説明

背もたれ付き椅子

【課題】バックサポートに背板を取り付けた方式の背もたれにおいて、背板の取り付けの容易性と取り付け強度の向上とを図る。
【手段】背板10(メインメンバー14)の上端には上下に開口した外枠部54が形成されている一方、バックサポート11には、外枠部54が嵌まる雄型受け部58を形成している。また、背板10を構成するメインメンバー14に雄型係合部として上下係合体45,48を突設し、これらに係合片46,49を一体に設けている一方、バックサポート11には、係止片46,49が噛み合う係合受け部47,50を設けている。背板10は下向きにずらし移動することでバックサポート11に取付けできるが、係合片46,49が係合受け部47,50に噛み合っていなくても、背板10をバックサポート11に押し付けることで係合片46,49が係合受け部47,50に噛み合う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、背もたれ付き椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
椅子の背もたれとして、シェル状等の樹脂製背板(背インナーシェル)をシェル状やフレーム状の等のバックサポートに取付けた構造のものがある。この場合は、一般に背板の前面にはクッションを張っている。
【0003】
そして、背板は一般にビスを使用せずにバックサポートに取付けできるようにしており、その例として特許文献1では、バックサポート(外シェル12)の前面に茸形の多数の係合突起を設ける一方、背板(インナーシェル)に係合突起に対応した係合穴を設けている。この特許文献1では、インナーシェルをバックサポートに前から押し当てると、係合穴の内周縁が弾性変形することにより、係合爪が係合穴に嵌合する。特許文献1と同様の構成は特許文献2にも開示されている。
【0004】
他方、特許文献3には、背板をバックサポートに重ねて下向きにスライドさせることで落下不能に保持し、次いで、背板をバックサポートに押し付けることにより、背板をバックサポートに連結させる構成が開示されている。すなわち、この特許文献3では、背板の背面に下向き鉤状の係合爪(フック43)を形成する一方、バックサポートには上向き鉤状の係合爪(フック36)を形成し、これら係合爪を噛み合わせており、更に、バックサポートに取付けたダボに背板の穴を嵌め込んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3149051号公報
【特許文献2】特開2005−211250号公報
【特許文献3】実開平7033148号のCD−ROM
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
さて、背板はバックサポートから取り外すことがある。従って、背板は、バックサポートに対して前向き動不能に保持されつつ、容易に取り外しできるのが好ましい。しかし、特許文献1,2のように背板を手前から押し当てることでバックサポートに取り付ける方式では、取付け状態の維持と取り外しの容易性とはいずれも係合爪と係合穴との引っ掛かりの程度に依存しているため、背板をバックサポートに対して前向き動不能に保持する機能と、背板を簡単に取り外す機能とが相反するという問題がある。
【0007】
また、多数の係合爪の群と係合穴の群とを正確に位置合わせてしてから背板をバックサポートに対して押しつけねばならないが、係合爪の群を係合穴の群に位置合わせするのが面倒であるため、取付けが厄介であるという問題もある。
【0008】
他方、特許文献3の発明は、背板を下向き動させると当該背板に形成した係合爪とバックサポートに形成した係合爪とが嵌まり合い、これによって背板の上端部はバックサポートから手前側に離反不能に保持され、その状態で背板をバックサポートに向けて押し付けると、背板の係合穴がバックサポートのダボに嵌まり、これによって背板は上向き動不能に保持される。
【0009】
しかし、特許文献3の場合、背板をバックサポートから前向きに離反しないように保持する機能はダボの弾性力に依存しており、このため、背板の下端に手を当てて手前に引くと背板がバックサポートから外れてしまうという問題がある。
【0010】
本願発明はこのような現状を改善すべく成されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明に係る椅子は、背もたれが背板とその後ろに配置されたバックサポートとを有しており、前記背板は、当該背板とバックサポートとに形成した上下複数段の係合手段によってバックサポートに前向き移動不能に保持されている。そして、請求項1の発明では、前記上下複数の係合手段のうち少なくとも一部の段の係合手段を、背板を下向き動させることで互いに嵌合すると共に背板をバックサポートに向けて前から押し付けることによっても噛み合う雄型係合部と雌型係合部とで構成しており、前記雄型係合部と雌型係合部とは、互いに噛み合うと前後には離反不能になっている。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1において、前記雄型係合部と雌型係合部とのうちいずれか一方又は両方に、背板をバックサポートに向けて前から押し付けたときに互いに噛み合うことを誘い込む傾斜ガイド部を形成している。
【0013】
請求項3の発明は、請求項1又は2において、前記雄型係合部は、弾性変形しないボス部とその先端に一体に設けた舌状の係止片とを有しており、前記係止片が窄まり変形することで前記雌型係合部との噛み合いが許容されている。
【発明の効果】
【0014】
本願発明では、雄型係合部と雌型係合部とはいったん嵌合すると前後には離反しないため、背板はバックサポートに対して離反不能に保持される。そして、雄型係合部と雌型係合部とは背板を下向きにずらし移動させることで噛み合わせることができるが、仮に、ずらし移動によって雄型係合部と雌型係合部とが噛み合っていなくても、背板をバックサポートにむけて押し付けることで雄型係合部と雌型係合部とをかみ合わせることができるため、一々背板をセットし直すような手間と不要であり、このため、背板の取付けを簡単に行える。
【0015】
更に述べると、例えばユーザーのように不慣れな人が背板をバックサポートに取り付ける場合、例えば複数段の係合手段のうち一部の段だけが噛み合っているが他の段は噛み合っていないということがあるが、この場合でも、本願発明では、背板をバックサポートに対して強く押し付けることで雄型係合部と雌型係合部とを噛み合わせることができるのであり。また、背板を上向き移動させると雄型係合部と雌型係合部との噛み合いは解除されるため、取り外しは簡単に行える。請求項2のように傾斜ガイド部を設けると、取付け作業がより一層容易になる。
【0016】
また、背板を下向きにスライドさせることでバックサポートに取付けようとした場合、第2雄型係合部と第2雌型係合部とが嵌まり合わない事態も予想されるが、この場合、本願発明ではいったん背板を上向きに持ち上げて再度下向きにスライドし直すという作業は不要であり、背板をバックサポートに向けて押し付けることで第2雄型係合部と第2雌型係合部とを噛み合わせることができる。つまり、背板を持ち上げて第1雄型係合部と第2雄型係合部とを嵌合させ直すことなく、背板をバックサポートに取り付けることができ。この点においても、背板は取付けが簡単である。
【0017】
雄型係合部と雌型係合部とは様々な形状を選択できるが、請求項3のように舌状の係止片を有する形態を採用すると、噛み合わせを軽い力で行えると共に、雌型係合部にしっかりと噛み合わせることができて好適である。すなわち、舌状であると変形が容易であるため雌型係合部との噛み合わせを軽い力で行うことができ、また、舌状であると大きな変形量を確保できるため、雌型係合部との引っ掛かり代を大きく取ることができて、しっかりと噛み合わせることができる。
【0018】
また、撓み変形しないボス体に左右一対の係止片を設けて、左右の係止片を雌型係合部に噛み合わせることも可能であり、このように左右の係止片を採用することにより、雌型係合部との噛み合い状態がより一層確実にある。つまり、一方の係止片がずれて雌型係合部から外れようとすると、他方の係止片は雌型係合部にしっかりと噛み合う状態になるため、雄型係合部は雌型係合部に噛み合った状態に保持されるのである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】椅子の外観図であり、(A)は前方から見た斜視図、(B)は後ろから見た斜視図、(C)は側面図である。
【図2】椅子の分離斜視図である。
【図3】クッションを省略した状態での背もたれの外観図であり、(A)は前方から見た斜視図、(B)は側面図、(C)は後ろから見た斜視図である。
【図4】(A)は背もたれの背面部を下方から見た斜視図、(B)は分離側面図である。
【図5】背もたれを後ろから見た分離斜視図である。
【図6】背もたれの構成要素を分離して後ろから見た分離斜視図である。
【図7】背もたれの分離斜視図である。
【図8】メインメンバーを裏返してバックサポートと並べた正面図である。
【図9】(A)はメインメンバーとバックサポートとの分離斜視図、(B)はバックサポートの下部の部分斜視図、(C)はメインメンバーの下部の部分斜視図である。
【図10】(A)はメインメンバーの部分背面図、(B)はメインメンバーを後ろから見た部分斜視図、(C)はクッションの端部の部分正面図、(D)はクッションの取付け態様を示す平断面図である。
【図11】(A)はバックサポートの部分正面図、(B)はバックサポートを前から見た部分斜視図、(C)はバックシートの端部の部分正面図、(D)はバックシートの取付け態様を示す平断面図である。
【図12】(A)(B)とも要部の分離斜視図である。
【図13】(A)は背もたれの左右中央部で切断した分離図、(B)は継手の斜視図である。
【図14】(A)は背もたれの左右中央部での側断面図、(B)はトップメンバーの側端部の斜視図、(B)はトップメンバーの側端部の底面図である。
【図15】レバーの配置箇所の側断面図である。
【図16】レバーの箇所を表示した図であり、(A)は破断斜視図、(B)は係合解除状態での側断面図である。
【図17】レバーの配置箇所における分離断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は事務用に多用されている回転式ロッキング椅子に適用している。本願では方向を特定するため「前後」「左右」といった文言を使用するが、これは普通の姿勢で着座した人の向きを基準にしている。正面視は着座した人と対向した方向になる。
【0021】
(1).椅子の概要
まず、主として図1〜6を参照して椅子の概要を説明する。図1に示すように、椅子は大きな要素として脚1と座2と背もたれ3とを備えている。脚1は放射方向に延びる枝足を有しているが図示は省略しており、ガスシリンダよりなる脚支柱4のみを表示している。脚支柱4の上端にはベース5が固定されており、ベース5の上方に座2が配置されている。
【0022】
図2に示すように、座2は樹脂製の座インナーシェル(座板)6とその上面に張った座クッション7とから成っており、図2に示す中間支持体8に前後位置調節可能に取付けられている。中間支持体8の前部はフロントリンク9を介してベース5の前部に連結されており、フロントリンク9は側面視でベース5と中間支持体8との両方に対して相対回動する。従って、フロントリンク9が回動することにより、中間支持体8及び座2は上下動しながら前後動する。
【0023】
背もたれ3は、着座者の体圧がかかるシェル状の背板(背インナーシェル)10とこれが取付けられたシェル状のバックサポート(背アウターシェル)11とを有しており、背板10の前面に背クッション12が張られている。背クッション12はクロス等の表皮材13で前から覆われている。そして、図2に明示するように、背板10は、バックサポート11の手前に配置されたメインメンバー14とその上に重ね配置されたトップメンバー15との2つの部材(パーツ)で構成されている。両メンバー14,15は樹脂の成形品である。
【0024】
本実施形態では、メインメンバー14が背もたれ3の大部分を占めて、トップメンバー15は背もたれ3の上部を構成している。もとより、メインメンバー14とトップメンバー15との高さの比率や実際の寸法は任意に設定できる。メインメンバー14の前面とトップメンバー15の前面は滑らかに連続している。従って、着座した人は一体構造の背もたれと同様に違和感なく凭れる掛かることができる。本実施形態のトップメンバー15は後ろに曲がって下向きにUターンした形状をしており、従って、おおよそ下向き開口U字に近い側面視形態になっている。
【0025】
背板10におけるメインメンバー14の上端とバックサポート11の上端とは略同じ高さになっており、背板10のトップメンバー15はバックサポート11の上面に重なっている。そして、背板10のトップメンバー15は、バックサポート11の上部後方に回り込むようにオーバーハングしている。
【0026】
図3に明示するように、バックサポート11の下端には前向きに延びる左右一対のアーム16が一体に形成されており、左右のアーム16は門形のジョイント17で連結されている。そして、左右のアーム16はその前端部を中心にして後傾するようにベース5に連結されており、かつ、左右のアーム16は金具18(図1(B)に僅かに露出している。)を介して中間支持体8の後部と連結している。このため、背もたれ3が後傾すると、中間支持体8(座2)は金具18に引かれて後退しつつ上昇する。ベース5の後部にはロッキングに対して抵抗を付与する弾性体が配置されている。
【0027】
バックサポート11の下端部はアーム16の付け根よりも下方に突出している。また、バックサポート11の下部の背面にはロアカバー19が装着されている。バックサポート11は後ろからバックシート20で覆われており、ロアカバー19もバックシート11で覆われている。なお、アーム16はバックサポート11とは別部材に構成することも可能である。図1(A)に示すように、表皮材13の上部に後ろ向き引き込み部21を設けている。
【0028】
(2).メインメンバー
以下、背もたれ3の詳細を説明する。まず、図7〜11を中心にしてメインメンバー14とバックサポート11とを説明する。図8に明示するように、バックサポート11とメインメンバー14とは上端の横幅より下端の横幅が小さく、従って、両者とも正面視で逆台形の形状を成している。例えば図7(B)に明示するように、バックサポート11とメインメンバー14とは、いずれも平面視で前向き凹状に緩い曲率で湾曲しており、かつ、両者とも着座者の腰部が当たる部分が最も前に位置するように側面視で前向き凸状に湾曲している。
【0029】
例えば図2に示すように、メインメンバー14の左右両側部には前向きに突出した角形のサイド突条23が形成され、メインメンバー14の下端にも前向きに突出した角形のボトム突条24が形成されている。両突条23,24は互いに連続している。両突条23,24は後ろ向きに開口してチャンネル状の形態を成している。
【0030】
例えば図10(D)に示すように、背クッション12はサイド突条23及びボトム突条24の内側に配置されており、従って、サイド突条23とボトム突条24とは補強機能と背クッション12の位置決め機能とを有している。背クッション12を覆う表皮材13はメインメンバー14の後ろに巻き込まれており、表皮材13の端縁はバックサポート11で隠れている。
【0031】
そして、表皮材13の端縁には樹脂板のような帯板状の縁板25が縫着や接着等の手段で固定されている一方、メインメンバー14の背面のうち突条23,24のやや内側に位置した部位にはキャッチ突起26を適宜間隔で数形成しており、縁板25に形成したキャッチ穴27をキャッチ突起26に嵌め込んでいる。なお、縁板25はねの全体を表皮材13に重ねた縫着しており、このため、表皮材13は縫着部の箇所で折り返されている。
【0032】
(3).バックサポート
例えば図7及び図8に示すように、バックサポート11の左右両側縁は略前向きに突出した側壁11′になっており、また、バックサポート11の下部には、メインメンバー14におけるボトム突条24の後ろに位置した左右横長のロアリブ30が前向き突設されている。ロアリブ30の下面には多数の補強リブが連接されている。図10(D)に示すように、バックサポート11の側壁11′はメインメンバー14におけるサイド突条23の後ろに位置している。図10(D)(及び図11(D))では表皮材13と側壁11′との間に空間が空いているが、表皮材13はある程度の厚さがあるので、実際には側壁11′の先端は表皮材13に当接している。
【0033】
バックサポート11の前面には、アーム16に連続する左右一対ずつの内側縦リブ31及び外側縦リブ32が前向きに突設されており、ロアリブ30は内側縦リブ31に接続さている。また、左右の外側縦リブ32の上端は上部水平リブ33を介して連続しており、左右の内側縦リブ31の上端は下部水平リブ34を介して連続していま。また、下部水平リブ34は左右の外側縦リブ32にも連続している。
【0034】
これらのリブ30〜34は補強機能を有すると共に、背板10が着座者の体圧で後ろ向きに凹むように変形したときの変形量を規制するストッパーの役割も果たしている。また、内外の縦リブ31,32は、本願発明の要旨の一部として背板10を取付ける機能も果たしている(この点は後述する)。
【0035】
既述のように、バックサポート11はバックシート20で後ろから覆われている。図11(C)(D)に示すように、バックシート20の周縁には樹脂板等の帯の縁板35が逢着等で固定されている一方、バックサポート11の前面のうち左右両側部にはキャッチ突起36が上下適宜間隔で前向きに突設されており、縁板35に空けたキャッチ穴37をキャッチ突起36に嵌め込んでいる。
【0036】
(4).バックサポートへのメインメンバーの取付け手段
背板10はバックサポート11に簡単に着脱できる。この点を主として図9を参照して説明する。背板10はバックサポート11に左右ずれ不能に保持する必要がある。そこで、背板10を構成するメインメンバー14の左右両側部と下部とに略角形の位置決め突起42,43を後ろ向きに突設して、上部位置決め突起42はバックサポート11に設けた左右一対の上部挟持体44の間に嵌め入れ、下部位置決め突起43はバックサポート11における内外縦リブ31,32の間に嵌め入れている。
【0037】
また、背板10を前向き移動不能に保持する主係合手段として、メインメンバー14のうち上部位置決め突起42の外側に上部係合体45を後ろ向きに突設し、この上部係合体45の先端部に平面視で傾斜した上部係合爪46を一体に設けている一方、バックサポート11の前面には、上部係止片46が引っ掛かる平面視L形の上部係合受け部47を形成している。上部係合受け部47は補強のため底板47aを設けている。上下係止片46を有する上部係合体45は請求項に記載した雄型係合部に該当し、上部係合受け部47は請求項に記載した雌型係合部に相当する。
【0038】
上部係止片46は手前に行くほど左右外側にずれるように平面視で傾斜した舌状の形態であり、このため、その先端が上部係合体45に近づくように撓み変形し得る(弾性に抗して窄まり変形し得る。)。また、そして、背板10が左右移動不能に保持された状態で、上部係合受け部47と上部係合爪46とが前後から噛み合っている。このため、背板10は前向き離反不能に保持されている。
【0039】
メインメンバー14の背面のうち下部位置決め突起43より下方の下端部には、下部係合体48を後ろ向きに突設しており、この下部係合体48に、平面視で傾斜した左右一対の下部係止片49を一体に設けている。左右の下部係止片49は舌状の形態であり、両者は手前に行くほど互いの間隔が広がるように傾斜している。すなわち、下部係合体48と左右の下部係止片49とで矢印形が形成されている。下部係止片49も上部係止片46と同様に、その付け根を中心に回動するように弾性に抗して撓み変形し得る。下部係止片49を有する下部係合体48も請求項に記載した雄型係合部の具体例である。
【0040】
メインメンバー14の下部係合体48は、バックサポート11における内外縦リブ31,32の間の溝に入り込む。そして、内外の縦リブ31,32に、下部係止片49が後ろ側から当接する左右一対の下部係合受け部50を相対向するように形成している。従って、下部係合受け部50は請求項に記載した雌型係合部に該当する。
【0041】
上下の係止片46,49は、基本的には、上からのずらし移動によって係合受け部47,50に噛み合わせる。しかし、図9に矢印Aで示すように、メインメンバー14をバックサポート11に対して後ろ向きに押し付けることによっても、係合受け部47,50に係合させることができる。後者の場合は、係止片46,49を弾性変形させて係合受け部47,50に引っ掛けることになる。そして、両係止片46,49は釣り針の返りのような形態であるため、いったん受け部47,50に噛み合うと手前に引き移動させることはできない。
【0042】
背板10は、上部係合手段により、メインメンバー14の上端部においてもバックサポート11に対して左右動不能及び下向き移動不能に保持されている。すなわち、例えば図9に示すように、メインメンバー14の上端のうち左右両端寄り部位に後ろ向きの上端突起53と、上端突起53に連続した上下開口の外枠部54とを後ろ向きに突設している一方、バックサポート11には、上端突起53が嵌まる上端凹部55と、外枠部54が嵌まる雄型受け部(ストッパー)58とが形成されている。雄型受け部58の下方には前後に開口した内枠部56が形成されている。
【0043】
上端突起53の上面は上フランジ63になっており、他方、バックサポート11における上端凹部55の上部は上フランジ63が前から重なるよう段部55aになっている。また、メインメンバー14の外枠部54は左右横長の前後横バー部54a,54bを有しており、前後横バー部54bの間に雄型受け部58が位置している。バックサポート11の内枠部56は、左右側板57と上板58と下面59とを有していて上下に長い長方形の形態を成しており、かつ、既述のとおり前後に開口している。
【0044】
メインメンバー14のうち外枠部54の真下部位には、トップメンバー15を上向き動不能に保持する係合手段の一例してアッパー係合爪60が形成されている。アッパー係合爪60は弾性に抗して変形することにより、その下端を中心にして前後に回動し得る。他方、バックサポート11における内枠部56の内部のうち、上下中間位置よりやや上方の部位には横長の支軸61が一体に形成されており、この支軸61に、例えば図12(A)に示すレバー62が回動自在に取付けられている。
【0045】
そして、背板10はアッパー係合爪60によって上向き移動不能に保持されると共に、レバー62を回動操作することで雄型受け部58に対するアッパー係合爪60の係合(ストッパー機能)を解除することができる。この点は後述する。
【0046】
例えば図12に示すように、メインメンバー14の上端には後ろ向きに突出した庇状の上フランジ63が形成されている。外枠部54は上フランジ63に連続した状態に形成されている。他方、例えば図9(A)に示すように、バックサポート11の上端にも上フランジ64が形成されている。内枠部56はは上フランジ64から少し突出している。
【0047】
例えば図5に示すように、バックサポート11の上部のうち左右の内枠部56の間には、後ろ向き突出部65が形成されている。後ろ向き突出部65は上フランジ64に連続した背面板66と、背面板66及びバックサポート11の基板に連続した下面板67とを有しており、図4(A)に示すように、下面板67には人が手先を差し込むことができる引手穴68を設けている。このため、人は、バックサポート11の後ろ向き突出部65に手を掛けて椅子を引き移動させることができる。
【0048】
(5).トップメンバーの構造及びメインメンバーとの関係
次に、従前の図に加えて図15〜図17も参照してトップメンバー15とその取付け構造を説明する。例えば図13から理解できるように、トップメンバー15は、メインメンバー14の上フランジ63及びバックサポート11の上フランジ64に対向する重合面71を有しており、重合面71の左右中間部と左右両端部とに第1下向き突起72を設け、第1下向き突起72をメインメンバー14の上フランジ63に形成した位置決め穴73に嵌め入れている。
【0049】
図12に示すように、トップメンバー15の左右両側部には、メインメンバー14のサイド突条23に連続したトップ突条75が形成されており、トップ突条75の下端に第2下向き突起76を設けている。他方、メインメンバー14におけるサイド突条23の上端は上向きに開口した筒状部77になっており、この筒状部77に第2下向き突起76を嵌め入れている。なお、突起と筒状部との関係を逆にしてもよいし、別部材の継手で連結することも可能である。
【0050】
トップメンバー15の重合面71はその左右両端部が切欠かれた状態になっており、このため、トップメンバー15の左右両側部には上端近くまで延びる横向きのサイド凹所78が開口している。そして、バックサポート11の左右両端部に差し込み装着した上下長手のプラグ79をトップメンバー15のサイド凹所78に嵌め入れている。
【0051】
例えば図9(A)に示すように、バックサポート11の左右両端部には前向きに開口した溝形の耳部11aを形成しており、耳部11aに形成した蟻溝11bには継手79の足部79a(図13(B)参照)が嵌め込まれている。フラグ79における足部79aの下端には後ろ向きの爪79bが形成されている一方、図9(A)に示すように、バックサポート11の耳部11aには、継手79の爪79bが下方から引っ掛かり係合する爪キャッチ11cを前向きに突設している。
【0052】
トップメンバー15のううち重合面71より上の部分には、軽量化及び樹脂の使用量節減のため前向き開口の空所と後ろ向き開口の空所が多数形成されている。トップメンバー15は相当の部分がバックサポート11の後ろにオーバーハングしており、かつ、トップメンバー15の後端にはバックサポート11の後ろ向き突出部65を後ろから覆う後ろ壁80が形成されている。トップ突条75は後ろ壁80の下端まで延びており、更に、後ろ壁80の下端にはトップ突条75に連続したバック突条81が形成されている。
【0053】
背クッション12は、メインメンバー14から上向きに延びてトップメンバー15も覆っている。従って、図13(A)に示すように、背クッション12はトップメンバー15のバック突条81まで延びている。そして、表皮材13は後ろ壁80の内面まで巻き込まれており、後ろ壁80の内面に設けたキャッチ突起26に縁板25を嵌合している。図12(A)(B)から理解できるように、表皮材13はトップメンバー15のサイド凹所78にも入り込んでおり、サイド凹所78の内壁78aに設けたキャッチ突起26に縁板25を嵌め込んでいる。このため、表皮材13は凹所78の外側部において張った状態に保持されている。
【0054】
図13(A)及び図14(A)に示すように、第1下向き突起72は側面視で下窄まりのテーパ形状になっている一方、メインメンバー14の位置決め穴73は側面視で上向きに広がったテーパ状になっており、このため、第1下向き突起72は位置決め穴73にスムースに誘い込まれる。第1下向き突起72は係合爪82を形成し、位置決め穴73の背面部には補助係合穴83を形成している。左右中間部の第1下向き突起72では係合爪82は後ろ向きに突出しており、左右両側の第1下向き突起72では係合爪82は前向きに突出している。
【0055】
例えば図12や図15に示すように、トップメンバー15のうち第1下向き突起72の少し内側の部位には、ガイドリブ74を設けている。ガイドリブ74の前面は上に行くほど手前にずれるように傾斜しており、背板10の取付けに際しては、ガイドリブ74がバックサポート11の雄型受け部58に上から当たることにより、背板10はバックサポート7に重なるように後ろ向き移動がガイドされる。
【0056】
上記の係合爪82が補助係合穴83に嵌合していることにより、トップメンバー15はメインメンバー14に対して上向き離脱不能に保持されている。補助係合穴83に対する係合爪82の嵌合解除は、係合爪82をマイナスドライバ等で押すことで行える。
【0057】
(6).背板の係止構造
背板10は通常はバックサポート11に対して上向き離脱不能に保持されると共に、取り外しは容易に行える。この機能は、既述のレバー62とアッパー係合爪60と雄型受け部58とを主要要素として達成される。この点を次に説明する。
【0058】
図15及び図16(A)は背板10がバックサポート11に対して離脱不能に保持された状態を表示しており、この状態では、アッパー係合爪60の上にバックサポート11の雄型受け部58が位置しているため、背板10を上向き移動させることはできない。アッパー係合爪60の上面には、雄型受け部58の手前に位置したリブ(ストッパー)84を形成しており、このためアッパー係合爪60が後ろに向いて回動する姿勢が規制されている。
【0059】
また、バックサポート11における雄型受け部58の上面は側断面視で円弧状になっており、上端にはリブ85を突設している。雄型受け部58のリブ85の上面にトップメンバー15の重合面71が近接しており、かつ、雄型受け部58のリブ85の後ろに外枠部54における後部横バー54bが位置している。また、後部横バー54bはトップメンバー15における重合面71の奥部に形成した前向き溝86に嵌まっている。これにより、背板10はバックサポート11に対して上向き移動不能に保持されている。
【0060】
アッパー係合爪60は付け根部が細くなっており、このため、付け根を支点にして前後方向に回動するように弾性変形する。そして、アッパー係合爪60の後面は側面で上に行くほど後退するように湾曲しており、かつ、上端には後ろ向きに突出した顎部87が形成されており、顎部87の後端に下方及び後方に開口した切欠き部88を形成している。
【0061】
他方、レバー62はアッパー係合爪60の後ろに配置された支軸61に回動自在に取付けられている。すなわち、レバー62のうち上下中間高さより僅かに上の部位に後ろ向きに開口した軸受け溝穴89を形成し、この軸受け溝穴89を支軸61に嵌め込んでいる。このため、レバー62は支軸61の軸心周りに回動し得る。
【0062】
支軸61は側面視で傾斜した姿勢の平板状部61aを有しており、レバー62における軸受け溝穴89のうち支軸61の平板状部61aに対応した部位には、相対向する方向に突出する上下のストッパー90を設けている。上下ストッパー90の間の間隔は平板状部61aの厚さより僅かに大きい寸法に設定している。
【0063】
従って、レバー62は、上端が後ろで下端が前になる傾斜姿勢とすることで支軸61に取付けることができる。そして、レバー62はバックサポート11の内枠部56で囲われており、いったん支軸61に取付けると、上端が後ろで下端が前になる姿勢にすることはできない。従って、背もたれ3を組み立て状態ではレバー62が支軸61から外れることはない。
【0064】
レバー62の上端には、アッパー係合爪60の切欠き部88に嵌合可能な角部91を形成している。そして、図16(B)に示すように、レバー62の下部に指先を当てて後ろに引くと、アッパー係合爪60はその上端が前に押されることで弾性に抗して変形し、レバー62を引き切ると、上端の角部91でアッパー係合爪60の切欠き部88に嵌まり、アッパー係合爪60は手前に回動した状態に保持される。レバー62の回動によってアッパー係合爪60が容易に変形するように、アッパー係合爪60の上部後端は側面視で丸みを帯びている。
【0065】
レバー62によってアッパー係合爪60が手前に回動した状態では、アッパー係合爪60はバックサポート11における内枠部56における上板58の手前に位置しており、従って、メインメンバー14を上に移動させることができる。換言すると、背板10をバックサポート11から取り外すことができる。
【0066】
背板10をバックサポート11から取り外すと、レバー62はほぼ鉛直姿勢に戻る。この状態では、レバー62は雄型受け部58の下方に位置している。そして、背板10を、トップメンバー15の重合面71がバックサポート11の上面に重なるようにずらし移動させると、アッパー係合爪60は内枠部56における上板58のガイド作用によっていったん手前に回動し、次いで、トップメンバー15を下降させ切ると、アッパー係合爪60は弾性復元力によって戻り変形し、その上端が雄型受け部58の下方に位置する(この場合、既述のとおり、ガイドリブ74により、背板10はバックサポート11に近づくようにガイドされる。)。
【0067】
このように、背板10はバックサポート11に対して離脱不能に保持されると共に、レバー62を回動操作してバックサポート11に対するメインメンバー14の係合を解除するだけで、簡単に取り外すことができる。
【0068】
(7).まとめ・その他
トップメンバー15は予めメインメンバー14に接続されて背板10が構成されており、その状態で背クッション12と表皮材13とが取付けられている。そして、背板10の取付けは、基本的には、外枠部54を雄型受け部58に上から嵌め込みむことで背板10の上端をバックサポート11に取付けつつ、上下係合体45,48の係止片46,49をバックサポート11の係合受け部47,50に上から噛み合われる、という方法で行われる。
【0069】
この場合、外枠部54は雄型受け部58に嵌合して背板10が所定高さに保持されつつ、上下係合体45,48のうち両方又は下係合体48が係合受け部47,50に噛み合っていないことが有り得る。この場合は、背板10をバックサポート11に向けて押し付けるだけで、背板10をバックサポート11に取付けできる。
【0070】
すなわち、背板10をバックサポート11に押し付けると、係止片46,49は、係合体45,48に当接していったん弾性変形し、背板10をバックサポート11に押し付け切ると弾性復元力で戻り回動する、という挙動をとり、これにより、係止片46,49が係合受け部47,50の内側に位置して、背板10は前向き移動不能に保持される。係止片46,50は平面視で傾斜した矢尻形の外観を呈しているため(すなわち傾斜ガイド面を有しているため)、係止片46,50は係合受け辺47,50に嵌まり込むようにガイドされる。
【0071】
なお、背板10をバックサポート11に重ねて下向きにスライドさせ、外枠部54を内枠部56に嵌め込むと共に、係止片46,49を上から係合受け部47,50に嵌め入れるという手順も採用可能である。
【0072】
(8).その他
本願発明は上記の実施形態の他にも様々に具体化できる。例えば適用対象は回転椅子に限定されず、固定式椅子などの各種の椅子に適用できる。また、背もたれがロッキングしない椅子にも適用できることはいうでもない。実施形態では背板をメインメンバーとトップメンバーとの2つの部材で構成したが、背板は必ずしも複数のメンバーで構成する必要はなく、単一構造にすることも可能である。バックサポートは例えば前後に開口したフレーム形状にするなど、種々の形態・構造を採用できる。
【0073】
背板の取付け構造としては、その上端又は下端を先にバックサポートに引っ掛けて、それから上又は下を支点にして回動させることでバックサポートに押し付ける、という方法も採用できる。
【0074】
雄型係合部及び雌型係合部の種々の形態を採用可能である。例えば第1雄型係合部としてボス状の突起を採用し、第1雌型係合部として係合穴を採用することも可能である。また、雄型係合部と雌型係合部とは両者を鉤状(爪状)の形態と成すことも可能である。つまり、雄型係合部と雌型係合部とはいずれか一方又は両方の弾性に抗して噛み合う機能があれば足りるのである。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本願発明は椅子に適用して有用性を発揮する。従って、産業上利用できる。
【符号の説明】
【0076】
2 座
3 背もたれ
10 背板(背インナーシェル)
11 バックサポート(背アウターシェル)
12 背クッション
14 背板を構成するメインメンバー
15 背板を構成するトップメンバー
45 雄型係合部を構成する上部係合体
46 雄型係合部を構成する係止片
47 雌型係合部を構成する上部係合受け部
48 雄型係合部を構成する下部係合体
50 雌型係合部を構成する下部係合受け部
54 上下係合部としての外枠体
58 上下係合部としての雄型受け部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
背もたれが背板とその後ろに配置されたバックサポートとを有しており、前記背板は、当該背板とバックサポートとに形成した上下複数段の係合手段によってバックサポートに前向き移動不能に保持されている椅子であって、
前記上下複数の係合手段のうち少なくとも一部の段の係合手段を、背板を下向き動させることで互いに嵌合すると共に背板をバックサポートに向けて前から押し付けることによっても噛み合う雄型係合部と雌型係合部とで構成しており、前記雄型係合部と雌型係合部とは、互いに噛み合うと前後には離反不能になっている、
背もたれ付き椅子。
【請求項2】
前記雄型係合部と雌型係合部とのうちいずれか一方又は両方に、背板をバックサポートに向けて前から押し付けたときに互いに噛み合うことを誘い込む傾斜ガイド部を形成している、
請求項1に記載した背もたれ付き椅子。
【請求項3】
前記雄型係合部は、弾性変形しないボス部とその先端に一体に設けた舌状の係止片とを有しており、前記係止片が窄まり変形することで前記雌型係合部との噛み合いが許容されている、
請求項1又は2に記載した背もたれ付き椅子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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