説明

肥満治療剤または肥満予防剤のスクリーニング方法

【課題】新規な肥満治療剤および肥満予防剤をスクリーニングする方法の提供。
【解決手段】被験物質の、TUSC5遺伝子またはTUSC5タンパク質の発現抑制活性に基づき、TUSC5遺伝子発現抑制物質またはTUSC5タンパク質発現抑制物質を肥満治療剤または肥満予防剤として選択することを特徴とする、肥満治療剤または肥満予防剤のスクリーニング方法が提供される。この方法は、熱産生が亢進する際、前記TUSC5遺伝子の発現が抑制されるという知見に基づく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肥満治療剤または肥満予防剤のスクリーニング方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
肥満は、糖尿病、高血圧症、高脂血症、動脈硬化症、虚血性心疾患等を引き起こす、主要な原因の一つである。近年では、その治療法および予防法としては、摂取エネルギーの調整から、エネルギー消費の調整へと、ターゲットが変わりつつある。特に、褐色脂肪細胞は、エネルギー消費に関連するとして、近年、注目を集めている。
【0003】
褐色脂肪細胞は、(i)熱を作り出して、心臓や肝臓を寒さから守り、体温を維持する働き、(ii)脳の満腹中枢からの刺激によって、食事から摂取した過剰なエネルギーを燃やすという働きの2つの働きが知られている。また、褐色脂肪細胞中の褐色脂肪細胞中の熱産生タンパク質(UCP:uncoupling protein)は、脂肪を直接取り込んで、これをもとに、局所的に熱を放散(熱産生)することが可能である。従って、この熱産生タンパク質の発現を増加させれば、エネルギー消費量を増加させることができ、その結果、肥満を解消または予防することが可能と考えられている。
【0004】
前記褐色脂肪細胞の表面に存在するβ3アドレナリン受容体に、アドレナリンが結合すると、褐色脂肪細胞が活性化され、熱産生タンパク質の発現が増加し、その結果、脂肪が燃焼されることが知られている。このメカニズムの観点から、β3アドレナリン受容体アゴニストが、肥満治療剤として働くことが示唆されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
このように前記褐色脂肪細胞を活性化させることをメカニズムとする、肥満治療剤および肥満予防剤の開発が、検討されていたが、従来、有効な効果を有するものは、見出されていなかった。
【特許文献1】特開2004−323519号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、新規な肥満治療剤および肥満予防剤をスクリーニングする方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、褐色脂肪細胞中の熱産生を調節する遺伝子を同定すべく鋭意検討した結果、熱産生が亢進する際、TUSC5遺伝子の発現が抑制されることを見出した。本発明は、この知見を元に、完成したものである。すなわち、本発明の第一の肥満治療剤または肥満予防剤のスクリーニング方法は、被験物質の存在下、TUSC5遺伝子の発現を抑制する物質を探索する工程を含むことを特徴とするスクリーニング方法である。また、本発明の第二の肥満治療剤または肥満予防剤のスクリーニング方法は、被験物質の存在下、TUSC5タンパク質の発現を抑制する物質を探索する工程を含むことを特徴とするスクリーニング方法である。
【発明の効果】
【0008】
TUSC5(Tumor suppressor candidate 5)の遺伝子配列は、LOST1とも呼ばれており、ヒトおよびマウスに関して、GenBankに登録されている。このTUSC5遺伝子は、肺ガン試料の69%で、TUSC5の発現が減少することが知られており、このことから、TUSC5の発現が肺ガンにおいて重要な役割を果たしていることが示唆されている(Hiroyuki Konishiら、「ヒト肺ガンでの末端17p13.3における腫瘍抑制座候補に対応するホモ接合体削除領域の詳細な同定(Detailed characterization of a homozygously deleted region corresponding to a candidate tumor suppressor locus at distal 17p13.3 in human lung cancer)」、Oncogene, 2003, 22, 1892-1905参照)。また、TUSC5タンパク質に関しては、国際公開WO02/096355号パンフレットおよび国際公開WO02/097036号パンフレット等においても、報告されている。
【0009】
本発明者らは、ラット正常組織において、TUSC5遺伝子が、脂肪組織でのみ、高発現されていることを見出した。そこで、本発明者らは、3T3−L1細胞において、TUSC5遺伝子の発現を検討したところ、3T3−L1細胞の成熟脂肪細胞への分化と共に、発現が増加していることを見出した。さらに、本発明者らは、ラットの各脂肪組織においてTUSC5遺伝子が、健常ラットでは、腸間膜脂肪組織を除く内臓組織で強く発現しており、一方、肥満ラットでは、腸間膜脂肪組織を含む内臓組織で強く発現していることを見出した。このような知見を元に、ラットを寒冷暴露したところ、健常ラットにおいては、褐色脂肪組織でのTUSC5遺伝子の発現の低下を、一方、肥満ラットにおいては褐色脂肪組織でのTUSC5遺伝子の発現が変化しないことを、本発明者らは見出した。
【0010】
寒冷暴露されたラットは、体温維持のため、褐色脂肪細胞において熱産生が促進されると考えられている。よって、健常ラットにおいて、寒冷暴露により、TUSC5遺伝子の発現が低下したという前記知見より、熱産生の促進とTUSC5遺伝子の発現の抑制に、本発明者らは関連を見出した。また、前記のように、熱産生が促進されると、肥満が治療または防止される。従って、TUSC5遺伝子またはTUSC5タンパク質の発現量を指標にすることにより、肥満治療剤または肥満防止剤をスクリーニングすることが可能になることを見出し、本発明に到達した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
まず、本発明の第1の肥満治療剤または肥満予防剤のスクリーニング方法は、被験物質の存在下、TUSC5遺伝子の発現を抑制する物質を探索する工程を含むことを特徴とするスクリーニング方法である。
【0012】
本発明の第1のスクリーニング方法において、前記物質を探索する工程は、以下の工程(I)から(III)を含むのが好ましい。
(I)TUSC5遺伝子を発現可能な細胞と、前記被験物質とを接触させる工程、
(II)前記被験物質を接触させた前記細胞における、前記TUSC5遺伝子の発現量を測定する工程、および
(III)前記発現量を前記被験物質に接触させない対照細胞における前記TUSC5遺伝子の発現量と比較して、前記TUSC5遺伝子の発現量を減少させる被験物質を選択する工程。
【0013】
この際、前記TUSC5遺伝子は、配列番号1、3、5または6に記載の塩基配列からなる遺伝子であるのが好ましい。
【0014】
本発明の第1のスクリーニング方法においては、前記肥満治療剤または前記肥満予防剤は、熱産生促進剤であるのが好ましい。
【0015】
本発明のスクリーニング用キットは、本発明の第1のスクリーニング方法に使用する肥満治療剤または肥満予防剤のスクリーニング用キットであって、TUSC5タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むスクリーニング用キットである。
【0016】
また、本発明の第2の肥満治療剤または肥満予防剤のスクリーニング方法は、被験物質の存在下、TUSC5タンパク質の発現を抑制する物質を探索する工程を含むことを特徴とするスクリーニング方法である。
【0017】
本発明の第2のスクリーニング方法において、前記物質を探索する工程は、以下の工程(I)および(II)を含むのが好ましい。
(I)TUSC5タンパク質と、前記被験物質とを接触させる工程、
(II)前記TUSC5タンパク質と、前記被験物質との結合を検出し、前記TUSC5タンパク質と結合する被験物質を選択する工程。
【0018】
また、本発明の第2のスクリーニング方法において、前記物質を探索する工程は、以下の工程(I)から(III)を含むのが好ましい。
(I)TUSC5タンパク質を発現可能な細胞または前記細胞から調製した細胞画分と、前記被験物質とを接触させる工程、
(II)前記被験物質を接触させた前記細胞または前記細胞画分における、前記TUSC5タンパク質の発現量を測定する工程、および
(III)前記発現量を前記被験物質に接触させない対照細胞または前記対照細胞から調製した対照細胞画分における前記TUSC5タンパク質の発現量と比較して、前記TUSC5タンパク質の発現量を減少させる被験物質を選択する工程。
【0019】
この際、前記TUSC5タンパク質は、配列番号2、4または7に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であるのが好ましい。
【0020】
本発明の第2のスクリーニング方法においては、前記肥満治療剤または肥満予防剤は、熱産生抑制剤であるのが好ましい。
【0021】
また、本発明のスクリーニング用キットは、本発明の第2のスクリーニング方法に使用する肥満治療剤または肥満予防剤のスクリーニング用キットであって、TUSC5タンパク質を含むスクリーニング用キットである。
【0022】
本発明において、配列番号1に示すヒトTUSC5遺伝子、配列番号3に示すマウスTUSC5遺伝子および配列番号5に示すラットTUSC5遺伝子は、公知であり、GenBan Accession No.は、それぞれ、NM_172367.1、NM_177709.2およびXM_340855である。配列番号1に示すヒトTUSC5遺伝子の取得方法は、例えば、S. Katayamaら、Science, 2005, 309, 1564-6頁に、配列番号3に示すマウスTUSC5遺伝子の取得方法は、例えば、H. Konishi, Oncogene, 2003, 22, 1892-1905頁等に記載されるように公知である。
【0023】
配列表の配列番号6のラットTUSC5遺伝子は、本発明者が見出した新規遺伝子である。
【0024】
本発明における前記TUSC5遺伝子には、特定の塩基配列(配列番号1、3、5および6)で示される遺伝子のみならず、これらによりコードされるタンパク質と生物学的機能が同等であるタンパク質(例えば、同族体等)をコードする遺伝子が含まれる。具体的には、TUSC5遺伝子には、以下のような遺伝子が含まれる。
(A)配列番号1、3、5および6のいずれかの塩基配列で示される遺伝子
(B)前記(A)の塩基配列において、1個〜30個、好ましくは1個〜10個、より好ましくは1個〜5個の塩基が欠失、置換または付加された塩基配列からなり、かつ、熱産生抑制活性を有するTUSC5タンパク質をコードする遺伝子
(C) 前記(A)の塩基配列において1個〜30個、好ましくは1個〜10個、より好ましくは1個〜5個の塩基が欠失、置換または付加された塩基配列からなり、前記(A)のDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズする遺伝子
(D) 前記(A)の塩基配列において1個〜30個、好ましくは1個〜10個、より好ましくは1個〜5個の塩基が欠失、置換または付加された塩基配列からなり、前記配列番号1、3、5および6の塩基配列との相同性が少なくとも60%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは95%以上である遺伝子
(E) 前記(A)〜(D)のいずれかの遺伝子と相補的な塩基配列からなる遺伝子
前記(C)において、ハイブリダイズのストリンジェントな条件とは、例えば、当該技術分野における標準の条件があげられるが、例えば、温度条件は、各配列番号で示された塩基配列のTm値の±5℃、好ましくは±2℃、より好ましくは±1℃である。条件の具体例として、5×SSC溶液、10×Denhardt溶液、100μg/mlサケ精子DNAおよび1%SDS中、65℃でのハイブリダイゼーション、0.2×SSCおよび1%SDS中、65℃、30分の洗浄(2回)、続いて、0.2×SSCおよび0.1%SDS中、65℃、30分の洗浄(2回)があげられる。
【0025】
なお、本発明において、配列表の配列番号2のタンパク質は、配列表の配列番号1の遺伝子にコードされるものであり、配列表の配列番号4のタンパク質は、それぞれ、配列表の配列番号3の遺伝子にコードされるものであり、配列表の配列番号7のタンパク質は、配列表の配列番号5および6の遺伝子にコードされるものである。
【0026】
本発明において、用語「タンパク質」には、特定のアミノ酸配列で示されるタンパク質のみならず、これらと生物学的機能が同等である、断片、同族体、誘導体および変異体を含む。例えば、前記TUSC5タンパク質には、配列番号2、4および7に示すタンパク質のみならず、その相同体や変異体も含む。具体的には、前記TUSC5タンパク質には、以下のようなタンパク質が含まれる。
(A)配列番号2、4および7のいずれかのアミノ酸配列からなるタンパク質
(B)前記(A)のアミノ酸配列において、1個〜30個、好ましくは1個〜10個、より好ましくは1個〜5個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、熱産生抑制活性を有するタンパク質
(C) 前記(A)のアミノ酸配列において1個〜30個、好ましくは1個〜10個、より好ましくは1個〜5個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなり、前記配列番号1、3、5および6のアミノ酸配列との相同性が少なくとも60%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは95%以上であるタンパク質
配列番号2に示すアミノ酸配列からなるヒトTUSC5タンパク質、配列番号4に示すアミノ酸配列からなるマウスTUSC5タンパク質および配列番号7に示すアミノ酸配列からなるラットTUSC5タンパク質は、公知であり、GenBan Accession No.は、それぞれ、NP_758955.1、NP_808377.1およびXP_340856である。配列番号2に示すヒトTUSC5遺伝子の取得方法は、例えば、S. Katayamaら、Science, 2005, 309, 1564-6頁に、配列番号4に示すマウスTUSC5遺伝子の取得方法は、例えば、H. Konishi, Oncogene, 2003, 22, 1892-1905頁等に記載されるように公知である。
【0027】
前記タンパク質の調製方法は、特に制限されないが、例えば、前記タンパク質をコードするポリヌクレオチドを、適当な発現ベクターに組み込み、大腸菌等の原核生物、酵母、昆虫細胞、哺乳類細胞等の真核生物細胞、又は、インビトロで前記タンパク質を発現させ、単離する方法が挙げられる。これらの方法は、当業者であれば、適宜選択して実施できる。
【0028】
以下に、本発明のスクリーニング方法の一例を具体的に説明する。
【0029】
(1)TUSC5遺伝子の発現抑制活性を指標とする肥満治療剤または肥満抑制剤のスクリーニング方法
まず、本発明の第1のスクリーニング方法を説明する。第1のスクリーニング方法は、前記のように、被験物質の存在下、TUSC5遺伝子の発現を抑制する物質を探索する工程を含むスクリーニング方法である。
【0030】
前記スクリーニング方法において、前記物質を探索する工程は、以下の工程(I)から(III)を含むのが好ましい。
(I)TUSC5遺伝子を発現可能な細胞と、前記被験物質とを接触させる工程、
(II)前記被験物質を接触させた前記細胞における、前記TUSC5遺伝子の発現量を測定する工程、および
(III)前記発現量を前記被験物質に接触させない対照細胞における前記TUSC5遺伝子の発現量と比較して、前記TUSC5遺伝子の発現量を減少させる被験物質を選択する工程。
【0031】
前記スクリーニング方法に用いられるTUSC5遺伝子は、前記のように、配列番号1、3、5または6に記載の塩基配列からなる遺伝子であるのが好ましい。
【0032】
前記スクリーニングに用いられる細胞としては、TUSC5遺伝子を発現可能な細胞であれば、特に限定はないが、例えば、脂肪組織から調製した細胞が挙げられる。前記脂肪組織としては、例えば、褐色脂肪組織、皮下脂肪組織、副睾丸脂肪組織、腎臓周囲脂肪組織、腸間膜脂肪組織等が挙げられる。
【0033】
前記被験物質となり得るものとしては、特に制限されないが、核酸、ペプチド、タンパク質、有機化合物、無機化合物などが挙げられる。前記スクリーニングは、これらの被験物質となり得る物質を含む試料(被験試料)を上記細胞と接触させて行うことができる。前記被験試料としては、特に制限されないが、細胞抽出液、遺伝子ライブラリーの発現産物、合成低分子化合物、合成ペプチド、天然化合物などが挙げられる。
【0034】
前記工程(I)において、TUSC5遺伝子は、発現可能な細胞と例えば、37℃で、5分から720時間の間で、至適温度で接触させることができる。
【0035】
前記細胞と前記被験物質との接触は、前記細胞が成育可能な条件下で培養しながら行うことができる。また、前記細胞と前記被験物質とを接触させる条件は、特に制限されないが、前記細胞が死なないように、その培養条件(pH、温度、培地等)を選択することができる。
【0036】
前記被験物質と接触させる際の前記細胞の細胞数は、例えば、98ウェルプレートを用いる場合、例えば1.0×103〜1.0×104個/ウェル、好ましくは1.0×104〜1.0×105個/ウェル、より好ましくは1.0×105〜1.0×106個/ウェルである。
【0037】
前記対照細胞とは、前記工程(I)で用いられるTUSC5遺伝子を発現可能な細胞において、前記被験物質を接触させない場合の前記細胞を意味する。被験物質を接触させない場合とは、前記被験物質の代わりに前記被験物質と同量の溶媒(ブランク)を添加する場合、TUSC5遺伝子の発現に影響を与えないコントロール物質を添加する場合などがある。
【0038】
前記スクリーニングで用いられる前記TUSC5遺伝子の発現量の測定方法としては、前記細胞から調製したRNAまたはRNAから転写された相補的なポリヌクレオチドを用いる、in situハイブリダイゼーション、ノーザンブロッティング、ドットプロット、RNaseプロテクションアッセイ等のほか、マイクロアレイを用いる方法、リアルタイムPCR法等のPCRを利用する方法、前記RNA鎖を直接測定する方法等の迅速な測定が可能な方法が挙げられる。
【0039】
前記のように検出・定量したTUSC5遺伝子の発現レベルに基づき、TUSC5遺伝子発現抑制物質を選択することができる。すなわち、被験物質を添加した細胞におけるTUSC5遺伝子の発現が、前記被験物質を添加しない対照細胞での発現量と比較して、70%以下、好ましくは50%以下、より好ましくは10%以下であれば、前記被験物質は、発現抑制物質として選択することができる。
【0040】
(2)TUSC5タンパク質の発現抑制活性を指標とする肥満治療剤または肥満抑制剤のスクリーニング方法
次に、本発明の第2のスクリーニング方法について説明する。第2のスクリーニング方法は、前記のように、被験物質の存在下、TUSC5タンパク質の発現を抑制する物質を探索する工程を含むスクリーニング方法である。
【0041】
本発明の第2のスクリーニング方法において、前記物質を探索する工程は、以下の工程(I)および(II)を含むのが好ましい。
(I)TUSC5タンパク質と、前記被験物質とを接触させる工程、
(II)前記TUSC5タンパク質と、前記被験物質との結合を検出し、前記TUSC5タンパク質と結合する被験物質を選択する工程。
【0042】
前記TUSC5タンパク質と、前記被験物質との結合を検出する方法としては、例えば、前記TUSC5タンパク質に特異的な抗体を用いた免疫学的測定方法が挙げられる。前記免疫学的測定方法としては、ウエスタンブロット、ELISA、サンドウィッチELISA等が挙げられる。前記抗体は、前記TUSC5タンパク質を用いた従来公知の方法で作製でき、ポリクローナルであっても、モノクローナルであってもよい。前記TUSC5タンパク質の調製方法は、特に制限されないが、例えば、前記TUSC5タンパク質をコードするポリヌクレオチドを、適当な発現ベクターに組み込み、大腸菌等の原核生物、酵母、昆虫細胞、哺乳類細胞等の真核生物細胞、又は、インビトロで前記ポリペプチドを発現させ、単離する方法が挙げられる。これらの方法は、当業者であれば、適宜選択して実施できる。
【0043】
また、本発明の第2のスクリーニング方法において、前記物質を探索する工程は、以下の工程(I)から(III)を含むのが好ましい。
(I)TUSC5タンパク質を発現可能な細胞または前記細胞から調製した細胞画分と、前記被験物質とを接触させる工程、
(II)前記被験物質を接触させた前記細胞または前記細胞画分における、前記TUSC5タンパク質の発現量を測定する工程、および
(III)前記発現量を前記被験物質に接触させない対照細胞または前記対照細胞から調製した対照細胞画分における前記TUSC5タンパク質の発現量と比較して、前記TUSC5タンパク質の発現量を減少させる被験物質を選択する工程。
【0044】
前記スクリーニング方法に用いられる細胞は、前記TUSC5タンパク質を発現することが可能な細胞であれば、限定されない。具体的には、前記(1)に記載された細胞を用いることができる。
【0045】
前記スクリーニング方法に用いられるTUSC5タンパク質は、前記のように、配列番号2、4または7に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であるのが好ましい。
【0046】
前記TUSC5タンパク質の発現は、TUSC5遺伝子の発現産物であるタンパク質を検出することにより、確認することができる。
【0047】
前記TUSC5タンパク質を検出する方法としては、特に制限されないが、例えば、前記TUSC5タンパク質に特異的な抗体を用いた免疫学的測定方法が挙げられる。前記免疫学的測定方法としては、ウエスタンブロット、ELISA、サンドウィッチELISA等が挙げられる。前記抗体は、前記TUSC5タンパク質を用いた従来公知の方法で作製でき、ポリクローナルであっても、モノクローナルであってもよい。前記TUSC5タンパク質の調製方法は、特に制限されないが、例えば、前記TUSC5タンパク質をコードするポリヌクレオチドを、適当な発現ベクターに組み込み、大腸菌等の原核生物、酵母、昆虫細胞、哺乳類細胞等の真核生物細胞、又は、インビトロで前記ポリペプチドを発現させ、単離する方法が挙げられる。これらの方法は、当業者であれば、適宜選択して実施できる。
【0048】
前記被験物質としては、前記(1)と同じものが挙げられる。また、前記対照細胞は、前記(1)と同義である。
【0049】
つぎに、本発明のスクリーニング用キットについて説明する。本発明のキットは、肥満治療剤または肥満予防剤のスクリーニングに使用するキットである。
【0050】
まず、本発明のキットは、第1の形態のスクリーニング方法に使用する肥満治療剤または肥満予防剤のスクリーニング用キットであって、TUSC5タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むキットが挙げられる。前記キットは、例えば、前記キットに含まれるプローブの中から選択的に使用してマイクロアレイを製造する場合や、リアルタイムPCR法により検出する場合に使用できる。
【0051】
また、本発明のキットは、スクリーニング方法に使用する肥満治療剤または肥満予防剤のスクリーニング用キットであって、TUSC5タンパク質を含むキットが挙げられる。前記キットには、さらに、TUSC5タンパク質に特異的な抗体等を含んでもよい。
【0052】
以下、実施例を用いて本発明をさらに説明する。
【実施例】
【0053】
(ラット由来のTUSC5遺伝子のクローニング)
3〜5週齡の雄ウィスターラットをエーテルにて麻酔し、断頭した。頭蓋内より脳組織を摘出し細かく切り刻んだ。次に、50%等張性percoll溶液に細胞を浮遊させた。超遠心にて分離された中間第3層に含まれ、γGTPに高い活性を示す画分が脳血管内皮細胞である。γGTP活性はIatroset kit (Iatron)にて測定した。該細胞を回収し、PBSで何度か洗い、20%FBS、150μg/ml ECGF、penicillin-streptomycin mixture (50U/ml)、ブタヘパリン(10U/ml)を添加したDMEM培地にて培養した。
【0054】
一方、大動脈内皮細胞は3〜5週齡の雄ウィスターラットの胸部大動脈より単離した。胸部大動脈を摘出しシート状に切り開いた。ディスパーゼ、コラゲナーゼ溶液中で内腔をかき取り、内皮細胞を回収した。10%FBS、50μg/ml Endothelial growth supplement、penicillin-streptomycin mixture (50U/ml)、ブタヘパリン(10U/ml)を添加したM199培地にて培養した。いずれの細胞も37℃、5% CO2の条件下で培養した。
【0055】
以下に、Suppression Subtractive Hybridization (SSH)法にて脳血管内皮細胞に優位に発現する遺伝子の検出方法と、検出されたラットBEC-1遺伝子断片について説明する。
【0056】
脳血管内皮細胞に優位に発現する遺伝子を解析するために、Suppression subtractive hybridization (SSH)法を選択した(Diatchenko L et al, 1996)。
【0057】
上記方法にて分離培養した脳血管内皮細胞、大動脈内皮細胞を用意した。両方からISOGEN (Nippongene)にてtotal RNAを抽出した。Oligotex-dT30 (TaKaRa)にてpoly A+ RNAを抽出した。5μgのpoly A+ RNAをSuperScript II reverse transcriptase (Gibco)にて逆転写反応させcDNAライブラリを作製した。SSHにはPCR-Select cDNA subtraction kit (Clontech)を使用した。脳血管内皮cDNAをテスター、大動脈内皮cDNAをドライバーとして、両方を制限酵素RsaI消化し短い平滑末端のDNA断片に消化した。
【0058】
次に、テスターを等量に分けてそれぞれにアダプター1,アダプター2Rを付加した。アダプター1付加テスターと十分量のドライバーとをハイブリダイズした(98℃1.5分、68℃8時間)。同様にアダプター2R付加テスターと十分量のドライバーとをハイブリダイズした。さらに両テスターおよび十分量のドライバーをハイブリダイズした(68℃、16時間)。これによりSubtracted cDNA libraryが完成した。
【0059】
これをテンプレートとしてFirst PCR 30サイクル(94℃30秒、66℃30秒、72℃1.5分)、Second PCR 14サイクル(94℃30秒、68℃30秒、72℃1.5分)を施行することにより、脳血管内皮細胞に優位に発現する遺伝子のみが増幅した。酵素はLA-Taq (TaKaRa)を使用した。PCRプロダクトをpCR2.1-TOPO (Invitrogen)にてサブクローニングし、TOP10F'コンピテントセル (Invitrogen)にトランスフォーメーションしてLacZ非発現細胞(脳血管内皮に優位に発現する遺伝子断片が組み込まれたベクター陽性の細胞)をX-galにて検出してピックアップした。LB培地にて大量培養し、BioRobot (QIAGEN)にてプラスミド抽出した。
【0060】
さらに、96well dot-blot system (BIO-RAD)にてHybond N+ (Amersham)にプラスミドをブロッティングした。PCR-Select Differential Screening kit (Clontech)を用いてメンブレンと32Pで標識したテスター、ドライバーcDNAプローブとを各々ハイブリした。ホットスポットをSTORM imaging analyzer (Amersham)で定量化し、脳血管内皮に3倍以上多く発現している遺伝子断片を陽性として選択した。3700 Sequencing system (Applied Biosystems)にて遺伝子断片の塩基配列を決定し、BLAST (NCBI, NIH)にてホモロジー検索を行った。
【0061】
前記のようにして、24の機能既知遺伝子、7のESTを含む20の配列公知機能未知遺伝子、新規遺伝子断片G6を検出した。
【0062】
ラット脳血管内皮細胞から検出した新規遺伝子断片G6について、Marathon-Ready rat Kidney cDNA (Clontech)をテンプレートとして5'-RACEにて5'側の未知部分をクローニングした。
(5'-RACE)
cDNA:Marathon-Ready cDNA rat Kidney (Clontech)
primer(5'→3')
G6-R4 tcaagtcccgataaggataacgtgc(配列番号8)
G6-R2 ctgggttggccatgttgact(配列番号9)
Anchor primer(5'→3')
AP1 ccatcctaatacgactcactatagggc(配列番号10)
AP2 actcactatagggctcgagcggc(配列番号11)
AP1とG6-R2の組み合わせでPCRを行い、そのPCR産物を鋳型にしてAP2とG6-R4でnested PCRを行い、得られた断片の塩基配列を決定した。一方3'側はRat Adipose Tissue 3'-RACE cDNA (Biochain)をテンプレートとしてクローニングした。
(3'-RACE)
cDNA:3'-RACE cDNA rat Adipose (Biochain)
primer(5'→3')
G6-F12 tggagcagaatggtcacagcctac(配列番号12)
LOST1-F1 gatcctggcttcagactgttag(配列番号13)
Anchor primer(5'→3') ggatccactgcagtggaattc(配列番号14)
G6-F12とAnchor primerの組み合わせでPCRを行い、さらにLOST1-F1 primerとAnchor primerとの組み合わせでnested PCRにより得られた断片にポリA配列を確認した。その結果、全長3410bpの配列を得た(配列番号6)。ORFはその配列中に完結しており、522bpであった。推測されたアミノ酸配列は173アミノ酸残基であった。この遺伝子はBLASTにてhuman TUSC5遺伝子(GenBank Accession Number: NM_172367)と非常に高いホモロジーを示した(Identity 85%)。またこのORFは上記2種類のcDNAライブラリからPCRで増幅できたことも併せて、ラットのTUSC5遺伝子であると判断した。また、3410bpの3'末端にはpoly Aサイトも検出できたことから、配列はラットTUSC5 mRNAの全長である可能性が高いことが確認できた。
【0063】
(ラット正常組織における、TUSC5遺伝子の発現)
1.プライマーセット
GAPDHとしては、TaqMAN Rodent GAPDH Control Reagents(Applied Biosystems社)同封のプライマーセットを用いた。
【0064】
TUSC5は、配列番号6(ラットTUSC5)をもとにプローブ検索ソフトPrimer Express (Applied Biosystems社)によりリアルタイム定量PCR用プライマーを選択した。TUSC5のPCR用プライマーとして配列番号15及び配列番号16のプライマーセット(Amasham Pharmacia社により製造された)を用いた。
【0065】
2.TaqMAN Probe
TaqMAN Probeは、末端をクエンチャー物質(TAMRA)で修飾した。
【0066】
GAPDHは、TaqMAN Rodent GAPDH Control Reagents(Applied Biosystems社)同封のプローブを用いた。レポーターとして、VICを用いた。
【0067】
TUSC5は、Primer Expressで設計した配列番号17のプローブ(Applied Biosystems社により製造された)を用いた。レポーターとしてFAMを用いた。
【0068】
3.cDNA
脂肪細胞としては、3'-RACE cDNA Rat Tissue Adipose (Biochain社)を用いた。
【0069】
脳、心臓、腎臓肝臓、肺、骨格筋、脾臓および精巣細胞としては、はRAT MTC PanelI(CLONTECH社製)を用いた。
【0070】
4.TaqMAN反応液の調製
GAPDH、TUSC5それぞれについて表1に示す組成の反応液を作った。この反応液を、50℃で2分間、95℃で2分間処理した後、95℃15秒、60℃1分の反応を40サイクル行って、この反応液からPCR産物を得た。PCR反応及び蛍光測定は、ABI PRISM 7000 Sequence Detection System(Applied Biosystems社製)にて行った。
【0071】
【表1】

【0072】
各細胞におけるTUSC5遺伝子の発現結果を、図1に示す。図1のグラフはGAPDHで補正したTUSC5の発現量を相対値(ΔCt (GAPDH−TUSC5))で示した。リアルタイム定量PCRでは、増幅産物の電気泳動と融解曲線を作製することにより目的の一種類のみ増幅されていることを確認した。図1に示すように、ラット正常組織においてTUSC5 mRNAの発現は偏在していたが、特に脂肪組織において顕著な高発現が確認された。
【0073】
(3T3−L1細胞の分化誘導時のTUSC5遺伝子の発現)
6-wellプレートに3T3-L1細胞をまき、100%コンフルエントになるまで培養した。培養液は10%牛血清を含むDulbecco's Modified Eagle Medium(D-MEM)を用いた。その後、前記培養液を、脂肪細胞への分化誘導のための培養液(D-MEM, 10% 胎児牛血清, 0.25 nM dexamethasone, 0.5 mM IBMX, 10 μg/ml insulin)に交換し、さらに、48時間後に細胞維持培養液(D-MEM, 10% 胎児牛血清, 5 μg/ml insulin)に交換し、培養細胞を維持した。
【0074】
TUSC5mRNA測定のための培養細胞からのRNAの採取は、分化誘導直前を0時間として、48時間後、72時間後、96時間後、120時間後及び144時間後に行った。その結果を図2に示す。
【0075】
図2に示すように、分化誘導48時間後に著明なTUSC5mRNAの発現増加が認められ、その増加は144時間まで持続したことを確認した。
【0076】
(ラットの各脂肪組織におけるTUSC5遺伝子の発現)
Wistarラットの脂肪組織でのTUSC5 mRNAの発現
10週齢オスWistarラットの褐色脂肪(BAT)、皮下脂肪(Subcutaneous)、副睾丸脂肪(Epididymal)、腎臓周囲脂肪(Perirenal)、腸間膜脂肪(Mesenteric)のTUSC5 mRNAを測定した。ラットを断頭で殺し、各脂肪組織を採取した。その組織をドライアイスで凍結させ、アッセイまで-80℃で保存した。mRNAの測定は、以下のようにして行った。まず、各脂肪組織をポリトロンでホモジネートした後、RNA抽出キットでmRNAを抽出した。その後、リアルタイムPCR法によってTUSC5とβ-actinのmRNAを測定した。その測定結果は、両者のサイクル数の差(β-actin−TUSC5)で表示した(図3)。図3に示すように、褐色脂肪、皮下脂肪、副睾丸脂肪及び腎臓周囲脂肪でTUSC5 mRNAの高発現が認められ、一方、これらの部位と比較して腸間膜脂肪での発現量は低値であることを確認した。
【0077】
(健常ラットと肥満ラットの脂肪組織におけるTUSC5遺伝子の発現)
Zucker leanラット及びZucker fattyラットの脂肪組織でのTUSC5 mRNAの発現
10週齢オスZucker leanラット及びZucker fattyラットから前述の各脂肪組織を採取し、ラットの各脂肪組織におけるmRNA測定方法と同様の方法で前記組織中のmRNAを測定した。測定結果はTUSC5 mRNA/β-actin mRNAの比で表示した(図4)。図4に示すように、褐色脂肪、皮下脂肪、副睾丸脂肪、腎臓周囲脂肪及び心臓周囲脂肪でのTUSC5 mRNA発現量はleanラットとfattyラット間で差は確認できなかった。しかし、図4に示すように、fattyラットの腸間膜脂肪(Mesenteric)でのTUSC5 mRNAの発現量は、leanラットと比較して、明らかな増加を確認した。
【0078】
(健常ラットと肥満ラットの褐色脂肪組織におけるTUSC5遺伝子の発現)
Zucker leanラット及びZucker fattyラットの褐色脂肪組織でのTUSC5 mRNAの発現
10週齢オスZucker leanラット及びZucker fattyラットを寒冷暴露(4℃、6時間)後、褐色脂肪組織を採取し、前記組織中のTUSC5 mRNAを前述の方法で測定した。その結果を図5に示す。図5に示されるように、leanラットでは寒冷暴露によりTUSC5 mRNAは有意に減少したことを確認した。また、fattyラットではTUSC5 mRNAの減少傾向を確認した。さらに、寒冷暴露後ではleanラットと比較してfattyラットのTUSC5 mRNA発現量が有意に高いことを確認した。
【0079】
前記のように、健常ラットにおいて、寒冷暴露により、TUSC5遺伝子の発現が低下したという前記知見より、熱産生の促進とTUSC5遺伝子の発現の抑制との間に関連が認められる。また、前記のように、熱産生が促進されると、肥満が治療または防止される。従って、TUSC5遺伝子の発現量を指標にすることにより、肥満治療剤または肥満防止剤をスクリーニングすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
以上、説明したとおり、本発明のスクリーニング方法は、肥満治療剤または肥満予防剤を提供できるので、例えば、肥満の治療および予防の分野で有用である。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】ラット正常組織におけるTUSC5遺伝子の発現を示した図である。
【図2】3T3−L1細胞の分化誘導時のTUSC5遺伝子の発現を示した図である。
【図3】ラットの各脂肪組織におけるTUSC5遺伝子の発現を示した図である。
【図4】健常ラットと肥満ラットの各脂肪組織におけるTUSC5遺伝子発現を示した図である。
【図5】寒冷暴露後の、健常ラットと肥満ラットの褐色脂肪組織におけるTUSC5遺伝子発現を示した図である。
【配列表フリーテキスト】
【0082】
配列番号1 TUSC5遺伝子(ヒト)
配列番号2 TUSC5タンパク質(ヒト)
配列番号3 TUSC5遺伝子(マウス)
配列番号4 TUSC5タンパク質(マウス)
配列番号5 TUSC5遺伝子(ラット)
配列番号6 TUSC5遺伝子(ラット)
配列番号7 TUSC5タンパク質(ラット)
配列番号8 5’−RACE用プライマー
配列番号9 5’−RACE用プライマー
配列番号10 5’−RACE用アンカープライマー
配列番号11 5’−RACE用アンカープライマー
配列番号12 3’−RACE用プライマー
配列番号13 3’−RACE用プライマー
配列番号14 3’−RACE用アンカープライマー
配列番号15 PCR用プライマー
配列番号16 PCR用プライマー
配列番号17 プローブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
肥満治療剤または肥満予防剤のスクリーニング方法であって、
被験物質の存在下、TUSC5遺伝子の発現を抑制する物質を探索する工程を含むことを特徴とするスクリーニング方法。
【請求項2】
前記物質を探索する工程が、以下の工程(I)から(III)を含む請求項1に記載のスクリーニング方法。
(I)TUSC5遺伝子を発現可能な細胞と、前記被験物質とを接触させる工程、
(II)前記被験物質を接触させた前記細胞における、前記TUSC5遺伝子の発現量を測定する工程、および
(III)前記発現量を前記被験物質に接触させない対照細胞における前記TUSC5遺伝子の発現量と比較して、前記TUSC5遺伝子の発現量を減少させる被験物質を選択する工程。
【請求項3】
前記TUSC5遺伝子が、配列番号1、3、5または6に記載の塩基配列からなる遺伝子である請求項1または2に記載のスクリーニング方法。
【請求項4】
前記肥満治療剤または肥満予防剤が、熱産生促進剤である請求項1〜3のいずれか一項に記載のスクリーニング方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のスクリーニング方法に使用する肥満治療剤または肥満予防剤のスクリーニング用キットであって、前記キットが、TUSC5タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むキット。
【請求項6】
肥満治療剤または肥満予防剤のスクリーニング方法であって、
被験物質の存在下、TUSC5タンパク質の発現を抑制する物質を探索する工程を含むことを特徴とするスクリーニング方法。
【請求項7】
前記物質を探索する工程が、以下の工程(I)および(II)を含む請求項6に記載のスクリーニング方法。
(I)TUSC5タンパク質と、前記被験物質とを接触させる工程、
(II)前記TUSC5タンパク質と、前記被験物質との結合を検出し、前記TUSC5タンパク質と結合する被験物質を選択する工程。
【請求項8】
前記物質を探索する工程が、以下の工程(I)から(III)を含む請求項6に記載のスクリーニング方法。
(I)TUSC5タンパク質を発現可能な細胞または前記細胞から調製した細胞画分と、前記被験物質とを接触させる工程、
(II)前記被験物質を接触させた前記細胞または前記細胞画分における、前記TUSC5タンパク質の発現量を測定する工程、および
(III)前記発現量を前記被験物質に接触させない対照細胞または前記対照細胞から調製した対照細胞画分における前記TUSC5タンパク質の発現量と比較して、前記TUSC5タンパク質の発現量を減少させる被験物質を選択する工程。
【請求項9】
前記TUSC5タンパク質が、配列番号2、4または7に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質である請求項6〜8のいずれか一項に記載のスクリーニング方法。
【請求項10】
前記肥満治療剤または肥満予防剤が、熱産生促進剤である請求項6〜9のいずれか一項に記載のスクリーニング方法。
【請求項11】
請求項6〜10のいずれか一項に記載のスクリーニング方法に使用する肥満治療剤または肥満予防剤のスクリーニング用キットであって、前記キットが、TUSC5タンパク質を含むキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−97547(P2007−97547A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−295483(P2005−295483)
【出願日】平成17年10月7日(2005.10.7)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 発表した刊行物:第26回日本肥満学会(2005)プログラム・抄録集 第166頁P−008 発行:日本肥満学会 松澤 佑次 発行日:平成17年9月20日
【出願人】(304021831)国立大学法人 千葉大学 (601)
【出願人】(000001926)塩野義製薬株式会社 (229)
【Fターム(参考)】