような、それらが適合性である培地中に、またはそれらが適合性である基質成分から成る条件下でグラフトまたはインプラント中に投与することができる。
【0053】
治療適用
本発明による、胆樹幹細胞または細胞集団から得られる標的細胞の治療上の使用のために、本発明に包含されるいくつかの概念が利用可能である(Science 287:1442−1446,2000参照)。これに関連した適切な適応症の例は、先天性代謝異常、肝不全、肝硬変、膵機能不全および糖尿病である。
【0054】
本発明の胆樹幹細胞または細胞集団は、再構成される、回復されるまたは修復される器官内または器官上に直接導入することができる。導入は、細胞懸濁液として、HDMと共に細胞外基質成分の混合物に組み込まれた胆樹幹細胞もしくは細胞集団を含むグラフトとして、または他の種類の足場(例えばマイクロキャリア、ポリアクチド)として、または輸液として実施され得る。足場は、新たに導入された細胞または細胞集団が既存の細胞と共に増殖する一方で、足場が身体から「消失する」ように、好ましくは生分解性である。このようにして、好ましくは自家移植によって、再構成、救済、支持、修復、置換または導入され得る細胞は、膵島細胞または他の膵細胞、肝実質細胞または他の肝細胞、および胆管細胞または他の胆樹細胞を含む。再構成、救済、修復、支持、置換または導入は、外傷後の修復のためまたは、例えば器官の機能の欠如または不全の場合の支持的使用のために、器官の部分的な外科的切除後に行われ得る。
【0055】
本発明による胆樹幹細胞または細胞集団およびそれらから得られる標的細胞は、生体適合性を高めるために、移植可能材料にさらに結合することができる。そのため、移植可能材料も、胆樹幹細胞で被覆された場合、本発明の対象である。移植可能材料はまた、胆樹幹細胞もしくは細胞集団および/またはそれらに由来する標的細胞を含有する、人工および/または生物学的担体または支持材料であり得る。これに関して、担体材料または支持材料は、人体への挿入または移植のためのマイクロキャリア、支持体、容器またはチャンバーであり得る。
【0056】
本発明の1つのそのような実施形態では、胆樹幹細胞または細胞集団に由来する膵島細胞を含む容器は、インビボでインスリンを供給する人工膵島細胞ポートチャンバーとしての使用のための医薬的構築物の生産のために使用される。本発明の別の実施形態では、胆樹幹細胞または細胞集団の輸液またはグラフトは、インビボで膵島または膵島細胞を再構成、救済、修復、支持、置換または導入するために使用される。同様の構築物を、本発明による胆樹幹細胞に由来する肝細胞または胆管細胞に関して作製することができる。
【0057】
本発明による胆樹幹細胞から得られる標的細胞または細胞集団は、さらに、例えば解毒反応を実施するためまたは標的細胞もしくは組織によって通常インビボで生成される物質を生産するために、バイオリアクターにおける細胞培養物として(例えば体外で)使用できる。この形態の使用は、急性状況の場合、例えば急性肝不全の場合にバイオ人工肝としてまたはバイオ人工膵臓内分泌部として重症糖尿病のために特に適切である。
【0058】
最後に、本発明による多能性胆樹幹細胞または細胞集団は、トランスジェニック改変および治療において広く適用され得る。本発明の1つの実施形態によれば、胆樹幹細胞またはそれらから分化した細胞もしくは組織を1または複数の遺伝子でトランスフェクトする。このようにして、例えば肝臓または膵臓などの、特定の器官の代謝を維持するために必要な1または複数の遺伝子を回復および/または支持または再導入する。例えば、幹細胞または肝細胞をFAH(フマリルアセト酢酸ヒドロラーゼ)遺伝子でトランスフェクトすることができる。FAH欠損マウスモデルにおいて、1000個のFAH陽性ドナー肝細胞の脾臓内注射は、肝臓を完全に再構成し、肝硬変を導く代謝障害を完全に代償するのに十分である。Overturf,K.,M.Al−Dhalimy,C.−N.Ou,M.Finegold,and M.Grompe.American Journal of Pathology 151:1273−1280(1997)。あるいは、胆樹幹細胞または細胞集団は、受容者において、例えば肝臓または膵臓などの、特定の器官の代謝を維持するために必要な1または複数の遺伝子を回復する、支持するまたは導入するために、所与のドナーから調製して、別の人物に送達することができ、同種異系療法を構成し得る。
【0059】
以下の実施例は本発明を説明するものであるが、本発明は決してこれらの特定の実施例に限定されない。当業者は、これらの実施例の中に本発明を実施する1つの手段を見出す。さらに、本実施例は実験の便宜上非ヒト動物に関して提供されているが、本明細書で述べる方法および試薬は、以下で開示される教示から当業者によってヒト適用に容易に置き換えられ得る。
【実施例】
【0060】
実施例I 細胞の調製
酵素的解離を、コラゲナーゼなどのプロテアーゼ、および/またはDNアーゼなどのヌクレアーゼの存在下で実施し得る。肝細胞の酵素的解離の方法は当技術分野において記述され、実施されている。例として、肝前駆細胞の単離および同定のための方法は、例えば、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,069,005号ならびに米国特許出願第09/487,318号;同第10/135,700号;および同第10/387,547号に記載されている。実際に、細胞懸濁液の調製のための様々な手順が存在する。そのため、本発明の範囲は、全組織を入手するまたはその細胞懸濁液を調製する特定の方法に限定されないことを理解されたい。
【0061】
実施例II 3D培養条件
3次元(3D)ゲルは、基質成分、ホルモン、サイトカイン、増殖因子、栄養素および基礎培地を、架橋していないときは液体であり、架橋するとゲル化するヒアルロナンに混合することによって形成され得る。これらの調製の詳細は、別のところで、例えば、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる、W.S.Turner,E.Schmelzer,R.McClelland et al.,J Biomed Mater Res B Appl Biomater 82B(1),156(2006);およびW.S.Turner,C.Seagle,J.A.Galanko et al.,Stem Cells 26(6),1547(2008)に公開されている。培養物を、典型的には2〜4週間またはそれより長く維持し、その後組織学的検査、エンドポイントおよび定量的RT−PCRなどの遺伝子発現アッセイ、免疫蛍光ならびにウエスタンブロット法およびメタボロームフットプリンティングなどのタンパク質発現アッセイによって分析する。
【0062】
ゲル複合体の主要成分は、化学修飾されたヒアルロナンの形態である。Carbylan−S(またはCMHA−S)は、架橋のために多数のチオールで修飾されたカルボキシメチル化ヒアルロナン誘導体である。すべての材料は、少なくとも、Glycosan Biosciences(Salt Lake City,Utah)から市販されている。
【0063】
簡単に述べると、1つの実施形態では、ヒアルロナン−基質は、乾燥試薬としてのヒアルロナンをクボタ培地に溶解して、2.0%溶液(重量/容積)を得ることによって調製される。次に、ラミニン(Sigma,St.Louis,Mo)を1.5mg/mlの濃度でおよびIV型コラーゲン(Becton Dickenson,Bedford,Ma)を6mg/mlの濃度で添加し得る。室温で空気中の酸素に暴露すると数時間以内に、または架橋試薬、例えばPEGDA(ポリエチレングリコールジアクリレート)に暴露した場合は数分以内に架橋が起こる。従って、架橋を所望しない場合は、溶液を4℃に冷蔵保持し、酸素および/またはPEGDAとの接触を避けるべきである。
【0064】
実験の完了後、ヒドロゲルを、最初にクボタ培地(トランスフェリンを含まない)中で調製したヒアルロニダーゼ(1mg/ml)、DNアーゼ(0.5mg/ml)およびジチオトレイトール(40mg/ml)の混合物で、次にインスリンおよびトランスフェリンを含まないクボタ培地中で調製したリベラーゼ(0.5mg/ml)で消化することによって細胞を回収し得る。このようにして得られた細胞は、フローサイトメトリー、RT−PCRまたは免疫組織化学による特性づけに適する。
【0065】
実施例III 多能性の証拠
胆樹幹細胞または細胞集団を自己複製条件(培養プラスチックまたはヒアルロナンと組み合わせたクボタ培地または等価物)下で7〜30日間またはそれより長く培養した後、残存する細胞(すなわち胆樹幹細胞)の単層培養物を分化培地に移し、分化培地において幹細胞は迅速な形状変化および48時間以内に遺伝子発現の変化を受ける。すべての分化培地は、ホルモン規定培地が、自己複製培地中の成分に加えてカルシウム(≧0.5mM)、銅、bFGFの添加物を含むように、自己複製のために使用される培地(例えばクボタ培地または等価物)に対する改変から成り、これを「改変培地」と称する。特定の成体細胞型を達成するために、以下が必要である:
【0066】
肝臓:肝臓運命(例えば肝細胞)への系統制限は、胆樹幹細胞を、IV型コラーゲンおよびラミニンが混合されたヒアルロナンのヒドロゲル中に、グルカゴン、ガラクトース、トリヨードサイロキシン、上皮増殖因子(EGF)および肝細胞増殖因子(HGF)をさらに添加した「改変培地」と共に包埋することによって達成され得る。1つの実施形態では、成分の量は以下のとおりである:7μg/Lグルカゴン、2g/Lガラクトース、10−9Mトリヨードサイロキシン3、10ng/ml EGFおよび20ng/ml HGFを添加したMKM。
【0067】
膵臓組織:膵臓運命(例えば膵島)への系統制限は、胆樹幹細胞を、IV型コラーゲンおよびラミニンを含むヒアルロナンのヒドロゲル中に、ヒドロコルチゾンを除去し、B27、アスコルビン酸、シクロパミン、レチノイン酸およびエキセンディン4を含むようにさらに変更された「改変培地」と共に包埋することによって達成され得る。1つの実施形態では、成分の量は以下のとおりである:ヒドロコルチゾンを除去し、2%B27、0.1mMアスコルビン酸、0.25μMシクロパミン、0.5μMレチノイン酸および50ng/mlエキセンディン4を含むように改変されたMKM。
【0068】
胆樹/胆管細胞:同様に、胆樹幹細胞は、I型コラーゲンと混合したヒアルロナン、ならびに血管内皮細胞増殖因子(VEGF)165およびHGFをさらに添加した「改変培地」中に幹細胞を包埋することによって、胆管運命(例えば胆管細胞)に系統制限することができる。1つの実施形態では、成分の量は以下のとおりである:20ng/ml血管内皮細胞増殖因子(VEGF)165および10ng/ml HGFをさらに添加したMKM。
【0069】
実施例IV 移植
移植プロトコールによる固形臓器からの細胞の移植は、多くの適用に関して注射または注入よりも好ましいが、いずれの送達方法も実行可能である。上記で述べたヒドロゲル培養物は移植のための良好な条件を提供することが認められている。細胞を非架橋ヒアルロナンに懸濁し、基礎培地に加えて増殖および/または分化のために調整されたホルモン、増殖因子ならびに他の可溶性シグナルを含む培地中で他の基質成分と混合することができる。
【0070】
移植のために使用される細胞集団は、好ましくは、移植のための標的組織(または他の供給源)に由来するそれらの天然間葉パートナー(例えば血管芽細胞、星細胞)と共に(または該パートナーなしで)移植される胆樹幹細胞または細胞集団を、インビボで認められるものに匹敵する比率で含む。理論に支配されるまたは拘束されるものではないが、幹細胞とパートナー間葉細胞のこの組合せは、血管新生され、生理的に機能することができる組織の完全な成熟のための適切な微小環境を提供すると考えられる。
【0071】
1つの実施形態では、膵臓グラフト、インプラントまたは注射に関して、グラフトの細胞成分は、ヒト胎児または新生児組織由来の血管芽細胞(VEGFR、CD117細胞)および星細胞(CD146細胞)と共に、インビボで組織中に認められるそれらの細胞集団の推定比率でグラフトに同時接種された胆樹幹細胞または細胞集団から構成され得る。幹細胞集団は、本明細書で述べるように培養中で細胞を増殖させることによって入手し得る。血管芽細胞および星細胞は、ヒト胎児または新生児膵組織の新鮮調製された細胞懸濁液から磁気活性化細胞選別(MACS)システムまたはフローサイトメトリー選別で免疫選択し得る。
【0072】
すべての胆樹幹細胞集団は、幹細胞/前駆細胞に共通する細胞表面マーカー(例えばCD133、CD44H、EpCAM、NCAM)に関して陽性の細胞を免疫選択することができる。1つの実施形態では、細胞を4℃で20分間、0.5%ウシ血清アルブミンおよび2mM EDTAを含むリン酸緩衝食塩水(PBS)500μl中50×10総細胞について50μlの濃度でFITC結合一次抗体と共にインキュベートする。そのように標識した細胞を、抗FITC抗体を使用して磁気ビーズと反応させ、その後MidiまたはMiniMACSカラムおよび分離ユニットによって選択する。すべてのインキュベーションおよび選択工程は、細胞の集合を防ぐため10%ACCUTASE(Innovative Cell Technologies,San Diego,CA)を添加して氷上で実施すべきである。あるいは、細胞をフルオロプローブ標識抗体で標識し、フローサイトメーターを使用して細胞を免疫選択することができる。
【0073】
実施例V 培地
すべての培地を滅菌ろ過(0.22μmフィルター)し、使用時まで暗所にて4℃で保持した。クボタ培地(KM)は、銅を含まず、低カルシウム(<0.5mM)、10−9Mセレン、4.5mMニコチンアミド、0.1nM硫酸亜鉛、10−8Mヒドロコルチゾン、5μg/mlトランスフェリン/Fe、5μg/mlインスリン、血清アルブミン(0.1%)に添加結合した遊離脂肪酸の混合物および、場合により10μg/ml高密度リポタンパク質を含む任意の基礎培地(例えばRPMI1640)から成る。
【0074】
実施例VI 分化条件
3次元培養物を、すべて培地中で調製した、ヒアルロナン、他の基質分子、ホルモン、増殖因子、サイトカインを含むヒドロゲルで樹立した。すべてのヒドロゲルは、0.6mM濃度を達成するカルシウム、10−12M銅および塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)10μmを添加した改変クボタ培地(または等価物)(改変KMまたはMKMと称する)を使用して作製した:
【0075】
肝細胞:7μg/Lグルカゴン、2g/Lガラクトース、10−9Mトリヨードサイロキシン3、10ng/ml上皮増殖因子(EGF)および20ng/ml肝細胞増殖因子(HGF)を添加したMKM−L。基質足場は、60%のIV型コラーゲンおよびラミニンならびに40%のヒアルロナンから成った。
【0076】
胆樹/胆管細胞:20ng/ml血管内皮細胞増殖因子(VEGF)165および10ng/ml HGFを添加したMKM−C。基質足場は、60%のI型コラーゲンおよび40%のヒアルロナンから成った。
【0077】
膵臓、膵島:2%B27、0.1mMアスコルビン酸、0.25μMシクロパミン、0.5μM RAおよび50ng/mlエキセンディン4をさらに添加したMKM−P(ヒドロコルチゾンを含まない)。基質足場は、60%のIV型コラーゲンおよびラミニンならびに40%のヒアルロナンから成った。
【0078】
実施例VII 細胞の単離および表現型分類
ヒト胆樹組織(biliary tissue)を、患者への移植のために入手され、その後拒否された肝臓および膵臓から得た。ヒト胆樹組織の細胞懸濁液を、0.1%ウシ血清アルブミン、1nMセレンおよび抗生物質を添加したRPMI1640を使用して処理した。酵素処理緩衝液は、32℃で15〜20分間頻繁に撹拌した、300U/ml IV型コラゲナーゼおよび0.3mg/mlデオキシリボヌクレアーゼを含んだ。富化懸濁液を、75ゲージメッシュを通して圧縮し、再懸濁の前に1200RPMで5分間遠心した。トリパンブルー排除による推定細胞生存能は常に95%超であった。
【0079】
約3×10細胞を10cmの組織培養皿上で無血清クボタ培地にプレートし、培地を3日ごとに交換した。5〜7日以内にコロニーが形成され、3か月まで観察された。倒立顕微鏡を用いて種々の時点でコロニーを手作業で採取した。
【0080】
多能性胆樹幹細胞をまた、製造者の指示に従ってMiltenyi Biotech MACSシステム(Bergisch Gladbach,Germany)による磁気ビーズ免疫選択技術を使用して幹細胞/前駆細胞に共通する1または複数の細胞表面マーカー(CD133、CD44H、NCAM、EpCAM−CD326)の陽性発現に基づき、新鮮調製した細胞懸濁液からの免疫選択によって単離した。簡単に述べると、解離した細胞を、磁気マイクロビーズに結合したEpCAM抗体と共に4℃で30分間インキュベートし、製造者の推奨する手順に従ってMiltenyiからの磁気カラム分離システムを用いて分離した。培地を毎日交換し、収集した培地をさらなる分析のために−20℃で保存した。
【0081】
蛍光染色のために、細胞を室温で20分間、4%パラホルムアルデヒド(PFA)で固定し、HBSSで洗浄して、HBSS中の10%ヤギ血清で2時間ブロックし、洗浄した。固定した細胞を一次抗体と共に4℃で一晩インキュベートし、洗浄して、標識アイソタイプ特異的二次抗体と共に1時間インキュベートし、洗浄して、細胞核の視覚化のために4’−6ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI)で対比染色した。
【0082】
免疫組織化学のために、組織を4%パラホルムアルデヒド(PFA)に一晩固定し、70%エタノール中で保存して、その後パラフィンに包埋し、5μm切片に切断した。切片を脱パラフィンし、抗原を回収した。内因性ペルオキシダーゼを、0.3%H溶液中で30分間インキュベートすることによってブロックした。10%ウマ血清でブロックした後、一次抗体を4℃で一晩適用した;RTU Vectastainキット(Vector Laboratories,Burlingame,CA)を使用して二次抗体およびABC染色を実施した。Nova REDベクターを基質として使用した。切片を脱水し、固定して、Eukitt Mounting Media(Electron Microscopy Sciences,Hatfield,PA)に包埋し、倒立顕微鏡を用いて分析した。
【0083】
定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)分析のために、培養物からの胆樹組織または細胞を溶解し、RNeasy Plus Mini Kit(Qiagen GmbH,Valencia CA)を製造者の指示に従って使用して全RNAを抽出した。Superscript First−Strand Synthesis System for RT−PCR(Invitrogen,Carlsbad,CA)で逆転写を実施した。HotStarTaq Master Mix Kit(Qiagen)をPCRのために使用した。
【0084】
デュアルコヒーレントI−90レーザーを備えたFACStar Plusセルソーター(BD Biosciences)によって細胞を分析し、選別した。蛍光結合抗体を488nmで励起し、それらの蛍光発光を標準的なフィルターによって検出した。
【0085】
本発明をその特定の実施形態に関連して説明したが、本発明はさらなる変更が可能であること、および本出願が、細胞から正確な応答を誘発するための基質成分または増殖因子またはホルモンの正確な濃度の変動などの本発明の任意の変動、使用または変化を包含するものであることは理解される。一般に、本発明の原理は、本発明が属する技術分野内の公知または慣例的な方法に含まれる本開示からの逸脱を含めて、前述したおよび以下の添付の特許請求の範囲における本質的な特徴に適用され得る。
【0086】
略語:AE2、陰イオン交換体2型;AFP、α−フェトプロテイン;ALB、アルブミン;ASMA、α平滑筋アクチン;ASBT、頂端側ナトリウム依存性胆汁酸輸送体;bFGF、塩基性線維芽細胞増殖因子;CD、共通決定基;CD133、プロミニン;CD146、Mel−CAM;CD31、PECAM;CD44H、ヒアルロナン受容体;CD45、白血球共通抗原;CFTR、嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子;CK、サイトケラチン;CXCR4、CXC−ケモカイン受容体4;CYP450、シトクロムP450;EGF、上皮増殖因子;EpCAM、上皮細胞接着分子;FOXa2、フォークヘッドボックスa2;GGT、γグルタミルトランスペプチダーゼ;HDM、ホルモン規定培地、特定の細胞型に合わせた調整されたもの;HDM−L、肝臓のためのホルモン規定培地;HDM−C、胆管細胞(胆樹)のためのホルモン規定培地;HDM−P、膵臓のためのホルモン規定培地;HGF、肝細胞増殖因子;HNF、肝細胞核因子;KM、クボタ培地、幹細胞/前駆細胞のために設計された無血清培地;NCAM、神経細胞接着分子;NGN3、ニューロゲニン3;PDX1、膵臓および十二指腸ホメオボックス1;PROX1、プロスペロ関連ホメオボックスタンパク質1;SALL4、Sal様タンパク質4;SOX、Sry関連HMGボックス;SR、セクレチン受容体;VEGF、血管内皮増殖因子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の内胚葉系統に分化することができる哺乳動物多能性幹細胞/前駆細胞を含む組成物であって、前記細胞が哺乳動物の胆樹組織から得られる組成物。
【請求項2】
前記多能性幹細胞/前駆細胞が多能性幹細胞である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記内胚葉系統が、肝臓系統、胆管系統、膵臓系統またはそれらの組合せである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記胆樹組織が、門、総肝管、胆嚢管、総胆管、総肝膵管および胆嚢を含む、前記胆樹の任意の部分である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記哺乳動物がヒトである、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記ヒト哺乳動物が、胎児、新生児、小児、成体または死後72時間以内の死亡者である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記哺乳動物が死後10時間以内の死亡者である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記胆樹組織が、胆管周囲腺または胆管周囲腺に由来する前駆細胞もしくは幹細胞を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記胆樹組織が、前記胆樹が分岐する位置を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記多能性細胞が、
(i)早期段階肝細胞系統を示す少なくとも1つのマーカー;
(ii)早期段階膵細胞系統を示す少なくとも1つのマーカー;ならびにカテゴリー(a)〜(c)のものから選択される少なくとも1つのマーカー:
(a)幹細胞/前駆細胞上で認められる少なくとも1つの表面マーカー;
(b)内胚葉幹細胞/前駆細胞を示す少なくとも1つの転写因子、および
(c)多能性遺伝子の弱から中等度の発現
を発現する、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
早期段階肝細胞系統を示す前記少なくとも1つのマーカーが、HNF6、HES1、CK19、アルブミンまたはAFPである、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
早期段階膵細胞系統を示す前記少なくとも1つのマーカーが、PDX1、PROX1、NGN3またはインスリンである、請求項10に記載の組成物。
【請求項13】
幹細胞/前駆細胞上で認められる前記少なくとも1つの表面マーカーが、CD133(プロミニン)、CD44H(ヒアルロナン受容体)、N−CAM、CXCR4またはEpCAMである、請求項10に記載の組成物。
【請求項14】
内胚葉幹細胞/前駆細胞を示す前記少なくとも1つの転写因子が、SOX9、SOX17またはFOXA2である、請求項10に記載の組成物。
【請求項15】
前記多能性遺伝子が、SOX2、NANOG、KLF4、OCT4AまたはOCT4である、請求項10に記載の組成物。
【請求項16】
前記多能性細胞が、
(i)早期段階肝細胞系統を示す少なくとも1つのマーカー;
(ii)早期段階膵細胞系統を示す少なくとも1つのマーカー;
(iii)幹細胞/前駆細胞上で認められる少なくとも1つの表面マーカー;
(iv)内胚葉幹細胞/前駆細胞を示す少なくとも1つの転写因子;および
(v)多能性遺伝子の弱から中等度の発現
を発現する、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
前記多能性細胞が、
(i)テロメラーゼタンパク質の核発現;
(ii)多能性遺伝子の低から中等度レベルの発現;
(iii)古典的内胚葉転写因子の核または核周囲発現;
(iv)内胚葉幹細胞/前駆細胞表面マーカーの発現;
(v)成熟肝、成熟胆管または成熟膵臓内分泌部の系統マーカーの発現の欠如または低および可変レベルの発現;
(vi)間葉細胞、内皮細胞または造血細胞についてのマーカーの発現の欠如
の少なくとも1つを発現する、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
前記内胚葉幹細胞/前駆細胞表面マーカーが、CD326/上皮細胞接着分子(EpCAM)、CD56/神経細胞接着分子(NCAM)、CD133(プロミニン)、CD44H(ヒアルロナン受容体)、CXCR4、またはそれらの組合せを含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項19】
前記古典的内胚葉転写因子が、SOX17、SOX9、FOXA2、HES1、HNF6、PROX1、HNF3B(肝細胞核内因子3B)、FOXA2、SALL4(Sal様タンパク質4)、PDX1、NGN3、またはそれらの組合せを含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項20】
成熟肝の前記系統マーカーがP450−3A4、トランスフェリン、チロシンアミノトランスフェラーゼ(TAT)および高レベルのアルブミンを含み;成熟胆管の系統マーカーがAE2、CFTR、セクレチン受容体、アクアポリン、またはそれらの組合せを含み;ならびに成熟膵の前記系統マーカーが高レベルのインスリン、グルカゴン、ソマトスタチン、アミラーゼまたはそれらの組合せを含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項21】
間葉細胞についての前記マーカーがCD146、デスミン、α平滑筋アクチン(ASMA)またはそれらの組合せを含み;内皮細胞についての前記マーカーがVEGF受容体、CD31、フォン・ヴィレブラント因子、またはそれらの組合せを含み;および造血細胞についての包括的マーカーがCD45である、請求項10に記載の組成物。
【請求項22】
前記発現が、エンドポイントおよび定量的RT−PCRアッセイによってならびに/またはインビボでの組織、新鮮単離された細胞もしくは培養細胞の免疫組織化学によって測定される、請求項10に記載の組成物。
【請求項23】
前記胆樹組織が、胆嚢管、門、総肝管、総肝膵管、胆嚢およびそれらを連結する前記胆樹の任意の部分またはそれらの組合せを含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項24】
前記胆樹組織が、胆樹が分岐する位置を含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項25】
請求項1に記載の哺乳動物多能性幹細胞/前駆細胞を含む細胞の集団を含む組成物。
【請求項26】
請求項1に記載の多能性幹細胞/前駆細胞が富化された哺乳動物細胞の集団を含む組成物。
【請求項27】
多数の内胚葉系統に分化することができる哺乳動物多能性幹細胞/前駆細胞を得る方法であって、前記細胞が哺乳動物の胆樹組織から得られ、胆樹組織を得ることならびに連続的に任意の順序でまたは実質的に同時に、
(i)早期肝細胞系統段階を示す少なくとも1つのマーカー;
(ii)早期膵細胞系統段階を示す少なくとも1つのマーカー;および場合により、
(a)〜(c)から選択される少なくとも1つのマーカー:
(a)幹細胞/前駆細胞上で認められる少なくとも1つの表面マーカー;
(b)内胚葉幹細胞/前駆細胞を示す少なくとも1つの転写因子、および
(c)多能性遺伝子の弱から中等度の発現
に関して陽性である細胞を得ることを含む方法。
【請求項28】
前記単離が免疫選択技術および/または選択培養条件による、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記免疫選択技術が、パニング、磁気ビーズ選択、フローサイトメトリー、またはそれらの組合せを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記免疫選択技術がフローサイトメトリーである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記選択培養条件が、前記細胞をプラスチックに、ヒアルロナンに、または場合によりIV型コラーゲン、III型コラーゲン、ラミニン、ヒアルロナン、胚、胎児、新生児組織からの他の基質成分もしくはそれらの組合せで被覆されたプラスチックにプレートすることを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
低カルシウムを含み、銅を含まず、インスリン、トランスフェリン/Fe、セレン、亜鉛、血清アルブミンに結合した遊離脂肪酸および、場合により、高密度リポタンパク質を添加した基礎培地を含む無血清培地中で前記細胞をインキュベートすることをさらに含む、請求項28に記載の方法。
【請求項33】
前記基礎培地がRPMI1640を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記基礎培地が0.5mM未満のカルシウムを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記細胞を7〜21日間またはそれより長く培養する、請求項28に記載の方法。
【請求項36】
前記胆樹組織が、門、総肝管、胆嚢管、総胆管、総肝膵管および胆嚢、またはそれらの組合せを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項37】
前記胆樹組織が、前記胆樹が分岐するまたは多数の胆管周囲腺を含む部位に由来する、請求項27に記載の方法。
【請求項38】
多数の内胚葉系統に分化することができる哺乳動物多能性幹細胞/前駆細胞を含む哺乳動物多能性細胞の集団を同定し、単離する方法であって、前記細胞が哺乳動物の胆樹組織から得られ、胆樹組織を得ること、およびその後連続的に、任意の順序で、または実質的に同時に、
(i)早期肝細胞系統段階を示す少なくとも1つのマーカー;
(ii)早期膵細胞系統段階を示す少なくとも1つのマーカー;
ならびにカテゴリー(a)〜(c)のものの1または複数から選択される少なくとも1つのマーカー:
(a)幹細胞/前駆細胞上で認められる少なくとも1つの表面マーカー;
(b)内胚葉幹細胞/前駆細胞を示す少なくとも1つの転写因子;および
(c)多能性遺伝子の弱から中等度の発現
に関して陽性である細胞を得ることを含む方法。
【請求項39】
請求項1に記載の前記哺乳動物多能性幹細胞/前駆細胞が富化された哺乳動物多能性細胞の集団を同定し、単離する方法であって、胆樹組織を得ること、およびその後連続的に、任意の順序で、または実質的に同時に、
(i)早期肝細胞系統段階を示す少なくとも1つのマーカー;
(ii)早期膵細胞系統段階を示す少なくとも1つのマーカー;
ならびにカテゴリー(a)〜(c)のものの1または複数から選択される少なくとも1つのマーカー:
(a)幹細胞/前駆細胞上で認められる少なくとも1つの表面マーカー;
(b)内胚葉幹細胞/前駆細胞を示す少なくとも1つの転写因子;および
(c)多能性遺伝子の弱から中等度の発現
に関して陽性である細胞を得ることを含む方法。
【請求項40】
早期段階肝細胞系統を示す前記少なくとも1つのマーカーが、HNF6、HES1、CK19、アルブミンまたはAFPである、請求項38または39に記載の方法。
【請求項41】
早期段階膵細胞系統を示す前記少なくとも1つのマーカーが、PDX1、PROX1、NGN3またはインスリンである、請求項38または39に記載の方法。
【請求項42】
幹細胞/前駆細胞上で認められる少なくとも1つの表面マーカーが、CD133(プロミニン)、CD44H(ヒアルロナン受容体)、N−CAM、CXCR4またはEpCAMである、請求項38または39に記載の方法。
【請求項43】
内胚葉幹細胞/前駆細胞を示す少なくとも1つの転写因子が、SOX9、SOX17またはFOXA2である、請求項38または39に記載の方法。
【請求項44】
前記多能性遺伝子が、SOX2、NANOG、KLF4、OCT4AまたはOCT4である、請求項38または39に記載の方法。
【請求項45】
請求項1に記載の前記哺乳動物多能性幹細胞/前駆細胞、またはそのような細胞を含むもしくはそのような細胞が富化された集団を繁殖および/または増殖させる方法であって、プラスチックもしくはヒアルロナン上で、または場合によりIII型もしくはIV型コラーゲンもしくはヒアルロナンもしくは胎児、新生児もしくは胚組織に由来する他の基質成分で被覆されたプラスチック上で、ならびに銅を含まず、低カルシウム(<0.5mM)、インスリン、トランスフェリン/Fe、血清アルブミンに結合した遊離脂肪酸の混合物および、場合により、高密度リポタンパク質を含有する基礎培地中で前記細胞を培養することを含む方法。
【請求項46】
請求項1に記載の前記哺乳動物多能性幹細胞/前駆細胞のパートナー細胞を繁殖および/または増殖させる方法であって、プラスチックもしくはヒアルロナン上で、または場合によりIII型もしくはIV型コラーゲンもしくはヒアルロナンもしくは胎児、新生児もしくは胚組織に由来する他の基質成分で被覆されたプラスチック上で、ならびに銅を含まず、低カルシウム(<0.5mM)、インスリン、トランスフェリン/Fe、血清アルブミンに結合した遊離脂肪酸の混合物および、場合により、高密度リポタンパク質を含有する基礎培地中で前記細胞を培養することを含み、そのようなパートナー細胞が、間葉細胞、血管芽細胞および星細胞または前駆細胞を含む方法。
【請求項47】
多数の内胚葉系統に分化することができる哺乳動物多能性幹細胞/前駆細胞、および/またはそのような哺乳動物多能性幹細胞/前駆細胞を含むもしくはそのような細胞が富化された多能性細胞集団を肝細胞に系統制限する方法であって、
(a)哺乳動物の胆樹組織から得られる、多数の内胚葉系統に分化することができる哺乳動物多能性幹細胞/前駆細胞を含む細胞懸濁液を得ること;
(b)前記細胞懸濁液を、ヒアルロナンまたは他の基質成分と組み合わせたヒアルロナンを含むヒドロゲルに包埋すること;ならびに
(c)前記細胞懸濁液を、銅、カルシウム(≧0.5mM)、インスリン、トランスフェリン/Fe、bFGF、ヒドロコルチゾン、グルカゴン、ガラクトース、トリヨードサイロキシン(T3)、上皮増殖因子(EGF)、肝細胞増殖因子(HGF)、高密度リポタンパク質およびアルブミンに結合した遊離脂肪酸の混合物を添加した基礎培地中で、それらを肝細胞に分化させるのに十分な時間培養すること
を含む方法。
【請求項48】
前記その他の基質成分が、IV型コラーゲン、ラミニン、またはその両方を含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記培養が7〜14日間である、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
多数の内胚葉系統に分化することができる哺乳動物多能性幹細胞/前駆細胞、および/またはそのような哺乳動物多能性幹細胞/前駆細胞を含むもしくはそのような細胞が富化された多能性細胞集団を膵細胞に系統制限する方法であって、
(a)哺乳動物の胆樹組織から得られる、多数の内胚葉系統に分化することができる前記哺乳動物多能性幹細胞/前駆細胞を含む細胞懸濁液を得ること;
(b)前記細胞懸濁液を、ヒアルロナンまたは他の基質成分と組み合わせたヒアルロナンを含むヒドロゲルに包埋すること;ならびに
(c)前記細胞を、銅、カルシウム(≧0.5mM)、B27、アスコルビン酸、インスリン、トランスフェリン/Fe、bFGF、シクロパミン、レチノイン酸、エキセンディン4、高密度リポタンパク質およびアルブミンに結合した遊離脂肪酸の混合物を添加した、およびヒドロコルチゾンを欠く基礎培地中で、それらを膵細胞に分化させるのに十分な時間培養すること
を含む方法。
【請求項51】
前記その他の基質成分が、IV型コラーゲン、ラミニン、またはその両方を含む、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
多数の内胚葉系統に分化することができる哺乳動物多能性幹細胞/前駆細胞、および/またはそのような哺乳動物多能性幹細胞/前駆細胞を含むもしくはそのような細胞が富化された多能性細胞集団を胆樹細胞に系統制限する方法であって、
(a)哺乳動物の胆樹組織から得られる、多数の内胚葉系統に分化することができる前記哺乳動物多能性幹細胞/前駆細胞を含む細胞懸濁液を得ること;
(b)前記細胞懸濁液を、ヒアルロナンまたは他の基質成分と組み合わせたヒアルロナンを含むヒドロゲルに包埋すること;ならびに
(c)前記細胞を、銅、カルシウム(≧0.5mM)、インスリン、トランスフェリン/Fe、ヒドロコルチゾン、bFGF、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、肝細胞増殖因子(HGF)、高密度リポタンパク質およびアルブミンに結合した遊離脂肪酸の混合物を添加した基礎培地中で、それらを胆管細胞に分化させるのに十分な時間培養すること
を含む方法。
【請求項53】
胆樹細胞が胆管細胞を含む、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記その他の基質成分がI型コラーゲンを含む、請求項52に記載の方法。
【請求項55】
請求項1に記載の前記哺乳動物多能性幹細胞/前駆細胞、またはそのような細胞を含むもしくはそのような細胞が富化された集団を、インビボで細胞懸濁液としてまたはインプラントもしくはグラフトとして、適切な培養条件下での事前の系統制限を伴ってまたは伴わずに、それらが肝組織へと分化する肝臓に移植することを含む、インビボで細胞を分化させる方法。
【請求項56】
請求項1に記載の前記哺乳動物多能性幹細胞/前駆細胞、またはそのような細胞を含むもしくはそのような細胞が富化された集団を、インビボで細胞懸濁液としてまたはインプラントもしくはグラフトとして、適切な培養条件下での事前の系統制限を伴ってまたは伴わずに、それらが胆樹組織へと分化する胆管に移植することを含む、インビボで細胞を分化させる方法。
【請求項57】
請求項1に記載の前記哺乳動物多能性幹細胞/前駆細胞、そのような細胞を含むまたはそのような細胞が富化された集団を、インビボで細胞懸濁液としてまたはインプラントもしくはグラフトとして、適切な培養条件下での膵臓への事前の系統制限を伴ってまたは伴わずに、腎被膜下にまたは副睾丸脂肪パッド中に移植し、そこでそれらが機能性膵組織へと分化することを含む、インビボで細胞を分化させる方法。

【図1】
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【図2】
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【図19】
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【図22】
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【図25】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11(a−b)】
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【図11(c−e)】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図20(a−h)】
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【図20(i)】
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【図21】
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【図23】
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【図24】
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【公表番号】特表2013−509187(P2013−509187A)
【公表日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−537054(P2012−537054)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際出願番号】PCT/US2010/054450
【国際公開番号】WO2011/053690
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(500459410)ユニバーシティ オブ ノース カロライナ アット チャペル ヒル (16)
【出願人】(512110949)サピエンツァ ユニバーシティア ディ ローマ (1)
【氏名又は名称原語表記】SAPIENZA UNIVERSITA DI ROMA
【Fターム(参考)】