説明

肝細胞癌腫分類および予後判定のための方法

本発明は、HCCサンプルからの肝細胞癌腫(HCC)のインビトロ分類および/または予後判定のための方法に関する。本方法は特定遺伝子組合せの発現プロファイルの決定に基づく。

【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
本発明は、肝細胞癌腫(HCC)のインビトロ分類および/または予後判定のための方法に関する。本方法は、特定遺伝子組合せの発現プロファイルの決定に基づく。
【0002】
肝細胞癌腫(HCC)は、世界中で最も頻出の高い固形腫瘍の一つであり、癌による死亡原因の中で三番目である(Bosch.F.X.,et al.Semin Liver Dis 19,271-85(1999))。その頻度は、高頻度のウイルス性肝炎感染とアフラトキシンB1暴露(AFB1)とにより、特にアジアおよびアフリカにおいて高い。ここ10年間、HCCの発生率は、英国、フランス、および米国において著しく増加してきた(Taylor-Robinson,S.D.et al.Bmj 319,640(1999)、Deuffic,S.et al.Lancet 351,214-5(1998)、El-Serag,H.B.& Mason,A.C.N Engl J Med 340,745-50(1999))。この増加は、ウイルス性C型肝炎感染症の増加と関連する。
【0003】
原形および異形成再生結節の肝硬変が、それらとHCC発生との強い関連性により、確実性の高いHCCの前駆体であると考えられていた(Edmondson,H.A.& Peters,R.L.Semin Roentgenol 18,75-83(1983)、Thorgeirsson,S.S.& Grisham,J.W.Nat Genet 31,339-46(2002))。他の固形腫瘍の場合のように、多数の遺伝子の改変が発癌工程に際して蓄積する。これら遺伝子改変の一部は、HCC病因的因子(etiological factor)、特に染色体不安定性(Aoki.H.,et al.Proc Natl Acad Sci USA 93,7300-4(1996))または挿入性突然変異誘発(Brechot,C.Gastroenterology 127,S56-61(2004))を誘導しうるHBV感染に特有である。危険因子と特に関連する他の遺伝子改変は、アフラトキシンB1暴露HCCにおけるR249S TP53遺伝子突然変異(Bressac,B.et al.Proc Natl Acad Sci USA 87,1973-7(1990))、塩化ビニル関連HCCにおいて観察されるKRAS2突然変異(Weihrauch,M.et al.Br J Cancer 84,982-9(2001))、および肝細胞腺腫と関連したTCF1突然変異(Bluteau,O.et al.Nat Genet 32,312-5(2002))である。HCCの危険因子と無関係な遺伝子改変の中においては、マイクロサテライト対立形質(allelotype)および比較ゲノムハイブリダイゼーション(CGH)研究により、再発性染色体異常が証明された。最も高頻度で欠損される染色体腕(chromosome arm)は、17p、8p、16q、16p、4q、9p、13q、1p、および6qであり、一方、最も高頻度な付加は染色体1q、7q、8q、および17qにおいて見られる(Boige,V.et al.Cancer Res 57,1986-90(1997)、Wong,N.et al.Clin Cancer Res 6,4000-9(2000)、Guan,X.Y.et al.Genes Chromosomes Cancer 29,110-6(2000))。そのため、HCCは危険因子および遺伝子改変により異なる、腫瘍の非常に多様な群である。
【0004】
これにより、HCC腫瘍の分類を行なう上で、更なる正確性、信頼性、および容易性が必要となる。実際に、例えば、非常に多様な腫瘍に対して効率的療法を探すことは非常に困難である。一方、信頼性あるHCCの分類ができれば、各サブグループを別々に研究することにより、各サブグループについて新たな標的療法を見出せるであろう。さらに、分類検定を行なう際の信頼性および容易性があれば、各患者に適合した治療を選択しうるであろう。
【0005】
特に、HCCの予後も非常に多様である。現在、HCCの主な治療は、アジュバント化学療法によりフォローされるまたはされない、HCC腫瘍の外科切除である。化学療法は、患者にとって非常に面倒かつ苦痛であるが、予後の悪いHCCの場合には必要である。HCC腫瘍の分類および予後判定法があれば、HCC患者にアジュバント療法を施すか否かを決める上でも、非常に役立つであろう。
【0006】
HCC多様性は当業者に周知であり、相当な努力が先行技術においてHCC腫瘍をより良く分類および/または予知するために払われてきた。
【0007】
例えば、最近、いくつかのグループが総合トランスクリプトーム解析によりHCC腫瘍を分類しようと試みていた。HBVおよびHCV由来HCC間において、重要な発現プロファイル変化について各々記載しているものもある(Okabe et al.Cancer Res.2001 Mar 1,61(5):2129-37、Iizuka et al.Cancer Res.2002 Jul 15,62(14):3939-44)。
【0008】
様々な組織学的特徴(Chung et al.Mol Cells.2002 Dec 31,14(3):382-7、Chen et al.Mol Biol Cell.2002 Jun,13(6):1929-39、WO2004/090163)または生存確率(Lee et al.Hepatology.2004 Sep,40(3):667-76)に基づき、二つまたは三つサブグループへのHCC分類について記載しているものもある。
【0009】
本発明者らは、特に、二つのグループのHCCを規定するHCCの臨床的特徴と遺伝子改変が実際上密接に関連していることをこれまでに示した(Legoix,P.et al.Oncogene 18,4044-6(1999)、Laurent-Puig,P.et al.Gastroenterology 120,1763-73(2001))。第一の種類のHCCは、高レベルの染色体不安定性、頻出TP53、およびAXIN1突然変異と関連しているのみならず、HBV感染および悪い予後とも密接に関連していた。逆に、第二サブグループのHCC腫瘍は染色体安定性であり、高頻度でβ‐カテニン変化を活性化するが、ウイルス感染とは関係しない。
【0010】
予後に関しては、いくつかのグループが、血管侵襲(Chen et al.Mol Biol Cell.2002 Jun,13(6):1929-39、Qin et al.J Cancer Res Clin Oncol.2004 Sep,130(9):497-513)または転移(Qin et al.J Cancer Res Clin Oncol.2004 Sep,130(9):497-513、Ye et al.Nat Med.2003 Apr,9(4):416-23)に関与する遺伝子について記載した。
【0011】
再発(Kurokawa et al.J Hepatol.2004 Aug,41(2):284-91、Lizuka et al.Lancet.2003 Mar 15,361(9361):923-9、WO2005/017150)および/または生存(Lee et al.Hepatology.2004 Sep,40(3):667-76、WO2005/017150)予後判定に関与する遺伝子の群について特定していたものもある。
【0012】
しかしながら、組織学的または遺伝的特徴のみに基づく、二つまたは更には三つのサブグループへのHCC腫瘍の分類においては、HCC高多様性をおそらく正確には反映できない。加えて、予後検定を行なう上での、簡単さ、容易性の必要性がなお存する。
【0013】
更にHCCで遺伝子型‐表現型相互関係を調査し、このように多様な腫瘍において脱調節された経路およびまたは生物学的工程を特定し、新たな予後因子を見つけるために、本発明者らは大きなシリーズの123腫瘍の臨床、遺伝子、およびトランスクリプトームレベルで包括的に解析を行った。
【0014】
ほとんどの先行研究は、HCC腫瘍を二つサブグループに細分類できただけであったが、本発明者らは、意外にも、HCC腫瘍が様々な臨床および遺伝子改変と密接に関連した六つの異なるサブグループに現実に集団化されることを見出した。彼らは、クラスメンバーシップの16‐遺伝子診断プレディクターおよび24‐遺伝子プレディクターと、HCCサブグループにかかわらず患者予後を予測し、一般の臨床予後マーカーより優れた5‐遺伝子特性(signature)も決定した。
【0015】
更に正確には、本発明者らは、六つの異なるHCCサブグループまたはクラス(以下、G1〜G6と称される)を規定した。これら六つのサブグループは、Affymetrix HG-U133A GeneChipアレイを用いて、57HCC、3肝細胞腺腫、および5サンプルの蓄積された非腫瘍組織の総合トランスクリプトーム解析の非管理解析により規定された。六つのサブグループは、下記表1において示され、図1において要約されるように、臨床および遺伝子因子と高度に関連する。
【0016】
【表1】


【0017】
実施例2、項目2.2において更に詳細に記載されているように、下記表2において記載されているような主要な特徴を用いて六つのサブグループが規定される。
【0018】
【表2】

【0019】
本発明による分類の方法によれば、HCC肝臓サンプルについて、それがこれら六つのHCCサブグループのうちどれに属するかを容易に決定しうる。
【0020】
このように本発明は、第一に:
a)RAB1A、REG3A、NRAS、RAMP3、MERTK、PIR、EPHA1、LAMA3、G0S2、HN1、PAK2、AFP、CYP2C9、CDH2、HAMP、SAE1、ADH6、DCN、FLJ10159、ALDH1L1、IGF1、LECT2、SLC38A1、SPARCL1、CTNNA2、GLUL、LEF1、MATN2、MME、PFN2、SPINT2、TBX3、およびFGFR2からなる群より選択される少なくとも8、少なくとも10、少なくとも12、少なくとも14、または少なくとも16の遺伝子の組合せを含んでなる、またはこれらからなる発現プロファイルを決定し、
b)該発現プロファイルから六つのサブグループの距離を計算し、そして
c)サブグループの距離が最短であるサブグループにHCC腫瘍を分類する
ことを含んでなり、ここで六つのサブグループG1、G2、G3、G4、G5、およびG6が表2において記載された、それらの臨床的および遺伝的特徴により規定される、HCCに罹患した対象の肝臓HCCサンプルからの六つのサブグループ間におけるHCC腫瘍のインビトロ分類の方法に関する。
【0021】
HCC分類に関与する第一セットの遺伝子の主要な特徴が下記表3において記載される。
【0022】
【表3】


【0023】
本発明によると、HCC腫瘍の“分類”とは、HCC腫瘍について、それが属するHCC“サブグループ”または“クラス”(これら二つの用語“サブグループ”および“クラス”は本願を通して互いに無関係に用いられる)の決定を意味するものであり、サブグループは表2において記載された特徴により規定される。
【0024】
本発明によるインビトロ分類の方法の好ましい態様において、発現プロファイルは、RAB1A、REG3A、NRAS、RAMP3、MERTK、PIR、EPHA1、LAMA3、G0S2、HN1、PAK2、AFP、CYP2C9、CDH2、HAMP、SAE1、ADH6、DCN、FLJ10159、ALDH1L1、IGF1、LECT2、SLC38A1、SPARCL1からなる群より選択される少なくとも8、少なくとも10、少なくとも12、少なくとも14、または少なくとも16の遺伝子を含んでなる、またはこれらからなる。
【0025】
本発明によるインビトロ分類の方法の更に好ましい態様において、発現プロファイルは、RAB1A、REG3A、NRAS、RAMP3、MERTK、PIR、EPHA1、LAMA3、G0S2、HN1、PAK2、AFP、CYP2C9、CDH2、HAMP、およびSAE1からなる群より選択される少なくとも8、少なくとも10、少なくとも12、少なくとも14、または少なくとも16の遺伝子を含んでなる、またはこれらからなる。本発明によるインビトロ分類の方法の最も好ましい態様において、発現プロファイルは、下記16の遺伝子組合せを含んでなる、またはこれらからなる:RAB1A、REG3A、NRAS、RAMP3、MERTK、PIR、EPHA1、LAMA3、G0S2、HN1、PAK2、AFP、CYP2C9、CDH2、HAMP、およびSAE1。
【0026】
本発明は:
a)ALDH1L1、CD24、CD74、CFHR3、CYP4F12、DNAJA3、DSCR1、EPHA1、EPHB4、FAAH、FGFR2、FLJ10159、GLT8D1、HAL、MATN2、MRPS7、PAK2、PLXNB1、RAB1A、RHOQ、SLC27A5、SLPI、SMARCE1、STRA13からなる群より選択される少なくとも8、少なくとも10、少なくとも12、少なくとも14、少なくとも16、少なくとも18、少なくとも20、少なくとも22、または24の遺伝子の組合せを含んでなる、またはこれらからなる発現プロファイルを決定し、
b)該発現プロファイルから六つのサブグループの距離を計算し、そして
c)サブグループの距離が最短であるサブグループにHCC腫瘍を分類する、
ことを含んでなり、ここで六つのサブグループG1、G2、G3、G4、G5、およびG6が、表2において記載されたそれらの臨床的および遺伝的特徴により規定される、HCCに罹患した対象の肝臓HCCサンプルからの六つのサブグループ間におけるHCC腫瘍のインビトロ分類の他の方法にも関する。
【0027】
HCC分類に関与する第二セットの遺伝子の主要な特徴が下記表4に記載される。
【0028】
【表4】



【0029】
第二セットの遺伝子を用いた本発明によるインビトロ分類の上記方法の好ましい態様において、発現プロファイルは、次の24遺伝子組合せを含んでなる、またはこれらからなる:ALDH1L1、CD24、CD74、CFHR3、CYP4F12、DNAJA3、DSCR1、EPHA1、EPHB4、FAAH、FGFR2、FLJ10159、GLT8D1、HAL、MATN2、MRPS7、PAK2、PLXNB1、RAB1A、RHOQ、SLC27A5、SLPI、SMARCE1、STRA13。
【0030】
本発明によると、“肝臓HCCサンプル”とは、HCC腫瘍組織を含んでなる、あらゆる肝臓サンプルを意味する。本発明によるインビトロ分類の方法の好ましい態様において、肝臓HCCサンプルは、肝臓HCCバイオプシーまたはHCC腫瘍外科切除によるものである。
【0031】
“発現プロファイルを決定する”とは、選択遺伝子群の発現レベルの測定を意味する。各遺伝子の発現レベルは、当業界において知られた何らかの技術を用いて、タンパク質または核酸レベルのいずれかにおいて、インビトロにおいて決定されてもよい。
【0032】
例えば、タンパク質レベルにおいて、特定タンパク質の発現レベルのインビトロ測定は、ELISAまたはマススペクトロメトリー分析に限定されないが、それらを含めた、当業者に知られた何らかの量的方法により行なわれてもよい。これらの技術は、どのHCCサンプルへも容易に適用される。実際に、HCCサンプルのタンパク質は、溶液測定の場合、ELISAまたはマススペクトロメトリーに関して当業者に周知の様々な技術を用いて抽出される。一方、HCC腫瘍スライス中におけるタンパク質の発現レベルは、直接的に組織スライスでマススペクトロメトリーを用いて分析されてもよい。
【0033】
本発明によるインビトロ分類方法の好ましい態様において、発現プロファイルは核酸レベルにおいてインビトロで決定される。核酸レベルにおいて、遺伝子の発現レベルのインビトロ測定は、メッセンジャーRNA(mRNA)またはレトロ転写された相補的DNA(cDNA)により直接的に行なわれてもよい。マイクロアレイ解析、定量的PCR、サザン解析に限定されないが、それらを含めて、発現レベルを測定するいかなる方法も用いてもよい。本発明によるインビトロ分類の方法の好ましい態様において、発現プロファイルはマイクロアレイを用いてインビトロで決定される。本発明によるインビトロ分類の方法の他の好ましい態様において、発現プロファイルは定量的PCRを用いてインビトロにおいて決定される。いずれの場合においても、遺伝子の発現レベルは、好ましくは、内部コントロール遺伝子、一般的には、リボソームRNA(例えば18SリボソームRNA)に限定されないが、それを含めたハウスホールド遺伝子、またはアクチンもしくはHPRTのような遺伝子の発現レベルと比較して標準化される。これらの技術はどのHCCサンプルへも容易に適用される。実際に、組織サンプルからmRNAを抽出してmRNAをcDNAにレトロ転写する上で、いくつか周知の技術が当業者に利用しうる。
【0034】
好ましい態様において、第一セットの遺伝子(表3参照)を利用するインビトロ分類の方法を用いた場合、発現プロファイルは定量的PCRを用いて核酸レベルにおいてインビトロで決定される。他の好ましい態様において、第二セットの遺伝子(表4参照)を利用する分類の方法を用いた場合、発現プロファイルは核酸マイクロアレイを用いて核酸レベルにおいてインビトロで決定される。特に、AffimetrixマイクロアレイU133Aが有利に用いられる。
【0035】
本発明者らにより規定された六つのサブグループ間におけるHCC腫瘍のインビトロ分類の方法において、各サブグループについて、該HCC腫瘍と六つのサブグループの各々との数学的な距離を表す“サブグループ距離”が計算される。サンプルとサブグループとの距離が最短であれば、該サンプルがこの特定サブグループに属する確率は最高である。
【0036】
n遺伝子(n≧8)の選択組合せの場合、全腫瘍のセットは、各腫瘍サンプルが該腫瘍サンプル中における各選択遺伝子の発現レベルに相当するn座標で特徴づけられる、n次元セットとして規定される。各サブグループまたはクラスは、中心点と、中心点の各座標付近における許容偏差%とにより規定される、n次元セットのサブセットである。発現プロファイルの決定に用いられる技術に応じて、六つのサブグループまたはクラスの一つまでの腫瘍サンプルの距離を各々計算しうる適切な数学関数が選択されてもよい。
【0037】
特に、定量的PCRを用いて発現プロファイルが決定される場合、所定のHCC腫瘍サンプルおよび特定サブグループまたはクラスについて、該クラスまでの該サンプルの距離は下記式(I)を用いて計算されてもよい:
【数1】

上記式中
-nは発現プロファイルにおける遺伝子の数を表し、
-各遺伝子について、μ(クラス,遺伝子)およびσ(遺伝子)は遺伝子の選択組合せに依存するパラメーターであり、本願の実施例2において更に詳細に記載されているような、HCC腫瘍のトレーニング群における最適化、次いでHCC腫瘍の検定群におけるバリデーションにより計算される。
【0038】
一方、発現プロファイルが核酸マイクロアレイを用いて核酸レベルにおいて決定される場合、所定のHCC腫瘍サンプルおよび特定サブグループまたはクラスについて、該クラスまでの該サンプルの距離は当業者に周知の様々なアルゴリズムから演繹される様々な式を用いて計算される。例えば、該クラスまでの該サンプルの該距離は下記式(II)を用いて計算される:
【数2】

上記式中
-nは発現プロファイルにおける遺伝子の数を表し、
-各遺伝子について、y(サンプル,遺伝子)はサンプル中における遺伝子の標準化強度値を表し、および
-各遺伝子およびクラスについて、c(遺伝子,クラス)、μ(遺伝子)、およびσ(遺伝子)は、遺伝子の選択組合せに依存するパラメーターであり、本願の実施例2において更に詳細に記載されているような、HCC腫瘍のトレーニング群における最適化、次いでHCC腫瘍の検定群におけるバリデーションにより計算されてもよい。
【0039】
標準化はいずれか周知の方法を用いて、例えばRMA標準化を用いて行なってもよい。
【0040】
所定のサンプルについて、全クラスまでの全距離が計算された場合、サンプル予測クラスが下記式(III)に従い計算される:
【数3】

上記式は、所定サンプルの予測クラスが、クラスまでのサンプルの距離が最短であるクラスであることを意味する。
【0041】
第一セットの遺伝子(表3参照)を用いて、本発明者らにより規定された六つのサブグループ間におけるHCC腫瘍の分類の方法の好ましい態様において、発現プロファイルは次の遺伝子組合せ:RAB1A、REG3A、NRAS、RAMP3、MERTK、PIR、EPHA1、LAMA3、G0S2、HN1、PAK2、AFP、CYP2C9、CDH2、HAMP、およびSAE1からなり、定量的PCRを用いて決定され、クラスまでのサンプルの各距離は、下記式(IV)を用いて計算される:
【数4】

上記式中、各遺伝子およびクラスについて、μ(クラス,遺伝子)およびσ(遺伝子)値は、下記表5で示された値から10%、好ましくは9%、8%、7%、6%、5%、または更には4%、3%、2%、または1%の区間内にある。
【0042】
【表5】


【0043】
第二セットの遺伝子(表4参照)を用いて本発明者らにより規定された六つのサブグループ間におけるHCC腫瘍の分類の方法の好ましい態様において、発現プロファイルは次の遺伝子組合せ:ALDH1L1、CD24、CD74、CFHR3、CYP4F12、DNAJA3、DSCR1、EPHA1、EPHB4、FAAH、FGFR2、FLJ10159、GLT8D1、HAL、MATN2、MRPS7、PAK2、PLXNB1、RAB1A、RHOQ、SLC27A5、SLPI、SMARCE1、STRA13からなり、定量的マイクロアレイを用いて核酸レベルにおいて決定され、クラスまでのサンプルの各距離は下記式(V)を用いて計算される:
【数5】

上記式中、各遺伝子およびクラスについて、c(遺伝子,クラス)、μ(遺伝子)、およびσ(遺伝子)値は、下記表6において示された値から10%、好ましくは9%、8%、7%、6%、5%、または更には4%、3%、2%、または1%の区間内にある。
【表6】

【0044】
本発明は:
a)NRCAM、PIR、RAMP3、SLC21A2、TAF9、TNA、HN1、PSMD1、MRPS7、CDC20、ENO1、HLF、STRA13、RAGD、NRAS、ARFGEF2、RAB1A、G0S2、SMAD3、DNAJA3、HELO1、RHOQ、C14orf156、NPEPPS、PDCD2、PHB、KIAA0090、IMP-3、KPNA2、KIAA0268、UNQ6077、LOC440751、G6PD、STK6、TFRC、GLA、TRIP13、SPP1、AKR1C1、AKR1C2、GIMAP5、ADM、CCNB1、TKT、AGPS、RAN、NUDT9、HRASLS3、HLA-DQA1、NEU1、RARRES2、PAPOLA、ABCB6、BIRC5、FLJ20273、C14orf109、CHKA、TUBB2、HMGB3、TXNRD1、IFITM1、KIAA0992、MPPE1、KLRB1、CCL5、SYNE1、DNASE1L3、CYP2C18、PACSIN2、PON3、およびPPP2R1Bからなる群より選択される少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、または少なくとも5の遺伝子の組合せを含んでなる発現プロファイルを決定し、
b)該発現プロファイルから総合生存(global survival)スコアおよび/または非再発生存(survival without relapse)スコアを計算し、そして
c)得られた総合生存スコアおよび/または非再発生存スコアを閾値と各々比較することを含んでなり、ここで
-該閾値より厳密に劣る総合生存/非再発生存スコアは良い生存/非再発生存予後を示し、一方
-該閾値より優れたまたはそれに等しい総合生存/非再発生存スコアは悪い生存/非再発生存予後を示す、
HCCに罹患した対象の肝臓HCCサンプルからの総合生存および/または非再発生存のインビトロ予後判定の方法にも関する。
【0045】
HCC予後に関与する遺伝子の主要特徴が、下記表7において記載されている。
【0046】
【表7】





【0047】
本発明によるインビトロ予後判定の方法の好ましい態様において、発現プロファイルはNRCAM、PIR、RAMP3、SLC21A2、TAF9、TNA、HN1、PSMD1、MRPS7、CDC20、ENO1、HLF、STRA13、RAGD、NRAS、ARFGEF2、RAB1A、G0S2、SMAD3、DNAJA3、HELO1、およびRHOQからなる群より選択される少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、または少なくとも5の遺伝子の組合せを含んでなる、好ましくはこれらからなる。
【0048】
本発明によると、HCC進展の“予後”とは、特定HCC腫瘍に罹患した患者に関する、特定HCC腫瘍の将来の進展の予測を意味する。本発明の方法によれば、総合生存予後と非再発生存予後との双方を判定しうる。
【0049】
“総合生存予後”とは、再発または非再発における、生存の予後を意味する。前記のように、HCCに対する主な現行治療は腫瘍外科切除である。結果として、“悪い総合生存予後”は肝臓切除後3年以内における死の発生として規定され、一方“良い総合生存予後”は術後5年間にわたる死の非存在として規定される。
【0050】
“非再発生存予後”とは、再発の非存在下における生存の予後を意味する。“悪い非再発生存予後”は肝臓切除後2年以内に腫瘍が再発するとして規定され、一方“良い非再発生存予後”は術後4年間にわたり再発しないとして規定される。
【0051】
本発明による総合生存のインビトロ予後判定の方法の好ましい態様において、発現プロファイルは:
-TAF9、PIR、NRCAM、およびRAMP3
-TAF9、NRCAM、SLC21A2、およびPSMD1
-TAF9、NRCAM、RAMP3、およびPSMD1
-TAF9、NRCAM、NRAS、RAMP3、およびPSMD1、または
-TAF9、NRCAM、RAMP3、PSMD1、およびARFGEF2
から選択される遺伝子の組合せを含んでなる、好ましくはこれらからなる。
【0052】
本発明による総合生存のインビトロ予後判定の方法の更に好ましい態様において、発現プロファイルは下記の遺伝子組合せ:
-TAF9、NRCAM、RAMP3、PSMD1、およびARFGEF2
を含んでなる、好ましくはこれらからなる。
【0053】
一方、本発明による非再発生存のインビトロ予後判定の方法の好ましい態様において、発現プロファイルは:
-TAF9およびG0S2
-TAF9、NRCAM、およびRAMP3
-TAF9、G0S2、およびRAMP3
-TAF9、NRCAM、DNAJA3、およびRAMP3、または
-TAF9、NRCAM、G0S2、DNAJA3、およびRAMP3
から選択される遺伝子の組合せを含んでなる、好ましくはこれらからなる。
【0054】
本発明による非再発生存のインビトロ予後判定の方法の更に好ましい態様において、発現プロファイルは下記の遺伝子組合せ:
-TAF9、NRCAM、およびRAMP3
を含んでなる、好ましくはこれらからなる。
【0055】
遺伝子の具体的な組合せは、プレディクターと称されてもよい。
【0056】
本発明による総合生存および/または非再発生存のインビトロ予後判定の方法において、“肝臓HCCサンプル”は、HCC腫瘍組織を含んでなる、いかなる肝臓サンプルでもよい。本発明による総合生存および/または非再発生存のインビトロ予後判定の方法の好ましい態様において、肝臓HCCサンプルは肝臓HCCバイオプシーまたはHCC腫瘍外科切除によるものである。
【0057】
インビトロ分類の方法に関し、総合生存および/または非再発生存のインビトロ予後判定の方法において、各遺伝子の発現レベルは、当業界で知られた何らかの技術、特に上記いずれかの技術を用いて、タンパク質または核酸レベルにおいてインビトロで決定されてもよい。
【0058】
総合生存および/または非再発生存のインビトロ予後判定の方法の好ましい態様において、発現プロファイルは核酸レベルにおいてインビトロで決定される。好ましくは、発現プロファイルはマイクロアレイを用いて決定される。他の好ましい態様において、発現プロファイルは定量的PCRを用いて決定される。いずれの場合でも、遺伝子の発現レベルは、好ましくは、内部コントロール遺伝子、一般的には、リボソームRNA(例えば18SリボソームRNA)に限定されないが、それを含めたハウスホールド遺伝子、またはアクチンもしくはHPRTのような遺伝子の発現レベルと比較して標準化される。
【0059】
本発明による総合生存および/または非再発生存のインビトロ予後判定の方法では、総合生存および/または非再発生存“スコア”が計算される。n遺伝子(n≧2)の選択組合せの場合、“スコア”は、遺伝子の選択組合せに依存したパラメーターにより加重される、該腫瘍サンプルで各選択遺伝子のn発現レベルを考慮に入れたロジスティック関数であり、本願の実施例3において更に詳細に記載されているような、HCC腫瘍のトレーニング群における最適化、次いでHCC腫瘍の検定群におけるバリデーションにより計算されてもよい。
【0060】
発現プロファイルの決定に用いられる技術に応じて、適切なパラメーターを用いた適切なスコア関数が求められてもよい。
【0061】
特に、定量的PCRを用いて発現プロファイルが決定される場合、所定サンプルについて、総合生存または非再発生存“スコア”は下記式を用いて計算されてもよい:
【数6】

上記式中
-nは、発現プロファイルにおける遺伝子の数を表し、
-各遺伝子について、β(遺伝子)およびμ(遺伝子)は、遺伝子の選択組合せに依存するパラメーターであり、本願の実施例3において更に詳細に記載されているような、HCC腫瘍のトレーニング群における最適化、次いでHCC腫瘍の検定群におけるバリデーションにより計算されてもよい。
【0062】
本発明による総合生存および/または非再発生存のインビトロ予後判定のいずれの方法においても、総合生存および/または非再発生存の得られたスコアは、予後が悪いかまたは良いかを定める少なくとも一つの閾値と比較される。
【0063】
発現プロファイルにおける遺伝子の所定の組合せについて、このような閾値は、β(遺伝子)およびμ(遺伝子)パラメーターの場合と同様の方法を用いて、即ち本願の実施例3で更に詳細に記載されているような、HCC腫瘍のトレーニング群における最適化、次いでHCC腫瘍の検定群におけるバリデーションにより決定されてもよい。
【0064】
所定の閾値について、サンプルの予後は:
-そのスコアが該閾値より優れるまたはそれに等しいならば、悪い予後であり、または
-そのスコアが該閾値より厳密に劣るならば、良い予後
である。
【0065】
本発明による総合生存のインビトロ予後判定の方法の好ましい態様において、発現プロファイルは下記表8の遺伝子の組合せからなり、定量的PCRおよび下記式を用いて決定される:
【数7】

上記式中
-nは組合せにおける遺伝子の数を表し、
-tは下記表8で示された組合せにおける各遺伝子の数を表し、並びに
-各β(遺伝子)およびμ(遺伝子)係数の値は、下記表8において示された値から10%、好ましくは9%、8%、7%、6%、5%、または更には4%、3%、2%、または1%の区間内にある。
【0066】
【表8】

【0067】
最も好ましい態様において、総合生存予後判定に用いられる閾値は、下記表8で示された値から10%、好ましくは9%、8%、7%、6%、5%、または更には4%、3%、2%、または1%の区間内にある。
【0068】
本発明による非再発生存のインビトロ予後判定の方法の好ましい態様において、発現プロファイルは下記表9の遺伝子の組合せからなり、定量的PCRおよび下記式を用いて決定される:
【数8】

上記式中
-nは、組合せにおける遺伝子の数を表し、
-tは、下記表9において示された組合せにおける各遺伝子の数を表し、および
-各β(遺伝子)およびμ(遺伝子)係数の値は、下記表9において示された値から10%、好ましくは9%、8%、7%、6%、5%、または更には4%、3%、2%、または1%の区間内にある。
【0069】
【表9】

【0070】
最も好ましい態様において、予後判定に用いられる閾値は、下記表9において示された値から10%、好ましくは9%、8%、7%、6%、5%、または更には4%、3%、2%、または1%の区間内にある。
【0071】
好ましくは、ΔCt(サンプル,遺伝子)値は、リボソーム18S RNA(R18S)と比較して計算される。
【0072】
本発明は、更に:
a)本発明によるいずれかの方法に従い、生存および/または非再発生存予後を判定し、そして
b)該予後判定からアジュバント療法の妥当性を決める:
-悪い予後である場合には、アジュバント療法が勧められ、一方
-悪い予後でない場合には、アジュバント療法が勧められない、
HCCに罹患した対象の肝臓HCCサンプルからのアジュバント療法の妥当性のインビトロ診断決定の方法に関する。
【0073】
“アジュバント療法”とは、HCCに罹患した対象へ外科HCC腫瘍切除後に施される、追加的抗腫瘍療法を意味する。アジュバント療法には化学療法および放射線療法を含んでもよいが、それらに限定されない。
【0074】
本発明は、RAB1A、REG3A、NRAS、RAMP3、MERTK、PIR、EPHA1、LAMA3、G0S2、HN1、PAK2、AFP、CYP2C9、CDH2、HAMP、SAE1、ADH6、DCN、FLJ10159、ALDH1L1、IGF1、LECT2、SLC38A1、SPARCL1、CTNNA2、GLUL、LEF1、MATN2、MME、PFN2、SPINT2、TBX3、およびFGFR2からなる群より選択される少なくとも8、少なくとも10、少なくとも12、少なくとも14または少なくとも16の遺伝子の組合せを含んでなる、またはこれらからなる発現プロファイルのインビトロ決定のための試薬を含んでなる、HCCに罹患した対象の肝臓HCCサンプルからの六つのサブグループ間におけるHCC腫瘍のインビトロ分類のためのキットにも関する。これらの遺伝子は、表2の臨床的および遺伝的特徴で規定されるようなサブグループG1〜G6にHCC腫瘍を分類する際に有用として特定された、第一セットの遺伝子(表3参照)に相当する。
【0075】
好ましい態様において、本発明によるHCC腫瘍のインビトロ分類のためのキットは、RAB1A、REG3A、NRAS、RAMP3、MERTK、PIR、EPHA1、LAMA3、G0S2、HN1、PAK2、AFP、CYP2C9、CDH2、HAMP、SAE1、ADH6、DCN、FLJ10159、ALDH1L1、IGF1、LECT2、SLC38A1、SPARCL1からなる群より選択される少なくとも8、少なくとも10、少なくとも12、少なくとも14、または少なくとも16の遺伝子の組合せを含んでなる、またはこれらからなる発現プロファイルのインビトロ決定のための試薬を含んでなる。
【0076】
更に好ましい態様において、本発明によるHCC腫瘍のインビトロ分類のためのキットは、RAB1A、REG3A、NRAS、RAMP3、MERTK、PIR、EPHA1、LAMA3、G0S2、HN1、PAK2、AFP、CYP2C9、CDH2、HAMP、およびSAE1からなる群より選択される少なくとも8、少なくとも10、少なくとも12、少なくとも14、または少なくとも16の遺伝子の組合せを含んでなる、またはこれらからなる発現プロファイルのインビトロ決定のための試薬を含んでなる。
【0077】
更に一層に好ましい態様において、本発明によるHCC腫瘍のインビトロ分類のためのキットは、次の16遺伝子組合せ:RAB1A、REG3A、NRAS、RAMP3、MERTK、PIR、EPHA1、LAMA3、G0S2、HN1、PAK2、AFP、CYP2C9、CDH2、HAMP、およびSAE1を含んでなる、またはこれらからなる発現プロファイルのインビトロ決定のための試薬を含んでなる。
【0078】
本発明は、更に、ALDH1L1、CD24、CD74、CFHR3、CYP4F12、DNAJA3、DSCR1、EPHA1、EPHB4、FAAH、FGFR2、FLJ10159、GLT8D1、HAL、MATN2、MRPS7、PAK2、PLXNB1、RAB1A、RHOQ、SLC27A5、SLPI、SMARCE1、STRA13からなる群より選択される少なくとも8、少なくとも10、少なくとも12、少なくとも14、少なくとも16、少なくとも18、少なくとも20、少なくとも22または24の遺伝子の組合せを含んでなる、またはこれらからなる発現プロファイルのインビトロ決定のための試薬を含んでなる、HCCに罹患した対象の肝臓HCCサンプルからの六つのサブグループ間におけるHCC腫瘍のインビトロ分類のためのキットに関する。これらの遺伝子は、表2の臨床的および遺伝的特徴で規定されるようなサブグループG1〜G6にHCC腫瘍を分類する際に有用として特定された、第二セットの遺伝子(表4参照)に相当する。
【0079】
好ましくは、該キットは、次の24遺伝子組合せ:ALDH1L1、CD24、CD74、CFHR3、CYP4F12、DNAJA3、DSCR1、EPHA1、EPHB4、FAAH、FGFR2、FLJ10159、GLT8D1、HAL、MATN2、MRPS7、PAK2、PLXNB1、RAB1A、RHOQ、SLC27A5、SLPI、SMARCE1、STRA13からなる発現プロファイルのインビトロ決定のための試薬を含んでなる。
【0080】
本発明は、更に、NRCAM、PIR、RAMP3、SLC21A2、TAF9、TNA、HN1、PSMD1、MRPS7、CDC20、ENO1、HLF、STRA13、RAGD、NRAS、ARFGEF2、RAB1A、G0S2、SMAD3、DNAJA3、HELO1、RHOQ、C14orf156、NPEPPS、PDCD2、PHB、KIAA0090、IMP-3、KPNA2、KIAA0268、UNQ6077、LOC440751、G6PD、STK6、TFRC、GLA、TRIP13、SPP1、AKR1C1、AKR1C2、GIMAP5、ADM、CCNB1、TKT、AGPS、RAN、NUDT9、HRASLS3、HLA-DQA1、NEU1、RARRES2、PAPOLA、ABCB6、BIRC5、FLJ20273、C14orf109、CHKA、TUBB2、HMGB3、TXNRD1、IFITM1、KIAA0992、MPPE1、KLRB1、CCL5、SYNE1、DNASE1L3、CYP2C18、PACSIN2、PON3、およびPPP2R1Bからなる群より選択される少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、または少なくとも5の遺伝子の組合せを含んでなる、またはこれらからなる発現プロファイルのインビトロ決定のための試薬を含んでなる、HCCに罹患した対象の肝臓HCCサンプルからの総合生存および/または非再発生存のインビトロ予後判定のためのキットに関する。
【0081】
好ましい態様において、HCCに罹患した対象の肝臓HCCサンプルからの総合生存および/または非再発生存のインビトロ予後判定のためのキットは、NRCAM、PIR、RAMP3、SLC21A2、TAF9、TNA、HN1、PSMD1、MRPS7、CDC20、ENO1、HLF、STRA13、RAGD、NRAS、ARFGEF2、RAB1A、G0S2、SMAD3、DNAJA3、HELO1、およびRHOQからなる群より選択される少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、または少なくとも5の遺伝子の組合せを含んでなる、またはこれらからなる発現プロファイルのインビトロ決定のための試薬を含んでなる。
【0082】
更に一層好ましい態様において、HCCに罹患した対象の肝臓HCCサンプルからの総合生存のインビトロ予後判定のためのキットは、下記の遺伝子組合せ:
-TAF9、PIR、NRCAM、およびRAMP3
-TAF9、NRCAM、SLC21A2、およびPSMD1
-TAF9、NRCAM、RAMP3、およびPSMD1
-TAF9、NRCAM、NRAS、RAMP3、およびPSMD1、または
-TAF9、NRCAM、RAMP3、PSMD1、およびARFGEF2
のうち一つを含んでなる、またはこれらからなる発現プロファイルのインビトロ決定のための試薬を含んでなる。
【0083】
更に好ましい態様において、HCCに罹患した対象の肝臓HCCサンプルからの総合生存のインビトロ予後判定のためのキットは、下記の遺伝子組合せ:
-TAF9、NRCAM、RAMP3、PSMD1、およびARFGEF2
を含んでなる、またはこれら発現プロファイルのインビトロ決定のための試薬を含んでなる。
【0084】
他の好ましい態様において、HCCに罹患した対象の肝臓HCCサンプルからの非再発生存のインビトロ予後判定のためのキットは、下記の遺伝子組合せ:
-TAF9およびG0S2
-TAF9、NRCAM、およびRAMP3
-TAF9、G0S2、およびRAMP3
-TAF9、NRCAM、DNAJA3、およびRAMP3、または
-TAF9、NRCAM、G0S2、DNAJA3、およびRAMP3
のうち一つを含んでなる、またはこれらからなる発現プロファイルのインビトロ決定のための試薬を含んでなる。
【0085】
更に好ましい態様において、HCCに罹患した対象の肝臓HCCサンプルからの非再発生存のインビトロ予後判定のためのキットは、下記の遺伝子組合せ:
-TAF9、NRCAM、およびRAMP3
を含んでなる、またはこれらからなる発現プロファイルのインビトロ決定のための試薬を含んでなる。
【0086】
本発明による総合生存および/または非再発生存のインビトロ予後判定のためのキットにおいて、用意された試薬は総合生存または非再発生存のみの予後判定を行なえるか、または総合生存および非再発生存の双方の予後判定を行なってもよい。
【0087】
本発明によるあらゆるキットにおいて、発現プロファイルの決定のための試薬には遺伝子発現レベルの測定に有用なあらゆる試薬を含んでもよい。発現レベルの該測定は、タンパク質または核酸レベルで行なってもよい。
【0088】
タンパク質レベルにおける発現プロファイルの決定に適した試薬には、マススペクトロメトリー分析およびタンパク質マイクロアレイ用の試薬、抗体、および抗体断片があるが、それらに限定されない。
【0089】
逆に、核酸レベルにおける発現プロファイルの決定に適した試薬には、増幅プライマー、核酸プローブ、および核酸マイクロアレイがあるが、それらに限定されない。
【0090】
特に、HCC分類に有用な遺伝子の第一セットの遺伝子(表3参照)を用いて発現プロファイルを決定するための試薬を含んでなるHCCの分類のためのキットにおいて、該キットは、有利には、増幅プライマーと、場合により遺伝子発現の定量的PCR解析に有用な核酸プローブとを含んでもよい。該キットは、場合により、他の有用な定量的PCR試薬を含有してもよい。
【0091】
一方、HCC分類に有用な遺伝子の第二セットの遺伝子(表4参照)を用いて発現プロファイルを決定するための試薬を含んでなるHCCの分類のためのキットにおいて、該キットは、有利には、核酸マイクロアレイと、場合により遺伝子発現のマイクロアレイ解析に有用な他の試薬とを含んでもよい。
【0092】
加えて、本発明によるどのキットにおいても、該試薬には、本発明による総合生存および/または非再発生存のインビトロ分類または予後判定の方法を行なうための説明書を添付してよい。例えば、該説明書は:
1)例えば、必要な処方および様々なパラメーター値を付すことにより、ユーザー自身に分類または予後判定を行なわせてもよく、または
2)キットに装備された、または例えば、インターネットでアクセスしうる専用ソフトウェアへその発現データを入力するようユーザーに指示してもよい。
【0093】
このケースにおいて、試薬および説明書は同一のパッケージとともにまたは二つの別々なパッケージに分けて入れてもよい。
【0094】
本発明は、更に:
a)本発明の方法に従い該対象の肝臓HCCサンプルから総合生存および/または非再発生存を決定し、そして
b)悪い予後である場合には該対象にアジュバント療法を施し、一方悪い予後でない場合にはこのようなアジュバント療法を施さない
ことを含むHCCに罹患した対象の治療の方法に関する。
【0095】
本発明は:
a)HCC腫瘍サンプルを用意し、
b)本発明の方法に従い該HCC腫瘍サンプルを分類し、そして
c)該HCCサブグループで分類されたHCC腫瘍サンプルのインビトロ成長を阻害しうる化合物の能力を検定する、
本発明による六つのHCCサブグループの一つの治療に有用な化合物のインビトロスクリーニングの方法にも関する。
【0096】
本発明は、更に:
a)HCC腫瘍サンプルを本発明による六つのサブグループの一つに分類し、そして
b)そのHCC腫瘍サンプルが属するHCCサブグループを標的とした治療上の処置を対象に施す
ことを含むHCCに罹患した対象の治療の方法に関する。
【0097】
本発明を全般的に説明してきたが、本発明の特徴および利点の更なる理解は、説明のみの目的でここに示され、別記されない限り限定する意味ではない、ある具体例および図面を参照することで得られる。
【実施例】
【0098】
実施例1:HCC腫瘍の転写解析の戦力
腫瘍およびサンプル,臨床データ
一連の120肝細胞癌腫および3肝細胞腺腫を、それらの対応非腫瘍組織と共に、1992年〜1999年に3箇所のフランス外科部門において肝臓切除により治療された患者123例から集めた。この研究に含まれるすべての場合において、全臨床データおよび追跡調査が入手しえた。これらすべての腫瘍は、既に記載されたように、臨床的に特徴づけられた(Laurent-Puig,P.et al.Gastroenterology 120,1763-73(2001))。性別比(M:F)は1:4であり、患者の平均年齢は60歳(年齢中央値=63歳,18〜85歳の範囲)であった。患者は、フランス(92例)、サハラ以南アフリカ(11例)、地中海エリア(7例)、アンティル(4例)、およびアジア(4例)において生まれた。B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、アルコール乱飲、およびヘモクロマトーシスのHCCの危険因子が、腫瘍の36、30、40、および6%で各々生じた。25例においてHCCが公知の危険因子の非存在下で進行し、16例において、少なくとも二つの危険因子がみられた。腫瘍分化の組織学的グレードは、EdmondsonおよびSteinerグレーディングシステムに従い、グレードI(7%)、II(49%)、III(39%)、およびIV(4%)と判定された。103例において、手術前α-フェトプロテイン血清レベルが入手でき、患者37例について100IU/mL以上であった。肉眼的および/または微視的血管侵襲がケースの37%において記録された。主腫瘍から1cm以内でみられる結節で規定される衛星腫瘍がケースの41%で記録された。肝臓移植で治療されたまたは術後3月間以内で死んだ患者を除外した後、R0完全切除の患者99例で全および無疾患生存が評価された。肝硬変で第二非関連腫瘍の発生の影響を最少化するために、我々は5年後の生存データを考慮に入れなかった。全シリーズにおける平均追跡調査は38月間(範囲3〜60月間)であり、それはなお生存する患者の場合49月間であった。二つの質的予後変数により構成される:(1)“早期再発”yesまたはnoは肝臓切除後2年以内における腫瘍再発の存在および術後4年間にわたる再発の欠如により規定された、(2)“早期死亡”yesまたはnoは肝臓切除後3年以内における死亡の発生および術後5年間にわたる死亡の欠如により規定された。Affymetrix解析においては、アルコール性肝硬変(プール1)、アルコール非硬変肝(プール2)、HBV非硬変肝(プール3)、HCV肝硬変(プール4)、およびHBV肝硬変(プール5)を含めて、解析腫瘍に対応する5プールの3非腫瘍肝臓組織が用いられた。QRT-PCR実験においては、これらの15の非腫瘍RNAおよび六つの追加正常非腫瘍肝臓RNAが個別に解析された。妊娠の異なる段階(11〜29週の妊娠期間範囲)にある19のヒト胎児肝臓サンプルも集められた。該研究は地元の倫理委員会(CCPPRB Paris Saint-Louis)により承認され、インフォームド・コンセントがフランス法に従い得られた。
【0099】
基本トランスクリプトーム解析
出発物質として各サンプルの全RNA5μgおよびHG-U133A Affymetrix GeneChipアレイのハイブリダイゼーション(GeneChip Fluidics Station 400)当たりcRNA20μgを用いて、マイクロアレイ解析を行った。各アレイからの像はHP GeneArray 2500を用いて作成し、製造業者のプロトコールに従い解析した(http://www.affymetrix.com/support/technical/manual/expression manual.affx)。指示された場合を除き、すべてのトランスクリプトーム解析はBioconductor(v1.1.1)のものを含めたRシステムソフトウェア(v1.9.0)パッケージの各種取合せまたはオリジナルRコードを用いて行なった。Rパッケージおよびバージョンは適宜に表示されている。65Affymetrix HG-U133A GeneChipマイクロアレイからの未処理特徴データを標準化し、頑健性マルチアレイ平均(パッケージaffy V1.4.32)を用いて各ブローブセットに関するlog強度発現サマリー値を計算した。コントロール遺伝子に対応するまたは“ ”アノテーションを有するブローブセットをマスクして、更なる解析に利用しうる全部で19,787のブローブセットを得た。
【0100】
実施例2:HCC腫瘍の分類
2.1 材料および方法
遺伝子突然変異、染色体不均衡、HBVゲノムの定量およびDNAメチル化
全サンプルについて、腫瘍および非腫瘍DNAを取り出し、QiaquickおよびRneasy抽出キット(Qiagen)を各々用いるDNAおよびRNA抽出まで−80℃において貯蔵した。DNAはフルオロメトリー(Fluoroskan Thermo Lab-system)により定量し、RNAはスペクトロフォトメーター(Nanodrop)を用いて260nmで定量した。DNAおよびRNAの質は、ゲル電気泳動、次いで臭化エチジウム染色およびAgilent 2100バイオアナライザーにより制御した。28S/18S比がAffymetrix実験で1.5より大きく、定量的RT-PCR解析で1より大きければ、RNAが適格とされた。遺伝子突然変異は、3100 Applied Biosystemsシークエンサーを用いて腫瘍DNAを直接配列決定することにより、TP53エキソン2〜11、β-カテニンエキソン2〜4についてコードするCTNNB1、AXIN1エキソン1〜10、PIK3CAエキソン1〜20で調べた。アレル損失および染色体不均衡は、既に記載されたように(Laurent-Puig,P.et al.Gastroenterology 120,1763-73(2001))、LMS2マイクロサテライトパネル(Applied Biosystems)からのゲノタイピング400マーカーにより調べた。血清学的結果またはウイルスDNA増幅(Laurent-Puig,P.et al.Gastroenterology 120,1763-73(2001))によりHBV感染と関連づけられた全サンプルについて、DNAのHBSおよびHBXコピーがSyberグリーン法(Applied Biosystems)を用いて腫瘍および非腫瘍DNAにより定量された。定量に用いられたプライマーがウイルス多型性または突然変異のない領域で選択されるよう保証するために、HBSおよびHBX DNAの配列は全腫瘍で決定した。ウイルスDNAの定量は染色体22PCR増幅と関連していた。PCR増幅の効力は、HBS、HBX、および染色体22レファレンスについて各々95、97、および94%で測定した。腫瘍および非腫瘍DNAサンプルは更にHoechstのフルオリメトリーを用いて慎重に定量し、濃度はアガロースゲル電気泳動により調べた。腫瘍において低数のウイルスDNAコピーは、0.5より劣るHBX/レファレンスおよびHBS/レファレンス比(平均:0.01,範囲:0.002〜0.5,標準誤差:0.14)で規定された。腫瘍において高数のウイルスDNAコピーは、1.5より優れたHBX/レファレンスおよびHBS/レファレンス比(平均:25,範囲:1.6〜212,標準誤差:46)で規定された。CDH1およびCDKN2AプロモーターにおけるDNAメチル化は、既に記載されたように(Lee,S.et al.Am J Pathol 163,1371-8(2003)、Zochbauer-Muller,S.et al.Cancer Res 61,249-55(2001))、重亜硫酸DNAおよびメチル化特異的増幅を用いて調べた。
【0101】
定量的RT-PCR解析
定量的RT-PCR解析では、高性能Archiveキットおよびランダムヘキサマー(Applied Biosystems)を用いて3μgの全RNAを逆転写した。各サンプルおよび検定遺伝子について、TaqMan Low Density ArrayおよびABI PRISM 7900HT Systems(Applied Biosystems)を用いて、2ngの逆転写RNAに相当する1μLのcDNAをTaqMan PCR解析により二重に解析した。cDNAの質はリアルタイムPCR(全シリーズで偏差7%の係数)によりR18S定量を用いて評価した。サンプル中における検定mRNAの相対量は2−ΔΔCT法を用いて調べた:ΔΔCT=(CT検定−CTR18Sサンプル−(CT検定−CTR18Sカリブレーター(Livak,K.J.& Schmittgen,T.D.Methods 25,402-8(2001))。簡単には、遺伝子の発現結果は、内部コントロールリボソーム18S、相対的には、内部コントロールリボソーム18Sに対して標準化された非腫瘍サンプルにおける対応遺伝子の平均発現レベルに相当するカリブレーターに対して標準化された。表およびグラフで示された値は、非腫瘍組織の平均と比較した、検定サンプルにおける遺伝子発現のn倍比率を表している。
【0102】
ウエスタンブロットおよび免疫組織化学
凍結させた組織を500μL氷冷RIPA Lysis緩衝液(Santa Cruz)中でDounceとホモゲナイズし、タンパク質濃度をBCAタンパク質アッセイキット(Pierce)により調べた。イムノブロット解析は、SDS6%ポリアクリルアミドゲル上で移動するタンパク質50μg、ポリクローナルE-カドヘリン抗体(SC-7870,1:500,Santa Cruz)、ペルオキシダーゼ複合化二次抗体(1:2000,Santa Cruz)、および増強化学発光剤(ELC,Pierce)を用いて行なった。免疫染色は、モノクローナル抗β-カテニン(1:400,BD Biosciences 610153)、ビオチニル化抗マウス(1:200,Vector Laboratories BA-2000)、Vectastain ABC Elite標準キット(Vector Laboratories PK-6100)、DaBキット(Vector Laboratories SK-4100)を用いて、ホルマリン固定パラフィン包埋肝臓サンプルの5μm断片で行なった。免疫染色前に、内在性ペルオキシダーゼを遮断し、抗原検索を圧力釜(Biogenex)中0.001Mクエン酸緩衝液pH7で行なった。
【0103】
トランスクリプトーム解析に基づく分類
65サンプルの分類は、距離メトリックとして1-Pearson相関(パッケージクラスV7.2-2)を用い、八つのデータサブセットおよび三つの異なるリンケージ法(平均,完全,およびWard’s)から得られた、一連の24階層クラスタ解析に基づいていた。八つのデータサブセットは最も変化する発現プロファイルの8非管理選択に対応した。この選択に関する基準は、分散中央値(P<0.01)と比較した所定プローブセットに関する分散の有意差、並びに偏差閾値の異なる“頑健性”係数(rCV,最低および最高値を除外したn-2サンプルに関するプローブセットlog2強度値の平均で標準偏差を割り計算される)であった。99〜6712プローブセットを選択した(第99.5および第60rCV百分位数)。初期24系統樹の安定性は、摂動/リサンプリング後に得られたクラスタ結果と互いに比較することにより評価した(各々100反復,安定性スコアの詳細については補足情報参照)。異なる初期クラスタ数(k=7..15)でk-meansクラスタリングアプローチを用いて、モデルも検定した。各kについて200中のベストラン(即ち、kグループ間で最大距離のもの)を用いて、サンプルを六つのHCCサブグループのサブセットに従いまたはとして一貫的にグループ分けした。
【0104】
HCCサブグループと臨床/遺伝子変数との関連性
異なる臨床および遺伝子変数と六つのHCC腫瘍サブグループ間の関連の有意性を調べるために、Fisher正確確率検定を行なった。リンケージ法および遺伝子リストの全組合せから得られたクラスタ結果を検定した。加えて、多数モダリティー(例えば、HBT)の変数を二項値へ記録し、各組合せを検定した。QRT-PCR結果(表1参照)を用いた総合プレディクターでは、表中で0のPがP<0.001に等しいことを意味するオリジナルP値を補正するために、クラスラベルの1000ランダム順列を用いた。
【0105】
総合プレディクターの構築
Affymetrixデータプレディクター
マルチクラスプレディクターを確立するために、65サンプルをトレーニングセット(n=36,各クラスタ群について6,ランダムに選択)および検定セット(n=24腫瘍+5非腫瘍サンプル)に分けた。次いで、6工程ラーニング戦略:(1)F検定を用いてトレーニングサンプルに基づく遺伝子管理選択(n=376プローブセット)、(2)サブサンプリング、全強度レベルおよびリダンダントHUGO遺伝子記号および偽発見率コントロールに基づく遺伝子プローブセットフィルタリング(n=258)、(3)遺伝子クラスタビンで区分された(またはされていない)、8〜25遺伝子のランダムサブ選択、(4)五つの予測アルゴリズムを用いたルールラーニング、(5)検定セットを予測する成功率に基づくルール選択、(6)予測グループに対する臨床および遺伝子因子間の関連性を評価するためにRT-PCRデータおよびFisher正確確率検定を用いたルールバリデーションを用いた。
【0106】
更に正確には、異なる工程を次のように行なった:
1.遺伝子選択および2.遺伝子プローブセットフィルタリング:S1を用いて、我々は、マルチ検定(BRB ArrayToolsv3.0.beta2)について補正するために、サンプルラベルの1000順列に基づく多変量順列検定を用いるF検定を行なった。この検定から、10未満の偽発見を含む1041プローブセットを得た。我々はS1における18サンプル(グループ当たり三つのランダム選択ケース)のサブ選択で同様の検定を行い、515の有意なプローブセットを見つけた(ここでは、順列検定を信頼できないものにする低数のサンプル/クラスのせいで、閾値基準としてp値<0.001を用いた)。これら2リストの対比と、合計6のHCCクラスタ群で100単位未満の最大強度を有するプローブセットの選別により、258プローブセットを得た。同一HUGO遺伝子記号に相当するプローブセットについて、低F統計値を有するプローブセットを除外してリストを225プローブセットに減らすことにより、我々は1プローブセット/記号を守った。
【0107】
3.遺伝子のランダムサブ選択:(i)225プローブセットリストから出発して、我々はk数のプローブセット(k=8..25)の1000サブリスト(合計で18,000のサブリスト)をランダムに作成した。(ii)225プローブセットリストから、個別遺伝子クラスタビンから同割合の遺伝子を選択することにより、我々はk数のプローブセットの1000サブリスト(k=15、30、合計で2000のサブリスト)を作成した。遺伝子クラスタビンは、225プローブセットの完全リンケージクラスタリングに基づき(距離メトリックとして1-Pearson係数を用い、15クラスタノード(クラスタビンによるn=4〜49プローブセット)を得るように系統樹を切ることにより)構築した、(iii)我々は、平均リンケージクラスタリング(1-Pearson係数)から得られる遺伝子クラスタビンを等しく表し、系統樹を20ノードに切り、(10プローブセット未満または最隣接ノードと0.3より高い相関で表される)小さなクラスタノードを合わせると、合計で八つの大きな遺伝子クラスタビン(クラスタビンによるn=9〜87プローブセット)を生じる、kプローブセットの1000サブリスト(k=8、16、24、合計で3000のサブリスト)も作成した。
【0108】
4.ルールラーニング:プローブセットの23,000サブリストに制限された、セットS1からの発現データは、五つの予測アルゴリズム(SVM(e1071,v1.4-1)、PAM(pamr,v1.14.2)、k-NN(クラス,v7.2-2)、DQDAおよびDLDA(sma,v0.5.14))をトレーニングして、115,000プレディクターを得る上で役立った。
【0109】
5.ルール選択:各アルゴリズムについて、kの各値((i)k=8..25、(ii)k=15、30、(iii)k=8、16、24)と組み合わせて、我々は、バリデーションセットサンプルを分類するために(トレーニングセットでトレーニングされた)、対応プレディクターの成功率に基づき、1000の中で最良のサブリストを選択した(同等の場合には、出会う最初のサブリストが保存された)、この選択は115プレディクターを与えた。これらの中で、別々な6サブリストに関連した七つのプレディクターが、バリデーションセットからサンプルを分類する93%より高い成功率を示した。我々はこれら6サブリストの中で2プレディクター(アルゴリズムSVMおよびPAM)に関連した24遺伝子サブリストを選択した。このサブリストは、トレーニングセットで36サンプルの真のクラスメンバーシップを予測する上でNearest Shrunken Centroids(PAM)を用いると97%、およびバリデーショングループで29サンプルの93.1%の成功率を有したことを、我々は観察した。
【0110】
6.ルールバリデーション:RT-PCRデータが、Affymetrix HG-U133A GeneChipマイクロアレイで既に解析された46サンプル(オリジナルトレーニングセット(S1a)で28およびオリジナルバリデーションセット(S2a)で18HCC)を含めた、一連の109腫瘍について、既に選択されたサブリストで24遺伝子のうち23について得られた(プライマーがCD24について入手できなかった)。セットS1aでΔCtデータ(コントロール遺伝子として18S)を用いて、我々は五つの予測アルゴリズム(SVM、PAM、k-NN、DQDA、およびDLDA)をトレーニングした:セットS2aに適用すると、SVMから得られたプレディクターは81%成功率(S1aでは100%)を示した。
【0111】
PCTデータプレディクター
AffymetrixデータからPCRデータへ移された24遺伝子プレディクターの部分的成功に基づき、QRT-PCRで解析された140遺伝子の中で103遺伝子の初期リストからの工程を出発して、新たなプレディクターを捜した。これらの103遺伝子は、Affymetrixデータセットで全65のサンプルを用いる、異なるクラスタ群を比較する管理統計学的検定に対応した。次いで、Affymetrixデータ:遺伝子のランダムサブ選択、ルールラーニング、ルール選択、ルールバリデーションにおいて記載されたものと同様のラーニング戦略に従った。ランダムに、リスト当たりk数のプローブセット(k=5..16)の500サブリスト(合計で6000のサブリスト)を作成した。ΔCtデータ(コントロール遺伝子18S)を用いて、五つの予測アルゴリズム(SVM、PAM、kNN、DQDA、およびDLDA)をセットS1でトレーニングし、30,000プレディクターを得た。各アルゴリズムについて、kの各値と組み合わせて、検定セットS2を分類するために(セットS1でトレーニングされた)対応プレディクターの成功率に基づき、500の中で最良のサブリストを選択した(同等の場合には、出会う最初のサブリストが保存された)、この選択は60プレディクターを与えた。これらの中で、検定セットS2を分類する上で、三つのプレディクターが最高の成功率を示し、そのうち一つは三つの異なるアルゴリズムで88%より高い(S2の)成功率を示し、したがって最良とみなされた。このプレディクターはDLDAアルゴリズムで得られ、セットS1を100%成功率およびセットS2を94%成功率で予測した。選択プレディクターのバリデーションとして、セットS3に関する予測クラスの関連性を、予測クラス(1,2,3 vs 4,5,6)とFAL(P=8.5 10−4)並びに予測クラス(4 vs 5,6)とCTNNB1突然変異(P=5 10−5)との関連のレベルを測るFisher正確確率検定のP値から評価した。
【0112】
具体的HCCサブグループ示差的発現遺伝子の決定、それに続くGO解析
19,787プローブセットに関するlog2-変換強度値でBRB ArrayTools(v3.2b5)を用いて、すべての単変量tおよびF検定を行なった。10偽発見未満のP<0.001および90%信頼の各単変量検定の名目有意レベルを、1000順列を用いた多変量検定に基づき表した。所定サブグループ(またはサブグループの組合せ)と残りサンプル(Gx vs Gnon-x)との間で並びに五つのプールされた非腫瘍サンプル(Gx vs 非腫瘍)間で示差的に発現されることがわかった遺伝子を特定するために、すべてのグループ間t検定を行なった。所定サブグループ(他のグループ間比較ではない)について両検定タイプにより見つけられた、ANOVA解析(前記のF検定)で有意(P<0.001,記載されたように10偽発見未満)であった遺伝子は、HCCサブグループ(またはサブグループの組合せ)特異的遺伝子であるとみなされた。
【0113】
分類の安定性評価
摂動のために、ランダムGaussianノイズ(μ=0,σ=1.5xデータセットから計算された分散中央値)を所定のデータセットに加えた。各系統樹をkグループ(k=2..18)に区分し、初期系統樹と比較して各グループに置かれたサンプル-ペアの割合を安定性スコアとして用いた(1のスコアが摂動(またはリサンプリング)を意味する0〜1のスコア範囲は、クラスタ群のメンバーシップに影響を有しなかった)。
【0114】
2.2 結果
非管理トランスクリプトーム解析は臨床および遺伝子改変と密接に関連した腫瘍のクラスタを規定する
Affymetrix HG-U133A GeneChipアレイを用いて、57HCC、3肝細胞腺腫および5サンプルのプールされた非腫瘍組織を解析した。非管理解析に基づき、各々がFisher正確確率検定に基づく臨床的および遺伝的因子(前記の表1および2参照)と高度に関連した六つのサブグループ(図2)にHCC腫瘍を区分する、HCC分類の頑健性モデルを我々は開発した。実施された解析に基づき、各々がより小さな三つのサブグループに更に細分される2大グループ(ここではG1〜G6と称される)に60腫瘍サンプルを細分する。この分類は摂動/リサンプリング検定と照合したときに極めて頑健性であり(各クラスタ解析の平均再現性スコアは、二つの大きなグループおよび六つのサブグループについて少なくとも0.9であるとわかった)、反復k-meansクラスタ解析と一致することを見出した(材料および方法の欄参照)。更に、サンプル区分のトポロジーは異なる遺伝子リストとクラスタリンケージ法にまたがり保存された。G1〜G3はG4〜G6より有意に高い断片的アレル損失(FAL)を示したことから(P<10−3,表2)、2大グループは染色体不安定(G1、G2、およびG3)および安定(G4、G5、およびG6)サンプルに相当する。加えて、G1〜G3グループに属するHCCはG4〜G6のHCCと比較して早い再発および早い死亡とやや関連していた(P=0.05,表2)。異なるサブグループが、低数のHBV DNAコピー(G1)およびCTNNB1遺伝子突然変異(G5およびG6)と共に、TP53突然変異(G2およびG3)、HBV感染(G1およびG2)で特徴づけられた。一次腫瘍から1cm以内で離れてみられる遠位癌性結節の存在は、G6と関連し(P=0.04,表2)、これら腫瘍の局部侵襲の高い可能性を示した。非腫瘍肝臓組織の5サンプルプールはしっかりと一緒にクラスタ化し、20腫瘍を含む大きな異種グループ(G4)内でみられ、そのうち四つは同一小クラスタにおいてTCF1突然変異を有した(3腺腫および1HCC)。
【0115】
六つのグループ分類の二つのプレディクターの特定
この分類のサブグループと診断ポテンシャルとで臨床的関連性があるとすれば、本発明者らの目的は、より時間およびコスト効率的な技術の定量的逆転写酵素PCR(QRT-PCR)を用いることにより、臨床環境により適合したクラス-プレディクターを特定することであった。六つのHCCサブグループへのクラスメンバーシップを予測しうる遺伝子を求めるために、最初にAffymetrixデータを用いてプレディクターを構築した(材料および方法と下記表10参照)。この解析から、Affymetrixデータを用いるとクラス予測の高い成功率(93.1%)を示すが、QRT-PCRデータを用いたのではさほど満足しえない(81%)ことが判明した、第一の24遺伝子プレディクター(ALDH1L1、CD24、CD74、CFHR3、CYP4F12、DNAJA3、DSCR1、EPHA1、EPHB4、FAAH、FGFR2、FLJ10159、GLT8D1、HAL、MATN2、MRPS7、PAK2、PLXNB1、RAB1A、RHOQ、SLC27A5、SLPI、SMARCE1、STRA13)を特定した。
【0116】
【表10】

【0117】
こうして、Affymetrixデータと関連臨床および遺伝子アノテーション(即ち、TP53、CTNNB1、およびAXIN1遺伝子の突然変異状態、HBVの存在および力価、早期再発および全生存)を用いた一連の管理検定を行なった。これら管理検定のうち一以上で有意であることが示された140遺伝子のリストを作成した。これら選択遺伝子のうち五つ以外はすべて、109HCC腫瘍(Affymetrixマイクロアレイを用いて解析された57HCCのうち46と63HCCのバリデーションセットを含む)および21非腫瘍肝臓組織でQRT-PCRにより確証された。AffymetrixデータとQRT-PCRデータとの高い相関が140選択遺伝子のうち135において見られた(ΔCt値を用いると0.84のSpearmanのρメジアン相関係数)。QRT-PCRデータを用いて、(検定された135のうち)103遺伝子のセブセットの多数サブリストについて、六つのHCCサブグループの最良総合プレディクターを特定するために遺伝子検定した。この目的のため、Affymetrixマイクロアレイで解析された46HCCをトレーニング(n=28)および検定セット(n=18)に分けた。既に記載された表3において掲載されたすべての遺伝子はこれら管理検定のうち1以上で有意であることが少なくとも示され、それらのほとんどが少なくとも1または2の良い分類プレディクターに存在していた。トレーニングセット(100%)および検定セット(94.4%)の真のクラスメンバーシップを予測する最良成功率が、DLDA予測アルゴリズムを用いて16遺伝子(RAB1A、PAP、NRAS、RAMP3、MERTK、PIR、EPHA1、LAMA3、G0S2、HN1、PAK2、AFP、CYP2C9、CDH2、HAMP、SAE1)のCt値で得られた。
【0118】
最良プレディクターは下記式に従う:
【数9】

上記式中
【数10】

上記式中、異なるμ(クラス,遺伝子)およびσ(遺伝子)パラメーターは既に記載された表5において掲載されたものである。
【0119】
こうして、所定サンプルと各クラスのセントロイド表現との距離を計算した後、新たなサンプルが最も近いクラスにおかれる。
【0120】
次いで、バリデーション腫瘍セットの63サンプルを六つのサブグループに区分するために、このシグネチャーを用いた。Affymetrix実験で解析された第一セットの腫瘍で観察されるように、有意な関連性が、Fisher正確確率検定を用いると、FAL、TP53、HBV感染、およびCTNNB1遺伝子突然変異と異なる予測サブグループとの間で、並びに109HCC腫瘍の完全シリーズを用いたもので見られた(表1)。
【0121】
各HCCサブグループに関与する遺伝子のキーシグナリング経路および機能性カテゴリーの特定
異なるHCCサブグループに関与するキー経路を特定するために、一以上のHCCサブグループで特に脱調節される1560遺伝子が、ANOVAと組み合わされた全グループ式t検定解析からの結果に基づき特定された。HCCサブグループに特異的な遺伝子の全リストについて、既知経路における遺伝子の関連性も調べた。染色体不安定サンプルに相当する、サブグループG1〜G3で特に過剰発現される細胞周期/増殖/DNA代謝遺伝子の豊富化が観察された(P<0.01)。特に過剰発現される高数の遺伝子がG1サブグループ(低数のウイルスDNAにおけるHBV感染、AXIN1突然変異、若年齢、高血清レベルのAFPおよび頻出アフリカ起源と関連,表1および2)で観察された。それらの中で、発生に際して発現されるタンパク質をコードする遺伝子が見出された:ミオシン重鎖IIb、MYH4、転写因子SOX9およびSOX4、ならびに親性刷込み遺伝子:インスリン様成長因子2(IGF2)、父系発現1、3、および10(PEG1、PEG3、およびPEG10)、α-フェトプロテイン(AFP)およびサルコグリカンε(SGCE)。これらすべての遺伝子の差異的発現が、109腫瘍においてQRT-PCRを用いて確証された(図3a)。検定された刷込み遺伝子は正常胎児肝臓で高度に過剰発現された(図3a)。H19 mRNAもG1サンプルのみならず胎児サンプルでも過剰発現され、これら2グループにおいてIGF2と相関していた(各々R=0.4および0.6)。
【0122】
サブグループG2腫瘍(高数のウイルスDNAコピーにおけるHBV感染、頻出局部および血管侵襲およびTP53突然変異と関連)は、過剰発現される細胞周期/増殖/DNA代謝遺伝子(P<0.01)、G3(TP53突然変異およびCDKN2Aプロモーターメチル化と関連)、およびすべての染色体不安定サンプルにおいて等しく観察される豊富化(P<0.007)と有意に関連していた。タンパク質リン酸化に関与する過剰発現遺伝子の有意な過剰提示も確認された(P<0.009)。興味深いことに、ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)-AKT経路の活性化につながると予測されたPIK3CA遺伝子における突然変異が、G2に属する二つの腫瘍において確認された。これら二つのサンプルは非管理クラスタリング解析で密接に関連していた(図2)。PIK3CA突然変異サンプルにおいて、特に過剰発現される38遺伝子が、グループG1〜G3において他の腫瘍と比較して特定された。これら遺伝子の中では、QRT-PCRを用いてPIK3CA突然変異腫瘍で特に過剰発現される(P=0.001,図3b)、タンパク質延長因子EEF1A2およびエンテロキナーゼPRSS7についてコードする二つの遺伝子の過剰発現が確証された。更に、PIK3CA突然変異腫瘍における細胞間連絡遺伝子の豊富化をGO解析により証明した(P=0.07)。
【0123】
G5(CTNNB1突然変異、非遠位結節)において、IFI16、IL4R、IFI44、STAT1、IL10RA、CTSS、およびHLA-DPA1/B1のようなストレスおよび免疫応答に関与する過少発現遺伝子の豊富化(P<0.002)が観察された。HCCサブグループG5およびG6は、前記場合の70および100%でCTNNB1突然変異された23および11腫瘍を各々含む。可能なβ-カテニン標的遺伝子のサーチにおいて、G5およびG6で有意に過剰発現される280遺伝子のリストが見出された。GPR49およびGLULに加えて、肝臓における二つの既知β-カテニン標的遺伝子、(Cadoret,A.et al.Oncogene 21,8293-301(2002)、Yamamoto,Y.et al.Hepatology 37,528-33(2003))、7推定β-カテニン標的遺伝子の過剰発現がQRT-PCRを用いて確認された。これらの遺伝子には、EPHB2,チロシンキナーゼレセプター、MME,エンケファリナーゼ CD10、MERTK,癌遺伝子チロシンキナーゼ、LAMA3,ラミニン5のα-3鎖、PAP/HIP,膵炎関連タンパク質をコードする、SPARCL1,細胞外マトリックスと関連したヘビンをコードする、および転写因子TBX3を含む(図4a)。これらすべての推定β-カテニン標的遺伝子の発現の有意に高いレベルが、CTNNB1突然変異のないサンプルの除外後であっても、G5と比較してG6において観察された。形質膜におけるシグナルの消失と細胞質および核における強い局在化と共に、β-カテニンがG5腫瘍と比較してG6腫瘍で多く過剰発現されることも示された(図4b)。この観察と一致して、β-カテニンと相互作用してWnt応答性標的遺伝子を活性化する転写因子、LEF1の過剰発現が、G6において見出された。G5およびG6サブグループ双方は染色体8p LOHと関連していたが、G6に特有な他の染色体欠損は確認されなかった。しかしながら、主腫瘍の周辺でみられる衛星結節の準常在(quasi-constant presence)により示されるようなこれらHCCの局部侵襲の原因となりうる、CDH1(E-カドヘリンをコードする)の過少発現が、(AffymetrixおよびQRT-PCR実験において、図4a)G6サブグループにおいて見られた(図4cと表1および2)。CDH1 mRNA下方調節のレベルは、これら腫瘍においてCDH1のプロモーターメチル化の高レベルと一致する、G6におけるE-カドヘリンタンパク質の下方調節発現と高度に関連していることが示された(データ示さず)。
【0124】
2.3結論
非管理ゲノムワイドアプローチを用いて、本発明者らは、これら腫瘍の大きな自然多様性を反映する、六つの主要サブグループにおけるHCCの頑健性分類を得た(Bosch.F.X.,et al.Gastroenterology 127,S5-S16(2004)、El-Serag,H.B.Gastroenterology 127,S27-34(2004))。加えて、この分類はQRT-PCRで解析された16遺伝子のみを用いて再現でき、更に重要なことに、腫瘍の独立セットにおいて確認された。
【0125】
この分類は、染色体安定性に関連した腫瘍の二つの主なグループ(メタグループG1〜G3およびG4〜G6に相当する)について記載した、HCCの既公開解析と一致する(Lee,J.S.et al.Hepatology 40,667-76(2004)、Breuhahn,K.et al.Cancer Res 64,6058-64(2004)、Chen,X.et al.Mol Biol Cell 13, 1929-39(2002))。しかしながら、本解析により、この分類を拡張および精密化した。
【0126】
要約すると、(1)フランスで外科治療された腫瘍の一連の研究が、HCCの異なる主な危険因子、即ちHBVおよびHCV感染、アルコール乱飲およびヘモクロマトーシスを含んでいたこと、および(2)研究サンプル群で利用しうる多数の臨床、組織病理学的および遺伝子アノテーションにより、二つサブグループへの既公開分類と比較して、HCCの多面的分類の解明は本願のみで可能であった、と本発明者らは考える。実際に、クラスメンバーシップの主な臨床決定因子はHBV感染であり、一方他の主決定因子は染色体不安定性、TP53およびCTNNB1突然変異、CDKN2AおよびCDH1メチル化と親の刷込み(parental imprinting)を含めた遺伝的および非遺伝的変化である(図1参照)。
【0127】
HCCの自然史に焦点を当てると、G1およびG2サブグループを規定するHBV関連腫瘍は他の病因から明らかに分子的に区別されるようである。HCV感染およびアルコール乱飲に関連する腫瘍はサブグループG3〜G6内に配分される。本トランスクリプトーム分類は腫瘍の新実体の特定化を可能にした。サブグループG1は、等しい性別比、低数のウイルスDNAコピー、頻出AXIN1突然変異、TP53突然変異の非存在、および正常に親に刷込みされた遺伝子の過剰発現と共に、若年患者(他のHBV HCCと比較して)、多くはアフリカからのHBV関連腫瘍を含む。早い年齢におけるHBV感染が、おそらく胎児肝細胞の永続性または成人肝細胞の脱分化による異常親性遺伝子刷込みで未成熟特徴を示すHCCの特別な型に至ることを、これらの結果は示唆している。腫瘍におけるこのような多様性は、疫学研究でみられる高リスク群と関連しているかもしれない(Brechot,C.Gastroenterology 127,S56-61(2004)、Yu,M.C. & Yuan,J.M.Gastroenterology 127,S72-8(2004))。
【0128】
CTNNB1突然変異の100%発生率、高レベルの病理学的Wnt経路活性化(G5の場合より高い)およびE-カドヘリンの不活性化(kozyraki,R.et al.Gastroenterology 110,1137-49(1996))を有するサブグループG6は、E-カドヘリン不活性化が細胞侵襲工程に関与することが知られていることから(Behrens,J.,et al.J Cell Biol 108,2435-47(1989))、これら腫瘍の高侵襲ポテンシャルと一致する。
【0129】
腫瘍のこれら大きなサブグループとは別に、本トランスクリプトーム解析は、TCF1またはPIK3CA突然変異のような希少遺伝子改変と関連した、腫瘍の同種サブグループも示唆した(Bluteau,O.et al.Nat Genet 32,312-5(2002)、Lee,J.W.et al.Oncogene 24,1477-80(2005))。腫瘍の他の小さな同種サブグループに特有の新たな構造遺伝子改変がなおも特定され続けており、逆にこれは新治療標的を見出す強力な手段となりうる。
【0130】
実施例3:HCC腫瘍の予後
3.1 材料および方法
定量的RT-PCR解析
実施例2の材料および方法の項目において記載されているように、定量的RT-PCR解析を行った。
【0131】
予後プレディクターの構築
Affymetrix GeneChipで解析された一連の42サンプルから135遺伝子の2−ΔCt値(ΔCt=Ct検定−CtR18S)に基づき、予後状態(60ヶ月における総合生存)と関連するトップ16遺伝子(最大logrank P≦10−2)が単変量Coxモデル(パッケージ生存V2.15)を用いて特定された。同42サンプルを用いて、これら16遺伝子の中で5遺伝子以下の最良組合せ(最大logrank P<10−5)が全可能組合せから多変量Coxモデルを用いて選択された。次いで、これらのモデルを確証するために第二シリーズの53独立HCCを用い(最大logrank P<10−3)、それらのうち42を留保した。各モデルの頑健性が更に下記リサンプリングアプローチにより評価された:我々は1000回にわたりランダムに95腫瘍の全シリーズを各47および48サンプルの二群へ分ける(両グループ間で死亡事象の数を均衡させる)ことにより1000サンプリングを得て、次いで、遺伝子の42リストの各々を用いて、各サンプリングの両群について、多変量Coxモデルを構築し、両モデルから計算されたlogrank P値を留置した。(これら1000サンプリングの中で)両グループで最低中央値logrank Pに至る遺伝子の組合せを保存し、次いでプレディクターをこの組合せから得た。
【0132】
3.2 結果
予後を予測する遺伝子の特定およびバリデーション
診断には有用であるが、16遺伝子分類シグネチャー(実施例2参照)は、腫瘍の二つの主なグループ(G1〜G3 vs G4〜G6)または個別的な六つのサブグループを各々検定した場合、ログランク検定が(P=0.2および0.1)の高いp値を生じたことから、HCC予後を予測する上で十分でなかった。結果として、予後の特定プレディクターが材料および方法の項目において記載されたように構築された。
【0133】
全体として、総合生存および/または非再発生存の予後判定に有用であると見出された遺伝子は前記表7に掲載されたものであった。
【0134】
更に正確には、総合生存の予後状態と関連するトップ16遺伝子は:NRCAM、PIR、RAMP3、SLC21A2、TAF9、TNA、HN1、PSMD1、MRPS7、CDC20、ENO1、HLF、STRA13、RAGD、NRAS、ARFGEF2である、と決定された。
【0135】
材料および方法で記載されたようなこれら16遺伝子の中で5遺伝子以下の全可能組合せの検定後、五つのベストモデルがP<10−8で多変量Cox解析を用いて総合生存を予測した。最後に、悪い結果を予測する最も有用な組合せは、5遺伝子:高レベルのTAF9、NRCAM、PSMD1、およびARFGEF2と組み合わされた低レベルのRAMP3の集合である。
【0136】
最良な総合生存プレディクターは下記式に従う:
【数11】

上記式中、異なるβ(遺伝子)およびμ(遺伝子)パラメーターは下記表11において掲載されたものである。
【0137】
【表11】

【0138】
ROC曲線、スコア曲線、および生存曲線における総合生存の最良プレディクターに関する結果が図5aにおいて示され、一方、総合生存のこの最良プレディクターに関する統計値が下記表12において掲載されている。
【0139】
【表12】

【0140】
53HCCバリデーションセットにおいて、遺伝子のこの組合せはケースの79%において早期再発を正確に予測した((+)70%,(−)89%)、そして早期死亡はケースの81%において正確に予測された((+)73%,(−)92%)。臨床および形態学的特徴の中では、Edmondsonグレードおよび血管侵襲が悪い予後と有意に関連していた(各々logrank P<0.04および0.0002)。これら二つの変数、さらに最良総合生存プレディクターを含む多変量Coxモデルを行なった(下記表13参照)。このモデルは、我々の遺伝子組合せが独立予後変数であることを示す。
【0141】
【表13】

【0142】
無疾患生存を予測する遺伝子の組合せを見つけるために同様の戦略を適用した。興味深いことに、トップ16遺伝子(TAF9、NRCAM、ENO1、RAB1A、ARFGEF2、G0S2、PSMD1、MRPS7、RAGD、HN1、PIR、SMAD3、DNAJA3、HELO1、RAMP3、RHOQ)の中で、10は単変量Coxモデルを用いた全生存の最良プレディクターとして既に特定されていた。最後に、無疾患生存の最良プレディクターに含まれる全部で三つの遺伝子も、全生存の最良プレディクターに含まれた。
【0143】
最良非再発生存(または無疾患)プレディクターは下記式に従う:
【数12】

上記式中、異なるβ(遺伝子)およびμ(遺伝子)パラメーターは下記表14において掲載されたものである。
【0144】
【表14】

【0145】
ROC曲線、スコア曲線、および生存曲線における総合生存の最良プレディクターに関する結果が図5bにおいて示され、一方総合生存のこの最良プレディクターに関する統計値が下記表15において掲載される。
【0146】
【表15】

【0147】
3.3 結論
トランスクリプトーム分類の解明は臨床適用上、特に興味深い。特に、グループG1〜G3に属するHCCはG4〜G6のHCCと比較して早い再発および早い死亡とやや関連し、分類と予後がともかく関連することを示す可能性がある。
【0148】
しかしながら、本発明者らは、完全外科切除により治療された患者の予後を予測する上で、約5遺伝子の小さな特定サブセットを用いた場合が、総合分類16-遺伝子シグネチャーを用いた場合よりも優れていることを見出した。既に公開されたトランスクリプトーム解析と対照的に、決定された生存プレディクターの性能が全病因の危険因子を含む第二セットの独立腫瘍において実証され、このようなバリデーションがハイブリダイゼーションデータの代わりにQRT-PCRを用いて行なわれた(Lee,J.S.et al.Hepatology 40,667-76(2004)、Ye,Q.H.et al.Nat Med 9,416-23(2003)、Iizuka,N.et al.Lancet 361,923-9(2003)、Kurokawa,Y.et al.J Hepatol 41,284-91(2004))。
【0149】
生存を予測する上で有用であると本願において特定された遺伝子は患者予後と関連していることがこれまでに見出されておらず、それらはタンパク質のプロテアソーム分解(PSMD1,Yokota,K.et al.Mol Biol Cell 7,853-70(1996)参照)、RNA転写の開始(TAF9,Michel,B.,Komarnitsky,P.& Buratowski,S.Mol Cell 2,663-73(1998)参照)、および細胞増殖(NRCAM,Sehgal,A.et al.Anticancer Res 19,4947-53(1999)参照)ならびにARFGEF2(Sheen,V.L.et al.Nat Genet 36,69-76(2004)参照)のような一般的な細胞工程に関与しているようである。
【0150】
興味深いことに、総合生存および無疾患生存(即ち、非再発生存)を予測する遺伝子の最良の組合せは、決定されたプレディクターが非腫瘍関連肝疾患とかかわりなく腫瘍進行を正確に反映することを証明するこの研究において、非常に類似していた。
【0151】
治療選択に際するこれらマーカーの潜在的有用性を評価するために、肝臓移植または高周波により治療された患者において、これらのプレディクターを評価することも、非常に興味深いであろう。
【0152】
結論として、本総合トランスクリプトーム解析は大シリーズの高度アノテーション腫瘍を用いて実施され、そして確証された。この解析は、腫瘍進行に際して蓄積されるヒトHCCの自然多様性、構造遺伝子改変、および非遺伝的脱調節を反映する頑健性分類を確立した。HCC腫瘍の高い多様性は臨床的含意を有し、本分類は、外科治療患者のためのみならず、標的療法に有利な患者を更に特定するためにも、予後判定手段をもたらしたのである。
【0153】
参考文献


【図面の簡単な説明】
【0154】
【図1】関連する臨床、遺伝子および経路においてトランスクリプトーム解析により規定された異なるHCCサブグループの体系図。 G1〜G6は、トランスクリプトーム解析により規定された腫瘍のHCCサブグループを示す。縦線は重要な関連特徴を示す(表1参照)。LOH(ヘテロ接合性の喪失)、Hemochrom(ヘモクロマトーシス)、AFP(α-フェトプロテイン)、HBV(B型肝炎ウイルス)。実線および点線部分の用語は、主として、その特定機能カテゴリーにおける過剰および過少発現遺伝子を各々示す。
【図2】非管理階層クラスタリング 示された系統樹は、Wardのリンケージおよび1-Pearson相関係数を用いて、57HCC腫瘍、3腺腫、および5プールの非腫瘍組織からのAffymetrixデータの6712プローブセットの発現プロファイルに基づき得られた。臨床的および遺伝的特徴は、陽性および陰性の場合、各々黒ボックスおよび白ボックスにより示される。HBV感染の場合、灰色ボックスは低数のウイルスDNAコピーを示す。FALはFractional Allelic Lossを示す(黒は5より多い染色体アームの欠損を含む腫瘍を示す(FAL>0.128))。他の略語は次の通りである:CTNNB1(β-カテニン遺伝子)、Mut(突然変異)、meth(メチル化)、sat.nodule(主腫瘍から1cm以内の衛星結節)、AFP(α-フェトプロテイン)、CDH1(E-カドヘリン遺伝子)、portal.inv.(門脈侵襲)。
【図3a】QRT-PCRを用いた選択数のHCCサブグループG1特定遺伝子の特徴化 a.HCC予測サブグループG1において特に過剰発現される遺伝子のバリデーション。IGF2(インスリン成長因子2)、AFP(αフェトプロテイン)、SOX9(性決定領域Y-box9)、MYH4(ミオシン重鎖IIb)、PEG1およびPEG3(父系発現1および3)が109HCCにより解析された。ボックス-プロットは、六つの予測サブグループ(G1〜G6)の各々、21非腫瘍サンプル(NT)、および19胎児肝臓サンプル(FL)において、表示遺伝子について得られた相対(腫瘍 vs 21非腫瘍の平均(T/NT))log10発現値の範囲を示す(中央値(第50百分位数)の線を挟んで第25百分位数から第75百分位数まで伸びる)。最高値および最低値を示すために、ひげ線がボックスの上下に伸びている。異なるHCCサブグループにおいて発現値を比較したANOVA検定からのP値が遺伝子記号の下に示される。
【図3b】QRT-PCRを用いた選択数のHCCサブグループG1特定遺伝子の特徴化 b.EEF1A2(真核細胞翻訳延長因子1α)およびPRSS7(エンテロキナーゼ前駆体)について、107非突然変異HCC(PIK3CA NM)と比較して、PIK3CA突然変異腫瘍(PIK3CA mut)において過剰発現される遺伝子のバリデーション。突然変異および非突然変異サンプルを比較するt検定から得られたP値が遺伝子記号の下に示される。
【図4a】G5およびG6サブグループへ至るHCC腫瘍の特徴化 a.QRT-PCRを用いたHCC予測サブグループG5およびG6において、特に過剰発現される遺伝子のバリデーション。ボックス-プロットは、図3において示されたような109HCCサンプルで解析されたGLUL(グルタミンシンターゼ)、TBX3(転写因子TBX3)、MME(膜メタロペプチダーゼ,CD10)、LAMA3(ラミニン5のα-3鎖)、SPARCL1(ヘビン)、MERTK(c‐merプロト癌遺伝子チロシンキナーゼ)、PAP(膵炎関連タンパク質)、EPHB2(エフリンレセプターB2)、LEF1(リンパ系エンハンサー結合因子1)、およびCDH1(E-カドヘリン)について得られた相対(腫瘍 vs 非腫瘍の平均(T/NT))log10発現値の範囲を示す。
【図4b】G5およびG6サブグループへ至るHCC腫瘍の特徴化 b.β-カテニンについて突然変異されてG5およびG6へ至るHCCの代表的ケースにおけるβ-カテニン免疫染色。ケースHCC303(G5)においては、少数の染色核と形質膜(白矢印)の濃い染色に注目。ケースHCC305(G6)においては、形質膜でシグナルなしに、肝細胞の細胞質および核が濃く染色される(黒矢印)。
【図4c】G5およびG6サブグループへ至るHCC腫瘍の特徴化 c.QRT-PCR(下側パネル)を用いた発現のmRNAレベル(グループG5およびG6)と比較した、ウエスタンブロット(上側パネル)を用いたG6のHCCにおけるE-カドヘリンのタンパク質発現。
【図5a】生存のプレディクター a.全生存最良プレディクターに関する結果が示される。ROC曲線は異なるスコア閾値における特異性および感受性を表す。丸印はトレーニングセット(n=42)、×印はバリデーションセット(n=53)に相当する。四角丸印および×印は、選択閾値(−0.393)で得られた感受性および特異性を示す。トレーニングセットサンプルの“予測クラス/真のクラス”分割表においてFisher正確確率検定に基づく最大成功率および最小P値を有するように、閾値が選択された。スコア曲線は表11のパラメーターにより実施例3.2において記載された総合生存スコア式からトレーニングセット(上側曲線)およびバリデーションセット(下側曲線)で得られたスコアを示し、一方点線は選択された閾値スコアを示す。水平ストロークは生存患者を表し、一方垂直ストロークは死亡患者を表す。トレーニングセット(点線)およびバリデーションセット(実線)の生存曲線は、表示スコア閾値により階層化される。
【図5b】生存のプレディクター b.最良無疾患生存プレディクターに関する結果を示す。図5aの場合と同様の表示コードが用いられる。スコア曲線は、表14のパラメーターにより実施例3.2において記載された無疾患スコア式から得られたスコアを示す。水平ストロークは無疾患患者を表し、一方垂直ストロークは非無疾患患者を表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)RAB1A、REG3A、NRAS、RAMP3、MERTK、PIR、EPHA1、LAMA3、G0S2、HN1、PAK2、AFP、CYP2C9、CDH2、HAMP、SAE1、ADH6、DCN、FLJ10159、ALDH1L1、IGF1、LECT2、SLC38A1、SPARCL1、CTNNA2、GLUL、LEF1、MATN2、MME、PFN2、SPINT2、TBX3、およびFGFR2からなる群より選択される少なくとも8遺伝子の組合せを含んでなる、またはこれらからなる発現プロファイルを決定し、
b)該発現プロファイルから六つのサブグループの距離を計算し、そして
c)サブグループの距離が最短であるサブグループにHCC腫瘍を分類する
ことを含んでなり、
ここで六つのサブグループG1、G2、G3、G4、G5、およびG6が、表2において記載されたそれらの臨床的および遺伝的特徴により規定される、HCCに罹患した対象の肝臓HCCサンプルからの六つのサブグループ間における、HCC腫瘍のインビトロ分類の方法。
【請求項2】
前記発現プロファイルが、次の16遺伝子組合せ:RAB1A、REG3A、NRAS、RAMP3、MERTK、PIR、EPHA1、LAMA3、G0S2、HN1、PAK2、AFP、CYP2C9、CDH2、HAMP、およびSAE1を含んでなる、またはこれらからなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記発現プロファイルが定量的PCRを用いて核酸レベルにおいて決定される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記発現プロファイルが次の16遺伝子組合せ:RAB1A、REG3A、NRAS、RAMP3、MERTK、PIR、EPHA1、LAMA3、G0S2、HN1、PAK2、AFP、CYP2C9、CDH2、HAMP、およびSAE1からなり、クラスまでのサンプルの各距離が下記式を用いて計算される、請求項3に記載の方法:
【数1】

(上記式中、各遺伝子およびクラスについて、μ(クラス,遺伝子)およびσ(遺伝子)値は表5において示された値から10%の区間内にある)。
【請求項5】
d)ALDH1L1、CD24、CD74、CFHR3、CYP4F12、DNAJA3、DSCR1、EPHA1、EPHB4、FAAH、FGFR2、FLJ10159、GLT8D1、HAL、MATN2、MRPS7、PAK2、PLXNB1、RAB1A、RHOQ、SLC27A5、SLPI、SMARCE1、STRA13からなる群より選択される少なくとも8遺伝子の組合せを含んでなる、またはこれらからなる発現プロファイルを決定し、
e)該発現プロファイルから六つのサブグループの距離を計算し、そして
f)サブグループの距離が最短であるサブグループに前記HCC腫瘍を分類する
ことを含んでなり、
ここで六つのサブグループG1、G2、G3、G4、G5、およびG6が、表2において記載されたそれらの臨床的および遺伝的特徴により規定される、HCCに罹患した対象の肝臓HCCサンプルからの六つのサブグループ間における、HCC腫瘍のインビトロ分類の方法。
【請求項6】
前記発現プロファイルが、次の24遺伝子組合せ:ALDH1L1、CD24、CD74、CFHR3、CYP4F12、DNAJA3、DSCR1、EPHA1、EPHB4、FAAH、FGFR2、FLJ10159、GLT8D1、HAL、MATN2、MRPS7、PAK2、PLXNB1、RAB1A、RHOQ、SLC27A5、SLPI、SMARCE1、STRA13を含んでなる、またはそれらからなる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記発現プロファイルが核酸マイクロアレイを用いて核酸レベルにおいて決定される、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記発現プロファイルが次の24遺伝子の組合せ:ALDH1L1、CD24、CD74、CFHR3、CYP4F12、DNAJA3、DSCR1、EPHA1、EPHB4、FAAH、FGFR2、FLJ10159、GLT8D1、HAL、MATN2、MRPS7、PAK2、PLXNB1、RAB1A、RHOQ、SLC27A5、SLPI、SMARCE1、STRA13からなり、クラスまでのサンプルの各距離が下記式を用いて計算される、請求項7に記載の方法:
【数2】

(上記式中、各遺伝子およびクラスについて、c(遺伝子,クラス)、μ(遺伝子)、およびσ(遺伝子)値は表6において示された値から10%の区間内にある)。
【請求項9】
前記肝臓HCCサンプルが肝臓HCCバイオプシーまたはHCC腫瘍外科切除によるものである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
a)NRCAM、PIR、RAMP3、SLC21A2、TAF9、TNA、HN1、PSMD1、MRPS7、CDC20、ENO1、HLF、STRA13、RAGD、NRAS、ARFGEF2、RAB1A、G0S2、SMAD3、DNAJA3、HELO1、RHOQ、C14orf156、NPEPPS、PDCD2、PHB、KIAA0090、IMP-3、KPNA2、KIAA0268、UNQ6077、LOC440751、G6PD、STK6、TFRC、GLA、TRIP13、SPP1、AKR1C1、AKR1C2、GIMAP5、ADM、CCNB1、TKT、AGPS、RAN、NUDT9、HRASLS3、HLA-DQA1、NEU1、RARRES2、PAPOLA、ABCB6、BIRC5、FLJ20273、C14orf109、CHKA、TUBB2、HMGB3、TXNRD1、IFITM1、KIAA0992、MPPE1、KLRB1、CCL5、SYNE1、DNASE1L3、CYP2C18、PACSIN2、PON3、およびPPP2R1Bからなる群より選択される少なくとも2遺伝子の組合せを含んでなる、またはこれらからなる発現プロファイルを決定し、
b)該発現プロファイルから総合生存スコアおよび/または非再発生存スコアを計算し、そして
c)得られた総合生存スコアおよび/または非再発生存スコアを閾値と各々比較する
ことを含んでなり、ここで
-該閾値より厳密に劣る総合生存/非再発生存スコアは良い生存/非再発生存予後を示し、一方
-該閾値より優れたまたはそれに等しい総合生存/非再発生存スコアは悪い生存/非再発生存予後を示す、
HCCに罹患した対象の肝臓HCCサンプルからの総合生存および/または非再発生存のインビトロ予後判定の方法。
【請求項11】
前記発現プロファイルが、NRCAM、PIR、RAMP3、SLC21A2、TAF9、TNA、HN1、PSMD1、MRPS7、CDC20、ENO1、HLF、STRA13、RAGD、NRAS、ARFGEF2、RAB1A、G0S2、SMAD3、DNAJA3、HELO1、およびRHOQからなる群より選択される少なくとも2遺伝子の組合せを含んでなる、またはこれらからなる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
総合生存が予知され、発現プロファイルが下記から選択される遺伝子組合せを含んでなる、またはこれらからなる、請求項11に記載の方法:
-TAF9、PIR、NRCAM、およびRAMP3
-TAF9、NRCAM、SLC21A2、およびPSMD1
-TAF9、NRCAM、RAMP3、およびPSMD1
-TAF9、NRCAM、NRAS、RAMP3、およびPSMD1、または
-TAF9、NRCAM、RAMP3、PSMD1、およびARFGEF2。
【請求項13】
前記発現プロファイルが、次の遺伝子組合せ:TAF9、NRCAM、RAMP3、PSMD1、およびARFGEF2を含んでなる、またはこれらからなる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
非再発生存が予知され、前記発現プロファイルが下記から選択される遺伝子の組合せを含んでなる、またはこれらからなる、請求項11に記載の方法:
-TAF9およびG0S2
-TAF9、NRCAM、およびRAMP3
-TAF9、G0S2、およびRAMP3
-TAF9、NRCAM、DNAJA3、およびRAMP3、または
-TAF9、NRCAM、G0S2、DNAJA3、およびRAMP3。
【請求項15】
前記発現プロファイルが、次の遺伝子の組合せ:TAF9、NRCAM、およびRAMP3を含んでなる、またはこれらからなる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記発現プロファイルが定量的PCRを用いて核酸レベルにおいて決定される、請求項10〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記発現プロファイルが次の遺伝子組合せ:TAF9、NRCAM、RAMP3、PSMD1、およびARFGEF2からなり、下記式が用いられる、請求項16に記載の方法:
【数3】

(上記式中
-nは、組合せにおける遺伝子の数を表し、
-tは、表8において示された組合せにおける各遺伝子の数を表し、並びに
-各β(遺伝子)およびμ(遺伝子)係数の値は表8において示された値から10%の区間内にある)。
【請求項18】
前記予後判定に用いられる前記閾値が、表8において示された値から10%の区間内にある、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記発現プロファイルが次の遺伝子組合せ:TAF9、NRCAM、およびRAMP3からなり、下記式が用いられる、請求項16に記載の方法:
【数4】

(上記式中
-nは、組合せにおける遺伝子の数を表し、
-tは、表9において示された組合せにおける各遺伝子の数を表し、ならびに
-各β(遺伝子)およびμ(遺伝子)係数の値は表9において示された値から10%の区間内にある)。
【請求項20】
前記予後判定に用いられる閾値が、表9において示された値から10%の区間内にある、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記肝臓HCCサンプルが肝臓HCCバイオプシーまたはHCC腫瘍外科切除によるものである、請求項10〜20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
a)請求項10〜21のいずれか一項に記載の方法に従い総合生存および/または非再発生存予後を判定し、そして
b)該予後判定からアジュバント療法の妥当性を決める:
ことを含んでなり、ここで
-悪い予後である場合には、アジュバント療法が勧められ、一方
-良い予後でない場合には、アジュバント療法が勧められない、
HCCに罹患した対象の肝臓HCCサンプルからのアジュバント療法の妥当性のインビトロ決定の方法。
【請求項23】
RAB1A、REG3A、NRAS、RAMP3、MERTK、PIR、EPHA1、LAMA3、G0S2、HN1、PAK2、AFP、CYP2C9、CDH2、HAMP、SAE1、ADH6、DCN、FLJ10159、ALDH1L1、IGF1、LECT2、SLC38A1、SPARCL1、CTNNA2、GLUL、LEF1、MATN2、MME、PFN2、SPINT2、TBX3、およびFGFR2からなる群より選択される少なくとも8遺伝子の組合せを含んでなる、またはこれらからなる発現プロファイルの決定のための試薬を含んでなる、HCCに罹患した対象の肝臓HCCサンプルからの六つのサブグループ間におけるHCC腫瘍のインビトロ分類のためのキット。
【請求項24】
ALDH1L1、CD24、CD74、CFHR3、CYP4F12、DNAJA3、DSCR1、EPHA1、EPHB4、FAAH、FGFR2、FLJ10159、GLT8D1、HAL、MATN2、MRPS7、PAK2、PLXNB1、RAB1A、RHOQ、SLC27A5、SLPI、SMARCE1、STRA13からなる群より選択される少なくとも8遺伝子の組合せを含んでなる、またはこれらからなる発現プロファイルの決定のための試薬を含んでなる、HCCに罹患した対象の肝臓HCCサンプルからの六つのサブグループ間におけるHCC腫瘍のインビトロ分類のためのキット。
【請求項25】
NRCAM、PIR、RAMP3、SLC21A2、TAF9、TNA、HN1、PSMD1、MRPS7、CDC20、ENO1、HLF、STRA13、RAGD、NRAS、ARFGEF2、RAB1A、G0S2、SMAD3、DNAJA3、HELO1、RHOQ、C14orf156、NPEPPS、PDCD2、PHB、KIAA0090、IMP-3、KPNA2、KIAA0268、UNQ6077、LOC440751、G6PD、STK6、TFRC、GLA、TRIP13、SPP1、AKR1C1、AKR1C2、GIMAP5、ADM、CCNB1、TKT、AGPS、RAN、NUDT9、HRASLS3、HLA-DQA1、NEU1、RARRES2、PAPOLA、ABCB6、BIRC5、FLJ20273、C14orf109、CHKA、TUBB2、HMGB3、TXNRD1、IFITM1、KIAA0992、MPPE1、KLRB1、CCL5、SYNE1、DNASE1L3、CYP2C18、PACSIN2、PON3、およびPPP2R1Bからなる群より選択される少なくとも2遺伝子の組合せを含んでなる、またはこれらからなる発現プロファイルの決定のための試薬を含んでなる、HCCに罹患した対象の肝臓HCCサンプルからの総合生存および/または非再発生存のインビトロ予後判定のためのキット。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図5a】
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【図5b】
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【公表番号】特表2009−517064(P2009−517064A)
【公表日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−542772(P2008−542772)
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際出願番号】PCT/EP2006/069175
【国際公開番号】WO2007/063118
【国際公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(500025477)アンスティテュ、ナショナル、ド、ラ、サント、エ、ド、ラ、ルシェルシュ、メディカル(アンセルム) (19)
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT NATIONAL DE LA SANTE ET DE LA    RECHERCHE MEDICAL (INSERM)
【Fターム(参考)】