説明

脂肪移植物の生存を増大させるための方法及び組成物

本発明によれば、脂肪細胞の生存をその必要のある対象において増大させる方法が開示される。この方法は、(a)脂肪細胞の集団を対象中に移植すること、及び(b)エリスロポエチンを前記対象に投与して、それにより対象において脂肪細胞の生存を増大させることを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ある実施形態では脂肪組織に関し、より具体的には、その移植を改善する方法に関するが、これに限定されない。
【背景技術】
【0002】
血管形成中、内皮細胞は、その表現型を血管形成タイプに変化させる。血管形成タイプは、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)のようなプロテアーゼの生産、及び移動して増殖する能力を含む。このプロセスは、血管内皮増殖因子(VEGF)、塩基性繊維芽細胞増殖因子(bFGF)及び血小板由来増殖因子(PDGF)−BBのようないくつかの増殖因子の活性に依存している。
【0003】
エリスロポエチン(EPO)は、赤血球形成を刺激する糖タンパク質であり、血管形成活性を有することが報告されている。Ribatti及びその同僚は、EPOが、培養された内皮細胞においてプロ血管形成表現型を誘導することができ、インビボで血管形成を刺激することができることを示している[Ribattiら(2003)Eur J Clin Invest 33:891−896]。EPOは、VEGFタンパク質の発現を増大させて内皮先祖細胞を補充することによって虚血の組織における血管形成を間接的に刺激することが示されている[Nakanoら(2007)Circ Res 100:662−669;Aicherら(2005)Hypertension 45:321−325]。ラットでは、EPO投与は、骨髄由来の先祖細胞を動員すること[Hamedら(2006)Eur Heart J 27:1876−83]、及びVEGFの心筋での発現を増大させること[Westenbrinkら(2007)Eur Heart J 28:2018−2027]も示されている。Wang及びその同僚は、EPOが、神経先祖細胞からのVEGF分泌、及び脳内皮細胞におけるVEGFレセプター発現を刺激することによって、血管形成を促進させることを示している[Wangら(2008)J Cereb Blood Flow Metab 28:1361−8]。まとめると、これらの結果は、EPOが間接的に作用する血管形成因子であり、その作用は、血管形成因子の分泌を刺激することによって媒介されていることを示唆する。
【0004】
EPOは、他の非造血効果も有することが報告されている。これらの効果は、血管内皮細胞の細胞保護[Chongら(2003)Curr Drug Targets Cardiovasc Haematol Disord 3:141−154]、及び血管平滑筋細胞における及び内皮細胞における抗アポトーシス作用[Somervailleら(2001)Blood 98:1374−1381]を含む。これらの抗アポトーシス作用は、シトクロームcのミトコンドリアからの放出の防止、カスパーゼ活性の抑制、プロテインキナーゼB(PKB)信号伝達経路活性の上方制御、及び抗アポトーシスタンパク質Bclxlの発現を含む。
【0005】
自己脂肪移植は、柔組織増大のための、及び外傷又は老化による柔組織欠損を充填するための一般的かつ理想的な技術である。出現しつつある証拠は、脂肪移植物の初期のかつ適切な血管形成が、その取り込み及び生存力にとって必須であることを示唆している。しかし、移植後の増大した脂肪細胞の死による脂肪移植物の比較的高い再吸収率は、この技術の効率を低下させる[Nishimuraら(2000)Laryngoscope 110:1333−1338]。血管形成因子[Rophaelら(2007)Am J Pathol 171:2048−2057;Kuramochiら(2008)Eur J Clin Invest 38:752−759]及びVEGF遺伝子治療[Leiら(2008)Chin J Traumatol 11:49−53;Luら(2009)Plast Reconstr Surg 124:1437−1446;Yiら(2007)J Plast Reconstr Aesthet Surg 60:272−278]は、脂肪細胞の生存及び生存力を増大させるために脂肪移植物における血管形成を刺激するために個別に使用されているが、その臨床結果は、失望させるものである[Henryら(2003)Circulation 107:1359−1365]。従って、移植された脂肪の再吸収率を低下させることは、臨床上の挑戦である。
【0006】
移植を改良するための様々なアプローチが試みられており、そのうちのいつくかが以下にまとめられる。
【0007】
PCT公報第2005/018549号は、組織修復(例えば、骨、軟骨)のための方法及び組成物を開示する。その教示によると、組織移植物(例えば、脂肪組織、筋肉組織)は、エクスビボで一種以上の生物活性剤(例えば、エリスロポエチン)と接触され、それにより組織中の細胞の少なくとも一部を刺激して細胞を所望のタイプの細胞(例えば、骨細胞)に分化させ、次に、組織が対象中に移植される。
【0008】
米国特許第7459152号は、改良された移植物生存のためのエリスロポエチン投与を開示する。その教示によると、組織移植物の細胞(例えば、神経又は(副腎クロマフィン細胞のような)神経の近くの起源の細胞)は、神経疾患(例えば、パーキンソン病、アルツハイマー病、脊髄損傷)の治療のために対象中への投与の前に、投与中に、又は投与後にエリスロポエチンで処置される。
【0009】
米国特許第5681561号は、自己脂肪移植の改良のための方法及び組成物を開示する。その教示によると、自己由来の脂肪細胞(例えば、リポサイト)は、非ステロイド系の同化作用ホルモン(例えば、インスリン又はトリヨードチロニン/チロキシン又はこれらの両方)と共に対象中に注入される。自己由来の脂肪細胞は、増殖ホルモン(例えば、内皮増殖因子(EGF)、血小板由来増殖因子(PDGF))と共に対象中に注入されることもできる。また、ホルモンは、栄養培地と組み合わされる。
【0010】
PCT公報第2008/019434号は、脂肪細胞形成を増大させるための、及び脂肪移植物の生存を増大させるための薬剤の使用を開示する。その教示によると、増殖因子(例えば、血小板由来増殖因子(PDGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)及び/又は繊維芽細胞増殖因子(FGF))は、局所的又は徐放性投与によって送達され、脂肪細胞形成に関連する血管形成を増大させ、脂肪細胞の生存を促進する。
【発明の概要】
【0011】
本発明のある実施形態の側面によれば、脂肪細胞の生存をその必要のある対象において増大させる方法であって、(a)脂肪細胞の集団を対象中に移植すること、及び(b)エリスロポエチンを前記対象に投与して、それにより対象において脂肪細胞の生存を増大させることを含むことを特徴とする方法が提供される。
【0012】
本発明のある実施形態の側面によれば、脂肪細胞の生存をその必要のある対象において増大させる方法であって、(a)脂肪細胞の集団をエリスロポエチンと接触させること、及び(b)前記脂肪細胞の集団を対象中に移植して、それにより対象において脂肪細胞の生存を増大させることを含むことを特徴とする方法が提供される。
【0013】
本発明のある実施形態の側面によれば、柔組織の欠損を治療するために特定される医薬の製造のためのエリスロポエチンの使用が提供される。
【0014】
本発明のある実施形態の側面によれば、脂肪細胞の生存を増大させるためのエリスロポエチンの使用が提供される。
【0015】
本発明のある実施形態の側面によれば、脂肪細胞の集団及びエリスロポエチンを含むことを特徴とする医薬組成物が提供される。
【0016】
本発明のある実施形態によれば、前記方法は、前記移植の前に前記脂肪細胞をエリスロポエチンと接触させることをさらに含む。
【0017】
本発明のある実施形態によれば、前記対象は、前記脂肪細胞の前記移植前にエリスロポエチンで処置される。
【0018】
本発明のある実施形態によれば、前記方法は、前記移植の後にエリスロポエチンを前記対象に投与することをさらに含む。
【0019】
本発明のある実施形態によれば、前記投与は、前記移植の後に行われる。
【0020】
本発明のある実施形態によれば、前記投与は、前記脂肪細胞の集団中への前記エリスロポエチンの直接注入によって行われる。
【0021】
本発明のある実施形態によれば、前記エリスロポエチンの用量は、1000000個の脂肪細胞当たり1注入当たり約1〜1000IUである。
【0022】
本発明のある実施形態によれば、前記エリスロポエチンの前記投与は、全身経路によって行われる。
【0023】
本発明のある実施形態によれば、前記エリスロポエチンの用量は、体重1kg当たり約10〜7500IUである。
【0024】
本発明のある実施形態によれば、前記投与は、少なくとも二回行われる。
【0025】
本発明のある実施形態によれば、前記方法は、細胞外マトリックス成分、増殖因子、ホルモン、血管形成因子、凝固因子、サイトカイン、ケモカイン、酵素、神経伝達物質、ビタミン、炭水化物、イオン、鉄キレート化剤、脂肪酸、抗生物質、及びアミノ酸からなる群から選択される少なくとも一つの因子を前記対象に投与することをさらに含む。
【0026】
本発明のある実施形態によれば、前記柔組織の欠損は、皮膚の状態、皮膚の疾患、創傷、やけど、癌、手術、再建手術、皮膚の陥没、先天的な奇形、及び後天的な疾患からなる群から選択される。
【0027】
本発明のある実施形態によれば、前記脂肪細胞は、自己由来の細胞を含む。
【0028】
本発明のある実施形態によれば、前記脂肪細胞は、非自己由来の細胞を含む。
【0029】
本発明のある実施形態によれば、前記非自己由来の細胞は、同種由来の細胞である。
【0030】
本発明のある実施形態によれば、前記非自己由来の細胞は、異種由来の細胞である。
【0031】
本発明のある実施形態によれば、前記非自己由来の細胞は、哺乳動物から得られる。
【0032】
本発明のある実施形態によれば、前記哺乳動物は、前記脂肪細胞の除去前にエリスロポエチンで処置される。
【0033】
本発明のある実施形態によれば、前記医薬組成物は、細胞外マトリックス成分、増殖因子、ホルモン、血管形成因子、凝固因子、サイトカイン、ケモカイン、酵素、神経伝達物質、ビタミン、炭水化物、イオン、鉄キレート化剤、脂肪酸、抗生物質、及びアミノ酸からなる群から選択される少なくとも一つの因子をさらに含む。
【0034】
別途定義されない限り、本明細書中で使用されるすべての技術的用語及び/又は科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書中に記載される方法及び材料と類似又は同等である方法及び材料を本発明の実施形態の実施又は試験において使用することができるが、好適な方法及び/又は材料が下記に記載される。矛盾する場合には、定義を含めて、本特許明細書が優先する。加えて、材料、方法及び実施例は例示にすぎず、限定であることは意図されない。
【図面の簡単な説明】
【0035】
本明細書では本発明のいくつかの実施形態を単に例示し添付の図面を参照して説明する。特に詳細に図面を参照して、示されている詳細が例示として本発明の実施形態を例示考察することだけを目的としていることを強調するものである。この点について、図面について行う説明によって、本発明の実施形態を実施する方法は当業者には明らかになるであろう。
【0036】
【図1A−1C】図1A−1Cは、15週間の研究期間の終わりでの、脂肪移植物を有する代表的なマウスを示す写真である。図1Aは、サイズの異なる小さなこぶを頭皮に有する五匹のPBS処置脂肪移植マウスを示す。図1Bは、同様のサイズの大きなこぶを頭皮に有する五匹の高用量エリスロポエチン(100IU EPO)処置脂肪移植マウスを示す。図1Cは、移植の15週後にマウスから切除された脂肪移植物を示す。図1Cは、左から右に順に以下のものを示す:PBS処置脂肪移植マウスからの代表的な小さい脂肪移植物、中間サイズの低用量EPO処置脂肪移植物、及び大きな高用量EPO処置脂肪移植物。スケールバーは10mmである。
【0037】
【図2A−2I】図2A−2Cは、移植の15週後に、PBS処置マウス、低用量EPO処置マウス、及び高用量EPO処置マウスからそれぞれ除去された脂肪移植物の組織学的断片を示す写真である。断片は、ヘマトキシリン及びエオシンで染色され、(i)移植された脂肪組織構造における無傷の及び有核の脂肪細胞の組織化の程度によって証明される一体化の程度;(ii)コラーゲン及び弾性フィブリルの量によって証明される繊維症の度合い;(iii)嚢胞及び液胞の存在;及び(iv)リンパ球及びマクロファージ浸潤の程度によって証明される炎症応答の強度について光学顕微鏡下で検査された。各基準は、0〜5のスケールに等級付けされた。0は、非存在を示し、1は、最小の存在を示し、2は、最小〜中程度の存在を示し、3は、中程度の存在を示し、4は、中程度〜多い存在を示し、5は、多い存在を示す。代表的な組織学的顕微鏡写真は、以下の通りである。図2Aは、PBS処置脂肪移植物であり、そこでは、いくつかの細胞はなお生存しており無傷であるが、脂肪細胞の変性、繊維症、及び有核炎症細胞の浸潤がある。図2Bは、低用量エリスロポエチン(EPO)処置脂肪移植物であり、そこでは、脂肪細胞は、中程度の量の繊維症を有する組織中に良く規定されている。図2Cは、高用量EPO処置脂肪移植物であり、そこでは、中程度の量の結合組織を有する、生存しておりかつ良く規定された無傷の脂肪細胞がある。スケールバーは200μmである。
【0038】
図2D−2Fは、脂肪移植後の脂肪移植物における炎症応答に対するエリスロポエチン(EPO)の影響を示す写真である。三群のマウス中への移植後、脂肪移植物は、PBS(100μl、図2D)、20IU EPO/100μl PBS(低用量、図2E)、又は100IU EPO/100μl PBS(高用量、図2F)で脂肪注入日に処置され、3日おきに繰り返し、計18日間処置された。脂肪移植物の収穫後、断片が調製されて、CD68陽性細胞の浸潤によって証明される炎症応答が評価された。矢印は、茶色に染色されたCD68陽性細胞を示す。
【0039】
図2G−2Iは、脂肪移植後の脂肪移植物における新血管形成に対するエリスロポエチン(EPO)の影響を示す写真である。三群のマウス中への移植後、脂肪移植物は、PBS(100μl、図2G)、20IU EPO/100μl PBS(低用量、図2H)、又は100IU EPO/100μl PBS(高用量、図2I)で脂肪注入日に処置され、3日おきに繰り返し、計18日間処置された。脂肪移植物の収穫後、断片が調製されて、微小血管密度(MVD)が評価された。矢印は、茶色に染色されたCD31陽性内皮細胞を示す。
【0040】
【図2J−2L】図2J−2Lは、脂肪移植後の脂肪移植物における炎症応答及びMVDに対するエリスロポエチン(EPO)の影響を示す写真である。図2Jは、EPO処置が、脂肪移植物における炎症応答の重症度を低下させることを示す棒グラフである。図2Kは、EPO処置が、微小血管密度(MVD)を用量依存的に増大させることを示す棒グラフである。各棒は、15週間の研究期間の終わりでの各処置群からの各脂肪移植物における五つの関心領域からの平均MVD±SDを表わす。*はP<0.05を意味し、***はP<0.001を意味し、低用量又は高用量EPO処置脂肪移植物とPBS処置移植物との間の有意差を示す。スケールバーは50μmである。図2Lは、脂肪移植物におけるマクロファージ浸潤の程度に対するMVDの負の相関を示す線グラフである。
【0041】
【図3A−3J】図3A−3Jは、脂肪移植物における血管形成増殖因子の発現レベルに対するEPOの影響を示す。三つの異なる群のマウスからの脂肪移植物は、PBS(100μl)、20IU EPO/100μl PBS(低用量)、又は100IU EPO/100μl PBS(高用量)で脂肪注入日に処置され、3日おきに繰り返し、計18日間処置された。図3A−3Iは、VEGF発現(図3A−3C)、VEGFR−2発現(図3D−3F)、及びEPOR発現(図3G−3I)を示す、PBS、低用量及び高用量EPO処置脂肪移植物の代表的な組織学的な顕微鏡供写真である。図3Jは、15週の研究期間の終わりでのPBS及びEPO処置脂肪移植物における血管形成因子の発現レベルの代表的なウエスタンブロットを示す写真である。図中、bFGFは、塩基性繊維芽増殖因子であり、IGF−1は、インスリン様増殖因子1であり、PDGF−BBは、血小板由来増殖因子BBであり、MMP−2は、マトリックスメタロプロテイナーゼ2であり、PKBは、プロテインキナーゼBである。
【0042】
【図4A−4F】図4A−4Fは、脂肪移植物における血管形成増殖因子の発現レベルに対するEPOの影響を示す。三群のマウス中への移植後、脂肪移植物は、PBS(100μl、図2D)、20IU EPO/100μl PBS(低用量)、又は100IU EPO/100μl PBS(高用量)で脂肪注入日に処置され、3日おきに繰り返し、計18日間処置された。グラフは、各処置群の脂肪移植物における平均血管内皮増殖因子(VEGF)含有量(図4A)、平均VEGFR−2発現(図4B)、及び平均EPOR発現(図4C)±SDを表わす。図4D−4Fは、各群におけるVEGFとMVDとの間の相関(図4D)、平均VEGFR−2と平均MVDとの間の相関(図4E)、及びEPOR発現と平均MVDとの間の相関(図4F)を示す。*はP<0.05を意味し、**はP<0.01を意味し、***はP<0.001を意味し、低用量又は高用量EPO処置脂肪移植物とPBS処置移植物との間の有意差を示す。スケールバーは200μmである。
【0043】
【図5A−5B】図5A−5Bは、脂肪移植物におけるアポトーシスの程度に対するエリスロポエチン(EPO)の影響を示す。PBS(100μl)、20IU EPO/100μl PBS(低用量)、又は100IU EPO/100μl PBS(高用量)は、三つの異なる群のマウス中への移植後の脂肪移植物中に注入された。この処置は、3日おきに計18日間繰り返された。図5AはTUNELアッセイによって測定され、PBS処置脂肪移植物中のアポトーシスの存在の百分率として表わされたアポトーシスの程度を示す。各棒は、15週間の研究期間の終わりでの各処置群からの各脂肪移植物におけるアポトーシスの平均程度±SDを表わす。*はP<0.05を意味し、**はP<0.01を意味し、***はP<0.001を意味し、低用量又は高用量EPO処置脂肪移植物とPBS処置移植物との間の有意差を示す。図5Bは、15週の研究機関の終わりでのPBS及びEPO処置脂肪移植物におけるカスパーゼ3(Casp 3)及びチトクロームc(Cyt c)の発現レベルの代表的なウエスタンブロットを示す写真である。
【0044】
【図6A−6D】図6A−6Dは、脂肪移植物における微小血管密度(MVD)及びアポトーシスの程度に対する血管内皮増殖因子(VEGF)の影響を示す。PBS(100μl)又は血管内皮増殖因子(VEGF,200ng VEGF/100μl PBS)は、二つの異なる群のマウス中への脂肪注入日に脂肪移植物中に注入された。この処置は、3日おきに計18日間繰り返された。図6Aは、各スライド中の五つの関心領域からの平均微小血管密度(MVD)±SDを示す棒グラフである(スライドは、15週間の研究期間の終わりに各処置群の収積された脂肪移植物から調製された)。図6Bは、15週間の研究期間の終わりに各処置群の収積された脂肪移植物における平均VEGF含有量±SDを示す棒グラフである。図6Cは、TUNELアッセイによって測定されたアポトーシスの程度を示す棒グラフである。結果は、PBS処置された脂肪移植物におけるアポトーシスの程度の百分率として表わされる。各棒は、15週間の研究機関の終わりでの各処置群からの各脂肪移植物におけるアポトーシスの平均程度±SDを表わす。**はP<0.01を意味し、VEGF処置移植物との間の有意差を示す。図6Dは、15週の研究機関の終わりでのPBS及びVEGF処置脂肪移植物におけるカスパーゼ3(Casp 3)及びチトクロームc(Cyt c)の発現レベルの代表的なウエスタンブロットを示す写真である。
【0045】
【図7A−7H】図7Aは、マトリゲル中でのヒト臍帯血管内皮細胞(HUVEC)の管形成に対するエリスロポエチン(EPO)の影響を示す。ヒト臍帯血管内皮細胞(HUVEC)は、細胞をマトリゲル上に播種した48時間後に20IU/ml又は100IU/mlのEPOで処置された。マトリゲル上でのHUVEC管形成の程度は、24時間後に10倍の光学顕微鏡下で評価された。管状構造は、マトリゲル上の管形成の相対的存在及び段階の評価によって0〜5のスケールに半定量的に等級付けされた。0は、良く分離された個々の細胞を示し、1は、細胞が移動しはじめて細胞同士が整列していることを示し、2は、可視的な毛細管の存在及び発芽の非存在を示し、3は、新しい毛細管の可視的な発芽を示し、4は、閉じた多角形の初期形成を示し、5は、複雑な網状構造の発達を示す。各棒は、マトリゲル中の管形成の平均等級±SDを表わす。*はP<0.05を意味し、**はP<0.01を意味し、***はP<0.001を意味する。
【0046】
図7B−7Hは、マトリゲル中でのヒト臍帯血管内皮細胞(HUVEC)の管形成に対するEPO又はVEGFの影響を示す。HUVECは、細胞をマトリゲル上に播種した48時間後に0.25mg/mlのベバシズマブ(bevacizumab)の非存在下又は存在下で100IU/mlのEPO又は200ng/100μlのVEGFで処置された。マトリゲル上でのHUVEC管形成の程度は、24時間後に10倍の倍率の光学顕微鏡下で評価された。管状構造は、マトリゲル上の管形成の相対的存在及び段階の評価によって0〜5のスケールに半定量的に等級付けされた。0は、良く分離された個々の細胞を示し、1は、細胞が移動しはじめて細胞同士が整列していることを示し、2は、可視的な毛細管の存在及び発芽の非存在を示し、3は、新しい毛細管の可視的な発芽を示し、4は、閉じた多角形の初期形成を示し、5は、複雑な網状構造の発達を示す。図7Bにおいて、白色の棒は、非処置のHUVEC,VEGF又はEPO処置HUVECのマトリゲル中の管形成の平均等級±SDを表わす。黒色の棒は、ベバシズマブにさらされた未処置のHUVEC,VEGF又はEPO処置HUVECのマトリゲル中の管形成の平均等級±SDを表わす。*はP<0.05を意味し、***はP<0.001を意味し、ベバシズマブにさらされたHUVECとさらされなかったHUVECとの間の有意差を示す。NSは、有意差なしを意味する。図7Cは、マトリゲル上の未処置のHUVECを示す。図7Dは、播種の24時間後のEPO処置HUVECを示す。図7Eは、播種の24時間後のVEGF処置HUVECを示す。図7Fは、ベバシズマブの存在下での非処置HUVECを示す。図7Gは、ベバシズマブの存在下での播種の24時間後のEPO処置HUVECを示す。図7Hは、ベバシズマブの存在下での播種の24時間後のVEGF処置HUVECを示す。
【0047】
【図7I】図7Iは、マトリゲル中でのヒト臍帯血管内皮細胞(HUVEC)の管形成に対するEPO又はVEGFの影響を示す。培養されたHUVECは、ベバシズマブ、PD173074、又はチルホスチン(tyrphostin)の存在下で、又はベバシズマブ、PD173074及びチルホスチンの組み合わせの存在下で、又はウォルトマンニンの存在下で、100IU/mlのEPOと共に又は100IU/mlのEPOなしで処置された。HUVECの増殖は、DNAへの[H]−チミジンの取り込みによって測定された。重複細胞カウントは、3回の実験について平均化され、データは、対照に対するパーセントとして表わされた。ベバシズマブ、PD173074、チルホスチン又はウォルトマンニンにさらされた非処置のHUVECとEPO処置HUVECとの間の差について、*はP<0.05を意味し、**はP<0.01を意味し、***はP<0.001を意味する。NSは、有意差なしを意味する。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本発明は、ある実施形態では脂肪組織に関し、より具体的には、その移植を改善する方法に関するが、これに限定されない。
【0049】
本発明の原理及び操作は、図面及び付随する説明を参照してより良く理解されることができる。
【0050】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その適用において、下記の説明に示される細部、又は、実施例によって例示される細部に必ずしも限定されないことを理解しなければならない。本発明は他の実施形態が可能であり、あるいは、様々な方法で実施、又は、実行される。また、本明細書中において用いられる表現法及び用語法は説明のためであって、限定として見なされるべきでないことを理解しなければならない。
【0051】
本発明を実施に移している間に、本発明者は、移植された脂肪組織をエリスロポエチン(EPO)で処置することは、いくつかの血管形成因子(例えば、VEGF)の放出を刺激し、脂肪組織の血管形成を促進し、脂肪移植細胞のアポトーシスを防止することを発見した。さらに、本発明者は、脂肪移植物をEPOで処置することは、移植された脂肪細胞の長期間の生存をもたらすことを示した。これらの教示は、総合的に、エリスロポエチンの治療的価値を示し、脂肪組織の移植におけるエリスロポエチンの使用を示唆する。
【0052】
以下に示すように及び以下の実施例に示すように、本発明者は、苦労の多い実験により、EPOが脂肪組織移植を促進するために好適であることを発見した。本発明者は特に、EPOで処置され、移植された脂肪組織が、脂肪移植の15週後に高い重量及び体積を有することを示した(図1A〜C及び表2)。組織の一体化の程度は、EPOで処置された脂肪組織では高かったが、嚢胞形成及び繊維症の程度は、これらの組織で低かった(図2A〜C及び表3)。さらに、EPO処置脂肪組織は、高い微小血管密度(MVD)、CD31の増大した発現を有する良く血管形成された領域、及び多数の内皮島を示し(図2G〜I及び2K)、移植後の低い炎症応答を示した(図2D〜F及び2J)。EPO処置は、脂肪細胞におけるアポトーシスの用量依存的な減少(図5A)をもたらし、一方では、血管形成因子VEGF,bFGF,IGF−1,PDGF−BB,MMP−2 PKB及びリン酸化PKBの増大した発現をもたらし(図3J及び4A)、これらの細胞における組織VEGFR−2及びEPORの両方の増大した発現をもたらした(図3D〜I及び4B〜C)。総合的に、これらの結果は、移植手順における脂肪細胞移植の促進におけるEPOの価値を証明する。
【0053】
従って、本発明の一つの側面によれば、脂肪細胞の生存をその必要のある対象において増大させる方法であって、脂肪細胞の集団を対象中に移植すること、及びエリスロポエチンを前記対象に投与することを含むことを特徴とする方法が提供される。
【0054】
本発明中で使用される用語「脂肪細胞」は、脂肪組織に含まれるいかなる細胞又は細胞の群(例えば、脂肪細胞(lipocytes)脂肪細胞(adipocytes)、前脂肪細胞を含む脂肪細胞前駆体、及び間葉性幹細胞)に言及する。本発明の教示によれば、脂肪細胞は、分散されてもよいし、又は組織中に含まれていてもよい。
【0055】
脂肪細胞の数は、幅広い範囲にわたって変化することができる。当業者は、この数が、処置されるべき領域の種類及び寸法、処理されるべき領域の血管形成の相対的程度、処置されるべき対象の年齢、及び移植のために利用可能な脂肪細胞の相対的な生存力に依存して変化することを認識するだろう。移植される脂肪細胞の数は、使用される手順、注入部位、及び注入されるべき部位の相対的な血管形成に従って調節されることは理解されるだろう。当業者は、特定の条件は、以下に記述される範囲の外側の脂肪細胞の数の調節を必要とすることを認識するだろう。本発明のある実施形態によれば、移植のための脂肪細胞の数は、1ml当たり約10000個〜10000000個の脂肪細胞の範囲である。別の実施形態によれば、0.01〜2000mlの脂肪組織が移植される。以下に詳述されるように、対象は、単一の移植又はいくつかの移植(例えば、約2,5,10,20,50,100又はそれ以上の移植手順)で投与されてもよいことは理解されるだろう。
【0056】
本明細書で使用される句「脂肪細胞の生存」は、移植後に生存しておりかつ無傷のままである脂肪細胞の能力に言及する。好ましくは、脂肪細胞は、移植後の数日間、数週間、数月間、又は数年間、生存する。
【0057】
本明細書で使用されるように、脂肪細胞の生存に関連しての用語「増大させる」は、脂肪移植物における脂肪細胞の寿命を増加させる及び/又は脂肪移植物内の再吸収、アポトーシス又は細胞死を経験する脂肪細胞の数を減少させるプロセスに言及する。従って、本発明のある実施形態において、増大させることは、生存可能な脂肪細胞の少なくとも約10%、20%、50%、80%又は90%の増大、及び/又は、脂肪細胞の死の少なくとも約10%、20%、50%、80%、又は90%の阻止に言及する。当業者は、様々な方法及びアッセイが、細胞の生存力を評価するために使用されることができること、及び同様に、様々な方法及びアッセイが、細胞の死又は細胞のアポトーシスを評価するために使用されることができることを理解するだろう(例えば、FACS分析、末端デオキシウリジン三リン酸ニックエンド標識(TUNEL)アッセイ、MultiTox Assayのような細胞の生存力アッセイ)。
【0058】
上述の通り、本発明による脂肪細胞の生存を増大させることは、対象にエリストポエチン(EPO)を投与することによって達成される。
【0059】
本明細書中で使用される用語「エリスロポエチン」は、哺乳動物(例えば、ヒト)のエリスロポエチンタンパク質(交換可能に、ポリペプチドとともに使用される)又はその模倣体を示す(例えば、GenBankアクセション番号NP_000790に示されるもの)。エリスロポエチンは、組換えDNA技術又は固相技術を使用して合成することができる。エリスロポエチンはまた市販されている(例えば、Cytolab/Peprotech、Rehovot、イスラエル;Arenesp、Amgen、Thousand Oaks、CA、アメリカ合衆国;及びEpogen、Amgen、Thousand Oaks、CA、アメリカ合衆国、Bristrol−Meyers Squibb、Roche及びSanofi−Aventis)。エリスロポエチンは、完全な糖タンパク質として、又は、結合した糖を欠くタンパク質サブユニットのみとして使用することができる。本発明のエリスロポエチンは、臨床適用のために使用されるので、好ましくは無菌であるか、又は、考えられる混入因子(例えば、細菌又は細菌成分)が、例えばフィルタによって除かれ得る。
【0060】
本発明のこの側面に従って処置されることができる典型的な対象は、脂肪移植を必要とする、オス又はメスの、いかなる年齢のヒトや家畜(例えば、ウマ(即ち、ウマ科の動物)、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、イヌ、ネコ、ラクダ、アルパカ、ラマ、ヤクなどであるが、これらに限定されない)などの哺乳動物を含む。
【0061】
一般的に、脂肪移植は、いかなる柔組織の欠損を治療するために、いかなる柔組織損傷を充填するために、及び手術により、組織の老化の結果として、又は疾患、外傷又は損傷により失われた身体の外部及び内部表面及び構造の増強のために使用されることができる。その例は、泌尿器の手術、腫瘍除去手術、再建手術、及び皮膚手術を含むが、それらに限定されない。同様に、脂肪移植は、シリコーン又はコラーゲン充填物の代用として使用されることができる。脂肪移植は、損傷後に、又は美容手術(美容整形、乳房切除、又は乳腺腫瘤摘出を含むが、これらに限定されない)などの手術手順に従って、又は癌組織の除去、特に対象の皮膚又はその近くの腫瘍の除去などの他の手順などの手術手順に従って、陥没(即ち、正常な身体の同じ領域と比較して中空であるか又は沈んでおり、細胞物質、身体又は体積を欠く身体の領域)を充填するために使用されることができる。脂肪移植は、弱い又は損傷した構造組織の増強に関与する泌尿器科手順、しわ、やけど、皮膚の状態、皮膚の疾患及び創傷の治療において、及び尻、二頭筋、三頭筋、腓腹、胸、手及びペニスなどの身体の領域を増強することを含む多数の他の用途に使用されることもできる。さらに、脂肪移植は、片側顔面小人症などの先天的な奇形、及びロンバーグリポジストロフィ及び後天性免疫欠損症候群(AIDS)などの後天的な疾患を治療するために使用されることもできる。
【0062】
脂肪細胞は、対象の身体から得られることができ、自己由来の様式(即ち、脂肪細胞が得られたのと同じ対象中に移植される様式)で使用されることができることは理解されるだろう。自己由来の脂肪移植が実行される場合、自己由来の脂肪細胞は典型的に、対象から採取され、脂肪細胞が除去された部位以外の身体の領域において、同じ対象の身体中の陥没又は柔組織欠損を充填するために使用される。
【0063】
代替的に、脂肪細胞は、一人の対象(供与体)から得られ、異なる個人(受容体)中に非自己由来の様式で移植されることもできる。非自己由来の脂肪移植が実行される場合、脂肪細胞は、受容体対象と同一種の対象から得られることができ(即ち、ヒト供与体からヒト受容体へのような同種由来の脂肪細胞)、又は異なる種から得られることができる(即ち、ブタ供与体からヒト受容体へのような異種由来の脂肪細胞)。かかる方法は、当業者には周知である。本発明の実施形態によれば、非自己由来の脂肪細胞は、哺乳動物から得られる。
【0064】
本発明の教示によれば、脂肪細胞は一般的に、腹、脚、又は有意な脂肪細胞が見出される他の領域において皮下脂肪層から(例えば吸引により)除去することによって得られる。好ましくは、本発明の脂肪は、赤血球や他の血液細胞、繊維芽細胞、及び脂肪細胞を汚染しうる他の細胞などの無関係な細胞を実質的に含有しない。さらに、脂肪細胞は移植に使用されるので、これらの細胞は、移植に使用されるまで無菌環境中に維持される。
【0065】
脂肪細胞は、吸引された脂肪中に見出される他の成分(例えば、トリグリセリド、リソソーム、他の細胞断片、血液成分、血液細胞、及び大きな結合組織断片、とりわけ望ましくない成分)から使用前に分離されることができる。当業界で公知のいかなる方法も、これらの他の成分から脂肪細胞を分離するために使用されることができるが、好ましくは、少なくとも一回の遠心分離工程が使用される。
【0066】
一つの実施形態によれば、脂肪細胞は対象中に直ちに移植される。好ましくは、脂肪細胞は、採取してから30分以内、1時間以内、2時間以内、3時間以内、4時間以内、又は1日以内に移植される(例えば実施例1参照)。本発明の脂肪細胞は、例えば液体窒素中での凍結によって移植前に長期間保存されることができることは理解されるだろう。
【0067】
本発明の教示に従って脂肪細胞を移植することは、当業界で公知のいかなる方法によっても実行されることができ、例えば(以下の実施例1に示すように)所望の場所への注入によって、微小手術によって、及び多量の脂肪細胞又は脂肪組織が移植される場合は手術によって実行されることができる。
【0068】
本発明のある側面によれば、脂肪細胞の移植後、対象はエリスロポエチンを投与される。
【0069】
エリスロポエチンは全身投与又は局所投与によって投与され得ることが理解されるだろう。
【0070】
本明細書中で使用される場合、語句「全身投与」は、本発明のエリスロポエチンの経口投与、静脈内投与、腹腔内投与及び筋肉内投与に言及する。
【0071】
本明細書中で使用されるように、語句「局所投与」は、移植された脂肪細胞に直接、又は移植された脂肪細胞の近隣に本発明のエリスロポエチンを適用することに言及する。例示的な実施形態によれば、本発明のエリスロポエチンは、移植された脂肪細胞中に注入を介して直接投与される。
【0072】
本発明の教示によれば、局所投与(例えば、移植された脂肪細胞中への直接注入)のために適用されるエリスロポエチンの想定される用量は、局所投与のための1000000個の脂肪細胞当たり1注入当たり1〜1000IUであることが理解されるだろう。同様に、全身投与のためのエリスロポエチンの用量は、全身投与のための体重1kg当たり10〜7500IUであることができる。治療のために選択されるエリスロポエチンの用量は、脂肪細胞の数及び濃度、治療されるべき対象及び移植場所に依存する。
【0073】
模倣組成物が使用される場合、エリスロポエチンの用量は、例えば分子価に従って較正されるべきであることは理解されるだろう。かかる較正は、当業者にとってはルーチンワークである。
【0074】
エリスロポエチンの投与は典型的には、脂肪細胞の移植直後に実行される。従って、本発明の教示によれば、エリスロポエチンは、移植から数分以内又は数時間以内に対象に投与される。特定の実施形態によれば、エリスロポエチンは、脂肪細胞移植の第1日目から開始して対象に投与され、脂肪細胞が対象中で一体化されて血管形成されるまで(例えば、少なくとも5〜50日間)連続的に投与される。
【0075】
特定の実施形態によれば、本発明は、脂肪細胞の移植の前に脂肪細胞をエリスロポエチンで処置することを想定する。これは、移植後のエリスロポエチンの投与に加えて行われることができ、又は移植後のエリスロポエチンの投与の代わりに行われることができる。脂肪細胞の処置は、当業界で公知のいかなる方法によって実行されることができ、例えば、組織培養プレート中で脂肪細胞をエリスロポエチンと生体外で接触させることによって、又はエリスロポエチンを脂肪組織中に直接注入することによって実行されることができる。代替的に、脂肪細胞は、供与体からの除去前にエリスロポエチンにさらされることができる。
【0076】
移植前に脂肪細胞を処置するためのエリスロポエチンの想定される濃度は、1000000個の脂肪細胞当たり1注入当たり1〜1000IUの用量を含む。
【0077】
移植前に処置されるべき対象は、上述のように、脂肪細胞の移植後もエリスロポエチンを受け取り続けることができる。
【0078】
エリスロポエチンは、それ自体として、又は医薬組成物として対象に投与されることができる。追加的に、本発明の脂肪細胞は、それ自体で、又は医薬組成物の一部として投与されることができる。
【0079】
本明細書中で使用される「医薬組成物」は、本明細書中に記載される有効成分の調製物と、他の化学的成分(例えば、生理学的に好適なキャリア及び賦形剤など)との調製物に言及する。組成物の目的は、対象に対する有効成分(例えば、エリスロポエチン)の投与を容易にすることである。
【0080】
本明細書中で使用される用語「有効成分」は、意図される生物学的効果(すなわち、脂肪細胞の生存を増大させること)を担うエリスロポエチン又は脂肪細胞自体に言及する。
【0081】
以降、交換可能に使用されうる表現「生理学的に許容されるキャリア」及び表現「医薬的に許容されるキャリア」は、対象に対する著しい刺激を生じさせず、投与された有効成分の生物学的な活性及び性質を阻害しないキャリア又は希釈剤に言及する。アジュバントはこれらの表現に含まれる。
【0082】
本明細書中において、用語「賦形剤」は、本発明の有効成分の投与をさらに容易にするために組成物(医薬組成物)に添加される不活性な物質に言及する。
【0083】
薬物の配合及び投与のための様々な技術が、“Remington’s Pharmaceutical Sciences”Mack Publishing Co.、Easton、PA、最新版に見出され得る(これは参照によって本明細書中に組み込まれる)。
【0084】
本明細書中上記したように、エリスロポエチンの好適な投与経路には、例えば、全身的様式が含まれ、これには、経口送達、直腸送達、経粘膜送達(特に、経鼻送達)、腸管送達又は非経口送達(筋肉内注射、皮下注射及び髄内注射、ならびに、髄腔内注射、直接の脳室内注射、静脈内注射、腹腔内注射、筋肉内注射、鼻腔内注射又は眼内注射を含む)が含まれる。
【0085】
あるいは、エリスロポエチンを含む本発明の医薬組成物は、例えば、医薬組成物を直接に患者の脂肪細胞移植領域に注入することにより、又は、組成物を直接に患者の脂肪細胞移植領域に近い組織領域に適用することにより、全身的様式ではなく、むしろ、局所的様式で投与してもよい。本発明の組成物の好適な投与経路には、例えば、局所投与(例えば、角質組織(例えば、皮膚、頭皮など)への局所投与)及び粘膜投与(例えば、経口投与、膣投与、眼投与)が含まれ得る。
【0086】
本発明の医薬組成物は、この分野で十分に知られているプロセスによって、例えば、従来の混合、溶解、造粒、糖衣錠作製、研和、乳化、カプセル化、包括化又は凍結乾燥のプロセスによって製造されることができる。
【0087】
本発明に従って使用される医薬組成物は、医薬品として使用されることができる調製物への有効成分の加工を容易にする賦形剤及び補助剤を含む1つ又は複数の生理学的に許容され得る担体を使用して従来の様式で配合されることできる。適正な配合は、選ばれた投与経路に依存する。
【0088】
注射の場合、医薬組成物の有効成分は、水溶液において、好ましくは生理学的に適合しうる緩衝液(例えば、ハンクス溶液、リンゲル溶液、又は生理学的な食塩緩衝液など)において配合されることができる。経粘膜投与の場合、浸透されるバリヤーに対して適切な浸透剤が配合において使用される。そのような浸透剤はこの分野では一般に知られている。
【0089】
経口投与の場合、医薬組成物は、活性化合物をこの分野でよく知られている医薬的に許容され得る担体と組み合わせることによって容易に配合されることができる。そのような担体は、本発明の化合物が、患者によって経口摂取される錠剤、ピル、糖衣錠、カプセル、液剤、ゲル、シロップ、スラリー剤及び懸濁物などとして配合されることを可能にする。経口使用される薬理学的調製物は、固体の賦形剤を使用し、得られた混合物を場合により粉砕し、錠剤又は糖衣錠コアを得るために、望ましい好適な補助剤を添加した後、顆粒の混合物を加工して作製されることができる。好適な賦形剤は、特に、ラクトース、スクロース、マンニトール又はソルビトールを含む糖などの充填剤;セルロース調製物、例えば、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ナトリウムカルボメチルセルロースなど;及び/又はポリビニルピロリドン(PVP)などの生理学的に許容され得るポリマーである。もし望むなら、架橋されたポリビニルピロリドン、寒天、又はアルギン酸もしくはその塩(例えば、アルギン酸ナトリウムなど)などの崩壊剤が加えられることができる。
【0090】
糖衣錠コアには、好適なコーティングが施される。この目的のために、高濃度の糖溶液を使用することができ、この場合、糖溶液は、場合により、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、二酸化チタン、ラッカー溶液、及び好適な有機溶媒又は溶媒混合物を含有しうる。色素又は顔料は、活性化合物の量を明らかにするために、又は活性化合物の量の種々の組合せを特徴づけるために、錠剤又は糖衣錠コーティングに加えられることができる。
【0091】
経口使用されうる医薬組成物としては、ゼラチンから作製されたプッシュ・フィット型カプセル、ならびに、ゼラチン及び可塑剤(例えば、グリセロール又はソルビトールなど)から作製された軟いシールされたカプセルが挙げられる。プッシュ・フィット型カプセルは、充填剤(例えば、ラクトースなど)、結合剤(例えば、デンプンなど)、滑剤(例えば、タルク又はステアリン酸マグネシウムなど)、及び場合により安定化剤との混合で有効成分を含有することができる。軟カプセルでは、有効成分は、好適な液体(例えば、脂肪油、流動パラフィン又は液状のポリエチレングリコールなど)に溶解又は懸濁されることができる。さらに、安定化剤が加えられることができる。経口投与される配合物はすべて、選ばれた投与経路について好適な投薬形態でなければならない。
【0092】
口内投与の場合、組成物は、従来の方法で配合された錠剤又はトローチの形態を取ることができる。
【0093】
鼻吸入による投与の場合、本発明による使用のための有効成分は、好適な噴射剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン又は二酸化炭素)の使用により加圧パック又はネブライザーからのエアロゾルスプレー提示物の形態で都合よく送達される。加圧されたエアロゾルの場合、投与量は、計量された量を送達するためのバルブを備えることによって決定されることができる。ディスペンサーにおいて使用される、例えば、ゼラチン製のカプセル及びカートリッジは、化合物及び好適な粉末基剤(例えば、ラクトース又はデンプンなど)の粉末混合物を含有して配合されることができる。
【0094】
本明細書中に記載される医薬組成物は、例えば、ボーラス注射又は連続注入による非経口投与のために配合されることができる。注射用配合物は、場合により保存剤が添加された、例えば、アンプル又は多回用量容器における単位投薬形態で提供されることができる。組成物は、油性ビヒクル又は水性ビヒクルにおける懸濁物又は溶液剤又はエマルションにすることができ、懸濁化剤、安定化剤及び/又は分散化剤などの配合剤を含有することができる。
【0095】
非経口投与される医薬組成物には、水溶性形態の活性調製物の水溶液が含まれる。さらに、有効成分の懸濁物は、適切な油性又は水性の注射用懸濁物として調製されることができる。好適な親油性の溶媒又はビヒクルとしては、脂肪油(例えば、ゴマ油など)、又は合成脂肪酸エステル(例えば、オレイン酸エチルなど)、トリグリセリド又はリポソームが挙げられる。水性の注射用懸濁物は、懸濁物の粘度を増大させる物質、例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトール又はデキストランなどを含有することができる。場合により、懸濁物はまた、高濃度溶液の調製を可能にするために、有効成分の溶解性を増大させる好適な安定化剤又は薬剤を含有することができる。
【0096】
あるいは、有効成分は、好適なビヒクル(例えば、無菌の、パイロジェン不含水溶液)を使用前に用いて構成される粉末形態であることができる。
【0097】
本発明の医薬組成物はまた、例えば、カカオ脂又は他のグリセリドなどの従来の座薬基剤を使用して、座薬又は停留浣腸剤などの直腸用組成物に配合されることができる。
【0098】
本発明に関連した使用のために好適な医薬組成物として、有効成分が、その意図された目的を達成するために有効な量で含有される組成物が含まれる。より具体的には、「治療有効量」は、脂肪細胞の生存を増大させるために効果的である、有効成分(例えば、エリスロポエチン)の量を意味する。
【0099】
治療有効量の決定は、特に本明細書中で与えられた詳細な開示に照らすと、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0100】
本発明の方法において使用されるいかなる調製物についても、投与量又は治療有効量は、生体外及び細胞培養アッセイから最初に推定されることができる。例えば、投与量は、所望の濃度又は力価を達成するために、動物モデルにおいて決定されることができる。そのような情報は、ヒトにおける有用な投与量をより正確に決定するために使用されることができる。
【0101】
本明細書中に記載される有効成分の毒性及び治療効力は、生体外、細胞培養物、又は実験動物における標準的な薬学的手法によって決定されることができる。これらの生体外、細胞培養アッセイ及び動物研究から得られたデータは、ヒトにおける使用のための投与量範囲を定めるために使用されることができる。投与量は、用いられる投薬形態及び利用される投与経路に依存して変化しうる。正確な配合、投与経路及び投与量は、患者の状態を考慮して個々の医師によって選択されることができる(例えば、Finglら、(1975)「The Pharmacological Basis of Therapeutics」,Ch.1 p.1を参照のこと)。
【0102】
投薬量及び投薬間隔を、生物学的影響を誘導又は抑制するために十分である有効成分のレベル(最小有効濃度、MEC)に合わせて個々に調節することができる。MECはそれぞれの調製物について異なるが、インビトロデータから推定することができる。MECを達成するために必要な投薬量は個体の特性及び投与経路に依存する。様々な検出アッセイを、血漿中の濃度を求めるために使用することができる。
【0103】
本明細書中に記載される組成物の生物学的影響を評価するために本発明の教示に従って使用することができる動物モデルには、(以下の実施例で記載するような)SCIDマウスが含まれる。
【0104】
処置されるべき状態、移植されるべき脂肪細胞の数、及び処置されるべき対象の応答性に依存して、投薬は、単回又は複数回投与で行うことができ、この場合、処置期間は、数日から数週又は数ヶ月間まで、又は治癒が達成されるまで、又は豊富な脂肪細胞が確保されるまで続く。
【0105】
本発明のある実施形態によれば、エリスロポエチン組成物は、脂肪細胞の生存を増大させるために、対象に1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、又は10回投与される。多数回の脂肪細胞移植が実行された場合、エリスロポエチンの投与回数は、多数回にすることができ、(当業者によって決定されるように)必要な限り長期間延期されることができることは理解されるだろう。好ましくは、本発明の組成物は少なくとも1日につき1回投与される。投与の回数は、当業者によって決定されることができることは、理解されるだろう。
【0106】
投与される組成物の量は、当然のことではあるが、処置されている対象、苦痛の重篤度、投与様式、処方医の判断などに依存する。
【0107】
処置の効率の決定は、移植された脂肪細胞の数及び生存力を(例えば超音波によって)測定することによって、移植物内のアポトーシスした細胞の数を(例えばPCRによって)測定することによって、及び移植された脂肪細胞の血管形成を(例えば超音波によって)評価することによって、行われることができる。
【0108】
本発明の組成物は、所望されるならば、有効成分を含有する1つ又は複数の単位投薬形態物を含有し得るパック又はディスペンサーデバイス(例えば、FDA承認キットなど)で提供され得る。パックは、例えば、金属ホイル又はプラスチックホイルを含むことができる(例えば、ブリスターパックなど)。パック又はディスペンサーデバイスには、投与のための説明書が付随し得る。パック又はディスペンサーデバイスはまた、医薬品の製造、使用又は販売を規制する政府当局によって定められた形式で、通知が添付されていることがあり、その通知は、ヒト又は動物への投与用の組成物の形態の当局による承認を反映する。そのような通知は、例えば、処方薬物について米国食品医薬品局によって承認されたラベル書きであり得るか、又は、承認された製品添付文書であり得る。医薬的に許容されるキャリア中に配合された本発明の調製物を含む組成物もまた、上記にさらに詳述されるように、調製され、適切な容器に入れられ、示される状態の処置についてラベル書きされることができる。
【0109】
本発明の組成物はインビボで利用されるので、組成物は好ましくは高純度であり、かつ、潜在的に有害な混入物を実質的に含まず、例えば、少なくともNational Food(NF)規格であり、一般には少なくとも分析規格であり、好ましくは少なくとも医薬品規格である。所与の化合物が使用前に合成されなければならないという点では、そのような合成又はその後の精製は好ましくは、合成又は精製手順の間に使用され得る何らかの潜在的に混入し得る毒性の薬剤を実質的に含まない生成物をもたらさなければならない。
【0110】
脂肪細胞の生存を増大させるために、さらなる因子を本発明の組成物(すなわち、上記のエリスロポエチン)に配合することができる。これらには、下記のものが含まれるが、それらに限定されない:細胞外マトリックス成分(例えば、ビトロネクチン、ラミニン、コラーゲン、エラスチン)、増殖因子(例えば、FGF1、FGF2、IGF1、IGF2、PDGF、EGF、KGF、HGF、VEGF、GM−CSF、CSF、G−CSF、TGFα、TGFβ、NGF及びECGF)、低酸素誘導因子(例えば、HIF−1α及びHIF−1βならびにHIF−2)、ホルモン(例えば、インスリン、増殖ホルモン(GH)、CRH、レプチン、プロラクチン及びTSH)、血管形成因子(例えば、アンギオゲニン及びアンギオポイエチン)、凝固及び抗凝固因子[例えば、第I因子、第XIII因子、組織因子、カルシウム、vWF、プロテインC、プロテインS、プロテインZ、フィブロネクチン、アンチトロンビン、ヘパリン、プラスミノーゲン、低分子量ヘパリン(Clixan)、高分子量キニノーゲン(HMWK)、プレカリクレイン、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤−1(PAI1)、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤−2(PAI2)、ウロキナーゼ、トロンボモジュリン、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、α2−アンチプラスミン及びプロテインZ関連プロテアーゼ阻害剤(ZPI)]、サイトカイン(IL−1α、IL−1β、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−13、ならびに、INF−α、INF−β及びINF−γ)、ケモカイン(例えば、MCP−1又はCCL2)、酵素(例えば、エンドグリコシダーゼ、エキソグリコシダーゼ、エンドヌクレアーゼ、エキソヌクレアーゼ、ペプチダーゼ、リパーゼ、オキシダーゼ、デカルボキシラーゼ、ヒドラーゼ、コンドロイチナーゼ、コンドロイチナーゼABC、コンドロイチナーゼAC、ヒアルロニダーゼ、ケラタナーゼ、へパラナーゼ、へパラナーゼスプライス変化体、コラゲナーゼ、トリプシン、カタラーゼ)、神経伝達物質(例えば、アセチルコリン及びモノアミン)、神経ペプチド(例えば、サブスタンスP)、ビタミン(例えば、D−ビオチン、塩化コリン、葉酸、myo−イノシトール、ナイアシンアミド、D−パントテン酸、カルシウム塩、ピリドキサール.HCl、ピリドキシン.HCl、リボフラビン、チアミン.HCl、ビタミンB12、ビタミンE、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンB1〜6、ビタミンK、ビタミンA及びビタミンPP)、炭水化物(例えば、単糖/二糖/多糖、これらには、グルコース、マンノース、マルトース及びフルクトースが含まれる)、イオン、キレート化剤(例えば、Feキレート化剤、Caキレート化剤)、抗酸化剤(例えば、ビタミンE、ケルセチン、超酸化物スカベンジャー、スーパーオキシドジスムターゼ、Hスカベンジャー、フリーラジカルスカベンジャー、Feスカベンジャー)、脂肪酸(例えば、トリグリセリド、リン脂質、コレステロール、遊離脂肪酸及び非遊離脂肪酸、脂肪アルコール、リノール酸、オレイン酸及びリポ酸)、抗生物質(例えば、ペニシリン、セファロスポリン及びテトラサイクリン)、鎮痛剤、麻酔剤、抗菌剤、抗酵母剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、プロバイオティック剤、抗原虫剤、かゆみ止め剤、抗皮膚炎剤、制吐剤、抗炎症剤、抗高角質溶解剤、制汗剤、抗乾癬剤、抗脂漏剤、抗ヒスタミン剤、アミノ酸(例えば、必須アミノ酸及び非必須アミノ酸(A〜Z)、特に、グルタミン及びアルギニン)、塩(例えば、ピルビン酸塩及び硫酸塩)、硫酸塩(例えば、硫酸カルシウム)、ステロイド(例えば、アンドロゲン、エストロゲン、プロゲスタゲン、グルココルチコイド及びミネラルコルチコイド)、カテコールアミン(例えば、エピネフリン及びノルエピネフリン)、ヌクレオシド及びヌクレオチド(例えば、プリン及びピリミジン)、プロスタグランジン(例えば、プロスタグランジンE2)、ロイコトリエン、エリスロポエチン(例えば、トロンボポイエチン)、プロテオグリカン(例えば、ヘパラン硫酸、ケラタン硫酸)、ヒドロキシアパタイト[例えば、ヒドロキシアパタイト(Ca10(PO(OH))]、ヘパトグロビン(Hp1−1、Hp2−2及びHp1−2)、スーパーオキシドジスムターゼ(例えば、SOD1/2/3)、一酸化窒素、一酸化窒素供与体(例えば、ニトロプルシド(Sigma Aldrich、St.Louis、MO、アメリカ合衆国))、グルタチオンペルオキシダーゼ、水和化合物(例えば、バソプレシン)、細胞(例えば、血小板)、細胞培地(例えば、M199、DMEM/F12、RPMI、Iscovs)、血清(例えば、ヒト血清、ウシ胎児血清)、緩衝剤(例えば、HEPES、重炭酸ナトリウム)、界面活性剤(例えば、Tween)、消毒剤、薬草、果実抽出物、野菜抽出物(例えば、キャベツ、キュウリ)、花抽出物、植物抽出物、フラビノイド(例えば、ザクロ果汁)、香辛料、葉(例えば、緑茶、カモミール)、ポリフェノール(例えば、赤ワイン)、ハチミツ、レクチン、マイクロ粒子、ナノ粒子(リポソーム)、ミセル、炭酸カルシウム(CaCO、例えば、沈降炭酸カルシウム、粉砕/微粉化炭酸カルシウム、albacar、PCC、GCC)、方解石、石灰石、破砕大理石、粉砕大理石、石灰、チョーク(白亜、シャンパンチョーク、フレンチチョーク)、ならびに、補因子(例えば、BH4(テトラヒドロビオブテリン))。
【0111】
本発明の組成物はまた、水素、アルキル基、アリール基、ハロ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アシル基、カルボキシル基、カルボアミド基、スルホンアミド基、アミノアシル基、アミド基、アミン基、ニトロ基、有機セレン化合物、炭化水素及び環式炭化水素を含有する成分、物質、要素及び材料を含有することができる。
【0112】
本発明の組成物は、例えば、ベンゾールペルオキシド、血管収縮剤、血管拡張剤、サリチル酸、レチノイン酸、アゼライン酸、乳酸、グリコール酸、ピルビン酸、タンニン、ベンジリデンカンファー及びその誘導体、αヒドロキシイス、界面活性剤などの物質と組み合わせることができる。
【0113】
本発明のいくつかの実施形態の組成物は、有効成分(例えば、エリスロポエチン)の安定性(例えば、プロテアーゼ活性に対する安定性)及び/又は溶解性(例えば、生物学的流体(例えば、血液、消化液)における溶解性)を保ち、一方で、それらの生物学的活性を保ち、かつ、その半減期を延ばすポリエチレングリコール(例えば、PEG、SE−PEG)にバイオコンジュゲート化することができる。
【0114】
本発明の組成物は、脂肪細胞移植のための他の現在実施されている治療法、例えば、限定されないが、増殖因子での対象の処置、骨組みへの脂肪細胞の移植、又はポリエステルビーズへの脂肪細胞の移植などとの組合せで使用され得ることが理解されるだろう。
【0115】
上述の通り、本発明の脂肪細胞は、自己源又は非自己源(例えば、同種又は異種)から由来することができる。非自己由来の細胞は、身体に投与されたときに免疫反応を誘導しやすいので、非自己由来の細胞の拒絶の可能性を低減させるためにいくつかのアプローチが開発されてきた。これらは、受容体の免疫系の抑制、又は移植前の半透過性の免疫隔離膜中に非自己由来の細胞又は組織をカプセル化することを含む。
【0116】
カプセル化技術は、小さな球体を使用するマイクロカプセル化、及び大きな平坦シート及び中空糸膜を使用するマクロカプセル化として一般的に分類される(Uludag,H.ら.Technology of mammalian cell encapsulation.Adv Drug Deliv Rev.2000;42:29−64)。
【0117】
マイクロカプセルの調製方法は、当業界では公知であり、例えば、以下の論文に開示されるものを含む:Lu MZ,ら.,Cell encapsulation with alginate and alpha−phenoxycinnamylidene−acetylated poly(allylamine).Biotechnol Bioeng.2000,70:479−83;Chang TM及びPrakash S.Procedures for microencapsulation of enzymes,cells and genetically engineered microorganisms.Mol Biotechnol.2001,17:249−60;及びLu MZ,ら.,A novel cell encapsulation method using photosensitive poly(allylamine alpha−cyanocinnamylideneacetate).J Microencapsul.2000,17:245−51。
【0118】
例えば、マイクロカプセルは、変性コラーゲンを、2−ヒドロキシエチルメチルアクリレート(HEMA)、メタクリル酸(MAA)及びメチルメタクリレート(MMA)のターポリマー殻と複合体化して、厚さ2〜5μmのカプセルを生じることによって調製される。かかるマイクロカプセルは、負電荷に帯電した滑らかな表面を付与するために及び血漿タンパク質吸収を最小化するために、追加の2〜5μm厚さのターポリマー殻でさらにカプセル化されることができる(Chia,S.M.ら.Multi−layered microcapsules for cell encapsulation Biomaterials.2002 23:849−56)。
【0119】
他のマイクロカプセルは、アルギン酸塩、海性多糖類又はその誘導体に基づくものである(Sambanis,A.Encapsulated islets in diabetes treatment.Diabetes Thechnol.Ther.2003,5:665−8)。例えば、マイクロカプセルは、高分子陰イオンであるアルギン酸ナトリウム及び硫酸セルロースナトリウムと、高分子陽イオンであるポリ(メチレン−コ−グアニジン)ヒドロクロライドを、塩化カルシウムの存在下で高分子電解質複合体化させることによって調製されることができる。
【0120】
小さなカプセルを使用すると細胞カプセル化が改善されることは理解されるだろう。従って、カプセル化された細胞の品質の制御、機械的安定性、拡散特性、及び生体外活性は、カプセル寸法が1mmから400μmへと低下されるときに改善された(Canaple L.ら.,Improving cell encapsulation through size control.J 10 Biomater Sci Polym Ed.2002;13:783−96)。さらに、7nmもの小さい良好に制御された多孔寸法を有し、調製された表面化学特性及び正確な微小構造を有するナノ多孔バイオカプセルは、細胞のための微小環境を免疫隔離することに成功したことが見出された(Williams D.Small is beautiful:microparticle and nanoparticle technology in medical devices.Med Device Technol.1999,10:6−9;Desai,T.A.Microfabrication technology for pancreatic cell encapsulation.Expert Opin Biol Ther.2002,2:633−46)。
【0121】
上述のように、非自己由来の脂肪細胞の移植を容易にするために、本発明は、脂肪細胞の移植の前に、移植と同時に、又は移植の後に、免疫抑制療法で対象を状態調節することをさらに含むことが有利である。
【0122】
特定の実施形態によれば、本発明の方法は、エリスロポエチンで処理されていない対象と比較して、低減された免疫抑制療法を必要とする。
【0123】
免疫療法の好適な種類の例は、免疫抑制剤及び/又は免疫抑制照射の投与を含む。
【0124】
移植のための好適な免疫抑制療法を選択して投与するための豊富なガイダンスが、当業界の文献に与えられている(例えば、以下の文献を参照されたい:Kirkpatrick CH.及びRowlands DT Jr.,1992.JAMA.268, 2952;Higgins RM.ら.,1996.Lancet 348,1208;Suthanthiran M.及びStrom TB.,1996.New Engl.J.Med.331,365;Midthun DE.ら.,1997.Mayo Clin Proc.72,175;Morrison VA.ら.,1994.Am 30 J Med.97,14;Hanto DW.,1995.Annu Rev Med.46,381;Senderowicz AM.ら.,26 1997.Ann Intern Med.126,882;Vincenti F.ら.,1998.New Engl.J.Med.338,161;Dantal J.ら.1998.Lancet 351,623)。
【0125】
好ましくは、免疫抑制療法は、少なくとも一種の免疫抑制剤を対象に投与することからなる。
【0126】
免疫抑制剤の例は以下のものを含むが、これらに限定されない:メトトレキセート、シクロホスファミド、シクロスポリン、シクロスポリン A、クロロキン、水酸化クロロキン、スルファサラジン(スルファサラゾピリン)、金塩、D−ペニシラミン、レフルノミド、アザチオプリン、アナキンラ、インフリキシマブ(REMICADE)、エタネルセプト、TNFαブロッカー、炎症性サイトカインを標的とする生物学的薬剤、及び非ステロイド系抗炎症薬剤(NSAID)。NSAIDの例は、以下のものを含むが、これらに限定されない:アセチルサリチル酸、塩化マグネシウムサリチル酸塩、ディフルニサル、サリチル酸マグネシウム、サルサレート、サリチル酸ナトリウム、ジクロフェナク、エトドラク、フェノプロフェン、フルビプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ケトロラク、メクロフェナメート、ナプロキセン、ナプメトン、フェニルブタゾン、ピロキシカム、スリンダク、トルメチン、アセタミノフェン、イブプロフェン、Cox−2阻害剤、及びトラマドール。これらの薬剤は、単独で又は組み合わせて投与されることができる。
【0127】
別の実施形態によれば、本発明の方法は、エリスロポエチンで処理されていない対象と比較して、低減された抗炎症治療(例えば、ステロイド、非ステロイド系抗炎症薬剤、又は免疫選択性抗炎症性誘導体(ImSAID)を必要とする。
【0128】
本明細書中で使用される用語「約」は、±10%を示す。
【0129】
用語「含む/備える(comprises、comprising、includes、including)」、「有する(having)」、及びそれらの同根語は、「含むが、それらに限定されない(including but not limited to)」ことを意味する。
【0130】
用語「からなる(consisting of)」は、「含むが、それらに限定されない(including and limited to)」を意味する。
【0131】
用語「から本質的になる」は、さらなる成分、工程及び/又は部品が、特許請求される組成物、方法又は構造の基本的かつ新規な特徴を実質的に変化させない場合にだけ、組成物、方法又は構造がさらなる成分、工程及び/又は部品を含み得ることを意味する。
【0132】
本明細書中で使用される場合、単数形態(「a」、「an」及び「the」)は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、複数の参照物を包含する。例えば、用語「化合物(a compound)」又は用語「少なくとも1つの化合物」は、その混合物を含めて、複数の化合物を包含し得る。
【0133】
本開示を通して、本発明の様々な態様が範囲形式で提示され得る。範囲形式での記載は単に便宜上及び簡潔化のためであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈すべきでないことを理解しなければならない。従って、範囲の記載は、具体的に開示された可能なすべての部分範囲、ならびに、その範囲に含まれる個々の数値を有すると見なさなければならない。例えば、1〜6などの範囲の記載は、具体的に開示された部分範囲(例えば、1〜3、1〜4、1〜5、2〜4、2〜6、3〜6など)、ならびに、その範囲に含まれる個々の数値(例えば、1、2、3、4、5及び6)を有すると見なさなければならない。このことは、範囲の広さにかかわらず、適用される。
【0134】
数値範囲が本明細書中で示される場合には常に、示された範囲に含まれる任意の言及された数字(分数又は整数)を含むことが意味される。第1の示された数字及び第2の示された数字「の範囲である/の間の範囲」という表現、及び、第1の示された数字「から」第2の示された数「まで及ぶ/までの範囲」という表現は、交換可能に使用され、第1の示された数字と、第2の示された数字と、その間のすべての分数及び整数とを含むことが意味される。
【0135】
本明細書中で使用される用語「方法(method)」は、所与の課題を達成するための様式、手段、技術及び手順を示し、これには、化学、薬理学、生物学、生化学及び医学の技術分野の実施者に知られているそのような様式、手段、技術及び手順、又は、知られている様式、手段、技術及び手順から、化学、薬理学、生物学、生化学及び医学の技術分野の実施者によって容易に開発されるそのような様式、手段、技術及び手順が含まれるが、それらに限定されない。
【0136】
本明細書で使用される場合、用語「治療する/処置する」には、状態の進行を取り消すこと、実質的に阻害すること、遅くすること、又は、逆向きにすること、状態の臨床的症状又は審美的症状を実質的に改善すること、あるいは、状態の臨床的症状又は審美的症状の出現を実質的に防止することが含まれる。
【0137】
明確にするため別個の実施形態の文脈で説明されている本発明の特定の特徴は単一の実施形態に組み合わせて提供することもできることは分かるであろう。逆に、簡潔にするため単一の実施形態の文脈で説明されている本発明の各種の特徴は、別個に又は適切なサブコンビネーションで、又は本発明の他の実施形態において好適に提供することもできる。種々の実施形態の文脈において記載される特定の特徴は、その実施形態がそれらの要素なしに動作不能である場合を除いては、それらの実施形態の不可欠な特徴であると見なされるべきではない。
【0138】
本明細書の上記に詳述され、かつ添付の特許請求の範囲において特許請求される本発明の種々の実施形態及び側面は、以下の実施例に実験的裏付けを見出す。
【実施例】
【0139】
上記説明とともに、本発明を非限定的な様式で例示する以下の実施例を参照する。
【0140】
本願で使用される用語と、本発明で利用される実験方法には、分子生化学、微生物学及び組み換えDNAの技法が広く含まれている。これらの技術は文献に詳細に説明されている。例えば以下の諸文献を参照されたい:「Molecular Cloning:A laboratory Manual」Sambrookら、(1989);「Current Protocols in Molecular Biology」I〜III巻、Ausubel,R.M.編(1994);Ausubelら、「Current Protocols in Molecular Biology」、John Wiley and Sons、米国メリーランド州バルチモア(1989);Perbal「A Practical Guide to Molecular Cloning」、John Wiley & Sons、米国ニューヨーク(1988);Watsonら、「Recombinant DNA」Scientific American Books、米国ニューヨーク;Birrenら編「Genome Analysis:A Laboratory Manual Series」1〜4巻、Cold Spring Harbor Laboratory Press、米国ニューヨーク(1998);米国特許の第4666828号、同第4683202号、同第4801531号、同第5192659号及び同第5272057号に記載される方法;「Cell Biology:A Laboratory Handbook」I〜III巻、Cellis,J.E.編(1994);「Current Protocols in Immunology」I〜III巻、Coligan,J.E.編(1994);Stitesら編「Basic and Clinical Immunology」(第8版)、Appleton & Lange、米国コネティカット州ノーウォーク(1994);MishellとShiigi編「Selected Methods in Cellular Immunology」、W.H. Freeman and Co.、米国ニューヨーク(1980);利用可能な免疫アッセイ法は、特許と科学文献に広範囲にわたって記載されており、例えば:米国特許の第3791932号、同第3839153号、同第3850752号、同第3850578号、同第3853987号、同第3867517号、同第3879262号、同第3901654号、同第3935074号、同第3984533号、同第3996345号、同第4034074号、同第4098876号、同第4879219号、同第5011771号及び同第5281521号;「Oligonucleotide Synthesis」Gait,M.J.編(1984);「Nucleic Acid Hybridization」Hames,B.D.及びHiggins S.J.編(1985);「Transcription and Translation」Hames,B.D.及びHiggins S.J.編(1984);「Animal Cell Culture」Freshney,R.I.編(1986);「Immobilized Cells and Enzymes」IRL Press(1986);「A Practical Guide to Molecular Cloning」Perbal,B.(1984)及び「Methods in Enzymology」1〜317巻、Academic Press;「PCR Protocols:A Guide To Methods And Applications」、Academic Press、米国カリフォルニア州サンディエゴ(1990);Marshakら、「Strategies for Protein Purification and Characterization−A Laboratory Course Manual」CSHL Press(1996);これらの文献の全ては、あたかも本願に完全に記載されているように援用するものである。その他の一般的な文献は、本明細書を通じて提供される。それらの文献に記載の方法は当業技術界で周知であると考えられ、読者の便宜のために提供される。それらの文献に含まれるすべての情報は本願に援用するものである。
【0141】
実施例1
脂肪移植物の重量及び体積に対する低用量EPO、高用量EPO及びVEGF処置の間の比較
材料及び実験手順
ヒト脂肪細胞の単離及び調製
40才の女性の太腿から、全身麻痺下での吸引補助脂肪除去術によって脂肪が採取された。脂肪は、14ゲージの太いカニューレを使用して局所麻痺下で吸引され、以前に発行されたプロトコール[Ullmannら.(2005)Dermatol Surg 31:1304−7;Kuritaら.(2008)Plast Reconstr Surg 121:1033−1041]に従って、その採取から2時間以内にヌードマウス中に移植するために滅菌条件下で処理された。
【0142】
研究設計
ここでは、二つの異なる動物研究が行われた。
【0143】
第一の研究は、30匹の7週齢のメスのCD−1ヌードマウス(Harlan,エルサレム、イスラエル)を含んでいた。これらのマウスは、人工的な12時間明/暗サイクル、一定の温度範囲(24±2℃)及び相対湿度(55±10%)で室内のケージ中で飼育された。マウスは、研究前の1週間、順化され、標準的な研究室食及び水を自由に供給された。30匹のマウスは、ランダムに三つの等しい群に分けられ、以下のように処置された:群1のマウスは、1mlのヒト脂肪を注入され、滅菌PBSで処置された(対照群)。群2のマウスは、1mlのヒト脂肪を注入され、1000IU/kgのEPOで処置された(低用量EPO群)。群3のマウスは、1mlのヒト脂肪を注入され、5000IU/kgのEPOで処置された(高用量EPO群)。脂肪は、マウスを手で拘束しながら14Gの針を使用して頭皮中に皮下注入された。脂肪移植の直後に、PBS処置脂肪移植物は、100μlのPBSを注入され(対照群)、EPO処置脂肪移植物は、20IU EPO/100μl PBS(低用量EPO群)又は100IU EPO/100μl PBS(高用量EPO群)を18日間にわたって3日目ごとに(計6回の注入)注入された。EPOは、注入アンプル(ARANESP(登録商標)、Amgen AG,Zng、スイス)から購入され、これは150μg/ml(18000IU)のEPOを含んでいた。
【0144】
第二の動物研究は、20匹の7週齢のメスのCD−1ヌードマウスを含んでおり、脂肪が移植後にVEGF(2μg/ml,Sigma Aldrich,MO,米国)で処置された点で第一の研究とは異なっていた。10匹のマウスは、脂肪の注入後、200ng VEGF/100μl PBSを18日間にわたって3日目ごとに注入された。残りの10匹のマウスは、第二の対照群とされ、第1の研究の対照群と同じ方法で処置された。手術後の鎮痛薬及び抗生物質は、二つの実験でマウスに投与されなかった。
【0145】
経過及びデータの収集
両実験の研究期間は、脂肪移植の開始から15週間であった。この期間中、各マウスは、体重を測定され、尾の静脈から血液サンプルが採取されて、赤血球数、白血球数、血小板数が決定され、血漿ヘモグロビン、VEGF及びEPO濃度が測定された。これらの測定は、次の三つの異なる機会に行われた:脂肪注入の日、脂肪注入の18日後、及び研究期間の終わり。VEGF及びEPO濃度は、商業的な酵素結合免疫吸着アッセイ(Quantikine(登録商標)VEGF免疫アッセイキット、及びQuantikine(登録商標)IVD(登録商標)エリスロポエチンキット、R&D Systems,MN,米国)を、製造者の指示に従って使用して脂肪移植物のサンプルのホモジネートにおいて決定された。
【0146】
15週間後、すべてのマウスは、人道的に殺され、脂肪移植物は、それらの頭皮から注意深く切除された(図1C)。各脂肪移植物は、重量を測定され、脂肪移植物の体積は以前に記述されたように液体オーバーフロー法によって測定された[Ayhanら.(2001)Aesthetic Plast Surg 25:338−342]。重量及び体積測定の後、各脂肪移植物は、中央から二つの部分に分けられた。一つの部分は、−80℃で保存され、後でEPO濃度、VEGF含有量、アポトーシスの程度、血管形成因子(bFGF、インスリン様増殖因子1(IGF−1),PDGF−BB,VEGFレセプター2(VEGFR−2)、EPOレセプター(EPOR)及びMMP−2)の発現レベル、生存因子PKB及びリン酸化PKB、及びプロアポトーシス因子(カスパーゼ3及びチトクロームc)の発現レベルの測定に使用された。第二の部分は、4%ホルマリン中に置かれ、マクロファージ浸潤、微小血管密度(MVD)、VEGFR−2及びEPORの局在化の決定のために、及び組織学的試験のために使用された。
【0147】
データの統計学的分析
各処置群からのPBS,VEGF又はEPO処置脂肪移植物からの各研究パラメータについてのデータは、プールされ、結果は、平均±標準偏差(SD)で表わされた。データは、Kolmogorov−Smirnovテストによる標準的な分布を示した。第一の実験からのデータは、ANOVAによって分析され、第二の実験からのデータは、コンピュータ化された統計学的ソフトウェアプログラム(Prism version 5.0,GraphPad Software Inc,CA,米国)を使用してStudentのt検定によって分析された。差は、p0.05の場合、統計学的に有意であるとみなされた。組織学的分析、MVD、及びマトリゲル中の管形成のブラインド評価の試験官間の再現性についてのカッパ値はそれぞれ、0.94,0.89及び0.93であった。
【0148】
結果
両実験における全ての処置群の全てのマウスは、15週間の研究期間を完了した。マウスは、研究の間、健康であるように見え、研究期間の終わりにカヘキシーの証拠はなかった。リン酸塩緩衝液生理食塩水(PBS)処置又は低用量EPO処置脂肪移植物を有するマウスにおいて、赤血球数、白血球数、血小板数、血漿ヘモグロビン及び血漿EPO濃度に有意な変化は見られなかった(以下の表1)。高用量EPO処置脂肪移植物を有するマウスにおいて、赤血球数、白血球数、血小板数、及び血漿EPO濃度は有意に増大したが、血漿ヘモグロビン濃度は増大しなかった(以下の表1)。移植の18日後、血漿VEGF濃度は、EPO処置された脂肪移植物を有するマウスの二つの群で有意に増大した。15週間の研究期間の終わりに、EPO処置された脂肪移植物を有するマウスの二つの群における血漿VEGF濃度は、ベースライン値及びPBS処置された脂肪移植物を有するマウスにおける値とは有意に異なっていなかった。15週間の研究期間の終わりに、PBS及びEPO処置脂肪移植物におけるEPO濃度は、ベースライン値とは異なっていなかった。しかし、脂肪注入の18日後、EPO及びVEGF値の両方は、低用量EPO及び高用量EPO処置群の両方において有意に高かった(以下の表1)。
【0149】

【0150】
さらに、15週間の研究期間の終わりに、良く規定された皮下こぶが各マウスの頭皮において観察された(図1A〜C)。EPO処置脂肪移植物の重量及び体積は、PBS処置脂肪移植物の値より高かった(以下の表2)。第一の実験におけるPBS処置脂肪移植物の重量及び体積は、第二の実験におけるPBS及びVEGF処置脂肪移植物の値とは異ならなかった(以下の表2)。
【0151】

【0152】
実施例2
脂肪移植物の組織学的評価、及び脂肪移植物における炎症応答に対するEPOの影響
材料及び実験手順
ヒト脂肪組織の単離及び精製
実施例1で上述した通りである。
【0153】
研究設計
実施例1で上述した通りである。
【0154】
組織学的分析
ホルマリン保存されたサンプルの組織学的スライドが調製され、次に、標準的な手順を使用してヘマトキシリン及びエオシンで染色された。免疫組織化学は、組織CD31、VEGFR−2及びEPORに対してウサギのモノクローナル抗体を使用して、及びVEGF(R&D Systems,Minneapolis MN,米国)及びCD68(Dako,Glostrup,デンマーク)に対してヤギのポリクローナルIgGを使用して行われた。パラフィン包埋された脂肪移植物の断片は、抗体と共に室温で一晩インキュベートされ、次に、好適な二次抗体と共にインキュベートされた[Liら.(2005)J Cell Biochem 95:559−570]。インキュベーションの完了後、標本は、ヘマトキシリンで対比染色された。マウスのIgGが、負の対照として使用された。スライドは、(a)無傷の及び有核の脂肪細胞の組織化の程度によって証明される一体化の程度;(b)コラーゲン及び弾性フィブリルの量によって証明される繊維症の度合い;(c)嚢胞及び液胞の存在;及び(d)リンパ球及びマクロファージ浸潤の程度によって証明される炎症応答の強度について光学顕微鏡下で検査された。各基準は、0〜5のスケールに等級付けされた。0は、非存在を示し、1は、最小の存在を示し、2は、最小〜中程度の存在を示し、3は、中程度の存在を示し、4は、中程度〜多い存在を示し、5は、多い存在を示す。
【0155】
脂肪細胞移植物におけるマクロファージ浸潤の定量化は、全ての脂肪移植物断片における脂肪移植物当たりの五つの視野におけるCD68陽性細胞の数を計数することによって推定された。脂肪移植物中の微小血管密度(MVD)は、全ての脂肪移植物断片の各断片においてCD31抗体のシグナルが最も強い五つの関心領域において決定された。各領域におけるマクロファージ及び血管の数は、光学顕微鏡下で400倍の倍率で計数された。各脂肪移植物における評価は、脂肪移植物当たり二つの異なる断片における、及び断片当たりの五つの異なる視野における平均を計算することによってなされた。
【0156】
結果
第一の実験におけるPBS処置脂肪移植物における組織学的特徴は、第二の実験におけるものと異ならなかった。一体化の程度は、低用量EPO又はPBS処置脂肪移植物と比べて高用量EPO処置脂肪移植物において高かった。一方、嚢胞形成及び繊維症の程度は、低用量EPO又はPBS処置脂肪移植物と比べて高用量EPO処置脂肪移植物において低かった(図2A〜C)。低用量及び高用量EPO処置脂肪移植物の両方における脂肪移植物におけるCD68陽性細胞湿潤によって証明される炎症応答の重症度は、PBS処置脂肪移植物より低かった(図2D〜F及び2J)。しかし、高用量EPO処置脂肪移植物における炎症応答の重症度は、低用量EPO処置脂肪移植物より有意に低かった(図2A〜C)。VEGF処置脂肪移植物における一体化、嚢胞形成及び繊維症の程度は、PBS処置脂肪移植物と異ならなかった。しかし、VEGF処置脂肪移植物における炎症応答の強度は、PBS処置脂肪移植物において観察されたものより有意に高かった(以下の表3)。
【0157】

【0158】
実施例3
脂肪移植物における微小血管密度に対するEPOの影響
材料及び実験手順
ヒト脂肪組織の単離及び精製
実施例1で上述した通りである。
【0159】
研究設計
実施例1で上述した通りである。
【0160】
微小血管密度(MVD)の評価
パラフィン包埋された脂肪移植物の断片は、CD31(R&D Systems,Minneapolis MN,米国)に対するモノクローナル抗体と共に、以前に記述されたように室温で一晩インキュベートされた[Liら.(2005)J Cell Biochem 95:559−570]。インキュベーションの完了後、標本は、ヘマトキシリンで対比染色された。マウスのIgGが、負の対照として使用された。微小血管密度(MVD)は、CD31抗体シグナルが最も強い五つの関心領域において決定された。各領域における血管の数は、光学顕微鏡下で40倍の倍率で計数された。
【0161】
結果
図2G〜I及び図2Kに示されるように、二つのEPO処置脂肪移植物における微小血管密度(MVD)は、PBS処置脂肪移植物より有意に高く、MVDに対するEPOの影響は、用量依存的であった。PBS処置脂肪移植物において、無血管領域、水腫を有する拡張性血管、及び血管周囲の出血があり、毛細管分岐の顕著な減少があった。EPO処置脂肪移植物において、CD31の増大した発現を有する良く血管化された領域、及び多数の内皮島があった(図2G〜I及び2K)。MVDの程度は、脂肪移植物におけるマクロファージ浸潤の程度と負に相関していた(図2L)。
【0162】
実施例4
脂肪移植物におけるVEGF含有量に対する、及び血管形成因子及びPKBの発現レベルに対するEPOの影響
材料及び実験手順
ヒト脂肪組織の単離及び精製
実施例1で上述した通りである。
【0163】
研究設計
実施例1で上述した通りである。
【0164】
ウェスタンブロッティング
血管形成因子bFGF,IGF−1,PDGF−BB,VEGFR−2,EPOR及びMMP−2、細胞生存因子PKB及びリン酸化PKB、及びプロアポトーシス因子カスバーゼ3及びチトクロームcの発現レベルは、収集された脂肪移植物のホモジネート中でウェスタンブロッティングによって決定された。手短に述べると、脂肪移植物のサンプルのホモジネートは、RIPA緩衝液(R&D Systems,MN,米国)中で溶解された。各溶解物のうち40μgがSDS−PAGEに添加され、ニトロセルロース膜に転写された。膜は次に、bFGF,IGF−1,PDGF−BB,MMP−2,PKB、リン酸化PKB、カスパーゼ3、及びチトクロームc対するモノクローナル抗体(これらは全てSanta Cruz,CA,米国から購入された)と共に、又はVEGFR−2及びEPORに対するモノクローナル抗体(R&D systems)と共にインキュベートされ、次に、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HPP)結合IgG二次抗体と共に二次インキュベートされた。β−アクチンに対する抗体(Santa Cruz)は、タンパク質添加を正規化するために使用された。生じたバンドは、濃度計によって定量された。
【0165】
結果
低用量及び高用量EPO処置脂肪移植物におけるVEGF含有量は、PBS処置脂肪移植物より有意に高かった。高用量EPO処置脂肪移植物におけるVEGF含有量は、低用量EPO処置脂肪移植物により有意に高かった(図3A〜C及び4A)。EPO処置は、bFGF,IGF−1,PDGF−BB,MMP−2 PKB及びリン酸化PKBの発現レベルの用量依存的な増大を導いた(図3J)。さらに、EPOは、組織VEGFR−2及びEPORの両方の免疫組織化学的局在化(図3D〜I)及びウェスタンブロッティング分析(図4B〜C)によって証明されるように、組織VEGFR−2及びEPORの両方の発現を用量依存的な様式で増大させた。VEGF含有量及びVEGFR−2及びEPORの両方の平均発現レベルは、MVDと正の相関を有していた(図4D〜F)。
【0166】
実施例5
脂肪移植物におけるアポトーシスの程度に対するEPOの影響
材料及び実験手順
ヒト脂肪組織の単離及び精製
実施例1で上述した通りである。
【0167】
研究設計
実施例1で上述した通りである。
【0168】
脂肪移植物におけるアポトーシスの程度の決定
全ての移植物におけるアポトーシスの程度は、製造者の指示に従って市販のキット(ApopTag(登録商標)Plus Fluorescein Kit,CHEMICON,CA,米国)を使用して、末端デオキシウリジン三リン酸ニックエンド標識(TUNEL)アッセイによって評価された。重複は、各サンプルについて行われ、蛍光活性化細胞分別(FACS,Becton Dickinson,NJ,米国)によって処理された。データは、Macintosh CELLQuestソフトウェアプログラム(Becton Dickinson)を使用して分析された。
【0169】
結果
PBS処置脂肪移植物におけるアポトーシスの程度は、低用量及び高用量EPO処置脂肪移植物より大きかった(図5A)。高用量EPO処置脂肪移植物におけるアポトーシスの程度は、低用量EPO処置脂肪移植物より有意に低かった(図5A)。さらに、EPOは、カスパーゼ3及びチトクロームcの発現レベルにおいて用量依存的な減少を導いた(図5B)。
【0170】
実施例6
脂肪移植物における微小血管密度(MVD)に対する、及びアポトーシスの程度に対するVEGFの影響
材料及び実験手順
ヒト脂肪組織の単離及び精製
実施例1で上述した通りである。
【0171】
研究設計
実施例1で上述した通りである。
【0172】
MVDの評価
実施例3で上述した通りである。
【0173】
脂肪移植物におけるアポトーシスの程度の決定
実施例5で上述した通りである。
【0174】
結果
第一の実験におけるPBS処置脂肪移植物におけるMVD及びアポトーシスの程度は、第二の実験と同様であった。VEGF処置脂肪移植物におけるMVD及びVEGF含有量は、PBS処置脂肪移植物より高かったが、統計学的に両者の間に差はなかった(図6A〜B)。さらに、VEGF処置脂肪移植物中には、組織化されていない血管形成及び血管周囲の出血があった(データは示さず)。VEGF処置脂肪移植物におけるアポトーシスの程度は、PBS処置脂肪移植物より大きかった(図6C)。PBS処置脂肪移植物とVEGF処置脂肪移植物との間に、カスパーゼ3及びチトクロームcの発現レベルの統計学的な差はなかった(図6D)。
【0175】
実施例7
マトリゲル上での内皮細胞管形成に対するEPOの影響
材料及び実験手順
ヒト脂肪組織の単離及び精製
実施例1で上述した通りである。
【0176】
研究設計
実施例1で上述した通りである。
【0177】
マトリゲル上でのHUVECの生体外管形成
VEGF及びEPOの生体外での血管形成潜在能力は、マトリゲル上で内皮細胞の管を形成するそれらの能力の評価によって測定された。この目的のため、ヒト臍帯血管内皮細胞(HUVEC,LONZA,米国)はまず、内皮基礎媒地2(EBM−2,PromoCell,米国)中でフィブロネクチンで被覆された6ウェルプレートで、コンフルエンスになるまで培養された。次に、細胞は、0,20又は100IU/mlのEPOで48時間処置され、その後、アッセイに使用された(図7A)。第二の実験では(図7B)、HUVECは、0,100IU/mlのEPO又は200ng/mlのVEGFに48時間、EBM−2中で、0.25mg/mlのベバシズマブ(Avastin(登録商標),Genentech,San Francisco,CA,米国)(VEGFの作用に対抗するヒト化されたモノクローナル抗体)あり又はなしでさらされた。48時間後、非処置のHUVEC、VEGF及びEPO処置HUVEC、及びVEGF+ベバシズマブ及びEPO+ベバシズマブ処置HUVECは、0.5%トリプシン/EDTAでやさしく剥離され、EBM−2中に懸濁された。同時に冷凍マトリゲル(Sigma Aldrich,St Louis MO,米国)が解凍され、96ウェルプレートに広げられ(40μl/ウェル)、室温で30分間放置されて固化された。剥離された非処置のHUVEC、VEGF及びEPO処置HUVEC、及びVEGF+ベバシズマブ及びEPO+ベバシズマブ処置HUVEC(5×10細胞/150μlのEBM−2/ウェル)は、マトリゲル上に配置され、37℃で24時間、EBM−2中でインキュベートされた。マトリゲル上への配置後、VEGF及びEPO処置HUVEC、及びVEGF+ベバシズマブ及びEPO+ベバシズマブ処置HUVECは、再び同じ濃度のEPO,VEGF及びベバシズマブでそれぞれ処置された。24時間後、一体化されていない細胞は、洗浄によって除去され、マトリゲル上の管形成は、光学顕微鏡下で10倍の倍率で評価された。管状構造は、管形成の存在及び段階の評価によって0〜5のスケールに半定量的に等級付けされた。0は、良く分離された個々の細胞を示し、1は、細胞が移動しはじめて細胞同士が整列していることを示し、2は、可視的な毛細管の存在及び発芽の非存在を示し、3は、新しい毛細管の可視的な発芽を示し、4は、閉じた多角形の初期形成を示し、5は、複雑な網状構造の発達を示す。各サンプルにおいて四つのランダムな高倍率視野が試験された。各試験官からの結果はプールされ、各群における各サンプルの各特徴について平均値が計算された。
【0178】
HUVEC増殖
プロ血管形成因子が関与する作用機構を通したEPO誘導血管形成を研究するために、本発明者は、様々なプロ血管形成因子阻害剤の存在下でEPO処置HUVECの増殖を測定した。この目的のため、HUVEC(2×10細胞/ウェル)は、EBM−2中でフィブロネクチンで被覆された12ウェルプレートで培養された。培養されたHUVECは、100IU/mlのEPOあり又はなしで48時間処置され、次に、3時間、次のものにさらされた:(a)0.25mg/mlのベバシズマブ、(b)100nMのPD173074(bFGFの阻害剤)(Calbiochem,San Diego,CA)、(c)20μMのチルホスチンAG1296(PDGFの選択的阻害剤)(Sigma)、(d)ベバシズマブとPD173074とチルホスチンの組み合わせ、及び(e)100nMのウォルトマンニン(ホスファチジルイノシトール3−キナーゼ(PI 3−K)の阻害剤(Sigma)。実験の完了後、細胞は、PBSで洗浄され、次に、1μCi/ml培地の[H]−チミジン(NEN,Boston,MA,米国)と共に37℃で5時間インキュベートされた。その後、0.5mlの冷10%トリクロロ酢酸(TCA)が各ウェルに添加され、もう30分間4℃で保持された。H−チミジン標識されたDNAを抽出するため、0.5mlの1N NaOHが各ウェルに添加され、10分間室温で保持され、次に0.5mlの1N HClが添加されて良く混合された。混合溶液のサンプル(0.5ml)が各ウェルから取り出され、DNAへの[H]−チミジン取り込み(cpm/mgタンパク質)の測定のためにシンチレーションバイアルに添加された。重複細胞計数は、三回の実験について平均化された。データは、プールの百分率として表わされた。
【0179】
結果
図7Aに示されるように、EPOは、ヒト臍帯血管内皮細胞(HUVEC)の管形成を用量依存的な様式で増大させた。さらに、VEGFとEPOの両方が、HUVEC管形成を有意に増大させた(図7B)。管形成は、VEGF+ベバシズマブ処置HUVECにおいてかなり減少したが、EPO+ベバシズマブ処置HUVECにおいてはそうでなかった(図7B〜H)。
【0180】
VEGF阻害剤、bFGF阻害剤、及びPDGF阻害剤はそれぞれ、HUVECの増殖を有意に減少させた。一方、三つの阻害剤の組み合わせ、又はウォルトマンニン単独は、HUVEC増殖を中止させた(図7I)。EPOは、いずれかの阻害剤の存在下でHUVEC増殖を正常にしたが、三つの阻害剤の組み合わせ、又はウォルトマンニン単独の存在下ではHUVEC増殖に対して何の影響も与えなかった(図7I)。
【0181】
本発明はその特定の実施形態によって説明してきたが、多くの別法、変更及び変形があることは当業者には明らかであることは明白である。従って、本発明は、本願の請求項の精神と広い範囲の中に入るこのような別法、変更及び変形すべてを包含するものである。
【0182】
本明細書中で言及した刊行物、特許及び特許願はすべて、個々の刊行物、特許又は特許願が各々あたかも具体的にかつ個々に引用提示されているのと同程度に、全体を本明細書に援用するものである。さらに、本願で引用又は確認したことは本発明の先行技術として利用できるという自白とみなすべきではない。見出しが使用される場合、それらは必ずしも限定するものとして解釈されるべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪細胞の生存をその必要のある対象において増大させる方法であって、
(a)脂肪細胞の集団を対象中に移植すること、及び
(b)エリスロポエチンを前記対象に投与して、それにより対象において脂肪細胞の生存を増大させること
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
脂肪細胞の生存をその必要のある対象において増大させる方法であって、
(a)脂肪細胞の集団をエリスロポエチンと接触させること、及び
(b)前記脂肪細胞の集団を対象中に移植して、それにより対象において脂肪細胞の生存を増大させること
を含むことを特徴とする方法。
【請求項3】
前記移植の前に前記脂肪細胞をエリスロポエチンと接触させることをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記対象は、前記脂肪細胞の前記移植前にエリスロポエチンで処置されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記移植の後にエリスロポエチンを前記対象に投与することをさらに含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記投与は、前記移植の後に行われることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記投与は、前記脂肪細胞の集団中への前記エリスロポエチンの直接注入によって行われることを特徴とする請求項1又は5に記載の方法。
【請求項8】
前記エリスロポエチンの用量は、1000000個の脂肪細胞当たり1注入当たり約1〜1000IUであることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記エリスロポエチンの前記投与は、全身経路によって行われることを特徴とする請求項1又は5に記載の方法。
【請求項10】
前記エリスロポエチンの用量は、体重1kg当たり約10〜7500IUであることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記投与は、少なくとも二回行われることを特徴とする請求項1又は5に記載の方法。
【請求項12】
細胞外マトリックス成分、増殖因子、ホルモン、血管形成因子、凝固因子、サイトカイン、ケモカイン、酵素、神経伝達物質、ビタミン、炭水化物、イオン、鉄キレート化剤、脂肪酸、抗生物質、及びアミノ酸からなる群から選択される少なくとも一つの因子を前記対象に投与することをさらに含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項13】
柔組織の欠損を治療するために特定される医薬の製造のためのエリスロポエチンの使用。
【請求項14】
前記柔組織の欠損は、皮膚の状態、皮膚の疾患、創傷、やけど、癌、手術、再建手術、皮膚の陥没、先天的な奇形、及び後天的な疾患からなる群から選択されることを特徴とする請求項13に記載の使用。
【請求項15】
脂肪細胞の生存を増大させるためのエリスロポエチンの使用。
【請求項16】
前記脂肪細胞は、自己由来の細胞を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項17】
前記脂肪細胞は、非自己由来の細胞を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項18】
前記非自己由来の細胞は、同種由来の細胞であることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記非自己由来の細胞は、異種由来の細胞であることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記非自己由来の細胞は、哺乳動物から得られることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記哺乳動物は、前記脂肪細胞の除去前にエリスロポエチンで処置されることを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
脂肪細胞の集団及びエリスロポエチンを含むことを特徴とする医薬組成物。
【請求項23】
細胞外マトリックス成分、増殖因子、ホルモン、血管形成因子、凝固因子、サイトカイン、ケモカイン、酵素、神経伝達物質、ビタミン、炭水化物、イオン、鉄キレート化剤、脂肪酸、抗生物質、及びアミノ酸からなる群から選択される少なくとも一つの因子をさらに含むことを特徴とする請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項24】
前記エリスロポエチンの用量は、1000000個の脂肪細胞当たり1注入当たり約1〜1000IUであることを特徴とする請求項22に記載の医薬組成物。

【図2J−2L】
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【図7I】
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【図1A−1C】
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【図2A−2I】
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【図3A−3J】
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【図4A−4F】
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【図5A−5B】
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【図6A−6D】
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【図7A−7H】
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【公表番号】特表2013−520271(P2013−520271A)
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−554466(P2012−554466)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【国際出願番号】PCT/IL2011/000181
【国際公開番号】WO2011/104707
【国際公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(512219884)セバナ メディカル リミテッド (1)
【Fターム(参考)】