説明

胆管の減圧及び吻合用ステント

減圧及び吻合を形成するためのステントを埋め込むための装置が提供されている。該ステントは、非拡張性の概ね管状の本体を備えている。該管状の本体は、近位部分と及び遠位部分と、該本体の少なくとも一部分を貫通している管腔と、該管腔と流体連通している前記遠位部分に設けられた遠位の開口と、前記管腔と流体連通している前記近位部分に設けられた近位の開口とを備えている。該ステントは更に、前記管状本体の遠位部分に配置されている第一の磁気要素と、前記管状本体の近位部分に可動状態で位置決めできる第二の磁気要素とを備えている。該第二の磁気要素は、前記管状本体の近位部分を包囲し且つその外周上を前記第一の磁気要素に向かって動かすことができる構造とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して2つの内臓間を減圧し且つ吻合を形成するための方法及び器具に関し、更に特定すると、ステントと磁石とを備えている方法及び器具に関する。
【背景技術】
【0002】
歴史的には、体液の流れの方向を変える目的で2つの内臓間に流路又は吻合を形成するために胃腸管(GI)手術がなされて来た。腫瘍、潰瘍、炎症性狭窄、又は外傷のような状態により、腸又は胆管の閉塞を起こしている患者の体内においては、例えば腸管内容物又は胆汁の流れの方向が変えられる。吻合を形成するための外科処置中においては、2つの組織が、縫合糸、ステープル、又は接着剤のような何らかの他の固定手段のような器具を使用して接合される場合が多い。処置中にこれらの組織が接合されている間、これらの組織を一時的に定位置に保持するために種々のタイプの外科器具が使用される。切開手術においては、この一時的な保持は、把持具、鉗子、又はその他医師によって操作される組織保持具によってなされる。腹腔鏡手術においては腹腔鏡によるアクセスが処置部位に挿入される器具の数を制限して組織固定処置をより一層厄介なものとするが、腹腔鏡手術においても同様の器具が使用される。
【0003】
これらのタイプのGI手術が行なわれるときに、壁境界部に器具が突き刺さる可能性がある。従って、胸膜腔及び腹腔が細菌を含むGI内容物によって汚染されないように細心の注意を払わなければならない。このような汚染は、これらの位置では本来起こらない。著しい汚染が生じた場合には、次いで深刻な感染が起こり、これは深刻な病気又は早期に且つ徹底的に治療されない場合には死につながり得る。
【0004】
これらの制限事項に対処し且つこのような手術の侵襲性を最少にするために、吻合を形成するための磁気吻合器具(MAD)が開発されて来ている。例示的なMADが米国特許第5,690,656号に開示されている。該米国特許の開示内容は、これに言及することによりその全体が参考として本明細書に組み入れられている。該’656特許によるMADは、大まかには、第一及び第二の磁石アセンブリを備えており、該磁石アセンブリは薄い金属製の縁によって包囲されている磁気コアを備えている。該第一及び第二の磁石アセンブリは、それらの間に吻合が形成されることが望ましい2つの内臓内に位置決めされ且つ相互に極めて近づけられる。2つの磁気コア間の磁気引力により、2つの隣接する内臓の壁は前記磁石アセンブリ間特に磁気縁間で圧縮されて壁の虚血性壊死がもたらされてこれら2つの内臓間に吻合が形成される。
【0005】
MADは、該MADの磁石アセンブリを単に呑み込ませ且つ蛍光透視によるマッサージを使用して2つの磁石アセンブリを整合させるか又は把持用鉗子を内視鏡的に使用することによって、押し込みカテーテルを使用する(且つ典型的には蛍光透視による)ガイドワイヤーの外周に沿った開腹術のような外科的介入によって送り込まれる。磁石を包囲している内臓組織同士が融合した後、続いて約10日以内に、磁石と閉じ込められた壊死組織とが包囲している組織から分離されて内臓間に穴が残る。
【0006】
ある種の患者においては、閉塞は、痛みを伴う体内流路を通る流体の流れの制限を惹き起こし、これは、典型的なMADの設置よりも更に迅速に穴が形成されることを必要とする。例えば、胆管を通る肝臓からの胆汁の流れは、腫瘍又はその他の障害によって遮られる。胆管からの胆汁を解放するためには、流体の流れを迅速に回復させる必要がある。典型的には、総胆管内の閉塞は、排液用ステントをファーター膨大部を介して総胆管内に挿入して閉塞部に穴を開けることによって緩和させることができる。しかしながら、ファーター膨大部を介して挿入される排液用ステントが使用される場合には、排液用ステントの閉塞を含む幾つかの欠点が生じる。更に、前記の流路及び胆管からの流体の流れを維持するためには、排液用ステントを定期的に変換する必要があり、これは患者に対する追加の手術を必要とする。
【0007】
導管の迅速な減圧及びそれに続く吻合のための器具及び方法の必要性がある。
【発明の概要】
【0008】
従って、本発明は、上記した欠点のうちの1以上を解決し又は改良するための特徴を備えた方法及びステント装置を提供することを目的としている。
【0009】
上記の目的は、本発明の一つの特徴に従って、減圧及び吻合を形成するためのステント装置を提供することによって達成される。該ステント装置は、非拡張性の概ね管状の本体であって、近位部分及び遠位部分と、該本体の少なくとも一部分を貫通して伸長している管腔と、前記遠位部分に設けられ且つ前記管腔と流体連通している遠位の開口と、前記近位部分に設けられ且つ前記管腔と流体連通している近位の開口とを備えている前記管状の本体を備えており、前記本体は、少なくとも一部分が体内導管内に配置され且つ該導管内を通る体液の流通を補助する構造とされている。該ステント装置は更に、前記管状本体の遠位部分に配置されている第一の磁気要素であって、該第一の磁気要素が前記管状本体の一部分を包囲するように貫通して形成された穴を備えている前記第一の磁気要素と、前記管状本体の前記近位部分に可動形態で位置決めできる第二の磁気要素であって、該第二の磁気要素が前記管状本体の前記近位部分を包囲し且つ該近位部分の外周上を前記第一の磁気要素に向かって動かすことができる構造とされている前記第二の磁気要素とを備えている。
【0010】
本発明のもう一つ別の特徴に従って、2つの体腔間に吻合を形成する方法が提供されている。該方法は、第一の体腔と第二の体腔との壁を貫通して穴を設けるステップと、該穴にステントを挿入するステップとを含んでいる。該ステントは、非拡張性の概ね管状の本体であって、近位部分及び遠位部分と、該本体の少なくとも一部分を貫通して伸長している管腔と、前記遠位部分に設けられ且つ前記管腔と流体連通している遠位の開口と、前記近位部分に設けられ且つ前記管腔と流体連通している近位の開口と、を備えている前記管状の本体を備えている。該ステントは更に、前記管状本体の遠位部分に配置されている第一の磁気要素を備えており、該第一の磁気要素は、該第一の磁気要素が前記管状本体の一部分を包囲できるように貫通して形成された穴を備えている。該方法は更に、前記第一の磁気要素と前記遠位部分とを前記第二の体腔内に位置決めするステップと、前記管腔が前記第一の体腔と前記第二の体腔との間で流体連通するように前記近位部分を前記第一の体腔内に位置決めするステップと、次いで前記第二の磁気要素が前記第一の磁気要素に向かって動くことができるように前記第二の磁気要素を前記近位部分の外周に沿って配置するステップとを含んでいる。
【0011】
本発明のもう一つ別の特徴に従って、2つの体腔間に吻合を形成する方法が提供されている。該方法は、給送器具を第一の体腔の壁と第二の体腔の壁とを貫通して挿入するステップと、ステントを前記給送器具の外周に沿って送り込んで該ステントを前記第一の体腔と第二の体腔との間に位置決めし且つそれらの体腔間に流体の流れを確立するステップとを含んでいる。該ステントは、非拡張性の概ね管状の本体であって、近位部分及び遠位部分と、該本体の少なくとも一部分を貫通して伸長している管腔と、前記遠位部分に設けられ且つ前記管腔と流体連通している遠位の開口と、前記近位部分に設けられ且つ前記管腔と流体連通している近位の開口とを備えている前記管状の本体と、該管状本体の遠位部分に配置されている第一の磁気要素とを備えており、該第一の磁気要素は、該第一の磁気要素が前記管状本体の一部分を包囲するように貫通して形成された穴を備えている。該方法は更に、前記ステントを、前記近位部分が前記第一の体腔内へと延び且つ前記遠位部分が前記第二の体腔内へと延びる状態とし且つ前記遠位部分上の前記第一の磁気要素が前記第二の体腔内に配置される状態に位置決めするステップと、前記第二の磁気要素を前記ステントの前記近位部分へ送り込むステップと、前記第一の磁気要素と前記第二の磁気要素との吸引力を使用して吻合を形成するステップとを含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1は、本発明によるステントの斜視図であり、互いに隔置されている磁気要素が示されている。
【0013】
図2は、前記磁気要素同士が互いに接触している状態にある本発明によるステントの斜視図である。
【0014】
図3は、磁気要素がステントから取り外されている状態の本発明によるステントの斜視図である。
【0015】
図4は、本発明による磁気要素の一つの実施形態の部分図である。
【0016】
図5は、本発明による磁気要素の代替的な実施形態の部分図である。
【0017】
図6は、ステントを配置するためのGI管内の給送装置の概略図である。
【0018】
図7は、総胆管と十二指腸との間でのステント配置を示している概略図である。
【0019】
図8は、十二指腸内でのステント上への前記第二の磁気要素の配置の概略図である。
【0020】
図9は、ステント上を前記第一の磁気要素に向かって遠位方向へ移動している前記第二の磁気要素の概略図である。
【0021】
図10は、前記第一の磁気要素と接している前記第二の磁気要素の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明を説明するが、図面において、同様の部材は同様の参照符号によって示されている。本発明の種々の構成要素の相対関係及び機能は、以下の詳細な説明によって更に良く理解できる。しかしながら、本発明の実施形態は図示されている実施形態に限定されない。図面は等尺ではなく、ある種の例においては本発明の理解に不必要な細部例えば一般的な構成及びアセンブリは省略されている。
【0023】
明細書において使用されている近位及び遠位という用語は、ステントを患者の体内ヘ送り込んでいる医師から見たものであると理解されるべきである。従って、“遠位“という用語は、医師から最も遠いステントの部分を意味しており、“近位”という用語は、医師に最も近いステントの部分を意味している。
【0024】
図1及び2は、本発明の実施形態によるステント10を示している。ステント10は、非拡張性の概して管状の本体14を含んでおり、該管状の本体14は近位部分20と遠位部分30とを備えている。管腔32が、近位の開口21と遠位の開口31との間でステント10の管状本体14の少なくとも一部分を貫通して延びている。ステント10は更に、第一の磁気要素40と第二の磁気要素42とを備えている。第一の磁気要素40は、ステント10上の第二の磁気要素42の遠位側に配置されている。第二の磁気要素42は、ステント10の近位部分20の外周に移動可能な形態で位置決めすることができる。幾つかの実施形態においては、第一の磁気要素40はステント10上の定位置に固定される。ステント10はまた、第一の磁気要素40がステント10の遠位端に向かって更に遠位方向へ動くのを阻止するストッパ部材55をも備えている。図3に示されているように、第二の磁気要素42は、ステント10の近位部分20の外周を覆う形態に位置決めされ、第一の磁気要素40に向かって遠位方向に動かされ、最終的には以下に更に詳細に説明するように第一の磁気要素40に結合して吻合を形成する構造とされている。第一の磁気要素40と第二の磁気要素42との間の吸引力によって、磁気要素40,42が互いに引き寄せられる。図3に示されているように、第二の磁気要素42は、ステント10の管状本体14の外周上を第一の磁気要素40に向かって引き寄せられるように遠位方向へ動くことができる構造とされている。図5にはまた遠位端部56も図示されており、該遠位端部56は、第一の磁気要素40を体内位置に挿入する補助となる円錐形状とされている。
【0025】
第一の磁気要素40と第二の磁気要素42とは、これらの磁気要素40,42が管状ステント10上に位置決めされ且つ少なくとも第二の磁気要素42が第一の磁気要素40に向かって遠位方向に動くことができるようにする何らかの形状及び大きさを有している。第一及び第二の磁気要素40,42はまた自己芯出し性のものであるが、ステント10もまた第一及び第二の磁気要素40,42を互いに結合するように位置決めする補助となる。幾つかの実施形態においては、第一磁気要素40と第二の磁気要素42とは、互いに入れ子式に結合して吻合を形成する形状とされる。
【0026】
第一の磁気要素40と第二の磁気要素42との例示的な図面が図4に示されており、磁気要素40と42とのかみ合いを示すためにステントは示されていない。第一の磁気要素40と第二の磁気要素42とはディスク形状とされており、第一の磁気要素40は第二の磁気要素42の外径48の内側に入れ子式に結合しているより小さな外径46を有している。第一の磁気要素40が第二の磁気要素42と接触したときに、第一の磁気要素40の第一の接触面52と第二の磁気要素42の第二の接触面54とに接触境界部50が形成される。第二の磁気要素42は、少なくとも部分的に第一の磁気要素40の一部分の外周を覆うように延びている重なり縁58を備えている。磁気要素40,42が体内に埋め込まれると、磁気要素40,42が互いにより近づいて、組織が第一の磁気要素40の第一の接触面52と第二の磁気要素42の第二の接触面54との間で押圧されて吻合が形成される。これらの磁気要素が互いに近づいて吻合が形成されるときに、体内での刺激を回避するように組織に曝される吻合面を備えた第一の磁気要素40及び第二の磁気要素42が形成される。
【0027】
図5は、第一の磁気要素40と第二の磁気要素42との代替的な形状を示しており、該形状においては、第一の磁気要素40は弾丸形状の第一の接触面52を備えており、第二の磁気要素42は第一の磁気要素40とかみ合う形状とされており、第二の接触面54は弾丸形状の第一の接触面52とかみ合う形状とされている。当業者は、磁気要素40,42のための多くの代替的な形状が可能であることがわかるであろう。更に、第一の磁気要素40は遠位の端部56を備えており、該遠位の端部56は、第一の磁気要素40の体内位置への挿入を補助する形状とされている。非限定的な例として、第一の磁気要素40は遠位の端部56にテーパーが付けられるか、又は第一の磁気要素40全体が近位の端部57から遠位の端部59にかけてテーパーが付けられている。しかしながら、当業者は、磁気要素40、42の各々に対してあらゆる形状を使用することができることがわかるであろう。
【0028】
図4及び5に示されているように、第一の磁気要素40は、該磁気要素40を貫通して形成された穴60を備えており、この穴60は、管状本体14の遠位部分30を包囲できる大きさ及び形状とされている。第一の磁気要素40は、該第一の磁気要素40がステント10に対して定位置に固定され且つ第二の磁気要素42がステント10及び第一の磁気要素40に対して動くことができるようにステント10に固定されている。第一の磁気要素40は、当業者に公知の何らかの手段例えば接着剤を使用してステント10に固定されている。第二の磁気要素42は、磁気要素42を貫通して形成されている穴62を備えており、この穴62は、第二の磁気要素がステント10の管状本体14を包囲し且つステント10の外周に沿って遠位方向に第一の磁気要素40に向かって動くことができる大きさ及び形状とされている。
【0029】
ステント10はまた、ステント10を体内の定位置に保持する補助となる1以上の改造部分をも備えている。例えば、図1及び2に示されているように、1以上の保持部材70が管状本体14上に含まれている。保持部材70は、管状本体14から約4〜8mmの長さに亘って延びている跳ね蓋である。保持部材の他の長さも可能であり、この長さは、導管の穴の大きさ、保持部材の柔軟性、ステントの長さ、及びステント10が導管内に埋め込まれた状態に留まる時間に依存する。保持部材70は、管状部材14の壁に設けられた長手方向の切り込みにより該管状部材14によって形成されている。別の方法として、保持部材70は、本体14と一緒に若しくは本体14に加えて成形することによって形成するか又は当業者に公知の何らかの方法で形成することができる。図3に示されているように、管状本体14には1以上の穴72が備えられている。穴72は、ステント10を介する排液を補助する構造とされている。ステント10には、付加的な改造部例えば1以上のつなぎ紐もまた備えられる。第一の磁石40はまた、ステント10を導管の壁に押し付けて定位置に保持する補助となる形状とされていても良い。
【0030】
ステント10は、体内の導管内に埋め込むのに適した大きさとすることができ且つ導管の大きさによって変わる。ステント10は約3〜15Fr(フレンチ)の外径とすることができる。ステントの長さは約5〜30cmである。これより短いか長いステントもまた使用できる。これらの大きさは単なる例示であり、他のサイズを使用しても良い。
【0031】
ステントは、該ステントが導管の曲率に合致し且つ堅牢なステントによって生じる埋め込み部位の刺激を除去するか又は軽減して、刺激、組織の変化、又は導管の変化の虞を減じるのに十分な柔軟性を有している材料によって作られる。該材料はまた、ステントが導管内に位置決めされたときにステントを貫通する管腔を維持するのに十分な強さをも備えていなければならない。ステント10のための例示的な材料としては、限定的ではないけれども、SOF-FLEX(登録商標)、ある種のポリエーテルウレタン、シリコーン、ブロック共重合体、ウレタン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、FEP等、及びこれらの組み合わせがある。幾つかの実施例においては、ステント10は生分解性材料によって作られる。多くの生体吸収性ホモポリマー、共重合体、又は生体吸収性ポリマーの混合物が医療技術において知られている。これらの材料としては、必ずしも限定的ではないが、ポリ・アルファ・ヒドロキシン及びポリ・ベータ・ヒドロキシ・ポリエステル、ポリカプロラクトン、ポリグリコール酸、ポリエーテル・エステル、ポリ(p−ジオキサノン)、ポリオキサエステル;ポリフォスファゼン;ポリ無水物;ポリトリメチレンカーボネート及びポリ(イミノカーボネート)を含むポリカーボネート;ポリエステルアミド;ポリウレタン;ポリイソシアネート;ポリフォスファジン;ポリグリコール・ポリオルソエステルを含むポリエーテル;ポリエチレンオキサイドを含むエポキシポリマー;セルロース、キチン、デキストラン、スターチ、ヒドロキシエチルスターチ、ポリグルコネート、ヒアルロン酸を含む多糖類;ポリアミノ酸、ポリエステル−アミド、ポリグルタミン酸、ポリリシン、ゼラチン、フィブリン、フィブリノーゲン、カゼイン、コラーゲンを含むポリアミドがある。
【0032】
磁気要素は、磁気吸引材料を含む何らかの材料によって作られる。本明細書において使用されている磁気という用語は、磁石及び磁化可能な部材、並びに鉄、ニッケルコバルト、鋼及び磁石に吸い付けられる種々の合金のような全ての磁気吸引材料を指している。例えば、磁石は、ネオジム−鉄−硼素、コバルト等のような希土類磁石とすることができる。前記の第一及び第二の磁気要素は磁石として示したけれども、これらの磁気要素のうちの一つだけを磁石とし、他方の磁気要素は第一鉄材料又は一方の磁石に簡単に吸い寄せられる他の材料としても良いことが当業者にはわかるであろう。磁気要素はまた、該磁気要素を体液の潜在的な腐食作用から保護する保護コーティングを含んでいても良い。非限定的な例として、磁気要素は、パリレン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリアミド、及びシリコーンのようなポリマーコーティングによってコーティングされても良い。該コーティングはまた、種々の金属又は合金、例えばテフロン(登録商標)及びパラレン(登録商標)等によって形成されても良い。
【0033】
以下、本発明のステント10を給送し且つ埋め込む方法の例示的な方法を給送装置100に関して説明する。非限定的な例として、総胆管と十二指腸との間に吻合を形成する方法が示されている。当業者は、本発明のステントと磁気要素とを使用して他の導管と十二指腸又はGI管の他の部分との間に吻合を形成することができることがわかるであろう。図6〜10に示されているように、ステント10を総胆管120内に配置するために給送装置100が使用される。図6を参照すると、腹腔内の幾つかの器官の相対位置が示されており、これらの器官としては、膵臓110の膵管102、十二指腸122、胆嚢管124、及び胆嚢126が含まれる。総胆管120の穴を閉塞して該総胆管からの流体の流れを遮っている塊130も示されている。
【0034】
図6に示されているように、給送装置100典型的には高周波数音波を使用して生体組織又はエコー源性面の像を形成する内視鏡又は内視鏡超音波(EUS)装置が十二指腸122内に配置される。図6にはEUS器具100が示されており、EUS器具100は、該EUS器具から延び且つ十二指腸122の壁及び総胆管120の壁を貫通しているニードル140を備えている。図7に示されているように、ステント10は、十二指腸122の壁及び総胆管120の壁を貫通して挿入されたガイドワイヤー142の外周に沿って送り込まれる。ステント10の遠位端部30は、第一の磁気要素40が総胆管120内に位置決めされるように総胆管120内に位置決めされている。ステント10は、総胆管120と十二指腸122との間に延びてステント10の管腔21を介する穴を形成し、流体が総胆管120から十二指腸122内へと流れ込んで胆管閉塞部の迅速な減圧が提供される。
【0035】
図8に示されているように、第二の磁気要素42も同じ給送装置100を使用してステント10に送り込まれる。別の方法として、当業者がわかるように、第二の給送装置を使用してステント10の近位端部20に設けられている第二の磁気要素42を配置しても良い。図8に示されているように、押し込みカテーテル144が使用されて第二の磁気要素42がガイドワイヤー110の外周に沿ってステント10上の定位置に押し込まれる。同様に、代替的なタイプの導入器カテーテルを使用して、第二の磁気要素42が十二指腸122内のステント10上の定位置ヘと送り込まれる。
【0036】
図9には定位置にあるステント10が示されており、該ステントは、総胆管120から十二指腸122内への流体の流れのための穴を形成している。第二の磁気要素42は、ステント10の近位端部20の外周に可動状態で配置されており且つ第一の磁気要素40に向かって進入せしめられつつある。第一の磁気要素40と第二の磁気要素42との間の吸引力は、第二の磁気要素が例えばGI管が動く際にステント10から落下するのを阻止するのに十分な大きさである。ステント10はまた、第二の磁気要素42の位置の近位側に突出部70をも備えており、該突出部70は、磁気要素42がステント10から外れるのを防止する補助ともなっている。図8に示されている矢印は、第一の磁気要素40に向かう第二の磁気要素42の移動方向を示しており、この移動はまた十二指腸122の壁を総胆管120の壁に近接させる。
【0037】
図10には、ステント10上で第二の磁気要素42が第一の磁気要素40に結合した状態が示されている。第一の磁気要素40と第二の磁気要素42との間に挟まれている組織は、死ぬか或いは壊死して十二指腸122と総胆管120との間に吻合を形成して総胆管120からの流体の排出のための永久的な穴を形成する。吻合は約10日以内に形成される。最終的には、ステント10と第一及び第二の磁気要素40、42とは、穴から落下し且つGI器官系内を自然に通過する。ステント10は、磁気要素40,42と共に医師による付加的な介入無しで通過するのが好ましく、例えば、ファーター膨大部114を通して総胆管120内へ挿入されていたステントに取って代わる必要がある。
【0038】
ステント10はまた、代替的な挿入位置を使用する給送装置100を使用して総胆管120と十二指腸122との間に配置することもできる。給送装置100は十二指腸122内に位置決めされ、ガイドワイヤー142はファーター膨大部114を介して総胆管120内に挿入される。閉塞によってガイドワイヤー142が総胆管内に入るのが阻止されている場合には、総胆管120へアクセスするためにECRD内視鏡が使用される。ガイドワイヤー142又はニードル140は、総胆管120内へ挿入され且つ総胆管120と十二指腸122との両方の壁を貫通せしめられる。ステント10は、総胆管120内を通っているガイドワイヤーの外周に沿って総胆管及び十二指腸の壁を貫通している穴から挿入され、ステント10の近位部分が十二指腸内に延びるようになされる。第一の磁気要素は、ステント10の遠位端部分30と共に総胆管120内に配置される。第二の磁気要素42は、上記したように、ステント10の近位端部20の外周に沿って進入せしめられる。
【0039】
上記の図面及び開示内容は、例示的なものであり且つ排他的なものではないように意図されている。この説明によって、多くの変形例及び代替例が当業者に示唆されるであろう。このような変形例及び代替例の全てが添付の特許請求の範囲内に包合されることを意図されている。当業者は、ここに記載された特定の実施形態の他の等価物がわかるであろう。このような他の等価物もまた添付の特許請求の範囲によって包含されることが意図されている。例えば、以上においては本発明を例示目的のみのための胆管系に関連して説明した。非限定的な例として、本発明の原理を、膵臓系のような胃腸管内の領域のみならず他の脈管系のような胃腸管の外側領域を含む患者の体内の他の何らかの分岐した管腔又は脈管に適用することは、当業者の想到範囲に含まれ且つ添付の特許請求範囲内に包含されることが意図されている。
【符号の説明】
【0040】
10 ステント、 14 管状の本体(ステント)、
20 管状本体の近位部分、 21 管状本体の近位の開口、
30 管状本体の遠位部分、 31 管状本体の遠位の開口、
32 管状本体の管腔、 40 第一の磁気要素、
42 第二の磁気要素、 46 第一の磁気要素の外径、
48 第二の磁気要素の外径、 50 接触境界部、
52 第一の磁気要素の第一の接触面、 54 第二の磁気要素の第二の接触面、
55 ストッパ部材、 56 第一の磁気要素の遠位端部、
57 第一の磁気要素の近位端部、 58 重なり縁、
59 第一の磁気要素の遠位端部、 60 穴、
70 保持部材、 72 穴、
100 給送装置、 102 膵管、
110 膵臓、 114 ファーター膨大部、
120 総胆管、 122 十二指腸、
124 胆嚢管、 126 胆嚢、
130 塊、 140 ニードル、
142 ガイドワイヤー、 144 押し込みカテーテル
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
減圧及び吻合形成のためのステント装置であり、
非拡張性の概ね管状の本体であって、近位部分及び遠位部分と、該管状の本体の少なくとも一部分を貫通している管腔と、前記遠位部分に設けられており且つ前記管腔と流体連通している遠位の開口と、前記近位部分に設けられており且つ前記管腔と流体連通している近位の開口とを備えており、体内導管内に少なくとも部分的に配置され且つその中を通る体液の流通を補助する構造とされている前記管状の本体と、
前記管状の本体の遠位部分上に配置された第一の磁気要素であって、該第一の磁気要素が前記管状の本体の一部分を包囲するように貫通穴が形成されている前記第一の磁気要素と、
前記管状本体の前記近位部分上に可動形態で位置決め可能な第二の磁気要素であって、該第二の磁気要素が前記管状の本体の前記近位部分を包囲し且つ該近位部分の外周に沿って前記第一の磁気要素に向かって動くことができる構造となるように貫通穴が形成されている前記第二の磁気要素と、を備えていることを特徴とするステント装置。
【請求項2】
前記第一の磁気要素が前記体内導管内に配置される構造とされており、前記第二の磁気要素が体腔内に位置決めされる構造とされており、前記体腔が前記管状の本体の管腔を介して体内管腔と流体連通せしめられるようになされている、ことを特徴とする請求項1に記載のステント装置。
【請求項3】
前記第一の磁気要素がテーパーが付けられた遠位端部を備えていて前記第一の磁気要素の前記体腔内への配置を補助するようになされている、ことを特徴とする請求項1に記載のステント装置。
【請求項4】
前記第一の磁気要素が凸面又は凹面の一方を有する端部を備えており、前記第二の磁気要素が凸面又は凹面の他方を備えている、ことを特徴とする請求項1に記載のステント装置。
【請求項5】
前記第一の磁気要素と第二の磁気要素とが、該第一及び第二の磁気要素から軸線方向に突出している第一及び第二の縁を形成している、ことを特徴とする請求項1に記載のステント装置。
【請求項6】
前記第一の磁気要素が、前記第二の磁気要素内に少なくとも部分的に入れ子式に結合されている大きさとされている、ことを特徴とする請求項5に記載のステント装置。
【請求項7】
前記第一の磁気要素と第二の磁気要素とが非外傷性の係合面を備えている、ことを特徴とする請求項1に記載のステント装置。
【請求項8】
前記第一の磁気要素が前記管状の本体に対して定位置に固定されている、ことを特徴とする請求項1に記載のステント装置。
【請求項9】
前記ステントが更に前記管状の本体から外方に向かって延びている保持部材を更に備えている、ことを特徴とする請求項1に記載のステント装置。
【請求項10】
前記管状の本体が前記管腔に連通される複数の穴を備えている、ことを特徴とする請求項1に記載のステント装置。
【請求項11】
前記第一の磁気要素が遠位方向に動くのを阻止するストッパ部材を更に備えている、ことを特徴とする請求項1に記載のステント装置。
【請求項12】
前記第一及び第二の磁気要素が自己芯出し性である、ことを特徴とする請求項1に記載のステント装置。
【請求項13】
前記第一の磁気要素を送り込むための第一の給送器具を更に備えている、ことを特徴とする請求項1に記載のステント装置。
【請求項14】
前記第二の磁気要素を送り込むための第二の給送器具を更に備えている、ことを特徴とする請求項1に記載のステント装置。
【請求項15】
前記第一の給送器具が内視鏡超音波器具からなる、ことを特徴とする請求項13に記載のステント装置。

【公表番号】特表2013−507185(P2013−507185A)
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−533262(P2012−533262)
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【国際出願番号】PCT/US2010/051567
【国際公開番号】WO2011/044192
【国際公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(511152957)クック メディカル テクノロジーズ エルエルシー (76)
【氏名又は名称原語表記】COOK MEDICAL TECHNOLOGIES LLC
【Fターム(参考)】