脂肪組織由来成体幹細胞遊走を誘導する方法
本発明は、脂肪組織由来成体幹細胞の細胞遊走能力に関し、より一層詳しくは脂肪組織由来成体幹細胞及びこれの特定分泌物が、特に、特定ケモカインまたは成長因子で前処理された脂肪組織由来成体幹細胞がより効果的に体内疾患部位に遊走していく、脂肪幹細胞の新規用途に関する。本発明に係る脂肪由来成体幹細胞または特定ケモカインまたは成長因子で前処理された脂肪組織由来成体幹細胞含有組成物は、静脈投与等の簡単な方法によって、幹細胞の疾患部位へのターゲッティングを誘導できるため、細胞治療剤としての活用に有用である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂肪組織由来成体幹細胞の細胞遊走(cell migration)誘導能力に関し、より詳しくはケモカインまたは成長因子の受容体の発現している疾患部位への遊走能力を有している脂肪組織由来成体幹細胞及びこれの特定分泌物の新規用途、及びこのようなケモカインまたは成長因子の受容体の機能をより効率的に高めることができる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
幹細胞(stem cell)とは、自己複製能力を有すると共に、二つ以上の細胞に分化する能力を有する細胞をいい、万能幹細胞(totipotent stem cell)、分化万能性幹細胞(pluripotent stem cell)、多能性幹細胞(multipotent stem cell)に分類できる。
【0003】
万能幹細胞(totipotent stem cell)は、一つの完全な個体に発生していくことができる万能性を有する細胞で、卵子と精子の受精以後8細胞期までの細胞がこのような性質を有し、この細胞を分離して子宮に移植すると一つの完全な個体に発生していくことができる。分化万能性幹細胞(pluripotent stem cell)は、外胚葉、中胚葉、内胚葉層由来の多様な細胞と組織から発生できる細胞であり、受精4〜5日後現れる胚盤胞(blastocyst)の内側に位置した内部細胞塊(inner cell mass)から由来し、これを胚芽幹細胞といい、多様な他の組織細胞に分化するが新しい生命体を形成することはできない。多能性幹細胞(multipotent stem cell)は、この細胞が含まれている組織及び器官に特異的な細胞だけに分化できる幹細胞で、胎児期、新生児期及び成体期の各組織及び臓器の成長と発達のみならず成体組織の恒常性維持と組織損傷時再生を誘導する機能に関与しており、組織特異的多能性細胞を総称して成体幹細胞という。
【0004】
成体幹細胞は、人体の各臓器に既に存在する細胞を採取、幹細胞を発生させたもので、特定組織だけに分化する特徴がある。しかし、最近では成体幹細胞を利用して、肝細胞等各種の多様な組織に分化させる実験が成功しており注目される。
【0005】
特に、病気や事故による機能障害や不調和に陥った生体組織及び臓器の再生及び機能回復のために細胞を積極的に活用して実施する治療法である再生医療において、患者本人から幹細胞、血液由来単核細胞或いは骨髄由来単核細胞を収集する工程、試験管培養で細胞増殖及び/または分化を誘導する工程、及び選択された未分化(幹細胞及び/または前駆細胞)及び/または分化細胞を着床によって患者自身の体に導入する工程を含む方法が多く利用されている。このように、既存の古典的な薬品処置や手術的方法を介した病気治療が、損傷した細胞組織又は臓器を健康体に変える細胞/組織補充治療法(cell/tissue replacement therapy)に代替されると予測されるため、幹細胞の活用度はより一層高まることになる。
【0006】
従って、現状は幹細胞の多様な機能が研究されており、特に、幹細胞の効率的な分離方法、未分化状態への維持及び増殖方法及び所望の組織細胞への分化方法等に応じた多くの研究が行われている。ケモカイン処理による骨髄由来幹細胞の細胞遊走に対する報告は多数存在しているが(Adriana Lopez Ponte et al., Stem Cells, 25:1737-1745, 2007; Marek Honczarenko et al., Stem Cells, 24:1031-1041, 2006; Sordi V et al., Blood, 106:419-427, 2005; Fiedler J et al., J Cell Biochem, 87:305-312, 2002; Forte G et al., Stem Cells, 24:23-33, 2006; Wright DE et al., Blood, 87:4100-4108, 1996; Son BR et al., Stem Cells, 24:1254-1264, 2006)、脂肪幹細胞の細胞遊走性に対する報告は一切ないのが実情である。
【0007】
そこで、本発明者等は、脂肪中間葉幹細胞自らの細胞遊走能力を発見し、さらには多様なケモカイン及び成長因子を前処理(priming)した場合、特定ケモカイン及び成長因子による幹細胞遊走が顕著に誘導されることを発見し、脂肪中間葉幹細胞のケモカインまたは成長因子受容体発現能力を高める方法を確認して本発明を完成した。
【発明の要約】
【0008】
本発明の第一の目的は、脂肪組織由来成体幹細胞及びこれの分泌物を有効性分として含有する脂肪幹細胞遊走誘導用組成物を提供することである。
【0009】
本発明の第二の目的は、脂肪組織由来成体幹細胞の疾患部位への遊走方法を提供することである。
【0010】
本発明は、前記脂肪由来成体幹細胞及びこれの分泌物がケモカインまたは成長因子受容体を発現する機能及び用途に関するもので、前記目的を達成するために、脂肪由来成体幹細胞及び/またはこれの分泌物を有効性分として含有する脂肪幹細胞遊走誘導用組成物を提供する。
【0011】
前記脂肪由来成体幹細胞分泌物は、例えば、ランテス(Rantes)、MCP−1(Monocyte chemoattractant protein-1)、MIP−3β(Monocyte inflammatory protein-3β)、SDF−1α(Stromal cell-derived factor-1α)、BCA−1(B cell attracting chemokine-1)、CXCL16(Chemokine C-X-C motif ligand 16)、EGF(Endothelial growth factor)、b−FGF(basic Fibroblast Growth Factor)、HGF(Hepatocyte growth factor)、TGF−β1(Transforming growth factor beta 1)、IGF−1(Insulin-like growth factor 1)、PDGF−AB(Platelet Derived Growth Factor AB)、TNF−α(Tumor necrosis factor-α)アディポネクチン、レプチン、またはプロコラーゲン(Procollagen)等があり、特に好ましくはアディポネクチン及び/またはレプチンを含有する。前記脂肪由来成体幹細胞及び/またはこれの分泌物は、ヒト脂肪組織由来成体幹細胞を、特定成分を含有する培地で培養した後、培地を取り除いた後、細胞残渣(debris)を取り除いて残った培養液(broth)の「ヒト脂肪組織由来成体幹細胞培養物」の形態で用いることができる。
【0012】
また、前記組成物は、FBSをさらに含有できるが、特に約30%FBSを使うことが好ましい。
【0013】
前記脂肪由来成体幹細胞及びこれの分泌物は、ランテス(Rantes)、MCP−1(Monocyte chemoattractant protein-1)、MIP−3β(Monocyte inflammatory protein-3β)、SDF−1α(Stromal cell-derived factor-1α)、BCA−1(B cell attracting chemokine-1)、CXCL16(Chemokine C-X-C motif ligand 16)、EGF(Endothelial growth factor)、B−FGF(basic Fibroblast Growth Factor)、HGF(Hepatocyte growth factor)、TGF−β1(Transforming growth factor beta 1)、IGF−1(Insulin-like growth factor 1)、PDGF−AB(Platelet Derived Growth Factor AB)及びTNF−α(Tumor necrosis factor-α)からなる群から選択される1種以上のケモカインまたは成長因子受容体を発現することによって、このようなケモカインまたは成長因子に反応して遊走する。
【0014】
この時、前記脂肪由来成体幹細胞は、好ましくは哺乳類由来、さらに好ましくはヒト由来でもよく、例えばヒト脂肪組織由来中間葉幹細胞(Human adipose tissue-derived mesenchymal stem cell、AdMSCs)であってもよい。
【0015】
特に、前記脂肪組織由来成体幹細胞は、ケモカインまたは成長因子を含有するカクテル(cocktail)で前処理されたものを使うことが好ましい。
【0016】
前記カクテルは、ランテス(Rantes)、MCP−1(Monocyte chemoattractant protein-1)、MIP−3β(Monocyte inflammatory protein-3β)、SDF−1α(Stromal cell-derived factor-1α)、BCA−1(B cell attracting chemokine-1)、CXCL16(Chemokine C-X-C motif ligand 16)、EGF(Endothelial growth factor)、b−FGF(basic Fibroblast Growth Factor)、HGF(Hepatocyte growth factor)、TGF−β1(Transforming growth factor beta 1)、IGF−1(Insulin-like growth factor 1)、PDGF−AB(Platelet Derived Growth Factor AB)及びTNF−α(Tumor necrosis factor-α)からなる群から選択される1種以上の因子を含有できるが、特にランテス(Rantes)、SDF−1α(Stromal cell-derived factor-1α)、HGF(Hepatocyte growth factor)、TNF−α(Tumor necrosis factor-α)、PDGF−AB(Platelet Derived Growth Factor AB)及びTGF−β1(Transforming growth factor beta 1)からなる群から選択される1種以上の因子を含有することがさらに好ましい。
【0017】
前記ヒト由来成体幹細胞は、1x107〜1x1010の細胞数で含まれることが好ましく、約1x108〜1x109の細胞数で含まれることがさらに好ましい。
【0018】
また、本発明は前記目的を達成するために、
(a)脂肪組織由来成体幹細胞にケモカインまたは成長因子を含有するカクテルで前処理する工程、
(b)前記前処理された脂肪組織由来成体幹細胞及びこれの分泌物を含有する組成物を疾患部位と直接接触しない生体内の他の部位に投与する工程を含む、脂肪組織由来成体幹細胞遊走誘導方法を提供する。この時、特に静脈で投与することが最も好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】脂肪組織由来多分化能中間葉幹細胞に対して多様なケモカインまたは成長因子で細胞遊走を誘導した結果のグラフである。
【図2】脂肪組織由来多分化能中間葉幹細胞に対して遊走を誘導した後、顕微鏡で撮影した写真である。
【図3】多様なケモカインまたは成長因子で前処理した脂肪組織由来多分化能中間葉幹細胞に対し10%FBSで細胞遊走を誘導した結果のグラフである。
【図4】TNF−αで前処理した脂肪組織由来多分化能中間葉幹細胞に対し多様なケモカインまたは成長因子で細胞遊走を誘導した結果のグラフである。
【図5】多様なケモカインまたは成長因子で前処理した脂肪組織由来多分化能中間葉幹細胞に対し前処理した該当因子で細胞遊走を誘導した結果のグラフ及び顕微鏡写真である。
【図6】脂肪組織由来多分化能中間葉幹細胞及びA549細胞に対する多様なケモカインまたは成長因子受容体発現の有無を確認したFACSの結果を示すグラフである。
【図7】脂肪組織由来多分化能中間葉幹細胞に対する多様なケモカインまたは成長因子受容体のmRNA発現の有無を確認したRT−PCRの結果の写真である。各バンドは各々1:CCR1(380bp)、2:CCR2(474bp)、3:CCR7(461bp)、4:CXCR4(489bp)、5:CXCR5(494bp)、6:CXCR6(517bp)、7:GAPDH(362bp)を示す(7A)。各バンドは、各々M:Marker、1:EGFR(419bp)、2:TGFBR2(498bp)、3:PDGFRA(187bp)、4:PDGFRB(508bp)、5:IGF1R(299bp)、6:C−MET(201bp)、7:TNFRSF1A(218bp)、8:FGFR1(250bp)、9:GAPDH(362bp)を示す(7B)。
【図8】アディポネクチンで前処理した脂肪組織由来多分化能中間葉幹細胞に対し1、10、100ng/mL濃度のアディポネクチンで細胞遊走を誘導した結果のグラフ及び顕微鏡写真である。
【図9】脂肪組織由来多分化能中間葉幹細胞に対するアディポネクチン受容体1、2のmRNA発現の有無を確認したRT−PCRの結果の写真であり、各バンド1:ADIPOR1(337bp)、2:ADIPOR2(538bp)、3:GAPDH(362bp)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
他の方式で定義されない限り、本明細書において使用されたあらゆる技術的・科学的用語は、本発明が属する技術分野に熟練した専門家によって通常理解されるものと同じ意味を有する。通常、本明細書において使用された命名法及び以下で詳述する実験方法は、本技術分野において周知であり、しかも汎用されるものである。
【0021】
幹細胞(stem cell)とは、自己複製能力を有すると共に、二つ以上の細胞に分化する能力を有する細胞をいう。
【0022】
成体幹細胞は、発生過程が進んで胚芽の各臓器が形成されるステージ或いは成体のステージに現れる幹細胞で、組織及び器官に特異的な細胞へとだけ分化できる分化能(multipotent)を有していると知られている。このような組織特異的分化能を有する幹細胞(multipotent stem cell)は、この細胞が含まれている組織及び器官に特異的に分化できる幹細胞であり、胎児期、新生児期及び成体期の各組織及び臓器の成長と発達のみならず成体組織の恒常性維持と組織損傷時の再生を誘導する機能に関与している。
【0023】
本発明においては、成体幹細胞、好ましくは脂肪組織、または毛嚢又は羊膜等の上皮組織から得られる成体幹細胞を利用することができる。最も好ましくは、脂肪組織由来成体幹細胞を使う。中間葉幹細胞(mesenchymal stem cells、MSCs)が使用でき、特に、脂肪組織由来中間葉幹細胞(Adipose tissue-derived mesenchymal stem cell、AdMSCs)であってもよい。
【0024】
前記脂肪または上皮組織は、哺乳類由来であることが好ましく、その中でもヒト由来であることがさらに好ましい。本発明の一実施例においては、ヒト脂肪組織由来中間葉幹細胞(Human adipose tissue-derived mesenchymal stem cell、ADMSCs)を使った。
【0025】
前記「脂肪組織由来成体幹細胞」または「脂肪組織由来中間葉幹細胞」は、脂肪組織から分離した未分化の成体幹細胞であり、本明細書では略して「脂肪由来成体幹細胞」または「脂肪幹細胞」とも称する。これは当業界に公示された通常の方法を介して取得することができる。
【0026】
前記脂肪幹細胞物の獲得に使われる培地としては、当業界で幹細胞培養に適すると知らされている通常の培地が使えるが、例えばDMEM(Dulbecco modified Eagle medium)等を使うことができる。
【0027】
脂肪幹細胞培養用培地には、未分化の表現型の脂肪幹細胞の増殖を促すと共に、分化を抑える添加剤を補充してもよい。また、培地は一般に、等張液中の中性緩衝剤(例えば燐酸塩及び/または高濃度中炭酸塩)及び蛋白質栄養分(例えば、FBSなどの血清、血清代替物、アルブミン、またはグルタミンなどの必須アミノ酸及び非必須アミノ酸)を含有してもよい。さらに、脂質(脂肪酸、コレステロール、血清のHDLまたはLDL抽出物)及びこの種の多くの保存液培地で発見されるその他の成分(例えば、インシュリンまたはトランスフェリン、ヌクレオシドまたはヌクレオチド、ピルビン酸塩、グルコースなどの糖源、任意のイオン化形態または塩であるセレニウム、ヒドロコルチゾンなどのグルココルチコイド、及び/またはβ−メルカプトエタノルなどの還元剤)を含有してもよい。
【0028】
また、培地は、細胞が互いに接着したり、容器壁に接着したり、非常に大きい束の形成を防ぐ目的で、抗凝集剤(anti-clumping agent)、例えばInvitrogenが販売するもの等(Cat # 0010057AE)を含むことが有益である。
【0029】
そのうち、下記の1つ以上の追加添加剤を使うことが有利になる:
・幹細胞因子(SCF、Steel因子)、c−キットを二量化する他のリガンド、または抗体、及び同じ信号伝達経路の他の活性剤
・他のチロシンキナーゼ関連受容体、例えば血小板由来成長因子(Platelet-Derived Growth Factor、PDGF)、マクロファージコロニー刺激因子、Flt−3リガンド及び血管内皮成長因子(Vascular Endothelial Growth Factor、VEGF)の受容体のためのリガンド
・環状AMP濃度を高める因子、例えばホルスコリン
・gp130を誘導する因子、例えばLIFまたはオンコスタチン(Oncostatin)−M
・造血幹細胞成長因子、例えばトロンボポエチン(TPO)
・変形性成長因子、例えばTGFβ1
・他の成長因子、例えば表皮成長因子(EGF)
・ニューロトロフィン、例えばCNTF
・N−アセチル−L−システイン(NAC)
・ヒドロコルチゾンン(Hydrocortisone)
・アスコルビン酸(Ascrobic Acid)。
【0030】
特に、本発明の一具体例で使われる脂肪幹細胞を取得するための培地は、NAC、アスコルビン酸、カルシウム、インシュリン及びヒドロコルチゾンを含有することが好ましく、さらに好ましくは、FBS、NAC、アスコルビン酸、カルシウム、rEGF、インシュリン及びヒドロコルチゾンを含有する。
【0031】
本発明は、前記脂肪由来成体幹細胞分泌物を有効性分として含んでもよい。
このような分泌物は、多様なサイトカイン、アミノ酸、成長因子等を含むが、例えば、TGF、bFGF、IGF−1、KGF、HGF、fibronectin、VEGF、アディポネクチン、レプチンまたはProcollagen等の物質でもあってもよく、これらの受容体も共に含有することができる。特に、このような脂肪由来成体幹細胞分泌物中アディポネクチンまたはレプチンは、脂肪組織由来特異的分泌物として、本発明の細胞遊走誘導機能に大きい寄与をする。
【0032】
前記脂肪組織由来成体幹細胞及び/またはこれの分泌物は、脂肪組織由来成体幹細胞を、特定成分を含有する培地に培養した後、培地を取り除いた後、細胞残渣を取り除いて残った培養液の「脂肪組織由来成体幹細胞培養物」の形態としても用いられ、各成分を抽出して単独または共に使ってもよい。
【0033】
即ち、脂肪幹細胞と分泌物、培地性分を全て含む形態、分泌物及び培地成分だけを含む形態、分泌物だけを分離して単独または脂肪幹細胞と共に使う形態、または脂肪幹細胞だけを投与して体内で分泌物を生成する形態として使うことも全部可能である。
【0034】
一観点において、本発明は、脂肪組織由来成体幹細胞及び/またはこれの分泌物が該当幹細胞自らの遊走を誘導する用途に関する。より一層詳しくは、脂肪組織由来成体幹細胞及びこれの特定分泌物が疾患部位で発現するケモカインまたは成長因子の受容体の機能を発揮するという新しい用途に関する。
【0035】
本発明において「ケモカインまたは成長因子受容体機能を発揮する」とは、脂肪組織由来成体幹細胞が特定ケモカインまたは成長因子と特異的に結合する受容体(receptor)を細胞表面に発現(expressing)したり、またはその分泌物が前記受容体であるか受容体を含む場合を全部称する場合であって、脂肪幹細胞が特定ケモカインまたは成長因子と反応できる能力を有するものを総称して意味する。
【0036】
前記成長因子(growth factor)は、各種細胞分裂や生長及び分化を促進するポリペプチドを総称するもので、細胞の信号伝達系に関与すると知られている。多くはその構造的類似性からファミリーとして分類して、自己分泌、傍分泌、内分泌等の方式で標的細胞に作用する。成長因子受容体は、細胞内領域でチロシンキナーゼの活性を有する場合が多く、リガンド受容体と結合すると受容体自身や細胞内蛋白質のチロシン残基が燐酸化され、細胞増殖や分裂が起きることになる。
【0037】
前記ケモカインは、炎症発生時に生成されて白血球の補充を調節する小さいサイトカイン群を構成するが、このようなケモカインは血中形成された(赤血球を除いた)白血球を含む成分、例えば、好中球、単核球、マクロファージ、好酸球、好塩基球、肥満細胞、及びリンパ球、例えばT細胞及びB細胞の走化性を選択的に誘発しかねない。走化性を刺激すると共に、白血球活性化と関連した反応細胞内ケモカインによって他の変化、例えば、細胞の形の変化、細胞内遊離カルシウムイオン(Ca2+)濃度の一時的増加、顆粒細胞外排出、インテグリン上昇調節、生活性脂質(例えば、ロイコトリエン)の形成及び呼吸器放出も選択的に誘導できる。従って、ケモカインは、早期に炎症反応を引き起こし、感染または炎症部位において炎症媒介体放出を生じさせ、走化性及び溢血を引き起こす。
【0038】
一般に、ケモカイン及びケモカイン受容体の相互作用は、一つのケモカインが多数のケモカイン受容体と結合できて、逆に一つのケモカイン受容体がいくつかのケモカインと相互作用できる点で偶然性を帯びる。このようなケモカイン受容体信号伝達及びリガンドに対する選択性に係る多くの側面は未だに把握されていない。
【0039】
本発明は、脂肪由来成体幹細胞及びこれの特定分泌物がこのようなケモカイン受容体機能を発揮するという新しい発見事実に基づいて、感染または炎症部位、即ち、疾患部位で発現する特定ケモカインに反応して自ら前記疾患部位に遊走する(「ターゲッティング(targeting)遊走」ともいう)機能を利用しようとしたものである。本発明では、ケモカインのみならず特定成長因子に対する反応性も共に考慮した。特に、脂肪由来成体幹細胞は、ランテス(Rantes)、MCP−1(Monocyte chemoattractant protein-1)、MIP−3β(Monocyte inflammatory protein-3β)、SDF−1α(Stromal cell-derived factor-1α)、BCA−1(B cell attracting chemokine-1)、CXCL16(Chemokine C-X-C motif ligand 16)、EGF(Endothelial growth factor)、b−FGF(basic Fibroblast Growth Factor)、HGF(Hepatocyte growth factor)、TGF−β1(Transforming growth factor beta 1)、IGF−1(Insulin-like growth factor 1)、PDGF−AB(Platelet Derived Growth Factor AB)及びTNF−α(Tumor necrosis factor-α)等のケモカインまたは成長因子に対する反応性が優れている。
【0040】
この時、前記ケモカインまたは成長因子とこれらの受容体の反応による細胞遊走性を高めるために、前記組成物はFBSをさらに含有できるが、特に約30%FBSを使うことが好ましい。また、前記組成物がFBSを含有していなくても、組成物を体内に投与した時、体内に存在するFBSを活用できることは言うまでもない。
【0041】
一方、前記脂肪組織由来成体幹細胞及び/またはこれの分泌物の受容体発現率を高めたり、または反応性を高めるために、前記脂肪組織由来成体幹細胞はケモカインまたは成長因子を含有するカクテルで前処理することが好ましい。
【0042】
特に、前記カクテルは、ランテス(Rantes)、MCP−1(Monocyte chemoattractant protein-1)、MIP−3β(Monocyte inflammatory protein-3β)、SDF−1α(Stromal cell-derived factor-1α)、BCA−1(B cell attracting chemokine-1)、CXCL16(Chemokine C-X-C motif ligand 16)、EGF(Endothelial growth factor)、b−FGF(basic Fibroblast Growth Factor)、HGF(Hepatocyte growth factor)、TGF−β1(Transforming growth factor beta 1)、IGF−1(Insulin-like growth factor 1)、PDGF−AB(Platelet Derived Growth Factor AB)及びTNF−α(Tumor necrosis factor-α)からなる群から選択される1種以上の因子を含有できるが、ランテス(Rantes)、SDF−1α(Stromal cell-derived factor-1α)、HGF(Hepatocyte growth factor)、TNF−α(Tumor necrosis factor-α)、PDGF−AB(Platelet Derived Growth Factor AB)及びTGF−β1(Transforming growth factor beta 1)からなる群から選択される1種以上の因子を含有することがさらに好ましい。
【0043】
本明細書の実施例5から分かるように、前記特定ケモカインまたは成長因子を前処理した脂肪組織由来成体幹細胞及び/またはこれの分泌物の場合、該当ケモカインまたは成長因子に対する細胞遊走性の効果が顕著に増加する。
【0044】
従って、他の観点において、本発明は、
(a)脂肪組織由来成体幹細胞にケモカインまたは成長因子を含有するカクテルで前処理する工程、
(b)前記前処理された脂肪組織由来成体幹細胞及びこれの分泌物を含有する組成物を疾患部位と直接接触しない生体内の他の部位に投与する工程
を含む、脂肪組織由来成体幹細胞遊走誘導方法に関する。
【0045】
この時、前記(a)工程においてケモカインまたは成長因子を含有するカクテルでの前処理は、脂肪幹細胞の培養培地に前記ケモカインまたは成長因子を含有させて培養する方法で行い、20〜60時間、好ましくは約20〜50時間行う。本発明の一具体例において約24時間前処理を行った。また、前記カクテルは、脂肪幹細胞培養前、培養中、または培養後に前処理でき、好ましくは培養後に前処理する。
【0046】
前記カクテルは、ランテス(Rantes)、MCP−1(Monocyte chemoattractant protein-1)、MIP−3β(Monocyte inflammatory protein-3β)、SDF−1α(Stromal cell-derived factor-1α)、BCA−1(B cell attracting chemokine-1)、CXCL16(Chemokine C-X-C motif ligand 16)、EGF(Endothelial growth factor)、b−FGF(basic Fibroblast Growth Factor)、HGF(Hepatocyte growth factor)、TGF−β1(Transforming growth factor beta 1)、IGF−1(Insulin-like growth factor 1)、PDGF−AB(Platelet Derived Growth Factor AB)及びTNF−α(Tumor necrosis factor-α)からなる群から選択される1種以上の因子を含有できるが、ランテス(Rantes)、SDF−1α(Stromal cell-derived factor-1α)、HGF(Hepatocyte growth factor)、TNF−α(Tumor necrosis factor-α)、PDGF−AB(Platelet Derived Growth Factor AB)及びTGF−β1(Transforming growth factor beta 1)からなる群から選択される1種以上の因子を含有することがさらに好ましい。
【0047】
前記(b)工程において使用する前処理された脂肪由来成体幹細胞及び/またはこれの分泌物は、前処理した状態の脂肪幹細胞と分泌物、培地性分を全部含む形態で使用、分泌物及び培地性分だけを含む形態で使用、または前処理された脂肪幹細胞だけを使用する等使用態様は特に制限されない。
【0048】
尚、前記「疾患部位と直接接触しない生体内の他の部位に投与」とは、病変部位に直接移植する方法を除いて、病変以外の部位で幹細胞の少なくとも部分的な局所化を引き起こす方法や経路によって幹細胞を対象として配置させるものを意味する。細胞の成分の一部分が依然として生存可能な対象の所望の位置に伝達できるようにする任意の適切な経路によって投与できる。前記「投与」は「導入」、「伝達」、又は「配置」等の用語と互いに入れ替えて使用できる。臨床投与時に筋肉または静脈注射剤のような形態の非経口投与等の方法が可能で、本発明においては、静脈注射による投与が最も好ましい。
【0049】
従って、本発明はケモカインまたは成長因子で前処理された脂肪組織由来成体幹細胞及び/またはこれの分泌物を含有する組成物を静脈投与する工程を含む、脂肪組織由来成体幹細胞遊走誘導方法に関するものである。
【0050】
本発明はさらに他の観点において、脂肪由来成体幹細胞のターゲッティング遊走誘導を利用して疾患部位に到達させて、該当部位を治療する方法に関する。従って、脂肪由来成体幹細胞及びこれの分泌物を有効性分として含有する細胞治療剤またはこれを利用する治療方法に関する。
【0051】
「治療する」という用語は、特に断わらない限り、前記用語が適用される疾患または病気、または前記疾患または病気の一つ以上の症状を逆転させたり、緩和させたり、その進行を抑えたり、または予防することを意味する。本願で使用されるように、「治療」という用語は「治療する」が前記のように定義される時治療する行為をいう。従って、哺乳動物において疾患の「治療」または「治療療法」は下記の一つ以上を含む:
(1)該当疾患の成長を阻害する、即ち、その発達を阻止する、
(2)疾患の拡散を予防する、即ち、移転を予防する、
(3)疾患を軽減させる、即ち、癌の退行を惹起させる、
(4)疾患の再発を予防する、及び
(5)疾患の症状を緩和する(palliating)。
【0052】
幹細胞を疾患部位に遊走させて該当部位を治療するために、本発明の組成物を薬理学的有効量投与する。
【0053】
「薬理学的有効量(therapeutically effective amount)」とは、投与される化合物の量が治療する障害の一つまたはそれ以上の症状をある程度軽減することのできる化合物の量を意味する。従って、薬理学的有効量は、(1)疾患の進行速度を逆転させたり(2)疾患のそれ以上の進行をある程度禁止させることを意味し、(3)疾患に係る一つまたはそれ以上の症状をある程度軽減(好ましくは除去)する効果を有する量を意味する。
【0054】
本発明の組成物(細胞治療剤)は、臨床投与時に筋肉または静脈注射剤のような形態の非経口投与等が可能であるが、最も好ましくは静脈注射による投与である。
【0055】
注射のために、好ましくはHank溶液、Ringer溶液、または生理食塩水バッファーのような薬理学的に適合するバッファーに剤形できる。粘膜透過投与のために、通過するバリアーに適合した非浸透性剤が剤形に使われる。そのような非浸透性剤は、当業界において一般的に公示されている。
【0056】
非経口投与のための製剤には、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、油剤等が含まれる。非水性溶剤、懸濁溶剤としては、プロピレングリコール(Propylene glycol)、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物性油、オレイン酸エチルのような注射可能なエステル等が使われてもよい。
【0057】
ヒトの場合、細胞治療剤の通常投与量は104〜1010細胞/1人当たり、好ましくは106〜108細胞/1人当たりを1回または数回に分けて投与することができる。特に、本発明の組成物は1x108〜1x109細胞/100μLの濃度で成体幹細胞を含むことが好ましい。
【0058】
しかし、活性成分の実際投与量は、治療する疾患、投与経路、患者の年齢、性別及び体重、並びに疾患の重症度等の多様な関連因子を考慮して決定しなければならないと理解すべきであり、従って、前記投与量はいかなる方法でも本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0059】
以下、本発明を実施例を挙げて詳述する。これらの実施例は単に本発明をより具体的に説明するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例に制限されないことは当業者において通常の知識を有する者にとって自明である。
【0060】
以下実施した実施例で使った各種培地及び試薬の入手処は下記表に記載された通りである。
【0061】
【表1】
【0062】
実施例1:ヒト脂肪組織由来中間葉幹細胞分離
脂肪吸引術(Liposuction)により腹部脂肪から得られたヒト脂肪組織を分離してPBSで洗浄した。組織を細かく切った後、コラゲナーゼタイプ1(1mg/mL)を添加したDMEM培地を利用して37℃で2時間消化した。PBSで洗浄後、1000rpmで5分間遠心分離した。上清液は吸引し、底に残ったペレットはPBSで洗浄した後、1000rpmで5分間遠心分離した。100umメッシュでろ過して残渣を取り除いてからPBSで洗浄した後、DMEM(10%FBS、2mM NAC、0.2mMアスコルビン酸)培地で培養した。
一夜過ぎた後、付着しなかった細胞はPBSで洗浄し、5%FBS、2mM NAC、0.2mMアスコルビン酸、0.09mM calcium、5ng/mL rEGF、5μg/mLインシュリン及び74ng/mL Hydrocortisoneを含有したKeratinocyte−SFM mediaを2日毎に取り替えながら継代培養して、脂肪組織由来多分化能中間葉幹細胞を分離した。
【0063】
実施例2:脂肪幹細胞の細胞遊走誘導
2-1:表2のケモカインまたは成長因子で細胞移動誘導
前記実施例1で分離した脂肪組織由来多分化能中間葉幹細胞を各ウェルに2x104cells/200μLで播種(seeding)して、以下ケモカインまたは成長因子で細胞移動を誘導した。陽性対照群としてFBS30%を使った。
【0064】
【表2】
【0065】
その結果を図1に示した。培地で誘導した細胞を陰性対照群とし、FBS30%で誘導した細胞を陽性対照群として、陰性対照群細胞を100とした時の比を各グラフで示した。図1から分かるように、脂肪組織由来中間葉幹細胞(AdMSCs)は、FBS30%と同様に、ケモカインまたは成長因子の刺激に反応して遊走が活発で、特にランテス、SDF−1α、HGF、TGF−β1、IGF−1、PDGF−ABまたはTNF−αに反応して細胞遊走が活発に誘導された。
【0066】
2−2:その他のケモカインまたは成長因子で細胞遊走を誘導した写真撮影
前記実施例1で分離した脂肪組織由来多分化能中間葉幹細胞を24時間FBS free Media(図2A)とTNF−α(図2B、2C)、走化性因子(chemotactic factor)(図2D)で前処理して培養した後0.25%トリプシン/1mM EDTAを処理して細胞を分離した後、PBSで洗浄して1,500rpmで5分間遠心分離して細胞を回収した。
【0067】
その後、トランスウェルインサート(Transwell Insert:Costar、3422)を0.1%ゼラチン(sigma−aldrich)で2時間コートした後、培地を分株された24ウェルプレートに取り付けた。各インサートに対して回収した脂肪幹細胞を2X104cells/200μLずつ播種して37℃、5%CO2インキュベーターで2時間培養した。培地(Media)とケモカイン(chemokine)と成長因子(growth factor)を100ng/mL濃度で分株させた24ウェルに、播種されたインサートを移して取り付けた。37℃、5%CO2インキュベーターで24時間培養した。次に、インサートの上の部分にある遊走しなかった脂肪幹細胞は綿棒で取り除いて洗浄後、70%メタノールで1時間固定した。
【0068】
洗浄後、0.5%クリスタルバイオレット溶液で1時間染色を行った。その後洗浄を行い、顕微鏡で、X100で観察後写真を撮った。
その結果、図2A〜2Dに示したように、何も処理しなかった脂肪幹細胞(図2A、2B)に比べて前処理した脂肪幹細胞(図2C、2D)の遊走率が高くて細胞が密になることが確認できた。
【0069】
実施例3:ケモカインまたは成長因子を前処理した脂肪幹細胞の細胞遊走
前記実施例1で分離した脂肪組織由来多分化能中間葉幹細胞を以下ケモカインまたは成長因子で24時間前処理した後、各ウェルに2x104cells/200μLでシーディングして10%FBSで細胞遊走を誘導した。30%FBSに比べて弁別力を観察しようとした。一方、前処理しなかった脂肪組織由来多分化能中間葉幹細胞を陰性対照群とした(未処理)。
【0070】
【表3】
【0071】
その結果を図3に示した。図3から分かるように、多数のケモカインまたは成長因子を前処理した脂肪組織由来中間葉幹細胞(AdMSCs)の中でPDGF−ABまたはTNF−αで前処理した場合において10%FBSによる細胞遊走が活発に誘導されたことが遊走した細胞数で確認でき、特にTNF−αで前処理した場合において顕著に活発に誘導されたことが確認された。
【0072】
実施例4:TNF−α前処理された脂肪幹細胞の細胞遊走
実施例3から得られた実験結果を参照して、前記実施例1で分離した脂肪組織由来多分化能中間葉幹細胞をTNF−αで24時間前処理した後、各ウェルに2x104細胞/200μLでシーディングして以下の表4に記載している多様なケモカインまたは成長因子で細胞遊走を誘導した。
【0073】
【表4】
【0074】
その結果を図4に示した。図4から分かるように、TNF−αで前処理した脂肪組織由来中間葉幹細胞(AdMSCs)は、ランテス、SDF−1α、EGF、β−FGF、TGF−β1、PDGF−AB等によって細胞遊走が活発に誘導されたことを遊走した細胞数で確認することができた。特に、実施例1の結果の図1と比較して見ると、TNF−α前処理有無による効果を確認できるが、TNF−αで前処理した場合、細胞遊走性が明らかに活発になることを確認することができた。
【0075】
実施例5:脂肪幹細胞に対する多様なケモカインまたは成長因子の前処理及び細胞遊走誘導能
前記実施例1で分離した脂肪組織由来多分化能中間葉幹細胞を以下の表5に記載したケモカインまたは成長因子で約24時間前処理した後、各ウェルに2x104細胞/200μLでシーディングし、前処理に使った各同一因子を利用して細胞遊走を誘導した。
【0076】
【表5】
【0077】
その結果を図5に示した。前処理をしなかった場合を白抜きの棒グラフで示し、該当因子で前処理をした場合、遊走した細胞数を黒塗りの棒グラフで示した。図5から分かるように、ランテス、MIP−3β、SDF−1α、BCA−1、CXCL16、EGF、PDGF−ABなど前記因子で前処理した脂肪幹細胞が前処理しなかった場合に比べて細胞遊走性が改善されることが確認できた。特に、ランテス、SDF−1α、BCA−1、CXCL16及びPDGF−ABの場合は細胞遊走能が顕著に増加した。
【0078】
実施例6:脂肪幹細胞のケモカインまたは成長因子受容体発現
実施例1で取得した脂肪組織由来多分化能中間葉幹細胞が各々のケモカインまたは成長因子受容体を発現するか否かを、相応する受容体の抗体及びフローサイトメトリー(FACS)を介して確認した。
一方、各ケモカインまたは成長因子に対する受容体とリガンド名は下記の表6の通りである。
【0079】
【表6】
【0080】
脂肪幹細胞をT75フラスコで培養した後、90%コンフルエンシーに満たされた時、0.25%トリプシン/1mM EDTAを処理して細胞を分離した後、PBSで洗浄して1,500rpmで5分間遠心分離して細胞を収集した。収集した細胞を10%FBS溶液で4℃冷蔵庫で1時間以上固定した後、洗浄した。その後、表7の抗体を4℃冷蔵庫で1時間以上培養してFACSを測定した。
【0081】
【表7】
【0082】
その結果を図6に示した。暗い領域が実験群であり、黒線は対照群を示したものである。IGF−1とHGFの受容体が確認されなかったため、抗体の機能を確認するために肺癌細胞であるA549細胞株を細胞株銀行から購入して培養した後、フローサイトメトリー(FACS)を介して確認した。
【0083】
図6から分かるように、前処理した脂肪組織由来多分化能中間葉幹細胞は、ランテス(Rantes、CCR1)、MIP−3β(CCR7)、SDF−1α(CXCR1)、BCA−1(CXCR5)、CXCL16、EGF、TGF、PDGF−AB、IGF−1、TNF−アルファ、FGFに対する受容体を発現していることがFACS結果から確認することができた。
【0084】
前記結果により、特定ケモカインまたは成長因子の受容体が脂肪組織由来多分化能中間葉幹細胞で発現することが確認され、このような受容体は該当因子に対して反応し、このような該当因子の前処理によって受容体の発現率が高まって、これらの間の反応性を利用して体内疾患部位へのターゲッティング遊走が誘導され、これを通して該当疾患の効果的治療が可能であることが示唆された。
【0085】
実施例7:脂肪幹細胞のケモカインまたは成長因子受容体mRNA確認
実施例1で取得した脂肪組織由来多分化能中間葉幹細胞が、各々のケモカインまたは成長因子受容体のmRNAを発現するか否かを、RT−PCRを介して確認した。
T75フラスコで培養した脂肪幹細胞を0.25%トリプシン/1mM EDTAを処理して細胞を分離した後、PBSで洗浄して1,500rpmで5分間遠心分離して細胞を収集した。収集した細胞は、Total RNA Extraction Kit(iNtRON Biotechnology)を利用してトータルRNAを抽出した。
RNA2μgをmaxime RT Pre mix kit(iNtRON Biotechnology)でcDNAを合成した。1X h−Taq buffer、0.2mM dNTP、0.4pMフォワードプライマー、0.4pMリバースプライマー、0.25U/μL h−Taq DNA polymerase(Solgent)でcDNA1μLを95℃で20秒間DNAを変成させた後、以下の表8の各温度(アニーリング温度)で40秒間プライマーを加熱して、72℃で1分間PCR産物を伸張させる反応を40cycle条件で遺伝子増幅を行った。実験に使われた受容体プライマーと加熱温度は以下の表8の通りである。
【0086】
【表8】
【0087】
SiZer DNA Markers−50(iNtRON)とPCR産物を2.0%アガロスゲルと1XTAE試薬を利用して110Vで1時間30分電気氷動した後、Fuji molecular imaging softwareでイメージ測定を行った。コントロール遺伝子としてGAPDHを使った。全PCR産物をSolgent社に塩基配列分析を依頼して99%以上塩基配列が一致することを確認した。
【0088】
その結果、図7に示したように、脂肪幹細胞で各々のケモカインまたは成長因子の受容体のmRNAが発現することが確認できた。図7Aの各バンドは、各々1:CCR1(380bp)、2:CCR2(474bp)、3:CCR7(461bp)、4:CXCR4(489bp)、5:CXCR5(494bp)、6:CXCR6(517bp)、7:GAPDH(362bp)を示した。図7Bの各バンドは各々M:Marker、1:EGFR(419bp)、2:TGFBR2(498bp)、3:PDGFRA(187bp)、4:PDGFRB(508bp)、5:IGF1R(299bp、未発現)、6:c−MET(201bp)、7:TNFRSF1A(218bp)、8:FGFR1(250bp)、9:GAPDH(362bp)を示し、GAPDHは陽性対照群として使った。
【0089】
これによって、脂肪幹細胞で特定ケモカインまたは成長因子の受容体のmRNAが発現することが確認され、このような受容体の反応性を利用して体内疾患へのターゲッティング遊走を誘導し、これを通して該当疾患の効果的治療が可能であることが示唆された。
【0090】
実施例8:脂肪幹細胞に対するアディポネクチンの前処理及び濃度毎誘導能
8−1:アディポネクチンの濃度毎誘導能確認
前記実施例1で分離した脂肪組織由来多分化能中間葉幹細胞をアディポネクチンで24時間前処理した後、アディポネクチンを各濃度(1ng/mL、10ng/mL、100ng/mL)で処理して細胞遊走を誘導した。
その結果を図8に示した。10ng/mLの時に比べて100ng/mLで処理した時、2倍程高い遊走量を示す結果から、濃度が高いほど細胞遊走誘導能が高いことを確認することができた。
【0091】
8−2:脂肪幹細胞のアディポネクチン受容体発現
実施例7の方法と同様の方法で表8に記載されたプライマーとアニーリング温度を使ってRT−PCRを行って脂肪幹細胞でアディポネクチン受容体が発現するか否かを確認した。
その結果、図9に示したように、アディポネクチンの受容体2種類(1:ADIPOR1(337bp)、2:ADIPOR2(538bp)が、脂肪幹細胞で発現することを確認した。これにより、アディポネクチンの前処理によってアディポネクチン受容体の発現率が高まって、これらの間の反応性を利用する可能性があることを確認した。
【0092】
以上、本発明の内容の特定の部分を詳述したが、当業界における通常の知識を持った者にとって、このような具体的な記述は単なる好適な実施態様に過ぎず、これにより本発明の範囲が制限されることはないという点は明らかである。よって、本発明の実質的な範囲は特許請求の範囲とこれらの等価物により定義されると言える。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明は、脂肪由来成体幹細胞及びこれの特定分泌物による細胞遊走誘導能力に関し、特に、特定ケモカインまたは成長因子で前処理した脂肪由来成体幹細胞及びこの特定分泌物を、静脈投与等の簡単な方法を介して、幹細胞の移植が必要な疾患部位に自らターゲッティングして遊走させることができる。従って、複雑な手術を行うことなく安全に疾患部位に成体幹細胞が遊走して治療効果を発揮する細胞治療剤として有用である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂肪組織由来成体幹細胞の細胞遊走(cell migration)誘導能力に関し、より詳しくはケモカインまたは成長因子の受容体の発現している疾患部位への遊走能力を有している脂肪組織由来成体幹細胞及びこれの特定分泌物の新規用途、及びこのようなケモカインまたは成長因子の受容体の機能をより効率的に高めることができる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
幹細胞(stem cell)とは、自己複製能力を有すると共に、二つ以上の細胞に分化する能力を有する細胞をいい、万能幹細胞(totipotent stem cell)、分化万能性幹細胞(pluripotent stem cell)、多能性幹細胞(multipotent stem cell)に分類できる。
【0003】
万能幹細胞(totipotent stem cell)は、一つの完全な個体に発生していくことができる万能性を有する細胞で、卵子と精子の受精以後8細胞期までの細胞がこのような性質を有し、この細胞を分離して子宮に移植すると一つの完全な個体に発生していくことができる。分化万能性幹細胞(pluripotent stem cell)は、外胚葉、中胚葉、内胚葉層由来の多様な細胞と組織から発生できる細胞であり、受精4〜5日後現れる胚盤胞(blastocyst)の内側に位置した内部細胞塊(inner cell mass)から由来し、これを胚芽幹細胞といい、多様な他の組織細胞に分化するが新しい生命体を形成することはできない。多能性幹細胞(multipotent stem cell)は、この細胞が含まれている組織及び器官に特異的な細胞だけに分化できる幹細胞で、胎児期、新生児期及び成体期の各組織及び臓器の成長と発達のみならず成体組織の恒常性維持と組織損傷時再生を誘導する機能に関与しており、組織特異的多能性細胞を総称して成体幹細胞という。
【0004】
成体幹細胞は、人体の各臓器に既に存在する細胞を採取、幹細胞を発生させたもので、特定組織だけに分化する特徴がある。しかし、最近では成体幹細胞を利用して、肝細胞等各種の多様な組織に分化させる実験が成功しており注目される。
【0005】
特に、病気や事故による機能障害や不調和に陥った生体組織及び臓器の再生及び機能回復のために細胞を積極的に活用して実施する治療法である再生医療において、患者本人から幹細胞、血液由来単核細胞或いは骨髄由来単核細胞を収集する工程、試験管培養で細胞増殖及び/または分化を誘導する工程、及び選択された未分化(幹細胞及び/または前駆細胞)及び/または分化細胞を着床によって患者自身の体に導入する工程を含む方法が多く利用されている。このように、既存の古典的な薬品処置や手術的方法を介した病気治療が、損傷した細胞組織又は臓器を健康体に変える細胞/組織補充治療法(cell/tissue replacement therapy)に代替されると予測されるため、幹細胞の活用度はより一層高まることになる。
【0006】
従って、現状は幹細胞の多様な機能が研究されており、特に、幹細胞の効率的な分離方法、未分化状態への維持及び増殖方法及び所望の組織細胞への分化方法等に応じた多くの研究が行われている。ケモカイン処理による骨髄由来幹細胞の細胞遊走に対する報告は多数存在しているが(Adriana Lopez Ponte et al., Stem Cells, 25:1737-1745, 2007; Marek Honczarenko et al., Stem Cells, 24:1031-1041, 2006; Sordi V et al., Blood, 106:419-427, 2005; Fiedler J et al., J Cell Biochem, 87:305-312, 2002; Forte G et al., Stem Cells, 24:23-33, 2006; Wright DE et al., Blood, 87:4100-4108, 1996; Son BR et al., Stem Cells, 24:1254-1264, 2006)、脂肪幹細胞の細胞遊走性に対する報告は一切ないのが実情である。
【0007】
そこで、本発明者等は、脂肪中間葉幹細胞自らの細胞遊走能力を発見し、さらには多様なケモカイン及び成長因子を前処理(priming)した場合、特定ケモカイン及び成長因子による幹細胞遊走が顕著に誘導されることを発見し、脂肪中間葉幹細胞のケモカインまたは成長因子受容体発現能力を高める方法を確認して本発明を完成した。
【発明の要約】
【0008】
本発明の第一の目的は、脂肪組織由来成体幹細胞及びこれの分泌物を有効性分として含有する脂肪幹細胞遊走誘導用組成物を提供することである。
【0009】
本発明の第二の目的は、脂肪組織由来成体幹細胞の疾患部位への遊走方法を提供することである。
【0010】
本発明は、前記脂肪由来成体幹細胞及びこれの分泌物がケモカインまたは成長因子受容体を発現する機能及び用途に関するもので、前記目的を達成するために、脂肪由来成体幹細胞及び/またはこれの分泌物を有効性分として含有する脂肪幹細胞遊走誘導用組成物を提供する。
【0011】
前記脂肪由来成体幹細胞分泌物は、例えば、ランテス(Rantes)、MCP−1(Monocyte chemoattractant protein-1)、MIP−3β(Monocyte inflammatory protein-3β)、SDF−1α(Stromal cell-derived factor-1α)、BCA−1(B cell attracting chemokine-1)、CXCL16(Chemokine C-X-C motif ligand 16)、EGF(Endothelial growth factor)、b−FGF(basic Fibroblast Growth Factor)、HGF(Hepatocyte growth factor)、TGF−β1(Transforming growth factor beta 1)、IGF−1(Insulin-like growth factor 1)、PDGF−AB(Platelet Derived Growth Factor AB)、TNF−α(Tumor necrosis factor-α)アディポネクチン、レプチン、またはプロコラーゲン(Procollagen)等があり、特に好ましくはアディポネクチン及び/またはレプチンを含有する。前記脂肪由来成体幹細胞及び/またはこれの分泌物は、ヒト脂肪組織由来成体幹細胞を、特定成分を含有する培地で培養した後、培地を取り除いた後、細胞残渣(debris)を取り除いて残った培養液(broth)の「ヒト脂肪組織由来成体幹細胞培養物」の形態で用いることができる。
【0012】
また、前記組成物は、FBSをさらに含有できるが、特に約30%FBSを使うことが好ましい。
【0013】
前記脂肪由来成体幹細胞及びこれの分泌物は、ランテス(Rantes)、MCP−1(Monocyte chemoattractant protein-1)、MIP−3β(Monocyte inflammatory protein-3β)、SDF−1α(Stromal cell-derived factor-1α)、BCA−1(B cell attracting chemokine-1)、CXCL16(Chemokine C-X-C motif ligand 16)、EGF(Endothelial growth factor)、B−FGF(basic Fibroblast Growth Factor)、HGF(Hepatocyte growth factor)、TGF−β1(Transforming growth factor beta 1)、IGF−1(Insulin-like growth factor 1)、PDGF−AB(Platelet Derived Growth Factor AB)及びTNF−α(Tumor necrosis factor-α)からなる群から選択される1種以上のケモカインまたは成長因子受容体を発現することによって、このようなケモカインまたは成長因子に反応して遊走する。
【0014】
この時、前記脂肪由来成体幹細胞は、好ましくは哺乳類由来、さらに好ましくはヒト由来でもよく、例えばヒト脂肪組織由来中間葉幹細胞(Human adipose tissue-derived mesenchymal stem cell、AdMSCs)であってもよい。
【0015】
特に、前記脂肪組織由来成体幹細胞は、ケモカインまたは成長因子を含有するカクテル(cocktail)で前処理されたものを使うことが好ましい。
【0016】
前記カクテルは、ランテス(Rantes)、MCP−1(Monocyte chemoattractant protein-1)、MIP−3β(Monocyte inflammatory protein-3β)、SDF−1α(Stromal cell-derived factor-1α)、BCA−1(B cell attracting chemokine-1)、CXCL16(Chemokine C-X-C motif ligand 16)、EGF(Endothelial growth factor)、b−FGF(basic Fibroblast Growth Factor)、HGF(Hepatocyte growth factor)、TGF−β1(Transforming growth factor beta 1)、IGF−1(Insulin-like growth factor 1)、PDGF−AB(Platelet Derived Growth Factor AB)及びTNF−α(Tumor necrosis factor-α)からなる群から選択される1種以上の因子を含有できるが、特にランテス(Rantes)、SDF−1α(Stromal cell-derived factor-1α)、HGF(Hepatocyte growth factor)、TNF−α(Tumor necrosis factor-α)、PDGF−AB(Platelet Derived Growth Factor AB)及びTGF−β1(Transforming growth factor beta 1)からなる群から選択される1種以上の因子を含有することがさらに好ましい。
【0017】
前記ヒト由来成体幹細胞は、1x107〜1x1010の細胞数で含まれることが好ましく、約1x108〜1x109の細胞数で含まれることがさらに好ましい。
【0018】
また、本発明は前記目的を達成するために、
(a)脂肪組織由来成体幹細胞にケモカインまたは成長因子を含有するカクテルで前処理する工程、
(b)前記前処理された脂肪組織由来成体幹細胞及びこれの分泌物を含有する組成物を疾患部位と直接接触しない生体内の他の部位に投与する工程を含む、脂肪組織由来成体幹細胞遊走誘導方法を提供する。この時、特に静脈で投与することが最も好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】脂肪組織由来多分化能中間葉幹細胞に対して多様なケモカインまたは成長因子で細胞遊走を誘導した結果のグラフである。
【図2】脂肪組織由来多分化能中間葉幹細胞に対して遊走を誘導した後、顕微鏡で撮影した写真である。
【図3】多様なケモカインまたは成長因子で前処理した脂肪組織由来多分化能中間葉幹細胞に対し10%FBSで細胞遊走を誘導した結果のグラフである。
【図4】TNF−αで前処理した脂肪組織由来多分化能中間葉幹細胞に対し多様なケモカインまたは成長因子で細胞遊走を誘導した結果のグラフである。
【図5】多様なケモカインまたは成長因子で前処理した脂肪組織由来多分化能中間葉幹細胞に対し前処理した該当因子で細胞遊走を誘導した結果のグラフ及び顕微鏡写真である。
【図6】脂肪組織由来多分化能中間葉幹細胞及びA549細胞に対する多様なケモカインまたは成長因子受容体発現の有無を確認したFACSの結果を示すグラフである。
【図7】脂肪組織由来多分化能中間葉幹細胞に対する多様なケモカインまたは成長因子受容体のmRNA発現の有無を確認したRT−PCRの結果の写真である。各バンドは各々1:CCR1(380bp)、2:CCR2(474bp)、3:CCR7(461bp)、4:CXCR4(489bp)、5:CXCR5(494bp)、6:CXCR6(517bp)、7:GAPDH(362bp)を示す(7A)。各バンドは、各々M:Marker、1:EGFR(419bp)、2:TGFBR2(498bp)、3:PDGFRA(187bp)、4:PDGFRB(508bp)、5:IGF1R(299bp)、6:C−MET(201bp)、7:TNFRSF1A(218bp)、8:FGFR1(250bp)、9:GAPDH(362bp)を示す(7B)。
【図8】アディポネクチンで前処理した脂肪組織由来多分化能中間葉幹細胞に対し1、10、100ng/mL濃度のアディポネクチンで細胞遊走を誘導した結果のグラフ及び顕微鏡写真である。
【図9】脂肪組織由来多分化能中間葉幹細胞に対するアディポネクチン受容体1、2のmRNA発現の有無を確認したRT−PCRの結果の写真であり、各バンド1:ADIPOR1(337bp)、2:ADIPOR2(538bp)、3:GAPDH(362bp)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
他の方式で定義されない限り、本明細書において使用されたあらゆる技術的・科学的用語は、本発明が属する技術分野に熟練した専門家によって通常理解されるものと同じ意味を有する。通常、本明細書において使用された命名法及び以下で詳述する実験方法は、本技術分野において周知であり、しかも汎用されるものである。
【0021】
幹細胞(stem cell)とは、自己複製能力を有すると共に、二つ以上の細胞に分化する能力を有する細胞をいう。
【0022】
成体幹細胞は、発生過程が進んで胚芽の各臓器が形成されるステージ或いは成体のステージに現れる幹細胞で、組織及び器官に特異的な細胞へとだけ分化できる分化能(multipotent)を有していると知られている。このような組織特異的分化能を有する幹細胞(multipotent stem cell)は、この細胞が含まれている組織及び器官に特異的に分化できる幹細胞であり、胎児期、新生児期及び成体期の各組織及び臓器の成長と発達のみならず成体組織の恒常性維持と組織損傷時の再生を誘導する機能に関与している。
【0023】
本発明においては、成体幹細胞、好ましくは脂肪組織、または毛嚢又は羊膜等の上皮組織から得られる成体幹細胞を利用することができる。最も好ましくは、脂肪組織由来成体幹細胞を使う。中間葉幹細胞(mesenchymal stem cells、MSCs)が使用でき、特に、脂肪組織由来中間葉幹細胞(Adipose tissue-derived mesenchymal stem cell、AdMSCs)であってもよい。
【0024】
前記脂肪または上皮組織は、哺乳類由来であることが好ましく、その中でもヒト由来であることがさらに好ましい。本発明の一実施例においては、ヒト脂肪組織由来中間葉幹細胞(Human adipose tissue-derived mesenchymal stem cell、ADMSCs)を使った。
【0025】
前記「脂肪組織由来成体幹細胞」または「脂肪組織由来中間葉幹細胞」は、脂肪組織から分離した未分化の成体幹細胞であり、本明細書では略して「脂肪由来成体幹細胞」または「脂肪幹細胞」とも称する。これは当業界に公示された通常の方法を介して取得することができる。
【0026】
前記脂肪幹細胞物の獲得に使われる培地としては、当業界で幹細胞培養に適すると知らされている通常の培地が使えるが、例えばDMEM(Dulbecco modified Eagle medium)等を使うことができる。
【0027】
脂肪幹細胞培養用培地には、未分化の表現型の脂肪幹細胞の増殖を促すと共に、分化を抑える添加剤を補充してもよい。また、培地は一般に、等張液中の中性緩衝剤(例えば燐酸塩及び/または高濃度中炭酸塩)及び蛋白質栄養分(例えば、FBSなどの血清、血清代替物、アルブミン、またはグルタミンなどの必須アミノ酸及び非必須アミノ酸)を含有してもよい。さらに、脂質(脂肪酸、コレステロール、血清のHDLまたはLDL抽出物)及びこの種の多くの保存液培地で発見されるその他の成分(例えば、インシュリンまたはトランスフェリン、ヌクレオシドまたはヌクレオチド、ピルビン酸塩、グルコースなどの糖源、任意のイオン化形態または塩であるセレニウム、ヒドロコルチゾンなどのグルココルチコイド、及び/またはβ−メルカプトエタノルなどの還元剤)を含有してもよい。
【0028】
また、培地は、細胞が互いに接着したり、容器壁に接着したり、非常に大きい束の形成を防ぐ目的で、抗凝集剤(anti-clumping agent)、例えばInvitrogenが販売するもの等(Cat # 0010057AE)を含むことが有益である。
【0029】
そのうち、下記の1つ以上の追加添加剤を使うことが有利になる:
・幹細胞因子(SCF、Steel因子)、c−キットを二量化する他のリガンド、または抗体、及び同じ信号伝達経路の他の活性剤
・他のチロシンキナーゼ関連受容体、例えば血小板由来成長因子(Platelet-Derived Growth Factor、PDGF)、マクロファージコロニー刺激因子、Flt−3リガンド及び血管内皮成長因子(Vascular Endothelial Growth Factor、VEGF)の受容体のためのリガンド
・環状AMP濃度を高める因子、例えばホルスコリン
・gp130を誘導する因子、例えばLIFまたはオンコスタチン(Oncostatin)−M
・造血幹細胞成長因子、例えばトロンボポエチン(TPO)
・変形性成長因子、例えばTGFβ1
・他の成長因子、例えば表皮成長因子(EGF)
・ニューロトロフィン、例えばCNTF
・N−アセチル−L−システイン(NAC)
・ヒドロコルチゾンン(Hydrocortisone)
・アスコルビン酸(Ascrobic Acid)。
【0030】
特に、本発明の一具体例で使われる脂肪幹細胞を取得するための培地は、NAC、アスコルビン酸、カルシウム、インシュリン及びヒドロコルチゾンを含有することが好ましく、さらに好ましくは、FBS、NAC、アスコルビン酸、カルシウム、rEGF、インシュリン及びヒドロコルチゾンを含有する。
【0031】
本発明は、前記脂肪由来成体幹細胞分泌物を有効性分として含んでもよい。
このような分泌物は、多様なサイトカイン、アミノ酸、成長因子等を含むが、例えば、TGF、bFGF、IGF−1、KGF、HGF、fibronectin、VEGF、アディポネクチン、レプチンまたはProcollagen等の物質でもあってもよく、これらの受容体も共に含有することができる。特に、このような脂肪由来成体幹細胞分泌物中アディポネクチンまたはレプチンは、脂肪組織由来特異的分泌物として、本発明の細胞遊走誘導機能に大きい寄与をする。
【0032】
前記脂肪組織由来成体幹細胞及び/またはこれの分泌物は、脂肪組織由来成体幹細胞を、特定成分を含有する培地に培養した後、培地を取り除いた後、細胞残渣を取り除いて残った培養液の「脂肪組織由来成体幹細胞培養物」の形態としても用いられ、各成分を抽出して単独または共に使ってもよい。
【0033】
即ち、脂肪幹細胞と分泌物、培地性分を全て含む形態、分泌物及び培地成分だけを含む形態、分泌物だけを分離して単独または脂肪幹細胞と共に使う形態、または脂肪幹細胞だけを投与して体内で分泌物を生成する形態として使うことも全部可能である。
【0034】
一観点において、本発明は、脂肪組織由来成体幹細胞及び/またはこれの分泌物が該当幹細胞自らの遊走を誘導する用途に関する。より一層詳しくは、脂肪組織由来成体幹細胞及びこれの特定分泌物が疾患部位で発現するケモカインまたは成長因子の受容体の機能を発揮するという新しい用途に関する。
【0035】
本発明において「ケモカインまたは成長因子受容体機能を発揮する」とは、脂肪組織由来成体幹細胞が特定ケモカインまたは成長因子と特異的に結合する受容体(receptor)を細胞表面に発現(expressing)したり、またはその分泌物が前記受容体であるか受容体を含む場合を全部称する場合であって、脂肪幹細胞が特定ケモカインまたは成長因子と反応できる能力を有するものを総称して意味する。
【0036】
前記成長因子(growth factor)は、各種細胞分裂や生長及び分化を促進するポリペプチドを総称するもので、細胞の信号伝達系に関与すると知られている。多くはその構造的類似性からファミリーとして分類して、自己分泌、傍分泌、内分泌等の方式で標的細胞に作用する。成長因子受容体は、細胞内領域でチロシンキナーゼの活性を有する場合が多く、リガンド受容体と結合すると受容体自身や細胞内蛋白質のチロシン残基が燐酸化され、細胞増殖や分裂が起きることになる。
【0037】
前記ケモカインは、炎症発生時に生成されて白血球の補充を調節する小さいサイトカイン群を構成するが、このようなケモカインは血中形成された(赤血球を除いた)白血球を含む成分、例えば、好中球、単核球、マクロファージ、好酸球、好塩基球、肥満細胞、及びリンパ球、例えばT細胞及びB細胞の走化性を選択的に誘発しかねない。走化性を刺激すると共に、白血球活性化と関連した反応細胞内ケモカインによって他の変化、例えば、細胞の形の変化、細胞内遊離カルシウムイオン(Ca2+)濃度の一時的増加、顆粒細胞外排出、インテグリン上昇調節、生活性脂質(例えば、ロイコトリエン)の形成及び呼吸器放出も選択的に誘導できる。従って、ケモカインは、早期に炎症反応を引き起こし、感染または炎症部位において炎症媒介体放出を生じさせ、走化性及び溢血を引き起こす。
【0038】
一般に、ケモカイン及びケモカイン受容体の相互作用は、一つのケモカインが多数のケモカイン受容体と結合できて、逆に一つのケモカイン受容体がいくつかのケモカインと相互作用できる点で偶然性を帯びる。このようなケモカイン受容体信号伝達及びリガンドに対する選択性に係る多くの側面は未だに把握されていない。
【0039】
本発明は、脂肪由来成体幹細胞及びこれの特定分泌物がこのようなケモカイン受容体機能を発揮するという新しい発見事実に基づいて、感染または炎症部位、即ち、疾患部位で発現する特定ケモカインに反応して自ら前記疾患部位に遊走する(「ターゲッティング(targeting)遊走」ともいう)機能を利用しようとしたものである。本発明では、ケモカインのみならず特定成長因子に対する反応性も共に考慮した。特に、脂肪由来成体幹細胞は、ランテス(Rantes)、MCP−1(Monocyte chemoattractant protein-1)、MIP−3β(Monocyte inflammatory protein-3β)、SDF−1α(Stromal cell-derived factor-1α)、BCA−1(B cell attracting chemokine-1)、CXCL16(Chemokine C-X-C motif ligand 16)、EGF(Endothelial growth factor)、b−FGF(basic Fibroblast Growth Factor)、HGF(Hepatocyte growth factor)、TGF−β1(Transforming growth factor beta 1)、IGF−1(Insulin-like growth factor 1)、PDGF−AB(Platelet Derived Growth Factor AB)及びTNF−α(Tumor necrosis factor-α)等のケモカインまたは成長因子に対する反応性が優れている。
【0040】
この時、前記ケモカインまたは成長因子とこれらの受容体の反応による細胞遊走性を高めるために、前記組成物はFBSをさらに含有できるが、特に約30%FBSを使うことが好ましい。また、前記組成物がFBSを含有していなくても、組成物を体内に投与した時、体内に存在するFBSを活用できることは言うまでもない。
【0041】
一方、前記脂肪組織由来成体幹細胞及び/またはこれの分泌物の受容体発現率を高めたり、または反応性を高めるために、前記脂肪組織由来成体幹細胞はケモカインまたは成長因子を含有するカクテルで前処理することが好ましい。
【0042】
特に、前記カクテルは、ランテス(Rantes)、MCP−1(Monocyte chemoattractant protein-1)、MIP−3β(Monocyte inflammatory protein-3β)、SDF−1α(Stromal cell-derived factor-1α)、BCA−1(B cell attracting chemokine-1)、CXCL16(Chemokine C-X-C motif ligand 16)、EGF(Endothelial growth factor)、b−FGF(basic Fibroblast Growth Factor)、HGF(Hepatocyte growth factor)、TGF−β1(Transforming growth factor beta 1)、IGF−1(Insulin-like growth factor 1)、PDGF−AB(Platelet Derived Growth Factor AB)及びTNF−α(Tumor necrosis factor-α)からなる群から選択される1種以上の因子を含有できるが、ランテス(Rantes)、SDF−1α(Stromal cell-derived factor-1α)、HGF(Hepatocyte growth factor)、TNF−α(Tumor necrosis factor-α)、PDGF−AB(Platelet Derived Growth Factor AB)及びTGF−β1(Transforming growth factor beta 1)からなる群から選択される1種以上の因子を含有することがさらに好ましい。
【0043】
本明細書の実施例5から分かるように、前記特定ケモカインまたは成長因子を前処理した脂肪組織由来成体幹細胞及び/またはこれの分泌物の場合、該当ケモカインまたは成長因子に対する細胞遊走性の効果が顕著に増加する。
【0044】
従って、他の観点において、本発明は、
(a)脂肪組織由来成体幹細胞にケモカインまたは成長因子を含有するカクテルで前処理する工程、
(b)前記前処理された脂肪組織由来成体幹細胞及びこれの分泌物を含有する組成物を疾患部位と直接接触しない生体内の他の部位に投与する工程
を含む、脂肪組織由来成体幹細胞遊走誘導方法に関する。
【0045】
この時、前記(a)工程においてケモカインまたは成長因子を含有するカクテルでの前処理は、脂肪幹細胞の培養培地に前記ケモカインまたは成長因子を含有させて培養する方法で行い、20〜60時間、好ましくは約20〜50時間行う。本発明の一具体例において約24時間前処理を行った。また、前記カクテルは、脂肪幹細胞培養前、培養中、または培養後に前処理でき、好ましくは培養後に前処理する。
【0046】
前記カクテルは、ランテス(Rantes)、MCP−1(Monocyte chemoattractant protein-1)、MIP−3β(Monocyte inflammatory protein-3β)、SDF−1α(Stromal cell-derived factor-1α)、BCA−1(B cell attracting chemokine-1)、CXCL16(Chemokine C-X-C motif ligand 16)、EGF(Endothelial growth factor)、b−FGF(basic Fibroblast Growth Factor)、HGF(Hepatocyte growth factor)、TGF−β1(Transforming growth factor beta 1)、IGF−1(Insulin-like growth factor 1)、PDGF−AB(Platelet Derived Growth Factor AB)及びTNF−α(Tumor necrosis factor-α)からなる群から選択される1種以上の因子を含有できるが、ランテス(Rantes)、SDF−1α(Stromal cell-derived factor-1α)、HGF(Hepatocyte growth factor)、TNF−α(Tumor necrosis factor-α)、PDGF−AB(Platelet Derived Growth Factor AB)及びTGF−β1(Transforming growth factor beta 1)からなる群から選択される1種以上の因子を含有することがさらに好ましい。
【0047】
前記(b)工程において使用する前処理された脂肪由来成体幹細胞及び/またはこれの分泌物は、前処理した状態の脂肪幹細胞と分泌物、培地性分を全部含む形態で使用、分泌物及び培地性分だけを含む形態で使用、または前処理された脂肪幹細胞だけを使用する等使用態様は特に制限されない。
【0048】
尚、前記「疾患部位と直接接触しない生体内の他の部位に投与」とは、病変部位に直接移植する方法を除いて、病変以外の部位で幹細胞の少なくとも部分的な局所化を引き起こす方法や経路によって幹細胞を対象として配置させるものを意味する。細胞の成分の一部分が依然として生存可能な対象の所望の位置に伝達できるようにする任意の適切な経路によって投与できる。前記「投与」は「導入」、「伝達」、又は「配置」等の用語と互いに入れ替えて使用できる。臨床投与時に筋肉または静脈注射剤のような形態の非経口投与等の方法が可能で、本発明においては、静脈注射による投与が最も好ましい。
【0049】
従って、本発明はケモカインまたは成長因子で前処理された脂肪組織由来成体幹細胞及び/またはこれの分泌物を含有する組成物を静脈投与する工程を含む、脂肪組織由来成体幹細胞遊走誘導方法に関するものである。
【0050】
本発明はさらに他の観点において、脂肪由来成体幹細胞のターゲッティング遊走誘導を利用して疾患部位に到達させて、該当部位を治療する方法に関する。従って、脂肪由来成体幹細胞及びこれの分泌物を有効性分として含有する細胞治療剤またはこれを利用する治療方法に関する。
【0051】
「治療する」という用語は、特に断わらない限り、前記用語が適用される疾患または病気、または前記疾患または病気の一つ以上の症状を逆転させたり、緩和させたり、その進行を抑えたり、または予防することを意味する。本願で使用されるように、「治療」という用語は「治療する」が前記のように定義される時治療する行為をいう。従って、哺乳動物において疾患の「治療」または「治療療法」は下記の一つ以上を含む:
(1)該当疾患の成長を阻害する、即ち、その発達を阻止する、
(2)疾患の拡散を予防する、即ち、移転を予防する、
(3)疾患を軽減させる、即ち、癌の退行を惹起させる、
(4)疾患の再発を予防する、及び
(5)疾患の症状を緩和する(palliating)。
【0052】
幹細胞を疾患部位に遊走させて該当部位を治療するために、本発明の組成物を薬理学的有効量投与する。
【0053】
「薬理学的有効量(therapeutically effective amount)」とは、投与される化合物の量が治療する障害の一つまたはそれ以上の症状をある程度軽減することのできる化合物の量を意味する。従って、薬理学的有効量は、(1)疾患の進行速度を逆転させたり(2)疾患のそれ以上の進行をある程度禁止させることを意味し、(3)疾患に係る一つまたはそれ以上の症状をある程度軽減(好ましくは除去)する効果を有する量を意味する。
【0054】
本発明の組成物(細胞治療剤)は、臨床投与時に筋肉または静脈注射剤のような形態の非経口投与等が可能であるが、最も好ましくは静脈注射による投与である。
【0055】
注射のために、好ましくはHank溶液、Ringer溶液、または生理食塩水バッファーのような薬理学的に適合するバッファーに剤形できる。粘膜透過投与のために、通過するバリアーに適合した非浸透性剤が剤形に使われる。そのような非浸透性剤は、当業界において一般的に公示されている。
【0056】
非経口投与のための製剤には、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、油剤等が含まれる。非水性溶剤、懸濁溶剤としては、プロピレングリコール(Propylene glycol)、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物性油、オレイン酸エチルのような注射可能なエステル等が使われてもよい。
【0057】
ヒトの場合、細胞治療剤の通常投与量は104〜1010細胞/1人当たり、好ましくは106〜108細胞/1人当たりを1回または数回に分けて投与することができる。特に、本発明の組成物は1x108〜1x109細胞/100μLの濃度で成体幹細胞を含むことが好ましい。
【0058】
しかし、活性成分の実際投与量は、治療する疾患、投与経路、患者の年齢、性別及び体重、並びに疾患の重症度等の多様な関連因子を考慮して決定しなければならないと理解すべきであり、従って、前記投与量はいかなる方法でも本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0059】
以下、本発明を実施例を挙げて詳述する。これらの実施例は単に本発明をより具体的に説明するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例に制限されないことは当業者において通常の知識を有する者にとって自明である。
【0060】
以下実施した実施例で使った各種培地及び試薬の入手処は下記表に記載された通りである。
【0061】
【表1】
【0062】
実施例1:ヒト脂肪組織由来中間葉幹細胞分離
脂肪吸引術(Liposuction)により腹部脂肪から得られたヒト脂肪組織を分離してPBSで洗浄した。組織を細かく切った後、コラゲナーゼタイプ1(1mg/mL)を添加したDMEM培地を利用して37℃で2時間消化した。PBSで洗浄後、1000rpmで5分間遠心分離した。上清液は吸引し、底に残ったペレットはPBSで洗浄した後、1000rpmで5分間遠心分離した。100umメッシュでろ過して残渣を取り除いてからPBSで洗浄した後、DMEM(10%FBS、2mM NAC、0.2mMアスコルビン酸)培地で培養した。
一夜過ぎた後、付着しなかった細胞はPBSで洗浄し、5%FBS、2mM NAC、0.2mMアスコルビン酸、0.09mM calcium、5ng/mL rEGF、5μg/mLインシュリン及び74ng/mL Hydrocortisoneを含有したKeratinocyte−SFM mediaを2日毎に取り替えながら継代培養して、脂肪組織由来多分化能中間葉幹細胞を分離した。
【0063】
実施例2:脂肪幹細胞の細胞遊走誘導
2-1:表2のケモカインまたは成長因子で細胞移動誘導
前記実施例1で分離した脂肪組織由来多分化能中間葉幹細胞を各ウェルに2x104cells/200μLで播種(seeding)して、以下ケモカインまたは成長因子で細胞移動を誘導した。陽性対照群としてFBS30%を使った。
【0064】
【表2】
【0065】
その結果を図1に示した。培地で誘導した細胞を陰性対照群とし、FBS30%で誘導した細胞を陽性対照群として、陰性対照群細胞を100とした時の比を各グラフで示した。図1から分かるように、脂肪組織由来中間葉幹細胞(AdMSCs)は、FBS30%と同様に、ケモカインまたは成長因子の刺激に反応して遊走が活発で、特にランテス、SDF−1α、HGF、TGF−β1、IGF−1、PDGF−ABまたはTNF−αに反応して細胞遊走が活発に誘導された。
【0066】
2−2:その他のケモカインまたは成長因子で細胞遊走を誘導した写真撮影
前記実施例1で分離した脂肪組織由来多分化能中間葉幹細胞を24時間FBS free Media(図2A)とTNF−α(図2B、2C)、走化性因子(chemotactic factor)(図2D)で前処理して培養した後0.25%トリプシン/1mM EDTAを処理して細胞を分離した後、PBSで洗浄して1,500rpmで5分間遠心分離して細胞を回収した。
【0067】
その後、トランスウェルインサート(Transwell Insert:Costar、3422)を0.1%ゼラチン(sigma−aldrich)で2時間コートした後、培地を分株された24ウェルプレートに取り付けた。各インサートに対して回収した脂肪幹細胞を2X104cells/200μLずつ播種して37℃、5%CO2インキュベーターで2時間培養した。培地(Media)とケモカイン(chemokine)と成長因子(growth factor)を100ng/mL濃度で分株させた24ウェルに、播種されたインサートを移して取り付けた。37℃、5%CO2インキュベーターで24時間培養した。次に、インサートの上の部分にある遊走しなかった脂肪幹細胞は綿棒で取り除いて洗浄後、70%メタノールで1時間固定した。
【0068】
洗浄後、0.5%クリスタルバイオレット溶液で1時間染色を行った。その後洗浄を行い、顕微鏡で、X100で観察後写真を撮った。
その結果、図2A〜2Dに示したように、何も処理しなかった脂肪幹細胞(図2A、2B)に比べて前処理した脂肪幹細胞(図2C、2D)の遊走率が高くて細胞が密になることが確認できた。
【0069】
実施例3:ケモカインまたは成長因子を前処理した脂肪幹細胞の細胞遊走
前記実施例1で分離した脂肪組織由来多分化能中間葉幹細胞を以下ケモカインまたは成長因子で24時間前処理した後、各ウェルに2x104cells/200μLでシーディングして10%FBSで細胞遊走を誘導した。30%FBSに比べて弁別力を観察しようとした。一方、前処理しなかった脂肪組織由来多分化能中間葉幹細胞を陰性対照群とした(未処理)。
【0070】
【表3】
【0071】
その結果を図3に示した。図3から分かるように、多数のケモカインまたは成長因子を前処理した脂肪組織由来中間葉幹細胞(AdMSCs)の中でPDGF−ABまたはTNF−αで前処理した場合において10%FBSによる細胞遊走が活発に誘導されたことが遊走した細胞数で確認でき、特にTNF−αで前処理した場合において顕著に活発に誘導されたことが確認された。
【0072】
実施例4:TNF−α前処理された脂肪幹細胞の細胞遊走
実施例3から得られた実験結果を参照して、前記実施例1で分離した脂肪組織由来多分化能中間葉幹細胞をTNF−αで24時間前処理した後、各ウェルに2x104細胞/200μLでシーディングして以下の表4に記載している多様なケモカインまたは成長因子で細胞遊走を誘導した。
【0073】
【表4】
【0074】
その結果を図4に示した。図4から分かるように、TNF−αで前処理した脂肪組織由来中間葉幹細胞(AdMSCs)は、ランテス、SDF−1α、EGF、β−FGF、TGF−β1、PDGF−AB等によって細胞遊走が活発に誘導されたことを遊走した細胞数で確認することができた。特に、実施例1の結果の図1と比較して見ると、TNF−α前処理有無による効果を確認できるが、TNF−αで前処理した場合、細胞遊走性が明らかに活発になることを確認することができた。
【0075】
実施例5:脂肪幹細胞に対する多様なケモカインまたは成長因子の前処理及び細胞遊走誘導能
前記実施例1で分離した脂肪組織由来多分化能中間葉幹細胞を以下の表5に記載したケモカインまたは成長因子で約24時間前処理した後、各ウェルに2x104細胞/200μLでシーディングし、前処理に使った各同一因子を利用して細胞遊走を誘導した。
【0076】
【表5】
【0077】
その結果を図5に示した。前処理をしなかった場合を白抜きの棒グラフで示し、該当因子で前処理をした場合、遊走した細胞数を黒塗りの棒グラフで示した。図5から分かるように、ランテス、MIP−3β、SDF−1α、BCA−1、CXCL16、EGF、PDGF−ABなど前記因子で前処理した脂肪幹細胞が前処理しなかった場合に比べて細胞遊走性が改善されることが確認できた。特に、ランテス、SDF−1α、BCA−1、CXCL16及びPDGF−ABの場合は細胞遊走能が顕著に増加した。
【0078】
実施例6:脂肪幹細胞のケモカインまたは成長因子受容体発現
実施例1で取得した脂肪組織由来多分化能中間葉幹細胞が各々のケモカインまたは成長因子受容体を発現するか否かを、相応する受容体の抗体及びフローサイトメトリー(FACS)を介して確認した。
一方、各ケモカインまたは成長因子に対する受容体とリガンド名は下記の表6の通りである。
【0079】
【表6】
【0080】
脂肪幹細胞をT75フラスコで培養した後、90%コンフルエンシーに満たされた時、0.25%トリプシン/1mM EDTAを処理して細胞を分離した後、PBSで洗浄して1,500rpmで5分間遠心分離して細胞を収集した。収集した細胞を10%FBS溶液で4℃冷蔵庫で1時間以上固定した後、洗浄した。その後、表7の抗体を4℃冷蔵庫で1時間以上培養してFACSを測定した。
【0081】
【表7】
【0082】
その結果を図6に示した。暗い領域が実験群であり、黒線は対照群を示したものである。IGF−1とHGFの受容体が確認されなかったため、抗体の機能を確認するために肺癌細胞であるA549細胞株を細胞株銀行から購入して培養した後、フローサイトメトリー(FACS)を介して確認した。
【0083】
図6から分かるように、前処理した脂肪組織由来多分化能中間葉幹細胞は、ランテス(Rantes、CCR1)、MIP−3β(CCR7)、SDF−1α(CXCR1)、BCA−1(CXCR5)、CXCL16、EGF、TGF、PDGF−AB、IGF−1、TNF−アルファ、FGFに対する受容体を発現していることがFACS結果から確認することができた。
【0084】
前記結果により、特定ケモカインまたは成長因子の受容体が脂肪組織由来多分化能中間葉幹細胞で発現することが確認され、このような受容体は該当因子に対して反応し、このような該当因子の前処理によって受容体の発現率が高まって、これらの間の反応性を利用して体内疾患部位へのターゲッティング遊走が誘導され、これを通して該当疾患の効果的治療が可能であることが示唆された。
【0085】
実施例7:脂肪幹細胞のケモカインまたは成長因子受容体mRNA確認
実施例1で取得した脂肪組織由来多分化能中間葉幹細胞が、各々のケモカインまたは成長因子受容体のmRNAを発現するか否かを、RT−PCRを介して確認した。
T75フラスコで培養した脂肪幹細胞を0.25%トリプシン/1mM EDTAを処理して細胞を分離した後、PBSで洗浄して1,500rpmで5分間遠心分離して細胞を収集した。収集した細胞は、Total RNA Extraction Kit(iNtRON Biotechnology)を利用してトータルRNAを抽出した。
RNA2μgをmaxime RT Pre mix kit(iNtRON Biotechnology)でcDNAを合成した。1X h−Taq buffer、0.2mM dNTP、0.4pMフォワードプライマー、0.4pMリバースプライマー、0.25U/μL h−Taq DNA polymerase(Solgent)でcDNA1μLを95℃で20秒間DNAを変成させた後、以下の表8の各温度(アニーリング温度)で40秒間プライマーを加熱して、72℃で1分間PCR産物を伸張させる反応を40cycle条件で遺伝子増幅を行った。実験に使われた受容体プライマーと加熱温度は以下の表8の通りである。
【0086】
【表8】
【0087】
SiZer DNA Markers−50(iNtRON)とPCR産物を2.0%アガロスゲルと1XTAE試薬を利用して110Vで1時間30分電気氷動した後、Fuji molecular imaging softwareでイメージ測定を行った。コントロール遺伝子としてGAPDHを使った。全PCR産物をSolgent社に塩基配列分析を依頼して99%以上塩基配列が一致することを確認した。
【0088】
その結果、図7に示したように、脂肪幹細胞で各々のケモカインまたは成長因子の受容体のmRNAが発現することが確認できた。図7Aの各バンドは、各々1:CCR1(380bp)、2:CCR2(474bp)、3:CCR7(461bp)、4:CXCR4(489bp)、5:CXCR5(494bp)、6:CXCR6(517bp)、7:GAPDH(362bp)を示した。図7Bの各バンドは各々M:Marker、1:EGFR(419bp)、2:TGFBR2(498bp)、3:PDGFRA(187bp)、4:PDGFRB(508bp)、5:IGF1R(299bp、未発現)、6:c−MET(201bp)、7:TNFRSF1A(218bp)、8:FGFR1(250bp)、9:GAPDH(362bp)を示し、GAPDHは陽性対照群として使った。
【0089】
これによって、脂肪幹細胞で特定ケモカインまたは成長因子の受容体のmRNAが発現することが確認され、このような受容体の反応性を利用して体内疾患へのターゲッティング遊走を誘導し、これを通して該当疾患の効果的治療が可能であることが示唆された。
【0090】
実施例8:脂肪幹細胞に対するアディポネクチンの前処理及び濃度毎誘導能
8−1:アディポネクチンの濃度毎誘導能確認
前記実施例1で分離した脂肪組織由来多分化能中間葉幹細胞をアディポネクチンで24時間前処理した後、アディポネクチンを各濃度(1ng/mL、10ng/mL、100ng/mL)で処理して細胞遊走を誘導した。
その結果を図8に示した。10ng/mLの時に比べて100ng/mLで処理した時、2倍程高い遊走量を示す結果から、濃度が高いほど細胞遊走誘導能が高いことを確認することができた。
【0091】
8−2:脂肪幹細胞のアディポネクチン受容体発現
実施例7の方法と同様の方法で表8に記載されたプライマーとアニーリング温度を使ってRT−PCRを行って脂肪幹細胞でアディポネクチン受容体が発現するか否かを確認した。
その結果、図9に示したように、アディポネクチンの受容体2種類(1:ADIPOR1(337bp)、2:ADIPOR2(538bp)が、脂肪幹細胞で発現することを確認した。これにより、アディポネクチンの前処理によってアディポネクチン受容体の発現率が高まって、これらの間の反応性を利用する可能性があることを確認した。
【0092】
以上、本発明の内容の特定の部分を詳述したが、当業界における通常の知識を持った者にとって、このような具体的な記述は単なる好適な実施態様に過ぎず、これにより本発明の範囲が制限されることはないという点は明らかである。よって、本発明の実質的な範囲は特許請求の範囲とこれらの等価物により定義されると言える。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明は、脂肪由来成体幹細胞及びこれの特定分泌物による細胞遊走誘導能力に関し、特に、特定ケモカインまたは成長因子で前処理した脂肪由来成体幹細胞及びこの特定分泌物を、静脈投与等の簡単な方法を介して、幹細胞の移植が必要な疾患部位に自らターゲッティングして遊走させることができる。従って、複雑な手術を行うことなく安全に疾患部位に成体幹細胞が遊走して治療効果を発揮する細胞治療剤として有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪組織由来成体幹細胞及びこの分泌物の1つ以上を有効性分として含有する脂肪幹細胞遊走誘導用組成物。
【請求項2】
前記脂肪組織由来成体幹細胞はケモカインまたは成長因子受容体を、細胞表面に発現するか、これらの分泌物がケモカインまたは成長因子受容体を含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記脂肪組織由来成体幹細胞の分泌物はアディポネクチンまたはレプチンであることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物はFBS(ウシ胎児血清)をさらに含有することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記ケモカインまたは成長因子は、ランテス(Rantes)、MCP−1(Monocyte chemoattractant protein-1)、MIP−3β(Monocyte inflammatory protein-3β)、SDF−1α(Stromal cell-derived factor-1α)、BCA−1(B cell attracting chemokine-1)、CXCL16(Chemokine C-X-C motif ligand 16)、EGF(Endothelial growth factor)、B−FGF(basic Fibroblast Growth Factor)、HGF(Hepatocyte growth factor)、TGF−β1(Transforming growth factor beta 1)、IGF−1(Insulin-like growth factor 1)、PDGF−AB(Platelet Derived Growth Factor AB)及びTNF−α(Tumor necrosis factor-α)からなる群から選択される1種以上であることを特徴とする請求項1または請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記脂肪組織由来成体幹細胞は、ケモカインまたは成長因子を含有するカクテルで前処理されることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記カクテルは、ランテス(Rantes)、MCP−1(Monocyte chemoattractant protein-1)、MIP−3β(Monocyte inflammatory protein-3β)、SDF−1α(Stromal cell-derived factor-1α)、BCA−1(B cell attracting chemokine-1)、CXCL16(Chemokine C-X-C motif ligand 16)、EGF(Endothelial growth factor)、b−FGF(basic Fibroblast Growth Factor)、HGF(Hepatocyte growth factor)、TGF−β1(Transforming growth factor beta 1)、IGF−1(Insulin-like growth factor 1)、PDGF−AB(Platelet Derived Growth Factor AB)及びTNF−α(Tumor necrosis factor-α)からなる群から選択される1種以上の因子を含有することを特徴とする請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記カクテルは、ランテス(Rantes)、SDF−1α(Stromal cell-derived factor-1α)、HGF(Hepatocyte growth factor)、TNF−α(Tumor necrosis factor-α)、PDGF−AB(Platelet Derived Growth Factor AB)及びTGF−β1(Transforming growth factor beta 1)からなる群から選択される1種以上の因子を含有すること特徴とする請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記脂肪由来成体幹細胞は、ヒト脂肪組織由来中間葉幹細胞(Human adipose tissue-derived mesenchymal stem cell、AdMSCs)であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記脂肪組織由来成体幹細胞は、1x107cells〜1x1010cellsの数で含まれることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
(a)脂肪組織由来成体幹細胞にケモカインまたは成長因子を含有するカクテルで前処理する工程、
(b)前記前処理された脂肪組織由来成体幹細胞及びこれの分泌物を含有する組成物を疾患部位と直接接触しない生体内の他の部位に投与する工程を含む、脂肪組織由来成体幹細胞遊走誘導方法。
【請求項12】
前記(a)工程においてFBS(ウシ胎児血清)を処理する工程をさらに含むことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記カクテルは、ランテス(Rantes)、SDF−1α(Stromal cell-derived factor-1α)、HGF(Hepatocyte growth factor)、TNF−α(Tumor necrosis factor-α)、PDGF−AB(Platelet Derived Growth Factor AB)及びTGF−β1(Transforming growth factor beta 1)からなる群から選択される1種以上の因子を含有することを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記投与は静脈投与であることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項1】
脂肪組織由来成体幹細胞及びこの分泌物の1つ以上を有効性分として含有する脂肪幹細胞遊走誘導用組成物。
【請求項2】
前記脂肪組織由来成体幹細胞はケモカインまたは成長因子受容体を、細胞表面に発現するか、これらの分泌物がケモカインまたは成長因子受容体を含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記脂肪組織由来成体幹細胞の分泌物はアディポネクチンまたはレプチンであることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物はFBS(ウシ胎児血清)をさらに含有することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記ケモカインまたは成長因子は、ランテス(Rantes)、MCP−1(Monocyte chemoattractant protein-1)、MIP−3β(Monocyte inflammatory protein-3β)、SDF−1α(Stromal cell-derived factor-1α)、BCA−1(B cell attracting chemokine-1)、CXCL16(Chemokine C-X-C motif ligand 16)、EGF(Endothelial growth factor)、B−FGF(basic Fibroblast Growth Factor)、HGF(Hepatocyte growth factor)、TGF−β1(Transforming growth factor beta 1)、IGF−1(Insulin-like growth factor 1)、PDGF−AB(Platelet Derived Growth Factor AB)及びTNF−α(Tumor necrosis factor-α)からなる群から選択される1種以上であることを特徴とする請求項1または請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記脂肪組織由来成体幹細胞は、ケモカインまたは成長因子を含有するカクテルで前処理されることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記カクテルは、ランテス(Rantes)、MCP−1(Monocyte chemoattractant protein-1)、MIP−3β(Monocyte inflammatory protein-3β)、SDF−1α(Stromal cell-derived factor-1α)、BCA−1(B cell attracting chemokine-1)、CXCL16(Chemokine C-X-C motif ligand 16)、EGF(Endothelial growth factor)、b−FGF(basic Fibroblast Growth Factor)、HGF(Hepatocyte growth factor)、TGF−β1(Transforming growth factor beta 1)、IGF−1(Insulin-like growth factor 1)、PDGF−AB(Platelet Derived Growth Factor AB)及びTNF−α(Tumor necrosis factor-α)からなる群から選択される1種以上の因子を含有することを特徴とする請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記カクテルは、ランテス(Rantes)、SDF−1α(Stromal cell-derived factor-1α)、HGF(Hepatocyte growth factor)、TNF−α(Tumor necrosis factor-α)、PDGF−AB(Platelet Derived Growth Factor AB)及びTGF−β1(Transforming growth factor beta 1)からなる群から選択される1種以上の因子を含有すること特徴とする請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記脂肪由来成体幹細胞は、ヒト脂肪組織由来中間葉幹細胞(Human adipose tissue-derived mesenchymal stem cell、AdMSCs)であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記脂肪組織由来成体幹細胞は、1x107cells〜1x1010cellsの数で含まれることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
(a)脂肪組織由来成体幹細胞にケモカインまたは成長因子を含有するカクテルで前処理する工程、
(b)前記前処理された脂肪組織由来成体幹細胞及びこれの分泌物を含有する組成物を疾患部位と直接接触しない生体内の他の部位に投与する工程を含む、脂肪組織由来成体幹細胞遊走誘導方法。
【請求項12】
前記(a)工程においてFBS(ウシ胎児血清)を処理する工程をさらに含むことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記カクテルは、ランテス(Rantes)、SDF−1α(Stromal cell-derived factor-1α)、HGF(Hepatocyte growth factor)、TNF−α(Tumor necrosis factor-α)、PDGF−AB(Platelet Derived Growth Factor AB)及びTGF−β1(Transforming growth factor beta 1)からなる群から選択される1種以上の因子を含有することを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記投与は静脈投与であることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公表番号】特表2013−507956(P2013−507956A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−535141(P2012−535141)
【出願日】平成22年10月25日(2010.10.25)
【国際出願番号】PCT/KR2010/007329
【国際公開番号】WO2011/049414
【国際公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(508033465)アールエヌエル バイオ カンパニー リミテッド (12)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月25日(2010.10.25)
【国際出願番号】PCT/KR2010/007329
【国際公開番号】WO2011/049414
【国際公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(508033465)アールエヌエル バイオ カンパニー リミテッド (12)
【Fターム(参考)】
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