説明

脂肪蓄積抑制用組成物

【課題】安全性を兼ね備えつつ、より効果的に脂肪蓄積を抑制する組成物の提供。
【解決手段】フォルスコリン及びリンゴ由来ポリフェノールを有効成分とすることを特徴とする脂肪蓄積抑制用組成物、フォルスコリン及びホップ由来ポリフェノールを有効成分とすることを特徴とする脂肪蓄積抑制用組成物、及び、前記リンゴ由来ポリフェノールがプロシアニジンであることを特徴とする前記記載の脂肪蓄積抑制用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォルスコリンと、リンゴ由来ポリフェノール又はホップ由来ポリフェノールとを有効成分とする脂肪蓄積抑制用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
日本を含めた経済先進国では、急速な高齢化に伴い疾病構造が変化し、疾病全体に占める虚血性心疾患、脳血管疾患、糖尿病などの生活習慣病の割合が増加している。日本においては、現在、死亡原因に占める生活習慣病の割合は約6割である。生活習慣病の中でも、特に、心疾患、脳血管疾患の発症に対して重要な危険因子である糖尿病、高血圧症、脂質異常症などの有病者やその予備群が増加している。また、これらの生活習慣病の発症前段階であるメタボリックシンドローム(内臓脂肪の蓄積が原因となる肥満に加えて、高血糖、高血圧が重複した状態)の人やその予備群と考えられる人の割合も増加傾向にあり、約920万人、その予備軍と考えられる人も含めると約1,020万人が、メタボリックシンドロームであると言われている。メタボリックシンドロームの人の割合は、男女とも40歳以上で高く、40歳〜74歳の男性では2人に1人、女性では5人に1人という割合に達しており、健康を維持する上で社会的問題となっている(平成16年国民健康・栄養調査)。
【0003】
メタボリックシンドロームの人では、糖尿病、高血圧症、脂質異常症などを発症し、さらには脳血管疾患などを発症するリスクが高くなることから、その該当者及びその予備群において、いかにメタボリックシンドロームを予防、改善するかが重要な課題となっている。メタボリックシンドロームを予防、改善する手段としては、運動療法、食生活の改善に加えて、健康食品、特定保健用食品など機能性食品の摂取が挙げられる。メタボリックシンドロームの予防・改善効果を有する機能性食品として、例えば、緑茶由来カテキン、ウーロン茶由来重合ポリフェノール、コーヒー豆由来マンノオリゴ糖などを有効成分とする特定保健用食品が開発されている(例えば、非特許文献1〜3参照。)。
【0004】
女性では男性に比べてメタボリックシンドロームの割合は少ないが、一方で皮下脂肪型肥満の割合が高い。また、女性の場合は、美容上の観点から、上腕、太腿、脹脛、顔などの皮下脂肪を低減し、スリム化する要望が強い。皮下脂肪を低減する手段としては、運動、食生活の改善、マッサージ等の物理的刺激などに加えて、化粧品などの皮膚外用剤の適用が挙げられる。皮下脂肪低減効果を有する皮膚外用剤として、例えば、ラズベリーケトン類、グレープフルーツオイルなどを有効成分とする皮膚外用剤が開発されている(例えば、特許文献1及び2参照。)。
【0005】
フォルスコリン(Forskolin;CAS No.64657−18−7)は、シソ科のコレウス・フォルスコリィ(Coleus forskohlii)の根から分離された主要な細胞浸透性ジテルペンである。低用量では、心筋収縮力を高める変力薬として作用し、高用量では平滑筋弛緩作用を示すため、血圧降下剤及び血管拡張剤として作用することが知られている。現在のところ、作用量では目立った副作用は認められていない。フォルスコリンの薬理学的作用はアデニル酸シクラーゼ活性化作用によるものであり(EC50=4μM)、該作用により細胞内のcAMPレベルが上昇し、心筋収縮、血圧降下、血管拡張などが促進される。フォルスコリンは脂肪細胞における脂肪蓄積抑制作用を有することが知られており、経口投与により体脂肪を低減することや皮膚外用剤として使用することにより、皮下脂肪を低減することが知られている(例えば、特許文献3及び4参照。)。フォルスコリンの脂肪蓄積抑制作用もアデニル酸シクラーゼ活性化作用に起因しており、細胞内のcAMPレベルを上昇させることにより、脂肪分解酵素であるUncoupling proteinを活性化すること、脂肪細胞から分泌されるサイトカインであるadipsinの分泌を抑制すること、lipoprotein lipase及びglycerophosphate dehydrogenaseの発現を抑制することが知られている(例えば、非特許文献4及び5参照。)。
【0006】
植物等から抽出されたポリフェノールには、クロロゲン酸等のカフェ酸誘導体(エステル)やp−クマル酸誘導体、フラバン−3−オール類(カテキン類)、ケルセチン配糖体等のフラボノール類、フロレチン配糖体等のカルコン類、プロシアニジン類等の様々な種類のポリフェノール類が含まれている。リンゴの果実から抽出、分離されたリンゴ由来ポリフェノールも、多くのポリフェノール類から構成されているが、プロシアニジンB−2等のプロシアニジンを主要成分とする組成であること、抗酸化、血圧上昇抑制、変異原性抑制、アレルギー性抑制、抗う蝕、消臭、生体内脂質代謝制御、内臓脂肪蓄積抑制、インシュリン上昇抑制等の種々の生理機能を有することが明らかになっている(例えば、特許文献5〜7参照。)。
【0007】
一方、ホップ由来ポリフェノールは、ホップ苞から抽出、分離されたポリフェノールであり、脂質の加水分解酵素であるリパーゼ活性を阻害することや、血中の中性脂肪を低減することが明らかになっている(例えば、特許文献8及び9参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−169325号公報
【0009】
【特許文献2】特開2005−194252号公報
【0010】
【特許文献3】米国特許第5,804,596号明細書
【0011】
【特許文献4】特開平10−182473号公報
【0012】
【特許文献5】特開平7−285876号公報
【0013】
【特許文献6】特開平10−330278号公報
【0014】
【特許文献7】国際公開第05/082390号パンフレット
【0015】
【特許文献8】特開2001−321166号公報
【0016】
【特許文献9】特開2006−151945号公報
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】T.Hase,et.al.、Journal of OleoScience、2001年、第50巻第7号、第599〜605ページ。
【0018】
【非特許文献2】原祐司等、薬理と治療、2004年、第32巻第6号、第335〜342ページ。
【0019】
【非特許文献3】浅野一朗等、医学と薬学、2006年、第55巻第1号、第93〜103ページ。
【0020】
【非特許文献4】P.J.Scarpace,et.al.、Pflugers Arch−European Journal Physiology、1996年、第431巻第3号、第388〜394ページ。
【0021】
【非特許文献5】J.Antras,et.al.、Molecular and Cellular Endocrinology、1991年、第82巻第2〜3号、第183〜190ページ。
【0022】
【非特許文献6】A.M.Saleem,et.al.、Journal of Chromatography A、2006年、第1101巻第1〜2号、第313〜314ページ。
【0023】
【非特許文献7】T.Shoji,et.al.、Journal of Chromatography A、2006年、第1102巻、第206〜213ページ。
【0024】
【非特許文献8】T.Shoji,et.al.、Journal of Agricultural and Food Chemistry、2003年、第51巻第3号、第3806〜3813ページ。
【0025】
【非特許文献9】T.Shoji,et.al.、Journal of Agricultural and Food Chemistry、2006年、第54巻第3号、第884〜892ページ。
【0026】
【非特許文献10】T.Shoji,et.al.、Food and Chemical Toxicology、2004年、第42巻、第959〜967ページ。
【0027】
【非特許文献11】M.Ohnishi−kameyama,et.al.、Mass Spectrometry、1997年、第11巻、第31〜36ページ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
これまでに、種々の内臓脂肪蓄積抑制組成物及び皮下脂肪蓄積抑制組成物が提供されてきたが、いずれも、充分に有効な脂肪蓄積抑制効果を奏するものであって、なおかつ安全である組成物ではなかった。
本発明は、安全性を兼ね備えつつ、より効果的に脂肪蓄積を抑制する組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、フォルスコリンと、リンゴ由来ポリフェノール又はホップ由来ポリフェノールとを併用すると、脂肪細胞における脂肪蓄積が相乗的に抑制されることを見出し、本発明を完成させた。
【0030】
すなわち、本発明は、
(1)フォルスコリン及びリンゴ由来ポリフェノールを有効成分とすることを特徴とする脂肪蓄積抑制用組成物、
(2)フォルスコリン及びホップ由来ポリフェノールを有効成分とすることを特徴とする脂肪蓄積抑制用組成物、
(3)前記リンゴ由来ポリフェノールがプロシアニジンであることを特徴とする前記(1)記載の脂肪蓄積抑制用組成物、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0031】
本発明の脂肪蓄積抑制用組成物は、安全に摂取することが可能であり、脂肪細胞における脂肪蓄積を効果的に抑制し得るものである。したがって、本発明の脂肪蓄積抑制用組成物を飲食品として摂取することにより、内臓脂肪の蓄積を抑制し、メタボリックシンドロームを予防、改善し得ることが期待できる。また、本発明の脂肪蓄積抑制用組成物を化粧品等の皮膚外用剤として適用することにより、皮下脂肪の蓄積を抑制し、腹部周囲、上腕、太腿、脹脛、顔などのスリミング効果が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】3T3L1脂肪前駆細胞の分化誘導時において、フォルスコリン(FK)単独、各種ポリフェノール単独及び両者を併用した場合の脂肪蓄積抑制作用を示す図である。
【図2】3T3L1脂肪前駆細胞の分化誘導時において、フォルスコリン(FK)単独、リンゴ由来プロシアニジン(ACTs)単独及び両者を併用した場合の脂肪蓄積抑制作用を示す図である。
【図3】マウスに、高脂肪食と一緒に、フォルスコリン(FK)及びリンゴ由来ポリフェノール(AP)を単独あるいは組み合わせて摂取させた場合の体重の変化を示す図である。
【図4】マウスに、高脂肪食と一緒に、フォルスコリン(FK)及びリンゴ由来ポリフェノール(AP)を単独あるいは組み合わせて摂取させた場合の体重当りの腸間膜周囲の脂肪重量の割合を示す図である。
【図5】マウスに、高脂肪食と一緒に、フォルスコリン(FK)及びリンゴ由来ポリフェノール(AP)を単独あるいは組み合わせて摂取させた場合の体重当りの精巣周囲の脂肪重量の割合を示す図である。
【図6】マウスに、高脂肪食と一緒に、フォルスコリン(FK)及びリンゴ由来ポリフェノール(AP)を単独あるいは組み合わせて摂取させた場合の体重当りの腎臓周囲の脂肪重量の割合を示す図である。
【図7】マウスに、高脂肪食と一緒に、フォルスコリン(FK)及びリンゴ由来ポリフェノール(AP)を単独あるいは組み合わせて摂取させた場合の血漿中のトリグリセリドの濃度を示す図である。
【図8】マウスに、高脂肪食と一緒に、フォルスコリン(FK)及びリンゴ由来ポリフェノール(AP)を単独あるいは組み合わせて摂取させた場合の血漿中のグルコースの濃度を示す図である。
【図9】マウスに、高脂肪食と一緒に、フォルスコリン(FK)及びリンゴ由来ポリフェノール(AP)を単独あるいは組み合わせて摂取させた場合の肝臓中の総コレステロールの濃度を示す図である。
【図10】マウスに、高脂肪食と一緒に、フォルスコリン(FK)及びホップ由来ポリフェノール(HP)を単独あるいは組み合わせて摂取させた場合の体重の変化を示す図である。
【図11】マウスに、高脂肪食と一緒に、フォルスコリン(FK)及びホップ由来ポリフェノール(HP)を単独あるいは組み合わせて摂取させた場合の血漿中のトリグリセリドの濃度を示す図である。
【図12】マウスに、高脂肪食と一緒に、フォルスコリン(FK)及びホップ由来ポリフェノール(HP)を単独あるいは組み合わせて摂取させた場合の血漿中のグルコースの濃度を示す図である。
【図13】マウスに、高脂肪食と一緒に、フォルスコリン(FK)及びホップ由来ポリフェノール(HP)を単独あるいは組み合わせて摂取させた場合の肝臓中の総コレステロールの濃度を示す図である。
【図14】BMI<25あるいはBMI≧25の男性にフォルスコリン及びリンゴ由来ポリフェノールを含有する錠剤を摂取させた場合の体重の変化を示す図である。
【図15】BMI<25あるいはBMI≧25の男性にフォルスコリン及びリンゴ由来ポリフェノールを含有する錠剤を摂取させた場合の腹囲の変化を示す図である。
【図16】BMI<25あるいはBMI≧25の男性にフォルスコリン及びリンゴ由来ポリフェノールを含有する錠剤を摂取させた場合の体脂肪率の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明において用いられるフォルスコリンは、コレウス・フォルスコリィ(Coleus forskohlii)の根から抽出したものである。コレウス・フォルスコリィからのフォルスコリンの抽出は、公知のいずれの方法で行っても良い。例えば、非特許文献6には、コレウス・フォルスコリィの根抽出物から簡便、迅速、経済的に高純度のフォルスコリンを分離する方法が開示されている。また、市販されているコレウス・フォルスコリィの根から抽出したものをスプレードライ等により乾燥粉末とした根抽出物等が市販されており、これらの市販品を用いることもできる。
【0034】
本発明において用いられるリンゴ由来ポリフェノールは、原料であるリンゴ果実から抽出・精製されたポリフェノール画分からなるものである。リンゴの果実等からのポリフェノール画分の抽出・精製は、通常、植物の組織等からポリフェノールを抽出・精製する場合に用いられるいずれの方法で行ってもよい。
【0035】
本発明では、原料果実としては、成熟果実、未熟果実ともに用いることができるが、より多くのポリフェノールを含有すること、及び広範な生理機能を有する各種成分を多く含有することから、未熟果実から抽出・精製されたリンゴ由来ポリフェノールであることが特に好ましい。
【0036】
リンゴ由来ポリフェノールは、例えば、以下の方法により得ることができる。まず、原料果実からポリフェノール類を抽出したリンゴ抽出物を得る。該リンゴ抽出物は、常法により得られる原料果実の搾汁果汁であってもよく、水や、エタノール等の有機溶媒を用いて抽出した抽出物であってもよい。有機溶媒を用いて抽出した抽出物は、蒸留法等により有機溶媒を除去した後、搾汁果汁等と同様に次の工程に用いることができる。なお、搾汁果汁や有機溶媒を除去した抽出物は、そのままでも使用することは可能であるが、遠心分離やろ過等の工程を経て、清澄な果汁若しくは抽出物としたものを使用することが好ましい。
【0037】
リンゴ由来ポリフェノールは、このようにして得られたリンゴ抽出物から、リンゴ由来ポリフェノールを吸着し得る吸着剤に吸着させた後に、該吸着剤から溶出することにより、リンゴ由来ポリフェノール画分として分離精製することができる。該吸着剤として、例えば、イオン交換樹脂や合成吸着樹脂、シリカゲル等の吸着剤、ゲルろ過剤等が挙げられる。吸着剤への吸着や溶出は、常法により行うことができる。例えば、吸着剤を充填したカラムにリンゴ抽出物を通液し、ポリフェノール類を吸着させる。続いて該カラムに純水を通液し、カラム中の非吸着物質(糖類、有機酸類等)を除去した後、10〜90%、好ましくは30〜80%のエタノールでリンゴ由来ポリフェノールを溶出させることができる。
【0038】
本発明において用いられるリンゴ由来ポリフェノール画分としては、リンゴから抽出・精製されたポリフェノール類を含むものであれば、含まれるポリフェノール類の種類や組成比等は特に限定されるものではない。例えば、このようにして得られるリンゴ由来ポリフェノール画分は、プロシアニジンB−2等のプロシアニジン類等を主要成分とし、その他にも、クロロゲン酸等のカフェ酸誘導体(エステル)やp−クマル酸誘導体、フラバン−3−オール類(カテキン類)、ケルセチン配糖体等のフラボノール類、フロレチン配糖体等のカルコン類等のポリフェノール類が含まれている。
【0039】
プロシアニジンはFlavan−3−olが4−8位もしくは4−6位の炭素間で繰り返し縮合した構造の化合物であり、代表的なプロシアニジンは(+)−カテキンと(−)−エピカテキンが4−8位もしくは4−6位の炭素間で繰り返し縮合した構造をしている(例えば、非特許文献7参照。)。プロシアニジンは、Flavan−3−olが6位又は8位のどちらに結合するかといった結合位置の違い、どのFlavan−3−olが結合するのかといった結合種の違い、さらには結合した単量体の間で生じる立体配座の影響により、複雑な構造をとる。3量体以上の複雑なプロシアニジンの構造については、長らく構造決定は困難であったが、リンゴ未熟果実から順相系カラム及び逆相系カラムを組み合わせることで精製し、−40℃の低温条件下で立体配座の影響を抑えた状態でNMR測定を行うことにより、初めてその構造が明らかにされた(例えば、非特許文献8参照。)。
【0040】
既知の方法によりリンゴ由来のプロシアニジンを約75重量%まで高含有化した原料(ACTs:Apple Condensed Tannins)を調製することが可能である(例えば、非特許文献7又は9参照。)。ACTsは、プロシアニジンB1及びプロシアニジンB2などの2量体、プロシアニジンC1などの3量体、及び4量体以上のプロシアニジンの複合物である。
後述する実施例から明らかであるように、ACTsにはフォルスコリンとの併用による相乗的な脂肪蓄積抑制作用が見られたが、Flavan−3−olである(+)−カテキン及び(−)−没食子酸エピガロカテキンにはフォルスコリンとの併用による相乗的な脂肪蓄積抑制作用が見られなかった。すなわち、本発明においては、リンゴ由来ポリフェノールとして、脂肪蓄積抑制効果をより効果的に発揮し得るため、プロシアニジンの含量を高めた原料を使用することがより好ましい。
【0041】
本発明のリンゴ由来ポリフェノールは、原料が食品に用いられている果実であるため、安全に摂取することができる。実際に、ポリフェノール画分について、急性毒性試験、亜慢性毒性試験、変異原性試験等の各種安全性試験を行ったところ、その安全性が確認できた(例えば、非特許文献10参照。)。
【0042】
本発明において用いられるホップ由来ポリフェノールは、原料であるホップ苞を含むホップ毬果やホップペレットから抽出・精製されたポリフェノール画分からなるものである。ホップ原料からのポリフェノール画分の抽出方法としては、特に限定されないが、ホップ原料を、4〜95℃、好ましくは30〜60℃で、0〜50%、好ましくは10〜40%のエタノールと混和することにより、抽出することができる。ホップ原料と抽出溶媒の割合は、1:20〜100(重量比)、好ましくは1:30〜90(重量比)であり、20〜60分間、好ましくは30〜50分間、攪拌しながら抽出する。その後、5〜75℃ 、好ましくは15〜25℃で、珪藻土(シリカ300S、中央シリカ)ろ過によりさらに清澄化を行い、ホップ苞抽出物を得る。
【0043】
ホップ由来ポリフェノールは、このようにして得られたホップ苞抽出物から、ホップ由来ポリフェノールを吸着し得る吸着剤に吸着させた後に、該吸着剤から溶出することにより、ホップ由来ポリフェノール画分として分離精製することができる。吸着剤への吸着や溶出は、常法により行うことができる。例えば、0〜40℃ 、好ましくは15〜25℃で、吸着剤を充填したカラムにホップ苞抽出物を通液し、ポリフェノール類を吸着させる。続いて該カラムに純水を通液し、カラム中の非吸着物質(糖類、有機酸類等)を除去した後、10〜90%、好ましくは30〜80%のエタノールでホップ由来ポリフェノールを溶出させることができる。
【0044】
該吸着剤としては、ポリフェノール様物質を吸着するものであれば特に限定されないが、例えば親水性ビニルポリマー樹脂(トヨパールHW40、東ソー社製)、スチレン−ジビニルベンゼン樹脂(セパビーズSP−825、三菱化学社製)、ゲル型合成樹脂(ダイヤイオンHP−20、三菱化学社製)等を挙げることができる。
【0045】
本発明において用いられるホップ由来ポリフェノール画分としては、ホップから抽出・精製されたポリフェノール類を含むものであれば、含まれるポリフェノール類の種類や組成比等は特に限定されるものではない。本発明においては、特に、ホップ苞又はホップ苞抽出物に含有されているポリフェノール類のうち、分画分子量1,000以上の限外ろ過膜で処理した際に該限外ろ過膜を透過しないポリフェノール類の含有量が高いホップ由来ポリフェノール画分を用いることが好ましい。分画分子量1,000以上の限外ろ過膜を透過しないポリフェノール類は、小腸内における生体への吸収を制御する点で好ましいためである。
【0046】
このような、分画分子量1,000以上の限外ろ過膜を透過しないポリフェノール類の含有量が高いホップ由来ポリフェノール画分は、例えば、下記の手法により調製することができる。まず、上記の抽出工程又は吸着工程で得られたホップ苞抽出物又はホップ苞由来ポリフェノールを含む処理液を、分画分子量が1,000以上、好ましくは10,000〜50,000の限外ろ過膜で処理する。その際必要があれば、ホップ苞由来ポリフェノールを含む処理液を減圧濃縮し、エタノール濃度を下げておくこともできる。また、限外ろ過膜による処理は、抽出溶媒の有機溶媒濃度や抽出溶媒とホップ又はホップ苞の割合にもよるが、およそ上残り液の量が処理開始時の1/10〜1/100 、好ましくは1/20〜1/100になるまで行う。その際の圧力は9.8kPa〜981kPa、好ましくは98kPa〜686kPaである。なお、分画分子量1,000以上の限外ろ過膜を透過しないポリフェノール類の含有量が高いホップ由来ポリフェノール画分を得る方法は、上記方法に限定されるものではなく、ホップ苞抽出物を分画分子量1,000以上の限外ろ過膜で処理した後、限外ろ過膜を透過しない処理液を、ゲル状高分子等の吸着剤を用いて吸着処理をしてもよい。
【0047】
本発明の脂肪蓄積抑制用組成物の有効成分とするリンゴ由来ポリフェノールやホップ由来ポリフェノールは、上記手法により得られたポリフェノール画分をそのまま用いてもよく、該ポリフェノール画分を濃縮した濃縮液を用いてもよい。例えば、25〜100℃ 、好ましくは35〜90℃で減圧濃縮することにより、該ポリフェノール画分からエタノール等の溶媒を除去し、濃縮することができる。また、リンゴ由来ポリフェノールやホップ由来ポリフェノールとしては、得られたポリフェノール画分を濃縮後、得られた濃縮液をそのままあるいはデキストリン等の粉末助剤を添加し、噴霧乾燥又は凍結乾燥処理することにより、粉末状としたものを用いてもよい。さらに、粉末状のポリフェノールを、エタノール等の有機溶媒やクエン酸等の有機酸等に溶解させることにより、好ましい溶剤に溶解させたポリフェノールとしたものを用いてもよい。なお、ポリフェノールを溶解させる溶剤としては、例えば、エタノール等の有機溶媒やクエン酸などの有機酸等を用いることができる。
【0048】
本発明の脂肪蓄積抑制用組成物は、フォルスコリンと、リンゴ由来ポリフェノール又はホップ由来ポリフェノールとを有効成分とするものである。具体的には、フォルスコリン、フォルスコリンの供給源としてのコレウス・フォルスコリィの根又はその抽出物のいずれかと、リンゴ由来ポリフェノール、リンゴ由来ポリフェノールの供給源としてのリンゴ果実又はその抽出物のいずれかと、を有効成分とするものである。また、フォルスコリン、フォルスコリンの供給源としてのコレウス・フォルスコリィの根又はその抽出物のいずれかと、ホップ由来ポリフェノール、ホップ由来ポリフェノールの供給源としてのホップ苞果実又はその抽出物のいずれかと、を有効成分とするものである。
【0049】
本発明の脂肪蓄積抑制用組成物は、経口摂取されるものであってもよく、経皮摂取されるものであってもよい。例えば、本発明の脂肪蓄積抑制用組成物は、食品、食品添加物、シップ剤やジェル剤等の皮膚外用剤、及び該皮膚外用剤の成分として用いることができる。
【0050】
本発明の脂肪蓄積抑制用組成物を食品等として用いる場合には、例えば、澱粉、乳糖、麦芽糖、植物油脂粉末、カカオ脂末、ステアリン酸等の適当な助剤を添加した後、慣用の手段を用いて、食用に適した形態、例えば、顆粒状、粒状、錠剤、カプセル、ペースト等に成形して健康補助食品、保健機能食品などとすることができる。また、種々の食品、例えば、ハム、ソーセージ等の食肉加工食品、かまぼこ、ちくわ等の水産加工食品、パン、菓子、バター、粉乳、発酵乳製品等に添加してもよく、水、果汁、牛乳、清涼飲料水等の飲料に添加して使用してもよい。
【0051】
本発明の脂肪蓄積抑制用組成物を皮膚外用剤又はその成分として用いる場合には、例えば、脂肪蓄積抑制用組成物に、小麦胚芽油、オリーブ油等の油分を添加して、皮膚外用剤を製造することができる。本発明の脂肪蓄積抑制用組成物を配合した皮膚外用剤は、皮下脂肪蓄積抑制効果が期待できる外用可能なあらゆる剤形、例えば、ローション、クリーム、乳液、ゲル剤、エアゾール剤、軟膏、ハップ剤、エッセンス、パック、洗浄剤、浴用剤、ファンデーション等として使用することができ、医薬品、医薬部外品、化粧品のいずれであってもよい。また、本発明の脂肪蓄積抑制用組成物を配合した皮膚外用剤を製造する場合には、その種類、剤形等に応じた公知の成分を配合できる。例えば、油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、アルコール類、エステル類、界面活性剤、金属石鹸、pH調整剤、防腐剤、香料、保湿剤、粉体、紫外線吸収剤、増粘剤、色素、酸化防止剤等の成分を配合することができる。
【0052】
本発明の脂肪蓄積抑制用組成物は、経口摂取用組成物と経皮摂取用組成物のいずれの場合であっても、さらに、コエザイムQ10、α−リポ酸、カルニチン、エラグ酸、ピペリン、カプサイシン、ヒドロキシクエン酸等の脂肪蓄積抑制作用を有する化合物を配合することにより、一層脂肪蓄積抑制作用が増強され、好ましい効果を得ることが期待できる。
【0053】
本発明の脂肪蓄積抑制用組成物中のフォルスコリン含量、リンゴ由来ポリフェノール含量、及びホップ由来ポリフェノール含量は、フォルスコリンとリンゴ由来ポリフェノールの併用による脂肪蓄積抑制における相乗効果や、フォルスコリンとホップ由来ポリフェノールの併用による脂肪蓄積抑制における相乗効果が奏し得る含量であれば、特に限定されるものではなく、該脂肪蓄積抑制用組成物の摂取方法や、摂取対象者の性別、年齢、体重、健康状況等を考慮して、適宜決定することができる。
【0054】
本発明の脂肪蓄積抑制用組成物を食品として用いる場合には、例えば、フォルスコリンの摂取量が乾燥重量として成人1日当たり10〜3000mg、好ましくは30〜1000mgであり、リンゴ由来ポリフェノール又はホップ由来ポリフェノールの摂取量が乾燥ポリフェノール画分の重量として成人1日当たり10〜3000mg、好ましくは30〜1000mgとなるように、それぞれ含有させることができる。また、本発明の脂肪蓄積抑制用組成物は、1日に1〜数回に分けて経口摂取してもよい。
【0055】
本発明の組成物を食品として用いる場合のフォルスコリン(FK)と、リンゴ由来ポリフェノール又はホップ由来ポリフェノールとの配合比としては、1:1〜1:100、好ましくは1:10〜1:33である。
【0056】
本発明の脂肪蓄積抑制用組成物を皮膚外用剤として用いる場合には、例えば、フォルスコリンを0.01〜20重量%、より好ましくは0.1〜5重量%、リンゴ由来ポリフェノール又はホップ由来ポリフェノールを0.01〜20重量%、より好ましくは0.1〜5重量%となるように、それぞれ配合させることができる。また、ヒトの皮膚への適用量は、対象者の性別、年齢、皮膚状態、貼着する部位等により異なり、特に限定はされないが、上記の量でフォルスコリン等を配合した皮膚外用剤を、所用の患部に1日1〜数回、0.001〜0.1g/cm、好ましくは0.01〜0.05g/cm塗布する。
【実施例】
【0057】
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0058】
[調製例1 フォルスコリンの調製]
フォルスコリン(Calbiochem社製)を生化学用試薬グレードのジメチルスルホキシド(和光純薬社製)に溶解させ、最終濃度10mg/mlのフォルスコリン溶液を調製した。
【0059】
[調製例2 リンゴ由来ポリフェノールの調製]
青森県産リンゴ幼果300kgを破砕、圧搾し果汁210kgを得た。得られた果汁にペクチナーゼを30ppmとなるよう加えて清澄化し、遠心分離後、珪藻土(シリカ300S、中央シリカ社製)ろ過により、さらに清澄化を行い、清澄果汁を得た。清澄果汁を吸着樹脂(ダイアイオンSP−850、三菱化学社製)を充填したカラムに通液し、ポリフェノール類を吸着させた。続いて純水を通液し、カラム中の非吸着物質(糖類、有機酸類等)を除去したのち、40%アルコールでポリフェノール類を溶出した。得られたポリフェノール画分からアルコールを減圧濃縮し、抽出粉末(リンゴ由来ポリフェノール)約2kgを調製した。抽出粉末中の成分を、逆相高速液体クロマトグラフィーを用いて分析した結果、クロロゲン酸類(約20重量%)、フロレチレン配糖体類(約5重量%)、フラボノール類(約15重量%)、プロシアニジン(約50重量%)及びその他褐変物質(約10重量%)からなることが確認できた。さらに、このプロシアニジン類は、マトリックス支援レーザーイオン化−飛行時間型質量分析計(MALDI−TOF/MS、アプライドバイオシステム社製)による解析の結果、フラボノール類であるカテキンやエピカテキンから構成される2量体から15量体までのオリゴマーやポリマーであることが確認された(例えば、非特許文献11参照。)。
【0060】
[調製例3 リンゴ由来プロシアニジン分画物(ACTs)の調製]
リンゴ由来ポリフェノールを含む画分液又は抽出粉末の水溶液を、水酸化ナトリウムを用いてpH6.5から7.5の間となるよう調整したのち、吸着樹脂(ダイアイオンHP−20、三菱化学社製)を充填したカラムに通液し、リンゴ由来ポリフェノールを吸着させた。続いて純水を通液し、カラム中の非吸着物質(フェノールカルボン酸類やフロレチレン配糖体類)を除去したのち、30%アルコールでポリフェノール類を溶出した。得られた画分がリンゴ由来プロシアニジン分画物(ACTs:Apple Condensed Tannins)であり、プロシアニジン含量は約75重量%まで高められている(例えば、非特許文献7又は9参照。)。
【0061】
[調製例4 ホップ由来ポリフェノールの調製]
ホップ苞20gを600mLの50%エタノール水溶液中で、攪拌しながら、80℃、40分間抽出した。ろ過後、容積が300mLになるまで減圧濃縮し、その濃縮液をスチレン−ジビニルベンゼン樹脂(セパビーズSP−825,三菱化学社製)80mLを充填したカラムに1時間かけて通液し(SV=3.75)、ついで400mLの水で洗浄した。さらに同カラムに80%エタノール水溶液400mLを通液し、同溶出液を回収し、凍結乾燥して無臭、淡黄色の粉末1.6gを得た。ホップ苞からの収率は8%であった。このホップ苞からの乾燥粉末0.8gを、500mLの10%エタノール水溶液に溶解し、分画分子量が10,000の限外ろ過膜(YM10,アミコン社製)により、98kPa、室温下、20mLになるまで濃縮した。得られた上残り液を凍結乾燥して無臭、淡黄色の粉末(ホップ由来ポリフェノール)0.4gを得た。ホップ由来ポリフェノールの測定はポアサイズ0.8μmのフィルターでろ過した液体のホップ苞抽出物を、高速液体クロマトグラフ(型式L7000,日立社製)を用い、逆相液体クロマトグラフ用パックドカラムODSC18(内径4.6mm×250mm、GLサイエンス社製)に装着し、カラム温度35℃でグラジエント法により分析した。移動相A液はリン酸カリウム10mM/L含有の10%メタノール水溶液、B液はリン酸カリウムを10mM/L含有の10%メタノール水溶液とし、試料注入量は20μL、UV検出器波長は280nmの条件で行った。
【0062】
[調製例5 クロロゲン酸の調製]
クロロゲン酸(和光純薬社製)を生化学用試薬グレードのジメチルスルホキシド(和光純薬)により溶解し、最終濃度10mg/mlのクロロゲン酸溶液を調製した。
【0063】
[調製例6 カテキンの調製]
(+)−カテキン(栗田工業社製)を生化学用試薬グレードのジメチルスルホキシド(和光純薬)により溶解し、最終濃度10mg/mlのカテキン溶液を調製した。
【0064】
[調製例7 没食子酸エピガロカテキンの調製]
(−)−没食子酸エピガロカテキン(和光純薬社製)を生化学用試薬グレードのジメチルスルホキシド(和光純薬社製)により溶解し、最終濃度10mg/mlの没食子酸エピガロカテキン(EGCG)溶液を調製した。
【0065】
[調製例8 カカオ由来ポリフェノールの調製]
市販のピュアココアパウダー(森永製菓社製)20gを600mLの50%エタノール水溶液中で、攪拌しながら、80℃、40分間抽出した。ろ過後、容積が300mLになるまで減圧濃縮し、その濃縮液をスチレン−ジビニルベンゼン樹脂(セパビーズSP−825,三菱化学社製)80mLを充填したカラムに1時間かけて通液し(SV=3.75)、ついで400mLの水で洗浄した。さらに同カラムに80%エタノール水溶液400mLを通液し、同溶出液を回収し、凍結乾燥して乾燥粉末2.3gを得た。この乾燥粉末を生化学用試薬グレードのジメチルスルホキシド(和光純薬社製)により溶解し、最終濃度10mg/mlのカカオ由来ポリフェノール溶液を調製した。
【0066】
[調製例9 松樹皮由来ポリフェノールの調製]
市販の松樹皮20gを細切した後、600mLの50%エタノール水溶液中で、攪拌しながら、80℃、40分間抽出した。ろ過後、容積が300mLになるまで減圧濃縮し、その濃縮液をスチレン−ジビニルベンゼン樹脂(セパビーズSP−825,三菱化学社製)80mLを充填したカラムに1時間かけて通液し(SV=3.75)、ついで400mLの水で洗浄した。さらに同カラムに80%エタノール水溶液400mLを通液し、同溶出液を回収し、凍結乾燥して乾燥粉末1.7gを得た。この乾燥粉末を生化学用試薬グレードのジメチルスルホキシド(和光純薬社製)により溶解し、最終濃度10mg/mlの松樹皮由来ポリフェノール溶液を調製した。
【0067】
[調製例10 カシス由来ポリフェノールの調製]
市販のカシス果実20gを細切した後、600mLの50%エタノール水溶液中で、攪拌しながら、80℃、40分間抽出した。ろ過後、容積が300mLになるまで減圧濃縮し、その濃縮液をスチレン−ジビニルベンゼン樹脂(セパビーズSP−825,三菱化学社製)80mLを充填したカラムに1時間かけて通液し(SV=3.75)、ついで400mLの水で洗浄した。さらに同カラムに80%エタノール水溶液400mLを通液し、同溶出液を回収し、凍結乾燥して乾燥粉末2.1gを得た。この乾燥粉末を生化学用試薬グレードのジメチルスルホキシド(和光純薬社製)により溶解し、最終濃度10mg/mlのカシス由来ポリフェノール溶液を調製した。
【0068】
[調製例11 オリーブ由来ポリフェノールの調製]
市販のオリーブ果実20gを細切した後、600mLの50%エタノール水溶液中で、攪拌しながら、80℃、40分間抽出した。ろ過後、容積が300mLになるまで減圧濃縮し、その濃縮液をスチレン−ジビニルベンゼン樹脂(セパビーズSP−825,三菱化学社製)80mLを充填したカラムに1時間かけて通液し(SV=3.75)、ついで400mLの水で洗浄した。さらに同カラムに80%エタノール水溶液400mLを通液し、同溶出液を回収し、凍結乾燥して乾燥粉末1.9gを得た。この乾燥粉末を生化学用試薬グレードのジメチルスルホキシド(和光純薬社製)により溶解し、最終濃度10mg/mlのオリーブ由来ポリフェノール溶液を調製した。
【0069】
[各種抽出物中の総ポリフェノール含量の測定]
Folin−Denis法により、上記調製例1、2、4〜11で調製した各種ポリフェノール抽出物中の総ポリフェノール含量を測定した。試料溶液(0.2mL)に、蒸留水(0.8mL)、水で4倍希釈したFolin試薬(関東化学社製)(1.0mL)、及び0.4M炭酸ナトリウム溶液(5.0mL)を順に加え、室温で30分反応させた後、760nmの吸光度を測定した。同時に、100、50、25、12.5μg/mL濃度に調整したクロロゲン酸(和光純薬社製)を測定し、作成した検量線から、試料中の総ポリフェノール量(クロロゲン酸換算)を算出した。
【0070】
[フォルスコリン(FK)及び各種ポリフェノールの脂肪蓄積抑制に対する併用効果]
フォルスコリン(FK)を単独で添加した場合、上記調製例1、2、4〜11で調製した各種ポリフェノール抽出物を単独で添加した場合、及びフォルスコリンと各種ポリフェノール抽出物の両方を添加した場合の、脂肪細胞の脂肪蓄積量を測定し、フォルスコリン(FK)及び9種の各種ポリフェノールの脂肪蓄積抑制に対する併用効果を調べた。
脂肪前駆細胞(3T3−L1,大日本製薬社製)を10%牛胎児血清(FBS)含有DMEM培地(高グルコース)で37℃−5%COインキュベーターにて培養し、増殖させた。48−well plate(住友ベークライト社製)に3T3−L1を3×104 cells/cmで撒き、24時間培養後、0.25mMデキサメタゾン、0.5mM 1−メチル−3−イソブチルキサンチン及び10mg/mlインスリンを含む培地に交換して分化を誘導した。分化誘導と同時に、最終濃度が10μg/mlとなるように各種ポリフェノールを、及び/又は最終濃度が5ng/mlとなるようにフォルスコリンを、それぞれ添加して処理した。なお、各種ポリフェノールは、各抽出物中の総ポリフェノール含量を前述の方法によりクロロゲン酸換算で定量化し、その値を元に各種ポリフェノール量が10μg/mlになるように補正して処理した。その後、1日おきに、0.25mMデキサメタゾン、0.5mM 1−メチル−3−イソブチルキサンチン、10mg/mlインスリン、10μg/ml 各種ポリフェノール及び/又は5ng/ml フォルスコリンを含む培地に交換し、10日間培養した。培養終了後、細胞内の脂肪蓄積量をAdipoRed assay reagent(Lonza Walkersville)を用いて評価した。
図1は、測定された脂肪蓄積量を示した図である。図中、「未分化」は分化誘導前の細胞の結果であり、残りは分化誘導後の細胞の結果である。また、「無処理」はフォルスコリンとポリフェノールのいずれも添加しなかった細胞を、「FK」はフォルスコリンを、「リンゴ」はリンゴ由来ポリフェノールを、「ホップ」はホップ由来ポリフェノールを、「クロロゲン酸」はクロロゲン酸を、「カテキン」はカテキンを、「EGCG」は没食子酸エピガロカテキンを、「カカオ」はカカオ由来ポリフェノールを、「松樹皮」は松樹皮由来ポリフェノールを、「カシス」はカシス由来ポリフェノールを、「オリーブ」はオリーブ由来ポリフェノールを、「FK+ポリフェール」はフォルスコリンと各種ポリフェノールの両方を、それぞれ添加した細胞の結果を示している。この結果、リンゴ由来ポリフェノール及びホップ由来ポリフェノールでフォルスコリン(FK)との併用により、相乗的な脂肪蓄積抑制作用が見られた(図1)。一方、クロロゲン酸、カテキン、没食子酸エピガロカテキン、カカオ由来ポリフェノール、松樹皮由来ポリフェノール、カシス由来ポリフェノール、オリーブ由来ポリフェノールではフォルスコリン(FK)との併用による相乗効果は見られなかった。
【0071】
[フォルスコリン(FK)及びリンゴ由来プロシアニジン分画物(ACTs)の脂肪蓄積抑制に対する併用効果]
調製例3のリンゴ由来プロシアニジン分画物(ACTs)の、フォルスコリン(FK)と併用した場合の脂肪蓄積抑制効果を調べた。
3T3−L1を前述と同様の方法で、分化誘導した。分化誘導と同時に、最終濃度が10μg/mlとなるようにリンゴ由来プロシアニジン分画物(ACTs)を、及び/又は最終濃度が30ng/mlとなるようにフォルスコリン(FK)を、それぞれ添加して処理した。その後、1日おきに、0.25mMデキサメタゾン、0.5mM 1−メチル−3−イソブチルキサンチン、10mg/mlインスリン、10μg/ml リンゴ由来プロシアニジン分画物(ACTs)及び/又は30ng/ml フォルスコリンを含む培地に交換し、10日間培養した。培養終了後、細胞内の脂肪蓄積量をAdipoRed assay reagent(Lonza Walkersville)を用いて評価した。
図2は、測定された脂肪蓄積量を示した図である。図中、「未分化」、「分化誘導」、「無処理」、「FK」は図1と同様である。また、図中、「ACTs」はリンゴ由来プロシアニジン分画物(ACTs)を添加した細胞の結果であり、「FK+ACTs」はフォルスコリンとリンゴ由来プロシアニジン分画物(ACTs)の両方を添加した細胞の結果である。この結果、フォルスコリン(FK)単独や、リンゴ由来プロシアニジン分画物(ACTs)単独で添加した細胞よりも、両者を共に添加した細胞において顕著に脂肪蓄積量が少なく、フォルスコリン(FK)とリンゴ由来プロシアニジン分画物(ACTs)を併用することにより相乗的な脂肪蓄積抑制作用が得られることが確認された。
【0072】
[調製例12 コレウス・フォルスコリィエキス(FKエキス)の調製]
コレウス・フォルスコリィの根を含む根茎の天日乾燥物を約5mm角以下のサイズに破砕し、これをさらに粉砕処理して200タイラーメッシュ通過の微粉末を調製した。この微粉末1kgをステンレス製容器に入れ、エタノール20Lを加えて室温で72時間静置して抽出処理を行った後、残渣を濾過して抽出液とした。この抽出液から溶媒を減圧留去して褐色の抽出物93gを得た。この抽出物をHPLC分析したところ、23.0重量%のフォルスコリンを含有していた。この抽出物をマルトデキストリンにより希釈して、10.0重量%のフォルスコリンになるように調製した。
【0073】
[調製例13 マウス試験用フォルスコリン(FK)、リンゴ由来ポリフェノール(AP)、ホップ由来ポリフェノール(HP)含有高脂肪食の調製]
高脂肪食(D12457、RESEARCH DIETS,INC.)に、フォルスコリン(FK)、リンゴ由来ポリフェノール(AP)、ホップ由来ポリフェノール(HP)を、それぞれ表1に記載の濃度で均一に混合し、調製した。なお、フォルスコリンは調製例12と、リンゴ由来ポリフェノールは調製例2と、ホップ由来ポリフェノール調製例4と、それぞれ同様にして調製したものを用いた。
【0074】
【表1】

【0075】
[調製例14 ヒト試験用フォルスコリン(FK)及びリンゴ由来ポリフェノール(AP)含有錠剤の調製]
表2記載の成分を混合し、打錠して錠剤を得た。なお、フォルスコリンは調製例12と、リンゴ由来ポリフェノールは調製例2と、それぞれ同様にして調製したものを用いた。
【0076】
【表2】

【0077】
[マウスでのフォルスコリン(FK)と、リンゴ由来ポリフェノール(AP)又はホップ由来ポリフェノール(HP)との肥満に対する併用効果]
6週齢の雄性B57BL6Jマウス(日本エスエルシー社より入手)を、普通食(AIN93G,オリエンタル酵母工業社製)で7日間馴化飼育後、普通食摂取群及び調製例13で調製した高脂肪食1〜15の摂取群に分け、58日間自由摂取させた。各摂取群を構成するマウスは8匹とした。
摂取前と、摂取後毎週1回(摂取開始後7、14、21、28、35、42、49、及び56日目)と、58日間の摂取後に、各マウスの体重及び摂餌量をそれぞれ測定した。また、摂取58日後に、各マウスに対して、腸間膜周囲、精巣周囲、及び腎臓周囲の脂肪量、血漿中のトリグリセリド濃度、血漿中のグルコース濃度、並びに肝臓重量当りの総コレステロール量をそれぞれ測定した。具体的には、腸間膜周囲、精巣周囲、及び腎臓周囲の脂肪量は、各マウスから腸間膜周囲、精巣周囲、及び腎臓周囲の脂肪を採取し、重量を測定後、体重当りの各組織の脂肪重量の割合(g%)を算出した。また、血漿中のトリグリセリド濃度及びグルコース濃度は、各マウスから採血し、血漿を分離後、市販の測定キット(トリグリセリド E−テスト ワコー、和光純薬社製、及びD−Glucose assay kit、R−BIOPHARM AG社製)を用いて測定した。肝臓重量当りの総コレステロール量は、各マウスから肝臓を採取し、重量を測定するとともに、肝臓からコレステロールを抽出し、市販の測定キット(コレステロール E−テスト ワコー、和光純薬社製)を用いて肝臓中の総コレステロール量を測定し、肝臓重量当りの総コレステロール量を算出した。各測定値は平均値±標準誤差で表し、検定は各測定値の変化をpaired t testを用いて行い、有意水準は両側5%以下とした。
【0078】
<フォルスコリン(FK)とリンゴ由来ポリフェノール(AP)の併用効果>
図3は、マウスにFK(0.003%)及びAP(0.1%又は0.3%)を各々単独又は組み合わせて混合した高脂肪食(高脂肪食2、4、5、8、又は9)を摂取させた場合の体重の変化を示した図である。図中、「高脂肪食」は高脂肪食1、「FK0.003%」は高脂肪食2、「AP0.1%」は高脂肪食4、「AP0.3%」は高脂肪食5、「FK0.003%+AP0.1%」は高脂肪食8、及び「FK0.003%+AP0.3%」は高脂肪食9を、それぞれ摂取させた群の結果である。普通食摂取群に比べて高脂肪食無処理摂取群(高脂肪食1を摂取させた群)では、35日摂取以降で有意に体重が増加した。また、FK又はAPを単独で混合した高脂肪食摂取群(高脂肪食2、4、又は5を摂取させた群)では、高脂肪食無処理摂取群に比べて有意な体重の差は見られなかった。一方、FK0.003%とAP0.1%を組み合わせて混合した高脂肪食8摂取群(高脂肪食8を摂取させた群)では、28日摂取以降で、高脂肪食無処理摂取群よりも有意に体重の増加が少ないことが判明した。FK0.003%及びAP0.3%を組み合わせて混合した高脂肪食9摂取群(高脂肪食9を摂取させた群)でも、42日摂取以降で、同様に、高脂肪食無処理摂取群よりも有意に体重の増加が少ないことが判明した。
【0079】
図4は、マウスに、普通食、高脂肪食1、2、4、5、8、又は9を58日間摂取させた後の体重当りの腸間膜周囲の脂肪重量の割合(g%)を示した図である。普通食摂取群に比べて高脂肪食無処理摂取群では、有意に体重当りの腸間膜周囲の脂肪重量の割合が増加していた。また、FK又はAPを単独で混合した高脂肪食摂取群(高脂肪食2、4、又は5を摂取させた群)では、高脂肪食無処理摂取群に比べて、有意な腸間膜周囲の脂肪重量の割合の差は見られなかった。一方、FKとAPとを組み合わせて混合した高脂肪食摂取群(高脂肪食8又は9を摂取させた群)では、高脂肪食無処理摂取群よりも有意に体重当りの腸間膜周囲の脂肪重量の割合が小さいことが判明した。
【0080】
図5及び図6は、図4と同様に、普通食、高脂肪食1、2、4、5、8、又は9を58日間摂取させた後の、体重当りの精巣周囲の脂肪重量の割合(g%)(図5)及び体重当りの腎臓周囲の脂肪重量の割合(g%)(図6)を示した図である。この結果、腸間膜周囲の脂肪重量と同様に、精巣周囲の脂肪重量の割合と腎臓周囲の脂肪重量の割合のいずれも、FKとAPとを組み合わせて混合した高脂肪食摂取群(高脂肪食8又は9を摂取させた群)では、高脂肪食無処理摂取群よりも有意に体重当りの脂肪重量の割合が小さいことが判明した。
【0081】
これらの結果から、FKとAPとを併用することにより、高脂肪食を継続的に摂取した場合の体重や内臓脂肪の増加を効果的に抑制し得ることが明らかである。
【0082】
図7は、マウスにFK(0.003%又は0.01%)及びAP(0.1%又は0.3%)を各々単独又は組み合わせて混合した高脂肪食(高脂肪食2〜5、8〜11)を58日間摂取させた後の血漿中のトリグリセリド濃度を示した図である。普通食摂取群に比べて高脂肪食無処理摂取群では、血漿中のトリグリセリド濃度が増加する傾向が見られた。FK又はAPをそれぞれ単独で混合した高脂肪食摂取群(高脂肪食2〜5を摂取させた群)では、高脂肪食無処理摂取群に比べて有意な血漿中のトリグリセリド濃度の差は見られなかった。一方、FKとAPとを組み合わせて混合した高脂肪食摂取群(高脂肪食8〜11を摂取させた群)では、高脂肪食無処理摂取群に比べて有意に血漿中のトリグリセリド濃度が低かった。以上の結果から、FKとAPとを併用することにより、血漿中のトリグリセリド濃度の増加を抑制できることが明らかであり、本発明の脂肪蓄積抑制用組成物を摂取することにより、高脂血症の抑制効果が期待できる。
【0083】
図8は、図7と同様に、普通食又は高脂肪食1〜5、8〜11を58日間摂取させた後の、血漿中のグルコース濃度を示した図である。普通食摂取群に比べて高脂肪食無処理摂取群では、血漿中のグルコース濃度が有意に増加した。FK又はAPをそれぞれ単独で混合した高脂肪食摂取群(高脂肪食2〜5を摂取させた群)では、高脂肪食無処理摂取群に比べて有意な血漿中のグルコース濃度の差は見られなかった。一方、FKとAPとを組み合わせて混合した高脂肪食摂取群(高脂肪食8〜11を摂取させた群)では、高脂肪食無処理摂取群に比べて有意に血漿中のグルコース濃度が低かった。以上の結果から、FKとAPとを併用することにより、血漿中のグルコース濃度の増加を抑制できることが明らかであり、本発明の脂肪蓄積抑制用組成物を摂取することにより、糖尿病の抑制効果が期待できる。
【0084】
図9は、マウスにFK(0.01%)及びAP(0.1%又は0.3%)を各々単独又は組み合わせて混合した高脂肪食(高脂肪食3〜5、10、又は11)を58日間摂取させた後の肝臓中の総コレステロール濃度を示した図である。普通食摂取群に比べて高脂肪食無処理摂取群では、肝臓中の総コレステロール濃度が増加する傾向が見られた。FK又はAPをそれぞれ単独で混合した高脂肪食摂取群(高脂肪食3〜5を摂取させた群)では、高脂肪食無処理摂取群に比べて有意な肝臓中の総コレステロール濃度の差は見られなかった。一方、FKとAPとを組み合わせて混合した高脂肪食摂取群(高脂肪食10又は11を摂取させた群)では、高脂肪食無処理摂取群に比べて有意に肝臓中の総コレステロール濃度が低かった。以上の結果から、FKとAPとを併用することにより、肝臓中の総コレステロール濃度の増加を抑制できることが明らかであり、本発明の脂肪蓄積抑制用組成物を摂取することにより、脂肪肝の抑制効果が期待できる。
【0085】
<フォルスコリン(FK)とホップ由来ポリフェノール(HP)の併用効果>
図10は、マウスにFK(0.003%)及びHP(0.1%)を各々単独又は組み合わせて混合した高脂肪食(高脂肪食2、6、又は12)を摂取させた場合の体重の変化を示した図である。図中、「高脂肪食」は高脂肪食1、「FK0.003%」は高脂肪食2、「HP0.1%」は高脂肪食6、及び「FK0.003%+HP0.1%」は高脂肪食12を、それぞれ摂取させた群の結果である。普通食摂取群に比べて高脂肪食無処理摂取群(高脂肪食1を摂取させた群)では、35日摂取以降で有意に体重が増加した。また、FK又はHPを単独で混合した高脂肪食摂取群(高脂肪食2又は6を摂取させた群)では、高脂肪食無処理摂取群に比べて有意な体重の差は見られなかった。一方、FKとHPを組み合わせて混合した高脂肪食12摂取群(高脂肪食12を摂取させた群)では、21日摂取以降で、高脂肪食無処理摂取群よりも有意に体重の増加が少ないことが判明した。
この結果から、FKとHPとを併用することにより、高脂肪食を継続的に摂取した場合の体重の増加を効果的に抑制し得ることが明らかである。
【0086】
図11は、マウスにFK(0.003%又は0.01%)及びHP(0.1%)を各々単独又は組み合わせて混合した高脂肪食(高脂肪食2、3、6、12、又は14)を58日間摂取させた後の血漿中のトリグリセリド濃度を示した図である。普通食摂取群に比べて高脂肪食無処理摂取群では、血漿中のトリグリセリド濃度が増加する傾向が見られた。FK又はHPをそれぞれ単独で混合した高脂肪食摂取群(高脂肪食2、3、6を摂取させた群)では、高脂肪食無処理摂取群に比べて有意な血漿中のトリグリセリド濃度の差は見られなかった。一方、FKとHPとを組み合わせて混合した高脂肪食摂取群(高脂肪食12又は14を摂取させた群)では、高脂肪食無処理摂取群に比べて有意に血漿中のトリグリセリド濃度が低かった。以上の結果から、FKとHPとを併用することにより、血漿中のトリグリセリド濃度の増加を抑制できることが明らかであり、本発明の脂肪蓄積抑制用組成物を摂取することにより、高脂血症の抑制効果が期待できる。
【0087】
図12は、マウスにFK(0.003%又は0.01%)及びHP(0.3%)を各々単独又は組み合わせて混合した高脂肪食(高脂肪食2、3、7、13、又は15)を58日間摂取させた後の血漿中のグルコース濃度を示した図である。普通食摂取群に比べて高脂肪食無処理摂取群では、血漿中のグルコース濃度が増加する傾向が見られた。FK又はHPをそれぞれ単独で混合した高脂肪食摂取群(高脂肪食2、3、7を摂取させた群)では、高脂肪食無処理摂取群に比べて有意な血漿中のグルコース濃度の差は見られなかった。一方、FKとHPとを組み合わせて混合した高脂肪食摂取群(高脂肪食13又は15を摂取させた群)では、高脂肪食無処理摂取群に比べて有意に血漿中のグルコース濃度が低かった。以上の結果から、FKとHPとを併用することにより、血漿中のグルコース濃度の増加を抑制できることが明らかであり、本発明の脂肪蓄積抑制用組成物を摂取することにより、糖尿病の抑制効果が期待できる。
【0088】
図13は、マウスにFK(0.003%)及びHP(0.1%)を各々単独又は組み合わせて混合した高脂肪食(高脂肪食2、6、又は12)を58日間摂取させた後の肝臓中の総コレステロール濃度を示した図である。普通食摂取群に比べて高脂肪食無処理摂取群では、肝臓中の総コレステロール濃度が増加する傾向が見られた。FK又はHPをそれぞれ単独で混合した高脂肪食摂取群(高脂肪食2又は6を摂取させた群)では、高脂肪食無処理摂取群に比べて有意な肝臓中の総コレステロール濃度の差は見られなかった。一方、FKとHPとを組み合わせて混合した高脂肪食摂取群(高脂肪食12を摂取させた群)では、高脂肪食無処理摂取群に比べて有意に肝臓中の総コレステロール濃度が低かった。以上の結果から、FKとHPとを併用することにより、肝臓中の総コレステロール濃度の増加を抑制できることが明らかであり、本発明の脂肪蓄積抑制用組成物を摂取することにより、脂肪肝の抑制効果が期待できる。
【0089】
[ヒトでのフォルスコリン(FK)及びリンゴ由来ポリフェノール(AP)を含有する錠剤の肥満抑制効果]
ヘルシンキ宣言の精神に則して試験内容を口頭及び文書によるインフォームドコンセントを行い、協力の意思が得られた健常成人男性11名を対象として試験を実施した。11名の内、5名がBMIが25未満(BMI<25)であり、6名がBMIが25以上(BMI≧25)であった。調製例14で調製した錠剤を試験食品とし、これを1回2錠、1日4錠、朝夕の1日2回に分けて8週間毎日摂取させた。1日当りのFK及びAPの摂取量は、それぞれ50mgである。摂取前と摂取後毎週1回ずつ、体重、腹囲、体脂肪率を測定した。各測定値は平均値で表し、検定は各測定値の変化をpaired t testを用いて行い、有意水準は両側5%以下とした。
【0090】
図13は、BMI<25及びBMI≧25の被験者の体重の変化を示した図である。BMI<25の被験者では有意な体重の変化は見られなかったが、BMI≧25の被験者では、摂取前と比較して摂取8週間後では有意に体重が減少した。
図14は、BMI<25及びBMI≧25の被験者の腹囲の変化を示した図である。BMI<25の被験者では有意な腹囲の変化は見られなかったが、BMI≧25の被験者では、摂取前と比較して摂取8週間後では有意に腹囲が減少した。
図15は、BMI<25及びBMI≧25の被験者の体脂肪率の変化を示した図である。BMI<25の被験者では有意な体脂肪率の変化は見られなかったが、BMI≧25の被験者では、摂取前と比較して摂取8週間後では有意に体脂肪率が減少した。
以上の結果から、FK及びAPを含有する錠剤は、BMI≧25の被験者の肥満に対して有効であることが明らかになった。
【0091】
[処方例1 カプセル剤]
表3記載の成分を混合し、ゼラチン及びグリセリンを混合したカプセル基剤中に充填し、軟カプセルを得た。なお、フォルスコリン、リンゴ由来ポリフェノール、及びホップ由来ポリフェノールは、上記調製例と同様にして調製したものを用いた。
【0092】
【表3】

【0093】
[処方例2 錠剤]
表4記載の成分を混合し、打錠して錠剤を得た。なお、フォルスコリン、リンゴ由来ポリフェノール、及びホップ由来ポリフェノールは、上記調製例と同様にして調製したものを用いた。
【0094】
【表4】

【0095】
[処方例3 ジュース]
表5記載の成分を混合してジュースを得た。なお、フォルスコリン、リンゴ由来ポリフェノール、及びホップ由来ポリフェノールは、上記調製例と同様にして調製したものを用いた。
【0096】
【表5】

【0097】
[処方例4 ゼリー]
表6記載の成分のうち、(2)〜(7)を80℃の(8)に溶解し、その後ゼリーエースを加えて攪拌した。型に10gずつ流し入れた後、冷蔵庫で固めた。なお、フォルスコリン、リンゴ由来ポリフェノール、及びホップ由来ポリフェノールは、上記調製例と同様にして調製したものを用いた。
【0098】
【表6】

【0099】
[処方例5 クリーム]
表7記載の成分(1)〜(14)を80℃に加熱溶解し油相とした。成分(15)〜(19)を70℃に加熱溶解し水相とした。油相に水相を徐々に加え乳化し、攪拌しながら40℃まで冷却し、さらに30℃まで攪拌冷却してクリームを得た。なお、フォルスコリン、リンゴ由来ポリフェノール、及びホップ由来ポリフェノールは、上記調製例と同様にして調製したものを用いた。
【0100】
【表7】

【0101】
[処方例6 マッサージジェル]
表8記載の成分(1)〜(10)を80℃に加熱溶解し油相とした。成分(11)〜(17)を70℃に加熱溶解し水相とした。油相に水相を徐々に加え乳化し、攪拌しながら40℃まで冷却し、さらに30℃まで攪拌冷却してマッサージジェルを得た。なお、フォルスコリン、リンゴ由来ポリフェノール、及びホップ由来ポリフェノールは、上記調製例と同様にして調製したものを用いた。
【0102】
【表8】

【0103】
[処方例7 浴用剤]
表9記載の成分(1)〜(6)を80℃に加熱溶解し油相とした。成分(7)〜(12)を70℃に加熱溶解し水相とした。油相に水相を徐々に加え乳化し、攪拌しながら40℃まで冷却し、さらに30℃まで攪拌冷却して浴用剤を得た。なお、フォルスコリン、リンゴ由来ポリフェノール、及びホップ由来ポリフェノールは、上記調製例と同様にして調製したものを用いた。
【0104】
【表9】

【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明の経口用組成物は、安全に摂取することが可能であり、優れた脂肪蓄積抑制効果を奏する組成物であるため、特にメタボリックシンドローム等の予防又は治療の分野で利用が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォルスコリン及びリンゴ由来ポリフェノールを有効成分とすることを特徴とする脂肪蓄積抑制用組成物。
【請求項2】
フォルスコリン及びホップ由来ポリフェノールを有効成分とすることを特徴とする脂肪蓄積抑制用組成物。
【請求項3】
前記リンゴ由来ポリフェノールがプロシアニジンであることを特徴とする請求項1記載の脂肪蓄積抑制用組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−298769(P2009−298769A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−18371(P2009−18371)
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(000000055)アサヒビール株式会社 (535)
【Fターム(参考)】