説明

脂環式構造を有する可溶性多官能(メタ)アクリル酸エステル共重合体及びその製造方法

【課題】低色分散、高光線透過率等において優れた光学特性を有し、光学レンズ・プリズム材料に求められる種々の特性バランスに優れ、湿熱耐久性を維持した新規な多官能(メタ)アクリル酸エステル共重合体を提供する。
【解決手段】脂環式構造を有する単官能(メタ)アクリル酸エステル(a)、2官能(メタ)アクリル酸エステル(b)、及び2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン(c)を共重合して得られる共重合体であって、側鎖に2官能(メタ)アクリル酸エステル(b)由来の(メタ)アクリレート基を含有する構造単位のモル分率(b1)/[(a)+(b)]が0.05以上であり、更に末端に2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン(c)由来の構造単位のモル分率が(c)/[(a)+(b)+(c)]が0.02〜0.35の範囲である可溶性共重合体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低色分散、高光線透過率といった優れた光学特性、耐熱性、低吸水性及び加工性を有し、加えて湿熱条件のような厳しい実使用条件下での光学特性が改善された脂環式構造を有する可溶性多官能(メタ)アクリル酸エステル共重合体とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
反応活性のある不飽和結合を有する単量体の多くは、不飽和結合が開裂して、連鎖反応を起こす触媒と適切な反応条件を選択することにより多量体を生成することができる。一般に不飽和結合を有する単量体の種類は極めて多岐にわたることから、得られる樹脂の種類の豊富さも著しい。しかし、一般に高分子化合物と称する分子量10,000以上の高分子量体を得ることができる単量体の種類は比較的少ない。例えば、エチレン、置換エチレン、プロピレン、置換プロピレン、スチレン、アルキルスチレン、アルコキシスチレン、ノルボルネン、各種アクリルエステル、ブタジエン、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、イソプレン、マレイン酸無水物、マレイミド、フマル酸エステル、アリル化合物等を代表的な単量体として挙げることができる。これらの単量体を単独で又はこれらを共重合させることにより多種多様な樹脂が合成されている。
【0003】
これらの樹脂の用途は主に、比較的安価な民生機器の分野に限られており、光・電子材料分野に於いて高度の耐熱性、寸法安定性や微細加工性が要求される先端技術分野への適用は殆どない。その理由としては、通常上記のモノマーから合成されるポリマーは熱可塑性であり、また、力学的特性を満足させるためにかなりの高分子量体とする必要があるため、耐熱性や微細加工性といった先端技術分野で要求される特性が犠牲となっているということが挙げられる。
【0004】
この様なビニル系の熱可塑性ポリマーの欠点を解決する方法として、特許文献1〜3には、(メタ)アクリロイル基またはビニルエーテル基をペンダントに持つ重合体が開示されている。例えば、特許文献1には、アクリル酸2−ビニロキシエチル(VEA)などの異種重合性単量体をカチオン重合させて得られた(メタ)アクリロイル基ペンダント型重合体および光重合開始剤からなる感光性組成物が開示されている。また、特許文献2には、(メタ)アクリロイル基ペンダント型重合体と、光反応性の不飽和カルボキシル基を有する化合物と、光重合開始剤とからなる感光性組成物が開示されている。さらに、特許文献3には、アクリル酸2−ビニロキシエチル(VEA)などの異種重合性単量体を、それ自体カチオン重合に不活性な光反応性の不飽和基を有するカルボン酸エステル溶媒化合物中で、カチオン重合触媒を使用して、単独重合または共重合させることにより、重合体溶液を得る製造法が開示されている。
【0005】
しかし、これらの特許文献で開示されている異種重合性単量体を使用した技術に従って製造される反応性の重合体を使用した場合、先進の光学レンズ・プリズム用途分野で求められる低吸水性、成形性、耐熱性、高透明性といった特性バランスを兼ね備えた重合体は得られていなかった。
【0006】
一方、特許文献4にはモノビニル芳香族化合物及び2官能(メタ)アクリル酸エステルを共重合して得られ、側鎖に2官能(メタ)アクリル酸エステル由来の反応性の(メタ)アクリレート基を含有する構造単位を有する可溶性多官能ビニル芳香族共重合体が開示されている。しかし、当該特許文献で開示されている技術によって得られる可溶性多官能ビニル芳香族共重合体は高温での熱履歴に対しても優れた耐熱分解性を有し、側鎖に反応性の(メタ)アクリレート基を持ち、加工性に優れ、溶剤可溶性を兼ね備えているものの、低色分散用途の光学レンズには使用することはできないという実使用上の制約のある材料であった。
【0007】
さらに、特許文献5にはメタクリル酸メチル(MMA)系シロップにおいて、構成成分として炭素数4〜8の直鎖状脂肪族2価アルコールのジ(メタ)アクリレートを1〜25重量%含有することを特徴とする組成物が開示されている。そして、当該特許文献に開示されているMMA系シロップ組成物の製造は、MMA、或いはMMA及びそれと共重合し得るビニル共重合体、連鎖移動剤を重合開始剤の存在下で、不活性ガス(例えばN2ガス)雰囲気中、常温または加熱重合して行うことが開示されている。そして、連鎖移動剤として具体的に例示されているのは、ラウリルメルカプタン、チオグリコール酸オクチルエステル、チオクレゾール、チオナフトール、ベンジルメルカプタン等のイオウ化合物のみであり、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン(c)については、具体的には開示されていなかった。ましてや、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン由来の末端基と脂環式構造を有する脂環式構造を有する単官能(メタ)アクリル酸エステル(a)由来の構造単位とが共存することによって、相乗的に、湿熱時の屈折率分岐の発生を抑制し得ることは示唆すらされていなかった。
【0008】
また、特許文献6にはビニル系単量体とジ(メタ)アクリレート化合物からなる重合性組成物が開示されており、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンの使用も開示されてはいるが、その使用量は通常の連鎖移動剤としてコンマ数%程度の使用であり、生成物も架橋ゲル化したもので溶剤可溶性を示さないものであった。
【0009】
従って、低色分散、高光線透過率といった優れた光学特性を有し、低吸水性、成形性、耐熱性といった特性バランスを備え、さらに湿熱条件のような厳しい実使用条件でも、屈折率の分岐を生じることなく、高度の光学特性を維持しえる可溶性多官能ビニル共重合体はこれまでに存在しなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特公昭49−13212号公報
【特許文献2】特公昭51−34433号公報
【特許文献3】特公昭54−27394号公報
【特許文献4】特開2008−247978号公報
【特許文献5】特開昭57−167340号公報
【特許文献6】特開2002−121228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、低色分散、高光線透過率といった優れた光学特性を有し、側鎖に硬化性に優れた反応性(メタ)アクリレート基を持ち、低吸水性、加工性、耐熱性といった先進技術分野に於いて、光学レンズ・プリズム材料に求められる種々の特性バランスに優れ、さらに湿熱条件のような厳しい実使用条件でも、屈折率の分岐を生じることなく、高度の光学特性を維持し、制御された分子量分布と溶剤可溶性を兼ね備えた新規な多官能(メタ)アクリル酸エステル共重合体と当該共重合体を高効率に製造する製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、脂環式構造を有する単官能(メタ)アクリル酸エステル(a)及び2官能(メタ)アクリル酸エステル(b)を共重合して得られる共重合体であって、側鎖に2官能(メタ)アクリル酸エステル(b)由来の反応性の(メタ)アクリレート基を含有する構造単位のモル分率(b1)が(1)式、
(b1)/[(a)+(b)]≧0.05 (1)
を満足し、更に、末端に2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン(c)由来の構造単位を有し、共重合体中の(a)成分と(b)成分のモル分率と(c)成分のモル分率とが(2)式、
0.02≦(c)/[(a)+(b)+(c)]≦0.35 (2)
を満足する共重合体であり、更に該共重合体の数平均分子量Mnが500〜50,000であり、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnの比で表される分子量分布(Mw/Mn)が5.0以下であり、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、ジクロロエタン又はクロロホルムに可溶であることを特徴とする可溶性多官能(メタ)アクリル酸エステル共重合体である。
【0013】
脂環式構造を有する単官能(メタ)アクリル酸エステル(a)としては、イソボルニルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレ−ト、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレ−ト、ジシクロペンタニルアクリレ−ト、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレ−ト、及びジシクロペンタニルメタクリレートからなる群から選ばれる一種以上の単官能(メタ)アクリル酸エステルが好ましいものとして挙げられる。
【0014】
2官能(メタ)アクリル酸エステル(b)としては、シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、及びジメチロールトリシクロデカンジアクリレートからなる群から選ばれる一種以上の2官能(メタ)アクリル酸エステルが好ましいものとして挙げられる。
【0015】
また、本発明は脂環式構造を有する単官能(メタ)アクリル酸エステル(a)、2官能(メタ)アクリル酸エステル(b)及び2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン(c)を含む単量体100モルに対し、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン(c)を2〜60モル含有し、脂環式構造を有する単官能(メタ)アクリル酸エステル(a)及び2官能(メタ)アクリル酸エステル(b)の合計100モルに対し、脂環式構造を有する単官能(メタ)アクリル酸エステル(a)を2〜90モル及び2官能(メタ)アクリル酸エステル(b)を98〜10モル含有してなる単量体を、50〜200℃の温度で重合させることを特徴とする上記の可溶性多官能(メタ)アクリル酸エステル共重合体の製造方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、低色分散、高光線透過率といった優れた光学特性を有し、側鎖に光硬化性に優れた反応性(メタ)アクリレート基を持ち、低吸水性、加工性、耐熱性といった先進技術分野に於いて、光学レンズ・プリズム材料に求められる種々の特性バランスに優れる制御された分子量分布と溶剤可溶性を兼ね備えた脂環式構造を有する可溶性多官能(メタ)アクリル酸エステル共重合体を高効率に製造することができる。本発明の可溶性多官能(メタ)アクリル酸エステル共重合体を硬化させることにより、光学レンズ・プリズム材料として優れる樹脂となる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の可溶性多官能(メタ)アクリル酸エステル共重合体及びその製造方法について詳しく説明する。この可溶性多官能(メタ)アクリル酸エステル共重合体は脂環式構造を有する。以下、この可溶性多官能(メタ)アクリル酸エステル共重合体を、共重合体と略称することがある。
【0018】
本発明の可溶性多官能(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、脂環式構造を有する単官能(メタ)アクリル酸エステル(a)及び2官能(メタ)アクリル酸エステル(b)を含む単量体を共重合して得られる共重合体である。そして、2官能(メタ)アクリル酸エステル(b)は架橋構造を形成するとしても、その(メタ)アクリレート基の少なくとも一部は重合せずに残った状態で存在するため、1分子中に(メタ)アクリレート基を平均して1より多く含む多官能共重合体であり、溶剤可溶性を示す。
【0019】
本発明の可溶性多官能(メタ)アクリル酸エステル共重合体の溶剤可溶性、低吸水性、耐熱性、光学特性及び加工性を改善する目的で、脂環式構造を有する単官能(メタ)アクリル酸エステル(a)を使用することが必要である。このような脂環式構造を有する単官能(メタ)アクリル酸エステル(a)としては、イソボルニルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレ−ト、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレ−ト、ジシクロペンタニルアクリレ−ト、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレ−ト、及びジシクロペンタニルメタクリレートからなる群から選ばれる一種以上の脂環式構造を有する単官能(メタ)アクリル酸エステルを挙げることができるが、これらに制限されるものではない。これら成分から誘導される構造単位が共重合体中に導入されることによって、共重合体のゲル化を防ぎ、溶媒への溶解性を高めることができるばかりではなく、可溶性多官能(メタ)アクリル酸エステル共重合体の低色分散性などの光学特性、低吸水性、耐熱性を改善することができる。好適な具体例としては、コスト、ゲル化防止及び得られたポリマーの成形加工性の点でイソボルニルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、又はジシクロペンタニルメタクリレートを挙げることができる。
【0020】
2官能(メタ)アクリル酸エステル(b)は、本発明の可溶性多官能(メタ)アクリル酸エステル共重合体を光硬化あるいは熱硬化させることによって耐熱性を発現する硬化物となる際に、架橋成分として主要な役割を果たす構造単位である。この2官能(メタ)アクリル酸エステル(b)等の二重結合を2以上有する多官能モノマーを含む単量体からは、通常は架橋が生じ、熱硬化樹脂と同じく溶剤不溶であるか、ゲルとなって固形分として残る。本発明の可溶性多官能(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、溶剤に溶解後においてもゲルの生成が認められない様、完全に溶剤可溶性としたものであるので、架橋成分が少なく2官能の(メタ)アクリル基のうち、一方は反応性を有したまま存在する形が必要であり、側鎖に該2官能(メタ)アクリル酸エステル(b)由来の反応性の(メタ)アクリレート基(「ペンダント(メタ)アクリレート基」と略称される)を含有する構造単位のモル分率(b1)が(1)式に示すように、0.05以上となることが必要である。好ましくはモル分率が0.1以上である。上記モル分率が0.05以上であることによって、光や熱での硬化性に富み、硬化後の耐熱性及び機械的特性に優れた成形品を得ることができる。
【0021】
これら2官能(メタ)アクリル酸エステル(b)としては、シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、シクロヘキサンジメタノールジメタクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート等の2官能(メタ)アクリル酸エステルを用いることができるが、これらに制限されるものではない。(b)成分の好適な具体例としては、コスト、重合制御の容易さ及び得られたポリマーの耐熱性の点でシクロヘキサンジメタノールジアクリレート、又はジメチロールトリシクロデカンジアクリレートが好ましく用いられる。なお、2官能(メタ)アクリル酸エステル(b)は、脂環式構造を有する必要はないが、脂肪族(メタ)アクリル酸エステルであることが好ましく、より好ましくは脂環式構造を有する(メタ)アクリル酸エステルである。
【0022】
また、本発明の可溶性多官能(メタ)アクリル酸エステル共重合体では、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン(c)由来の構造単位を有する。以下、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンをα−メチルスチレンダイマー又はαMSDと略称することがある。2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン構造単位は、共重合体中の(a)成分、(b)成分、(c)成分のモル分率との合計に対し、(2)式で表されるように、0.02以上、0.35以下であることが必要である。(c)成分のモル分率が上記範囲を満足することによって、共重合体の架橋構造が高度に発達しゲル化することを抑制し、溶剤可溶性を発現させると共に、低吸水性と硬化性のバランスの良好な共重合体を得ることができる。
【0023】
また、可溶性多官能(メタ)アクリル酸エステル共重合体の数平均分子量Mn(ゲル浸透クロマトグラフィーを用いて得られる標準ポリスチレン換算による。)は、500〜50,000であり、より好ましくは700〜20,000である。最も好ましくは1,000〜8,000である。Mnが500未満であると脂環式構造を有する可溶性多官能(メタ)アクリル酸エステル共重合体の粘度が低すぎるため、加工性が低下したり、硬化物の耐熱性が低下したりするので好ましくない。また、Mnが50,000以上であると、ゲルが生成しやすくなり、成形体やフィルム等に成形した場合、外観の低下や光学特性の低下を招くので好ましくない。
【0024】
また、可溶性多官能(メタ)アクリル酸エステル共重合体はMnと重量平均分子量Mwより求められる分子量分布(Mw/Mn)の値は5.0以下であり、好ましくは、4.0以下である。特に好ましくは2.0以下である。Mw/Mnが5.0を越えると、脂環式構造を有する可溶性多官能(メタ)アクリル酸エステル共重合体の加工特性の悪化、ゲルの発生といった問題点を生ずるので好ましくない。
【0025】
また、別の観点からは、本発明の可溶性多官能(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン(c)由来の構造単位を5〜20モル%を含むことがよく、脂環式構造を有する単官能(メタ)アクリル酸エステル(a)由来の構造単位及び2官能(メタ)アクリル酸エステル(b)由来の構造単位を合計で80〜95モル%含むことがよい。
【0026】
脂環式構造を有する単官能(メタ)アクリル酸エステル(a)由来の構造単位及び2官能(メタ)アクリル酸エステル(b)由来の構造単位を合計に対し、40〜90モル%の脂環式構造を有する単官能(メタ)アクリル酸エステル(a)由来の構造単位及び60〜10モル%の2官能(メタ)アクリル酸エステル(b)を含むことが好ましい。さらに好ましくは、2官能(メタ)アクリル酸エステル(b)由来の構造単位は、50〜12モル%、より好ましくは40〜15モル%である。2官能(メタ)アクリル酸エステル(b)由来の構造単位が10モル%に満たないと、硬化物の耐熱性が不足するので好ましくなく、この構造単位が60モル%を越えると、成形加工性が低下し、成形物の強度が著しく低下するので好ましくない。
【0027】
さらに、本発明の脂環式構造を有する可溶性多官能(メタ)アクリル酸エステル共重合体の溶剤可溶性及び加工性を改善する目的で(d)成分として、脂環式構造を持たない(メタ)アクリル酸エステルを添加することが可能である。このような(メタ)アクリル酸エステルとしては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−メチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート等があげられるが、好ましくは、メチルメタクリレート、n−ブチルアクリレートである。これら(メタ)アクリル酸エステル系単量体は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよいが、メチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、メチルアクリレート、n−ブチルアクリレートからなる群から選ばれる一種以上の(メタ)アクリル酸エステルであることが最も好ましい。
また、これらのその他の単量体成分(d)に由来する構造単位は単量体成分(a)由来の構造単位及び単量体成分(b)由来の構造単位の総量に対して30モル%未満の範囲内で使用される。
【0028】
本発明の可溶性多官能芳香族(メタ)アクリル酸エステル共重合体の製造方法では、脂環式構造を有する単官能(メタ)アクリル酸エステル(a)、2官能(メタ)アクリル酸エステル(b)及び2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン(c)を含む単量体100モルに対し、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン(c)を2〜60モル含有し、脂環式構造を有する単官能(メタ)アクリル酸エステル(a)及び2官能(メタ)アクリル酸エステル(b)の合計100モルに対し、脂環式構造を有する単官能(メタ)アクリル酸エステル(a)を2〜90モル及び2官能(メタ)アクリル酸エステル(b)を98〜10モル含有してなる単量体を、50〜200℃の温度で重合させる。ここで、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン(c)は、連鎖移動剤としても公知の化合物であるが、本発明ではその使用量を連鎖移動剤としての使用量より多量とするので、単量体成分の一部となる。2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン(c)の使用量は、本発明の可溶性多官能芳香族(メタ)アクリル酸エステル共重合体中に含まれる2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン(c)由来の構造単位のモル分率が0.02〜0.35の範囲となるように調整されるが、これは反応性が低く未反応で残ることがあるので、理論量より多く使用することができる。そのため、単量体の合計100モルに対し、2〜60モルの範囲で使用されるが、好ましくは10〜50モルの範囲である。
【0029】
2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン(c)が連鎖移動剤としても機能するという観点からは、この使用量は、架橋反応の制限、ペンダント(メタ)アクリレート基の生成、分子量分布の制御という点から、2官能(メタ)アクリル酸エステル(b)100重量部に対して、10〜500重量部の範囲内であることが好ましく、20〜100重量部の範囲内であることがさらに望ましい。50〜80重量部の範囲内であることが最も好ましい。
【0030】
脂環式構造を有するモノ(メタ)アクリル酸エステル芳香族化合物(a)の使用量は、脂環式構造を有する単官能(メタ)アクリル酸エステル(a)及び2官能(メタ)アクリル酸エステル(b)の合計100モルに対し、2〜90モル、好ましくは50〜80モルである。2官能(メタ)アクリル酸エステル(b)の使用量は、98〜10モル%、好ましくは20〜50モル%である。
【0031】
本発明の製造方法では、熱開始反応による開始反応速度が小さい場合には、ラジカル重合開始剤を添加することもできる。この場合、本発明で用いられるラジカル重合開始剤としては、例えばシクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類;1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルパーオキシ)バレレート等のパーオキシケタール類;クメンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類;1,3−ビス(tert−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジイソプロピルベンゼンパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド類;デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類;ビス(tert−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等のパーオキシカーボネート類;tert−ブチルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン等のパーオキシエステル類等の有機過酸化物系重合開始剤並びに2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、1,1−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、アゾクメン2,2'−アゾビスメチルバレロニトリル、4,4'−アゾビス(4−シアノ吉草酸)等のアゾ系重合開始剤を挙げることができる。これらのラジカル重合開始剤の使用量は、特に限定されるものではないが、通常、単量体成分の合計量100重量部に基いて、0.01〜25重量部であることが好ましく、0.05〜20重量部の範囲内であることがさらに望ましい。0.1〜15重量部の範囲内であることが最も好ましい。
【0032】
また、重合反応は、基本的に溶剤を使用しない塊状重合で行うことができるが、生成する可溶性多官能(メタ)アクリル酸エステル芳香族共重合体を溶解する1種以上の有機溶媒中で行うこともできる。有機溶媒としてはラジカル重合を本質的に阻害しない化合物であって、本発明の連鎖移動剤、開始剤、単量体及び多官能(メタ)アクリル酸エステル芳香族共重合体を溶解して、均一溶液を形成するものであれば、特に制約なく使用することができる。
【0033】
有機溶媒として使用可能な化合物としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、ブチルベンゼン等の芳香族炭化水素;エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン等の直鎖式脂肪族炭化水素類;2−メチルプロパン、2−メチルブタン、2,3,3−トリメチルペンタン、2,2,5−トリメチルヘキサン等の分岐式脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の環式脂肪族炭化水素類;石油留分を水添精製したパラフィン油等を挙げることができる。この中で、トルエン、キシレン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、2−メチルプロパン、2−メチルブタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン及びエチルシクロヘキサンが好ましい。重合性、溶解性のバランスと入手の容易さの観点からトルエン、キシレン、メチルシクロヘキサン及びエチルシクロヘキサンが更に好ましい。
【0034】
これらの有機溶媒としての化合物は、単独又は2種以上を組み合わせて使用される。溶剤の使用量に特に制限はない。
【0035】
本発明の製造方法では、重合は50〜200℃の温度範囲で行う。50℃未満で重合反応を行うと、重合速度が低くなるので、工業的実施の観点から好ましくなく、また200℃を超えると、反応の選択性が低下するため、反応の制御が難しく、架橋による不溶性のゲルの生成が起こりやすくなるので好ましくない。
【0036】
重合反応停止後、共重合体を回収する方法は特に限定されず、例えば、加熱減圧脱揮法、スチームストリッピング法、貧溶媒での析出などの通常用いられる方法を用いればよい。
【0037】
本発明の可溶性多官能(メタ)アクリル酸エステル共重合体、又は本発明の製造方法で得られる可溶性多官能(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、成形材、シート又はフィルムに加工することができる。これを加熱等により硬化させることにより硬化物が得られる。可溶性多官能(メタ)アクリル酸エステル共重合体、それを成形材、シート又はフィルムに加工した成形品、又はこれらを硬化させた硬化樹脂又は成形品は、低色分散、低誘電率、低吸水率、高耐熱性等の特性を満足できる光学用材料又は半導体関連材料、更には、塗料、感光性材料、接着剤、汚水処理剤、重金属捕集剤、イオン交換樹脂、帯電防止剤、酸化防止剤、防曇剤、防錆剤、防染剤、医用材料、凝集剤、固体燃料用バインダー、導電処理剤等への適用が可能である。更に光学用部品としては、CD用ピックアップレンズ、DVD用ピックアップレンズ、Fax用レンズ、LBP用レンズ、オリゴンミラー、プリズム等が挙げられる。
【0038】
本発明の可溶性多官能(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、トルエン、キシレン、THF、ジクロロエタン、ジクロロメタン及びクロロホルムから選ばれる溶媒の少なくとも1つに可溶である。好ましくは、上記溶媒の全部に可溶である。ここで、可溶とは、室温(25℃)において、100mlの溶媒に1g以上、好ましくは10g以上が溶解することをいう。そして、溶解後において、ゲルの生成が認められないことが望ましい。
【実施例】
【0039】
次に実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらにより制限されるものではない。なお、各例中の部はいずれも重量部である。また、実施例中の軟化温度等の測定は以下に示す方法により試料調製及び測定を行った。
【0040】
1)ポリマーの分子量及び分子量分布
可溶性多官能(メタ)アクリル酸エステル共重合体の分子量及び分子量分布測定はGPC(東ソー製、HLC−8120GPC)を使用し、溶媒:テトラヒドロフラン(THF)、流量:1.0ml/min、カラム温度:40℃で行った。共重合体の分子量は単分散ポリスチレンによる検量線を用い、ポリスチレン換算分子量として測定を行った。
【0041】
2)ポリマーの構造
日本電子製JNM−LA600型核磁気共鳴分光装置を用い、13C−NMR及び1H−NMR分析により決定した。溶媒としてクロロホルム−d1を使用し、テトラメチルシランの共鳴線を内部標準として使用した。
【0042】
3)ガラス転移温度(Tg)及び軟化温度測定の試料調製及び測定
可溶性多官能(メタ)アクリル酸エステル共重合体溶液をガラス基板に乾燥後の厚さが、20μmになるように均一に塗布した後、ホットプレートを用いて、90℃で30分間加熱し、乾燥させた。得られたガラス基板上の樹脂膜はガラス基板と共に、TMA(熱機械分析装置)測定装置にセットし、窒素気流下、昇温速度10℃/分で220℃まで昇温し、更に、220℃で20分間加熱処理することにより樹脂を硬化した。ガラス基板を室温まで放冷した後、TMA測定装置中の試料に分析用プローブを接触させ、窒素気流下、昇温速度10℃/分で30℃から360℃までスキャンさせることにより測定を行い、接線法により軟化温度を求めた。サンプルの耐熱性により、プローブが樹脂膜を貫通せず、膜厚よりも小さなプローブ侵入量を示さない場合には、軟化温度の他に、プローブが侵入した温度と膜厚に対する侵入量を百分率で表示した。
【0043】
4)熱重量減少量及び耐熱変色性の測定
可溶性多官能(メタ)アクリル酸エステル共重合体の硬化物の熱分解温度及び耐熱変色性の測定は、可溶性多官能(メタ)アクリル酸エステル共重合体を200℃で1時間真空プレス成形して得た試料をTGA(熱天秤)測定装置にセットし、窒素気流下、昇温速度10℃/分で30℃から320℃までスキャンさせることにより測定を行い、300℃に於ける重量減少量を求めると共に、測定後の試料の変色量を目視にて確認し、◎:熱変色無し、○:淡黄色、△:茶色、×:黒色に分類することにより耐熱変色性の評価を行った。
【0044】
5)吸水率の測定
可溶性多官能(メタ)アクリル酸エステル共重合体の硬化物の吸水率測定は、200℃で1時間真空プレス成形して得た試料板を60℃で24時間真空乾燥した重さをWoとし、それを±0.1mgまで測定可能な秤で秤量し、温度:85℃、相対湿度:85%の恒温恒湿槽内で1週間、加湿を行った。加湿後、テストサンプルについた水気をふき取り、サンプルを±0.1mgまで測定可能な秤で秤量し、Wとした。下記の式(3)で吸水率を算出した。同じテストサンプルを3つ準備し、同様に試験を行った。
Wo/W×100=吸水率 (3)
【0045】
6)耐溶剤性の測定
可溶性多官能(メタ)アクリル酸エステル共重合体の硬化物の耐溶剤性の測定は、200℃で1時間真空プレス成形を行った試料板をトルエンに室温で10分間浸漬し、浸漬後の試料の変化を目視にて確認し、○:変化無し、△:膨潤、×:変形・膨れ有りに分類することにより耐溶剤性の評価を行った。
【0046】
7)屈折率の測定
合成した可溶性多官能(メタ)アクリル酸エステル共重合体をトルエンに溶解し、それに、開始剤としてパーブチルO(日油株式会社製、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート)を、可溶性多官能(メタ)アクリル酸エステル共重合体100重量部に対して、1.0重量部添加した。この重合体溶液からキャストシートを作成し、このキャストシートを破砕して、ペレット化し、プレス金型に充填し、170℃で1時間、プレス成形機にて硬化させた。得られた硬化した平行平板をテストピースとして、KPR-200(島津カルニュー社製)にてd線(587.6nm)の屈折率を測定した。測定タイミングは、成形直後、85℃×85RHの湿熱条件の高温高湿器に1週間投入後とした。
【0047】
実施例1
ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート4.0モル(1158.1ml)、イソボルニルメタクリレート6.0モル(1360.6ml)、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン(αMSD)12.0モル(2864.8ml)、トルエン2000mlを10.0Lの反応器内に投入し、90℃で100mmolの過酸化ベンゾイルを添加し、6時間反応させた。重合反応を冷却により停止させた後、室温で反応混合液を大量のメタノールに投入し、重合体を析出させた。得られた重合体をメタノールで洗浄し、濾別、乾燥、秤量して、共重合体A931.2g(収率:36.5wt%)を得た。
【0048】
得られた共重合体AのMwは4020、Mnは2260、Mw/Mnは1.78であった。13C−NMR、1H−NMR分析及び元素分析を行うことにより、共重合体Aは、(メタ)アクリル酸エステル単量体総量あたり、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート由来の構造単位を合計36.7モル%、イソボルニルメタクリレート由来の構造単位を合計63.5モル%含有していた。また、αMSD由来の構造の末端基は、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、イソボルニルメタクリレート、及びαMSDの総量に対し、11.5モル%存在していた。
共重合体Aはトルエン、キシレン、THF、ジクロロエタン、ジクロロメタン、クロロホルムに可溶であり、ゲルの生成は認められなかった。また、共重合体Aのキャストフィルムは曇りのない透明なフィルムであった。
【0049】
共重合体Aを各種測定条件により硬化シートとした。硬化シートを切り出して得た試料について、光学特性、吸水率、熱重量減少量、耐熱変色性及び耐溶剤性の測定を実施した。
その結果、線膨張係数:81ppm/℃、吸水率:0.76%、耐溶剤性:○であった。
また、TMA測定の結果、軟化温度は300℃以上であった。TGA測定の結果、300℃に於ける重量減少量は1.2wt%、耐熱変色性は◎であった。
さらに、共重合体Aの屈折率測定を行ったところ、硬化後の屈折率(589nm):1.512、湿熱試験後の屈折率(589nm):1.514であった。
【0050】
実施例2
ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート2.0モル(579.0ml)、イソボルニルメタクリレート8.0モル(1814.1ml)、αMSD6.0モル(1432.4ml)、トルエン2000mlを10.0Lの反応器内に投入し、90℃で100mmolの過酸化ベンゾイルを添加し、6時間反応させた。重合反応を冷却により停止させた後、室温で反応混合液を大量のメタノールに投入し、重合体を析出させた。得られた重合体をメタノールで洗浄し、濾別、乾燥、秤量して、共重合体B1500.1g(収率:62.9wt%)を得た。
【0051】
得られた共重合体BのMwは3590、Mnは1970、Mw/Mnは1.82であった。ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート由来の構造単位を合計18.9モル%、イソボルニルメタクリレート由来の構造単位を合計81.1モル%含有していた。また、αMSD由来の構造の末端基は、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、イソボルニルメタクリレート、及びαMSDの総量に対し、6.5モル%存在していた。
共重合体Bはトルエン、キシレン、THF、ジクロロエタン、ジクロロメタン、クロロホルムに可溶であり、ゲルの生成は認められなかった。また、共重合体Bのキャストフィルムは曇りのない透明なフィルムであった。
【0052】
共重合体Bについて、実施例1と同様にして試料硬化物を得て、各種物性の測定を実施した。その結果は次のとおり。
線膨張係数:78ppm/℃、吸水率:0.67%、耐溶剤性:○。また、軟化温度は300℃以上、300℃に於ける重量減少量は1.2wt%、耐熱変色性は◎であり、硬化後の屈折率(589nm):1.507、湿熱試験後の屈折率(589nm):1.509であった。
【0053】
実施例3〜5
2官能アクリレート類としてジメチロールトリシクロデカンジアクリレート又は1,4−ブタンジオールジアクリレート、単官能(メタ)アクリレート類としてイソボルニルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート又はジシクロペンタニルアクリレートを使用して表1に示す原料組成で実施例1と同様にして重合して可溶性多官能(メタ)アクリル酸エステル共重合体を得た。この共重合体について、実施例1と同様にして試験をした結果をまとめて表2に示す。
【0054】
比較例1
αMSDの変わりに連鎖移動剤としてn−ドデシルメルカプタンを使用し、実施例1と同様に操作して共重合体を得た。
【0055】
比較例2
αMSDを使用せずに、実施例1と同様に操作して共重合体を得た。
【0056】
比較例3〜4
αMSDを連鎖移動剤として使用する通常レベルの濃度で使用し、実施例1と同様に操作して共重合体を得た。得られた共重合体は、2官能(メタ)アクリレートの架橋反応が進行し過ぎたためゲル化した。
【0057】
比較例5
(メタ)アクリレート系単量体に代えてビニル系のモノマーを使用して共重合体を得た。
【0058】
反応に使用した原料の使用量を表1に、共重合体及びその硬化物の試験結果を表2に示す。特に断らない限り、その他の反応条件及び測定条件は実施例1と同じである。表1において、原料使用量はモル及び重量(g)で表すが、記載の形式はモル/gとした。
【0059】
表で使用した略号を以下に示す。
DMTCD:ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート
BDDA:1,4−ブタンジオールジアクリレート
IBOMA:イソボルニルメタクリレート
CHMA:シクロヘキシルメタクリレート
DCPM:ジシクロペンタニルメタクリレート
DCPA:ジシクロペンタニルアクリレート
αMSD:2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン
DDME:n−ドデシルメルカプタン
DVB:ジビニルベンゼン
St:スチレン
EtVB:エチルビニルベンゼン
【0060】
【表1】

【0061】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂環式構造を有する単官能(メタ)アクリル酸エステル(a)及び2官能(メタ)アクリル酸エステル(b)を含む単量体を共重合して得られる共重合体であって、側鎖に2官能(メタ)アクリル酸エステル(b)由来の反応性の(メタ)アクリレート基を含有する構造単位のモル分率(b1)が(1)式、
(b1)/[(a)+(b)]≧0.05 (1)
を満足し、更に、末端に2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン(c)由来の構造単位を有し、共重合体中の(a)成分と(b)成分のモル分率と(c)成分のモル分率とが(2)式、
0.02≦(c)/[(a)+(b)+(c)]≦0.35 (2)
を満足する共重合体であり、更に該共重合体の数平均分子量Mnが500〜50,000であり、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnの比で表される分子量分布(Mw/Mn)が5.0以下であり、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、ジクロロエタン又はクロロホルムに可溶であることを特徴とする可溶性多官能(メタ)アクリル酸エステル共重合体。
【請求項2】
脂環式構造を有する単官能(メタ)アクリル酸エステル(a)、2官能(メタ)アクリル酸エステル(b)及び2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン(c)を含む単量体100モルに対し、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン(c)を2〜60モル含有し、脂環式構造を有する単官能(メタ)アクリル酸エステル(a)及び2官能(メタ)アクリル酸エステル(b)の合計100モルに対し、脂環式構造を有する単官能(メタ)アクリル酸エステル(a)を2〜90モル及び2官能(メタ)アクリル酸エステル(b)を98〜10モル含有してなる単量体を、50〜200℃の温度で重合させることを特徴とする請求項1に記載の可溶性多官能(メタ)アクリル酸エステル共重合体の製造方法。
【請求項3】
脂環式構造を有する単官能(メタ)アクリル酸エステル(a)が、イソボルニルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレ−ト、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレ−ト、ジシクロペンタニルアクリレ−ト、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレ−ト、及びジシクロペンタニルメタクリレートからなる群から選ばれる一種以上の単官能(メタ)アクリル酸エステルであることを特徴とする請求項1に記載の可溶性多官能(メタ)アクリル酸エステル共重合体。
【請求項4】
2官能(メタ)アクリル酸エステル(b)が、シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、及びジメチロールトリシクロデカンジアクリレートからなる群から選ばれる一種以上の2官能(メタ)アクリル酸エステルであることを特徴とする請求項1又は3に記載の可溶性多官能(メタ)アクリル酸エステル共重合体。

【公開番号】特開2011−127008(P2011−127008A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−287299(P2009−287299)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【出願人】(000006644)新日鐵化学株式会社 (747)
【Fターム(参考)】