説明

育毛剤

【課題】発毛効果に優れた育毛剤を提供する。
【解決手段】血小板を有効成分とする育毛剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は特に血小板を有効成分とする育毛剤に関する。
【背景技術】
【0002】
現在までに脱毛を治療または予防するための多くの技術が開発されてきた。例えば特許文献1には、0.02%〜2.0%の亜硝酸塩、及び0.5〜4%の酸性物質を含む二剤育毛剤が開示され、特許文献2には、発現異常の生長/転写因子を含む育毛剤が開示されている。その他例えば特許文献3〜12等に、低分子量の物質を有効成分として用いる育毛剤が開示されている。また、特許文献13にはFKBP配位子を活性成分として利用した育毛剤製剤が開示され、特許文献14にはセリンプロテアーゼを活性成分に利用した育毛剤製剤が開示されている。さらに、特許文献15にはビタミン及び/または補酵素を活性成分として利用した育毛剤製剤が開示され、特許文献16〜18には植物抽出物を活性成分として利用した育毛剤製剤が開示され、特許文献19にはエストロゲンを活性成分として利用した育毛剤製剤が開示されている。また、特許文献20には、PDGF受容体チロシンキナーゼ抑制剤(PDGF receptor tyrosine kinases inhibitor)を活性成分に利用した毛髪の脱色を抑制する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】台湾特許出願公開第200841886号明細書
【特許文献2】台湾特許出願公開第200413014号明細書
【特許文献3】台湾特許出願公告第128728号明細書
【特許文献4】台湾特許出願公告第191212号明細書
【特許文献5】台湾特許出願公告第260665号明細書
【特許文献6】台湾特許出願公告第474821号明細書
【特許文献7】台湾特許出願公告第490307号明細書
【特許文献8】台湾特許出願公告第501931号明細書
【特許文献9】台湾特許出願公告第592719号明細書
【特許文献10】台湾特許出願公開第200509957号明細書
【特許文献11】台湾特許出願公開第200612904号明細書
【特許文献12】台湾特許出願公開第200825399号明細書
【特許文献13】台湾特許出願公告第518220号明細書
【特許文献14】台湾特許出願公告第531419号明細書
【特許文献15】台湾特許出願公開第200409650号明細書
【特許文献16】台湾特許出願公開第200509972号明細書
【特許文献17】台湾特許出願公開第200529876号明細書
【特許文献18】台湾特許出願公開第200942251号明細書
【特許文献19】台湾特許出願公開第200815038号明細書
【特許文献20】米国特許出願公開第2005/0049268号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、発毛効果に優れた育毛剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願発明者らが鋭意検討した結果、血小板が育毛に有効であることを見出し本願発明を完成させた。すなわち、本発明は血小板を有効成分とする育毛剤に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、優れた育毛効果を有する育毛剤が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1a】図1aは実施例1における育毛剤処置前の被験者の毛髪写真である。
【図1b】図1bは実施例1における育毛剤処置後の毛髪写真である。
【図1c】図1cは実施例1における育毛剤処置後の毛髪写真である。
【図1d】図1dは実施例1における育毛剤処置後の毛髪写真である。
【図2a】図2aは実施例2における育毛剤処置前の被験者の毛髪写真である。
【図2b】図2bは実施例2における育毛剤処置後の毛髪写真である。
【図2c】図2cは実施例2における育毛剤処置後の毛髪写真である。
【図3a】図3aは実施例3における育毛剤処置前の被験者の毛髪写真である。
【図3b】図3bは実施例3における育毛剤処置後の毛髪写真である。
【図3c】図3cは実施例3における育毛剤処置後の毛髪写真である。
【図4a】図4aは実施例4における育毛剤処置前の被験者の毛髪写真である。
【図4b】図4bは実施例4における育毛剤処置後の毛髪写真である。
【図4c】図4cは実施例4における育毛剤処置後の毛髪写真である。
【図5a】図5aは実施例5における育毛剤処置前の被験者の毛髪の写真である。
【図5b】図5bは実施例5における育毛剤処置後の毛髪写真である。
【図6a】図6aは実施例6における育毛剤処置前の被験者の毛髪の写真である。
【図6b】図6bは実施例6における育毛剤処置後の毛髪写真である。
【図7a】図7aは実施例7における育毛剤処置前の被験者の毛髪の写真である。
【図7b】図7bは実施例7における育毛剤処置後の毛髪写真である。
【図8a】図8aは実施例8における育毛剤処置前の被験者の毛髪の写真である。
【図8b】図8bは実施例8における育毛剤処置後の毛髪写真である。
【図9a】図9aは実施例9における育毛剤処置前の被験者の毛髪の写真である。
【図9b】図9bは実施例9における育毛剤処置後の毛髪写真である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
育毛剤に有効成分として含まれる血小板(細胞)の形態は特に限定されないが、好適には血小板乾燥粉である。
【0009】
血小板乾燥粉は、血液または血液製剤、例えば多血小板血漿(platelet−rich plasma、以下PRPと略す)を原料として製造することができる。血小板乾燥粉を製造する方法は、従来公知の血小板乾燥粉の製造方法を用いることができる。例えば台湾特許出願公告第300806号(TW−I300806)、270375号(TW−I270375)明細書、台湾特許出願公開第201004659号、200526680号明細書、米国特許第7,659,052号、7,202,020号、7,169,606号、6,060,233号、5,736,313号、5,589,462号明細書などがある。本発明の血小板乾燥粉は、上記方法により製造されたものに限られない。血小板乾燥粉は、製造工程の相違により、少量の抗凝固剤、保護剤等を含む。例えば台湾特許出願公告第270375号明細書に記載の製造工程により製造された血小板乾燥粉には、少量の抗凝固剤クエン酸デキストロース(Acid Citrate Dextrose)、寒冷沈降物(cryoprecipitate)、及びトロンビン(thrombin)を含む。これらの成分は実質上血小板乾燥粉の効能に影響を及ぼさないので、特に除去する必要はない。
【0010】
育毛剤に含有される有効成分の配合量は、育毛剤1mgあたり、少なくとも1,000個の血小板細胞を含むことが好ましい。血小板細胞含有量がこれより少ないと、育毛効果が十分ではない場合がある。育毛効果の観点からは、育毛剤1mgあたり2,000個以上の血小板細胞を含むことが好ましく、5,000個以上の血小板細胞を含むことがさらに好ましい。育毛剤1mgあたりの血小板細胞数の上限は特に限定されるものではないが、生産性および効果の観点から20,000個以下であることが好ましく、15,000個以下であることがより好ましい。なお、育毛剤1mgあたりの血小板の細胞数は、実施例に記載の方法により測定した値を採用する。
【0011】
上記の血小板乾燥粉を製造する際の原料は、異種(heterologous)、同種(homologous)または自己(autologous)由来のいずれであってもよい。使用者の心理的考慮に基づき、該血小板乾燥粉は同種または自己由来の血小板乾燥粉であることが好ましい、特に自己由来の血小板乾燥粉がより好ましい。
【0012】
血小板中のPDGF(platelet−derivatives growth factor)含有量は約40〜200pg/mLであり(Vogt.,et al.,Determination of endogenous growth factors in human wound healing. Wound Repair Regeneration,2004,12(4):p.485−492.参照)、本発明の育毛剤の有効性は、血小板乾燥粉中のPDGFに関連する可能性がある。しかしながら、本発明は上記メカニズムに限定されるものではない。
【0013】
本発明の育毛剤は、特に限定されるものではないが、外用剤であることが好ましく、1日1〜数回、適量を頭皮、皮膚上に塗布して使用することができる。
【0014】
育毛剤の剤型は特に限定されるものではないが、例えばローション剤、乳化剤などの液状剤型;懸濁液;軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、散剤、丸剤等の固形状;スプレー剤等のエアゾール剤等が挙げられる。なお、エアゾール剤として使用する場合は、原液に対して上記のように配合量が設定される。特にローション剤、軟膏剤、クリーム剤、スプレー剤が好ましい。使用性の観点から、より好ましくは、スプレー剤または軟膏剤である。
【0015】
本発明の育毛剤は適宜溶媒を添加してもよく、溶媒としては、例えば水、低級アルコール(メタノール、エタノール、変性エタノール、イソプロピルアルコール等)、アルコール−水共溶媒、生理食塩水等が挙げられ、特に水または生理食塩水が好ましい。溶媒の添加量は、有効剤量の血小板細胞を維持できる範囲で適宜設定される。
【0016】
その他、必要に応じ本発明の有効性を喪失しない限りにおいて、他の添加剤を含んでいてもよい。他の添加剤としては、例えば、溶解補助剤、賦形剤、界面活性剤、油剤、乳化安定剤、ゲル化剤、粘着剤、保湿剤、殺菌剤、抗酸化剤、キレート剤、メントール、カンフル等の清涼化剤、色素、香料等が挙げられる。
【0017】
また、本発明の育毛剤には他の有効成分(例えば消炎成分、鎮痛成分、栄養成分、経皮吸収促進剤)等を添加することができる。
【0018】
本発明の育毛剤は、動物毛髪、特に人の毛髪、例えば髪の毛、眉毛の成長促進を目的として適用される。
【0019】
また、本発明の育毛剤は直接、またはスプレー剤等により適用箇所に塗布されることが好ましい。
【0020】
本発明の育毛剤の投与量は、被験者の年齢、体重及び症状、目的とする投与形態や方法、治療効果、および処置期間等によって異なり、正確な量は適宜決定されるものである。通常、1日1〜3回に分けて、適量適用される。
【0021】
なお、本発明の育毛剤適用する箇所は、適用前に洗浄、消毒等により清潔にしておくことが好ましい。洗浄をするか否かは育毛剤の適用箇所の清潔さによって判断すればよい。洗浄する場合は、予め洗浄するか、育毛剤の適用直前に洗浄することが好ましい。消毒は必ずしも必要ではないが、適用部位全体的に消毒することが好ましい。毛髪に櫛を通すか否かは状況を見て決めればよいが、適用部位に毛髪が実質上ないまたは殆どなければ、当然に櫛を通す必要はない(但し若し適用部位の周囲に毛髪があれば、周囲の毛髪に櫛を通すことが好ましい)。適用部位に毛髪がある場合には、その後の育毛剤適用に適する状態に毛髪をとかすことが好ましい。
【0022】
また、本発明の育毛剤を処置する前に、育毛剤の吸収を促進する処置を被験者に行ってもよい。該処置としては例えばマッサージまたは毛嚢の血液循環を促進するためのレーザーマッサージ、電磁波導入、極細針による刺入(micro-needle penetration)等が挙げられ、電磁波導入または針刺入がより好ましく、針刺入がさらに好ましい。
【実施例】
【0023】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0024】
試験例:
台湾特許出願公告第270375号明細書(TW−I270375)に開示される製造工程により、血小板乾燥粉を製造した。血小板乾燥粉1.0gに生理食塩水を加え5.0mlにした後、調合完成時(0週間)、一週間後、二週間後、三週間後、四週間後、五週間後、六週間後の溶液中のPDGF含有量を、分光光度計(米国Bio−Tek Instruments,Inc.、型番μ−Quant)で測定した。その結果は表1の通りである。
【0025】
【表1】

【0026】
実験結果から、該血小板乾燥粉中のPDGF値が非常に安定であることが示された。
【0027】
実施例1:
台湾特許出願公告第270375号明細書(TW−I270375)に開示される製造工程により、被験者の自己血液から血小板乾燥粉を製造した。育毛剤1mgあたり、血小板細胞数が1000個となるように該血小板乾燥粉に逆浸透水を加え、得られた溶液を、スプレー瓶中に装填した。溶液中の血小板細胞数は、血液分析器(Sysmex社製、型番:KX−21)を用いて測定した。
【0028】
毛髪成長の促進を期待する部位を消毒し、その後は微針ローラー(micro−roller、韓国のDaesung Medical Co. Ltd.より購入、型番Mi−Roll−1)で、消毒済みの部位にローラーをかけ(針刺入)、その後上記育毛剤溶液を均一にスプレーした。この一連の処置を毎週行い、その間、毎日の洗髮後に育毛剤溶液を毛髪成長を期待する部位に均一にスプレーした。
【0029】
育毛剤処置前、処置3週間後の被験者の毛髪を図1a、1bに示した。3週間後には若干の育毛効果が見られた。
【0030】
血小板細胞数を2,000個/mgに上げると、図1cに示すように第4週目の育毛効果は顕著となる。
【0031】
血小板細胞数を5,000個/mgに上げると、図1dに示すように第8週目には、育毛効果がさらに顕著となり、新しい毛髪が多く生えた。
【0032】
実施例2:
血液バンクより取り寄せた血液で製造したヒト血小板乾燥粉を用い、育毛剤1mg中の血小板細胞数を5,000個とした以外は、実施例1と同様に被験者に処置した。処置前、処置後5週間、処置後7週間の毛髪をそれぞれ図2a、2b、2cに示した。各図の右側は、四角で囲んだ部分の拡大図である。新しい髮が顕著に増加し、元々の髪は太くなった。
【0033】
実施例3:
他の被験者に対して、実施例2と同様の処置を行い、処置前、処置後1週間、処置後3週間の毛髪を図3a、3b、3cに示した。各図の右側は、四角で囲んだ部分の拡大図である。新しい髮が顕著に増加し、元々の髮は太くなった。
【0034】
実施例4:
他の被験者に対して、実施例2と同様の処置を行い、処置前、処置後5週間、処置後7週間の毛髪を図4a、4b、4cに示した。各図の右側は、四角で囲んだ部分の拡大図である。新しい髮が顕著に増加し、元々の髮は太くなった。
【0035】
実施例5:
他の被験者に対して、実施例2と同様の処置を行い、処置前、処置後4週間の毛髪を図5a、5bに示した。各図の右側は、四角で囲んだ部分の拡大図である。新しい髮が顕著に増加し、元々の髮は太くなった。
【0036】
実施例6:
他の被験者に対して、実施例2と同様の処置を行い、処置前、処置後5週間の毛髪を図6a、6bに示した。各図の右側は、四角で囲んだ部分の拡大図である。新しい髮が顕著に増加し、元々の髮は太くなった。
【0037】
実施例7:
他の被験者に対して、実施例2と同様の処置を行い、処置前、処置後2週間の毛髪を図7a、7bに示した。各図の右側は、四角で囲んだ部分の拡大図である。新しい髮が顕著に増加し、元々の髮は太くなった。
【0038】
実施例8:
他の被験者に対して、実施例2と同様の処置を行い、処置前、処置後6週間の毛髪を図8a、8bに示した。各図の右側は、四角で囲んだ部分の拡大図である。新しい髮が顕著に増加し、元々の髮は太くなった。
【0039】
実施例9:
他の被験者に対して、実施例2と同様の処置を行い、処置前、処置後6週間の毛髪を図9a、9bに示した。各図の右側は、四角で囲んだ部分の拡大図である。新しい髮が顕著に増加し、元々の髮は太くなった。
【0040】
実施10〜24:
他の被験者に対して、それぞれ下記表に示す由来、濃度の育毛剤を実施例2と同様に処置した。処置後4週間および8週間の育毛効果を表2に示す。表中、血小板乾燥粉由来として「同種」とあるのは、血液バンクより取り寄せた血液から製造された血小板乾燥粉であり、「異種」とあるのは、牛血から製造された血小板乾燥粉である。
【0041】
【表2】

【0042】
以上の結果より、本発明の育毛剤の育毛効果が示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血小板を有効成分とする育毛剤。
【請求項2】
前記育毛剤1mg中に1,000個以上の血小板細胞を含む、請求項1に記載の育毛剤。
【請求項3】
前記育毛剤1mg中に2,000個以上の血小板細胞を含む請求項2に記載の育毛剤。
【請求項4】
前記育毛剤1mg中に5,000個以上の血小板細胞を含む請求項2に記載の育毛剤。
【請求項5】
前記血小板が血小板乾燥粉の形態である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の育毛剤。
【請求項6】
該血小板乾燥粉が自己由来の血小板乾燥粉である請求項1〜5のいずれか1項に記載の育毛剤。
【請求項7】
さらに溶媒および/または添加剤を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の育毛剤。
【請求項8】
前記溶媒が水または生理食塩水である、請求項7に記載の育毛剤。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図1d】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7a】
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【図7b】
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【図8a】
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【図8b】
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【図9a】
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【図9b】
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【公開番号】特開2012−82194(P2012−82194A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−219470(P2011−219470)
【出願日】平成23年10月3日(2011.10.3)
【出願人】(511239199)セントラル メディカル テクノロジーズ インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】