肺癌バイオマーカー
患者の肺癌の診断および陰性診断におけるタンパク質バイオマーカーおよびそれらの使用を開示する。また、本発明のタンパク質バイオマーカーを検出する肺癌の診断用キット、および複数の分類子を使用して肺癌の可能性があるという診断を行う方法を開示する。本発明の特定の局面において、本方法は決定木解析の使用を含む。種々のコンピュータ可読媒体および本発明によるそれらの使用もまた開示する。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
連邦政府支援の研究開発の下でなされた発明の権利に関する説明
本発明は、米国立衛生研究所/米国立癌研究所による助成金番号第CA85067号の下、政府の支援を受けてなされたものである。政府は、本発明において一定の権利を有する。
【0002】
発明の背景
肺癌は、世界で最も頻度の高い癌である。肺癌の典型的な診断法は、X線と喀痰細胞診を組み合わせたものである。残念ながら、患者が病徴について病院で診察を受けるまでには、癌は通常は治療不可能な状態まで進行している。そのため、癌が臨床的に明らかになる前の、および癌がまだ局在化し、治療し得る状態にある間の、腫瘍マーカーの早期発見に研究の重点が置かれてきた。
【0003】
肺癌プロテオームに関連する抗原の同定には、特に関心が持たれてきた。これらの抗原は肺癌のスクリーニング、診断、臨床管理、および潜在的治療において使用されている。例えば、癌胎児抗原(CEA)は、肺癌を含むいくつかの癌の腫瘍マーカーとして使用されている。(Nutini, et al. 1990. 「Serum NSE, CEA, CT, CA 15-3 levels in human lung cancer,」 Int J Biol Markers 5:198-202)。扁平上皮細胞癌抗原(SCC)は、既に確立された別の血清マーカーである。(Margolis, et al. 1994. 「Serum tumor markers in non-small cell lung cancer,」 Cancer 73:605-609.)。肺癌に関する他の血清抗原としては、モノクローナル抗体(MAb)5E8、5C7、および1F10によって認識される抗原が挙げられ、その組み合わせによって、肺癌に罹患した患者と罹患していない患者が識別される。(Schepart, et al. 1988. 「Monoclonal antibody-mediated detection of lung cancer antigens in serum,」 Am Rev Respir Dis 138:1434-8)。血清CA 125は、最初は卵巣癌関連抗原として記述されていたが、肺癌の予後因子としての使用について研究が進められている。(Diez, et al. 1994. 「Prognostic significance of serum CA 125 antigen assay in patients with non-small cell lung cancer,」 Cancer 73:136876)。肺癌の多重バイオマーカーアッセイにおける利用について研究が行われている他の腫瘍マーカーとしては、糖鎖抗原CA19-9、ニューロン特異的エノラーゼ(NSE)、組織ポリペプチド抗原(TPA)、αフェトプロテイン(AFP)、HCG βサブユニット、および LDHが挙げられる。(Mizushima, et al. 1990. 「Clinical significance of the number of positive tumor markers in assisting the diagnosis of lung cancer with multiple tumor marker assay,」 Oncology 47:43-48;Lombardi, et al. 1990. 「Clinical significance of a multiple biomarker assay in patients with lung cancer,」 Chest 97:639-644;およびBuccheri, et al. 1986. 「Clinical value of a multiple biomarker assay in patients with bronchogenic carcinoma,」Cancer 57:2389-2396)。
【0004】
肺癌に関連した抗原に対するモノクローナル抗体が作製され、診断および/または予後ツールとしての可能性について試験されてきた。例えば、肺癌に対するモノクローナル抗体は、最初、扁平上皮癌、腺癌、および大細胞癌を含む非小細胞肺癌(NSCLC)と小細胞肺癌(SCLC)を識別するために開発された。(Mulshine, et al. 1983. 「Monoclonal antibodies that distinguish non-small-cell from small-cell lung cancer,」 J Immunol 121:497-502)。その他の抗体もまた、肺癌の進行を予測するための喀痰試料の免疫細胞化学染色物として開発されている。(Tockman, et al. 1988. 「Sensitive and specific monoclonal antibody recognition of human lung cancer antigen on preserved sputum cells: a new approach to early lung cancer detection,」 J Clin Oncol 6:1685-1693)。米国特許第4,816,402号には、気管支肺癌および腺癌の可能性を決定するためのマウスハイブリドーマモノクローナル抗体が開示されている。肺癌の免疫組織化学的研究に利用されるいくつかのモノクローナル抗体としては、MCA 44-3A6、L45、L20、SLC454、L6、およびYH206が挙げられる。(Radosevich, et al. 1985. 「Monoclonal antibody 44-3A6 as a probe for a novel antigen found on human lung carcinomas with glandular differentiation,」 Cancer Res 45:5808-5812)。
【0005】
米国特許第5,589,579号および第5,773,579号においては、非小細胞肺癌に特異的な肺癌マーカー抗原が同定され、LCGAと命名された(HCAVIIIおよびHCAXIIとしても知られる)。この抗原は、非小細胞肺癌を検出する方法において、および治療組成物用の抗体およびプローブを作製する可能性に関して有用であることが見い出された。
【0006】
肺癌抗原の単離、およびそれに続くこれら抗原に対するMAbの作製の例が数多くあるにもかかわらず、臨床業務を変更するに至ったものは未だ出現していない。(Mulshine, et al., 「Applications of monoclonal antibodies in the treatment of solid tumors,」 In: Biologic Therapy of Cancer. Edited by V. T. Devita, S. Hellman, and S. A. Rosenberg. Philadelphia: J B Lippincott, 1991, pp. 563-588)。これまでのところ、開発された免疫測定法は、早期発見の必要性を満たすことができていない。
【0007】
さらに、プロテオミクス研究も同様にこの必要性を満たしていない。プロテオミクス研究は伝統的に、健常(対照)群と疾患群との間の組織試料および体液試料におけるタンパク質発現差を検出するための、二次元ゲル電気泳動を伴う(Srinivas, P.R., et al., Clin Chem. 47:1901-1911 (2001);Adam, B.L., et al., Proteomics 1:1264-1270 (2001))。二次元ポリアクリルアミドゲル電気泳動(2D-PAGE)は、タンパク質発現の差を分離および検出するためのプロテオームの探索における古典的アプローチであるが、厄介で手間がかかり、再現性の問題がある点で限界があり、よって臨床設定に容易に適用することができない。
【0008】
概して、いくつかの潜在的腫瘍マーカーが同定され広く研究されているにもかかわらず、いずれも肺癌の診断マーカーまたはスクリーニングツールとして臨床上有用であることは見い出されていない。おそらくは、肺癌細胞で起こる遺伝子変化および分子変化の複雑性から考えて、これらの複雑な変化の発現パターンは、スクリーニング、診断、および予後において、個々の分子変化自体よりも重要な情報を保持している可能性があると考えられる。
【0009】
プロテオミクスにおける近年の技術的進歩により、いくつかの癌を検出するための診断試験の開発が可能となった。例えば、1つのそのような技術として、ProteinChip(登録商標)表面増強レーザー脱離/イオン化飛行時間型質量分析法(SELDI-TOF-MS)が挙げられる(Kuwata, H., et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 245:764-773 (1998);Merchant, M. et al., Electrophoresis 21:1164-1177 (2000))。このシステムでは、表面増強レーザー脱離/イオン化飛行時間型(SELDI-TOF)質量分析法を使用して、タンパク質チップアレイに結合しているタンパク質を検出する。SELDIシステムは、タンパク質およびペプチドの複雑な混合物を解析する極めて感度がよく、かつ迅速な方法である。この技術の適用により、前立腺癌、乳癌、卵巣癌、膀胱癌、および頭頸部癌の早期発見の大きな可能性が示される(Li, J., et al., Clin. Chem. 48:1296-1304 (2002);Adam, B., et al., Cancer Res. 62:3609-3614 (2002);Cazares, L.H., et al., Clin. Cancer Res. 8:2541-2552 (2002);Petricoin, E.F., et al., Lancet 359:572-577 (2002);Petricoin, E.F. et al., J. Natl. Cancer Inst. 94:1576-1578 (2002);Vlahou, A., et al., Amer. J. Pathology 158:1491-1502 (2001);Wadsworth, J.T., et al., Arch. Otolaryngol. Head Neck Surg. 130:98-104 (2004))。例えば、米国仮特許出願第60/496,682号は、頭頸部扁平上皮細胞癌(「HNSCC」)患者の調査ツールとしてのSELDI ProteinChip(登録商標)技術の使用について記載している。この出願では、HNSCCを診断するためのHNSCCタンパク質フィンガープリントを開発するために、HNSCC患者由来血清をいかにして正常対照と比較するかについて記載している。しかし今日まで、SELDIの使用は、肺癌検出用のタンパク質バイオマーカーを同定するためには用いられていなかった。
【0010】
癌と非癌を識別するタンパク質プロファイルまたはパターンを同定する取り組みを継続することで、肺癌の早期発見および肺癌の診断試験の開発が可能になると考えられる。したがって、比較的迅速かつ安価に実施することができ、さらに臨床上有用である、肺癌の診断のための方法および組成物が必要である。本発明は、この必要性およびその他の必要性に取り組むものである。
【発明の開示】
【0011】
発明の概要
本発明は、肺癌患者の試料と対照対象の試料に差次的に存在する新規タンパク質マーカーを初めて提供する。本発明はまた、これらの新規マーカーを検出することによる、肺癌診断の補助として使用され得る、感度の高い方法およびキットを提供する。患者の試料において、これらのマーカーを単独でまたは組み合わせて測定することで、肺癌の可能性があるという診断または陰性診断(例えば、正常または無病状態)と相関し得る情報が提供される。マーカーはすべて、分子量によって特徴づけられる。マーカーは、例えば質量分析法と組み合わせたクロマトグラフィー分離により、または伝統的な免疫測定法により、試料中の他のタンパク質と分離され得る。好ましい態様において、分離方法は、質量分析プローブの表面がマーカーと結合する吸着剤を含む、表面増強レーザー脱離/イオン化(「SELDI」)質量分析法を伴う。
【0012】
本発明の1つの形態において、診断を支援するまたはさもなくば診断を行う方法は、対象に由来する試験試料中の少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーを検出する段階を含む。タンパク質バイオマーカーは、
からなる群より選択される分子量を有する。本方法は、検出を肺癌の可能性があるという診断または陰性診断と相関づける段階をさらに含む。
【0013】
1つの態様において、相関づけは、試料中の1つもしくは複数のマーカーの量および/または対照中の上記と同じ1つもしくは複数のマーカーの検出頻度を考慮に入れる。
【0014】
別の態様においては、1つまたは複数のマーカーを検出するのに、気相イオン分光法が用いられる。例えば、レーザー脱離/イオン化質量分析法を用いることができる。
【0015】
別の態様において、マーカーを検出するために用いられるレーザー脱離/イオン化質量分析法は、以下の段階を含む:(a) そこに付着した吸着剤を含む基材を提供する段階;(b) 試料を吸着剤と接触させる段階;ならびに(c) 質量分析計により1つまたは複数のマーカーを脱離およびイオン化する段階。任意の適切な吸着剤を用いて、1つまたは複数のマーカーと結合させることができる。例えば、基材上の吸着剤は、陽イオン性吸着剤、抗体吸着剤などであってよい。
【0016】
別の態様では、1つまたは複数のマーカーを検出するのに免疫測定法が用いられ得る。
【0017】
本発明の特定の形態では、対象に由来する試験試料中のマーカーは以下の群において検出され得り、またこのマーカーは以下の分子量を有し得る:約3820、3506、4571、および6933ダルトン、または約8603、3887、4644、8630、4301、および8674ダルトン。
【0018】
本発明の別の形態においては、患者における肺癌治療の有効性をモニターする方法を提供する。本方法は、肺癌治療を受けている患者から生物試料を採取する段階、
の分子量を有するタンパク質バイオマーカーからなる群より選択される、試料中の少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーの量を検出する段階、少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーの量と既知の標準とを比較する段階、および肺癌治療の有効性を判定する段階を含む。既知の標準は、健常対照に由来する生物試料または肺癌患者から肺癌治療を行う前に採取された生物試料であってよい。
【0019】
本発明では、本明細書に記載のバイオマーカーの少なくとも1つが検出され得る。バイオマーカーのすべてを含むバイオマーカーのうちの1つまたは複数が検出され、次いで解析され得ることが理解されるべきであり、このことは本明細書中に記載されている。さらに、本発明の1つもしくは複数のバイオマーカーが検出されないこと、または臨床もしくは臨床前肺癌の非存在と相関し得るレベルもしくは量でそれらが検出されることは、臨床または臨床前肺癌の非存在を診断する手段として有用でありかつ望ましい場合があること、およびこのことが本発明の意図する局面を形成することが理解されるべきである。
【0020】
本発明のさらに別の局面では、本明細書に記載するバイオマーカーを検出するために利用できる、さもなくば肺癌を診断する、もしくはさもなくば肺癌の診断を支援するために使用できるキットを提供する。本発明の1つの形態において、キットは、
からなる群より選択される分子量を有する少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーを保持し得る、そこに付着した吸着剤を含む基材;および試験試料を吸着剤と接触させ、吸着剤によって保持されたバイオマーカーを検出することによって、タンパク質バイオマーカーを検出するための説明書を含み得る。
【0021】
本発明のさらに別の局面では、キットは、
からなる群より選択される分子量を有する少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーを保持し得る、そこに付着した吸着剤を含む基材;および試験試料を吸着剤と接触させ、吸着剤によって保持されたバイオマーカーを検出することによって、タンパク質バイオマーカーを検出するための説明書を含み得る。
【0022】
本発明のさらに別の局面では、複数の分類子を使用して肺癌の可能性があるという診断または陰性診断を行う方法を提供する。本発明の1つの形態では、方法は以下の段階を含む:a) 正常対象および肺癌と診断された対象に由来する複数の試料から質量スペクトルを得る段階;b) 質量スペクトルの少なくとも一部に決定木解析を適用して、ピーク強度値および関連閾値を含む複数の加重ベース分類子を得る段階;およびc) 複数の加重ベース分類子の直線的組み合わせに基づき、肺癌の可能性があるという診断または陰性診断を行う段階。本発明の特定の形態において、本方法は、ピーク強度値および関連閾値を線形結合で使用し、肺癌の可能性があるという診断または陰性診断を行う段階を含み得る。
【0023】
本発明のさらなる目的は、複数の分類子を開発するおよび/または使用することで、
からなる群より選択される分子量を有する少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーを用いて肺癌の可能性があるという診断または陰性診断を行うためのコンピュータ実行プロセスを実行するようコンピュータに命令するためのコンピュータ指示を格納しているコンピュータプログラム媒体を提供することにある。好ましくは、タンパク質バイオマーカーは、約3820±19、3506±17、4571±23、および6933±34ダルトンタンパク質バイオマーカー、または約8603±43、3887±19、4644±23、8630±43、4301±21、および8674±43タンパク質バイオマーカーの分子量を有する群より選択される。
【0024】
好ましい態様の説明
本発明の原理の理解を進める目的で、好ましい態様について参照を作成し、特定の用語を用いてこれを説明する。上記にかかわらず、これに関して本発明の特許請求の範囲に制限を受けないことを意図し、本明細書に説明するような本発明の変更およびさらなる修正、ならびに本発明の原理のさらなる適用を、本発明の関連する当業者が通常考えるように意図することは理解される。
【0025】
本発明は、肺癌の診断を支援する方法、および肺癌を診断する方法に関する。肺癌の診断を支援するため、および/もしくは肺癌を診断するため、または陰性診断を行うために利用され得るタンパク質バイオマーカーが同定された。そのようなタンパク質バイオマーカーもまた本明細書に提供する。
【0026】
本発明の方法は、肺癌を有する個体と正常個体とを効率的に識別する。本明細書において定義されるように、正常個体とは、肺癌に関して陰性診断された個体である。すなわち、正常個体は肺癌を有さない。本方法は、対象に由来する試験試料中のタンパク質バイオマーカーを検出する段階を含む。例えば、肺癌の可能性があるという診断において役立つか、または陰性診断において役立つ、
の分子量を有するタンパク質バイオマーカーが同定された。本発明では、タンパク質バイオマーカーの少なくとも1つが検出される。好ましくは、2個もしくはそれ以上、3個もしくはそれ以上、4個もしくはそれ以上、5個もしくはそれ以上、10個もしくはそれ以上、15個もしくはそれ以上、20個もしくはそれ以上、30個もしくはそれ以上、または60個すべてのタンパク質バイオマーカーが検出され、このようなバイオマーカーの存在または非存在が肺癌の診断と相関づけられる。本明細書で使用する「検出する」という用語は、タンパク質バイオマーカーの存在、非存在、量、またはこれらの組み合わせを判定することを含む。バイオマーカーの量は、例えば質量分析によって同定されるピーク強度により、またはバイオマーカーの濃度により表され得る。
【0027】
本発明の特定の形態において、選択されたタンパク質バイオマーカー群は肺癌の診断において有用である。例えば以下のマーカー群は、特定の診断を行うのに、またはさもなくば特定の診断を支援するのに有用である:(1) 約3820±19ダルトンバイオマーカー;(2) 約3820±19および3506±17ダルトンバイオマーカー;(3) 約3820±19、3506±17、および4571±23ダルトンバイオマーカー;(4) 約3820±19、3506±17、4571±23、および6933±34ダルトンバイオマーカー; (5) 約3820±19および6933±34ダルトンバイオマーカー; (6) 約8603±43ダルトンバイオマーカー;(7) 約8603±43および3887±19ダルトンバイオマーカー;(8) 約8603±43、3887±19、および4644±23ダルトンバイオマーカー;(9) 約8603±43、3887±19、4644±23、および8630±43ダルトンバイオマーカー;(10) 約8603±43、3887±19、4644±23、8630±43、および4301±21ダルトンバイオマーカー;ならびに(11) 約8603±43、3887±19、4644±23、8630±43、4301±21、および8674±43ダルトンバイオマーカー。好ましくは、約3820±19ダルトンバイオマーカー、約8603±43ダルトンバイオマーカー、約3820±19、3506±17、4571±23、および6933±34ダルトンバイオマーカーの組み合わせ、または約8603±43、3887±19、4644±23、8630±43、4301±21、および8674±43ダルトンバイオマーカーの組み合わせを使用する。
【0028】
本明細書で使用する「タンパク質バイオマーカー」は、肺癌試料を正常試料と識別するのに有用である、ペプチドまたはタンパク質断片などの任意の分子と定義する。バイオマーカーは典型的に、正常患者と比較して肺癌患者において差次的に存在するかまたは発現される。しかし、いくつかのバイオマーカーは、2つのクラス間で差次的に発現されなくとも、分類木において群のサブセットを線引きするのに有意である限り、本発明のバイオマーカーとして分類され得る。
【0029】
選択されたバイオマーカーの正常個体に対する差次的発現(過剰発現または低発現など)を、肺癌と相関づけることができる。差次的に発現されるとは、本明細書において、タンパク質バイオマーカーが別の疾患状態と比較して1つの疾患状態において高レベルもしくは低レベルで見い出され得ること、または1つもしくは複数の疾患状態において高頻度(例えば、強度)で見い出され得ることを意味する。例えば、約3820±19および4069±20ダルトンバイオマーカーの、対照患者に対する少なくとも2倍、3倍、4倍、好ましくは5倍の低発現は、肺癌の可能性があるという診断と相関づけられ得る。さらに、約7766±38、4748±25、7566±38、および4644±23ダルトンバイオマーカーの対照患者に対する低発現も、肺癌の可能性があるという診断と相関づけられ得る。加えて、約30132±150、8603±43、8933±45、および4301±21ダルトンバイオマーカーの対照患者に対する過剰発現は、肺癌の可能性があるという診断と相関づけられ得る。さらに、
バイオマーカーは、正常患者と比較して肺癌患者において差次的に発現されることが認められた。特に、例えば、約30132、8603、8933、および4301ダルトンバイオマーカーは肺癌患者において過剰発現されることが認められ、約3820、4069、7766、4748、7566、および4644ダルトンバイオマーカーは肺癌患者において低発現されることが認められた。
【0030】
さらに、分類木においてバイオマーカーの分類を組み合わせることは、肺癌陽性患者および肺癌陰性患者を同定するのに有用であることが認めらた。分類木は、本発明のタンパク質バイオマーカーの1つまたは複数を閾値と関連して使用することで作成され得る。閾値は、タンパク質バイオマーカーおよび分類木におけるその使用に基づき得る。閾値は、バイオマーカーの標準化されたピーク強度を表す。実施例1および2においてさらに十分に説明するように、これらの閾値は、バイオマーカーの濃度と関連する特定のバイオマーカーの標準化されたピーク強度を表し得る。標準化過程は、標準化因子として全イオン電流を用いる段階を含み得る。または標準化過程は、内部対照または外部対照のピーク強度に対するピーク強度を報告する段階を含み得る。例えば、既知タンパク質を本システムに加えることができる。さらに、試験対象によって産生されるアルブミンなどの既知産物を、内部標準物質または対照としてもよい。図4および9において同定された閾値は、それぞれ実施例1および2で用いられた対照に関するものであることが理解される。しかし、当業者が理解するように、この閾値は、内部対照または外部対照に基づいて異なり得る。
【0031】
例えば、図4は、肺癌患者と正常患者を識別するために用いられ得る適切な分類木を示す。1つの群において、約3820ダルトンバイオマーカーの0.322以下の閾値での存在、かつ約3506ダルトンバイオマーカーの0.162以下の閾値での存在は、正常診断と相関づけられ得る。別の群において、約3820ダルトンバイオマーカーの0.322以下のピーク強度閾値での存在、約3506ダルトンバイオマーカーの0.162を超えるピーク強度値での存在、約4571ダルトンバイオマーカーの0.642以下のピーク強度値での存在、かつ約6933ダルトンバイオマーカーの0.066以下の閾値での存在は、正常診断と相関づけられ得る。別の群において、約3820ダルトンバイオマーカーの0.322以下のピーク強度閾値での存在、約3506ダルトンバイオマーカーの0.162を超えるピーク強度値での存在、約4571ダルトンバイオマーカーの0.642以下のピーク強度値での存在、かつ約6933ダルトンバイオマーカーの0.066を超える閾値での存在は、肺癌の可能性があるという診断と相関づけられ得る。別の群において、約3820ダルトンバイオマーカーの0.322以下のピーク強度閾値での存在、約3506ダルトンバイオマーカーの0.162を超えるピーク強度値での存在、かつ約4571ダルトンバイオマーカーの0.642を超えるピーク強度値での存在は、正常診断と相関づけられ得る。別の群において、約3820ダルトンバイオマーカーの0.322を超えるピーク強度閾値での存在、かつ約6933ダルトンバイオマーカーの約1.618以下のピーク強度での存在は、正常診断と相関づけられ得る。最後に、約3820ダルトンバイオマーカーの0.322を超えるピーク強度閾値での存在、かつ約6933ダルトンバイオマーカーの1.618を超えるピーク強度での存在は、正常診断または肺癌診断のいずれかと関連づけられ得る。好ましくは、これらの分類の組み合わせが、肺癌を診断するための単一の分類木を形成する。しかし、本発明は、肺癌陽性患者および肺癌陰性患者の診断または同定を支援するために、これらの個々の分類を単独でまたは他の分類と組み合わせて使用することも意図する。したがって、そのような分類の1つまたは複数、好ましくは2つまたはそれ以上、より好ましくはこれらの分類のすべてが診断に役立つ。
【0032】
図9は、同様に肺癌患者と正常患者を識別するために用いられ得るもう1つの適切な分類木を示す。1つの群において、約3887ダルトンバイオマーカーの値×0.734−約8602ダルトンバイオマーカーの値×0.679が0.815以下の閾値であり、約3887ダルトンバイオマーカーの値×0.667−約4644ダルトンバイオマーカーの値×0.335+約8630ダルトンバイオマーカーの値×0.666が3.30以下の閾値であることは、肺癌の可能性があるという診断と相関づけられ得る。別の群において、約3887ダルトンバイオマーカーの値×0.734−8602ダルトンバイオマーカーの値×0.679が0.815以下の閾値であり、約3887ダルトンバイオマーカーの値×0.667−4644ダルトンバイオマーカーの値×0.335+約8630ダルトンバイオマーカーの値×0.666が3.30以上の閾値であって、かつ約3887ダルトンバイオマーカーが5.975という値以下である場合には正常診断と相関づけられ得り、一方5.975を超える値である場合には肺癌診断または正常診断のいずれかと相関づけられ得る。別の群において、約3887ダルトンバイオマーカーの値×0.734−約8602ダルトンバイオマーカーの値×0.679が0.815を超える閾値であり、かつ約4301ダルトンバイオマーカーの値×-0.905−約8630バイオマーカーの値×0.426が-1.119の閾値以下であることは、正常診断と相関づけられ得る。別の群において、約3887ダルトンバイオマーカーの値×0.734−約8602ダルトンバイオマーカーの値×0.679が0.815を超える閾値であり、かつ約4301ダルトンバイオマーカーの値×-0.905−約8630バイオマーカーの値×0.426が-1.119の閾値を超え、さらに8674または約8674のバイオマーカーの値が0.531以下である場合には正常診断と相関づけられ得り、一方、値が0.531を超える場合には肺癌の可能性があるという診断と相関づけられ得る。
【0033】
本発明の別の形態では、肺癌患者の生物試料の薬剤応答者状態が決定され得る。薬剤応答者状態とは、薬剤の使用に応答した生物試料の状態である。生物学的状態にはまた、初期状態、中期状態、および終期状態が含まれ得る。例えば、異なる生物学的状態には、肺癌などの疾患の初期状態、中期状態、および終期状態が含まれ得る。
【0034】
本発明のこの局面との関連では、異なる生物学的状態は、それぞれ異なる薬剤または薬剤種に関連して治療を受けた肺癌患者に由来する試料に相当し得る。1つの実例においては、効果が既知である薬剤で治療した肺癌患者に由来する試料の質量スペクトルを作成する。既知効果の薬剤に関連した質量スペクトルは、既知効果の薬剤と同じ種類の薬剤を表し得る。例えば、既知効果の薬剤に関連した質量スペクトルは、既知効果の薬剤と同じもしくは類似した特徴、構造、または同じ基本的効果を有する薬剤を表し得る。例えば、多くの異なる鎮痛化合物はすべて、痛みの軽減を人にもたらし得る。既知効果の薬剤および同じかまたは類似した種類の薬剤はすべて、人において同じ生化学的経路を制御して、人に同じ効果をもたらす可能性がある。生物学的経路(例えば、タンパク質の上方制御または下方制御)の特徴は、質量スペクトル中に反映され得る。
【0035】
データ解析は、検出されたバイオマーカーのシグナル強度(例えば、ピークの高さ、ピークの面積)を決定する段階、および「外れ値」(所定の統計的分布から外れたデータ)を除去する段階を含み得る。例えば、ある参照に対する各ピークの高さを算出する過程によって、観察されたピークを標準化することができる。例えば、参照は装置および化学物質(例えばエネルギー吸収分子)によって生じるバックグラウンドノイズであってよく、これを目盛りのゼロと設定する。次にシグナル強度を各バイオマーカーについて検出することができ、または他の物質を所望の目盛りの相対強度(例えば100)の形態で表すことができる。または、標準物質によるピークを参照として用いて、検出される各バイオマーカーまたは他のマーカーで観察されるシグナルの相対強度を計算できるように、試料内に標準物質を含めてもよい。
【0036】
本方法は、少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーを検出する段階を含む。しかし、任意の数のバイオマーカーを検出してよい。解析においては、少なくとも2つのタンパク質バイオマーカーを検出することが好ましい。しかし、本明細書に記載のバイオマーカーの3個、4個、または全バイオマーカーを含めたそれ以上のバイオマーカーを本診断において利用できることが理解される。したがって、1つまたは複数のマーカーを検出できるばかりでなく、1〜60個、好ましくは2〜60個、2〜20個、2〜10個のバイオマーカー、2〜5個のバイオマーカー、またはいくつかの他の組み合わせを検出して、本明細書に記載するように解析することができる。さらに、本明細書に記載していない他のタンパク質バイオマーカーを本明細書に開示するタンパク質バイオマーカーのいずれかと組み合わせて、肺癌の診断に役立てることも可能である。さらに、上記のタンパク質バイオマーカーの任意の組み合わせを、本発明に従って検出することができる。
【0037】
試験試料中の本明細書に記載するタンパク質バイオマーカーの検出は、様々な方法で行われ得る。本発明の1つの形態において、バイオマーカーを検出する方法は、気相イオン分光計を利用して気相イオン分光法によりバイオマーカーを検出する段階を含む。本方法は、本明細書に記載のタンパク質バイオマーカーなどのバイオマーカーを有する試験試料を、バイオマーカーと吸着剤との結合を可能にする条件下で、その上に吸着剤を含む基材と接触させる段階、および気相イオン分光法により吸着剤に結合したバイオマーカーを検出する段階を含み得る。
【0038】
多種多様な吸着剤を用いることができる。吸着剤には、疎水基、親水基、陽イオン基、陰イオン基、金属イオンキレート基、もしくは抗原性バイオマーカーに特異的に結合する抗体、またはそれらのいくつかの組み合わせ(「混合型」吸収剤など)が含まれ得る。疎水基を含む例示的な吸着剤には、C1-C18脂肪族炭化水素などの脂肪族炭化水素を有する基質、およびフェニル基を含む芳香族炭化水素機能基を有する基質が含まれる。親水基を含む例示的な吸着剤には、酸化ケイ素、またはポリアルキレングリコール、ポリエチレングリコール、デキストラン、アガロース、もしくはセルロースなどの親水性ポリマーが含まれる。陽イオン基を含む例示的な吸着剤には、二級アミン、三級アミン、または四級アミンの基質が含まれる。陰イオン基を有する例示的な吸着剤には、硫酸陰イオンの基質、およびカルボン酸陰イオンまたはリン酸陰イオンの基質が含まれる。金属イオンキレート基を有する例示的な吸着剤には、銅、ニッケル、コバルト、亜鉛、鉄、アルミニウム、およびカルシウムなどの金属イオンと配位共有結合を形成し得る1つまたは複数の電子供与基を有する有機分子が含まれる。抗体を含む例示的な吸着剤には、本明細書において提供するバイオマーカーのいずれかに特異的であり、当業者に周知の方法によって容易に作製することができる抗体が含まれる。
【0039】
または、基材は、気相イオン分光計に取り外し可能に挿入できるプローブの形態であってよい。例えば、基材はその表面上に吸着剤を有するストリップの形態であってよい。本発明のさらに他の形態では、基材を第2基材の上に設置し、気相イオン分光計に取り外し可能に挿入できるプローブを形成してもよい。例えば、基材はマーカーを結合するための機能基を有する重合体ビーズまたはガラスビーズなどの固相の形態であってよく、これを第2基材の上に設置してプローブを形成することができる。第2基材は、ストリップ、または所定の位置に一連のウェルを有するプレートの形態であってよい。この様式では、バイオマーカーを第1基材に吸収させ第2基材に移すことができ、次にこれを気相イオン分光計による解析に供することができる。
【0040】
プローブは、気相イオン分光計に取り外し可能にに挿入できる限りは、円形、楕円形、正方形、長方形、もしくは他の多角形、または他の所望の形を含む、多種多様な所望の形の形態であってよい。プローブはまた、気相イオン分光計の吸気装置および検出器との使用に適合させるか、またはさもなくば設定することが好ましい。例えば、手動でプローブを再配置する必要のない、プローブを連続した位置に水平方向および/または垂直方向に動かすような、水平方向および/または垂直方向に移動可能な運搬台にはめ込むように、プローブを適合させてもよい。
【0041】
プローブを形成する基材は、様々な吸着剤を支持し得る多種多様な材料から作製することができる。例示的な材料には、ガラスおよびセラミックなどの絶縁材;シリコン・ウエハーなどの半絶縁材;導電材(ニッケル、真ちゅう、スチール、アルミニウム、金、または導電性ポリマーなどの金属を含む);有機ポリマー;バイオポリマー;またはそれらの組み合わせが含まれる。
【0042】
本発明の他の態様では、基材の性質に依存して、基材表面が吸着剤を形成してもよい。他の場合には、基材表面を修飾してその上に所望の吸着剤を組み入れてもよい。プローブを形成する基材の表面は、基材がそれ自体でバイオマーカーに結合できない場合には、マーカーに結合し得る吸着剤に結合するようにプローブを処理するまたはさもなくば調節することができる。または、所望のバイオマーカーに結合する本来の能力を亢進するように、基材の表面を処理するまたはさもなくば調節することも可能である。本発明での使用に適した他のプローブは、例えばPCT WO 01/25791(Tai-Tung et al.)およびWO 01/71360(Wright et al.)に見い出すことができる。
【0043】
吸着剤は、連続的または非連続的なパターンを含む多種多様なパターンでプローブ基材上に設置することができる。1種類の吸着剤または2種類以上の吸着剤を基材表面上に設置することができる。パターンは、線、円などの曲線、または所望される任意のそのような他の形もしくはパターンの形態であってよい。
【0044】
プローブを作製する方法は、当技術分野で周知のように、基材材料および/または吸着剤の選択に依存することになる。例えば、基材が金属である場合、基材はその上に載せる吸着剤に依存して調製され得る。例えば、基材表面を、金属表面を誘導体化し吸着剤を形成し得る酸化ケイ素、酸化チタン、または金などの材料で被覆してもよい。次に基材表面を、一方が表面の機能基と共有結合などの結合をし、リンカーのもう一方の末端が吸着剤として機能する基によってさらに誘導体化され得る二機能性リンカーを用いて誘導体化することができる。さらなる例として、結晶シリコンから作製された多孔性シリコン表面を含む基材を、マーカーを結合するための吸着剤を含むように化学的に修飾することができる。さらに、例えば、置換アクリルアミドもしくはアクリル単量体、または吸着剤として選択した機能基を含むそれらの誘導体を含む単量体溶液を原位置で重合することにより、ヒドロゲル骨格を有する吸着剤を基材表面上で直接形成することも可能である。
【0045】
本発明の好ましい形態において、プローブはCiphergen Biosystems, Inc.(カリフォルニア州、パロアルト)から入手可能なチップなどのチップであってよい。チップは、親水性、疎水性、陰イオン交換、陽イオン交換、固定化金属親和性、または前活性化タンパク質チップアレイであってよい。疎水性チップは、逆相相互作用によってタンパク質に結合する長鎖脂肪族表面を含むPtoteinChip(登録商標) H4であってよい。親水性チップは、二酸化ケイ素基材表面を含むPtoteinChip(登録商標) NP1およびNP2であってよい。陽イオン交換PtoteinChip(登録商標)アレイは、陽イオン性タンパク質に結合するカルボン酸表面を有する弱い陽イオン交換アレイであるPtoteinChip(登録商標) WCX2であってよい。またはチップは、二酸化ケイ素被覆アルミニウム基材から作製されたSAX1(強力な陰イオン交換)PtoteinChip(登録商標)、または陰イオン性タンパク質に結合する大容量四級アンモニウム表面を有するPtoteinChip(登録商標) SAX2などの陰イオン交換タンパク質チップアレイであってよい。さらなる有用なチップは、表面上にニトリロ三酢酸を有する固定化金属親和性捕獲チップ(IMAC3)であってよい。さらに別の場合には、アミノ基と共有結合的に反応するカルボニルジイミダゾール表面を含むPtoteinChip(登録商標) PS1が利用でき、またはアミン基およびチオール基と共有結合的に反応するエポキシ表面を含むPtoteinChip(登録商標) PS2を利用してもよい。
【0046】
本発明に従って、プローブを試験試料と接触させる。試験試料は、多種多様な供給源から得ることができる。試料は典型的に、肺癌の検査を受けている対象もしくは患者から、またはその疾患の危険性が考えられ得る正常個体に由来する生体液から得ることができる。好ましい体液は、血液、血清、または気管支洗浄(「BAL」)液である。バイオマーカーが見い出され得るその他の生体液には、例えば、精液、精漿、リンパ液、粘液、乳頭分泌液、痰、涙液、唾液、尿、または他の同様の液体が含まれる。さらに、生物試料には、気管支/肺組織または任意の他の同様の組織を含む組織が含まれ得る。
【0047】
必要に応じて、プローブと接触させる前に、試料を溶離剤に溶解するかまたは溶離剤と混合することができる。浴浸漬、浸漬、液浸、噴霧、洗浄、分注、または他の所望の方法を含む多種多様な技法によって、プローブを試験試料と接触させることができる。プローブの吸着剤が試験試料液と好ましく接触できるように、方法を実施する。試料中の1つまたは複数のバイオマーカーの濃度は変動し得るが、吸着剤に結合させるために、約1μl〜約500μl溶液中に約1アトモル〜約100ピコモルのマーカーを含む量の試験試料を接触させることが一般に望ましい。
【0048】
バイオマーカーが吸着剤に結合するのに可能な十分な時間、試料とプローブを相互に接触させる。この時間は試料の性質、バイオマーカーの性質、吸着剤の性質、およびバイオマーカーを溶解した溶液の性質に依存して変動し得るが、典型的には試料と吸着剤を約30秒間〜約12時間、好ましくは約30秒間〜約15分間接触させる。
【0049】
プローブを試料に接触させる際の温度は、試料の性質、バイオマーカーの性質、吸着剤の性質、およびバイオマーカーを溶解した溶液の性質に依存することになる。一般に、外界の温度および圧力条件下で、試料をプローブと接触させることができる。しかし、温度および圧力は必要に応じて変更してよい。本発明の現在好ましい態様では、例えば、温度は約4℃〜約37℃で変更できる。
【0050】
マーカーが吸着剤、または吸着剤を用いない場合には基材表面に結合するのに十分な時間、試料をプローブと接触させた後、結合した物質のみがそれぞれの表面に残存するように、非結合の物質を基材または吸着剤表面から洗浄除去する。洗浄は、例えば、浴浸漬、浸漬、液浸、リンス、噴霧することにより、またはさもなくばそれぞれの表面を溶離剤もしくは他の洗浄液を用いて洗浄することにより達成することができる。溶離剤などの洗浄液をプローブ上の吸着剤の小さな部位に挿入する場合には、マイクロフルイディクス過程を用いることが好ましい。洗浄液の温度は変動し得るが、典型的に約0℃〜約100℃、好ましくは約4℃および約37℃である。
【0051】
多種多様な洗浄液を使用して、プローブ基材表面を洗浄することができる。洗浄液は、有機溶液または水溶液であってよい。例示的な水溶液は、HEPES緩衝液、Tris緩衝液、リン酸緩衝食塩水、または当業者に周知の他の類似の緩衝液を含む緩衝液であってよい。特定の洗浄液の選択は、バイオマーカーの性質および用いる吸着剤の性質に依存することになる。例えば、SCXI PtoteinChip(登録商標)アレイのように、プローブが吸着剤として疎水基およびスルホン基を含む場合には、HEPES緩衝液などの水溶液を用いることができる。さらなる例として、Ni(II) PtoteinChip(登録商標)アレイのように、プローブが吸着剤として金属結合基を含む場合には、リン酸緩衝食塩水などの水溶液が好ましい。さらなる例として、HF PtoteinChip(登録商標)アレイのように、プローブが吸着剤として疎水基を含む場合、水が好ましい洗浄液となり得る。
【0052】
溶液中に存在するようなエネルギー吸収分子を、プローブの基材表面上に結合しているマーカーまたは他の物質に添加することができる。本明細書で用いる「エネルギー吸収分子」とは、気相イオン分光計のエネルギー源からのエネルギーを吸収する分子を指し、これはマーカーまたは他の物質のプローブ表面からの脱離を支援し得る。例示的なエネルギー吸収分子には、桂皮酸誘導体、シナピン酸、ジヒドロ安息香酸、および当業者に周知の他の類似の分子が含まれる。エネルギー吸収分子は、好ましくは非結合の物質をプローブ基材表面から洗浄除去した後に、例えば噴霧、分注、または液浸を含む、試料とプローブ基材との接触について本明細書で先に考察した多種多様な技法により添加することができる。
【0053】
バイオマーカーを適切にプローブに結合させた後、適切な検出装置、好ましくは気相イオン分光計を用いて、バイオマーカーを検出、定量することができる、および/またはさもなくばその特徴を決定することができる。当技術分野で周知のように、気相イオン分光計には、例えば、質量分析計、イオン移動度分光計、および全イオン電流測定装置が含まれる。
【0054】
好ましい態様においては、質量分析計を用いて、プローブの基材表面に結合しているバイオマーカーを検出する。表面にマーカーの結合したプローブを、質量分析計の吸気装置に挿入することができる。次に、レーザー、高速原子衝撃、プラズマ、または当業者に周知の他の適切なイオン源などのイオン源により、マーカーをイオン化することができる。生じたイオンは典型的にイオン光学アセンブリにより収集され、次に質量分析器により通過するイオンが分散および解析される。質量分析器から抜け出たイオンは、検出器によって検出される。検出器は、検出したイオンの情報を質量電荷比に変換する。マーカーの検出および/または定量は典型的に、シグナル強度の検出を含む。
【0055】
本発明のさらなる好ましい形態において、質量分析計はレーザー脱離飛行時間型質量分析計であり、さらに好ましくは表面増強レーザー脱離飛行時間型質量分析計(SELDI)を使用する。SELDIは、生体分子用の気相イオン分光法の改良法である。SELDIでは、分析物を載せる表面が、分析物の捕獲および/または脱離において積極的な役割を果たす。
【0056】
当技術分野で周知のように、レーザー脱離質量分析法では、マーカーの結合したプローブを吸気装置に挿入する。レーザーイオン源により、マーカーは脱離して気相内にイオン化される。生じたイオンはイオン光学アセンブリによって収集される。イオンは、飛行時間型質量分析器において短い高電圧電場を通過し加速され、高真空チャンバー内へのドリフトが可能になる。加速されたイオンは、異なる時間で、高真空チャンバーの遠端の高感度検出器表面に衝突する。飛行時間はイオン質量の関数であるため、イオン化と衝突との間の経過時間を用いて、特定質量の分子の有無を同定することができる。相対量または絶対量でのバイオマーカーの定量は、バイオマーカーの示すシグナル強度を、対照量のバイオマーカーまたは当技術分野で周知の他の標準物質と比較することによって達成し得る。レーザー脱離飛行時間型質量分析計の成分を、本明細書に記載するおよび/または当業者に周知の、脱離、加速、検出、または時間測定の様々な手段を用いる他の成分と組み合わせることが可能である。
【0057】
さらなる態様において、バイオマーカーの検出および/または定量は、マトリックス支援レーザー脱離イオン化法(MALDI)によって達成することができる。MALDIはまた、固体相から気相への直接的な生物試料の気化およびイオン化を提供する。当技術分野において周知のように、好ましくはこの過程において分析物の分解を防ぐため、所望の分析物を含む試料を、分析物と共に結晶化する基質に溶解するかまたはさもなくば懸濁する。
【0058】
イオン移動度分光計を用いて、本明細書に記載のバイオマーカーを検出および特徴づけすることができる。イオン移動度分光計の原理は、イオンの異なる移動度に基づく。具体的には、イオン化によって生じた試料のイオンは、例えば質量、電荷、または形状の違いにより、電場の影響下でチューブ内を異なる速度で移動する。イオン(典型的に電流の形態で)は検出器に記録され、次にこれを用いて試料中のマーカーまたは他の物質が同定され得る。イオン移動度分光計の1つの利点は、大気圧で作動し得る点である。
【0059】
全イオン電流測定器を用いて、本明細書に記載のバイオマーカーを検出および特徴づけることもできる。例えば、プローブが単一種類のマーカーのみの結合を可能にする界面化学を有する場合に、この装置を用いることができる。単一種類のマーカーがプローブに結合する場合、イオン化したバイオマーカーから生じた全電流はマーカーの性質を反映する。次に、バイオマーカーによって生じた全イオン電流を、既知化合物の保存してある全イオン電流と比較することができる。次いで、バイオマーカーの特徴が決定され得る。
【0060】
バイオマーカーの脱離および検出によって作成されたデータは、プログラム可能なデジタルコンピュータを用いて解析することができる。コンピュータプログラムは一般に、コードを保存する可読媒体を含む。プローブ上の各特徴の位置、その特徴の存在する吸着剤の同一性、および吸着剤を洗浄するために用いた溶出条件を含む一定のコードを、メモリに供することができる。次にこの情報を用いて、用いた吸着剤および溶離剤の種類などの特定の選択特性を規定して、プログラムでプローブ上の一連の特徴を同定することができる。コンピュータはまた、入力として、プローブ上の特定のアドレス可能位置から受け取る様々な分子量におけるシグナル強度でデータを受け取るコードを含む。このデータは検出されたバイオマーカーの数を示し得り、任意に、検出された各バイオマーカーのシグナル強度および決定された分子量を含む。上記したように、データは、検出されたバイオマーカーのシグナル強度(例えば、ピークの高さまたはピークの面積)を決定し、任意の「外れ値」を除去することによるなど、既知の方法に従って標準化することができる。
【0061】
コンピュータは、結果として得られたデータを様々な表示型式に変換することができる。「スペクトル図またはリテンテートマップ(retentate map)」と称される1つの型式では、それぞれ特定の分子量において検出器に到達したバイオマーカーの量を示す、標準的なスペクトル図が示され得る。「ピークマップ」と称される別の型式では、スペクトル図からピークの高さおよび質量情報のみが抽出され、より明瞭な像が得られ、ほぼ等しい分子量を有するマーカーがより容易に見えるようになる。「ゲル図」と称されるさらに別の型式では、ピーク図の各質量が各ピークの高さに基づき濃淡の像に変換され、電気泳動ゲル上のバンドに類似した形が得られる。「3-Dオーバーレイ」と称されるさらなる型式では、いくつかのスペクトルが重ねられ、相対的なピークの高さの微妙な変化を検討することができる。「相違マップ図」と称されるさらなる型式では、独特なバイオマーカーおよび試料間で上方制御されたまたは下方制御されたバイオマーカーを都合よく強調し、2つまたはそれ以上のスペクトルを比較することができる。任意の2つの試料に由来するバイオマーカープロファイル(スペクトル)を、視覚的に比較することができる。
【0062】
上記の表示型式のいずれかを用いて、特定の分子量を有するバイオマーカーが試料から検出されるかどうかをシグナル表示から容易に決定することが可能である。さらに、シグナル強度から、プローブ表面に結合したマーカーの量を決定することができる。
【0063】
本発明の好ましい形態においては、単一の決定木分類アルゴリズムを利用して、SELDIによって作成されたデータを解析する。そのような分類を作製するために用いられるアルゴリズムは、当技術分野において周知である。例えば、累積確率に基づく分類論理(Classification Logic)、PeakMiner(インターネットアドレス:www.evms.edu/vpc/seld)、または分類と回帰木(Classification and Regression Tree)(CART)(Breiman, L., Friedman, J., Olshen, R., and Stone, C. J. (1984) Classification and Regression Trees Chapman and Hall, New York)によるような、分類木の作製に用いられるアルゴリズム、およびそのような分類木の作製に適した周知の方法;例えば、遺伝子クラスター、ロジスティック回帰、表面ベクトル機構、および神経網によって作成されるアルゴリズムが用いられ得る(Jain et al. 「Statistical Pattern Recognition: A Review,」 IEEE Transactions on Pattern Analysis and Machine Intelligence, Vol. 22, No. 1, Jan. 2000)。例えば、1つのそのようなアルゴリズムを、本明細書の実施例1および2でより具体的に説明する。
【0064】
試験試料は、気相イオン分光測定に供する前に前処理してもよい。例えば、解析のためにより単純な試料が提供されるように、試料を精製またはさもなくば前分画することができる。試験試料中に存在する生体分子の任意の精製手順は、大きさ、電荷、および機能などの生体分子の特性に基づき得る。精製法には、遠心分離、電気泳動、クロマトグラフィー、透析、またはこれらの組み合わせが含まれる。当技術分野で周知のように、電気泳動を使用して、試料中の生体分子を大きさおよび電荷に基づき分離することができる。電気泳動手順は当業者に周知であり、これには等電点電気泳動、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)、アガロースゲル電気泳動、および他の周知の電気泳動法が含まれる。
【0065】
精製段階は、サイズ分画、電荷による分画、および分離する生体分子の他の特性による分画を含むクロマトグラフィー分画技法によって達成してもよい。当技術分野で周知のように、クロマトグラフィー系は固定相および移動相を含み、分離は分離する生体分子と種々の相との相互作用に基づく。本発明の好ましい形態においては、カラムクロマトグラフィー手順を用いることができる。そのような手順には、分配クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、およびアフィニティークロマトグラフィーが含まれる。そのような方法は当業者に周知である。サイズ排除クロマトグラフィーでは、サイズ分画カラムにより、分子量が約10,000ダルトンを超える分子を排除することが好ましい。
【0066】
本発明の好ましい形態においては、気相イオン分光測定に供す前に、リテンテートクロマトグラフィーにより、バイオクロマトグラフィーチップ上で試料を精製するかまたはさもなくば分画する。好ましいチップは、Ciphergen Biosystems, Inc.(カリフォルニア州、パロアルト)から入手可能なPtoteinChip(商標)である。上記のように、チップまたはプローブを質量分析計での使用に適合させる。チップは、その表面に付着した吸着剤を含む。ある適用において、この吸着剤はインサイチュークロマトグラフィー樹脂として機能し得る。操作において、試料を溶離剤中で吸着剤に添加する。吸着剤が親和性を有する分子は、洗浄条件下で吸着剤に結合する。吸着剤に結合しない分子は、洗浄により除去される。解析するのに適当なレベルまで分析物が保持されるまたは溶出されるように、様々なレベルのストリンジェンシーで吸着剤をさらに洗浄することができる。次に、エネルギー吸収分子を吸着部分に添加し、さらに脱離およびイオン化を促進することができる。吸着剤からの脱離、イオン化、および検出器による直接的検出により、分析物が検出される。したがって、リテンテートクロマトグラフィーは、従来のクロマトグラフィーでは親和性物質から溶出された物質が検出されるのに対し、親和性物質によって保持された分析物が検出される点で、従来のクロマトグラフィーとは異なる。
【0067】
本発明のバイオマーカーを、免疫測定手順により定性的にまたは定量的に検出することができる。免疫測定法は典型的に、試験試料を、バイオマーカーに特異的に結合するかまたはさもなくばこれを認識する抗体と接触させる段階、および試料中のバイオマーカーに結合した抗体の複合体の存在を検出する段階を含む。免疫測定手順は、競合的または非競合的酵素免疫測定法を含む、また酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、放射性免疫測定法(RIA)、およびウェスタンブロット法、ならびにいくつかの所望の抗体が支持体(ガラスビーズまたはプレートなど)上に配置され、これを試験試料と反応させるかまたはさもなくば接触させる抗体アレイの使用を含む多重アッセイの使用を含む、抗体/抗原複合体の認識が関与する、当業者に周知の多種多様な免疫測定手順から選択され得る。そのようなアッセイ法は当業者に周知であり、例えば、Antibodies: A Laboratory Manual (1988) by Harlow & Lane; Immunoassays: A Practical Approach, Oxford University Press, Gosling, J.P.(ed.) (2001)、および/または定期的に改正されるCurrent Protocols in Molecular Biology (Ausbel et al.)に十分に記載されている。
【0068】
本明細書に記載する免疫測定法で使用する抗体はポリクローナル抗体であってよく、精製されたバイオマーカーを種々の動物に注射する段階、および血清中に産生された抗体を単離する段階を含む、当業者に周知の手順によって得ることができる。抗体はまたはモノクローナル抗体であってもよく、その作製法は当業者に周知であり、精製されたバイオマーカーを例えばマウスに注射する段階、抗血清を産生する脾臓細胞を単離する段階、この細胞を腫瘍細胞と融合してハイブリドーマを形成する段階、およびハイブリドーマをスクリーニングする段階を含む。本明細書に前記したクロマトグラフィー、電気泳動、および遠心分離手順を含む、当業者に同様に周知の技法によって、まずバイオマーカーを精製することができる。そのような手順は、タンパク質バイオマーカーの大きさ、電荷、溶解度、選択した成分への結合親和性、これらの組み合わせ、またはタンパク質の他の特徴もしくは特性を活用し得る。そのような方法は当業者に周知であり、例えば、Current Protocols in Protein Science, J. Wiley and Sons, New York, NY, Coligan et al. (Eds.) (2002);Harris, E.L.V., and S. Angal in Protein purification applications: a practical approcach, Oxford University Press, New York, MY (1990)に見い出すことができる。抗体が提供されたならば、本明細書に前記した免疫測定法により、バイオマーカーを検出および/または定量することができる。
【0069】
免疫測定法の特定の手順は当業者に周知であるが、一般的に、まず試験対象から本明細書で前記したような試料を得ることにより免疫測定法を行うことができる。抗体/タンパク質バイオマーカー複合体の洗浄および次の単離を容易にするため、抗体を試験試料と接触させる前に、抗体を固体支持体に固定することができる。固体支持体の例は当業者に周知であり、これには、例えば、マイクロタイタープレートといった形態のガラスまたはプラスチックが含まれる。抗体は、本明細書に記載するProteinChip(商標)などのプローブ基材に付着させてもよい。
【0070】
試験試料を抗体と共にインキュベートした後、混合物を洗浄し、抗体-マーカー複合体を検出することができる。検出は、洗浄した混合物を検出試薬と共にインキュベートし、例えば色または他の指標の出現を観察することによって達成され得る。任意の検出可能な標識を使用することができる。検出試薬は、例えば、検出可能な標識で標識した二次抗体であってよい。例示的な検出可能な標識には、磁気ビーズ(例えば、DYNABEADS(商標))、蛍光色素、放射標識、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、および酵素免疫測定手順で一般に用いられる他の酵素)、およびコロイド金、色ガラス、またはプラスチックビーズなどの比色標識が含まれる。または、例えば標識抗体を用いて結合したマーカー特異的抗体複合体を検出する間接的アッセイ法を用いて、および/またはバイオマーカーの異なるエピトープに結合するモノクローナル抗体を混合物と同時にインキュベートする競合もしくは阻害アッセイ法により、試料中のマーカーを検出することもできる。抗体-マーカー複合体の量は、標準物質との比較により決定することができる。
【0071】
アッセイの間、それぞれの試薬を組み合わせた後に、インキュベーション段階および/または洗浄段階が必要とされ得る。インキュベーション段階は約5秒〜数時間、好ましくは約5分〜24時間で変動し得る。しかしインキュベーション時間は、特定の免疫測定法、バイオマーカー、およびアッセイ条件に依存することになる。通常、アッセイは外気温度で行うが、約0℃〜約40℃などの温度範囲で行ってもよい。
【0072】
例えば本明細書に記載したバイオマーカーを検出するために使用し得るキットを提供する。例えばキットを用いて、肺癌の診断もしくは陰性診断をするかまたはそれらの診断を支援するために有利に使用し得る、本明細書に記載の任意の1つまたは複数のバイオマーカーを検出することができる。
【0073】
1つの態様において、キットは、好ましくは本明細書に記載した1つまたは複数のタンパク質バイオマーカーへの結合に適した吸着剤をその上に含む基材、および本明細書に記載する試験試料を吸着剤と接触させ、吸着剤によって保持されたバイオマーカーを検出することによって、バイオマーカーを検出するための説明書を含み得る。特定の態様において、キットは、例えば気相イオン分光法を使用して、溶離剤と吸着剤の組み合わせによりタンパク質バイオマーカーの検出を可能にする溶離剤、または溶離剤を作製するための説明書を含み得る。そのようなキットは、本明細書に記載する物質から調製することができる。
【0074】
さらに別の態様において、キットは、その上に吸着剤を含む第1基材(例えば、吸着剤で機能化した粒子)、および第1基材がその上に設置されて、気相イオン分光計に取り外し可能に挿入できるプローブを形成し得る第2基材を含み得る。他の態様では、キットは、基材上に吸着剤を有する、取り外し可能に挿入できるプローブの形態である単一の基材を含み得る。さらに別の態様では、キットは前分画スピンカラム(例えば、K-30サイズ排除カラム)をさらに含み得る。
【0075】
キットは、ラベルまたは別の挿入物の形態をした、パラメータを適切に操作するための説明書をさらに含み得る。例えばキットは、消費者または他の個人に、特定の形態の試料をプローブと接触させた後いかにしてプローブを洗浄するかの情報を与える標準的説明書を有し得る。さらなる例として、キットは、試料中のタンパク質の複雑性を減少させるために試料を前分画するための説明書を含み得る。
【0076】
さらなる態様において、キットはマーカーに特異的に結合する抗体および検出試薬を含んでよい。そのようなキットは、本明細書に記載する材料から調製することができる。キットは、上記の前分画スピンカラム、およびラベルまたは別の挿入物の形態をした、パラメータを適切に操作するための説明書をさらに含み得る。
【0077】
本発明のさらに別の局面では、複数の分類子を使用して肺癌の可能性があるという診断を行う方法を提供する。本発明の1つの形態では、方法は以下の段階を含む:a) 正常対象および肺癌と診断された対象に由来する複数の試料から質量スペクトルを得る段階;b) 質量スペクトルの少なくとも一部に決定木解析を適用して、ピーク強度値および関連閾値を含む複数の加重ベース分類子を得る段階;およびc) 複数の加重ベース分類子の直線的組み合わせに基づき、肺癌の可能性があるという診断または陰性診断を行う段階。本発明の特定の形態において、本方法は、ピーク強度値および関連閾値を線形結合で使用し、肺癌の可能性があるという診断または陰性診断を行う段階を含む。好ましいアルゴリズムおよびデータ処理を、実施例1および2においてさらに十分に説明する。
【0078】
本発明の方法は、他の用途も有する。例えば、バイオマーカーを用いて、バイオマーカーの発現を調節する化合物をインビトロまたはインビボでスクリーニングすることができ、このような化合物は患者の肺癌の治療または予防に役立ち得る。別の例では、バイオマーカーを用いて、肺癌の治療に対する反応をモニターすることができる。さらに別の例では、バイオマーカーを遺伝研究において使用し、対象が肺癌を発症する危険性があるかどうかを決定することができる。
【0079】
したがって、例えば、本発明のキットは、タンパク質バイオチップ(例えば、Ciphergen WCX2 ProteinChipアレイ、例えば、ProteinChipアレイ)のような陽イオン交換基を有する固体基材、および基材を洗浄するための酢酸ナトリウム緩衝液、ならびにチップ上で本発明のバイオマーカーを測定し、これらの測定値を用いて肺癌を診断するための手順を提供する説明書を含み得る。
【0080】
まず本明細書に記載の1つまたは複数のバイオマーカーと相互作用する化合物を同定することにより、治験に適した化合物をスクリーニングすることができる。一例として、スクリーニングは、本明細書に記載のバイオマーカーを組み換えにより発現させる段階、バイオマーカーを精製する段階、およびバイオマーカーを基材に結合させる段階を含み得る。次いで、試験化合物を典型的に水性条件下で基材と接触させ、例えば塩濃度に応じた溶出速度を測定することで、試験化合物とバイオマーカーとの相互作用を測定する。ある種のタンパク質は本明細書に記載の1つまたは複数のバイオマーカーを認識して切断し得り、そのような場合には、例えばタンパク質のゲル電気泳動によるなど、標準的なアッセイ法で1つまたは複数のバイオマーカーの消化をモニターして、タンパク質を検出することができる。
【0081】
関連する態様では、試験化合物が本明細書に記載する1つまたは複数のバイオマーカーの活性を阻害する能力を測定し得る。当業者は、特定のバイオマーカーの活性を測定するために用いられる技法が、バイオマーカーの機能および特徴に応じて変わることを理解すると考えられる。例えば、適切な基質を利用することができるならば、かつ基質の濃度または反応産物の出現が容易に測定可能であるならば、バイオマーカーの酵素活性をアッセイすることができる。潜在的治療試験化合物が所与のバイオマーカーの活性を阻害または増強する能力は、試験化合物の存在下または非存在下において触媒反応速度を測定することで決定することができる。試験化合物が、本明細書に記載するバイオマーカーのうちの1つの非酵素的(例えば、構造的)機能または活性を妨げる能力もまた測定することができる。例えば、本明細書に記載するバイオマーカーの1つを含む多タンパク質複合体の自己会合を、試験化合物の存在下または非存在下において分光法によりモニターすることができる。または、バイオマーカーが転写の非酵素的エンハンサーであるならば、バイオマーカーが転写を増強する能力を妨げる試験化合物を、試験化合物の存在下および非存在下において、バイオマーカー依存的転写のレベルをインビボまたはインビトロで測定することで同定することができる。
【0082】
本明細書に記載のバイオマーカーのいずれかの活性を調節し得る試験化合物を、肺癌もしくは他の癌に罹患している患者またはそのような癌を発症する危険性のある患者に投与することができる。例えば、インビボにおける特定のバイオマーカーの活性が肺癌に関するタンパク質の蓄積を妨げるのであれば、特定のバイオマーカーの活性を上昇させる試験化合物を投与することで、患者の肺癌の危険性を軽減することができる。逆に、バイオマーカーの活性の上昇が肺癌の発症に少なくとも部分的に関与するのであれば、特定のバイオマーカーの活性を減少させる試験化合物を投与することで、患者の肺癌の危険性を軽減することができる。
【0083】
臨床レベルでは、試験化合物のスクリーニングは、対象を試験化合物に曝露する前および後に、試験対象から試料を採取する段階を含む。本明細書に記載の1つまたは複数のバイオマーカーの試料中のレベルを測定および解析して、試験化合物に対して曝露した後にバイオマーカーレベルが変化したかどうかを決定することができる。試料は本明細書に記載の質量分析法により解析することができ、または当業者に周知である任意の適切な手段により試料を解析することができる。例えば、本明細書に記載の1つまたは複数のバイオマーカーのレベルを、このバイオマーカーに特異的に結合する放射標識または蛍光標識抗体を用いたウェスタンブロットにより、直接測定することができる。または、1つまたは複数のバイオマーカーをコードするmRNAのレベルの変化を測定し、対象に対する所与の試験化合物の投与と関連づけることができる。さらなる態様では、1つまたは複数のバイオマーカーの発現レベルの変化を、インビトロの方法および材料を用いて測定することができる。例えば、本明細書に記載の1つまたは複数のバイオマーカーを発現するかまたは発現し得るヒト組織培養細胞を、試験化合物と接触させ得る。試験化合物による処置を受けた対象は、処置に起因し得る任意の生理的効果に関して日常的に試験されることになる。特に、試験化合物は、対象における疾患可能性を低減させる能力に関して評価される。または、試験化合物を、以前に肺癌と診断された対象に投与する場合には、試験化合物が疾患の進行を遅延させるかかまたは停止させる能力に関してスクリーニングする。
【0084】
コンピュータによる実行
本発明の技法は、図11に示すようなコンピュータシステム104で実行することができる。この点で、図11は、本発明の少なくとも1つのコンピュータ実行態様に従ってコンピュータ処理のいくつかまたはすべてを実行し得るコンピュータシステム104の説明図である。
【0085】
図11を外部から見ると、参照番号104で示されるコンピュータシステムは、コンピュータシステムによって収容され得るいくつかのディスクドライブを単に象徴するドライブ502および504を有するコンピュータ部分112を有する。典型的に、これらは、フロッピーディスクドライブ502、ハードディスクドライブ(外部からは見えない)、およびCD ROM 504を含み得る。ドライブの数および形式は典型的に、それぞれのコンピュータ構成によって変わる。ディスクドライブ502および504は実際に任意であり、空間を考慮して、コンピュータシステムから除外され得る。
【0086】
コンピュータシステム104はさらに任意のディスプレイモニター110を有し、このモニター上には、正常または異常細胞、正常と考えられる細胞、異常と考えられる細胞などに関する情報が表示され得る。場合によっては、キーボード116およびマウス114が入力装置として提供され、これらを介して入力が行われ得り、それにより入力が中央演算処理装置(CPU)604に接続され得る(図12)。しかしまた、携帯性を向上させるため、キーボード116は機能が制限されたキーボードであってよく、またはキーボード全体が除外され得る。さらに、マウス114は、任意にタッチパッド制御装置もしくはトラックボール装置であり、またはなおその全体が除外され、またマウスは同様に入力装置として用いられ得る。さらに、コンピュータシステム104はまた任意に、赤外線信号を送信および/または受信するための少なくとも1つの赤外線(無線)送信機および/または赤外線(無線)受信機を含む。
【0087】
コンピュータシステム104は、単一のプロセッサ、単一のハードディスクドライブ614、および単一のローカルメモリを有するように図示されているが、システム104は任意に、任意の複数のもしくは組み合わせのプロセッサまたは記憶装置を適切に装備する。コンピュータシステム104は実際には、携帯用コンピュータ、ラップトップ/ノートブックコンピュータ、ミニコンピュータ、メインフレームコンピュータ、およびスーパーコンピュータ、ならびにそれらの処理システムネットワーク連携を含む、本発明の原理に従って作動する任意の適切な処理システムに置き換えられ得るか、またはこの処理システムと併用され得る。
【0088】
図12は、図11のコンピュータシステム104の内部ハードウェアのブロック図である。バス602は、コンピュータシステム104の他の構成要素を相互接続する主要な情報ハイウェイとして働く。CPU604は、プログラムを実行するのに必要な計算および論理演算を実行する、システムの中央演算処理装置である。読み取り専用メモリ(ROM)606およびランダムアクセスメモリ(RAM)608は、コンピュータシステム104のメインメモリを構成する。ディスクコントローラ610は、1つまたは複数のディスクドライブをシステムバス602にインターフェースで接続する。これらのディスクドライブは、例えば、502のようなフロッピーディスクドライブ、CD ROMもしくはDVD(デジタルビデオディスク)ドライブ504、または内部もしくは外部ハードドライブ614である。前述したように、これら種々のディスクドライブおよびディスクコントローラは任意の装置である。
【0089】
ディスプレイインタフェース618は、ディスプレイ110をインターフェースで接続し、バス602からの情報をディスプレイ110上に表示することを可能にする。この場合もやはり先の通りであり、ディスプレイ110もまた任意の付属品である。例えば、ディスプレイ110は置き換えられ得るかまたは除外され得る。例えば本明細書に記載のシステムの他の構成要素のような外部装置との通信は、通信ポート616を使用することで行われる。例えば、光ファイバーおよび/または電気ケーブルおよび/または導線および/または光通信(例えば、赤外線など)および/または無線通信(例えば、無線周波数(RF)など)が、外部装置と通信ポート616との間の輸送媒体として使用され得る。周辺インターフェース620はキーボード116およびマウス114をインターフェースで接続し、入力データをバス602に伝送することを可能にする。
【0090】
別の態様において、上記CPU 604は、PAL(プログラマブル・アレイ・ロジック)およびPLA(プログラマブル・ロジック・アレイ)、DSP(デジタル信号プロセッサ)、FPGA(フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ)、ASIC(特定用途向け集積回路)、VLSI(超大規模集積回路)などのプログラム可能な論理回路を含む、任意の他の適切な処理回路に置き換えられ得るか、またはこの処理回路と併用され得る。
【0091】
現在利用できるまたは今後開発される任意のコンピュータソフトウェア言語および/またはハードウェア成分を、本発明のこのような態様において用いることができる。例えば、上記の機能の少なくともいくつかは、拡張マークアップ言語(XML)、HTML、ビジュアルベーシック、C、C++、または使用するプロセッサを考慮して適切である任意のアセンブリ言語を用いて実行され得る。これはまた、Javaなどの解釈環境で書き込まれ、様々な使用者への複数のあて先に送信され得る
【0092】
本発明の実行の1つは、一般的に上記のように構成される1つまたは複数のコンピュータシステム104のランダムアクセスメモリ608内に、一組の命令として存在する。コンピュータシステム104により要求されるまで、一組の命令は、例えば、ハードディスクドライブ614、または最終的にCD-ROM504で使用される光ディスク、もしくは最終的にフロッピーディスクドライブ502で使用されるフロッピーディスク(例えば、フロッピーディスク702)などの取り外し可能なメモリといった、別のコンピュータ可読メモリ内に保存され得る。さらに、一組の命令(Java、HTML、XML、汎用マークアップ言語規約(SGML)、および/または構造化照会言語(SQL)で書き込まれた命令など)は別のコンピュータのメモリ内に保存され、使用者が所望する場合に、ローカルエリア・ネットワークまたはインターネットのような広域ネットワークを介して伝送され得る。当業者には、コンピュータプログラム媒体の保存または伝送は、媒体がコンピュータ可読情報を伝えることができるように、媒体を電気的、磁気的、または化学的に変化させることは周知である。
【0093】
ここで、上記のバイオマーカー、キット、コンピュータプログラム媒体、および方法について説明する具体的な実施例について言及する。実施例は好ましい態様を説明するために提供するものであり、これにより本発明の範囲が制限されないことを意図することを理解されたい。
【0094】
実施例1
気管支洗浄試料
ニューヨーク大学のWilliam Rom博士から、気管支洗浄試料を入手した。インフォームドコンセントを行った後、肺癌患者および対照から気管支洗浄試料を採取した。気管支洗浄試料を分離し、等分し、特にSELDI解析のために解凍するまで-80℃で凍結した。
【0095】
患者およびドナーコホート
本研究では、2群の患者に由来する標本を使用した:肺癌と診断された患者に由来する13試料、および正常対照患者に由来する61試料(13名の肺癌患者のうちの10名の非癌性肺に由来する試料を含む)。
【0096】
SELDIタンパク質プロファイリング
SELDI解析を行うため、CuSO4で前処理したIMAC3 ProteinChip(登録商標)を用いて、以前に記載されている通りに気管支洗浄試料を処理した(Merchant, M., et al., Electrophoresis 21:1164-1177 (2000))。簡潔に説明すると、希釈していない気管支洗浄液200μlをバイオプロセッサを用いてProteinChips(登録商標)に添加した。気管支洗浄試料はそれぞれ二つ組でアッセイし、二つ組試料は異なるProteinChips(登録商標)上にランダムに配置した。次にProteinChips(登録商標)を室温でインキュベートし、その後PBSおよび水で洗浄した。アレイを風乾し、50% (v/v)アセトニトリル、0.5% (v/v)トリフルオロ酢酸中のシナピン酸(Ciphergen Biosystems、カリフォルニア州、フレモント)飽和溶液を各スポットに添加した。ProteinChips(登録商標)を、SELDI ProteinChip(登録商標)システム(PBS-II、Ciphergen Biosystems, Inc.)を用いて解析した。レーザー強度220を使用して、ポジティブモードにおける192ショットの蓄積により、スペクトルを収集した。タンパク質の質量は、精製ペプチド標準物質(Ciphergen Biosystems, Inc.)を用いて、外部から較正した。機器の設定は、プールした血清標準物質を用いて最適化した。
【0097】
データ解析
データは、正常試料61および肺癌試料13からなる学習セットからなった。次いで、この学習セットを5重交差検証に供して、分類率が維持されているかどうかを判定した。
【0098】
ピーク検出
Ciphergen ProteinChip(登録商標)ソフトウェア(バージョン3.2)を用いて質量範囲2 kDa〜100 kDaのスペクトルを解析し、全イオン電流を用いて標準化した。ピーク検出およびクラスタリングは、シグナル対ノイズ閾値3、ピーク閾値10%、および質量領域0.2%という値を用いて、CiphergenのBiomarker Wizardツールを使用して行った。標識ピークはすべて、SELDIからExcelスプレッドシートにエクスポートされた。
【0099】
分類と回帰木(CART)解析
決定木分類アルゴリズムの構築は、74の試料(正常61および肺癌13)からなる学習データセットを用いて、Breiman, L., et al., Classification and Regression Trees, (1984)によって記載されている通りに行った。BioMarker Patternsソフトウェアプログラムに組み込まれている分類と回帰木(CART)および人工知能バイオインフォマティクスアルゴリズムに関する詳細はまた、Bertone, P., et al., Nucleic Acids Res. 29: 2884-2898 (2001);Kosuda, S., et al., Ann. Nucl. Med. 16: 263-271 (2002)によって記載されている。分類木では、質問形式で同時に1つの規則を用いて、データを2つのビンまたはノードに分割した。分割の決定は、1つのピークの有無および強度レベルに基づいた。したがって、SELDIプロファイルから同定される各ピークまたはクラスターは、分類プロセスで変動した。例えば、「質量AはX以下の強度を有する」という質問に対する答えにより、データは、イエスの左側ノードおよびノーの右側ノードという2つのノードに分割される。この「分割」プロセスは、末端ノードに到達し、データ分類においてさらなる分割が行われなくなるまで続けられる。末端ノードの分類は、そのノード内の試料の大部分を表す試料(すなわち、肺癌、正常)の群(「クラス」)によって決定した。学習セットを用いて分類木を構築し、次いでこの分類木を5重交差検証に供した。このプロセスを用いて複数の分類木が作成し、さらなる試験のために最も性能のよい木を選択した。
【0100】
統計解析
特異性は、正確に分類された陰性試料数と真の陰性試料の総数の比として算出した。感度は、正確に分類された疾患試料数と疾患試料の総数の比として算出した。群間の相対ピーク強度レベルの比較は、スチューデントのt検定を用いて算出した。
【0101】
データ解析
BioMarker Wizard解析のデータをスプレッドシートにエクスポートし、各ピークの強度値を二つ組みの試料について平均した。この解析により、スペクトルごとに多数のピークが同定された。これらのうち、共通に見られる102のピークまたはクラスターを、IMAC3タンパク質プロファイリングから得た。図10に示すように、これらのピークのうち31のピークが、肺癌気管支洗浄液と対照気管支洗浄液との間で有意に差次的な発現レベルを有することが認められた。
【0102】
CART解析
学習セットを用いて5重交差検証を行い、全102ピークを用いて分類木を作成した。この種類の交差検証では、それぞれの木について試験するために、乱数を使用して学習セット内のデータを分割する。CART解析に基づき、3820におけるタンパク質ピークの低発現が見い出され、最も性能のよい分類木において第1スプリッター(splitter)として用いられた。図2は、4069 Daピークと同様に、対照BAL試料と比較した場合の肺癌BAL試料における本ピークの低発現を示す代表的なゲル図である。図2はまた、3820ダルトンおよび4069ダルトンピークに関してプロットされた平均標準化強度値を示し、かつ対照BAL試料における平均発現と比較して肺癌BAL試料でのこれらのピークの平均発現が5倍低いことを示す。さらに、図3は、代表的なスペクトル、および対照試料と比較して肺癌BAL試料において過剰発現されることが認められる30132ダルトンピークに関してプロットされた平均標準化強度値を示す。図3に見られるように、30 kDa未満のピークから30132 Daというより大きな分子量ピークへのパターンシフトが、疾患スペクトルにおいて起きていると考えられる。これは、翻訳後修飾を示す可能性がある。
【0103】
全102ピークを用いて、決定木分類アルゴリズムを構築した。1つの試料分類アルゴリズムは、3 kDa〜7 kDaの4つの質量を用いて、6つの末端ノードを生成した(図4)。分類アルゴリズムは、代理または競合物として10個のさらなるピーク(図10による)を用いた。本アルゴリズムで最も識別能力のあるピークが同定されると、分類規則は極めて単純になった。
【0104】
分類木解析により、分類率が85%の正確性を超える全部で4つの木が得られた。最も精度の高い木は、学習セット中の正常BAL試料の96.7%および肺癌BAL試料の100%を正しく分類した(表1を参照のこと)。この分類木アルゴリズムを5重交差検証に供したが、的確な分類率が維持された。交差検証セットにおいて、対照の86.9%および肺癌試料の84.6%が正しく同定された(表1を参照のこと)。分類木の形態は、4つの主要なピーク(3820、3506、4571、および6933 Da)および6つの末端ノードからなった(図4を参照のこと)。
【0105】
6つの末端ノードによる分類結果の合計を、以下の表1において学習セットおよび交差検証セットについて示す。
【0106】
(表1)気管支洗浄液に基づく肺癌学習セットおよび交差検証セットの決定木分類
A. 学習セット
B. 交差検証
【0107】
再現性
信頼性のある疾患診断および早期発見のための任意の臨床的アプローチの重要な局面は、再現性である。SELDIデータの再現性は、プールされた正常血清試料を用いて以前に実証されている(Adam, B. L., et al., Cancer Res. 62:3609-3614 (2002))。ピーク質量に関するアッセイ内およびアッセイ間変動係数(CV)は、15%〜20%の標準化強度CV値を用いて日常的に0.05%である。
【0108】
実施例2
血清試料
ニューヨーク大学のWilliam Rom博士から、血清試料を入手した。インフォームドコンセントを行った後、肺癌患者、異常な肺CTスキャンを有する非癌性患者、健常喫煙者、および健常非喫煙者から全血を採取した。血清試料は分離し、等分し、特にSELDI解析のために融解するまで-80℃で凍結した。
【0109】
患者およびドナーコホート
本研究では、4群の患者に由来する試料を使用した:肺癌と診断された患者に由来する21試料、健常喫煙者に由来する16試料、健常非喫煙者に由来する10試料、および異常な肺CTスキャンを有する非癌性患者に由来する4試料。
【0110】
SELDIタンパク質プロファイリング
SELDI解析を行うため、CuSO4で前処理したIMAC3 ProteinChip(登録商標)を用いて、以前に記載されている通りに血清試料を処理した(Merchant, M., et al., Electrophoresis 21:1164-1177 (2000))。簡潔に説明すると、血清20μlを8M尿素、1% CHAPSで前処理し、4℃で10分間ボルテックスした。1 M尿素、0.125% CHAPS、およびPBSでさらに希釈した。次いで、希釈した試料をバイオプロセッサを用いてProteinChip(登録商標)に添加した。次に、血清試料をそれぞれ二つ組でアッセイした。ProteinChip(登録商標)を、SELDI ProteinChip(登録商標)システム(PBS-II、Ciphergen Biosystems, Inc.)を用いて解析した。ポジティブモードでの192ショットの蓄積により、スペクトルを収集した。タンパク質の質量は、精製ペプチド標準物質(Ciphergen Biosystems, Inc.)を用いて、外部から較正した。
機器の設定は、プールした血清標準物質を用いて最適化した。
【0111】
データ解析
データは、「正常」試料30(16名の健常喫煙者、10名の健常非喫煙者、および4名の異常な肺CTスキャンを有する非癌性患者を含む)および肺癌試料21からなる学習セットからなった。次いで、この学習セットを5重交差検証に供して、同様の分類率が維持されているかどうかを判定した。
【0112】
ピーク検出
Ciphergen ProteinChip(登録商標)ソフトウェア(バージョン3.2)を用いて質量範囲2 kDa〜100 kDaのスペクトルを解析し、全イオン電流を用いて標準化した。ピーク検出およびクラスタリングは、シグナル対ノイズ閾値3、ピーク閾値10%、および質量領域0.2%という値を用いて、CiphergenのBiomarker Wizardツールを使用して行った。標識ピークはすべて、SELDIからExcelスプレッドシートにエクスポートされた。
【0113】
分類と回帰木(CART)および統計解析
決定木分類アルゴリズムの構築は、51の試料(正常30および肺癌21)からなる学習データを用いて、実施例1に記載した通りに行った。このプロセスにより複数の分類木が作成されたが、さらなる試験のために最も性能のよい木を選択した。特異性および感度もまた、実施例1に記載した通りに算出した。
【0114】
データ解析
BioMarker Wizard解析によるデータをスプレッドシートにエクスポートし、各ピークの強度値を二つ組みの試料について平均した。この解析により、スペクトルにつき多数のピークが同定された。これらのうち、共通に見られる60のピークまたはクラスターを、IMAC3タンパク質プロファイリングから得た。これらのピークのうち27のピークが、肺癌血清と対照血清との間で有意に差次的な発現レベルを有することが認められた(これらのピークのうち20のピークを収載している図10を参照のこと)。
【0115】
CART解析
学習セットを用いて5重交差検証を行い、全60ピークから分類木を作成した。この種類の交差検証では、それぞれの木について試験するために、乱数を使用して学習セット内のデータを分割する。CART解析に基づき、8603におけるタンパク質ピークの過剰発現が見い出され、最も性能のよい分類木において第1スプリッターとして用いられた。図6は、「正常」血清(健常喫煙者、健常非喫煙者、および異常な肺CTスキャンを有する非癌性患者を含む)と比較した場合の肺癌血清におけるこのピークの過剰発現を示す代表的なゲル図である。図6はまた、8603ダルトンピークに関してプロットされた平均標準化強度値を示し、かつ「正常」血清試料における平均発現と比較して肺癌血清試料における平均発現がより高いことを示す。(正常非喫煙者および正常喫煙者と比較したこの8603 DaバイオマーカーのROCプロットを図8Aおよび8Bに示す。)図6から、8933ダルトンピークもまた「正常」血清と比較して肺癌血清において過剰発現され、一方、7766ダルトンピークは正常血清と比較して肺癌血清において低発現されることがさらに示される。図6に見られるように、ほとんどの場合において、異常なCTスキャンを有する群のピーク発現が肺癌群と最も密接に一致し、健常喫煙者および健常非喫煙者は類似したパターンを有した。図7A、7B、および7Dからまた、4748、7566、および4644 Daピークが「正常」対照と比較して肺癌血清において低発現されることが示され、図7Cから4301バイオマーカーが「正常」対照と比較して肺癌血清において過剰発現されることが示される。さらに、図8Cおよび8Dは、8674および4301 Daピークを含む、健常喫煙者および健常非喫煙者と比較して高いp値を有する他のピークのROCプロットを示し、これらはいずれも最も性能のよい分類木において使用した。
【0116】
全60ピークを用いて、決定木分類アルゴリズムを構築した。1つの試料分類アルゴリズムでは、3 kDa〜9 kDaの6つの質量を用いて、7つの末端ノードを生成した(図9)。アルゴリズムで最も識別能力のあるピークが同定されて、分類規則は極めて単純になった。
【0117】
最も精度の高い木は、学習セット中の正常血清試料の100%および肺癌血清試料の100%を正しく分類した(表9を参照のこと)。この分類木アルゴリズムを5重交差検証に供したが、的確な分類率が維持された。交差検証セットにおいて、「正常」試料の83.3%および肺癌試料の81.0%が正しく同定された(表2を参照のこと)。分類木の形態は、6つの主要なピーク(8602、3887、4644、8630、4301、および8674 Da)および7つの末端ノードからなった(図9を参照のこと)。
【0118】
7つの末端ノードによる分類結果の合計を、以下の表2において学習セットおよび交差検証セットについて示す。
【0119】
(表2)血清に基づく肺癌学習セットおよび交差検証セットの決定木分類
A. 学習セット
B. 交差検証
【0120】
また、頭頸部扁平上皮細胞癌(「HNSCC」)患者および健常喫煙者に由来する試料を、上記した図9の分類木を用いて試験した。7つの末端ノードによる分類結果の合計を、以下の表3において示す。
【0121】
(表3)HNSCCおよび健常喫煙者試料の決定木分類
【0122】
考察
SELDI/TOF-MS技法を用いて、本発明者らは驚くべきことに、迅速かつ再現性のある様式で、気管支洗浄液試料による肺癌の検出に関して86.89%の特異性および84.62%の感度、ならびに血清試料による肺癌の検出に関して83.3%の特異性および81.0%の感度を達成した。肺癌はほとんどの場合喫煙に関連しているが、前記の実施例において使用した対照気管支洗浄試料および血清試料の多くはこの危険因子をもたない正常個体から採取した。図6〜8に見られるように、健常喫煙者のタンパク質発現パターンは、非喫煙者のパターンよりも肺癌患者のパターンに類似していた。意味深いことに、正常から癌への進行は多巣性であり不均一であることから、健常喫煙者と肺癌患者との差は、正常健常対照と肺癌患者との差よりも小さいと考えられた。このことから、いくらかの「健常」喫煙者は、明白な臨床的徴候をもたずに肺癌を発症している途中であろうことが示唆される。
【0123】
多くのタンパク質ピークは、対照試料と比較して肺癌において高い統計的有意性で差次的に発現されることが認められた(図10)。これらの有意なピークのすべてが分類木アルゴリズムにおいて用いられたわけではないものの、本発明が差次的に発現されるマーカーの使用を意図することに注目すべきである。予測材料として機能し得る単一の変数のみを求める統計的手段とは異なり、CART解析では変数の組み合わせを調べる。単一のタンパク質ピークに関して群の平均差を試験した場合に、有意なp値が達成され得る。分類アルゴリズムでは、最も優れた分類を提供するピーク発現の組み合わせを求めて、多くの異なる変数を一度に試験することができる。さらに、群間で試験した場合に有意なp値をもたないピークも、実際には分類アルゴリズムと関連し得る。例えば、図4に示す気管支洗浄液についての最も性能のよい分類木で用いられる2つのピーク(3506および4571 Da)は、2つの洗浄液群の間では個々に差次的に発現されなかった。しかしこれらは、3820 Daの有意なピークによって階層化された群のサブセットを描写するための分類木に対しては有意であった。肺癌群と非癌群との識別に関して最大の感度/特異性をもたらす組み合わせでは、いくつかの異なる質量のパターンが用いられた。これらの質量のうち、3820 Daピークは肺癌において低発現するものであり、SELDI技術がどのように肺癌の新規生物学的マーカーの発見に役立ち得るか、およびどのようにタンパク質発現パターンの相違の解析を提供し得るかの一例である。
【0124】
本明細書に記載の現段階で最も好ましい肺癌分類システムの使用は、2つの異なる質量分類のタンパク質「フィンガープリント」パターンに依存する。気管支洗浄試料に関する第1分類は、4つの質量:約3820、約3506、約4571、および約6933ダルトンを有する。血清試料に関する第2分類は、6つの質量:約8603、約3887、約4644、約8630、約4301、および約8674ダルトンを有する。これらの質量は、再現性よくかつ確実に検出されることが認められた。これらのバイオマーカーに関する質量値および発現レベル(すなわち、各ピークの値)により、正確な分類または診断が可能になった。重要なことには、差次的診断を目的とする場合に、これらのバイオマーカーの同一性を知る必要はない。
【0125】
重要な診断ツールであることに加えて、SELDIタンパク質プロファイルはまた、特定の癌治療が奏功しているか否かを決定するため、および患者を持続性または再発性疾患に関してモニターし得るために、肺癌の治療前、治療中、および治療後に利用することができる。
【0126】
SELDIタンパク質フィンガープリント法は、伝統的な癌診断アプローチからのパラダイムシフトを示す。潜在的に新規なタンパク質バイオマーカーの発見は、SELDI/TOF-MSにより容易になる。特定の理論によって制約されることを意図しないが、個々のタンパク質変化よりもむしろタンパク質パターンの方が、正常健常個体と肺癌を有するかまたは肺癌を発症する可能性のある個体を識別するのに、より重要であるようである。SELDI/TOF-MS技法と強力な人工知能分類アルゴリズムを併用することで、本研究において達成された高い感度および特異性により、健常対照と肺癌患者を識別する血清中のタンパク質パターンが同定された。この技法により、蓄積が容易であり、かつ臨床上での使用に直ちに結びつくはずのデータが提供される。
【0127】
本発明を図および上記の記載において詳細に説明し記載したが、これは特徴を説明するものであって制限するものでないと考えるべきであり、好ましい態様のみを示し説明したこと、ならびに本発明の精神の範囲内に入るすべての変更および修正が保護されるよう所望されることを理解すべきである。さらに、本明細書に引用した参考文献および特許はすべて当技術分野における技術のレベルを示し、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】図1A〜1Cは、肺癌患者の気管支洗浄液(「BALF」)の代表的なSELDIスペクトルを示す。図1Aは、2000 Da〜10000 DaのピークのSELDIスペクトルを示し;図1Bは、10000 Da〜20000 Daのピークを示し;図1Cは、20000 Da〜100000 Daのピークのスペクトルを示す。
【図2】図2Aは、正常対照の洗浄試料と比較した、肺癌患者の気管支洗浄試料の代表的なSELDIゲル図を示す。2つの「ボックス」は、対照試料と比較して肺癌試料において低発現している、約3820ダルトンおよび約4069ダルトンの平均質量を有するピークを示す。図2Bは、正常対照の洗浄液と比較した、肺癌患者の気管支洗浄液におけるこれらのタンパク質の発現レベルを示す。「‐」は平均標準化強度を示す。
【図3】図3Aは、20,000〜60,000 m/zにおける、正常対照の試料と比較した、肺癌患者の気管支洗浄試料の代表的なSELDIスペクトルを示す。「ボックス」は、正常試料と比較して肺癌試料において過剰発現している、約30132 Daの平均質量を有するピークを示す。図3Bは、正常対照の試料と比較した、肺癌患者の気管支洗浄試料における約30132 Daタンパク質の発現レベルを示す。「‐」は平均標準化強度を示し、「■」および「●」は、それぞれ個々の対照(正常または非関与)および肺癌患者の値を示す。
【図4】実施例1に記載した、気管支洗浄液試料に基づく決定木分類システムの略図を示す。太字の四角は一次ノードであり、太字でない四角は末端ノードを示す。ルートノード中の質量値は≦強度値を伴う。
【図5】図5A〜5Cは、肺癌患者の血清の代表的なSELDIスペクトルを示す。図5Aは、2000〜10000 Daのピークを示し;図5Bは、10000〜20000 Daのピークを示し;図5Cは、20000 Da〜100000 Daのピークを示す。
【図6】約7,500〜10,000 m/zにおける、健常喫煙者(「正常喫煙者」)、健常非喫煙者(「正常非喫煙者」)、および異常なCTを有する非癌患者(「非癌異常CT」)の血清と比較した、肺癌患者(「肺癌」)の血清の代表的なSELDIスペクトル(A)およびゲル図(B)を示す。「ボックス」は、正常試料と比較して肺癌試料において差次的に発現している、約7766、8603、および8933ダルトンの平均質量を有するピークを示す。具体的には、非癌血清と比較して、約7766ダルトンバイオマーカーは肺癌血清において低発現しており、約8603および8933ダルトンバイオマーカーは肺癌血清に置いて過剰発現していることが示される。図6Cは、健常喫煙者(「喫煙者」)、健常非喫煙者(「非喫煙者」)、および異常なCTを有する非癌患者(「異常CT」)の血清試料と比較した、肺癌患者(「肺癌」)の血清試料における約7766、8603、および8933 Daタンパク質の発現レベルを示す。「‐」は平均標準化強度を示し、「■」、「●」、「▲」、および「◆」、は、それぞれ個々の肺癌、異常CT、正常非喫煙者、および正常喫煙者患者の値を示す。
【図7】図7A〜7Dは、健常喫煙者(「正常喫煙者」)、健常非喫煙者(「正常非喫煙者」)、および異常なCTを有する非癌患者(「非癌異常CT」)の血清と比較した、肺癌患者(「肺癌」)の血清における、それぞれ約4748、7566、4301、および4644ダルトンタンパク質の発現レベルを示す。「‐」は平均標準化強度を示し、「■」、「●」、「▲」、および「◆」は、それぞれ個々の肺癌、異常CT、正常非喫煙者、および正常喫煙者患者の値を示す。
【図8】図8Aおよび8Bは、正常非喫煙者(A)および正常喫煙者(B)と比較して最も高いp値を有する、肺癌血清による約8603 Daにおけるピークの1つの受信者動作特性(「ROC」)プロットを示す。このピークは、肺癌患者において過剰発現される。図8Cは、正常非喫煙者の血清と比較した肺癌血清の約8674 DaピークのROCプロットを示し、図8Dは、正常喫煙者の血清と比較した肺癌血清の約4301 DaピークのROCプロットを示す。
【図9】実施例2で利用した、血清に基づく決定木分類システムの略図を示す。太字の四角は一次ノードであり、太字でない四角は末端ノードを示す。ルートノード中の質量値は≦強度値を伴う。「dis」は罹患患者を意味し;「nondis」は非罹患患者を意味する。
【図10】正常対照と比較して、肺癌患者の血清および気管支洗浄(「BAL」)試料において差次的に発現される種々のタンパク質ピークを示す。
【図11】本発明のコンピュータ実行態様に従ってコンピュータプロセスを実行するための、中央演算処理装置の一例を示す。
【図12】図11の中央演算処理装置の内部ハードウェアのブロック図の一例を示す。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【背景技術】
【0001】
連邦政府支援の研究開発の下でなされた発明の権利に関する説明
本発明は、米国立衛生研究所/米国立癌研究所による助成金番号第CA85067号の下、政府の支援を受けてなされたものである。政府は、本発明において一定の権利を有する。
【0002】
発明の背景
肺癌は、世界で最も頻度の高い癌である。肺癌の典型的な診断法は、X線と喀痰細胞診を組み合わせたものである。残念ながら、患者が病徴について病院で診察を受けるまでには、癌は通常は治療不可能な状態まで進行している。そのため、癌が臨床的に明らかになる前の、および癌がまだ局在化し、治療し得る状態にある間の、腫瘍マーカーの早期発見に研究の重点が置かれてきた。
【0003】
肺癌プロテオームに関連する抗原の同定には、特に関心が持たれてきた。これらの抗原は肺癌のスクリーニング、診断、臨床管理、および潜在的治療において使用されている。例えば、癌胎児抗原(CEA)は、肺癌を含むいくつかの癌の腫瘍マーカーとして使用されている。(Nutini, et al. 1990. 「Serum NSE, CEA, CT, CA 15-3 levels in human lung cancer,」 Int J Biol Markers 5:198-202)。扁平上皮細胞癌抗原(SCC)は、既に確立された別の血清マーカーである。(Margolis, et al. 1994. 「Serum tumor markers in non-small cell lung cancer,」 Cancer 73:605-609.)。肺癌に関する他の血清抗原としては、モノクローナル抗体(MAb)5E8、5C7、および1F10によって認識される抗原が挙げられ、その組み合わせによって、肺癌に罹患した患者と罹患していない患者が識別される。(Schepart, et al. 1988. 「Monoclonal antibody-mediated detection of lung cancer antigens in serum,」 Am Rev Respir Dis 138:1434-8)。血清CA 125は、最初は卵巣癌関連抗原として記述されていたが、肺癌の予後因子としての使用について研究が進められている。(Diez, et al. 1994. 「Prognostic significance of serum CA 125 antigen assay in patients with non-small cell lung cancer,」 Cancer 73:136876)。肺癌の多重バイオマーカーアッセイにおける利用について研究が行われている他の腫瘍マーカーとしては、糖鎖抗原CA19-9、ニューロン特異的エノラーゼ(NSE)、組織ポリペプチド抗原(TPA)、αフェトプロテイン(AFP)、HCG βサブユニット、および LDHが挙げられる。(Mizushima, et al. 1990. 「Clinical significance of the number of positive tumor markers in assisting the diagnosis of lung cancer with multiple tumor marker assay,」 Oncology 47:43-48;Lombardi, et al. 1990. 「Clinical significance of a multiple biomarker assay in patients with lung cancer,」 Chest 97:639-644;およびBuccheri, et al. 1986. 「Clinical value of a multiple biomarker assay in patients with bronchogenic carcinoma,」Cancer 57:2389-2396)。
【0004】
肺癌に関連した抗原に対するモノクローナル抗体が作製され、診断および/または予後ツールとしての可能性について試験されてきた。例えば、肺癌に対するモノクローナル抗体は、最初、扁平上皮癌、腺癌、および大細胞癌を含む非小細胞肺癌(NSCLC)と小細胞肺癌(SCLC)を識別するために開発された。(Mulshine, et al. 1983. 「Monoclonal antibodies that distinguish non-small-cell from small-cell lung cancer,」 J Immunol 121:497-502)。その他の抗体もまた、肺癌の進行を予測するための喀痰試料の免疫細胞化学染色物として開発されている。(Tockman, et al. 1988. 「Sensitive and specific monoclonal antibody recognition of human lung cancer antigen on preserved sputum cells: a new approach to early lung cancer detection,」 J Clin Oncol 6:1685-1693)。米国特許第4,816,402号には、気管支肺癌および腺癌の可能性を決定するためのマウスハイブリドーマモノクローナル抗体が開示されている。肺癌の免疫組織化学的研究に利用されるいくつかのモノクローナル抗体としては、MCA 44-3A6、L45、L20、SLC454、L6、およびYH206が挙げられる。(Radosevich, et al. 1985. 「Monoclonal antibody 44-3A6 as a probe for a novel antigen found on human lung carcinomas with glandular differentiation,」 Cancer Res 45:5808-5812)。
【0005】
米国特許第5,589,579号および第5,773,579号においては、非小細胞肺癌に特異的な肺癌マーカー抗原が同定され、LCGAと命名された(HCAVIIIおよびHCAXIIとしても知られる)。この抗原は、非小細胞肺癌を検出する方法において、および治療組成物用の抗体およびプローブを作製する可能性に関して有用であることが見い出された。
【0006】
肺癌抗原の単離、およびそれに続くこれら抗原に対するMAbの作製の例が数多くあるにもかかわらず、臨床業務を変更するに至ったものは未だ出現していない。(Mulshine, et al., 「Applications of monoclonal antibodies in the treatment of solid tumors,」 In: Biologic Therapy of Cancer. Edited by V. T. Devita, S. Hellman, and S. A. Rosenberg. Philadelphia: J B Lippincott, 1991, pp. 563-588)。これまでのところ、開発された免疫測定法は、早期発見の必要性を満たすことができていない。
【0007】
さらに、プロテオミクス研究も同様にこの必要性を満たしていない。プロテオミクス研究は伝統的に、健常(対照)群と疾患群との間の組織試料および体液試料におけるタンパク質発現差を検出するための、二次元ゲル電気泳動を伴う(Srinivas, P.R., et al., Clin Chem. 47:1901-1911 (2001);Adam, B.L., et al., Proteomics 1:1264-1270 (2001))。二次元ポリアクリルアミドゲル電気泳動(2D-PAGE)は、タンパク質発現の差を分離および検出するためのプロテオームの探索における古典的アプローチであるが、厄介で手間がかかり、再現性の問題がある点で限界があり、よって臨床設定に容易に適用することができない。
【0008】
概して、いくつかの潜在的腫瘍マーカーが同定され広く研究されているにもかかわらず、いずれも肺癌の診断マーカーまたはスクリーニングツールとして臨床上有用であることは見い出されていない。おそらくは、肺癌細胞で起こる遺伝子変化および分子変化の複雑性から考えて、これらの複雑な変化の発現パターンは、スクリーニング、診断、および予後において、個々の分子変化自体よりも重要な情報を保持している可能性があると考えられる。
【0009】
プロテオミクスにおける近年の技術的進歩により、いくつかの癌を検出するための診断試験の開発が可能となった。例えば、1つのそのような技術として、ProteinChip(登録商標)表面増強レーザー脱離/イオン化飛行時間型質量分析法(SELDI-TOF-MS)が挙げられる(Kuwata, H., et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 245:764-773 (1998);Merchant, M. et al., Electrophoresis 21:1164-1177 (2000))。このシステムでは、表面増強レーザー脱離/イオン化飛行時間型(SELDI-TOF)質量分析法を使用して、タンパク質チップアレイに結合しているタンパク質を検出する。SELDIシステムは、タンパク質およびペプチドの複雑な混合物を解析する極めて感度がよく、かつ迅速な方法である。この技術の適用により、前立腺癌、乳癌、卵巣癌、膀胱癌、および頭頸部癌の早期発見の大きな可能性が示される(Li, J., et al., Clin. Chem. 48:1296-1304 (2002);Adam, B., et al., Cancer Res. 62:3609-3614 (2002);Cazares, L.H., et al., Clin. Cancer Res. 8:2541-2552 (2002);Petricoin, E.F., et al., Lancet 359:572-577 (2002);Petricoin, E.F. et al., J. Natl. Cancer Inst. 94:1576-1578 (2002);Vlahou, A., et al., Amer. J. Pathology 158:1491-1502 (2001);Wadsworth, J.T., et al., Arch. Otolaryngol. Head Neck Surg. 130:98-104 (2004))。例えば、米国仮特許出願第60/496,682号は、頭頸部扁平上皮細胞癌(「HNSCC」)患者の調査ツールとしてのSELDI ProteinChip(登録商標)技術の使用について記載している。この出願では、HNSCCを診断するためのHNSCCタンパク質フィンガープリントを開発するために、HNSCC患者由来血清をいかにして正常対照と比較するかについて記載している。しかし今日まで、SELDIの使用は、肺癌検出用のタンパク質バイオマーカーを同定するためには用いられていなかった。
【0010】
癌と非癌を識別するタンパク質プロファイルまたはパターンを同定する取り組みを継続することで、肺癌の早期発見および肺癌の診断試験の開発が可能になると考えられる。したがって、比較的迅速かつ安価に実施することができ、さらに臨床上有用である、肺癌の診断のための方法および組成物が必要である。本発明は、この必要性およびその他の必要性に取り組むものである。
【発明の開示】
【0011】
発明の概要
本発明は、肺癌患者の試料と対照対象の試料に差次的に存在する新規タンパク質マーカーを初めて提供する。本発明はまた、これらの新規マーカーを検出することによる、肺癌診断の補助として使用され得る、感度の高い方法およびキットを提供する。患者の試料において、これらのマーカーを単独でまたは組み合わせて測定することで、肺癌の可能性があるという診断または陰性診断(例えば、正常または無病状態)と相関し得る情報が提供される。マーカーはすべて、分子量によって特徴づけられる。マーカーは、例えば質量分析法と組み合わせたクロマトグラフィー分離により、または伝統的な免疫測定法により、試料中の他のタンパク質と分離され得る。好ましい態様において、分離方法は、質量分析プローブの表面がマーカーと結合する吸着剤を含む、表面増強レーザー脱離/イオン化(「SELDI」)質量分析法を伴う。
【0012】
本発明の1つの形態において、診断を支援するまたはさもなくば診断を行う方法は、対象に由来する試験試料中の少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーを検出する段階を含む。タンパク質バイオマーカーは、
からなる群より選択される分子量を有する。本方法は、検出を肺癌の可能性があるという診断または陰性診断と相関づける段階をさらに含む。
【0013】
1つの態様において、相関づけは、試料中の1つもしくは複数のマーカーの量および/または対照中の上記と同じ1つもしくは複数のマーカーの検出頻度を考慮に入れる。
【0014】
別の態様においては、1つまたは複数のマーカーを検出するのに、気相イオン分光法が用いられる。例えば、レーザー脱離/イオン化質量分析法を用いることができる。
【0015】
別の態様において、マーカーを検出するために用いられるレーザー脱離/イオン化質量分析法は、以下の段階を含む:(a) そこに付着した吸着剤を含む基材を提供する段階;(b) 試料を吸着剤と接触させる段階;ならびに(c) 質量分析計により1つまたは複数のマーカーを脱離およびイオン化する段階。任意の適切な吸着剤を用いて、1つまたは複数のマーカーと結合させることができる。例えば、基材上の吸着剤は、陽イオン性吸着剤、抗体吸着剤などであってよい。
【0016】
別の態様では、1つまたは複数のマーカーを検出するのに免疫測定法が用いられ得る。
【0017】
本発明の特定の形態では、対象に由来する試験試料中のマーカーは以下の群において検出され得り、またこのマーカーは以下の分子量を有し得る:約3820、3506、4571、および6933ダルトン、または約8603、3887、4644、8630、4301、および8674ダルトン。
【0018】
本発明の別の形態においては、患者における肺癌治療の有効性をモニターする方法を提供する。本方法は、肺癌治療を受けている患者から生物試料を採取する段階、
の分子量を有するタンパク質バイオマーカーからなる群より選択される、試料中の少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーの量を検出する段階、少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーの量と既知の標準とを比較する段階、および肺癌治療の有効性を判定する段階を含む。既知の標準は、健常対照に由来する生物試料または肺癌患者から肺癌治療を行う前に採取された生物試料であってよい。
【0019】
本発明では、本明細書に記載のバイオマーカーの少なくとも1つが検出され得る。バイオマーカーのすべてを含むバイオマーカーのうちの1つまたは複数が検出され、次いで解析され得ることが理解されるべきであり、このことは本明細書中に記載されている。さらに、本発明の1つもしくは複数のバイオマーカーが検出されないこと、または臨床もしくは臨床前肺癌の非存在と相関し得るレベルもしくは量でそれらが検出されることは、臨床または臨床前肺癌の非存在を診断する手段として有用でありかつ望ましい場合があること、およびこのことが本発明の意図する局面を形成することが理解されるべきである。
【0020】
本発明のさらに別の局面では、本明細書に記載するバイオマーカーを検出するために利用できる、さもなくば肺癌を診断する、もしくはさもなくば肺癌の診断を支援するために使用できるキットを提供する。本発明の1つの形態において、キットは、
からなる群より選択される分子量を有する少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーを保持し得る、そこに付着した吸着剤を含む基材;および試験試料を吸着剤と接触させ、吸着剤によって保持されたバイオマーカーを検出することによって、タンパク質バイオマーカーを検出するための説明書を含み得る。
【0021】
本発明のさらに別の局面では、キットは、
からなる群より選択される分子量を有する少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーを保持し得る、そこに付着した吸着剤を含む基材;および試験試料を吸着剤と接触させ、吸着剤によって保持されたバイオマーカーを検出することによって、タンパク質バイオマーカーを検出するための説明書を含み得る。
【0022】
本発明のさらに別の局面では、複数の分類子を使用して肺癌の可能性があるという診断または陰性診断を行う方法を提供する。本発明の1つの形態では、方法は以下の段階を含む:a) 正常対象および肺癌と診断された対象に由来する複数の試料から質量スペクトルを得る段階;b) 質量スペクトルの少なくとも一部に決定木解析を適用して、ピーク強度値および関連閾値を含む複数の加重ベース分類子を得る段階;およびc) 複数の加重ベース分類子の直線的組み合わせに基づき、肺癌の可能性があるという診断または陰性診断を行う段階。本発明の特定の形態において、本方法は、ピーク強度値および関連閾値を線形結合で使用し、肺癌の可能性があるという診断または陰性診断を行う段階を含み得る。
【0023】
本発明のさらなる目的は、複数の分類子を開発するおよび/または使用することで、
からなる群より選択される分子量を有する少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーを用いて肺癌の可能性があるという診断または陰性診断を行うためのコンピュータ実行プロセスを実行するようコンピュータに命令するためのコンピュータ指示を格納しているコンピュータプログラム媒体を提供することにある。好ましくは、タンパク質バイオマーカーは、約3820±19、3506±17、4571±23、および6933±34ダルトンタンパク質バイオマーカー、または約8603±43、3887±19、4644±23、8630±43、4301±21、および8674±43タンパク質バイオマーカーの分子量を有する群より選択される。
【0024】
好ましい態様の説明
本発明の原理の理解を進める目的で、好ましい態様について参照を作成し、特定の用語を用いてこれを説明する。上記にかかわらず、これに関して本発明の特許請求の範囲に制限を受けないことを意図し、本明細書に説明するような本発明の変更およびさらなる修正、ならびに本発明の原理のさらなる適用を、本発明の関連する当業者が通常考えるように意図することは理解される。
【0025】
本発明は、肺癌の診断を支援する方法、および肺癌を診断する方法に関する。肺癌の診断を支援するため、および/もしくは肺癌を診断するため、または陰性診断を行うために利用され得るタンパク質バイオマーカーが同定された。そのようなタンパク質バイオマーカーもまた本明細書に提供する。
【0026】
本発明の方法は、肺癌を有する個体と正常個体とを効率的に識別する。本明細書において定義されるように、正常個体とは、肺癌に関して陰性診断された個体である。すなわち、正常個体は肺癌を有さない。本方法は、対象に由来する試験試料中のタンパク質バイオマーカーを検出する段階を含む。例えば、肺癌の可能性があるという診断において役立つか、または陰性診断において役立つ、
の分子量を有するタンパク質バイオマーカーが同定された。本発明では、タンパク質バイオマーカーの少なくとも1つが検出される。好ましくは、2個もしくはそれ以上、3個もしくはそれ以上、4個もしくはそれ以上、5個もしくはそれ以上、10個もしくはそれ以上、15個もしくはそれ以上、20個もしくはそれ以上、30個もしくはそれ以上、または60個すべてのタンパク質バイオマーカーが検出され、このようなバイオマーカーの存在または非存在が肺癌の診断と相関づけられる。本明細書で使用する「検出する」という用語は、タンパク質バイオマーカーの存在、非存在、量、またはこれらの組み合わせを判定することを含む。バイオマーカーの量は、例えば質量分析によって同定されるピーク強度により、またはバイオマーカーの濃度により表され得る。
【0027】
本発明の特定の形態において、選択されたタンパク質バイオマーカー群は肺癌の診断において有用である。例えば以下のマーカー群は、特定の診断を行うのに、またはさもなくば特定の診断を支援するのに有用である:(1) 約3820±19ダルトンバイオマーカー;(2) 約3820±19および3506±17ダルトンバイオマーカー;(3) 約3820±19、3506±17、および4571±23ダルトンバイオマーカー;(4) 約3820±19、3506±17、4571±23、および6933±34ダルトンバイオマーカー; (5) 約3820±19および6933±34ダルトンバイオマーカー; (6) 約8603±43ダルトンバイオマーカー;(7) 約8603±43および3887±19ダルトンバイオマーカー;(8) 約8603±43、3887±19、および4644±23ダルトンバイオマーカー;(9) 約8603±43、3887±19、4644±23、および8630±43ダルトンバイオマーカー;(10) 約8603±43、3887±19、4644±23、8630±43、および4301±21ダルトンバイオマーカー;ならびに(11) 約8603±43、3887±19、4644±23、8630±43、4301±21、および8674±43ダルトンバイオマーカー。好ましくは、約3820±19ダルトンバイオマーカー、約8603±43ダルトンバイオマーカー、約3820±19、3506±17、4571±23、および6933±34ダルトンバイオマーカーの組み合わせ、または約8603±43、3887±19、4644±23、8630±43、4301±21、および8674±43ダルトンバイオマーカーの組み合わせを使用する。
【0028】
本明細書で使用する「タンパク質バイオマーカー」は、肺癌試料を正常試料と識別するのに有用である、ペプチドまたはタンパク質断片などの任意の分子と定義する。バイオマーカーは典型的に、正常患者と比較して肺癌患者において差次的に存在するかまたは発現される。しかし、いくつかのバイオマーカーは、2つのクラス間で差次的に発現されなくとも、分類木において群のサブセットを線引きするのに有意である限り、本発明のバイオマーカーとして分類され得る。
【0029】
選択されたバイオマーカーの正常個体に対する差次的発現(過剰発現または低発現など)を、肺癌と相関づけることができる。差次的に発現されるとは、本明細書において、タンパク質バイオマーカーが別の疾患状態と比較して1つの疾患状態において高レベルもしくは低レベルで見い出され得ること、または1つもしくは複数の疾患状態において高頻度(例えば、強度)で見い出され得ることを意味する。例えば、約3820±19および4069±20ダルトンバイオマーカーの、対照患者に対する少なくとも2倍、3倍、4倍、好ましくは5倍の低発現は、肺癌の可能性があるという診断と相関づけられ得る。さらに、約7766±38、4748±25、7566±38、および4644±23ダルトンバイオマーカーの対照患者に対する低発現も、肺癌の可能性があるという診断と相関づけられ得る。加えて、約30132±150、8603±43、8933±45、および4301±21ダルトンバイオマーカーの対照患者に対する過剰発現は、肺癌の可能性があるという診断と相関づけられ得る。さらに、
バイオマーカーは、正常患者と比較して肺癌患者において差次的に発現されることが認められた。特に、例えば、約30132、8603、8933、および4301ダルトンバイオマーカーは肺癌患者において過剰発現されることが認められ、約3820、4069、7766、4748、7566、および4644ダルトンバイオマーカーは肺癌患者において低発現されることが認められた。
【0030】
さらに、分類木においてバイオマーカーの分類を組み合わせることは、肺癌陽性患者および肺癌陰性患者を同定するのに有用であることが認めらた。分類木は、本発明のタンパク質バイオマーカーの1つまたは複数を閾値と関連して使用することで作成され得る。閾値は、タンパク質バイオマーカーおよび分類木におけるその使用に基づき得る。閾値は、バイオマーカーの標準化されたピーク強度を表す。実施例1および2においてさらに十分に説明するように、これらの閾値は、バイオマーカーの濃度と関連する特定のバイオマーカーの標準化されたピーク強度を表し得る。標準化過程は、標準化因子として全イオン電流を用いる段階を含み得る。または標準化過程は、内部対照または外部対照のピーク強度に対するピーク強度を報告する段階を含み得る。例えば、既知タンパク質を本システムに加えることができる。さらに、試験対象によって産生されるアルブミンなどの既知産物を、内部標準物質または対照としてもよい。図4および9において同定された閾値は、それぞれ実施例1および2で用いられた対照に関するものであることが理解される。しかし、当業者が理解するように、この閾値は、内部対照または外部対照に基づいて異なり得る。
【0031】
例えば、図4は、肺癌患者と正常患者を識別するために用いられ得る適切な分類木を示す。1つの群において、約3820ダルトンバイオマーカーの0.322以下の閾値での存在、かつ約3506ダルトンバイオマーカーの0.162以下の閾値での存在は、正常診断と相関づけられ得る。別の群において、約3820ダルトンバイオマーカーの0.322以下のピーク強度閾値での存在、約3506ダルトンバイオマーカーの0.162を超えるピーク強度値での存在、約4571ダルトンバイオマーカーの0.642以下のピーク強度値での存在、かつ約6933ダルトンバイオマーカーの0.066以下の閾値での存在は、正常診断と相関づけられ得る。別の群において、約3820ダルトンバイオマーカーの0.322以下のピーク強度閾値での存在、約3506ダルトンバイオマーカーの0.162を超えるピーク強度値での存在、約4571ダルトンバイオマーカーの0.642以下のピーク強度値での存在、かつ約6933ダルトンバイオマーカーの0.066を超える閾値での存在は、肺癌の可能性があるという診断と相関づけられ得る。別の群において、約3820ダルトンバイオマーカーの0.322以下のピーク強度閾値での存在、約3506ダルトンバイオマーカーの0.162を超えるピーク強度値での存在、かつ約4571ダルトンバイオマーカーの0.642を超えるピーク強度値での存在は、正常診断と相関づけられ得る。別の群において、約3820ダルトンバイオマーカーの0.322を超えるピーク強度閾値での存在、かつ約6933ダルトンバイオマーカーの約1.618以下のピーク強度での存在は、正常診断と相関づけられ得る。最後に、約3820ダルトンバイオマーカーの0.322を超えるピーク強度閾値での存在、かつ約6933ダルトンバイオマーカーの1.618を超えるピーク強度での存在は、正常診断または肺癌診断のいずれかと関連づけられ得る。好ましくは、これらの分類の組み合わせが、肺癌を診断するための単一の分類木を形成する。しかし、本発明は、肺癌陽性患者および肺癌陰性患者の診断または同定を支援するために、これらの個々の分類を単独でまたは他の分類と組み合わせて使用することも意図する。したがって、そのような分類の1つまたは複数、好ましくは2つまたはそれ以上、より好ましくはこれらの分類のすべてが診断に役立つ。
【0032】
図9は、同様に肺癌患者と正常患者を識別するために用いられ得るもう1つの適切な分類木を示す。1つの群において、約3887ダルトンバイオマーカーの値×0.734−約8602ダルトンバイオマーカーの値×0.679が0.815以下の閾値であり、約3887ダルトンバイオマーカーの値×0.667−約4644ダルトンバイオマーカーの値×0.335+約8630ダルトンバイオマーカーの値×0.666が3.30以下の閾値であることは、肺癌の可能性があるという診断と相関づけられ得る。別の群において、約3887ダルトンバイオマーカーの値×0.734−8602ダルトンバイオマーカーの値×0.679が0.815以下の閾値であり、約3887ダルトンバイオマーカーの値×0.667−4644ダルトンバイオマーカーの値×0.335+約8630ダルトンバイオマーカーの値×0.666が3.30以上の閾値であって、かつ約3887ダルトンバイオマーカーが5.975という値以下である場合には正常診断と相関づけられ得り、一方5.975を超える値である場合には肺癌診断または正常診断のいずれかと相関づけられ得る。別の群において、約3887ダルトンバイオマーカーの値×0.734−約8602ダルトンバイオマーカーの値×0.679が0.815を超える閾値であり、かつ約4301ダルトンバイオマーカーの値×-0.905−約8630バイオマーカーの値×0.426が-1.119の閾値以下であることは、正常診断と相関づけられ得る。別の群において、約3887ダルトンバイオマーカーの値×0.734−約8602ダルトンバイオマーカーの値×0.679が0.815を超える閾値であり、かつ約4301ダルトンバイオマーカーの値×-0.905−約8630バイオマーカーの値×0.426が-1.119の閾値を超え、さらに8674または約8674のバイオマーカーの値が0.531以下である場合には正常診断と相関づけられ得り、一方、値が0.531を超える場合には肺癌の可能性があるという診断と相関づけられ得る。
【0033】
本発明の別の形態では、肺癌患者の生物試料の薬剤応答者状態が決定され得る。薬剤応答者状態とは、薬剤の使用に応答した生物試料の状態である。生物学的状態にはまた、初期状態、中期状態、および終期状態が含まれ得る。例えば、異なる生物学的状態には、肺癌などの疾患の初期状態、中期状態、および終期状態が含まれ得る。
【0034】
本発明のこの局面との関連では、異なる生物学的状態は、それぞれ異なる薬剤または薬剤種に関連して治療を受けた肺癌患者に由来する試料に相当し得る。1つの実例においては、効果が既知である薬剤で治療した肺癌患者に由来する試料の質量スペクトルを作成する。既知効果の薬剤に関連した質量スペクトルは、既知効果の薬剤と同じ種類の薬剤を表し得る。例えば、既知効果の薬剤に関連した質量スペクトルは、既知効果の薬剤と同じもしくは類似した特徴、構造、または同じ基本的効果を有する薬剤を表し得る。例えば、多くの異なる鎮痛化合物はすべて、痛みの軽減を人にもたらし得る。既知効果の薬剤および同じかまたは類似した種類の薬剤はすべて、人において同じ生化学的経路を制御して、人に同じ効果をもたらす可能性がある。生物学的経路(例えば、タンパク質の上方制御または下方制御)の特徴は、質量スペクトル中に反映され得る。
【0035】
データ解析は、検出されたバイオマーカーのシグナル強度(例えば、ピークの高さ、ピークの面積)を決定する段階、および「外れ値」(所定の統計的分布から外れたデータ)を除去する段階を含み得る。例えば、ある参照に対する各ピークの高さを算出する過程によって、観察されたピークを標準化することができる。例えば、参照は装置および化学物質(例えばエネルギー吸収分子)によって生じるバックグラウンドノイズであってよく、これを目盛りのゼロと設定する。次にシグナル強度を各バイオマーカーについて検出することができ、または他の物質を所望の目盛りの相対強度(例えば100)の形態で表すことができる。または、標準物質によるピークを参照として用いて、検出される各バイオマーカーまたは他のマーカーで観察されるシグナルの相対強度を計算できるように、試料内に標準物質を含めてもよい。
【0036】
本方法は、少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーを検出する段階を含む。しかし、任意の数のバイオマーカーを検出してよい。解析においては、少なくとも2つのタンパク質バイオマーカーを検出することが好ましい。しかし、本明細書に記載のバイオマーカーの3個、4個、または全バイオマーカーを含めたそれ以上のバイオマーカーを本診断において利用できることが理解される。したがって、1つまたは複数のマーカーを検出できるばかりでなく、1〜60個、好ましくは2〜60個、2〜20個、2〜10個のバイオマーカー、2〜5個のバイオマーカー、またはいくつかの他の組み合わせを検出して、本明細書に記載するように解析することができる。さらに、本明細書に記載していない他のタンパク質バイオマーカーを本明細書に開示するタンパク質バイオマーカーのいずれかと組み合わせて、肺癌の診断に役立てることも可能である。さらに、上記のタンパク質バイオマーカーの任意の組み合わせを、本発明に従って検出することができる。
【0037】
試験試料中の本明細書に記載するタンパク質バイオマーカーの検出は、様々な方法で行われ得る。本発明の1つの形態において、バイオマーカーを検出する方法は、気相イオン分光計を利用して気相イオン分光法によりバイオマーカーを検出する段階を含む。本方法は、本明細書に記載のタンパク質バイオマーカーなどのバイオマーカーを有する試験試料を、バイオマーカーと吸着剤との結合を可能にする条件下で、その上に吸着剤を含む基材と接触させる段階、および気相イオン分光法により吸着剤に結合したバイオマーカーを検出する段階を含み得る。
【0038】
多種多様な吸着剤を用いることができる。吸着剤には、疎水基、親水基、陽イオン基、陰イオン基、金属イオンキレート基、もしくは抗原性バイオマーカーに特異的に結合する抗体、またはそれらのいくつかの組み合わせ(「混合型」吸収剤など)が含まれ得る。疎水基を含む例示的な吸着剤には、C1-C18脂肪族炭化水素などの脂肪族炭化水素を有する基質、およびフェニル基を含む芳香族炭化水素機能基を有する基質が含まれる。親水基を含む例示的な吸着剤には、酸化ケイ素、またはポリアルキレングリコール、ポリエチレングリコール、デキストラン、アガロース、もしくはセルロースなどの親水性ポリマーが含まれる。陽イオン基を含む例示的な吸着剤には、二級アミン、三級アミン、または四級アミンの基質が含まれる。陰イオン基を有する例示的な吸着剤には、硫酸陰イオンの基質、およびカルボン酸陰イオンまたはリン酸陰イオンの基質が含まれる。金属イオンキレート基を有する例示的な吸着剤には、銅、ニッケル、コバルト、亜鉛、鉄、アルミニウム、およびカルシウムなどの金属イオンと配位共有結合を形成し得る1つまたは複数の電子供与基を有する有機分子が含まれる。抗体を含む例示的な吸着剤には、本明細書において提供するバイオマーカーのいずれかに特異的であり、当業者に周知の方法によって容易に作製することができる抗体が含まれる。
【0039】
または、基材は、気相イオン分光計に取り外し可能に挿入できるプローブの形態であってよい。例えば、基材はその表面上に吸着剤を有するストリップの形態であってよい。本発明のさらに他の形態では、基材を第2基材の上に設置し、気相イオン分光計に取り外し可能に挿入できるプローブを形成してもよい。例えば、基材はマーカーを結合するための機能基を有する重合体ビーズまたはガラスビーズなどの固相の形態であってよく、これを第2基材の上に設置してプローブを形成することができる。第2基材は、ストリップ、または所定の位置に一連のウェルを有するプレートの形態であってよい。この様式では、バイオマーカーを第1基材に吸収させ第2基材に移すことができ、次にこれを気相イオン分光計による解析に供することができる。
【0040】
プローブは、気相イオン分光計に取り外し可能にに挿入できる限りは、円形、楕円形、正方形、長方形、もしくは他の多角形、または他の所望の形を含む、多種多様な所望の形の形態であってよい。プローブはまた、気相イオン分光計の吸気装置および検出器との使用に適合させるか、またはさもなくば設定することが好ましい。例えば、手動でプローブを再配置する必要のない、プローブを連続した位置に水平方向および/または垂直方向に動かすような、水平方向および/または垂直方向に移動可能な運搬台にはめ込むように、プローブを適合させてもよい。
【0041】
プローブを形成する基材は、様々な吸着剤を支持し得る多種多様な材料から作製することができる。例示的な材料には、ガラスおよびセラミックなどの絶縁材;シリコン・ウエハーなどの半絶縁材;導電材(ニッケル、真ちゅう、スチール、アルミニウム、金、または導電性ポリマーなどの金属を含む);有機ポリマー;バイオポリマー;またはそれらの組み合わせが含まれる。
【0042】
本発明の他の態様では、基材の性質に依存して、基材表面が吸着剤を形成してもよい。他の場合には、基材表面を修飾してその上に所望の吸着剤を組み入れてもよい。プローブを形成する基材の表面は、基材がそれ自体でバイオマーカーに結合できない場合には、マーカーに結合し得る吸着剤に結合するようにプローブを処理するまたはさもなくば調節することができる。または、所望のバイオマーカーに結合する本来の能力を亢進するように、基材の表面を処理するまたはさもなくば調節することも可能である。本発明での使用に適した他のプローブは、例えばPCT WO 01/25791(Tai-Tung et al.)およびWO 01/71360(Wright et al.)に見い出すことができる。
【0043】
吸着剤は、連続的または非連続的なパターンを含む多種多様なパターンでプローブ基材上に設置することができる。1種類の吸着剤または2種類以上の吸着剤を基材表面上に設置することができる。パターンは、線、円などの曲線、または所望される任意のそのような他の形もしくはパターンの形態であってよい。
【0044】
プローブを作製する方法は、当技術分野で周知のように、基材材料および/または吸着剤の選択に依存することになる。例えば、基材が金属である場合、基材はその上に載せる吸着剤に依存して調製され得る。例えば、基材表面を、金属表面を誘導体化し吸着剤を形成し得る酸化ケイ素、酸化チタン、または金などの材料で被覆してもよい。次に基材表面を、一方が表面の機能基と共有結合などの結合をし、リンカーのもう一方の末端が吸着剤として機能する基によってさらに誘導体化され得る二機能性リンカーを用いて誘導体化することができる。さらなる例として、結晶シリコンから作製された多孔性シリコン表面を含む基材を、マーカーを結合するための吸着剤を含むように化学的に修飾することができる。さらに、例えば、置換アクリルアミドもしくはアクリル単量体、または吸着剤として選択した機能基を含むそれらの誘導体を含む単量体溶液を原位置で重合することにより、ヒドロゲル骨格を有する吸着剤を基材表面上で直接形成することも可能である。
【0045】
本発明の好ましい形態において、プローブはCiphergen Biosystems, Inc.(カリフォルニア州、パロアルト)から入手可能なチップなどのチップであってよい。チップは、親水性、疎水性、陰イオン交換、陽イオン交換、固定化金属親和性、または前活性化タンパク質チップアレイであってよい。疎水性チップは、逆相相互作用によってタンパク質に結合する長鎖脂肪族表面を含むPtoteinChip(登録商標) H4であってよい。親水性チップは、二酸化ケイ素基材表面を含むPtoteinChip(登録商標) NP1およびNP2であってよい。陽イオン交換PtoteinChip(登録商標)アレイは、陽イオン性タンパク質に結合するカルボン酸表面を有する弱い陽イオン交換アレイであるPtoteinChip(登録商標) WCX2であってよい。またはチップは、二酸化ケイ素被覆アルミニウム基材から作製されたSAX1(強力な陰イオン交換)PtoteinChip(登録商標)、または陰イオン性タンパク質に結合する大容量四級アンモニウム表面を有するPtoteinChip(登録商標) SAX2などの陰イオン交換タンパク質チップアレイであってよい。さらなる有用なチップは、表面上にニトリロ三酢酸を有する固定化金属親和性捕獲チップ(IMAC3)であってよい。さらに別の場合には、アミノ基と共有結合的に反応するカルボニルジイミダゾール表面を含むPtoteinChip(登録商標) PS1が利用でき、またはアミン基およびチオール基と共有結合的に反応するエポキシ表面を含むPtoteinChip(登録商標) PS2を利用してもよい。
【0046】
本発明に従って、プローブを試験試料と接触させる。試験試料は、多種多様な供給源から得ることができる。試料は典型的に、肺癌の検査を受けている対象もしくは患者から、またはその疾患の危険性が考えられ得る正常個体に由来する生体液から得ることができる。好ましい体液は、血液、血清、または気管支洗浄(「BAL」)液である。バイオマーカーが見い出され得るその他の生体液には、例えば、精液、精漿、リンパ液、粘液、乳頭分泌液、痰、涙液、唾液、尿、または他の同様の液体が含まれる。さらに、生物試料には、気管支/肺組織または任意の他の同様の組織を含む組織が含まれ得る。
【0047】
必要に応じて、プローブと接触させる前に、試料を溶離剤に溶解するかまたは溶離剤と混合することができる。浴浸漬、浸漬、液浸、噴霧、洗浄、分注、または他の所望の方法を含む多種多様な技法によって、プローブを試験試料と接触させることができる。プローブの吸着剤が試験試料液と好ましく接触できるように、方法を実施する。試料中の1つまたは複数のバイオマーカーの濃度は変動し得るが、吸着剤に結合させるために、約1μl〜約500μl溶液中に約1アトモル〜約100ピコモルのマーカーを含む量の試験試料を接触させることが一般に望ましい。
【0048】
バイオマーカーが吸着剤に結合するのに可能な十分な時間、試料とプローブを相互に接触させる。この時間は試料の性質、バイオマーカーの性質、吸着剤の性質、およびバイオマーカーを溶解した溶液の性質に依存して変動し得るが、典型的には試料と吸着剤を約30秒間〜約12時間、好ましくは約30秒間〜約15分間接触させる。
【0049】
プローブを試料に接触させる際の温度は、試料の性質、バイオマーカーの性質、吸着剤の性質、およびバイオマーカーを溶解した溶液の性質に依存することになる。一般に、外界の温度および圧力条件下で、試料をプローブと接触させることができる。しかし、温度および圧力は必要に応じて変更してよい。本発明の現在好ましい態様では、例えば、温度は約4℃〜約37℃で変更できる。
【0050】
マーカーが吸着剤、または吸着剤を用いない場合には基材表面に結合するのに十分な時間、試料をプローブと接触させた後、結合した物質のみがそれぞれの表面に残存するように、非結合の物質を基材または吸着剤表面から洗浄除去する。洗浄は、例えば、浴浸漬、浸漬、液浸、リンス、噴霧することにより、またはさもなくばそれぞれの表面を溶離剤もしくは他の洗浄液を用いて洗浄することにより達成することができる。溶離剤などの洗浄液をプローブ上の吸着剤の小さな部位に挿入する場合には、マイクロフルイディクス過程を用いることが好ましい。洗浄液の温度は変動し得るが、典型的に約0℃〜約100℃、好ましくは約4℃および約37℃である。
【0051】
多種多様な洗浄液を使用して、プローブ基材表面を洗浄することができる。洗浄液は、有機溶液または水溶液であってよい。例示的な水溶液は、HEPES緩衝液、Tris緩衝液、リン酸緩衝食塩水、または当業者に周知の他の類似の緩衝液を含む緩衝液であってよい。特定の洗浄液の選択は、バイオマーカーの性質および用いる吸着剤の性質に依存することになる。例えば、SCXI PtoteinChip(登録商標)アレイのように、プローブが吸着剤として疎水基およびスルホン基を含む場合には、HEPES緩衝液などの水溶液を用いることができる。さらなる例として、Ni(II) PtoteinChip(登録商標)アレイのように、プローブが吸着剤として金属結合基を含む場合には、リン酸緩衝食塩水などの水溶液が好ましい。さらなる例として、HF PtoteinChip(登録商標)アレイのように、プローブが吸着剤として疎水基を含む場合、水が好ましい洗浄液となり得る。
【0052】
溶液中に存在するようなエネルギー吸収分子を、プローブの基材表面上に結合しているマーカーまたは他の物質に添加することができる。本明細書で用いる「エネルギー吸収分子」とは、気相イオン分光計のエネルギー源からのエネルギーを吸収する分子を指し、これはマーカーまたは他の物質のプローブ表面からの脱離を支援し得る。例示的なエネルギー吸収分子には、桂皮酸誘導体、シナピン酸、ジヒドロ安息香酸、および当業者に周知の他の類似の分子が含まれる。エネルギー吸収分子は、好ましくは非結合の物質をプローブ基材表面から洗浄除去した後に、例えば噴霧、分注、または液浸を含む、試料とプローブ基材との接触について本明細書で先に考察した多種多様な技法により添加することができる。
【0053】
バイオマーカーを適切にプローブに結合させた後、適切な検出装置、好ましくは気相イオン分光計を用いて、バイオマーカーを検出、定量することができる、および/またはさもなくばその特徴を決定することができる。当技術分野で周知のように、気相イオン分光計には、例えば、質量分析計、イオン移動度分光計、および全イオン電流測定装置が含まれる。
【0054】
好ましい態様においては、質量分析計を用いて、プローブの基材表面に結合しているバイオマーカーを検出する。表面にマーカーの結合したプローブを、質量分析計の吸気装置に挿入することができる。次に、レーザー、高速原子衝撃、プラズマ、または当業者に周知の他の適切なイオン源などのイオン源により、マーカーをイオン化することができる。生じたイオンは典型的にイオン光学アセンブリにより収集され、次に質量分析器により通過するイオンが分散および解析される。質量分析器から抜け出たイオンは、検出器によって検出される。検出器は、検出したイオンの情報を質量電荷比に変換する。マーカーの検出および/または定量は典型的に、シグナル強度の検出を含む。
【0055】
本発明のさらなる好ましい形態において、質量分析計はレーザー脱離飛行時間型質量分析計であり、さらに好ましくは表面増強レーザー脱離飛行時間型質量分析計(SELDI)を使用する。SELDIは、生体分子用の気相イオン分光法の改良法である。SELDIでは、分析物を載せる表面が、分析物の捕獲および/または脱離において積極的な役割を果たす。
【0056】
当技術分野で周知のように、レーザー脱離質量分析法では、マーカーの結合したプローブを吸気装置に挿入する。レーザーイオン源により、マーカーは脱離して気相内にイオン化される。生じたイオンはイオン光学アセンブリによって収集される。イオンは、飛行時間型質量分析器において短い高電圧電場を通過し加速され、高真空チャンバー内へのドリフトが可能になる。加速されたイオンは、異なる時間で、高真空チャンバーの遠端の高感度検出器表面に衝突する。飛行時間はイオン質量の関数であるため、イオン化と衝突との間の経過時間を用いて、特定質量の分子の有無を同定することができる。相対量または絶対量でのバイオマーカーの定量は、バイオマーカーの示すシグナル強度を、対照量のバイオマーカーまたは当技術分野で周知の他の標準物質と比較することによって達成し得る。レーザー脱離飛行時間型質量分析計の成分を、本明細書に記載するおよび/または当業者に周知の、脱離、加速、検出、または時間測定の様々な手段を用いる他の成分と組み合わせることが可能である。
【0057】
さらなる態様において、バイオマーカーの検出および/または定量は、マトリックス支援レーザー脱離イオン化法(MALDI)によって達成することができる。MALDIはまた、固体相から気相への直接的な生物試料の気化およびイオン化を提供する。当技術分野において周知のように、好ましくはこの過程において分析物の分解を防ぐため、所望の分析物を含む試料を、分析物と共に結晶化する基質に溶解するかまたはさもなくば懸濁する。
【0058】
イオン移動度分光計を用いて、本明細書に記載のバイオマーカーを検出および特徴づけすることができる。イオン移動度分光計の原理は、イオンの異なる移動度に基づく。具体的には、イオン化によって生じた試料のイオンは、例えば質量、電荷、または形状の違いにより、電場の影響下でチューブ内を異なる速度で移動する。イオン(典型的に電流の形態で)は検出器に記録され、次にこれを用いて試料中のマーカーまたは他の物質が同定され得る。イオン移動度分光計の1つの利点は、大気圧で作動し得る点である。
【0059】
全イオン電流測定器を用いて、本明細書に記載のバイオマーカーを検出および特徴づけることもできる。例えば、プローブが単一種類のマーカーのみの結合を可能にする界面化学を有する場合に、この装置を用いることができる。単一種類のマーカーがプローブに結合する場合、イオン化したバイオマーカーから生じた全電流はマーカーの性質を反映する。次に、バイオマーカーによって生じた全イオン電流を、既知化合物の保存してある全イオン電流と比較することができる。次いで、バイオマーカーの特徴が決定され得る。
【0060】
バイオマーカーの脱離および検出によって作成されたデータは、プログラム可能なデジタルコンピュータを用いて解析することができる。コンピュータプログラムは一般に、コードを保存する可読媒体を含む。プローブ上の各特徴の位置、その特徴の存在する吸着剤の同一性、および吸着剤を洗浄するために用いた溶出条件を含む一定のコードを、メモリに供することができる。次にこの情報を用いて、用いた吸着剤および溶離剤の種類などの特定の選択特性を規定して、プログラムでプローブ上の一連の特徴を同定することができる。コンピュータはまた、入力として、プローブ上の特定のアドレス可能位置から受け取る様々な分子量におけるシグナル強度でデータを受け取るコードを含む。このデータは検出されたバイオマーカーの数を示し得り、任意に、検出された各バイオマーカーのシグナル強度および決定された分子量を含む。上記したように、データは、検出されたバイオマーカーのシグナル強度(例えば、ピークの高さまたはピークの面積)を決定し、任意の「外れ値」を除去することによるなど、既知の方法に従って標準化することができる。
【0061】
コンピュータは、結果として得られたデータを様々な表示型式に変換することができる。「スペクトル図またはリテンテートマップ(retentate map)」と称される1つの型式では、それぞれ特定の分子量において検出器に到達したバイオマーカーの量を示す、標準的なスペクトル図が示され得る。「ピークマップ」と称される別の型式では、スペクトル図からピークの高さおよび質量情報のみが抽出され、より明瞭な像が得られ、ほぼ等しい分子量を有するマーカーがより容易に見えるようになる。「ゲル図」と称されるさらに別の型式では、ピーク図の各質量が各ピークの高さに基づき濃淡の像に変換され、電気泳動ゲル上のバンドに類似した形が得られる。「3-Dオーバーレイ」と称されるさらなる型式では、いくつかのスペクトルが重ねられ、相対的なピークの高さの微妙な変化を検討することができる。「相違マップ図」と称されるさらなる型式では、独特なバイオマーカーおよび試料間で上方制御されたまたは下方制御されたバイオマーカーを都合よく強調し、2つまたはそれ以上のスペクトルを比較することができる。任意の2つの試料に由来するバイオマーカープロファイル(スペクトル)を、視覚的に比較することができる。
【0062】
上記の表示型式のいずれかを用いて、特定の分子量を有するバイオマーカーが試料から検出されるかどうかをシグナル表示から容易に決定することが可能である。さらに、シグナル強度から、プローブ表面に結合したマーカーの量を決定することができる。
【0063】
本発明の好ましい形態においては、単一の決定木分類アルゴリズムを利用して、SELDIによって作成されたデータを解析する。そのような分類を作製するために用いられるアルゴリズムは、当技術分野において周知である。例えば、累積確率に基づく分類論理(Classification Logic)、PeakMiner(インターネットアドレス:www.evms.edu/vpc/seld)、または分類と回帰木(Classification and Regression Tree)(CART)(Breiman, L., Friedman, J., Olshen, R., and Stone, C. J. (1984) Classification and Regression Trees Chapman and Hall, New York)によるような、分類木の作製に用いられるアルゴリズム、およびそのような分類木の作製に適した周知の方法;例えば、遺伝子クラスター、ロジスティック回帰、表面ベクトル機構、および神経網によって作成されるアルゴリズムが用いられ得る(Jain et al. 「Statistical Pattern Recognition: A Review,」 IEEE Transactions on Pattern Analysis and Machine Intelligence, Vol. 22, No. 1, Jan. 2000)。例えば、1つのそのようなアルゴリズムを、本明細書の実施例1および2でより具体的に説明する。
【0064】
試験試料は、気相イオン分光測定に供する前に前処理してもよい。例えば、解析のためにより単純な試料が提供されるように、試料を精製またはさもなくば前分画することができる。試験試料中に存在する生体分子の任意の精製手順は、大きさ、電荷、および機能などの生体分子の特性に基づき得る。精製法には、遠心分離、電気泳動、クロマトグラフィー、透析、またはこれらの組み合わせが含まれる。当技術分野で周知のように、電気泳動を使用して、試料中の生体分子を大きさおよび電荷に基づき分離することができる。電気泳動手順は当業者に周知であり、これには等電点電気泳動、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)、アガロースゲル電気泳動、および他の周知の電気泳動法が含まれる。
【0065】
精製段階は、サイズ分画、電荷による分画、および分離する生体分子の他の特性による分画を含むクロマトグラフィー分画技法によって達成してもよい。当技術分野で周知のように、クロマトグラフィー系は固定相および移動相を含み、分離は分離する生体分子と種々の相との相互作用に基づく。本発明の好ましい形態においては、カラムクロマトグラフィー手順を用いることができる。そのような手順には、分配クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、およびアフィニティークロマトグラフィーが含まれる。そのような方法は当業者に周知である。サイズ排除クロマトグラフィーでは、サイズ分画カラムにより、分子量が約10,000ダルトンを超える分子を排除することが好ましい。
【0066】
本発明の好ましい形態においては、気相イオン分光測定に供す前に、リテンテートクロマトグラフィーにより、バイオクロマトグラフィーチップ上で試料を精製するかまたはさもなくば分画する。好ましいチップは、Ciphergen Biosystems, Inc.(カリフォルニア州、パロアルト)から入手可能なPtoteinChip(商標)である。上記のように、チップまたはプローブを質量分析計での使用に適合させる。チップは、その表面に付着した吸着剤を含む。ある適用において、この吸着剤はインサイチュークロマトグラフィー樹脂として機能し得る。操作において、試料を溶離剤中で吸着剤に添加する。吸着剤が親和性を有する分子は、洗浄条件下で吸着剤に結合する。吸着剤に結合しない分子は、洗浄により除去される。解析するのに適当なレベルまで分析物が保持されるまたは溶出されるように、様々なレベルのストリンジェンシーで吸着剤をさらに洗浄することができる。次に、エネルギー吸収分子を吸着部分に添加し、さらに脱離およびイオン化を促進することができる。吸着剤からの脱離、イオン化、および検出器による直接的検出により、分析物が検出される。したがって、リテンテートクロマトグラフィーは、従来のクロマトグラフィーでは親和性物質から溶出された物質が検出されるのに対し、親和性物質によって保持された分析物が検出される点で、従来のクロマトグラフィーとは異なる。
【0067】
本発明のバイオマーカーを、免疫測定手順により定性的にまたは定量的に検出することができる。免疫測定法は典型的に、試験試料を、バイオマーカーに特異的に結合するかまたはさもなくばこれを認識する抗体と接触させる段階、および試料中のバイオマーカーに結合した抗体の複合体の存在を検出する段階を含む。免疫測定手順は、競合的または非競合的酵素免疫測定法を含む、また酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、放射性免疫測定法(RIA)、およびウェスタンブロット法、ならびにいくつかの所望の抗体が支持体(ガラスビーズまたはプレートなど)上に配置され、これを試験試料と反応させるかまたはさもなくば接触させる抗体アレイの使用を含む多重アッセイの使用を含む、抗体/抗原複合体の認識が関与する、当業者に周知の多種多様な免疫測定手順から選択され得る。そのようなアッセイ法は当業者に周知であり、例えば、Antibodies: A Laboratory Manual (1988) by Harlow & Lane; Immunoassays: A Practical Approach, Oxford University Press, Gosling, J.P.(ed.) (2001)、および/または定期的に改正されるCurrent Protocols in Molecular Biology (Ausbel et al.)に十分に記載されている。
【0068】
本明細書に記載する免疫測定法で使用する抗体はポリクローナル抗体であってよく、精製されたバイオマーカーを種々の動物に注射する段階、および血清中に産生された抗体を単離する段階を含む、当業者に周知の手順によって得ることができる。抗体はまたはモノクローナル抗体であってもよく、その作製法は当業者に周知であり、精製されたバイオマーカーを例えばマウスに注射する段階、抗血清を産生する脾臓細胞を単離する段階、この細胞を腫瘍細胞と融合してハイブリドーマを形成する段階、およびハイブリドーマをスクリーニングする段階を含む。本明細書に前記したクロマトグラフィー、電気泳動、および遠心分離手順を含む、当業者に同様に周知の技法によって、まずバイオマーカーを精製することができる。そのような手順は、タンパク質バイオマーカーの大きさ、電荷、溶解度、選択した成分への結合親和性、これらの組み合わせ、またはタンパク質の他の特徴もしくは特性を活用し得る。そのような方法は当業者に周知であり、例えば、Current Protocols in Protein Science, J. Wiley and Sons, New York, NY, Coligan et al. (Eds.) (2002);Harris, E.L.V., and S. Angal in Protein purification applications: a practical approcach, Oxford University Press, New York, MY (1990)に見い出すことができる。抗体が提供されたならば、本明細書に前記した免疫測定法により、バイオマーカーを検出および/または定量することができる。
【0069】
免疫測定法の特定の手順は当業者に周知であるが、一般的に、まず試験対象から本明細書で前記したような試料を得ることにより免疫測定法を行うことができる。抗体/タンパク質バイオマーカー複合体の洗浄および次の単離を容易にするため、抗体を試験試料と接触させる前に、抗体を固体支持体に固定することができる。固体支持体の例は当業者に周知であり、これには、例えば、マイクロタイタープレートといった形態のガラスまたはプラスチックが含まれる。抗体は、本明細書に記載するProteinChip(商標)などのプローブ基材に付着させてもよい。
【0070】
試験試料を抗体と共にインキュベートした後、混合物を洗浄し、抗体-マーカー複合体を検出することができる。検出は、洗浄した混合物を検出試薬と共にインキュベートし、例えば色または他の指標の出現を観察することによって達成され得る。任意の検出可能な標識を使用することができる。検出試薬は、例えば、検出可能な標識で標識した二次抗体であってよい。例示的な検出可能な標識には、磁気ビーズ(例えば、DYNABEADS(商標))、蛍光色素、放射標識、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、および酵素免疫測定手順で一般に用いられる他の酵素)、およびコロイド金、色ガラス、またはプラスチックビーズなどの比色標識が含まれる。または、例えば標識抗体を用いて結合したマーカー特異的抗体複合体を検出する間接的アッセイ法を用いて、および/またはバイオマーカーの異なるエピトープに結合するモノクローナル抗体を混合物と同時にインキュベートする競合もしくは阻害アッセイ法により、試料中のマーカーを検出することもできる。抗体-マーカー複合体の量は、標準物質との比較により決定することができる。
【0071】
アッセイの間、それぞれの試薬を組み合わせた後に、インキュベーション段階および/または洗浄段階が必要とされ得る。インキュベーション段階は約5秒〜数時間、好ましくは約5分〜24時間で変動し得る。しかしインキュベーション時間は、特定の免疫測定法、バイオマーカー、およびアッセイ条件に依存することになる。通常、アッセイは外気温度で行うが、約0℃〜約40℃などの温度範囲で行ってもよい。
【0072】
例えば本明細書に記載したバイオマーカーを検出するために使用し得るキットを提供する。例えばキットを用いて、肺癌の診断もしくは陰性診断をするかまたはそれらの診断を支援するために有利に使用し得る、本明細書に記載の任意の1つまたは複数のバイオマーカーを検出することができる。
【0073】
1つの態様において、キットは、好ましくは本明細書に記載した1つまたは複数のタンパク質バイオマーカーへの結合に適した吸着剤をその上に含む基材、および本明細書に記載する試験試料を吸着剤と接触させ、吸着剤によって保持されたバイオマーカーを検出することによって、バイオマーカーを検出するための説明書を含み得る。特定の態様において、キットは、例えば気相イオン分光法を使用して、溶離剤と吸着剤の組み合わせによりタンパク質バイオマーカーの検出を可能にする溶離剤、または溶離剤を作製するための説明書を含み得る。そのようなキットは、本明細書に記載する物質から調製することができる。
【0074】
さらに別の態様において、キットは、その上に吸着剤を含む第1基材(例えば、吸着剤で機能化した粒子)、および第1基材がその上に設置されて、気相イオン分光計に取り外し可能に挿入できるプローブを形成し得る第2基材を含み得る。他の態様では、キットは、基材上に吸着剤を有する、取り外し可能に挿入できるプローブの形態である単一の基材を含み得る。さらに別の態様では、キットは前分画スピンカラム(例えば、K-30サイズ排除カラム)をさらに含み得る。
【0075】
キットは、ラベルまたは別の挿入物の形態をした、パラメータを適切に操作するための説明書をさらに含み得る。例えばキットは、消費者または他の個人に、特定の形態の試料をプローブと接触させた後いかにしてプローブを洗浄するかの情報を与える標準的説明書を有し得る。さらなる例として、キットは、試料中のタンパク質の複雑性を減少させるために試料を前分画するための説明書を含み得る。
【0076】
さらなる態様において、キットはマーカーに特異的に結合する抗体および検出試薬を含んでよい。そのようなキットは、本明細書に記載する材料から調製することができる。キットは、上記の前分画スピンカラム、およびラベルまたは別の挿入物の形態をした、パラメータを適切に操作するための説明書をさらに含み得る。
【0077】
本発明のさらに別の局面では、複数の分類子を使用して肺癌の可能性があるという診断を行う方法を提供する。本発明の1つの形態では、方法は以下の段階を含む:a) 正常対象および肺癌と診断された対象に由来する複数の試料から質量スペクトルを得る段階;b) 質量スペクトルの少なくとも一部に決定木解析を適用して、ピーク強度値および関連閾値を含む複数の加重ベース分類子を得る段階;およびc) 複数の加重ベース分類子の直線的組み合わせに基づき、肺癌の可能性があるという診断または陰性診断を行う段階。本発明の特定の形態において、本方法は、ピーク強度値および関連閾値を線形結合で使用し、肺癌の可能性があるという診断または陰性診断を行う段階を含む。好ましいアルゴリズムおよびデータ処理を、実施例1および2においてさらに十分に説明する。
【0078】
本発明の方法は、他の用途も有する。例えば、バイオマーカーを用いて、バイオマーカーの発現を調節する化合物をインビトロまたはインビボでスクリーニングすることができ、このような化合物は患者の肺癌の治療または予防に役立ち得る。別の例では、バイオマーカーを用いて、肺癌の治療に対する反応をモニターすることができる。さらに別の例では、バイオマーカーを遺伝研究において使用し、対象が肺癌を発症する危険性があるかどうかを決定することができる。
【0079】
したがって、例えば、本発明のキットは、タンパク質バイオチップ(例えば、Ciphergen WCX2 ProteinChipアレイ、例えば、ProteinChipアレイ)のような陽イオン交換基を有する固体基材、および基材を洗浄するための酢酸ナトリウム緩衝液、ならびにチップ上で本発明のバイオマーカーを測定し、これらの測定値を用いて肺癌を診断するための手順を提供する説明書を含み得る。
【0080】
まず本明細書に記載の1つまたは複数のバイオマーカーと相互作用する化合物を同定することにより、治験に適した化合物をスクリーニングすることができる。一例として、スクリーニングは、本明細書に記載のバイオマーカーを組み換えにより発現させる段階、バイオマーカーを精製する段階、およびバイオマーカーを基材に結合させる段階を含み得る。次いで、試験化合物を典型的に水性条件下で基材と接触させ、例えば塩濃度に応じた溶出速度を測定することで、試験化合物とバイオマーカーとの相互作用を測定する。ある種のタンパク質は本明細書に記載の1つまたは複数のバイオマーカーを認識して切断し得り、そのような場合には、例えばタンパク質のゲル電気泳動によるなど、標準的なアッセイ法で1つまたは複数のバイオマーカーの消化をモニターして、タンパク質を検出することができる。
【0081】
関連する態様では、試験化合物が本明細書に記載する1つまたは複数のバイオマーカーの活性を阻害する能力を測定し得る。当業者は、特定のバイオマーカーの活性を測定するために用いられる技法が、バイオマーカーの機能および特徴に応じて変わることを理解すると考えられる。例えば、適切な基質を利用することができるならば、かつ基質の濃度または反応産物の出現が容易に測定可能であるならば、バイオマーカーの酵素活性をアッセイすることができる。潜在的治療試験化合物が所与のバイオマーカーの活性を阻害または増強する能力は、試験化合物の存在下または非存在下において触媒反応速度を測定することで決定することができる。試験化合物が、本明細書に記載するバイオマーカーのうちの1つの非酵素的(例えば、構造的)機能または活性を妨げる能力もまた測定することができる。例えば、本明細書に記載するバイオマーカーの1つを含む多タンパク質複合体の自己会合を、試験化合物の存在下または非存在下において分光法によりモニターすることができる。または、バイオマーカーが転写の非酵素的エンハンサーであるならば、バイオマーカーが転写を増強する能力を妨げる試験化合物を、試験化合物の存在下および非存在下において、バイオマーカー依存的転写のレベルをインビボまたはインビトロで測定することで同定することができる。
【0082】
本明細書に記載のバイオマーカーのいずれかの活性を調節し得る試験化合物を、肺癌もしくは他の癌に罹患している患者またはそのような癌を発症する危険性のある患者に投与することができる。例えば、インビボにおける特定のバイオマーカーの活性が肺癌に関するタンパク質の蓄積を妨げるのであれば、特定のバイオマーカーの活性を上昇させる試験化合物を投与することで、患者の肺癌の危険性を軽減することができる。逆に、バイオマーカーの活性の上昇が肺癌の発症に少なくとも部分的に関与するのであれば、特定のバイオマーカーの活性を減少させる試験化合物を投与することで、患者の肺癌の危険性を軽減することができる。
【0083】
臨床レベルでは、試験化合物のスクリーニングは、対象を試験化合物に曝露する前および後に、試験対象から試料を採取する段階を含む。本明細書に記載の1つまたは複数のバイオマーカーの試料中のレベルを測定および解析して、試験化合物に対して曝露した後にバイオマーカーレベルが変化したかどうかを決定することができる。試料は本明細書に記載の質量分析法により解析することができ、または当業者に周知である任意の適切な手段により試料を解析することができる。例えば、本明細書に記載の1つまたは複数のバイオマーカーのレベルを、このバイオマーカーに特異的に結合する放射標識または蛍光標識抗体を用いたウェスタンブロットにより、直接測定することができる。または、1つまたは複数のバイオマーカーをコードするmRNAのレベルの変化を測定し、対象に対する所与の試験化合物の投与と関連づけることができる。さらなる態様では、1つまたは複数のバイオマーカーの発現レベルの変化を、インビトロの方法および材料を用いて測定することができる。例えば、本明細書に記載の1つまたは複数のバイオマーカーを発現するかまたは発現し得るヒト組織培養細胞を、試験化合物と接触させ得る。試験化合物による処置を受けた対象は、処置に起因し得る任意の生理的効果に関して日常的に試験されることになる。特に、試験化合物は、対象における疾患可能性を低減させる能力に関して評価される。または、試験化合物を、以前に肺癌と診断された対象に投与する場合には、試験化合物が疾患の進行を遅延させるかかまたは停止させる能力に関してスクリーニングする。
【0084】
コンピュータによる実行
本発明の技法は、図11に示すようなコンピュータシステム104で実行することができる。この点で、図11は、本発明の少なくとも1つのコンピュータ実行態様に従ってコンピュータ処理のいくつかまたはすべてを実行し得るコンピュータシステム104の説明図である。
【0085】
図11を外部から見ると、参照番号104で示されるコンピュータシステムは、コンピュータシステムによって収容され得るいくつかのディスクドライブを単に象徴するドライブ502および504を有するコンピュータ部分112を有する。典型的に、これらは、フロッピーディスクドライブ502、ハードディスクドライブ(外部からは見えない)、およびCD ROM 504を含み得る。ドライブの数および形式は典型的に、それぞれのコンピュータ構成によって変わる。ディスクドライブ502および504は実際に任意であり、空間を考慮して、コンピュータシステムから除外され得る。
【0086】
コンピュータシステム104はさらに任意のディスプレイモニター110を有し、このモニター上には、正常または異常細胞、正常と考えられる細胞、異常と考えられる細胞などに関する情報が表示され得る。場合によっては、キーボード116およびマウス114が入力装置として提供され、これらを介して入力が行われ得り、それにより入力が中央演算処理装置(CPU)604に接続され得る(図12)。しかしまた、携帯性を向上させるため、キーボード116は機能が制限されたキーボードであってよく、またはキーボード全体が除外され得る。さらに、マウス114は、任意にタッチパッド制御装置もしくはトラックボール装置であり、またはなおその全体が除外され、またマウスは同様に入力装置として用いられ得る。さらに、コンピュータシステム104はまた任意に、赤外線信号を送信および/または受信するための少なくとも1つの赤外線(無線)送信機および/または赤外線(無線)受信機を含む。
【0087】
コンピュータシステム104は、単一のプロセッサ、単一のハードディスクドライブ614、および単一のローカルメモリを有するように図示されているが、システム104は任意に、任意の複数のもしくは組み合わせのプロセッサまたは記憶装置を適切に装備する。コンピュータシステム104は実際には、携帯用コンピュータ、ラップトップ/ノートブックコンピュータ、ミニコンピュータ、メインフレームコンピュータ、およびスーパーコンピュータ、ならびにそれらの処理システムネットワーク連携を含む、本発明の原理に従って作動する任意の適切な処理システムに置き換えられ得るか、またはこの処理システムと併用され得る。
【0088】
図12は、図11のコンピュータシステム104の内部ハードウェアのブロック図である。バス602は、コンピュータシステム104の他の構成要素を相互接続する主要な情報ハイウェイとして働く。CPU604は、プログラムを実行するのに必要な計算および論理演算を実行する、システムの中央演算処理装置である。読み取り専用メモリ(ROM)606およびランダムアクセスメモリ(RAM)608は、コンピュータシステム104のメインメモリを構成する。ディスクコントローラ610は、1つまたは複数のディスクドライブをシステムバス602にインターフェースで接続する。これらのディスクドライブは、例えば、502のようなフロッピーディスクドライブ、CD ROMもしくはDVD(デジタルビデオディスク)ドライブ504、または内部もしくは外部ハードドライブ614である。前述したように、これら種々のディスクドライブおよびディスクコントローラは任意の装置である。
【0089】
ディスプレイインタフェース618は、ディスプレイ110をインターフェースで接続し、バス602からの情報をディスプレイ110上に表示することを可能にする。この場合もやはり先の通りであり、ディスプレイ110もまた任意の付属品である。例えば、ディスプレイ110は置き換えられ得るかまたは除外され得る。例えば本明細書に記載のシステムの他の構成要素のような外部装置との通信は、通信ポート616を使用することで行われる。例えば、光ファイバーおよび/または電気ケーブルおよび/または導線および/または光通信(例えば、赤外線など)および/または無線通信(例えば、無線周波数(RF)など)が、外部装置と通信ポート616との間の輸送媒体として使用され得る。周辺インターフェース620はキーボード116およびマウス114をインターフェースで接続し、入力データをバス602に伝送することを可能にする。
【0090】
別の態様において、上記CPU 604は、PAL(プログラマブル・アレイ・ロジック)およびPLA(プログラマブル・ロジック・アレイ)、DSP(デジタル信号プロセッサ)、FPGA(フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ)、ASIC(特定用途向け集積回路)、VLSI(超大規模集積回路)などのプログラム可能な論理回路を含む、任意の他の適切な処理回路に置き換えられ得るか、またはこの処理回路と併用され得る。
【0091】
現在利用できるまたは今後開発される任意のコンピュータソフトウェア言語および/またはハードウェア成分を、本発明のこのような態様において用いることができる。例えば、上記の機能の少なくともいくつかは、拡張マークアップ言語(XML)、HTML、ビジュアルベーシック、C、C++、または使用するプロセッサを考慮して適切である任意のアセンブリ言語を用いて実行され得る。これはまた、Javaなどの解釈環境で書き込まれ、様々な使用者への複数のあて先に送信され得る
【0092】
本発明の実行の1つは、一般的に上記のように構成される1つまたは複数のコンピュータシステム104のランダムアクセスメモリ608内に、一組の命令として存在する。コンピュータシステム104により要求されるまで、一組の命令は、例えば、ハードディスクドライブ614、または最終的にCD-ROM504で使用される光ディスク、もしくは最終的にフロッピーディスクドライブ502で使用されるフロッピーディスク(例えば、フロッピーディスク702)などの取り外し可能なメモリといった、別のコンピュータ可読メモリ内に保存され得る。さらに、一組の命令(Java、HTML、XML、汎用マークアップ言語規約(SGML)、および/または構造化照会言語(SQL)で書き込まれた命令など)は別のコンピュータのメモリ内に保存され、使用者が所望する場合に、ローカルエリア・ネットワークまたはインターネットのような広域ネットワークを介して伝送され得る。当業者には、コンピュータプログラム媒体の保存または伝送は、媒体がコンピュータ可読情報を伝えることができるように、媒体を電気的、磁気的、または化学的に変化させることは周知である。
【0093】
ここで、上記のバイオマーカー、キット、コンピュータプログラム媒体、および方法について説明する具体的な実施例について言及する。実施例は好ましい態様を説明するために提供するものであり、これにより本発明の範囲が制限されないことを意図することを理解されたい。
【0094】
実施例1
気管支洗浄試料
ニューヨーク大学のWilliam Rom博士から、気管支洗浄試料を入手した。インフォームドコンセントを行った後、肺癌患者および対照から気管支洗浄試料を採取した。気管支洗浄試料を分離し、等分し、特にSELDI解析のために解凍するまで-80℃で凍結した。
【0095】
患者およびドナーコホート
本研究では、2群の患者に由来する標本を使用した:肺癌と診断された患者に由来する13試料、および正常対照患者に由来する61試料(13名の肺癌患者のうちの10名の非癌性肺に由来する試料を含む)。
【0096】
SELDIタンパク質プロファイリング
SELDI解析を行うため、CuSO4で前処理したIMAC3 ProteinChip(登録商標)を用いて、以前に記載されている通りに気管支洗浄試料を処理した(Merchant, M., et al., Electrophoresis 21:1164-1177 (2000))。簡潔に説明すると、希釈していない気管支洗浄液200μlをバイオプロセッサを用いてProteinChips(登録商標)に添加した。気管支洗浄試料はそれぞれ二つ組でアッセイし、二つ組試料は異なるProteinChips(登録商標)上にランダムに配置した。次にProteinChips(登録商標)を室温でインキュベートし、その後PBSおよび水で洗浄した。アレイを風乾し、50% (v/v)アセトニトリル、0.5% (v/v)トリフルオロ酢酸中のシナピン酸(Ciphergen Biosystems、カリフォルニア州、フレモント)飽和溶液を各スポットに添加した。ProteinChips(登録商標)を、SELDI ProteinChip(登録商標)システム(PBS-II、Ciphergen Biosystems, Inc.)を用いて解析した。レーザー強度220を使用して、ポジティブモードにおける192ショットの蓄積により、スペクトルを収集した。タンパク質の質量は、精製ペプチド標準物質(Ciphergen Biosystems, Inc.)を用いて、外部から較正した。機器の設定は、プールした血清標準物質を用いて最適化した。
【0097】
データ解析
データは、正常試料61および肺癌試料13からなる学習セットからなった。次いで、この学習セットを5重交差検証に供して、分類率が維持されているかどうかを判定した。
【0098】
ピーク検出
Ciphergen ProteinChip(登録商標)ソフトウェア(バージョン3.2)を用いて質量範囲2 kDa〜100 kDaのスペクトルを解析し、全イオン電流を用いて標準化した。ピーク検出およびクラスタリングは、シグナル対ノイズ閾値3、ピーク閾値10%、および質量領域0.2%という値を用いて、CiphergenのBiomarker Wizardツールを使用して行った。標識ピークはすべて、SELDIからExcelスプレッドシートにエクスポートされた。
【0099】
分類と回帰木(CART)解析
決定木分類アルゴリズムの構築は、74の試料(正常61および肺癌13)からなる学習データセットを用いて、Breiman, L., et al., Classification and Regression Trees, (1984)によって記載されている通りに行った。BioMarker Patternsソフトウェアプログラムに組み込まれている分類と回帰木(CART)および人工知能バイオインフォマティクスアルゴリズムに関する詳細はまた、Bertone, P., et al., Nucleic Acids Res. 29: 2884-2898 (2001);Kosuda, S., et al., Ann. Nucl. Med. 16: 263-271 (2002)によって記載されている。分類木では、質問形式で同時に1つの規則を用いて、データを2つのビンまたはノードに分割した。分割の決定は、1つのピークの有無および強度レベルに基づいた。したがって、SELDIプロファイルから同定される各ピークまたはクラスターは、分類プロセスで変動した。例えば、「質量AはX以下の強度を有する」という質問に対する答えにより、データは、イエスの左側ノードおよびノーの右側ノードという2つのノードに分割される。この「分割」プロセスは、末端ノードに到達し、データ分類においてさらなる分割が行われなくなるまで続けられる。末端ノードの分類は、そのノード内の試料の大部分を表す試料(すなわち、肺癌、正常)の群(「クラス」)によって決定した。学習セットを用いて分類木を構築し、次いでこの分類木を5重交差検証に供した。このプロセスを用いて複数の分類木が作成し、さらなる試験のために最も性能のよい木を選択した。
【0100】
統計解析
特異性は、正確に分類された陰性試料数と真の陰性試料の総数の比として算出した。感度は、正確に分類された疾患試料数と疾患試料の総数の比として算出した。群間の相対ピーク強度レベルの比較は、スチューデントのt検定を用いて算出した。
【0101】
データ解析
BioMarker Wizard解析のデータをスプレッドシートにエクスポートし、各ピークの強度値を二つ組みの試料について平均した。この解析により、スペクトルごとに多数のピークが同定された。これらのうち、共通に見られる102のピークまたはクラスターを、IMAC3タンパク質プロファイリングから得た。図10に示すように、これらのピークのうち31のピークが、肺癌気管支洗浄液と対照気管支洗浄液との間で有意に差次的な発現レベルを有することが認められた。
【0102】
CART解析
学習セットを用いて5重交差検証を行い、全102ピークを用いて分類木を作成した。この種類の交差検証では、それぞれの木について試験するために、乱数を使用して学習セット内のデータを分割する。CART解析に基づき、3820におけるタンパク質ピークの低発現が見い出され、最も性能のよい分類木において第1スプリッター(splitter)として用いられた。図2は、4069 Daピークと同様に、対照BAL試料と比較した場合の肺癌BAL試料における本ピークの低発現を示す代表的なゲル図である。図2はまた、3820ダルトンおよび4069ダルトンピークに関してプロットされた平均標準化強度値を示し、かつ対照BAL試料における平均発現と比較して肺癌BAL試料でのこれらのピークの平均発現が5倍低いことを示す。さらに、図3は、代表的なスペクトル、および対照試料と比較して肺癌BAL試料において過剰発現されることが認められる30132ダルトンピークに関してプロットされた平均標準化強度値を示す。図3に見られるように、30 kDa未満のピークから30132 Daというより大きな分子量ピークへのパターンシフトが、疾患スペクトルにおいて起きていると考えられる。これは、翻訳後修飾を示す可能性がある。
【0103】
全102ピークを用いて、決定木分類アルゴリズムを構築した。1つの試料分類アルゴリズムは、3 kDa〜7 kDaの4つの質量を用いて、6つの末端ノードを生成した(図4)。分類アルゴリズムは、代理または競合物として10個のさらなるピーク(図10による)を用いた。本アルゴリズムで最も識別能力のあるピークが同定されると、分類規則は極めて単純になった。
【0104】
分類木解析により、分類率が85%の正確性を超える全部で4つの木が得られた。最も精度の高い木は、学習セット中の正常BAL試料の96.7%および肺癌BAL試料の100%を正しく分類した(表1を参照のこと)。この分類木アルゴリズムを5重交差検証に供したが、的確な分類率が維持された。交差検証セットにおいて、対照の86.9%および肺癌試料の84.6%が正しく同定された(表1を参照のこと)。分類木の形態は、4つの主要なピーク(3820、3506、4571、および6933 Da)および6つの末端ノードからなった(図4を参照のこと)。
【0105】
6つの末端ノードによる分類結果の合計を、以下の表1において学習セットおよび交差検証セットについて示す。
【0106】
(表1)気管支洗浄液に基づく肺癌学習セットおよび交差検証セットの決定木分類
A. 学習セット
B. 交差検証
【0107】
再現性
信頼性のある疾患診断および早期発見のための任意の臨床的アプローチの重要な局面は、再現性である。SELDIデータの再現性は、プールされた正常血清試料を用いて以前に実証されている(Adam, B. L., et al., Cancer Res. 62:3609-3614 (2002))。ピーク質量に関するアッセイ内およびアッセイ間変動係数(CV)は、15%〜20%の標準化強度CV値を用いて日常的に0.05%である。
【0108】
実施例2
血清試料
ニューヨーク大学のWilliam Rom博士から、血清試料を入手した。インフォームドコンセントを行った後、肺癌患者、異常な肺CTスキャンを有する非癌性患者、健常喫煙者、および健常非喫煙者から全血を採取した。血清試料は分離し、等分し、特にSELDI解析のために融解するまで-80℃で凍結した。
【0109】
患者およびドナーコホート
本研究では、4群の患者に由来する試料を使用した:肺癌と診断された患者に由来する21試料、健常喫煙者に由来する16試料、健常非喫煙者に由来する10試料、および異常な肺CTスキャンを有する非癌性患者に由来する4試料。
【0110】
SELDIタンパク質プロファイリング
SELDI解析を行うため、CuSO4で前処理したIMAC3 ProteinChip(登録商標)を用いて、以前に記載されている通りに血清試料を処理した(Merchant, M., et al., Electrophoresis 21:1164-1177 (2000))。簡潔に説明すると、血清20μlを8M尿素、1% CHAPSで前処理し、4℃で10分間ボルテックスした。1 M尿素、0.125% CHAPS、およびPBSでさらに希釈した。次いで、希釈した試料をバイオプロセッサを用いてProteinChip(登録商標)に添加した。次に、血清試料をそれぞれ二つ組でアッセイした。ProteinChip(登録商標)を、SELDI ProteinChip(登録商標)システム(PBS-II、Ciphergen Biosystems, Inc.)を用いて解析した。ポジティブモードでの192ショットの蓄積により、スペクトルを収集した。タンパク質の質量は、精製ペプチド標準物質(Ciphergen Biosystems, Inc.)を用いて、外部から較正した。
機器の設定は、プールした血清標準物質を用いて最適化した。
【0111】
データ解析
データは、「正常」試料30(16名の健常喫煙者、10名の健常非喫煙者、および4名の異常な肺CTスキャンを有する非癌性患者を含む)および肺癌試料21からなる学習セットからなった。次いで、この学習セットを5重交差検証に供して、同様の分類率が維持されているかどうかを判定した。
【0112】
ピーク検出
Ciphergen ProteinChip(登録商標)ソフトウェア(バージョン3.2)を用いて質量範囲2 kDa〜100 kDaのスペクトルを解析し、全イオン電流を用いて標準化した。ピーク検出およびクラスタリングは、シグナル対ノイズ閾値3、ピーク閾値10%、および質量領域0.2%という値を用いて、CiphergenのBiomarker Wizardツールを使用して行った。標識ピークはすべて、SELDIからExcelスプレッドシートにエクスポートされた。
【0113】
分類と回帰木(CART)および統計解析
決定木分類アルゴリズムの構築は、51の試料(正常30および肺癌21)からなる学習データを用いて、実施例1に記載した通りに行った。このプロセスにより複数の分類木が作成されたが、さらなる試験のために最も性能のよい木を選択した。特異性および感度もまた、実施例1に記載した通りに算出した。
【0114】
データ解析
BioMarker Wizard解析によるデータをスプレッドシートにエクスポートし、各ピークの強度値を二つ組みの試料について平均した。この解析により、スペクトルにつき多数のピークが同定された。これらのうち、共通に見られる60のピークまたはクラスターを、IMAC3タンパク質プロファイリングから得た。これらのピークのうち27のピークが、肺癌血清と対照血清との間で有意に差次的な発現レベルを有することが認められた(これらのピークのうち20のピークを収載している図10を参照のこと)。
【0115】
CART解析
学習セットを用いて5重交差検証を行い、全60ピークから分類木を作成した。この種類の交差検証では、それぞれの木について試験するために、乱数を使用して学習セット内のデータを分割する。CART解析に基づき、8603におけるタンパク質ピークの過剰発現が見い出され、最も性能のよい分類木において第1スプリッターとして用いられた。図6は、「正常」血清(健常喫煙者、健常非喫煙者、および異常な肺CTスキャンを有する非癌性患者を含む)と比較した場合の肺癌血清におけるこのピークの過剰発現を示す代表的なゲル図である。図6はまた、8603ダルトンピークに関してプロットされた平均標準化強度値を示し、かつ「正常」血清試料における平均発現と比較して肺癌血清試料における平均発現がより高いことを示す。(正常非喫煙者および正常喫煙者と比較したこの8603 DaバイオマーカーのROCプロットを図8Aおよび8Bに示す。)図6から、8933ダルトンピークもまた「正常」血清と比較して肺癌血清において過剰発現され、一方、7766ダルトンピークは正常血清と比較して肺癌血清において低発現されることがさらに示される。図6に見られるように、ほとんどの場合において、異常なCTスキャンを有する群のピーク発現が肺癌群と最も密接に一致し、健常喫煙者および健常非喫煙者は類似したパターンを有した。図7A、7B、および7Dからまた、4748、7566、および4644 Daピークが「正常」対照と比較して肺癌血清において低発現されることが示され、図7Cから4301バイオマーカーが「正常」対照と比較して肺癌血清において過剰発現されることが示される。さらに、図8Cおよび8Dは、8674および4301 Daピークを含む、健常喫煙者および健常非喫煙者と比較して高いp値を有する他のピークのROCプロットを示し、これらはいずれも最も性能のよい分類木において使用した。
【0116】
全60ピークを用いて、決定木分類アルゴリズムを構築した。1つの試料分類アルゴリズムでは、3 kDa〜9 kDaの6つの質量を用いて、7つの末端ノードを生成した(図9)。アルゴリズムで最も識別能力のあるピークが同定されて、分類規則は極めて単純になった。
【0117】
最も精度の高い木は、学習セット中の正常血清試料の100%および肺癌血清試料の100%を正しく分類した(表9を参照のこと)。この分類木アルゴリズムを5重交差検証に供したが、的確な分類率が維持された。交差検証セットにおいて、「正常」試料の83.3%および肺癌試料の81.0%が正しく同定された(表2を参照のこと)。分類木の形態は、6つの主要なピーク(8602、3887、4644、8630、4301、および8674 Da)および7つの末端ノードからなった(図9を参照のこと)。
【0118】
7つの末端ノードによる分類結果の合計を、以下の表2において学習セットおよび交差検証セットについて示す。
【0119】
(表2)血清に基づく肺癌学習セットおよび交差検証セットの決定木分類
A. 学習セット
B. 交差検証
【0120】
また、頭頸部扁平上皮細胞癌(「HNSCC」)患者および健常喫煙者に由来する試料を、上記した図9の分類木を用いて試験した。7つの末端ノードによる分類結果の合計を、以下の表3において示す。
【0121】
(表3)HNSCCおよび健常喫煙者試料の決定木分類
【0122】
考察
SELDI/TOF-MS技法を用いて、本発明者らは驚くべきことに、迅速かつ再現性のある様式で、気管支洗浄液試料による肺癌の検出に関して86.89%の特異性および84.62%の感度、ならびに血清試料による肺癌の検出に関して83.3%の特異性および81.0%の感度を達成した。肺癌はほとんどの場合喫煙に関連しているが、前記の実施例において使用した対照気管支洗浄試料および血清試料の多くはこの危険因子をもたない正常個体から採取した。図6〜8に見られるように、健常喫煙者のタンパク質発現パターンは、非喫煙者のパターンよりも肺癌患者のパターンに類似していた。意味深いことに、正常から癌への進行は多巣性であり不均一であることから、健常喫煙者と肺癌患者との差は、正常健常対照と肺癌患者との差よりも小さいと考えられた。このことから、いくらかの「健常」喫煙者は、明白な臨床的徴候をもたずに肺癌を発症している途中であろうことが示唆される。
【0123】
多くのタンパク質ピークは、対照試料と比較して肺癌において高い統計的有意性で差次的に発現されることが認められた(図10)。これらの有意なピークのすべてが分類木アルゴリズムにおいて用いられたわけではないものの、本発明が差次的に発現されるマーカーの使用を意図することに注目すべきである。予測材料として機能し得る単一の変数のみを求める統計的手段とは異なり、CART解析では変数の組み合わせを調べる。単一のタンパク質ピークに関して群の平均差を試験した場合に、有意なp値が達成され得る。分類アルゴリズムでは、最も優れた分類を提供するピーク発現の組み合わせを求めて、多くの異なる変数を一度に試験することができる。さらに、群間で試験した場合に有意なp値をもたないピークも、実際には分類アルゴリズムと関連し得る。例えば、図4に示す気管支洗浄液についての最も性能のよい分類木で用いられる2つのピーク(3506および4571 Da)は、2つの洗浄液群の間では個々に差次的に発現されなかった。しかしこれらは、3820 Daの有意なピークによって階層化された群のサブセットを描写するための分類木に対しては有意であった。肺癌群と非癌群との識別に関して最大の感度/特異性をもたらす組み合わせでは、いくつかの異なる質量のパターンが用いられた。これらの質量のうち、3820 Daピークは肺癌において低発現するものであり、SELDI技術がどのように肺癌の新規生物学的マーカーの発見に役立ち得るか、およびどのようにタンパク質発現パターンの相違の解析を提供し得るかの一例である。
【0124】
本明細書に記載の現段階で最も好ましい肺癌分類システムの使用は、2つの異なる質量分類のタンパク質「フィンガープリント」パターンに依存する。気管支洗浄試料に関する第1分類は、4つの質量:約3820、約3506、約4571、および約6933ダルトンを有する。血清試料に関する第2分類は、6つの質量:約8603、約3887、約4644、約8630、約4301、および約8674ダルトンを有する。これらの質量は、再現性よくかつ確実に検出されることが認められた。これらのバイオマーカーに関する質量値および発現レベル(すなわち、各ピークの値)により、正確な分類または診断が可能になった。重要なことには、差次的診断を目的とする場合に、これらのバイオマーカーの同一性を知る必要はない。
【0125】
重要な診断ツールであることに加えて、SELDIタンパク質プロファイルはまた、特定の癌治療が奏功しているか否かを決定するため、および患者を持続性または再発性疾患に関してモニターし得るために、肺癌の治療前、治療中、および治療後に利用することができる。
【0126】
SELDIタンパク質フィンガープリント法は、伝統的な癌診断アプローチからのパラダイムシフトを示す。潜在的に新規なタンパク質バイオマーカーの発見は、SELDI/TOF-MSにより容易になる。特定の理論によって制約されることを意図しないが、個々のタンパク質変化よりもむしろタンパク質パターンの方が、正常健常個体と肺癌を有するかまたは肺癌を発症する可能性のある個体を識別するのに、より重要であるようである。SELDI/TOF-MS技法と強力な人工知能分類アルゴリズムを併用することで、本研究において達成された高い感度および特異性により、健常対照と肺癌患者を識別する血清中のタンパク質パターンが同定された。この技法により、蓄積が容易であり、かつ臨床上での使用に直ちに結びつくはずのデータが提供される。
【0127】
本発明を図および上記の記載において詳細に説明し記載したが、これは特徴を説明するものであって制限するものでないと考えるべきであり、好ましい態様のみを示し説明したこと、ならびに本発明の精神の範囲内に入るすべての変更および修正が保護されるよう所望されることを理解すべきである。さらに、本明細書に引用した参考文献および特許はすべて当技術分野における技術のレベルを示し、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】図1A〜1Cは、肺癌患者の気管支洗浄液(「BALF」)の代表的なSELDIスペクトルを示す。図1Aは、2000 Da〜10000 DaのピークのSELDIスペクトルを示し;図1Bは、10000 Da〜20000 Daのピークを示し;図1Cは、20000 Da〜100000 Daのピークのスペクトルを示す。
【図2】図2Aは、正常対照の洗浄試料と比較した、肺癌患者の気管支洗浄試料の代表的なSELDIゲル図を示す。2つの「ボックス」は、対照試料と比較して肺癌試料において低発現している、約3820ダルトンおよび約4069ダルトンの平均質量を有するピークを示す。図2Bは、正常対照の洗浄液と比較した、肺癌患者の気管支洗浄液におけるこれらのタンパク質の発現レベルを示す。「‐」は平均標準化強度を示す。
【図3】図3Aは、20,000〜60,000 m/zにおける、正常対照の試料と比較した、肺癌患者の気管支洗浄試料の代表的なSELDIスペクトルを示す。「ボックス」は、正常試料と比較して肺癌試料において過剰発現している、約30132 Daの平均質量を有するピークを示す。図3Bは、正常対照の試料と比較した、肺癌患者の気管支洗浄試料における約30132 Daタンパク質の発現レベルを示す。「‐」は平均標準化強度を示し、「■」および「●」は、それぞれ個々の対照(正常または非関与)および肺癌患者の値を示す。
【図4】実施例1に記載した、気管支洗浄液試料に基づく決定木分類システムの略図を示す。太字の四角は一次ノードであり、太字でない四角は末端ノードを示す。ルートノード中の質量値は≦強度値を伴う。
【図5】図5A〜5Cは、肺癌患者の血清の代表的なSELDIスペクトルを示す。図5Aは、2000〜10000 Daのピークを示し;図5Bは、10000〜20000 Daのピークを示し;図5Cは、20000 Da〜100000 Daのピークを示す。
【図6】約7,500〜10,000 m/zにおける、健常喫煙者(「正常喫煙者」)、健常非喫煙者(「正常非喫煙者」)、および異常なCTを有する非癌患者(「非癌異常CT」)の血清と比較した、肺癌患者(「肺癌」)の血清の代表的なSELDIスペクトル(A)およびゲル図(B)を示す。「ボックス」は、正常試料と比較して肺癌試料において差次的に発現している、約7766、8603、および8933ダルトンの平均質量を有するピークを示す。具体的には、非癌血清と比較して、約7766ダルトンバイオマーカーは肺癌血清において低発現しており、約8603および8933ダルトンバイオマーカーは肺癌血清に置いて過剰発現していることが示される。図6Cは、健常喫煙者(「喫煙者」)、健常非喫煙者(「非喫煙者」)、および異常なCTを有する非癌患者(「異常CT」)の血清試料と比較した、肺癌患者(「肺癌」)の血清試料における約7766、8603、および8933 Daタンパク質の発現レベルを示す。「‐」は平均標準化強度を示し、「■」、「●」、「▲」、および「◆」、は、それぞれ個々の肺癌、異常CT、正常非喫煙者、および正常喫煙者患者の値を示す。
【図7】図7A〜7Dは、健常喫煙者(「正常喫煙者」)、健常非喫煙者(「正常非喫煙者」)、および異常なCTを有する非癌患者(「非癌異常CT」)の血清と比較した、肺癌患者(「肺癌」)の血清における、それぞれ約4748、7566、4301、および4644ダルトンタンパク質の発現レベルを示す。「‐」は平均標準化強度を示し、「■」、「●」、「▲」、および「◆」は、それぞれ個々の肺癌、異常CT、正常非喫煙者、および正常喫煙者患者の値を示す。
【図8】図8Aおよび8Bは、正常非喫煙者(A)および正常喫煙者(B)と比較して最も高いp値を有する、肺癌血清による約8603 Daにおけるピークの1つの受信者動作特性(「ROC」)プロットを示す。このピークは、肺癌患者において過剰発現される。図8Cは、正常非喫煙者の血清と比較した肺癌血清の約8674 DaピークのROCプロットを示し、図8Dは、正常喫煙者の血清と比較した肺癌血清の約4301 DaピークのROCプロットを示す。
【図9】実施例2で利用した、血清に基づく決定木分類システムの略図を示す。太字の四角は一次ノードであり、太字でない四角は末端ノードを示す。ルートノード中の質量値は≦強度値を伴う。「dis」は罹患患者を意味し;「nondis」は非罹患患者を意味する。
【図10】正常対照と比較して、肺癌患者の血清および気管支洗浄(「BAL」)試料において差次的に発現される種々のタンパク質ピークを示す。
【図11】本発明のコンピュータ実行態様に従ってコンピュータプロセスを実行するための、中央演算処理装置の一例を示す。
【図12】図11の中央演算処理装置の内部ハードウェアのブロック図の一例を示す。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
肺癌に罹患している疑いのある患者から生物試料を採取する段階;
の分子量を有するタンパク質バイオマーカーからなる群より選択される、該試料中の少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーを検出する段階を含む、患者における肺癌の診断を支援する方法であって、該少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーの該検出が該患者における肺癌の診断と相関づけられる方法。
【請求項2】
検出段階が、少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーの差次的発現を同定する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
相関づけが、試料中の少なくとも1つタンパク質バイオマーカーの有無、および対照中の、同一の該少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーの検出頻度を考慮に入れる、請求項1記載の方法。
【請求項4】
相関づけが、少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーの対照量と比較した、試料中の該少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーの量をさらに考慮に入れる、請求項3記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーが、約3820±19、3506±17、4571±23、および6933±34ダルトンバイオマーカーの分子量を有するタンパク質バイオマーカーからなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項6】
約3820±19、3506±17、4571±23、および6933±34ダルトンバイオマーカーの分子量を有するタンパク質バイオマーカーの量を決定する段階を含む、請求項5記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーが、約8603±43、3887±19、4644±23、8630±43、4301±21、および8674±43ダルトンバイオマーカーの分子量を有するタンパク質バイオマーカーからなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項8】
約8603±43、3887±19、4644±23、8630±43、4301±21、および8674±43ダルトンバイオマーカーの分子量を有するタンパク質バイオマーカーの量を決定する段階を含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーを検出する段階が質量分析法によって行われる、請求項1記載の方法。
【請求項10】
質量分析がレーザー脱離質量分析法である、請求項9記載の方法。
【請求項11】
質量分析が表面増強レーザー脱離/イオン化質量分析である、請求項10記載の方法。
【請求項12】
レーザー脱離/イオン化質量分析が、そこに付着した吸着剤を含む基材を提供する段階、生物試料を吸着剤と接触させる段階、基材からバイオマーカーを脱離およびイオン化する段階、ならびに脱離/イオン化したバイオマーカーを質量分析計で検出する段階を含む、請求項11記載の方法。
【請求項13】
生物試料を吸着剤と接触させる前に生物試料を精製する段階をさらに含む、請求項12記載の方法。
【請求項14】
対象に由来する生物試料中の少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーを検出する段階が免疫測定法によって行われる、請求項1記載の方法。
【請求項15】
免疫測定法が酵素免疫測定法である、請求項14記載の方法。
【請求項16】
生物試料が体液および組織からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項17】
生物試料が血清である、請求項1記載の方法。
【請求項18】
生物試料が気管支洗浄液である、請求項1記載の方法。
【請求項19】
生物試料が、精液、精漿、唾液、血液、リンパ液、肺/気管支洗液、粘液、便、乳頭分泌液、痰、涙液、または尿からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項20】
2〜60個のバイオマーカーが検出される、請求項1記載の方法。
【請求項21】
約3820±19、3506±17、4571±23、および6933±34ダルトンからなる群より選択される分子量を有するタンパク質バイオマーカーの有無を検出する段階、および検出と肺癌の可能性があるという診断とを相関づける段階を含む、請求項1記載の方法。
【請求項22】
約3820±19ダルトンの分子量を有するタンパク質バイオマーカーの有無を検出する、請求項21記載の方法。
【請求項23】
約3820±19および約3506±17ダルトンの分子量を有するタンパク質バイオマーカーの有無を検出する、請求項21記載の方法。
【請求項24】
約3820±19、約3506±17、および約4571±23ダルトンの分子量を有するタンパク質バイオマーカーの有無を検出する、請求項21記載の方法。
【請求項25】
約3820±19、約3506±17、約4571±23、および約6933±34ダルトンの分子量を有するタンパク質バイオマーカーの有無を検出する、請求項21記載の方法。
【請求項26】
約3820±19および約6933±34ダルトンの分子量を有するタンパク質バイオマーカーの有無を検出する、請求項21記載の方法。
【請求項27】
検出段階が質量分析によって行われる、請求項21記載の方法。
【請求項28】
質量分析がレーザー脱離質量分析である、請求項27記載の方法。
【請求項29】
質量分析が表面増強レーザー脱離/イオン化質量分析である、請求項28記載の方法。
【請求項30】
レーザー脱離/イオン化質量分析が、付着した吸着剤を含む基材を提供する段階、生物試料を吸着剤と接触させる段階、基材からバイオマーカーを脱離およびイオン化する段階、ならびに脱離/イオン化したバイオマーカーを質量分析計で検出する段階を含む、請求項29記載の方法。
【請求項31】
試験試料を吸着剤と接触させる前に生物試料を精製する段階をさらに含む、請求項30記載の方法。
【請求項32】
検出段階が免疫測定法によって行われる、請求項21記載の方法。
【請求項33】
免疫測定法が酵素免疫測定法である、請求項32記載の方法。
【請求項34】
約8603±43、3887±19、4644±23、8630±43、4301±21、および8674±43ダルトンからなる群より選択される分子量を有するタンパク質バイオマーカーの有無を検出する段階、および検出と肺癌の可能性があるという診断とを相関づける段階を含む、請求項1記載の方法。
【請求項35】
約8603±43ダルトンの分子量を有するタンパク質バイオマーカーの有無を検出する、請求項34記載の方法。
【請求項36】
約8603±43および約3887±19ダルトンの分子量を有するタンパク質バイオマーカーの有無を検出する、請求項34記載の方法。
【請求項37】
約8603±43、約3887±19、および約4644±23ダルトンの分子量を有するタンパク質バイオマーカーの有無を検出する、請求項34記載の方法。
【請求項38】
約8603±43、約3887±19、約4644±23、および約8630±43ダルトンの分子量を有するタンパク質バイオマーカーの有無を検出する、請求項34記載の方法。
【請求項39】
約8603±43、約3887±19、約4644±23、約8630±43、および約4301±21ダルトンの分子量を有するタンパク質バイオマーカーの有無を検出する、請求項34記載の方法。
【請求項40】
約8603±43、約3887±19、約4644±23、約8630±43、約4301±21、および約8674±43ダルトンの分子量を有するタンパク質バイオマーカーの有無を検出する、請求項34記載の方法。
【請求項41】
検出段階が質量分析によって行われる、請求項34記載の方法。
【請求項42】
質量分析がレーザー脱離質量分析である、請求項41記載の方法。
【請求項43】
質量分析が表面増強レーザー脱離/イオン化質量分析である、請求項42記載の方法。
【請求項44】
レーザー脱離/イオン化質量分析法、付着した吸着剤を含む基材を提供する段階、生物試料を吸着剤と接触させる段階、基材からバイオマーカーを脱離およびイオン化する段階、ならびに脱離/イオン化したバイオマーカーを質量分析計で検出する段階を含む、請求項43記載の方法。
【請求項45】
試験試料を吸着剤と接触させる前に生物試料を精製する段階をさらに含む、請求項44記載の方法。
【請求項46】
以下を含む基材を含むキット:
(a) 約3820±19、3506±17、4571±23、および6933±34ダルトンの分子量を有するタンパク質バイオマーカーからなる群より選択される少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーを保持し得る、付着した吸着剤、および
(b) 試験試料を吸着剤と接触させ、吸着剤によって保持されたバイオマーカーを検出することによって、タンパク質バイオマーカーを検出するための説明書。
【請求項47】
基材が気相イオン分光計での使用に適合したプローブであり、該プローブが吸着剤が付着した表面を有する、請求項46記載のキット。
【請求項48】
吸着剤が金属キレート吸着剤である、請求項46記載のキット。
【請求項49】
吸着剤が陽イオン基を含む、請求項46記載のキット。
【請求項50】
基材が複数の異なる種類の吸着剤を含む、請求項46記載のキット。
【請求項51】
吸着剤が、バイオマーカーに特異的に結合する抗体である、請求項46記載のキット。
【請求項52】
キットが溶離剤をさらに含み、溶離剤で洗浄した際にバイオマーカーが吸着剤上に保持される、請求項46記載のキット。
【請求項53】
以下を含む基材を含むキット:
(a) 約8603±43、3887±19、4644±23、8630±43、4301±21、および8674±43ダルトンの分子量を有するタンパク質バイオマーカーからなる群より選択される少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーを保持し得る、付着した吸着剤、および
(b) 試験試料を吸着剤と接触させ、吸着剤によって保持されたバイオマーカーを検出することによって、タンパク質バイオマーカーを検出するための説明書。
【請求項54】
基材が気相イオン分光計での使用に適合したプローブであり、該プローブが吸着剤が付着した表面を有する、請求項53記載のキット。
【請求項55】
吸着剤が金属キレート吸着剤である、請求項53記載のキット。
【請求項56】
吸着剤が陽イオン基を含む、請求項53記載のキット。
【請求項57】
基材が複数の異なる種類の吸着剤を含む、請求項53記載のキット。
【請求項58】
吸着剤が、バイオマーカーに特異的に結合する抗体である、請求項53記載のキット。
【請求項59】
キットが溶離剤をさらに含み、溶離剤で洗浄した際にバイオマーカーが吸着剤上に保持される、請求項53記載のキット。
【請求項60】
以下を含むキット:
(a)
の分子量を有するタンパク質バイオマーカーからなる群より選択される少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーを保持し得る付着した吸着剤を含む、基材;および
(b) 試験試料を吸着剤と接触させ、吸着剤によって得られたバイオマーカーを検出することによって、タンパク質バイオマーカーを検出するための説明書。
【請求項61】
基材が気相イオン分光計での使用に適合したプローブであり、該プローブが吸着剤が付着した表面を有する、請求項60記載のキット。
【請求項62】
吸着剤が金属キレート吸着剤である、請求項60記載のキット。
【請求項63】
吸着剤が陽イオン基を含む、請求項60記載のキット。
【請求項64】
基材が複数の異なる種類の吸着剤を含む、請求項60記載のキット。
【請求項65】
吸着剤が、バイオマーカーに特異的に結合する抗体である、請求項60記載のキット。
【請求項66】
キットが溶離剤をさらに含み、溶離剤で洗浄した際にバイオマーカーが吸着剤上に保持される、請求項60記載のキット。
【請求項67】
正常対象および肺癌と診断された対象に由来する複数の試料から質量スペクトルを得る段階;および質量スペクトルの少なくとも一部に決定木解析を適用してピーク強度値および関連閾値を含む複数の加重ベース分類子を得る段階を含み、該値を線形結合で使用することによって、肺癌の少なくとも1つの可能性があるという診断および陰性診断がなされる、複数の分類子を使用して肺癌の可能性があるという診断または陰性診断を行う方法。
【請求項68】
以下を含む、肺癌の診断を支援するコンピュータ実行プロセスを実行するようコンピュータに命令するためのコンピュータ指示を格納しているコンピュータプログラム媒体:
(a)
からなる群より選択される分子量を有する、対象に由来する試験試料中の少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーを検出するための、第1コンピュータプログラムコード手段;および
(b) 検出と肺癌の可能性があるという診断または陰性診断とを相関づけるための、第2コンピュータプログラムコード手段。
【請求項69】
少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーが約3820±19ダルトンタンパク質バイオマーカーの分子量を有する、請求項68記載の媒体。
【請求項70】
タンパク質バイオマーカーが約3820±19および3506±17ダルトンバイオマーカーの分子量を有する、請求項68記載の媒体。
【請求項71】
タンパク質バイオマーカーが約3820±19、3506±17、および4571±23ダルトンバイオマーカーの分子量を有する、請求項68記載の媒体。
【請求項72】
タンパク質バイオマーカーが約3820±19、3506±17、4571±23、および6933±34ダルトンバイオマーカーの分子量を有する、請求項68記載の媒体。
【請求項73】
タンパク質バイオマーカーが約3820±19および6933±34ダルトンバイオマーカーの分子量を有する、請求項68記載の媒体。
【請求項74】
少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーが約8603±43ダルトンタンパク質バイオマーカーの分子量を有する、請求項68記載の媒体。
【請求項75】
タンパク質バイオマーカーが約8603±43および3887±19ダルトンバイオマーカーの分子量を有する、請求項68記載の媒体。
【請求項76】
タンパク質バイオマーカーが約8603±43、3887±19、および4644±23ダルトンバイオマーカーの分子量を有する、請求項68記載の媒体。
【請求項77】
タンパク質バイオマーカーが約8603±43、3887±19、4644±23、および8630±43ダルトンバイオマーカーの分子量を有する、請求項68記載の媒体。
【請求項78】
タンパク質バイオマーカーが約8603±43、3887±19、4644±23、8630±43、および4301±21ダルトンバイオマーカーの分子量を有する、請求項68記載の媒体。
【請求項79】
タンパク質バイオマーカーが約8603±43、3887±19、4644±23、8630±43、4301±21、および8674±43ダルトンバイオマーカーの分子量を有する、請求項68記載の媒体。
【請求項80】
タンパク質バイオマーカーが約3820±19ダルトンの分子量を有する、請求項1記載の方法。
【請求項81】
約3820±19ダルトンの分子量を有するタンパク質バイオマーカーの量を決定する段階を含む、請求項80記載の方法。
【請求項82】
タンパク質バイオマーカーが約8603±43ダルトンの分子量を有する、請求項1記載の方法。
【請求項83】
約8603±43ダルトンの分子量を有するタンパク質バイオマーカーの量を決定する段階を含む、請求項82記載の方法。
【請求項84】
肺癌に罹患している疑いのある患者から生物試料を採取する段階、表面増強レーザー脱離/イオン化飛行時間型質量分析法(SELDI-TOF-MS)により、約3820±19、3506±17、4571±23、および6933±34ダルトンの分子量を有するタンパク質バイオマーカーからなる群より選択される、該試料中の少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーを検出する段階を含む、患者における肺癌の診断を支援する方法であって、該少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーの該検出が該患者における肺癌の診断と相関づけられる方法。
【請求項85】
肺癌に罹患している疑いのある患者から生物試料を採取する段階、表面増強レーザー脱離/イオン化飛行時間型質量分析法(SELDI-TOF-MS)により、約8603±43、3887±19、4644±23、8630±43、4301±21、および8674±43ダルトンの分子量を有するタンパク質バイオマーカーからなる群より選択される、該試料中の少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーを検出する段階を含む、患者における肺癌の診断を支援する方法であって、該少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーの該検出が該患者における肺癌の診断と相関づけられる方法。
【請求項86】
肺癌に罹患している疑いのある患者から体液試料を採取する段階、表面増強レーザー脱離/イオン化飛行時間型質量分析法(SELDI-TOF-MS)により、該試料中の約3820±19ダルトンの分子量を有するタンパク質バイオマーカーを検出する段階を含む、患者における肺癌の診断を支援する方法であって、該タンパク質バイオマーカーの該検出が該患者における肺癌の診断と相関づけられる方法。
【請求項87】
肺癌に罹患している疑いのある患者から体液試料を採取する段階、表面増強レーザー脱離/イオン化飛行時間型質量分析法(SELDI-TOF-MS)により、該試料中の約3820±19ダルトンの分子量を有するタンパク質バイオマーカーの量を検出する段階を含む、患者における肺癌の診断を支援する方法であって、該タンパク質バイオマーカーの低発現が該患者における肺癌の診断と相関づけられる方法。
【請求項88】
肺癌に罹患している疑いのある患者から体液試料を採取する段階、表面増強レーザー脱離/イオン化飛行時間型質量分析法(SELDI-TOF-MS)により、該試料中の約8603±43ダルトンの分子量を有するタンパク質バイオマーカーを検出する段階を含む、患者における肺癌の診断を支援する方法であって、該タンパク質バイオマーカーの該検出が該患者における肺癌の診断と相関づけられる方法。
【請求項89】
肺癌に罹患している疑いのある患者から体液試料を採取する段階、表面増強レーザー脱離/イオン化飛行時間型質量分析法(SELDI-TOF-MS)により、該試料中の約8603±43ダルトンの分子量を有するタンパク質バイオマーカーの量を検出する段階を含む、患者における肺癌の診断を支援する方法であって、該タンパク質バイオマーカーの過剰発現が該患者における肺癌の診断と相関づけられる方法。
【請求項90】
肺癌治療を受けている患者から生物試料を採取する段階;
の分子量を有するタンパク質バイオマーカーからなる群より選択される、該試料中の少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーの量を検出する段階;該少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーの量と既知の標準とを比較する段階;および該肺癌治療の有効性を判定する段階を含む、患者における肺癌治療の有効性をモニターする方法。
【請求項91】
既知の標準が健常対照に由来する生物試料である、請求項90記載の方法。
【請求項92】
既知の標準が肺癌患者から肺癌治療を行う前に採取された生物試料である、請求項90記載の方法。
【請求項93】
肺癌に罹患している疑いのある患者から気管支洗浄液試料を採取する段階;
の分子量を有するタンパク質バイオマーカーからなる群より選択される、該試料中の少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーを検出する段階を含む、患者における肺癌の診断を支援する方法であって、該少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーの該検出が該患者における肺癌の診断と相関づけられる方法。
【請求項94】
肺癌に罹患している疑いのある患者から血清試料を採取する段階;
の分子量を有するタンパク質バイオマーカーからなる群より選択される、該試料中の少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーを検出する段階を含む、患者における肺癌の診断を支援する方法であって、該少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーの該検出が該患者における肺癌の診断と相関づけられる方法。
【請求項1】
肺癌に罹患している疑いのある患者から生物試料を採取する段階;
の分子量を有するタンパク質バイオマーカーからなる群より選択される、該試料中の少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーを検出する段階を含む、患者における肺癌の診断を支援する方法であって、該少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーの該検出が該患者における肺癌の診断と相関づけられる方法。
【請求項2】
検出段階が、少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーの差次的発現を同定する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
相関づけが、試料中の少なくとも1つタンパク質バイオマーカーの有無、および対照中の、同一の該少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーの検出頻度を考慮に入れる、請求項1記載の方法。
【請求項4】
相関づけが、少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーの対照量と比較した、試料中の該少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーの量をさらに考慮に入れる、請求項3記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーが、約3820±19、3506±17、4571±23、および6933±34ダルトンバイオマーカーの分子量を有するタンパク質バイオマーカーからなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項6】
約3820±19、3506±17、4571±23、および6933±34ダルトンバイオマーカーの分子量を有するタンパク質バイオマーカーの量を決定する段階を含む、請求項5記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーが、約8603±43、3887±19、4644±23、8630±43、4301±21、および8674±43ダルトンバイオマーカーの分子量を有するタンパク質バイオマーカーからなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項8】
約8603±43、3887±19、4644±23、8630±43、4301±21、および8674±43ダルトンバイオマーカーの分子量を有するタンパク質バイオマーカーの量を決定する段階を含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーを検出する段階が質量分析法によって行われる、請求項1記載の方法。
【請求項10】
質量分析がレーザー脱離質量分析法である、請求項9記載の方法。
【請求項11】
質量分析が表面増強レーザー脱離/イオン化質量分析である、請求項10記載の方法。
【請求項12】
レーザー脱離/イオン化質量分析が、そこに付着した吸着剤を含む基材を提供する段階、生物試料を吸着剤と接触させる段階、基材からバイオマーカーを脱離およびイオン化する段階、ならびに脱離/イオン化したバイオマーカーを質量分析計で検出する段階を含む、請求項11記載の方法。
【請求項13】
生物試料を吸着剤と接触させる前に生物試料を精製する段階をさらに含む、請求項12記載の方法。
【請求項14】
対象に由来する生物試料中の少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーを検出する段階が免疫測定法によって行われる、請求項1記載の方法。
【請求項15】
免疫測定法が酵素免疫測定法である、請求項14記載の方法。
【請求項16】
生物試料が体液および組織からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項17】
生物試料が血清である、請求項1記載の方法。
【請求項18】
生物試料が気管支洗浄液である、請求項1記載の方法。
【請求項19】
生物試料が、精液、精漿、唾液、血液、リンパ液、肺/気管支洗液、粘液、便、乳頭分泌液、痰、涙液、または尿からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項20】
2〜60個のバイオマーカーが検出される、請求項1記載の方法。
【請求項21】
約3820±19、3506±17、4571±23、および6933±34ダルトンからなる群より選択される分子量を有するタンパク質バイオマーカーの有無を検出する段階、および検出と肺癌の可能性があるという診断とを相関づける段階を含む、請求項1記載の方法。
【請求項22】
約3820±19ダルトンの分子量を有するタンパク質バイオマーカーの有無を検出する、請求項21記載の方法。
【請求項23】
約3820±19および約3506±17ダルトンの分子量を有するタンパク質バイオマーカーの有無を検出する、請求項21記載の方法。
【請求項24】
約3820±19、約3506±17、および約4571±23ダルトンの分子量を有するタンパク質バイオマーカーの有無を検出する、請求項21記載の方法。
【請求項25】
約3820±19、約3506±17、約4571±23、および約6933±34ダルトンの分子量を有するタンパク質バイオマーカーの有無を検出する、請求項21記載の方法。
【請求項26】
約3820±19および約6933±34ダルトンの分子量を有するタンパク質バイオマーカーの有無を検出する、請求項21記載の方法。
【請求項27】
検出段階が質量分析によって行われる、請求項21記載の方法。
【請求項28】
質量分析がレーザー脱離質量分析である、請求項27記載の方法。
【請求項29】
質量分析が表面増強レーザー脱離/イオン化質量分析である、請求項28記載の方法。
【請求項30】
レーザー脱離/イオン化質量分析が、付着した吸着剤を含む基材を提供する段階、生物試料を吸着剤と接触させる段階、基材からバイオマーカーを脱離およびイオン化する段階、ならびに脱離/イオン化したバイオマーカーを質量分析計で検出する段階を含む、請求項29記載の方法。
【請求項31】
試験試料を吸着剤と接触させる前に生物試料を精製する段階をさらに含む、請求項30記載の方法。
【請求項32】
検出段階が免疫測定法によって行われる、請求項21記載の方法。
【請求項33】
免疫測定法が酵素免疫測定法である、請求項32記載の方法。
【請求項34】
約8603±43、3887±19、4644±23、8630±43、4301±21、および8674±43ダルトンからなる群より選択される分子量を有するタンパク質バイオマーカーの有無を検出する段階、および検出と肺癌の可能性があるという診断とを相関づける段階を含む、請求項1記載の方法。
【請求項35】
約8603±43ダルトンの分子量を有するタンパク質バイオマーカーの有無を検出する、請求項34記載の方法。
【請求項36】
約8603±43および約3887±19ダルトンの分子量を有するタンパク質バイオマーカーの有無を検出する、請求項34記載の方法。
【請求項37】
約8603±43、約3887±19、および約4644±23ダルトンの分子量を有するタンパク質バイオマーカーの有無を検出する、請求項34記載の方法。
【請求項38】
約8603±43、約3887±19、約4644±23、および約8630±43ダルトンの分子量を有するタンパク質バイオマーカーの有無を検出する、請求項34記載の方法。
【請求項39】
約8603±43、約3887±19、約4644±23、約8630±43、および約4301±21ダルトンの分子量を有するタンパク質バイオマーカーの有無を検出する、請求項34記載の方法。
【請求項40】
約8603±43、約3887±19、約4644±23、約8630±43、約4301±21、および約8674±43ダルトンの分子量を有するタンパク質バイオマーカーの有無を検出する、請求項34記載の方法。
【請求項41】
検出段階が質量分析によって行われる、請求項34記載の方法。
【請求項42】
質量分析がレーザー脱離質量分析である、請求項41記載の方法。
【請求項43】
質量分析が表面増強レーザー脱離/イオン化質量分析である、請求項42記載の方法。
【請求項44】
レーザー脱離/イオン化質量分析法、付着した吸着剤を含む基材を提供する段階、生物試料を吸着剤と接触させる段階、基材からバイオマーカーを脱離およびイオン化する段階、ならびに脱離/イオン化したバイオマーカーを質量分析計で検出する段階を含む、請求項43記載の方法。
【請求項45】
試験試料を吸着剤と接触させる前に生物試料を精製する段階をさらに含む、請求項44記載の方法。
【請求項46】
以下を含む基材を含むキット:
(a) 約3820±19、3506±17、4571±23、および6933±34ダルトンの分子量を有するタンパク質バイオマーカーからなる群より選択される少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーを保持し得る、付着した吸着剤、および
(b) 試験試料を吸着剤と接触させ、吸着剤によって保持されたバイオマーカーを検出することによって、タンパク質バイオマーカーを検出するための説明書。
【請求項47】
基材が気相イオン分光計での使用に適合したプローブであり、該プローブが吸着剤が付着した表面を有する、請求項46記載のキット。
【請求項48】
吸着剤が金属キレート吸着剤である、請求項46記載のキット。
【請求項49】
吸着剤が陽イオン基を含む、請求項46記載のキット。
【請求項50】
基材が複数の異なる種類の吸着剤を含む、請求項46記載のキット。
【請求項51】
吸着剤が、バイオマーカーに特異的に結合する抗体である、請求項46記載のキット。
【請求項52】
キットが溶離剤をさらに含み、溶離剤で洗浄した際にバイオマーカーが吸着剤上に保持される、請求項46記載のキット。
【請求項53】
以下を含む基材を含むキット:
(a) 約8603±43、3887±19、4644±23、8630±43、4301±21、および8674±43ダルトンの分子量を有するタンパク質バイオマーカーからなる群より選択される少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーを保持し得る、付着した吸着剤、および
(b) 試験試料を吸着剤と接触させ、吸着剤によって保持されたバイオマーカーを検出することによって、タンパク質バイオマーカーを検出するための説明書。
【請求項54】
基材が気相イオン分光計での使用に適合したプローブであり、該プローブが吸着剤が付着した表面を有する、請求項53記載のキット。
【請求項55】
吸着剤が金属キレート吸着剤である、請求項53記載のキット。
【請求項56】
吸着剤が陽イオン基を含む、請求項53記載のキット。
【請求項57】
基材が複数の異なる種類の吸着剤を含む、請求項53記載のキット。
【請求項58】
吸着剤が、バイオマーカーに特異的に結合する抗体である、請求項53記載のキット。
【請求項59】
キットが溶離剤をさらに含み、溶離剤で洗浄した際にバイオマーカーが吸着剤上に保持される、請求項53記載のキット。
【請求項60】
以下を含むキット:
(a)
の分子量を有するタンパク質バイオマーカーからなる群より選択される少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーを保持し得る付着した吸着剤を含む、基材;および
(b) 試験試料を吸着剤と接触させ、吸着剤によって得られたバイオマーカーを検出することによって、タンパク質バイオマーカーを検出するための説明書。
【請求項61】
基材が気相イオン分光計での使用に適合したプローブであり、該プローブが吸着剤が付着した表面を有する、請求項60記載のキット。
【請求項62】
吸着剤が金属キレート吸着剤である、請求項60記載のキット。
【請求項63】
吸着剤が陽イオン基を含む、請求項60記載のキット。
【請求項64】
基材が複数の異なる種類の吸着剤を含む、請求項60記載のキット。
【請求項65】
吸着剤が、バイオマーカーに特異的に結合する抗体である、請求項60記載のキット。
【請求項66】
キットが溶離剤をさらに含み、溶離剤で洗浄した際にバイオマーカーが吸着剤上に保持される、請求項60記載のキット。
【請求項67】
正常対象および肺癌と診断された対象に由来する複数の試料から質量スペクトルを得る段階;および質量スペクトルの少なくとも一部に決定木解析を適用してピーク強度値および関連閾値を含む複数の加重ベース分類子を得る段階を含み、該値を線形結合で使用することによって、肺癌の少なくとも1つの可能性があるという診断および陰性診断がなされる、複数の分類子を使用して肺癌の可能性があるという診断または陰性診断を行う方法。
【請求項68】
以下を含む、肺癌の診断を支援するコンピュータ実行プロセスを実行するようコンピュータに命令するためのコンピュータ指示を格納しているコンピュータプログラム媒体:
(a)
からなる群より選択される分子量を有する、対象に由来する試験試料中の少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーを検出するための、第1コンピュータプログラムコード手段;および
(b) 検出と肺癌の可能性があるという診断または陰性診断とを相関づけるための、第2コンピュータプログラムコード手段。
【請求項69】
少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーが約3820±19ダルトンタンパク質バイオマーカーの分子量を有する、請求項68記載の媒体。
【請求項70】
タンパク質バイオマーカーが約3820±19および3506±17ダルトンバイオマーカーの分子量を有する、請求項68記載の媒体。
【請求項71】
タンパク質バイオマーカーが約3820±19、3506±17、および4571±23ダルトンバイオマーカーの分子量を有する、請求項68記載の媒体。
【請求項72】
タンパク質バイオマーカーが約3820±19、3506±17、4571±23、および6933±34ダルトンバイオマーカーの分子量を有する、請求項68記載の媒体。
【請求項73】
タンパク質バイオマーカーが約3820±19および6933±34ダルトンバイオマーカーの分子量を有する、請求項68記載の媒体。
【請求項74】
少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーが約8603±43ダルトンタンパク質バイオマーカーの分子量を有する、請求項68記載の媒体。
【請求項75】
タンパク質バイオマーカーが約8603±43および3887±19ダルトンバイオマーカーの分子量を有する、請求項68記載の媒体。
【請求項76】
タンパク質バイオマーカーが約8603±43、3887±19、および4644±23ダルトンバイオマーカーの分子量を有する、請求項68記載の媒体。
【請求項77】
タンパク質バイオマーカーが約8603±43、3887±19、4644±23、および8630±43ダルトンバイオマーカーの分子量を有する、請求項68記載の媒体。
【請求項78】
タンパク質バイオマーカーが約8603±43、3887±19、4644±23、8630±43、および4301±21ダルトンバイオマーカーの分子量を有する、請求項68記載の媒体。
【請求項79】
タンパク質バイオマーカーが約8603±43、3887±19、4644±23、8630±43、4301±21、および8674±43ダルトンバイオマーカーの分子量を有する、請求項68記載の媒体。
【請求項80】
タンパク質バイオマーカーが約3820±19ダルトンの分子量を有する、請求項1記載の方法。
【請求項81】
約3820±19ダルトンの分子量を有するタンパク質バイオマーカーの量を決定する段階を含む、請求項80記載の方法。
【請求項82】
タンパク質バイオマーカーが約8603±43ダルトンの分子量を有する、請求項1記載の方法。
【請求項83】
約8603±43ダルトンの分子量を有するタンパク質バイオマーカーの量を決定する段階を含む、請求項82記載の方法。
【請求項84】
肺癌に罹患している疑いのある患者から生物試料を採取する段階、表面増強レーザー脱離/イオン化飛行時間型質量分析法(SELDI-TOF-MS)により、約3820±19、3506±17、4571±23、および6933±34ダルトンの分子量を有するタンパク質バイオマーカーからなる群より選択される、該試料中の少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーを検出する段階を含む、患者における肺癌の診断を支援する方法であって、該少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーの該検出が該患者における肺癌の診断と相関づけられる方法。
【請求項85】
肺癌に罹患している疑いのある患者から生物試料を採取する段階、表面増強レーザー脱離/イオン化飛行時間型質量分析法(SELDI-TOF-MS)により、約8603±43、3887±19、4644±23、8630±43、4301±21、および8674±43ダルトンの分子量を有するタンパク質バイオマーカーからなる群より選択される、該試料中の少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーを検出する段階を含む、患者における肺癌の診断を支援する方法であって、該少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーの該検出が該患者における肺癌の診断と相関づけられる方法。
【請求項86】
肺癌に罹患している疑いのある患者から体液試料を採取する段階、表面増強レーザー脱離/イオン化飛行時間型質量分析法(SELDI-TOF-MS)により、該試料中の約3820±19ダルトンの分子量を有するタンパク質バイオマーカーを検出する段階を含む、患者における肺癌の診断を支援する方法であって、該タンパク質バイオマーカーの該検出が該患者における肺癌の診断と相関づけられる方法。
【請求項87】
肺癌に罹患している疑いのある患者から体液試料を採取する段階、表面増強レーザー脱離/イオン化飛行時間型質量分析法(SELDI-TOF-MS)により、該試料中の約3820±19ダルトンの分子量を有するタンパク質バイオマーカーの量を検出する段階を含む、患者における肺癌の診断を支援する方法であって、該タンパク質バイオマーカーの低発現が該患者における肺癌の診断と相関づけられる方法。
【請求項88】
肺癌に罹患している疑いのある患者から体液試料を採取する段階、表面増強レーザー脱離/イオン化飛行時間型質量分析法(SELDI-TOF-MS)により、該試料中の約8603±43ダルトンの分子量を有するタンパク質バイオマーカーを検出する段階を含む、患者における肺癌の診断を支援する方法であって、該タンパク質バイオマーカーの該検出が該患者における肺癌の診断と相関づけられる方法。
【請求項89】
肺癌に罹患している疑いのある患者から体液試料を採取する段階、表面増強レーザー脱離/イオン化飛行時間型質量分析法(SELDI-TOF-MS)により、該試料中の約8603±43ダルトンの分子量を有するタンパク質バイオマーカーの量を検出する段階を含む、患者における肺癌の診断を支援する方法であって、該タンパク質バイオマーカーの過剰発現が該患者における肺癌の診断と相関づけられる方法。
【請求項90】
肺癌治療を受けている患者から生物試料を採取する段階;
の分子量を有するタンパク質バイオマーカーからなる群より選択される、該試料中の少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーの量を検出する段階;該少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーの量と既知の標準とを比較する段階;および該肺癌治療の有効性を判定する段階を含む、患者における肺癌治療の有効性をモニターする方法。
【請求項91】
既知の標準が健常対照に由来する生物試料である、請求項90記載の方法。
【請求項92】
既知の標準が肺癌患者から肺癌治療を行う前に採取された生物試料である、請求項90記載の方法。
【請求項93】
肺癌に罹患している疑いのある患者から気管支洗浄液試料を採取する段階;
の分子量を有するタンパク質バイオマーカーからなる群より選択される、該試料中の少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーを検出する段階を含む、患者における肺癌の診断を支援する方法であって、該少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーの該検出が該患者における肺癌の診断と相関づけられる方法。
【請求項94】
肺癌に罹患している疑いのある患者から血清試料を採取する段階;
の分子量を有するタンパク質バイオマーカーからなる群より選択される、該試料中の少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーを検出する段階を含む、患者における肺癌の診断を支援する方法であって、該少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーの該検出が該患者における肺癌の診断と相関づけられる方法。
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6−1】
【図6−2】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6−1】
【図6−2】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2007−531879(P2007−531879A)
【公表日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−506484(P2007−506484)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【国際出願番号】PCT/US2005/010575
【国際公開番号】WO2005/098445
【国際公開日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フロッピー
2.JAVA
【出願人】(504414086)イースタン バージニア メディカル スクール (3)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【国際出願番号】PCT/US2005/010575
【国際公開番号】WO2005/098445
【国際公開日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フロッピー
2.JAVA
【出願人】(504414086)イースタン バージニア メディカル スクール (3)
【Fターム(参考)】
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