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胃前駆細胞の表面マーカー
説明

胃前駆細胞の表面マーカー

【課題】 本発明は、胃の前駆細胞を選別可能な胃前駆細胞特異的な表面マーカーを提供する。
【解決手段】 本発明において、胃の前駆細胞で高発現している3種類の細胞表面膜タンパク質Adra2a、Fzd5、及び、Trpv6を同定することができ、これらタンパク質はいずれもES細胞やiPS細胞などの多能性幹細胞を利用した胃の組織細胞への分化過程で、胃に分化する細胞を適切に評価するための優れた胃前駆細胞特異的な表面マーカーとして用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、胃の前駆細胞で特異的に発現している細胞表面マーカーに関する。
【背景技術】
【0002】
細胞を用いた再生医療を効果的かつ安全に遂行するためには、治療対象となる組織の細胞を選択的に分化させたり、目的組織のみに分化する前駆細胞を作成したりすることが重要である。特に、ES細胞やiPS細胞などの幹細胞を特定の組織細胞に分化させようというときは、目的組織の細胞やそれらの細胞にのみ分化する前駆細胞を精製することができ、移植部位に適した均一な前駆細胞集団を分離できれば、幹細胞治療効果を最大限に引き出し、安定した治療結果へと結びつけることが可能になる。このような目的に応じた幹細胞集団を選別する有効な手段としては特に前駆細胞特異的な細胞表面マーカーの使用が考えられている。
これまでES細胞やiPS細胞などの幹細胞から心筋などの中胚葉組織や膵臓β細胞や肝臓実質細胞などの内胚葉組織を作り出そうとする研究は広く試みられ、β細胞や肝細胞についてはある程度の分化効率で作成する方法も開発されてきている(非特許文献1,2)。このような中胚葉組織や内胚葉組織への分化過程では、それぞれPDGFRβ及びVEGFR2(中胚葉組織)やCXCR4及びEpCAM(内胚葉組織)などの表面マーカーが知られており、また、Plet-1(非特許文献3)、NCAM1(CD56)やDDR1(特許文献1,2)などの膵臓β細胞やc-Met、a6-integrin(CD49f)、Dlk1、Nope(neighbor of Punc E11)などの肝細胞の幹細胞に特異的な細胞表面マーカー(非特許文献4,5)も取得されている。さらに、成体の小腸や大腸においては腸の前駆細胞マーカーとしてLgr5(非特許文献6)やEphB2(非特許文献7)が報告されている。その一方で、同じ消化管由来の組織である胃の組織分化誘導技術については、ほとんど研究が進んでいない。胃癌は癌における国内の患者数が第1位、死亡率が第2位であり、胃切除後症候群として消化、吸収不良、ダンピング症候群、逆流性食道炎、貧血など様々な症状が起こり、患者のQOLを低下させているため、外科手術後の胃の再建の手法については様々なものが検討されている。しかしながら、胃の組織細胞の分化誘導を含め、胃の再生医療は殆ど検討されていない。また、そもそも胃の発生過程についても、他の臓器について大きく解析が遅れており(非特許文献8、9)、胃前駆細胞を生きた状態で評価・選別できる特異的な細胞表面マーカーも見つかっていない。発生期の胃の前駆細胞特異的マーカーとして転写因子Barx1が知られている(非特許文献10)が、核内に局在するため生細胞での評価・選別には利用できない。さらに胃は大きく分けて臓器の内側を覆う内胚葉組織と外側を取り巻く間葉系組織から構成されるが、それらを区別できる表面マーカーも同定されていない。実際にイヌの胃を部分的に切除し、生体適合性の材料で覆い、胃の組織の再生を検討した報告もあるが、胃の内側を覆う内胚葉組織は再生が観察されたが、外側を取り巻く間葉系組織の再生は見られないことが報告されている(非特許文献11)。発生学的にも胃は上皮と間葉組織が互いに相互作用を及ぼしながら形成されるものであり、上皮と間葉組織の両者の細胞を生きた状態で適切に評価する方法はこれまで存在しなかった。胃切除後の患者のQOLを高めるためにも、胃の組織の再生医療への期待は高まっており、胃の前駆細胞を正確に評価し選別できる胃前駆細胞特異的な表面マーカーの取得が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第7,371,576号明細書号公報
【特許文献2】米国公開2011−001460
【特許文献3】特開2003−9854号公報
【0004】
【非特許文献1】D’Amour, etal, Nature Biotech. (2006) 24,1392-1401.
【非特許文献2】Soto-GutierrezA, et al, Nat Biotechnol. (2006) 24,1412-1419.
【非特許文献3】DepreterMG, et al, Proc Natl Acad Sci U S A. (2008) 105,961-966.
【非特許文献4】TanimizuN, et al, J. Cell. Sci. (2003) 116,1775-1786.
【非特許文献5】Nierhoff D, et al, Hepatology (2007) 46,535-547.
【非特許文献6】Baker N, etal, Nature (2007) 449,1003-1007.
【非特許文献7】Merlos-Suarez,A. et al, Cell Stem Cell (2011) 8,511-524.
【非特許文献8】Zorn, A.M., et al, Annu. Rev. Cell Dev.Biol. (2009) 25,221-251.
【非特許文献9】Fukuda, K., et al, Dev. Growth Differ. (2005) 47,375-382.
【非特許文献10】Kim, B.M.,et al, Dev. Cell (2005) 8,611-622.
【非特許文献11】合川公康ら、日消外会誌 (2009) 42,139.
【非特許文献12】Keller,G M. Curr. Opin. Cell Biol. (1995) 7,862-869.
【非特許文献13】Kubo, A.Development (2004) 131,1651-1662.
【非特許文献14】D’Amour K.A. et al, Nature Biotechnol.(2005)23,1534-1541.
【非特許文献15】Spence J.R., et al, Nature (2011) 470,105-109.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
幹細胞から胃の組織細胞を分化させるために重要な初期発生メカニズムの知見は、胃では他の臓器に比べて大きく解析が遅れている。また、幹細胞から胃の組織細胞を正確に分化させるため欠かせない、胃への分化状態を評価できる胃特異的なマーカーが提供されていなかった。特に、ES細胞やiPS細胞から多段階の分化段階を経て正確に胃の組織に分化させる必要のある再生医療においては、胃の発生過程で特異的に発現するマーカー遺伝子が提供されることで、分化細胞の評価が可能となり、細胞選別技術の開発にも繋がる。
本発明は、このような技術背景を踏まえ、胃の前駆細胞を選別可能な胃前駆細胞特異的な表面マーカーを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、胃の発生過程で特異的に発現する細胞表面膜タンパク質に注目し、胃の組織が分化し始める時期の組織を取り出して、その時期発現する遺伝子についてマイクロアレイを用いて網羅的に解析した結果、将来胃の組織を構成する様々な細胞に分化する胃の元となる細胞で高発現している3種類の細胞表面膜タンパク質Adra2a、Fzd5、及び、Trpv6を同定することができた。
発生期の胎児の消化管は一本の細長いチューブでしかないが、やがて発生段階が進むにつれて、食道、胃、腸が領域ごとに分かれて特定の機能をもった組織へと分化するのとともに、肝臓や膵臓なども消化管から枝分かれして発生してくる。同定した3つのマーカーは、発生期の消化管では胃に限定的に発現することから、胃の組織に分化しうる細胞の細胞表面マーカーとしてきわめて適切なマーカーである。
また、Adra2aは発生期の胃の間葉組織全体で特異的に発現し、他方Fzd5やTrpv6は発生期の胃の上皮組織後半部分で特異的に発現する表面マーカーであることを見出した。これらの胃前駆細胞特異的細胞表面マーカーを組み合わせることで、さらに被検細胞の分化状態や胃の発生段階での詳細な位置づけを生きた細胞の状態で評価可能となる。具体的には、上記Adra2a、Fzd5又はTrpv6タンパク質を特異的に認識する抗体等を利用して、ES細胞やiPS細胞などの多能性幹細胞を利用した胃の組織細胞への分化過程での各タンパク質の発現状態を観察することで、胃の上皮組織や間葉組織に分化する細胞を適切に評価することが可能となった。このような知見をもとに、これまでにない胃の前駆細胞の評価方法に係る本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は以下の通りである。
〔1〕 以下の(1)〜(5)の塩基配列から選択される配列を含む胃前駆細胞マーカー検出用ポリヌクレオチド試薬;
(1)配列番号1〜6に示されるいずれかのアミノ酸配列をコードする塩基配列又はその相補的な塩基配列、
(2)配列番号1〜6に示されるいずれかのアミノ酸配列の1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、もしくは付加されたアミノ酸配列をコードする塩基配列又はその相補的な塩基配列、
(3)配列番号7〜12に示されるいずれかの塩基配列又はその相補的な塩基配列、
(4)配列番号7〜12に示されるいずれかの塩基配列又はその相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドに対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列、
(5)配列番号7〜12の塩基配列又はその相補的な塩基配列中の少なくとも連続した15塩基を含む塩基配列。
〔2〕 前記ポリヌクレオチド試薬が、配列番号13及び14を含むAdra2a遺伝子検出用プライマーセット、配列番号15及び16を含むTrpv6遺伝子検出用プライマーセット、又は配列番号17及び18を含むFzd5遺伝子検出用プライマーセットから選択される少なくとも1組のプライマーセットである、前記〔1〕に記載のポリヌクレオチド試薬。
〔3〕 以下の(1)〜(6)から選択されるポリペプチドからなる胃前駆細胞マーカーを検出するための抗体試薬;
(1)配列番号1〜6に示されるいずれかのアミノ酸配列からなるポリペプチド
(2)配列番号1〜6に示されるいずれかのアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチド
(3)配列番号7〜12に示されるいずれかの塩基配列によりコードされるポリペプチド
(4)配列番号7〜12に示されるいずれかの塩基配列に相補的な配列に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列によりコードされるポリペプチド
(5)上記(1)〜(4)のポリペプチドの抗原性断片であり、少なくとも8アミノ酸残基を有するポリペプチド。
〔4〕 分化誘導処理後の幹細胞において、Adra2a、Trpv6及びFzd5遺伝子から選択されるいずれか1つ以上の胃前駆細胞マーカーの発現の有無を観察することからなる、胃前駆細胞の検出又は判定方法。
〔5〕 前記胃前駆細胞マーカーの発現の有無を、前記〔1〕もしくは〔2〕に記載のポリヌクレオチド試薬又は、前記〔3〕に記載の抗体試薬を用いて判定することを特徴とする、前記〔4〕に記載の胃前駆細胞の検出又は判定方法。
〔6〕 幹細胞を分化誘導処理した後に、Adra2a、Trpv6及びFzd5遺伝子から選択されるいずれか1つ以上の胃前駆細胞マーカーの発現の有無を観察し、当該胃前駆細胞マーカーが発現している細胞を単離することからなる、胃前駆細胞の単離方法。
〔7〕 前記胃前駆細胞マーカーの発現の有無を、前記〔1〕もしくは〔2〕に記載のポリヌクレオチド試薬又は、前記〔3〕に記載の抗体試薬を用いて判定する、前記〔6〕に記載の胃前駆細胞の単離方法。
〔8〕 胃前駆細胞を選択する方法であって、先記〔1〕又は〔2〕に記載のポリヌクレオチド試薬と胃前駆細胞を含むと考えられる細胞試料とを接触させる工程を含む方法。
〔9〕 胃前駆細胞を選択する方法であって、前記〔3〕に記載の抗体と胃前駆細胞を含むと考えられる細胞試料とを接触させる工程を含む方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、発生期の胃組織細胞で特異的に発現する細胞表面マーカーを同定することができた。これらの細胞表面マーカーは単独あるいは組み合わせて、ES細胞やiPS細胞などの幹細胞から胃の細胞を分化させる際に出現する様々な細胞の中に、胃の前駆細胞がどの程度含まれているか正確に評価するための細胞評価キットとして応用できる。また、幹細胞から胃の組織細胞を効率的かつ高精度で分化させるため、胃の前駆細胞を選別するための表面マーカーとしても利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】発生期の胃の予定領域で特異的に発現する胃の表面マーカーの同定 A.発生期の消化管内胚葉全体で非特異的に発現するEpCAMとE11.5マウス胚の胃の予定領域の細胞内で特異的に発現する転写因子Barx1の発現パターン。 B.マウス9.5日胚と11.5日胚における胃の予定領域。 C.マウス胎仔から切り出した食道、胃、腸の予定領域サンプルにおける各領域特異的転写因子の発現。図中、Frは前腸、Mdは中腸、Hdは後腸、Esは食道予定領域、Stは胃予定領域、Inは腸予定領域を表す。 D.マイクロアレイを用いたマウス11.5日胚における胃の予定領域で特異的に発現する細胞表面マーカーの探索。
【図2】A−C.E9.5日胚とE11.5日胚におけるAdra2a,Fzd5,Trpv6の3つの細胞表面マーカーとその他のファミリーの遺伝子発現。 D.E9.5日胚とE11.5日胚における予定領域特異的な核内転写因子の発現。 E−G.本実験で使用したプライマーがポジティブコントロールサンプルでPCR実験に使用可能であることを示したデータ。
【図3】マウス初期胚におけるAdra2a遺伝子のin situハイブリダイゼーションによる発現解析。 A.E9.5日胚におけるAdra2a遺伝子のホールマウントin situハイブリダイゼーション。 B.E11.5日胚におけるAdra2a遺伝子の切片in situハイブリダイゼーション。SSとGSはそれぞれ食道から続く無腺の前胃と,本来の胃粘膜を持つ腺胃の領域を指す。 C.発生後期におけるAdra2a遺伝子の胃の発現。
【図4】マウス初期胚におけるFzd5遺伝子のin situハイブリダイゼーションによる発現解析。 A.E9.5日胚におけるFzd5遺伝子のホールマウントin situハイブリダイゼーション。 B.E11.5日胚におけるFzd5遺伝子の切片in situハイブリダイゼーション。 C.発生後期におけるFzd5遺伝子の胃の発現。
【図5】マウス初期胚におけるTrpv6遺伝子のin situハイブリダイゼーションによる発現解析。 A.E9.5日胚におけるTrpv6遺伝子のホールマウントin situハイブリダイゼーション。 B.E11.5日胚におけるTrpv6遺伝子の切片in situハイブリダイゼーション。 C.発生後期におけるTrpv6遺伝子の胃の発現。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.本発明の胃前駆細胞特異的な表面マーカー
本発明の胃前駆細胞特異的な表面マーカーは、Adra2a、Trpv6及びFzd5タンパク質又はこれらの遺伝子である。いずれのタンパク質も初期発生期の消化管分化過程の胃の形態形成が始まった時期(マウスでは、E11.5日胚)で、胃の予定領域特異的に発現する(図2A)。これらタンパク質のアミノ酸配列及びその遺伝子の塩基配列は、公共データベースから入手できる。(例えば、GenBank(NCBI)のhuman-Adra2a(Protein:NP_000672:配列番号1)mouse-Adra2a(Protein:NP_031443:配列番号2)、human-Trpv6(Protein:NP_061116:配列番号3)、mouse-Trpv6(Protein:NP_071858:配列番号4)、human-Fzd5(Protein:NP_003459:配列番号5)、mouse-Fzd5(Protein:NP_073558:配列番号6)、human-Adra2a gene(mRNA:NM_000681:配列番号7)、mouse-Adra2a gene(mRNA:NM_007417:配列番号8)、human-Trpv6 gene(mRNA:NM_018646:配列番号9)、mouse-Trpv6 gene(mRNA:NM_022413:配列番号10)、human-Fzd5 gene(mRNA:NM_003468:配列番号11)、mouse-Fzd5 gene(mRNA:NM_022721:配列番号12))
幹細胞を内胚葉から消化管に分化する際に、被検細胞または被検細胞集団におけるこれらAdra2a、Trpv6及びFzd5タンパク質の発現を遺伝子レベルで、又は発現したタンパク質を検出することで、被検細胞が将来胃細胞になる細胞であるか否かを、又は被検細胞中に将来胃細胞になる細胞がどのくらい含まれているかを評価することができる。
【0011】
Adra2aはGタンパク質共役型アドレナリン受容体の1種である。アドレナリン受容体α1、α2,β(Adra1、Adra2、Adrbとも表記する。)のうち血小板凝集、脂肪分解抑制の他様々な神経系作用に関与するとされるアドレナリン受容体α2(Adra2)に属する。α2(Adra2)は3つのサブタイプに分類されている(Adra2a、2b、及び2c)が、胃の形態形成時(E11.5日胚)に胃の予定領域特異的に発現していたのはAdra2aのみであった(図2A)。
Adra2aタンパク質は、配列番号1もしくは2に示されるアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列に対して1もしくは数個のアミノ酸が欠失・置換・付加したアミノ酸配列を含むタンパク質として表すことができる(なお、数個とは1〜20個、好ましくは1〜10個、より好ましくは1〜5個を表す。)ここで、ヒトAdra2a(配列番号1)及びマウスAdra2a(配列番号2)のアミノ酸配列レベルのホモロジーは約92%であるのに対して、ヒトAdra2a及びヒトAdra2bは約52%、ヒトAdra2a及びヒトAdra2cは約53%であるので、配列番号1又は2と80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上のホモロジー(同一性)のあるアミノ酸配列を検出することで、Adra2aの発現を確認することができる。
また、Adra2aタンパク質の発現をAdra2aのmRNA転写量の増加で観測することができるが、その際の検出対象となるAdra2a遺伝子は、配列番号7もしくは8に示される塩基配列、又はそれと90%以上、好ましくは95%以上のホモロジー(同一性)のある塩基配列として表現できる。Adra2a遺伝子転写量を観測するためには、配列番号7もしくは8に示される塩基配列と、90%以上、好ましくは95%以上が対になる相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズさせる方法で検出することができる。ここで、ストリンジェントな条件とは、T.Maniatisら編、Molecular Cloning:A Laboratory Manual 2nd ed.(1989)Cold Spring Harbor Laboratory、又はWilkinson, D.G. and Nieto, M.A.の方法(Detection of messenger RNA by in situ hybridization to tissue sections and whole mounts. Methods Enzymol (1993) 225,361-373)などに記載の通常のハイブリダイゼーション操作で、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件である。例えば、メンブラン上で検出するNorthernハイブリダイゼーション等の方法の場合は6×SSC(1×SSCは0.15M NaCl、0.015Mクエン酸ナトリウム、pH7.0)、0.5%SDS、5×デンハルツ[Denhardt’s,0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)、0.1%ポリビニルピロリドン、0.1%フィコール400]及び100μg/mlサケ精子DNA中で、50℃で4時間〜一晩保温を行う条件であり、組織内又は細胞内での遺伝子発現の位置及び発現量を同時に観察するin situハイブリダイゼーションの場合には5×SSC(750mM塩化ナトリウム,75mMクエン酸ナトリウム)、50μg/mLヘパリン、酵母RNA及び50%ホルムアミドに100ng/mlの特異的プローブを添加した条件下で、50℃で4時間〜一晩保温を行う条件が例示できる。
in situハイブリダイゼーション用のAdra2a遺伝子用特異的プローブは、配列番号7又は8に示される塩基配列中の任意の位置の100塩基以上、好ましくは200塩基以上、より好ましくは500塩基以上に対応する塩基配列を増幅させるように設計したプライマーセットを用いてPCR反応で増幅させることで簡単に作成することができる。なお、その際のプライマーセットに用いるプライマーは、配列番号7もしくは8に示される塩基配列の少なくとも連続した15塩基以上、好ましくは20塩基以上の塩基配列又はその相補配列、と表現できる。
また、配列番号7もしくは8に示される塩基配列の少なくとも連続した15塩基以上、好ましくは20塩基以上からなるプライマーセット自身もAdra2a遺伝子検出用プライマーセットとして用いることができる。通常は、これらプライマーセットは、配列番号7もしくは8に示される塩基配列の少なくとも50塩基以上、好ましくは80塩基以上、より好ましくは100塩基以上をRT-PCR法により増幅することで、Adra2a遺伝子を特異的に検出することができる。例えば、配列番号13及び14のプライマーを用いて検出できる。
Adra2aタンパク質の発現をAdra2a抗体により検出することができる。Adra2a抗体作製する際、マウス、ウサギなどを免疫するためには、Adra2aタンパク質の全長のみならず、そのAdra2aタンパク質としての抗原性を失わない程度の部分断片からなる抗原性ペプチドを用いることができる。その際の抗原性ペプチドは、Adra2aタンパク質とは、通常少なくとも8以上、好ましくは10以上、より好ましくは20以上のアミノ酸が連続して共通したアミノ酸配列を含むものである。
【0012】
また、Trpv6はtransient receptor potential(TRP)スーパーファミリーに属するカルシウム選択的なカチオンチャネルである。TRPスーパーファミリーには、他にもうひとつカルシウム選択的なカチオンチャネルであるTrpv5があるが、胃の形態形成時(E11.5日胚)に胃の予定領域特異的に発現していたのはTrpv6のみであった(図2B)。
Trpv6タンパク質は、配列番号3もしくは4に示されるアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列に対して1もしくは数個のアミノ酸が欠失・置換・付加したアミノ酸配列を含むタンパク質として表すことができる。
ここで、ヒトTrpv6(配列番号3)及びマウスTrpv6(配列番号4)のアミノ酸配列レベルのホモロジーは約90%であるのに対して、ヒトTrpv6及びヒトTrpv5間では約75%であるので、配列番号3又は4と85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上のホモロジー(同一性)のあるアミノ酸配列を検出することで、Trpv6の発現を確認することができる。
また、Trpv6タンパク質の発現をTrpv6のmRNA転写量の増加で観測することができるが、その際の検出対象となるTrpv6遺伝子は、配列番号9もしくは10に示される塩基配列、又はそれと90%以上、好ましくは95%以上のホモロジー(同一性)のある塩基配列として表現できる。Trpv6遺伝子転写量を観測するためには、配列番号9もしくは10に示される塩基配列の全長に対して90%以上、好ましくは95%以上が対になる相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズさせる方法で検出することができる。
また、Trpv6遺伝子転写量を観測するためin situハイブリダイゼーション等の方法でハイブリダイズさせる方法で検出することもできる。
in situハイブリダイゼーション用のTrpv6遺伝子用特異的プローブは、配列番号9又は10に示される塩基配列中の任意の位置の100塩基以上、好ましくは200塩基以上、より好ましくは500塩基以上に対応する塩基配列を増幅させるように設計したプライマーセットを用いてPCR反応で増幅させることで簡単に作成することができる。なお、その際のプライマーセットに用いるプライマーは、配列番号9もしくは10に示される塩基配列の少なくとも連続した15塩基以上、好ましくは20塩基以上の塩基配列又はその相補配列、と表現できる。
また、配列番号9もしくは10に示される塩基配列の少なくとも連続した15塩基以上、好ましくは20塩基以上からなるプライマーセット自身もTrpv6遺伝子検出用プライマーセットとして用いることができる。通常は、これらプライマーセットは、配列番号9もしくは10に示される塩基配列の少なくとも50塩基以上、好ましくは80塩基以上、より好ましくは100塩基以上をRT-PCR法により増幅することで、Trpv6遺伝子を特異的に検出することができる。例えば、配列番号15及び16のプライマーを用いて検出できる。
Trpv6タンパク質の発現をTrpv6抗体により検出することができる。Trpv6抗体を作製する際、マウス、ウサギなどを免疫するためには、Trpv6タンパク質の全長のみならず、そのTrpv6タンパク質としての抗原性を失わない程度の部分断片からなる抗原性ペプチドを用いることができる。その際の抗原性ペプチドは、Trpv6タンパク質とは、通常少なくとも8以上、好ましくは10以上、より好ましくは20以上のアミノ酸が連続して共通したアミノ酸配列を含むものである。
【0013】
Fzd5はWnt5Aをリガンドとする7回膜貫通型のWntシグナル伝達タンパク質受容体である。同一のファミリーメンバーの消化管形成時期の発現特性を調べてみると、Fzd5がE11.5日胚で胃特異的に発現するのに対し、Fzd8はE11.5日胚の食道で特異的に、Fzd7はE9.5日胚の消化管全体で、また、E11.5日胚では食道と胃の両方に非特異的に発現し、Fzd10は発現が検出されなかった(図2C)。
Fzd5タンパク質は、配列番号5もしくは6に示されるアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列に対して1もしくは数個のアミノ酸が欠失・置換・付加したアミノ酸配列を含むタンパク質として表すことができる。ここで、ヒトFzd5(配列番号5)及びマウスFzd5(配列番号6)のアミノ酸配列レベルのホモロジーは約96%であるのに対して、ヒトFzd5とファミリー内で最もホモロジーの高い近いヒトFzd8との間でも約71%であるので、配列番号5又は6と80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上のホモロジー(同一性)のあるアミノ酸配列を検出することで、Fzd5の発現を確認することができる。
また、Fzd5タンパク質の発現をFzd5のmRNA転写量の増加で観測することができるが、その際の検出対象となるFzd5遺伝子は、配列番号11もしくは12に示される塩基配列、又はそれと90%以上、好ましくは95%以上のホモロジー(同一性)のある塩基配列として表現できる。Fzd5遺伝子転写量を観測するためには、配列番号11もしくは12に示される塩基配列の全長に対して90%以上、好ましくは95%以上が対になる相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズさせる方法で検出することができる。
また、Fzd5遺伝子転写量を観測ためin situハイブリダイゼーション等の方法でハイブリダイズさせる方法で検出することもできる。
in situハイブリダイゼーション用のFzd5遺伝子用特異的プローブは、配列番号11又は12に示される塩基配列中の任意の位置の100塩基以上、好ましくは200塩基以上、より好ましくは500塩基以上に対応する塩基配列を増幅させるように設計したプライマーセットを用いてPCR反応で増幅させることで簡単に作成することができる。なお、その際のプライマーセットに用いるプライマーは、配列番号11もしくは12に示される塩基配列の少なくとも連続した15塩基以上、好ましくは20塩基以上の塩基配列又はその相補配列、と表現できる。
また、配列番号11もしくは12に示される塩基配列の少なくとも連続した15塩基以上、好ましくは20塩基以上からなるプライマーセット自身もFzd5遺伝子検出用プライマーセットとして用いることができる。通常は、これらプライマーセットは、配列番号11もしくは12に示される塩基配列の少なくとも50塩基以上、好ましくは80塩基以上、より好ましくは100塩基以上をRT-PCR法により増幅することで、Fzd5遺伝子を特異的に検出することができる。例えば、配列番号17及び18のプライマーを用いて検出できる。
Fzd5タンパク質の発現をFzd5抗体により検出することができる。Fzd5抗体を作製する際、マウス、ウサギなどを免疫するためには、Fzd5タンパク質の全長のみならず、そのFzd5タンパク質としての抗原性を失わない程度の部分断片からなる抗原性ペプチドを用いることができる。その際の抗原性ペプチドは、Fzd5タンパク質とは、通常少なくとも8以上、好ましくは10以上、より好ましくは20以上のアミノ酸が連続して共通したアミノ酸配列を含むものである。
【0014】
2.幹細胞の胃細胞への分化誘導方法
本発明において、「幹細胞」というとき、多能性を有する胚性幹細胞(ES細胞)又はiPS細胞のみならず、胃を含む消化管に分化することのできる成体の組織幹細胞も含まれる。
幹細胞を内胚葉細胞に分化させ、そしてさらに消化管系細胞に分化する手法は周知である。例えば、インビトロでES細胞を培養し、凝集させて胚様体(EB)と呼ばれる細胞塊を形成させることで分化誘導し、内胚葉細胞を形成する手法が従来から広く行われている(非特許文献12〜14、特許文献3)。特に高濃度のアクチビンなどを添加して内胚葉細胞を効率的に作成させる方法が利用されている(非特許文献14)。
さらに、内胚葉細胞を特に腸の消化管系細胞に分化誘導するためには、ごく最近報告されたFGF4やWnt3aなどを添加して培養した後、R-spondin、Noggin、EGFを含む培地でMatrigelなどの3次元培養を行う方法(非特許文献15)が適用できる。同じ消化管系細胞である胃についても、類似した同様の方法で分化誘導が可能であると考えられる。
【0015】
3.本発明の胃前駆細胞特異的な表面マーカーの検出方法、測定方法
被検細胞に対して、胃前駆細胞特異的な表面マーカーに対する抗体を利用した免疫染色やフローサイトメトリーによって生細胞の状態で胃前駆細胞を特異的に測定することができる。また、同じく当該抗体を用いることで被検細胞の抽出液を利用してウエスタンブロットやELISAなどの方法によっても検出できる。
Adra2a、Trpv6及びFzd5タンパク質の抗体は、これらタンパク質又はその抗原性ペプチドを免疫源として、マウスなどを用いた通常のモノクローナル抗体や、ウサギなどを用いたポリクローナル抗体の作製方法に従って適宜取得することもできるが、市販されている抗体(Adra2:Bioworld Technology社製、Trpv6:abcam社製、Fzd5:abcam社製)を用いることができる。
なお、抗体を用いずに、質量分析器を利用したタンパク質の網羅的解析方法も用いることができる。
さらに本表面マーカー遺伝子に対する特異的なプライマーやプローブを用いてRT-PCRやin situハイブリダイゼーションなどの遺伝子発現を検出する方法によっても測定することができる。さらには、マイクロアレイや次世代シークエンサーなどの網羅的解析方法によっても測定することができる。
【0016】
3,本発明の胃前駆細胞特異的な表面マーカーの用途
ES細胞やiPS細胞などの幹細胞から胚様体を介した方法や単層培養法などで様々な細胞分化因子や薬剤を組み合わせて胃前駆細胞を分化させる際に、胃前駆細胞特異的な表面マーカーに対する抗体を用いることで分化細胞の生成量を免疫蛍光染色やウエスタンブロットにより評価することができる。すなわち、幹細胞から胃の細胞を分化させる際に出現する様々な細胞の中に、胃の前駆細胞がどの程度含まれているかを正確に評価するための細胞評価キットとして用いることができる。
また、分化後の細胞集団から本発明の胃前駆細胞特異的な表面マーカー抗体を結合させた蛍光試薬や磁気ビーズを利用して、フローサイトメトリーや磁気カラムを用いることで胃前駆細胞のみを生きた状態で分離精製することができる。
得られた胃前駆細胞は、生体親和性の高い三次元マトリックスなどを用いて移植しやすい形状に整えた後、通常の細胞移植技術を応用することで、胃組織の損傷部位などに対する胃細胞の移植治療に供することができる。
【0017】
以下、実施例に則して本発明を更に詳しく説明する。なお、本発明の技術的範囲はこれらの記載によって何等制限されるものではない。また、本明細書中で引用される技術文献の内容は、本明細書の開示内容の一部と見なされる。
【実施例】
【0018】
(実施例1)発生期の胃組織細胞で特異的に発現する細胞表面マーカーの同定
発生期の胃組織細胞で特異的に発現する細胞表面マーカーを同定するために、妊娠マウスから胃の形態形成が開始される前のマウス胎児9.5日胚と胃の形態形成が開始された後の11.5日胚からそれぞれ胃の予定領域とその前後の食道および腸の予定領域部分を顕微鏡下で切り出した。切り出しは、胃の予定領域特異的に発現する核内転写因子Barx1の発現を指標に行った(図1AB)。
切り出し後RT-PCRにて食道、胃、腸の予定領域特異的に発現する転写因子を指標にして切り出されたサンプルの特異性を確認した。その結果、本法で胃の予定領域が特異的核内転写因子の発現に沿って正しく切り出されていることが確認された(図1C)。
これらのサンプルを用いて、マウスゲノムアレイによるマイクロアレイ解析を行い、胃の予定領域で発現する細胞表面マーカーを検索した。その結果、11.5日胚の胃の予定領域で食道や腸の予定領域よりも高発現している遺伝子で、なおかつ、細胞表面膜画分に局在するものを選択したところ、63遺伝子が同定された(図1D)。
この中で十分な発現量を示す上位の遺伝子を選択したところAdra2a,Fzd5,Trpv6の3つの細胞表面マーカーが同定できた。
【0019】
(実施例2)細胞表面マーカーの特異性の検証
上記(実施例1)で同定した細胞表面マーカーの特異性について、RT-PCRにより検証を行った。具体的には、RNeasy micro kit (QIAGEN)を用いてキットの説明書に従ってRNAを精製した。続いて、Prime Script First strand cDNA Synthesis Kit(Takara)を用いてcDNAを合成し、Ex Taq(Takara)を用いて、PCR反応を行った。PCR反応は、95℃ 1min,55-58℃ 1min,72℃ 1minの条件で行った。
なお、本実施例において、本発明の胃前駆細胞特異的なAdra2a、Trpv6及びFzd5マーカーをPCRで検出するために使用したプライマー配列は以下のとおりである。
<Adra2a遺伝子増幅用プライマーセット>
Adra2a-F:5’-cgaggttatgggttactggtact-3’(配列番号13)
Adra2a-R:5’-gtcaaggctgatggcgcacag-3’(配列番号14)
<Trpv6遺伝子増幅用プライマーセット>
Trpv6-F:5’-gcacaggccttccagcaaca-3’(配列番号15)
Trpv6-R:5’-gtactcccagccctccccatct-3’(配列番号16)
<Fzd5遺伝子増幅用プライマーセット>
Fzd5-F:5’-gtctgtgctgtgcttcatc-3’(配列番号17)
Fzd5-R:5’-agtgacacacacaggtagca-3’(配列番号18)
また、本実施例において、本発明の胃前駆細胞特異的なAdra2a、Trpv6及びFzd5マーカーをin situハイブリダイゼーションで検出するために使用したプローブは以下のプライマーを用いてPCRにより増幅させ作成した。
<Adra2a遺伝子in situハイブリダイゼーション用プローブ作成用プライマーセット>
Adra2a-F:5’-gtgacactgacgctggtttg-3’(配列番号19)
Adra2a-R:5’-aggatcatgatgaggcaagg-3’(配列番号20)
<Trpv6遺伝子in situハイブリダイゼーション用プローブ作成用プライマーセット>
Trpv6-F:5’-ataacctggaggctgcaatg-3’(配列番号21)
Trpv6-R:5’-actggatgtgtttccgcttc-3’(配列番号22)
<Fzd5遺伝子in situハイブリダイゼーション用プローブ作成用プライマーセット>
Fzd5-F:5’-gcgcaccggccaagtgccc-3’(配列番号23)
Fzd5-R:5’-cggctgcaagcgacgctggc-3’(配列番号24)
【0020】
Adra2aと同じアドレナリン受容体α2(Adra2)ファミリーに存在するAdra2a、2b、及び2cサブタイプのうち、胃の形態形成が始まったE11.5日胚では、Adra2aのみが胃の予定領域特異的に発現していた(図2A)。
また、Trpv6はtransient receptor potential(TRP)スーパーファミリーに属するカルシウム選択的なカチオンチャネルであり、E11.5日胚では胃の予定領域特異的に発現していた。TRPスーパーファミリーのもうひとつのカルシウム選択的なカチオンチャネルであるTrpv5はこの時期発現は見られない(図2B)。
Fzd5は7回膜貫通型のWnt受容体であり、Fzd5がE11.5日胚で胃特異的に発現するのに対し、同一のファミリーメンバーの消化管形成時期の発現特性は、Fzd8がE11.5日胚の食道で特異的に発現し、Fzd7はE9.5日胚の消化管全体で、また、E11.5日胚では食道と胃の両方に非特異的に発現する。Fzd10は発現が検出されなかった(図2C)。
このように今回同定したAdra2a,Fzd5,Trpv6の3つの細胞表面マーカーは、初期発生期の消化管分化過程で胃特異的に発現していることが確認された。
【0021】
(実施例3)Adra2aの特異性
Adra2aは胃の形態形成前の9.5日胚では消化管での発現が見られないが(図3A)、11.5日胚では食道から続く無腺の前胃と,本来の胃粘膜を持つ腺胃の両方の間葉組織部分で発現が観察される(図3B)。また、上皮部分では全く発現が観察されず、胃の間葉組織特異的に発現する表面マーカーと考えられた。また、Adra2aの発現はその後急速に消失する(図3C)。
【0022】
(実施例4)Fzd5の特異性
Fzd5については、胃の形態形成前の9.5日胚ではあご付近での発現以外には発現が見られないが(図4A)、11.5日胚では腺胃下方付近の上皮組織部分で特異的な発現が観察される(図4B)。この発現は間葉組織部分では全く発現が観察されず、胃の腺胃下方の上皮組織特異的に発現する表面マーカーと考えられる。また、Fzd5の発現はその後引き続き上皮組織特異的に発現し続ける(図4C)。
【0023】
(実施例5)Trpv6の特異性
Trpv6は、胃の形態形成前の9.5日胚では消化管に発現が見られないが(図5A)、11.5日胚では腺胃の上皮組織部分で特異的な発現が観察される(図5B)。この発現は間葉組織部分では発現が観察されず、胃の腺胃の上皮組織特異的に発現する表面マーカーと考えられる。また、Trpv6の発現もその後引き続き上皮組織特異的に発現し続ける(図5C)。
【0024】
[配列表フリーテキスト]
配列番号1:h-Adra2a(Protein:NP_000672)
配列番号2:m-Adra2a(Protein:NP_031443)
配列番号3:h-Trpv6(Protein:NP_061116)
配列番号4:m-Trpv6(Protein:NP_071858)
配列番号5:h-Fzd5(Protein:NP_003459)
配列番号6:m-Fzd5(Protein:NP_073558)
配列番号7:h-Adra2a gene(mRNA:NM_000681)
配列番号8:m-Adra2a gene(mRNA:NM_007417)
配列番号9:h-Trpv6 gene(mRNA:NM_018646)
配列番号10:m-Trpv6 gene(mRNA:NM_022413)
配列番号11:h-Fzd5 gene(mRNA:NM_003468)
配列番号12:m-Fzd5 gene(mRNA:NM_022721)
配列番号13:m-Adra2a primer(f)
配列番号14:m-Adra2a primer(r)
配列番号15:m-Trpv6 primer(f)
配列番号16:m-Trpv6 primer(r)
配列番号17:m-Fzd5 primer(f)
配列番号18:m-Fzd5 primer(r)
配列番号19:m-Adra2a-probe
primer(f)
配列番号20:m-Adra2a-probe
primer(r)
配列番号21:m-Trpv6-probe primer(f)
配列番号22:m-Trpv6-probe primer(r)
配列番号23:m-Fzd5-probe primer(f)
配列番号24:m-Fzd5-probe primer(r)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(1)〜(5)の塩基配列から選択される配列を含む胃前駆細胞マーカー検出用ポリヌクレオチド試薬;
(1)配列番号1〜6に示されるいずれかのアミノ酸配列をコードする塩基配列又はその相補的な塩基配列、
(2)配列番号1〜6に示されるいずれかのアミノ酸配列の1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、もしくは付加されたアミノ酸配列をコードする塩基配列又はその相補的な塩基配列、
(3)配列番号7〜12に示されるいずれかの塩基配列又はその相補的な塩基配列、
(4)配列番号7〜12に示されるいずれかの塩基配列又はその相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドに対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列、
(5)配列番号7〜12の塩基配列又はその相補的な塩基配列中の少なくとも連続した15塩基を含む塩基配列。
【請求項2】
前記ポリヌクレオチド試薬が、配列番号13及び14を含むAdra2a遺伝子検出用プライマーセット、配列番号15及び16を含むTrpv6遺伝子検出用プライマーセット、又は配列番号17及び18を含むFzd5遺伝子検出用プライマーセットから選択される少なくとも1組のプライマーセットである、請求項1に記載のポリヌクレオチド試薬。
【請求項3】
以下の(1)〜(6)から選択されるポリペプチドからなる胃前駆細胞マーカーを検出するための抗体試薬;
(1)配列番号1〜6に示されるいずれかのアミノ酸配列からなるポリペプチド
(2)配列番号1〜6に示されるいずれかのアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチド
(3)配列番号7〜12に示されるいずれかの塩基配列によりコードされるポリペプチド
(4)配列番号7〜12に示されるいずれかの塩基配列に相補的な配列に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列によりコードされるポリペプチド
(5)上記(1)〜(4)のポリペプチドの抗原性断片であり、少なくとも8アミノ酸残基を有するポリペプチド。
【請求項4】
分化誘導処理後の幹細胞において、Adra2a、Trpv6及びFzd5遺伝子から選択されるいずれか1つ以上の胃前駆細胞マーカーの発現の有無を観察することからなる、胃前駆細胞の検出又は判定方法。
【請求項5】
前記胃前駆細胞マーカーの発現の有無を、請求項1もしくは2に記載のポリヌクレオチド試薬又は、請求項3に記載の抗体試薬を用いて判定することを特徴とする、請求項4に記載の胃前駆細胞の検出又は判定方法。
【請求項6】
幹細胞を分化誘導処理した後に、Adra2a、Trpv6及びFzd5遺伝子から選択されるいずれか1つ以上の胃前駆細胞マーカーの発現の有無を観察し、当該胃前駆細胞マーカーが発現している細胞を単離することからなる、胃前駆細胞の単離方法。
【請求項7】
前記胃前駆細胞マーカーの発現の有無を、請求項1もしくは2に記載のポリヌクレオチド試薬又は、請求項3に記載の抗体試薬を用いて判定する、請求項6に記載の胃前駆細胞の単離方法。
【請求項8】
胃前駆細胞を選択する方法であって、請求項1又は2に記載のポリヌクレオチド試薬と胃前駆細胞を含むと考えられる細胞試料とを接触させる工程を含む方法。
【請求項9】
胃前駆細胞を選択する方法であって、請求項3に記載の抗体と胃前駆細胞を含むと考えられる細胞試料とを接触させる工程を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−66414(P2013−66414A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206717(P2011−206717)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】