説明

脂肪族カルボン酸類の製造方法

【課題】簡単な操作で、収率高く、かつ安価に脂肪族カルボン酸類が製造でき、工業的に有利な脂肪族カルボン酸類製造方法を提供する。
【解決手段】アルカリ金属水酸化物を含むアルカリ水溶液中、一価の銀イオンの存在下、過硫酸塩により炭素数1〜22の脂肪族アルデヒド類を酸化する。過硫酸塩は、好ましくは過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムからの一種以上であり、一価の銀イオンは、アルカリ水溶液中で一価の銀イオンを生成する銀化合物で、好ましくは硝酸銀、硫酸銀、塩化銀、臭化銀から選ばれる一種以上であり、アルカリ金属水酸化物は、好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウムから選ばれる一種以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂肪族カルボン酸類の製造方法、より詳しくは簡単な操作で、かつ安価に実施できる脂肪族アルデヒド類からの脂肪族カルボン酸類の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
香料、化粧品、乳化剤、洗浄剤、潤滑剤、殺虫剤、樹脂などの原料となるカルボン酸類は、アルカン類の酸化、不飽和炭化水素の酸化的開裂、アルコール類の酸化、アルデヒドの酸化などにより製造されるが、特に炭素数が比較的大きな脂肪族カルボン酸に対しては、純度が高く、収率も高く、製造の容易なことから相当するアルデヒド類を酸化して製造する方法が採用されることが多い。
【0003】
アルデヒド類を酸化してカルボン酸類を製造する方法は、過マンガン酸カリウム、二酸化マンガン、酸化銀を酸化剤として用いる反応が古くから知られており〔非特許文献1参照〕、この他、触媒を使用せずに空気酸化して過酸を生成させ、次いで過酸を熱分解する方法〔特許文献1参照〕、アルカリ金属(またはアルカリ土類金属)カルボキシレートを触媒として空気酸化する方法〔特許文献2参照〕、側鎖にスルホン酸基を有する高分子化合物を触媒として、アルデヒド化合物の油性溶液に過酸化水素水溶液を作用させて不均一溶液中で行う酸化方法〔特許文献3参照〕、亜塩素酸塩を用いて酸化する方法〔特許文献4参照〕、二クロム酸塩または無水クロム酸(CrO)を触媒として、溶剤中、過ヨウ素酸塩により酸化する方法。〔特許文献5参照〕、元素周期律表の第5〜11族の金属及び/または金属化合物を触媒として、酸素または含酸素ガス混合物で酸化する方法〔特許文献6参照〕などがあり、アセトアルデヒドの空気酸化で酢酸を製造するに銅−マンガン化合物を触媒とする方法〔特許文献7参照〕も提案されている。
【0004】
しかしながら、これら従来の方法は、無触媒で空気酸化する方法では、中間に生成する過酸を分解させるに別途の処理装置、操作が必要であり、銅−マンガン化合物を触媒とする方法では、比較的多量の触媒が必要であり、また触媒の調製が面倒であり、マンガンやクロムなど毒性の高い物質を使用するなど、工業的見地から必ずしも満足できるものではなかった。
本発明は、過硫酸塩を酸化剤としてアルデヒド類からカルボン酸を製造する方法であるが、銀(I)イオンの存下に過硫酸塩を酸化剤として作用させてα−グリコールを開裂させるとアルデヒドを生成するが、アルデヒドがさらに酸化されるのは、比較的ゆるやかであり、大過剰の過硫酸塩を用いてカルボン酸が副生する程度であるとされている〔非特許文献2参照〕。この記述に見られるように、銀(I)イオン存在下にアルデヒドに過硫酸塩を作用させたときカルボン酸への酸化は進行が遅く、カルボン酸の製造方法としては適していないことがわかる。
【0005】
【非特許文献1】日本化学会編、実験化学講座(22)(第4版)、丸善(株)、平成4年、p3
【非特許文献2】日本化学会編、新実験化学講座(15)酸化と還元(I−2)、丸善(株)、昭和51年9月20日、p756
【特許文献1】特開2001−011009号公報
【特許文献2】特開2006−143717号公報
【特許文献3】特開2004−196692号公報
【特許文献4】特開2003−012595号公報
【特許文献5】特開2002−308821号公報
【特許文献6】特表2003−525920号公報
【特許文献7】特開昭52−33614号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、アルカリ金属水酸化物を含むアルカリ水溶液中で脂肪族アルデヒド類に一価の銀イオンと過硫酸塩を作用させることにより相当するカルボン酸が得られるという知見を得てなされたものであり、従って、本発明の目的は、従来の方法における不都合を克服し、簡単な操作で、収率高く、かつ安価に脂肪族カルボン酸類が製造でき、工業的に有利な脂肪族カルボン酸類製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は脂肪族カルボン酸類の製造方法であり、アルカリ金属水酸化物を含むアルカリ水溶液中、一価の銀イオンの存在下、過硫酸塩により炭素数1〜22の脂肪族アルデヒド類を酸化することからなっている。
【0008】
ここで、過硫酸塩は、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムから選ばれる一種以上が好ましく、また過硫酸塩は、脂肪族アルデヒド類1モルに対し1.1〜2.0モル用いられるのが好ましい。
【0009】
一価の銀イオンは、一価の銀イオンを生成する銀化合物をアルカリ水溶液中に加えられることによっており、銀化合物は、硝酸銀、硫酸銀、塩化銀、臭化銀から選ばれる一種以上が好ましく、また銀化合物は、脂肪族アルデヒド類1モルに対し0.3〜20ミリモル用いられるのが好ましい。
【0010】
アルカリ金属水酸化物は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムから選ばれる一種以上であるのが好ましく、またアルカリ金属水酸化物は、脂肪族アルデヒド類1モルに対し2.1〜10.0モル用いられるのが好ましく、さらに脂肪族アルデヒド類と過硫酸塩の合計モル数1モルに対して1.0〜5.0モル用いられるのが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
安価な過硫酸塩と、少量の銀化合物を用い、簡単な操作で脂肪族アルデヒド類を酸化し、高収率で脂肪族カルボン酸類を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、脂肪族アルデヒド類を出発原料とし、アルカリ水溶液中、一価の銀イオンを触媒として用い、過硫酸塩を酸化剤として作用させることにより相当する脂肪族カルボン酸類を製造することにその特徴がある。
【0013】
反応原料となる脂肪族アルデヒド類は、炭素数1〜22であり、好ましくは炭素数4〜15であり、脂肪族はアルキル基、アルケニル基である。ここで、アルキル基およびアルケニル基は、シクロアルキルやシクロアルケニルの環状構造をもつものであってもよい。
脂肪族アルデヒド類の具体例を挙げると、n−ブチルアルデヒド、トリメチルアセトアルデヒド、2−メチルブチルアルデヒド、3−メチルブチルアルデヒド、2−エチルブチルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド、n−ヘプチルアルデヒド、n−オクチルアルデヒド、2−エチルヘキシルアルデヒド、シクロヘキシルアルデヒド、シクロオクチルアルデヒド、10−ウンデシレンアルデヒド、2,6,6−トリメチル−1−シクロヘキセニルアセトアルデヒド、3,7−ジメチル−6−オクテニルアルデヒド(シトロネラール)、4−(4−メチル−3−シクロヘキセニリデン−1−)ペンテニルアルデヒド、2,6,10−トリメチル−9−ウンデセニルアルデヒド等である。
【0014】
過硫酸塩は、具体的には過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムであり、これらから一種単独、または二種以上の混合で使用される。また、本発明の実施に際して過硫酸を用いることもできるが、アルカリ水溶液中で相当する過硫酸塩となるので、過硫酸を用いるときにはアルカリ金属水酸化物、あるいはその他アルカリ性のナトリウム化合物、カリウム化合物、アンモニウム化合物をその分多く加えることが必要となる。
過硫酸は、ペルオキソ一硫酸(HSO)とペルオキソ二硫酸(H)の通称であり、本発明ではペルオキソ一硫酸、ペルオキソ二硫酸のいずれか一方でも、また両者の混合物であってもよい。本発明における過硫酸塩は、好ましくは、ペルオキソ二硫酸塩である。
【0015】
本発明の反応に加えられる過硫酸塩の量は、原料である脂肪族アルデヒド類1モルに対し理論的には1モルあればよいが、実質的には1.1〜2.0モル、好ましくは1.2〜1.5モルである。1.1モル以下では酸化が不十分なことがあり、また2.0モルより多いことは反応の遂行上差し支えないが無駄となり、経済的にも不利となることがある。
【0016】
本発明では、一価の銀イオンが触媒として作用している。一価の銀イオンは、アルカリ金属水酸化物を含むアルカリ水溶液中で生じていればよく、従って、実際に反応系に加えられるのはアルカリ水溶液中で溶解性のある一価の銀化合物から任意の一種以上が選ばれる。一価の銀化合物は、具体的には酸化銀(I)、硝酸銀、硫酸銀、炭酸銀、酢酸銀、シュウ酸銀、塩化銀、臭化銀などである。一価の銀化合物の量は、原料である脂肪族アルデヒド類1モルに対し銀イオンモル数で0.3〜20ミリモル、好ましくは0.5〜10ミリモルとなるようにする。0.3ミリモルより少ないと酸化反応が遅く不十分なことがあり、20ミリモルより多いことは反応の遂行上差し支えないが実質的に無駄となることがある。
【0017】
反応は、水を溶媒として使用し、原料である脂肪族アルデヒド類、アルカリ金属水酸化物、一価の銀化合物、過硫酸塩をそれぞれ加えて反応混合物を調製する。このとき、脂肪族アルデヒド類の溶解性をよくするために溶媒の一部に有機溶剤を加えてもよい。このとき加えられる有機溶剤は、酸化に対して安定なものが選ばれ、例えば、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、アセトニトリル、ジクロルメタン、四塩化炭素などがある。使用される溶媒の量は、上記反応物および触媒が溶解する程度であればよい。
【0018】
本発明の酸化反応は、アルカリ金属水酸化物を含むアルカリ水溶液中で行われる。アルカリ金属水酸化物は、好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウムであり、一種単独あるいは二種以上の組み合わせで使用される。アルカリ金属水酸化物は、反応混合物のpHを高めて反応の進行に都合のよい環境を作るとともに、反応生成物である脂肪族カルボン酸を溶解させて反応を完全に進行させる上で重要である。従って、アルカリ金属水酸化物は、脂肪族カルボン酸を溶解させる分として脂肪族アルデヒド類1モルに対し1.0モルは必要であり、反応混合物のpHを高く維持するために脂肪族アルデヒド類1モルに対し好ましくは2.1〜10.0モル、さらに好ましくは2.7〜7.0モルである。アルカリ金属水酸化物は、また、脂肪族アルデヒド類と過硫酸塩の合計モル数1モルに対して好ましくは1.0〜5.0モル、さらに好ましくは1.2〜3.1モルとする。このアルカリ金属水酸化物の配合割合は、酸化反応の進行する観点から選ばれたものであり、この範囲より少ないと酸化反応が遅くなり反応が不十分となることがあり、この範囲より多いことは反応の遂行上特に支障とはならないが実質的に無駄となることがある。
【0019】
また、アルカリ金属水酸化物と同時に、他のアルカリ性化合物、例えば炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムを加えて反応系をアルカリ性にすることがあってもよいが、アルカリ金属水酸化物は、上記の量が存在することが必要である。
【0020】
上記各成分が混合される順序は特に限定されるものではないが、例えば、溶媒にアルカリ金属水酸化物を加えて溶解させ、この中に、脂肪族アルデヒド類と一価の銀化合物を加え、攪拌しつつ過硫酸塩を加えていく。過硫酸塩を加えたとき発熱することがあり、必要により過硫酸塩を徐々に加える、あるいは冷却しつつ加えるなどの操作が必要なこともある。
【0021】
反応温度は、好ましくは30〜100℃、さらに好ましくは60〜80℃である。30℃未満では反応の進行が遅く実用的でないことがあり、100℃以上は、耐圧密閉容器を用いる必要があり実用的ではない。反応時間は、温度にもよるが通常1〜10時間程度であり、実用上は、反応混合物から一部を採取して別途薄層クロマトグラフィーやガスクロマトグラフィーなどで反応の進行を確認しつつ続ける。
【0022】
反応終了後の反応混合物から生成物である脂肪族カルボン酸類を分離する方法は、本発明で特に限定するものではないが、例えば、反応終了時点の反応混合物中では脂肪族カルボン酸類はアルカリ塩となって水に溶解しているので、酸を加えて遊離の脂肪族カルボン酸とし、次いで水不溶性の有機溶媒を抽出溶媒として抽出し、蒸留により抽出溶媒と分離し、かつ生成物である脂肪族カルボン酸類を分取する。抽出溶媒は、抽出溶媒として通常使用されるものでよく、例えば、ジエチルエーテル、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、酢酸エチル、クロロホルム、ジクロルメタン、四塩化炭素などである。
【実施例】
【0023】
〔実施例に用いた脂肪族アルデヒド類〕
3,7−ジメチル−6−オクテニルアルデヒド(シトロネラール):豊玉香料(株)製品を用いた。
2,6,10−トリメチル−9−ウンデセニルアルデヒド:豊玉香料(株)製品を用いた。
トリメチルアセトアルデヒド:東京化成(株)製の試薬を用いた。
2,6,6−トリメチル−1−シクロヘキセニルアセトアルデヒド:シグマ・アルドリッチ・コーポレーション社(米国)製の試薬を用いた。
【0024】
〔比較例に用いたアルデヒド類〕
p−イソプロピルベンズアルデヒド(=クミンアルデヒド):東京化成(株)製の試薬を用いた。
2−フェニルプロピオンアルデヒド:東京化成(株)製の試薬を用いた。
【0025】
〔実施例・比較例に用いたその他試薬〕
過硫酸ナトリウム:和光純薬(株)製の試薬を用いた。
過硫酸カリウム:和光純薬(株)製の試薬を用いた。
酸化銀(I):和光純薬(株)製の試薬を用いた。
硝酸銀:和光純薬(株)製の試薬を用いた。
塩化銀:関東化学(株)製の試薬を用いた。
水酸化ナトリウム:和光純薬(株)製の試薬を用いた。
水酸化カリウム:和光純薬(株)製の試薬を用いた。
【0026】
[実施例1]
温度計、攪拌機、冷却管、滴下ロートを取付けたフラスコに、水2L、水酸化ナトリウム144g(3.6モル)、過硫酸ナトリウム308g(1.3モル)を加え溶解させた。攪拌しつつ40℃にして酸化銀(I)0.2g(銀イオン;1.72ミリモル)を加え、次いで3,7−ジメチル−6−オクテニルアルデヒド(シトロネラール)200g(1.3モル)を滴下すると、反応混合物の温度が75℃まで上昇した。このまま2時間攪拌を続け、冷却後、塩酸酸性とした。反応混合物をトルエン50mLで2回抽出した。抽出液を無水硫酸ナトリウムで脱水してから、ロータリーエバポレーターにて蒸発濃縮し、残渣を減圧蒸留し、155〜156℃/4mmHgの生成物120g(収率:54.3%)を得た。生成物は、ガスクロマトグラフィー測定で、市販品〔豊玉香料(株)製品〕と保持時間が一致することでシトロネリック酸と確認した。尚、ガスクロマトグラフィーは、(株)島津製作所製「GC−2010」(型番)を用い、カラムはジーエルサイエンス(株)製「TC−WAX 60m」(液相)、検出器はFIDを用い、キャリヤガスはヘリウム、カラム温度は80℃(200℃まで毎分3℃昇温)とする条件で行った。
【0027】
[実施例2]
温度計、攪拌機、冷却管を取付けたフラスコに、水154g、過硫酸ナトリウム11.9g(0.05モル)を入れ溶解し、2,6,10−トリメチル−9−ウンデセニルアルデヒド10.5g(0.05モル)、酸化銀(I)0.037g(銀イオン;0.32ミリモル)を順次加え、攪拌しつつ水酸化ナトリウム10.5g(0.26モル)を加えた。この混合物を40〜50℃にて11時間攪拌した後、冷却し、塩酸酸性とした後にヘキサン20mLで2回抽出した。抽出液を無水硫酸ナトリウムで脱水してから、ロータリーエバポレーターにてヘキサンを蒸発除去し、残渣をガラス チューブ オーブンで減圧蒸留し、220℃/5mmHgの生成物7.2g(収率:63.9%)を得た。生成物は、ガスクロマトグラフ質量分析装置〔アジレント・テクノロジー社製、「5973」(質量分析装置型番)、「6890」(ガスクロマトグラフ装置型番)〕にて2,6,10−トリメチル−9−ウンデセニルカルボン酸であることを確認した。
【0028】
[実施例3]
温度計、攪拌機、冷却管を取付けたフラスコに、水酸化ナトリウム(実験No.13では炭酸ナトリウム)水溶液を入れ、シトロネラール、銀化合物を順次加え、65℃にて攪拌しつつ過硫酸塩を加えた。所定時間経過後、反応混合物を採取し、塩酸酸性とした後トルエンにて抽出した。ロータリーエバポレーターにて、その抽出液からトルエンを脱水しつつ蒸発除去し、残渣をガスクロマトグラフィー〔測定機器、条件は実施例1に同じ〕測定し、生成物であるシトロネリック酸の生成割合から収率(%)を求めた。結果を表1、2に記す。
【0029】
【表1】

【0030】
【表2】

【0031】
この結果から、3,7−ジメチル−6−オクテニルアルデヒド(シトロネラール)は、アルカリ金属水酸化物を含むアルカリ水溶液中、一価の銀イオンの存在下、過硫酸塩により酸化され、相当するカルボン酸であるシトロネリック酸を高収率に生成することがわかる。過硫酸塩なしでも空気により酸化されてシトロネリック酸を生成するが収率が低い。一価の銀イオンの存在下、過硫酸塩の存在下で、金属水酸化物を含まない条件では実質酸化反応は進行していない。
【0032】
[実施例4]
温度計、攪拌機、冷却管を取付けたフラスコに、水酸化ナトリウム水溶液を入れ、脂肪族アルデヒド類、酸化銀(I)を加え、65℃にて攪拌しつつ過硫酸ナトリウムを加えた。所定時間経過後、反応混合物を採取し、塩酸酸性とした後、トルエンにて抽出し、その抽出液についてガスクロマトグラフィー〔測定機器、条件は実施例1に同じ〕測定して原料である脂肪族アルデヒド類と、生成物である脂肪族カルボン酸類量を求め、両者の相対量から反応率を求めた。
結果を表3に示す。
【0033】
【表3】

その他脂肪族アルデヒドでも、3,7−ジメチル−6−オクテニルアルデヒド(シトロネラール)と同様に高収率で相当する脂肪族カルボン酸を生成することがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明により、脂肪族アルデヒド類から簡単な操作で、高収率、安価に脂肪族カルボン酸類を製造することができる。これは、香料、化粧品、乳化剤、洗浄剤、潤滑剤、殺虫剤、各種高分子などの原料製造に有利である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】実施例、比較例に用いたアルデヒド類の化学構造である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ金属水酸化物を含むアルカリ水溶液中、一価の銀イオンの存在下、過硫酸塩により炭素数1〜22の脂肪族アルデヒド類を酸化して相当する脂肪族カルボン酸類とすることを特徴とする脂肪族カルボン酸類の製造方法。
【請求項2】
前記過硫酸塩が、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムから選ばれる一種以上であることを特徴とする請求項1記載の脂肪族カルボン酸類の製造方法。
【請求項3】
前記過硫酸塩が、前記脂肪族アルデヒド類1モルに対し1.1〜2.0モル用いられることを特徴とする請求項1記載の脂肪族カルボン酸類の製造方法。
【請求項4】
前記一価の銀イオンが、酸化銀(I)、硝酸銀、硫酸銀、塩化銀、臭化銀から選ばれる一種以上の銀化合物を、前記アルカリ水溶液中に加えて生じたものであることを特徴とする請求項1記載の脂肪族カルボン酸類の製造方法。
【請求項5】
前記前記一価の銀イオンが、前記脂肪族アルデヒド類1モルに対し0.3〜20ミリモル用いられることを特徴とする請求項1記載の脂肪族カルボン酸類の製造方法。
【請求項6】
前記アルカリ金属水酸化物が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムから選ばれる一種以上であることを特徴とする請求項1記載の脂肪族カルボン酸類の製造方法。
【請求項7】
前記アルカリ金属水酸化物が、前記脂肪族アルデヒド類1モルに対し2.1〜10.0モル用いられることを特徴とする請求項1記載の脂肪族カルボン酸類の製造方法。
【請求項8】
前記アルカリ金属水酸化物は、前記脂肪族アルデヒド類1モルに対し2.1〜10.0モルであると同時に、前記脂肪族アルデヒド類と前記過硫酸塩の合計モル数1モルに対して1.0〜5.0モル用いられることを特徴とする請求項1記載の脂肪族カルボン酸類の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−247827(P2008−247827A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−91872(P2007−91872)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000241278)豊玉香料株式会社 (6)
【Fターム(参考)】